(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113025
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】複合長尺体
(51)【国際特許分類】
D06M 15/227 20060101AFI20240814BHJP
D01F 6/04 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
D06M15/227
D01F6/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】67
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024090026
(22)【出願日】2024-06-03
(62)【分割の表示】P 2022142219の分割
【原出願日】2016-10-07
(31)【優先権主張番号】15189133.0
(32)【優先日】2015-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】522355798
【氏名又は名称】アビエント プロテクティブ マテリアルズ ビー. ブイ.
【氏名又は名称原語表記】Avient Protective Materials B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】マリッセン, ロエロフ
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダース, ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ボスマン, リゴバート
(72)【発明者】
【氏名】ウィンキー, デートリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ニエラバ, レオナルド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】長尺体を製造するための方法と、それによって得ることができる繰り返し屈曲性に優れた複合材料とを提供する。
【解決手段】高機能ポリエチレン繊維と、高分子樹脂とを含む長尺体を製造するための方法であって、高分子樹脂の水性懸濁液をHPPE繊維に適用するステップと、HPPE繊維を集束するステップと、水性懸濁液を部分的に乾燥させるステップと、任意選択的に、長尺体に温度、張力および/または圧力処理を適用するステップとを含み、高分子樹脂は、エチレンおよび/またはプロピレンの単独重合体または共重合体である、方法に関する。本発明は、前記方法によって得ることができる長尺体と、網、ラウンドスリング、スプライス、ベルトまたは合成物質製の鎖の輪等、この長尺体を含む物品とにさらに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺体であって、高機能ポリエチレン繊維と、前記長尺体にわたる高分子樹脂とを含む長尺体を製造するための方法であって、
a)高機能ポリエチレン(HPPE)繊維を提供するステップと、
b)c)の前、その間またはその後に前記高分子樹脂の水性懸濁液を前記HPPE繊維に適用するステップと、
c)長尺体を形成するために前記HPPE繊維を集束するステップと、
d)ステップb)において適用された前記高分子樹脂の前記水性懸濁液を少なくとも部分的に乾燥させるステップであって、それにより、ステップa)、b)、c)およびd)が完了した時点で、長尺体であって、前記高機能ポリエチレン繊維と、前記長尺体にわたる前記高分子樹脂とを含む長尺体を得る、ステップと、
e)任意選択的に、ステップd)の前、その間および/またはその後に、前記高分子樹脂を少なくとも部分的に溶融するために、前記樹脂の溶融温度~153℃の範囲の温度をステップc)の前記長尺体に印加するステップと、
f)任意選択的に、ステップe)の前、その間および/またはその後に、前記長尺体を少なくとも部分的に圧密化および/または伸長するために、ステップd)で得られた前記長尺体に圧力および/または張力を印加するステップと
を含み、前記高分子樹脂は、エチレンおよび/またはプロピレンの単独重合体または共重合体であり、前記高分子樹脂は、ISO 1183に準拠して測定されて860~930kg/m3の範囲の密度を有し、融解ピーク温度は、40~140℃の範囲であり、および融解熱は、少なくとも5J/gである、方法。
【請求項2】
前記HPPE繊維は、連続フィラメントまたはステープル繊維である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記HPPE繊維は、溶融紡糸法、ゲル紡糸法または固体粉体圧縮法によって作製される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記水性懸濁液中の高分子樹脂の濃度は、4~60重量%、好ましくは5~50重量%、最も好ましくは6~40重量%であり、ここで、重量百分率は、水性懸濁液の総重量に対する高分子樹脂の重量である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記HPPE繊維は、少なくとも1.0N/tex、好ましくは1.5N/tex、より好ましくは少なくとも1.8N/texの強度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記HPPE繊維は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含み、好ましくは、前記HPPE繊維は、実質的にUHMWPEからなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記長尺体中の高分子樹脂の量は、1~25重量%、好ましくは2~20重量%、最も好ましくは4~18重量%であり、ここで、重量百分率は、前記長尺体の総重量に対する高分子樹脂の重量である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記高分子樹脂の密度は、870~920kg/m3、好ましくは875~910kg/m3の範囲である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記融解ピーク温度は、50~130℃の範囲、好ましくは60~120℃の範囲である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記融解熱は、少なくとも10J/g、好ましくは少なくとも15J/g、より好ましくは少なくとも20J/g、さらにより好ましくは少なくとも30J/g、最も好ましくは少なくとも50J/gである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる長尺体であって、HPPE繊維と、前記長尺体にわたる高分子樹脂とを含み、前記高分子樹脂は、エチレンおよび/またはプロピレンの単独重合体または共重合体であり、前記高分子樹脂は、ISO 1183に準拠して測定されて860~930kg/m3の範囲の密度を有し、溶融温度は、40~140℃の範囲であり、および融解熱は、少なくとも5J/gである、長尺体。
【請求項12】
前記長尺体は、ロープまたはリボンである、請求項11に記載の長尺体。
【請求項13】
少なくとも80重量%のUHMWPEを含み、ここで、重量百分率は、前記長尺体の総重量に対するUHMWPEの重量である、請求項11または12に記載の長尺体。
【請求項14】
請求項11~13のいずれか一項に記載の長尺体を含む物品であって、網、ラウンドスリング、スプライス、ベルトまたは合成物質製の鎖の輪である、物品。
【請求項15】
高分子樹脂の水性懸濁液の、HPPE繊維のバインダー材料としての使用であって、前記高分子樹脂は、エチレンおよび/またはプロピレンの単独重合体または共重合体であり、前記高分子樹脂は、ISO 1183に準拠して測定されて860~930kg/m3の範囲の密度を有し、融解ピーク温度は、40~140℃の範囲であり、および融解熱は、少なくとも5J/gである、使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、高機能ポリエチレン繊維と、高分子樹脂とを含む長尺体を製造するための方法と、このような複合長尺体とに関する。ロープおよびリボン等の長尺体は、とりわけ、係船索、巻き上げロープ、縫合糸、高圧容器、釣り糸等の多くの用途における耐荷重要素として使用されるように構成される。
【0002】
ロープおよびリボンの典型的な用途には繰り返し屈曲が伴い、その中にはシーブ上で屈曲される用途がある。このような用途に用いられるロープは、ドラム、係船柱、プーリー、シーブ等の上で頻繁に引っ張られ、その結果としてロープが特に擦れおよび屈曲を受ける。ロープがこのように頻回の屈曲または曲げを受けると、外部および内部の摩耗および摩擦熱等に起因するロープおよび繊維の損傷によりロープが破損する可能性がある。このような疲労破損は屈曲疲労または曲げ疲労と称されることが多い。
