IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社Asterの特許一覧

特開2024-113081情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
<>
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及びプログラム 図1
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及びプログラム 図2A
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及びプログラム 図2B
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及びプログラム 図3
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及びプログラム 図4
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及びプログラム 図5
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及びプログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113081
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20240814BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20240814BHJP
【FI】
E04G23/02 B ESW
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024091448
(22)【出願日】2024-06-05
(62)【分割の表示】P 2024507093の分割
【原出願日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2023008344
(32)【優先日】2023-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】523000178
【氏名又は名称】株式会社Aster
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正臣
(72)【発明者】
【氏名】ラジャセカラン・シャンタヌ
(72)【発明者】
【氏名】山本 憲二郎
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐震性の向上効果が期待できる範囲に塗料を塗布するための情報を提供できるようにする。
【解決手段】情報処理装置1は、建物の構造を示す建物構造情報を取得する構造情報取得部131と、前記建物構造情報が示す前記建物を補強するための塗料の塗布範囲又は塗布厚を示す1以上の塗布パターンを示すパターン情報を出力する出力部135と、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の構造を示す建物構造情報を取得する構造情報取得部と、
前記建物構造情報が示す前記建物を補強するための塗料の塗布範囲又は塗布厚を示す1以上の塗布パターンを示すパターン情報を出力する出力部と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記塗布範囲又は前記塗布厚の少なくともいずれかが異なる複数の塗布パターンを決定するパターン決定部をさらに有し、
前記出力部は、前記複数の塗布パターンそれぞれに対応する塗布範囲に塗料が塗布された状態で所定の強度の地震が発生した場合の前記建物の耐震性を前記建物構造情報に基づいて解析した結果に基づいて決定した、前記複数の塗布パターンの少なくともいずれかを示す前記パターン情報を出力する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記パターン決定部は、前記塗布範囲と前記塗布厚との組み合わせが異なる前記複数の塗布パターンを決定する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記パターン決定部は、前記建物の高さ方向における位置がそれぞれ異なる前記塗布範囲と前記塗布厚との組み合わせが異なる前記複数の塗布パターンを決定する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記パターン決定部は、塗料の種別と、前記塗布範囲と、前記塗布厚と、の組み合わせが異なる前記複数の塗布パターンを決定する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記パターン決定部は、ユーザにより入力された前記塗布範囲と前記塗布厚との組み合わせに基づいて前記複数の塗布パターンを決定する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記構造情報取得部は、前記建物の外観を示す画像データを前記建物構造情報として取得し、
前記パターン決定部は、前記画像データに基づいて前記塗布範囲を決定することにより前記複数の塗布パターンを決定する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記出力部は、前記建物の耐震性が基準レベル以上であることを示す前記結果に対応する一以上の前記塗布パターンを示す前記パターン情報を出力する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記建物が建てられている地域を示す情報を取得する情報取得部をさらに有し、
前記出力部は、地域と基準レベルとが関連付けられたデータを参照することにより、前記情報取得部が取得した情報が示す地域における前記基準レベル以上の耐震性を実現できる前記塗布パターンを示す前記パターン情報を出力する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記出力部は、出力する前記パターン情報に対応する塗布パターンで塗料を塗布する場合に必要になる塗料の量を示す情報をさらに出力する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
