(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113051
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ハードコート組成物、積層体フィルム、及び、硬化フィルム
(51)【国際特許分類】
C09D 133/00 20060101AFI20240814BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240814BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240814BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240814BHJP
C09D 133/14 20060101ALI20240814BHJP
C09D 7/47 20180101ALI20240814BHJP
【FI】
C09D133/00
B32B27/30 A
B32B27/20 Z
C09D7/61
C09D133/14
C09D7/47
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024090624
(22)【出願日】2024-06-04
(62)【分割の表示】P 2020535761の分割
【原出願日】2019-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2018149540
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(72)【発明者】
【氏名】福永 泰隆
(72)【発明者】
【氏名】掛谷 文彰
(57)【要約】 (修正有)
【課題】硬化させると優れた耐擦傷性と高い硬さを有するハードコート層を製造できるとともに、加工時の成形性にも優れたハードコート組成物、そのようなハードコート組成物を有する積層体フィルム等を提供する。
【解決手段】上述の課題は、硬化性のハードコート組成物であって、(メタ)アクリロイルポリマーと、無機酸化物ナノ粒子とを含み、(メタ)アクリロイルポリマーが、200~500g/eqの(メタ)アクリル当量と5,000~200,000の重量平均分子量を有するハードコート組成物により解決された。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性のハードコート組成物であって、
(メタ)アクリロイルポリマーと、無機酸化物ナノ粒子とを含み、
前記(メタ)アクリロイルポリマーが、200~500g/eqの(メタ)アクリル当量と、5,000~200,000の重量平均分子量を有し、
前記無機酸化物ナノ粒子の平均粒子径が6~95nm未満である、ハードコート組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリロイルポリマーが、以下の式(I)で示される繰り返し単位を含む、請求項1に記載のハードコート組成物。
【化1】
(前記式(I)において、
mは、炭素数1~4のアルキレン基、又は、単結合であり、
nは、炭素数1~4のアルキル基、又は、水素であり、
pは、単結合、又は、炭素数1又は2のアルキレン基であり、
qは、エポキシ基、水酸基、アクリロイル基、及び、メタクリロイル基の少なくともいずれかの置換基を含んでも良い全炭素数が1~12のアルキル基、又は、水素である。)
【請求項3】
前記式(I)において、
mは、炭素数1又は2のアルキレン基であり、
nは、炭素数1又は2のアルキル基あり、
pは、単結合、又は、メチレン基であり、
qは、グリシジル基、水酸基、及び、アクリロイル基の少なくともいずれかの置換基を含んでも良い全炭素数が1~6のアルキル基、又は、水素である、請求項2に記載のハードコート組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリロイルポリマーが、以下の式(II-a),式(II-b),及び、式(II-c)で示される繰り返し単位の少なくともいずれかを含む、請求項2に記載のハードコート組成物。
【化2】
【請求項5】
前記ハードコート組成物が、前記ハードコート組成物の全重量を基準として、20~80重量%の前記(メタ)アクリロイルポリマーと、80~20重量%の無機酸化物ナノ粒子を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のハードコート組成物。
【請求項6】
前記無機酸化物ナノ粒子が、共重合性基を表面に有するシリカを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のハードコート組成物。
【請求項7】
レベリング剤をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のハードコート組成物。
【請求項8】
前記レベリング剤が、フッ素系添加剤またはシリコーン系添加剤を含む、請求項7に記載のハードコート組成物。
【請求項9】
前記ハードコート組成物が、前記ハードコート組成物の全重量を基準として10重量%以下の前記レベリング剤を含む、請求項7又は8に記載のハードコート組成物。
【請求項10】
エネルギー線硬化性である、請求項1~9のいずれか一項に記載のハードコート組成物。
【請求項11】
光重合開始剤をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のハードコート組成物。
【請求項12】
