IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-装置及び方法 図1
  • 特開-装置及び方法 図2
  • 特開-装置及び方法 図3
  • 特開-装置及び方法 図4
  • 特開-装置及び方法 図5
  • 特開-装置及び方法 図6
  • 特開-装置及び方法 図7
  • 特開-装置及び方法 図8
  • 特開-装置及び方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113037
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240814BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/14 607
B41J2/18
B41J2/14 605
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024090412
(22)【出願日】2024-06-04
(62)【分割の表示】P 2021086096の分割
【原出願日】2020-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2020059471
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】宮原 崇
(72)【発明者】
【氏名】穂積 大輔
(72)【発明者】
【氏名】石原 篤志
(57)【要約】      (修正有)
【課題】圧力室へ圧力が伝わる流体クロストークを低減する。
【解決手段】液体吐出装置は、擬塑性の液体が流れる流路を有している流路部材と、流路内の液体に圧力を付与して流路部材から液滴を吐出させるアクチュエータと、供給リザーバー、複数の供給マニホールド、複数の供給流路、複数の圧力室、複数の回収流路、複数の回収マニホールド及び回収リザーバーを順に循環する流路を持つ。流路は、循環流量が目標流量であるときに、供給流路における液体の平均粘度が、供給マニホールドにおける液体の平均粘度の半分以下となる流路形状を有することにより、流体クロストークを低減することができる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
擬塑性の液体が流れる流路を有している流路部材と、
前記流路内の前記液体に圧力を付与して前記流路部材から液滴を吐出させるアクチュエータと、
前記流路内における前記液体の流量を設定する流量設定部と、
を有しており、
前記流路は、
前記液体が供給される供給リザーバーと、
前記供給リザーバーに接続されており、前記供給リザーバーから前記液体が供給される複数の供給マニホールドと、
前記複数の供給マニホールドのそれぞれに対して2以上の本数で設けられており、それぞれ前記複数の供給マニホールドのいずれかに接続されており、その接続されている供給マニホールドから前記液体が供給される複数の供給流路と、
前記複数の供給流路に互いに別々に接続されており、前記複数の供給流路から前記液体が供給され、前記アクチュエータによって圧力が付与される複数の圧力室と、
前記複数の圧力室に互いに別々に接続されており、前記圧力室からの前記液体を外部へ吐出させる複数のノズルと、
前記複数の圧力室に互いに別々に接続されており、前記複数の圧力室から前記液体を回収する複数の回収流路と、
それぞれ前記複数の回収流路のいずれか2本以上に接続されており、前記複数の回収流路から前記液体を回収する複数の回収マニホールドと、
前記複数の回収マニホールドに接続されており、前記複数の回収マニホールドから前記液体を回収する回収リザーバーと、を有しており、
前記流量設定部は、前記供給リザーバー、前記複数の供給マニホールド、前記複数の供給流路、前記複数の圧力室、前記複数の回収流路、前記複数の回収マニホールド及び前記回収リザーバーを順に循環する前記液体の循環流量を所定の目標流量に調整し、
前記流路は、前記循環流量が前記目標流量であるときに、前記供給流路における前記液体の平均粘度が、前記供給マニホールドにおける前記液体の平均粘度の半分以下となる流路形状を有している
液体吐出装置。
【請求項2】
前記流路は、前記循環流量が前記目標流量であるときに、前記供給マニホールドにおける前記液体の平均粘度が前記供給リザーバーにおける前記液体の平均粘度の半分以下となる流路形状を有している
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記圧力室は、
前記アクチュエータに圧力が付与される圧力室本体と、
前記圧力室本体と前記ノズルとを接続しているディセンダと、を有しており、
前記回収流路は前記ディセンダに接続されており、
前記流路は、前記循環流量が前記目標流量であるときに、前記ディセンダにおける前記液体の平均粘度が前記回収流路における前記液体の平均粘度の1.5倍以上となる流路形状を有している
請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記圧力室は、
前記アクチュエータに圧力が付与される圧力室本体と、
前記圧力室本体と前記ノズルとを接続しているディセンダと、を有しており、
前記回収流路は前記ディセンダに接続されており、
前記ディセンダは、
第1部位と、
前記第1部位よりも前記圧力室本体側に位置している第2部位と、を有しており、
前記流路は、前記循環流量が前記目標流量であるときに、前記第2部位における前記液体の平均粘度が前記第1部位における前記液体の平均粘度よりも高くなる流路形状を有している
請求項1~3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記供給リザーバーにおける前記液体の流体抵抗をR
前記供給マニホールドにおける前記液体の流体抵抗をR
前記供給リザーバーに接続されている前記供給マニホールドの本数をm、
前記供給マニホールド毎の前記ノズルの数をn、
前記供給リザーバーに流入する前記液体の流量をU、
前記液体の表面張力をσ、
前記ノズルの半径をr、としたときに、
(1/2)×R×U(1+1/m)と、
(1/2)×R×(U/m)×(1+1/n)との和が、
2σ/rよりも小さく、かつ
<1/10×R×(1/m)である
請求項1~4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記ノズルにおける前記液体の流体抵抗をRとしたときに、
<1/10×R×(1/n)である
請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の液体吐出装置を用いる液体吐出方法であって、
前記液体として、せん断速度が1000s-1のときの粘度が0.02Pa・s以上0.4Pa・s以下であり、せん断速度が0.01s-1のときの粘度が0.5Pa・s以上50Pa・s以下である擬塑性流体を用いる
液体吐出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体吐出装置及び液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタ等の液体吐出装置が知られている。特許文献1では、インクとして、チキソトロピー性を有するものを用いたインクジェット記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-216425号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係る液体吐出装置は、流路部材と、アクチュエータと、流量設定部と、を有している。前記流路部材は、擬塑性の液体が流れる流路を有している。前記アクチュエータは、前記流路内の前記液体に圧力を付与して前記流路部材から液滴を吐出させる。前記流量設定部は、前記流路内における前記液体の流量を設定する。前記流路は、供給リザーバーと、複数の供給マニホールドと、複数の供給流路と、複数の圧力室と、複数のノズルと、複数の回収流路と、回収リザーバーと、を有している。前記供給リザーバーは、前記液体が供給される。前記複数の供給マニホールドは、前記供給リザーバーに接続されており、前記供給リザーバーから前記液体が供給される。前記複数の供給流路は、前記複数の供給マニホールドのそれぞれに対して2以上の本数で設けられており、それぞれ前記複数の供給マニホールドのいずれかに接続されており、その接続されている供給マニホールドから前記液体が供給される。前記複数の圧力室は、前記複数の供給流路に互いに別々に接続されており、前記複数の供給流路から前記液体が供給され、前記アクチュエータによって圧力が付与される。前記複数のノズルは、前記複数の圧力室に互いに別々に接続されており、前記圧力室からの前記液体を外部へ吐出させる。前記複数の回収流路は、前記複数の圧力室に互いに別々に接続されており、前記複数の圧力室から前記液体を回収する。前記複数の回収マニホールドは、それぞれ前記複数の回収流路のいずれか2本以上に接続されており、前記複数の回収流路から前記液体を回収する。前記回収リザーバーは、前記複数の回収マニホールドに接続されており、前記複数の回収マニホールドから前記液体を回収する。前記流量設定部は、前記供給リザーバー、前記複数の供給マニホールド、前記複数の供給流路、前記複数の圧力室、前記複数の回収流路、前記複数の回収マニホールド及び前記回収リザーバーを順に循環する前記液体の循環流量を所定の目標流量に調整する。前記流路は、前記循環流量が前記目標流量であるときに、前記供給流路における前記液体の平均粘度が、前記供給マニホールドにおける前記液体の平均粘度の半分以下となる流路形状を有している。
【0005】
本開示の一態様に係る液体吐出方法は、上記液体吐出装置を用いる液体吐出方法であって、前記液体として、せん断速度が1000s-1のときの粘度が0.02Pa・s以上0.4Pa・s以下であり、せん断速度が0.01s-1のときの粘度が0.5Pa・s以上50Pa・s以下である擬塑性流体を用いる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る液体吐出装置の全体構成を示す模式図である。
図2図2(a)は実施形態に係る液体吐出装置のヘッドの分解斜視図であり、図2(b)は、上記ヘッドが含む第2流路部材の斜視図である。
図3図3(a)及び図3(b)は実施形態に係るヘッドの平面透視図である。
図4図3(b)の領域IVの拡大図である。
図5】実施形態に係るヘッドの個別流路の斜視図である。
図6図6(a)は図5のVIa-VIa線における断面図であり、図6(b)は図5のVIb-VIb線における断面図である。
