(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113010
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ポリカーボネート共重合体及びポリシロキサン化合物の製造方法、ポリカーボネート共重合体、ポリシロキサン化合物、組成物、及び、成形体
(51)【国際特許分類】
C08G 64/08 20060101AFI20240814BHJP
C08L 69/00 20060101ALI20240814BHJP
C08L 83/12 20060101ALI20240814BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240814BHJP
C08G 77/48 20060101ALN20240814BHJP
【FI】
C08G64/08
C08L69/00
C08L83/12
C08L83/04
C08G77/48
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024089031
(22)【出願日】2024-05-31
(62)【分割の表示】P 2021509353の分割
【原出願日】2020-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2019055563
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019055569
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【弁理士】
【氏名又は名称】潮 太朗
(72)【発明者】
【氏名】上等 和良
(72)【発明者】
【氏名】釜谷 康平
(72)【発明者】
【氏名】冨田 恵介
(72)【発明者】
【氏名】秋元 宣人
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐衝撃性に優れ、溶融時の流動性が高い、シロキサン構成単位を有するポリカーボネート共重合体を効率的に製造する方法等を提供する。また、酸などの環境負荷の高い副生成物を生じさせず、安全面の配慮を要する溶媒なしに実施可能であって、ポリカーボネート共重合体やポリシロキサン化合物を効率的に製造する方法、及びポリシロキサン化合物等を提供する。
【解決手段】エステル交換触媒の存在下、所定のジアリールオキシシラン化合物と所定のジアルコキシシラン化合物と所定のケイ素化合物から選択されるシラン系化合物と、カーボネート化合物と、芳香族ジオール化合物又は脂環式ジオール化合物を含むジオール化合物とを重合させる重合工程を有し、重合工程において、溶融状態で減圧下、前記カーボネート化合物由来のアルコールを除去しながら、所定のシロキサン構成単位及び所定のポリカーボート構成単位を有するポリカーボネート共重合体を製造する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアルキルジアリールオキシシラン、ジアリールジアリールオキシシラン、及び、モノアルキルモノアリールジアリールオキシシランのいずれかであるジアリールオキシシラン化合物と、ジアルキルジアルコキシシラン、ジアリールジアルコキシシラン、及び、モノアルキルモノアリールジアルコキシシランのいずれかであるジアルコキシシラン化合物との少なくともいずれかを含むオキシシラン化合物と、
芳香族ジオール化合物又は脂環式ジオール化合物を含むジオール化合物とを重合させる重合工程を有し、
前記重合工程において、前記オキシシラン化合物と前記ジオール化合物とを、溶融状態で減圧下、生じるアリールアルコール及び/又はアルキルアルコールを除去しながらエステル交換触媒を用いて重合させ、前記エステル交換触媒の前記ジオール化合物に対する量が、モル比で0.01μmol/mol~16,000μmol/molであり、
下記式(1-1’)~(1-4’)のいずれかで表される構成単位を含む、重量平均分子量10,000~300,000のポリ(アリーレン/アルキレン)シロキサン化合物を製造する、ポリシロキサン化合物の製造方法。
【化1】
(式(1-1’)~(1-4’)中、R
1、及び、R
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わし、
R
3~R
10及びR
30~R
33は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を示し、
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、
J
1は、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
K
1は、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
A
1及びA
2は、それぞれ独立して、-O-,-CH-のいずれかを表し、
L
1及びL
2は、それぞれ独立して、0以上3以下の整数を表わし、
m
1~m
4は、各式における構成単位の合計数をそれぞれ表し、10以上1000以下の自然数であり、
Xは、単結合、又は、下記式(2)で表される構造式のうちいずれかであり、
【化2】
(式中、R
11、及び、R
12は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
11及びR
12が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、
a、及び、bは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。))
【請求項2】
Z1及びZ2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~3のアルキレン基であり、
J1は、それぞれ独立して、0以上2以下の整数を表わし、
K1は、それぞれ独立して、0以上2以下の整数を表わす、
請求項1に記載のポリシロキサン化合物の製造方法。
【請求項3】
前記Xが、R11及びR12が互いに結合して形成されたフルオレン環構造を表すシロキサン構成単位、及び/又は、前記Yが、R21及びR22が互いに結合して形成されたフルオレン環構造を表すポリカーボート構成単位を有する、請求項1又は2に記載のポリシロキサン化合物の製造方法。
【請求項4】
ジアルキルジアリールオキシシラン、ジアリールジアリールオキシシラン、及び、モノアルキルモノアリールジアリールオキシシランの少なくともいずれかを含むジアリールオキシシラン化合物と、芳香族ジオール化合物とを重合させる重合工程を有し、
前記重合工程において、前記ジアリールオキシシラン化合物と芳香族ジオール化合物とを、溶融状態で減圧下、アリールアルコールを除去しながらエステル交換触媒を用いて重合させ、前記エステル交換触媒の前記芳香族ジオール化合物に対する量が、モル比で0.01μmol/mol~16,000μmol/molであり、
下記式(1)で表される構成単位を含む、重量平均分子量10,000~300,000のポリアリーレンシロキサン化合物を製造する、ポリシロキサン化合物の製造方法。
【化3】
(式中、R
1、及び、R
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わし、
R
3~R
10は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を示し、
mは、10以上1000以下の自然数を表わし、
Xは、下記式(2)で表される構造式のうちいずれかであり、
【化4】
(式中、R
11、及び、R
12は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
11及びR
12が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、
a、及び、bは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。)
【請求項5】
前記重合工程における反応温度が、150℃以上300℃以下の範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリシロキサン化合物の製造方法。
【請求項6】
前記重合工程において、反応圧力が101,300Pa以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリシロキサン化合物の製造方法。
【請求項7】
前記重合工程において、反応圧力を400Pa以下まで次第に低下させる減圧工程をさらに有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリシロキサン化合物の製造方法。
【請求項8】
前記重合工程において、前記エステル交換触媒の前記芳香族ジオール化合物に対する量が、モル比で0.1~100μmol/molである、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリシロキサン化合物の製造方法。
【請求項9】
前記エステル交換触媒が、アルカリ金属化合物及び/またはアルカリ土類金属化合物を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリシロキサン化合物の製造方法。
【請求項10】
前記アルカリ金属化合物及び/またはアルカリ土類金属化合物が、炭酸塩、水酸化物、酸化物、アルコキシ化合物のいずれか1種以上を含む、請求項8に記載のポリシロキサン化合物の製造方法。
【請求項11】
前記アルカリ金属化合物及び/またはアルカリ土類金属化合物が、炭酸塩である、請求項9に記載のポリシロキサン化合物の製造方法。
【請求項12】
前記重合工程において溶媒を使用しない、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリシロキサン化合物の製造方法。
【請求項13】
前記重合工程において用いられる、前記ジアリールオキシシラン化合物と前記芳香族ジオール化合物とのモル比が0.9以上1.2以下である、請求項1~22のいずれか一項に記載のポリシロキサン化合物の製造方法。
【請求項14】
前記重合工程において、200℃よりも高い反応温度、及び/又は、減圧下で、前記オキシシラン化合物又は前記ジアリールオキシシラン化合物と、前記ジオール化合物又は前記芳香族ジオール化合物とを重合させる、請求項1~23のいずれか一項に記載のポリシロキサン化合物の製造方法。
【請求項15】
式(1-1)~(1-4)のいずれかで表される構成単位を含み、重量平均分子量5,000~300,000であるとともに、式(5-4)で表される環状体の合計含有量が4.0重量%以下である、ポリシロキサン化合物。
【化5】
(式(1-1)~(1-4)中、R
1、及び、R
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わし、
R
3~R
10及びR
30~R
33は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を示し、
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、
J
1は、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
K
1は、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
A
1及びA
2は、それぞれ独立して、-O-,-CH-のいずれかを表し、
L
1及びL
2は、それぞれ独立して、0以上3以下の整数を表わし、
Xは、単結合、又は、下記式(2)で表される構造式のうちいずれかであり、
【化6】
(式中、R
11、及び、R
12は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
11及びR
12が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、
a、及び、bは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。))
【化7】
(式(5-4)中、式(5-4)で表される構成単位と他の構成単位との配置は任意であり、mの値の合計は2~10であり、
R
1、及び、R
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わし、
R
3~R
10は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を示し、
X
1及びX
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、
i及びiiは、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
mは、2~10の整数を表わし、
Xは、単結合、又は、下記式(2)で表される構造式のうちいずれかであり、
【化8】
(式(2)中、R
11、及び、R
12は各々独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
11及びR
12が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、
a、及び、bは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。))
【請求項16】
式(6-1)~(6-2)の環状体の合計含有量が4.0重量%以下である、請求項15に記載のポリシロキサン化合物。
【化9】
(式(6-1)及び(6-2)中、
R
1、及び、R
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わし、
R
3~R
10及びR
30~R
33は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を示し、
X
1及びX
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、
i及びiiは、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
nは、2~10の整数を表わし、
Xは、単結合、又は、下記式(2)で表される構造式のうちいずれかであり、
【化10】
(式(2)中、R
11、及び、R
12は各々独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
11及びR
12が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、
a、及び、bは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。)
【請求項17】
1%質量減少熱分解温度が、415℃以下である、請求項15又は16に記載のポリシロキサン化合物。
【請求項18】
請求項1~13のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたポリシロキサン化合物又は請求項15~17のいずれか一項に記載のポリシロキサン化合物、及び、ポリカーボネート樹脂を含有する、組成物。
【請求項19】
前記組成物における、総Si量が、0.1~20質量%である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物における280℃、160kgfの条件で測定したQ値であるQ1が、前記組成物に含まれる前記ポリカーボネート樹脂のみを同一条件で測定したQ値であるQ2の120%以上である、請求項18及び19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
請求項1~13のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたポリシロキサン化合物又は請求項15~17のいずれか一項に記載のポリシロキサン化合物を成形して得られる成形体。
【請求項22】
請求項1~13のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたポリシロキサン化合物又は請求項15~17のいずれか一項に記載のポリシロキサン化合物を含む、光学レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート共重合体及びポリシロキサン化合物の製造方法、特に、シロキサン構成単位を有するポリカーボネート共重合体の製造方法、ポリカーボネート共重合体等に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリカーボネート樹脂は優れた耐衝撃性及び機械的物性を有しており、射出成形等の簡便で生産性に優れた加工法により種々の成形品に形成され、電気電子、OA機器、重電機、精密機械、自動車分野等の幅広い産業分野で利用されている。
【0003】
従来のポリカーボネート樹脂は、溶融粘度が高いため、流動性が悪いという欠点を有するものであり、精密部品や薄物の射出成形が困難となることがあった。このため従来、成形加工における温度を上げる必要があり、高温下での成形においては、成形サイクルが長くなりコストが高くなる、或いは成形中にポリカーボネート樹脂の劣化が起こるという問題があった。そこで、ポリカーボネート樹脂の流動性を改良する試みも行われているが(特許文献1、特許文献2)、ポリカーボネート樹脂本来の特性(耐衝撃性等)を損なうことなく、十分に高い流動性は必ずしも実現されていない。
【0004】
ポリカーボネート樹脂の他にも、例えば射出成形等の成形方法による成形品の材料として、いわゆるポリアリーレンシロキサンともいわれる、芳香族ポリシロキサンのポリマーが知られている(例えば、特許文献3)。近年、ポリアリーレンシロキサン等のポリシロキサン化合物の重要性は増大しており、ポリアリーレンシロキサンは、例えば、写真複写における剥離層、フォトレジスト材料、ポリカーボネート用の可塑剤、また粉末表面コーティング系の成分等として用いられている。
【0005】
ポリアリーレンシロキサン類等のポリシロキサン化合物の製造方法としては、溶媒中、ジメチルジクロロシランとビスフェノールAと反応させるため塩酸が生じる方法(非特許文献1)、酢酸を添加した溶媒中で反応を行う方法(特許文献4)などが知られている。
【0006】
また、光学用途などの特定の用途に特に適したポリカーボネート樹脂、ポリシロキサン化合物等は、これまでに必ずしも実現されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-148047号公報
【特許文献2】特開昭62-297319号公報
【特許文献3】特表平08-502537号公報
【特許文献4】特表2015-512999号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Journal of Polymer Science, Vol.18, 3119-3127(1980)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
耐衝撃性に優れていて溶融時の流動性が高い、シロキサン構成単位を有するポリカーボネート共重合体、ポリカーボネート共重合体を効率的に製造する方法等を提供する。
【0010】
また、シロキサン構成単位を有するポリカーボネート共重合体、及び、ポリシロキサン化合物の安全で効率的な製造方法等を提供する。例えば、塩酸や酢酸などの腐食性物質の生成を伴わず、また、溶媒の使用を必要とせず、環境負荷の低減を可能にしつつ効率的にポリカーボネート共重合体、及び、ポリアリーレンシロキサン等のポリシロキサン化合物を製造する方法を提供する。
【0011】
さらに、光学用途などの特定の用途に特に適したポリカーボネート樹脂、ポリシロキサン化合物等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、シロキサン構成単位を含み、耐衝撃性に優れていて高い流動性を有する、以下に記載のポリカーボネート共重合体、ポリカーボネート共重合体の製造方法等を提供する。
本発明はまた、酸などの環境負荷の高い副生成物を生じさせず、溶媒なしに、特に、安全面の配慮を要する溶媒なしに実施可能であって、ポリカーボネート共重合体やポリシロキサン化合物を効率的に製造する方法、及び、ポリシロキサン化合物等を提供する。
【0013】
[1]エステル交換触媒の存在下、
ジアルキルジアリールオキシシラン、ジアリールジアリールオキシシラン、及び、モノアルキルモノアリールジアリールオキシシランの少なくともいずれかを含むジアリールオキシシラン化合物と、
ジアルキルジアルコキシシラン、ジアリールジアルコキシシラン、及び、モノアルキルモノアリールジアルコキシシランの少なくともいずれかを含むジアルコキシシラン化合物と、
環状シロキサン化合物、及び、直鎖状シロキサン化合物の少なくとも一つを含むケイ素化合物と
から選択されるシラン系化合物と、
カーボネート化合物と、
芳香族ジオール化合物又は脂環式ジオール化合物を含むジオール化合物とを重合させる重合工程を有し、
重合工程において、溶融状態で減圧下、前記カーボネート化合物由来のアルコールを除去しながら、式(1-1)~式(1-4)のいずれかで表されるシロキサン構成単位、及び、式(3-1)~(3-4)のいずれかで表されるポリカーボート構成単位を有するポリカーボネート共重合体を製造する方法。
【化1】
(式(1-1)~(1-4)中、R
1、及び、R
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わし、
R
3~R
10及びR
30~R
33は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を示し、
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、
J
1は、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
K
1は、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
A
1及びA
2は、それぞれ独立して、-O-,-CH-のいずれかを表し、
L
1及びL
2は、それぞれ独立して、0以上3以下の整数を表わし、
Xは、単結合、又は、下記式(2)で表される構造式のうちいずれかであり、
【化2】
(式(2)中、R
11、及び、R
12は各々独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
11及びR
12が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、
a、及び、bは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。)
【化3】
(式(3-1)~(3-4)中、R
13~R
20及びR
40~R
51は、各々独立に、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表し、
Z
3及びZ
4は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、
J
2は、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
K
2は、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
A
1及びA
2は、それぞれ独立して、-O-,-CH-のいずれかを表し、
L
1及びL
2は、それぞれ独立して、0以上3以下の整数を表わし、
Yは、単結合、又は、式(4)で表される構造式のうちいずれかであり、
【化4】
(式中、R
21、及び、R
22は、各々独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
21及びR
22が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、
c、及び、dは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。)
[2]Z
1~Z
4は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~3のアルキレン基であり、
J
1及びJ
2は、それぞれ独立して、0以上2以下の整数を表わし、
K
1及びK
2は、それぞれ独立して、0以上2以下の整数を表わす、
上記[1]に記載のポリカーボネート共重合体の製造方法。
[3]前記Xが、R
11及びR
12が互いに結合して形成されたフルオレン環構造を表すシロキサン構成単位、及び/又は、前記Yが、R
21及びR
22が互いに結合して形成されたフルオレン環構造を表すポリカーボート構成単位を有する、上記[1]又は[2]に記載のポリカーボネート共重合体の製造方法。
【0014】
[4]エステル交換触媒の存在下、
ジアルキルジアリールオキシシラン、ジアリールジアリールオキシシラン、及び、モノアルキルモノアリールジアリールオキシシランの少なくともいずれかを含むジアリールオキシシラン化合物と、
ジアルキルジアルコキシシラン、ジアリールジアルコキシシラン、及び、モノアルキルモノアリールジアルコキシシランの少なくともいずれかを含むジアルコキシシラン化合物と、
環状シロキサン化合物、及び、直鎖状シロキサン化合物の少なくとも一つを含むケイ素化合物と
から選択されるシラン系化合物と、
カーボネート化合物と、芳香族ジオール化合物又は脂環式ジオール化合物を含むジオール化合物とを重合させる重合工程を有し、
重合工程において、溶融状態で減圧下、前記カーボネート化合物由来のアルコールを除去しながら、式(1)で表されるシロキサン構成単位、及び、式(3)で表されるポリカーボート構成単位を有するポリカーボネート共重合体を製造する方法。
【化5】
(式(1)中、R
1、及び、R
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わし、
R
3~R
10は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を示し、
Xは、下記式(2)で表される構造式のうちいずれかであり、
【化6】
(式(2)中、R
11、及び、R
12は各々独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
11及びR
12が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、
a、及び、bは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。)
【化7】
(式中、R
13~R
20は、各々独立に、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有して
もよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル
基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表し、
Yは、式(4)で表される構造式のうちいずれかであり、
【化8】
(式中、R
21、及び、R
22は、各々独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
21及びR
22が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、
c、及び、dは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。)
[5]前記エステル交換触媒が、アルカリ金属化合物及び/またはアルカリ土類金属を含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体の製造方法。
[6]前記アルカリ金属化合物及び/またはアルカリ土類金属化合物が、炭酸塩を含む、上記[5]に記載のポリカーボネート共重合体の製造方法。
[7]前記ポリカーボネート共重合体の重量平均分子量が、10,000~300,000である、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体の製造方法。
[8]前記重合工程において、エステル交換触媒の前記ジオール化合物に対する量が、モル比で1.0×10
-7~1.0×10
-2である、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体の製造方法。
[9]前記重合工程における反応温度が、150℃以上300℃以下の範囲である、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体の製造方法。
[10]前記重合工程において、反応圧力を400Pa以下まで次第に低下させる減圧工程をさらに有する、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体の製造方法。
[11]前記重合工程において、400Pa以下の圧力下で前記カーボネート化合物と前記ジオール化合物とを重合させる、上記[1]~[10]のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体の製造方法。
[12]前記重合工程において溶媒を使用しない、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体の製造方法。
[13]前記重合工程において用いられる、前記カーボネート化合物及び前記ジアリールオキシシラン化合物の合計モル数と、前記ジオール化合物のモル数との比が0.9以上1.2以下である、上[1]~[12]のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体の製造方法。
[14]前記ポリカーボネート共重合体における、前記シロキサン構成単位のモル数が1~1000であり、前記ポリカーボート構成単位のモル数が1~1000である、上記[1]~[13]のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体の製造方法。
