(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113071
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】強化された細胞病理学的細胞採取のための細胞および/または組織片の剥離を誘導する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20240814BHJP
A61B 10/02 20060101ALI20240814BHJP
A61B 10/04 20060101ALI20240814BHJP
A61B 8/00 20060101ALI20240814BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20240814BHJP
A61B 1/018 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A61B10/00 500
A61B10/02
A61B10/04
A61B8/00
A61B1/00 530
A61B1/018 515
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024091115
(22)【出願日】2024-06-05
(62)【分割の表示】P 2021500509の分割
【原出願日】2019-03-25
(31)【優先権主張番号】62/793,061
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/752,823
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/647,133
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522124839
【氏名又は名称】アデノサイト リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】ルテンバーグ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】アダム,ダン
(72)【発明者】
【氏名】ローブ,エマニュエル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】器官、特に膵臓における正常細胞の背景から希有な細胞を検出するために、改良された細胞採取および組織片採取技術を提供する。
【解決手段】超音波造影剤を投与してマイクロバブルを導入した後、広帯域超音波エネルギーに暴露させることによって、膵臓細胞および場合によって組織片を乖離かつ剥離させる。次に膵液分泌を誘導する薬物であるセクレチンを注入した後、膵液を内視鏡的に採取し、試料中の細胞または組織片を形態学的または分子バイオマーカを使用して細胞異常の有無を明らかにする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の超音波照射された器官に直接由来する、分離された体液試料であり、
前記器官の液と前記器官からの連なった細胞とを含む、体液試料。
【請求項2】
前記器官から剥離した細胞塊を含む、請求項1に記載の体液試料。
【請求項3】
前記連なった細胞が、上皮組織の断片又は細胞の薄膜を含む、請求項1又は2に記載の体液試料。
【請求項4】
1つ以上の組織片を含む、請求項3に記載の体液試料。
【請求項5】
前記器官からの無傷の組織片と、場合によって前記器官の上皮と、を含む、請求項1-4のいずれか一項に記載の体液試料。
【請求項6】
前記器官からの上皮またはその他の細胞を、超音波照射されていない対象に由来する試料の上皮またはその他の細胞のレベルと比較して2倍を超えて富化されたレベルで含む、請求項1-5のいずれか一項に記載の体液試料。
【請求項7】
50mlの量を含む、請求項1-6のいずれか一項に記載の体液試料。
【請求項8】
前記対象において前記器官からの細胞又は上皮組織片の剥離が誘発されるように、
ある量の超音波造影剤を前記対象に投与すること;及び
前記対象の前記器官を、前記超音波造影剤の安定したキャビテーションを誘発するのに有効な量の超音波エネルギーで超音波照射すること
を含む方法によって得られる、請求項1-7のいずれか一項に記載の体液試料。
【請求項9】
膵液中の膵臓細胞を含み、該膵臓細胞が剥離された膵臓の導管細胞及び/又は腺房細胞である、請求項1-8のいずれか一項に記載の体液試料。
【請求項10】
痰中の剥離した肺細胞を含む、請求項1-8のいずれか一項に記載の体液試料。
【請求項11】
尿中の剥離した膀胱細胞及び膀胱組織を含む、請求項1-8のいずれか一項に記載の体液試料。
【請求項12】
対象の超音波照射された器官に直接由来する、分離された体液試料であり、
前記器官の液と前記器官からの上皮組織片とを含む、体液試料。
【請求項13】
器官における形成異常又はがんを検出するための方法であって、
対象の超音波照射された器官に直接由来する、分離された体液試料を提供すること;及び
前記試料中に剥離した細胞の病理学検査を実施すること、を含む方法。
【請求項14】
前記試料が、連なった細胞及び/又は少なくとも1つの上皮組織の断片を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記実施が、細胞形態学的分析、組織形態学的分析、分子生物学的分析、及び分子バイオマーカーを使用して細胞の異常の有無を明らかにすることの1以上の実施を含む、請求項13又は14の方法。
【請求項16】
前記器官が、膵臓であり、
前記試料が、膵液と、連なった膵管細胞及び/又は少なくとも1つの上皮組織片の断片とを含み、
前記試料が膵臓がん細胞又は膵臓形成異常細胞を含有するのか又は非病理的であるのかを決定するために前記試料を分析する手順をさらに含む、請求項13-15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記器官が、膀胱であり、
前記試料が、尿と、少なくとも1つの上皮組織の断片とを含み、
