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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011310
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ダンプトラックの荷台被覆装置
(51)【国際特許分類】
   B60P 1/28 20060101AFI20240118BHJP
   B62D 33/023 20060101ALI20240118BHJP
   B60R 13/01 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B60P1/28 Z
B62D33/023 Z
B60R13/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113213
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515310951
【氏名又は名称】未来テクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】井坂 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】丹澤 文秀
(72)【発明者】
【氏名】山口 曜士郎
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 亮
(72)【発明者】
【氏名】大森 健吾
(57)【要約】
【課題】荷台を改良せずに、高い取付け力で荷台カバーを荷台に対して着脱可能に取付けできる荷台被覆装置を提供すること。
【解決手段】着脱式の荷台カバー30と、荷台11の内側前部に移動不能に設置する着脱式のサポート装置40とを具備し、荷台カバー30は底膜31に一体に付設した複数の懸架ベルト36とを具備し、サポート装置40は荷台11の内側前面に配置する一対の押圧板41.41と、該押圧板の間に横架した長さ調整機能を具備する伸縮梁42とを少なくとも具備し、荷台カバー30は懸架ベルト36を介してサポート装置40の一部の掛止要素に係留可能に構成した。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダンプトラックの荷台の床面と周壁を被覆可能な有底構造を呈する着脱式の荷台カバーと、荷台の内側前部に移動不能に設置し、荷台の内面から反力を得て荷台カバーを位置決めする着脱式のサポート装置とを具備するダンプトラックの荷台被覆装置であって、
前記荷台カバーは荷台の床面を被覆する底膜と、荷台の周壁を被覆する周膜と、底膜に一体に付設した複数の懸架ベルトとを具備し、
前記サポート装置は荷台の側壁の内側前面に相対向して配置する一対の押圧板と、該押圧板の間に横架した長さ調整機能を具備する単数または複数の伸縮梁とを少なくとも具備すると共に、荷台の設置幅に合わせて伸縮梁の長さ調整を行った一対の押圧板が荷台の内面に着脱可能であり、
前記荷台カバーは懸架ベルトを介してサポート装置の一部の掛止要素に係留可能であることを特徴とする、
ダンプトラックの荷台被覆装置。
【請求項2】
想定される荷台カバーに作用する積載物の滑落力に対して、荷台に対するサポート装置の取付け力が卓越するように構成してあることを特徴とする、請求項1に記載のダンプトラックの荷台被覆装置。
【請求項3】
前記荷台カバーが液密構造を呈することすることを特徴とする、請求項1に記載のダンプトラックの荷台被覆装置。
【請求項4】
前記懸架ベルトを荷台カバーの底膜の少なくとも両側部に付設してあることを特徴とする、請求項1に記載のダンプトラックの荷台被覆装置。
【請求項5】
前記懸架ベルトは荷台カバーの底膜の長手方向に沿って一体化した補強部と、底膜の前方へ突出した係留部とを具備し、前記係留部がサポート装置の一部に係留可能であることを特徴とする、請求項1に記載のダンプトラックの荷台被覆装置。
【請求項6】
前記サポート装置の掛止要素が一対の押圧板の対向面に突設した片持ち梁であることを特徴とする、請求項1に記載のダンプトラックの荷台被覆装置。
【請求項7】