【0003】
屈曲疲労が改善されたHPPE繊維ロープが、例えば、国際公開第2007/062803号パンフレットおよび国際公開第2011/015485号パンフレットに記載されている。国際公開第2007/062803号パンフレットには、高機能ポリエチレン繊維およびポリテトラフルオロエチレン繊維から構成されるロープが記載されている。このロープは、3~18質量%のポリオルガノシロキサン流体を含有し得る。国際公開第2011/015485号パンフレットには、架橋シリコーンゴムで被覆されたHPPE繊維を含むロープが記載されている。このように、先行技術によれば、屈曲用途におけるHPPE繊維の摩擦挙動を低減するために、シリコーン組成物を単独でまたはPTFE等の低摩擦繊維と組み合わせて使用することが提案されてきた。特に国際公開第2011/015485号パンフレットには、高性能屈曲用途の分野において、その時点までに確立された技術が記載されている。
【0004】
国際公開第2007/062803号パンフレットおよび国際公開第2011/015485号パンフレットに記載されているロープには幾つかの欠点があり、特にロープ内において、PTFEフィラメントまたはシリコーン組成物の形態である、耐荷重性を有しない構成要素がかなりの量で存在する。その製造プロセスは、材料の組合せまたはそれに関与する化学反応という点で複雑であり、その結果として製造物が変色することも多い。他の欠点は、ロープ構成物の潤滑性を増大させたことにより、特に牽引巻取り過程やロープにスプライスおよび結び目を作る際の技術的な取扱いに関する問題が発生することである。最後に重要な点として、記載されているロープは材料の浸出が起こりやすく、一方で破片、ゴミ、塵、水等の夾雑物がロープ構造内に侵入する可能性があり、劣化が促進される。これは保護層またはさらなる被覆を追加することによって補われることが多いが、これらは製品の取扱い性のみならず屈曲性にも悪影響を与える。
【0005】
本発明の目的は、上に述べた問題を少なくとも部分的に克服する製造プロセスと、それによって得ることができる繰り返し屈曲性に優れた複合材料とを提供することである。
【0006】
本発明は、高機能ポリエチレン(HPPE)繊維を提供するステップと、長尺体を形成するためにHPPE繊維を集束する前、その間またはその後に、高分子樹脂の水性懸濁液をHPPE繊維に適用するステップと、HPPE繊維と、長尺体にわたる高分子樹脂とを含む長尺体を得るために、HPPE繊維に適用した高分子樹脂の水性懸濁液を少なくとも部分的に乾燥させるステップと、任意選択的に、懸濁液を少なくとも部分的に乾燥させる前、その間および/またはその後に、高分子樹脂を少なくとも部分的に溶融するために、樹脂の溶融温度~153℃の範囲の温度を長尺体に印加するステップと、任意選択的に、高分子樹脂を少なくとも部分的に溶融する前、その間および/またはその後に、長尺体を少なくとも部分的に圧密化および/または伸長するために、長尺体に圧力および/または張力を印加するステップとを含むプロセスであって、高分子樹脂は、エチレンおよび/またはプロピレンの単独重合体または共重合体であり、前記高分子樹脂は、ISO1183に準拠して測定されて860~930kg/m3の範囲の密度を有し、融解ピーク温度は、40~140℃の範囲であり、および融解熱は、少なくとも5J/gである、プロセスにおいて、高機能ポリエチレン繊維と、高分子樹脂を含む長尺体とを製造することにより、この要求を解決するものである。
【0007】
予想外にも、本発明の方法に従って製造された長尺体は、シーブ上での繰り返し屈曲性に優れ、架橋シリコーンゴムを被覆した繊維の繰り返し数に匹敵するかまたはそれを超えることさえありながら、上に述べた問題を少なくとも部分的に解消することが見出された。本発明者らは、この優れた屈曲性に他の向上した機械的性質が伴うことを見出した。前記向上は、本発明によるの長尺体の、例えば、強度および結節滑脱力(knot slippage force)に関して認められた。高分子樹脂が存在することにより長尺体の重量は増加するが、長尺体の破断力に加えて強度さえ増大することも認められた。さらに、本発明による長尺体は、長尺体自体またはHPPEヤーンが一体性を示すため、ロープが夾雑物により損傷するリスクを低減することができる。
【0008】
本明細書における繊維とは、長手方向の寸法が横断寸法である幅および厚みよりもはるかに長い、細長い物体と理解される。したがって、繊維という語は、規則的または不規則な断面を有するフィラメント、帯状片、帯、テープ等を包含する。繊維は、当該技術分野においてフィラメントまたは連続フィラメントとして知られるもののように長さが連続していてもよく、または当該技術分野においてステープル繊維として知られているもののように長さが途切れていてもよい。本発明におけるヤーンとは、多数の別々の繊維を含む細長い物体である。本明細書において別々の繊維とは、繊維自体と理解される。好ましくは、本発明のHPPE繊維は、HPPEテープ、HPPEフィラメントまたはHPPEステープル繊維である。
【0009】
本発明に関連するHPPE繊維とは、引張強度、耐摩耗性、耐切創性等の機械的性質が改良されたポリエチレン繊維と理解される。好ましい実施形態において、高機能ポリエチレン繊維は、少なくとも1.0N/tex、より好ましくは少なくとも1.5N/tex、より好ましくは少なくとも1.8N/tex、さらにより好ましくは少なくとも2.5N/tex、最も好ましくは少なくとも3.5N/texの引張強度を有するポリエチレン繊維である。好ましいポリエチレンは、高分子量ポリエチレン(HMWPE)または超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)である。高機能ポリエチレン繊維が超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含み、強度が少なくとも2.0N/tex、より好ましくは少なくとも3.0N/texである場合に最良の結果が得られる。
【0010】
好ましくは、本発明の長尺体は、高分子量ポリエチレン(HMWPE)もしくは超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)またはこれらの組合せを含むHPPE繊維を含み、好ましくは、HPPE繊維は、実質的にHMWPEおよび/またはUHMWPEからなる。本発明者らは、HMWPEおよびUHMWPEを用いた場合、強度または結節滑脱力に関して得られる効果が最大となることを確認した。
【0011】
本発明に関連する「実質的に~からなる」という表現は、「少量のさらなる化学種を含み得る」ことを意味し、ここで、少量とは、前記さらなる化学種が5重量%以下、好ましくは2重量%以下であり、換言すれば、HMWPEおよび/またはUHMWPEを「95重量%超含み」、好ましくは「98重量%超含む」ことを意味する。
【0012】
本発明に関連するポリエチレン(PE)は線状であっても分岐状であってもよく、線状ポリエチレンが好ましい。本明細書において線状ポリエチレンとは、炭素原子100個当たりの側鎖が1未満、好ましくは炭素原子300個当たりの側鎖が1未満のポリエチレンを意味するものと理解される。側鎖、すなわち分岐鎖は、一般に、少なくとも10個の炭素原子を含む。側鎖は、好適には、FTIRで測定することができる。線状ポリエチレンは、線状ポリエチレンと共重合可能な1種以上の他のアルケン(プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチルペンテン、1-ヘキセンおよび/または1-オクテン等)を5mol%以下でさらに含むことができる。
【0013】
PEは、好ましくは高分子量であり、極限粘度(IV)は、少なくとも2dl/g、より好ましくは少なくとも4dl/g、最も好ましくは少なくとも8dl/gである。このようなポリエチレンでIVが4dl/gを超えるものは超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)とも称される。極限粘度は、数平均分子量および重量平均分子量(MnおよびMw)のような実際の分子質量のパラメータよりも容易に求めることができる分子量の目安である。
【0014】
本発明による方法に使用されるHPPE繊維は、様々なプロセス、例えば、溶融紡糸法、ゲル紡糸法または固体粉体圧縮(solid state powder compaction)法によって得ることができる。
【0015】