前記試料ががん細胞又は形成異常細胞を含有するのか又は非病理的であるのかを決定するために前記試料を分析する手順をさらに含む、請求項13-15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記器官が、肺であり、
前記試料が、痰と、少なくとも1つの上皮組織の断片とを含み、
前記試料ががん細胞又は形成異常細胞を含有するのか又は非病理的であるのかを決定するために前記試料を分析する手順をさらに含む、請求項13-15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、それぞれの内容が参照により本明細書に組み込まれている、2018年3月
23日出願の米国特許仮出願第62/647,133号、および2018年10月30日
出願の米国特許仮出願第62/752,823号、および2019年1月16日出願の米
国特許仮出願第62/793,061号の権利を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
成人のがんの95%以上は癌腫であり、これは、がんが器官の上皮内層から生じること
を意味する。多くの場合、これらの上皮は周囲体液と直接触れており、上皮再生の正常な
過程の一環として上皮細胞は絶え間なくこの周囲体液中に剥落している。例としては、膵
液中に絶え間なく剥落している膵管細胞、痰の中に絶え間なく剥落している肺細胞、およ
び尿中に絶え間なく剥落している膀胱細胞がある。対象となる上皮に存在することがある
形成異常およびがん細胞も、正常な上皮細胞と共に周囲体液中に自然に剥落する。多くの
場合、これらの体液は、非侵襲または低侵襲な方法で容易にサンプリングする可能性があ
る。これらのサンプリングされた体液中でみつかった剥離細胞は、次いで、理論的には形
成異常およびがんを早期検出することができる、その後の細胞病理学者による顕微鏡評価
のために、標準的な実験技術を使用して濃縮することができる。周囲体液中に剥離した細
胞の細胞病理学検査は、概して高い特異度を有する一方で、形成異常およびがんの検出の
ためのその感度は、上皮細胞が周囲体液中へ自然に剥離する速度が遅いため、試料は細胞
をわずかしか含まず、病理学者が検査するには不十分なものとなることによって、限定さ
れることが多い。これによって、形成異常およびがんの細胞病理学的検出は、現在のとこ
ろ、特に、縦隔、胸膜、心膜、腹膜、肺、胸、唾液腺、髄膜、膵管、膵嚢胞、腎臓、肝臓
、膀胱、および卵巣に限定されている。
【0003】
例えば、膵臓は様々な細胞型から構成されており、そのそれぞれが異なる種類のがんの
元となりうる。膵管腺癌(PDAC)は、米国においてがん関連の死因の第4位である。
これは、診断が、多くの場合、転移期に下され遅いこと、その生態が攻撃的であること、
そして既知の化学療法に対して部分的にしか応答しないことが原因である。膵液の細胞学
的評価は、膵臓がんの診断において79%を超える高い感度であることがわかっている。
【0004】
膵臓がんは、通常、初期症状がほとんどないため、発見されるまでに進行していること
が多い。この理由から、2030年までに、膵臓がんは米国においてがんの死因の第2位
となると予測されている(1)。
【0005】
膵臓のスクリーニングおよびサーベイランスは、膵臓がんの家族歴がある、膵臓がん感
受性遺伝子変異がある、または膵嚢胞が偶然に検出されたため、膵臓がんの発生リスクが
高まった患者に対して実施される。
【0006】
現行の膵臓がんの検査には、超音波内視鏡検査(EUS)および内視鏡磁気共鳴イメー
ジング/磁気共鳴胆道膵管造影(ERCP)がある。これらの検査は、膵嚢胞の検出は正
確であるが(2、3、4)、通常のサーベイランスを行ったにもかかわらず膵臓がんを発
症する患者の数によって証明されるように、小さな固形膵臓がんの検出には適していない
。このことが、早期検出の逸機を招いている(5)。
【0007】
疾患の診断で不可欠な臨床診断基準である細胞病理学が、膵臓がんの診断モダリティと
して検討されてきた。例えば、1974年に、Yoshihiko Endoと共同研究
者らが、十二指腸内視鏡による膵液の採取物からの膵臓がんの細胞診を最初に報告してい
る(6)。彼らの報告では、感度は79%であった。その後数十年間、多くの研究者らが
膵液の細胞学的検査を使用して膵臓悪性腫瘍を特定しようとしてきたが、感度範囲は一貫
して約70~80%にとどまっている(7、8)。何年もの間、多数の内視鏡検査医が認
めてきた感度の不足は、おそらく典型的な細胞採取および分析方法の弱点を反映している
。さらに、バイオアッセイでの組織学的分析のために得られた体液試料の細胞または組織
片のレベルが低いことが、複合型のバイオアッセイについて存在する問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、そのような診断検査の特異度を高めるために、採取およびその後の分析のため
に、様々な種類の器官および組織からの剥離細胞の収量を上げることが必要である。組織
区分の正面図を得るために用いることができる無傷組織の剥離を誘導することも必要であ
る。特に膵臓がんについては、膵臓における正常細胞の背景から希有な細胞を検出するた
めに、改良された細胞採取および組織片採取技術が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に記載の本発明の実施形態は、様々な手段によりこれまで観察された割合より
もはるかに高い割合で細胞ならびに/または組織片およびその他の分子を得る、方法およ
びシステムを提供する。実施形態において、該方法は、患者の循環系においてマイクロバ
ブルを形成する超音波造影剤を投与すること、および対象を超音波照射することを含む。
マイクロバブルを導入した後、膵臓などの器官または組織を広帯域超音波エネルギーに曝
露させる。本発明の実施形態の超音波適用は、低強度非集束超音波(LINFU)と記さ
れることもある。本発明の実施形態において、マイクロバブルによって発揮されたエネル
ギーと組み合わさった超音波エネルギーによって、膵臓細胞および場合によって組織片を