ポリカーボネート樹脂とPMMA樹脂とが積層された基材層のPMMA樹脂側の表面の上に、厚さが7μmのコーティング層が前記ハードコート組成物によって形成されるように前記ハードコート組成物を塗工し、120℃で5分間、乾燥させ、210mm×297mm×0.3mm(厚さ)に裁断して得られた、積層体の試料において、
前記積層体を190℃で40秒間予熱し、13mmの深絞り高さを有するとともに縦と横のサイズがいずれも30mmである直角形状の突起部を含む金型に、前記基材層のポリカーボネート樹脂側の表面が接するように前記試料を配置し、3.5MPaの高圧空気を用いて前記積層体の試料の圧空成形を行なったとき、
得られた圧空成形体が前記金型の直角形状の前記突起部に接する領域の半径Rが3mm以内であり、かつ該圧空成形体上の前記コーティング層にクラックが発生しない、請求項1~11のいずれか一項に記載のハードコート組成物。
【請求項13】
ポリカーボネート樹脂とPMMA樹脂とが積層された基材層のPMMA樹脂側の表面の上に、厚さが7μmのコーティング層が前記ハードコート組成物によって形成されるように前記ハードコート組成物を塗工し、120℃で5分間、乾燥させ、
硬化していない前記コーティング層の表面に、ポリプロピレン製の厚さ30μmのマスキングフィルムを貼付させ、前記マスキングフィルムの上に30kg/m2の圧力をかけ24時間経過した後に、前記マスキングフィルムの剥離後の前記コーティング層の前記表面の表面粗さSaが、0.01μm未満である、請求項1~12のいずれか一項に記載のハードコート組成物。
【請求項14】
樹脂を含む基材層上に、請求項1~13のいずれか一項に記載のハードコート組成物を有するコーティング層を含む、積層体フィルム。
【請求項15】
前記基材層の厚さが0.1mm~1.0mmであり、前記コーティング層の厚さが1.0μm~10μmである、請求項14に記載の積層体フィルム。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の積層体フィルムを硬化させて得られた硬化フィルム。
【請求項17】
前記コーティング層側の表面の鉛筆硬度がB以上である、請求項16に記載の硬化フィルム。
【請求項18】
前記コーティング層側の表面上で、#0000のスチールウールを100gf/cm2の圧力下で15回往復させて擦傷した場合に、JIS K 7136:2000に基づいて評価した擦傷前と擦傷後の前記コーティング層のヘーズ変化(ΔH)が、3.0%未満である、請求項16又は17に記載の硬化フィルム。
【請求項19】
前記コーティング層側の密着性について、JIS K 5600-5-6:1999により定められる評価結果が0である、請求項16~18のいずれか一項に記載の硬化フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコート組成物、特に、硬化可能なハードコート組成物と、ハードコート組成物を含む積層体フィルム等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードコート層を有する樹脂フィルム積層体が様々な分野で使用されている(特許文献1参照)。例えば、このような樹脂フィルムの積層体は、モバイル機器の前面板、背面板、及び、自動車内装部材等において用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂フィルムの積層体の表面を保護するハードコート層には、ある程度以上の硬さと高い耐擦傷性が必要とされる。一方、所望の形状を有する樹脂フィルム積層体を製造するためには、各層を構成する樹脂フィルムについて、優れた成形性が必要とされる。そして、積層体の特にハードコート層の製造に用いられる樹脂組成物において、これらの異なる性能をいずれも満足させることは困難であった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、硬化させると優れた耐擦傷性と高い硬さを有するハードコート層を製造できるとともに、加工時の成形性にも優れたハードコート組成物、そのようなハードコート組成物を有する積層体フィルム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、所定のポリマーとナノ粒子とを含む硬化性のハードコート組成物が、上述の課題を解決できる優れた特徴を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は下記のとおりである。
(1)硬化性のハードコート組成物であって、
(メタ)アクリロイルポリマーと、無機酸化物ナノ粒子とを含み、
前記(メタ)アクリロイルポリマーが、200~500g/eqの(メタ)アクリル当量と、5,000~200,000の重量平均分子量を有し、
前記無機酸化物ナノ粒子の平均粒子径が6~95nm未満である、ハードコート組成物。
(2)前記(メタ)アクリロイルポリマーが、以下の式(I)で示される繰り返し単位を含む、上記(1)に記載のハードコート組成物。
【化1】
(前記式(I)において、
mは、炭素数1~4のアルキレン基、又は、単結合であり、
nは、炭素数1~4のアルキル基、又は、水素であり、
pは、単結合、又は、炭素数1又は2のアルキレン基であり、
qは、エポキシ基、水酸基、アクリロイル基、及び、メタクリロイル基の少なくともいずれかの置換基を含んでも良い全炭素数が1~12のアルキル基、又は、水素である。)
(3)前記式(I)において、
mは、炭素数1又は2のアルキレン基であり、
nは、炭素数1又は2のアルキル基あり、
pは、単結合、又は、メチレン基であり、
