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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113036
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】医薬組成物及び組み合わせ物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/365 20060101AFI20240814BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20240814BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20240814BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240814BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A61K31/365
A61K31/513
A61K31/4745
A61K31/7068
A61K33/243
A61K31/337
A61K31/282
A61P35/00
A61K31/192
A61K45/00
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024090401
(22)【出願日】2024-06-04
(62)【分割の表示】P 2022543427の分割
【原出願日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】62/961,131
(32)【優先日】2020-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516308788
【氏名又は名称】長弘生物科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【弁理士】
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100160831
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 元
(74)【代理人】
【識別番号】100160831
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 元
(72)【発明者】
【氏名】邱 紫文
(72)【発明者】
【氏名】韓 鴻志
(72)【発明者】
【氏名】林 欣栄
(72)【発明者】
【氏名】李 睿豪
(72)【発明者】
【氏名】劉 人▲い▼
(72)【発明者】
【氏名】林 思吟
(57)【要約】      (修正有)
【課題】抗癌剤と組み合わせて、抗癌剤に対する癌細胞の感受性を高め、抗癌剤の副作用を軽減するために用いられる、医薬組成物の製造における有効成分の使用を提供する。
【解決手段】第1の成分および第2の成分の組み合わせであって、第1の成分は、式(I)の化合物、その薬学的に許容される塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、Aは任意にカルボニルを有するC1-C8脂肪族ヒドロカルビルであり、XはHまたはOHであり、YはOであり、RはHまたは存在しないが、Rが存在しない場合、YとAとが結合して5員環を形成し、前記第2の成分は、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管集合阻害剤、白金ベースの薬剤、代謝拮抗剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。

【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗癌剤と組み合わせて、前記抗癌剤に対する癌細胞の感受性を高め、前記抗癌剤の副作用を軽減し、前記抗癌剤によって誘発された免疫抑制を逆転させ、および/または癌を有する対象における悪液質の症状を軽減するために用いられる、医薬組成物の製造における有効成分の使用であって、前記有効成分は、式(I)の化合物、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
ここで、Aは任意にカルボニルを有するC1-C8脂肪族ヒドロカルビルであり、
XはHまたはOHであり、
YはOであり、
はHまたは存在しないが、Rが存在しない場合、YとAとが結合して5員環を形成し、前記抗癌剤は、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管集合阻害剤、白金ベースの薬剤、代謝拮抗剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする有効成分の使用。
【請求項2】
癌を治療するための医薬組成物の製造における第1の活性成分および第2の活性成分の使用であって、前記第1の活性成分は、式(I)の化合物、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
ここで、Aは任意にカルボニルを有するC1-C8脂肪族ヒドロカルビルであり、
XはHまたはOHであり、
YはOであり、
はHまたは存在しないが、Rが存在しない場合、YとAとが結合して5員環を形成し、前記第2の活性成分は、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管集合阻害剤、白金ベースの薬剤、代謝拮抗剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする第1の活性成分および第2の活性成分の使用。
【請求項3】
AがC1-6脂肪族ヒドロカルビルであり、Rが存在しない、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
Aがカルボニルを有するC1-C6脂肪族ヒドロカルビルであり、RがHである、請求項1または2に記載の使用。
【請求項5】
AがC5アルキルまたはアルケニルである、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
Aが、カルボニルを有するC5アルキルまたはアルケニルである、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
前記薬学的に許容される塩が、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、および亜鉛塩のうちの少なくとも1つである、請求項4に記載の使用。
【請求項8】
前記抗癌剤が、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、ミトキサントロン、テニポシド、アザシチジン、5-フルオロウラシル、テガフール、TS-1、6-メルカプトプリン、アザチオプリン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、シトシンアラビノシド、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、プララトレキサート、チオグアニン、トリフルリジン/チピラシル配合剤、シスプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
前記第2の活性成分が、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、ミトキサントロン、テニポシド、アザシチジン、5-フルオロウラシル、テガフール、TS-1、6-メルカプトプリン、アザチオプリン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、シトシンアラビノシド、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、プララトレキサート、チオグアニン、トリフルリジン/チピラシル配合剤、シスプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の使用。
【請求項10】
前記癌が、結腸直腸癌、結腸癌、肺癌、膵臓癌、膀胱癌、胆管癌、直腸癌、乳癌、多発性骨髄腫、婦人科腫瘍、脳癌、精巣癌、白血病、リンパ腫、胸膜中皮腫、胃癌、肝臓癌のうちの少なくとも1つである、請求項1または2に記載の使用。
【請求項11】
第1の成分および第2の成分の組み合わせであって、前記第1の成分は、式(I)の化合物、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
ここで、Aは任意にカルボニルを有するC1-C8脂肪族ヒドロカルビルであり、
XはHまたはOHであり、
YはOであり、
はHまたは存在しないが、Rが存在しない場合、YとAとが結合して5員環を形成し、前記第2の成分は、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管集合阻害剤、白金ベースの薬剤、代謝拮抗剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする第1の成分および第2の成分の組み合わせ。
【請求項12】
AがC1-C6脂肪族ヒドロカルビルであり、Rが存在しない、請求項11に記載の組み合わせ。
【請求項13】