想定される地震の強度、及び当該強度の地震により前記建物に発生すると推定される損傷の大きさに基づいて、連続体解析手法を用いるか、不連続体解析手法を用いるかを選択し、選択した解析手法を用いて建物に生じる影響を解析する解析部をさらに有する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記解析部は、所定の強度未満の地震が発生した場合の前記建物の耐震性を、前記建物が連続体であるとして解析し、前記所定の強度以上の地震が発生した場合の前記建物の耐震性を、前記建物が不連続体であるとして解析する、
請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記建物は組積造建物であり、
前記解析部は、前記建物を構成する複数のブロックの変位量を解析する、
請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項14】
塗料の塗布に用いるツールの種別を取得する情報取得部をさらに有し、
前記パターン決定部は、前記種別に基づいて決定した重複塗布領域を含む前記複数の塗布パターンを決定する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項15】
使用される塗料のコストの許容レベルを取得する情報取得部をさらに有し、
前記パターン決定部は、前記許容レベルに基づいて、重複して塗布する回数又は重複塗布領域を決定する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項16】
コンピュータが実行する、
建物の構造を示す建物構造情報を取得するステップと、
前記建物構造情報が示す前記建物を補強するための塗料の塗布範囲又は塗布厚を示す1以上の塗布パターンを示すパターン情報を出力するステップと、
を有する情報処理方法。
【請求項17】
コンピュータを、
建物の構造を示す建物構造情報を取得する構造情報取得部と、
前記建物構造情報が示す前記建物を補強するための塗料の塗布範囲又は塗布厚を示す1以上の塗布パターンを示すパターン情報を出力する出力部と、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木造家屋の建材として用いられている合板に繊維強化塗料を塗布することにより木造家屋の耐震性を向上させる技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-105049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建物の耐震性を向上させるための塗料を塗布する範囲が広いと塗料の費用や作業工数が大きくなる。したがって、耐震性の向上効果が期待できる範囲に塗料を塗布することが求められている。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、耐震性の向上効果が期待できる範囲に塗料を塗布するための情報を提供できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の情報処理装置は、建物の構造を示す建物構造情報を取得する構造情報取得部と、前記建物構造情報が示す前記建物を補強するための塗料の塗布範囲又は塗布厚を示す1以上の塗布パターンを示すパターン情報を出力する出力部と、を有する。
【0007】
前記情報処理装置は、前記塗布範囲又は前記塗布厚の少なくともいずれかが異なる複数の塗布パターンを決定するパターン決定部をさらに有し、前記出力部は、前記複数の塗布パターンそれぞれに対応する塗布範囲に塗料が塗布された状態で所定の強度の地震が発生した場合の前記建物の耐震性を前記建物構造情報に基づいて解析した結果に基づいて決定した、前記複数の塗布パターンの少なくともいずれかを示す前記パターン情報を出力してもよい。
【0008】
前記パターン決定部は、前記塗布範囲と前記塗布厚との組み合わせが異なる前記複数の塗布パターンを決定してもよい。
【0009】
前記パターン決定部は、前記建物の高さ方向における位置がそれぞれ異なる前記塗布範囲と前記塗布厚との組み合わせが異なる前記複数の塗布パターンを決定してもよい。
【0010】
前記パターン決定部は、塗料の種別と、前記塗布範囲と、前記塗布厚と、の組み合わせが異なる前記複数の塗布パターンを決定してもよい。
【0011】
前記パターン決定部は、ユーザにより入力された前記塗布範囲と前記塗布厚との組み合わせに基づいて前記複数の塗布パターンを決定してもよい。
【0012】
前記構造情報取得部は、前記建物の外観を示す画像データを前記建物構造情報として取得し、前記パターン決定部は、前記画像データに基づいて前記塗布範囲を決定することにより前記複数の塗布パターンを決定してもよい。
【0013】
前記出力部は、前記建物の耐震性が基準レベル以上であることを示す前記結果に対応する一以上の前記塗布パターンを示す前記パターン情報を出力してもよい。
【0014】
前記情報処理装置は、前記建物が建てられている地域を示す情報を取得する情報取得部をさらに有し、前記出力部は、地域と基準レベルとが関連付けられたデータを参照することにより、前記情報取得部が取得した情報が示す地域における前記基準レベル以上の耐震性を実現できる前記塗布パターンを示す前記パターン情報を出力してもよい。
【0015】
前記出力部は、出力する前記パターン情報に対応する塗布パターンで塗料を塗布する場合に必要になる塗料の量を示す情報をさらに出力してもよい。
【0016】
想定される地震の強度、及び当該強度の地震により前記建物に発生すると推定される損傷の大きさに基づいて、連続体解析手法を用いるか、不連続体解析手法を用いるかを選択し、選択した解析手法を用いて建物に生じる影響を解析する解析部をさらに有してもよい。前記解析部は、所定の強度未満の地震が発生した場合の前記建物の耐震性を、前記建物が連続体であるとして解析し、前記所定の強度以上の地震が発生した場合の前記建物の耐震性を、前記建物が不連続体であるとして解析してもよい。
【0017】
前記建物は組積造建物であり、前記解析部は、前記建物を構成する複数のブロックの変位量を解析してもよい。
【0018】
前記情報処理装置は、塗料の塗布に用いるツールの種別を取得する情報取得部をさらに有し、前記パターン決定部は、前記種別に基づいて決定した重複塗布領域を含む前記複数の塗布パターンを決定してもよい。
【0019】
前記情報処理装置は、使用される塗料のコストの許容レベルを取得する情報取得部をさらに有し、前記パターン決定部は、前記許容レベルに基づいて、重複して塗布する回数又は重複塗布領域を決定してもよい。
【0020】
本発明の第2の態様の情報処理方法は、コンピュータが実行する、建物の構造を示す建物構造情報を取得するステップと、前記建物構造情報が示す前記建物を補強するための塗料の塗布範囲又は塗布厚を示す1以上の塗布パターンを示すパターン情報を出力するステップと、を有する。
【0021】