qは、グリシジル基、水酸基、及び、アクリロイル基の少なくともいずれかの置換基を含んでも良い全炭素数が1~6のアルキル基、又は、水素である、上記(2)に記載のハードコート組成物。
(4)前記(メタ)アクリロイルポリマーが、以下の式(II-a),式(II-b),及び、式(II-c)で示される繰り返し単位の少なくともいずれかを含む、上記(2)に記載のハードコート組成物。
【化2】
(5)前記ハードコート組成物が、前記ハードコート組成物の全重量を基準として、20~80重量%の前記(メタ)アクリロイルポリマーと、80~20重量%の無機酸化物ナノ粒子を含む、上記(1)~(4)のいずれか一項に記載のハードコート組成物。
(6)前記無機酸化物ナノ粒子が、共重合性基を表面に有するシリカを含む、上記(1)~(5)のいずれか一項に記載のハードコート組成物。
(7)レベリング剤をさらに含む、上記(1)~(6)のいずれか一項に記載のハードコート組成物。
(8)前記レベリング剤が、フッ素系添加剤またはシリコーン系添加剤を含む、上記(7)に記載のハードコート組成物。
(9)前記ハードコート組成物が、前記ハードコート組成物の全重量を基準として10重量%以下の前記レベリング剤を含む、上記(7)又は(8)に記載のハードコート組成物。
(10)エネルギー線硬化性である、上記(1)~(9)のいずれか一項に記載のハードコート組成物。
(11)光重合開始剤をさらに含む、上記(1)~(10)のいずれか一項に記載のハードコート組成物。
(12)ポリカーボネート樹脂とPMMA樹脂とが積層された基材層のPMMA樹脂側の表面の上に、厚さが7μmのコーティング層が前記ハードコート組成物によって形成されるように前記ハードコート組成物を塗工し、120℃で5分間、乾燥させ、210mm×297mm×0.3mm(厚さ)に裁断して得られた、積層体の試料において、
前記積層体を190℃で40秒間予熱し、13mmの深絞り高さを有するとともに縦と横のサイズがいずれも30mmである直角形状の突起部を含む金型に、前記基材層のポリカーボネート樹脂側の表面が接するように前記試料を配置し、3.5MPaの高圧空気を用いて前記積層体の試料の圧空成形を行なったとき、
得られた圧空成形体が前記金型の直角形状の前記突起部に接する領域の半径Rが3mm以内であり、かつ該圧空成形体上の前記コーティング層にクラックが発生しない、上記(1)~(11)のいずれか一項に記載のハードコート組成物。
(13)ポリカーボネート樹脂とPMMA樹脂とが積層された基材層のPMMA樹脂側の表面の上に、厚さが7μmのコーティング層が前記ハードコート組成物によって形成されるように前記ハードコート組成物を塗工し、120℃で5分間、乾燥させ、硬化していない前記コーティング層の表面に、ポリプロピレン製の厚さ30μmのマスキングフィルムを貼付させ、前記マスキングフィルムの上に30kg/m
2の圧力をかけ24時間経過した後に、前記マスキングフィルム剥離後の前記コーティング層の前記表面の表面粗さSaが、0.01μm未満である、上記(1)~(12)のいずれか1つに記載のハードコート組成物。
(14)樹脂を含む基材層上に、上記(1)~(13)のいずれか一項に記載のハードコート組成物を有するコーティング層を含む積層体フィルム。
(15)前記基材層の厚さが0.1mm~1.0mmであり、前記コーティング層の厚さが1.0μm~10μmである、上記(14)に記載の積層体フィルム。
(16)上記(14)又は(15)に記載の積層体フィルムを硬化させて得られた硬化フィルム。
(17)前記コーティング層側の表面の鉛筆硬度がB以上である、上記(16)に記載の硬化フィルム。
(18)前記コーティング層側の表面上で、#0000のスチールウールを100gf/cm
2の圧力下で15回往復させて擦傷した場合に、JIS K 7136:2000に基づいて評価した擦傷前と擦傷後の前記コーティング層のヘーズ変化(ΔH)が、3.0%未満である、上記(16)又は(17)に記載の硬化フィルム。
(19)前記コーティング層側の密着性について、JIS K 5600-5-6:1999により定められる評価結果が0である、上記(16)~(18)のいずれか一項に記載の硬化フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明のハードコート組成物は、上述のように所定のポリマーとナノ粒子とを有しており、硬化させると硬さと耐擦傷性の高いハードコート層を形成可能であり、硬化前の状態においては成形性に優れている。
このように優れた特徴を有するため、本発明のハードコート組成物は、例えば、モバイル機器、自動車内装部材等の用途に用いられる樹脂フィルム積層体の材料として、特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ハードコート組成物を有するコーティング層を含む積層体フィルムの具体例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の効果を有する範囲において任意に変更して実施することができる。
【0011】
[ハードコート組成物]
本発明のハードコート組成物は、エネルギー線の照射等によって硬化する硬化性を有しており、(メタ)アクリロイルポリマー、及び、無機酸化物ナノ粒子を含む。詳細を後述するように、ハードコート組成物は、硬化前には成形性、及び、タックフリー性に優れており、また、硬化させて例えばハードコート層を形成すると、高い硬度と優れた耐擦傷性を実現できる。
【0012】