Aがカルボニルを有するC1-C6脂肪族ヒドロカルビルであり、RがHである、請求項11に記載の組み合わせ。
【請求項14】
AがC5アルキルまたはアルケニルである、請求項12に記載の組み合わせ。
【請求項15】
Aが、カルボニルを有するC5アルキルまたはアルケニルである、請求項13に記載の組み合わせ。
【請求項16】
前記薬学的に許容される塩が、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、および亜鉛塩のうちの少なくとも1つである、請求項13に記載の組み合わせ。
【請求項17】
前記第2の成分が、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、ミトキサントロン、テニポシド、アザシチジン、5-フルオロウラシル、テガフール、TS-1、6-メルカプトプリン、アザチオプリン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、シトシンアラビノシド、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、プララトレキサート、チオグアニン、トリフルリジン/チピラシル配合剤、シスプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11に記載の組み合わせ。
【請求項18】
前記組み合わせが、医薬組成物またはキットの形態である、請求項11ないし17のいずれか1項に記載の組み合わせ。
【請求項19】
癌を治療するために使用される、請求項11ないし17のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項20】
請求項11ないし18のいずれか一項に記載の組み合わせを、必要とする対象に投与することを含む、癌を治療するための方法。
【請求項21】
前記癌が、結腸直腸癌、結腸癌、肺癌、膵臓癌、膀胱癌、胆管癌、直腸癌、乳癌、多発性骨髄腫、婦人科腫瘍、脳癌、精巣癌、白血病、リンパ腫、胸膜中皮腫、胃癌、肝臓癌のうちの少なくとも1つである、請求項20に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は癌治療に関する。より具体的には、本発明は、癌治療のための抗癌剤と組み合わせて、特に抗癌剤に対する癌細胞の感受性を高め、抗癌剤の副作用を軽減し、抗癌剤によって誘発された免疫抑制を逆転させ、および/または癌を有する対象における悪液質の症状を軽減する、式(I)の化合物および/または式(I)の化合物の薬学的に許容される塩の使用に関する。
ここで、Aは任意にカルボニルを有するC1-C8脂肪族ヒドロカルビルであり、XはHまたはOHであり、YはOであり、RはHまたは存在しないが、Rが存在しない場合、YとAとが結合して5員環を形成する。
【背景技術】
【0002】
医学では、腫瘍は細胞の異常な病変のことを指す。遺伝的に、さまざまな発癌因子の作用により、体内の局部組織の細胞が正常に増殖を制御できなくなり、細胞が異常に増殖して塊になる「腫瘍」が発生する。癌は悪性腫瘍とも呼ばれる。異常に増殖した癌細胞は、塊になるだけでなく、さらに拡散し、体内の他の組織や臓器に転移する。癌細胞の増殖と転移は、完全に治癒するのが難しい深刻な生理機能障害を引き起こすため、近年、癌は世界的な死亡原因のトップになっている。
【0003】
癌の治療に関して、現在の一般的な臨床療法は、手術、化学療法、放射線療法、標的療法、免疫療法などを含み、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管集合阻害剤、白金ベースの薬剤、および/または代謝拮抗剤を化学療法で使用して、急速に増殖する癌細胞を死滅させる。しかし、化学療法で使用される薬剤のほとんどは、正常な細胞にも影響を及ぼし、その増殖に影響を与え、吐き気、嘔吐、食欲不振、脱毛、疲労、出血、貧血、白血球減少など、癌患者に深刻な副作用を引き起こす。患者の生活の質に影響を与えるだけでなく、悪液質、感染症、または心不全を引き起こし、それによって死亡のリスクにつながる可能性がある。さらに、癌悪液質は包括的なメタボリック シンドロームであり、カロリー摂取量の減少、静的エネルギー消費の増加、およびタンパク質、脂肪、炭水化物の異常な代謝に関連している。癌悪液質は、体重減少、脱力感、食欲不振、疲労などを特徴とし、患者の食事摂取量や栄養摂取量を高めても継続的な体重減少は避けられない。
【0004】
癌細胞の免疫抑制も癌の発生と関連していることを示す研究がある。一部の癌細胞は、免疫細胞が活性化されないように、免疫細胞の免疫抑制を引き起こすために、その表面抗原(例えば、プログラム死-リガンド1、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)を介して免疫細胞に結合して、誘導する。前述のプログラム死-リガンド1(PD-L1)や細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)などの癌細胞の表面抗原は、「免疫チェックポイント抗原」とも呼ばれる。また、一部の抗癌剤(ゲムシタビンなど)が腫瘍微小環境(TME)の免疫抑制を引き起こし、それによって癌細胞が免疫系に抵抗することを示す研究もある。「ゲムシタビン治療は、マクロファージの浸潤、成長、および極性化をサポートすることにより、膵臓腫瘍の免疫抑制性微小環境を促進する」(Scientific reports.2018年8月10日;8(1):1-10.)などを参照することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0005】
したがって、業界は依然として、癌を治療するための医薬品や治療法を研究することに力を注いでいる。癌細胞の抗癌剤に対する感受性を効果的に高めたり、抗癌剤の投与量を減らすことができれば、抗癌剤の副作用を軽減することができ、患者の負担を軽減し、悪液質の症状を軽減する。また、抗癌剤による免疫抑制を逆転させることができれば、抗癌剤の治療効果がさらに高まり、癌治療に有益となる。
【発明の概要】
【0006】
本発明の発明者らは、抗癌剤を単独で使用する場合と比較して、本発明の式(I)の化合物またはその塩を抗癌剤と組み合わせて使用することにより、癌細胞の抗癌剤に対する感受性を高め、抗癌剤の投与量を効果的に減少させることができ、これにより、抗癌剤の副作用を軽減し、抗癌剤によって誘発された免疫抑制を逆転させ、癌患者の悪液質の症状を軽減するという目的を達成することを見出した。
【0007】
したがって、本発明の目的は、抗癌剤と組み合わせて、抗癌剤に対する癌細胞の感受性を高め、抗癌剤の副作用を軽減し、抗癌剤によって誘発された免疫抑制を逆転させ、および/または癌を有する対象における悪液質の症状を軽減するために用いられる、医薬組成物の製造における有効成分の使用を提供することであり、有効成分は、式(I)の化合物、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
ここで、Aは任意にカルボニルを有するC1-C8脂肪族ヒドロカルビルであり、XはHまたはOHであり、YはOであり、RはHまたは存在しないが、Rが存在しない場合、YとAとが結合して5員環を形成し、抗癌剤は、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管集合阻害剤、白金ベースの薬剤、代謝拮抗剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0008】
本発明の別の目的は、癌を治療するための医薬組成物の製造における第1の活性成分および第2の活性成分の使用を提供することであり、第1の活性成分は、式(I)の化合物、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
ここで、Aは任意にカルボニルを有するC1-C8脂肪族ヒドロカルビルであり、XはHまたはOHであり、YはOであり、RはHまたは存在しないが、Rが存在しない場合、YとAとが結合して5員環を形成し、第2の活性成分は、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管集合阻害剤、白金ベースの薬剤、代謝拮抗剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、第1の成分および第2の成分を含む組み合わせを提供することであり、第1の成分は、式(I)の化合物、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
ここで、Aは任意にカルボニルを有するC1-C8脂肪族ヒドロカルビルであり、XはHまたはOHであり、YはOであり、RはHまたは存在しないが、Rが存在しない場合、YとAとが結合して5員環を形成し、第2の成分は、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管集合阻害剤、白金ベースの薬剤、代謝拮抗剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、組み合わせは、医薬組成物またはキットの形態である。本発明の組合せの実施形態によれば、組合せは癌の治療に使用するためのものである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、癌を治療するための方法を提供することであり、この方法は、上記の組み合わせを必要とする対象に投与することを含む。
【0011】