本発明の第3の態様のプログラムは、コンピュータを、建物の構造を示す建物構造情報を取得する構造情報取得部と、前記建物構造情報が示す前記建物を補強するための塗料の塗布範囲又は塗布厚を示す1以上の塗布パターンを示すパターン情報を出力する出力部と、として機能させる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、耐震性の向上効果が期待できる範囲に塗料を塗布するための情報を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】情報処理システムSの概要を説明するための図である。
図2A】塗布パターン別の耐震性を示す図である。
図2B】塗布パターン別の耐震性を示す図である。
図3】塗布パターンの詳細情報を示す図である。
図4】情報処理装置1が推奨する塗布パターンを出力するために使用される情報と情報処理装置1が出力する情報の例を示す図である。
図5】情報処理装置1の構成を示す図である。
図6】情報処理装置1における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[情報処理システムSの概要]
図1は、本実施の形態に係る情報処理システムSの概要を説明するための図である。情報処理システムSは、建物Bの耐震性の向上効果が期待できる範囲に塗料を塗布するための情報を提供するためのシステムである。情報処理システムSは、情報処理装置1と、情報端末2と、を備える。
【0025】
情報処理装置1は、情報端末2を使用するユーザUの操作に応じて、建物Bの耐震性の向上効果が期待できる範囲に繊維強化塗料を塗布するための情報をユーザUに提供するためのコンピュータである。情報処理装置1は、例えば、ユーザUが使用する情報端末2がネットワークNを介してアクセスすることができるクラウドサーバであるが、情報処理装置1の形態は任意である。ユーザUは、例えば建物Bの建築又は改修を担当する業者の担当者である。また、ユーザUは、例えば建物Bの所有者や居住者であってもよい。
【0026】
情報端末2は、ユーザUが使用するコンピュータであり、例えばタブレット又はスマートフォンであるが、情報端末2の形態は任意である。情報端末2は、例えば無線通信回線W及びネットワークNを介して情報処理装置1と通信できるように構成されている。
【0027】
以下、図1を参照しながら、情報処理システムSの概要を説明する。ユーザUが情報端末2を操作することにより、推奨される塗布範囲又は塗布厚に関する情報を提供するためのアプリケーションソフトウェアを起動すると、情報端末2は塗布範囲又は塗布厚に関する情報を情報処理装置1から取得するための動作を開始する。情報端末2が当該動作を開始すると、まず、情報端末2には、耐震性を向上させるために塗料を塗る対象となる建物に関する情報(以下、「建物構造情報」という)を入力するための画面が情報端末2に表示される。ユーザUが建物構造情報を情報端末2に入力すると、情報端末2は、建物構造情報を情報処理装置1に送信する。
【0028】
建物構造情報の詳細については後述するが、建物構造情報は、情報処理装置1が建物の耐震性を解析するために必要な建物の構造を示す情報であり、例えば開口部の位置や組積の種別等のように、建物の構造を示す構造データを含む。構造データは、例えば建物の構造を示すテキストデータであるが、ユーザUがカメラで建物を撮影することにより生成された画像データ、又は建物の設計データであってもよい。構造データは、ユーザUがLiDARスキャナまたはToF(Time of Flight)センサ等のツールを用いて作成した建物の三次元形状を示すデータであってもよい。画像データ又は設計データは、例えば建物の1又は複数の壁面の外観を示すデータを含む。
【0029】
情報端末2は、例えばGPS(Global Positioning System)の衛星から受信した電波に基づいて特定した現在位置を示す建物位置情報を情報処理装置1に送信する。情報端末2は、建物が建てられている地域又は位置を示す建物位置情報の入力を受け付けて、入力された建物位置情報を情報処理装置1に送信してもよい。建物位置情報は、建物の緯度・経度であってもよく、建物が建てられている地域の名称であってもよい。情報端末2は、建物の地域名の候補を表示して、ユーザUにより選択された地域名を示す建物位置情報を作成してもよい。
【0030】
情報処理装置1は、建物構造情報及び建物位置情報に基づいて建物の耐震性を解析する。情報処理装置1は、例えば有限要素法(FEM:Finite Element Method)のような連続体解析手法又は個別要素法(DEM:Discrete Element Method)若しくは応用要素法(AEM:Applied Element Method)のような不連続体解析手法等の解析手法を用いて、複数の異なる塗布パターンごとに、建物が建てられている地域に発生する地震の強度ごとに建物に加わる力の向きや大きさをシミュレーションする。塗布パターンは、塗料を塗る範囲である塗布範囲、及び各塗布範囲に塗る塗料の厚みである塗布厚により定められる。塗布厚は、例えば、塗布厚を制御可能な最小の厚み(例えば0.25mm)の倍数である。
【0031】
塗布パターンには塗料の種別が含まれていてもよい。塗料の種別は、例えば塗料に含まれている繊維の割合によって表される。この場合、塗料の種別は、例えば4%品、8%品等と表される。また、塗料の種別は、例えば所定塗料が希釈して用いられる場合、その希釈の内容(希釈に用いるうすめ液の種類、希釈の割合等)によって表されるようにしてもよい。希釈の割合は、希釈前の所定塗料の量とうすめ液の量の比である。
【0032】
建物に繊維強化塗料を塗布することで、建物の振動を抑制する制震作用が生じることにより建物の耐震性が向上する。また、建物内の領域によって異なる塗布厚で塗料を塗布し、領域によって異なる位相で振動するようにすることによっても建物の耐震性が向上する。情報処理装置1は、建物に塗料を塗布した状態で建物が建てられている地域に地震が発生した場合の建物の挙動をシミュレーションすることにより、建物の耐震性が向上する塗布パターンを特定する。
【0033】
情報処理装置1は、シミュレーションの結果に基づいて、建物の強度を向上させることができる塗布範囲と塗布厚との組み合わせを示すパターン情報を作成し、作成したパターン情報を出力する。具体的には、情報処理装置1はパターン情報を情報端末2に送信することにより、推奨される塗布範囲及び塗布厚を情報端末2に表示させる。
【0034】