本発明の繊維を製造するための好ましい1つの方法は、ポリエチレン粉末をエンドレスベルトの組合せ間に供給することと、ポリマー粉末をその融点未満の温度で圧縮成形することと、結果として得られた圧縮成形されたポリマーを圧延した後、固相延伸することとを含む固相粉末法である。このような方法は、例えば、米国特許第5,091,133号明細書に記載されており、これは本明細書の一部を構成するものとして本明細書に援用される。必要に応じて、ポリマー粉末を供給して圧縮成形する前に、ポリマー粉末を、前記ポリマーの融点よりも高い沸点を有する好適な液体化合物と混合することができる。圧縮成形は、エンドレスベルト間でポリマー粉末を搬送しながらポリマー粉末を一時的に保持することにより実施することもできる。これは、例えば、エンドレスベルトと連動する加圧プレートおよび/またはローラを取り付けることにより実施することができる。
【0016】
本発明に使用される繊維を製造するための他の好ましい方法は、ポリエチレンを押出機に供給することと、その融点を超える温度で押出すことにより成形品を得ることと、押出された繊維をその溶融温度未満で延伸することとを含む。必要に応じて、ポリマーを押出機に供給する前に、例えばゲルを形成するために(好ましくは超高分子量ポリエチレンを使用した場合など)、ポリマーを好適な液体化合物と混合することもできる。
【0017】
さらなる他の方法において、本発明に使用される繊維は、ゲル紡糸法によって作製される。好適なゲル紡糸法は、例えば、英国特許第A-2042414号明細書、英国特許第A-2051667号明細書、欧州特許出願公開第0205960A号明細書および国際公開第01/73173A1号パンフレットに記載されている。簡潔には、ゲル紡糸法は、極限粘度の高いポリエチレンの溶液を調製することと、この紡糸原液を、溶解温度を超える温度で繊維に押出成形することと、この紡糸原液の繊維をゲル化温度未満に冷却し、それによって繊維のポリエチレンを少なくとも部分的にゲル化させることと、溶媒を少なくとも部分的に除去する前、その間および/またはその後に繊維を延伸することとを含む。
【0018】
ここに記載するHPPE繊維の製造方法では、生成した繊維を当該技術分野において公知の手段により延伸、好ましくは一軸延伸することができる。このような手段は、好適な延伸装置で押出延伸および引張延伸することを含む。機械的な引張強度および剛直性を増大させるために多段延伸を実施してもよい。好ましいUHMWPE繊維の場合、延伸は、通常、一軸方向に多段延伸工程で実施される。最初の延伸工程は、例えば、延伸倍率(延伸比とも称される)を少なくとも1.5、好ましくは少なくとも3.0とする延伸を含むことができる。多段延伸を行うと、典型的には、延伸温度が120℃以下の場合には延伸倍率が9以下となり、延伸温度が140℃以下の場合には延伸倍率が25以下となり、延伸温度が150℃以下および150℃を超える場合には延伸倍率が50以下となるかまたは50を超えることができる。多段延伸温度を高くすることにより、延伸倍率を約50超に到達させることができる。こうすることによりHPPE繊維が生成し、超高分子量ポリエチレンの場合、1.5N/tex~3N/texおよびそれを超える引張強度を得ることができる。
【0019】
本発明の1つのプロセスステップでは、HPPE繊維に水性懸濁液を適用する。このような懸濁液の適用は、繊維を集束させて長尺体を形成する前、その間またはその後に行われる。水性懸濁液とは、高分子樹脂の粒子が非溶媒として作用する水の中に懸濁しているものと理解される。高分子樹脂の濃度は幅広く変化させることができ、この濃度は、主として、水中に樹脂の安定な懸濁液を配合することができる能力により制限される。典型的な濃度範囲は、水中の高分子樹脂が2~80重量%となる範囲であり、この重量百分率は、水性懸濁液の総重量に対する高分子樹脂の重量である。好ましい濃度は4~60重量%であり、より好ましくは5~50重量%、最も好ましくは6~40重量%である。分散液中の高分子樹脂のさらにより好ましい濃度は、少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも18重量%、さらにより好ましくは少なくとも20重量%である。他の好ましい実施形態において、水性分散液中の高分子樹脂の濃度は、10~50重量%、好ましくは15~40重量%、最も好ましくは18重量%~30重量%である。このように高分子樹脂の好ましい濃度がより高いため、長尺体から水を除去するために必要な時間およびエネルギーを抑えながら濃度がより高い長尺体が得られるという利点が得られる可能性がある。懸濁液は、イオン性もしくは非イオン性界面活性剤、粘着付与樹脂、安定剤、酸化防止剤、着色剤等の添加剤、または懸濁液、樹脂およびもしくは作製される長尺体の特性を改質する他の添加剤をさらに含むことができる。
【0020】
適用される水性懸濁液中に存在し、最終的に得られる本発明の長尺体に存在する高分子樹脂は、エチレンおよび/またはプロピレンの単独重合体または共重合体であり、これらはポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらの共重合体とも称され、本発明に関してポリオレフィン樹脂とも称される。これは、ポリエチレンの様々な形態、エチレン-プロピレン共重合体、1-ブテン、イソブチレンに加えて、ヘテロ原子含有モノマー(アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、無水マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル等)等のコモノマーとの他のエチレン共重合体;一般には、α-オレフィンおよび環状オレフィン単独重合体および共重合体またはこれらのブレンド物を含むことができる。好ましくは、高分子樹脂は、コモノマーとして2~12個のC原子を有する1種以上のオレフィン、特にエチレン、プロピレン、イソブテン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、アクリル酸、メタクリル酸および酢酸ビニルを含むことができるエチレンまたはプロピレンの共重合体である。本発明の高分子樹脂には、コモノマーが存在しない幅広い種類のポリエチレンまたはポリプロピレンを使用することができ、その中でも、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレンまたはこれらのブレンド物が挙げられる。
【0021】
さらに、本発明の高分子樹脂は、官能基化されたポリエチレンまたはポリプロピレンまたはこれらの共重合体とすることができ、あるいは、本発明の高分子樹脂は、官能基化されたポリマーを含むことができる。このような官能基化されたポリマーは官能性共重合体またはグラフト重合体と称されることが多い。ここで、グラフトするとは、主としてヘテロ原子を含むエチレン性不飽和モノマーでポリマー主鎖を化学変性することを指し、一方、官能性共重合体とは、エチレンまたはプロピレンをエチレン性不飽和モノマーと共重合させることを指す。好ましくは、エチレン性不飽和モノマーは酸素および/または窒素原子を含む。最も好ましくは、エチレン性不飽和モノマーはカルボン酸基またはその誘導体を含み、その結果として、アシル化ポリマー、具体的にはアセチル化ポリエチレンまたはポリプロピレンを生成する。好ましくは、カルボン酸系反応体は、アクリル酸、メタクリル酸、ケイ皮酸、クロトン酸ならびにマレイン酸、フマル酸およびイタコン酸系の反応体からなる群から選択される。前記官能基化されたポリマーは、通常、カルボン酸系反応体を1~10重量%またはそれを超えて含む。樹脂をこのように官能基化することにより、樹脂の分散性を実質的に向上させることが可能になり、および/またはこの目的のために存在するさらなる添加剤(界面活性剤等)を減らすことが可能になる。好ましくは、懸濁液は、高分子樹脂の溶媒として作用し得る添加剤を実質的に含まない。このような懸濁液は無溶媒と称することもできる。本明細書における溶媒とは、室温で1重量%を超える量の高分子樹脂が可溶な液体と理解され、一方、非溶媒とは、室温で0.1重量%未満の量の高分子樹脂が可溶である液体と理解される。
【0022】
高分子樹脂は、ISO1183に準拠して測定されて860~930kg/m3、好ましくは870~920kg/m3、より好ましくは875~910kg/m3の範囲の密度を有する。本発明者らは、前記好ましい範囲内の密度を有するポリオレフィン樹脂を用いることにより、長尺体の機械的性質と、本発明のプロセスを実施する際の懸濁液(特に乾燥後の懸濁液)の加工性とのバランスが向上することを確認した。
【0023】