解離かつ/または剥離させる。膵臓試料を得る場合、続いて患者に、膵液分泌を誘導する
薬物であるセクレチンを注入する。これに関して、剥脱した細胞および組織片の一部が膵
液中に沈着する可能性があり、次いで、膵液を内視鏡的に採取する。得られた富化された
試料中の細胞および/または組織片を、次いで、形態学的にかつ/または分子バイオマー
カーを使用して分析して、細胞の異常の有無を明らかにする。
【0010】
これらの手順は、膵液中に放出させる細胞の総数を劇的に増加させることができる。さ
らに、本明細書に記載の手順は、膵臓からの無傷の組織片の分離を誘導しうる。
【0011】
これらの手順は、縦隔、胸膜、心膜、腹膜、肺、胸、唾液腺、髄膜、膵管、膵嚢胞、腎
臓、肝臓、膀胱、または卵巣などの、その他の器官または体の部位に適用される場合、そ
のような器官の周囲体液中に放出させる細胞の総数を劇的に増加させうる。さらに、本明
細書に記載の手順は、上記の代表的な器官からの無傷の組織片の分離をさらに誘導しうる
。例えば、本明細書に記載の手順は、周囲の痰の中への肺細胞の剥離を誘導するために、
または周囲の尿中への膀胱細胞および膀胱組織の剥離を誘導するために利用される。
【0012】
対象の器官から細胞試料を得る方法であって、
対象において器官からの細胞または上皮組織片の剥離が誘発されるように、
ある量の超音波造影剤を対象に投与すること;および
対象の器官を、超音波造影剤の安定したキャビテーションを誘発するのに有効な量の超音
波エネルギーで超音波照射すること
を含む方法を提供する。
【0013】
また、対象から膵臓細胞を得る方法であって、
対象において膵臓の管への細胞の剥離を誘発するように、
ある量の超音波造影剤を対象に投与すること;および
対象の膵臓を、超音波造影剤の安定したキャビテーションを誘発するのに有効な量の超音
波エネルギーで超音波照射すること
を含む方法も提供する。
【0014】
また、対象から膵臓細胞を得る方法であって、
対象の膵臓を、対象において膵臓の管への細胞の剥離を誘発するのに有効な量の単一周波
数の超音波エネルギーで超音波照射すること
を含む方法も提供する。
【0015】
また、対象から膵臓細胞を得る方法であって、
対象の膵臓を、対象において非対称な超音波を膵臓の所定のポイントに到達させ膵臓の管
への細胞の剥離を誘発するのに有効な量の、多周波アレイからの超音波エネルギーで超音
波照射すること
を含む方法も提供する。
【0016】
また、膵臓障害について対象を治療する方法であって、
a)本明細書に記載の方法によって、対象が対象の膵臓に膵臓形成異常細胞または膵臓が
ん細胞を有するかどうかを決定すること、および
b)a)において対象の膵臓に膵臓形成異常細胞または膵臓がん細胞を有することがわか
った対象において、化学療法、放射線療法、免疫療法、または膵臓切除術を実行すること
を含む方法も提供する。
【0017】
実施形態において、対象が対象の膵臓に膵臓形成異常細胞または膵臓がん細胞を有する
かどうかを決定することは、細胞形態学的分析、組織形態学的分析、または生体分子マー
カー分析のうちの1つまたは複数を通して実行される。
【0018】
また、対象に対するアッセイ手順において組織からの細胞試料採取の有効性を向上させ
る方法であって、対象において組織からの細胞または組織断片の剥離が誘発されるように
、組織から細胞試料を採取する前に、対象の組織を超音波造影剤の安定したキャビテーシ
ョンを誘発するのに有効な量の超音波エネルギーで超音波照射すること、および、次いで
対象において組織から細胞試料を採取することを含む方法も提供する。
【0019】
また、細胞または組織ががん性もしくは前がん性細胞または組織を含むかどうかを決定
するために、対象からの細胞または組織の試料に対してアッセイを実行する方法であって
、
a)ある量の超音波造影剤を対象に投与し、対象において器官からの細胞または上皮組織
断片の剥離が誘発されるように、超音波造影剤の安定したキャビテーションを誘発するの
に有効な量の超音波エネルギーで対象の器官を超音波照射し、剥離した細胞または組織の
試料を採取する方法によってあらかじめ得た細胞または組織の試料を受け取ること;なら
びに;
b)細胞または組織が、がん性もしくは前がん性細胞または組織を含むかどうかを決定す
るために、細胞形態学的分析、組織形態学的分析、または生体分子マーカー分析のうちの
1つを実行すること
を含む方法も提供する。
【0020】
また、膵臓における形成異常およびがん性細胞の早期検出のための方法であって、細胞
の剥離を誘導するための、膵臓に向けた超音波エネルギーの適用と、それに続く分子検査
および顕微鏡的形態学的検査のための、剥離した細胞および細胞塊を含有する膵液の内視
鏡的採取とを含む方法も提供する。
【0021】
また、組織または器官を超音波照射された対象から直接得られたものであり、組織また
は器官からの上皮またはその他の細胞を、超音波照射されていない対象から得られた試料
における上皮またはその他の細胞のレベルと比較して2倍を超えて富化されたレベルで含
む、分離された体液試料も提供する。
【0022】
また、対象から、連なった膵管細胞の試料を得る方法であって、
超音波エネルギーでの超音波照射の開始の前または後の1時間以内に、膵液分泌を誘発す
るのに有効な量のセクレチンポリペプチドを対象に投与すること;対象において対象の膵
臓の所定のポイントをある量の超音波エネルギーで超音波照射し、膵臓の管への細胞の剥
離を誘発すること、および、次いで
連なった膵管細胞を含有する体液の試料を対象から取り出すこと
を含む方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】下記の実施例1に記載したように、動物を超音波照射した後に採取した膵液から得た、大きな膵臓上皮組織片を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
対象の器官から細胞試料を得る方法であって、
対象において器官からの細胞または上皮組織片の剥離が誘発されるように、
ある量の超音波造影剤を対象に投与すること;および
