(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113102
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】組換えウイルス粒子の特徴付けのための分析超遠心分離法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/70 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
C12Q1/70
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024091914
(22)【出願日】2024-06-06
(62)【分割の表示】P 2022065460の分割
【原出願日】2016-01-19
(31)【優先権主張番号】62/105,714
(32)【優先日】2015-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン・アール・オリオーダン
(72)【発明者】
【氏名】ブレンダ・バーナム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】製造の均一性、純度および整合性に関して薬物製品品質をモニターするための、組換えウイルス粒子の調製物を特徴付ける方法を提供する。
【解決手段】組換えウイルス粒子の調製物を特徴付ける方法であって、a)該調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、およびc)C(s)分布での各ピーク下面積を積分して、各ピークの相対濃度を決定する工程であって、各ピークが組換えウイルスの組換えウイルス粒子の種に相当する工程を含む、前記方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えウイルス粒子の調製物を特徴付ける方法であって、
a)該調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、
b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、および
c)C(s)分布での各ピーク下面積を積分して、各ピークの相対濃度を決定する工程であって、各ピークが組換えウイルスの組換えウイルス粒子の種に相当する工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子のベクターゲノムの完全性を評価する方法であって、
a)該調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、
b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、および
c)S値に対応するプロット上のピークの存在によって該調製物中の組換えウイルス粒子の種を同定する工程であって、組換えウイルスの組換えウイルス粒子の具体的な種のゲノムサイズは、該種のS値を、周知のヌクレオチドサイズを有するカプシド化されたウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子のS値によって作成された標準曲線と比較することによって算出される工程
を含む、前記方法。
【請求項3】
C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルスの組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
組換えウイルス粒子の調製物中の空のカプシドまたは変種のサイズの組換えウイルスゲノムを含むカプシド粒子の存在を決定するための方法であって、
a)該調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、ならびに
b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程であって、インタクトな組換えウイルスゲノムを含む完全カプシド粒子に対するピーク以外の1つまたはそれ以上のピークの存在は、変種のサイズのゲノムを含むカプシド粒子および/または空のカプシドの存在を表す工程
を含む、前記方法。
【請求項5】
組換えウイルス粒子の調製物中の空のカプシド相対量を測定する方法であって、
a)該調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、
b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、
c)C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程、および
d)空のカプシド粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量を、インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量または調製物中の組換えウイルス粒子の総量と比較する工程
を含む、前記方法。
【請求項6】
組換えウイルス粒子の調製物中の変種の組換えウイルスゲノムを含むカプシド粒子また
は空のウイルスカプシド粒子の相対量を測定する方法であって、
a)該調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、
b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、
c)C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程、
d)インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子に対応しないS値を有する組換えウイルス粒子の量を、インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量または調製物中の組換えウイルス粒子の総量と比較する工程
を含む、前記方法。
【請求項7】
組換えウイルス粒子の調製物中の変種の組換えウイルスゲノムを含むカプシド粒子の相対量を測定する方法であって、
a)該調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、
b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、
c)C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程、
d)インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子または空のカプシド粒子に対応しないS値を有する組換えウイルス粒子の量を、調製物中の組換えウイルス粒子の総量と比較する工程
を含む、前記方法。
【請求項8】
組換えウイルス粒子の調製物中のインタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子の相対量を測定する方法であって、
a)該調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、
b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、
c)C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程、
d)インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量を、空のカプシド粒子、変種の組換えウイルスゲノムを含むカプシド粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量、および/または調製物中の組換えウイルス粒子の総量と比較する工程
を含む、前記方法。
【請求項9】
組換えウイルス粒子の調製物の精製の際に、空のカプシドおよび/または、変種の組換えウイルスゲノムを含むカプシド粒子の除去をモニターする方法であって、精製工程における1つまたはそれ以上の工程に続いて、調製物から組換えウイルス粒子サンプルを除去すること、ならびに請求項5~8のいずれか1項に記載の方法により、空のカプシドおよび/または変種の組換えウイルスゲノムを含むカプシド粒子の相対量についてサンプルを分析することを含み、空のカプシドおよび/または変種のゲノムを含むカプシドの完全カプシドに対する相対量における減少は、組換えウイルス粒子の調製物からの空のカプシドの除去を示す方法。
【請求項10】
空のカプシド粒子のS値に対応するピークの存在は、空のカプシド粒子の存在を示す、
請求項4~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
インタクトな組換えウイルスゲノムを含む完全カプシド粒子または空のカプシド粒子に対するピーク以外の1つまたはそれ以上のピークの存在は、変種のサイズのゲノムを含むカプシド粒子の存在を表す、請求項4~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
変種のサイズのゲノムを含むカプシド粒子は、切断型ゲノム、凝集体、組換え体および/またはDNA不純物を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子の不均一性を決定する方法であって、
a)該調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、
b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程であって、インタクトなウイルスゲノムを含むカプシドに相当するピークに追加してピークが存在することは、調製物中の組換え粒子の不均一性を示す工程
を含む、前記方法。
【請求項14】
追加のピークの存在は、空のカプシド粒子および/または変種のゲノムを含む組換えウイルス粒子の存在を示す、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
変種のゲノムは、切断型ウイルスゲノム、凝集体、組換え体および/またはDNA不純物である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程をさらに含む、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
組換えウイルス粒子の調製物の精製の際に組換えウイルス粒子の均一性をモニターする方法であって、精製工程における1つまたはそれ以上の工程に続いて、調製物から組換えウイルス粒子サンプルを除去すること、ならびに請求項16に記載の方法により、組換えウイルス粒子の不均一性を決定することを含み、インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子の相対量における増加は、組換えウイルス粒子の調製物中の全ウイルス粒子の均一性の増大を示す、前記方法。
【請求項18】
組換えウイルス粒子の沈降は吸光度によってモニターされる、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
吸光度は約230nm、260nmまたは280nmにおけるものである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
吸光度は約260nmにおけるものである、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
組換えウイルス粒子の沈降は干渉によってモニターされる、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
干渉はレイリー干渉である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
調製物は水溶液である、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
水溶液は医薬製剤を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
水溶液は緩衝液を含む、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
緩衝液は生理学的pHを有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
緩衝液は生理学的浸透圧を有する、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
医薬製剤はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む、請求項24~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
PBSは、約7.2のpHおよび約300mOsm/Lの浸透圧を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
モニターすることは、参照サンプルとの比較をさらに含み、参照サンプルは組換えウイルス粒子を含まない水溶液を含む、請求項24~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
C(S)値はラム方程式解を含むアルゴリズムによって決定される、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
アルゴリズムはSEDFITアルゴリズムである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
沈降は、最低密度を有する組換えウイルス粒子が超遠心機のセクターの底に沈降するまでモニターされる、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
超遠心分離法は超遠心速度セルを含む超遠心機を利用する、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
沈降は組換えウイルス粒子が超遠心速度セルの底に沈降するまでモニターされる、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
沈降は最低密度を有する組換えウイルス粒子が沈降し、光学ウインドウが透明化するまでモニターされる、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも30スキャンが組換えウイルス粒子の沈降をモニターするために使用される、請求項33~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
約30スキャンが組換えウイルス粒子の沈降をモニターするために使用される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
約30から約75スキャンが組換えウイルス粒子の沈降をモニターするために使用される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
約30から約50スキャンが組換えウイルス粒子の沈降をモニターするために使用される、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
約50から約75スキャンが組換えウイルス粒子の沈降をモニターするために使用される、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
正則化は、少なくとも約0.68のF統計の信頼レベルでフィッティングレベルに適用される、請求項31~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
正則化は二次微分正則化である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
正則化は最大エントロピー正則化である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
正則化は約0.68から約0.90のF統計の信頼レベルでフィッティングレベルに適用される、請求項42~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
正則化は約0.68から約0.99のF統計の信頼レベルでフィッティングレベルに適用される、請求項42~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
正則化は約0.68のF統計の信頼レベルでフィッティングレベルに適用される、請求項42~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
以下のC(S)パラメーターは一定に保たれ:分解能は約200Sから約5000Sであり、Sminは約1Sから約100Sであり、Smaxは約100Sから約5000Sであり、摩擦比は約1.0であり、または遠心分離ソフトウェアによって決定された値に移行させる、請求項31~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
分解能は約200Sから約1000Sである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
分解能は約200Sである、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
Sminは約1である、請求項48~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
Smaxは約100Sから約1000Sである、請求項48~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
Smaxは約200Sから約5000Sである、請求項48~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
Smaxは約200Sである、請求項48~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
摩擦比は遠心分離ソフトウェアによって決定された値に移行される、請求項48~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
摩擦比は約1.0である、請求項48~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
半径方向不変(RI)および時不変(TI)ノイズサブトラクションが適用される、請求項31~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