本発明の前記使用、組み合わせ、または方法において、式(I)の化合物に関して、Aが好ましくはC1-C6脂肪族ヒドロカルビルであり、Aがより好ましくはC5アルキルまたはアルケニルであり、Rが存在しない、または、Aが好ましくはカルボニルを有するC1-C6脂肪族ヒドロカルビルであり、Aがより好ましくはカルボニルを有するC5アルキルまたはアルケニルであり、RがHである。
【0012】
本発明の前記使用、組み合わせ、または方法において、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩が含まれる場合に、薬学的に許容される塩は、好ましくは、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、および亜鉛塩の少なくとも1つである。
【0013】
本発明の前記使用、組合せ、または方法において、抗癌剤、第2の活性成分、および第2の成分は、好ましくは、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、ミトキサントロン、テニポシド、アザシチジン、5-フルオロウラシル(5-FU)、テガフール、TS-1、6-メルカプトプリン(6-MP)、アザチオプリン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、シトシンアラビノシド(Ara-C)、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、プララトレキサート、チオグアニン、トリフルリジン/チピラシル配合剤、シスプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、およびそれらの組み合わせからなる群から独立して選択される。
【0014】
本発明の前述の使用、組合せまたは方法において、癌は、好ましくは、結腸直腸癌、結腸癌、肺癌、膵臓癌、膀胱癌、胆管癌、直腸癌、乳癌、多発性骨髄腫、婦人科腫瘍、脳癌、精巣癌、白血病、リンパ腫、胸膜中皮腫、胃癌、肝臓癌のうちの少なくとも1つである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、異なる濃度の(Z)-n-ブチリデンフタリドで処理したPanc02細胞におけるCD44ICDタンパク質、PD-L1タンパク質、およびGAPDHタンパク質の発現をウェスタンブロッティングで解析した画像を示す。
図2図2は、「コントロール」群、「LD」群(低用量)、「HD」群(高用量)、「Gem」群(ゲムシタビン)、「LD+Gem」群、「TS-1」群、および「LD+TS-1」群の結果を含む各群のマウスの膵臓腫瘍画像(点線で囲った部分が腫瘍を表す)を示し、係る画像は、Panc02細胞をマウスに注入してから15日目に撮影した画像である。
図3図3は、図2の点線で囲った部分から解析した腫瘍サイズのヒストグラムを示す(*は対照群と比較してp値<0.05であることを表し、**は対照群と比較してp値<0.005であることを表す。)
図4図4は、「シスプラチン」群および「Z-BP+シスプラチン」群の結果を含む、マウスにPanc02細胞を注入してから1日目、15日目、22日目に測定された腫瘍サイズ(光量子束(Photon Flux)で表示)を示す。
図5A-5D】図5A図5Dは、異なる治療に対する膵臓癌を有するマウスの生存率の曲線図を示す。
図6図6は、膵臓癌マウスの膵臓腫瘍組織におけるCD44蛋白質、CD44ICD蛋白質、PD-1蛋白質、PD-L1蛋白質、p-Akt蛋白質、Akt蛋白質、GAPDH蛋白質の発現を異なる治療毎に画像化したものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の詳細な技術およびいくつかの実施形態は、当業者が本発明の特徴を理解できるように、以下に記載される。しかしながら、本発明の精神から逸脱することなく、本発明は様々な実施形態で具現化することができ、本明細書に記載された実施形態に限定されるべきではない。
【0017】
本明細書で別段の指示がない限り、明細書(特に特許請求の範囲)で引用される「a」、「an」、「the」などの表現は、単数形と複数形の両方を含むべきである。「対象」という用語は、ヒトおよびヒト以外の哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ)を指す。
【0018】
「応答率」の定義は、観察期間の任意の1つの期間内に治療に応答した患者の比率を指し、応答レベル(腫瘍サイズが縮小する程度)は、完全応答(腫瘍消失)と部分応答(腫瘍サイズが少なくとも50%縮小する)とに分けることができる。例えば、「応答率40%」の抗癌剤とは、薬剤が、薬剤で治療された40%の患者に抗癌効果をもたらすことができ、抗癌効果には、腫瘍サイズを少なくとも50%減少させ、腫瘍を完全に排除することさえ含まれることを意味する。
【0019】
一部の患者には、薬剤の反応率が低く、化学療法による細胞毒性/組織毒性が高いという問題を経験していることを示す臨床研究がある。
【0020】
本発明の発明者らは、抗癌剤を単独で使用する場合と比較して、本発明の化合物(すなわち、式(I)の化合物)またはその塩を抗癌剤と組み合わせて使用することにより、癌細胞の抗癌剤に対する感受性を高め、抗癌剤の投与量を効果的に減少させることができ、これにより、抗癌剤の副作用を軽減し、抗癌剤によって誘発された免疫抑制を逆転させ、癌患者の悪液質の症状を軽減するという目的を達成することを見出した。
【0021】
したがって、本発明は、癌を治療するための式(I)の化合物および/または式(I)の化合物の薬学的に許容される塩の使用に関する。
ここで、Aは任意にカルボニルを有するC1-C8脂肪族ヒドロカルビルであり、XはHまたはOHであり、YはOであり、RはHまたは存在しないが、Rが存在しない場合、YとAとが結合して5員環を形成する。
【0022】
使用には以下が含まれる。
(i)抗癌剤と組み合わせて、抗癌剤に対する癌細胞の感受性を高め、抗癌剤の副作用を軽減し、抗癌剤によって誘発された免疫抑制を逆転させ、および/または癌を有する対象における悪液質の症状を軽減するために用いられる、医薬組成物の製造における式(I)の化合物および/または式(I)の化合物の薬学的に許容される塩の使用
(ii)癌を治療するための医薬組成物の製造における、第1の活性成分としての式(I)の化合物および/または式(I)の化合物の薬学的に許容される塩および第2の活性成分としての抗癌剤の使用
(iii)第1の成分としての式(I)の化合物および/または式(I)の化合物の薬学的に許容される塩および第2の成分としての抗癌剤を含む組み合わせ
(iv)前記組み合わせを必要とする対象に投与することを含む、癌を治療するための方法
【0023】
本発明の使用において、式(I)の化合物に関して、Aは好ましくはC1-C6脂肪族ヒドロカルビル(より好ましくは、AはC5アルキルまたはアルケニル)であり、Rは存在しない。または、Aは好ましくはカルボニルを有するC1-C6脂肪族ヒドロカルビル(より好ましくは、Aはカルボニルを有するC5アルキルまたはアルケニル)であり、RはHである。例えば、本発明の使用のいくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、(Z)-n-ブチリデンフタリド、(E)-n-ブチリデンフタリド、2-ペンタノイル安息香酸またはブチルフタリドである。
【0024】
本発明の使用において、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、および亜鉛塩が挙げられる。本発明の使用のいくつかの実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩は、2-ペンタノイル安息香酸ナトリウムなどのナトリウム塩である。
【0025】
本発明の使用において、式(I)の化合物および式(I)の化合物の薬学的に許容される塩は、市販されているか、または本発明の分野で知られている合成方法によって調製することができる。
【0026】
本発明の使用に適した抗癌剤としては、例えば、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管集合阻害剤、白金ベースの薬剤、代謝拮抗剤、およびそれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、抗癌剤は、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、ミトキサントロン、テニポシド、アザシチジン、5-フルオロウラシル(5-FU)、テガフール、TS-1(すなわち、5-FU、テガフールのプロドラッグを含む複合薬剤)、6-メルカプトプリン(6-MP)、アザチオプリン(すなわち、6-MPのプロドラッグ)、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、シトシンアラビノシド、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、プララトレキサート、チオグアニン、トリフルリジン/チピラシル配合剤、シスプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明の使用のいくつかの実施形態では、抗癌剤は、イリノテカン、5-フルオロウラシル、TS-1、ゲムシタビン、シスプラチン、オキサリプラチン、およびパクリタキセルのうちの1つまたは複数である。
【0027】