図2及び図3は、情報端末2に表示されるパターン情報の例を示す図である。図2は、塗布パターン別の耐震性を示す図である。具体的には、図2は、複数の塗布パターンそれぞれに対して、地震の強度と塗料を塗布した後の建物の耐震性との関係を示している。図2におけるAは通常の状態(Operational)を示しており、Bは入居可能な状態(Immediate Occupancy)を示しており、Cは生命の安全を確保できる状態(Life Safety)を示しており、Dは倒壊を免れる状態(Collapse Prevention)を示している。
【0035】
図2Aは、塗布パターン1又は塗布パターン2で建物に塗装することにより、塗装しない場合に比べて耐震性が向上することを示している。また、図2Aは、塗布パターン2で建物に塗装することにより、塗布パターン1で建物に塗装する場合に比べて耐震性が向上することを示している。情報端末2は、図2Bに示すように、建物が建てられている地域において想定される最大の地震の強度をさらに示してもよい。このような情報を情報端末2が表示することで、ユーザUは、どの塗布パターンを採用するべきかを判断しやすくなる。
【0036】
図3は、塗布パターンの詳細情報を示す図である。情報端末2は、例えば、塗布パターンの詳細を表示するための操作をユーザUが行った場合に、図3に示すような詳細な塗布パターンを表示する。情報端末2は、図2に表示されている「塗布パターン1」のボタンをユーザUが押すことにより図3に示す塗布パターン1の詳細情報を表示し、「塗布パターン2」のボタンをユーザUが押すことにより図3に示す塗布パターン2の詳細情報を表示してもよい。
【0037】
図3に示すように、塗布パターンの詳細情報には、塗料を塗布する範囲を示す画像又はテキストの少なくともいずれかと、各範囲の塗布厚を示すテキストとが含まれている。詳細情報には、各範囲で使用する塗料の種別(例えば商品名)を示す情報が含まれていてもよい。また、詳細情報には、使用する塗料の量を示す情報がさらに含まれていてもよい。詳細情報にこれらの情報が含まれていることで、ユーザUは、予算も考慮しながら、どの塗布パターンを採用するべきかを判断することができる。
【0038】
図4は、情報処理装置1が推奨する塗布パターンを出力するために使用される入力情報と情報処理装置1が出力する情報の例を示す図である。情報処理装置1は、地震関連情報及び建物構造情報を入力情報として使用して解析を実行し、推奨される塗装方法及び構造への影響を示す情報を出力する。情報処理装置1は、例えば図2及び図3に示した態様で、推奨される塗装方法及び構造への影響を示す情報を出力する。情報処理装置1は、図2及び図3に示した例に加えて、建物の各部の予想変位量、及びストレスやクラックの分布を示す画像を出力してもよい。
【0039】
地震関連情報は、建物が建てられている地域を示す情報(以下、「地域情報」という)、建物が建てられている場所の地盤の状態を示す情報(以下、「地盤状態情報」という)、建物が建てられている地域において過去に発生した地震の強度及び振動態様等の履歴を示す情報、又は建物が建てられている地域において発生し得ると想定される地震の強度及び振動態様等を示す地震ハザード情報の少なくともいずれかが含まれる。情報処理装置1は、地域情報を情報端末2から取得する。情報処理装置1は、例えば、地盤状態情報、地震関連情報又は地震ハザード情報の少なくともいずれかを外部のコンピュータから取得する。情報処理装置1が有する記憶媒体、地盤状態情報、地震関連情報又は地震ハザード情報の少なくともいずれかを予め記憶していてもよい。
【0040】
建物構造情報には、建物基本情報、構造詳細情報、壁情報、材質情報、材料特性情報、又は使用予定塗料情報の少なくともいずれかが含まれる。建物基本情報は、情報処理装置1が解析する対象の建物の高さ、建物の形状、構造の種別等を示す情報である。構造詳細情報は、RCビーム及び柱の位置、床構造、屋根構造、建物重量等を示す情報である。壁情報は、組積造の種別、開口の状況(例えば開口の位置及び大きさ)、壁の厚み、壁を構成するブロックの層数、壁の補強状況、パーティション位置、ブロックレイアウト(例えばイギリス積、フランス積、小口積)、築年数等を示す情報である。
【0041】
材質情報は、組積造に使用されているブロックの種別(例えば、石、レンガ又はコンクリートブロック)、塗料の種別、及び使用されているコンクリートの種別等を示す情報である。材料特性情報は、組積造のブロックの材料特性、モルタルの材料特性、強化コンクリートの材料特性、鉄筋の材料特性、塗装の材料特性等を示す情報である。使用予定塗料情報は、ユーザUが使用したいと考えている塗料の種別(例えば商品名)を示す情報である。
【0042】
情報処理装置1は、これらの建物構造情報に含まれる情報のうち建物基本情報を、例えば情報端末2から取得する。情報処理装置1は、使用予定塗料情報及び壁情報を情報端末2から取得してもよい。
【0043】
情報処理装置1は、構造詳細情報、材質情報及び材料特性情報を外部のコンピュータから取得してもよい。情報処理装置1が有する記憶媒体が、構造詳細情報、材質情報及び材料特性情報を予め記憶していてもよい。情報処理装置1は、例えば、データベースを参照することにより、建物基本情報又は壁情報が示す建物の高さ、形状及び構造種別等に対応する詳細な構造に関する情報、材質に関する情報、及び材料の特性に関する情報を取得する。
【0044】
[情報処理装置1の構成]
図5は、情報処理装置1の構成を示す図である。情報処理装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を有する。記憶部12は、地盤情報記憶部121と、地震関連情報記憶部122と、建物情報記憶部123と、材料特性情報記憶部124と、を有する。制御部13は、構造情報取得部131と、情報取得部132と、パターン決定部133と、解析部134と、出力部135と、を有する。
【0045】
通信部11は、情報処理装置1が情報端末2との間でデータを送受信するための通信インターフェースである。通信部11は、情報端末2から受信した建物構造情報を構造情報取得部131に入力する。通信部11は、情報端末2から受信した建物位置情報を情報取得部132に入力する。通信部11は、出力部135から入力された塗布パターンを示す情報を情報端末2に向けて送信する。
【0046】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部12は、制御部13が推奨する塗装パターンを決定するために用いる各種の情報を記憶する。
【0047】
地盤情報記憶部121は、地域ごとの地盤情報を記憶する。地盤情報は、例えば深度と土質とが関連付けられた情報である。
【0048】
地震関連情報記憶部122は、地域に関連付けて、地盤状態情報、地震履歴情報又は地震ハザード情報の少なくともいずれかを記憶する。地震履歴情報は、地震が発生した年月日、地震の強度、地震の揺れの態様等の情報を含む。
【0049】