本発明の高分子樹脂は、ASTM E793およびASTM E794に準拠し、乾燥試料を10K/分の昇温速度で加熱した場合の2回目の昇温曲線を考慮して測定された融解ピーク温度が40~140℃の範囲であり、融解熱が少なくとも5J/gである、半結晶性ポリオレフィンである。本発明の好ましい実施形態において、高分子樹脂は、少なくとも10J/g、好ましくは少なくとも15J/g、より好ましくは少なくとも20J/g、さらにより好ましくは少なくとも30J/g、最も好ましくは少なくとも50J/gの融解熱を有する。驚くべきことに、本発明者らは、融解熱が増大すると、長尺体が単繊維様の向上した性質を示すことを見出した。高分子樹脂の融解熱は、最大融解熱の理論値(完全に結晶化したポリエチレンまたはポリプロピレンの場合には約300J/g)以外には特に上限の制限がない。本発明の高分子樹脂は、融解ピーク温度が特定の範囲内にある半結晶性生成物である。したがって、高分子樹脂の融解熱の妥当な上限は最大で200J/g、好ましくは最大で150J/gである。他の好ましい実施形態では、高分子樹脂の融解ピーク温度は50~130℃の範囲であり、好ましくは60~120℃の範囲である。このような好ましい融解ピーク温度を有することにより、長尺体の乾燥条件および/または圧密化条件に注意を払う必要性を確実に減らしながら、優れた特性を有する長尺体が製造されるという意味で、長尺体を製造するためのより堅実な処理方法が得られる。高分子樹脂は1を超える融解ピーク温度を有し得る。このような場合、前記溶融温度の少なくとも1つは上述の範囲内にある。高分子樹脂の第2の融解ピーク温度および/またはさらなる融解ピーク温度はこの温度範囲内にあっても範囲外であってもよい。そのようになる可能性があるのは、例えば、高分子樹脂がポリマーのブレンド物である場合である。
【0024】
高分子樹脂の弾性率は幅広い範囲内で変化させることができる。弾性率が低い、例えば弾性率が約50MPaである樹脂を用いると、強度特性に優れた非常に可撓性の高い長尺体が得られるであろう。弾性率が高い、例えば、弾性率が約500MPaである樹脂を用いると、構造的外観が向上したモノフィラメント等の長尺体を提供することができる。用途ごとに、その用途に使用するための具体的な要件に関連する樹脂の最適な弾性率が存在し得る。
【0025】
懸濁液のHPPE繊維への適用は、当該技術分野において知られている方法により行うことができ、特に懸濁液を繊維に添加するタイミング、繊維の性質、懸濁液の濃度および粘度に依存し得る。懸濁液は、繊維に、例えば、噴霧、浸漬、刷毛塗り、トランスファーロール塗工等により適用することができ、特に本発明の長尺体中に存在させようとする高分子樹脂の量に依存する。長尺体中に存在する懸濁液の量は、長尺体の意図された用途に応じて幅広く変化させることができ、採用する方法のみならず、懸濁液の性質によっても調整することができる。幾つかの適用では、含浸された長尺体を乾燥させるために必要なエネルギーおよび時間を削減するために高濃度の懸濁液が少量で用いられる。他の適用において、例えば、低粘度の懸濁液を用いて湿潤速度および含浸速度を増大させようとする場合、低濃度の懸濁液が有利となり得る。最後に重要な点として、懸濁液の濃度および量は、前記長尺体中にマトリックス材料として存在する高分子樹脂を所要量で含む長尺体が得られるように選択すべきである。好ましい実施形態において、高分子樹脂の前記濃度は、最大で25重量%、好ましくは最大で20重量%、さらにより好ましくは最大で18重量%、最も好ましくは最大で16重量%である。他の好ましい実施形態において、高分子樹脂の濃度は、1~25重量%、好ましくは2~20重量%、最も好ましくは4~18重量%であり、ここで言う重量百分率は、長尺体の総重量当たりの高分子樹脂の重量である。
【0026】
高分子の水性懸濁液をHPPE繊維に適用した後、含浸された繊維、好ましくは、含浸された繊維を含む集束体は、少なくとも部分的に乾燥される。このような乾燥ステップは、集束体中に存在する水の少なくとも一部を例えば蒸発させることによって除去することを含む。好ましくは、この乾燥ステップ中、水の大部分、より好ましくは基本的に全部が、任意選択的に他の成分と一緒に除去される。乾燥、すなわち水の除去は、当該技術分野において知られている方法により行うことができる。通常、水の蒸発には長尺体の温度を水の沸点までまたは沸点を超えるまで昇温することを含む。昇温は、減圧により補助するか、もしくは減圧に置き換えるか、または周囲雰囲気の連続的な入れ替えと組み合わせることができる。典型的な乾燥条件の温度は、40~130℃、好ましくは50~120℃である。乾燥プロセスの典型的な圧力は、10~110kPa、好ましくは20~100kPaである。
【0027】
本発明のプロセスは、任意選択的に、水性懸濁液の一部を乾燥させる前、その間および/またはその後に、高分子樹脂を含む繊維を高分子樹脂の溶融温度~153℃の範囲の温度に加熱するステップを含むことができる。繊維の加熱は、加熱温度に設定したオーブン内に繊維を滞留時間保持し、含浸させた繊維を熱放射に曝露するか、または長尺体を加熱媒体、例えば、加熱用流体、加熱された気体流または加熱された面と接触させることにより実施することができる。好ましくは、この温度は、高分子樹脂の融解ピーク温度を少なくとも2℃、好ましくは少なくとも5℃、最も好ましくは少なくとも10℃上回る温度である。温度の上限は、最大で153℃、好ましくは最大で150℃、より好ましくは最大で145℃、最も好ましくは最大で140℃である。滞留時間は、好ましくは2~100秒間、より好ましくは3~60秒間、最も好ましくは4~30秒間である。好ましい実施形態において、このステップにおける繊維および/または長尺体の加熱は重複し、より好ましくは、水性懸濁液の乾燥ステップと組み合わせて行われる。含浸させた繊維に温度勾配をかけることが実際的であると判明する場合もある。その場合、温度は室温付近から加熱ステップの最大温度まである時間にわたって昇温され、こうすることにより、繊維は懸濁液の乾燥から高分子樹脂の少なくとも部分的な溶融への過程を連続的に辿ることになる。
【0028】
本発明のプロセスのさらなる任意選択的なステップでは、高分子樹脂を少なくとも部分的に溶融する任意選択的なステップの前、その間および/またはその後に、長尺体に圧力および/または張力を印加することにより、長尺体を少なくとも部分的に圧密化および/または伸長する。前記圧力は、当該技術分野において公知の手段を用いて圧縮することによって印加することができ、これは、特にカレンダ、平坦な長円形または円形形状を有する平滑化装置とすることができる。この圧縮手段には隙間が形成されており、この隙間を加工すべき長尺体が通過することになる。圧密化の圧力は、一般に、100kPa~10MPaの範囲、好ましくは110~500kPaの範囲である。圧縮は、好ましくは、含浸させた長尺体を少なくとも部分的に乾燥させた後、より好ましくは、温度を印加する任意選択的なステップ(その際、長尺体の温度を高分子樹脂の溶融温度~153℃の範囲とする)中またはその後に実施される。当該技術分野において知られている張力付与手段により張力を付与することができ、特にローラースタンド、カレンダを単独で用いるか、または長尺体に動的もしくは静的張力を付与するのに適した上に述べた圧縮手段と組み合わせて用いることができる。張力付与手段は長尺体の長手方向に張力を付与する。長尺体に付与される張力は、0~長尺体の最大破断荷重までの幅広い範囲で変化させることができる。好ましくは、この張力は、長尺体の最大破断荷重の最大50%、より好ましくは25%、最も好ましくは最大10%である。張力付加は、好ましくは、長尺体を少なくとも部分的に乾燥させた後、より好ましくは、温度を印加する任意選択的なステップ(その際の長尺体の温度は、高分子樹脂の溶融温度~153℃の範囲である)中またはその後に実施される。長尺体に付加される張力は、長尺体の繊維間に圧力を生じさせ、これは、本発明と併せて有利に付加することができる。
【0029】
本発明の特定の実施形態において、長尺体の圧縮は、含浸させた長尺体を、含浸ステップまたは部分的に乾燥させるステップ中またはその後に、少なくとも1つのシーブ上を通過させることにより達成することができ、シーブは、好ましくはU字またはV字型の溝を有する。
【0030】
本発明はまた、本発明のプロセスにより製造される長尺体にも関する。このような長尺体は、HPPE繊維の集束体および高分子樹脂を含み、この高分子樹脂は、エチレンおよび/またはプロピレンの単独重合体または共重合体であり、この高分子樹脂は、ISO1183に準拠して測定されて860~930kg/m3の範囲の密度を有し、溶融温度は、40~140℃の範囲であり、および融解熱は、少なくとも5J/gである。このような長尺体は、本発明の方法に関して上述したまたは後述する好ましい実施形態および潜在的な利点に依存する。一方、それとは逆に、この長尺体に関する好ましい実施形態に本発明の方法を適応させることができる。
【0031】
本明細書における長尺体とは、細長い物体、特に長尺体の長手方向の寸法が、横断寸法である幅および厚みよりもはるかに長いHPPE繊維を含む細長い物体と理解される。したがって、長尺体という語には、これらに限定されるものではないが、ストランド、ケーブル、紐、ロープ、リボン、ホース、チューブ等が包含される。好ましくは、前記長手方向の寸法は長尺体の幅または厚みの寸法のいずれか長い方の少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも20倍、さらにより好ましくは少なくとも50倍、最も好ましくは少なくとも100倍長い。長尺体の断面形状は円形もしくは略円形、長円形または長方形の形状を有することができ、ここで、円形または略円形の断面を有する長尺体は、これらに限定されるものではないが、ストランド、ケーブル、紐、ロープ、ホースまたはチューブとなり得、一方、長円形または長方形の断面を有する長尺体は、一般に、リボンまたは帯状片と称される。