本発明に従って提供される組み合わせは、医薬組成物またはキットであってもよい。本発明による組合せの実施形態では、組合せは癌治療に使用される。本発明による組み合わせがキットである場合、(1)第1の成分としての式(I)の化合物および/または薬学的に許容される塩、および(2)第2の成分としての抗癌剤が、個別に異なる容器(例えば、ビニール袋、ペットボトル、ガラス瓶、アンプル)に包装され、保存され、単独で、またはセットとして組み合わせて輸送または販売することができる。加えて、キットは、使用者がさらなる処理および適用のために現場で成分を混合するための手順およびプログラムを提供する取扱説明書をさらに含むことができる。
【0028】
本発明の使用において、癌としては、例えば、結腸直腸癌、結腸癌、肺癌(非小細胞肺癌など)、膵臓癌、膀胱癌、胆管癌、直腸癌、乳癌、多発性骨髄腫、婦人科腫瘍(子宮頸癌、卵巣癌、子宮癌、外陰癌など)、脳癌(膠芽腫など)、精巣癌、白血病(急性骨髄性白血病など)、リンパ腫、胸膜中皮腫、胃癌、肝臓癌などが挙げられる。
【0029】
本発明に従って提供される医薬組成物またはキットの構成成分は、全身または局所的に投与することができ、様々な薬物送達システム(DDS)によって送達することができ、適切な薬物送達システムには、経口薬物送達システム、経皮薬物送達システム、注射薬物送達システム、吸入薬物送達システム、および経粘膜薬物送達システムなどが含まれる。たとえば、生体利用効率(バイオアベイラビリティ)を高め、薬物放出速度を制御し、病変を正確に標的とし、副作用を軽減するために、本発明に従って提供される医薬組成物またはキットの構成成分は、リポソーム、マイクロカプセル、ナノ粒子、またはマイクロニードルによって送達することができるが、これらに限定されない。
【0030】
所望の目的に応じて、本発明による医薬組成物またはキットの構成成分は、特定の制限なしに任意の適切な形態で提供することができる。例えば、医薬組成物またはキットの構成成分は、経口投与、経皮投与(パッチ、軟膏など)、皮質脊髄路注射、髄腔内注射、脳内注射、静脈内注射(点滴、ボーラス注射を含む)、筋肉内注射、皮下注射、動脈内注射、腹腔内注射、皮下移植、間質注射埋め込み、経気道(例えば、スプレー、点鼻薬など)、経粘膜(例えば、口腔溶解錠など)によって必要とする対象に投与することができるが、これに限定されない。形態および目的に応じて、適切な担体を選択し、薬学的組成物またはキットの構成成分を提供するために使用することができ、賦形剤、希釈剤、助剤、安定剤、吸収促進剤、崩壊剤、ヒドロトロープ剤、乳化剤、酸化防止剤、接着剤、結合剤、粘着付与剤、分散剤、懸濁剤、滑沢剤、吸湿剤などを含む担体は、当該技術分野で公知であり、採用される。
【0031】
経口投与のための剤形として、医薬組成物またはキットの構成成分は、経口投与に適した形態で提供することができ、経口投与に適した液体形態としては、シロップ、内服液、懸濁液、エリキシルなどが挙げられ、経口投与に適した固体形態としては、散剤、顆粒剤、トローチ剤、糖衣錠、腸溶錠、チュアブル錠、発泡錠、フィルムコーティング錠、カプセル剤、長時間作用型徐放剤などが挙げられる。本発明に従って提供される薬学的組成物またはキットの構成成分は、抗癌剤および式(I)の化合物および式(I)の化合物の薬学的に許容される塩の少なくとも1つの所望の効果に悪影響を及ぼさない任意の薬学的に許容される担体を含むことができる。例えば、前述の液体形態の薬学的に許容される担体には、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールまたはその類似体、油(例えば、オリーブ油、ヒマシ油、綿実油、ピーナッツ油、コーン油、および胚芽油)、グリセリン、ポリエチレングリコール、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。また、前述の固体形態の薬学的に許容される担体には、セルロース、デンプン、カオリナイト、ベントナイト、クエン酸ナトリウム、ゼラチン、寒天、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、海藻ゲル、モノステアリン酸グリセリル、ステアリン酸カルシウム、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0032】
経皮投与のための剤形として、本発明の医薬組成物またはキットの構成成分は、水、鉱油、プロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、液体ペトロラタム、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60のような、抗癌剤、式(I)の化合物および式(I)の化合物の薬学的に許容される塩のうちの少なくとも1つの所望の効果に悪影響を及ぼさない薬学的に許容される担体を含むこともできる。医薬組成物またはキットの構成成分は、エマルジョン、クリーム、オイル、ゲル(ハイドロゲルなど)、ペースト(分散ペースト、軟膏など)、ローション、スプレー、パッチ(マイクロニードルパッチ)のような経皮投与に適した形態で、任意の適切な方法によって提供することができるが、これに限定されない。
【0033】
注射または点滴に適した形態に関しては、薬学的組成物またはキットの構成成分は、等張液、塩緩衝生理食塩水(例えば、リン酸緩衝生理食塩水またはクエン酸緩衝生理食塩水)、ヒドロトロープ剤、乳化剤、5%の砂糖溶液、および薬学的組成物またはキットの構成成分を静脈内注入、乳化静脈内注入、注射用粉末、注射用懸濁液、または注射用粉末懸濁液などとして提供するための他の担体等の1つまたは複数の成分を含むことができる。あるいは、医薬組成物またはキットの構成成分は、注射前の固体として調製することができ、所望の注射は、注射を必要とする対象に投与する前に、注射前の固形物を別の溶液または懸濁液に溶解するか、または乳化することによって提供される。
【0034】
皮下移植または間質移植に適した剤形として、本発明によって提供される薬学的組成物またはキットの構成成分は、ウエハース、錠剤、丸薬、カプセルなどの形態で調製されるように賦形剤、安定剤、緩衝剤、その他の担体などの1つまたは複数の成分をさらに含むことができ、その結果、医薬組成物またはキットの構成要素を対象に移植することができ、また、含まれる抗癌剤、式(I)の化合物および式(I)の化合物の薬学的に許容される塩の少なくとも1つが、周囲の組織にゆっくりと連続的に放出されて、局所的に安定した高用量で癌細胞を殺す効果を達成することができる。例えば、本発明によって提供される薬学的組成物またはキットの構成要素は、生体適合性ポリマーを含み、皮下移植または介在用のウエハーの形態で薬学的組成物またはキットの構成要素を調製することができるが、それによって限定されるものではない。生体適合性ポリマーは、市販されているか、または本発明の分野で知られている合成方法によって調製することができる。例えば、生体適合性ポリマーは、ビス(p-カルボキシルフェノキシ)プロパンおよびセバシン酸から調製されるp(CPP-SA)コポリマーなどのポリ無水物であり得る。
【0035】
経気道投与用の医薬組成物またはキットの構成要素に関して、薬学的組成物またはキットの構成要素は、気道への薬学的組成物またはキットの成分の侵入を促進するために、任意の適切なアプローチによって任意にエアロゾル化することができる。例えば、薬学的組成物またはキットの構成要素は、ネブライザーまたは加圧容器(例えば、鼻スプレー)を通して投与することができるが、これに限定されない。あるいは、キットの医薬組成物または成分は、点鼻薬として調製することができる。
【0036】
経粘膜投与用の医薬組成物またはキットの構成要素に関しては、本発明によって提供される医薬組成物またはキットの構成要素は、浸透剤、界面活性剤、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、安定剤、浸透圧調節剤およびその他の担体などの1つまたは複数の成分を含むことができ、点眼薬、眼軟膏、口腔溶解錠、座薬、点鼻薬、点鼻薬などの形態で、医薬組成物またはキットの構成要素を提供することができる。
【0037】
また、場合によっては、本発明に従って提供される医薬組成物またはキットの構成要素は、適切な量の、医薬組成物またはキットの嗜好性および視覚を向上させるためのトナーおよび/または着色剤、ならびに緩衝剤、保存剤、防腐剤、抗菌剤および/または医薬組成物またはキットの安定性および保存性を改善するため抗真菌剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0038】
本発明に従って提供されるキットの医薬組成物または成分は、他の有効成分が、本発明の医薬組成物またはキットに含まれる抗癌剤および/または式(I)の化合物、および式(I)の化合物の薬学的に許容される塩の所望の効果に悪影響を及ぼさない限り、組成物またはキットの効果をさらに高めるため、または提供される製剤の適用の柔軟性および適応性を高めるため、場合により、1つまたは複数の他の有効成分を含むことができる。
【0039】