建物情報記憶部123は、建物に関する情報を記憶する。建物に関する情報は、例えば、図4に示した建物基本情報、構造詳細情報、材質情報及び壁情報である。
【0050】
材料特性情報記憶部124は、建物に使用される各種の材料の特性を示す情報を記憶する。材料の特性を示す情報は、例えば図4に示した材料特性情報である。
【0051】
記憶部12は、他の各種の情報を記憶してもよい。一例として、記憶部12は、過去にユーザUの情報端末2、又は他のユーザUの情報端末2に提示された推奨塗布パターンと建物の構造とを関連付けて記憶してもよい。この情報は、後述するパターン決定部133がパターンを決定する際に参照される。
【0052】
制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)を有する。制御部13は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、構造情報取得部131、情報取得部132、パターン決定部133、解析部134及び出力部135として機能する。
【0053】
構造情報取得部131は、建物の構造を示す建物構造情報を取得する。構造情報取得部131は、建物の外観を示す画像データを建物構造情報として取得してもよい。構造情報取得部131は、通信部11を介して、建物の識別情報を情報端末2から取得し、取得した識別情報に関連付けられて建物情報記憶部123に記憶された建物情報に含まれている建物構造情報を取得してもよい。構造情報取得部131は、取得した建物構造情報をパターン決定部133に入力する。
【0054】
情報取得部132は、建物が建てられている地域を示す情報を取得する。情報取得部132は、例えば、通信部11を介して情報端末2から取得した建物位置情報を、地域を示す情報として取得する。情報取得部132は、通信部11を介して、建物の識別情報を情報端末2から取得し、取得した識別情報に関連付けられて建物情報記憶部123に記憶された建物情報に含まれている建物位置情報を、地域を示す情報として取得してもよい。情報取得部132は、取得した地域を示す情報を解析部134に入力する。
【0055】
情報取得部132は、ユーザU又は塗料を塗布する作業者が設定した各種の条件を取得してもよい。ユーザUが設定する条件は、例えば、耐震性能の要求レベル又は塗料のコストの許容レベルである。作業者が設定する条件は、例えば、塗料の塗布に用いるツールの種別、使用する塗料の粘性又は要求される作業性である。ツールの種別は、ローラ、こて(trowel)、刷毛、スプレー等である。ツールの種別を示す情報は、ツールを1回移動させることにより塗料を塗布することができる幅に関する情報を含んでもよい。さらに、情報取得部132は、塗布パターンに影響する各種の条件の優先順位を示す情報を取得してもよい。これらの情報はパターン決定部133に通知される。
【0056】
パターン決定部133は、構造情報取得部131から入力された建物構造情報が示す建物を補強するための塗料の塗布範囲又は塗布厚の少なくともいずれかが異なる複数の塗布パターンを決定する。具体的には、パターン決定部133は、塗布範囲と塗布厚との組み合わせが異なる複数の塗布パターンを決定する。より具体的には、パターン決定部133は、建物の高さ方向における位置がそれぞれ異なる壁面内の塗布範囲と塗布厚との組み合わせが異なる複数の塗布パターンを決定する。パターン決定部133は、ドア又は窓等の開口部からの距離がそれぞれ異なる塗布範囲と塗布厚との組み合わせが異なる複数の塗布パターンを決定してもよい。パターン決定部133が決定した複数の塗布パターンは、解析部134が建物の耐震性を解析するための情報として用いられる。
【0057】
構造情報取得部131が取得した建物構造情報が、建物の外観を示す画像データである場合、パターン決定部133は、画像データに基づいて塗布範囲を決定することにより複数の塗布パターンを決定してもよい。一例として、パターン決定部133は、建物の高さ方向の範囲を、窓が設けられている高さの範囲と、窓が設けられていない高さの範囲に分けることにより、複数の塗布範囲を決定し、決定した複数の塗布範囲のうち異なる範囲を含む複数の塗布パターンを決定する。パターン決定部133は、予め建物の形状や組積方法に関連付けて記憶部12に記憶された複数の推奨塗布範囲を示す情報に基づいて、複数の塗布範囲を決定し、決定した複数の塗布範囲のうち異なる範囲を含む複数の塗布パターンを決定してもよい。
【0058】
パターン決定部133は、塗料の種別と、塗布範囲と、塗布厚と、の組み合わせが異なる複数の塗布パターンを決定してもよい。この場合、パターン決定部133は、例えば材料特性情報記憶部124に材料の特性が記憶されている複数の塗料の種別を、塗布範囲及び塗布厚と組み合わせることにより複数の塗布パターンを決定する。塗料の種別に適した塗布厚が定められている場合、パターン決定部133は、塗布厚に適した種別の塗料を選択してもよく、ユーザUにより選択された塗料の種別に適した塗布厚を選択してもよい。
【0059】
パターン決定部133は、ユーザUにより入力された塗布範囲と塗布厚との組み合わせに基づいて複数の塗布パターンを決定してもよい。一例として、パターン決定部133は、仮に決定した多数の塗布パターンを示す情報を、出力部135を介して情報端末2に提供し、情報端末2においてユーザUから選択された複数の塗布パターンを、解析部134に建物の耐震性を解析させる複数の塗布パターンに決定する。パターン決定部133がこのように動作することで、ユーザUが実施可能な複数の塗布パターンで解析部134が建物の耐震性を解析するので、情報処理装置1が、ユーザUが活用できる情報を提供できる確率が高まる。
【0060】
パターン決定部133は、解析部134が解析する対象となる建物の構造と類似する建物に対して過去に解析され、耐震性が良好であるという結果が得られた塗布パターンを優先的に選択してもよい。解析部134が解析する対象となる建物の構造と類似する建物とは、解析する対象となる建物と、建物基本情報、構造詳細情報、壁情報に含まれる複数の要素のうち所定数以上が一致している建物である。パターン決定部133がこのようにして塗布パターンを選択することで、解析部134が解析する塗布パターンの数を減らすことができるので、処理時間を短縮することができる。
【0061】
パターン決定部133は、複数回にわたって同じ場所に塗料が塗布された重複塗布領域を含む複数の塗布パターンを決定してもよい。同じ場所に重複して塗料が塗布されると、塗布厚が大きくなるので、建物の耐震性が向上する。パターン決定部133は、例えば、情報取得部132が取得したツールの種別に基づいて決定した重複塗布領域を含む複数の塗布パターンを決定する。
【0062】