対象の器官を、超音波造影剤の安定したキャビテーションを誘発するのに有効な量の超音
波エネルギーで超音波照射すること
を含む方法を提供する。
【0025】
実施形態において、細胞は上皮細胞を含む。
【0026】
実施形態において、器官の上皮の上皮組織片が剥離される。
【0027】
実施形態において、器官は、膀胱、胸、肝臓、腎臓、肺、甲状腺、消化管、または膵臓
である。細胞試料が採取される器官は、標的器官として既知のものでありうる。
【0028】
実施形態において、超音波照射は、標的器官以外の器官を超音波照射しないように適用
される。実施形態において、超音波照射は、標的器官以外の器官では安定したキャビテー
ションを誘発しないように適用される。実施形態において、超音波造影剤は、選択的に標
的器官に蓄積するように適用される。実施形態において、超音波照射および/または超音
波造影剤は、安定したキャビテーションをまぎれもなく標的器官において選択的に誘発す
るように、時間的に適用される。実施形態において、超音波照射および/または超音波造
影剤は、安定したキャビテーションをまぎれもなく標的器官において選択的に誘発するよ
うに、空間的に適用される。実施形態において、超音波照射および/または超音波造影剤
は、安定したキャビテーションをまぎれもなく標的器官において選択的に誘発するように
、時間的および空間的に適用される。実施形態において、超音波照射は、標的器官だけを
選択的に超音波照射するように、時間的に適用される。実施形態において、超音波照射は
、標的器官だけを選択的に超音波照射するように、空間的に適用される。実施形態におい
て、超音波照射は、標的器官だけを選択的に超音波照射するように、時間的および空間的
に適用される。
【0029】
実施形態において、該方法は、細胞を含有する体液の試料を対象から取り出すことをさ
らに含む。
【0030】
実施形態において、体液の試料は、器官の嚢胞から得られる。
【0031】
実施形態において、体液の試料は、器官の分泌物から得られる。
【0032】
また、対象から膵臓細胞を得る方法であって、
対象において膵臓の管への細胞の剥離が誘発されるように、
ある量の超音波造影剤を対象に投与すること;および
対象の膵臓を、超音波造影剤の安定したキャビテーションを誘発するのに有効な量の超音
波エネルギーで超音波照射すること
を含む方法も提供する。
【0033】
実施形態において、超音波エネルギーは、0.03のメカニカルインデックスを超えて
いない、または0.05のメカニカルインデックスを超えていない。
【0034】
また、対象から膵臓細胞を得る方法であって、
対象の膵臓を、対象において膵臓の管の中への細胞の剥離を誘発するのに有効な量の単一
周波数の超音波エネルギーで超音波照射すること
を含む方法も提供する。
【0035】
実施形態において、超音波エネルギーは、0.03から1.3のメカニカルインデック
スである。
【0036】
また、対象から膵臓細胞を得る方法であって、
対象の膵臓を、対象において非対称な超音波を膵臓の所定のポイントに到達させ膵臓の管
への細胞の剥離を誘発するのに有効な量の、多周波アレイからの超音波エネルギーで超音
波照射すること
を含む方法も提供する。
【0037】
実施形態において、超音波エネルギーは、0.03から1.3のメカニカルインデック
スである。
【0038】
また、対象から、連なった膵管細胞の試料を得る方法であって、
超音波エネルギーでの超音波照射の開始の前または後の1時間以内に、膵液分泌を誘発す
るのに有効な量のセクレチンポリペプチドを対象に投与すること;対象の膵臓を、対象に
おいて膵臓の所定のポイントをある量の超音波エネルギーで超音波照射し、膵臓の管への
細胞の剥離を誘発すること;および、次いで、
対象から、連なった膵管細胞を含有する体液の試料を取り出すこと
を含む方法も提供する。連なった細胞は、それぞれの細胞が少なくとも1つの他の細胞に
付着している、2つ以上の細胞である。例えば、上皮組織の断片、または細胞の薄層であ
る。
【0039】
実施形態において、超音波エネルギーは、0.03から1.3のメカニカルインデック
スである。
【0040】
実施形態において、該方法は、超音波エネルギーでの超音波照射の開始の前または後の
1時間以内に、膵液分泌を誘発するのに有効な量のセクレチンポリペプチドまたは膵液分
泌を誘発するその他の物質を対象に投与することをさらに含む。
【0041】
実施形態において、該方法は、ある量の超音波造影剤と共に、該量のセクレチンまたは
膵液分泌を誘発するその他の物質を投与することを含む。
【0042】
実施形態において、セクレチンが投与され、セクレチンはヒトセクレチンである。
【0043】
実施形態において、該方法は、対象においてカテーテルまたはその他の採取装置を膵管
の開口部に置くことをさらに含む。
【0044】
実施形態において、膵管の開口部は、十二指腸乳頭部である。
【0045】
実施形態において、該方法は、カテーテルまたはその他の採取装置を使用して、膵臓分
泌物の試料を得ることをさらに含む。
【0046】
実施形態において、該方法は、試料が膵臓がん細胞もしくは膵臓形成異常細胞を含有す
るのかまたは非病理的であるのかを決定するために、得られた膵臓分泌物の試料を分析す
ることをさらに含む。
【0047】
実施形態において、コンピューター支援の分析が、細胞のがん性または形成異常の同定
において用いられる。実施形態において、細胞形態学的、組織形態学的および/または分
子生物学的分析が、細胞のがん性または形成異常の同定において用いられる。
【0048】
実施形態において、該方法は、膵臓の導管および/または腺房細胞の剥離を誘発するの
に有効である。
【0049】
実施形態において、該方法は、膵臓の上皮組織片の剥離を誘発するのに有効である。
【0050】
実施形態において、該量の超音波エネルギーは、対象の膵臓において安定したキャビテ
ーションを誘発する。
【0051】
実施形態において、該量の超音波エネルギーは、対象の器官内のマイクロバブルのイナ
ーシャルキャビテーションまたは内破を誘発しない。
【0052】
実施形態において、該量の超音波エネルギーは、対象の膵臓内のマイクロバブルのイナ