[15]前記シロキサン構成単位と、前記ポリカーボネート構成単位とのモル比が、0.01:99.99~99.99:0.01である、上記[1]~[14]いずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体の製造方法。
[16]前記ポリカーボネート共重合体の280℃、160kgfの条件で測定したQ値が、8(×10
-2cm
3s
-1)以上である、上記[1]~[15]のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体の製造方法。
【0015】
[17]式(1-1)~式(1-4)のいずれかで表されるシロキサン構成単位、及び、式(3-1)~式(3-4)のいずれかで表されるポリカーボート構成単位を有し、重量平均分子量1,000以下の低分子量化合物が30重量%以下である、ポリカーボネート共重合体。
【化9】
(式(1-1)~(1-4)中、R
1、及び、R
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わし、
R
3~R
10及びR
3~R
33は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を示し、
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、
J
1は、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
K
1は、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
A
1及びA
2は、それぞれ独立して、-O-,-CH-のいずれかを表し、
L
1及びL
2は、それぞれ独立して、0以上3以下の整数を表わし、
Xは、単結合、又は、下記式(2)で表される構造式のうちいずれかであり、
【化10】
(式(2)中、R
11、及び、R
12は各々独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
11及びR
12が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、
a、及び、bは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。)
【化11】
(式(3-1)~(3-4)中、R
13~R
20及びR
40~R
51は、各々独立に、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表し、
Z
3及びZ
4は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、
J
2は、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
K
2は、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
A
1及びA
2は、それぞれ独立して、-O-,-CH-のいずれかを表し、
L
1及びL
2は、それぞれ独立して、0以上3以下の整数を表わし、
Yは、単結合、又は、式(4)で表される構造式のうちいずれかであり、
【化12】
(式中、R
21、及び、R
22は、各々独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
21及びR
22が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、
c、及び、dは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。)
[18]Z
1~Z
4は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~3のアルキレン基であり、
J
1及びJ
2は、それぞれ独立して、0以上2以下の整数を表わし、
K
1及びK
2は、それぞれ独立して、0以上2以下の整数を表わす、
上記[17]に記載のポリカーボネート共重合体。
[19]前記Xが、R
11及びR
12が互いに結合して形成されたフルオレン環構造を表すシロキサン構成単位、及び/又は、前記Yが、R
21及びR
22が互いに結合して形成されたフルオレン環構造を表すポリカーボート構成単位を有する、上記[17]又は[18]に記載のポリカーボネート共重合体。
【0016】
[20]式(1)で表されるシロキサン構成単位、及び、式(3)で表されるポリカーボート構成単位を有し、重量平均分子量1,000以下の低分子量化合物のGPC面積比から算出された割合が30重量%以下である、ポリカーボネート共重合体。
【化13】
(式(1)中、R
1、及び、R
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わし、
R
3~R
10は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を示し、
Xは、下記式(2)で表される構造式のうちいずれかであり、
【化14】
(式(2)中、R
11、及び、R
12は各々独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
11及びR
12が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、
a、及び、bは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。)
【化15】
(式中、R
13~R
20は、各々独立に、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表し、
Yは、式(4)で表される構造式のうちいずれかであり、
【化16】
(式中、R
21、及び、R
22は、各々独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
21及びR
22が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、
c、及び、dは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。)
[21]前記ポリカーボネート共重合体における、前記シロキサン構成単位のモル数が1~1000であり、前記ポリカーボート構成単位のモル数が1~1000である、上記[17]~[20]のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体。
[22]前記シロキサン構成単位と、前記ポリカーボネート構成単位とのモル比が、0.01:99.9~99.9:0.01である、上記[17]~[21]のいずれかのいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体。
[23]前記シロキサン構成単位と、前記ポリカーボネート構成単位とのモル比が、30.00:70.00~99.9:0.01である、上記[22]に記載のポリカーボネート共重合体。
[24]280℃、160kgfの条件で測定したQ値が、8(×10
-2cm
3s
-1)以上である、上記[17]~[23]のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体。
【0017】
[25]式(1-1)~式(1-4)のいずれかで表されるシロキサン構成単位、及び、式(3-1)~式(3-4)のいずれかで表されるポリカーボート構成単位を有し、式(5-1)~式(5-3)で表される環状体の合計含有量が4.0重量%以下である、ポリカーボネート共重合体。
【化17】
(式(1-1)~(1-4)中、R
1、及び、R
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わし、
R
3~R
10及びR
3~R
33は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を示し、
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、
J
1は、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
K
1は、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
A
1及びA
2は、それぞれ独立して、-O-,-CH-のいずれかを表し、
L
1及びL
2は、それぞれ独立して、0以上3以下の整数を表わし、
Xは、単結合、又は、下記式(2)で表される構造式のうちいずれかであり、
【化18】
(式(2)中、R
11、及び、R
12は各々独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
11及びR
12が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、
a、及び、bは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。)
【化19】
(式(3-1)~(3-4)中、R
13~R
20及びR
40~R
51は、各々独立に、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表し、
Z
3及びZ
4は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、
J
2は、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
K
2は、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
A
1及びA
2は、それぞれ独立して、-O-,-CH-のいずれかを表し、
L
1及びL
2は、それぞれ独立して、0以上3以下の整数を表わし、
Yは、単結合、又は、式(4)で表される構造式のうちいずれかであり、
【化20】
(式中、R
21、及び、R
22は、各々独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
21及びR
22が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、
c、及び、dは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。)
【化21】
(式(5-1)~(5-3)中、m及びnは、各環状体における(-OSi(R
1R
2)O-)部位を含む構成単位の合計数と、(-OC(=O)O-)部位を含む構成単位の合計数とをそれぞれ表わし、
(式(5-1)中、mは2~10の整数を表わし、
式(5-2)中、nは2~10の整数を表わし、
式(5-3)中、mの値の合計は1~10、かつnの値の合計は1~10であり、式(5-3)において、(-OSi(R
1R
2)O-)部位を含む構成単位と(-OC(=O)O-)部位を含む構成単位との配置は任意であり、
式(5-1)~(5-3)中、R
1、及び、R
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わし、
R
3~R
10及びR
13~R
20は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を示し、
X
1及びX
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、
i及びiiは、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
Xは、単結合、又は、下記式(2)で表される構造式のうちいずれかであり、
【化22】
(式(2)中、R
11、及び、R
12は各々独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
11及びR
12が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、
a、及び、bは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。))
[26]式(6-1)~(6-2)の環状体の合計含有量が2.0重量%以下である、上記[17]~[25]のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体。
【化23】
(式(6-1)及び(6-2)中、
R
1、及び、R
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わし、
R
3~R
10及びR
30~R
33は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を示し、
X
1及びX
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、
i及びiiは、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
nは、2~10の整数を表わし、
Xは、単結合、又は、下記式(2)で表される構造式のうちいずれかであり、
【化24】
(式(2)中、R
11、及び、R
12は各々独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
11及びR
12が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、
a、及び、bは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。)
[27]1%質量減少熱分解温度が、415℃以下である、上記[17]~[26]のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体。
[28]上記[17]~[27]のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体、及び、ポリカーボネート樹脂を含有する、組成物。
[29]前記組成物における、総Si量が、0.1~20質量%である、上記[28]に記載の組成物。
[30]前記組成物における280℃、160kgfの条件で測定したQ値であるQ
1が、前記組成物に含まれる前記ポリカーボネート樹脂のみを同一条件で測定したQ値であるQ
2の120%以上である、上記[28]及び[29]のいずれか一項に記載の組成物。
[31]上記[17]~[27]のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体を成形して得られる成形体。
[32]上記[17]~[27]のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体を含む、光学レンズ。
[33]
上記[28]~[30]のいずれか一項に記載の組成物を成形して得られる、光学レンズ。
【0018】
[34]ジアルキルジアリールオキシシラン、ジアリールジアリールオキシシラン、及び、モノアルキルモノアリールジアリールオキシシランのいずれかであるジアリールオキシシラン化合物と、ジアルキルジアルコキシシラン、ジアリールジアルコキシシラン、及び、モノアルキルモノアリールジアルコキシシランのいずれかであるジアルコキシシラン化合物との少なくともいずれかを含むオキシシラン化合物と、
芳香族ジオール化合物又は脂環式ジオール化合物を含むジオール化合物とを重合させる重合工程を有し、
前記重合工程において、前記オキシシラン化合物と前記ジオール化合物とを、溶融状態で減圧下、生じるアリールアルコール及び/又はアルキルアルコールを除去しながらエステル交換触媒を用いて重合させ、前記エステル交換触媒の前記ジオール化合物に対する量が、モル比で0.01μmol/mol~16,000μmol/molであり、
下記式(1-1’)~(1-4’)のいずれかで表される構成単位を含む、重量平均分子量10,000~300,000のポリ(アリーレン/アルキレン)シロキサン化合物を製造する、ポリシロキサン化合物の製造方法。
【化25】
(式(1-1’)~(1-4’)中、R
1、及び、R
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わし、
R
3~R
10及びR
30~R
33は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を示し、
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、
J
1は、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
K
1は、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
A
1及びA
2は、それぞれ独立して、-O-,-CH-のいずれかを表し、
L
1及びL
2は、それぞれ独立して、0以上3以下の整数を表わし、
m
1~m
4は、各式における構成単位の合計数をそれぞれ表し、10以上1000以下の自然数であり、
Xは、単結合、又は、下記式(2)で表される構造式のうちいずれかであり、
【化26】
(式中、R
11、及び、R
12は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
11及びR
12が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、
a、及び、bは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。)
[35]Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~3のアルキレン基であり、
J
1は、それぞれ独立して、0以上2以下の整数を表わし、
K
12は、それぞれ独立して、0以上2以下の整数を表わす、
上記[34]に記載のポリシロキサン化合物の製造方法。
[36]前記Xが、R
11及びR
12が互いに結合して形成されたフルオレン環構造を表すシロキサン構成単位、及び/又は、前記Yが、R
21及びR
22が互いに結合して形成されたフルオレン環構造を表すポリカーボート構成単位を有する、上記[34]又は[35]に記載のポリシロキサン化合物の製造方法。
【0019】
[37]ジアルキルジアリールオキシシラン、ジアリールジアリールオキシシラン、及び、モノアルキルモノアリールジアリールオキシシランの少なくともいずれかを含むジアリールオキシシラン化合物と、芳香族ジオール化合物とを重合させる重合工程を有し、
前記重合工程において、前記ジアリールオキシシラン化合物と芳香族ジオール化合物とを、溶融状態で減圧下、アリールアルコールを除去しながらエステル交換触媒を用いて重合させ、前記エステル交換触媒の前記芳香族ジオール化合物に対する量が、モル比で0.01μmol/mol~16,000μmol/molであり、
下記式(1)で表される構成単位を含む、重量平均分子量10,000~300,000のポリアリーレンシロキサン化合物を製造する、ポリシロキサン化合物の製造方法。
【化27】
(式中、R
1、及び、R
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わし、
R
3~R
10は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を示し、
mは、10以上1000以下の自然数を表わし、
Xは、下記式(2)で表される構造式のうちいずれかであり、
【化28】
(式中、R
11、及び、R
12は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
11及びR
12が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、
a、及び、bは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。)
[38]前記重合工程における反応温度が、150℃以上300℃以下の範囲である、上記[34]~[37]のいずれか一項に記載のポリシロキサン化合物の製造方法。
[39]前記重合工程において、反応圧力が101,300Pa以下である、上記[34]~[38]のいずれか一項に記載のポリシロキサン化合物の製造方法。
[40]前記重合工程において、反応圧力を400Pa以下まで次第に低下させる減圧工程をさらに有する、上記[34]~[39]のいずれか一項に記載のポリシロキサン化合物の製造方法。
[41]前記重合工程において、前記エステル交換触媒の前記芳香族ジオール化合物に対する量が、モル比で0.1~100μmol/molである、上記[34]~[40]のいずれか一項に記載のポリシロキサン化合物の製造方法。
[42]前記エステル交換触媒が、アルカリ金属化合物及び/またはアルカリ土類金属化合物を含む、上記[34]~[41]のいずれか一項に記載のポリシロキサン化合物の製造方法。
[43]前記アルカリ金属化合物及び/またはアルカリ土類金属化合物が、炭酸塩、水酸化物、酸化物、アルコキシ化合物のいずれか1種以上を含む、上記[41]に記載のポリシロキサン化合物の製造方法。
[44]前記アルカリ金属化合物及び/またはアルカリ土類金属化合物が、炭酸塩である、上記[42]に記載のポリシロキサン化合物の製造方法。
[45]前記重合工程において溶媒を使用しない、上記[34]~[44]のいずれか一項に記載のポリシロキサン化合物の製造方法。
[46]前記重合工程において用いられる、前記ジアリールオキシシラン化合物と前記芳香族ジオール化合物とのモル比が0.9以上1.2以下である、上記[34]~[45]のいずれか一項に記載のポリシロキサン化合物の製造方法。
[47]前記重合工程において、200℃よりも高い反応温度、及び/又は、減圧下で、前記オキシシラン化合物又は前記ジアリールオキシシラン化合物と、前記ジオール化合物又は前記芳香族ジオール化合物とを重合させる、上記[34]~[46]のいずれか一項に記載のポリシロキサン化合物の製造方法。
【0020】
[48]式(1-1)~(1-4)のいずれかで表される構成単位を含み、重量平均分子量5,000~300,000であるとともに、式(5-4)で表される環状体の合計含有量が4.0重量%以下である、ポリシロキサン化合物。
【化29】
(式(1-1)~(1-4)中、R
1、及び、R
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わし、
R
3~R
10及びR
30~R
33は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を示し、
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、
J
1は、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
K
1は、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
A
1及びA
2は、それぞれ独立して、-O-,-CH-のいずれかを表し、
L
1及びL
2は、それぞれ独立して、0以上3以下の整数を表わし、
Xは、単結合、又は、下記式(2)で表される構造式のうちいずれかであり、
【化30】
(式中、R
11、及び、R
12は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
11及びR
12が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、
a、及び、bは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。)
【化31】
(式(5-4)中、式(5-4)で表される構成単位と他の構成単位との配置は任意であり、mの値の合計は2~10であり、
R
1、及び、R
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わし、
R
3~R
10は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を示し、
X
1及びX
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、
i及びiiは、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
mは、2~10の整数を表わし、
Xは、単結合、又は、下記式(2)で表される構造式のうちいずれかであり、
【化32】
(式(2)中、R
11、及び、R
12は各々独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
11及びR
12が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、
a、及び、bは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。))
[49]式(6-1)~(6-2)の環状体の合計含有量が4.0重量%以下である、上記[48]に記載のポリシロキサン化合物。
【化33】
(式(6-1)及び(6-2)中、
R
1、及び、R
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わし、
R
3~R
10及びR
30~R
33は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を示し、
X
1及びX
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、
i及びiiは、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、
nは2~10の整数を表わし、
Xは、単結合、又は、下記式(2)で表される構造式のうちいずれかであり、
【化34】
(式(2)中、R
11、及び、R
12は各々独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
11及びR
12が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、
a、及び、bは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。)
[50]1%質量減少熱分解温度が、415℃以下である、上記[48]又は[49]に記載のポリシロキサン化合物。
[51]上記[34]~[46]のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたポリシロキサン化合物又は上記[48]~[50]のいずれか一項に記載のポリシロキサン化合物、及び、ポリカーボネート樹脂を含有する、組成物。
[52]前記組成物における、総Si量が、0.1~20質量%である、上記[51]に記載の組成物。
[53]前記組成物における280℃、160kgfの条件で測定したQ値であるQ
1が、前記組成物に含まれる前記ポリカーボネート樹脂のみを同一条件で測定したQ値であるQ
2の120%以上である、上記[51]及び[52]のいずれか一項に記載の組成物。
[54]上記[34]~[46]のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたポリシロキサン化合物又は上記[48]~[50]のいずれか一項に記載のポリシロキサン化合物を成形して得られる成形体。
[55]上記[34]~[46]のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたポリシロキサン化合物又は上記[48]~[50]のいずれか一項に記載のポリシロキサン化合物を含む、光学レンズ。
【発明の効果】
【0021】
本発明のポリカーボネート共重合体の製造方法によれば、溶融時の流動性が高い、シロキサン構成単位を有するポリカーボネート共重合体を製造できる。さらに、本発明によれば、このように優れた特徴を有するポリカーボネート共重合体、ポリカーボネート共重合体を含有する組成物、及び、ポリカーボネート共重合体を成形して得られる成形体も実現できる。
【0022】
また、本発明のポリカーボネート共重合体の製造方法、及び、ポリアリーレン化合物の製造方法によれば、酸などの環境負荷の高い副生成物を生じさせず、また溶媒を必要とせずにポリアリーレンシロキサン等の目的化合物を効率的に製造できる。本発明は、また、優れた性状のポリアリーレンシロキサン等のポリアリーレン化合物を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[I.ポリカーボネート共重合体]
本発明におけるポリカーボネート共重合体の製造方法は、いずれも詳細を後述する、所定のジアリールオキシシラン化合物と所定のジアルコキシシラン化合物と所定のケイ素化合物(シロキサン化合物)から選択される少なくとも一つ以上のシラン系化合物と、カーボネート化合物と、芳香族ジオール化合物とを、エステル交換触媒の存在下、重合させる重合工程を有する。
【0024】
上述の重合反応を概略的に示すと、以下の通りである。例えば、シラン系化合物の一例である2つのメチル基とフェノキシ基とを有するジアリールオキシシラン化合物(Si(CH
3)
2(OPh)
2)と、カーボネート化合物の一例であるジフェニルカーボネート(PhO‐CO‐OPh)と、芳香族ジオール化合物の一例であるビスフェノールAとを反応させると、以下のポリカーボネート共重合体が得られる。
すなわち、例えば下記式(A)の反応により生成されるシロキサン構成単位と、例えば下記式(B)の反応により生成されるポリカーボート構成単位とを有する、ポリカーボネート共重合体である。
この重合反応においては、下記の通り、副生成物として、カーボネート化合物由来のアルコール、例えば、カーボネート化合物としてジアリールカーボネートを用いた場合にはフェノール(PhOH)等のアリールアルコールが生じる。そこで、重合工程においては、上述の各成分の混合物を溶融させた状態で、減圧下、副生成物であるアルコール、例えば、フェノール等のアリールアルコールを除去しながら重合反応を進行させる。
【化35】
【化36】
以下、本発明に係るポリカーボネート共重合体の製造方法について、詳細に説明する。
【0025】
<1.ポリカーボネート共重合体の製造方法>
[(I)シラン系化合物]
