(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011305
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】水栓
(51)【国際特許分類】
E03C 1/042 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
E03C1/042 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113201
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大介
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060BA05
2D060BB01
2D060BC30
2D060BD03
2D060BE07
2D060BF03
(57)【要約】
【課題】吐水部材が回動可能に取り付けられる水栓の部品点数を低減して構造を簡略化する。
【解決手段】取付面に対して固定された水栓ボデー10と、水栓ボデー10を収容するとともに、水栓ボデー10の回りを回動する吐水部材20と、水栓ボデー10に対する吐水部材20の回動を規制する規制部材50とを備えた水栓であって、規制部材50は、水栓ボデー10の外周面と吐水部材20の内周面との間に配置される環状のスペーサ部51と、吐水部材20に係合する係合部52と、水栓ボデー10に対する吐水部材20の回動範囲を規制する回動規制部53とを備え、係合部52及び回動規制部53は、スペーサ部51と一体に形成されている。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付面に対して固定された水栓ボデーと、
前記水栓ボデーを収容するとともに、前記水栓ボデーの回りを回動する吐水部材と、
前記水栓ボデーに対する前記吐水部材の回動を規制する規制部材と
を備えた水栓であって、
前記規制部材は、
前記水栓ボデーの外周面と前記吐水部材の内周面との間に配置される環状のスペーサ部と、
前記吐水部材に係合する係合部と、
前記水栓ボデーに対する前記吐水部材の回動範囲を規制する回動規制部と
を備え、
前記係合部及び前記回動規制部は、前記スペーサ部と一体に形成されていることを特徴とする水栓。
【請求項2】
前記水栓ボデーの外周面には、前記回動規制部が当接することにより前記吐水部材の回動範囲が規制される被当接部が一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の水栓。
【請求項3】
前記係合部と前記回動規制部とは、互いに、前記水栓ボデーの軸方向の反対側に向かって延びるように、前記スペーサ部における周方向の同じ位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の水栓。
【請求項4】
前記吐水部材は、
前記水栓ボデーを収容する筒状の収容部と、前記収容部の外周面に設けられる吐水部とを備え、
前記スペーサ部は、前記水栓ボデーの外周面と前記吐水部材の内周面との間に配置される環状の立壁と、前記立壁から径方向に延びて、前記収容部の前記取付面側の端面に配置される摺動壁を有していることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐水部材が回動可能に取り付けられる水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
洗面台やキッチンシンク等の取付面に取り付けられる水栓の利便性を向上させるために、吐水部を回動させてその方向を変更可能としたものが知られている。こうした水栓では、吐水部が必要以上に回動することを規制するために、回動規制装置を設ける場合がある。
【0003】
特許文献1には、内部に通水管を有する水栓ボデーと、水栓ボデーを収容するとともに吐水管が一体に形成された外筒部とを備え、水栓ボデーに対して外筒部を回動自在とした水栓に係る発明が記載されている。特許文献1に記載される回動規制装置は、水栓ボデー外周に凹設された周溝内に配置されたガイドリングとストッパとで構成されている。ガイドリングは、外筒部内周に固定されて、周溝内で摺動可能に嵌合されている。ストッパは、周溝内の所定位置に固定されている。吐水管の回動とともに周溝内を摺動するガイドリングがストッパに当接することにより、吐水管の回動範囲が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載される回動規制装置では、ガイドリングとストッパとが別部材として形成されている。また、ストッパは、取付ボルトによって周溝内に固定されている。そのため、回動規制装置を構成する部品点数が増えてしまい、水栓を構成する部品点数が増えてしまう。水栓の構造が複雑になるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する水栓の各態様を記載する。