組換えウイルス粒子の沈降は約10~60秒間ごとにモニターされる、請求項1~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
組換えウイルス粒子の沈降は約10秒間ごとにモニターされる、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
組換えウイルス粒子の沈降は約60秒間ごとにモニターされる、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
境界沈降速度は約3,000rpmから約20,000rpmで実行される、請求項1~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
境界沈降速度は約3,000rpmから約10,000rpmで実行される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
境界沈降速度は約10,000rpmから約20,000rpmで実行される、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
境界沈降速度は約15,000rpmから約20,000rpmで実行される、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
境界沈降速度は約4℃から約20℃で実行される、請求項1~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
境界沈降速度は約4℃で実行される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
組換えウイルス粒子は、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子、組換えアデノウイルス粒子、組換えレンチウイルス粒子または組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)粒子である、請求項1~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
請求項1~67のいずれか1項に記載の方法を含む組換えウイルス粒子の産生のための工程を評価する方法であって、空のカプシド粒子の相対量と比較したインタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子、および/または組換えウイルス粒子の参照調製物と比較した変種の組換えウイルスゲノムを含む組換えウイルスカプシド粒子の相対量における増大が、組換えウイルス粒子の産生の改善を示す、前記方法。
【請求項69】
ウイルス粒子はrAAV粒子である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
rAAV粒子は産生細胞株から産生される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
rAAV粒子は、i)AAV repおよびcapをコードする核酸、ii)rAAVベクター配列、ならびにiii)アデノウイルスヘルパー機能をコードする核酸の三重トランスフェクションによって産生される、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
組換えウイルス粒子はAAV/HSVハイブリッドによって産生される、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
組換えウイルス粒子は昆虫細胞から産生される、請求項69に記載の方法。
【請求項74】
組換えウイルス粒子は、AAVベクター配列、AAV repおよびcapコード領域ならびにAAVヘルパーウイルス機能をコードする核酸の好適な宿主細胞への一過性トランスフェクションによって産生される、請求項69に記載の方法。
【請求項75】
組換えウイルス粒子は、AAVベクター配列、AAV repおよびcapコード領域ならびにAAVヘルパーウイルス機能をコードする1つまたはそれ以上の核酸の好適な宿主細胞への導入によって産生され、1つまたはそれ以上の核酸は組換えヘルパーウイルスを使用して細胞に導入される、請求項69に記載の方法。
【請求項76】
組換えヘルパーウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスまたはバキュロウ
イルスである、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
組換えウイルス粒子は、アデノウイルスベクター配列ならびにアデノウイルス複製およびパッケージング配列をコードする核酸の好適な宿主細胞への一過性トランスフェクションによって産生される、請求項68に記載の方法。
【請求項78】
組換えウイルス粒子は、レンチウイルスベクター配列ならびに/またはレンチウイルス複製およびパッケージング配列をコードする核酸の好適な宿主細胞への一過性トランスフェクションによって産生される、請求項68に記載の方法。
【請求項79】
組換えウイルス粒子は、HSVベクター配列ならびに/またはHSV複製およびパッケージング配列をコードする核酸の好適な宿主細胞への一過性トランスフェクションによって産生される、請求項68に記載の方法。
【請求項80】
空のカプシドが低減された組換えウイルス粒子および/または変種のゲノムを含む組換えウイルス粒子を調製するための方法であって、
a)組換えウイルス産生のために好適な条件下で宿主細胞を培養する工程であり、細胞は、
i)少なくとも1つのAAV ITRを端に有する異種性導入遺伝子をコードする核酸、
ii)AAV repおよびcapコード領域を含む核酸であり、変異導入されたp5プロモーターを含み、p5プロモーターからのrep発現は野生型p5プロモーターと比較して低減されている核酸、ならびに
iii)AAVヘルパーウイルス機能をコードする核酸
を含む工程;
b)組換えウイルス粒子を放出するように宿主細胞を溶解する工程;
c)宿主細胞によって産生された組換えウイルス粒子を単離する工程;ならびに
d)空のカプシドおよび/または変種のゲノムを有する組換えウイルス粒子の存在について請求項1~79のいずれか1項に記載の方法による分析超遠心分離法によって組換えウイルス粒子を分析する工程
を含む、前記方法。
【請求項81】
p5プロモーターは、repおよび/またはcapコード領域の3’に位置付けられている、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
AAVヘルパーウイルス機能は、アデノウイルスE1A機能、アデノウイルスE1B機能、アデノウイルスE2A機能、アデノウイルスVA機能およびアデノウイルスE4 orf6機能を含む、請求項80または81に記載の方法。
【請求項83】
組換えウイルス粒子は、1つまたはそれ以上の精製工程を使用して精製される、請求項1~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
組換えウイルス粒子は、自己相補性AAV(scAAV)ゲノムを含む、請求項67、69~76、80~83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
scAAVゲノムの単量体形態またはscAAVゲノムの二量体形態を含む組換えウイルス粒子の存在を検出するために使用される、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
組換えウイルス粒子は、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV4カプシド、AAV5カプシド、AAV6カプシド、AAV7カプシド、AAV8カ
プシド、AAVrh8カプシド、AAV9カプシド、AAV10カプシド、AAVrh10カプシド、AAV11カプシド、AAV12カプシド、AAV2R471Aカプシド、AAV2/2-7m8カプシド、AAV DJカプシド、AAV2 N587Aカプシド、AAV2 E548Aカプシド、AAV2 N708Aカプシド、AAV V708Kカプシド、ヤギAAVカプシド、AAV1/AAV2キメラカプシド、ウシAAVカプシドまたはマウスAAVカプシドrAAV2/HBoV1(キメラAAV/ヒトボカウイルスウイルス1)を含む、請求項67、69~76、80~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
組換えウイルス粒子は、AAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAVrh8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、AAVrh10 ITR、AAV11 ITR、AAV12 ITR、AAV DJ ITR、ヤギAAV ITR、ウシAAV ITRまたはマウスAAV ITRを含む、請求項67、69~76、80~86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
AAVカプシドは、チロシン変異またはヘパリン結合変異を含む、請求項86または87に記載の方法。
【請求項89】
組換えウイルス粒子は組換えアデノウイルス粒子である、請求項67または68に記載の方法。
【請求項90】
組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdまたはブタAd3型由来のカプシドを含む、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2カプシドの変種またはアデノウイルス血清型5カプシドの変種を含む、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
組換えウイルス粒子は組換えレンチウイルス粒子である、請求項67または68に記載の方法。
【請求項93】
組換えレンチウイルス粒子は、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モコラウイルス、狂犬病ウイルス、RD114またはその変種で偽型化される、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
組換えウイルス粒子はrHSV粒子である、請求項67または68に記載の方法。
【請求項95】
HSV粒子はHSV-1粒子またはHSV-2粒子である、請求項94に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許の相互参照
本出願は、すべての目的についてその全体を参照によって本明細書に組み入れる米国仮特許出願第62/105,714号、2015年1月20日出願に優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、分析超遠心分離法を使用して組換えウイルスベクター;例えば組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子、組換えアデノウイルス(rAd)粒子、組換えレンチウイルス粒子および組換え単純ヘルペスウイルス(rHSV)粒子を特徴付ける方法に関する。
【背景技術】
【0003】
組換えウイルスは、遺伝子治療適用のための治療用核酸を送達するためのビヒクルとしての将来性および有用性を示している。多数の異なる組換えウイルスが、送達される核酸のサイズ、核酸を送達する標的細胞または組織、治療用核酸の短期または長期発現の必要性およびレシピエントのゲノムへの治療用核酸の組み込みを含む多数の因子に基づいてこれらの遺伝子治療適用において使用されている。遺伝子治療適用において使用されるウイルスの例は、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レンチウイルスおよび単純ヘルペスウイルス(HSV)を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
臨床用の組換えウイルスベクターの生成は、製造の均一性、純度および整合性に関して薬物製品品質をモニターする分析方法を必要としているが、今日までにそのような特徴付けを支持する方法は確立されていない。典型的には、組換えウイルスDNAウイルスベクターのDNA含有量は、配列特異的プローブを使用するサザンブロット分析によって測定される。ウイルスカプシドまたはエンベロープは、具体的な組換えウイルスのカプシドまたはエンベロープタンパク質に特異的に結合する抗体を使用するイムノアッセイによって特徴付けられる。例えば、Steinbach,Sら、(1997)J.Gen.Virol.,78:1453~1462頁は、rAAV血清型についてのイムノアッセイを提供している。必要とされているのは、組換えウイルスゲノムの核酸配列またはカプシドの血清型を問わない組換えウイルス調製物を特徴付けるための包括的なアッセイである。
【0005】
特許出願および刊行物を含む本明細書に引用するすべての参考文献は、その全体を参照によって組み入れる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物の特徴付け方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、b)微分沈降係数分布値(differential sedimentation coefficient distribution value)(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、およびc)C(s)分布での各ピーク下面積を積分して、各ピークの相対濃度を決定する工程であって、各ピークが組換えウイルスの組換えウイルス粒子の種に相当する工程を含む、組換えウイルス粒子の調製物の特徴付け方法を提供する。
【0007】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子のベク
ターゲノムの完全性を評価するための方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、およびc)S値に対応するプロット上のピークの存在によって調製物中の組換えウイルス粒子の種を同定する工程であって、組換えウイルスの組換えウイルス粒子の具体的な種のゲノムサイズは、種のS値を、周知のヌクレオチドサイズを有するカプシド化されたウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子のS値によって作成された標準曲線と比較することによって算出される工程を含む、方法を提供する。一部の実施形態では方法は、C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルスの組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程をさらに含む。
【0008】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物中の空のカプシドまたは変種のサイズの組換えウイルスゲノムを含むカプシド粒子の存在を決定する方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、およびb)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程であって、インタクトな組換えウイルスゲノムを含む完全カプシド粒子に対するピーク以外の1つまたはそれ以上のピークの存在は、変種のサイズのゲノムを含むカプシド粒子および/または空のカプシドの存在を表す工程を含む、方法を提供する。
【0009】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物中の空のカプシドの相対量を測定する方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、c)C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程、およびd)空のカプシド粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量を、インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量または調製物中の組換えウイルス粒子の総量と比較する工程を含む、組換えウイルス粒子の調製物中の空のカプシドの相対量を測定する方法を提供する。
【0010】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物中の変種の組換えウイルスゲノムを含むカプシド粒子または空のウイルスカプシド粒子の相対量を測定する方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、c)C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程、d)インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子に対応しないS値を有する組換えウイルス粒子の量を、インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量または調製物中の組換えウイルス粒子の総量と比較する工程を含む、方法を提供する。
【0011】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物中の変種の組換えウイルスゲノムを含むカプシド粒子の相対量を測定する方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、c)C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程、d)インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子または空のカプシド粒子に対応しないS値を有する組換えウイルス粒子の量を、調製物中の組換えウイルス粒子の総量と比較する工程を含む、方法を提
供する。
【0012】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物中のインタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子の相対量を測定する方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、c)C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程、d)インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量を、空のカプシド粒子、変種の組換えウイルスゲノムを含むカプシド粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量、および/または調製物中の組換えウイルス粒子の総量と比較する工程を含む、方法を提供する。