ハードコート組成物は、ハードコート組成物の全重量を基準として、20~80重量%の(メタ)アクリロイルポリマーと、80~20重量%の無機酸化物ナノ粒子を含むことが好ましい。より好ましくは、ハードコート組成物は、30~70重量%の(メタ)アクリロイルポリマーと、70~30重量%の無機酸化物ナノ粒子を含み、さらに好ましくは、40~60重量%の(メタ)アクリロイルポリマーと、60~40重量%の無機酸化物ナノ粒子を含む。
【0013】
<(メタ)アクリロイルポリマー>
(メタ)アクリロイルポリマーは、200~500g/eqの(メタ)アクリル当量を有する。(メタ)アクリロイルポリマーの(メタ)アクリル当量は、好ましくは220~450g/eqであり、より好ましくは、250~400g/eqである。
(メタ)アクリロイルポリマーは、また、100~1000g/eqの二重結合当量を有することが好ましく、(メタ)アクリロイルポリマーの二重結合当量は、より好ましくは150~800g/eqであり、さらに好ましくは、200~600g/eqであり、特に好ましくは、250~400g/eqである。
また、(メタ)アクリロイルポリマーは、5,000~200,000の重量平均分子量を有する。(メタ)アクリロイルポリマーの重量平均分子量は、好ましくは10,000~150,000であり、より好ましくは15,000~100,000であり、さらに好ましくは18,000~50,000である。
重量平均分子量の値は、特開2007-179018号公報の段落0061~0064の記載に基づいて測定できる。測定法の詳細を以下に示す。
【表1】
すなわち、まず、ポリスチレンを標準ポリマーとしたユニバーサルキャリブレーション法により、溶出時間と、ポリカーボネートの分子量との関係を示す検量線を作成した。そして、ポリカーボネートの溶出曲線(クロマトグラム)を、上述の検量線の場合と同一の条件で測定した。さらに、ポリカーボネートの溶出時間(分子量)、及び、その溶出時間のピーク面積(分子数)から、重量平均分子量(Mw)を算出した。重量平均分子量は、以下の式(A)で表され、式(A)において、Niは分子量Miを有する分子数を意味する。
Mw=Σ(NiMi
2)/Σ(NiMi)・・・・(A)
なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリルとメタクリルのいずれをも含む。
【0014】
上述のように、所定の範囲の(メタ)アクリル当量と重量平均分子量を有する(メタ)アクリロイルポリマーを含むハードコート組成物については、硬化前のタックフリー性、及び、硬化後の耐擦傷性が良好であるとともに、硬化・重合反応を容易に進行させることも可能である。
【0015】
ハードコート組成物に含まれる(メタ)アクリロイルポリマーは、以下の式(I)で示される繰り返し単位を有することが好ましい。
【化3】
ただし、式(I)において、mは、炭素数1~4のアルキレン基、又は、単結合であり、nは、炭素数1~4のアルキル基、又は、水素であり、pは、単結合、又は、炭素数1又は2のアルキレン基であり、qは、エポキシ基、水酸基、アクリロイル基、及び、メタクリロイル基の少なくともいずれかの置換基を含んでも良い全炭素数が1~12のアルキル基、又は、水素である。
【0016】
(メタ)アクリロイルポリマーは、より好ましくは、以下の繰り返し単位、すなわち、上記式(I)において、mが、炭素数1又は2のアルキレン基であり、nが、炭素数1又は2のアルキル基あり、pが、単結合、又は、メチレン基であり、qが、グリシジル基、水酸基、及び、アクリロイル基の少なくともいずれかの置換基を含んでも良い全炭素数が1~6のアルキル基、又は、水素である繰り返し単位を含む。
例えば、上記式(I)において、mはメチレン基であり、nはメチル基であり、pは単結合であり、qは、メチル基、グリシジル基(エポキシ基)を含む炭素数5以下のアルキル基、水酸基とアクリロイル基とを含む炭素数8以下のアルキル基等である。
【0017】
(メタ)アクリロイルポリマーに含まれる繰り返し単位の具体例として、以下の式(II-a),式(II-b),及び、式(II-c)で示されるものが挙げられる。
【化4】
(メタ)アクリロイルポリマーにおいて、上記式(II-a)の繰り返し単位は、上記式(II-a)の繰り返し単位、上記式(II-b)の繰り返し単位、及び、上記式(II-c)の繰り返し単位の合計モル数を基準として30~85モル%であることが好ましく、40~80モル%であることがより好ましい。上記式(II-b)の繰り返し単位は、上記合計モル数を基準として、5~30モル%であることが好ましく、10~25モル%であることがより好ましい。また、上記式(II-c)の繰り返し単位は、上記合計モル数を基準として、10~40モル%であることが好ましく、10~35モル%であることがより好ましい。
また、上記式(II-a)の繰り返し単位と、上記式(II-b)の繰り返し単位と、上記式(II-c)の繰り返し単位とのモル比は、好ましくは、4.5~5.5:1.5~2.5:2.5~3.5であり、例えば、5:2:3である。
【0018】
(メタ)アクリロイルポリマーには、ペンタエリスリトール系の多官能性アクリレート化合物を添加しても良い。複数のアクリレート基、好ましくは3つ以上のアクリレート基を有する多官能性アクリレート化合物として、例えば、以下の式(III-a),及び、式(III-b)でそれぞれ示される、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及び、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの他、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が用いられる。
【化5】
【0019】