前記サポート装置の掛止要素が一対の押圧板の対向面に横架した伸縮梁であることを特徴とする、請求項1に記載のダンプトラックの荷台被覆装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷台の内面をシート製の荷台カバーで被覆する被覆技術に関し、特にダンプアップ時に荷台カバーが積載物と一緒に滑落せず、必要な時に簡単な操作で荷台カバーを載せ替えできる、ダンプトラックの荷台被覆装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダンプトラックを用いた土砂等の積載物の運搬時において、ダンプトラックの荷台の床面の保護や積載物の付着防止等を目的として、ダンプトラックの荷台の床面を一枚ものの保護シートで覆うことが知られている。
荷台の床面を単に保護シートで覆っただけでは、ダンプアップ時に保護シートが積載物と一緒にずり落ちるため、繰り返し使用するためには保護シートを荷台に固定しておく必要がある。
【0003】
保護シートを荷台の床面に取付ける手段としては、接着剤を使用して保護シートを貼付する方法(特許文献1)や、ボルト、ナットと帯板を使用して保護シートを固定する方法(特許文献2)等が知られている。
【0004】
さらに保護シートを荷台の床面に固定する他の手段として、荷台の前端部に1本のパイプサポートを取付け、パイプサポートに対して複数のシャックルを取り付け、各シャックルを介して緩衝シートをパイプサポートに連結することが知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭52-130312号公報
【特許文献2】特開2004-51029号公報
【特許文献3】特開2012-101728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の保護シートの取付け技術は次の問題点を内包している。
<1>特許文献1に記載の取り付け技術は、強力な接着剤を使用するため、一度、貼り付けると保護シートを簡単に取り外すことができない。
<2>特許文献2に記載の取り付け技術は、荷台側に複数の受け金具を溶接する等して加工しておく必要であり、荷台の改造コストがたかくつく。
<3>ダンプトラックの荷台の寸法(幅、長さ)は、メーカにより様々であり、同一寸法ではない。
そのため、荷台に保護シートを取り付ける際に使用する取付具は、特定の荷台寸法に合わせて製作した専用品となり、汎用性に乏しい。
<4>1本のパイプサポートと複数のシャックルを介して緩衝シートを取り付ける特許文献3に記載の取付け手段にあっては、ダンプアップ時に緩衝シートに引張られてパイプサポートのパイプ本体が撓むため、パイプサポートによる取付力が低下する。
パイプサポートの取付力が不足すると、荷台内でパイプサポートが緩衝シートと一緒に滑落する。
<5>特許文献3に記載の取付け手段は、シャックルを介して緩衝シートを点状に支持する構造であるため、ダンプアップ時において、シャックルの連結箇所に荷重が集中するので緩衝シートの連結部が破れ易い。
【0007】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは以上の問題点を解消できる、ダンプトラックの荷台被覆装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ダンプトラックの荷台の床面と周壁を被覆可能な有底構造を呈する着脱式の荷台カバーと、荷台の内側前部に移動不能に設置し、荷台の内面から反力を得て荷台カバーを位置決めする着脱式のサポート装置とを具備するダンプトラックの荷台被覆装置であって、前記荷台カバーは荷台の床面を被覆する底膜と、荷台の周壁を被覆する周膜と、底膜に一体に付設した複数の懸架ベルトとを具備し、前記サポート装置は荷台の側壁の内面に相対向して配置する一対の押圧板と、該押圧板の間に横架した長さ調整機能を具備する単数または複数の伸縮梁とを少なくとも具備すると共に、荷台の設置幅に合わせて伸縮梁の長さ調整を行った一対の押圧板が荷台の内側前面に着脱可能であり、前記荷台カバーは懸架ベルトを介してサポート装置の一部の掛止要素に係留可能である。
本発明の他の形態において、想定される荷台カバーに作用する積載物の滑落力に対して、荷台に対するサポート装置の取付け力が卓越するように構成してある。