重合工程において用いられるシラン系化合物は、例えば上記式(A)に示されるように、ポリカーボネート共重合体におけるシロキサン構成単位を形成するために用いられる。シラン系化合物の種類について、詳細を後述する、-OSi(R1R2)O-部位を含むシロキサン構成単位をポリカーボネート共重合体の主鎖に形成可能であれば特に限定されないが、所定のジアリールオキシシラン化合物と、所定のジアルコキシシラン化合物と、所定のケイ素化合物(シロキサン化合物)とから選択される。
【0026】
すなわち、重合工程においては、詳細を後述するジアリールオキシシラン化合物の少なくともいずれか一つと、ジアルコキシシラン化合物の少なくともいずれか一つと、ケイ素化合物の少なくとも一つのいずれかを含むシラン系化合物が用いられる。シラン系化合物として、複数のジアリールオキシシラン化合物を併用しても良く、複数のジアルコキシシラン化合物を併用しても良く、複数のケイ素化合物を併用しても良く、また、ジアリールオキシシラン化合物とケイ素化合物の混合物、ジアルコキシシラン化合物とケイ素化合物との混合物、ジアリールオキシシラン化合物とジアルコキシシラン化合物との混合物、を用いても良い。以下、ジアリールオキシシラン化合物について説明する。
【0027】
(A-1)ジアリールオキシシラン化合物
ジアリールオキシシラン化合物として、ジアルキルジアリールオキシシラン、ジアリールジアリールオキシシラン、及び、モノアルキルモノアリールジアリールオキシシランが挙げられる。すなわち、重合工程においては、これらのいずれか一つ、あるいは複数をシラン系化合物として用いても良い。
【0028】
ジアリールオキシシラン化合物を一般式Si(RaRb)(OAr)2で表したとき、RaとRbは、それぞれ独立して、アルキル基とアリール基から選択される。RaとRbは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい合計炭素数1~20のアルキル基、及び、合計炭素数6~30のアリール基であることが好ましい。より好ましくは、Ra及びRbが、置換基を有してもよいアルキル基である場合、合計炭素数が1~10であることが好ましく、合計炭素数が1~6であることがより好ましく、合計炭素数が1又は2であることが特に好ましい。
また、Ra及びRbが、置換基を有してもよいアリール基である場合、合計炭素数が6~20であることが好ましく、合計炭素数が6~12であることがより好ましく、合計炭素数が6~8であることが特に好ましい。
【0029】
上述の置換基としては、水酸基、ハロゲン、アミノ基、ビニル基、カルボキシル基、シアノ基、(メタ)アクリルオキシ基、グリシジルオキシ基、メルカプト基等が挙げられる。
式(1)におけるRa及びRbの好ましい具体例としては、メチル基、フェニル基、ビニル基、及び、プロピル基が挙げられる。
【0030】
なお、上記式(A)からも明らかであるように、シラン化合物のアリールオキシ基(OAr基)は、ポリカーボネート共重合体のポリマー鎖に導入されるものではなく、例えばフェノール等の副生成物(ArOH)を生じさせる。このため、アリールオキシ基の種類については、特に限定されない。ただし、重合工程における副生物をなるべく容易に反応系から取り除けるように、アリールオキシ基は、極性と分子量の低いことが好ましく、例えば、フェノキシ基である。
【0031】
ジアルキルジアリールオキシシランの具体例としては、ジメチルジフェノキシシラン、メチルエチルジフェノキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン等が挙げられ、ジアリールジアリールオキシシランの具体例としては、ジフェニルジフェノキシシラン等が挙げられる。また、モノアルキルモノアリールジアリールオキシシランの具体例としては、メチルフェニルフェノキシシラン等が挙げられる。
【0032】
(A-2)ジアルコキシシラン化合物
ジアルコキシシラン化合物として、ジアルキルジアルコキシシラン、ジアリールジアルコキシシラン、及び、モノアルキルモノアリールジアルコキシシランが挙げられる。すなわち、重合工程においては、これらのいずれか一つ、あるいは複数をシラン系化合物として用いても良い。
【0033】
ジアルコキシシラン化合物を一般式Si(RaRb)(ORC)2で表したとき、RaとRbは、それぞれ独立して、(A-1)ジアリールオキシシラン化合物の欄に記載のRaとRbと同じ、アルキル基とアリール基から選択される。
なお、上記式(A)からも明らかであるように、シラン化合物のアルコキシ基(ORC基)は、ポリカーボネート共重合体のポリマー鎖に導入されるものではなく、例えばメタノール等の副生成物(MeOH)を生じさせる。このため、アルコキシ基の種類については、特に限定されない。ただし、重合工程における副生物をなるべく容易に反応系から取り除けるように、アルコキシ基(ORC基)は、例えば、メトキシ基である。
【0034】
ジアルキルジアルコキシシランの具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン等が挙げられ、ジアリールジアルコキシシランの具体例としては、ジフェニルジメトキシシラン等が挙げられる。また、モノアルキルモノアリールジアルコキシシランの具体例としては、メチルフェニルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0035】
(B)ケイ素化合物(シロキサン化合物)
以下、ケイ素化合物について説明する。ケイ素化合物としては、所定の環状シロキサン化合物と直鎖状シロキサン化合物とが挙げられる。すなわち、重合工程においては、これらのいずれかをシラン系化合物として用いても良い。
【0036】
(B-1)環状シロキサン化合物
重合工程において用いられるシロキサン化合物として、下記式(5)で表される環状シロキサン化合物が挙げられる。
【化37】
式(5)において、R
c及びR
dは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、又は、アリール基を表わす。式(5)におけるR
c及びR
dは、それぞれ、置換基を有してもよい合計炭素数1~20のアルキル基、又は、合計炭素数6~30のアリール基であることが好ましい。
R
c及びR
dが、置換基を有してもよいアルキル基である場合、合計炭素数が1~10であることが好ましく、合計炭素数が1~6であることがより好ましく、合計炭素数が1又は2であることが特に好ましい。
また、R
c及びR
dが、置換基を有してもよいアリール基である場合、合計炭素数が6~20であることが好ましく、合計炭素数が6~12であることがより好ましく、合計炭素数が6~8であることが特に好ましい。
【0037】
上述の置換基としては、水酸基、ハロゲン、アミノ基、ビニル基、カルボキシル基、シアノ基、(メタ)アクリルオキシ基、グリシジルオキシ基、メルカプト基等が挙げられる。
式(5)におけるRc及びRdの好ましい具体例としては、メチル基、フェニル基、ビニル基、及び、プロピル基が挙げられる。
【0038】
環状シロキサン化合物はシロキサン構造を有しており、シロキサン構造として、上述のRc基、及び、Rd基を有する-OSi(RcRd)O-構造が挙げられる。重合工程において、このような環状シロキサン化合物の-OSi(RcRd)O-部位を、詳細を後述するポリカーボネート共重合体に対して導入する。
【0039】
式(5)において、nは、3以上30以下の整数を表わす。式(5)におけるnの値は、好ましくは、3以上15以下であり、より好ましくは、3以上10以下であり、さらに好ましくは、3以上8以下であり、特に好ましくは、3以上5以下である。
【0040】
式(5)で表される環状シロキサン化合物の分子量は、2,000以下であることが好ましく、1,600以下であることがより好ましく、1,200以下であることがさらに好ましく、1,000以下であることが特に好ましい。また、式(5)で表される環状シロキサン化合物の分子量は、例えば、100以上であり、好ましくは150以上であり、より好ましくは200以上である。
【0041】
(B-2)直鎖状シロキサン化合物
重合工程において用いられるシロキサン化合物として、下記式(6)で表される直鎖状シロキサン化合物も挙げられる。
【化38】
式(6)において、R
e及びR
fは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基、又はアリール基を表わす。式(6)におけるR
e及びR
fは、それぞれ、置換基を有してもよい合計炭素数1~20のアルキル基、又は、合計炭素数6~30のアリール基であることが好ましい。
R
e及びR
fが、置換基を有してもよいアルキル基である場合、合計炭素数が1~10であることが好ましく、合計炭素数が1~8であることがより好ましく、合計炭素数が1又は2であることが特に好ましい。
また、R
e及びR
fが、置換基を有してもよいアリール基である場合、合計炭素数が6~20であることが好ましく、合計炭素数が6~12であることがより好ましく、合計炭素数が6~8であることが特に好ましい。
【0042】
上述の置換基としては、水酸基、ハロゲン、アミノ基、ビニル基、カルボキシル基、シアノ基、(メタ)アクリルオキシ基、グリシジルオキシ基、メルカプト基等が挙げられる。
式(6)におけるRe及びRfの好ましい具体例としては、メチル基、フェニル基、ビニル基、及び、プロピル基が挙げられる。
【0043】
直鎖状シロキサン化合物もまた、シロキサン構造を有しており、シロキサン構造として、上述のRe基、及び、Rf基を有する-OSi(ReRf)O-構造が挙げられる。重合工程において、直鎖状シロキサン化合物の-OSi(ReRf)O-部位を、詳細を後述するポリカーボネート共重合体に対して導入する。
【0044】
式(6)において、mは、2以上10,000以下の整数を表わす。式(6)におけるmの値は、好ましくは、10以上7,000以下であり、より好ましくは、100以上2,000以下であり、さらに好ましくは、200以上500以下である。
【0045】
式(6)において、Xは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有してもよい合計炭素数1~10のアルコキシ基、置換基を有してもよく、酸素原子又は窒素原子を有していてもよい合計炭素数1~10の炭化水素基、又は、置換基を有してもよいアミノ基を表わす。好ましくは、Xは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有してもよい合計炭素数1~10のアルコキシ基、置換基を有してもよく、酸素原子又は窒素原子を有していてもよい合計炭素数1~10のアルキル基のいずれかであり、より好ましくは、水酸基、又は、置換基を有してもよい合計炭素数1~10のアルキル基であり、さらに好ましくは、水酸基、又は、合計炭素数1~5のアルキル基である。
上述のXの置換基としては、水酸基、ハロゲン、アミノ基、ビニル基、カルボキシル基、シアノ基、(メタ)アクリルオキシ基、グリシジルオキシ基、メルカプト基等が挙げられる。
【0046】
式(6)で表される直鎖状シロキサン化合物の分子量が60,000以下であることが好ましく、56,000以下であることがより好ましく、50,000以下であることがさらに好ましく、45,000以下であることが特に好ましい。また、式(6)で表される直鎖状シロキサン化合物の分子量は、例えば、1,000以上であり、好ましくは5,000以上であり、より好ましくは10,000以上である。
【0047】
上述の式(5)の環状シロキサン化合物、及び、下記式(6)で表される直鎖状シロキサン化合物のうち、単一のシロキサン化合物のみが用いられてもよく、2種類以上のシロキサン化合物が混合物として用いられても良い。また、式(5)又は式(6)のシロキサン化合物を、上述の(A)ジアリールオキシシラン化合物と併用しても良い。
なお、上述のシラン系化合物は、公知の手法により合成可能であり、また、市販されているものを用いても良い。
【0048】
[(II)カーボネート化合物]
カーボネート化合物は、重合反応の概略に関する上記式(B)に示されるように、ポリカーボネート共重合体に、ポリカーボート構成単位のカルボニル基(-CO-基)を導入するために用いられる。すなわち、一般式RO-CO-ORで表されるカーボネート化合物(Rはそれぞれ独立に、アリール基、アルキル基、及び、アラルキル基から選択される)の2つの-OR基、例えば、カーボネート化合物が一般式ArO-CO-OArで表されるジアリールカーボネートである場合の2つのアリールオキシ基(ArO-基)は、ポリカーボネート共重合体のポリマー鎖に導入されるものではない。これらの-OR基は、副生成物として、カーボネート化合物由来のアルコールを生じさせるものであり、例えば、アリールオキシ基(ArO-基)を有するカーボネート化合物(モノアリールカーボネート、あるいは、ジアリールカーボネート)は、フェノール等の副生成物であるアリールアルコール(ArOH)を生じさせる。
【0049】
このため、カーボネート化合物のアリール基、アルキル基、及び、アラルキル基の種類については、特に限定されない。ただし、重合工程における副生物をなるべく容易に反応系から取り除けるように、カーボネート化合物においては、上記一般式の-OR基がアリールオキシ基(あるいは、上記一般式RO-CO-ORの-R基がアリール基)であることが好ましく、さらに、カーボネート化合物の極性と分子量の低いことが好ましく、上記一般式の-OR基は、例えば、フェノキシ基である。
以上より、カーボネート化合物においては、上述のAr基のいずれか、あるいは両方が、合計炭素数10以下のアリール基、例えば、フェニル基、ベンジル基等であることが好ましい。すなわち、カーボネート化合物の好ましい具体例としては、ジフェニルカーボネート、ジベンジルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレジルカーボネート等のジアリールカーボネートが挙げられるものの、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等のジアルキルカーボネート、あるいは、モノアリールモノアルキルカーボネートであっても良い。
なお、上述のカーボネート化合物は、公知の手法により合成可能であり、また、市販されているものを用いても良い。
【0050】
[(III-1)芳香族ジオール化合物]
重合工程において用いられる芳香族ジオール化合物は、重合反応の概略に関する上記式(A)と(B)にて示されるように、ポリカーボネート共重合体の主鎖を構成するために用いられる。
従って、重合工程で用いられる芳香族ジオール化合物としては、ポリカーボネート樹脂の材料となり得るモノマーが好ましく、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、4,4’-スルホニルジフェノール、2,2’-ジフェニル-4,4’-スルホニルジフェノール、2,2’-ジメチル-4,4’-スルホニルジフェノール、1,3-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,8-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、4,4’-(1,3-アダマンタンジイル)ジフェノール、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEF)、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキ-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン(BNE)、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)ナフタレン-2-イル)フルオレン(BNEF)、2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン、2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジ(フェナントレン-9-イル)-1,1´-ビナフタレン等が挙げられる。
これらの中でも、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEF)、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン(BPPEF)、および9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン(BPMEF)が好ましく、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEF)、および9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン(BPPEF)がより好ましい。
【0051】
[(III-2)脂環式ジオール化合物]
重合工程で用いられる脂環式ジオール化合物としては以下のものが挙げられる。
すなわち、下記式で表されるイソソルビド(上記式(1-3)にて、L
1,L
2が1であり、A
1,A
2が酸素原子であり、J
1,K
1、J
2及びK
2が0である化合物);
【化39】
下記式で表されるスピログリコール(SPG);
【化40】
下記式で表されるデカヒドロ-1、4:5、8-ジメタノナフタレンジオール(D-NDM、下記式でRが水素のもの)等;
【化41】
(Rは水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。好ましいものはRが水素)
下記式で表されるシクロヘキサンジメタノール;
【化42】
下記式で表されるペンタシクロペンタデカンジメタノール(PCPMD);
【化43】
下記式で表されるトリシクロデカンジメタノール(TCDDM);
【化44】
下記式で表される1,3-アダマンタンジメタノール等のアダマンタンジメタノール:
【化45】
等である。
ポリカーボネート共重合体の主鎖においては、これらの脂環式ジオールから誘導される構成単位が含まれることが好ましい。
【0052】
上述のポリカーボネート共重合体は、流動性が高く、成形体の形成に適していて、例えば、薄物のシート、フィルム等の成形においても好適に用いられる。
【0053】
[(IV)エステル交換触媒]
重合工程において用いられるエステル交換触媒としては、塩基性化合物を含む触媒が好ましい。塩基性化合物触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等を含むものがあげられ、このような化合物としては、アルカリ金属、及び、アルカリ土類金属化合物等の有機酸塩、炭酸塩等の無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物あるいはアルコキシド等が挙げられる。または、塩基性化合物触媒として、4級アンモニウムヒドロキシド及びそれらの塩、アミン類等が用いられる。また、これらの化合物は、単独で、もしくは複数の種類を組み合わせて用いることができる。
エステル交換触媒は、上述の塩基性化合物触媒のうち、アルカリ金属炭酸塩、又は、アルカリ金属水酸化物を含むことがより好ましい。より好ましいエステル交換触媒の具体例として、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化セシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等を含むものが挙げられる。
なお、上述のエステル交換触媒は、公知の手法により調製可能であり、また、市販されているものを用いても良い。
【0054】
[(V)重合工程]
重合工程においては、少なくとも、上述の(I)シラン系化合物、(II)カーボネート化合物、及び、(III)芳香族ジオール化合物を、(IV)エステル交換触媒の存在下で重合させる。この重合反応においては、上記各成分の混合物を溶融させ、溶融状態として減圧下、副生成物であるカーボネート化合物由来のアルコール、例えば、アリールアルコールを除去する。このように反応条件を設定することにより、重合反応を効率的に進行させることができる。
【0055】
重合工程においては、400Pa以下の圧力下で重合反応を進行させることが好ましい。すなわち、重合反応における圧力は、400Pa以下の範囲内であることが好ましい。
重合工程においては、ある程度の時間、減圧させず常圧の状態、あるいは、さほど減圧させていない状態を維持した後、系内を減圧させてさらに重合反応を進めることが好ましい。例えば、重合工程においては、当初の大気圧から、27,000Pa、24,000Pa,20,000Pa、16,000Pa、8,000Pa、4,000Pa、2,000Pa、400Pa,400Pa以下といったように、反応圧力を400Pa以下まで次第に低下させることが好ましい。このように、反応系内を段階的に減圧して減圧度を途中から向上させる減圧工程により、原料の留出を抑えつつ、副生成物であるアルコールを効率よく除去できるため好ましい。
【0056】
重合工程の時間は、目的とするポリカーボネート共重合体の種類、圧力、温度などの条件も考慮の上で適宜、定められるが、例えば、重合工程にかける合計時間は5~10時間以内である。より詳しくは、反応系内の減圧前の反応時間が0.5~3時間であり、好ましくは1~2時間であり、減圧後の反応時間が1~5時間であり、好ましくは2~4時間である。
【0057】
重合工程において、上述の重合反応における温度は、150~300℃の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、重合反応の温度は180~290℃であり、さらに好ましくは、200~280℃である。
【0058】
また、上述のシラン系化合物、ジアリールカーボネート、及び、芳香族ジオール化合物の各成分の互いの相溶性は良好であり、重合工程においては、溶媒を使用せずにポリカーボネート共重合体を製造できる。このため、重合工程を簡素化することができる。
【0059】
重合工程において、エステル交換触媒のモル量の芳香族ジオール化合物のモル量に対する比(モル比:すなわち、エステル交換触媒のモル量/芳香族ジオール化合物のモル量の値)は、1.0×10-7~1.0×10-2(mol/mol:0.1~10000μmol/mol、又は、1.0×10-4~10mmol/mol)であることが好ましい。上記モル比は、より好ましくは、1.0×10-7~2.0×10-5mol/mol(又は、0.5~20μmol/mol)である。
【0060】
重合工程において、シラン系化合物に対する芳香族ジオール化合物のモル比(すなわち、シラン系化合物のモル数/芳香族ジオール化合物のモル数の値)は、例えば、0.8~1.3であり、0.9以上1.25以下であることが好ましく、より好ましくは、0.95以上、1.2以下である。
また、重合工程において、ジアリールカーボネートとシラン系化合物の合計モル数に対する芳香族ジオール化合物のモル比(すなわち、(ジアリールカーボネートとシラン系化合物の合計モル数)/芳香族ジオール化合物のモル数の値)は、0.9以上1.2以下であることが好ましく、より好ましくは、0.95以上、1.15以下である。
【0061】
次に、本発明に係るポリカーボネート共重合体について、詳細に説明する。
<2.ポリカーボネート共重合体>
[(I)構成単位]
本発明の製法により製造されるポリカーボネート共重合体は、上述のようにシロキサン構成単位を有するポリマーであり、具体的には以下のものが挙げられる。
すなわちポリカーボネート共重合体は、少なくとも、下記式(1-1)~(1-4)のいずれかで表されるシロキサン構成単位と、詳細を後述するポリカーボネート構成単位とを有するポリマーである。
【化46】
式(1-1)~(1-4)におけるR
1及びR
2を含むシロキサン構造は、上述のジアリールオキシシラン化合物、ジアルキルジアルコキシシラン、又は、ケイ素化合物(シロキサン化合物)から導入される。
【0062】
式(1-1)~(1-4)において、R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わす。
R1及びR2が、置換基を有してもよいアルキル基である場合、合計炭素数が1~10であることが好ましく、合計炭素数が1~4であることがより好ましく、合計炭素数が1又は2であることが特に好ましい。
また、R1及びR2が、置換基を有してもよいアリール基である場合、合計炭素数が6~20であることが好ましく、合計炭素数が6~12であることがより好ましく、合計炭素数が6~8であることが特に好ましい。
【0063】
式(1-1)及び(1-2)において、R3~R10及びR30~R33は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を示す。
R3~R10及びR30~R33が、置換基を有してもよいアルキル基である場合、合計炭素数が1~10であることが好ましく、合計炭素数が1~4であることがより好ましく、合計炭素数が1又は2であることが特に好ましい。
R3~R10及びR30~R33が、置換基を有してもよいアルケニル基である場合、合計炭素数が2~10であることが好ましく、合計炭素数が2~6であることがより好ましく、合計炭素数が2~4であることが特に好ましい。
また、R3~R10及びR30~R33が、置換基を有してもよいアリール基である場合、合計炭素数が6~20であることが好ましく、合計炭素数が6~12であることがより好ましく、合計炭素数が6~8であることが特に好ましい。
【0064】
式(1-1)~(1-3)において、Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、好ましくは炭素数1~3のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1又は2のアルキレン基である。
式(1-1)~(1-3)において、J
1及びK
1は、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、好ましくは0以上3以下の整数であり、より好ましくは0以上2以下の整数であり、例えば1又は2である。
式(1-3)において、A
1及びA
2は、それぞれ独立して、-O-,-CH-のいずれかを表し、
L
1及びL
2は、それぞれ独立して、0以上3以下の整数を表わし、L
1及びL
2は、好ましくは、1又は2である。
式(1-1)及び(1-2)において、Xは、それぞれ独立して、単結合、又は、下記式(2)で表される構造式のうちいずれかである。
【化47】
式(2)中、R
11、及び、R
12は各々独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
11及びR
12が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、
a、及び、bは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。
R
11、及び、R
12は、好ましくは、各々独立に、水素、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~16のアリール基である。
式(2)において、a、及び、bは、各々独立に、0又は1以上5000以下の整数であり、a、及び、bは、好ましくは1000以下の整数であり、より好ましくは500以下の整数であり、さらに好ましくは100以下の整数である。
また、シロキサン構成単位においては、Xが、R
11及びR
12が互いに結合して形成されたフルオレン環構造であることが好ましい。
【0065】
また、シロキサン構成単位は、少なくとも下記式(1)で表されるものを含むことが好ましい。
【化48】
【0066】
式(1)におけるR1及びR2を含むシロキサン構造は、上述のジアリールオキシシラン化合物、ジアルコキシシラン化合物、又は、ケイ素化合物(シロキサン化合物)から導入される。
式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、又は、アリール基を表わす。式(1)におけるR1及びR2は、それぞれ、置換基を有してもよい合計炭素数1~20のアルキル基、又は、合計炭素数6~30のアリール基である。
R1及びR2の好ましい選択肢については、上記式(1-1)~(1-4)のR1及びR2と同様である。
【0067】
上述のR1及びR2の置換基としては、水酸基、ハロゲン、アミノ基、ビニル基、カルボキシル基、シアノ基、(メタ)アクリルオキシ基、グリシジルオキシ基、メルカプト基等が挙げられる。
式(1)におけるR1及びR2の好ましい具体例としては、メチル基、フェニル基、ビニル基、及び、プロピル基が挙げられる。
【0068】
式(1)において、R3~R10の好ましい選択肢については、上記式(1-1)~(1-4)のR3~R10と同様である。
上述のR3~R10の置換基としては、水酸基、ハロゲン、アミノ基、ビニル基、カルボキシル基、シアノ基、(メタ)アクリルオキシ基、グリシジルオキシ基、メルカプト基等が挙げられる。
【0069】
式(1)において、Xは、上記式(1-1及び(1-2)のXと同様である。
【0070】
ポリカーボネート共重合体のポリカーボネート構成単位は、以下の式(3-1)~(3-4)のいずれかで表される。
【化49】
【0071】
(3-1)~(3-2)中、R13~R20及びR40~R51は、各々独立に、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を示す。
R13~R20及びR40~R51が、置換基を有してもよいアルキル基である場合、合計炭素数が1~10であることが好ましく、合計炭素数が1~4であることがより好ましく、合計炭素数が1又は2であることが特に好ましい。
R13~R20及びR40~R51が、置換基を有してもよいアルケニル基である場合、合計炭素数が2~10であることが好ましく、合計炭素数が2~6であることがより好ましく、合計炭素数が2~4であることが特に好ましい。
また、R13~R20及びR40~R51が、置換基を有してもよいアリール基である場合、合計炭素数が6~20であることが好ましく、合計炭素数が6~12であることがより好ましく、合計炭素数が6~8であることが特に好ましい。
【0072】
式(3-1)~(3-3)において、Z
3及びZ
4は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、好ましくは炭素数1~3のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1又は2のアルキレン基である。