図7】実施形態に係る液体吐出装置に用いられる液体の特性を示す図である。
図8】実施形態に係る流路の部位毎の平均粘度の一例を示す図である。
図9】変形例に係る個別流路の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の図面は、模式的なものである。従って、細部は省略されることがある。また、寸法比率は現実のものと必ずしも一致しない。複数の図面相互の寸法比率も必ずしも一致しない。特定の寸法が実際よりも大きく示され、特定の形状が誇張されることもある。
【0008】
図面には、D1方向~D6方向を示す矢印を付すことがある。これらの方向は、後述する吐出面3aに平行な方向である。また、D2方向及びD5方向は、例えば、後述するヘッド3の長手方向に平行な方向であり、別の観点では、いわゆる主走査方向である。D3方向及びD6方向は、D2方向及びD5方向に直交する方向である。D1方向及びD4方向は、D3方向及びD6方向に対して傾斜する方向である。
【0009】
(液体吐出装置の全体構成)
図1は、実施形態に係る液体吐出装置1(以下、「吐出装置1」ということがある。)の要部構成を模式的に示す図である。
【0010】
吐出装置1は、例えば、インクジェットプリンタのように、ヘッド3の吐出面3aから対象物101に向けて液滴を吐出することによって対象物101の表面に液体を付着させる装置として構成されている。なお、吐出面3aは、鉛直方向に対していずれの方向に面していてもよいが、以下の説明では、便宜上、吐出面3aが面する方向を下方として、上面又は下面等の語を用いることがある。
【0011】
吐出装置1の具体的な種類(用途)は、適宜なものとされてよい。例えば、吐出装置1は、対象物101としての記録媒体(例えば紙)に対してインクを付着させて文字及び図形を印刷する(別の観点では情報を記録する)装置であってよい。すなわち、吐出装置1は、一般にいうプリンタであってよい。また、例えば、吐出装置1は、対象物101としての自動車のボディに対して塗料を付着させてボディを装飾する装置であってもよい。また、例えば、吐出装置1は、対象物101としての回路基板に導電性の粒子を含む液体を付着させて配線を形成する装置であってもよい。
【0012】
また、図示の例とは異なり、吐出装置1は、対象物101に対して液体を付着させる装置でなくてもよい。例えば、吐出装置1は、容器内の物質と反応する液状の化学薬品を容器内へ吐出する装置であってもよいし、大気中に消毒液を散布する装置であってもよい。
【0013】
上述の吐出装置1の具体的な種類の例示から理解されるように、対象物101の材料、形状及び寸法は適宜なものであってよい。図1は模式図であることから、対象物101は直方体で示されている。対象物101の材料としては、例えば、紙、布、樹脂、金属、セラミック及び木材、並びにこれらの組み合わせを挙げることができる。対象物101の種類としては、記録媒体(例えばロール紙又は枚葉紙)、回路基板、衣類、飲料用容器、収納用容器、電子機器の筐体及び自動車のボディを挙げることができる。対象物101又はそのうちの液体が付着される領域は、液滴を吐出する吐出面3aよりも狭くてもよいし、広くてもよい。
【0014】
また、上述の吐出装置1の具体的な種類の例示から理解されるように、液体の種類も適宜なものとされてよい。例えば、液体の種類としては、インク、塗料、導電性の粒子を含む液体、化学薬品及び消毒液を挙げることができる。インク及び塗料は、有機溶剤の有無、及び/又は対象物101の表面の保護の機能の有無等によって区別されることがある。ただし、そのような区別はなされなくてもよい。以下の説明において、塗料は適宜にインクに読み替えられて構わない。その逆も同様である。塗料は、着色を目的として顔料を含むものであってもよいし、着色を目的とせず(例えば光沢の付与及び/又は対象物101の保護のみを目的として)、顔料を含まないもの(無色のもの)であってもよい。
【0015】
吐出装置1は、例えば、液滴を吐出するヘッド3と、ヘッド3と対象物101とを相対移動させる移動部5とを有している。ヘッド3は、液滴を吐出する複数のノズル(後述)が開口している吐出面3aを有している。移動部5は、例えば、吐出面3aと対象物101の表面とを対向させた状態を維持しつつ、両者を吐出面3a及び対象物101の表面に沿って相対移動させる。相対移動の方向は、例えば、D3方向又はD6方向である。吐出装置1の具体例であるインクジェットプリンタから理解されるように、上記のような相対移動に同期して吐出面3aから液滴が吐出されることによって、複数のノズルの配置領域の面積よりも広い面積の領域に対して液滴が付着される。
【0016】
また、吐出装置1は、例えば、液体を貯留しているタンク7を有している。ヘッド3は、タンク7からヘッド3へ液体を供給するための供給口3bと、ヘッド3からタンク7へ液体を回収するための回収口3cとを有している。すなわち、液体は、ヘッド3及びタンク7を循環する。このように液体を循環させることによって、例えば、液体がヘッド3内に滞留する蓋然性が低減される。ひいては、滞留した液体が固化したり、滞留した液体内の成分が沈殿したりする蓋然性が低減される。また、本実施形態では、液体を循環させることによって、後述するように、液体のせん断速度を調整し、ひいては、液体の粘度を調整することができる。
【0017】
吐出装置1は、液体が循環するように液体に圧力を付与する循環作動部9と、各部(例えば、ヘッド3、移動部5及び循環作動部9)の制御を行う制御部11とを有している。なお、循環作動部9及び制御部11の組み合わせは、ヘッド3を循環する液体の流量(以下、循環流量という。)を設定する流量設定部13として捉えられてよい。循環流量は、例えば、回収口3cからヘッド3の外部へ流出する液体の流量と同じとみなされてよい。
【0018】
吐出装置1は、モノクロプリンタのように1つのみのヘッド3(及びタンク7)を有していてもよいし、カラープリンタのように互いに異なる種類の液体を吐出する複数のヘッド3(及び複数のタンク7)を有していてもよい。また、吐出装置1は、互いに同一の種類の液体を吐出する複数のヘッド3を有していてもよい。この同一の種類の液体を吐出する複数のヘッド3は、例えば、一定の面積に液体を付着させる時間を短縮したり、ドット密度を向上させたりすることに有利である。以下の説明では、便宜上、1つのヘッド3についてのみ言及する。
【0019】
(移動部)
移動部5は、例えば、ヘッド3に対して対象物101を少なくともD3方向及びD6方向の一方へ相対移動させることが可能である。この方向は、既述のように、液滴を吐出するときの移動方向であり、いわゆる副走査方向である。移動部5は、D3方向及びD6方向以外の他の方向におけるヘッド3と対象物101との相対移動を実現可能であってよい。相対移動が実現されてよい他の方向としては、例えば、D3方向及びD6方向に直交するD2方向及びD5方向、並びに吐出面3aに直交する方向(ヘッド3と対象物101とを近づける方向、及び両者を遠ざける方向)を挙げることができる。また、移動部5は、ヘッド3と対象物101との相対回転を実現可能であってもよい。
【0020】
移動部5は、絶対座標系において、対象物101のみを移動させてもよいし、ヘッド3のみを移動させてもよいし、両者を移動させてもよい。また、移動部5の具体的な構成は、吐出装置1の具体的な種類に応じて適宜に設定されてよい。
【0021】
例えば、吐出装置1が、いわゆるラインプリンタである場合においては、移動部5は、対象物101としての記録媒体(例えば紙)を搬送する装置として構成されてよい。当該装置は、例えば、記録媒体に接触して摩擦力を生じる複数のローラと、複数のローラを回転させる電動機とを備えている。また、例えば、吐出装置1が、いわゆるシリアルプリンタである場合においては、移動部5は、対象物101としての記録媒体を所定の搬送方向に搬送する装置と、上記搬送方向に直交するとともに記録媒体に沿う方向にヘッド3を移動させる装置とを含んでよい。
【0022】
また、例えば、吐出装置1は、任意の種類の対象物101を搬送するベルトコンベアを含んでよい。また、例えば、吐出装置1は、任意の種類の対象物101が載置される可動テーブルを含んでよい。また、例えば、吐出装置1は、任意の種類の対象物101を移動させる産業用ロボット、及び/又はヘッド3を移動させる産業用ロボットを含んでよい。産業用ロボットとしては、例えば、垂直多関節ロボット(狭義の多関節ロボット)、スカラロボット、直交ロボット及びパラレルリンクロボットを挙げることができる。
【0023】
(タンク及び循環作動部)
タンク7及び循環作動部9は、例えば、液体を循環させる公知のインクジェットプリンタにおけるタンク及び循環作動部と同様のものとされたり、当該公知のタンク及び循環作動部を応用したものとされたりしてよい。
【0024】
例えば、タンク7は、ヘッド3に供給される液体と、ヘッド3から回収した液体とを同一の空間に収容する構成であってよい。また、タンク7は、ヘッド3に供給される液体と、ヘッド3から回収した液体とを別個の空間に収容し、後者の空間から前者の空間へ液体を流れさせる構成であってもよい。この場合、タンク7は、1つのタンクが隔壁によって区切られて2つの空間を有していてもよいし、流路によって互いに接続された2つのタンクを有することによって2つの空間を有していてもよい。タンク7内(上記の空間)は、大気開放されていてもよいし、密閉されていてもよい。後者の場合、タンク7内の圧力は、バルブ又はバキュームポンプ等によって適宜な圧力に調整されてよい。タンク7は、メインタンクと、メインタンクよりも容量が小さいサブタンクとを有していてもよい。サブタンクは、メインタンクとヘッド3とを仲介する。
【0025】
循環作動部9は、図示の例では、タンク7から液体をヘッド3に送出するポンプ15と、供給口3b側の液体の圧力を検出する圧力センサ17Aと、回収口3c側の液体の圧力を検出する圧力センサ17Bとを有している。制御部11は、例えば、圧力センサ17A及び圧力センサ17Bの検出値に基づいて、供給口3b及び回収口3cの圧力差が所定の目標値に収束するようにポンプ15をフィードバック制御する。これにより、循環流量が目標流量にフィードバック制御される。
【0026】
図示の例とは異なり、供給口3b側のポンプ15に代えて、又は加えて、回収口3cからタンク7へ液体を送出するポンプ15が設けられてもよい。また、液体を送出するポンプ15に代えて、又は加えて、バキュームポンプ等によるタンク7内の圧力制御によって液体の流れが生成されてもよい。供給用の液体を収容しているタンクにおける液面を回収された液体を収容しているタンクにおける液面よりも高くすることによって、液体の流れが生成されてもよい。