【0013】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物の精製の際に、空のカプシドおよび/または、変種の組換えウイルスゲノムを含むカプシド粒子の除去をモニターする方法であって、精製プロセスにおける1つまたはそれ以上の工程に続いて、調製物から組換えウイルス粒子サンプルを除去すること、ならびに請求項5~8のいずれか1項に記載の方法により、空のカプシドおよび/または変種の組換えウイルスゲノムを含むカプシド粒子の相対量についてサンプルを分析することを含み、空のカプシドおよび/または、変種のゲノムを含むカプシドの完全カプシドに対する相対量における減少は、組換えウイルス粒子の調製物からの空のカプシドの除去を示す方法を提供する。一部の実施形態では、空のカプシド粒子のS値に対応するピークの存在は、空のカプシド粒子の存在を示す。一部の実施形態では、インタクトな組換えウイルスゲノムを含む完全カプシド粒子または空のカプシド粒子に対するピーク以外の1つまたはそれ以上のピークの存在は、変種のサイズのゲノムを含むカプシド粒子の存在を表す。一部の実施形態では、変種のサイズのゲノムを含むカプシド粒子は、切断型ゲノム、凝集体、組換え体および/またはDNA不純物を含む。
【0014】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子の不均一性を決定する方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程であって、インタクトなウイルスゲノムを含むカプシドに相当するピークに追加してピークが存在することは、調製物中の組換え粒子の不均一性を示す工程を含む、方法を提供する。一部の実施形態では追加のピークの存在は、空のカプシド粒子および/または変種のゲノムを含む組換えウイルス粒子の存在を示す。一部の実施形態では、変種のゲノムは、切断型ウイルスゲノム、凝集体、組換え体および/またはDNA不純物である。一部の実施形態では方法は、C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程をさらに含む。
【0015】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物の精製の際に組換えウイルス粒子の均一性をモニターする方法であって、精製プロセスにおける1つまたはそれ以上の工程に続いて、調製物から組換えウイルス粒子サンプルを除去すること、ならびに上記方法により、組換えウイルス粒子の不均一性を決定することを含み、インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子の相対量における増加は、組換えウイルス粒子の調製物中の全ウイルス粒子の均一性の増大を示す、方法を提供する。
【0016】
上記態様の一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降は、吸光度によってモニターされる。一部の実施形態では吸光度は、約230nm、260nmまたは280nmにおけるものである。一部の実施形態では吸光度は、約260nmにおけるものである。一部
の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降は、干渉によってモニターされる。一部の実施形態では干渉は、レイリー干渉である。
【0017】
上記態様の一部の実施形態では調製物は水溶液である。さらなる実施形態では水溶液は、医薬製剤を含む。一部の実施形態では水溶液は緩衝液を含む。一部の実施形態では緩衝液は生理学的pHを有する。一部の実施形態では緩衝液は生理学的浸透圧を有する。一部の実施形態では医薬製剤はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。一部の実施形態ではPBSは、7.2のpHおよび約300mOsm/Lの浸透圧を有する。一部の実施形態ではモニターすることは、参照サンプルとの比較をさらに含み、参照サンプルは組換えウイルス粒子を含まない水溶液を含む。
【0018】
上記態様の一部の実施形態ではC(S)値は、ラム方程式解を含むアルゴリズムによって決定される。一部の実施形態ではアルゴリズムは、SEDFITアルゴリズムである。一部の実施形態では、沈降は最低密度を有する組換えウイルス粒子が超遠心機のセクターの底に沈降するまでモニターされる;例えばセクターは、検出系を含む超遠心機の一部であってよい。一部の実施形態では超遠心分離法は、超遠心速度セルを含む超遠心機を利用する。一部の実施形態では沈降は、組換えウイルス粒子が超遠心速度セルの底に沈降するまでモニターされる。一部の実施形態では沈降は、最低密度を有する組換えウイルス粒子が沈降し、光学ウインドウが透明化するまでモニターされる。
【0019】
一部の実施形態では半径方向の濃度は、少なくとも約0.5時間、0.75時間、1.0時間、1.5時間、2.0時間、3.0時間、4.0時間または5.0時間のいずれかについて記録される。一部の実施形態では半径方向の濃度は、約1.0時間記録される。一部の実施形態では半径方向の濃度は、約1.2時間記録される。一部の実施形態では半径方向の濃度は、約0.5時間から約2.0時間記録される。一部の実施形態では半径方向の濃度は、約1.0時間から約2.0時間記録される。
【0020】
上記態様の一部の実施形態では少なくとも30スキャンが組換えウイルス粒子の沈降をモニターするために使用される。一部の態様では約30スキャンが組換えウイルス粒子の沈降をモニターするために使用される。他の実施形態では約30から約75スキャンが組換えウイルス粒子の沈降をモニターするために使用される。他の実施形態では、約30から約50スキャンが組換えウイルス粒子の沈降をモニターするために使用される。他の実施形態では、約50から約75スキャンが組換えウイルス粒子の沈降をモニターするために使用される。
【0021】
上記態様の一部の実施形態では正則化は、少なくとも約0.68のF統計の信頼レベルでフィッティングレベルに適用される。一部の実施形態では正則化は二次微分正則化(derivative regularization)である。一部の実施形態では正則化は最大エントロピー正則化(Max entropy regularization)である。一部の実施形態では正則化は約0.68から約0.90のF統計の信頼レベルでフィッティングレベルに適用される。一部の実施形態では正則化は約0.68から約0.99のF統計の信頼レベルでフィッティングレベルに適用される。一部の実施形態では正則化は約0.68のF統計の信頼レベルでフィッティングレベルに適用される。
【0022】
上記態様の一部の実施形態では以下のC(S)パラメーターは一定に保たれ:分解能は約200Sから約5000Sであり、Sminは約1Sから約100Sであり、Smaxは約100Sから約5000Sであり、摩擦比は約1.0であるか、または遠心分離ソフトウェアによって決定された値に移行させる。一部の実施形態では分解能は、約200Sから約1000Sである。一部の実施形態では分解能は、約200Sである。一部の実施形態ではSminは、約1である。一部の実施形態ではSmaxは、約100Sから約1
000Sである。他の実施形態ではSmaxは、約200Sから約5000Sである。他の実施形態ではSmaxは、約200Sである。一部の実施形態では摩擦比は遠心分離ソフトウェアによって決定された値に移行させる。一部の実施形態では摩擦比は約1.0である。一部の実施形態では半径方向不変(radial invariant)(RI)および時不変(TI)ノイズサブトラクションが適用される。
【0023】
上記態様の一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降は、約10~60秒間ごとにモニターされる。一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降は、約10秒間ごとにモニター(例えばスキャン)される。他の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降は、約60秒間ごとにモニターされる。一部の実施形態では超遠心分離法の際の組換えウイルスの沈降速度は、約15秒間、30秒間、45秒間、1分間(60秒間)、2分間、3分間、4分間、5分間、6分間、7分間、8分間、9分間、10分間、15分間、20分間、25分間を超えるごとに1回組換えウイルス粒子の沈降をモニターすることによって決定される。
【0024】
上記態様の一部の実施形態では境界沈降速度は、約3,000rpmから約20,000rpmで実行される。一部の実施形態では境界沈降速度は、約3,000rpmから約10,000rpmで実行される。他の実施形態では境界沈降速度は、約10,000rpmから約20,000rpmで実行される。他の実施形態では境界沈降速度は、約15,000rpmから約20,000rpmで実行される。
【0025】
上記態様の一部の実施形態では境界沈降速度は、約4℃から約20℃で実行される。一部の実施形態では境界沈降速度は、約4℃で実行される。
【0026】
上記態様の一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子、組換えアデノウイルス粒子、組換えレンチウイルス粒子または組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)粒子である。一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV4カプシド、AAV5カプシド、AAV6カプシド、AAV7カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8カプシド、AAV9カプシド、AAV10カプシド、AAVrh10カプシド、AAV11カプシド、AAV12カプシド、AAV2R471Aカプシド、AAV2/2-7m8カプシド、AAV DJカプシド、AAV2 N587Aカプシド、AAV2 E548Aカプシド、AAV2 N708Aカプシド、AAV V708Kカプシド、ヤギAAVカプシド、AAV1/AAV2キメラカプシド、ウシAAVカプシドまたはマウスAAVカプシドrAAV2/HBoV1(キメラAAV/ヒトボカウイルスウイルス1)を含む。一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、AAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAVrh8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、AAVrh10 ITR、AAV11 ITRまたはAAV12 ITRを含む。一部の実施形態ではAAVカプシドは、チロシン変異またはヘパリン結合変異を含む。他の実施形態では組換えウイルス粒子は、組換えアデノウイルス粒子である。一部の実施形態では組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdまたはブタAd3型由来のカプシドを含む。一部の実施形態では組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2カプシドの変種またはアデノウイルス血清型5カプシドの変種を含む。他の実施形態では組換えウイルス粒子は組換えレンチウイルス粒子である。一部の実施形態では組換えレンチ
ウイルス粒子は、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モコラウイルス、狂犬病ウイルス、RD114またはその変種で偽型化される。他の実施形態では組換えウイルス粒子はrHSV粒子である。一部の実施形態ではHSV粒子はHSV-1粒子またはHSV-2粒子である。
【0027】
一部の態様では本発明は、請求項1から67のいずれか1項に記載の方法を含む組換えウイルス粒子の産生のための工程を評価するための方法であって、空のカプシド粒子の相対量と比較したインタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子、および/または組換えウイルス粒子の参照調製物と比較した変種の組換えウイルスゲノムを含む組換えウイルスカプシド粒子の相対量における増大が、組換えウイルス粒子の産生の改善を示す、方法を提供する。一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子、組換えアデノウイルス粒子、組換えレンチウイルス粒子または組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)粒子である。一部の実施形態ではrAAV粒子は、産生細胞株から産生される。他の実施形態ではrAAV粒子は、i)AAV repおよびcapをコードする核酸、ii)rAAVベクター配列、およびiii)アデノウイルスヘルパー機能をコードする核酸の三重トランスフェクションによって産生される。他の実施形態では組換えウイルス粒子は、AAV/HSVハイブリッドによって産生される。他の実施形態では組換えウイルス粒子は、バキュロウイルス細胞から産生される。一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、AAVベクター配列、AAV repおよびcapコード領域ならびにAAVヘルパーウイルス機能をコードする核酸の好適な宿主細胞への一過性トランスフェクションによって産生される。一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、AAVベクター配列、AAV repおよびcapコード領域ならびにAAVヘルパーウイルス機能をコードする1つまたはそれ以上の核酸の好適な宿主細胞への導入によって産生され、1つまたはそれ以上の核酸は組換えヘルパーウイルスを使用して細胞に導入される。一部の実施形態では組換えヘルパーウイルスは、アデノウイルスまたは単純ヘルペスウイルスである。一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、自己相補性AAV(scAAV)ゲノムを含む。一部の実施形態では方法は、scAAVゲノムの単量体形態またはscAAVゲノムの二量体形態を含む組換えウイルス粒子の存在を検出するために使用される。
【0028】
上記態様の一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、アデノウイルスベクター配列ならびにアデノウイルス複製およびパッケージング配列をコードする核酸の好適な宿主細胞への一過性トランスフェクションによって産生される。他の実施形態では組換えウイルス粒子は、レンチウイルスベクター配列ならびに/またはレンチウイルス複製およびパッケージング配列をコードする核酸の好適な宿主細胞への一過性トランスフェクションによって産生される。他の実施形態では、組換えウイルス粒子は、HSVベクター配列ならびに/またはHSV複製およびパッケージング配列をコードする核酸の好適な宿主細胞への一過性トランスフェクションによって産生される。
【0029】
一部の態様では本発明は、空のカプシドが低減された組換えウイルス粒子および/または変種のゲノムを含む組換えウイルス粒子を調製するための方法であって、a)組換えウイルス産生のために好適な条件下で宿主細胞を培養する工程であり、細胞は、i)少なくとも1つのAAV ITRを端に有する異種性導入遺伝子をコードする核酸、ii)AAV repおよびcapコード領域を含む核酸であり、p5プロモーターを含む核酸、およびiii)AAVヘルパーウイルス機能をコードする核酸を含む工程;b)組換えウイルス粒子を放出するように宿主細胞を溶解する工程;c)宿主細胞によって産生された組換えウイルス粒子を単離する工程;ならびにd)空のカプシドおよび/または変種のゲノムを有する組換えウイルス粒子の存在について上記方法による分析超遠心分離法によって組換えウイルス粒子を分析する工程を含む、方法を提供する。一部の態様において本発明
は、空のカプシドが低減された組換えウイルス粒子および/または変種のゲノムを含む組換えウイルス粒子を調製するための方法であって、a)組換えウイルス産生のために好適な条件下で宿主細胞を培養する工程であり、細胞は、i)少なくとも1つのAAV ITRを端に有する異種性導入遺伝子をコードする核酸、ii)AAV repおよびcapコード領域を含む核酸であり、変異導入されたp5プロモーターを含み、p5プロモーターからのrep発現は野生型p5プロモーターと比較して低減されている核酸、およびiii)AAVヘルパーウイルス機能をコードする核酸を含む工程;b)組換えウイルス粒子を放出するように宿主細胞を溶解する工程;c)宿主細胞によって産生された組換えウイルス粒子を単離する工程;ならびにd)空のカプシドおよび/または変種のゲノムを有する組換えウイルス粒子の存在について上記方法による分析超遠心分離法によって組換えウイルス粒子を分析する工程を含む、空のカプシドが低減された組換えウイルス粒子および/または変種のゲノムを含む組換えウイルス粒子を調製するための方法を提供する。一部の実施形態では、p5プロモーターは、repおよび/またはcapコード領域の3’に位置付けられている。一部の実施形態ではAAVヘルパーウイルス機能は、アデノウイルスE1A機能、アデノウイルスE1B機能、アデノウイルスE2A機能、アデノウイルスVA機能およびアデノウイルスE4 orf6機能を含む。
【0030】
先行する実施形態のいずれかの一部の実施形態では、組換えウイルス粒子は、1つまたはそれ以上の精製工程を使用して精製される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】分析超遠心分離法(AUC)が組換えウイルスベクター粒子を特徴付けるために使用できることを示す図である。(
図1A)1.2時間の時間間隔(T)でのAAV2混合物の吸光度(260nm)を半径(cm)に対して示す境界沈降速度の代表的スキャンプロファイル。AAV2混合物は、空のカプシド(「空のCap」)および全ゲノムカプシド(「インタクトなベクター」)を含有していた。
【
図1B】分析超遠心分離法(AUC)が組換えウイルスベクター粒子を特徴付けるために使用できることを示す図である。(
図1B)空のカプシドおよび全ゲノムカプシドの濃度を80%/20%混合物から測定するためにAUCを使用できることを示す沈降係数(スベドベルグ単位、S)に対する検出単位、C(S)での濃度のプロット。各ピークに粒子種ならびにその対応する沈降係数(S)および相対存在(%)が示されている。
【
図2】
