(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011308
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ロック装置及び収納装置
(51)【国際特許分類】
E05C 21/00 20060101AFI20240118BHJP
B60R 7/06 20060101ALI20240118BHJP
B60R 7/04 20060101ALI20240118BHJP
E05B 83/30 20140101ALI20240118BHJP
E05B 83/32 20140101ALI20240118BHJP
E05C 3/00 20060101ALI20240118BHJP
E05C 3/16 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
E05C21/00 A
B60R7/06 G
B60R7/04 C
E05B83/30 Z
E05B83/32
E05C3/00 B
E05C3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113208
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】曽根田 卓也
【テーマコード(参考)】
2E250
3D022
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ32
2E250LL11
2E250LL12
2E250PP03
2E250PP04
3D022CA07
3D022CA08
3D022CB01
3D022CC02
3D022CC03
3D022CC19
3D022CD14
(57)【要約】
【課題】開閉部が半掛かりの状態でロックされ難く、強い衝撃力を受けた場合等でも、開閉部を閉位置で安定して保持することが可能なロック装置を提供する。
【解決手段】本発明のロック装置(1)は、支持体(10)に対して開口部(11)を閉鎖する閉位置と前記開口部(11)を解放する開位置との間で移動可能に取り付けられる開閉部(20)を、前記閉位置で保持するロック装置(1)であって、前記支持体(10)に設けられる係止部(14)と、前記開閉部(20)にスライド可能に設けられるとともに、前記係止部(14)に対して挿抜されるスライド部材(30)とを有し、前記スライド部材(30)は、スライド本体部(31)と、前記スライド本体部(31)に対して折り曲げ可能に連結されるとともに、前記係止部(14)に係止される先端爪部(40)とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体に対して開口部を閉鎖する閉位置と前記開口部を解放する開位置との間で移動可能に取り付けられる開閉部を、前記閉位置で保持するロック装置であって、
前記支持体に設けられる係止部と、前記開閉部にスライド可能に設けられるとともに、前記係止部に対して挿抜されるスライド部材とを有し、
前記スライド部材は、スライド本体部と、前記スライド本体部に対して折り曲げ可能に連結されるとともに、前記係止部に係止される先端爪部とを有する
ことを特徴とするロック装置。
【請求項2】
前記先端爪部は、前記開閉部の前記閉位置において前記先端爪部が前記係止部に当接する第1姿勢と、前記先端爪部が前記第1姿勢から前記スライド本体部に対して折り曲げられて形成される第2姿勢との間で回転可能に配され、
前記スライド部材に、前記先端爪部を前記第1姿勢に向けて付勢する弾性部材が設けられている
請求項1記載のロック装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の前記ロック装置を有し、車両の車内に設置されることを特徴とする収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉部を閉位置で保持するロック装置、及び、そのロック装置を有する収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の車室内には、一般的に、グローブボックスやコンソールボックス等の収納装置が設置されている。例えば、グローブボックスは、車両のインストルメントパネルにおける助手席側の部分に設けられており、インストルメントパネルに対して開閉するリッド部(蓋部)と、リッド部に一体的に設けられるとともにグローブボックスの収納部を形成するボックス本体部とを有する。この場合、インストルメントパネルは、グローブボックスを回転可能に支持する支持体であり、インストルメントパネルには、グローブボックスを取り付けるための開口部が所要の位置に形成されている。グローブボックスのリッド部(又は、リッド部及びボックス本体部)は、インストルメントパネルに対して開閉する開閉部となる。
【0003】