【0032】
長尺体の最も単純な形態は、引き揃えて互いに撚合していない2本以上の繊維からなる糸から構成される。このような繊維が撚合されていない糸は繊維束と称することもでき、上に詳述したように様々な断面形状を有することができる。繊維束の繊維は、実質的に同じ方向、すなわち長尺体の長手方向を向くことになる。さらに、糸は、2本以上の撚合された繊維から構成することもでき、これは一般にヤーンと称される。数本のヤーンを同方向または異方向に撚合することにより、いわゆる複合繊維束(composite bundle)、すなわちストランドを作製することもでき、これらを再び集束するかまたは他の配置の繊維と組み合わせてロープまたはリボン等の複雑な繊維集束体とすることもできる。本発明の長尺体における繊維の互いの配置は様々な形態とすることができ、特に繊維を平行集束、撚合、編組もしくは織成するか、またはヤーン配置もしくは当業者に知られている他の配置とすることができる。
【0033】
本発明に関連して、ロープとは、HPPE繊維を含む長尺体であり、この長尺体は、断面が略円形または円形を有するもののみならず、長円形の断面を有するものもあり、これは、張力をかけたロープの断面が、平らな形状、楕円形状または(一次ストランドの本数に応じて)略長方形状さえ呈することを意味する。好ましくは、このような長円形の断面のアスペクト比、すなわち短軸に対する長軸の比(または厚みに対する幅の比)は、1.2~4.0の範囲である。
【0034】
本発明によるロープは、撚合ロープ、編組ロープ、平行集束ロープ、ワイヤロープ様構成のロープ等の様々な構成をとることができる。ロープに含まれるストランドの本数も幅広い範囲内で変化させることができるが、優れた性能と製造容易性とが両立するように、一般には少なくとも3本、好ましくは最大16本である。
【0035】
一実施形態において、本発明のロープは編組構成を有し、それにより、使用中も密着性を維持する強靱でトルクバランスの取れたロープが得られる。様々な編組形態が知られており、一般に、それぞれロープを形成する方法により区別されている。好適な構成としては、蛇腹打ち(soutache braid)、袋打ち(tubular braid)および平打ちが挙げられる。袋打ちまたは丸打ち(circular braid)はロープ用途に最も一般的な打ち方であり、一般に、2本のストランドの組を互いに絡み合わせたものから構成されるが、異なるパターンも可能である。袋打ちのストランドの本数は幅広く変化させることができる。特に、ストランドの本数が多い場合および/またはストランドが比較的細い場合、袋打ちした編組ロープの中心部は中空となる可能性があり、編組ロープは長円形に潰れる可能性がある。
【0036】
本発明に従って編組されるロープのストランドの本数は、好ましくは少なくとも3本である。ストランドの本数に上限はないが、実際には、ロープのストランドの本数は一般に32本以下であろう。8本または12本のストランドを編組した構成を有するロープが特に好適である。このようなロープは強度および耐屈曲疲労性を好都合に兼ね備え、比較的単純な装置で経済的に製造することができる。
【0037】
本発明によるロープの構成の撚り長さ(撚合構成においてストランドが1周する長さ)または編組周期(編組ロープの幅に対するピッチ長)は特に重要ではない。好適な撚り長さおよび編組周期はロープの直径の4~20倍の範囲である。撚り長さまたは編組周期がより長いと、強度利用効率がより高く、しかしながら強靱性はより低く、スプライスがより難しい、より緩いロープとなる可能性がある。撚り長さまたは編組周期が短過ぎる場合、強度が大幅に低下するであろう。したがって、好ましくは、撚り長さまたは編組周期は、ロープの直径の約5~15倍、より好ましくはロープの直径の6~10倍である。
【0038】
本発明に関連して、リボンとは、厚みおよび幅を有し、厚みが幅よりも大幅に小さい長尺体である。好ましくは、リボンの幅対厚みの比は少なくとも5:1、より好ましくは少なくとも10:1であり、幅対厚みの比は、好ましくは最大で200:1、さらにより好ましくは最大で50:1である。リボンは、同様に、細幅織物、帯状片、帯状紐、帯または平帯と称することもできる。好ましくは、本発明のリボンの幅は2mm~200mm、より好ましくは4mm~100mm、最も好ましくは5mm~50mmであり、厚みは20マイクロメートル~5mm、好ましくは30マイクロメートル~4mm、最も好ましくは40マイクロメートル~2mmである。本発明のリボンは、その最も単純な形態において、リボンを形成する少なくとも2本、好ましくは少なくとも10本、最も好ましくは少なくとも100本の繊維を平行に配置し、この平行な繊維の配列を本発明の長尺体中に存在する高分子樹脂内を通過させることにより、互いに連結して一体化したリボンを形成することによって作製することができる。別法として、リボンは、当該技術分野において知られている構成により、ヤーンを、例えば、織成、編組または編成することにより繊維を絡み合わせた構造体、例えば平織りおよび/または綾織り構成を有する。リボンは、好ましくは、n層の織紐構成を有し、nは、好ましくは最大で4、より好ましくは3、最も好ましくは2である。細幅織物と称されることも多い織成リボンの場合、リボンの実質的に平行なヤーン(経糸)は本発明の長尺体のHPPE繊維を含み、横糸(緯糸)と一緒に織成されている。前記横糸は、前記HPPE繊維と同一であっても異なっていてもよい。
【0039】
本発明の適用可能性を主に長尺体に関して記載してきたが、ロープおよびリボンまたは一般的な長尺体の使用が知られており、これらも同様に本発明の範囲に包含される。特に、本発明の長尺体は、網(漁網等)、ラウンドスリング、ベルト(belt)、スプライスまたは合成物質製の鎖の輪(chain link)の製造に使用することができる。本発明による長尺体は、他の長尺体よりも結節強度が高いことが示されており、それによって本発明の使用が特に適したものになる。したがって、本発明の実施形態は、本発明の長尺体、好ましくは、網、スリング、スプライスまたは合成物質製の鎖の輪を含む物品である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態は、80重量%超のUHMWPE、好ましくは90重量%超のUHMWPE、最も好ましくは95重量%超のUHMWPEを含む長尺体に関し、ここで、重量%は、長尺体の総質量に対するUHMWPEの質量として表される。さらに好ましい実施形態において、長尺体中に存在するUHMWPEは、前記長尺体のHPPE繊維に含まれる。
【0041】
水性高分子懸濁液(ここで、前記懸濁液中に存在する高分子樹脂は上に述べた実施形態によるものである)を適用すると、特性が改善された製品が得られる。したがって、高分子樹脂の水性懸濁液をHPPE繊維のバインダーとして使用することは本発明のさらなる実施形態であり、この高分子樹脂は、エチレンおよび/またはプロピレンの単独重合体または共重合体であり、高分子樹脂は、ISO1183に準拠して測定されて860~930kg/m3の範囲の密度を有し、融解ピーク温度は、40~140℃の範囲であり、および融解熱は、少なくとも5J/gである。
【0042】
懸濁液のポリオレフィン樹脂が軟化または溶融する温度はより高いことが重要である。これまでこのような懸濁液がHPPE繊維と組み合わせて適用されることはなかった。驚くべきことに、これらは、様々な製品、特に配向したUHMWPE繊維を含む製品の性能を改善する。
【0043】
HPPE繊維を含む編組ロープとポリオレフィンポリマーの組合せは国際公開第2011/154415号パンフレットに記載されている。ここでは、HMPEヤーンの芯体がポリオレフィンポリマーによって被覆されており、鋼線のストランドの外層に囲まれている。しかし、このような製品はかなりの量のポリオレフィン樹脂を含んでいるか、またはHPPE繊維全体への高分子樹脂の湿潤/分布が不十分である。国際公開第2011/154415号パンフレットに記載されているものなどの製品と、本明細書に示した方法に従て作製された製品、特に本明細書に提示している方法および製品とは、高分子樹脂が構造にわたって分布していることにより特定の機械的性質が改善された長尺体が得られるという点で実質的に異なる。含浸後、液体を蒸発させることにより、残存している含浸された材料は、より少ない量でおよび/または長尺体にわたって高い均一性で存在する。本明細書における、長尺体にわたってという語は、高分子樹脂が長尺体のHPPE繊維の表面全体の少なくとも50%、好ましくはHPPE繊維の表面全体の70%、最も好ましくは90%を覆っていることと理解される。懸濁液およびそれを用いて作製された長尺体は、少なくとも1種のイオン性または非イオン性界面活性剤等の表面活性成分を含むことができる。