図2Aおよび2Bは、空のAAV2カプシド(
図2A)およびゲノム含有AAV2-導入遺伝子1カプシド(
図2B)の純粋集団のAUCを示すグラフである。各ピークにカプシド種およびその沈降係数(S)が示されている。
【
図3】
図3Aおよび3Bは、AUCによる干渉と吸光度検出法との比較を示すグラフである。(
図3A)スベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値、c(s)のプロットは、空のカプシドおよびゲノム含有カプシドの1:1混合物について、干渉光学検出を使用して作成された沈降係数の分布を示す。各種についての沈降係数および相対存在(%)が示されている。(
図3B)スベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値、c(s)のプロットは、空のカプシドおよびゲノム含有カプシドの1:1混合物について、吸光度光学検出(260nm)を使用して作成された沈降係数の分布を示す。各種についての沈降係数および相対存在(%)が示されている。
【
図4】AAVベクター産生のための三重トランスフェクション法を例示する図である。目的の遺伝子(「pVector」)AAV RepおよびCap遺伝子(「pHLP」)ならびにアデノウイルス構成成分(「pIAdeno」)を含有する3種のベクターが示されている。ゲノム含有(図において「ITR導入遺伝子ITR」と示される)および空のカプシド(空欄)の両方が産生されることに注目されたい。
【
図5】AAVベクター産生のための産生細胞株法を例示する図である。表示のとおりHeLa S3細胞株は、組み込まれたRep、Capおよびピューロマイシン耐性遺伝子を、目的のITR隣接導入遺伝子とともに含有する。この細胞株に組換えウイルス産生を刺激するためにアデノウイルス(「Ad5」)を感染させる。アデノウイルス粒子に加えてゲノム含有(「組換えウイルスベクター」と示される)および空のカプシドの両方が産生されることに注目されたい。
【
図6】
図6A、6Bおよび6Cは、産生細胞株および三重トランスフェクション法によるベクター産生は、AUC分析によって明らかなとおり異なるベクター調製物を生じることを示す図である。(
図6A)AAV2-導入遺伝子2ベクターおよびその3.4kbゲノムの模式図。(
図6B)スベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値、c(s)のプロットは、産生細胞株法によるベクター調製物についての沈降係数の分布を示す。各種について沈降係数および相対存在(%)が示されている。(
図6C)スベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値、c(s)のプロットは、三重トランスフェクション法によって産生されたベクター調製物についての沈降係数の分布を示す。各種についての沈降係数および相対存在(%)が示されている。
【
図7-1】
図7A、7Bおよび7Cは、AUC法がベクター精製の品質および有効性をモニターするために使用できることを示すグラフである。(
図7A)アニオン交換クロマトグラフィーを使用する空のカプシドからの全ゲノムAAV2-導入遺伝子1カプシドの精製を示すプロットである。各種に対応するピークフラクションが示されている。(
図7B)スベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値、c(s)のプロットは、アニオン交換カラムから溶出後のベクター調製物についての沈降係数の分布を示す。各種についての沈降係数および相対存在(%)が示されている。(
図7C)スベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値、c(s)のプロットは、クロマトグラフィー前のベクター調製物についての沈降係数の分布を示す。各種についての沈降係数および相対存在(%)が示されている。
【
図8】沈降係数とベクターゲノムサイズとの間の直線関係を示すグラフである。ゲノムサイズに対して沈降係数(S)をプロットする標準曲線が最良適合直線、その式およびその相関R
2値と共に示されている。
【
図9-1】
図9A、9Bおよび9Cは、AUCデータを使用するカプシドゲノムサイズの評価がサザンブロットによるゲノムサイズの評価と相関することを示す図である。(
図9A)スベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値、c(s)のプロットは、scAAV9 EGFPベクター調製物についての沈降係数の分布を示す。1本鎖単量体(82S)および2本鎖二量体(101S)種は対応する沈降係数および相対存在量値(%)で示されている。ベクターの模式的図も提供されている。(
図9B)scAAV9 EGFP(レーン1)および1本鎖AAV9 EGFP(レーン2)ベクターカプシド由来のDNAのアルカリサザンブロット分析。対応するバンドをブロット凡例に記載のとおり示す。4.2および2.4kbサイズ標準物は標識として提供される。(
図9C)スベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値、c(s)のプロットは、1本鎖AAV9 EGFPベクター調製物についての沈降係数の分布を示す。82Sおよび99S(全ゲノム)ピークは対応する沈降係数および相対存在量値(%)で示されている。
【
図10】
図10A、10Bおよび10Cは、Rep/Capプロモーター位置が三重トランスフェクション法によって産生された組換えウイルスベクターでのゲノムパッケージングに影響を与えることを示す図である。(
図10A)二量体および単量体ゲノム種についての推定沈降係数を伴う自己相補性scAAV2 EGFPベクターの模式図である。(
図10B)スベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値、c(s)のプロットは、Rep78/6発現を駆動する内在性p5プロモーター(「WT Rep」)を有する「野生型」ヘルパープラスミドを使用して産生されたscAAV2 EGFPベクター調製物についての沈降係数の分布を示す。1本鎖単量体(80S)および2本鎖二量体(100S)種についてのピークは対応する相対存在量値(%)で示されている。(
図10C)スベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値、c(s)のプロットは、cap2配列(「pHLP Rep」)の下流に移動したRep78/68発現を駆動するp5プロモーターを有する「野生型」ヘルパープラスミドを使用して産生されたscAAV2 EGFPベクター調製物についての沈降係数の分布をもたらした。1本鎖単量体(82S)および2本鎖二量体(100S)種についてのピークは対応する相対存在量値(%)で示されている。
【
図11】
図11A、11B、11Cおよび11Dは、Rep/Capプロモーター位置が2個の追加のAAVベクターでのゲノムパッケージングに影響を与えることを示す図である。(
図11Aおよび11B)スベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値、c(s)のプロットは、内在性p5プロモーター(「WT Rep」
図11B)またはcap5配列の下流にp5プロモーター(「pHLP Rep」
図11A)を有するヘルパープラスミドで産生されたcap5配列を含有する1本鎖AAV5第IX因子ベクター(AAV5 hFIX16)についての沈降係数の分布を示す。(
図11C~11D)スベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値、c(s)のプロットは、内在性p5プロモーター(「WT Rep」
図11D)またはcap5配列の下流にp5プロモーター(「pHLP Rep」
図11C)を有するヘルパープラスミドで産生されたcap5配列を含有する1本鎖AAV5hSMNベクター(AAV5SMN)についての沈降係数の分布を示す。
【
図12】
図12Aおよび12Bは、サザンブロット分析はAUC分析と相関するが、AUCによって検出可能な一部の断片化ゲノムを見逃すことを明らかにした図である。(
図12A)pHLPヘルパープラスミド(レーン2)またはWT Repプラスミド(レーン1)で作られたAAV5SMN調製物由来のベクターDNAのサザンブロット分析。4.6および2.4kbサイズ標準物は、標識として提供される。(
図12B)pHLPヘルパープラスミド(レーン1)またはWT Repプラスミド(レーン2)で作られたAAV5FIX調製物由来のベクターDNAのサザンブロット分析。4.3、3.0および1.9kbサイズ標準物は標識として提供される。
【
図13】他の特性と共にhFIX導入遺伝子、ITR、Rep開始点およびAmpRマーカー遺伝子の位置を示すAAV5第IX因子ベクターのマップを示す図である。AmpRマーカーがITR、エンハンサーおよびプロモーター領域の上流にあることに注目されたい。
【
図14】
図14Aおよび14Bは、WT Repベクターゲノムは、pHLP Repベクターゲノムとは異なり、AAV5第IX因子ベクター中の5’ITRの上流に配列をパッケージすることを示す図である。(
図14A)pHLP Rep(レーン1)とWT Rep(レ-ン2)ベクターゲノムとを比較するhFIX導入遺伝子特異的プローブを使用するサザンブロット分析。(
図14B)pHLP Rep(レーン1)とWT Rep(レーン2)ベクターゲノムとを比較するRep ori/AmpR特異的プローブを使用するサザンブロット分析。
【
図15】
図15Aおよび15Bは、AUC分析によって実証された大型のAAVベクターゲノムの断片化を示す図である。(
図15A)大型のゲノムを有するAAVベクターについてAUCによって作成された沈降係数(S)に対する濃度、C(S)のプロット。このゲノムは、β-リン酸ジエステラーゼの発現を駆動する全長ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターを含有している(ssAAV2/5CBA-βPDE)。検出された種についてのピークは、観察された沈降係数(S)および相対存在量値(%)によって示されている。(
図15B)切断型ゲノムを含むAAVベクターについてAUCによって作成された沈降係数(S)に対する濃度、C(S)のプロット。このゲノムは、β-リン酸ジエステラーゼの発現を駆動する低減されたサイズのイントロンを有するCBAプロモーターを含有している(AAV5 minCBAPDE6B)。検出された種についてのピークは、観察された沈降係数(S)および相対存在量値(%)によって示されている。
【
図16】アデノウイルスカプシドの純粋調製物のAUCプロファイルを示す図である。沈降係数(S)および干渉値は各ピークに与えられている。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、分析超遠心分離法を使用して.ウイルス粒子の調製物を特徴付ける方法を提供する。調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法(AUC)に供することによって、ウイルス粒子の沈降は、時間間隔で(例えば、1回またはそれ以上)モニターされる。次にスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値(C(s))は、プロットされ、C(S)分布での各ピーク下面積は積分され、各ピークの相対濃度が決定される。各ピークは、その分子量を反映したウイルス粒子の種に相当する。これらの方法によって検出できる種は、これらに限らないが組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子、組換えアデノウイルス(rAd)粒子、組換えレンチウイルス粒子および組換え単純ヘルペスウイルス(rHSV)粒子を含む。例示的例としてrAAV粒子を使用してこれらの方法は、インタクトなrAAVゲノムを含むrAAVカプシド粒子(例えば完全カプシド)、rAAVゲノムがウイルスカプシドにカプシド化されていない空のウイルスカプシドおよび、変種rAAVゲノムがウイルスカプシドにカプシド化されているrAAV粒子変種(例えばAAVカプシド化DNA不純物、切断型ウイルスゲノム、凝集体などを含有する粒子)を含むrAAV種の検出を可能にする。これらの方法は、ウイルスゲノムのヌクレオチド配列、組換えウイルス粒子の場合は組換えウイルスカプシドの血清型に関わらずウイルス粒子の調製に適用できる。これらの方法は、rAAV、rAd、組換えレンチウイルスおよびrHSVウイルス粒子に適用できる。
【0033】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子のベクターゲノムの完全性を、調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供することによって評価する方法であって、組換えウイルス粒子の沈降は時間間隔で(例えば、1回またはそれ以上)モニターされる方法を提供する。微分沈降係数分布値C(S)をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットすることによって調製物中の組換えウイルス粒子の種は、S値に対応するプロット上のピークの存在によって同定できる。組換えウイルス粒子の具体的な種のゲノムサイズは、例えば種のS値を、さまざまな周知のサイズを有するカプシド化されたウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子のS値によって作成された標準曲線と比較することによって算出できる。これらの方法によって評価できるベクターゲノムは、これらに限らないがインタクトな組換えウイルスゲノムを含む組換えウイルスカプシド粒子(例えば完全カプシド)、組換えウイルスゲノムがウイルスカプシドにカプシド化されていない空のウイルスカプシド、および変種の組換えウイルスゲノム(例えばAAVカプシド化DNA不純物、切断型ウイルスゲノム、凝集体などを含有する粒子)がウイルスカプシドにカプシド化された組換えウイルス粒子変種を含む。一部の実施形態ではウイルス粒子は、rAAV、rAd、組換えレンチウイルスまたはrHSVウイルス粒子である。
【0034】
一部の実施形態では本発明は、境界沈降速度条件下でのAUCによって組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の不均一性を決定する方法であって、C(S)対Sのプロットにおけるインタクトなウイルスゲノムを含むカプシドに相当するピークに追加してピークが存在することは、調製物中の組換えウイルス粒子の不均一性を示す方法を提供する。一部の実施形態では調製物中の各組換えウイルス種の相対量は、プロット中の各ピークの面積を積分することによって算出される。
【0035】
本発明の一部の実施形態ではAUCは、組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の調製物中の空のカプシドおよび/または組換えウイルス粒子変種の存在を決定するために使用され、C(S)対Sのプロットにおいて空のカプシド粒子および/または組換えウイルス粒子変種のS値に対応するピークの存在は、空のカプシド粒子および/または組換えウイルス粒子変種の存在を示す。一部の実施
形態では、組換えウイルス粒子の調製物中の空のカプシドおよび/または組換えウイルス粒子変種の相対量は、Sに対するC(S)のプロットにおける各ピーク下面積を積分することならびに空のカプシド粒子および/または組換えウイルス粒子変種に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量を、インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量と比較することによって決定される。一部の実施形態では、空のカプシド粒子および/または組換えウイルス粒子変種に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量は、プロットのすべてのピーク下面積を積分および合計することによって調製物中のすべての組換えウイルス粒子の量と比較される。
【0036】
一部の実施形態では本発明は、AUCを使用することによって組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の調製物の精製の際の空のカプシドおよび/または組換えウイルス粒子変種の除去をモニターする方法を提供する。精製プロセスの1つまたはそれ以上の工程後の調製物由来の組換えウイルス粒子サンプルは、空のカプシドおよび/または組換えウイルス粒子変種の相対量について分析され、完全カプシド粒子に対する空のカプシドおよび/または組換えウイルス粒子変種の相対量の減少は、組換えウイルス粒子の調製物からの空のカプシドおよび/または組換えウイルス粒子変種の除去を示す。
【0037】
一部の実施形態では本発明は、組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の産生についてAUCによってプロセスを評価する方法を提供する。組換えウイルス粒子の調製物は、インタクトな全ウイルスカプシド粒子、空の粒子および/または組換えウイルス粒子変種の存在について分析される。空のカプシド粒子の相対量と比較したインタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子の相対量および/または組換えウイルス粒子(例えば、標準組換えウイルス調製プロセス)の参照調製物と比較した組換えウイルス粒子変種(例えば、AAVカプシド化DNA不純物、切断型ウイルスゲノム、凝集体などを含有する粒子)における増大は、組換えウイルス粒子の産生の改善を示す。
【0038】
I.一般的技術
例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrookら、第4版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,2012);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、2003);the series Methods
in Enzymology(Academic Press,Inc.);PCR 2:A Practical Approach(M.J.MacPherson,B.D.Hames and G.R.Taylor編、1995);Antibodies,A Laboratory Manual(Harlow and Lane編、1988);Culture of Animal Cells: A Manual of