本発明に従って提供される医薬品組成には、組成物の総重量に基づいて、0.0001、0.0002、0.0003、0.0004、0.0005、0.001、0.0015、0.002、0.0025、0.003、0.0035、0.004、0.0045、0.005、0.0055、0.006、0.0065、0.007、0.0065、0.007、0.0075、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、5、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100wt%の式(I)の化合物および式(I)の化合物の薬学的に許容される塩の少なくとも1つを含むことができ、有用な範囲は、これらの値の任意の2つから選択することができ、例えば、約0.0001wt%~約90wt%、約0.001wt%~約25wt%、約0.01wt%~約10wt%、約0.01wt%~約5重量%、約0.05重量%~約1重量%、および約0.05重量%~約0.5重量%である。
【0040】
対象の必要性、年齢、体重、および健康状態、ならびに適用の目的に応じて、本発明に従って提供される医薬組成物またはキットは、1日に1回、1日に複数回、または数日に1回など、様々な頻度で服用することができる。本発明に従って提供される医薬組成物またはキット中の抗癌剤および/または式(I)の化合物および式(I)の化合物の薬学的に許容される塩の少なくとも1つの量は、例えば、実際の用途の必要性に応じて、毎日摂取または外用する量に調整することができる。
【0041】
本発明によって提供される方法において、医薬組成物またはキットの投与経路、投与頻度、および投与量の範囲は、すべて上記の説明に沿っている。
【0042】
本発明は、以下の特定の実施例を用いてさらに詳細に説明される。しかしながら、以下の実施例は、本発明を説明するためだけに提供され、本発明の範囲はそれによって限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示される。
【実施例0043】
以下の調製例において、使用した材料および装置は以下のとおりである。
1.ヒト膵臓癌細胞株:Mia-PaCa2細胞(Bioresource Collection and Research Center(ウェブサイト:https://www.bcrc.firdi.org.tw/wwwbcrc/index.do)から購入,BCRC60319)、PANC-1細胞(生物資源収集研究センターから購入,BCRC60494)、AsPC-1細胞(生物資源収集研究センターから購入,BCRC60494)。
2.マウス膵臓癌細胞株:Panc02細胞(Everfront Biotech Inc.提供)。
3.肺癌細胞株:A549細胞(Bioresource Collection and Research Centerから購入,BCRC60074)。
4.脳腫瘍細胞株:DBTRG-05MG細胞(生物資源収集研究センターより購入,BCRC60380)。
5.結腸直腸癌細胞株:HT-29細胞(Bioresource Collection and Research Centerから購入,BCRC67003)。
6.肝癌細胞株:HepG2(Bioresource Collection and Research Centerから購入,BCRC60177)。
7.Mia-PaCa2細胞の細胞培地:L-グルタミン、ピルビン酸ナトリウム(Thermo Fisher Scientificから購入)、10%ウシ胎児血清(FCS;Gibcoから購入,製品番号:1939760)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S;Simplyから購入,製品番号:CC502-0100)、および2.3%ウマ血清(Gibcoから購入,製品番号:16050122)。
8.PANC-1細胞の細胞培地:10%牛胎児血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEM-HG培地。
9.AsPC-1細胞の細胞培地:10%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、10mM HEPES(Biomedicalsより購入,製品番号:194549)、1mMピルビン酸ナトリウムを含むRPMI1640培地(HyCloneより購入)。
10.Panc02細胞の細胞培地:10%ウシ胎児血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むRPMI1640培地。
11.A549細胞の細胞培地:10%ウシ胎児血清を含むDMEM培地。
12.DBTRG-05MG細胞の細胞培地:10%ウシ胎児血清および1mMピルビン酸ナトリウムを含むRPMI1640培地。
13.HT-29細胞の細胞培地:10%ウシ胎児血清を含むRPMI1640培地。
14.HepG2の細胞培地:10%ウシ胎児血清を含むDMEM培地。
15.(Z)-n-ブチリデンフタリド(Z-BP):Everfront Biotech Inc.提供,純度99.8%。
16.(E)-n-ブチリデンフタリド(E-BP):Everfront Biotech Inc.提供,純度98.01%。
17.2-ペンタノイル安息香酸(BP-OH):Everfront Biotech Inc.提供,純度99.6%。
18.2-ペンタノイル安息香酸ナトリウム(BPONa):Everfront Biotech Inc.提供,純度99.7%。
19.ブチルフタリド:Everfront Biotech Inc.提供,純度≧97%。
20.ゲムシタビン(GEM):APEXBioから購入,品番:A8437。
21.5-フルオロウラシル(5-FU):Sigmaから購入,品番:F6627。
22.イリノテカン(CPT-11):Sigmaから購入。品番:I1406。
23.シスプラチン(CDDP):Sigmaから購入,品番:C2210000。
24.オキサリプラチン(OXA):Sigmaから購入,品番:61825-94-3。
25.パクリタキセル(PTX):Sigmaから購入,品番:33069-62-4。
26.TS-1:Everfront Biotech Inc.提供
27.MTT(チアゾリルブルーテトラゾリウムブロミド、3-[4,5-ジメチルチアチアゾール-2-イル]-2,4-ジフェニル-テトラゾリウムブロミド):ALFA AesarTMから購入,品番:L11939-000000-16AF。
28.ELISAリーダー:Thermo Fisher Scientificから購入,型番:22662。
29.C57BL/6Jマウス(体重:18~22g):National Laboratory Animal Center、台北、台湾から購入。
30.ウェスタンブロッティング用抗体:抗Akt抗体(Cell Signaling Technologyより購入、製品番号:#9272),anti-phospho-Akt(Ser473)抗体(Cell Signaling Technologyから購入,製品番号:#9271)、抗CD44抗体(Abcamから購入,製品番号:#ab24504)、抗PD-L1抗体(Abcamから購入,製品番号:#ab238697)、抗PD-1抗体(BioLegendより購入,品番:#367402)、抗GAPDH抗体(Genetexから購入,品番:GTX100118)。
【0044】
実施例1:癌細胞の死滅に対する本発明の化合物および異なる抗癌剤の効果
本実施例では、癌細胞の死滅に対する本発明の化合物および異なる抗癌剤の効果を、MTT(チアゾリルブルーテトラゾリウムブロミド、3-[4,5-ジメチルチアヒアゾール-2-イル]-2,4-ジフェニル-テトラゾリウムブロミド)の細胞生存率分析によって検討した。
【0045】
1-1.膵臓癌細胞の死滅に対する本発明の化合物および異なる抗癌剤の効果
膵臓癌細胞株、PANC-1細胞、Mia-PaCa2細胞、AsPC-1細胞、およびPanc02細胞を96ウェルプレート(1×10細胞/ウェル,96ウェルプレートを37°C、5%COに保たれたインキュベーターに播種)の各ウェルで24時間培養した。その後、上記各細胞株を、ゲムシタビン、シスプラチン、5-フルオロウラシル、イリノテカン、オキサリプラチン、パクリタキセル、(Z)-n-ブチリデンフタリド、(E)-n-ブチリデンフタリド、2-ペンタノイル安息香酸、2-ペンタノイル安息香酸ナトリウム、ブチルフタリドを含有する細胞培地で、それぞれ24時間、48時間、72時間培養した。次に、MTTを96ウェルプレートの各ウェルに独立して添加し(各ウェルの細胞培地中のMTTの最終濃度は0.5mg/mlであった。)、96ウェルプレートを37℃、5%COに保たれたインキュベーターで1.5時間培養した。細胞培地を除去した後、100μLのジメチルスルホキシドを添加し、その595nmにおける吸光度をELISAリーダーで測定することにより、細胞生存率を計算し、膵臓癌細胞株のそれぞれにおいてゲムシタビン、シスプラチン、5-フルオロウラシル、イリノテカン、オキサリプラチン、パクリタキセル、(Z)-n-ブチリデンフタリド、(E)-n-ブチリデンフタリド、2-ペンタノイル安息香酸、2-ペンタノイル安息香酸ナトリウムおよびブチルフタリドの50%阻害濃度(IC50)を計算した。その結果を表1に示す。
【0046】
1-2.本発明の化合物および5-フルオロウラシルの癌細胞死滅効果