【0044】
欧州特許出願公開第0091547号明細書には、エチレンまたはプロピレンの結晶性を有するポリマーで被覆されたHPPE繊維が記載されており、ここでは、モノフィラメントまたはマルチフィラメント繊維は、ポリマーを炭化水素系溶媒に溶解した濃度が12g/L以下である溶液と一緒に高温で処理されている。しかしながら、このような高温溶媒処理により、使用された繊維の特性に悪影響を与える炭化水素系溶媒が繊維に残留する可能性がある。さらに、HPPE繊維を高温で炭化水素系溶媒と一緒に処理すると、特に炭化水素系溶媒および/またはポリマーがHPPEフィラメント内に拡散することにより、繊維の構造特性に悪影響を与える可能性がある。繊維-ポリマー界面は、HPPEが部分的に腐食および溶解することにより性質が変化する可能性があり、これは、特にHPPE繊維の界面のみならずバルクの性質にも悪影響を与える可能性がある。対照的に、本発明のプロセスは室温で実施することができ、HPPEの非溶媒、すなわち水を使用している。したがって、本発明のプロセスにより製造される繊維および長尺体は、HPPE繊維の構造特性をより良好に維持することができる。この繊維は表面構造も異なる可能性があり、特に炭化水素系溶媒と一緒に高温で処理された繊維と比較すると、炭化水素系溶媒および/またはポリマーをHPPE繊維の内部に拡散させないようにすることができるため、HPPE-被覆界面の識別がより容易である。さらに、欧州特許出願公開第0091547号明細書に記載されているプロセスおよび製品は、炭化水素溶液中に存在するポリマーの量、したがってHPPE繊維に適用されるポリマーの量に制限される。この溶液は粘度の増加に制限されるため、多量のポリマー被覆を塗布する場合、塗工作業を繰り返すことのみができる。
【0045】
本発明の長尺体を適用するのに好ましい分野は、長尺体が高い結節滑脱力および強度を有するロープおよびリボンの分野である。驚くべきことに、非耐荷重性高分子樹脂をロープ構造に添加することにより、ロープ全体に強度を付与し得ることが見出された。同量の非耐荷重性高分子樹脂を外側被覆層として、または別個の繊維もしくはヤーンとして追加すると、強度は低下することになる。
【0046】
以下に示す実施例および比較実験により本発明をさらに説明するが、最初に、本発明の定義に有用な様々なパラメータを決定するために用いられる方法を以下に示す。
【0047】
[方法]
・dtex:ヤーンまたはフィラメントの繊度は、それぞれ100メートルのヤーンまたはフィラメントを秤量することにより測定した。ヤーンまたはフィラメントのdtexは、重量(ミリグラムで表す)を10で除算することにより求めた。
・融解熱および融解ピーク温度は、標準的なDSC法であるASTM E 794およびASTM E 793にそれぞれ準拠し、窒素中、乾燥させた試料に対し2回目の昇温曲線の昇温速度を10K/分として測定した。
・高分子樹脂の密度はISO 1183に準拠して測定する。
・IV:極限粘度は、ASTM D1601(2004)の方法に準拠し、デカリン中、135℃で、溶解時間を16時間とし、酸化防止剤としてBHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)を2g/Lの量で含む溶液を使用し、異なる濃度で測定された粘度を濃度ゼロに外挿することによって測定する。
・HPPE繊維の引張特性:引張強度(または強度)および引張弾性率(または弾性率)は、ASTM D885Mに規定されているように、Instron 2714クランプ「Fibre Grip D5618C」型を使用し、繊維の公称標点距離を500mm、クロスヘッド速度を50%/分とし、マルチフィラメントヤーンを用いて特定および測定を行う。測定された応力-歪み曲線に基づき、弾性率を歪み0.3%~1%の勾配として求める。弾性率および強度を算出する場合、測定された引張力を上に定めた繊度で除算する。HPPEの密度を0.97g/cm3と仮定し、値をGPa単位で求める。
・テープ様形状を有する繊維の引張特性:引張強度、引張弾性率および破断伸びは、幅2mmのテープを使用し、ASTM D882に規定されているように、テープの公称標点距離を440mm、クロスヘッド速度を50mm/分とし、25℃で特定および測定する。
・ポリオレフィン樹脂の引張強度および破断時引張弾性率をISO 527-2に準拠して測定した。
・厚さ2mmの圧縮成形フィルムを使用し、例えば、欧州特許出願公開第0269151号明細書(特にその4頁)に記載されているNMR測定に基づく校正曲線を使用し、FTIRの1375cm-1の吸収を定量化することによって炭素原子1000個当たりのオレフィン性分岐鎖の数を求めた。
【0048】
[材料]
懸濁液1は、Dow Chemical社から商品名HYPOD1000として購入した。これは融解ピークが51℃および139℃であり、融解熱が28J/gである、ポリオレフィンの56重量%水性懸濁液である。
【0049】
懸濁液2は、Michelmanから商品名Michem(登録商標)Prime5931として購入した。これは融解ピークが78℃であり、融解熱が29J/gである、アクリレートで変性したポリオレフィンの28重量%水中懸濁液である。
【0050】
懸濁液3は、プラストマー(Queo 0210、Borealisより市販、密度0.902g/cm3、ピーク融点95℃、融解熱120J/g)および界面活性剤(Synperonic(登録商標)F108、SIGMA-ALDRICHより購入)の重量比7対3の混合物を100℃で水を加えながら押出成形することにより生成した。懸濁液の樹脂含有量を求めたところ、40重量%であった。
【0051】
[実施例1および比較実験A:]
3本のHPPEヤーン(Dyneema(登録商標)1760 SK76、強度35.5cN/dtex、弾性率1245cN/dtex)を束ね、懸濁液1を10倍量の水で希釈することにより調製したポリオレフィン懸濁液に浸漬することにより含浸させた。湿潤したヤーンを、撚り数を160回/mとして撚合し、長さ8.4メートルのオーブンに供給し、供給速度を5m/s、排出速度を6m/sとして通過させた。オーブンの温度を153.6℃に設定した。こうして得られた乾燥したモノフィラメント様製造物(実施例1)は、3.5重量%のポリオレフィン樹脂および96.5重量%の繊維状物質を含んでいた。
【0052】
比較実験Aでは、懸濁液を適用しなかったことを除いて実施例1を繰り返した。
【0053】
表1に実施例1および比較実験Aの試験結果を記載する。驚くべきことに、特に実施例1の試料が96.5重量%の耐荷重性HPPE繊維を含むに過ぎないにもかかわらず、実施例1の試料は、基準試料よりも強度が約5%高く、弾性率が約10%高い。
【0054】
【0055】
[比較例B]
直径5mmのロープをHPPE繊維(DSM Dyneema SK 78、1760dtex)を用いて製造した。ストランドの構成は、4×1760dtex、20回/m、S/Zとした。このストランドからロープを製造した。ロープの構成は12打ちロープとし、ピッチは27mmとした。このロープの平均破断強度は18750Nであった。
【0056】
ロープの屈曲疲労について試験した。この試験では、3個の自由に回転するシーブ(それぞれ直径50mm)上でロープを屈曲させた。3個のシーブを、V字を描くように配置し、それぞれのシーブ上でロープの屈曲域が生じるようにロープを配置した。ロープに荷重をかけて配置し、ロープが破損するまでシーブ上を反復通過させた。この装置の1回のサイクルで、シーブを一方向に回転させた後、反対方向に回転させた。したがって、装置の1回のサイクルでロープはシーブ上を6回通過した。この屈曲の移動量は45cmとした。装置の1サイクルの反復周期は5秒間とした。ロープに印加した力はロープの平均破断強度の30%とした。比較例Bによるロープは、平均319回の装置サイクル後[3]に破損した。
【0057】
[比較実験C:]
SK78(1760)ヤーンを国際公開第2011/015485号パンフレットの実施例1による被覆プロセスおよび被覆組成物により被覆したことを除いて比較実験Bを繰り返した。これは、2成分コーティング中に浸漬した後乾燥させ、次いで120℃で硬化させることを含むものである。架橋シリコーンゴムが被覆されたヤーンを含むロープを比較Bの屈曲試験に付したところ、平均2048サイクル後[4]に破損した。
【0058】
[実施例2~4]