式(3-1)~(3-3)において、J
2及びK
2は、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、好ましくは0以上3以下の整数であり、より好ましくは1又は2である。
式(3-3)において、A
1及びA
2は、それぞれ独立して、-O-,-CH-のいずれかを表し、
L
1及びL
2は、それぞれ独立して、0以上3以下の整数を表わし、L
1及びL
2は、好ましくは、0以上2以下である。
式(3-1)~(3-2)において、Yは、それぞれ独立して、単結合、又は、式(4)で表される構造式のうちいずれかである。
【化50】
(式中、R
21、及び、R
22は、各々独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
21及びR
22が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、c、及び、dは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。
R
21、及び、R
22は、好ましくは、各々独立に、水素、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~16のアリール基である。
式(4)において、c、及び、dは、各々独立に、0又は1以上5000以下の整数であり、c、及び、dは、好ましくは1000以下の整数であり、より好ましくは500以下の整数であり、さらに好ましくは100以下の整数である。
また、ポリカーボート構成単位においては、Yが、R
11及びR
12が互いに結合して形成されたフルオレン環構造であることが好ましい。
【0073】
ポリカーボネート構成単位は、少なくとも下記式(3)で表されるものを含むことが好ましい。
【化51】
【0074】
式(3)において、R13~R20の好ましい選択肢については、上記式(3-1)~(3-2)のR3~R10と同様である。
上述のR13~R20の置換基としては、水酸基、ハロゲン、アミノ基、ビニル基、カルボキシル基、シアノ基、(メタ)アクリルオキシ基、グリシジルオキシ基、メルカプト基等が挙げられる。
【0075】
式(3)において、Yは、上記式(3-1)~(3-2)のYと同様である。
【0076】
[(II)ポリカーボネート共重合体の性状]
ポリカーボネート共重合体の重量平均分子量は、10,000~300,000であることが好ましく、10,000~200,000であることがより好ましく、10,000~100,000であることがさらに好ましく、例えば、20,000~80,000であることがより好ましく、さらに好ましくは30,000~70,000であり、特に好ましくは40,000~65,000である。
【0077】
ポリカーボネート共重合体においては、シロキサン構成単位のモル数が1~1000であることが好ましい。また、ポリカーボネート構成単位のモル数が1~1000であることが好ましい。なおこれらのモル数は、いずれも、ポリカーボネート共重合体の一分子中に含まれる構成単位の数であり、より好ましくはそれぞれ10~800であり、さらに好ましくはそれぞれ100~600である。
【0078】
ポリカーボネート共重合体における、シロキサン構成単位とポリカーボート構成単位との合計モル数に占めるシロキサン構成単位の割合は、2.0%以上90%以下であることが好ましい。上述のシロキサン構成単位の割合は、3.0%以上、例えば、3.1%より高く90%以下であることがより好ましく、5%以上90%以下であることがさらに好ましく、8%以上90%以下であることが特に好ましい。
また、ポリカーボネート共重合体をそのまま単独で使用せず、他の樹脂と混合させた組成物として、用いる場合等において、上述のシロキサン構成単位の割合を大幅に高くすると良い場合がある。例えば、上述のシロキサン構成単位の割合が、30%以上、50%以上、あるいは70%以上であり、Si含有量の高いポリカーボネート共重合体は、詳細を後述するように、Siやシロキサン構成単位を含まないポリマーと混合させることより、優れた性能、例えば、高い耐衝撃性と流動性を有する樹脂を実現できる。また、このように、シロキサン構成単位の割合を高める用途が好ましい場合、上述のシロキサン構成単位の割合の上限値は90%に限定されず、例えば、92%、95%、98%等であっても良い。
【0079】
ポリカーボネート共重合体においては、シロキサン構成単位と、ポリカーボネート構成単位とのモル比(すなわち、シロキサン構成単位のモル数:ポリカーボネート構成単位のモル数の比)が、0.01:99.99~99.99:0.01であることが好ましい。上述のモル比は、より好ましくは、30:70~99.9:0.01であるが、他の範囲、例えば、1:99~99:1、10:90~90:10等であっても良い。
【0080】
ポリカーボネート共重合体においては、Q値(280℃、荷重160kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積、×10-2cm3s-1)が、8(×10-2cm3s-1)以上であることが好ましい。Q値は、より好ましくは、20(×10-2cm3s-1)以上であり、さらに好ましくは、40(×10-2cm3s-1)以上であり、特に好ましくは、60(×10-2cm3s-1)以上である。
【0081】
ポリカーボネート共重合体においては、JIS K 7121に準拠したガラス転移温度(Tg)が、例えば40~200℃であり、45~180℃であることが好ましく、50~160℃であることがより好ましい。
【0082】
上述のポリカーボネート共重合体、すなわち、式(1-1)~式(1-4)のいずれかで表されるシロキサン構成単位、及び、式(3-1)~式(3-4)のいずれかで表されるポリカーボート構成単位を有するポリカーボネート共重合体においては、重量平均分子量が1,000以下の低分子量化合物が30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、より好ましくは5.0重量%以下であり、1.5重量%以下であることが特に好ましく、さらに好ましくは、1.0重量%未満である。重量平均分子量が1,000以下の低分子量化合物が多く含まれるポリカーボネート共重合体は、ディスクや複雑化及び薄肉化した製品を製造するための射出成形等を連続的に行った際に、比較的早い段階で、金型(モールド)を微量の付着物(モールドデポジット)によって汚染する傾向がある。この点、ポリカーボネート共重合体において、重量平均分子量が1,000以下の低分子量化合物の量が1.5質量%未満であれば、金型の汚染は効果的に防止される。
また、ポリカーボネート共重合体における重量平均分子量が1,000以下の低分子量化合物の含有率の下限値は、特に重要でないものの、0.7重量%程度である。ただし、0.001重量%,0.01重量%,あるいは、0.1重量%程度の以上の上記低分子量化合物が含まれていても、ポリカーボネート共重合体の性状、特に光学用途で用いられる場合において問題ない一方、流動性が向上する効果も確認された。このためポリカーボネート共重合体における重量平均分子量が1,000以下の低分子量化合物の含有率の下限値は、0.001重量%,0.01重量%,あるいは、0.1重量%であってもよい。
【0083】
ポリカーボネート共重合体における上述の低分子量化合物の含有率は、詳細を実施例にて後述するように、GPC分析により得られた各成分のピーク面積の比から、不純物である数種類の低分子量化合物の含有量を合計して算出された値である。すなわち、詳細を後述するように、ポリカーボネート共重合体における分子量が1,000以下の低分子量化合物の割合は、所定のGPC分析の条件下におけるリテンションタイム20.5min~21.5minまでの面積/0min~21.5minまでの面積の比より算出される値である。
【0084】
上述のポリカーボネート共重合体、すなわち、式(1-1)~式(1-4)のいずれかで表されるシロキサン構成単位、及び、式(3-1)~式(3-4)のいずれかで表されるポリカーボート構成単位を有するポリカーボネート共重合体においては、以下の式(5-1)~(5-3)で表される環状体の合計含有量が、ポリカーボネート共重合体の全重量を基準として4.0重量%以下であることが好ましく、より好ましくは3.0重量%以下であり、さらに好ましくは2.0重量%以下であり、特に好ましくは1.0重量%以下である。
これらの環状二量体の含有量が上述の範囲内であれば、ポリカーボネート共重合体の性状、特に光学用途で用いられる場合において問題ないといえる。
【化52】
式(5-1)~(5-3)においては、m及びnは、各環状体における(-OSi(R
1R
2)O-)部位を含む構成単位の合計数と、(-OC(=O)O-)部位を含む構成単位の合計数とを表わす。すなわち、式(5-1)の環状体において、(-OSi(R
1R
2)O-)部位を含む構成単位以外の構成単位が含まれる場合、また、式(5-2)の環状体において(-OC(=O)O-)部位を含む構成単位以外の含まれる場合においては、m及びnは、それぞれ、式に示された構成単位の環状体における合計数を示す。特に、式(5-3)は、(-OSi(R
1R
2)O-)部位を含む構成単位と(-OC(=O)O-)部位を含む構成単位とが混在し、例えば、これらが交互に配置された環状体も包含するものであるが、この場合も、m及びnは、それぞれ、式に示された構成単位の環状体における合計数を示す。
式(5-1)中、mは2~10の整数を表わし、好ましくは2~5であり、より好ましくは2又は3であり、さらに好ましくは2である。
式(5-2)中、nは2~10の整数を表わし、好ましくは2~5であり、より好ましくは2又は3であり、さらに好ましくは2である。
式(5-3)中、mの値の合計は1~10、かつnの値の合計は1~10である。そして、m及びnはそれぞれ、好ましくは1~5であり、より好ましくは1又は2であり、さらに好ましくは1である。
式(5-3)において、なお上述のように、式(5-3)の環状体において、(-OSi(R
1R
2)O-)部位を含む構成単位と(-OC(=O)O-)部位を含む構成単位との配置は任意である。
式(5-1)~(5-3)において、X
1及びX
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、好ましくは炭素数1~3のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1又は2のアルキレン基である。
i及びiiは、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、好ましくは0以上3以下の整数であり、より好ましくは1又は2である。
また、式(5-1)~(5-3)において、R
1、R
2、R
3~R
10、R
13~R
20及びXは、式(1-1)及び(1-2)におけるR
1、R
2、R
3~R
10、R
13~R
20及びXとそれぞれ同様である。
【0085】
また、式(5-1)~(5-3)の化合物のそれぞれの具体例として、下記の式(5-1’)~(5-3’)の環状体が挙げられる。
【化53】
式(5-1’)においては、m=2又は3であり、好ましくはm=2であり、式(5-2’)においては、n=2又は3であり、好ましくはn=2であり、式(5-3’)においては、m=1~3のいずれか、n=1~3のいずれか、好ましくはいずれも1又は2、より好ましくはいずれも1である。
【0086】
また、ポリカーボネート共重合体においては、以下の式(6-1)及び(6-2)で表される環状体の合計含有量が、含まれ得る。これらの環状体は、ポリカーボネート共重合体の製造のための重合反応の副反応の結果、生じる環状二量体と考えられる。これらの環状二量体のポリカーボネート共重合体における合計含有量は、ポリカーボネート共重合体の全重量を基準として2.0重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.5重量%以下であり、さらに好ましくは1.0重量%以下であり、特に好ましくは0.5重量%以下である。
【化54】
式(6-1)及び(6-2)において、R
1、R
2、R
3~R
10、R
30~R
33及びXは、式(1-1)及び(1-2)におけるものと同様である。
式(6-1)及び(6-2)において、
X
1及びX
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、好ましくは炭素数1~3のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1又は2のアルキレン基である。
i及びiiは、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、好ましくは0以上3以下の整数であり、より好ましくは1又は2である。
nは、2~10の整数を表わし、好ましくは2~5の整数であり、より好ましくは2又は3、例えば2である。
【0087】
また、ポリカーボネート共重合体に含まれる式(6-1)及び(6-2)で表される環状二量体の合計含有量の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.001重量%,0.01重量%,あるいは、0.1重量%であってもよい。若干量の環状二量体の存在は、ポリカーボネート共重合体の成形時における流動性の向上に貢献し得る。
【0088】
また、式(6-1)及び(6-2)の化合物のそれぞれの具体例として、下記の式(6-1’)及び(6-2’)の環状体が挙げられる。
【化55】
なお、式(6-1’)及び(6-2’)における、
R
1及びR
2、R
3~R
10及びR
30~R
33、Z
1及びZ
2、J
1、K
1及びXは、上述の通りである。
【0089】
ポリカーボネート共重合体においては、1%質量減少熱分解温度が、415℃以下であることが好ましく、より好ましくは、1%質量減少熱分解温度が400℃以下であり、さらに好ましくは、1%質量減少熱分解温度が385℃以下であり、特に好ましくは、1%質量減少熱分解温度が370℃以下である。
【0090】
ポリカーボネート共重合体においては、ポリカーボネート共重合体の全重量を基準としたケイ素原子の合計重量(総Si量)の割合が、0.1~20質量%であることが好ましく、1.0~15質量%であることがより好ましく、2.0~12質量%であることがさらに好ましく、3.0~10質量%(例えば、3.1質量%以上、あるいは3.1質量%超で9.8質量%以下)特に好ましい。
【0091】
次に、本発明に係る組成物、すなわち、上述のポリカーボネート共重合体等を含む組成物について、詳細に説明する。
【0092】
<3.組成物>
本発明の組成物は、上述のポリカーボネート共重合体と、上述のポリカーボネート共重合体には該当しないポリカーボネート樹脂を含む。上述のポリカーボネート共重合体には該当しないポリカーボネート樹脂として、例えば、シロキサン構造を完全に、あるいは実質的に含まないポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0093】
上述のポリカーボネート共重合体には該当しないポリカーボネート樹脂の種類については、分子主鎖中に炭酸エステル結合を含む-[O-R-OCO]-単位(Rが脂肪族基、芳香族基、又は脂肪族基と芳香族基の双方を含むもの、さらに直鎖構造あるいは分岐構造を持つもの)を含むものであれば、特に限定されない。また、上述のポリカーボネート共重合体には該当しないポリカーボネート樹脂は、ポリエステルカーボネートを含んでいても良い。そしてポリエステルカーボネートについても同様に、分子主鎖中に炭酸エステル結合を含む-[O-R-OC]-単位(Rは上述の通り)ものであれば、特に限定されない。
【0094】
ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は、10,000~100,000であることが好ましく、より好ましくは13,000~80,000であり、さらに好ましくは15,000~60,000である。
【0095】
本発明の組成物は、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂、好ましくは熱可塑性樹脂を含んでいても良い。熱可塑性樹脂の種類については特に限定されないが、ポリカーボネート樹脂とポリエステルカーボネート樹脂の他に、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルスルホン、セロファン、芳香族ポリアミド等の各種樹脂が挙げられる。
【0096】
組成物においては、組成物の全重量を基準としたケイ素原子の合計重量(総Si量)の割合が、0.1~20質量%であることが好ましく、0.2~15質量%であることがより好ましく、0.3~10質量%であることが特に好ましい。組成物における総Si量の割合は、上述のポリカーボネート樹脂においてシロキサン構成単位が全構成単位に占める割合や、あるいは、ポリカーボネート樹脂と混合される樹脂の量やSi量によって調整され得る。
例えば、ポリカーボネート共重合体を含む組成物における280℃、160kgfの条件で測定したQ値であるQ1は、その組成物に含まれるポリカーボネート樹脂のみを同一条件で測定したQ値であるQ2に比べて、120%以上である(20%以上高い)値であることが好ましく、組成物全体のQ1の値は、より好ましくは、ポリカーボネートのみのQ2の値に比べて130%以上、さらに好ましくは140%以上であり、特に好ましくは150%以上、例えば160%以上である。
また、例えば、ポリカーボネート共重合体を5質量%含む組成物の場合、280℃、160kgfの条件で測定したQ値であるQ1は、その組成物に含まれるポリカーボネート樹脂のみを同一条件で測定したQ値であるQ2に比べて、140%以上である(40%以上高い)値であることが好ましく、組成物全体のQ1の値は、より好ましくは、ポリカーボネートのみのQ2の値に比べて150%以上、さらに好ましくは160%以上であり、特に好ましくは170%以上、例えば180%以上である。
【0097】
Si含有量の高いポリカーボネート共重合体を用いて、優れた特徴の組成物を製造できる。Si含有量が、例えば0.1質量%以上であるポリカーボネート共重合体等を、実質的にシロキサン構成単位を含まない樹脂、好ましくは、ポリカーボネート樹脂と混合させることより、得られる組成物の優れた耐衝撃性と流動性とを両立させることができる。
【0098】
なお、ポリカーボネート共重合体を含む組成物においては、重合反応の副生成物として生じ得るフェノール系化合物や、反応せずに残存したシラン系化合物、カーボネート化合物及びジオール化合物が含められ得る。不純物であるフェノール系化合物やDPCは、成形体としたときの強度低下や、臭気発生の原因ともなり得るため、これらの含有量は極力少ない程好ましい。このため、フェノール系化合物、シラン系化合物、カーボネート化合物及びジオール化合物の含有量は、検出されないほど低減してもよいが、生産性の観点から、効果を損なわない範囲で、組成物中に含有されていてもよい。また、組成物の全重量を基準として、所定量のモノマー残量、例えば、1~1000重量ppm、好ましくは10~900ppm、より好ましくは20~800ppmのモノマーが含有されることにより、成型時の流動性の向上の効果が得られ、樹脂溶融時に可塑性を良好とし得る。
【0099】
次に、ポリカーボネート共重合体を含む本発明に係る成形体について説明する。
<4.成形体>
本発明に係る成形体は、上述のポリカーボネート共重合体、あるいは、ポリカーボネート共重合体を含む組成物等を成形して得られるものである。成形体の成形方法については、特に限定されず、成形体として、射出成形品、プレス成形品、ブロー成形品、押出成形品、真空成形品、圧空成形品などが挙げられる。
【0100】
また、本発明に係る光学レンズは、成形体は、本発明のポリカーボネート共重合体、あるいは、ポリカーボネート共重合体を含む組成物等を成形して得られるものである。本発明のポリカーボネート共重合体は、光学用途に適したものであり、本発明の光学レンズは、レンズとして適した範囲の屈折率、アッベ数等を有する。
【0101】
[II.ポリシロキサン化合物]
本発明における、ポリアリーレンシロキサン等のポリシロキサン化合物の製造方法は、いずれも詳細を後述する、所定のジアリールオキシシラン化合物等であるオキシシラン化合物と、芳香族ジオール化合物等のジオール化合物とを、エステル交換触媒の存在下、重合させる重合工程を有する。以下、ポリシロキサン化合物の製造方法について説明する。
なお、ポリシロキサン化合物の製造方法においては、上述のポリカーボネート共重合体について記載された原料、反応条件等も採用され得るのであり、上述のポリカーボネート共重合体の製造方法においても、以下のポリシロキサン化合物の製造方法について記載の原料、反応条件等が採用され得る。
【0102】
上述の重合反応を概略的に示すと、以下の通りである。例えば、ジアリールオキシシラン化合物の一例である、2つのメチル基とフェノキシ基とを有するジフェノキシシラン化合物(Si(CH
3)
2(OPh)
2)と、芳香族ジオール化合物の一例であるビスフェノールAとを反応させると、以下のポリアリーレンシロキサン化合物が得られる。
すなわち、下記式(A)の反応により生成されるシロキサン構造を有するポリアリーレンシロキサン化合物が製造される。
この重合反応においては、下記の通り、副生成物として、フェノール(PhOH)等のアリールアルコールが生じる。そこで、重合工程においては、上述の各成分の混合物を溶融させた状態で、減圧下、フェノール等の副生成物であるアリールアルコールを除去しながら重合反応を進行させる。
【化56】
以下、本発明に係るポリシロキサン化合物の製造方法について、詳細に説明する。なお、ポリシロキサン化合物は、ポリアリーレンシロキサン化合物、ポリアルキレンシロキサン化合物、それらの混合物の他、詳細を後述するジアリールオキシシラン化合物由来の構成単位と、ジアルコキシシラン化合物由来の構成単位とをポリマー鎖にいずれも含む形態を包含する。
【0103】
<1.ポリシロキサン化合物の製造方法>[(I)オキシシラン化合物]
ポリシロキサン化合物の製造に用いられるオキシシラン化合物として、ジアリールオキシシラン化合物、及び、ジアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0104】
(A-1)ジアリールオキシシラン化合物
重合工程において用いられるジアリールオキシシラン化合物は、例えば上記式(A)に示されるように、ポリアリーレンシロキサン化合物におけるシロキサン構成単位を形成するために用いられる。
ジアリールオキシシラン化合物として、ジアルキルジアリールオキシシラン、ジアリールジアリールオキシシラン、及び、モノアルキルモノアリールジアリールオキシシランが挙げられる。すなわち、重合工程においては、これらのいずれか一つ、あるいは複数をシラン系化合物として用いても良い。
【0105】
ジアリールオキシシラン化合物を一般式Si(RaRb)(OAr)2で表したとき、RaとRbは、それぞれ独立して、アルキル基とアリール基から選択される。RaとRbは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい合計炭素数1~20のアルキル基、及び、合計炭素数6~30のアリール基のいずれかであることが好ましい。より好ましくは、Ra及びRbが、置換基を有してもよいアルキル基である場合、合計炭素数が1~10であることが好ましく、合計炭素数が1~6であることがより好ましく、合計炭素数が1又は2であることが特に好ましい。
また、Ra及びRbが、置換基を有してもよいアリール基である場合、合計炭素数が6~20であることが好ましく、合計炭素数が6~12であることがより好ましく、合計炭素数が6~8であることが特に好ましい。
【0106】
上述の置換基としては、水酸基、ハロゲン、アミノ基、ビニル基、カルボキシル基、シアノ基、(メタ)アクリルオキシ基、グリシジルオキシ基、メルカプト基等が挙げられる。
式(1)におけるRa及びRbの好ましい具体例としては、メチル基、フェニル基、ビニル基、及び、プロピル基が挙げられる。
【0107】
なお、上記式(A)からも明らかであるように、ジアリールオキシシラン化合物のアリールオキシ基(OAr基)は、ポリアリーレンシロキサン化合物のポリマー鎖に導入されるものではなく、例えばフェノール等の副生成物(ArOH)を生じさせる。このため、アリールオキシ基の種類については、特に限定されない。ただし、重合工程における副生物をなるべく容易に反応系から取り除けるように、アリールオキシ基は、極性と分子量の低いことが好ましく、例えば、フェノキシ基である。
【0108】
ジアルキルジアリールオキシシランの具体例としては、ジメチルジフェノキシシラン、メチルエチルジフェノキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン等が挙げられ、ジアリールジアリールオキシシランの具体例としては、ジフェニルジフェノキシシラン等が挙げられる。また、モノアルキルモノアリールジアリールオキシシランの具体例としては、メチルフェニルフェノキシシラン等が挙げられる。
なお、これらのジアリールオキシシラン化合物は、公知の手法により合成可能であり、また、市販されているものを用いても良い。
【0109】
(A-2)ジアルコキシシラン化合物
ジアルコキシシラン化合物として、ジアルキルジアルコキシシラン、ジアリールジアルコキシシラン、及び、モノアルキルモノアリールジアルコキシシランが挙げられる。すなわち、重合工程においては、これらのいずれか一つ、あるいは複数をシラン系化合物として用いても良い。
【0110】
ジアルコキシシラン化合物を一般式Si(RaRb)(ORC)2で表したとき、RaとRbは、それぞれ独立して、(A-1)ジアリールオキシシラン化合物の欄に記載のRaとRbと同じ、アルキル基とアリール基から選択される。
なお、上記式(A)からも明らかであるように、シラン化合物のアルコキシ基(ORC基)は、ポリカーボネート共重合体のポリマー鎖に導入されるものではなく、例えばメタノール等の副生成物(MeOH)を生じさせる。このため、アルコキシ基の種類については、特に限定されない。ただし、重合工程における副生物をなるべく容易に反応系から取り除けるように、アルコキシ基(ORC基)は、例えば、メトキシ基である。
【0111】
ジアルキルジアルコキシシランの具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン等が挙げられ、ジアリールジアルコキシシランの具体例としては、ジフェニルジメトキシシラン等が挙げられる。また、モノアルキルモノアリールジアルコキシシランの具体例としては、メチルフェニルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0112】
[(II)ジオール化合物]
ポリシロキサン化合物の製造に用いられるジオール化合物として、芳香族ジオール化合物、及び、脂環式ジオール化合物が挙げられる。ジオール化合物として、芳香族ジオール化合物と脂環式ジオール化合物の混合物を用いてもよい。
【0113】
(A-1)芳香族ジオール化合物
重合工程において用いられる芳香族ジオール化合物は、重合反応の概略に関する上記式(A)にて示されるように、ポリアリーレンシロキサン化合物等のポリシロキサン化合物の主鎖を構成するために用いられる。
従って、重合工程で用いられる芳香族ジオール化合物としては、ポリカーボネート樹脂の材料となり得るモノマーが好ましく、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、4,4’-スルホニルジフェノール、2,2’-ジフェニル-4,4’-スルホニルジフェノール、2,2’-ジメチル-4,4’-スルホニルジフェノール、1,3-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,8-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、4,4’-(1,3-アダマンタンジイル)ジフェノール、および1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン等が挙げられる。
その他、ポリカーボネート共重合体に関する上記[(III-1)芳香族ジオール化合物]の欄に記載の芳香族ジオール化合物も、ポリシロキサン化合物の製造のための重合工程において使用できる。
【0114】
(A-2)脂環式ジオール化合物
重合工程において用いられる脂環式ジオール化合物もまた、ポリシロキサン化合物の主鎖を構成するために用いられる。
脂環式ジオール化合物の具体例として、スピログリコール、シクロヘキサンジメタノール、PCPDM、TCDDM等が挙げられる。
その他、ポリカーボネート共重合体に関する上記[(III-2)脂環式ジオール化合物]の欄に記載の脂環式ジオール化合物も、ポリシロキサン化合物の製造のための重合工程において使用できる。
【0115】
[(III)エステル交換触媒]
重合工程において用いられるエステル交換触媒としては、塩基性化合物を含む触媒が好ましい。塩基性化合物触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等を含むものがあげられ、このような化合物としては、アルカリ金属、及び、アルカリ土類金属化合物等の有機酸塩、炭酸塩等の無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物あるいはアルコキシド等が挙げられる。または、塩基性化合物触媒として、4級アンモニウムヒドロキシド及びそれらの塩、アミン類等が用いられる。また、これらの化合物は単独で、もしくは複数の種類を組み合わせて用いることができる。
エステル交換触媒は、上述の塩基性化合物触媒のうち、アルカリ金属炭酸塩、又は、アルカリ金属水酸化物を含むことがより好ましい。より好ましいエステル交換触媒の具体例として、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化セシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等を含むものが挙げられる。
なお、エステル交換触媒は、公知の手法により調製可能であり、また、市販されているものを用いても良い。
【0116】
[(IV)重合工程]