肺癌細胞株(A549細胞)、肝臓癌細胞株(HepG2細胞)、結腸直腸癌細胞株(HT-29細胞)、および脳癌細胞株(DBTRG-05MG細胞)を96ウェルプレート(1×10細胞/ウェル,96ウェルプレートを37°C、5%COに保たれたインキュベーターに播種)の各ウェルで24時間培養した。その後、上記各細胞株を、5-フルオロウラシル、(Z)-n-ブチリデンフタリド、2-ペンタノイル安息香酸を含有する細胞培地で、24時間、48時間、72時間培養した。次に、MTTを96ウェルプレートの各ウェルに独立して添加し(0.5mg/ml)、96ウェルプレートを37℃、5%COに保たれたインキュベーターで1.5時間培養した。細胞培地を除去した後、100μLのジメチルスルホキシドを添加し、その595nmにおける吸光度をELISAリーダーで測定することにより、細胞生存率を計算し、膵臓癌細胞株のそれぞれにおいて5-フルオロウラシル、(Z)-n-ブチリデンフタリド、2-ペンタノイル安息香酸の50%阻害濃度(IC50)を計算した。その結果を表2に示す。
【0047】
実施例2:本発明の化合物と抗がん剤との併用効果
【0048】
2-1.(Z)-n-ブチリデンフタリドおよび5-フルオロウラシル
膵臓癌細胞株(PANC-1細胞、Mia-PaCa2細胞、AsPC-1細胞)、肺癌細胞株(A549細胞)、肝臓癌細胞株(HepG2細胞)、大腸癌細胞株(HT-29細胞)、および脳腫瘍細胞株(DBTRG-05MG細胞)を96ウェルプレート(1×10細胞/ウェル,96ウェルプレートを37°C、5%COに保たれたインキュベーターに播種)の各ウェルで24時間培養した。その後、(Z)-n-ブチリデンフタリドと5-フルオロウラシルとの両方を各細胞株の細胞培地に同時に添加した。37℃、5%COに保たれたインキュベーターに96ウェルプレートを1.5時間載置した後、細胞培地を除去し、100μLのジメチルスルホキシドを加えた。次に、その595nmにおける吸光度をELISAリーダーで測定することにより、細胞生存率を計算し、上記プロセスに対する各癌細胞株の50%阻害濃度(IC50)を計算した。最後に、組み合わせ指数(CI)を式Aによって計算した。その結果を表3に示す。
【0049】
【0050】
(D)1、(D)2は独立して、薬剤1と薬剤2を併用した場合のIC50を表し、(Dx)1、(Dx)2は独立して、上記2つの薬剤を単独で使用した場合のIC50を表す。組み合わせ指数(CI)が1未満である場合、2つの薬剤を組み合わせて使用することは相乗効果を有すると考えられる。
【0051】
【0052】
表3の結果は、(Z)-n-ブチリデンフタリドを5-フルオロウラシルと併用して癌細胞を死滅させる全てのCI値が1未満であり、したがって相乗効果をもたらすことができることを示している。
【0053】
2-2.(Z)-n-ブチリデンフタリドおよびその他の抗癌剤
実施例2-1の方法に従って、膵臓癌細胞を(Z)-n-ブチリデンフタリドと他の抗癌剤とを併用して処理し、実験データを計算して、膵臓癌細胞を死滅させるための上記併用時のCI値を求めた。その結果を表4に示す。
【0054】
【0055】
表4の結果は、(Z)-n-ブチリデンフタリドを他の抗癌剤と併用して膵臓癌細胞を死滅させるCI値が1未満であり、したがって相乗効果をもたらすことができることを示している。
【0056】
2-3.(E)-n-ブチリデンフタリドおよび抗癌剤
実施例2-1の方法に従って、膵臓癌細胞を(E)-n-ブチリデンフタリドとオキサリプラチン、パクリタキセル、ゲムシタビン、5-フルオロウラシルなどの抗癌剤とを併用して処理し、実験データを計算して、膵臓癌細胞を死滅させるための上記併用時のCI値を求めた。その結果を表5~表7に示す。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
表5~表7の結果は、(E)-n-ブチリデンフタリドを抗癌剤と併用して膵臓癌細胞を死滅させるCI値が1未満であり、したがって相乗効果をもたらすことができることを示している。
【0061】
2-4.2-ペンタノイル安息香酸(BP-OH)および抗癌剤
実施例2-1の方法に従って、膵臓癌細胞(PANC-1、Mia-PaCa2、AsPC-1、Panc02)、肺癌細胞株(A549細胞)、肝癌細胞株(HepG2細胞)、結腸直腸癌細胞株(HT-29細胞)、および脳癌細胞株(DBTRG-05MG細胞)を2-ペンタノイル安息香酸(BP-OH)と5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、オキサリプラチン、パクリタキセルなどの抗癌剤とを併用して処理し、実験データを計算して、各癌細胞を死滅させるための上記併用時のCI値を求めた。その結果を表8~表11に示す。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
表8~表11の結果は、2-ペンタノイル安息香酸(BP-OH)を抗癌剤と併用して癌細胞を死滅させるCI値が1未満であり、したがって相乗効果をもたらすことができることを示している。
【0067】
2-4.2-ペンタノイル安息香酸ナトリウム(BPONa)および抗癌剤
実施例2-1の方法に従って、膵臓癌細胞を2-ペンタノイル安息香酸ナトリウム(BPONa)とオキサリプラチン、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、パクリタキセルなどの抗癌剤とを併用して処理し、実験データを計算して、膵臓癌細胞を死滅させるための上記併用時のCI値を求めた。その結果を表12~表14に示す。
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
表12~表14の結果は、2-ペンタノイル安息香酸ナトリウム(BPONa)を抗癌剤と併用して膵臓癌細胞を死滅させるCI値が1未満であり、したがって相乗効果をもたらすことができることを示している。
【0072】
これらの実施例の結果から分かるように、抗癌剤を単独で使用する場合と比較して、本発明の式(I)の化合物またはその塩を抗癌剤と組み合わせて使用することにより、抗癌剤に対する癌細胞の感受性を高め、抗癌剤の投与量を効果的に減少させることができ、これにより、抗癌剤の副作用を軽減し、抗癌剤によって誘発された免疫抑制を逆転させ、癌患者の悪液質の症状を軽減するという目的を達成する。
【0073】
実施例3:CD44およびPD-L1の発現低下に対する本発明の化合物の効果
癌細胞表面のプログラム死-リガンド1(PD-L1)が免疫細胞表面のプログラム死-1(PD-1)と結合し、免疫細胞を死滅させることが知られている。さらに、CD44およびCD44ICDはPD-L1の発現を高めることができ、CD44のダウンレギュレーションは癌細胞の増殖を阻害することができる。CD44がPD-L1発現を促進し、乳癌および肺癌においてその腫瘍固有の機能を促進すること(Cancer Research,2020年2月1日;80(3):444-457)などを参照することができ、その内容は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0074】
Panc02細胞(膵臓癌細胞株)をそれぞれ37.5および75μg/mlの(Z)-n-ブチリデンフタリドで6時間培養した(3時間培養後に細胞の一部を回収した)。その後、細胞のタンパク質を抽出し、(Z)-n-ブチリデンフタリドで処理した癌細胞におけるCD44細胞内ドメイン(CD44ICD)タンパク質とPD-L1タンパク質の発現をウェスタンブロッティングにより測定した。さらに、内部コントロール(対照)としてGAPDHタンパク質の発現を測定した。その結果を図1に示す。
【0075】
図1から、Panc02細胞におけるCD44ICDタンパク質およびPD-L1タンパク質の発現は、(Z)-n-ブチリデンフタリドの濃度が増加するにつれていずれも減少し、CD44ICDタンパク質は6時間で完全に阻害されたことが分かる。前述の結果は、(Z)-n-ブチリデンフタリドが癌細胞の増殖を阻害することに加えて、癌細胞のCD44ICDタンパク質を阻害するのにさらに効果的であり、それによって免疫チェックポイント抗原の発現を阻害する効果を達成することを示している。したがって、癌細胞と免疫細胞の結合を遮断することができ、抗癌剤によって誘発される免疫抑制を逆転させることができる。
【0076】
実施例4:癌を治療するための抗癌剤と組み合わせた本発明の化合物の使用
4-1.動物モデルの確立
東華大学の施設内動物管理使用委員会(IACUC)の要求に従って、C57BL/6Jマウスは東華大学の実験動物センターで8~1 週齢まで飼育された。次に、Luc-eGFPによってトランスフェクトされた安定に構築されたPanc02細胞を、同所的にマウスの膵臓に注入した(1×10細胞/0.02ml/マウス)。その後、マウスの膵臓の腫瘍サイズを動物のイメージング結果から分析し、マウスを腫瘍サイズに応じて9つの群に均等に分け、次の条件で3~4週間治療した。
【0077】
(1)「コントロール(Ctl.)」群(マウス5匹):無処置、ビヒクル(本発明の化合物および他の抗癌剤を含まない)を毎日経口投与のみ。
(2)「LD」群(マウス5匹):低用量(12.5mg/kg体重)の(Z)-n-ブチリデンフタリドを毎日経口投与。
(3)「HD」群(マウス5匹):高用量(25mg/kg体重)の(Z)-n-ブチリデンフタリドを毎日経口投与。
(4)「Gem」群(マウス5匹):100mg/kg体重のゲムシタビン(GEM)を3日毎に腹腔内注射。
(5)「LD+Gem」群(マウス5匹):12.5mg/kg体重の(Z)-n-ブチリデンフタリドを連日経口投与、および50mg/kg体重のゲムシタビン(GEM)を3日毎に腹腔内注射。
(6)「TS-1」群(マウス5匹):100mg/kg体重のTS-1を5日間連日経口投与後、2日間TS-1の経口投与を中止。
(7)「LD+TS-1」群(マウス2匹):12.5mg/kg体重の(Z)-n-ブチリデンフタリドを連日経口投与後、50mg/kg体重のTS-1を1日1回経口投与後、TS-1の経口投与を2日間中止。