異なる3本のヤーンから構成されるロープを用いたことを除いて比較実験Bを繰り返した。実施例2の場合、SK78(1760)のヤーンを懸濁液3に浸漬した後、ヤーンに張力を印加しながら60℃のオーブンで約5分間乾燥させることにより被覆した。得られたヤーンの高分子樹脂含有量は約10重量%であった。実施例3および4では、懸濁液3を水でそれぞれ1:1および1:3の比(懸濁液:水)で希釈し、被覆されたヤーンを乾燥させたところ、高分子樹脂含有量は、それぞれ約6~3重量%となった。3種のヤーンは、全て驚くほど取扱いが容易であり、ほつれ、ネバ付き、油ぎった外観は認められなかった。
【0059】
ロープを上に述べた屈曲疲労試験に付したところ、ロープ2、3および4は、それぞれ平均1246[3]、2286[4]および748[4]サイクル後に破損した。ブラケット内の数字は各種ロープについて実施した試験回数を表す。
【0060】
実施例2~4によるロープは、被覆を有しないロープ(比較実験B)または架橋シリコーン被覆を有するロープ(比較実験C)と比較して、顕著な剛直性および丈夫な取扱い性を示した。屈曲疲労特性および剛直性をこのように兼ね備えるものは過去に経験したことがなかったため、ここに記載した連続屈曲試験により明らかになった性能は本発明者らにとって驚くべきものであった。
【0061】
[実施例5および6ならびに比較実験D、EおよびF:]
市販のヤーン(Dyneema(登録商標)1760 SK78、強度35.1cN/dtex、弾性率1160cN/dtex)を16本使用し、ピッチ長が約2.5のロープを編組した。5個の結節を作製した。各結節は、
図1に従って前記ロープ2本を結び合わせたものとした。第1結節は懸濁液1で湿潤させた後、自然乾燥させた(実施例5)。第2結節は懸濁液2で湿潤させた後、自然乾燥させた(実施例6)。第3結節は懸濁液4で湿潤させた後、乾燥させた(比較実験D)。第4結節は未処理のままとした(比較実験E)。
【0062】
第5結節(比較実験F)は、ロープ製造に用いたSK78-1760ヤーンを比較実験Cの架橋シリコーンを被覆したヤーンに替えたことを除いて実施例5と同等のロープを用いて作製した。
【0063】
次いで、全ての結節を、第1ロープの両端部(1)および(2)を、第2ロープの2つの端部(3)および(4)と逆方向に引っ張ることにより500Nできつく締めた。結節が完成したら、第2ロープの一方の端部(3)を
図2の(3a)の位置で切断した。2つの端部(1)および(2)を残りの端部(4)に対して引張ることにより試験を行った。結節が滑脱した時点の力を結節滑脱力として記録した。
【0064】
結節滑脱力の結果を以下に示す。
【0065】
【図面の簡単な説明】
【0066】
【手続補正書】
【提出日】2024-06-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高機能ポリエチレン(HPPE)繊維と、長尺体にわたる高分子樹脂とを含む長尺体を含む、物品を製造するための方法であって、
a)高機能ポリエチレン(HPPE)繊維を提供するステップと、
b)ステップc)の前、その間またはその後に前記高分子樹脂の水性懸濁液を前記HPPE繊維に適用するステップと、
c)長尺体を形成するために前記HPPE繊維を集束するステップと、
d)ステップb)において適用された前記高分子樹脂の前記水性懸濁液を少なくとも部分的に乾燥させるステップであって、それにより、ステップa)、b)、c)およびd)が完了した時点で、長尺体であって、前記高機能ポリエチレン繊維と、前記長尺体にわたる前記高分子樹脂とを含む長尺体を得る、ステップと、
e)ステップd)の前、その間および/またはその後に、前記高分子樹脂を少なくとも部分的に溶融するために、前記樹脂の溶融温度~153℃の範囲の温度をステップc)の前記長尺体に印加するステップと、そして
f)前記長尺体を含む物品を製造するステップと
を含み、前記高分子樹脂は、エチレン、プロピレン、もしくはそれらの組み合わせの単独重合体または共重合体であり、前記高分子樹脂は、ISO 1183に準拠して測定されて860~930kg/m3の範囲の密度を有し、融解ピーク温度は、40~140℃の範囲であり、および融解熱は、少なくとも5J/gであり、
前記高機能ポリエチレン(HPPE)繊維は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含むポリエチレン繊維であり、少なくとも1.0N/texの引張強度を有し、
前記長尺体は、横断寸法である幅および厚みよりも20倍長い長手方向の寸法を有し、
前記水性懸濁液中の前記高分子樹脂の濃度は2~80重量%であり、ここで、重量百分率は、水性懸濁液の総重量に対する高分子樹脂の重量であり、
前記物品は、網、ラウンドスリング、またはスプライスである、
方法。
【請求項2】
ステップe)の前、ステップe)の間、ステップe)の後、またはそれらの組み合わせにおいて、前記長尺体を少なくとも部分的に圧密化、伸長、またはそれらの組み合わせをするために、ステップd)で得られた前記長尺体に圧力、張力またはそれらの組み合わせを印加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップd)における乾燥条件の温度は、40~130℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップe)における温度は、前記高分子樹脂の融解ピーク温度を少なくとも2℃上回り、最大で150℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記融解熱は最大で200J/gである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップe)における前記繊維および/または前記長尺体の加熱は、乾燥ステップd)と組み合わせて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
組み合わされたステップd)およびe)において、含浸させた前記繊維に温度勾配がかけられ、それにより温度が室温付近から加熱ステップの最大温度まである時間にわたって昇温される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記HPPE繊維は、連続フィラメントまたはステープル繊維である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記HPPE繊維は、溶融紡糸繊維、ゲル紡糸繊維または固体粉体圧縮繊維である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記水性懸濁液中の前記高分子樹脂の濃度は、4~60重量%であり、ここで、重量百分率は、水性懸濁液の総重量に対する高分子樹脂の重量である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記水性懸濁液中の前記高分子樹脂の濃度は、6~40重量%であり、ここで、重量百分率は、水性懸濁液の総重量に対する高分子樹脂の重量である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記HPPE繊維は、少なくとも1.8N/texの引張強度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記HPPE繊維は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記HPPE繊維は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を95重量%超含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記長尺体中の前記高分子樹脂の量は、1~25重量%であり、ここで、重量百分率は、長尺体の総重量に対する高分子樹脂の重量である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記長尺体中の前記高分子樹脂の量は、2~20重量%であり、ここで、重量百分率は、長尺体の総重量に対する高分子樹脂の重量である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記長尺体中の前記高分子樹脂の量は、4~18重量%であり、ここで、重量百分率は、長尺体の総重量に対する高分子樹脂の重量である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記高分子樹脂の密度は、870~920kg/m
3
の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記高分子樹脂の密度は、875~910kg/m
3