【0027】
圧力センサ17A及び17Bに代えて、又は加えて、ヘッド3に供給される液体の流量を検出する流量センサ、及び/又はヘッド3から回収される液体の流量を検出するセンサが設けられ、循環流量の制御に利用されてもよい。また、上記の液体の流れを生成する種々の態様から理解されるように、これらのセンサに代えて、又は加えて、タンク7内の気圧を検出するセンサが設けられ、循環流量の制御に利用されてもよい。センサに基づくフィードバック制御が行われずに、オープンループ制御が行われてもよい。すなわち、センサは設けられなくてもよい。
【0028】
タンク7及び循環作動部9は、例えば、移動部5によって絶対座標系において移動されない。従って、例えば、移動部5がヘッド3を絶対座標系において移動させる態様においては、ヘッド3は、タンク7及び循環作動部9に対して移動する。この場合、ヘッド3と、タンク7及び循環作動部9とは、例えば、可撓性のチューブによって構成された流路によって接続されてよい。また、移動部5がヘッド3を絶対座標系において移動させない態様においては、ヘッド3は、タンク7及び循環作動部9に対して固定的である。この場合、ヘッド3と、タンク7及び循環作動部9とを接続する流路の構成は任意である。上記の説明とは異なり、タンク7及び循環作動部9の全部又は一部は、ヘッド3と共に移動しても構わない。
【0029】
(制御部)
制御部11は、例えば、コンピュータによって構成されている。コンピュータは、特に図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び外部記憶装置を有している。CPUがROM及び/又は外部記憶装置に記憶されているプログラムを実行することによって、ヘッド3、移動部5及び循環作動部9の制御が行われる。
【0030】
(ヘッド)
図2(a)は、ヘッド3の分解斜視図である。
【0031】
ヘッド3は、液体が流れる流路を有している流路部材19(符号は図1)と、流路部材19内の液体に圧力を付与するアクチュエータ21と、アクチュエータ21に駆動信号を入力するための信号伝達部材23(図1では図示を省略した。)とを有している。流路部材19は、吐出面3aを有している第1流路部材25と、供給口3b及び回収口3cを有している第2流路部材27とを有している。第1流路部材25の吐出面3aとは反対側の面を加圧面25aということがある。
【0032】
第1流路部材25及び第2流路部材27は、それぞれ概略平板状に構成されており、互いに重ね合わされることによって概略平板状の流路部材19を構成する。供給口3bに供給された液体は、第2流路部材27から第1流路部材25へ供給され、ひいては、吐出面3aから吐出される。吐出されずに残った液体は、第1流路部材25から第2流路部材27へ流れ、回収口3cから回収される。
【0033】
制御部11は、画像データ等の所定のデータに基づいて制御信号を出力する。制御信号は、例えば、信号伝達部材23を介して、信号伝達部材23に実装されている不図示のドライバに入力される。当該ドライバは、入力された制御信号に基づいて所定の波形を有する駆動信号を生成する。当該駆動信号は、信号伝達部材23を介してアクチュエータ21に入力される。アクチュエータ21は、駆動信号の波形に応じた圧力波形で流路部材19内の液体に圧力を付与する。これにより、流路部材19内の液体が吐出面3aから吐出される。なお、制御部11とドライバとの役割分担は適宜に設定されてよく、また、ドライバは、制御部11の一部と捉えられてもよい。
【0034】
(第2流路部材、供給リザーバー及び回収リザーバー)
図2(b)は、第2流路部材27の斜視図である。より詳細には、この図は、第1流路部材25側から第2流路部材27を見た図となっており、図2(b)の紙面上方は、図1及び図2(a)の紙面下方に対応している。図3(a)はヘッド3を吐出面3aとは反対側から見た平面透視図である。この図では、第2流路部材27の形状と、アクチュエータ21とが示されている。
【0035】
図2(b)に示すように、第2流路部材27は、第1流路部材25側の面に形成された2つの溝(29及び31の符号を参照)を有している。この2つの溝は、第1流路部材25に塞がれて、図2(b)及び図3(a)に示す供給リザーバー29及び回収リザーバー31を構成する。供給リザーバー29は、供給口3bに通じており、供給口3bに供給された液体を第1流路部材25の流路に供給する流路である。回収リザーバー31は、回収口3cに通じており、第1流路部材25の流路から液体を回収し、回収した液体を回収口3cに導く流路である。
【0036】
供給リザーバー29及び回収リザーバー31は、例えば、ヘッド3の長手方向(D2方向及びD5方向)に沿って直線状に延びている部分(主部29a及び31a)を有している。主部29a及び31aは、例えば、複数のノズル(後述)の配置領域(ここでは図3(a)のアクチュエータ21の配置領域を参照)の長手方向(D2方向及びD5方向)の長さに亘る長さを有している。また、主部29aと主部31aとは、複数のノズルの配置領域に対してヘッド3の短手方向の互いに逆側(D3方向及びD6方向)に位置している。実施形態の説明では、便宜上、主部29a及び31aのみに着目して供給リザーバー29及び回収リザーバー31の形状及び寸法等について説明することがある
【0037】
供給口3bは、例えば、供給リザーバー29の一端(D2方向の端部)に通じている。供給リザーバー29の他端(D5方向の端部)は、行き止まり(換言すれば袋小路)となっている。供給リザーバー29内の液体は、前記一端から前記他端への方向(D5方向)に流れる。回収口3cは、例えば、回収リザーバー31の一端(D5方向の端部)に通じている。回収リザーバー31の他端(D2方向の端部)は、行き止まり(換言すれば袋小路)となっている。回収リザーバー31内の液体は、前記他端から前記一端への方向(D5方向)に流れる。供給リザーバー29内の液体が流れる方向と、回収リザーバー31内の液体が流れる方向とは、図示の例では、互いに同一である。ただし、両者は互いに逆であってもよい。
【0038】
供給リザーバー29は、主部29aのみを有していてもよいし、他の部位を有していてもよい。図示の例では、供給リザーバー29は、主部29aからヘッド3の長手方向に斜めに延びて供給口3bに至る部分(符号省略)を有している。同様に、回収リザーバー31は、主部31aのみを有していてもよいし、他の部位を有していてもよい。図示の例では、回収リザーバー31は、主部31aからヘッド3の長手方向に斜めに延びて回収口3cに至る部分(符号省略)を有している。
【0039】
供給リザーバー29及び回収リザーバー31(例えばそのうちの主部29a及び31a)の横断面の形状及び寸法は、これらの流路の長さ方向の位置によらずに一定であってもよいし、位置によって異なっていてもよい。実施形態の説明では、前者を例に取ることがある。また、横断面の形状は、矩形等の適宜な形状とされてよい。供給リザーバー29及び回収リザーバー31の各種の寸法は、吐出装置1が適用される具体的な技術分野に応じて適宜に設定されてよい。
【0040】
図示の例では、第2流路部材27は、供給リザーバー29及び回収リザーバー31となる2つの溝の他、信号伝達部材23が挿通されるスリット27a(図2(a)及び図2(b))と、アクチュエータ21を収容する凹部27b(図2(b)及び図3(a))とを有している。スリット27aは、例えば、第2流路部材27を第1流路部材25側からその反対側へ貫通しており、また、ヘッド3の長手方向に沿って延びている。凹部27bは、例えば、アクチュエータ21よりも一回り大きい平面形状を有しており、図示の例では、ヘッド3の長手方向を長手方向とする長方形である。
【0041】
第2流路部材27の材料等は任意である。例えば、第2流路部材27は、金属、樹脂若しくはセラミック又はこれらの組み合わせによって構成されてよい。
【0042】
(第1流路部材)
図3(b)は、ヘッド3の平面透視図である。この図では、第1流路部材25の形状と、アクチュエータ21とが示されている。また、図4は、図3(b)の領域IVの拡大図である。
【0043】
第1流路部材25の流路は、供給リザーバー29から液体が供給される複数の供給マニホールド33と、供給マニホールド33から液体が供給される複数の個別流路35とを有している。個別流路35は、液滴を吐出面3aから吐出するノズル(後述)を含んでいる。また、第1流路部材25の流路は、複数の個別流路35から液体を回収し、回収した液体を回収リザーバー31に導く複数の回収マニホールド37を有している。
【0044】
特に図示しないが、第1流路部材25は、この他、複数の供給マニホールド33、複数の個別流路35及び複数の回収マニホールド37に対してD2方向及びD5方向に位置し、供給リザーバー29と回収リザーバー31とを接続する流路を有していてもよい。このような流路は、例えば、第1流路部材25の温度を均一化することに寄与する。
【0045】
(マニホールド)
供給マニホールド33は、例えば、供給リザーバー29側から回収リザーバー31側へD4方向に沿って直線状に延びている主部33a(図示の例では供給マニホールド33の略全部に相当)を有している。D4方向は、ヘッド3の短手方向(D6方向)に対して傾斜している。同様に、回収マニホールド37は、例えば、回収リザーバー31側から供給リザーバー29側へD1方向に沿って直線状に延びている主部37a(図示の例では回収マニホールド37の略全部に相当)を有している。D1方向は、ヘッド3の短手方向(D3方向)に対して傾斜している。実施形態の説明では、便宜上、主部33a及び37aのみに着目して供給マニホールド33及び回収マニホールド37の形状及び寸法等について説明することがある
【0046】
供給マニホールド33の一端(D1方向の端部)は、平面透視において供給リザーバー29に重なっている。当該一端は、第1流路部材25の第2流路部材27側の面に開口する開口33bを介して供給リザーバー29に通じている。供給マニホールド33の他端(D4方向の端部)は、行き止まりとなっている。従って、供給リザーバー29の液体は、開口33bを介して供給マニホールド33の前記一端に供給され、供給マニホールド33内を前記一端から前記他端への方向(D4方向)に流れる。
【0047】
回収マニホールド37の一端(D4方向の端部)は、平面透視において回収リザーバー31に重なっている。当該一端は、第1流路部材25の第2流路部材27側の面に開口する開口37bを介して回収リザーバー31に通じている。回収マニホールド37の他端(D1方向の端部)は、行き止まりとなっている。従って、回収マニホールド37の液体は、前記他端から前記一端への方向(D4方向)へ流れ、開口37bを介して回収リザーバー31に回収される。