(8)「シスプラチン」群(マウス3匹):2.5mg/kg体重のシスプラチンを7日間腹腔内注射。
(9)「Z-BP+シスプラチン」群(マウス3匹):6.25mg/kg体重の(Z)-n-ブチリデンフタリドを連日経口投与し、1.25mg/kg体重のシスプラチンを7日間腹腔内注射。
【0078】
4-2.腫瘍の大きさの観察(T2強調MRI)
Luc-eGFPによってトランスフェクトされた安定に構築されたPanc02細胞を、実施例4-1の各群のマウスに同所注射し、in-situでの膵臓腫瘍の増殖を測定した後、薬物治療を14日間(すなわち、15日目)行った。この期間中、各郡のマウスの膵臓腫瘍を分析し、T2強調MRIで観察し、記録のために写真を撮った。その結果を図2に示す。また、図2の各群のマウスの腫瘍(点線で囲った部分)の大きさをアミドソフトで解析した。その結果を図3に示す。
【0079】
ゲムシタビン(GEM)およびTS-1は、臨床において癌を治療するための薬剤である。しかし、図3に示すように、「Gem」群と「TS-1」群のマウスの腫瘍サイズは、無処置の「コントロール」群(「Ctl.」群とも呼ばれる)よりも大きい。以上の結果から、ゲムシタビン(GEM)およびTS-1が腫瘍微小環境(TME)における免疫抑制を誘導し、それによって免疫系に対する癌細胞の薬剤耐性を引き起こすことが分かる。
【0080】
図3は、「LD+Gem」群の腫瘍サイズが「Gem」群の腫瘍サイズよりも有意に小さく、「LD+TS-1」群の腫瘍サイズが「TS-1」群の腫瘍サイズよりも有意に小さいことも示している。以上の結果から、本発明の化合物またはその塩を抗癌剤と併用することにより、抗癌剤による免疫抑制を効果的に逆転させ、腫瘍増殖をより効果的に阻害できることがわかる。
【0081】
4-3.腫瘍の大きさの観察(IVISイメージングシステム)
実施例4-1の各群のマウスに、安定に構築されたLuc-eGFPを導入したPanc02細胞を同所注射して1日目、15日目、22日目に、「シスプラチン」群および「Z-BP+シスプラチン」群のマウスの腫瘍サイズが、IVISイメージングシステムによって検出された(光量子束(Photon Flux)の測定により検出、単位:ph/s/cm/sr)。その結果を図4に示す。
【0082】
図4から、「シスプラチン」群と比較して、22日目の「Z-BP+シスプラチン」群から得られた光量子束が有意に低いことが分かる。つまり、「Z-BP+シスプラチン」群の腫瘍サイズは、「シスプラチン」群よりも有意に小さくなっている。上記の結果はまた、本発明の化合物またはその塩を抗癌剤と併用することにより、抗癌剤の腫瘍増殖抑制効果を有効に増強できることを示している。
【0083】
4-4.生存観察
実施例4-1の方法に従って、膵臓癌マウスを生成し、各群のマウスの生存を毎日観察し、記録した。その結果を表15および図5A図5Dに示す。
【0084】
表15および図5A図5Dから、「LD」群のマウスの生存日数は、「コントロール」群(「Ctl」群とも呼ばれる)および「TS-1」群よりも長いことが分かる。また、「LD」群と「Gem」群のマウスの生存日数は「コントロール」群の1.8倍であり、「LD+Gem」群のマウスの生存日数は、「コントロール」群の2.1倍である。
【0085】
4-5.タンパク質発現の観察
実施例4-2~4-3の観察を行った後、各群のマウスを殺処分し、その膵臓腫瘍組織を採取してタンパク質を抽出した。次に、各群のタンパク質試料中のCD44タンパク質、CD44ICDタンパク質、PD-1タンパク質、PD-L1タンパク質、p-Aktタンパク質、およびAktタンパク質の発現をウェスタンブロッティングにより検出した。さらに、GAPDHタンパク質の発現は、内部コントロールとして機能する。その結果を図6に示す。
【0086】
図6から、「Gem」群および「TS-1」群のマウスにおけるPD-1タンパク質およびPD-L1タンパク質の発現は、未処理の「コントロール」群(「Ctl」群とも呼ばれる)よりも多いことがわかる。上記の結果は、ゲムシタビン(GEM)およびTS-1が腫瘍微小環境(TME)で免疫抑制を誘発し、それによって免疫系に対する癌細胞の薬剤耐性を引き起こすことも示している。
【0087】
図6はまた、「LD+Gem」群のCD44タンパク質、CD44ICDタンパク質、PD-1タンパク質、およびPD-L1タンパク質の発現が「Gem」群の発現よりも有意に少なく、また、「LD+TS-1」群のCD44タンパク質、CD44ICDタンパク質、PD-1タンパク質、およびPD-L1タンパク質の発現が「TS-1」群の発現よりも有意に少ないことを示している。上記の結果は、(Z)-n-ブチリデンフタリドが癌細胞におけるCD44タンパク質およびCD44ICDタンパク質の発現を阻害し、さらにPD-1タンパク質、PD-L1タンパク質などの免疫チェックポイント抗原の発現を阻害するのに有効であることを示している。したがって、(Z)-n-ブチリデンフタリドは、癌細胞と免疫細胞の結合をブロックすることができ、それによって抗癌剤によって誘発される免疫抑制を逆転させることができる。上記の結果はまた、本発明の化合物またはその塩を抗癌剤と組み合わせて使用することにより、抗癌剤によって誘導された免疫抑制を効果的に逆転させることができること、および、抗がん剤の治療効果を高めるのに有益である可能性があることを示している。
【0088】
さらに、図6から、PD-L1タンパク質のダウンレギュレーションに応じて、p-Aktタンパク質(すなわち、活性化Aktタンパク質)の発現が減少することも分かる。上記の結果は、PD-L1シグナル伝達経路が阻害されたことを証明することができる。
【0089】
本実施例の動物実験に見られるように、本発明の化合物またはその塩を抗がん剤と併用することにより、動物体内で抗がん剤に対するがん細胞の感受性を高め、投与量を効果的に低減することができ、これにより、抗癌剤の副作用を軽減し、抗癌剤によって誘発された免疫抑制を逆転させ、癌患者の悪液質の症状を軽減するという目的を達成する。

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-06-04
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
癌細胞の免疫抑制も癌の発生と関連していることを示す研究がある。一部の癌細胞は、免疫細胞が活性化されないように、免疫細胞の免疫抑制を引き起こすために、その表面抗原(例えば、プログラム死-リガンド1)を介して免疫細胞に結合して、誘導する。前述のプログラム死-リガンド1(PD-L1)などの癌細胞の表面抗原は、「免疫チェックポイント抗原」とも呼ばれる。また、一部の抗癌剤(ゲムシタビンなど)が腫瘍微小環境(TME)の免疫抑制を引き起こし、それによって癌細胞が免疫系に抵抗することを示す研究もある。「ゲムシタビン治療は、マクロファージの浸潤、成長、および極性化をサポートすることにより、膵臓腫瘍の免疫抑制性微小環境を促進する」(Scientific reports.2018年8月10日;8(1):1-10.)などを参照することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
図1図1は、異なる濃度の(Z)-n-ブチリデンフタリドで処理したPanc02細胞におけるCD44ICDタンパク質、PD-L1タンパク質、およびGAPDHタンパク質の発現をウェスタンブロッティングで解析した画像を示す。
図2図2は、「コントロール」群、「LD」群(低用量)、「HD」群(高用量)、「Gem」群(ゲムシタビン)、「LD+Gem」群、「TS-1」群、および「LD+TS-1」群の結果を含む各群のマウスの膵臓腫瘍画像(点線で囲った部分が腫瘍を表す)を示し、係る画像は、マウスの膵臓に同所的にPanc02細胞を注入してから15日目に撮影した画像である。
図3図3は、図2の点線で囲った部分から解析した腫瘍サイズのヒストグラムを示す(*は対照群と比較してp値<0.05であることを表し、**は対照群と比較してp値<0.005であることを表す。)
図4図4は、「シスプラチン」群および「Z-BP+シスプラチン」群の結果を含む、マウスの膵臓に同所的にPanc02細胞を注入してから1日目、15日目、22日目に測定された腫瘍サイズ(光量子束(Photon Flux)で表示)を示す。
図5A-5D】図5A図5Dは、異なる治療に対する膵臓癌を有するマウスの生存率の曲線図を示す。
図6図6は、膵臓癌マウスの膵臓腫瘍組織におけるCD44蛋白質、CD44ICD蛋白質、PD-1蛋白質、PD-L1蛋白質、p-Akt蛋白質、Akt蛋白質、GAPDH蛋白質の発現を異なる治療毎に画像化したものである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
使用には以下が含まれる。
(i)抗癌剤と組み合わせて、抗癌剤に対する癌細胞の感受性を高め、抗癌剤の副作用を軽減し、抗癌剤によって誘発された免疫抑制を逆転させ、および/または癌を有する対象における悪液質の症状を軽減するために用いられる、医薬組成物の製造における式(I)の化合物および/または式(I)の化合物の薬学的に許容される塩の使用
(ii)癌を治療するための医薬組成物の製造における、第1の活性成分としての式(I)の化合物および/または式(I)の化合物の薬学的に許容される塩および第2の活性成分としての抗癌剤の使用
(iii)第1の成分としての式(I)の化合物および/または式(I)の化合物の薬学的に許容される塩および第2の成分としての抗癌剤を含む組み合わせ