態様1の水栓は、取付面に対して固定された水栓ボデーと、前記水栓ボデーを収容するとともに、前記水栓ボデーの回りを回動する吐水部材と、前記水栓ボデーに対する前記吐水部材の回動を規制する規制部材とを備えた水栓であって、前記規制部材は、前記水栓ボデーの外周面と前記吐水部材の内周面との間に配置される環状のスペーサ部と、前記吐水部材に係合する係合部と、前記水栓ボデーに対する前記吐水部材の回動範囲を規制する回動規制部とを備え、前記係合部及び前記回動規制部は、前記スペーサ部と一体に形成されている。
【0007】
上記構成によれば、スペーサ部を備えた規制部材は、水栓ボデーの外周面と吐水部材の内周面との間に配置されて、水栓ボデーに対する吐水部材の回動をスムーズにする。そして、スペーサ部には、吐水部材に係合する係合部と、吐水部材の回動範囲を規制する回動規制部とが一体に形成されている。そのため、回動を規制するための部品点数を低減できる。水栓の構造を簡略化できる。
【0008】
態様2の水栓は、態様1の水栓において、前記水栓ボデーの外周面には、前記回動規制部が当接することにより前記吐水部材の回動範囲が規制される被当接部が一体に形成されていることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、回動規制部が当接する被当接部が水栓ボデーの外周面に一体に形成されている。そのため、別部材を取り付けることによって被当接部を設ける場合に比べて部品点数を低減できる。水栓の構造を簡略化できる。
【0010】
態様3の水栓は、態様1又は2の水栓において、前記係合部と前記回動規制部とは、互いに、前記水栓ボデーの軸方向の反対側に向かって延びるように、前記スペーサ部における周方向の同じ位置に形成されていることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、規制部材の強度を向上できる。
態様4の水栓は、態様1~3のいずれかの水栓において、前記吐水部材は、前記水栓ボデーを収容する筒状の収容部と、前記収容部の外周面に設けられる吐水部とを備え、前記スペーサ部は、前記水栓ボデーの外周面と前記吐水部材の内周面との間に配置される環状の立壁と、前記立壁から径方向に延びて、前記収容部の前記取付面側の端面に配置される摺動壁を有していることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、収容部の取付面側の端面に配置された摺動壁により、吐水部材の摺動性を良好にできる。スリップ板のような摺動性の機能を有する部材に係合部及び回動規制部を一体形成することで、部品点数を低減できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、吐水部材が回動可能に取り付けられる水栓の部品点数を低減できて構造を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した一実施形態の水栓について説明する。
図1に示すように、水栓1は、キッチンシンク等の取付面2に取り付けられている。
図1及び
図2に示すように、水栓1は、水栓ボデー10、吐水部材20、台座部材30、ハンドル部材40、規制部材50、収容部材60、固定ナット70、及び湯水混合弁80を備えている。水栓1は、吐水部材20が取付面2に対して回動可能とされている。以下では、取付面2に取り付けられた状態の水栓1において、取付面2側を基端側、ハンドル部材40側を先端側として説明する。また、吐水部材20の回動中心軸Nに沿う方向を軸方向として説明する。
【0016】
水栓ボデー10は、取付面2に対して回動不能に取り付けられている。水栓ボデー10の内部には、給水源からの水が供給される給水管(図示略)、給湯源からの湯が供給される給湯管(図示略)、及び湯水混合弁80で混合された湯水混合水を吐水部材20の吐水管22へ供給する送水管(図示略)が設けられている。
【0017】
収容部材60は、有底円筒状に形成されて、その内部には、弁機構を備える湯水混合弁80が収容されている。収容部材60の基端部には、先端側より小径の小径部61が形成されている。収容部材60は、小径部61が水栓ボデー10の先端側の開口10aに挿入された状態で、複数のビス孔10bに挿入されたビス62により、水栓ボデー10に固定されている(
図4参照)。収容部材60の基端面には、給水管が接続される給水孔(図示略)、給湯管が接続される給湯孔(図示略)、及び送水管が接続される送水孔63が貫設されている。
【0018】