本発明の他の形態において、前記荷台カバーが液密構造を呈する。
本発明の他の形態において、前記懸架ベルトを荷台カバーの底膜の少なくとも両側部に付設してある。
本発明の他の形態において、前記懸架ベルトは荷台カバーの底膜の長手方向に沿って一体化した補強部と、底膜の前方へ突出した係留部とを具備し、前記係留部とサポート装置の一部に係留可能である。
本発明の他の形態において、前記サポート装置の掛止要素が一対の押圧板の対向面に突設した片持ち梁である。
本発明の他の形態において、前記サポート装置の掛止要素が一対の押圧板の対向面に横架した伸縮梁である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は少なくともつぎのひとつの効果を奏する。
<1>本発明では、荷台カバーを荷台に直接固定して取り付けるのではなく、荷台の内側前部に設置したサポート装置に対して、荷台カバーの底膜に一体に付設した懸架ベルトを取り付けるように構成した。
そのため、荷台をまったく改造せずに荷台カバーを簡易な取付け構造により取付けできる。
<2>ダンプアップ時に荷台から荷台カバーを垂下させて荷台カバーの滑落を防止できるので、荷台カバーを繰り返し使用することができる。
<3>有底構造を呈する荷台カバーが高い防水性(遮水性)を有しているので、液体を含む積載物を搭載していても、搬送中に漏液を確実に防止できる。
<4>荷台カバーに作用する積載物の滑落力に対して、荷台に対するサポート装置の取付け力が卓越するように構成してあるため、ダンプアップ時に荷台カバーに積載物の滑落力が作用しても、荷台カバーはサポート装置への垂下状態を維持できる。
<5>荷台カバーの底膜に設けた懸架ベルトの補強作用により、ダンプアップ時に積載物が滑落しても荷台カバーの底膜が破断し難い。
<6>サポート装置は伸縮梁の長さ調整をすることでサポート装置の横幅寸法を任意に調整できる。
そのため、メーカによって荷台の横幅寸法が多少異なっても、サポート装置を現場で調整して設置できるので、メーカ毎の専用品を製作しなくて済む。
<7>サポート装置に対して荷台カバーが着脱可能であるため、荷台にサポート装置を残したまま荷台カバーを簡単に付け替えすることができる。
<8>荷台に対してサポート装置が着脱可能であるため、必要に応じてサポート装置の幅を狭くするだけの操作で、荷台からサポート装置を取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例1に係る荷台被覆装置とダンプトラックの荷台との関係の説明図
図2】荷台被覆装置を構成する荷台カバーの展開図
図3】ダンプトラックの荷台に取り付けた一部を破断した荷台被覆装置の平面図
図4図3におけるIV-IVの断面図
図5】荷台被覆装置のサポート装置と荷台カバーの一部を省略した斜視図
図6】伸縮梁の伸縮機構の説明図
図7】荷台被覆装置を構成するサポート装置の設置方法の説明図で、(A)はサポート装置の横断図、(B)はサポート装置の平面図
図8】荷台被覆装置の作用の説明図で、(A)は荷台が水平時における荷台被覆装置のモデル図、(B)は荷台のダンプアップ時における荷台被覆装置のモデル図
図9】実施例2に係る荷台被覆装置の説明図で、(A)は荷台カバーの底膜を見上げたときの荷台被覆装置の平面図、(B)は(A)におけるB-Bの断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施例1]
1.ダンプトラック
図1に荷台被覆装置20の取付対象であるダンプトラック10の一例を示す。
ダンプトラック10は昇降可能な荷台11を具備するリアダンプである。
荷台11はフラットな床面12と、床面12の四方を覆う前壁13、一対の側壁14および後扉15とを具備する。
本例では後扉15が上開き式(Fゲート)の形態について説明するが、後扉15は下開き式であってもよい。
【0012】
以降の説明にあたり、「前部」とはダンプトラック10の前進方向側を意味し、荷台11の「幅寸法」とは荷台11の長手方向に対して直交する方向の幅を意味するものとして説明する。
【0013】
2.荷台被覆装置
ダンプトラック10の荷台被覆装置20は、荷台11のダンプアップ時に荷台カバー30が滑落しないように荷台カバー30を懸架して被覆するための装置である。