多官能性アクリレート化合物は、(メタ)アクリロイルポリマーとの合計重量を基準として、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下含まれる。このように、多官能性アクリレート化合物をハードコート組成物に加え、(メタ)アクリロイルポリマーの側鎖に含まれるアクリロイル基、グリシジル基(エポキシ基)、及び、水酸基と反応させるにより、より高い耐擦傷性を有するハードコート膜を形成することができる。
【0020】
<無機酸化物ナノ粒子>
ハードコート組成物に含まれる無機酸化物ナノ粒子として、シリカ粒子及びアルミナ粒子等が使用可能であり、これらの中でも、無機酸化物ナノ粒子はシリカ粒子を含むことが好ましく、シリカ粒子は少なくともコロイダルシリカを含むことが好ましい。
ハードコートに含まれる無機酸化物ナノ粒子は、好ましくは、表面処理剤で処理される。表面処理により、無機酸化物ナノ粒子をハードコート組成物中、特に、(メタ)アクリロイルポリマー成分中において安定した状態で分散させることができる。
【0021】
無機酸化物ナノ粒子に対する表面処理剤としては、無機酸化物ナノ粒子の表面に結合可能な置換基と、無機酸化物ナノ粒子を分散させるハードコート組成物の成分、特に、(メタ)アクリロイルポリマーとの相溶性の高い置換基とを有する化合物が好適に用いられる。例えば、表面処理剤として、シラン化合物、アルコール、アミン、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸等が用いられる。
【0022】
無機酸化物ナノ粒子は、好ましくは、表面に共重合性基を有する。共重合性基は、無機酸化物ナノ粒子の表面処理によって導入可能であり、共重合性基の具体例として、ビニル基、(メタ)アクリル基、フリーラジカル重合性基等が挙げられる。
無機酸化物ナノ粒子の平均粒子径は、6~95nm未満である。無機酸化物ナノ粒子の平均粒子径は、より好ましくは7~50nmであり、さらに好ましくは8~20nmである。
ハードコート組成物の硬化後の表面に凹凸を生じさせず、表面外観を良好にするために、可能な限り凝集していない状態の無機酸化物ナノ粒子を用いることが好ましい。
【0023】
<ハードコート組成物中のその他の成分>
ハードコート組成物は、上述の(メタ)アクリロイルポリマーと無機酸化物ナノ粒子に加え、レベリング剤をさらに含むことが好ましい。レベリング剤としては、例えば、フッ素系添加剤、シリコーン系添加剤等が用いられる。
フッ素系添加剤としては、DIC製メガファックRS-56、RS-75、RS-76-E、RS-76-NS、RS-78、RS-90、ネオス製フタージェント710FL、220P、208G、601AD、602A、650A、228P、フタージェント240GFTX-218(いずれもフッ素基含有UV反応性基含有オリゴマー)等が用いられ、これらの中でもフタージェント601AD等がフッ素系添加剤として好ましい。
また、シリコーン系添加剤としては、ビックケミー社製BYK-UV3500、BYK-UV3505(いずれも、アクリル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)等が用いられ、これらの中でもBYK-UV3500等がシリコーン系添加剤として好ましい。
【0024】
ハードコート組成物において、ハードコート組成物の全重量を基準として0.1重量%以上10重量%以下のレベリング剤が含まれることが好ましく、ハードコート組成物におけるレベリング剤の含有量は、より好ましくは0.5重量%以上7重量%以下であり、さらに好ましくは1重量%以上5重量%以下である。
【0025】
また、硬化性のハードコート組成物は、エネルギー線硬化性、又は、熱硬化性であっても良いが、好ましくはエネルギー線硬化性、より好ましくは、紫外線硬化性を有する。よってハードコート組成物は、光重合開始剤をさらに含むことが好ましい。光重合開始剤としては、IRGACURE 184(1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン)、IRGACURE 1173(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1- オン)、IRGACURE TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド)、EsacureONE(オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン)等が用いられ、これらの中でも耐熱性の観点から、IRGACURE TPO等が光重合開始剤として好ましい。
ハードコート組成物においては、例えば、ハードコート組成物の全重量を基準として1重量%以上6重量%以下の光重合開始剤が含まれる。光重合開始剤のハードコート組成物における含有量は、より好ましくは2重量%以上5重量%以下であり、さらに好ましくは3重量%以上4重量%以下である。
【0026】
ハードコート組成物は、その他の添加剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、離型剤、及び着色剤から成る群から選択された少なくとも1種類の添加剤を含んでいても良い。所望の諸物性を著しく損なわない限り、帯電防止剤、蛍光増白剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等をハードコート組成物に添加してもよい。