固定ナット70は、収容部材60の先端側で、収容部材60に対してねじ込み固定されている。これにより、湯水混合弁80は、収容部材60の内部に水密状態で収容されている。また、固定ナット70の最外径は、吐水部材20の先端側開口20aの内径より大きくなっている。これにより、吐水部材20の先端方向への移動が規制されている。なお、軸方向において、固定ナット70と吐水部材20との間には、若干のクリアランスが設けられている。ハンドル部材40の操作により、湯水混合弁80が操作されて給水管及び給湯管が切り換えられて湯水が混合される。
【0019】
吐水部材20は、水栓ボデー10に対して回動可能に取り付けられている。吐水部材20の回動に伴って、吐水部材20の側部に設けられた吐水管22の位置が変更される。吐水管22の内部には、送水管に接続されて、送水管からの湯水混合水を供給するシャワーホース(図示略)が挿通されている。湯水混合弁80で混合された湯水混合水は、シャワーホースを介して吐水管22の先端から外部に吐水される。
【0020】
水栓1を構成する各部材の材質は特に限定されない。樹脂製であっても金属製であってもよい。また、樹脂に金属めっきが施されたものであってもよい。例えば、水栓ボデー10が樹脂製であると成形のし易さやコスト面で有利である。また、収容部材60や固定ナット70が金属製であると耐圧強度的に有利である。
【0021】
なお、
図3では、水栓ボデー10の内部に収容される部材の図示を省略している。
図6、
図7、
図11についても同様である。
<水栓ボデー10について>
図3~
図6に示すように、水栓ボデー10は略円筒状に形成されている。水栓ボデー10の基端側には、周面に雄ネジ11aが螺設された接続筒部11が形成されている。先端側には、周壁の一部が切り欠かれた形状の開口部13を有する本体筒部12が形成されている。以下では、水栓ボデー10において、開口部13が形成された側を正面側、その反対側を背面側として説明する場合がある。開口部13は、本体筒部12の軸方向中間部分で水栓ボデー10の半周に亘って形成されている。
【0022】
図4及び
図7に示すように、本体筒部12における開口部13の基端側は、円筒状の基端筒部14とされている。基端筒部14は、後に説明する台座部材30が取り付けられる部分である。基端筒部14の正面側の周面には、径方向に突出する位置決め凸部15が形成されている。位置決め凸部15の外周面は、基端筒部14の外周面より小さい曲率の曲面状に形成されている。
【0023】
図5及び
図7に示すように、基端筒部14の背面側の周面には、正面側の周面に比べて小径となる凹部16が形成されている。凹部16は、基端筒部14の背面側の約半周に亘って形成されている。凹部16は、後に説明する規制部材50の回動規制部53が収容される部分である。凹部16に収容された回動規制部53は、凹部16内を水栓ボデー10の周方向に摺動して、凹部16の両端面に当接して、それ以上の摺動が規制される。凹部16の両端面は、回動規制部53が当接する被当接部17を構成する。
【0024】
<吐水部材20について>
図1、
図3及び
図8に示すように、吐水部材20は、水栓ボデー10を収容する円筒状の収容部21と、収容部21の外周面に設けられた吐水管22を備えている。収容部21の内径は、水栓ボデー10の本体筒部12の外径より僅かに大きい。そのため、収容部21は、水栓ボデー10の本体筒部12の外周面をガタつきを抑制された状態で回動可能である。
【0025】
図2に示すように、収容部21と収容部材60との間には、弾性リング部材64が設けられている。また、弾性リング部材64の先端側には、Cリング状のスペーサ部材65が設けられている。
【0026】
図3及び
図8に示すように、収容部21の基端部の内周面には、周方向に延びる周溝23が形成されている。また、収容部21の内周面には、周溝23から軸方向に延びる一つの被係合部24が形成されている。被係合部24の基端部は、幅方向両端部が軸方向に対して直線状に傾斜するテーパ面24aとされて、基端側ほど幅広となるテーパ状に形成されている。周溝23の内周面と被係合部24の内周面とは面一に形成されている。周溝23は、後に説明する規制部材50のスペーサ部51(立壁51b)が収容される部分である。また、
図3及び
図6に示すように、被係合部24は、後に説明する規制部材50の係合部52が係合する部分である。
【0027】
<台座部材30について>
図9に示すように、台座部材30は円筒状に形成されている。台座部材30は、水栓ボデー10に係合して回り止め状態で固定されている。台座部材30の正面側の内周面には、径方向に凹む位置決め凹部31が軸方向に延びるように形成されている。位置決め凹部31の内周面は、台座部材30の内周面より小さい曲率の曲面状に形成されている。
図7に示すように、位置決め凹部31は、水栓ボデー10の位置決め凸部15が係合する部分である。
【0028】