グローブボックスには、リッド部をインストルメントパネルの開口部が閉鎖される閉位置で保持することにより、リッド部をインストルメントパネルに対してロックするロック装置が設けられている。また、このロック装置を操作するための操作部が、リッド部の外面部分に設けられており、この操作部が運転者等によって操作されることによって、ロック装置によるリッド部のロック状態を解除して、リッド部を閉位置からグローブボックスの収容開口部を完全に開く開位置まで円滑に移動(回転)させることが可能となる。
【0004】
例えば特開2003-13647号公報(特許文献1)には、グローブボックスのサイドロック装置が開示されている。この特許文献1では、インストルメントパネルに、グローブボックスが開閉可能に取り付けられて支持されている。特許文献1のサイドロック装置では、グローブボックスのボックス本体の前面壁に配される操作ハンドル(操作部)と、前面壁の裏側に配される左右一対のラッチ及び筒状部と、ラッチ及び筒状部を付勢する2つの圧縮コイルばねと、操作ハンドルを固定するとともに筒状部及び圧縮コイルばねが装着される回転軸とが設けられている。左右のラッチは、圧縮コイルばねにより、グローブボックスの左右方向の外側に付勢された状態で回転軸に装着される。
【0005】
特許文献1のインストルメントパネルには、ラッチを挿入する左右のロック孔が、グローブボックスが閉じたときのラッチの位置に対応して設けられている。また、左右のラッチの先端には、テーパ面が形成されている。このラッチに設けられたテーパ面を、グローブボックスを開位置から閉位置に移動させてインストルメントパネルの開口部を閉じるときに、インストルメントパネルの内側の側面に接触させることにより、ラッチを、圧縮コイルばねの付勢力に抗して左右方向の内側に移動させることができる。
【0006】
特許文献1には、上述のようなサイドロック装置の採用により、支持体(インストルメントパネル)や収納体(グローブボックスのボックス本体)の形状設定により、ラッチの出没量を左右両サイドで変更する必要が生じたような場合に、装置自体を大幅に改変しなくとも、カム溝やラッチの長さを変更するだけで、その要請に応えることができると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1のサイドロック装置では、グローブボックスを閉位置に移動させたときに、グローブボックスに設けたロック孔に、圧縮コイルばねによって付勢されるラッチが挿入されることによって、グローブボックスを閉位置でロックしている。
【0009】
しかし、特許文献1のラッチの先端には、ラッチを圧縮コイルばねの付勢力に抗して左右方向の内側に移動させるためのテーパ面が形成されている。また、このラッチのテーパ面は、ラッチをグローブボックスのロック孔に挿入してグローブボックスを閉位置でロックしたときに、ロック孔の内部に配置されている。
【0010】
このようにラッチのテーパ面がロック孔内に配置される場合、ラッチの外周面がロック孔の内壁面に接触する接触面積がテーパ面によって小さくなり、ラッチが、所謂半掛かりの状態でロック孔に係合する。このようにラッチがテーパ面により半掛かりの状態で係合する場合、そのグローブボックスを備えた自動車が衝突等によって強い衝撃力を受けた場合等に、例えばラッチにテーパ面が形成されていない場合に比べて、ラッチがロック孔から外れ易くなることが考えられる。
【0011】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、グローブボックス等の収納装置において、開閉部が半掛かりの状態でロックされ難く、強い衝撃力を受けた場合等でも、開閉部を閉位置で安定して保持することが可能なロック装置、及び、そのロック装置を有する収納装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明により提供されるロック装置は、支持体に対して開口部を閉鎖する閉位置と前記開口部を解放する開位置との間で移動可能に取り付けられる開閉部を、前記閉位置で保持するロック装置であって、前記支持体に設けられる係止部と、前記開閉部にスライド可能に設けられるとともに、前記係止部に対して挿抜されるスライド部材とを有し、前記スライド部材は、スライド本体部と、前記スライド本体部に対して折り曲げ可能に連結されるとともに、前記係止部に係止される先端爪部とを有することを特徴とするものである。
【0013】
本発明のロック装置において、前記先端爪部は、前記開閉部の前記閉位置において前記先端爪部が前記係止部に当接する第1姿勢と、前記先端爪部が前記第1姿勢から前記スライド本体部に対して折り曲げられて形成される第2姿勢との間で回転可能に配され、前記スライド部材に、前記先端爪部を前記第1姿勢に向けて付勢する弾性部材が設けられていることが好ましい。
【0014】