ハードコート組成物において、(メタ)アクリロイルポリマー、及び、無機酸化物ナノ粒子は、60質量%以上含まれていることが好ましく、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、含まれている。よって、ハードコート組成物における、上記主要な二成分以外の成分の含有量は、40質量%未満であることが好ましく、より好ましくは20質量%未満であり、特に好ましくは10質量%未満である。
【0027】
<ハードコート組成物の製造>
ハードコート組成物は、上述の(メタ)アクリロイルポリマー、無機酸化物ナノ粒子等の材料物質をブレンドすることにより製造される。例えば、タンブラーを用いて(メタ)アクリロイルポリマー等の各成分を混合し、さらに押出機により溶融混練して、(メタ)アクリロイルポリマーを製造する。ここで、樹脂組成物の形態はペレット状には限定されず、フレーク状、粉末状、又はバルク状等であっても良い。
【0028】
<ハードコート組成物の性状>
(i)タックフリー性
本発明のハードコート組成物は、タックフリー性に優れている。このため、未硬化の状態のハードコート組成物が、例えば作業者の手などの他の物質と接触しても、所定の形状を維持することができ、かつ接触した物質の表面にハードコート組成物の一部が付着することは抑制される。このように、タックフリー性に優れているハードコート組成物によれば、様々な用途に適した形状に成形した後で、硬化させる加工を容易に実施することができる。また、硬化前の状態のハードコート組成物を所定の形状のまま保管、あるいは流通させることも容易である。
【0029】
これに対し、タックフリー性に劣る樹脂組成物、例えば、分子量の低いオリゴマー等が主成分である樹脂組成物においては、様々な用途に適した形状に成形する前に硬化させる工程が必要となるため、成形性に劣る傾向が認められる。
【0030】
(ii)マスキング剥離後の光沢性(外観)
本発明のハードコート組成物においては、未硬化の状態でフィルム状に加工し、マスキングフィルムを積層させて剥離させたときに、フィルム表面における凹凸の発生を抑制でき、光沢を良好に維持することができる。
詳細を後述するように、本発明のハードコート組成物は、このような評価試験において、マスキングフィルム剥離後の表面を平滑に保ち、良好な光沢を維持できることが確認された。
【0031】
(iii)成形性(圧空成形性)
本発明のハードコート組成物は、未硬化の状態における成形性にも優れている。ハードコート組成物の成形性は、例えば、以下のように評価される。すなわち、基材層の表面上にハードコート組成物を塗布して乾燥させた後、得られた積層体を、凸部を有する金型上に配置した状態で加熱して圧空成形を実施したときに、シート状のハードコート組成物が、凸部に追従しつつ適度に延伸されるか否か、及び、クラックが発生するか否か、等によって評価され得る。
詳細を後述するように、本発明のハードコート組成物は、このような評価試験において、圧空成形性時にクラックを生じさせずに凸部に追従しつつ、延伸可能であることが確認された。
【0032】
(iv)耐擦傷性
本発明のハードコート組成物を硬化させると、高い耐擦傷性が実現される。詳細を後述するように、ハードコート組成物の層を有する積層体を硬化させてハードコート層を形成すると、ハードコート層の表面における耐擦傷性は、硬化したPMMA樹脂(ポリメタクリル酸メチル樹脂)やレンズ用樹脂よりも優れていることが確認された。
【0033】
(v)硬度
硬化させたハードコート組成物は、高い硬度を有する。具体的には、PMMA基材上に塗工し、硬化させた場合に、JIS K 5600-5-4:1999の評価方法における鉛筆硬度B以上を実現できる。硬化させたハードコート組成物の表面において、より好ましくはF以上、特に好ましくは2H以上の鉛筆硬度が実現される。
【0034】
(vi)密着性
硬化させたハードコート組成物は、また、樹脂基材に対する密着性にも優れている。具体的には、詳細を後述するように、PMMA基材上に塗工し、硬化させた場合に、JIS K 5600-5-6:1999の評価方法によって定められる評価結果が0であり、評価結果1~5よりも良好な結果が得られた。
【0035】
[積層体フィルム]
本発明の積層体フィルムは、樹脂を含む基材層のいずれかの表面上に、未硬化の状態の上述のハードコート組成物を有するコーティング層、好ましくは、未硬化の状態のハードコート組成物からなるコーティング層を積層させたものである。
【0036】
積層体フィルムの基材層は、好ましくは樹脂、より好ましくは熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂の種類について特に限定されないが、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルスルホン、セロファン、芳香族ポリアミド等の各種樹脂が用いられる。基材層の熱可塑性樹脂は、これらの選択肢のうち、少なくともポリカーボネート樹脂を含むことが好ましい。
【0037】
積層体フィルムの基材層に含まれるポリカーボネート樹脂の種類としては、分子主鎖中に炭酸エステル結合を含む-[O-R-OCO]-単位(Rが脂肪族基、芳香族基、又は脂肪族基と芳香族基の双方を含むもの、さらに直鎖構造あるいは分岐構造を持つもの)を含むものであれば、特に限定されないが、ビスフェノール骨格を有するポリカーボネート等が好ましく、ビスフェノールA骨格、又はビスフェノールC骨格を有するポリカーボネートが特に好ましい。ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノールAとビスフェノールCの混合物、又は、共重合体を用いても良い。ビスフェノールC系のポリカーボネート樹脂、例えば、ビスフェノールCのみのポリカーボネート樹脂、ビスフェノールCとビスフェノールAの混合物あるいは共重合体のポリカーボネート樹脂を用いることにより、基材層の硬度を向上できる。