台座部材30の背面側には、回り止め孔32が形成されている。回り止め孔32は、水栓1の設置時やメンテナンス後の取付時等に、台座部材30を回り止めして、台座部材30を介して水栓ボデー10を回り止め状態で取り付けるための部分として形成されている。
【0029】
<規制部材50について>
図10に示すように、規制部材50は、円環状のスペーサ部51と、スペーサ部51から軸方向先端側に延びる薄板状の係合部52と、軸方向基端側に延びる薄板状の回動規制部53を備えている。係合部52と回動規制部53は、スペーサ部51の周方向の同じ位置に設けられている。
【0030】
図10及び
図11に示すように、スペーサ部51は、径方向に延びる平板状の摺動壁51aと、軸方向に延びる平板状の立壁51bを備えている。摺動壁51aの外径は収容部21の外径及び台座部材30の外径と同程度である。摺動壁51aの内径(立壁51bの内径)は、水栓ボデー10の本体筒部12の外径より僅かに大きい。立壁51bの外径は、吐水部材20の周溝23の内径より僅かに小さい。そして、立壁51bは、その内周と水栓ボデー10の本体筒部12の外周との間のクリアランスと、その外周と吐水部材20の周溝23の内周との間のクリアランスの合計が、水栓ボデー10の本体筒部12の外周と吐水部材20の収容部21の内周との間のクリアランスよりも小さくなるような寸法で形成されている。摺動壁51aは、収容部21の基端面と台座部材30の先端面との間に挟まれて、規制部材50が吐水部材20とともに回動する際に、台座部材30の先端面上を摺動する。
【0031】
係合部52は、立壁51bから軸方向先端側に延びている。係合部52の内面及び外面は、立壁51bの内面及び外面と面一に形成されている。
図10に示すように、係合部52の基端部は、幅方向両端部が軸方向に対して傾斜するテーパ面52aとされて、基端側ほど幅広となるテーパ状に形成されている。テーパ面52aの形状は、吐水部材20に形成された被係合部24のテーパ面24aと同一である。
【0032】
図11に示すように、回動規制部53は、立壁51bから径方向内方に変位した位置から軸方向基端側に延びている。回動規制部53は、スペーサ部51の周方向において被係合部24が形成された位置と同じ位置に形成されている。つまり、回動規制部53の幅方向の中央位置と被係合部24の幅方向の中央位置とが合致している。
【0033】
回動規制部53の外面は、立壁51bの内面及び係合部52の内面と面一に形成されている。また、回動規制部53の厚みは、水栓ボデー10の基端筒部14に形成された凹部16の深さより僅かに小さい。回動規制部53の軸方向の長さは、基端筒部14の軸方向の長さより少し短い。回動規制部53の幅方向の長さは、スペーサ部51の全周の1/5~1/6程度である。水栓1を組み付けた状態では、回動規制部53は、水栓ボデー10の凹部16内に収容されて、凹部16内を周方向に摺動可能である。
【0034】
規制部材50は、樹脂材料により形成されている。規制部材50の表面、特にスペーサ部51の摺動壁51aの表面は、吐水部材20や台座部材30の表面より摺動性が良好である。
【0035】
<水栓1及び規制部材50の作用について>
図1及び
図3に示すように、取付面2に取り付けられた水栓1は、水栓ボデー10を内部に収容した状態で、先端側の吐水部材20と基端側の台座部材30との間に規制部材50のスペーサ部51が介在されている。
図7に示すように、台座部材30は、水栓ボデー10の位置決め凸部15が自身の位置決め凹部31に係合することにより、水栓ボデー10に対して回り止め状態で固定されている。
【0036】
図6、
図11及び
図12に示すように、規制部材50は、水栓ボデー10の外周面と収容部21及び台座部材30の内周面との間に配置されている。規制部材50は、スペーサ部51の立壁51bが、収容部21の周溝23に収容されているとともに、係合部52が、収容部21の被係合部24に収容されている。係合部52は、自身のテーパ面52aが被係合部24のテーパ面24aに当接して、被係合部24内でがたつくことなく収容されている。また、スペーサ部51は環状であって、立壁51bの内径が水栓ボデー10の本体筒部12の外径より僅かに大きく、立壁51bの外径が吐水部材20の周溝23の内径より僅かに小さい。これにより、規制部材50は、吐水部材20とともに、本体筒部12の外周面でスムーズに回動する。
【0037】
また立壁51bは、その内周と水栓ボデー10の本体筒部12の外周との間のクリアランスと、その外周と吐水部材20の周溝23の内周との間のクリアランスの合計が、水栓ボデー10の本体筒部12の外周と吐水部材20の収容部21の内周との間のクリアランスよりも小さくなるような寸法に形成されている。スペーサ部51の立壁51bが吐水部材20の周溝23に収容されることにより、吐水部材20の回動時の摺動性が良好になるとともに、吐水部材20の径方向のガタつきが抑制される。
【0038】