重合工程においては、少なくとも、上述の(I)ジアリールオキシシラン化合物等のジオキシシラン化合物、及び、(II)芳香族ジオール化合物等のジオール化合物を、(III)エステル交換触媒の存在下で重合させる。この重合反応においては、上記各成分の混合物を溶融させ、溶融状態として減圧下、副生成物であるアリールアルコール及び又はアルキルアルコールを除去する。このように反応条件を設定することにより、重合反応を効率的に進行させることができる。
【0117】
重合工程において、上述の重合反応における圧力は、101,300Pa以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、重合反応の圧力は27,000Pa以下であり、さらに好ましくは、400Pa以下である。
重合工程においては、ある程度の時間、減圧させず常圧の状態、あるいは、さほど減圧させていない状態を維持した後、系内を次第に減圧させて、さらに重合反応を進めることが好ましい。このように、反応系内の減圧度を途中から徐々に向上させることにより、反応開始時に必要な作業を常圧下で開始できるとともに、副生成物のアリールアルコール又はアルキルアルコールを反応系外に容易に除去させることが可能となる。具体的には、100~10,000Pa/分程度のペースで減圧工程を進行させることが好ましく、より好ましくは500~7,000Pa/分、さらに好ましくは1,000~4,000Pa/分で減圧させる。
【0118】
以上の記載からも明らかであるように、重合工程においては、常に減圧下で重合反応を行うことが必要ではなく、少なくとも原料が溶融状態になった状態から、好ましくはある程度、重合反応を進行させてから、反応系内を減圧させることが好ましい。例えば、後述するように、重合工程においては次第に反応温度を上げていくことが好ましいため、減圧工程は、ある程度、反応系の温度が昇温されてから、例えば150℃以上、より好ましくは180℃以上に昇温された状態で、開始することが好ましい。
【0119】
重合工程において、上述の重合反応における温度は、150~300℃の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、重合反応の温度は180~290℃、さらに好ましくは、200~280℃である。
このように、重合工程においては、200℃よりも高い反応温度で、オキシシラン化合物又はジアリールオキシシラン化合物と、ジオール化合物又は芳香族ジオール化合物とを重合させることが好ましい。また、減圧下で、重合工程を行うことが好ましい。
また、副生成物のアリールアルコール又はアルキルアルコールを徐々に生じさせ、除去するために、例えば上述の範囲内で設定された反応温度まで、室温から徐々に昇温させることが好ましい。昇温は1~10℃/分程度のペースで進行させることが好ましく、より好ましくは2~8℃/分、さらに好ましくは3~7℃/分で昇温させる。
【0120】
重合工程の時間は、目的とするポリシロキサン化合物の種類、圧力、温度などの反応条件も考慮の上で適宜、定められるが、例えば、重合工程にかける合計時間は1~10時間以内である。より詳しくは、反応系内の上述の減圧の前の反応時間が0.1~3時間であり、好ましくは0.5~2時間であり、減圧後の反応時間が0.5~8時間であり、好ましくは1~6時間である。
【0121】
また、上述のオキシシラン化合物、及び、ジオール化合物の各成分の互いの相溶性は良好であり、重合工程においては、溶媒を使用せずにポリカーボネート共重合体を製造できる。このように、例えばハロゲン系溶媒等の溶媒が不要であるため、重合反応による環境負荷の低減を可能にするとともに、重合工程を簡素化することができる。
【0122】
さらに、重合工程において生じる副生成物は、上述のアリールアルコール、アルキルアルコール等であり、反応系からの除去が容易であるとともに、安全等に配慮して特別な処理を講じる必要のないものである。このため、本発明に係るポリシロキサン化合物の製造方法は、例えば、酸が副生したり、あるいは酸を使用する従来の製法に比べて、環境負荷を低減させることができる。
【0123】
重合工程において、エステル交換触媒のモル量の芳香族ジオール化合物のモル量に対する比(モル比:すなわち、エステル交換触媒のモル量/芳香族ジオール化合物のモル量の値)は、0.01μmol/mol~16,000μmol/mol(1.0×10-8~1.6×10-2)である。本モル比は、0.05~10,000μmol/mol(5.0×10-8~1.0×10-2)であることが好ましく、より好ましくは、0.5~5000μmol/mol(5.0×10-7~5.0×10-3)であり、さらに好ましくは、0.80~1000μmol/mol(8.0×10-7~1.0×10-3)であり、特に好ましくは、1.0~100μmol/mol(1.0×10-6~1.0×10-4)である。
【0124】
重合工程において、ジアリールオキシシラン化合物等のオキシシラン化合物に対する芳香族ジオール化合物等のジオール化合物のモル比(すなわち、オキシシラン化合物のモル数/ジオール化合物のモル数の値)は、例えば0.8~1.3であり、0.9以上1.2以下であることが好ましく、より好ましくは、0.95以上1.18以下であり、さらに好ましくは、1.00以上1.16以下である。
【0125】
次に、本発明に係るポリシロキサン化合物について、詳細に説明する。
[(V)ポリシロキサン化合物]
本発明の製法により製造されるポリシロキサン化合物は、上述のようにシロキサン構成単位を有するポリマーであり、具体的には以下のものが挙げられる。
すなわちポリアリーレンシロキサン化合物は、少なくとも、下記式(1-1’)~(1-4’)のいずれかで表されるシロキサン構成単位を有するポリマーである。
【化57】
【0126】
式(1-1’)~(1-4’)において、R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わす。
R1及びR2が、置換基を有してもよいアルキル基である場合、合計炭素数が1~10であることが好ましく、合計炭素数が1~4であることがより好ましく、合計炭素数が1又は2であることが特に好ましい。
また、R1及びR2が、置換基を有してもよいアリール基である場合、合計炭素数が6~20であることが好ましく、合計炭素数が6~12であることがより好ましく、合計炭素数が6~8であることが特に好ましい。
【0127】
式(1-1’)及び(1-2’)において、R3~R10は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルコキシ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を示す。
R3~R10が、置換基を有してもよいアルキル基である場合、合計炭素数が1~10であることが好ましく、合計炭素数が1~4であることがより好ましく、合計炭素数が1又は2であることが特に好ましい。
R3~R10が、置換基を有してもよいアルケニル基である場合、合計炭素数が2~10であることが好ましく、合計炭素数が2~6であることがより好ましく、合計炭素数が2~4であることが特に好ましい。
また、R3~R10が、置換基を有してもよいアリール基である場合、合計炭素数が6~20であることが好ましく、合計炭素数が6~12であることがより好ましく、合計炭素数が6~8であることが特に好ましい。
【0128】
式(1-1’)~(1-3’)において、Z
1は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、好ましくは炭素数1~3のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1又は2のアルキレン基である。
式(1-1’)~(1-3’)において、J
1及びK
1は、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、好ましくは0以上3以下の整数であり、より好ましくは0以上2以下の整数であり、例えば1又は2である。
式(1-3’)において、A
1及びA
2は、それぞれ独立して、-O-,-CH-のいずれかを表し、
L
1及びL
2は、それぞれ独立して、0以上3以下の整数を表わし、L
1及びL
2は、好ましくは、1又は2である。
式(1-1’)及び(1-2’)において、Xは、それぞれ独立して、単結合、又は、下記式(2)で表される構造式のうちいずれかである。
【化58】
式(2)中、R
11、及び、R
12は各々独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表わすか、R
11及びR
12が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい炭素数1~20の炭素環または複素環を表わし、
a、及び、bは、それぞれ独立して、0又は1以上5000以下の整数を表わす。
R
11、及び、R
12は、好ましくは、各々独立に、水素、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~16のアリール基である。
式(2)において、a、及び、bは、各々独立に、0又は1以上5000以下の整数であり、a、及び、bは、好ましくは1000以下の整数であり、より好ましくは500以下の整数であり、さらに好ましくは100以下の整数である。
また、シロキサン構成単位においては、Xが、R
11及びR
12が互いに結合して形成されたフルオレン環構造であることが好ましい。
【0129】
また、シロキサン構成単位は、少なくとも下記式(1’)で表されるものを含むことが好ましい。
【化59】
【0130】
式(1’)におけるR1及びR2を含むシロキサン構造は、上述のオキシシラン化合物から導入される。
式(1’)において、R1及びR2の好ましい選択肢については、上記式(1-1’)~(1-4’)のR1及びR2と同様である。
【0131】
上述のR1及びR2の置換基としては、水酸基、ハロゲン、アミノ基、ビニル基、カルボキシル基、シアノ基、(メタ)アクリルオキシ基、グリシジルオキシ基、メルカプト基等が挙げられる。
式(1’)におけるR1及びR2の好ましい具体例としては、メチル基、フェニル基、ビニル基、及び、プロピル基が挙げられる。
【0132】
式(1’)において、R3~R10の好ましい選択肢については、上記式(1-1’)~(1-4’)のR1及びR2と同様である。
上述のR3~R10の置換基としては、水酸基、ハロゲン、アミノ基、ビニル基、カルボキシル基、シアノ基、(メタ)アクリルオキシ基、グリシジルオキシ基、メルカプト基等が挙げられる。
【0133】
式(1’)において、mは、10以上1,000以下の整数を表わす。式(1’)におけるmの値は、好ましくは、20以上800以下であり、より好ましくは30以上500以下である。
【0134】
式(1)において、Xは、上記式(1-1’)及び(1-2’)のR1及びR2と同様である。
【0135】
ポリアリーレンシロキサン化合物等のポリシロキサン化合物の重量平均分子量は、5,000~300,000であることが好ましく、10,000~300,000であることがより好ましく、10,000~200,000であることがさらに好ましく、10,000~100,000であることが特に好ましく、例えば、20,000~90,000であり、さらに好ましくは、30,000~80,000であり、特に好ましくは、40,000~70,000である。
【0136】
ポリアリーレンシロキサン化合物等のポリシロキサン化合物においては、JIS K 7121に準拠したガラス転移温度(Tg)が、例えば40~200℃であり、45~160℃であることが好ましい。
【0137】
上述のポリシロキサン化合物、すなわち、式(1-1)~式(1-4)及び式(1-1’)~式(1-4’)のいずれかで表されるシロキサン構成単位を有するポリシロキサン化合物においては、重量平均分子量は、5,000~300,000であるとともに、以下の式(5-4)で表される環状体の合計含有量が、ポリシロキサン化合物の全重量を基準として4.0重量%以下であることが好ましく、より好ましくは3.0重量%以下であり、さらに好ましくは2.0重量%以下であり、特に好ましくは1.0重量%以下である。
これらの分子量の小さい環状体、例えば環状二量体の合計含有量が上述の範囲内であれば、ポリシロキサン化合物の性状、特に光学用途で用いられる場合において良好であるといえる。
【化60】
式(5-4)においては、式(5-4)で表される構成単位と他の構成単位との配置は任意である。すなわち、式(5-4)として構成が明示されている構成単位以外の構成単位が含まれ得るものの、いずれの場合にも、mの値の合計は2~10であり、好ましくは2~5であり、より好ましくは2又は3であり、例えば2である。
R
1、R
2、R
3~R
10、及び、Xは、式(1-1)及び式(1-2)のものと同様である。
式(5-4)において、X
1及びX
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、好ましくは炭素数1~3のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1又は2のアルキレン基である。
式(5-4)において、i及びiiは、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、好ましくは0以上3以下の整数であり、より好ましくは0以上2以下の整数であり、例えば1又は2である。
【0138】
ポリシロキサン化合物における分子量の小さい環状体も、ポリカーボネート共重合体における上述の重量平均分子量が1,000以下の低分子量化合物の含有率と同様に、下限値は、特に重要でないものの、0.7重量%程度である。ただし、0.001重量%,0.01重量%,あるいは、0.1重量%程度の以上の上記低分子量化合物が含まれていても、ポリシロキサン化合物の性状、特に光学用途で用いられる場合において問題ない一方、流動性が向上し得る。このためポリシロキサン化合物における重量平均分子量が1,000以下の低分子量化合物の含有率の下限値は、0.001重量%,0.01重量%,あるいは、0.1重量%であってもよい。
【0139】
ポリシロキサン化合物における上述の低分子量の環状体の含有率は、詳細を実施例にて後述するように、GPC分析により得られた各成分のピーク面積の比から、不純物である数種類の低分子量化合物の含有量を合計して算出された値である。すなわち、詳細を後述するように、ポリカーボネート共重合体における分子量が1,000以下の低分子量化合物の割合の測定と同様に、所定のGPC面積比より算出され得る。
【0140】
なお、式(5-4)の示す環状体のうち、具体例として下記式(5-4’)の環状二量体が挙げられ式(5-4’)の環状二量体の分子構造と、このような環状二量体がポリシロキサン化合物において含まれ得ることが確認された。
【化61】
【0141】
また、ポリシロキサン化合物においては、以下の式(6-1)及び(6-2)で表される環状体の合計含有量が、含まれ得る。これらの環状体は、ポリシロキサン化合物の製造のための重合反応の副反応の結果、生じる環状二量体と考えられる。これらの環状二量体のポリシロキサン化合物における含有量は、ポリシロキサン化合物の全重量を基準として2.0重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.5重量%以下であり、さらに好ましくは1.0重量%以下であり、特に好ましくは0.5重量%以下である。
【化62】
式(6-1)及び(6-2)においては、これらの式で表される構成単位と他の構成単位との配置は任意である。すなわち、式(6-1)及び(6-2)として構成が明示されている構成単位以外の構成単位が含まれ得るものの、いずれの場合にも、nの値の合計は2~10であり、好ましくは2~5であり、より好ましくは2又は3であり、例えば2である。
式(6-1)及び(6-2)において、X
1及びX
2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、好ましくは炭素数1~3のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1又は2のアルキレン基である。
式(6-1)及び(6-2)において、i及びiiは、それぞれ独立して、0以上5以下の整数を表わし、好ましくは0以上3以下の整数であり、より好ましくは0以上2以下の整数であり、例えば1又は2である。
なお、式(6-1)及び(6-2)における、
R
1及びR
2、R
3~R
10、Z
1及びZ
2、J
1、K
1及びXは、上述の通りである。
【0142】
また、ポリシロキサン化合物に含まれる式(6-1)及び(6-2)で表される環状二量体の合計含有量の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.001重量%,0.01重量%,あるいは、0.1重量%であってもよい。若干量の環状二量体の存在は、ポリシロキサン化合物の成形時における流動性の向上に貢献し得る。
【0143】
また、式(6-1)及び(6-2)の化合物のそれぞれの具体例として、下記の式(6-1’)及び(6-2’)の環状体が挙げられる。
【化63】
なお、式(6-1’)及び(6-2’)における、
R
1及びR
2、R
3~R
10及びR
30~R
33、Z
1及びZ
2、J
1、K
1及びXは、上述の通りである。
【0144】
ポリシロキサン化合物においては、1%質量減少熱分解温度が、415℃以下であることが好ましく、より好ましくは、1%質量減少熱分解温度が400℃以下であり、さらに好ましくは、1%質量減少熱分解温度が385℃以下であり、特に好ましくは、1%質量減少熱分解温度が370℃以下である。
【0145】
ポリシロキサン化合物においては、ポリシロキサン化合物の全重量を基準としたケイ素原子の合計重量(総Si量)の割合が、0.1~20質量%であることが好ましく、1.0~15質量%であることがより好ましく、2.0~12質量%であることがさらに好ましく、3.0~10質量%(例えば、3.1質量%以上、あるいは3.1質量%超で9.8質量%以下)特に好ましい。
【0146】
次に、本発明に係る組成物、すなわち、上述のポリシロキサン化合物等を含む組成物について、詳細に説明する。
【0147】
<3.組成物>
本発明の組成物は、上述のポリシロキサン化合物と、ポリカーボネート樹脂を含む。ポリカーボネート樹脂として、例えば、シロキサン構造を完全に、あるいは実質的に含まないポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0148】
上述のポリシロキサン化合物とともに組成物に含まれるポリカーボネート樹脂の種類については、分子主鎖中に炭酸エステル結合を含む-[O-R-OCO]-単位(Rが脂肪族基、芳香族基、又は脂肪族基と芳香族基の双方を含むもの、さらに直鎖構造あるいは分岐構造を持つもの)を含むものであれば、特に限定されない。また、上述のポリシロキサン化合物には該当しないポリカーボネート樹脂は、ポリエステルカーボネートを含んでいても良い。そしてポリエステルカーボネートについても同様に、分子主鎖中に炭酸エステル結合を含む-[O-R-OC]-単位(Rは上述の通り)ものであれば、特に限定されない。
【0149】
ポリシロキサン化合物とともに組成物に含まれるポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は、10,000~100,000であることが好ましく、より好ましくは13,000~80,000であり、さらに好ましくは15,000~60,000である。
【0150】
本発明の組成物は、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂、好ましくは熱可塑性樹脂を含んでいても良い。熱可塑性樹脂の種類については特に限定されないが、ポリカーボネート樹脂とポリエステルカーボネート樹脂の他に、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルスルホン、セロファン、芳香族ポリアミド等の各種樹脂が挙げられる。
【0151】
組成物においては、組成物の全重量を基準としたケイ素原子の合計重量(総Si量)の割合が、0.1~20質量%であることが好ましく、0.2~15質量%であることがより好ましく、0.3~10質量%であることが特に好ましい。組成物における総Si量の割合は、上述のポリカーボネート樹脂においてシロキサン構成単位が全構成単位に占める割合や、あるいは、ポリカーボネート樹脂と混合される樹脂の量やSi量によって調整され得る。
例えば、ポリシロキサン化合物を含む組成物における280℃、160kgfの条件で測定したQ値であるQ1は、その組成物に含まれるポリカーボネート樹脂のみを同一条件で測定したQ値であるQ2に比べて、120%以上である(20%以上高い)値であることが好ましく、組成物全体のQ1の値は、より好ましくは、ポリカーボネートのみのQ2の値に比べて130%以上、さらに好ましくは140%以上であり、特に好ましくは150%以上、例えば160%以上である。
また、例えば、ポリシロキサン化合物を5質量%含む組成物の場合、280℃、160kgfの条件で測定したQ値であるQ1は、その組成物に含まれるポリカーボネート樹脂のみを同一条件で測定したQ値であるQ2に比べて、140%以上である(40%以上高い)値であることが好ましく、組成物全体のQ1の値は、より好ましくは、ポリカーボネートのみのQ2の値に比べて150%以上、さらに好ましくは160%以上であり、特に好ましくは170%以上、例えば180%以上である。
【0152】
Si含有量の高いポリシロキサン化合物を用いて、優れた特徴の組成物を製造できる。Si含有量が、例えば0.1質量%以上であるポリシロキサン化合物等を、実質的にシロキサン構成単位を含まない樹脂、好ましくは、ポリカーボネート樹脂と混合させることより、得られる組成物の優れた耐衝撃性と流動性とを両立させることができる。
【0153】
なお、ポリシロキサン化合物を含む組成物においては、重合反応の副生成物として生じ得るフェノール系化合物や、反応せずに残存したオキシシラン化合物とジオール化合物が含められ得る。不純物であるフェノール系化合物やDPCは、成形体としたときの強度低下や、臭気発生の原因ともなり得るため、これらの含有量は極力少ない程好ましい。このため、フェノール系化合物、オキシシラン化合物及びジオール化合物の含有量は、検出されないほど低減してもよいが、生産性の観点から、効果を損なわない範囲で、組成物中に含有されていてもよい。また、組成物の全重量を基準として、所定量のモノマー残量、例えば、1~1000重量ppm、好ましくは10~900ppm、より好ましくは20~800ppmのモノマーが含有されることにより、成型時の流動性の向上の効果が得られ、樹脂溶融時に可塑性を良好とし得る。
【0154】
<4.成形体>
次に、上述のポリアリーレンシロキサン化合物等のポリシロキサン化合物を含む成形体について説明する。
本発明の成形体は、上述のポリアリーレンシロキサン化合物等のポリシロキサン化合物を成形して得られるものである。成形体の成形方法については、特に限定されず、成形体として、射出成形品、プレス成形品、ブロー成形品、押出成形品、真空成形品、圧空成形品などが挙げられる。
【0155】
また、本発明に係る光学レンズは、本発明のポリシロキサン化合物、あるいは、ポリシロキサン化合物を含む組成物等を成形して得られるものである。本発明のポリシロキサン化合物は、光学用途に適したものであり、光学フィルム、光学レンズ等に好適に用いられる。また、本発明の光学レンズは、レンズとして適した範囲の屈折率、アッベ数等を有する。
【0156】
(二次的な成分について)
失活剤
本発明のポリカーボネート共重合体及びポリシロキサン化合物には、重合反応終了後、熱安定性及び加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させてもよい。公知の酸性物質の添加による触媒の失活を行う方法を好適に実施できる。酸性物質としては、具体的には、安息香酸ブチル等のエステル類、p-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類;p-トルエンスルホン酸ブチル、p-トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類;亜リン酸、リン酸、ホスホン酸等のリン酸類;亜リン酸トリフェニル、亜リン酸モノフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジn-プロピル、亜リン酸ジn-ブチル、亜リン酸ジn-ヘキシル、亜リン酸ジオクチル、亜リン酸モノオクチル等の亜リン酸エステル類;リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル、リン酸モノフェニル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノオクチル等のリン酸エステル類;ジフェニルホスホン酸、ジオクチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸等のホスホン酸類;フェニルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル類;トリフェニルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等のホスフィン類;ホウ酸、フェニルホウ酸等のホウ酸類;ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等の芳香族スルホン酸塩類;ステアリン酸クロライド、塩化ベンゾイル、p-トルエンスルホン酸クロライド等の有機ハロゲン化物;ジメチル硫酸等のアルキル硫酸;塩化ベンジル等の有機ハロゲン化物等が好適に用いられる。これらの失活剤は、例えば触媒量に対して0.001~50倍モル、好ましくは0.01~30倍モル使用してもよい。
【0157】
添加剤
<安定剤>
本発明のポリカーボネート共重合体及びポリシロキサン化合物には、安定剤を添加してもよい。安定剤としては、熱安定剤および酸化防止剤が例示される。安定剤の添加割合は、配合する場合、ポリカーボネート共重合体又はポリシロキサン化合物100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、さらに好ましくは0.02質量部以上であり、また、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1.4質量部以下、さらに好ましくは1.0質量部以下である。安定剤は、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0158】
<<熱安定剤>>
熱安定剤として、フェノール系やリン系、硫黄系の熱安定剤を挙げることができる。具体的には、リン酸、ホスホン酸、亜リン酸、ホスフィン酸、ポリリン酸等のリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウム等の酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛等、第1族または第10族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物等を挙げることができる。また、分子中の少なくとも1つのエステルがフェノールおよび/または炭素数1~25のアルキル基を少なくとも1つ有するフェノールでエステル化された亜リン酸エステル化合物(a)、亜リン酸(b)およびテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレン-ジ-ホスホナイト(c)の群から選ばれた少なくとも1種を挙げることができる。亜リン酸エステル化合物(a)の具体例として、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(オクチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリノニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、ジフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
有機ホスファイト化合物として、例えば、アデカ社製「アデカスタブ1178(商品名、以下同じ)」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP-10」、城北化学工業社製「JP-351」、「JP-360」、「JP-3CP」、BASF社製「イルガフォス168」等を挙げることができる。
また、リン酸エステルとして、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2-エチルフェニルジフェニルホスフェート等を挙げることができる。
熱安定剤の添加割合は、配合する場合、ポリカーボネート共重合体又はポリシロキサン化合物100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、さらに好ましくは0.03質量部以上であり、また、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.7質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下である。
熱安定剤は、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0159】
<<酸化防止剤>>
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、および、ポリフェノール系酸化防止剤等を挙げることができる。具体的には、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、4,4’-ブチリデンビス-(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオナミド)]、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3”,5,5’,5”-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a”-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン,2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール等を挙げることができる。