【0048】
供給マニホールド33及び回収マニホールド37は、複数のノズル(後述)の配置領域(ここではアクチュエータ21の配置領域を参照)の短手方向(D3方向及びD6方向)の長さに亘る長さを有している。なお、供給マニホールド33の回収リザーバー31側の端部(D4方向の端部)は、例えば、回収リザーバー31よりも供給リザーバー29側に位置している。同様に、回収マニホールド37の供給リザーバー29側の端部(D1方向の端部)は、例えば、供給リザーバー29よりも回収リザーバー31側に位置している。
【0049】
複数の供給マニホールド33は、例えば、互いに同一の構成であり、また、D2方向に沿って一定のピッチで配列されている。換言すれば、複数の供給マニホールド33は、互いに平行に同一の長さで延びている。複数の供給マニホールド33の供給リザーバー29に対する接続位置(開口33b)は、供給リザーバー29に沿って一定のピッチで配列されている。
【0050】
同様に、複数の回収マニホールド37は、例えば、互いに同一の構成であり、また、D2方向に沿って一定のピッチで配列されている。換言すれば、複数の回収マニホールド37は、互いに平行に同一の長さで延びている。複数の回収マニホールド37の回収リザーバー31に対する接続位置(開口37b)は、回収リザーバー31に沿って一定のピッチで配列されている。
【0051】
複数の供給マニホールド33および複数の回収マニホールド37は、例えば、一定のピッチで交互に配置されている。また、供給マニホールド33と回収マニホールド37とは互いに隣り合っており、互いに平行に延びている。より詳細には、供給マニホールド33の上流側を除く大部分と、回収マニホールド37の下流側を除く大部分とが複数のノズルの配置領域において互いに隣り合っている。
【0052】
供給マニホールド33及び回収マニホールド37(例えばそのうちの主部33a及び37a)の横断面の形状及び寸法は、これらの流路の長さ方向の位置によらずに一定であってもよいし、位置によって異なっていてもよい。実施形態の説明では、前者を例に取ることがある。また、横断面の形状は、矩形等の適宜な形状とされてよい。供給マニホールド33及び回収マニホールド37の各種の寸法は、吐出装置1が適用される具体的な技術分野に応じて適宜に設定されてよい。
【0053】
(個別流路)
個別流路35は、例えば、概略、互いに隣り合う供給マニホールド33及び回収マニホールド37の間に位置して、両者に接続されている。個別流路35は、1組のマニホールド(33及び37)毎に複数設けられている。同一のマニホールド(33及び37)に接続される複数の個別流路35は、例えば、一定のピッチでマニホールドに沿って(D1方向に沿って)配列されており、1列の流路列を構成している。そして、複数の流路列がD2方向に配列されることによって、マトリックス状に複数の個別流路35が配置されている。図示の例とは異なり、互いに隣り合う供給マニホールド33及び回収マニホールド37の間に2列以上の個別流路35が設けられてもよい。
【0054】
1つの流路列内において、複数の個別流路35の構成は、基本的に同一である。また、複数の流路列同士の構成も基本的に同様である。ただし、例えば、互いに隣り合う流路列同士で個別流路35の向きが異なっていてもよい(図示の例)。また、例えば、1つの流路列内において、複数の個別流路35の形状及び/又は寸法が僅かに異なっていてもよい。複数の流路列のうち、D2方向の端部に位置する流路列及びD5方向の端部に位置する流路列は、液滴を吐出しない、いわゆるダミーの個別流路を有していてもよい。
【0055】
個別流路35は、吐出面3aに開口し、液滴を吐出するノズル43を有している。複数のノズル43がD1方向に配列されて構成された列をノズル列というものとする。ノズル列内のノズル43の配列方向(D1方向)は、対象物101に対するヘッド3の相対移動の方向(D3方向)に対して傾斜している。同一のノズル列に属するノズル43は、上記の傾斜によって、D2方向の位置が互いに異なっている。また、複数のノズル列は、D3方向に見て一部同士が互いに重複している。この重複部分において、一のノズル列のノズル43と、他のノズル列のノズル43とは、D2方向の位置が互いに異なっている。そして、複数のノズル43をD3方向に投影したとき、複数のノズル43は、D2方向に基本的に一定の間隔で並ぶ。
【0056】
これにより、ヘッド3において互いに隣り合うノズル43同士の距離よりも短いピッチでD2方向に並ぶ複数のドットを対象物101の表面に形成することができる。例えば、仮想直線Rの範囲に32個のノズル43が投影され、仮想直線R内でノズル43は、360dpiの間隔で並ぶ。これにより、仮想直線Rに直交する方向に対象物101とヘッド3とを相対移動させて液滴を吐出すれば、360dpiの解像度で印刷を行うことができる。
【0057】
図5は、個別流路35の斜視図である。また、図6(a)及び図6(b)は、第1流路部材25及びアクチュエータ21の断面図である。図6(a)は、図5のVIa-VIa線に対応している。図6(b)は、図5のVIb-VIb線に対応している。
【0058】
個別流路35は、例えば、供給マニホールド33に接続されている供給流路39(第1供給流路39A及び第2供給流路39B)と、供給流路39に接続されている圧力室41と、圧力室41に接続されているノズル43とを有している。ノズル43は、既述のように、吐出面3aに開口して第1流路部材25の外部に通じている。供給マニホールド33の液体は、供給流路39及び圧力室41を経由してノズル43に供給される。そして、アクチュエータ21によって圧力室41に圧力が付与されることによって、ノズル43から液滴が吐出される。また、個別流路35は、圧力室41と回収マニホールド37とを接続している回収流路45を有している。吐出されずに圧力室41に残った液体は、回収流路45から回収マニホールド37に回収される。
【0059】
圧力室41は、例えば、アクチュエータ21によって圧力が付与される圧力室本体41aと、圧力室本体41aとノズル43とを接続するディセンダ41bとを有している。
【0060】
圧力室本体41aは、例えば、第1流路部材25の加圧面25aに開口しており、アクチュエータ21によって塞がれている。そして、アクチュエータ21が上方及び/又は下方に撓み変形することによって圧力室本体41a内の液体に圧力が付与される。ディセンダ41bは、圧力室本体41aの下面から吐出面3aに向かって延びている。ディセンダ41bの横断面の面積は、圧力室本体41aの加圧面25aに平行な断面の面積よりも小さい。
【0061】
圧力室本体41aの形状及び寸法は適宜に設定されてよい。図示の例では、圧力室本体41aの平面形状は円形状である。図示の例と異なり、圧力室本体41aの平面形状は、例えば、楕円又は菱形等の円形以外の形状であってもよい。また、圧力室本体41aは、厚さが平面視における径よりも小さい薄型形状とされている。図示の例では、圧力室本体41aの加圧面25aに平行な横断面の形状及びその寸法は上下方向において一定である。ただし、圧力室本体41aは、上下方向の位置によって横断面の形状及び/又はその寸法が異なっていてもよい。
【0062】
ディセンダ41bの形状及び寸法も適宜に設定されてよい。図示の例では、ディセンダ41bの形状は直柱状である。また、図示の例では、横断面の形状は、円形である。図示の例とは異なり、ディセンダ41bは、上下方向に対して傾斜していてもよいし、上下方向の位置に応じて径が変化していてもよい。また、横断面の形状は、楕円等の円形以外の形状であってもよい。
【0063】
平面視におけるディセンダ41bの圧力室本体41aに対する接続位置も適宜に設定されてよい。図示の例では、ディセンダ41bは、円形の圧力室本体41aの外縁に隣接して接続されている。図示の例とは異なり、圧力室本体41aの形状が楕円又は菱形の場合においては、例えば、ディセンダ41bは、圧力室本体41aの長手方向端部に接続されてよい。
【0064】
ノズル43は、ディセンダ41bの底面の一部に開口している。ノズル43は、例えば、ディセンダ41bの底面の中央に開口していてもよいし、中央から離れた位置に開口していてもよい(図示の例)。ノズル43の縦断面の形状は、吐出面3a側ほど径が小さくなるテーパ状とされている。ただし、ノズル43は、一部又は全部が逆テーパであってもよい。ノズル43の横断面の形状は、例えば、円形である。
【0065】
供給流路39は、例えば、第1供給流路39A及び第2供給流路39Bを有している。図示の例とは異なり、供給流路39は、第1供給流路39A及び第2供給流路39Bの一方のみを有していてもよい。供給流路39において、供給マニホールド33に対する接続位置、圧力室41に対する接続位置、流路形状及び寸法は、適宜に設定されてよい。図示の例では、以下のとおりである。
【0066】
第1供給流路39Aは、供給マニホールド33と圧力室本体41aとを接続している。第1供給流路39Aは、供給マニホールド33の上面から上方へ向けて延びた後、D5方向に向けて延び、D4方向に向けて延びた後、再び上方へ向けて延びて圧力室本体41aの下面に接続されている。第1供給流路39Aの横断面の形状及びその寸法は、第1供給流路39Aの長さの大部分(例えば6割以上)に亘って概ね一定である。この大部分に亘る横断面の形状は矩形である。
【0067】
第2供給流路39Bは、供給マニホールド33とディセンダ41bとを接続している。第2供給流路39Bは、供給マニホールド33の下面からD5方向へ向けて延び、D1方向に向けて延びた後、ディセンダ41bの側面に接続されている。第2供給流路39Bの横断面の形状及びその寸法は、第2供給流路39Bの長さの大部分(例えば6割以上)に亘って概ね一定である。この大部分に亘る横断面の形状は矩形である。
【0068】
回収流路45は、例えば、1つの個別流路35に1つのみ設けられている。図示の例とは異なり、2以上の回収流路45が設けられてもよい。回収流路45において、回収マニホールド37に対する接続位置、圧力室41に対する接続位置、流路形状及び寸法は、適宜に設定されてよい。図示の例では、以下のとおりである。
【0069】
回収流路45は、回収マニホールド37とディセンダ41bとを接続している。回収流路45は、回収マニホールド37の側面からD2方向に向けて延び、D4方向に向けて延びた後、ディセンダ41bの側面に接続されている。回収流路45の横断面の形状及びその寸法は、回収流路45の長さの大部分(例えば6割以上)に亘って概ね一定である。この大部分に亘る横断面の形状は矩形である。
【0070】