具体的には、パターン決定部133は、ツールがローラ、こて、刷毛又はスプレーである場合、1回のツールの移動により塗料が塗布される幅(例えばローラの幅、こての長さ、刷毛の幅、又はスプレーが塗料を放出する範囲)の整数倍の長さの辺を有する四辺形の範囲を重複塗布領域として含む塗布パターンを決定する。パターン決定部133は、塗料が塗布される幅の半分の長さの整数倍の長さの辺を有する四辺形の範囲を重複塗布領域として含む塗布パターンを決定してもよい。重複塗布領域がこのように定められていることで、作業者が特殊な計測装置を用いることなく、定められた重複塗布領域に重複して塗料を塗布しやすくなる。
【0063】
なお、ツールがスプレーである場合、スプレーの吐出量、スプレーガンの移動速度、又はスプレーと壁との距離によって塗布厚が変わる。そこで、パターン決定部133は、スプレーの吐出量、スプレーガンの移動速度、又はスプレーと壁との距離の少なくともいずれかに関する情報を含む塗布パターンを決定してもよい。パターン決定部133は、例えば、スプレーの吐出量、スプレーガンの移動速度、又はスプレーと壁との距離のいずれか1つに関する情報を含む塗布パターンを決定してもよく、スプレーの吐出量、スプレーガンの移動速度、又はスプレーと壁から選択した2つ以上のそれぞれに関する情報を含む塗布パターンを決定してもよい。
【0064】
パターン決定部133は、領域ごとに塗布の回数を示す塗布パターンを決定してもよい。塗料の粘性によって、1回の塗布により塗られる塗料の厚みが異なる。そこで、パターン決定部133は、作業者により設定された塗料の粘性が高いほど塗布の回数が少ない塗布パターンを決定する。パターン決定部は、作業者により設定された作業性に基づいて、塗料の種別(例えば粘性の大きさ)と塗布の回数との組み合わせが異なる複数の塗布パターンを決定してもよい。
【0065】
同じ領域に塗料を塗布する回数が増えると、塗料の使用量が増えることによりコストが増加する。そこで、パターン決定部133は、ユーザUにより設定された塗料のコストの許容レベルに基づいて重複して塗布する回数、又は重複塗布領域の少なくともいずれかを決定してもよい。パターン決定部133は、コストの許容レベルが高いほど、塗布する回数を大きくしたり、重複塗布領域の面積を大きくしたりする。
【0066】
パターン決定部133は、ユーザにより設定された耐震性能の要求レベルに基づいて複数の塗布パターンを決定してもよい。パターン決定部133は、例えば、耐震性能の要求レベルが高いほど、塗料の塗布範囲を広くしたり、塗布厚を大きくしたり、重複して塗布する回数を増やしたり、重複塗布領域の面積を大きくしたりする。
【0067】
耐震性能と作業性とコストとは、トレードオフの関係にある。そこで、パターン決定部133は、ユーザUにより設定された優先順位に基づいて、優先度が高い条件を満たす塗布パターンを決定してもよい。パターン決定部133は、例えば、耐震性能の優先度が高い場合、塗布厚を大きくしたり重複塗布領域の面積を大きくしたりする。パターン決定部133は、コスト又は作業性の優先度が高い場合、塗布厚を小さくしたり重複塗布領域の面積を小さくしたりする。
【0068】
解析部134は、パターン決定部133が決定した複数の塗布パターンそれぞれで塗料が塗布された後の建物の耐震性を解析する。解析部134は、情報取得部132から取得した建物位置情報に基づいて建物が建てられている地域を特定し、地震関連情報記憶部122を参照することにより特定した、当該地域において発生し得る地震の強度における建物の耐震性を解析する。建物が複数のブロックが積み重ねられた組積造構造である場合、解析部134は、建物が建てられている地域で発生することが想定し得る地震が発生した際に建物を構成する複数のブロックに生じる変位の量を解析することにより建物の耐震性を解析する。解析部134は、基準値以上の量の変位が発生するブロックの数に基づいて、建物の耐震性のレベルを決定する。
【0069】
一例として、解析部134は、有限要素法、個別要素法又は応用要素法等の数値解析手法を用いて、建物が建てられている地域で発生することが想定される地震の強度ごとに、建物に生じる影響を解析する。解析部134は、例えば、想定される地震の強度及び当該強度の地震により建物に発生すると推定される損傷の大きさに基づいて、連続体解析手法を用いるか不連続体解析手法を用いるかを選択し、選択した解析手法を用いて建物に生じる影響を解析する。解析部134は、地盤情報記憶部121を参照することにより、建物が建てられている地域の地盤の状態を特定し、特定した地盤の状態を考慮して、建物に生じる影響を解析する。
【0070】
解析部134は、例えば、地震による構造物の損傷が少ないと予想される場合の建物の耐震性を連続体解析手法で解析し、所定の地震により構造物に大きな損傷が発生すると予想される場合の建物の耐震性を不連続体解析手法で解析する。具体的には、震度3未満の地震が発生した場合、解析部134は、建物は比較的小さな損傷を受けると想定し、建物が連続体であるとして有限要素法で解析する。一方、震度6以上の地震が発生した場合、解析部134は、建物は比較的大きな損傷を受け、ひび割れ又は破壊が発生することを想定し、建物が不連続体であるとして個別要素法で解析する。震度3以上震度6未満の地震が発生した場合、解析部134は、例えば有限要素法及び個別要素法の両方を用いて解析する。
【0071】
つまり、解析する対象となる地震の強度が低い場合には、ひび割れの発生及び構造部材の損傷の回避に着目した解析を行うことが望ましいため、そのような解析の計算に適した有限要素法が好ましい。一方、解析する対象となる地震の強度が高い場合には、構造部材の破損又は壁の建物の崩壊に着目した解析を行うことが望ましいため、そのような解析の計算に適した有限要素法が好ましい。
【0072】
また、解析部134は、少なくとも2以上の解析手法(個別要素法と有限要素法を含むが、これに限らない。)を適用できるようにし、ひび割れの発生及び構造部材の損傷の回避に着目した解析を行う場合と、構造部材の破損又は壁若しくは建物の崩壊に着目した解析を行う場合とで、計算結果の精度や計算速度又はその両方の観点から、各々の解析に適した解析手法を適用できるようにしてもよい。このように、解析する対象となる地震の強度によって解析手法を変えることで、それぞれの地震の強度範囲における解析結果の精度や計算速度又はその両方を向上させることができる。解析部134は、個別要素法と有限要素法を組み合わせることで、解析結果の精度をさらに向上させてもよい。
【0073】
解析部134は、このような解析をした結果に基づいて、建物のどの部分に亀裂が入るか、建物のどの部分が損壊するかを示す解析結果情報を作成する。解析部134は、塗布パターンと、地震の強度と、当該地震が発生した後の建物の状態とを関連付けた解析結果情報を作成する。解析部134は、作成した解析結果情報を出力部135に入力する。