Basic Technique and Specialized Applications(R.I.Freshney,第6版,J.Wiley and Sons,2010);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、Academic Press,1998);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,Plenum Press,1998);Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell編、J.Wiley and Sons,1993-8);Handboo
k of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell編、1996);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos編、1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991);Short Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、J.Wiley and Sons,2002);Immunobiology(C.A.Janewayら、2004);Antibodies(P.Finch,1997);Antibodies:A Practical Approach(D.Catty.編、IRL Press,1988-1989);Monoclonal
Antibodies:A Practical Approach(P.Shepherd and C.Dean編、Oxford University Press,2000);Using Antibodies:A Laboratory Manual(E.Harlow and D.Lane,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra編、Harwood Academic Publishers,1995)およびCancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVitaら編、J.B.Lippincott Company,2011)に記載の広く利用される方法など本明細書に記載および参照する技術および手順は、一般に十分に理解され、当業者によって従来の方法を使用して一般に用いられている。
【0039】
II.定義
本明細書において使用される「ベクター」は、in vitroまたはin vivoのいずれかで宿主細胞に送達される核酸を含む組換えプラスミドまたはウイルスを指す。
【0040】
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さ、リボヌクレオチドまたはデオキシリボ核酸のいずれかのヌクレオチドのポリマー形態を指す。それによりこの用語は、これらに限らないが、1本、2本もしくは多本鎖DNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッドもしくはプリンおよびピリミジン塩基を含むポリマー、または他に天然で、化学的にもしくは生化学に修飾された、非天然もしくは誘導ヌクレオチド塩基を含む。ポリヌクレオチドの骨格は、糖およびリン酸基(典型的にはRNAもしくはDNAにおいて見出されるとおり)または修飾されたもしくは置換された糖もしくはリン酸基を含む。代替的にポリヌクレオチドの骨格はホスホロアミデートなどの合成サブユニットのポリマーを含む場合があり、それによりオリゴデオキシヌクレオシドホスホロアミデート(P-NH2)または混合ホスホロアミデート-リン酸ジエステルオリゴマーであってよい。付加的に2本鎖ポリヌクレオチドは、相補鎖を合成し、適切な条件下で鎖をアニーリングすることによってまたは、DNAポリメラーゼを適切なプライマーと共に使用して原位置で相補鎖を合成することによってのいずれかで化学合成1本鎖ポリヌクレオチド産生物から得られる。
【0041】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指して互換的に用いられ、最短の長さに限定されない。アミノ酸残基のそのようなポリマーは、天然またはアミノ酸残基を含有でき、これらに限らないが、ペプチド、オリゴペプチド、アミノ酸残基の二量体、三量体および多量体を含むことができる。全長タンパク質およびその断片の両方は、定義に包含される。用語は、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアリル化、アセチル化、リン酸化なども含む。さらに本発明の目的のために「ポリペプチド」は、タンパク質が望ましい活性を維持している限り天然配列への欠失、付加および置換(一般に性質において保存的)などの修飾を含むタンパク質を指す。これら
の修飾は、部位特異的変異導入を通じて意図的であってよく、またはタンパク質を産生する宿主の変異を通じてまたはPCR増幅による誤りなどの偶然であってよい。
【0042】
「組換えウイルスベクター」は、1つまたはそれ以上の異種性配列(すなわち、ウイルス由来ではない核酸配列)を含む組換えポリヌクレオチドベクターを指す。組換えAAVベクターの場合、組換え核酸は少なくとも1つの末端逆位配列(ITR)を端に有する。一部の実施形態では組換え核酸は、2個の末端逆位配列(ITR)を端に有する。
【0043】
「組換えAAVベクター(組換えアデノ随伴ウイルスベクター)」は、少なくとも1つのAAV末端逆位配列(ITR)を端に有する1つまたはそれ以上の異種性配列(すなわち、AAV由来ではない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。一部の実施形態では組換え核酸は、2個の末端逆位配列(ITR)を端に有する。そのような組換えウイルスベクターは、好適なヘルパーウイルスを感染させ(または好適なヘルパー機能を発現しており)、AAV repおよびcap遺伝子産生物(すなわちAAV RepおよびCapタンパク質)を発現している宿主細胞中に存在する場合、感染性ウイルス粒子中に複製およびパッケージングされる。組換えウイルスベクターが大きなポリヌクレオチド(例えば染色体またはクローニングもしくはトランスフェクションのために使用されるプラスミドなどの別のベクター中)に組み込まれる場合、組換えウイルスベクターは、AAVパッケージング機能および好適なヘルパー機能の存在下で複製およびカプシド化によって「レスキュー」される「プロベクター」と称される場合がある。組換えウイルスベクターは、これらに限らないが、プラスミド、直鎖状人工染色体、脂質を含む複合体、リポソーム内にカプシド化されているおよびウイルス粒子中にカプシド化されている、例えばAAV粒子を含む任意の多数の形態であってよい。組換えウイルスベクターは、「組換えアデノ随伴ウイルス粒子(組換えウイルス粒子)」を生成するAAVウイルスカプシドにパッケージングされる。
【0044】
「rAAVウイルス」または「rAAVウイルス粒子」は、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質およびカプシド化されたrAAVベクターゲノムからなるウイルス粒子を指す。
【0045】
「組換えアデノウイルスベクター」は、少なくとも1つのアデノウイルス末端逆位配列(ITR)を端に有する1つまたはそれ以上の異種性配列(すなわち、アデノウイルス由来ではない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。一部の実施形態では組換え核酸は、2個の末端逆位配列(ITR)を端に有する。そのような組換えウイルスベクターは、組換えウイルスゲノムから欠失された重要なアデノウイルス遺伝子(例えば、E1遺伝子、E2遺伝子、E4遺伝子など)を発現している宿主細胞中に存在する場合、感染性ウイルス粒子中に複製およびパッケージングされる。組換えウイルスベクターが大きなポリヌクレオチド(例えば染色体またはクローニングもしくはトランスフェクションのために使用されるプラスミドなどの別のベクター中)に組み込まれる場合、組換えウイルスベクターは、アデノウイルスパッケージング機能の存在下で複製およびカプシド化によって「レスキュー」される「プロベクター」と称される場合がある。組換えウイルスベクターは、これらに限らないが、プラスミド、直鎖状人工染色体、脂質を含む複合体、リポソーム内にカプシド化されているおよびウイルス粒子中にカプシド化されている、例えばアデノウイルス粒子を含む任意の多数の形態であってよい。組換えウイルスベクターは、「組換えアデノウイルス粒子」を生成するアデノウイルスウイルスカプシドにパッケージングされる。
【0046】
「組換えレンチウイルスベクター」は、少なくとも1つのレンチウイルス末端反復配列(LTR)を端に有する1つまたはそれ以上の異種性配列(すなわち、レンチウイルス由来ではない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。一部の実施形態では組換
え核酸は、2個のレンチウイルス末端反復配列(LTR)を端に有する。そのような組換えウイルスベクターは、好適なヘルパー機能を感染させた宿主細胞中に存在する場合感染性ウイルス粒子中に複製およびパッケージングされる。組換えレンチウイルスベクターは、「組換えレンチウイルス粒子」を生成するレンチウイルスカプシドにパッケージングされる。
【0047】
「組換え単純ヘルペスベクター(組換えHSVベクター)」は、HSV末端反復配列を端に有する1つまたはそれ以上の異種性配列(すなわち、HSV由来ではない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。そのような組換えウイルスベクターは、好適なヘルパー機能を感染させた宿主細胞中に存在する場合、感染性ウイルス粒子中に複製およびパッケージングされる。組換えウイルスベクターが大きなポリヌクレオチド(例えば染色体またはクローニングもしくはトランスフェクションのために使用されるプラスミドなどの別のベクター中)に組み込まれる場合、組換えウイルスベクターは、HSVパッケージング機能の存在下で複製およびカプシド化によって「レスキュー」される「プロベクター」と称される場合がある。組換えウイルスベクターは、これらに限らないが、プラスミド、直鎖状人工染色体、脂質を含む複合体、リポソーム内にカプシド化されているおよびウイルス粒子中にカプシド化されている、例えばHSV粒子を含む任意の多数の形態であってよい。組換えウイルスベクターは、「組換え単純ヘルペスウイルス粒子」を生成するHSVカプシドにパッケージングされる。
【0048】
「異種性」は、それが比較される、またはそれに導入もしくは組み込まれる実体の他の部分とは遺伝子型が異なる実体に由来することを意味する。例えば遺伝子工学技術によって異なる細胞型に導入されるポリヌクレオチドは、異種性ポリヌクレオチドである(および発現された場合異種性ポリペプチドをコードできる)。同様にウイルスベクターに組み込まれている細胞性配列(例えば、遺伝子またはその部分)は、ベクターに関して異種性ヌクレオチド配列である。
【0049】
用語「導入遺伝子」は、細胞に導入され、RNAに転写され、場合により好適な条件下で翻訳および/または発現されるポリヌクレオチドを指す。態様では、それが導入される細胞に望ましい特性を付与する、または望ましい治療もしくは診断結果を導く。別の態様では、siRNAなどのRNA干渉を媒介する分子に転写される。
【0050】
ウイルス力価を参照して使用される用語「ゲノム粒子(gp)」、「ゲノム等価物」または「ゲノムコピー」は、感染性または機能性に関わらず組換えウイルスDNAゲノムまたはRNAゲノムを含有するビリオンの数を指す。具体的なベクター調製物中のゲノム粒子の数は、本明細書の実施例または例えばClarkら、(1999)Hum.Gene
Ther.,10:1031~1039頁;Veldwijkら、(2002)Mol.Ther.,6:272~278頁に記載などの手順によって測定できる。
【0051】
ウイルス力価を参照して本明細書で使用される用語「感染単位(iu)」、「感染性粒子」または「複製単位」は、例えばAAVについて、McLaughlinら、(1988)J.Virol.,62:1963~1973頁に記載の、複製中心アッセイとしても周知の感染中心アッセイによって測定される、感染性および複製適格組換えウイルスベクター粒子の数を指す。
【0052】
ウイルス力価を参照して使用される用語「導入単位(tu)」は、本明細書実施例に記載のものまたは例えばAAVに関してXiaoら、(1997)Exp.Neurobiol.,144:113~124頁またはFisherら、(1996)J.Virol.,70:520~532頁(LFUアッセイ)に記載のものなどの機能性アッセイで測定される機能性導入遺伝子産生物の産生を生じる感染性組換えウイルスベクター粒子の数
を指す。
【0053】
「末端逆位配列」または「ITR」配列は、当技術分野において十分に理解されている用語であり、ウイルスゲノムの末端に見出され反対方向にある比較的短い配列を指す。
【0054】
当技術分野において十分理解されている用語、「AAV末端逆位配列(ITR)」配列は、天然1本鎖AAVゲノムの両末端に存在するおよそ145ヌクレオチド配列である。ITRの最外側の125ヌクレオチドは、2つの別の方向で存在する場合があり、異なるAAVゲノム間および単一のAAVゲノムの2つの末端間に不均一性を生じる。最外側の125ヌクレオチドは、自己相補性のいくつかの短い領域(A、A’、B、B’、C、C’およびD領域と記される)も含有し、ITRのこの部分内に生じる鎖内塩基対合を可能にしている。
【0055】
「末端分解配列(terminal resolution sequence)」または「trs」は、ウイルスDNA複製の際にAAV repタンパク質によって切断されるAAV ITRのD領域中の配列である。変異体末端分解配列は、AAV repタンパク質による切断に抵抗性である。
【0056】
「AAVヘルパー機能」は、宿主細胞によるAAVの複製およびパッケージングを可能にする機能を指す。AAVヘルパー機能は、これらに限らないが、ヘルパーウイルスまたはAAV複製およびパッケージングを補助するヘルパーウイルス遺伝子を含む任意の多数の形態で提供される。他のAAVヘルパー機能は、遺伝毒性剤など当技術分野において周知である。
【0057】
AAVのための「ヘルパーウイルス」は、AAV(欠損パルボウイルス)が宿主細胞によって複製およびパッケージングされるようにするウイルスを指す。ヘルパーウイルスは、AAVの複製を可能にする「ヘルパー機能」を提供する。多数のそのようなヘルパーウイルスは同定されており、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアなどのポックスウイルスおよびバキュロウイルスを含む。アデノウイルスは、多数の異なるサブグループを含むが、サブグループCのアデノウイルス5型(Ad5)は最も一般的に使用される。ヒト、非ヒト哺乳動物および鳥類由来の多数のアデノウイルスは周知であり、ATCCなどの受託者から利用可能である。ATCCなどの受託者から同様に利用可能であるヘルペスファミリーのウイルスは、例えば単純ヘルペスウイルス(HSV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)および仮性狂犬病ウイルス(PRV)を含む。AAVの複製のためのアデノウイルスヘルパー機能の例は、E1A機能、E1B機能、E2A機能、VA機能およびE4orf6機能を含む。受託者から利用可能なバキュロウイルスは、オートグラファ・カルフォルニカ核多核体病ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis
virus)を含む。
【0058】
rAAVの調製物は、感染性AAV粒子の感染性ヘルパーウイルス粒子に対する比が少なくとも約102:1、少なくとも約104:1、少なくとも約106:1または少なくとも約108:1以上である場合はヘルパーウイルスを「実質的に含まない」と考えられる。一部の実施形態では調製物は、等量のヘルパーウイルスタンパク質(すなわち、上に記載のヘルパーウイルス粒子不純物が破壊された形態で存在した場合、そのようなレベルのヘルパーウイルスの結果として存在するタンパク質)も含まない。ウイルスおよび/または細胞性タンパク質混入物は、SDSゲル上のクーマシー染色バンドの存在として一般に観察される(例えば、AAVカプシドタンパク質VPl、VP2およびVP3に対応するもの以外のバンドの出現)。
【0059】
本明細書において使用される「微分係数分布値(differential coefficient distribution value)」または「C(S)」は、例えば超遠心分離法の際の、沈降粒子の分布を記載するためのラム方程式解の分布の変数である。
【0060】
本明細書において使用される「スベドベルグ単位」は、沈降速度の単位を指す。所与のサイズおよび形状の粒子の沈降速度は、どの程度早く粒子が沈降するかを測定する。1スベドベルグ単位は10-13秒間に等しい。例えばスベドベルグ単位は、遠心分離の遠心力下で分子が移動する速度を反映するためにしばしば使用される。
【0061】
本明細書において使用される「沈降速度条件」または「境界沈降速度条件」は、サンプル溶液が沈降速度分析に供される任意の実験条件を指す。沈降速度は、幅広い範囲のpHおよびイオン強度条件ならびに温度4から40℃にわたる粒子の研究を可能にする。沈降境界が移動する速度は、沈降する種の沈降係数の測定値である。沈降係数は、分子量(大きな粒子がより早く沈降する)および分子形状にも依存する。沈降境界の最小幅は分子の拡散係数に関連し;同様の沈降係数を有する複数の種の存在は拡散単独に基づいて予測されるよりも幅広い境界を生じる。沈降速度条件は、非限定的にローター速度、サンプルとローター中心との間の距離、温度、溶媒、サンプル、緩衝液、超遠心分離時間、検出の時間間隔、セクターおよび光学ウインドウ特徴、AUC計測手段(超遠心機および検出装置を含む)、参照溶媒の平衡透析およびデータ分析アルゴリズムに関連する任意の条件を含む場合がある。
【0062】
本明細書において使用される用語「分析的密度グラジエント沈降平衡」は、粒子の浮遊密度を測定する、または粒子の異なる種を分離するために浮遊密度における差異を使用するための方法に関する。これらの方法は、例えばAUC沈降平衡技術を使用できる。これらの方法では粒子溶液(例えば、非限定的にポリペプチド、ポリヌクレオチドまたはウイルスカプシドの溶液)は、溶媒和化合物での平衡が達成されるまで、塩化セシウムまたは硫酸セシウムグラジエントなどの溶媒和化合物グラジエント中で超遠心分離法に供される。平衡では、粒子溶液は粒子の密度が溶媒和化合物のものと等しいグラジエント中の位置に集まる、またはバンドになる。バンドの位置は粒子密度を算出するために使用でき、バンドは粒子の単一種を単離するために抽出される。
【0063】