既述のように、同一の供給マニホールド33及び同一の回収マニホールド37に接続されている複数の個別流路35は、マニホールドに沿って一定のピッチで配列されている。従って、第1供給流路39Aと供給マニホールド33との接続位置は、供給マニホールド33に沿って一定のピッチで並んでいる。第2供給流路39Bと供給マニホールド33との接続位置、及び回収流路45と回収マニホールド37との接続位置についても同様である。
【0071】
図6(a)及び図6(b)に示すように、第1流路部材25は、複数のプレート47A~47Mが積層されて形成されている。第1流路部材25の各種の流路は、プレート47A~47Mに形成された孔又は凹部によって構成されている。複数のプレート47A~47Mは、例えば、金属又は樹脂により形成されてよい。図6(b)に示す例では、回収マニホールド37の上方及び下方にダンパ(符号省略)が設けられている。
【0072】
既述のように、圧力室41は、加圧面25aに開口している。図示の例とは異なり、圧力室41を塞ぐプレートが設けられていてもよい。ただし、この場合は、圧力室41を塞ぐプレートを第1流路部材25の一部として捉えるか、アクチュエータ21の一部として捉えるかの問題と考えることもできる。本開示の説明においては、上記のようなプレートは、アクチュエータ21の一部として捉えるものとする。
【0073】
(アクチュエータ)
図2(a)に示すように、アクチュエータ21は、例えば、概略平板状の部材であり、第1流路部材25の加圧面25a(より詳細には図2(a)において点線で示す領域)に接合される。そして、図6(a)及び図6(b)に示すように、アクチュエータ21は、圧力室41の上方の開口を塞ぐ。アクチュエータ21は、基本的に全ての圧力室41の配置領域に亘って広がっている。アクチュエータ21は、圧力室41毎に変位素子49を有している。
【0074】
アクチュエータ21の構成は、公知の種々の構成、及び公知の構成を応用したものとされてよい。図示の例では、アクチュエータ21は、いわゆるユニモルフ型の圧電アクチュエータとされている。具体的には、以下のとおりである。
【0075】
アクチュエータ21は、圧力室41側から順に積層されている、振動板51、共通電極53、圧電体層55及び個別電極57を有している。振動板51、共通電極53及び圧電体層55は、基本的に全ての圧力室41の配置領域に亘って広がっている。個別電極57は、圧力室41毎に設けられている。個別電極57は、例えば、平面透視において、圧力室41の平面形状と相似形状を有しており、また、圧力室41の中央側に重なっている。
【0076】
圧電体層55の個別電極57と共通電極53とに挟まれている部分は、厚さ方向に分極されている。従って、個別電極57及び共通電極53に電圧を印加すると、圧電体層55は、面に沿う方向に収縮又は伸長する。この収縮又は伸長が振動板51によって規制され、変位素子49は、バイメタルのように圧力室41側又はその反対側に撓む。これにより、圧力室41内の液体に圧力が付与される。
【0077】
アクチュエータ21の各層の材料及び厚さ等は適宜に設定されてよい。例えば、振動板51及び圧電体層55は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系、NaNbO系、BaTiO系、(BiNa)NbO系、BiNaNb15系などのセラミックス材料によって構成されてよい。共通電極53及び個別電極57は、Ag-Pd系又はAu系などの金属材料によって構成されてよい。
【0078】
共通電極53は、例えば、一定の電位(基準電位)が付与される。個別電極57は、例えば、既述の駆動信号が入力される。変位素子49の駆動方式(別の観点では駆動信号の波形)は適宜なものとされてよい。例えば、駆動方式は、いわゆる引き打ち式とされてよい。
【0079】
(液体)
図7は、吐出装置1に用いられる液体の特性を示す図である。この図において、横軸はせん断速度D(1/s)を示している。縦軸は粘度η(Pa・s)を示している。EX1及びEX2は、吐出装置1に用いられる液体の第1例及び第2例の特性を示している。
【0080】
この図に示されているように、吐出装置1に用いられる液体は、擬塑性流体である。確認的に記載すると、擬塑性流体は、せん断速度が速いほど粘度が低下する非ニュートン流体であるということができる。せん断速度は、ずり速度、速度勾配又はひずみ速度と呼称されこともある。せん断速度は、例えば、簡便には、流れ方向に直交する方向に互いに離れた2つの位置同士の速度差を2つの位置同士の距離で割った値として算出される。粘度は、例えば、簡便には、せん断応力をせん断速度で割った値として算出される。せん断応力は、ずり応力と呼称されることもある。せん断応力は、簡便には、流れ方向に直交する方向に互いに離れた互いに平行な2つの面(同一の面積)同士を流れ方向にずらそうとする力を一方の面の面積で割った値として算出される。
【0081】
また、擬塑性流体は、粘度ηを、η=k×Dp-1なる、べき乗則で近似したときに、べき指数pが1未満となる、べき乗則流体であるということができる。ここで、kは粘性係数であり、Dはせん断速度である。なお、粘度ηは、Dの関数であることから、みかけ粘度と呼称されることもある。
【0082】
吐出装置1に用いられる液体は、せん断応力を受けた時間が長くなるほど粘度が低下するチキソトロピー性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0083】
擬塑性流体の具体的な成分及び/又は組成は、公知の種々のもの、又は公知のものを応用したものとされてよい。例えば、一般に、インク及び塗料は擬塑性流体である。図7に特性が示されている第1例及び第2例に係る液体は、一般的な塗料(換言すれば市場で入手可能な塗料)である。擬塑性流体の具体的な特性も適宜なものとされてよい。一例を以下に挙げる。
【0084】
例えば、液体は、せん断速度が1000s-1のときの粘度が0.02Pa・s以上0.4Pa・s以下のものとされてよい。なお、図7に特性を示す第1例に係る塗料においては、せん断速度が1000s-1のときの粘度は0.3Pa・sである。第2例に係る塗料においては、せん断速度が1000s-1のときの粘度は0.1Pa・sである。液体は、せん断速度が1000s-1のときの粘度が0.1Pa・s以上0.3Pa・s以下のものとされてもよい。
【0085】
また、例えば、液体は、せん断速度が0.01s-1のときの粘度が0.5Pa・s以上50Pa・s以下のものとされてよい。なお、図7に特性を示す第1例に係る塗料においては、せん断速度が0.01s-1のときの粘度は5Pa・sである。第2例に係る塗料においては、せん断速度が0.01s-1のときの粘度は30Pa・sである。液体は、せん断速度が0.01s-1のときの粘度が5Pa・s以上30Pa・s以下のものとされてもよい。
【0086】
また、例えば、液体は、粘度をべき乗則で近似したときに、粘性係数kが1.0以上1.5以下、べき指数pが0.35以上0.65以下となるものとされてよい。なお、第1例に係る塗料においては、粘性係数kが1.0であり、べき指数pが0.65である。第2例に係る塗料においては、粘性係数kが1.5であり、べき指数pが0.35である。近似式は、例えば、最小二乗法によって特定されてよい。
【0087】
(平均粘度)
以下では、平均粘度の概念を導入する。本来、粘度は、流路内の微小領域毎に異なる値を示す。しかし、微小領域毎の粘度は、必ずしも流路部材19内における液体の粘度の設定に適しておらず、また、その算出も困難を伴うことがある。そこで、流路部材19の流路の部位毎に平均化された粘度を平均粘度というものとする。平均粘度は、流路内の1つの部位に対して1つの値である。例えば、1本の供給マニホールド33の平均粘度という場合は、1本の供給マニホールド33全体における平均的な粘度である。
【0088】
平均粘度は、例えば、以下のように算出されてよい。まず、吐出装置1に用いられる液体におけるせん断速度Dと粘度ηとの関係を特定する。この特定に際しては、公知の種々の方法が採用されてよく、また、公知の文献が参照されて特定されてもよい。次に、特定されたせん断速度Dと粘度ηとの関係を表す近似式を求める。近似式は、例えば、べき乗則等の適宜なものとされてよい。フィッティングの方法も最小二乗法等の公知のものとされてよい。次に、循環流量U(m/s)を境界条件とし、上記の近似式を用いて流路の各部位について流体シミュレーションを行い、各部位の上流端と下流端との間の差圧ΔP(Pa)を求める。そして、所定の式に循環流量U、差圧ΔP及び各部位の寸法(m)を代入して、平均粘度μ(Pa・s)を算出する。
【0089】
平均粘度μを算出するための式の例を以下に示す。
【0090】
流路形状が流れ方向を軸方向とする円柱状である場合の式は、以下のとおりである。
U=(πrΔP)/(8μL) (1)
ここで、rは、横断面の半径である。Lは、流路の長さである。
【0091】
また、流路形状が流れ方向を軸方向とする角柱状(直方体)である場合の式は、以下のとおりである。
U=(whΔP)/(4μL)
×(16/3-1024/π×w/h
×Σ(1/q×tanh(qπh/2w)) (2)
ここで、q=1、3、5、7、9及び11であり、Σは、qにこれらの6つの値を代入したときの6つの(1/q×tanh(qπh/2w))の総和である。wは、流路の幅である。hは、流路の高さである。Lは流路の長さである。
【0092】
リザーバー(29及び31)並びにマニホールド(33及び37)においては、上流側と下流側とで流量Uが異なる。この場合、例えば、最も多い流量、最も少ない流量、又は平均的な流量のいずれが用いられてもよい。以下の説明の平均粘度は、上記のいずれの流量を用いて算出したものと捉えられてもよい。なお、リザーバー(29及び31)の平均粘度とマニホールド(33及び37)の平均粘度とを比較する場合には、互いに同じ条件で算出した平均粘度同士を比較してよい。例えば、最も多い流量を用いて算出した平均粘度(最も低い平均粘度)同士を比較してもよく、最も少ない流量を用いて算出した平均粘度(最も高い平均粘度)同士を比較してもよく、平均的な流量を用いて算出した平均粘度(平均的な平均粘度)同士を比較してもよい。例えば、以下の説明の平均粘度は、最も多い流量を用いて算出した平均粘度(最も低い平均粘度)と捉えられてよい。例えば、供給リザーバー29及び供給マニホールド33の平均粘度については、最も上流の流量を用いて算出したものと捉えられてよい。回収リザーバー31及び回収マニホールド37の平均粘度については、最も下流の流量を用いて算出したものと捉えられてよい。
【0093】