また、摺動壁51aは、収容部21の基端面と台座部材30の先端面との間に挟まれて台座部材30の先端面上を摺動する。これによっても、吐水部材20の回動時の摺動性が良好となる。
【0039】
図7、
図11及び
図12に示すように、規制部材50の回動規制部53は、水栓ボデー10の凹部16内に収容されている。回動規制部53の幅方向の長さが、スペーサ部51の全周の1/5~1/6程度であるのに対して、凹部16は、水栓ボデー10の基端筒部14の約半周に亘って形成されている。そのため、吐水部材20を回動させると、回動規制部53は、凹部16内を凹部16の外周面に沿って周方向に摺動する。これにより、水栓ボデー10に対する吐水部材20の回動が許容される。
【0040】
図7に示すように、例えば、吐水管22を右側に向かって移動させると、回動規制部53は、凹部16内を左回りに摺動して凹部16の左側の端面に形成された被当接部17aに当接する。これにより、回動規制部53のそれ以上の回動が規制されて、吐水管22の右側へのさらなる回動が規制される。また、吐水管22を左側に向かって移動させると、回動規制部53は、凹部16内を右回りに摺動して凹部16の右側の端面に形成された被当接部17bに当接する。これにより、回動規制部53のそれ以上の回動が規制されて、吐水管22の左側へのさらなる回動が規制される。回動規制部53と被当接部17との当接により、水栓ボデー10に対する吐水部材20の回動範囲が所定範囲に規制される。
【0041】
図11に示すように、収容部21の基端面と台座部材30の先端面との間には、規制部材50の摺動壁51aが挟まれている。規制部材50は、摺動性の良好な樹脂製品である。そのため、台座部材30に対する吐水部材20の回動がスムーズである。
【0042】
本実施形態の水栓1及び規制部材50によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)規制部材50は、水栓ボデー10の外周面と吐水部材20の内周面との間に配置される環状のスペーサ部51と、吐水部材20に係合する係合部52と、水栓ボデー10に対する吐水部材20の回動範囲を規制する回動規制部53とを備えている。環状のスペーサ部51は、水栓ボデー10に対する吐水部材20の回動をスムーズにする。こうしたスペーサ部51に係合部52と回動規制部53を一体に形成することで、回動を規制するための部品点数を低減できる。水栓の構造を簡略化できる。
【0043】
(2)水栓ボデー10の外周面には、回動規制部53が当接することにより吐水部材20の回動範囲が規制される被当接部17が一体に形成されている。そのため、水栓ボデー10に別部材を取り付けることによって被当接部17を設ける場合に比べて部品点数を低減できる。水栓の構造を簡略化できる。
【0044】
(3)規制部材50の係合部52と回動規制部53とは、互いに、水栓ボデー10の軸方向の反対側に向かって延びるように、スペーサ部51における周方向の同じ位置に形成されている。そのため、規制部材50の強度を向上できる。
【0045】
(4)規制部材50のスペーサ部51は、水栓ボデー10の外周面と吐水部材20の内周面との間に配置される環状の立壁51bと、立壁51bから径方向に延びて、収容部21の取付面2側の端面に配置される摺動壁51aを有している。そして係合部52及び回動規制部53は、スペーサ部51と一体に形成されている。そのため、収容部21の基端面と台座部材30の先端面との間で摺動するスリップ板のような部材と、水栓ボデー10に対する吐水部材20の回動範囲を規制する規制部材50とが別体に形成されている場合に比べて、部品点数を削減できる。また、水栓1の構造を簡略化できる。
【0046】
(5)規制部材50は、収容部21の基端面と台座部材30の先端面との間に介在される摺動壁51aを有している。そのため、台座部材30に対する吐水部材20の摺動性が良好となり、吐水部材20の回動操作性が向上する。
【0047】
(6)規制部材50の係合部52は、スペーサ部51側ほど幅広となるテーパ状に形成されている。そのため、係合部52の基部が補強されて規制部材50の耐久性が向上する。
【0048】
(7)規制部材50の係合部52が係合する被係合部24に形成されたテーパ面24aは、係合部52のテーパ面52aと同一の形状である。そのため、係合部52と被係合部24との係合状態が安定して、ガタつきが抑制される。また、水栓1の組付時には、被係合部24のテーパ面24aに、係合部52のテーパ面52aを沿わせるようにして組み付けることができる。組付作業性が良好である。
【0049】
(8)吐水部材20の収容部21には、スペーサ部51の立壁51bを収容する周溝23が形成されている。そのため、収容部21に対する規制部材50の位置決め状態が安定する。
【0050】