更に本発明によれば、上述した構成を備えた前記ロック装置を有し、車両の車内に設置される収納装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、グローブボックス等の収納装置において、開閉部が半掛かりの状態でロックされ難く、強い衝撃力を受けた場合等でも、開閉部を閉位置で安定して保持できるロック装置と、そのロック装置を有する収納装置とを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例のロック装置におけるスライド部材の要部を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示したスライド部材について、先端爪部の第1姿勢の状態をスライド部材の一部を透視して模式的に示す透視斜視図である。
【
図3】
図1に示したスライド部材について、先端爪部を折り曲げた第2姿勢の状態を模式的に示す透視斜視図である。
【
図4】
図1に示したスライド部材の要部が分解された状態を模式的に示す分解斜視図である。
【
図5】グローブボックスのリッド部が開位置から閉位置に移動するときのスライド部材の動きを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら説明する。
本実施例では、自動車の車室に設置される収納装置がグローブボックスであり、そのグローブボックスに対し、グローブボックスのリッド部(蓋部)を閉位置で保持するロック装置が適用される場合について説明する。
【0018】
なお、以下のグローブボックス及びロック装置の説明において、前後方向は、グローブボックスのリッド部が開閉する方向に沿った方向であり、特に、リッド部を開く方向に沿った向きを前方とし、リッド部を閉じる方向に沿った向きを後方とする。左右方向及び上下方向は、それぞれ、リッド部を前方側から見たときのリッド部における幅方向及び高さ方向に沿った方向である。
【0019】
先ず、本実施例のロック装置1が適用されるグローブボックスについて説明する。
グローブボックスは、図示を省略するものの、自動車のインストルメントパネル10の助手席側に取り付けられている。インストルメントパネル10における助手席側の乗員対向部分には、グローブボックスを挿入して設置するための設置開口部11が設けられており(例えば
図5を参照)、この設置開口部11は、インストルメントパネル10内に設けられたグローブボックスの設置空間部12に連通している。
【0020】
また、インストルメントパネル10には、インストルメントパネル10の設置開口部11の周縁部から車体前方側(グローブボックスの後方側)に延びるとともに、グローブボックスの左右両側に配される左右の支持側壁部13が少なくとも設けられている。このインストルメントパネル10における左右の支持側壁部13には、凹状に窪んだ係止部(係止凹部)14が設けられており、この係止部14に、本実施例のロック装置1を形成する後述のスライド部材30が挿入されて係止される。なお本発明の係止部14は、凹状に窪んだ凹部ではなく、左右方向に貫通する係止孔部によって形成されていてもよい。
【0021】
グローブボックスは、インストルメントパネル10に回転可能に支持されている。このグローブボックスは、インストルメントパネル10の設置開口部11を閉鎖する形状を備えたリッド部(蓋部)20と、リッド部20の裏面側に一体的に形成されるとともに小物等を収容可能な収容部を備えたボックス本体部とを有する。なお、リッド部20及びボックス本体部の具体的な形状の説明及び図示は省略する。
【0022】
グローブボックスのリッド部20は、自動車の助手席に対向して配されるリッド本体部と、リッド本体部の裏面側に設けられるとともに本実施例のロック装置1の一部を収容して保持するケース部21と、リッド本体部の表面(助手席対向面)側に設けられるとともにロック装置1を操作する(具体的には、後述するスライド部材30をスライドさせる)操作部とを有する。
【0023】
本実施例において、インストルメントパネル10は、グローブボックスを取り付けて支持する支持体であり、リッド部20又はリッド部20を含むグローブボックスは、インストルメントパネル10の設置開口部11を閉鎖する閉位置と、インストルメントパネル10の設置開口部11を解放する開位置との間で移動可能な開閉部である。この場合、リッド部20が閉位置にあるとき、グローブボックスにおけるボックス本体部の収容部は閉じており、リッド部20が開位置にあるとき、ボックス本体部の収容部は開いている。なお本発明において、インストルメントパネル10の形状、並びに、グローブボックスにおけるリッド部20及びボックス本体部の形状及び大きさは、特に限定されるものではない。
【0024】
本実施例のロック装置1は、インストルメントパネル10に対し、グローブボックスを閉位置で保持するために用いられる。このロック装置1は、インストルメントパネル10においてグローブボックスの左右側方に配される左右の支持側壁部13に設けられる左右一対の係止部14と、リッド本体部にスライド可能に取り付けられて左右の各係止部14に対して挿抜される左右一対のスライド部材30と、左右のスライド部材30を係止部14内に挿入するように左右方向の外側に向けて付勢する付勢部(不図示)と、リッド本体部の表面側に設けられる操作部(不図示)とを有する。