また、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、15,000~40,000であることが好ましく、より好ましくは20,000~35,000であり、さらに好ましくは22,500~25,000である。
【0038】
また、積層体フィルムの基材層に含まれるアクリル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレート(MMA)に代表される各種(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、またはPMMAやMMAと他の1種以上の単量体との共重合体であり、さらにそれらの樹脂の複数種が混合されたものが挙げられる。これらのなかでも、低複屈折性、低吸湿性、耐熱性に優れた環状アルキル構造を含む(メタ)アクリレートが好ましい。以上のような(メタ)アクリル樹脂の例として、アクリペット(三菱レイヨン製)、デルペット(旭化成ケミカルズ製)、パラペット(クラレ製)があるが、これらに限定されない。
なお、ポリカーボネート樹脂の表層に上述のアクリル樹脂を積層した積層体を基材として用いると、基材層の表層の硬度を向上させることができる点で好ましい。
【0039】
また、積層体フィルムの基材層は、熱可塑性樹脂以外の成分として添加剤を含んでいても良い。例えば、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、離型剤及び着色剤から成る群から選択された少なくとも1種類の添加剤などである。また、帯電防止剤、蛍光増白剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等を基材層に添加してもよい。
【0040】
積層体フィルムの基材層においては、熱可塑性樹脂が80質量%以上、含まれていることが好ましく、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上の熱可塑性樹脂が含まれている。また、基材層の熱可塑性樹脂のうち、ポリカーボネート樹脂が80質量%以上、含まれていることが好ましく、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上のポリカーボネート樹脂が含まれている。
【0041】
積層体フィルムの基材層の厚さは、特に制限されないが、好ましくは30~1000μm(1mm)であり、より好ましくは50~700μm、特に好ましくは100~500μmである。また、2層以上の基材層が設けられていても良く、複数の基材層が設けられている場合、基材層の合計厚さは、例えば100~1000μm、好ましくは200~500μm程度である。
【0042】
本発明の積層体フィルムは、以下のように製造される。まず、基材層の製造においては、樹脂組成物等の材料を従来の手法で層状(シート状)に加工する。例えば、押出成形、キャスト成形による方法である。押出成形の例としては、樹脂組成物のペレット、フレークあるいは粉末を押出機で溶融、混練後、Tダイ等から押出し、得られる半溶融状のシートをロールで挟圧しながら、冷却、固化してシートを形成する方法が挙げられる。
【0043】
そして単一層、もしくは複数の層を有する基材層の外側表面にコーティング組成物を塗布・乾燥して、コーティング層を形成させる。
【0044】
積層体フィルムにおいて、基材層の厚さは0.1mm~1.0mmであることが好ましい。基材層の厚さは、例えば、0.2mm~0.8mm、あるいは0.3mm~0.7mmである。
積層体フィルムにおいて、コーティング層の厚さは1.0μm~10μmであることが好ましい。コーティング層の厚さは、例えば、2.0μm~8.0μm、あるいは3.0μm~5.0μmである。
【0045】
積層体フィルムの構造は、例えば、
図1に示す通りである。
図1にて例示される積層体フィルム10においては、主としてハードコート組成物により、好ましくはハードコート組成物のみに形成されるコーティング層12が、ポリメチルメタクリレート層(PMMA樹脂層)20とポリカーボネート層(PC樹脂層)22とを有する基材層のPMMA層側の表面上に積層されている。
【0046】
[硬化フィルム]
本発明の硬化フィルムは、上述の積層体フィルムを硬化させて得られるものである。すなわち、積層体フィルムは、硬化性のコーティング層を有するものであり、積層体フィルムのコーティング層を硬化させると硬化フィルムを得ることができる。その硬化手法としては光硬化、及び熱硬化などの手法が採用され得る。
【0047】
上述のハードコート組成物の硬化後の性状からも明らかであるように、本発明の硬化フィルムのコーティング層側の表面は、優れた性状を有する。すなわち、硬化フィルムのコーティング層側の表面においては、高い鉛筆硬度、好ましくはJIS K 5600-5-4:1999に基づくB以上の鉛筆硬度、高い耐擦傷性、及び、優れた密着性、例えば、JIS K 5600-5-6:1999における評価結果が0レベルである密着性、がいずれも実現される。
【実施例0048】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
【0049】
[積層体の製造]
まず、コーティング組成物(コーティング溶液)を以下の表2の各成分を混合することにより調製した。ここで使用したアクリロイルポリマーは、以下の通りである。