ーシャルキャビテーションまたは内破を誘発しない。
【0053】
実施形態において、該方法は、対象を超音波照射する間の少なくとも一期間、マイクロ
バブルの内破または超音波造影剤について対象をモニタリングすることをさらに含む。
【0054】
実施形態において、該量の超音波エネルギーは、対象の器官において複数のマイクロバ
ブルを発生させるのに有効である。
【0055】
実施形態において、超音波エネルギーは、対象の器官に集束していない。
【0056】
実施形態において、超音波エネルギーは、対象の膵臓に集束していない。
【0057】
実施形態において、超音波エネルギーは、部分的に集束していない。
【0058】
実施形態において、超音波エネルギーは、対象の器官に集束している。
【0059】
実施形態において、超音波エネルギーは、対象の膵臓に集束している。
【0060】
実施形態において、超音波造影剤は、マイクロスフェアを含む。
【0061】
実施形態において、造影剤は、膵臓に直接施用されず、静脈内に投与される。
【0062】
実施形態において、超音波造影剤は、六フッ化硫黄脂質タイプAマイクロスフェアを含
む。
【0063】
実施形態において、超音波エネルギーは、対象の皮膚に接触しているまたは近接してい
るトランスデューサーから放射され、トランスデューサーの最も近いポイントは、対象の
膵臓表面から2~4インチ以内にある。
【0064】
実施形態において、メカニカルインデックスは、0.03を超えていない。
【0065】
実施形態において、メカニカルインデックスは、0.05を超えていない。
【0066】
実施形態において、超音波照射された超音波エネルギーの周波数は、1.5MHz~3
.0MHzを含む。
【0067】
実施形態において、超音波エネルギーは、対象の皮膚に接触しているまたは近接してい
るトランスデューサーから放射され、トランスデューサーの最も近いポイントは、対象の
膵臓表面から4インチを超えて9インチまでの位置にある。
【0068】
実施形態において、メカニカルインデックスは、0.03を超えていない。
【0069】
実施形態において、メカニカルインデックスは、0.05を超えていない。
【0070】
実施形態において、超音波照射される超音波エネルギーの周波数は、1.0MHz~1
.5MHzを含む。
【0071】
実施形態において、超音波エネルギーは、長さ3~5インチ×幅1~3インチのトラン
スデューサーアレイから放射される。
【0072】
実施形態において、超音波エネルギーは、イメージングプローブおよび超音波イメージ
ングシステムから放射される。
【0073】
実施形態において、超音波エネルギーは、体積測定プローブおよび超音波イメージング
システムから放射される。
【0074】
実施形態において、超音波エネルギーは、形状が実質的に三角形であるトランスデュー
サーアレイから放射される。
【0075】
実施形態において、超音波エネルギーは、形状が実質的に長方形であるトランスデュー
サーアレイから放射される。
【0076】
実施形態において、超音波エネルギーは、可動性トランスデューサーアレイから放射さ
れる。
【0077】
実施形態において、超音波エネルギーは、本手順の間、キャビテーションをモニタリン
グし位置確認するための幾つかのキャビテーション検出器を含むトランスデューサーアレ
イから放射される。
【0078】
実施形態において、超音波は、ベルトによって対象に装着されているトランスデューサ
ーアレイから放射される。
【0079】
実施形態において、対象は、5分間を超えて、該量の超音波エネルギーで超音波照射さ
れる。
【0080】
実施形態において、対象は、15分未満の間、該量の超音波エネルギーで超音波照射さ
れる。
【0081】
実施形態において、対象は、該量の超音波エネルギーでの超音波照射の開始前1時間以
内に、該量の超音波造影剤を投与される。
【0082】
実施形態において、対象は、該量の超音波エネルギーでの超音波照射の開始前30分以
内に、該量の超音波造影剤を投与される。
【0083】
実施形態において、対象は、該量の超音波エネルギーでの超音波照射の開始から1時間
以内に、該量のセクレチンを投与される。
【0084】
実施形態において、対象は、該量の超音波エネルギーでの超音波照射の開始から30分
以内に、該量のセクレチンを投与される。
【0085】
実施形態において、対象は、該量の超音波エネルギーでの超音波照射の開始前に、該量
のセクレチンを投与される。
【0086】
実施形態において、対象は、該量の超音波エネルギーでの超音波照射の開始後に、該量
のセクレチンを投与される。
【0087】
実施形態において、対象は、該量の超音波エネルギーでの超音波照射の終了後10分を
超えないうちに、該量のセクレチンを投与される。
【0088】
実施形態において、対象は、該量の超音波エネルギーでの超音波照射の間に、該量のセ
クレチンを投与される。
【0089】
実施形態において、対象は、該量のセクレチンと超音波造影剤とを同時に投与される。
【0090】
実施形態において、超音波イメージングは、器官全般にわたりまたは膵臓全般にわたり
超音波エネルギーを放射するトランスデューサーの配置を支援するために使用される。
【0091】
実施形態において、超音波イメージングは、対象においてカテーテルまたはその他の採
取装置を膵管の開口部に配置するのを支援するために使用される。
【0092】
実施形態において、超音波イメージングは、対象においてカテーテルまたはその他の体
液採取装置を器官にまたは器官に近接して配置するのを支援するために使用される。
【0093】
実施形態において、対象は、超音波造影剤を投与されない。
【0094】
実施形態において、超音波造影剤は、静脈内に投与される。
【0095】
実施形態において、超音波造影剤は、静脈内にのみ投与される。
【0096】
実施形態において、超音波エネルギーは、多周波および/または多相である。
【0097】
実施形態において、対象は、超音波エネルギーを動的に超音波照射される。
【0098】
実施形態において、該量の超音波エネルギーは、第1の側面の複数の位置から超音波照
射される。
【0099】