フェノール系酸化防止剤として、例えば、BASF社製「イルガノックス1010」(登録商標、以下同じ)、「イルガノックス1076」、アデカ社製「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」等を挙げることができる。
酸化防止剤の添加割合は、配合する場合、ポリカーボネート共重合体又はポリシロキサン化合物100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
酸化防止剤は、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0160】
本発明のポリカーボネート共重合体及びポリシロキサン化合物には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各種添加剤が配合されていてもよい。添加剤としては、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、離型剤および着色剤から選ばれた少なくとも1種の添加剤が例示され、難燃剤および離型剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。
また、所望の諸物性を著しく損なわない限り、帯電防止剤、蛍光増白剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等を添加してもよい。
【0161】
<難燃剤>
本発明のポリカーボネート共重合体及びポリシロキサン化合物には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各種添加剤が配合されていてもよい。難燃剤として、有機金属塩系難燃剤、リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤等が配合されていてもよい。本発明で用いることができる難燃剤としては、特開2016-183422号公報の段落0085~0093に記載の難燃剤(難燃剤組成物)が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0162】
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤として、酸化セリウム、酸化亜鉛等の無機紫外線吸収剤の他、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物、サリチル酸フェニル系化合物等の有機紫外線吸収剤を挙げることができる。これらの中では、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の有機紫外線吸収剤が好ましい。特に、ベンゾトリアゾール化合物の具体例として、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-3',5'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-tert-ブチル-フェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3'-tert-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-tert-ブチル-フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-tert-アミル)-ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2'-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2N-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-(オクチロキシ)フェノール、2,2’-(1,4-フェニレン)ビス[4H-3,1-ベンゾキサジン-4-オン]、[(4-メトキシフェニル)-メチレン]-プロパンジオイックアシッド-ジメチルエステル、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルメチル)フェノール、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール、2,4-ジ-tert-ブチル-6-(5-クロロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラブチル)フェノール、2,2′-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラブチル)フェノール]、[メチル-3-[3-tert-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート-ポリエチレングリコール]縮合物等を挙げることができる。上記の中では、好ましくは、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレン-ビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2N-ベンゾトリアゾール2-イル)フェノール]である。また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例として、2,4-ジヒドロキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ドデシロキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシロキシ-ベンゾフェノン、2,2′-ジヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノン、2,2′-ジヒドロキシ-4,4′-ジメトキシ-ベンゾフェノン、2,2′,4,4′-テトラヒドロキシ-ベンゾフェノン等を挙げることができる。また、サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤の具体例として、フェニルサリシレート、4-tert-ブチル-フェニルサリシレート等を挙げることができる。さらには、トリアジン系紫外線吸収剤の具体例として、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-(オクチロキシ)フェノール等を挙げることができる。また、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤の具体例として、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)セバケート等を挙げることができる。
紫外線吸収剤の添加割合は、配合する場合、ポリカーボネート共重合体又はポリシロキサン化合物100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、また、好ましくは3質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。
紫外線吸収剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0163】
<離型剤>
離型剤として、カルボン酸エステル、ポリシロキサン化合物、パラフィンワックス(ポリオレフィン系)等の離型剤を挙げることができる。具体的には、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルの群から選ばれる少なくとも1種の化合物を挙げることができる。脂肪族カルボン酸として、飽和または不飽和の脂肪族1価、2価または3価カルボン酸を挙げることができる。ここで、脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中でも、好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6~36の1価または2価カルボン酸であり、炭素数6~36の脂肪族飽和1価カルボン酸がさらに好ましい。脂肪族カルボン酸の具体例として、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸として、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとして、飽和または不飽和の1価または多価アルコールを挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の1価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコールまたは多価アルコールがさらに好ましい。ここで、脂肪族には脂環式化合物も包含される。アルコールの具体例として、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2-ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。尚、上記のエステル化合物は、不純物として脂肪族カルボン酸および/またはアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例として、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等を挙げることができる。数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素として、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、炭素数3~12のα-オレフィンオリゴマー等を挙げることができる。ここで、脂肪族炭化水素には脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素化合物は部分酸化されていてもよい。これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。数平均分子量は、好ましくは200~5000である。これらの脂肪族炭化水素は単一物質であっても、構成成分や分子量が様々なものの混合物であってもよく、主成分が上記の範囲内であればよい。ポリシロキサン系シリコーンオイルとして、例えば、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーン等を挙げることができる。これらの2種以上を併用してもよい。
離型剤の添加割合は、配合する場合、ポリカーボネート共重合体又はポリシロキサン化合物100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。
離型剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0164】
<着色剤>
着色剤は、染料および顔料のいずれであってもよく、例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料等を挙げることができる。無機顔料として、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青等の珪酸塩系顔料;酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛-鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅-クロム系ブラック、銅-鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青等のフェロシアン系顔料等を挙げることができる。また、着色剤としての有機顔料および有機染料として、例えば、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料(染料または顔料のことを染顔料という、以下同じ);ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系等の縮合多環染顔料;キノリン系、アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料等を挙げることができる。そして、これらの中では、熱安定性の点から、酸化チタン、カーボンブラック、シアニン系、キノリン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系染顔料等が好ましい。
また、着色剤は、押出時のハンドリング性改良、樹脂組成物中への分散性改良の目的のために、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂とマスターバッチ化されたものも用いてもよい。
着色剤の添加割合は、配合する場合、ポリカーボネート共重合体又はポリシロキサン化合物100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下であり、また、0.1質量部以上である。着色剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0165】
レンズ以外の成形体
ポリカーボネート共重合体又はポリシロキサン化合物を用いて得られる成形体の形状、模様、色彩、寸法等に制限はなく、その用途に応じて任意に設定すればよい。成形体として、具体的には、電気電子機器、OA(Office Automation)機器、情報端末機器、機械部品、家電製品、車輌部品、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類、照明機器等の部品、各種家庭用電気製品等の部品、電気器具のハウジング、容器、カバー、収納部、ケース、照明器具のカバーやケース等を挙げることができる。電気電子機器として、例えば、パーソナルコンピュータ、ゲーム機、テレビジョン受像機、液晶表示装置やプラズマ表示装置等のディスプレイ装置、プリンター、コピー機、スキャナー、ファックス、電子手帳や携帯情報末端(PDA)、電子式卓上計算機、電子辞書、カメラ、ビデオカメラ、携帯電話、電池パック、記録媒体のドライブや読み取り装置、マウス、テンキー、CD(Compact Disc)プレーヤー、MD(MiniDisc)プレーヤー、携帯ラジオ・オーディオプレーヤー等を挙げることができる。また、成形品として、電飾看板、液晶バックライト、照明ディスプレイ、交通標識、サインボード、スクリーン、反射板やメーター部品等の自動車部品(車載用部品)、玩具、装飾品等も挙げることができる。
本願のポリカーボネート共重合体及びポリシロキサン化合物は、耐衝撃性に優れていて溶融時の流動性が高く、微細構造を有する成形体となり得ることから、車載用の電気電子部品、機械部品、車輌部品として好適に使用でき得る。このような部品の例としては、例えば、自動車内装パネル、自動車ランプレンズ、自動車インナーレンズ、自動車レンズ保護カバー、自動車ライトガイド等が挙げられる。
【0166】
成形体の成形方法
本発明の成形体の製造方法は、特に限定されず、ポリカーボネート樹脂等の樹脂について一般に採用されている成形法を任意に採用することができる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法等を挙げることができる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることもできる。
【0167】
その他の樹脂
本発明のポリカーボネート共重合体及びポリシロキサン化合物には、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、本発明のポリカーボネート共重合体以外の樹脂、ポリシロキサン化合物以外の樹脂が含まれていてもよい。このような他の樹脂としては、例えば、本発明のポリカーボネート共重合体及びポリシロキサン化合物以外のポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(PTT樹脂)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)等の熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、メチルメタクリレート-スチレン共重合体(MS樹脂)等のスチレン系樹脂;メチルメタクリレート-アクリルゴム-スチレン共重合体(MAS)等のコア/シェル型のエラストマー、ポリエステル系エラストマー等のエラストマー;環状シクロオレフィン樹脂(COP樹脂)、環状シクロオレフィン(COP)共重合体樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂(PA樹脂);ポリイミド樹脂(PI樹脂);ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂);ポリウレタン樹脂(PU樹脂);ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE樹脂);ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂);ポリスルホン樹脂(PSU樹脂);ポリメタクリレート樹脂(PMMA樹脂);ポリカプロラクトン等を挙げることができる。
【実施例0168】
[ポリカーボネート樹脂の実施例]
<ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)の測定>
GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用い、クロロホルムを展開溶媒として、既知の分子量(分子量分布=1)の標準ポリスチレン(Shodex STANDARD、SM-105)を用いて検量線を作成した。測定した標準ポリスチレンから各ピークの溶出時間と分子量値をプロットし、3次式による近似を行い、較正曲線とした。
そして、得られた較正曲線を基に、下記式から、重量平均分子量(Mw)をポリスチレン換算値として求めた。
[計算式]
Mw=Σ(Wi×Mi)/Σ(Wi)
(上記式中、iは、分子量Mを分割した際のi番目の分割点、Wiはi番目の重量、Miはi番目の分子量を表す。また、分子量Mは、較正曲線の同溶出時間でのポリスチレン換算での分子量を表す。)
[測定条件]
・装置:株式会社島津製作所社製Labsolutions
・カラム:ガードカラム(Shodex GPC K-G 4A)×1本、分析カラム(Shodex GPC K-805L)×2本
・溶媒:クロロホルム(HPLCグレード)
・注入量:10μL
・試料濃度:2000ppm
・溶媒流速:1mL/min
・測定温度:40℃
・検出器:RI
【0169】
<重量平均分子量(Mw)1,000以下の低分子量化合物の含有割合の測定>
ポリカーボネート樹脂中のMwが1,000以下の低分子量化合物の割合は、上述の条件下のGPC分析により得られるデータに基づき、リテンションタイム20.5min~21.5minまでの面積/0min~21.5minまでの面積の比(GPC面積比)より算出した。
すなわち、<ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)の測定>の欄に記載の条件下でGPC分析を行い、ポリカーボネート樹脂のサンプルに含まれる全ての化合物量に相当すると考えられるリテンションタイム(保持時間)が21.5分以下のピークのGPC面積(A)と、重量平均分子量が1,000以下の低分子量化合物の量に相当すると考えられるリテンションタイムが20.5分~21.5分の間に確認されたピークのGPC面積(B)との比に基づいて、低分子量化合物の含有割合(B/A×100(%))を測定した。
【0170】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
測定サンプルとして、5~12mgの試験片を、AIオートサンプラ用試料容器(RDCアルミパン、直径6.8mm、高さ2.5mmの円柱容器)に製秤し、試料容器の上部をAIオートサンプラ用カバーによってシールして調製した。
測定は、示差走査熱量計(DSC)を用い、窒素雰囲気下(窒素流量:50ml/min)で行い、参照セルには標準物質としてサファイア10.0mgを用いた。そして、30℃に調整した測定サンプルを、20℃/minで280℃まで昇温した後、20℃/minで冷却して30℃まで降温した。その後、10℃/minで280℃まで昇温して測定した。
測定装置:示差走査熱量計(DSC)(製品名「DSC-7020」、株式会社日立ハイテクサイエンス製)
【0171】
<低分子量化合物(フェノール(PhOH)、ビスフェノールA(BPA)、ジメチルジフェノキシシラン(DMDPS)、ジフェニルカーボネート(DPC)の測定>
サンプル10gをジクロロメタン60gに溶解し樹脂溶液とし、攪拌中の樹脂溶液中に150gのエタノールを30分かけて滴下した。沈殿物をNoA5ろ紙で濾別し、ろ液をエバポレーターで濃縮し、オリゴマー成分aを取得した。
得られた沈殿物をジクロロメタン60gに溶解し樹脂溶液とし、150gのエタノールを滴下、沈殿物とオリゴマー成分bを取得した。
得られたオリゴマー成分a及びbをジクロロメタンに溶解し、1000μg/mLの溶液として、GC/FIDにより分析、定量した。
定量値は、予め作成した2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンの検量線から求めた2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン換算値である。
[GC/FIDの測定条件]
・装置:島津製作所株式会社製 GC2025
・カラム:キャピラリーカラムDB-35、30mm×0.25mm×0.25μm
・昇温条件:40℃―300℃(5min hold)、10℃/min
・注入口温度:300℃、打ち込み量:1.0μL(スプリット比1:20)
・キャリアガス:He
・Air流量:400mL/min
・H2流量:40mL/min
・メイクアップガス:30mL/min
・標準物質:2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン
【0172】
<環状二量体の測定>
ポリカーボネート共重合体に含まれる上述の環状二量体の含有量は、以下のように測定した。
ポリカーボネート共重合体のサンプル20gをジクロロメタン120gに溶解し樹脂溶液とし、攪拌中の樹脂溶液中に200gのエタノールを30分かけて滴下した。沈殿物をNoA5ろ紙で濾別し、ろ液をエバポレーターで濃縮し、オリゴマー成分Aと沈殿物Aを取得した。
引き続き、得られた沈殿物Aをジクロロメタン120gに溶解し樹脂溶液とし、攪拌中の樹脂溶液中に200gのエタノールを30分かけて滴下した。沈殿物をNoA5ろ紙で濾別し、ろ液をエバポレーターで濃縮し、オリゴマー成分Bと沈殿物Bを取得した。
引き続き、得られた沈殿物Bをジクロロメタン120gに溶解し樹脂溶液とし、攪拌中の樹脂溶液中に200gのエタノールを30分かけて滴下した。沈殿物をNoA5ろ紙で濾別し、ろ液をエバポレーターで濃縮し、オリゴマー成分Cと沈殿物Cを取得した。
得られたオリゴマー成分A、B及びCをジクロロメタンに溶解させて1000μg/mLの液として、GC-Q-MS/FIDにより環状二量体を分析した。定量値は、予め作成した2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンの検量線から求めた2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン換算値である。
[GC-Q-MS/FIDの測定条件]
・装置:アジレント・テクノロジー株式会社製 Agilent-7890B/Agilent-5975C MSD Inert XL MSD with TAD
・カラム:DB-5MS、15mm×0.25mm×0.1μm
・Restrictor(MS):0.18mm×1.44mm
・Restrictor(FID):0.18mm×0.53mm
・昇温条件:50℃(2min hold)―320℃(15min hold)、20℃/min
・注入口温度:300℃
・打ち込み量:1.0μL(スプリット比1:10)
・キャリアガス:He
・FID/MS ratio:1/1
・Aux温度:300℃
・Scan Range:m/z 33~700
・Scan rate:2.22scan/s
・FID温度:300℃
・H2流量: 30mL/min
・Air流量:400mL/min
・メイクアップガス:25mL/min
・標準物質:2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン
・環状二量体の定量:16.6minのピーク強度から定量
【0173】
<流動性(Q値)>
280℃、荷重160kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積(cm-3/sec)(株式会社島津製作所製:CFT-500D型(ノズル径1mm×ノズル長10mm)を用いて溶融流動体積を測定し、ストローク=7.0~10.0mmより単位時間当たりの値を算出)を表す。
【0174】
<シャルピー衝撃試験>
JIS-K7111に準拠して、成形した試験片のシャルピー衝撃強度(kJ/m2)を測定した。
【0175】
<屈折率(nd)の測定方法>
屈折率(nd):実施例で製造したポリカーボネート共重合体からなる厚さ3mmの直角片について、アッベ屈折計を用い、JIS-K-7142の方法で測定した。
<アッベ数(νd)の測定方法>
実施例で製造したポリカーボネート樹脂からなる厚さ3mmの直角片について、アッベ屈折計を用い、23℃下での波長486nm、589nm及び656nmの屈折率を測定し、さらに下記式を用いてアッベ数を算出した。
νd=(nd-1)/(nF-nC)
nd:波長589nmでの屈折率
nC:波長656nmでの屈折率
nF:波長486nmでの屈折率
【0176】
(合成例1) ジメチルジフェノキシシランの合成
ジメチルジフェノキシシランはUS2012/184702に記載の手法を参考に合成した。
フェノール176.34g(1.87mol)を50℃、N2雰囲気下で攪拌し、ジメチルジクロロシラン113.24g(0.88mol)を30minかけて滴下させた。滴下終了から1時間後、170℃、200hPaの減圧下にて副生物を留去した。反応液を室温まで冷却し、生成物をジクロロメタン300mLに溶解させた。ジクロロメタンに溶解させた生成物を10%NaOH溶液300mLで2回洗浄し、有機層を抽出した。有機層を水300mLで2回洗浄し、洗浄した後の有機層を抽出した。無水硫酸マグネシウムで残留水を除去したのち、エバポレーターにてジクロロメタンを留去することで、油状成分を得た。
得られた油状成分を1H-NMRで分析し、ジメチルジフェノキシシランであることを確認した(1H-NMR(CDCl3,500MHz,δ;ppm)=0.378(s;6H)、6.942、6.944(d;4H)、6.959、6.961、6.995(t;2H)、7.230、7.245、7.257(t;4H)) 。モル収率は66%であった。
【0177】
(実施例A-1)
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン104.97g(0.46mol)、ジメチルジフェノキシシラン4.58g(0.02mol)、ジフェニルカーボネート101.46g(0.47mol)、及び、触媒として炭酸セシウム2.0μmol/mol(触媒量は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた300ml 4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。190℃にて原料を加熱溶融し、20分間攪拌した。
その後、1時間20分かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を2hPa以下とし、さらに1時間30分保持することで、無色透明のアリーレンシロキサン構造を有するポリカーボネート共重合体を得た。なお、減圧時には、大気圧から、27,000Pa、24,000Pa、20,000Pa、17,000Pa、14,000Pa、10,000Pa、8,000Pa、6,000Pa、4,000Pa、2,000Pa、1,000Pa、200Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてシロキサン含有ポリカーボネート共重合体のMwを測定した結果、44,373であった。
DSCを用いて上記共重合体のTgを測定した結果、136℃であった。TG-DTAを用いて上記共重合体の重量減少を測定した結果、1%重量減少が411℃であった。
【0178】
(実施例A-2)
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン72.85g(0.32mol)、ジメチルジフェノキシシラン7.9g(0.032mol)、ジフェニルカーボネート65.86g(0.31mol)、及び、触媒としての炭酸セシウム0.6μmol/mol(触媒量は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた300ml4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。180℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。
その後、1.5時間かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を4hPa以下とし、さらに1.5時間保持することで、無色透明のアリーレンシロキサン構造を有するポリカーボネート共重合体を得た。なお、減圧時には、大気圧から、27,000Pa、24,000Pa,20,000Pa、16,000Pa、8,000Pa、4,000Pa、2,000Pa、400Pa,400Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてシロキサン含有ポリカーボネート共重合体のMwを測定した結果、48,035であった。
DSCを用いて上記共重合体のTgを測定した結果、129℃であった。
上記共重合体のQ値を測定した結果、75(×10-2cm3/sec)であった。
【0179】
(実施例A-3)