圧力室41、又は圧力室本体41a若しくはディセンダ41bにおいては、液体の流れの方向は一定とは限らない。以下の説明におけるこれらの部位における平均粘度は、上方から下方への方向を流れ方向として算出したものとする。例えば、ディセンダ41bにおける平均粘度は、圧力室本体41aからノズル43への方向を流れ方向として算出したものとする。
【0094】
(流路部材における平均粘度)
図8は、流路部材19における流路の部位毎の平均粘度μについて、部位間の相対関係の一例を示す図である。この図において、横軸は、流路部材19の流路の複数の部位に対応している。縦軸は、各部位における平均粘度μを示している。
【0095】
なお、図中において、平均粘度μ2は、複数の供給マニホールド33のうちの1本の供給マニホールド33における平均粘度μを示している。他の流路についても同様に、1本の流路における平均粘度μが示されている。供給流路39の平均粘度μ3は、第1供給流路39A及び第2供給流路39Bのいずれの平均粘度として捉えられてもよい。
【0096】
液体吐出装置1は、図示のような平均粘度の関係が満たされるように、流量設定部13によって制御される循環流量の目標流量と、流路部材19の流路の形状及び寸法とが設定されている。換言すれば、流路部材19の流路は、循環流量が目標流量であるときに、図8に示す関係が成立する流路形状を有している。換言すれば、流路部材19の流路の形状及び寸法において、図8に示す平均粘度の関係が成立するような値に、循環流量が設定されている。例えば、流路部材19の流路の形状及び寸法において、供給流路39における液体の平均粘度が、供給マニホールド33における液体の平均粘度の半分以下となるような値に、循環流量が設定されている。
【0097】
循環流量の調整がオープンループ制御である場合においては、循環流量は、複数のノズル43からの液滴の吐出量に起因する変動量が大きい。この場合、図8に示す関係は、例えば、全てのノズル43から液滴が吐出されていない時期における循環流量において成立してよい。換言すれば、実施されている製品において、全てのノズル43から液滴が吐出されていない時期における循環流量が、その製品における目標流量であると特定されてよい。この考え方は、目標流量への循環流量の追従性が低いフィードバック制御にも適用されてよい。
【0098】
図8では、平均粘度について、例えば、以下の関係が成立している。
【0099】
供給流路39(39A又は39B)における液体の平均粘度μ3は、供給マニホールド33における液体の平均粘度μ2よりも低くされてよい。より詳細には、例えば、平均粘度μ3は、平均粘度μ2の1/2以下、1/3以下又は1/5以下とされてよい。
【0100】
この場合、例えば、供給流路39内の液体の平均粘度μ3が低いことから、供給流路39から圧力室41へ液体をスムーズに供給できる。また、供給マニホールド33内では平均粘度μ2が高いことから、圧力波が減衰しやすい。その結果、圧力室41から供給流路39を介して供給マニホールド33へ漏洩した圧力波が他の供給流路39を介して他の圧力室41へ伝搬する蓋然性が低減される。すなわち、いわゆる流体クロストークを低減することができる。
【0101】
回収流路45と回収マニホールド37との間においても上記と同様の関係が成立してよい。すなわち、回収流路45における液体の平均粘度μ5は、回収マニホールド37における液体の平均粘度μ6よりも低くされてよい。より詳細には、例えば、平均粘度μ5は、平均粘度μ6の1/2以下、1/3以下又は1/5以下とされてよい。この場合も上記と同様の効果が奏される。
【0102】
供給マニホールド33の平均粘度μ2は、供給リザーバー29の平均粘度μ1よりも低くされてよい。より詳細には、例えば、平均粘度μ2は、平均粘度μ1の1/2以下、1/3以下又は1/4以下とされてよい。
【0103】
この場合、例えば、供給マニホールド33内の液体の平均粘度μ2が低いことにより、供給マニホールド33から供給流路39へ液体をスムーズに供給できる。また、供給リザーバー29内では粘度が高く圧力波が減衰しやすいため、供給リザーバー29を介した圧力波の伝搬によるクロストークを低減することができる。
【0104】
回収マニホールド37と回収リザーバー31との間においても上記と同様の関係が成立してよい。すなわち、回収マニホールド37における液体の平均粘度μ6は、回収リザーバー31における液体の平均粘度μ7よりも低くされてよい。より詳細には、例えば、平均粘度μ6は、平均粘度μ7の1/2以下、1/3以下又は1/5以下とされてよい。この場合も上記と同様の効果が奏される。
【0105】
ディセンダ41bの平均粘度μ4は、回収流路45の平均粘度μ5よりも高くされてよい。より詳細には、例えば、平均粘度μ4は、平均粘度μ5の1.5倍以上とされてよい。
【0106】
この場合、例えば、粘度が高いと気泡の移動に対する抵抗が大きくなるため、ノズル43からディセンダ41b内に入ってしまった気泡を回収流路45から回収できる蓋然性が高くなる。
【0107】
ディセンダ41bと供給流路39との間においても上記と同様の関係が成立してよい。すなわち、ディセンダ41bの平均粘度μ4は、供給流路39の平均粘度μ3よりも高くされてよい。より詳細には、例えば、平均粘度μ4は、平均粘度μ3の1.5倍以上又は2倍以上とされてよい。
【0108】
この場合、例えば、供給流路39の平均粘度μ3が低いことから、ディセンダ41bにスムーズに液体を供給することができる。その結果、例えば、液体の連続吐出により、ディセンダ41bへの液体供給が間に合わなくなる蓋然性が低減される。
【0109】
供給マニホールド33の平均粘度μ2は、個別流路35の各流路(ただし、圧力室本体41aは除く)の平均粘度(μ3、μ4及びμ5)よりも高くされてよい。より詳細には、例えば、平均粘度μ2は、平均粘度μ3、μ4及びμ5のいずれに対しても1.5倍以上とされてよい。
【0110】
この場合、例えば、個別流路35における平均粘度μが低いことより、ノズル43に液体をスムーズに供給できる。また、供給マニホールド33における平均粘度μが高いことにより、個別流路35から供給マニホールド33に漏れ出した圧力が早く減衰する。そのため、流体クロストークが生じにくい。
【0111】
回収マニホールド37と個別流路35との間においても上記と同様の関係が成立してよい。すなわち、回収マニホールド37における液体の平均粘度μ6は、個別流路35の各流路の平均粘度(μ3、μ4及びμ5)よりも高くされてよい。より詳細には、例えば、平均粘度μ6は、平均粘度μ3、μ4及びμ5のいずれに対しても1.5倍以上とされてよい。この場合も上記と同様の効果が奏される。
【0112】
(平均粘度等の値の一例)
上記のような平均粘度μの関係を実現する液体の特性、循環流量、流路の形状及び寸法等の組み合わせは無数に存在し、また、吐出装置1が適用される具体的な技術分野に応じて適宜に設定されてよい。以下では、図7を参照して説明した一般的な塗料が用いられた場合の値の一例を示す。
【0113】
循環流量は、例えば、50ml/min以上300ml/minとされてよい。液体が吐出されていないときのノズル43における圧力は、大気圧(約100kPa)に対して±2kPaとされてよい。供給口3bと回収口3cとの差圧は、40kPa以上160kPa以下とされてよい。
【0114】
供給リザーバー29及び回収リザーバー31のそれぞれにおいて、幅wは、4mm以上20mm以下とされてよく、高さhは、3mm以上15mm以下とされてよく、長さLは、200mm以上800mm以下とされてよい。供給マニホールド33及び回収マニホールド37のそれぞれにおいて、幅wは、0.2mm以上2mm以下とされてよく、高さhは、0.5mm以上6mm以下とされてよく、長さLは5mm以上20mm以下とされてよい。第1供給流路39Aにおいて、幅w及び高さhそれぞれは50μm以上200μm以下とされてよい。第2供給流路39Bにおいて、幅wは50μm以上200μm以下とされてよく、高さhは25μm以上200μm以下とされてよい。回収流路45において、幅wは70μm以上200μm以下とされてよく、高さhは80μm以上200μm以下とされてよい。供給流路39及び回収流路45の長さLは、300μm以上1500μm以下とされてよい。ディセンダ41bにおいて、半径rは50μm以上250μm以下とされてよく、長さLは0.5mm以上2mm以下とされてよい。ノズル43において、半径rは5μm以上50μm以下とされてよい。
【0115】
上記のような条件における平均粘度μの試算の一例を以下に示す。なお、ディセンダ41bは、(1)式によって平均粘度μを算出し、他の流路については、(2)式によって平均粘度μを算出した。供給リザーバー29及び回収リザーバー31それぞれにおける平均粘度μは、0.4Pa・s以上2Pa・s以下である。供給マニホールド33及び回収マニホールド37それぞれにおける平均粘度μは、0.1Pa・s以上0.4Pa・s以下である。供給流路39及び回収流路45それぞれにおける平均粘度μは、0.01Pa・s以上0.1Pa・s以下である。ディセンダ41bにおける平均粘度μは、0.05Pa・s以上0.2Pa・s以下である。
【0116】
(流体抵抗)
流路部材19内の流体抵抗(N・s/m)は適宜に設定されてよい。例えば、流体抵抗は、以下の条件1及び条件2の双方が成り立つように設定されてよい。
【0117】
条件1:
(1/2)×R×U(1+1/m)と、
(1/2)×R×(U/m)×(1+1/n)との和が、
2σ/rよりも小さい。
条件2:
<1/10×R×(1/m)
ここで、Rは、供給リザーバー29における液体の流体抵抗である。Rは、供給マニホールド33における液体の流体抵抗である。mは、供給リザーバー29に接続されている供給マニホールド33の本数である。nは、供給マニホールド33毎の個別流路35(ノズル43)の数である。Uは、供給リザーバー29に流入する液体の流量(m/s)である。σは、液体の表面張力(N/m)である。rは、ノズル43の半径(m)である。
【0118】
ここでは、液滴を吐出可能となっていないダミーの個別流路のみが接続されている供給マニホールド33は無視されている。また、供給マニホールド33は、互いに同数のノズル43が接続されているものと仮定している。また、複数の供給マニホールド33のピッチと、供給リザーバー29の上流端から1本目の供給マニホールド33までの距離と、最後の供給マニホールド33から供給リザーバー29の下流端までの距離とが等しいと仮定している。
【0119】