荷台被覆装置20は、荷台11の内周面を被覆可能に製作した函形の荷台カバー30と、荷台カバー30を荷台11の内側に位置決めするサポート装置40とからなる。
サポート装置40は荷台11に対して着脱が可能であり、荷台カバー30はサポート装置40に対して着脱が可能である。
【0014】
<1>荷台カバー(図1,2)
荷台カバー30は、シート状物をダンプトラック10の荷台11の内面を被覆可能な寸法に形成した防水性の函体である。
図2は下方から見上げた荷台カバー30の展開図の一例を示していて、同図の一点鎖線はシートの折線を示している。
【0015】
荷台カバー30は荷台21の床面12を覆う底膜31と、荷台21の周壁(前壁13、一対の側壁14および後部扉15)を覆う周膜32(前膜33、一対の側膜34および扉膜35)と、その底膜31の一部に積載物の滑落方向に沿って一体に付設した複数の懸架ベルト36とを具備する。
荷台カバー30は、底膜31と周膜32とを接合した有底構造を呈しいて、高い防水性(遮水性)を有している。
【0016】
<1.1>荷台カバーの素材
荷台カバー30の素材としては、耐久性と遮水性等に優れたゴムシート等の樹脂製シートや、ポリエステル等の公知の防水シートを使用できる。
【0017】
<1.2>底膜
底膜31は荷台11の床面12を被覆する矩形シートである。
底膜31の周囲の4辺は底膜31と連続性を有する周膜32(前膜33、一対の側膜34、扉膜35)を形成している。
【0018】
<1.3>周膜(図1,2)
周膜32は荷台11の前壁13、側壁14、後扉15の内面を被覆する長方形のシートである。
周膜32は前壁13を覆う前膜33と、側壁14を覆う一対の側膜34および後扉15を覆う扉膜35とからなる。
【0019】
周膜32を構成する各膜33~35の側端辺の接合部は、漏水が生じないように、融着、接着等で高い止水性を付与して接合する。
側膜34と扉膜35との間は、扇状の折畳み膜35aを介装して、折畳み膜35aの伸縮により扉膜35を単独で傾倒を許容するように構成する。
【0020】
前膜33は、荷台11の側壁14の高さより高い寸法に設定しておくとよい。
これは、荷台カバー30内に積載物を投入した際に、前膜33の自由変形を許容させるためである。
【0021】
前膜33はサポート装置40の一部の伸縮梁42に係脱が可能である。
側膜34と扉膜35は荷台11の一部に係脱が可能である。
【0022】
なお、側膜34は側壁14の内面だけを覆う寸法でもよいし、側壁14の内面および外面の両面を被覆可能な寸法でもよい。
【0023】
<1.4>懸架ベルト(図2~4)
荷台カバー30の底膜31には、底膜31の長手方向に沿って複数の懸架ベルト36を一体に付設する。
【0024】
<1.4.1>懸架ベルトの機能
本発明では、荷台カバー30を荷台11に直接固定して取り付けるのではなく、荷台11の内部に位置決めしたサポート装置40に対して、荷台カバー30を構成する底膜31の前辺を取り付けるようにした。
底膜31の前辺をサポート装置40に直接取り付けただけの構造であると、ダンプアップ時に底膜31に荷重が集中して底膜31が破損し易い。
【0025】
そこで本発明では、懸架ベルト36を介して底膜31をサポート装置40に取り付けることで、ダンプアップ時において、底膜31に作用する荷重を分散して底膜31が破損することを回避するように構成した。
【0026】
<1.4.2>懸架ベルトの構成
懸架ベルト36は、底膜31の長手方向に沿って一体に付設した補強部36aと、補強部36aの前部に連続性を持たせて形成したループ状の係留部36bとを有する。
懸架ベルト36の素材としては、例えば引張強度に優れたポリエステル等の素材をベルト状に編み込んだものを使用できる。
補強部36aと係留部36bは、同一のベルト素材で形成してもよいし、別途のベルト素材で形成してもよい。
【0027】
<1.4.2.1>補強部
補強部36aは底膜31の全長とほぼ同一の長さを有する。
底膜31の全長に亘って補強部36aを一体に付設することで、底膜31の全長に亘って引張耐力を高めることが可能となる。
底膜31と補強部36aの一体化方法としては、例えば縫合手段や接着手段等を適用できる。
補強部36aで底膜31を補強できるので、底膜31の全体を高強度の素材で形成しなくてよく、荷台カバー30の素材に安価なものを使用できる。