本明細書において使用される「SEDFITアルゴリズム」は、沈降速度などの水力学的データを分析できるようにするアルゴリズムである(Schuck(2000)Biophys.J.,78:1606~19頁)。SEDFITアルゴリズムでは沈降係数のグリッドは、予測される範囲にわたって作製される。沈降境界は各沈降係数についてラム方程式への解を使用してシミュレートされ、一定の粒子形状および溶媒摩擦比を推定する。
【0064】
本明細書において使用される用語「F統計」または「F比」は、信頼レベルを指す。このパラメーターは、使用される正則化の量を制御する。それは、異なる範囲では異なる意味を有する:0から0.5では正則化は使用されない。値0.5から0.999は、蓋然性P(信頼レベル)に対応する。これらのP値から望ましいカイ二乗増加は、正則化の節減制約(parsimony constraint)がF統計で算出される。値0.51ではほとんど正則化を生じず;値0.68から0.90は一般に使用される信頼レベルに対応する(通常、50スキャン以上で0.7の蓋然性に対応するカイ二乗増加は0.1%程度である)、一方0.99に近い値は、非常に高い正則化を生じる。これらの値と蓋然性との関連は、F統計計算機を使用して検討される。数>1が入力される場合、それらは、直接カイ二乗比と見なされる(>1である蓋然性はないことから)。例えば1.1の値は、10%カイ二乗増加を有する正則化を生じる。
【0065】
「低減する」は、参照と比較して活性、機能および/または量を減少させる、低現する、または抑止することである。特定の実施形態では「低減する」によって、全体で20%以上の減少を生じる能力を意味する。別の実施形態では「低減」によって、全体で50%以上の減少を生じる能力を意味する。さらに別の実施形態では「低減」によって、75%、85%、90%、95%以上の減少を生じる能力を意味する。
【0066】
本明細書において使用される「参照」は、比較目的のために使用される任意のサンプル、標準物またはレベルを指す。例えば水溶液中のAAVの吸光度または屈折を測定する場合、溶液の吸光度または屈折はAAVを含まない水溶液(すなわち参照溶液)の吸光度または屈折と比較される。他の例では参照物は、当技術分野において周知の標準的手順を指す場合がある。例えばAAV産生の品質(例えば、均一性)の改善のための手順を分析する場合、候補手順によって産生されたAAVは、当技術分野において周知の手順(すなわち参照手順)と比較される。
【0067】
「単離された」分子(例えば、核酸もしくはタンパク質)または細胞は、それがその天然環境の構成成分から同定および分離および/または回収されていることを意味する。したがって、例えば、単離されたrAAV粒子は、培養溶解物または産生培養上清などの供給源混合物からそれを濃縮する精製技術を使用して産生される。下に記載の通り濃縮は、例えば溶液中に存在するDNase抵抗性粒子(DRP)の割合によってもしくは感染力によってなどの種々の方法によって測定される、またはそれは産生培養混入物もしくはヘルパーウイルス、培地構成成分などを含むプロセス混入物を含む混入物などの供給混合物中に存在する第2の潜在的干渉物質との関連で測定される。
【0068】
本明細書において値またはパラメーターの「約」を参照することは、値またはパラメーターそれ自体を対象とする実施形態を含む(および記載する)。例えば、「約X」を参照する記載は「X」の記載を含む。
【0069】
本明細書において使用される品目の単数形態「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、他に示す場合を除いて複数参照物を含む。例えば句「rAAV粒子(a rAAV particle)」は1つまたはそれ以上のrAAV粒子を含む。
【0070】
本明細書に記載の本発明の態様および実施形態が態様および実施形態を「含む」、「からなる」および/または「本質的にからなる」ことを含むことは理解される。
【0071】
III.分析超遠心分離法
分析超遠心分離法は、タンパク質または他の巨大分子の分子量ならびに水力学的および熱力学的特性を評価するための手段である。濃度、温度、イオン強度およびpHを含む幅広い条件にわたる沈降速度によるタンパク質または巨大分子の不均一性。例えばタンパク質は、臨床関連製剤において分析される。アデノウイルス調製物を特徴付けるための分析超遠心分離法の使用は、Berkowitz,SA & Philo JS,(2007)Anal.Biochem.,362:16~37頁によって提供されている。
【0072】
特定の態様では本発明は、分析超遠心分離法(AUC)を使用するウイルス粒子の調製物を特徴付ける方法を提供する。例えば一部の実施形態では本発明は、完全、インタクトなゲノムを有するウイルス粒子、空のウイルスカプシドおよび変種(例えば、切断型、凝集体、不純物など)ウイルスゲノムを含むウイルス粒子を識別するためにAUCを使用するrAAV粒子の調製物中の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子のベクターゲノムの完全性を評価するための方法を提供する。他の実施形態ではこれらの方法は、アデノ
ウイルス、レンチウイルスおよび単純ヘルペスウイルス(HSV)粒子を分析するために同様の方法で適用される。AUC分析は、遠心場における溶媒を通じた移行を測定することによる、粒子(例えば、ポリペプチド、ポリヌクレオチドおよびウイルスカプシド)の生物物理学的特性を特徴付けるための定量的方法を指す。AUC分析は、数十年にわたって十分に特徴付けられており、非常に多用途である。AUC分析が第1原理水力学および熱力学情報に依存していることから、AUCは、幅広い粒子濃度およびサイズにわたって多くの種類の粒子の生物物理学的特性を決定するために応用できる。AUC分析は、典型的には基本的な2種類の実験:沈降速度および沈降平衡を包含する。沈降平衡分析は、化学量論および会合定数などの特徴を測定するために使用できる粒子の熱力学的特性をもたらす。沈降速度は、サイズ、形状および濃度などの特徴を測定するために使用できる粒子の水力学的特性をもたらす。ウイルス調製物のAUC分析の特性は、同じアッセイ条件をウイルスゲノムのヌクレオチド配列またはカプシドの血清型に関わらずウイルス粒子のさまざまな調製物を分析するために使用できることである。
【0073】
本開示のある特定の態様は、ウイルスカプシド特性を特徴付けるための沈降速度分析の使用に関する。一部の実施形態では沈降速度分析は、光がコンパートメントを通過できるようにするそれぞれ2個の光学ウインドウを有する透析平衡にある2つのセクター(1つは実験サンプル用、もう1つは溶媒のみの参照サンプル用)を有する超遠心速度セルを使用する。超遠心分離法は、セルに角速度を適用し、溶質粒子のセクター底への急速な沈降を導く。沈降が生じると溶質は、セル上部のメニスカス近くでは枯渇し、枯渇領域と沈降した溶質との間に沈降境界を生じる。沈降境界の移動または移行の速度は、特定の時間間隔でサンプルおよび参照セクターの特性を比較する測定値を取ることによって測定される(沈降速度について、これらの間隔は典型的には数分程度である)。複数種の溶質が存在する場合、これはそれぞれ分解可能な種に対応する複数の沈降境界の形成を生じる。
【0074】
沈降境界を光学的に検出し、その移動または移行の速度を測定するためのいつくかの方法は、当技術分野において周知である(参考のためにColeら、(2008)Methods Cell Biol.,84:143~79頁を参照されたい)。一部の実施形態では参照およびサンプルセクターは、吸光度検出を使用してアッセイされる。この検出方法では具体的な波長での吸光度は、各セクター内の異なる半径位置でサンプルおよび参照セクターについて測定される。代替的に単一の半径位置での吸光度の経時変化は測定される。ベールの法則は、吸光度と溶質の消衰係数との間の数学的関係を提供する。
【0075】
一部の実施形態では参照物およびサンプルセクターは、干渉検出(例えば、レイリー干渉検出)を使用してアッセイされる。レイリー干渉検出法では、干渉光学系は、2個の平行スリットを有する。光の単一のコヒーレントビームは両方のウインドウを通り抜けるように分割され、次いで2本のビームは再混合される。これら2本の光波が混合される場合、それらは明暗交互のフリンジの干渉パターンを形成する。サンプルおよび参照サンプルが同一の屈折率を有する場合、生じる干渉フリンジは完全に直線状になる。溶質の濃度が増大すると、溶液の屈折率が増大し、それによりサンプル光ビームを遅らせ、垂直方向のフリンジのシフトを生じる。このフリンジシフトを測定することによって、サンプル中の溶質の濃度を測定できる。サンプルおよび参照物について絶対値を測定する吸光度検出とは異なり、干渉検出はサンプルと参照との間の相対差異を測定する。しかし干渉検出は、濃度に直接比例する統合されたピークを生じ、顕著には吸収しない種類のサンプルについて使用される。AUCでレイリー干渉光学を使用することについての参考のために、Furst(1997)Eur.Biophys.J.35:307~10頁を参照されたい。
【0076】
沈降境界が移動する速度の測定は、溶質粒子の多数の物理的特性を導くために使用される。境界移動の速度は、粒子の質量および形状(摩擦係数)に基づく沈降係数を決定する
。粒子の沈降係数sは、その速度と、遠心力場によってそれに適用される加速度との比を指す。沈降係数は、スベドベルグ単位、S(1スベドベルグ単位は10-13秒間に等しい)で表される。粒子または粒子の溶液の沈降係数は、その特性、例えば分子量(浮力について補正される)および溶媒の特性に依存する。
【0077】
超遠心分離法の際の経時的な溶質の濃度境界における変化は、ラム方程式を使用して決定できる(Schuck(2000)Biophys.J.,78:1606~19頁)。簡潔にはラム方程式は、ローターによって生じるセクター形の細胞および遠心力場を考慮して、沈降(溶質を濃縮する)および拡散(溶質を分散する)の競合する力への応答における経時的な溶質の濃度境界での変化を算出する。ラム方程式は:
式1:∂c/∂t=D[(∂^2c/∂r^2)+1/r(∂c/∂r)]-sω^2[r(∂c/∂r)+2c]
と表すことができ、
式中cは溶質濃度、Dは溶質拡散定数を表し、sは沈降係数を表し、ωはローターの角速度を表し、rは半径であり、tは時間である。
【0078】
生AUCデータをラム方程式の解にフィットさせることによって、沈降係数および濃度分布の変化などの溶液の特徴を決定できる。例えば沈降境界の変化の速度について実験的に決定された値は、沈降係数、分子量または境界を形成する溶質の濃度を導くためにラム方程式を使用してモデル化される。SEDFITなどのいくつかのプログラムが当技術分野において周知であり(Schuck(2000)Biophys.J.,78:1606~19頁)、ラム方程式をAUCデータにモデル化するために使用される。これらのプログラムは、複数の溶質または複数の沈降境界を含有する溶液にラム方程式を適用できるようにもする。
【0079】
溶質の特徴の決定のための好適なプログラムの一例は、SEDFITアルゴリズムである。一部の実施形態ではSEDFITアルゴリズムは、粒子種の混合物を含有する溶液由来のAUCデータを使用して微分係数分布値またはC(S)を算出するために使用される(参考のためにSchuck(2000)Biophys.J.,78:1606~19頁を参照されたい)。SEDFITアルゴリズムでは、予測される範囲にわたって沈降係数のグリッドが作成される。沈降境界は各沈降係数についてラム方程式への解を使用してシミュレートされ、一定の粒子形状および溶媒摩擦比を推定する。次いで実際のAUCデータは微分係数分布値またはC(S)を導くためにこれらのラム解にフィットされる。AUCデータを分析するために有用な多数の他のプログラムは、Cole and Hansen(1999)J.Biomol.Tech.10:163~76頁に見出される。
【0080】
本発明の一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、高度に精製され、適切に緩衝され、濃縮される。一部の実施形態ではウイルス粒子は、少なくとも約1x107vg/mL、2x107vg/mL、3x107vg/mL、4x107vg/mL、5x107vg/mL、6x107vg/mL、7x107vg/mL、8x107vg/mL、9x107vg/mL、1x108vg/mL、2x108vg/mL、3x108vg/mL、4x108vg/mL、5x108vg/mL、6x108vg/mL、7x108vg/mL、8x108vg/mL、9x108vg/mL、1x109vg/mL、2x109vg/mL、3x109vg/mL、4x109vg/mL、5x109vg/mL、6x109vg/mL、7x109vg/mL、8x109vg/mL、9x109vg/mL、1x1010vg/mL、2x1010vg/mL、3x1010vg/mL、4x1010vg/mL、5x1010vg/mL、6x1010vg/mL、7x1010vg/mL、8x1010vg/mL、9x1010vg/mL、1x1011vg/mL、2x1011vg/mL、3x1011vg/mL、4x1011vg/mL、5x1011vg/mL、6x1011vg/mL、7x1011vg/mL、8
x1011vg/mL、9x1011vg/mL、1x1012vg/mL、2x1012vg/mL、3x1012vg/mL、4x1012vg/mL、5x1012vg/mL、6x1012vg/mL、7x1012vg/mL、8x1012vg/mL、9x1012vg/mL、1x1013vg/mL、2x1013vg/mL、3x1013vg/mL、4x1013vg/mL、5x1013vg/mL、6x1013vg/mL、7x1013vg/mL、8x1013vg/mL、9x1013vg/mLのいずれかに濃縮される。一部の実施形態ではウイルス粒子は、約1x107vg/mLから約1x1013vg/mL、約1x108vg/mLから約1x1013vg/mL、約1x109vg/mLから約1x1013vg/mL、約1x1010vg/mLから約1x1013vg/mL、約1x1011vg/mLから約1x1013vg/mL、約1x1012vg/mLから約1x1013vg/mL、約1x107vg/mLから約1x1012vg/mL、約1x108vg/mLから約1x1012vg/mL、約1x109vg/mLから約1x1012vg/mL、約1x1010vg/mLから約1x1012vg/mL、約1x1011vg/mLから約1x1012vg/mL、約1x107vg/mLから約1x1011vg/mL、約1x108vg/mLから約1x1011vg/mL、約1x109vg/mLから約1x1011vg/mL、約1x1010vg/mLから約1x1011vg/mL、約1x107vg/mLから約1x1010vg/mL、約1x108vg/mLから約1x1010vg/mL、約1x109vg/mLから約1x1010vg/mL、約1x107vg/mLから約1x109vg/mL、約1x108vg/mLから約1x109vg/mLまたは約1x107vg/mLから約1x108vg/mLに濃縮される。
【0081】
一部の実施形態ではウイルス粒子は、好適な宿主細胞において生成され、精製される。一部の実施形態ではウイルス粒子は、親和性クロマトグラフィーによって精製される。ウイルス粒子(例えば、AAV粒子、アデノウイルス粒子、レンチウイルス粒子、HSV粒子)を精製するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、クロマトグラフィー媒体に固定したウイルスカプシドタンパク質の抗体またはウイルスカプシドタンパク質の結合リガンドの使用による。ウイルスカプシド親和性クロマトグラフィーの例は、これらに限らないがAAVのためのAVB親和性クロマトグラフィー(GE Healthcare)、アデノウイルスおよびHSVのための金属親和性クロマトグラフィー、ならびにAAVおよびレンチウイルスのためのヘパリン親和性クロマトグラフィーなどを含む。アデノウイルス粒子を精製するための方法は、例えばBo,Hら、(2014)Eur.J.Pharm.Sci.67C:119~125頁に見出される。レンチウイルス粒子を精製するための方法は、例えばSegura MM,ら、(2013)Expert
Opin Biol Ther.13(7):987~1011頁に見出される。HSV粒子を精製するための方法は例えばGoins,WFら、(2014)Herpes Simplex Virus Methods in Molecular Biology 1144:63~79頁に見出される。
【0082】
一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、医薬組成物中に製剤化される。関連する実施形態では医薬組成物は、生理学的pHおよび/または生理学的浸透圧を有する緩衝剤を含有する。医薬製剤の非限定的例はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)であり、一部の実施形態ではPBSは生理学的浸透圧(例えば、約pH7.2および約300mOsm/L)である。一部の実施形態ではサンプル調整は、260nmでの光学密度測定によって0.1から1.0の標的濃度に行われる。一部の例ではこの濃度は、再現性があり一致したAUCデータを生じる。一部の例ではウイルス粒子の濃度は、PBSでの直接希釈によってまたはさらなる濃縮によって;例えば遠心フィルターデバイスを使用することによってのいずれかで調整される。
【0083】
本発明の一部の実施形態では、沈降速度分析超遠心分離法(SV-AUC)分析は、生
物学的に適切な溶液条件下でその天然状態にあるサンプルを特徴付けることができる分析用超遠心機を使用して実施される(例えば、ProteomeLab(商標)XL-I(Beckman Coulter))。ProteomeLab(商標)XL-1を使用する場合、サンプルは2個のセクター速度セルのサンプルセクターにロードされ、ビヒクル対照(例えば、組換えウイルスを含まないPBS)は対応する参照セクターにロードされる。サンプルは4穴ローターに置かれ、約20℃の温度まで装置内で平衡化され、高真空は約1時間維持される。例示的実施形態では沈降速度遠心分離は、約20,000rpm、約20℃および約0.003cm半径工程設定で、遅延なし、反復なしで実施される。下に記載のとおり、さまざまなパラメーターが遠心分離のために使用できる。一部の実施形態では吸光度(260nm)および/または干渉光学(例えば、レイリー干渉光学)は、最小沈降構成成分が光学ウインドウを透明化するまで半径方向の濃度を時間の関数として同時に記録するために使用される。一部の実施形態では半径方向の濃度は、最低密度を有する沈降種がセクターを透明化するまで記録される。一部の実施形態では沈降は、最低密度を有する組換えウイルス粒子が超遠心機のセクターの底に沈降するまでモニターされる。セクターは、超遠心機の一部;例えば超遠心速度セルである。一部の実施形態ではセクターは、サンプルが検出される超遠心機の一部である場合がある。一部の実施形態では超遠心分離法は、超遠心速度セルを含む超遠心機を利用する。一部の実施形態では、組換えウイルス粒子が超遠心速度セルの底に沈降するまでモニターされる。一部の実施形態では沈降は、最低密度を有する組換えウイルス粒子が沈降し、光学ウインドウを透明化するまでモニターされる。一部の実施形態では半径方向の濃度は、少なくとも約0.5時間、0.75時間、1.0時間、1.5時間、2.0時間、3.0時間、4.0時間または5.0時間のいずれかについて記録される。一部の実施形態では半径方向の濃度は、約0.5時間から約0.75時間、約0.75時間から約1.0時間、約1.0時間から約1.5時間、約1.5時間から約2.0時間、約2時間から約3時間、約3時間から約4時間、約4時間から約5時間のいずれかの間について記録される。一部の実施形態では半径方向の濃度は、約1.2時間について記録される。実行条件を最適化することは、例えば、沈降する種がすべてセクターの底に完全に沈降するまで温度を20℃に一定に保ち、18,000rpmから20,000rpmの速度で実行を継続することを含む。下に記載のとおり、他の温度および速度も使用できる。