実施形態において、該量の超音波エネルギーは、第1の側面に対して垂直な第2の側面
の複数の位置から超音波照射される。
【0100】
実施形態において、対象の膵臓は、膵臓の冠状、矢状、または横断面の少なくとも2つ
の異なる位置においてある量の超音波照射を受ける。
【0101】
実施形態において、対象の器官は、器官の冠状、矢状、または横断面の少なくとも2つ
の異なる位置においてある量の超音波照射を受ける。
【0102】
実施形態において、対象は仰臥している。
【0103】
実施形態において、対象はヒトである。
【0104】
また、膵臓障害について対象を治療する方法であって、
a)本明細書に記載の方法によって、対象が対象の膵臓に膵臓形成異常細胞または膵臓が
ん細胞を有するかどうかを決定すること、および
b)a)において対象の膵臓に膵臓形成異常細胞または膵臓がん細胞を有することがわか
った対象において、化学療法、放射線療法、免疫療法、または膵臓切除術を実行すること
を含む方法も提供する。
【0105】
実施形態において、対象が対象の膵臓に膵臓形成異常細胞または膵臓がん細胞を有する
かどうかを決定することは、細胞形態学的分析、組織形態学的分析、または生体分子マー
カー分析のうちの1つまたは複数を通して実行される。
【0106】
また、対象に対するアッセイ手順において組織からの細胞試料採取の有効性を向上させ
る方法であって、対象において組織からの細胞または組織断片の剥離が誘発されるように
、組織から細胞試料を採取する前に、対象の組織を超音波造影剤の安定したキャビテーシ
ョンを誘発するのに有効な量の超音波エネルギーで超音波照射すること、および、次いで
対象において組織から細胞試料を採取することを含む方法も提供する。
【0107】
実施形態において、組織は、上皮細胞を含む。
【0108】
また、細胞または組織ががん性もしくは前がん性細胞または組織を含むかどうかを決定
するために、対象からの細胞または組織の試料に対してアッセイを実行する方法であって
、
a)ある量の超音波造影剤を対象に投与し、対象において器官からの細胞または上皮組織
断片の剥離が誘発されるように、超音波造影剤の安定したキャビテーションを誘発するの
に有効な量の超音波エネルギーで対象の器官を超音波照射し、剥離した細胞または組織の
試料を採取する方法によってあらかじめ得た細胞または組織の試料を受け取ること;なら
びに;
b)細胞または組織ががん性もしくは前がん性細胞または組織を含むかどうかを決定する
ために、細胞形態学的分析、組織形態学的分析、または生体分子マーカー分析のうちの1
つを実行すること
を含む方法も提供する。
【0109】
実施形態において、該方法は、対象において器官から細胞または上皮組織片の剥離が誘
発されるように、該量の超音波造影剤を対象に投与し、対象の器官を超音波造影剤の安定
したキャビテーションを誘発するのに有効な量の超音波エネルギーで超音波照射すること
、および剥離した細胞または組織の試料を採取することをさらに含む。
【0110】
また、膵臓における形成異常およびがん性細胞の早期検出のための方法であって、細胞
の剥離を誘導するための、膵臓に向けた超音波エネルギーの適用と、それに続く分子検査
および顕微鏡的形態学的検査のための、剥離した細胞および細胞塊を含有する膵液の内視
鏡的採取とを含む方法も提供する。
【0111】
実施形態において、膵液中への細胞の剥離を増進させるために膵臓に向けた超音波エネ
ルギーは、患者の体の外部に適用される。
【0112】
実施形態において、膵液中への細胞の剥離を増進させるために膵臓に向けた超音波エネ
ルギーは、内視鏡的に適用される。
【0113】
実施形態において、剥離を増進させるための超音波エネルギーの投与は、膵液の産生を
増加させるホルモンであるセクレチンの投与と組み合わされる。
【0114】
実施形態において、膵液は、ニューラルネットワークに基づくコンピューター支援顕微
鏡検査システムの援助で検査される。
【0115】
また、組織または器官を超音波照射された対象から直接得られたものであり、組織また
は器官からの上皮またはその他の細胞を、超音波照射されていない対象から得られた試料
における上皮またはその他の細胞のレベルと比較して2倍を超えて富化されたレベルで含
む、分離された体液試料も提供する。
【0116】
実施形態において、対象は、組織または器官の超音波照射の間に存在する超音波造影剤
も投与された。
【0117】
実施形態において、試料を対象から直接得る前に、対象の膵臓を超音波照射し、セクレ
チンを対象に投与した。
【0118】
実施形態において、器官は、膀胱、胸、肝臓、腎臓、肺、甲状腺、消化管、または嚢胞
である。得られる目的の細胞、例えば体からの体液試料における異常細胞の収量を上げる
ために、本発明は、超音波エネルギーの適用を、好ましくは診断目的の安全なレベル(例
えば、1.9以下のメカニカルインデックス(「MI」))で利用する。実施形態におい
て、対象は、0.01のMIの超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において
、対象は、0.02のMIの超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、
対象は、0.03のMIの超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対
象は、0.04のMIの超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象
は、0.05のMIの超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は
、0.06のMIの超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、
0.07のMIの超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、0
.08のMIの超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、0.