の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記融解ピーク温度は、50~130℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記融解ピーク温度は、60~120℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記融解熱は、少なくとも10J/gである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記融解熱は、少なくとも20J/gである、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記融解熱は、少なくとも30J/gである、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記長尺体の長手方向の寸法は、長尺体の幅または厚みの寸法のいずれか長い方の少なくとも50倍長い、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
ステップd)の後、前記高分子樹脂が前記HPPE繊維の表面の少なくとも50%を覆う、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
ステップd)の後、前記高分子樹脂が前記HPPE繊維の表面の少なくとも70%を覆う、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
ステップd)の後、前記高分子樹脂が前記HPPE繊維の表面の少なくとも90%を覆う、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記HPPE繊維は、HPPEフィラメントまたはHPPEステープル繊維である、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
高機能ポリエチレン(HPPE)繊維と、長尺体にわたる高分子樹脂とを含む長尺体を含む、物品であって、
前記高分子樹脂は、エチレンおよび/またはプロピレンの単独重合体または共重合体であり、前記高分子樹脂は、ISO 1183に準拠して測定されて860~930kg/m
3
の範囲の密度を有し、融解ピーク温度は、40~140℃の範囲であり、および融解熱は、少なくとも5J/gであり、
前記高機能ポリエチレン(HPPE)繊維は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含むポリエチレン繊維であり、少なくとも1.0N/texの引張強度を有し、
前記長尺体は、横断寸法である幅および厚みよりも20倍長い長手方向の寸法を有し、
前記長尺体中の前記高分子樹脂の量は少なくとも1重量%であり、ここで、重量百分率は、長尺体の総重量に対する高分子樹脂の重量であり、
網、ラウンドスリング、またはスプライスである、物品。
【請求項31】
前記HPPE繊維は、少なくとも1.8N/texの引張強度を有する、請求項30に記載の物品。
【請求項32】
前記長尺体は、少なくとも80重量%のUHMWPEを含み、ここで、重量百分率は、長尺体の総重量に対するUHMWPEの重量である、請求項30に記載の物品。
【請求項33】
前記HPPE繊維は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を95重量%超含む、請求項30に記載の物品。
【請求項34】
前記超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)が、4dl/gを超えるIVを有する、請求項30に記載の物品。
【請求項35】
前記長尺体中の前記高分子樹脂の量は、1~25重量%であり、ここで、重量百分率は、長尺体の総重量に対する高分子樹脂の重量である、請求項30に記載の物品。
【請求項36】
前記長尺体中の前記高分子樹脂の量は、2~20重量%であり、ここで、重量百分率は、長尺体の総重量に対する高分子樹脂の重量である、請求項30に記載の物品。
【請求項37】
前記長尺体中の前記高分子樹脂の量は、4~18重量%であり、ここで、重量百分率は、長尺体の総重量に対する高分子樹脂の重量である、請求項30に記載の物品。
【請求項38】
前記高分子樹脂の密度は、870~920kg/m
3
の範囲である、請求項30に記載の物品。
【請求項39】
前記高分子樹脂の密度は、875~910kg/m
3
の範囲である、請求項30に記載の物品。
【請求項40】
前記融解ピーク温度は、50~130℃の範囲である、請求項30に記載の物品。
【請求項41】
前記融解ピーク温度は、60~120℃の範囲である、請求項30に記載の物品。
【請求項42】
前記融解熱は、少なくとも10J/gである、請求項30に記載の物品。
【請求項43】
前記融解熱は、少なくとも20J/gである、請求項30に記載の物品。
【請求項44】
前記融解熱は、少なくとも30J/gである、請求項30に記載の物品。
【請求項45】
前記融解熱は最大で200J/gである、請求項30に記載の物品。
【請求項46】
前記高分子樹脂は、ポリエチレンの様々な形態、エチレン-プロピレン共重合体、1-ブテン、イソブチレンおよびヘテロ原子含有モノマー(アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、無水マレイン酸、アクリル酸エチルおよびアクリル酸メチルから選択される)からなる群より選択されるコモノマーとの他のエチレン共重合体;α-オレフィンおよび環状オレフィン単独重合体、ならびに共重合体、またはこれらのブレンド物の1種以上を含む、請求項30に記載の物品。
【請求項47】
前記高分子樹脂は、エチレンまたはプロピレンの共重合体である、請求項30に記載の物品。
【請求項48】
前記エチレンまたはプロピレンの共重合体は、コモノマーとして2~12個のC原子を有する1種以上のオレフィンを含む、請求項47に記載の物品。
【請求項49】
前記2~12個のC原子を有する1種以上のオレフィンは、エチレン、プロピレン、イソブテン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、アクリル酸、メタクリル酸および酢酸ビニルからなる群より選択される、請求項48に記載の物品。
【請求項50】
前記高分子樹脂は、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレンまたはこれらのブレンド物を含む、請求項30に記載の物品。
【請求項51】
前記高分子樹脂は、エチレンおよび/またはプロピレンと、カルボン酸基またはその誘導体を含むエチレン性不飽和モノマーとの共重合体である、官能基化されたポリマーを含む、請求項30に記載の物品。
【請求項52】
前記高分子樹脂は、半結晶性ポリオレフィンである、請求項30に記載の物品。
【請求項53】
前記高分子樹脂は、50~500MPaの範囲の弾性率を有する、請求項30に記載の物品。
【請求項54】
前記長尺体の長手方向の寸法は、長尺体の幅または厚みの寸法のいずれか長い方の少なくとも50倍長い、請求項30に記載の物品。
【請求項55】
前記高分子樹脂は、前記HPPE繊維の表面の少なくとも50%を覆う、請求項30に記載の物品。
【請求項56】
前記高分子樹脂は、前記HPPE繊維の表面の少なくとも70%を覆う、請求項30に記載の物品。
【請求項57】
前記高分子樹脂は、前記HPPE繊維の表面の少なくとも90%を覆う、請求項30に記載の物品。
【請求項58】
前記HPPE繊維は、HPPEフィラメントまたはHPPEステープル繊維である、請求項30に記載の物品。
【請求項59】
高分子樹脂の、高機能ポリエチレン(HPPE)繊維を含む物品における使用であって、
前記高分子樹脂は、エチレン、プロピレン、もしくはそれらの組み合わせの単独重合体または共重合体であり、前記高分子樹脂は、ISO 1183に準拠して測定されて860~930kg/m3の範囲の密度を有し、融解ピーク温度は、40~140℃の範囲であり、および融解熱は、少なくとも5J/gであり、
前記高機能ポリエチレン(HPPE)繊維は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含むポリエチレン繊維であり、少なくとも1.0N/texの引張強度を有し、
前記物品が、網、ラウンドスリング、スプライス、ベルト、または合成物質製の鎖の輪である、使用。
【請求項60】
前記融解熱は最大で200J/gである、請求項59に記載の使用。
【請求項61】
前記高分子樹脂の密度は、870~920kg/m
3
の範囲である、請求項59に記載の使用。
【請求項62】
前記高分子樹脂の密度は、875~910kg/m
3
の範囲である、請求項59に記載の使用。
【請求項63】
前記融解ピーク温度は、50~130℃の範囲である、請求項59に記載の使用。
【請求項64】
前記融解ピーク温度は、60~120℃の範囲である、請求項59に記載の使用。
【請求項65】
前記融解熱は、少なくとも10J/gである、請求項59に記載の使用。
【請求項66】
前記融解熱は、少なくとも20J/gである、請求項59に記載の使用。
【請求項67】
前記融解熱は、少なくとも30J/gである、請求項59に記載の使用。
【外国語明細書】