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン21.69g(0.10mol)、ジメチルジフェノキシシラン9.52g(0.39mol)、ジフェニルカーボネート13.5g(0.63mol)、及び、触媒としての炭酸セシウム7.0μmol/mol(触媒量は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。180℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。
その後、1時間かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を4hPa以下とし、さらに2時間保持することで、無色透明のアリーレンシロキサン構造を有するポリカーボネート共重合体を得た。また、減圧時には、大気圧から、27,000Pa、24,000Pa,20,000Pa、16,000Pa、8,000Pa、4,000Pa、2,000Pa、400Pa,400Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてシロキサン含有ポリカーボネート共重合体のMwを測定した結果、54,007であった。
DSCを用いて上記共重合体のTgを測定した結果、101℃であった。
上記共重合体のQ値を測定した結果、114(×10-2cm3/sec)であった。
【0180】
(実施例A-4)
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン30.69g(0.13mol)、ジメチルジフェノキシシラン25.46g(0.10mol)、ジフェニルカーボネート9.96g(0.046mol)、及び、触媒としての炭酸セシウム7.0μmol/mol(触媒量は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。180℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。
その後、1時間かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を4hPa以下とし、さらに2時間保持することで、無色透明のアリーレンシロキサン構造を有するポリカーボネート共重合体を得た。なお、減圧時には、大気圧から、27,000Pa、24,000Pa,20,000Pa、16,000Pa、8,000Pa、4,000Pa、2,000Pa、400Pa,400Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてシロキサン含有ポリカーボネート共重合体のMwを測定した結果、63,068であった。
DSCを用いて上記共重合体のTgを測定した結果、75℃であった。
【0181】
(実施例A-5)
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン30.63g(0.13mol)、ジメチルジフェノキシシラン31.05g(0.13mol)、ジフェニルカーボネート5.04g(0.024mol)、及び、触媒としての炭酸セシウム7.0μmol/mol(触媒量は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。180℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。
その後、1時間かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を4hPa以下とし、さらに2時間保持することで、無色透明のアリーレンシロキサン構造を有するポリカーボネート共重合体を得た。なお、減圧時には、大気圧から、27,000Pa、24,000Pa,20,000Pa、16,000Pa、8,000Pa、4,000Pa、2,000Pa、400Pa,400Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてシロキサン含有ポリカーボネート共重合体のMwを測定した結果、49,161あった。
DSCを用いて上記共重合体のTgを測定した結果、62℃であった。
【0182】
(実施例A-6~A-14)
原料の化合物を下記表1のように変更した他、実施例A-1と同様に共重合体を製造した。得られた共重合体の性状を表1に示す。
【表1】
【0183】
(実施例A-15)
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン2310g(10.13mol)、ジメチルジフェノキシシラン1849.26g(7.58mol)、ジフェニルカーボネート753.04g(3.52mol)、及び、触媒として炭酸セシウム14.0μmol/mol(触媒量は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた10Lの反応器に入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。180℃にて原料を加熱溶融し、40分間攪拌した。
その後、1時間30分かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を1hPa以下とし、さらに1時間15分保持することで、無色透明のアリーレンシロキサン構造を有するポリカーボネート共重合体を得た。なお、減圧時には、大気圧から、27,000Pa、24,000Pa、20,000Pa、17,000Pa、14,000Pa、12,000Pa、8,000Pa、4,000Pa、100Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてシロキサン含有ポリカーボネート共重合体のMwを測定した結果、208,939であった。
DSCを用いて上記共重合体のTgを測定した結果、74.2℃であった。TG-DTAを用いて上記共重合体の重量減少を測定した結果、1%重量減少が337.1℃であった。
【0184】
(実施例A-16)
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン2497g(10.95mol)、ジメチルジフェノキシシラン1997.20g(8.19mol)、ジフェニルカーボネート813.00g(3.80mol)、及び、触媒として炭酸セシウム3.0μmol/mol(触媒量は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた10Lの反応器に入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。180℃にて原料を加熱溶融し、45分間攪拌した。
その後、2時間30分かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を1hPa以下とし、さらに1時間30分保持することで、無色透明のアリーレンシロキサン構造を有するポリカーボネート共重合体を得た。なお、減圧時には、大気圧から、27,000Pa、24,000Pa、20,000Pa、17,000Pa、14,000Pa、10,000Pa、6,000Pa、4,000Pa、100Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてシロキサン含有ポリカーボネート共重合体のMwを測定した結果、81,885であった。
DSCを用いて上記共重合体のTgを測定した結果、75.1℃であった。TG-DTAを用いて上記共重合体の重量減少を測定した結果、1%重量減少が380.6℃であった。
GCを用いて上記共重合体に含まれる低分子量化合物量を定量した結果、PhOH 415ppm、BPA 475ppm、DMDPS 122ppm、DPC 44ppmが含有していた。
【0185】
(参考例)
前述の環状二量体の測定方法に従い、実施例A-16にて得られた共重合体19.99gをジクロロメタン121.22gに溶解し、攪拌中の樹脂溶液中に196gのエタノールを30分かけて滴下した。沈殿物をNoA5ろ紙で濾別し、ろ液をエバポレーターで濃縮し、オリゴマー成分Aを0.652g取得した。再度、沈殿物はジクロロメタンに溶解させ、エタノールを滴下、沈殿物とオリゴマー成分を分別する操作を2回繰り返した(取得オリゴマー成分Bとして0.268g、取得オリゴマー成分Cとして0.177g、共重合体再沈殿物、即ち沈殿物として18.99gを得た)。得られたオリゴマー成分A、B及びCをジクロロメタンに溶解させて1000μg/mLの液として、GC-Q-MS/FIDにより分析した結果、再沈殿品の共重合体中の環状二量体量は0.71wt%であった。
また、実施例A-16で取得したシロキサン含有ポリカーボネート共重合体のQ値は、117(×10
-2cm
3/sec)、参考例で取得したシロキサン含有ポリカーボネート共重合体再沈殿品のQ値は74(×10
-2cm
3/sec)であった。環状二量体を含むことによりQ値が高くなり、流動性が高いことがわかる。
【表2】
【0186】
(実施例A-17)
9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン30.99g(0.07mol)、ジフェニルジメトキシシラン13.01g(0.05mol)、ジフェニルカルボネート5.28g(0.02mol)、及び、触媒として炭酸セシウム15.0μmol/mol(触媒量は9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml 4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。190℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。
その後、1時間10分かけて、反応系より留出するフェノールとメタノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を2hPa以下とし、さらに15分保持することで、無色透明のアリーレンシロキサン構造を有するポリカーボネート共重合体を得た。なお、減圧時には、大気圧から、60,000Pa、40,000Pa、20,000Pa、10,000Pa、8,000Pa、6,000Pa、4,000Pa、2,000Pa、1,000Pa、200Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてシロキサン含有ポリカーボネート共重合体のMwを測定した結果、115,683であった。
DSCを用いて上記共重合体のTgを測定した結果、110.9℃であった。TG-DTAを用いて上記共重合体の重量減少を測定した結果、1%重量減少が351.4℃であった。
【0187】
(実施例A-18)
9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン24.71g(0.071mol)、ジフェニルジメトキシシラン18.00g(0.074mol)、ジフェニルカルボネート0.831g(0.004mol)、及び、触媒として炭酸セシウム15.0μmol/mol(触媒量は9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml 4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。190℃にて原料を加熱溶融し、15分間攪拌した。
その後、1時間20分かけて、反応系より留出するフェノールとメタノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を2hPa以下とし、さらに1時間30分保持することで、黄変した透明のアリーレンシロキサン構造を有するポリカーボネート共重合体を得た。なお、減圧時には、大気圧から、80,000Pa、60,000Pa、40,000Pa、20,000Pa、10,000Pa、8,000Pa、6,000Pa、4,000Pa、2,000Pa、200Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてシロキサン含有ポリカーボネート共重合体のMwを測定した結果、12,992であった。
DSCを用いて上記共重合体のTgを測定した結果、165.5℃であった。TG-DTAを用いて上記共重合体の重量減少を測定した結果、1%重量減少が361.1℃であった。
【0188】
(実施例A-19)
9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン17.07g(0.04mol)、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン12.06g(0.03mol)ジフェニルジメトキシシラン12.99g(0.05mol)、ジフェニルカルボネート5.26g(0.02mol)、及び、触媒として炭酸セシウム15.0μmol/mol(触媒量は9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンのモル数の和に対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml 4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。200℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。
その後、1時間20分かけて、反応系より留出するフェノールとメタノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を2hPa以下とし、さらに1時間20分保持することで、褐変した透明のアリーレンシロキサン構造を有するポリカーボネート共重合体を得た。なお、減圧時には、大気圧から、80,000Pa、60,000Pa、40,000Pa、20,000Pa、10,000Pa、8,000Pa、6,000Pa、4,000Pa、2,000Pa、1,000Pa、200Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてシロキサン含有ポリカーボネート共重合体のMwを測定した結果、23,272であった。
DSCを用いて上記共重合体のTgを測定した結果、140.4℃であった。TG-DTAを用いて上記共重合体の重量減少を測定した結果、1%重量減少が349.4℃であった。
【0189】
(実施例A-20)
9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン24.71g(0.071mol)、ジメチルジフェノキシシラン1.80g(0.007mol)ジフェニルジメトキシシラン16.21g(0.066mol)、ジフェニルカルボネート0.83g(0.004mol)、及び、触媒として炭酸セシウム15.0μmol/mol(触媒量は9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml 4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。210℃にて原料を加熱溶融し、25分間攪拌した。
その後、1時間25分かけて、反応系より留出するフェノールとメタノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を2hPa以下とし、さらに1時間保持することで、黄変した透明のアリーレンシロキサン構造を有するポリカーボネート共重合体を得た。なお、減圧時には、大気圧から、80,000Pa、60,000Pa、40,000Pa、20,000Pa、10,000Pa、8,000Pa、6,000Pa、4,000Pa、2,000Pa、200Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてシロキサン含有ポリカーボネート共重合体のMwを測定した結果、28,050であった。
DSCを用いて上記共重合体のTgを測定した結果、171.4℃であった。TG-DTAを用いて上記共重合体の重量減少を測定した結果、1%重量減少が339.1℃であった。
【0190】
(実施例A-21)
イソソルビド10.22g(0.07mol)、ジフェニルジメトキシシラン17.60g(0.07mol)、及び、触媒として炭酸セシウム15.0μmol/mol(触媒量はイソソルビドに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml 4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。100℃にて原料を加熱溶融し、10分間攪拌した。
その後、1時間55分かけて、反応系より留出するメタノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を200℃、減圧度を2hPa以下とし、さらに1時間30分保持することで、黄変した透明のアリーレンシロキサンを得た。なお、減圧時には、大気圧から、90,000Pa、80,000Pa、70,000Pa、60,000Pa、50,000Pa、30,000Pa、10,000Pa、6,000Pa、2,000Pa、200Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてアリーレンシロキサンのMwを測定した結果、9,125であった。
DSCを用いて上記共重合体のTgを測定した結果、71.1℃であった。TG-DTAを用いて上記アリーレンシロキサンの重量減少を測定した結果、1%重量減少が256.2℃であった。
【0191】
(実施例A-22)
ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン17.50g(0.07mol)、ジフェニルジメトキシシラン17.42g(0.07mol)、及び、触媒として炭酸セシウム30.0μmol/mol(触媒量はビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml 4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。220℃にて原料を加熱溶融し、25分間攪拌した。
その後、1時間15分かけて、反応系より留出するメタノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を2hPa以下とし、さらに1時間30分保持することで、薄く赤変した透明のアリーレンシロキサンを得た。なお、減圧時には、大気圧から、80,000Pa、60,000Pa、40,000Pa、20,000Pa、10,000Pa、8,000Pa、6,000Pa、4,000Pa、2,000Pa、1,000Pa、200Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてアリーレンシロキサンのMwを測定した結果、12,806であった。
DSCを用いて上記アリーレンシロキサンのTgを測定した結果、123.6℃であった。TG-DTAを用いて上記アリーレンシロキサンの重量減少を測定した結果、1%重量減少が384.7℃であった。
【0192】
(実施例A-23)
9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン31.00g(0.07mol)、ジフェニルジメトキシシラン18.98g(0.08mol)、及び、触媒として炭酸セシウム15.0μmol/mol(触媒量は9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml 4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。190℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。
その後、1時間10分かけて、反応系より留出するメタノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を2hPa以下とし、さらに1時間30分保持することで、無色透明のアリーレンシロキサンを得た。なお、減圧時には、大気圧から、60,000Pa、40,000Pa、20,000Pa、10,000Pa、8,000Pa、6,000Pa、4,000Pa、3,000Pa、2,000Pa、1,000Pa、200Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてアリーレンシロキサンのMwを測定した結果、46,225であった。
DSCを用いて上記アリーレンシロキサンのTgを測定した結果、97.4℃であった。TG-DTAを用いて上記アリーレンシロキサンの重量減少を測定した結果、1%重量減少が350.6℃であった。
【0193】
(実施例A-24)
9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン24.71g(0.07mol)、ジフェニルジメトキシシラン18.95g(0.08mol)、及び、触媒として炭酸セシウム15.0μmol/mol(触媒量は9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml 4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。190℃にて原料を加熱溶融し、15分間攪拌した。
その後、1時間30分かけて、反応系より留出するメタノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を2hPa以下とし、さらに1時間30分保持することで、黄変した透明のアリーレンシロキサンを得た。なお、減圧時には、大気圧から、80,000Pa、60,000Pa、40,000Pa、20,000Pa、10,000Pa、8,000Pa、6,000Pa、4,000Pa、3,000Pa、2,000Pa、200Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてアリーレンシロキサンのMwを測定した結果、27,028であった。
DSCを用いて上記アリーレンシロキサンのTgを測定した結果、169.7℃であった。TG-DTAを用いて上記アリーレンシロキサンの重量減少を測定した結果、1%重量減少が364.8℃であった。
【0194】
(実施例A-25)
ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド15.26g(0.07mol)、ジフェニルジメトキシシラン17.42g(0.07mol)、及び、触媒として炭酸セシウム30.0μmol/mol(触媒量はビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィドに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml 4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。190℃にて原料を加熱溶融し、15分間攪拌した。
その後、2時間15分かけて、反応系より留出するメタノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を2hPa以下とし、さらに1時間20分保持することで、無色透明のアリーレンシロキサンを得た。なお、減圧時には、大気圧から、90,000Pa、80,000Pa、70,000Pa、60,000Pa、50,000Pa、40,000Pa、20,000Pa、10,000Pa、8,000Pa、6,000Pa、4,000Pa、2,000Pa、200Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてアリーレンシロキサンのMwを測定した結果、56,797であった。
DSCを用いて上記アリーレンシロキサンのTgを測定した結果、73.2℃であった。TG-DTAを用いて上記アリーレンシロキサンの重量減少を測定した結果、1%重量減少が391.6℃であった。
【0195】
上述の実施例A-15~25及び参考例の結果を表3に示す。
【表3】
【0196】
(実施例A-26)
9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)ナフタレン-2-イル]フルオレン37.73g(0.07mol)、ジメチルジフェノキシシラン19.47g(0.07mol)、及び、触媒として炭酸水素ナトリウム30.0μmol/mol(触媒量は9,9-ビス(6-ヒドロキシナフチル)フルオレンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml 4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。210℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。
その後、1時間30分かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を280℃、減圧度を2hPa以下とし、さらに1時間50分保持することで、黄変した透明のアリーレンシロキサンを得た。なお、減圧時には、大気圧から、30,000Pa、27,500Pa、25,000Pa、22,500Pa、20,000Pa、17,500Pa、15,000Pa、12,500Pa、10,000Pa、8,000Pa、6,000Pa、4,000Pa、2,000、1,000、200Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてアリーレンシロキサンのMwを測定した結果、39,353であった。
DSCを用いて上記アリーレンシロキサンのTgを測定した結果、138℃であった。TG-DTAを用いて上記アリーレンシロキサンの重量減少を測定した結果、1%重量減少が369.3℃であった。
【0197】
(実施例A-27)
4,4’-ジヒドロキシ-ビフェニル 61.04g(0.33mol)、ジメチルジフェノキシシラン89.64g(0.37mol)、及び、触媒として炭酸セシウム3.0μmol/mol(触媒量は、4,4’-ジヒドロキシ-ビフェニルに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた200ml 4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。220℃にて原料を加熱溶融し、60分間攪拌した。
その後、1時間かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつ
エステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を1hPa以下とし、さらに2時間保持することで、無色透明のアリーレンシロキサンを得た。なお、減圧時には、大気圧から、27,000Pa、24,000Pa、20,000Pa、17,000Pa、14,000Pa、10,000Pa、6,000Pa、4,000Pa、100Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてアリーレンシロキサンのMwを測定した結果46,000であった。
DSCを用いて上記アリーレンシロキサンのTgを測定した結果、70.4℃であった。TG-DTAを用いて上記アリーレンシロキサンの重量減少を測定した結果、1%重量減少が378℃であった。
【0198】
(実施例A-28)
4,4’-ジヒドロキシ-ビフェニル 79.71g(0.43mol)、ジフェニルジメトキシシラン107.42g(0.44mol)、及び、触媒として炭酸セシウム3.0μmol/mol(触媒量は、4,4’-ジヒドロキシ-ビフェニルに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた200ml 4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。220℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。
その後、2時間かけて、反応系より留出するメタノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を1hPa以下とし、さらに2時間保持することで、無色透明のアリーレンシロキサンを得た。なお、減圧時には、大気圧から、90,000Pa、80,000Pa、70,000Pa、60,000Pa、50,000Pa、40,000Pa、20,000Pa、10,000Pa、8,000Pa、6,000Pa、4,000Pa、2,000Pa、200Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてアリーレンシロキサンのMwを測定した結果17,000であった。
DSCを用いて上記アリーレンシロキサンのTgを測定した結果、110℃であった。TG-DTAを用いて上記アリーレンシロキサンの重量減少を測定した結果、1%重量減少が345℃であった。
【0199】
(実施例A-29)
4,4’-ジヒドロキシ-ビフェニル 39.06g(0.21mol)、ジメチルジフェノキシシラン38.58g(0.16mol)、ジフェニルカルボネート15.60g(0.07mol)、及び、触媒として炭酸セシウム15.0μmol/mol(触媒量は、4,4’-ジヒドロキシ-ビフェニルに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた300ml 4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。220℃にて原料を加熱溶融し、20分間攪拌した。
その後、1時間30分かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を1hPa以下とし、さらに10分保持することで、無色透明のアリーレンシロキサン構造を有するポリカーボネート共重合体を得た。なお、減圧時には、大気圧から、30,000Pa、25,000Pa、20,000Pa、15,000Pa、10,000Pa、8,000Pa、6,000Pa、4,000Pa、2,000Pa、1,000Pa、100Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてシロキサン含有ポリカーボネート共重合体のMwを測定した結果33,710であった。