09のMIの超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、0.1
のMIの超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、0.11の
MIの超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、0.12のM
Iの超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、0.13のMI
の超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、0.14のMIの
超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、0.15のMIの超
音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、0.16のMIの超音
波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、0.17のMIの超音波
エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、0.18のMIの超音波エ
ネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、0.19のMIの超音波エネ
ルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、0.2のMIの超音波エネルギ
ーで超音波照射される。実施形態において、対象は、0.3のMIの超音波エネルギーで
超音波照射される。実施形態において、対象は、0.4のMIの超音波エネルギーで超音
波照射される。実施形態において、対象は、0.5のMIの超音波エネルギーで超音波照
射される。実施形態において、対象は、0.6のMIの超音波エネルギーで超音波照射さ
れる。実施形態において、対象は、0.7のMIの超音波エネルギーで超音波照射される
。実施形態において、対象は、0.8のMIの超音波エネルギーで超音波照射される。実
施形態において、対象は、0.9のMIの超音波エネルギーで超音波照射される。実施形
態において、対象は、1.0のMIの超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態に
おいて、対象は、1.1のMIの超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態におい
て、対象は、1.2のMIの超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、
対象は、1.3のMIの超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象
は、1.4のMIの超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、
1.5のMIの超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、1.
6のMIの超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、1.7の
MIの超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、1.8のMI
の超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、1.9のMIの超
音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、2.0のMIの超音波
エネルギーで超音波照射される。
【0119】
患者は、細胞採取前のある期間、超音波エネルギーに曝される。実施形態において、対
象は、1分間、超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、2分
間、超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、3分間、超音波
エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、4分間、超音波エネルギー
で超音波照射される。実施形態において、対象は、5分間、超音波エネルギーで超音波照
射される。実施形態において、対象は、6分間、超音波エネルギーで超音波照射される。
実施形態において、対象は、7分間、超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態に
おいて、対象は、8分間、超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対
象は、9分間、超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、10
分間、超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、10~15分
間、超音波エネルギーで超音波照射される。実施形態において、対象は、15~20分間
、超音波エネルギーで超音波照射される。
【0120】
実施形態において、超音波照射される超音波エネルギーの周波数は、1.0MHz~1
.5MHzを含む。実施形態において、超音波照射される超音波エネルギーの周波数は、
1.0MHz~3.0MHzを含む。実施形態において、超音波照射される超音波エネル
ギーの周波数は、1.5MHz~3.0MHzを含む。実施形態において、超音波照射さ
れる超音波エネルギーの周波数は、1.5MHz~2.0MHzを含む。実施形態におい
て、超音波照射される超音波エネルギーの周波数は、2.0MHz~3.5MHzを含む
。実施形態において、超音波照射される超音波エネルギーの周波数は、2.5MHz~3
.0MHzを含む。実施形態において、超音波照射される超音波エネルギーの周波数は、
1.0MHz未満を含む。
【0121】
実施形態において、超音波照射される超音波エネルギーの波形は、正のピークより高い
振幅の負のピークを含む。実施形態において、超音波照射される超音波エネルギーの波形
は、正のピークより低い振幅の負のピークを含む。実施形態において、超音波照射される
超音波エネルギーの波形は、正のピークと同じ振幅の負のピークを含む。そのような増強
された超音波は、当技術分野で既知の手段によって獲得することができる。例えば、参照
により本明細書に組み込まれている、2011年3月15日発行の米国特許第7,905
,836号、Dan Adamを参照されたい。
【0122】
実施形態において、超音波照射される超音波エネルギーは、皮膚を発熱させないまたは
対象の組織を発熱させない。実施形態において、超音波照射される超音波エネルギーは、
対象に体の外部に適用される。実施形態において、超音波照射される超音波エネルギーは
、対象の内部から、例えば内視鏡超音波トランスデューサーを介して適用される。
【0123】
本発明の実施形態において、超音波エネルギーの超音波照射は、対象へのマイクロバブ
ル超音波造影剤の投与に先行するまたは並行する。実施形態において、該造影剤は、市販
のLumason(登録商標)である。実施形態において、超音波造影剤は、六フッ化硫
黄脂質タイプAマイクロスフェアを含む。
【0124】
本発明の実施形態において、患者の循環系を循環するマイクロバブルと組み合わさった
超音波エネルギーは、器官、好ましくは器官の上皮からの細胞および場合によって無傷の
組織片の剥離を誘導するのに十分なエネルギーを付与する。
【0125】
膵臓に関する実施形態において、膵液は、上部内視鏡検査手順の間に得られる。例えば
、静脈内にセクレチンを投与した後、膵液を採取するために、使い捨て吸引カテーテルを
十二指腸の中に通す。あるいは、膵液は、内視鏡の吸引チャンネルを通して十二指腸液を
直接吸引することによって採取される。膵液を得た後、その細胞内容物は、例えば、1つ
または複数の標本スライドに固定されうる。標本スライドは、次いで、診断解析のために
処理され、用意されうる。
【0126】
膵臓に関する実施形態において、投与されるセクレチンは、ヒトセクレチンである。実
施形態において、投与されるセクレチンは、ヒト、ウシ、またはブタセクレチンである。
ヒトセクレチンの1つの有用な形態は、「CHIRHOSTIM」の商用名で、ChiR
hoClin,Inc.によって製造されている(Burtonsville、Md.)