【0028】
<1.4.2.2>係留部
係留部36bは底膜31の前辺から前方へ向けて突出した接続要素であり、サポート装置40の片持ち梁43に対して係脱が可能である。
【0029】
<1.4.3>懸架ベルトの設置数
本例では底膜31の左右の両側辺部に2本の懸架ベルト36を付設した形態について説明するが、懸架ベルト36は間隔を隔てて3本以上設置してもよい。
【0030】
<2>サポート装置(図1,5)
サポート装置40は、荷台11の内側に荷台カバー30を取り付けるための金属製の支保構造体である。
サポート装置40は相対向する一対の押圧板41,41と、押圧板41,41の間に横架した長さ調整機能(伸長機能)を具備する単数または複数の伸縮梁42と、押圧板41,41の対向面にそれぞれ突設した棒状の片持ち梁43とを具備する。
サポート装置40は伸縮梁42の両端を一対の押圧板41,41に固着してユニット化してある。
サポート装置40は伸縮梁42の長さを調整することで一対の押圧板41,41の押圧間隔が調整性可能である。
【0031】
<2.1>押圧板(図3~5)
押圧板41は摩擦抵抗式の平板であり、ダンプトラック10の荷台11の左右の側壁14,14の内面に当接して位置決めする機能を有する。
押圧板41の全体形状は特に制約がなく、本例では矩形の押圧板41について説明するが、その他に多角形、円形、楕円形等でもよい。
【0032】
<2.2>伸縮梁(図3~5)
伸縮梁42は一対の押圧板41,41の間を支保する部材である。
伸縮梁42は、棒状またはパイプ状の梁本体42aと、梁本体42aの端部に設けた伸縮機構42bとを具備する。
【0033】
<2.2.1>伸縮梁と押圧板の固着
本例で例示した伸縮梁42と押圧板41の取付け構造について説明すると、伸縮梁42の端部に位置する伸縮機構42bの外端部に当板42cを溶接等により固着し、該当板42cを押圧板41に溶接等により固着してある。
【0034】
<2.2.2>伸縮機構
伸縮機構42bは伸縮梁42の全長を調整するための長さ調整機構である。
図6に例示したねじ式の伸縮機構42bについて説明すると、ねじ式の伸縮機構42bは梁本体42aの端部に内挿したボルト42dと、ボルト42dに回転可能に螺着したナット42eとを具備し、ナット42eの正回転または逆回転操作により、伸縮梁42の全長を調整する。
伸縮機構42bはねじ式に限定されず、流体式であってもよい。
【0035】
<2.2.3>伸縮機構の設置位置
図3を参照して、伸縮梁42に対する伸縮機構42bの設置位置について説明する。
本例では伸縮機構42bを梁本体42aの両端部にそれぞれ配置した形態を示すが、伸縮機構42bは梁本体42aの一端部に設けたり、梁本体42aの中間部に介挿したりしてもよい。
【0036】
<2.3>伸縮梁の設置数(図4,5)
本例では、相対向する一対の押圧板41,41の間において、押圧板41の前後および上下の三箇所に3本の伸縮梁42を配置した形態を示しているが、伸縮梁42の設置数は3本に限定されない。
伸縮梁42は1本または2本でもよいし、4本以上でもよい。
【0037】
<2.4>片持ち梁(図5
片持ち梁43は、荷台カバー30に設けた懸架ベルト36の係留部36bを掛止するための掛止要素である。
片持ち梁43は押圧板41の対向面に突設した棒状またはパイプ状のフック本体43aと、フック本体43aの先端に設けたストッパ43bとを有する。
フック本体43aは当板43cを介して押圧板41の内面に溶接手段等により固着する。
【0038】
<3>サポート装置の取付け力について
本発明では、想定される荷台カバー30に作用する積載物の滑落力に対して、サポート装置40の取付け力(押圧板41と荷台11の側壁14の内面14aとの接触面の摩擦抵抗力)が卓越するように構成してある。
【0039】
本発明では、押圧板41の大きさと伸縮梁42の設置本数によってサポート装置40の取付け力を調整することができる。
押圧板41の面積を大きくすることで、荷台11の側壁14の内面14aとの接触面積が大きくなり、伸縮梁42の設置数に比例して押圧板41を介した荷台11の側壁14の内面14aに対する押付力が大きくなる。
したがって、想定される荷台カバー30に作用する積載物の滑落力に対してサポート装置40の位置決め力が対抗し得るように、押圧板41の大きさと伸縮梁42の設置数を適宜選択する。