【0074】
出力部135は、解析部134から入力された解析結果情報に基づいて、ユーザUに対して推奨する塗布パターンを示すパターン情報を出力する。具体的には、出力部135は、図2及び図3に示したような、複数の塗布パターンそれぞれに対応する塗布範囲に塗料が塗布された状態で所定の強度の地震が発生した場合の建物の耐震性を建物構造情報に基づいて解析した結果に基づいて決定した複数の塗布パターンの少なくともいずれかを示すパターン情報を出力する。具体的には、出力部135は、塗布範囲、各塗布範囲において塗布する塗料の種別、各塗布範囲の塗布厚を示すパターン情報を出力する。
【0075】
出力部135は、通信部11を介して、パターン情報と、地震の強度と、当該地震が発生した後の建物の状態を示す情報とを情報端末2に送信することにより、図2及び図3に示したような画面を情報端末2に表示させる。このような画面をユーザUが見ることにより、ユーザUは、どの範囲にどの程度の厚みで塗料を塗布するべきかを判断することができる。
【0076】
出力部135は、建物の耐震性が基準レベル以上であることを示す結果に対応する一以上の塗布パターンを示すパターン情報を出力してもよい。基準レベルは、例えばユーザUにより設定されたレベル(すなわち耐震性能の要求レベルに対応するレベル)であるが、予め決定されて記憶部12に記憶されたレベルであってもよい。
【0077】
基準レベルは、複数の異なる地震の強度に対応する複数の基準レベルを含んでいてもよい。具体的には、5年に1回発生するような比較的小さな地震に対しては、入居可能な状態(Immediate Occupancy)が維持され、100年に1回発生するような比較的大きな地震に対しては、倒壊を免れる状態(Collapse Prevention)が維持されるという複数の基準レベルを含んでいてもよい。この場合、出力部135は、例えば、ユーザUが設定した条件を満たす基準レベル以上であることを示す結果に対応する一以上の塗布パターンを示すパターン情報を出力する。
【0078】
基準レベルは、建物の部位ごとに定められていてもよい。この場合、出力部135は、地震が発生した後の建物の各部位の状態が、各部位に対応する基準レベル以上になる塗布パターンを示すパターン情報を出力する。出力部135がこのように動作することで、地震が発生した後にも建物の各部位が良好な状態を維持できる塗布パターンをユーザUが把握しやすくなる。
【0079】
出力部135は、地域と基準レベルとが関連付けられたデータを参照することにより、情報取得部132が取得した情報が示す地域における基準レベル以上の耐震性を実現できる塗布パターンを示すパターン情報を出力してもよい。出力部135は、地域と建物の部位との組み合わせに関連付けられた基準レベル以上の耐震性を実現できる塗布パターンを示すパターン情報を出力してもよい。出力部135がこのように地域に関連付けられた基準レベルに基づいて動作することで、ユーザUが、建物が建てられている地域でどの程度の強度の地震が発生するのかといった点や、どの程度の耐震性が求められるのかといった点を把握していない場合であっても、建物が建てられている地域において適切な塗布パターンを把握することが可能になる。
【0080】
ところで、塗布パターンには塗布範囲と塗布厚が含まれているので、塗布範囲に対応する面積と塗布厚とを乗算することで、塗布パターンに基づいて塗料を塗布するために要する塗料の量は一意に定まる。そこで、出力部135は、出力するパターン情報に対応する塗布パターンで塗料を塗布する場合に必要になる塗料の量を示す情報をさらに出力してもよい。出力部135は、各塗料の量に各塗料の単価を乗算することにより、塗料のコストを示す情報をさらに出力してもよい。出力部135が必要な塗料の量を示す情報を出力することで、ユーザUは、耐震性とともに予算も考慮した上で、どの塗布パターンを採用するかを決定しやすくなる。
【0081】
[情報処理装置1における処理の流れ]
図6は、情報処理装置1における処理の流れを示すフローチャートである。情報処理装置1に示すフローチャートは、ユーザUが情報端末2において、塗布パターンを決定するためのアプリケーションソフトウェアを起動した時点から開始している。図6に示す例においては、ユーザUが建物を撮影することにより生成された画像データが建物の建物構造情報として使用されることが想定されている。
【0082】
まず、構造情報取得部131は、通信部11を介して、情報端末2から送信された画像データを取得する(S1)。パターン決定部133は、構造情報取得部131が取得した画像データに基づいて、建物の構造を特定する(S2)。
【0083】
また、情報取得部132は、通信部11を介して、情報端末2から送信された建物位置情報を取得する(S3)。解析部134は、地盤情報記憶部121及び地震関連情報記憶部122を参照することにより、構造情報取得部131が取得した建物位置情報が示す地域において想定される地震の強度を特定する(S4)。ステップS2とステップS4の処理の順序は任意である。
【0084】
続いて、パターン決定部133は、特定した建物の構造に基づいて塗布パターンの候補を決定する(S5)。パターン決定部133は、決定した塗布パターンを解析部134に通知する。
【0085】
解析部134は、通知された塗布パターンで塗料が塗布された建物が建てられている地域に、S4において特定された強度の地震が発生した場合に建物が受ける損傷の大きさを推定する(S6)。解析部134は、解析する対象となる建物の構造物に生じると推定される損傷の大きさが閾値未満である場合(S7においてYES)、有限要素法等の連続体解析手法を用いて建物の耐震性を解析する(S8)。解析部134は、解析する対象となる建物の構造物に生じると推定される損傷の大きさが閾値以上である場合(S7においてNO)、個別要素法等の不連続体解析手法を用いて建物の耐震性を解析する(S9)。
【0086】
解析部134は、解析した結果が示す建物の耐久性(すなわち耐震性)が、建物が建てられている地域において要求される基準レベル未満であると判定した場合(S10においてNO)、S5に戻って別の塗布パターンに対して建物の耐震性を解析する。解析部134は、解析した結果が示す建物の耐震性が、建物が建てられている地域において要求される基準レベル以上であると判定した場合(S10においてYES)、基準レベルを満たす塗布パターンの候補数が、例えばユーザUが所望する数以上に達しているかどうかを判定する(S11)。
【0087】
出力部135は、基準レベルを満たす塗布パターンの候補数が所定数以上に達したと判定した場合(S11においてYES)、図2及び図3に示したような解析結果を出力する(S12)。