。ある実施形態におけるヒトセクレチンは、His-Ser-Asp-Gly-Thr-
Phe-Thr-Ser-Glu-Leu-Ser-Arg-Leu-Arg-Asp-
Ser-Ala-Arg-Leu-Gln-Arg-Leu-Leu-Gln-Gly-
Leu-Val;配列番号1の配列を有する。ブタセクレチンの1つの有用な形態は、C
hiRhoClin,Inc.(Burtonsville、Md.)によって製造され
、Repligen Corporation(Waltham、Mass.)によって
商品名「SECREFLO」で販売されている。ブタセクレチンの別の有用な形態は、「
SECREMAX」の商用名で、ChiRhoClin,Inc.(Burtonsvi
lle、Md.)によって製造されている。ヒトセクレチンの有用な形態は、「SECR
ETIN-HUMAN」の商用名で、ChiRhoClin,Inc.によって製造、販
売されている。セクレチンは、組成物中で薬学的に許容される担体と配合され、そのよう
な組成物として投与してもよい。セクレチンは、当技術分野で既知の任意の手法によって
投与することができる。一実施形態において、セクレチン、またはセクレチンを含有する
組成物は、静脈内に投与される。
【0127】
本明細書で使用される場合、「および/または」は、例えば、選択肢Aおよび/または
選択肢Bについて、(i)選択肢A、(ii)選択肢B、および(iii)選択肢A+選
択肢Bの、別々の実施形態を包含する。
【0128】
本明細書において特段の指示がない限り、または文脈による明確な否定がない限り、本
明細書に記載の様々な要素のすべての組合せは本発明の範囲内にある。
【0129】
本発明の要素またはそれらの好ましい実施形態を紹介する時、冠詞「a」、「an」、
「the」、および「前記(said)」は、要素が1つまたは複数あることを意味する
ことを意図する。「含む(comprising)」、「含む(including)」
、および「有する(having)」という用語は、包括的であり、列記された要素以外
の追加の要素がありうることを意味することを意図する。
【0130】
本明細書において数値範囲を示す場合、その中に含まれる、当該範囲のすべての数値の
一部分、およびすべての個々の整数、および小数点以下第2位までが、本発明の一部とし
て示されていると理解される。よって、1.5~2.0MHzの長さの周波数は、特段の
指示がない限り、周波数1.51~1.61MHzの部分、および周波数1.7~2.0
MHzの部分、および周波数1.65~1.85MHzの部分などを含む。
【0131】
本発明は、上記で概説した実施形態に関連して説明してきたが、当業者には多くの代替
、改変、および変形が明らかとなることは明白である。したがって、上記のような本発明
の例示的な実施形態は、説明のためのものであり、限定するためのものではない。本発明
の精神と範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができる。
【0132】
実験例
【実施例0133】
前もって24時間絶食させたブタに苦痛緩和のために麻酔をかけ、横に倒して仰臥位に
した。蛍光透視法を用いて、採取用カテーテルをブタ膵臓の十二指腸への出口に配置した
。超音波造影剤(Bracco Imaging製Lumason(登録商標);六フッ
化硫黄脂質タイプAマイクロスフェア)を、ブタの静脈内に投与した。動物に超音波を照
射する前に、カテーテル吸引を使用して、膵臓の出口に隣接した(ファーター膨大部/オ
ッディ括約筋の近くの)領域を洗浄した。動物に、動物の膵臓の真上約3~4インチの皮
膚上に配置したトランスデューサーを介して、GE 4VDプローブを使用するGene
ral Electric Vivid E9 Ultrasoundシステムを使用し
て、10分間、0.03のメカニカルインデックスの(1.5Mhz~3.0Mzの周波
数の)超音波を照射した。超音波トランスデューサーの正確な配置は、超音波剤の安定し
たキャビテーションが得られるよう超音波が正確に配置されると膵臓に不透明さが出現す
ることが観察されることをもって、有効とした。超音波照射の終了時に、ブタセクレチン
を動物の静脈内に投与した(0.2~0.4mg/kg体重)。続いて、動物の膵臓が膵
液を産生し、この膵液を、ファーター膨大部/オッディ括約筋の近くの十二指腸に置いた
カテーテルを使用して、50mlの量まで(約5分かけて)採取した。脈動流が観察され
た。
【0134】
続いて、得られた試料の組織学的分析により、個々の細胞ならびに大きな膵臓上皮組織
片(
図1を参照されたい)が超音波技術によって誘導されて膵液中へ剥離したことが示さ
れた。