【0040】
[荷台被覆装置の使用方法]
1.荷台被覆装置の設置方法
荷台被覆装置20を構成するサポート装置40と荷台カバー30の設置方法について説明する。
【0041】
<1>サポート装置の先行設置
図7を参照しながらサポート装置40の設置方法について説明する。
一対の押圧板41,41を荷台11の側壁14の内面14aに向けた状態で、サポート装置40を荷台11の前方に載置する(図7(A))。
【0042】
<2>サポート装置の突っ張りによる取付け
つぎに、伸縮機構42bにより各伸縮梁42を伸長して、一対の押圧板41,41の対向間隔を徐々に拡げる。
伸縮梁42の伸長を続けて一対の押圧板41,41を荷台11の側壁14の内面14aに押し付ける(図7(B))。
押圧板41,41が所定の押付力(突っ張り力)に達するまで、各伸縮梁42の伸長操作を継続して行う。
【0043】
このように、荷台11の内側で、荷台11の設置幅に合わせて伸縮梁42の長さ調整を行い、一対の押圧板41,41を荷台11の側壁14の内面14aへ強く押し付けることでサポート装置40を荷台11の最前部に変位不能に取付ける。
【0044】
サポート装置40は伸縮梁42の長さ調整をすることでサポート装置40の横幅寸法(突っ張り寸法)を任意に調整することが可能である。
そのため、メーカによって荷台11の横幅寸法が多少異なっても、サポート装置40を現場で調整して設置できるので、メーカ毎の専用品を製作しなくて済み、汎用性に富む。
【0045】
<3>荷台カバーの設置(図1,3,4)
図1に示すように、ダンプトラックの荷台11の寸法に合わせて製作した函状の荷台カバー30を荷台11の内側に被せる。
この際、荷台カバー30の底膜31、側膜34、扉膜35を、それぞれ荷台11の床面12、側壁14、後扉15に被せる。
【0046】
<3.1>懸架ベルトの係留(図4,5)
底膜31に設けた懸架ベルト36の係留部36bをサポート装置40の片持ち梁43に係留する。
懸架ベルト36の係留部36bをサポート装置40に係留した状態で底膜31を荷台11の後方へ展張する。
片持ち梁43に設けたストッパ43bがフック本体43aに掛止した係留部36bの脱落を防止する。
【0047】
<3.2>荷台カバーの周膜の取付け
荷台カバー30の前膜33を、連結材38を介してサポート装置40の上位の伸縮梁42に取り付ける(図3,4)。
前膜33を起立状態で取り付けるには、例えば前膜33の周辺に複数のハトメ37を形成し、ハトメ37に取り付けたロープ紐等の連結材38を介してサポート装置40の伸縮梁42に取り付けることが可能である。
【0048】
荷台カバー30の側膜34と扉膜35は、連結材38を介して荷台11に取り付ける(図1,2)。
側膜34と扉膜35を荷台11に取り付けるには、例えば、各膜34~35の周辺に複数のハトメ37を形成し、ハトメ37に取り付けたゴムバンドやロープ紐等の連結材38を介して荷台11に取り付けることが可能である。
【0049】
各膜34~35を荷台11に取り付ける他の手段としては、磁石や面ファスナー等を適用することも可能である。
【0050】
2.搬送時とダンプアップ時における荷台被覆装置の作用
搬送時とダンプアップ時における荷台被覆装置20の各作用について説明する。
【0051】
<1>積載物の搭載
図8(A)は荷台11に設置した荷台カバー30内に土砂等の積載物50を搭載した状態を示している。
荷台カバー30内に積載物50を投入することで、荷台カバー30が荷台11内で押し広げらる。積載物50の側圧は最終的に荷台11が支持する。
【0052】
荷台カバー30の前膜33に積載物50の側圧が作用すると、前膜33が自由変形を許容して前膜33に作用する積載物50の側圧をサポート装置40または荷台11の前壁13に支持させることができる。
【0053】
<2>搬送時における漏液防止作用
有底構造を呈する荷台カバー30は、高い防水性(遮水性)を有している。
そのため、水等の液体を含む積載物50を搭載していても、荷台カバー30の内部に液体を貯留できるので、搬送中に液体の漏出を確実に防止することができる。
【0054】
<3>ダンプアップ時における荷台カバーの垂下作用
図8(B)は荷台11のダンプアップ時を示している。