【0025】
この場合、ロック装置1の操作部は、自動車の運転者や乗員等がグローブボックスを開くときに操作される部分であり、操作ハンドルと呼ばれることもある。この操作部は、例えば操作部に対して運転者等が指をかけて手前に引くこと等の操作を行うことにより、左右のスライド部材30を付勢部の付勢力に抗して左右方向の内側に向けてスライドさせる構造を有する。
【0026】
本実施例のロック装置1は、スライド部材30に主要な特徴を有するものであり、ロック装置1の上述した付勢部(不図示)及び操作部(不図示)の具体的な構造は特に限定されるものではなく、付勢部及び操作部には、従来から一般的に知られている構造を利用することが可能である。このため、以下では、ロック装置1におけるスライド部材30と、そのスライド部材30が挿入されて係止される係止部14とについて詳細に説明する。
【0027】
本実施例のロック装置1において、左右一対のスライド部材30は、インストルメントパネル10の係止部14に挿入する方向が互いに反対向きとなるように、リッド部20のケース部21内に取り付けられている。左右の各スライド部材30は、
図1に示すように、ケース部21内で左右方向に沿ってスライド可能に設けられている。また、スライド部材30は、ケース部21の左側壁部又は右側壁部に設けた貫通孔22を介して、スライド部材30の一部がケース部21の外側に飛び出すように配されている。
【0028】
この場合、スライド部材30は、ロック装置1の付勢部(不図示)によって、ケース部21からスライド部材30を突出させる左右方向の外側(
図1の場合、右側)の向きに付勢されている。また、スライド部材30は、ロック装置1の操作部(不図示)が操作されることにより、付勢部の付勢力に抗してスライド部材30をケース部21内に引き込む左右方向の内側(
図1の場合、左側)の向きに移動するように形成されている。
【0029】
本実施例のスライド部材30は、
図4に示すように、左右方向に沿って延びる部分を有するスライド本体部31と、スライド本体部31に対して折り曲げ可能に連結される先端爪部40と、先端爪部40を付勢する弾性部材50と、スライド本体部31に先端爪部40を連結する円柱状の連結ピン55とを有する。本実施例において、弾性部材50は、ねじりコイルばね51により形成されている。なお、弾性部材50は、先端爪部40を付勢できれば、ねじりコイルばね51以外の部材により形成されていてもよい。連結ピン55は、先端爪部40をスライド本体部31に対して回転可能に連結するとともに、弾性部材50(ねじりコイルばね51)を保持している。
【0030】
スライド本体部31の先端部分には、先端爪部40の一部を挿入して保持する保持空間部32が形成されている。また、スライド本体部31には、保持空間部32を上下から挟むように上板部33及び下板部34が配されており、上板部33と下板部34とには、連結ピン55を挿入して保持する第1取付孔35が上下方向に沿って形成されている。
【0031】
本実施例において、スライド本体部31の保持空間部32を形成する内壁面には、先端爪部40が後述する第1姿勢で保持されるときに、先端爪部40の一部を当接させて、先端爪部40を第1姿勢よりも奥側に(
図5の場合では、半時計回り方向に)回転しないように規制することによって第1姿勢を保持する第1規制面36と、先端爪部40が後述する第2姿勢に配されるときに先端爪部40の一部を当接させて、先端爪部40が第2姿勢よりも手前側に(
図5の場合では、時計回り方向に)回転しないように規制することによって第2姿勢を保持する第2規制面37とが設けられている(例えば、
図2を参照)。
【0032】
ここで、先端爪部40の第1姿勢は、
図2と
図5の仮想線とによって示されているように、グローブボックスが閉位置でロックされているときの状態、すなわち、スライド部材30の先端爪部40がインストルメントパネル10の係止部14に挿入されるとともに、係止部14の前側の内壁面14aに当接した状態における先端爪部40のスライド部材30に対する姿勢である。例えば本実施例の場合、先端爪部40の第1姿勢では、先端爪部40は、先端爪部40の第1爪面43がスライド本体部31に対してスライド本体部31の長さ方向(左右方向)に沿ってまっすぐに延びる向きで保持される。
【0033】
先端爪部40の第2姿勢は、
図3と
図5の実線とによって示されているように、グローブボックスが最も開いた開位置で保持されているときの状態、すなわち、スライド部材30の先端爪部40が、インストルメントパネル10の係止部14に挿入されておらず、ロック装置1の付勢部(不図示)によって付勢されて支持側壁部13に当接した状態における先端爪部40のスライド部材30に対する姿勢である。この先端爪部40の第2姿勢では、先端爪部40は、先端爪部40(特に、先端爪部40の第1爪面43)がスライド本体部31の長さ方向(左右方向)に対して折り曲げられた向きで保持される。また第2姿勢では、先端爪部40の後述する第2爪面44が、インストルメントパネル10の支持側壁部13に接触している。