【0088】
なお、複数の解析結果を出力する場合、耐久性の観点から他の解析結果よりも良好な結果となっているものについては「耐久性が高い」等の表示を付加し、また塗料の量又は塗料のコストの観点から他の解析結果よりも良好な結果となっているものについては「塗料の量が少ない」又は「塗料コストが安い」等の表示を付加すること等により、各解析結果にその特徴(他の解析結果と比べた特徴等)を示した内容を付加して表示するようにしてもよい。
【0089】
また、複数の解析結果を出力する場合に、耐久性の観点からその表示の順番をソートして、耐久性が良好であるものから上から順に表示したり、塗料の量又は塗料のコストの観点からその表示の順番をソートして、塗料の量又は塗料のコストが良好であるものから上から順に表示したりできるようにしてもよい。また、これらの表示の順番の設定をユーザUの好み(耐久性の観点を特に重視するか、塗料の量又は塗料のコストの観点を特に重視するか等)に応じて、例えば情報端末2の入力により、予め設定できるようにしてもよい。
【0090】
出力部135は、基準レベルを満たす塗布パターンの候補数が所定数以上に達していないと判定した場合(S11においてNO)、S5に戻って別の塗布パターンに対して建物の耐震性を解析する。所定数は、例えばユーザUが情報端末2に入力し、情報端末2から情報処理装置1に通知された数であるが、予め記憶部12に記憶された数であってもよい。
【0091】
[変形例]
上記の説明では、情報処理システムSが情報処理装置1及び情報端末2を備えており、建物の耐震性の向上効果が期待できる範囲に塗料を塗布するための情報を情報処理装置1が情報端末2に提供する場合を例示したが、情報処理システムSの構成はこれに限らない。情報端末2が情報処理装置1の機能を有しており、情報端末2が単体で、建物の耐震性の向上効果が期待できる範囲に塗料を塗布するための情報を表示するように構成されていてもよい。
【0092】
また、上述した図3の「塗布パターン2」では、R1~R3の各領域を重複しないように区別して示してあるが、これに代えて、R1~R3の各領域の境界部分を一部重複するように示してもよい。R1~R3の各領域の境界部分を一部重複するように塗布することで、その境目の地震応力に対する耐性をより向上させることができる。
【0093】
さらに、上述したR1~R3の各領域の境界部分を一部重複させる方法に代えて、R1~R3の各領域の境界部分をグラデーションで塗布するようにしても良い。建物への塗料の塗布は1回の施工で全量を塗布しない場合があるので、例えば、図3の「塗布パターン2」のR2領域とR3領域の境界で言えば、(例えば、R2領域とR3領域ともに4回の施工で全量の塗布を行うとした場合に)R2領域側からR3領域側に向けて、(1)塗料Xによる塗布を4回とする領域(R2領域)、(2)塗料Xによる塗布を3回及び塗料Yによる塗布を1回とする領域、(3)塗料Xによる塗布を2回及び塗料Yによる塗布を2回とする領域、(4)塗料Xによる塗布を1回及び塗料Yによる塗布を3回とする領域、(5)塗料Yによる塗布を4回とする領域(R3領域)として、(2)~(4)によりR2領域とR3領域の境界をグラデーションで塗布するようにしてもよい。
【0094】
さらに、上記情報処理装置1に入力する情報に(建物構造情報及び建物位置情報自体又はこれらの情報に付加して)建物のどの塗布面に塗布を行うか、という情報を加味してもよい。例えば、建物に東西南北の4面がある場合であって、その北面が隣接建物との位置が近すぎて塗装できない場合には、東西南の3面だけで塗装する場合もある。このような場合に対応するために、上記情報処理装置1に入力する情報に建物のどの塗布面に塗布を行うかという情報を加味してもよい。
【0095】
さらに、上述した地震関連情報には、ユーザUにより設定可能な情報を含めるようにしてもよい。例えば、過去に発生した地震の強度に代えて、ユーザUが設定した地震の強度(耐震等級を設定する等の方法を用いてよい。)を用いることによって、ユーザUの耐震要望に応じた塗布パターンの提示をすることができるようになる。
【0096】
[情報処理装置1による効果]
以上説明したように、パターン決定部133は、建物の建物構造情報に基づいて、建物を補強するための塗料の塗布範囲又は塗布厚の少なくともいずれかが異なる複数の塗布パターンを決定する。そして、解析部134は、複数の塗布パターンそれぞれに対応する塗布範囲に塗料が塗布された状態で所定の強度の地震が発生した場合の建物の耐震性を建物構造情報に基づいて解析する。
【0097】
出力部135は、解析した結果に基づいて、基準レベル以上の耐震性になる塗布パターンを示すパターン情報を情報端末2に対して出力する。情報処理装置1がこのように動作することで、ユーザUは建物の耐震性を十分なレベルにすることができる塗布範囲や塗布厚を把握することができるので、建物の耐震性が向上するように塗料を適切に塗布することが可能になる。
【0098】
なお、以上の実施の形態においては、情報処理装置1が建物構造情報を取得し、建物構造情報を用いて塗料の塗布範囲及び塗布厚を決定する場合を例示したが、情報処理装置1が塗布範囲及び塗布厚を決定する方法は、これに限らない。情報処理装置1は、建物構造情報を用いることなく、上述したように、ユーザU又は作業者により設定されたコストの許容レベル、塗料の塗布に用いるツールの種別、塗料の粘性又は要求される作業性の少なくともいずれかの条件に基づいて、塗料の塗布範囲又は塗布厚の少なくともいずれかを決定してもよい。また、情報処理装置1は、トレードオフの関係を有する場合があるこれらの条件のうち、ユーザU又は作業者によって設定された優先順位が相対的に高い条件が満たされるように塗布範囲及び塗布厚を決定してもよい。
【0099】
情報処理装置1が、これらの情報を用いて塗布範囲又は塗布厚の少なくともいずれかを決定することで、作業者の経験と勘に基づいて塗布範囲及び塗布厚が決められてしまうことで、ユーザUが期待するコストを達成できなかったり、必要以上に作業に時間を要してしまったりするという課題を解決することができる。
【0100】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0101】
1 情報処理装置
2 情報端末
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
121 地盤情報記憶部
122 地震関連情報記憶部
123 建物情報記憶部
124 材料特性情報記憶部
131 構造情報取得部
132 情報取得部
133 パターン決定部
134 解析部
135 出力部
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6