【0084】
完全カプシド百分率は、SEDFIT連続サイズC(S)分布モデルを使用する各検出方法からの複数のスキャン(例えば、75)を分析することによって決定される。二次(2nd)微分正則化はフィッティングに適用される。一部の実施形態では、F統計の信頼レベルは約0.68である。一部の実施形態ではF統計の信頼レベルは約0.68、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95または0.99のいずれかより高い。一部の実施形態ではF統計の信頼レベルは、約0.68から約0.90である。一部の実施形態ではF統計の信頼レベルは、約0.68から約0.99である。一部の実施形態では以下のC(S)パラメーターは一定に保たれ:分解能は約200Sから約5000Sであり、Sminは約1Sから約100Sであり、Smaxは約100Sから約5000Sであり、摩擦比は約1.0であり、または遠心分離ソフトウェアによって決定された値に移行させる。一部の実施形態では分解能は、約200S、300S、400S、500S、600S、700S、800S、900Sまたは1000Sのいずれかである。一部の実施形態では分解能は、約200Sから約1000S、200Sから約900S、200Sから約800S、200Sから約700S、200Sから約600S、200Sから約500S、200Sから約400S、200Sから約300S、300Sから約1000S、300Sから約900S、300Sから約800S、300Sから約700S、300Sから約600S、300Sから約500S、300Sから約400S、400Sから約1000S、400Sから約900S、400Sから約800S、400Sから約700S、400Sから約600S、400Sから約500S、500Sから約1000S、500Sから約900S、500Sから約800S、500Sから約700S、
500Sから約600S、600Sから約1000S、600Sから約900S、600Sから約800S、600Sから約700S、700Sから約1000S、700Sから約900S、700Sから約800S、800Sから約1000S、800Sから約900Sまたは900Sから約1000Sのいずれかの間である。一部の実施形態では分解能は、約200Sである。一部の実施形態ではSmaxは、約100S、200S、300S、400S、500S、600S、700S、800S、900Sまたは1000Sのいずれかである。一部の実施形態ではSmaxは、約100Sから約1000S、100Sから約900S、100Sから約800S、100Sから約700S、100Sから約600S、100Sから約500S、100Sから約400S、100Sから約300S、100Sから約200S、200Sから約1000S、200Sから約900S、200Sから約800S、200Sから約700S、200Sから約600S、200Sから約500S、200Sから約400S、200Sから約300S、300Sから約1000S、300Sから約900S、300Sから約800S、300Sから約700S、300Sから約600S、300Sから約500S、300Sから約400S、400Sから約1000S、400Sから約900S、400Sから約800S、400Sから約700S、400Sから約600S、400Sから約500S、500Sから約1000S、500Sから約900S、500Sから約800S、500Sから約700S、500Sから約600S、600Sから約1000S、600Sから約900S、600Sから約800S、600Sから約700S、700Sから約1000S、700Sから約900S、700Sから約800S、800Sから約1000S、800Sから約900Sまたは900Sから約1000Sのいずれかの間である。一部の実施形態ではSmaxは約200Sから約5000Sである。一部の実施形態ではSmaxは約200Sである。一部の実施形態では摩擦比は、遠心分離ソフトウェアによって決定された値に移行させる。一部の実施形態では摩擦比は約1.0である。一部の実施形態では半径方向不変(RI)および時不変(TI)ノイズサブトラクションが適用される。一部の実施形態ではメニスカス位置を移行させ、ソフトウェアが最適な位置を選ぶようにされている。一部の実施形態では摩擦比を移行させ、ソフトウェアが最適な位置を選ぶようにされている。モデルはデータをラム方程式にフィットし、生じたサイズ分布はフリンジの単位またはOD260単位で濃度に比例する各ピーク下面積を有するクロマトグラムのような「沈降係数の分布」である。(スベドベルグ単位での)沈降係数および(OD単位での)相対濃度は、分布における各構成成分について決定される。一部の実施形態では複数回のAUC実行は独立アッセイであり、各分析は以下の帰属について結果の品質を確実にするためにモニターされる:適合度(rmsd)、各ピークについてのOD260nm/フリンジにおける干渉シグナルの比(A260/IF比)、実行間での各種についての沈降係数の一致およびスキャンの全体的な品質。
【0085】
本発明の一部の実施形態では消衰係数は、吸光度データからモル濃度およびインタクトなベクターピークの実際の百分率値を算出するために使用される。空のカプシド(Ε260/カプシド=3.72e6)およびインタクトなベクター(Ε260/ベクター=3.00e7)の両方についてのモル吸光度消衰係数は、公開されている式(Sommerら、(2003)Mol Ther.,7:122~8頁)に基づいて算出できる。消衰係数は、空のカプシドおよびインタクトなベクターピークについて利用可能である。C(S)値は、Schuck(2000)Biophys.J.,78:1606~19頁に記載されるSEDFITアルゴリズムを使用して決定できる。インタクトなベクターおよび空のカプシドの両方のモル濃度は、ベールの法則を使用して算出され、完全カプシドの百分率はこれらの値から算出される。一部の実施形態では値は、完全カプシドの百分率として報告される。
【0086】
一部の実施形態では、組換えウイルス粒子(例えば、未知のサイズおよび配列の断片化ゲノムを有するウイルス粒子)の具体的な種の消衰係数を実験的に決定することは不可能
である。S値とゲノムサイズとの関係は、周知のヌクレオチドサイズを有するカプシド化されたウイルスゲノムを含む組換えウイルスベクター調製物を分析することによって確立され、対応するS値は本明細書に記載のとおり決定される。算出されたS値は、未知の分子量またはゲノムサイズの組換えウイルス種が未知の種の分子量を決定するために比較される標準曲線を生成するためにプロットされる。
【0087】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の調製物を特徴付ける方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程(例えば、1回またはそれ以上)、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、c)C(S)分布における各ピーク下面積を積分して、各ピークの相対濃度を決定する工程であって、各ピークが組換えウイルス粒子の種に相当する工程を含む、方法を提供する。一部の実施形態では本発明の方法により同定される組換えウイルス粒子の種は、これらに限らないが;インタクトな組換えウイルスゲノムを含む完全組換えウイルス粒子、空の組換えウイルスカプシド粒子、および変種の組換えウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒を含む。一部の実施形態では変種のゲノムは、インタクトな組換えウイルスゲノムより小さい(例えば、切断型ゲノム)。一部の実施形態では変種のゲノムは、インタクトな組換えウイルスゲノムより大きい(例えば、凝集体、組換え体など)。一部の実施形態では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子のベクターゲノムの完全性を評価するための方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程(例えば、1回またはそれ以上)、b)微分沈降係数分布値C(s)をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、c)S値に対応するプロット上のピークの存在によって調製物中の組換えウイルス粒子の種を同定する工程であって、組換えウイルス粒子の具体的な種のゲノムサイズが種のS値を、さまざまな周知のサイズを有するカプシド化されたウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子のS値によって作成された標準曲線と比較することによって算出される工程を含む、組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子のベクターゲノムの完全性を評価するための方法を提供する。一部の実施形態では方法は、C(S)分布における各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程をさらに含む。一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降は、時間間隔で1回モニターされる。一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降は、時間間隔で1回より多くモニターされる。
【0088】
本発明の一部の実施形態では組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の沈降は、約260nmでの光学密度または吸光度を測定することによってモニターされる。吸光度を測定する手段は、当技術分野において周知である。一部の実施形態ではAUCのために使用される超遠心機は、吸光度を測定する手段を備えている。他の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降は、干渉によってモニターされる。一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降は、レイリー干渉によってモニターされる。干渉を測定する手段は、当技術分野において周知である(Furst(1997)Eur.Biophys.J.35:307~10頁)。一部の実施形態ではAUCのために使用される超遠心機は、干渉を測定する手段を備えている。一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降は、吸光度および干渉の両方によってモニターされる。一部の実施形態では吸光度および/または干渉は、参照標準を使用して測定される。一部の実施形態では参照標準は、組換えウイルスが存在しないことを除いて組換えウイルス調製物の溶液と一致している。例えば組換えウイルス調製物は、リン酸緩衝生理食塩水などの緩衝液中に組換えウイルスを含む。この例では参照標準は、組換えウイルス粒子を含まないリン酸緩衝生理食塩水である。
【0089】
本発明の一部の実施形態ではウイルス粒子の調製物は、医薬製剤中にある。そのような製剤は、当技術分野において十分に周知である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第15版,1035~1038頁および1570~1580頁を参照されたい)。そのような医薬製剤は、水および、石油、動物、ピーナッツ油、ダイズ油、ミネラルオイルなどの植物または合成由来のものを含む油などの滅菌液体であってよい。生理食塩水およびブドウ糖水溶液、ポリエチレングリコール(PEG)およびグリセリン溶液も液体担体として、特に注射可能な溶液に用いることができる。医薬製剤は、追加の成分、例えば保存剤、緩衝液、等張化剤、抗酸化物質および安定化剤、非イオン性湿潤剤または清澄剤、増粘剤などをさらに含む場合がある。本発明の一部の実施形態では医薬製剤は、リン酸緩衝生理食塩水を含む。
【0090】
本発明の一部の実施形態では超遠心分離法の際のウイルス粒子の沈降速度は、超遠心分離法の際に継続的にウイルス粒子の沈降をモニターすることによって決定される。さまざまな種類のウイルス粒子のためにAUCのパラメーターを最適化することは当業者の管理の範囲内である。理論に束縛されることを意図せず、AAVおよびアデノウイルス粒子の両方の分析を可能にするAUC設定の範囲は、HSVおよびレンチウイルス粒子のサイズがAAVおよびアデノウイルス粒子のものの間であることから、レンチウイルスおよびHSVを含む他のウイルス粒子の分析も可能にするはずである。一部の実施形態ではrAAV、rHSV、レンチウイルス、および/またはrAd粒子についてのデータ取得は、約3,000から約20,000rpmの間のAUC速度で実施される。一部の実施形態ではrAAV、HSV、レンチウイルスおよび/またはアデノウイルス粒子についてのデータ分析は、約1SのSminおよび約1000SのSmaxで実施される。一部の実施形態ではrAAV、rHSV、レンチウイルスおよび/またはrAd粒子についてのデータ分析は、約200Sから約1,000Sの分解能で実施される。一部の実施形態では分解能は、約200S、300S、400S、500S、600S、700S、800S、900Sまたは1000Sのいずれかである。一部の実施形態では分解能は、約200Sから約1000S、200Sから約900S、200Sから約800S、200Sから約700S、200Sから約600S、200Sから約500S、200Sから約400S、200Sから約300S、300Sから約1000S、300Sから約900S、300Sから約800S、300Sから約700S、300Sから約600S、300Sから約500S、300Sから約400S、400Sから約1000S、400Sから約900S、400Sから約800S、400Sから約700S、400Sから約600S、400Sから約500S、500Sから約1000S、500Sから約900S、500Sから約800S、500Sから約700S、500Sから約600S、600Sから約1000S、600Sから約900S、600Sから約800S、600Sから約700S、700Sから約1000S、700Sから約900S、700Sから約800S、800Sから約1000S、800Sから約900Sまたは900Sから約1000Sのいずれかの間である。一部の実施形態では分解能は、約200Sである。rAAV、rHSV、レンチウイルスおよび/またはrAd粒子についてのデータ分析は、約100S、200S、300S、400S、500S、600S、700S、800S、900Sまたは1000SいずれかのSmaxで実施される。一部の実施形態ではSmaxは、約100Sから約1000S、100Sから約900S、100Sから約800S、100Sから約700S、100Sから約600S、100Sから約500S、100Sから約400S、100Sから約300S、100Sから約200S、200Sから約1000S、200Sから約900S、200Sから約800S、200Sから約700S、200Sから約600S、200Sから約500S、200Sから約400S、200Sから約300S、300Sから約1000S、300Sから約900S、300Sから約800S、300Sから約700S、300Sから約600S、300Sから約500S、300Sから約400S、400Sから約1000S、400Sから約900S、400Sから約800S、400Sから約700S、400Sから約600S、400Sから約500S、
500Sから約1000S、500Sから約900S、500Sから約800S、500Sから約700S、500Sから約600S、600Sから約1000S、600Sから約900S、600Sから約800S、600Sから約700S、700Sから約1000S、700Sから約900S、700Sから約800S、800Sから約1000S、800Sから約900Sまたは900Sから約1000Sのいずれかの間である。一部の実施形態ではSmaxは、約200Sから約5000Sである。一部の実施形態ではSmaxは約200Sである。一部の実施形態では、半径方向不変(RI)および時不変(TI)ノイズサブトラクションが適用される。一部の実施形態ではメニスカス位置を移行させ、ソフトウェアが最適な位置を選ぶようにされている。一部の実施形態では摩擦比を移行させ、ソフトウェアが最適な位置を選ぶようにされている。一部の実施形態ではrAAVおよび/またはアデノウイルス粒子についてのデータ分析は、1で一定に保たれる。一部の実施形態ではrAAV、HSV、レンチウイルス、および/またはアデノウイルス粒子についてのデータ分析は、非線形回帰を使用して最適化された値でFITコマンドを使用して移行される。
【0091】