【0034】
先端爪部40は、上述した第1姿勢と第2姿勢との間を回転するように、連結ピン55を介して、スライド本体部31に連結されている。この先端爪部40は、互いに平行で平坦な上面及び下面を有しており、また、先端爪部40の上面から下面までの厚さ寸法(上下方向における寸法)を、スライド本体部31の保持空間部32内に収容可能な一定の大きさとなるように形成されている。
【0035】
本実施例の先端爪部40は、スライド本体部31の保持空間部32に収容されてスライド本体部31に取り付けられる基端部41と、基端部41から延びてインストルメントパネル10の係止部14に挿入される爪本体部42と有する。先端爪部40の基端部41には、ねじりコイルばね51を収容するばね収容部41aと、連結ピン55を挿入して保持する第2取付孔41bとが設けられている。
【0036】
更に、先端爪部40の基端部41には、先端爪部40が第1姿勢に配されるときにスライド本体部31の第1規制面36に当接させる第1当接部41cと、先端爪部40が第2姿勢に配されるときにスライド本体部31の第2規制面37に当接させる第2当接部41dとを有する。この場合、例えば先端爪部40が上述した第1姿勢であるときに、先端爪部40の第1当接部41cは、第2取付孔41bの前方側に左右方向に沿うように配されており、第2当接部41dは、第1当接部41cの右端縁から斜め前方に延びるように配されている(
図2を参照)。
【0037】
先端爪部40の爪本体部42は、先端爪部40を上側から見た平面視又は下側から見た底面視において、略三角形を示す形状を有する。この場合、略三角形の爪本体部42は、その略三角形の1つの辺の部分で基端部41に接続している。
【0038】
また、略三角形の爪本体部42は、その略三角形において前方に向く別の1つの辺の部分に、グローブボックスが閉位置でロックされるときに、先端爪部40においてインストルメントパネル10の係止部14に当接させる平坦な第1爪面43が設けられている。この先端爪部40の第1爪面43は、先端爪部40の第1姿勢(
図2)において、インストルメントパネル10における係止部14の前側の内壁面14aと平行となるように、また、スライド本体部31の長さ方向と平行となるように配されている。
【0039】
更に、略三角形の爪本体部42は、その略三角形において斜め後方に向く残り1つの辺の部分に、インストルメントパネル10の支持側壁部13に当接させる第2爪面44が設けられている。この先端爪部40の第2爪面44は、先端爪部40の第2姿勢において、
図5に示すように、破線で示す前後方向に対し、先端爪部40の基端部41側から第1爪面43に向けて左右方向の外側に開くように斜めに傾斜して配される。これにより、例えばグローブボックスが開位置から閉位置に移動するときに、先端爪部40が、第2姿勢の状態で先端爪部40の第2爪面44をインストルメントパネル10の支持側壁部13に摺接させ、それによって、スライド部材30を、左右方向の内側に向けて押し込むように移動させることができる。
【0040】
爪本体部42の第1爪面43と第2爪面44との間には、湾曲する曲面により形成された先端面が形成されている。この爪本体部42の先端面は、第1爪面43と第2爪面44とに滑らかに連続して形成されている。
【0041】
スライド部材30のねじりコイルばね51は、ねじりコイルばね51のコイル部52に、スライド本体部31及び先端爪部40に保持される連結ピン55を挿通させることによって、スライド部材30に取り付けられている。また、ねじりコイルばね51は、先端爪部40を第1姿勢に向けて付勢している。
【0042】
以上のような本実施例のロック装置1が設けられたグローブボックスにおいて、例えば開位置にあるグローブボックスのリッド部20を、閉位置に移動させることによって、インストルメントパネル10の設置開口部11をリッド部20で閉じる場合には、グローブボックスを操作する者(例えば、運転者等)が、グローブボックスのリッド部20を表面側から押すこと等によって、リッド部20を後方へ移動させる。
【0043】
始めにグローブボックスが開位置にある場合、リッド部20に取り付けられている左右のスライド部材30は、
図5に示すように、先端爪部40がスライド本体部31に対して折り曲げられた第2姿勢の状態で、先端爪部40の第2爪面44をインストルメントパネル10の支持側壁部13に接触させている。
【0044】
従って、グローブボックスのリッド部20が操作者の操作によって後方に向けて移動することにより、左右の各スライド部材30も、リッド部20とともに後方に向けて移動する。それとともに、スライド部材30における先端爪部40の傾斜した第2爪面44がインストルメントパネル10の支持側壁部13に摺接するため、左右のスライド部材30が、ロック装置1の付勢部(不図示)による付勢力に抗して、左右方向の内側に向けて移動する。