条件1における(1/2)×R×U(1+1/m)は、供給リザーバー29内の圧力降下量(上流と下流との圧力差)に対応している。具体的には、供給リザーバー29の上流端から1本目の供給マニホールド33までの圧力降下量をU×R/m、1本目の供給マニホールド33から2本目の供給マニホールドまでの圧力降下量を(U-U/m)×R/mのように算出している。そして、上流端から下流端まで圧力降下量の総和である、U×R/m+(U-U/m)×R/m+…+U/m×/R/mにより、上記の(1/2)×R×U(1+1/m)が得られている。
【0120】
条件1における(1/2)×R×(U/m)×(1+1/n)は、1本の供給マニホールド33内の圧力降下量(上流と下流との圧力差)に対応している。この式は、上記の供給リザーバー29内の圧力降下量と同様に得られている。すなわち、供給リザーバー29に係る式において、供給リザーバー29の流体抵抗Rは供給マニホールド33の流体抵抗Rに置換され、供給リザーバー29に流入する流量Uは供給マニホールド33に流入する液体の流量U/mに置換され、供給マニホールド33の数mはノズル43の数nに置換されている。
【0121】
条件1における、(1/2)×R×U(1+1/m)と(1/2)×R×(U/m)×(1+1/n)との和は、概略、最上流の個別流路35と最下流の個別流路35との圧力差に相当している。最上流の個別流路35は、供給リザーバー29の最も上流に接続されている供給マニホールド33の最も上流に接続されている個別流路35である。最下流の個別流路35は、供給リザーバー29の最も下流に接続されている供給マニホールド33の最も下流に接続されている個別流路35である。個別流路35の圧力降下は、複数の個別流路35同士で略等しいので、上記の和は、全てのノズル43の圧力差(最も圧力が高いノズル43と最も圧力が低いノズル43との圧力差)に相当している。
【0122】
そして、上記の和が2σ/rよりも小さい場合においては、全てのノズル43において、大気圧下でメニスカスを保持することが容易である。なお、条件1に関して、既に触れたように、ダミーの個別流路のみが接続されている供給マニホールド33及びダミーの個別流路は無視されてよい。また、最上流の供給マニホールド33又は最下流の供給マニホールド33等においては、接続されている個別流路35の数が他の供給マニホールド33よりも少ないことがある。この場合は、例えば、最上流の供給マニホールド33又は最下流の供給マニホールド33を無視してもよいし、逆に、最上流の供給マニホールド33又は最下流の供給マニホールド33にも他の供給マニホールド33と同数の個別流路35が接続されていると仮定してもよい。
【0123】
条件2は、供給リザーバー29の流体抵抗Rと、供給マニホールド33の流体抵抗Rとの大小関係を示している。供給マニホールド33に流入する液体の流量は、供給リザーバー29に流入する液体の流量の1/mであることから、流体抵抗Rに1/mを乗じて、流体抵抗Rと、流体抵抗Rとを比較している。そして、条件2が成り立つということは、供給リザーバー29の流体抵抗Rが供給マニホールド33の流体抵抗Rとの比較において極端に小さいことを意味している。
【0124】
例えば、従来技術では、Rは、R×(1/m)の約1/5である。一方、本実施形態では、Rは、R×(1/m)の1/40以上1/10未満とされてよい。もちろん、本実施形態においても、従来技術と同様に、Rは、R×(1/m)の約1/5程度とされても構わない。
【0125】
条件2が満たされることによって、例えば、供給リザーバー29から複数の供給マニホールド33の位置へ液体が流れやすくなり、複数の供給マニホールド33同士の流量の差が緩和される。ひいては、全ての供給マニホールド33に対して安定して液体を供給することができる。
【0126】
条件1及び2に加えて、以下の条件3が成り立つように流体抵抗が設定されてもよい。
条件3:
<1/10×R×(1/n)である
ここで、Rは、ノズル43における流体抵抗である。
【0127】
条件3は、供給マニホールド33の流体抵抗Rと、個別流路35の流体抵抗との大小関係を示している。ただし、ノズル43の流体抵抗Rは、個別流路35の他の部位の流体抵抗に比較して遥かに大きいことから、個別流路35の流体抵抗をノズル43の流体抵抗Rによって近似している。また、個別流路35に流入する液体の流量は、供給マニホールド33に流入する液体の流量の1/nであることから、流体抵抗Rに1/nを乗じて、流体抵抗Rと、流体抵抗Rとを比較している。
【0128】
条件3が成り立つということは、供給マニホールド33の流体抵抗Rがノズル43の流体抵抗Rとの比較において極端に小さいことを意味している。例えば、従来技術では、Rは、R×(1/n)の約1/6である。なお、本実施形態においても、従来技術と同様に、Rは、R×(1/n)の約1/6程度とされても構わない。例えば、Rは、R×(1/n)の1/10以上1/4以下とされて構わない。
【0129】
条件3が満たされることによって、例えば、供給マニホールド33から複数の個別流路35の位置へ液体が流れやすくなり、複数の個別流路35同士の流量の差が緩和される。ひいては、全ての個別流路35に対して安定して液体を供給することができる。
【0130】
なお、図8に示す平均粘度を実現する寸法の一例として例示した流路の寸法等の一例は、条件1~3が満たされる流路の寸法等の一例として参照されてよい。
【0131】
(変形例)
図9は、変形例に係る個別流路235の模式的な断面図である。
【0132】
個別流路235の圧力室241は、実施形態の圧力室41と同様に、圧力室本体241aと、ディセンダ241bとを有している。ただし、ディセンダ241bは、互いに横断面の面積が異なる第1部位241ba及び第2部位241bbを有している。
【0133】
第1部位241baは、ノズル43と接続されている。第2部位241bbは、圧力室本体241aに接続されている。換言すれば、第2部位241bbは、第1部位241baよりも圧力室本体241a側に位置する部位である。そして、第2部位241bbの横断面の面積は、第1部位241baよりも広くなっている。
【0134】
第1部位241ba及び第2部位241bbは、横断面の面積が互いに異なっていることなどから、平均粘度が互いに異なっている。例えば、第2部位241bbにおける液体の平均粘度は、第1部位241baにおける液体の平均粘度よりも高くなっている。換言すれば、ディセンダ241b内の平均粘度は、ノズル43から圧力室本体41aに近づくほど段階的に増加する。なお、平均粘度の増加は、1段階だけでなく、2段階以上で増加してもよい。換言すれば、ディセンダは、第1部位及び第2部位の他に、第3部位等を有していてもよい。
【0135】
本変形例のように第1部位241baよりも圧力室本体241a側に位置している第2部位241bbの平均粘度が第1部位241baの平均粘度よりも高い場合においては、例えば、ノズル43からディセンダ241b内に入ってしまった気泡が圧力室本体241a側へ向かって移動し難くなる。ひいては、気泡が圧力室本体241aに滞留して吐出特性が低下する蓋然性が低くなる。
【0136】
なお、平均粘度が比較される2つの流路の少なくとも一方において、形状が異なる部分が存在する場合においては、2つの流路が接する部分の平均粘度同士が比較されてよい。例えば、変形例に係る個別流路235において、回収流路45の平均粘度と、ディセンダ241bの平均粘度とを比較する場合、ディセンダ241b全体の平均粘度ではなく、回収流路45に直接に接続されている第2部位241bbの平均粘度が比較に用いられてよい。回収流路45とディセンダ241bとの間の流れに及ぼす影響が大きいのは、第2部位241bbの平均粘度だからである。
【0137】
本開示に係る技術は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0138】
例えば、液体吐出装置は、圧電体によって液体に圧力を付与する圧電式のものに限定されない。液体吐出装置は、熱によって液体内に泡を発生させ、この泡の発生に伴う圧力を液体に付与して液滴を吐出するサーマル式のものであってもよい。
【0139】
流路の構成は、図示した以外の種々の構成とされてよい。例えば、互いに隣り合う個別流路は、一部が共用されていてもよい。例えば、回収流路のうちの回収マニホールド側の一部は、互いに隣り合う個別流路同士で共用されていてもよい。
【0140】
平均粘度の設定も、実施形態以外のものとされてよい。例えば、供給流路39の平均粘度μ3は、実施形態とは逆に、回収流路45の平均粘度μ5又はその1.5倍よりも大きくされてよい。この場合、液滴の吐出時においてディセンダ41b内の液体が逆流しにくい(循環の方向とは逆方向に流れにくい。)。また、回収流路に液体及び/又は気泡が流れやすい。
【符号の説明】
【0141】
1…液体吐出装置、3…ヘッド、13…流量設定部、19…流路部材、21…アクチュエータ、29…供給リザーバー、31…回収リザーバー、33…供給マニホールド、37…回収マニホールド、39…供給流路、41…圧力室、43…ノズル、45…回収流路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-07-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
擬塑性を有する所定の液体が流れるように構成された流路を含み、前記流路が、
供給リザーバーと、
前記供給リザーバーに接続された複数の供給マニホールドと、
複数の供給流路に互いに1対1で接続された複数の圧力室と、を有する流路部材と、
前記複数の圧力室内の前記液体に圧力を加え、前記複数の圧力室に1対1で接続された複数のノズルから液滴を吐出させるように構成されたアクチュエータと、
前記液体が前記供給リザーバー、前記複数の供給マニホールド、前記複数の供給流路、および前記複数の圧力室を順番に流れるように構成されたポンプと、
前記液体の流量を所定の目標流量に調整するように構成されたコントローラーと、を備え、
前記流路は、前記流量が前記目標流量であるときに、前記供給流路における前記液体の平均粘度が、前記供給マニホールドにおける前記液体の平均粘度の半分以下となる流路形状を有している
置。
【請求項2】
前記流路は、前記流量が前記目標流量であるときに、前記供給マニホールドにおける前記液体の平均粘度が前記供給リザーバーにおける前記液体の平均粘度の半分以下となる流路形状を有している
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記複数の圧力室に互いに別々に接続された複数の回収流路と、
前記複数の回収流路から前記液体を回収する複数の回収マニホールドと、
前記複数の回収マニホールドに接続されており、前記複数の回収マニホールドから前記液体を回収する回収リザーバーと、をさらに備え、