(iv)前記組み合わせを必要とする対象に投与することを含む、癌を治療するための方法
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
本発明に従って提供される組み合わせは、医薬組成物またはキットであってもよい。本発明による組合せの実施形態では、組合せは癌治療に使用される。本発明による組み合わせがキットである場合、(1)第1の成分としての式(I)の化合物および/または薬学的に許容される塩、および(2)第2の成分としての抗癌剤が、個別に異なる容器(例えば、ビニール袋、ペットボトル、ガラス瓶、アンプル)に包装され、保存され、単独で、またはセットとして組み合わせて輸送または販売することができる。加えて、キットは、使用者がさらなる処理および適用のために現場で成分を混合するための手順およびプログラムを提供する取扱説明書をさらに含むことができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗癌剤と組み合わせて、前記抗癌剤に対する癌細胞の感受性を高め、前記抗癌剤の副作用を軽減し、前記抗癌剤によって誘発された免疫抑制を逆転させ、および/または癌を有する対象における悪液質の症状を軽減するために用いられる、医薬組成物であって、前記医薬組成物は、有効成分及び薬学的に許容される担体からなり、
前記有効成分は、式(I)の単一化合物、または、式(I)の化合物の薬学的に許容される単一のであり
ここで、Aは任意にカルボニルを有するC1-C8脂肪族ヒドロカルビルであり、
XはHまたはOHであり、
YはOであり、
はHまたは存在しないが、
(i)R がHである場合、Aはカルボニルを有するC1-C8脂肪族ヒドロカルビルであり、前記抗癌剤は、微小管集合阻害剤、白金ベースの薬剤、代謝拮抗剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
(ii)R が存在しない場合、AはC1-C8脂肪族ヒドロカルビルであり、YとAとが結合して5員環を形成し、前記抗癌剤は、5-フルオロウラシル(5-FU)、イリノテカン、ゲムシタビン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
式(I)の単一化合物または式(I)の化合物の薬学的に許容される単一の塩の純度が97%以上であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
癌を有する対象における悪液質の症状を軽減するために前記抗癌剤と組み合わせて使用される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
第1の活性成分、第2の活性成分及び薬学的に許容される担体からなる、癌を治療するための医薬組成物であって、前記第1の活性成分は、式(I)の単一化合物、または、式(I)の化合物の薬学的に許容される単一のであり
ここで、Aは任意にカルボニルを有するC1-C8脂肪族ヒドロカルビルであり、
XはHまたはOHであり、
YはOであり、
はHまたは存在しないが、
(i)R がHである場合、Aはカルボニルを有するC1-C8脂肪族ヒドロカルビルであり、前記第2の活性成分は、微小管集合阻害剤、白金ベースの薬剤、代謝拮抗剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
(ii)R が存在しない場合、AはC1-C8脂肪族ヒドロカルビルであり、YとAとが結合して5員環を形成し、前記第2の活性成分は、5-フルオロウラシル(5-FU)、イリノテカン、ゲムシタビン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
式(I)の単一化合物または式(I)の化合物の薬学的に許容される単一の塩の純度が97%以上であることを特徴とする医薬組成物
【請求項4】
AがC1-C6脂肪族ヒドロカルビルであり、Rが存在しない、請求項1またはに記載の医薬組成物
【請求項5】
Aがカルボニルを有するC1-C6脂肪族ヒドロカルビルであり、RがHである、請求項1またはに記載の医薬組成物
【請求項6】
AがC5アルキルまたはアルケニルである、請求項に記載の医薬組成物
【請求項7】
Aが、カルボニルを有するC5アルキルまたはアルケニルである、請求項に記載の医薬組成物
【請求項8】
前記薬学的に許容される塩が、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、および亜鉛塩のうちの少なくとも1つである、請求項に記載の医薬組成物
【請求項9】
がHである場合、前記抗癌剤が、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、ミトキサントロン、テニポシド、アザシチジン、5-フルオロウラシル、テガフール、TS-1、6-メルカプトプリン、アザチオプリン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、シトシンアラビノシド、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、プララトレキサート、チオグアニン、トリフルリジン/チピラシル配合剤、シスプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項10】
がHである場合、前記第2の活性成分が、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、ミトキサントロン、テニポシド、アザシチジン、5-フルオロウラシル、テガフール、TS-1、6-メルカプトプリン、アザチオプリン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、シトシンアラビノシド、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、プララトレキサート、チオグアニン、トリフルリジン/チピラシル配合剤、シスプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載の医薬組成物
【請求項11】
前記癌が、結腸直腸癌、結腸癌、肺癌、膵臓癌、膀胱癌、胆管癌、直腸癌、乳癌、多発性骨髄腫、婦人科腫瘍、脳癌、精巣癌、白血病、リンパ腫、胸膜中皮腫、胃癌、肝臓癌のうちの少なくとも1つである、請求項1またはに記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記癌が、結腸直腸癌、結腸癌、肺癌、膵臓癌、直腸癌、脳癌、および肝臓癌の少なくとも1つである、請求項1または3に記載の医薬組成物。
【請求項13】
第1の成分第2の成分及び薬学的に許容される担体からなる、癌を治療するための組み合わせ物であって、前記第1の成分は、式(I)の単一化合物、または、式(I)の化合物の薬学的に許容される単一のであり
ここで、Aは任意にカルボニルを有するC1-C8脂肪族ヒドロカルビルであり、
XはHまたはOHであり、
YはOであり、
はHまたは存在しないが、
(i)R1がHである場合、Aはカルボニルを有するC1-C8脂肪族ヒドロカルビルであり、前記第2の活性成分は、微小管集合阻害剤、白金ベースの薬剤、代謝拮抗剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
(ii)R が存在しない場合、AはC1-C8脂肪族ヒドロカルビルであり、YとAとが結合して5員環を形成し、前記第2の成分は、5-フルオロウラシル(5-FU)、イリノテカン、ゲムシタビン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
式(I)の単一化合物または式(I)の化合物の薬学的に許容される単一の塩の純度が97%以上であることを特徴とする第1の成分および第2の成分の組み合わせ物
【請求項14】
AがC1-C6脂肪族ヒドロカルビルであり、Rが存在しない、請求項13に記載の組み合わせ
【請求項15】
Aがカルボニルを有するC1-C6脂肪族ヒドロカルビルであり、RがHである、請求項13に記載の組み合わせ
【請求項16】
AがC5アルキルまたはアルケニルである、請求項14に記載の組み合わせ
【請求項17】
Aが、カルボニルを有するC5アルキルまたはアルケニルである、請求項15に記載の組み合わせ
【請求項18】
前記薬学的に許容される塩が、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、および亜鉛塩のうちの少なくとも1つである、請求項15に記載の組み合わせ
【請求項19】
がHである場合、前記第2の成分が、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、ミトキサントロン、テニポシド、アザシチジン、5-フルオロウラシル、テガフール、TS-1、6-メルカプトプリン、アザチオプリン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、シトシンアラビノシド、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、プララトレキサート、チオグアニン、トリフルリジン/チピラシル配合剤、シスプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載の組み合わせ
【請求項20】
前記組み合わせが、医薬組成物またはキットの形態である、請求項13ないし19のいずれか1項に記載の組み合わせ