【0045】
その後、スライド部材30は、先端爪部40における爪本体部42の先端面が、インストルメントパネル10の係止部14の前側内壁面14aの位置よりも後方に移動することにより、先端爪部40とインストルメントパネル10の支持側壁部13との接触が解除される。その結果、スライド部材30は、付勢部の付勢によって、左右方向の外側に向けて移動し、先端爪部40をインストルメントパネル10の係止部14内に挿入する。それと同時に、スライド部材30は、ねじりコイルばね51の付勢によって、先端爪部40を、折り曲げられた第2姿勢から、まっすぐな第1姿勢に向けて回転させる。更にこのとき、グローブボックスは、その重さによって前方へ僅かに移動する。その結果、スライド部材30における先端爪部40の第1爪面43を、係止部14の前側内壁面14aに面接触させて係止できるため、本実施例のロック装置1によって、グローブボックスのリッド部20を、開位置に向けて移動しないように閉位置で保持してロックできる。
【0046】
更に、本実施例のロック装置1において、インストルメントパネル10の係止部14は、スライド部材30の先端爪部40の大きさに対し、先端爪部40が係止部14内で僅かに移動することを許容するように、前後方向に余裕をもった大きさで形成されている。これにより、例えばグローブボックスを開位置から移動させて閉位置でロックするまでの間に、グローブボックスを、上述したように前方へ僅かに移動させるような遊び(緩み)を設けることができる。これにより、スライド部材30の先端爪部40をインストルメントパネル10の係止部14に安定して挿入できるため、リッド部20を円滑にロックできる。
【0047】
また、本実施例のロック装置1によってグローブボックスのリッド部20が閉位置でロックされたときには、先端爪部40の第1爪面43を、インストルメントパネル10の係止部14の前側内壁面14aに当接させることができ、また、先端爪部40の第2爪面44を、係止部14の前側の内壁面14aに対して接触しない方向に向けて保持できる。
【0048】
これにより、ロック装置1の先端爪部40が、係止部14の前側内壁面14aに対して、例えば前述した特許文献1のサイドロック装置のように半掛かりの状態で係合することが生じ難くなり、先端爪部40と係止部14とを互いに面接触でしっかりと係合させることができる。このため、本実施例のロック装置1は、少ない部品点数で、また、比較的簡単な構造で形成されているものの、リッド部20を閉位置で安定して保持できる。
【0049】
従って、本実施例のグローブボックスを備えた自動車が衝突等によって強い衝撃力を受けた場合等であっても、その衝撃力によって例えば先端爪部40の第2爪面44が係止部14に当接してスライド部材30が係止部14から外れる方向に案内されることもなく、先端爪部40が係止部14に係止されたリッド部20のロック状態を安定して保持できる。
【0050】
一方、例えば閉位置にあるリッド部20を開位置に移動させて、インストルメントパネル10の設置開口部11を開く場合には、ロック装置1の図示しない操作部を操作者が操作することによって、インストルメントパネル10の係止部14に係止されているスライド部材30を左右方向の内側に移動させる。
【0051】
これにより、スライド部材30の先端爪部40が係止部14から抜出するため、ロック装置1によるリッド部20のロック状態が解除される。その後、操作者が操作部を手前に引くことにより、リッド部20を閉位置から開位置に移動させて、インストルメントパネル10の設置開口部11を開くことができる。これにより、グローブボックスのボックス本体部に小物等の出し入れを行うことが可能となる。
【0052】
なお、上述した実施例のロック装置1は、インストルメントパネル10に設けられる左右一対の係止部14と、それに対応する左右一対のスライド部材30とを有しているが、本発明のロック装置は、左右の何れかの係止部及びスライド部材のみを有して形成されていてもよい。また、上述した実施例では、ロック装置1がグローブボックスに適用される場合について説明しているが、本発明のロック装置は、コンソールボックス等のように、グローブボックス以外の車両の車室に設置される各種の収納装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 ロック装置
10 インストルメントパネル
11 設置開口部
12 設置空間部
13 支持側壁部
14 係止部(係止凹部)
14a 前側内壁面
20 リッド部(蓋部)
21 ケース部
22 貫通孔
30 スライド部材
31 スライド本体部
32 保持空間部
33 上板部
34 下板部
35 第1取付孔
36 第1規制面
37 第2規制面
40 先端爪部
41 基端部
41a ばね収容部
41b 第2取付孔
41c 第1当接部
41d 第2当接部
42 爪本体部
43 第1爪面
44 第2爪面
50 弾性部材
51 ねじりコイルばね
52 コイル部
55 連結ピン