(9)規制部材50の回動規制部53は、収容部21の基端側の端面から突出する部分に設けられている。そのため、規制部材50が吐水部材20の内部に収容されている場合に比べて、吐水部材20が軸方向に長くなることを抑制できる。水栓1を長さ方向にコンパクトにできる。
【0051】
(10)回動規制部53は、吐水部材20の回動に対して不動である水栓ボデー10に設けられた被当接部17に当接して、吐水部材20の回動範囲を規制する。そのため、吐水部材20の回動をしっかり止めることができる。
【0052】
(11)規制部材50の係合部52は、水栓ボデー10の外周面と収容部21の内周面の間に配置されている。そのため、係合部52が収容部21の外周面に配置されている場合に比べて水栓1の外観を良好にできる。
【0053】
(12)台座部材30には、水栓ボデー10の位置決め凸部15が係合する位置決め凹部31と、回り止め孔32が形成されている。そのため、水栓1の設置時やメンテナンス後の組付時等に、水栓ボデー10を回り止めさせた状態で、接続筒部11に水栓取付け用のナットを締め付けたり緩めたりできる。施工性、メンテナンス性が良好である。
【0054】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0055】
・規制部材50のスペーサ部51は、水栓ボデー10の外周面と吐水部材20の内周面との間に配置される立壁51bのみを有していて、摺動壁51aを有していなくてもよい。
【0056】
・規制部材50は、吐水部材20の基端に配置されていなくてもよい。吐水部材20の軸方向中間部分に配置されていてもよい。
・係合部52と回動規制部53は、スペーサ部51における周方向の同じ位置に形成されていなくてもよい。例えば、
図13に示すように、係合部52と回動規制部53がスペーサ部51において半周異なる位置に形成されていてもよい。
【0057】
・スペーサ部51は、円環状でなくてもよい。例えば、Cリングのような形状の環状であってもよい。
・規制部材50の係合部52の基端部が先端部と同じ幅であって、テーパ面52aが形成されていなくてもよい。この場合、収容部21の被係合部24も、係合部52と同一の形状であることが好ましい。
【0058】
・規制部材50の係合部52のテーパ面52aは直線状でなく、曲線状であってもよい。この場合も、収容部21の被係合部24と係合部52とが同一の形状であることが好ましい。
【0059】
・回動規制部53が当接する被当接部17は、水栓ボデー10に一体に形成されていなくてもよい。
・水栓ボデー10には凹部16が形成されていなくてもよい。例えば、水栓ボデー10の基端筒部14の外周面に凸部を設けることによって被当接部17としてもよい。
【0060】
・回動規制部53は、台座部材30の被当接部17への当接によって吐水部材20の回動を規制するが、当接によらなくてもよい。例えば、回動規制部53と水栓ボデー10との間に付勢部材が介在していて、付勢部材による付勢力によって吐水部材20の回動が規制されるようにしてもよい。
【0061】
・被当接部17は、水栓ボデー10の外周面に設けられていなくてもよい。例えば、台座部材30の内周面に、回動規制部53が当接する凸部や凹部が形成されていてもよい。また、水栓1を取り付ける取付孔の内周面に、回動規制部53が当接する凸部や凹部が形成されていてもよい。
【0062】
・台座部材30は、水栓ボデー10に対して回り止め状態で固定されていなくてもよい。
・台座部材30を省略してもよい。この場合、
図3の一点鎖線で示すように、吐水部材20の基端面が取付面2の位置となるように取り付ければよい。
【0063】
・水栓1の形状は、上記実施形態のものに限定されない。
・水栓1は、取付面2に対して垂直に取り付けられるものに限定されない。例えば、垂直方向に延びる取付面2に対して、吐水部材20の収容部21が水平方向に延びるようなものであってもよい。
【0064】
次に、上記実施形態から把握される技術的思想について記載する。
(イ)取付面に対して吐水管が回動可能に取り付けられる水栓であって、内部に通水管を有する水栓ボデーと、前記通水管からの湯水を吐水する前記吐水管を有するとともに前記水栓ボデーを内部に収容する吐水部材と、前記吐水部材における前記取付面側の端面に当接するスリップ板を備え、前記スリップ板には、前記吐水部材の内周面に係合して前記吐水部材とともに回動する係合部と、前記水栓ボデーに対する前記吐水部材の回動範囲を規制する回動規制部とが一体に形成されている。
【0065】
上記構成によれば、スリップ板のような摺動性の機能を有する部材に係合部及び回動規制部を一体形成することで、水栓全体の部品点数を低減できる。
【符号の説明】
【0066】
1…水栓、2…取付面、10…水栓ボデー、17…被当接部、20…吐水部材、21…収容部、22…吐水管(吐水部)、30…台座部材、50…規制部材、51…スペーサ部、52…係合部、53…回動規制部。