DSCを用いて上記共重合体のTgを測定した結果、78.8℃であった。TG-DTAを用いて上記共重合体の重量減少を測定した結果、1%重量減少が357℃であった。
【0200】
(実施例A-30)
4,4’-ジヒドロキシ-ビフェニル 39.06g(0.21mol)、ジフェニルジメトキシシラン35.00g(0.14mol)、ジフェニルカルボネート15.60g(0.07mol)、及び、触媒として炭酸セシウム15.0μmol/mol(触媒量は、4,4’-ジヒドロキシ-ビフェニルに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた300ml 4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。220℃にて原料を加熱溶融し、20分間攪拌した。
その後、1時間30分かけて、反応系より留出するメタノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を1hPa以下とし、さらに10分保持することで、無色透明のアリーレンシロキサン構造を有するポリカーボネート共重合体を得た。なお、減圧時には、大気圧から、30,000Pa、25,000Pa、20,000Pa、15,000Pa、10,000Pa、8,000Pa、6,000Pa、4,000Pa、2,000Pa、1,000Pa、100Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてシロキサン含有ポリカーボネート共重合体のMwを測定した結果11,845であった。
DSCを用いて上記共重合体のTgを測定した結果、120℃であった。TG-DTAを用いて上記共重合体の重量減少を測定した結果、1%重量減少が363℃であった。
【0201】
(実施例A-31)
2,2’-ビスヒドロキシエトキシ-1,1’-ビナフチル 26.18g(0.07mol)、ジメチルジフェノキシシラン19.82g(0.08mol)、及び、触媒として炭酸水素ナトリウム30μmol/mol(触媒量は、2,2’-ビスヒドロキシエトキシ-1,1’-ビナフチルに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml 4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。210℃にて原料を加熱溶融し、35分間攪拌した。
その後、1時間30分かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を1hPa以下とし、さらに1時間30分保持することで、無色透明のアリーレンシロキサンを得た。なお、減圧時には、大気圧から、27,500Pa、25,000Pa、22,500Pa、20,000Pa、17,500Pa、15,000Pa、12,500Pa、10,000Pa、8,000Pa、6,000Pa、4,000Pa、2,000Pa、1,000Pa、100Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてアリーレンシロキサンのMwを測定した結果19,975であった。
DSCを用いて上記アリーレンシロキサンのTgを測定した結果、54℃であった。TG-DTAを用いて上記アリーレンシロキサンの重量減少を測定した結果、1%重量減少が296℃であった。
【0202】
(実施例A-32)
2,2’-ビスヒドロキシエトキシ-1,1’-ビナフチル 26.18g(0.07mol)、ジフェニルカルボネート5.40g(0.03mol)、ジメチルジフェノキシシラン12.65g(0.05mol)、及び、触媒として炭酸水素ナトリウム30μmol/mol(触媒量は、2,2’-ビスヒドロキシエトキシ-1,1’-ビナフチルに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml 4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。220℃にて原料を加熱溶融し、1時間攪拌した。
その後、1時間10分かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を1hPa以下とし、さらに1時間20分保持することで、無色透明のアリーレンシロキサン構造を有するポリカーボネート共重合体を得た。なお、減圧時には、大気圧から、27,500Pa、25,000Pa、22,500Pa、20,000Pa、17,500Pa、15,000Pa、12,500Pa、10,000Pa、8,000Pa、6,000Pa、4,000Pa、2,000Pa、1,000Pa、100Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてシロキサン含有ポリカーボネート共重合体のMwを測定した結果32,178であった。
DSCを用いて上記共重合体のTgを測定した結果、74℃であった。TG-DTAを用いて上記共重合体の重量減少を測定した結果、1%重量減少が317℃であった。
【0203】
(実施例A-33)
イソソルビド10.22g(0.07mol)、ジフェニルカルボネート5.20g(0.02mol)、ジメチルジフェノキシシラン12.86g(0.05mol)、及び、触媒として炭酸セシウム15.0μmol/mol(触媒量はイソソルビドに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml 4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。200℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。
その後、1時間20分かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を2hPa以下とし、さらに1時間30分保持することで、黄変した透明のアリーレンシロキサン構造を有するポリカーボネート共重合体を得た。なお、減圧時には、大気圧から、30,000Pa、25,000Pa、20,000Pa、15,000Pa、10,000Pa、8,000Pa、6,000Pa、4,000Pa、2,000Pa、1,000Pa、200Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてシロキサン含有ポリカーボネート共重合体のMwを測定した結果、39,378であった。
DSCを用いて上記共重合体のTgを測定した結果、55℃であった。TG-DTAを用いて上記共重合体の重量減少を測定した結果、1%重量減少が242℃であった。
【0204】
(実施例A-34)
3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン21.28g(0.07mol)、ジメチルジフェノキシシラン19.82g(0.08mol)、及び、触媒として炭酸水素ナトリウム30.0μmol/mol(触媒量は3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml 4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。210℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。
その後、1時間50分かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を2hPa以下とし、さらに1時間保持することで、無色透明のアリーレンシロキサンを得た。なお、減圧時には、大気圧から、30,000Pa、25,000Pa、20,000Pa、17,500Pa、15,000Pa、12,500Pa、10,000Pa、8,000Pa、6,000Pa、4,000Pa、2,000Pa、1,000Pa、200Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてアリーレンシロキサンのMwを測定した結果、15,708であった。
DSCを用いて上記アリーレンシロキサンのTgを測定した結果、51℃であった。TG-DTAを用いて上記アリーレンシロキサンの重量減少を測定した結果、1%重量減少が236℃であった。
【0205】
(実施例A-35)
3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン21.28g(0.07mol)、ジフェニルカルボネート5.20g(0.02mol)、ジメチルジフェノキシシラン12.86g(0.05mol)、及び、触媒として炭酸水素ナトリウム30.0μmol/mol(触媒量は3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml 4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。210℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。
その後、1時間30分かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を2hPa以下とし、さらに1時間保持することで、透明のアリーレンシロキサン構造を有するポリカーボネート共重合体を得た。なお、減圧時には、大気圧から、30,000Pa、25,000Pa、20,000Pa、17,500Pa、15,000Pa、12,500Pa、10,000Pa、8,000Pa、6,000Pa、4,000Pa、2,000Pa、1,000Pa、200Pa以下へと段階的に圧力が変化するように調整した。
GPCを用いてシロキサン含有ポリカーボネート共重合体のMwを測定した結果、68,693であった。
DSCを用いて上記共重合体のTgを測定した結果、63℃であった。TG-DTAを用いて上記共重合体の重量減少を測定した結果、1%重量減少が252℃であった。
【0206】
(比較例A-1)
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン17.51g(0.08mmol)、ジメチルジフェノキシシラン20.93g(0.09mol)、及び、触媒としての炭酸セシウム7μmol/mol(触媒量は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。180℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。
その後、1時間かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を4hPa以下とし、さらに2時間保持することで、無色透明のポリアリーレンシロキサンを得た。
GPCを用いてポリアリーレンシロキサンのMwを測定した結果、63,257であった。
DSCを用いて上記共重合体のTgを測定した結果、54℃であった。
【0207】
(比較例A-2)
ポリカーボネート(三菱ガス化学製、ユーピロンS―3000)を、GPCを用いてMwを測定した結果、51,252であった。
DSCを用いて上記ポリカーボネートのTgを測定した結果、149℃であった。
【0208】
(比較例A-3)
三菱ガス化学株式会社製のユピゼータ EP6000、即ちジオール化合物として、BPEF:9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン)を用いたポリカーボネート樹脂を比較例A-3とした。比較例A-3のポリカーボネート樹脂のMwは30000、Q値は97×10-2cm3/sec、Tgは142℃、屈折率(nd)は1.638、アッベ数(vd)は23.5であった。
比較例A-3と比較して、同様のジオール化合物を用いた実施例A-17、19、23は、光学物性を大きく変えることなく、流動性が改善できた(Q値を大きくすることができた)ことが確認された。
【0209】
上述の実施例A-26~A-35及び比較例A-1と2の結果を表4に示す。
【表4】
【0210】
(実施例A-36)
実施例A-3で得られたポリカーボネート共重合体10gと、ポリカーボネート(三菱ガス化学製、ユーピロンS―3000)190gとを、混練押出機(東洋精機製作所製、ラボプラストミル4C150)を用いて280℃で混練押出した。得られた組成物のQ値は11.9(×10-2cm3/sec)であった。また、組成物を110℃で12時間、乾燥機により乾燥した後、射出成形機(新興セルビック社製「C-Mobile」)により、樹脂温度300℃、金型温度90℃でシャルピー衝撃試験用試験片を成形し、JIS-K7111に準拠してノッチ付きシャルピー衝撃試験を実施した結果、60.9kJ/m2であった。
【0211】
(実施例A-37)
実施例A-4で得られたポリカーボネート共重合体10gと、ポリカーボネート(三菱ガス化学製、ユーピロンS―3000)190gとを、混練押出機(東洋精機製作所製、ラボプラストミル4C150)を用いて280℃で混練押出した。得られた組成物のQ値は14.1(×10-2cm3/sec)であった。また、組成物を110℃で12時間、乾燥機により乾燥した後、射出成形機(新興セルビック社製「C-Mobile」)により、樹脂温度300℃、金型温度90℃でシャルピー衝撃試験用試験片を成形し、JIS-K7111に準拠してノッチ付きシャルピー衝撃試験を実施した結果、65.8kJ/m2であった。
【0212】
(実施例A-38)
実施例A-16で得られたポリカーボネート共重合体150gと、ポリカーボネート(三菱ガス化学製、ユーピロンE―2000)1850gとを、混練押出射出成型機(高速射出成型機 ソディック TR100EH)を用いて樹脂温度280℃で混練し、次いで金型温度80℃、保圧90MPaの条件で射出成型をしてシャルピー衝撃試験用試験片を成形した。JIS-K7111に準拠してノッチ付きシャルピー衝撃試験を実施した結果、70.1kJ/m2であった。また、得られた組成物のQ値は5.5(×10-2cm3/sec)であった。
(実施例A-39)
実施例A-16で得られたポリカーボネート共重合体300gと、ポリカーボネート(三菱ガス化学製、ユーピロンE―2000)1700gとを、混練押出射出成型機(高速射出成型機 ソディック TR100EH)を用いて樹脂温度280℃で混練し、次いで金型温度80℃、保圧90MPaの条件で射出成型をしてシャルピー衝撃試験用試験片を成形した。JIS-K7111に準拠してノッチ付きシャルピー衝撃試験を実施した結果、76.7kJ/m2であった。また、得られた組成物のQ値は8.1(×10-2cm3/sec)であった。
(実施例A-40)
実施例A-16で得られたポリカーボネート共重合体600gと、ポリカーボネート(三菱ガス化学製、ユーピロンE―2000)1400gとを、混練押出射出成型機(高速射出成型機 ソディック TR100EH)を用いて樹脂温度280℃で混練し、次いで金型温度80℃、保圧90MPaの条件で射出成型をしてシャルピー衝撃試験用試験片を成形した。JIS-K7111に準拠してノッチ付きシャルピー衝撃試験を実施した結果、6.9kJ/m2であった。また、得られた組成物のQ値は17.2(×10-2cm3/sec)であった。
【0213】
(比較例A-4)
ポリカーボネート(三菱ガス化学製、ユーピロンS―3000)のQ値は8.0(×10-2cm3/sec)であった。また、ポリカーボネートを110℃で12時間、乾燥機により乾燥した後、射出成形機(新興セルビック社製「C-Mobile」)により、樹脂温度300℃、金型温度90℃でシャルピー衝撃試験用試験片を成形し、JIS-K7111に準拠してノッチ付きシャルピー衝撃試験を実施した結果、62.9kJ/m2であった。
【0214】
(比較例A-5)
ポリカーボネート(三菱ガス化学製、ユーピロンE―2000)2000gを、混練押出射出成型機(高速射出成型機 ソディック TR100EH)を用いて樹脂温度300℃で混練し、次いで金型温度80℃、保圧90MPaの条件で射出成型をしてシャルピー衝撃試験用試験片を成形した。JIS-K7111に準拠してノッチ付きシャルピー衝撃試験を実施した結果、72.7kJ/m2であった。また、得られた組成物のQ値は2.8(×10-2cm3/sec)であった。
【0215】
実施例A-36~40及び、比較例A-4、5の結果を以下の表5に示す。
【表5】
【0216】
[ポリシロキサン化合物の実施例]
以下、ポリシロキサン化合物に関する実施例について説明する。
<ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)>
GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用い、クロロホルムを展開溶媒として、既知の分子量(分子量分布=1)の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。この検量線に基づいて、GPCのリテンションタイムから算出した。
<ガラス転移温度(Tg)>
示差熱走査熱量分析計(DSC)により測定した。得られたDSC曲線において、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と,ガラス転移の階段状変化部分の曲線のこう配が最大になるような点で引いた接線との交点より求めた。
【0217】
(合成例2) ジメチルジフェノキシシランの合成
デカメチルシクロペンタシロキサン7.5g(20.2mmol、Siモル量:101.0mmol)、ジフェニルカーボネート21.6g(101.0mmol)、及び、触媒としての炭酸セシウム33mg(0.1mmol)を、窒素雰囲気下に置換して200℃で60分間攪拌した。
続いて、反応混合物を40℃まで冷却した後、減圧度4hPa、150℃で減圧蒸留することにより、無色の油状成分23.7gを得た。
得られた油状成分を1H-NMRで分析し、ジメチルジフェノキシシランであることを確認した。(1H-NMR(CDCl3,500MHz,δ;ppm)=0.378(s;6H)、6.942、6.944(d;4H)、6.959、6.961、6.995(t;2H)、7.230、7.245、7.257(t;4H))モル収率は96.0%であった。
【0218】
(実施例B-1)
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン30.03g(0.13mol)、ジメチルジフェノキシシラン33.50g(0.14mol)、及び、触媒としての炭酸セシウム11μmol/mol(触媒量は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。180℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。
その後、1.5時間かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を240℃、減圧度を4hPa以下とし、さらに1.5時間保持することで、無色透明のポリアリーレンシロキサンを得た。
GPCを用いてポリアリーレンシロキサンのMwを測定した結果、26,699であった。
【0219】
(実施例B-2)
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン30.03g(0.13mol)、ジメチルジフェノキシシラン34.40g(0.14mol)、及び、触媒としての炭酸セシウム11μmol/mol(触媒量は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。180℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。
その後、1.5時間かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を240℃、減圧度を4hPa以下とし、さらに1.5時間保持することで、無色透明のポリアリーレンシロキサンを得た。
GPCを用いてポリアリーレンシロキサンのMwを測定した結果、33,521であった。
【0220】
(実施例B-3)
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン30.05g(0.13mol)、ジメチルジフェノキシシラン34.69g(0.14mol)、及び、触媒としての炭酸セシウム11μmol/mol(触媒量は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。180℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。
その後、1.5時間かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を240℃、減圧度を4hPa以下とし、さらに1.5時間保持することで、無色透明のポリアリーレンシロキサンを得た。
GPCを用いてポリアリーレンシロキサンのMwを測定した結果、30,603であった。
【0221】
(実施例B-4)
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン30.03g(0.13mol)、ジメチルジフェノキシシラン35.10g(0.14mol)、及び、触媒としての炭酸セシウム11μmol/mol(触媒量は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。180℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。
その後、1.5時間かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を240℃、減圧度を4hPa以下とし、さらに1.5時間保持することで、無色透明のポリアリーレンシロキサンを得た。
GPCを用いてポリアリーレンシロキサンのMwを測定した結果、36,940であった。
【0222】
(実施例B-5)
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン30.08g(0.13mol)、ジメチルジフェノキシシラン36.00g(0.15mol)、及び、触媒としての炭酸セシウム11μmol/mol(触媒量は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。180℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。
その後、1.5時間かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を240℃、減圧度を4hPa以下とし、さらに1.5時間保持することで、無色透明のポリアリーレンシロキサンを得た。
GPCを用いてポリアリーレンシロキサンのMwを測定した結果、39,994であった。
DSCを用いてポリアリーレンシロキサンのTgを測定した結果、49℃であった。
【0223】
(実施例B-6)
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン30.03g(0.13mol)、ジメチルジフェノキシシラン37.38g(0.15mol)、及び、触媒としての炭酸セシウム11μmol/mol(触媒量は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。180℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。
その後、1.5時間かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を240℃、減圧度を4hPa以下とし、さらに1.5時間保持することで、無色透明のポリアリーレンシロキサンを得た。
GPCを用いてポリアリーレンシロキサンのMwを測定した結果、34,196であった。
【0224】
(実施例B-7)
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン17.51g(0.077mol)、ジメチルジフェノキシシラン20.93g(0.086mol)、及び、触媒としての炭酸セシウム7μmol/mol(触媒量は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。180℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。
その後、1時間かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を4hPa以下とし、さらに1.5時間保持することで、無色透明のポリアリーレンシロキサンを得た。
GPCを用いてポリアリーレンシロキサンのMwを測定した結果、63,257であった。
DSCを用いてポリアリーレンシロキサンのTgを測定した結果、54℃であった。
【0225】
(合成例3)
下記式(3)で表されるオクタフェニルシクロテトラシロキサン14.9g(0.19mol)、ジフェニルカーボネート16.1g(0.08mol)、及び、触媒としての炭酸セシウム33mg(0.1mmol)を、窒素雰囲気下に置換して200℃で10分間攪拌した。室温冷却後に固化した反応混合物に20gのヘプタンを加え、90℃とした後熱時濾過を行った。得られた濾液を室温で3日間放置することで白色結晶を析出させた。さらに5℃に冷却したヘプタン10gを加えた混合物の濾過により得られた濾紙上の結晶を取り出し、40℃、減圧度1hPaで45時間乾燥させたところ、24.1gの白色粉末が得られた。得られた粉末を
1H-NMRで分析した結果、ジフェニルジフェノキシシランであることを確認した。ジフェニルジフェノキシシラン(
1H-NMR(CDCl3,500MHz,δ;ppm)=6.915、6.927、6.939、6.952、6.965(p;6H)、7.142、7.155、7.169(t;4H)、7.354、7.366、7.379(t;4H)、7.425、7.437、7.449(t;2H))、7.750、7.762(d;4H) 。モル収率は81.1%であった。
【化64】
【0226】
(実施例B-8)
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン11.75g(0.052mol)、ジフェニルジフェノキシシラン20.25g(0.055mol)、及び、触媒としての炭酸セシウム20μmol/mol(触媒量は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。180℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。
その後、1時間かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を4hPa以下とし、さらに1.5時間保持することで、無色透明のポリアリーレンシロキサンを得た。
GPCを用いてポリアリーレンシロキサンのMwを測定した結果、24,482であった。
DSCを用いてポリアリーレンシロキサンのTgを測定した結果、89℃であった。
【0227】
(比較例B-1)
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン20.00g(0.088mol)、及び、ジメチルジフェノキシシラン23.62g(0.097mol)を攪拌機の備え付けた100ml4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。180℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。
その後、系内を240℃、及び、減圧度4hPa(400Pa)以下として、エステル交換反応を試みたが、原料は留去してしまい、反応は進行しなかった。
【0228】
(比較例B-2)
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン21.28g(0.093mol)、ジメチルジフェノキシシラン25.12g(0.10mol)、及び、触媒としての炭酸セシウムを11μmol/mol(触媒量は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。180℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。
その後、常圧下で1.5時間かけて、系内を240℃まで昇温し、さらに1.5時間保持することで、無色透明のポリアリーレンシロキサンを得た。
GPCを用いてポリアリーレンシロキサンのMwを測定した結果、1,547であった。
【0229】
(比較例B-3)
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン29.96g(0.13mol)、ジメチルジフェノキシシラン36.10g(0.15mol)、及び、触媒としての炭酸セシウム16600μmol/mol(又は、16.6mmol/mol:触媒量は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに対する相対的なモル数)とを攪拌機の備え付けた100ml4つ口フラスコに入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。180℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。
その後、1時間かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を240℃、減圧度を4hPa以下とし、さらに1.5時間保持することで、無色透明のポリアリーレンシロキサンを得た。
GPCを用いて無色透明のポリアリーレンシロキサンのMwを測定した結果、886であった。
【0230】
(比較例B-4)
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン30.75g(0.14mol)、及び、ジメチルジフェノキシシラン36.90g(0.15mol)を攪拌機の備え付けた100ml4つ口フラスコに入れた。
その後、直ちに系内を240℃、及び、減圧度4hPa(400Pa)以下として、エステル交換反応を試みたが、原料は留去してしまい、反応は進行しなかった。
【0231】
各実施例、及び、比較例の結果を以下の表6に示す。
【表6】