本発明の荷台被覆装置20は、荷台カバー30の底膜31に設けた懸架ベルト36を介して、荷台11内に位置決めしたサポート装置40の一部に、荷台カバー30の前部を掛止した構造となっている。
【0055】
特に、荷台被覆装置20は、荷台カバー30に作用する積載物50の滑落力に対して、サポート装置40の位置決め力が卓越するように構成してある。
そのため、ダンプアップ時に荷台11の傾斜角度が大きくなって、荷台カバー30に積載物50の滑落力が作用しても、荷台カバー30はサポート装置40への垂下状態を維持することができる。
【0056】
さらに押圧板31に対して懸架ベルト36の取付け位置が偏倚しているので、ダンプアップ時に荷台被覆装置20に対して回転力が生じる。
荷台被覆装置20を構成する方形を呈する押圧板41,41が荷台11の床面12に当接しているので、荷台被覆装置20の回転を確実に規制できる。
そのため、荷台被覆装置20の位置決め力が低下することがない。
【0057】
このように、荷台カバー30はサポート装置40を介して荷台11に垂下して支持できるので、荷台11と共に荷台カバー30の傾斜角度が大きくなっても、荷台カバー30は積載物50と一緒に滑落せず、荷台カバー30による荷台11の内面の被覆作用が保持される。
そのため、荷台カバー30内に収容した積載物50のみが、荷台カバー30の底膜31に沿って滑落する。
【0058】
<4>懸架ベルトによる荷台カバーの補強作用
荷台カバー30の底膜31に沿って積載物50が滑落する際に、荷台カバー30に対して積載物50の滑落方向へ向けた引張力が作用する。
荷台カバー30に作用する引張力は、底膜31が最も大きく、側膜34に作用する引張力は底膜31と比べて比較的小さい。
最も大きな引張力が作用する荷台カバー30の底膜31には、その全長に亘って付設した懸架ベルト36が薄厚の底膜31の耐力を増強している。
そのため、積載物50の滑落時に底膜31が容易に引き千切られて破断することを効果的に防止している。
【0059】
<5>荷台カバーの繰り返し使用
積載物50の排出を終えたら、荷台11を基の水平位置に戻すと、荷台カバー30が荷台11に追従して水平位置に復帰する。
荷台11の内面を覆った荷台カバー30は、新たな積載物50の搭載に繰り返し使用する。
【0060】
<6>荷台カバーの交換作業
繰り返しの使用回数が増して荷台カバー30が老朽化したときは、サポート装置40を荷台11に残置したまま、サポート装置40から荷台カバー30を取り外し、新たな荷台カバー30に付け替える。
付け替えにあたり、サポート装置40に対して荷台カバー30の懸架ベルト36を付け替えると共に、荷台カバー30の周囲を荷台11に着脱するだけの簡単な作業で以て荷台カバー30を交換することができる。
【0061】
<7>サポート装置の取り外し作業
荷台11からサポート装置40を取り外したいときは、各伸縮梁42の収縮操作を行う。
サポート装置40の横幅を狭くして、押圧板41,41を荷台11の側壁14から離隔するだけの簡単な作業で以て、サポート装置40を荷台11から簡単に取り外すことができる。
サポート装置40を撤去したダンプトラック10は、別途の目的で使用することが可能である。
さらに撤去した荷台カバー30とサポート装置40は、別途のダンプトラック10に乗せ換えて使用することも可能である。
【0062】
[実施例2]
以降に他の実施例について説明するが、その説明に際し、前記した実施例と同一の部位は同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0063】
<1>懸架ベルトの他の掛止手段
先の実施例1では、荷台カバー30の懸架ベルト36を掛止するための掛止要素がサポート装置40の片持ち梁43である形態について説明したが、本例では掛止要素がサポート装置40の伸縮梁42である形態について説明する。
【0064】
<2>サポート装置
図9を参照して説明する。本例のサポート装置40は、相対向する一対の押圧板41,41と、押圧板41,41の間に横架した長さ調整機能(伸長機能)を具備する複数の伸縮梁42とにより構成する。
本例では、一対の押圧板41,41の間に複数の伸縮梁42を横架することを前提としていて、そのうちの一部の伸縮梁42を懸架ベルト36の係留部36bの掛止部材として活用する。