前記ポンプは、前記供給リザーバー、前記複数の供給マニホールド、前記複数の供給流路、前記複数の圧力室、前記複数の回収流路、前記複数の回収マニホールド及び前記回収リザーバーを介して、前記液体を順次循環させるように構成され、
前記複数の圧力室それぞれは、
前記アクチュエータによって圧力が付与される圧力室本体と、
前記圧力室本体と前記ノズルとを接続しているディセンダと、を有しており、
前記回収流路は前記ディセンダに接続されており、
前記流路は、前記流量が前記目標流量であるときに、前記ディセンダにおける前記液体の平均粘度が前記回収流路における前記液体の平均粘度の1.5倍以上となる流路形状を有している
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記供給流路または前記回収流路の前記液体の流れ方向に直交する流入面の断面積をS3とし、
前記ディセンダの前記液体の流れ方向に直交する流出面の断面積をS4としたとき、
S4>S3である
請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ノズルの前記液体の流れ方向に直交する流入面の断面積をS1とし、
前記供給流路または前記回収流路の前記液体の流れ方向に直交する流入面の断面積をS3としたとき、
S3>S1である
請求項3又は4に記載の装置。
【請求項6】
前記ノズルの前記液体の流れ方向に直交する吐出面の断面積をS2とし、
前記供給流路または前記回収流路の前記液体の流れ方向に直交する流入面の断面積をS3としたとき、
S3>S2である
請求項3~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記複数の圧力室に互いに別々に接続された複数の回収流路と、
前記複数の回収流路から前記液体を回収する複数の回収マニホールドと、
前記複数の回収マニホールドに接続されており、前記複数の回収マニホールドから前記液体を回収する回収リザーバーと、をさらに備え、
前記ポンプは、前記供給リザーバー、前記複数の供給マニホールド、前記複数の供給流路、前記複数の圧力室、前記複数の回収流路、前記複数の回収マニホールド及び前記回収リザーバーを介して、前記液体を順次循環させるように構成され、
前記複数の圧力室それぞれは、
前記アクチュエータによって圧力が付与される圧力室本体と、
前記圧力室本体と前記ノズルとを接続しているディセンダと、を有しており、
前記回収流路は前記ディセンダに接続されており、
前記ディセンダは、
第1部位と、
前記第1部位よりも前記圧力室本体側に位置している第2部位と、を有しており、
前記流路は、前記流量が前記目標流量であるときに、前記第2部位における前記液体の平均粘度が前記第1部位における前記液体の平均粘度よりも高くなる流路形状を有している
請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記供給リザーバーにおける前記液体の流体抵抗をR
前記供給マニホールドにおける前記液体の流体抵抗をR
前記供給リザーバーに接続されている前記供給マニホールドの本数をm、
前記供給マニホールド毎の前記ノズルの数をn、
前記供給リザーバーに流入する前記液体の流量をU、
前記液体の表面張力をσ、
前記ノズルの半径をr、としたときに、
(1/2)×R×U(1+1/m)と、
(1/2)×R×(U/m)×(1+1/n)との和が、
2σ/rよりも小さく、かつ
<1/10×R×(1/m)である
請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記ノズルにおける前記液体の流体抵抗をRとしたときに、
<1/10×R×(1/n)である
請求項に記載の装置。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の装置を用いる方法であって、
前記液体として、せん断速度が1000s-1のときの粘度が0.02Pa・s以上0.4Pa・s以下であり、せん断速度が0.01s-1のときの粘度が0.5Pa・s以上50Pa・s以下である擬塑性流体を用いる
法。
【請求項11】
前記ポンプがバキュームポンプである、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記目標流量が50ml/分以上300ml/分以下である、請求項1~9及び11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記ノズルの前記液体の流れ方向に直交する流入面の断面積をS1、
前記ノズルの前記液体の流れ方向に直交する吐出面の断面積をS2、としたときに、
S1>S2である
請求項1~12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
擬塑性を有する所定の液体が流れるように構成された流路を含み、前記流路が、
供給リザーバーと、
前記供給リザーバーに接続された複数の供給マニホールドと、
前記複数の供給マニホールドのそれぞれに対して2以上の本数で設けられており、それぞれ前記複数の供給マニホールドのいずれかに接続されており、その接続されている供給マニホールドから前記液体が供給される複数の供給流路と、
前記複数の供給流路に互いに別々に接続されており、前記複数の供給流路から前記液体が供給される複数の圧力室と、
前記複数の圧力室に互いに別々に接続されており、前記複数の圧力室から前記液体を回収する複数の回収流路と、
それぞれ前記複数の回収流路のいずれか2本以上に接続されており、前記複数の回収流路から前記液体を回収する複数の回収マニホールドと、
前記複数の回収マニホールドに接続されており、前記複数の回収マニホールドから前記液体を回収する回収リザーバーと、を有している流路部材と、
前記複数の圧力室内の前記液体に圧力を加え、前記複数の圧力室に1対1で接続された複数のノズルから液滴を吐出させるように構成されたアクチュエータと、
前記液体の一部を貯蔵するように構成され、前記供給リザーバーおよび前記回収リザーバーに接続されたタンクと、
前記供給リザーバー、前記複数の供給マニホールド、前記複数の供給流路、前記複数の圧力室、前記複数の回収流路、前記複数の回収マニホールド、および前記回収リザーバーを通して前記液体を順次循環させるように構成されたポンプと、
前記液体の循環流量を所定の目標流量に調整するように構成されたコントローラーと、
前記複数のノズルから吐出された液滴が対象物表面に向かって移動するように、前記流路部材または前記対象物表面の少なくとも1つを移動させるように構成された移動部と、を備え、
前記循環流量が目標流量と等しい場合に、前記複数の供給流路における前記液体の平均粘度が、前記複数の供給マニホールドにおける前記液体の平均粘度の半分以下となる流路形状を有する、装置。
【請求項15】
方法であって、
流路部材が含んでいる、供給リザーバー、前記供給リザーバーに接続された複数の供給マニホールド、前記複数の供給マニホールドのそれぞれに2つ以上接続された複数の供給流路、前記複数の供給流路に1対1で接続された複数の圧力室、前記複数の圧力室に1対1で接続された複数の回収流路、前記複数の回収流路のそれぞれに2つ以上接続された複数の回収マニホールド、および前記複数の回収マニホールドに接続された回収リザーバーを介して擬塑性の液体を循環させ、
前記複数の圧力室内の前記液体に圧力をかけて、前記複数の圧力室に1対1で接続された複数のノズルから液滴を吐出させ、
前記複数の供給流路における前記液体の平均粘度が、前記複数の供給マニホールドにおける前記液体の平均粘度の半分以下となる目標流量に、前記液体の循環流量を調整する、方法。
【請求項16】
前記複数のノズルから吐出された液滴が対象物表面に向かって移動するように、前記流路部材または前記対象物表面の少なくとも1つを移動させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記循環流量が前記目標流量のときに、前記複数の供給マニホールド内の前記液体の平均粘度は、前記供給リザーバー内の前記液体の平均粘度の半分以下である、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の圧力室のそれぞれは、
前記アクチュエータによって圧力が加えられる圧力室本体、および
前記圧力室本体と対応する前記ノズルを接続するディセンダ、を有しており、
前記回収流路が前記ディセンダに接続され、
前記循環流量が前記目標流量のときに、前記ディセンダ内の前記液体の平均粘度が、前記複数の回収流路内の前記液体の平均粘度の1.5倍以上である、請求項15~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の圧力室のそれぞれは、
前記加圧部によって圧力が加えられる圧力室本体、および
前記圧力室本体と対応するノズルを接続するディセンダ、を有し、
前記回収流路が前記ディセンダに接続され、
前記ディセンダは、
第1部分、および
前記第1部分よりも前記圧力室本体の近くに位置する第2部分、を含み、
前記循環流量が前記目標流量のときに、前記第2部分の前記液体の平均粘度が、前記第1部分の前記液体の平均粘度よりも高い、請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記供給リザーバーにおける前記液体の流体抵抗をR
前記供給マニホールドにおける前記液体の流体抵抗をR
前記供給リザーバーに接続されている前記供給マニホールドの本数をm、
前記供給マニホールド毎の前記ノズルの数をn、
前記供給リザーバーに流入する前記液体の流量をU、
前記液体の表面張力をσ、
前記ノズルの半径をr、としたときに、
(1/2)×R ×U(1+1/m)と、
(1/2)×R ×(U/m)×(1+1/n)との和が、
2σ/rよりも小さく、かつ
<1/10×R ×(1/m)である
請求項15~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記ノズルにおける前記液体の流体抵抗をR としたときに、
<1/10×R ×(1/n)である
請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記液体として、せん断速度が1000s -1 のときの粘度が0.02Pa・s以上0.4Pa・s以下であり、せん断速度が0.01s -1 のときの粘度が0.5Pa・s以上50Pa・s以下である擬塑性流体を用いる
請求項15~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記目標流量が、50ml/分以上300ml/分以下である、
請求項15~22のいずれか1項に記載の方法。