(a)アクリロイルポリマーA:根上工業製アートキュアRA-3602MI
(側鎖に二重結合を含有するアクリルポリマー:(メタ)アクリル当量300g/eq:二重結合当量300g/eq)
(b)アクリロイルポリマーB:大阪有機化学工業製Star-501
(デンドリマーポリアクリレート(末端にアクリレート基を有する多分岐(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)連結型)ポリアクリレート:(メタ)アクリル当量120g/eq)
(c)アクリロイルポリマーC:根上工業製アートキュアOAP-5000
(側鎖に二重結合を含有するアクリルポリマー:(メタ)アクリル当量2000g/eq:二重結合当量2000g/eq)
(d)アクリロイルポリマーD:根上工業製アートレジンUN-3320HC
(ウレタンアクリレートオリゴマー:(メタ)アクリル当量250g/eq)
また、コーティング溶液に添加した無機酸化物の粒子(ナノシリカ)は、以下の通りである。
ナノシリカ:日産化学株式会社製のMEK-AC-2140Z(オルガノシリカゾル(平均粒子径10~15nm:表面改質型のシリカゾル)
さらに、得られた混合液に希釈溶剤としてMEKを加え、固形分30重量%に調製したコーティング溶液を、PC/PMMA共押出しフィルム(PC:ユーピロンE-2000、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、PMMA:アルトグラスV020、アルケマ社製;PMMA層の厚み45μm:合計厚み0.3mm)のPMMA側にコーティングした。
コーティング工程は、#16巻線ロッドを用いて行い、塗布したコーティング溶液を120℃で5分間、乾燥させた。乾燥させたコーティング溶液によって、約7マイクロメートルの厚さのコーティング層が形成された。次いで、コーティング層を、Fusion Hバルブ(Fusion UV Systems)を用いて、1.8m/分の条件で空気を送りつつ、90%の出力で硬化させた。紫外線照射の条件は、1000mJ/cm2であった。
【0050】
[性状の評価]
こうして得られた硬化後の積層体、及び、コーティング層を乾燥させて硬化させる前の状態の積層体(未硬化の積層体)について、以下のように性状を評価した。
【0051】
<未硬化状態でのタックフリー性>
未硬化の積層体のタックフリー性を、指触評価により評価した。
【0052】
<未硬化状態でのマスキング剥離後の光沢性(外観)>
ポリカーボネート樹脂とPMMA樹脂とを積層させた基材層を有する試験片を作製し、試験片の基材層のPMMA樹脂側の表面上に、厚さが7μmのコーティング層がハードコート組成物によって形成されるようにハードコート組成物を塗工し、120℃で5分間、乾燥させた。
そして硬化していないコーティング層の表面に、ポリプロピレン製の厚さ30μmのマスキングフィルムを貼付させ、マスキングフィルムの上から30kg/m2の圧力をかけ24時間経過した後に、マスキングフィルムを剥離し、コーティング層の表面の表面粗さSa(ISO25178に準拠)を株式会社日立ハイテクロノジーズ製走査型白色干渉顕微鏡VS1530により測定した。
表面粗さSaの値が、0.01μm未満である実施例、及び、比較例について、外観が良好と評価した。
【0053】
<未硬化状態での成形性(圧空成形性)>
ポリカーボネート樹脂とPMMA樹脂とが積層された基材層を有する試験片を作製し、試験片の基材層のPMMA樹脂側の表面上に、厚さが7μmのコーティング層がハードコート組成物によって形成されるようにハードコート組成物を塗工し、120℃で5分間、乾燥させた。
そして、210mm×297mm×0.3mm(厚さ)に裁断して得られた、積層体の試料において、積層体を190℃で40秒間予熱し、13mmの深絞り高さを有するとともに縦と横のサイズがいずれも30mmである直角形状の突起部を含む金型に、基材層のポリカーボネート樹脂側の表面が接するように試料を配置し、3.5MPaの高圧空気を用いて積層体の試料の圧空成形を行なった。
こうして得られた圧空成形体が、金型の直角形状部に接する領域の半径Rが3mm以内であり、かつ該圧空成形体上のコーティング層にクラックが発生しなかった実施例、及び、比較例について、成形性が良好と評価した。
なお、ポリカーボネート樹脂とPMMA樹脂とが積層された積層体である基材層において、上述の通り、PMMA層の厚みは45μmであり、全体の厚さは0.3mmであった。
【0054】
<硬化後の耐擦傷性>
硬化後のコーティング層の表面の上に、#0000のスチールウールを100gf/cm2の圧力下で15回往復させ、擦傷させた。JIS K 7136:2000に基づき、予め擦傷試験の前に測定したヘーズ値と、擦傷試験の後にJIS K 7136:2000に基づいて測定したヘーズ値との差であるヘーズ変化の絶対値(ΔH)を算出し、評価した。ΔHの値が3.0%未満である実施例、及び、比較例について、耐擦傷性が良好と評価した。
【0055】
<硬化後の耐薬品性>
硬化後のコーティング層の表面に、ニュートロジーナSPF100を塗布し、80℃で1時間経過後に、外観を目視で観察した。表面に異常のない実施例、及び、比較例について、耐薬品性が良好と評価した。
【0056】
<硬化後の鉛筆硬度>
JIS K 5600-5-4:1999の条件に基づき測定を行い、傷の入らないもっとも硬い鉛筆の番手で評価した。
<密着性>
JIS K5600-5-6:1999の評価方法によって評価した。評価結果が0である実施例、及び、比較例について、密着性が良好と評価した。
各実施例、及び、比較例の積層体のフィルムの性状の測定結果は、表2の通りであった。
【表2】