本例では、懸架ベルト36を押圧板41の最下位に位置する伸縮梁42に掛止する形態について示すが、懸架ベルト36の掛止対象の伸縮梁42は任意の高さのものを選択して使用してもよい。
【0065】
懸架ベルト36を掛止した伸縮梁42は、先の実施例1と同様に一対の押圧板41,41を押付けて位置決めする機能を有するだけでなく、懸架ベルト36を介した荷台カバー30の位置決め機能を併有する。
【0066】
懸架ベルト36を掛止した伸縮梁42は、ダンプアップ時に多少の撓み変形を生じるが、他の伸縮梁42は撓まないのでサポート装置40の必要な位置決め力を確保できる。
そのため、一部の伸縮梁42に懸架ベルト36を掛止しても、ダンプアップ時においてサポート装置40の滑落を確実に抑止することができる。
【0067】
<3>荷台カバー
図9(A)は荷台カバー30を底膜31の下方から見上げた状態を示している。
本例の荷台カバー30は、荷台21の床面12を覆う底膜31と、荷台21の周壁を覆う周膜32と、底膜31の全体に亘って一体に付設した複数の懸架ベルト36とを有する。
懸架ベルト36の補強部36aを底膜31の全長に亘って一体に付設することは先の実施例1と同様である。
【0068】
<3.1>懸架ベルトの設置間隔
先の実施例1では、底膜31の左右の両側部に2本の懸架ベルト36を付設した形態について説明したが、本例では、底膜31の全体に亘り、間隔を隔てて複数の懸架ベルト36を付設し、これら複数の懸架ベルト36を特定の伸縮梁42に掛止するようにしてもよい。
【0069】
底膜31に対する懸架ベルト36の設置間隔は均一でもよいし不均一でもよい。
懸架ベルト36の設置位置や設置間隔は、積載物の種類等に応じて適宜選択が可能である。
【0070】
<3.2>底膜の中央部に懸架ベルトを設置した場合
一般的に、土砂等の積載物を搭載した場合、ダンプアップ時において、搭載した積載物は均等に滑落せず、荷台の床面の中央部に位置する積載物が両側部に位置する積載物に対して先行して滑落する。
これは荷台の両側部に位置する積載物が、荷台の側壁と接して接触面積が増える分だけ滑落開始時間が遅れるからである。
【0071】
図9(A)に例示したように、底膜31の中央部付近に懸架ベルト36を追加して設けて補強しておくと、ダンプアップ時に荷台カバー30の底膜31の中央部に先行して引張力が作用しても、底膜31の中央部に作用する引張力を、懸架ベルト36とサポート装置40を通じて荷台11で支持することができる。
そのため、ダンプアップ時における底膜31の破断防止効果がさらに高くなる。
【0072】
さらに、底膜31の前端部に懸架ベルト36の交差方向に向けて交差補強ベルト39を一体に付設する場合もある。
交差補強ベルト39は懸架ベルト36と同一の素材で製作できる。
交差補強ベルト39を追加設置することで、底膜31の前端部における荷重伝達性を改善できるので、ダンプアップ後において荷台カバー30の底膜31にシワが生じ難くなる。
【0073】
<4>本例の作用効果
本例の作用効果は基本的に既述した実施例1と同様である。
【0074】
特に本例ではつぎの効果を奏する。
1)片持ち梁43を省略することで、サポート装置40を小型でかつ軽量に製作できる。
2)懸架ベルト36を伸縮梁に掛止することで、荷台カバー30の底膜31の任意の位置に懸架ベルト36を付設して掛止することができる。
3)懸架ベルト36の設置数に比例して荷台カバー30の底膜31の補強効果が向上する。
【符号の説明】
【0075】
10・・・・ダンプトラック
11・・・・ダンプトラックの荷台
11・・・・荷台の床面
12・・・・荷台の前壁
13・・・・荷台の側壁
14・・・・荷台の後扉
20・・・・荷台被覆装置
30・・・・荷台カバー
31・・・・荷台カバーの底膜
32・・・・荷台カバーの周膜
33・・・・前膜
34・・・・荷台カバーの側膜
35・・・・荷台カバーの扉膜
36・・・・荷台カバーの懸架ベルト
36a・・・懸架ベルトの補強部
36b・・・懸架ベルトの係留部
38・・・・連結材
39・・・・交差補強ベルト
40・・・・懸架装置
41・・・・押圧板
42・・・・伸縮梁
42a・・・梁本体
42b・・・伸縮機構
43・・・・片持ち梁
50・・・・積載物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9