組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)に関して、一部の実施形態では超遠心分離法の際の組換えウイルスの沈降速度は、約15秒間、30秒間、45秒間、1分間(60秒間)、2分間、3分間、4分間、5分間、6分間、7分間、8分間、9分間、10分間、15分間、20分間、25分間を超えるごとに1回組換えウイルス粒子の沈降をモニター(例えば、スキャンニング)することによって決定される。スキャンは、光学系が可能な限り迅速に遅延無く継続的に取得される。干渉スキャンは迅速であり、1回のスキャンは約10~15秒間で完了し、一方で吸光度スキャンは約60秒間必要である。二重検出が使用される場合、両方についてのスキャン取得速度は吸光度系によって決定される。本発明の一部の実施形態では、超遠心分離法の際に約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100を超えるスキャンが組換えウイルス粒子の沈降をモニターするために使用される。一部の実施形態では最少30スキャンが分析のために必要であり、スキャンは沈降工程が完了するまでに回収される。一部の実施形態では沈降工程は、典型的には40から75スキャンの間で記載される。一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降速度は、約75スキャンに基づいて決定される。一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降速度は、約55スキャンから約75スキャンに基づいて決定される。一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降速度は、約55スキャンから約60スキャンに基づいて決定される。一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降速度は、約60スキャンから約75スキャンに基づいて決定される。一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降速度は、約60スキャンから約70スキャンに基づいて決定される。一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降速度は、複数回の超遠心分離法(実行)に基づいて決定される。一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降速度は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回のいずれかまたはそれを超える超遠心分離法の実行に基づいて決定される。一部の実施形態では沈降速度は、SEDFITアルゴリズムを使用してC(S)値を決定するために使用される。一部の実施形態では二次微分正則化は、約0.68のF統計の信頼レベルを有するフィッティングレベルに適用される。一部の実施形態では以下のC(S)パラメーターは一定に保たれ:分解能は100Sから約200Sであり、Sminは約1であり、Smaxは約200Sから300Sであり、摩擦比は約1.0から1.2Sである。一部の実施形態では半径方向不変(RI)および時不変(TI)ノイズサブトラクションが適用される。
【0092】
本発明の一部の実施形態では、約5,000rpm;10,000rpm;15,000rpm;20,000rpm;25,000rpm;30,000rpm;35,000rpm;40,000rpm;45,000rpm;または50,000rpmのいずれかを超えて組換えウイルス粒子の調製物を超遠心分離することによる組換えウイルス粒
子の調製物中の組換えウイルス粒子(例えばrAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の境界沈降速度。一部の実施形態では超遠心分離法は、約5,000rpmから約50,000rpm;約10,000rpmから約50,000rpm;約15,000rpmから約50,000rpm;約20,000rpmから約50,000rpm;約25,000rpmから約50,000rpm;約30,000rpmから約50,000rpm;約35,000rpmから約50,000rpm;約40,000rpmから約50,000rpm;約45,000rpmから約50,000rpm;約5,000rpmから約45,000rpm;約10,000rpmから約45,000rpm;約15,000rpmから約45,000rpm;約20,000rpmから約45,000rpm;約25,000rpmから約45,000rpm;約30,000rpmから約45,000rpm;約40,000rpmから約45,000rpm;約5,000rpmから約40,000rpm;約10,000rpmから約40,000rpm;約15,000rpmから約40,000rpm;約20,000rpmから約40,000rpm;約25,000rpmから約40,000rpm;約30,000rpmから約40,000rpm;約35,000rpmから約40,000rpm;約5,000rpmから約35,000rpm;約10,000rpmから約35,000rpm;約15,000rpmから約35,000rpm;約20,000rpmから約35,000rpm;約25,000rpmから約35,000rpm;約30,000rpmから約35,000rpm;約5,000rpmから約30,000rpm;約10,000rpmから約30,000rpm;約15,000rpmから約30,000rpm;約20,000rpmから約30,000rpm;約25,000rpmから約30,000rpm;約5,000rpmから約25,000rpm;約10,000rpmから約25,000rpm;約20,000rpmから約25,000rpm;約5,000rpmから約20,000rpm;約10,000rpmから約20,000rpm;約15,000rpmから約20,000rpm;約5,000rpmから約15,000rpm;約10,000rpmから約15,000rpmまたは約5,000rpmから約10,000rpmの間のいずれかで実行される。本発明の一部の実施形態では、組換えウイルス粒子の調製物を約20,000rpmで超遠心分離することによる組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子の境界沈降速度。本発明の一部の実施形態では、組換えウイルス粒子の調製物を約15,000rpmから約20,000rpmで超遠心分離することによる組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子の境界沈降速度。
【0093】
本発明の一部の実施形態では約4℃、10℃、15℃、20℃、25℃もしくは30℃またはそれ以上での組換えウイルス粒子の調製物を超遠心分離することによる組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の調製物中の組換えウイルス粒子の境界沈降速度。一部の実施形態では超遠心分離法は、約4℃から約30℃、約4℃から約25℃、約4℃から約20℃、約4℃から約15℃、約4℃から約10℃、約10℃から約30℃、約10℃から約25℃、約10℃から約20℃、約10℃から約15℃、約15℃から約30℃、約15℃から約25℃、約15℃から約20℃、約20℃から約30℃または約20℃から約25℃のいずれかの間で実行される。一部の実施形態では、組換えウイルス粒子の調製物を約20℃で超遠心分離することによる組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子の境界沈降速度。一部の実施形態では、組換えウイルス粒子の調製物を約15℃から約20℃で超遠心分離することによる組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子の境界沈降速度。
【0094】
本明細書で開示のとおり多数の種類の組換えウイルス粒子は、本開示の方法によって分析される(例えば、AAV、アデノウイルス、レンチウイルスおよび/またはHSV粒子)。好適な超遠心分離法条件、分析アルゴリズムおよび他のパラメーターは、当技術分野において周知の方法を通じて実験的に決定できる。AAV、アデノウイルス、レンチウイ
ルスおよびHSV粒子についての例示的パラメーターは、具体的なパラメーター選択肢の選択についての指針と共に非限定的に下の表1に提供される。
【0095】
【0096】
【0097】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の調製物中の空のカプシドの存在を決定する方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程(例えば、1回またはそれ以上)、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程であって、空のカプシド粒子のS値に対応するピークの存在は、空のカプシド粒子の存在を示す工程を含む、組換えウイルス粒子の調製物中の空のカプシドの存在を決定する方法を提供する。一部の実施形態では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物中の空のカプシド相対量を測定する方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程(例えば、1回またはそれ以上)、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、c)C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程、d)空のカプシド粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量を、インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量と比較する工程を含む、方法を提供する。一部の実施形態では空のカプシド粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量は、C(S)対Sのプロットでのすべてのピークを積分することによる調製物中のすべての組換えウイルス粒子の全量と比較される。
【0098】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の調製物中の組換えウイルス粒子変種の存在を決定する方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程(例えば、1回またはそれ以上)、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程であって、インタクトな完全組換えウイルスゲノムを含む組換えウイルスカプシド粒子のS値とは異なるS値に対応するピークの存在が組換えウイルス粒子変種の存在を示す工程を含む、組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子変種の存在を決定する方法を提供する。一部の実施形態では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子変種の相対量を測定する方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程(例えば、1回またはそれ以上)、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、c)C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程、d)空のカプシド粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量を、インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量と比較する工程を含む、組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子変種の相対量を測定する方法を提供する。一部の実施形態では、インタクトな完全組換えウイルスゲノムを含む組換えウイルスカプシド粒子のS値とは異なるS値を有する組換えウイルス粒子の量は、C(S)対Sのプロットでの全てのピークを積分することによって調製物中のすべての組換えウイルス粒子の全量と比較される。一部の実施形態では組換えウイルス粒子変種は、全長インタクトなウイルスゲノムより小さい(例えば、切断型)または大きい組換えウイルスゲノムを含む。他のウイルス性カプシド化DNA不純物も検出される。
【0099】
一部の実施形態では本発明は、組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の調製物の精製の際に空のカプシドおよび/または変種のゲノムを含む組換えウイルス粒子の除去をモニターする方法であって、精製プロセスにおける1つまたはそれ以上の工程に続いて、調製物から組換えウイルス粒子サンプルを除去すること、および本明細書に記載のAUCを使用して空のカプシドの相対量についてサンプルを分析することを含む方法を提供する。空のカプシドおよび/または変種のゲノムを含む組換えウイルス粒子の完全カプシドに対する相対量における減少は、組換えウイルス粒子の調製物からの空のカプシドの除去を示す。
【0100】
一部の実施形態では本発明は、組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の調製物中の組換えウイルス粒子の不均一性を決定する方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程(例えば、1回またはそれ以上)、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程であって、インタクトなウイルスゲノムを含むカプシドに相当するピークに加えたピークの存在が調製物中の組換えウイルス粒子の不均一性を示す、工程を含む、方法を提供する。一部の実施形態では本発明の方法によって同定された組換えウイルス粒子の種は、これらに限らないがインタクトな組換えウイルスゲノムを含む完全組換えウイルス粒子、空の組換えウイルスカプシド粒子および変種の組換えウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子を含む。一部の実施形態では変種のゲノムは、インタクトな組換えウイルスゲノムより小さい(例えば、切断型ゲノム)。一部の実施形態では変種のゲノムは、インタクトな組換えウイルスゲノムより大きい(例えば、凝集体、組換え体など)。一部の実施形態では変種のゲノムは、インタクトな組換えウイルスゲノムより小さいまたは大きいゲノムを含む。
【0101】
一部の実施形態では本発明は、組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の調製物の精製の際に組換えウイルス粒子の不均一性をモニターする方法であって、精製プロセスにおける1つまたはそれ以上の工程に続いて、調製物から組換えウイルス粒子サンプルを除去すること、ならびに本明細書に記載のAUCを使用して、インタクトな組換えウイルスゲノムを含む完全カプシド、空のカプシドおよび/または変種のゲノムを含む組換えウイルス粒子の相対量を決定することを含み、インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子の相対量における増大が組換えウイルス粒子の調製物中の全ウイルス粒子の不均一性の増大を示す方法を提供する。
【0102】
上に記載の実施形態では組換えウイルス粒子は、1つまたはそれ以上の精製工程を使用して精製された。精製工程の例は、これらに限らないが平衡遠心分離、アニオン交換ろ過、接線流ろ過(TFF)、アパタイトクロマトグラフィー、ヘルパーウイルスの熱不活性化、疎水性相互作用クロマトグラフィー、免疫親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、ナノ濾過、カチオン交換クロマトグラフィーおよびアニオン交換クロマトグラフィーを含む。
【0103】
上に記載の実施形態では組換えウイルス粒子は、自己相補性AAV(scAAV)ゲノムを含む。一部の実施形態では組換えAAVゲノムは、第1の異種性ポリヌクレオチド配列(例えば、治療用導入遺伝子コード鎖)および第2の異種性ポリヌクレオチド配列(例えば、治療用導入遺伝子の非コードまたはアンチセンス鎖)を含み、第1の異種性ポリヌクレオチド配列は第2のポリヌクレオチド配列とその長さの大部分または全体に沿って鎖内塩基対を形成できる。一部の実施形態では第1の異種性ポリヌクレオチド配列と第2の異種性ポリヌクレオチド配列とは、鎖内塩基対合を促進する配列によって連結される;例えばヘアピンDNA構造。ヘアピン構造は、例えばsiRNA分子において当技術分野において周知である。一部の実施形態では第1の異種性ポリヌクレオチド配列と第2の異種性ポリヌクレオチド配列とは、変異導入ITRによって連結される。一部の実施形態ではscAAVウイルス粒子は、scAAVゲノムの単量体形態を含む。一部の実施形態ではscAAVウイルス粒子は、scAAVゲノムの二量体形態を含む。一部の実施形態では本明細書に記載のAUCは、scAAVゲノムの単量体形態を含むrAAV粒子の存在を検出するために使用される。一部の実施形態では本明細書に記載のAUCは、scAAVゲノムの二量体形態を含むrAAV粒子の存在を検出するために使用される。一部の実施形態ではscAAVゲノムのカプシドへのパッケージングは本明細書に記載のAUCによってモニターされる。
【0104】
上に記載の実施形態ではrAAV粒子は、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV4カプシド、AAV5カプシド、AAV6カプシド(例えば、野生型AAV6カプシドもしくはShH10などの変種AAV6カプシド、U.S.PG Pub.2012/0164106に記載のとおり)、AAV7カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8カプシド、AAVrh8R、AAV9カプシド(例えば、野生型AAV9カプシド、もしくは修飾AAV9カプシド、U.S.PG Pub.2013/0323226に記載のとおり)、AAV10カプシド、AAVrh10カプシド、AAV11カプシド、AAV12カプシド、チロシンカプシド変異体、ヘパリン結合カプシド変異体、AAV2R471Aカプシド、AAVAAV2/2-7m8カプシド、AAV DJカプシド(例えば、AAV-DJ/8カプシド、AAV-DJ/9カプシドもしくはU.S.PG Pub.2012/0066783に記載の任意の他のカプシド)、AAV2 N587Aカプシド、AAV2 E548Aカプシド、AAV2 N708Aカプシド、AAV V708Kカプシド、ヤギAAVカプシド、AAV1/AAV2キメラカプシド、ウシAAVカプシド、マウスAAVカプシドまたは米国特許第8,283,151号もしくは国際公開第WO2003/042397号に記載のAAVカプシドを含む。上に記
載の実施形態ではrAAV粒子は、少なくとも1つのAAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAVrh8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、AAVrh10 ITR、AAV11 ITR、AAV12 ITR、AAV DJ ITR、ヤギAAV ITR、ウシAAV ITRまたはマウスAAV ITRを含む。一部の実施形態ではrAAV粒子は、1つのAAV血清型由来のITRおよび別の血清型由来のAAVカプシドを含む。例えばrAAV粒子は、AAV9カプシド中にカプシド化された少なくとも1つのAAV2 ITRを端に有する治療用導入遺伝子を含むことができる。そのような組合せは、偽型化rAAV粒子と称される場合がある。
【0105】
IV.ウイルス粒子
本明細書に開示の方法は、使用を、とりわけ種々のウイルス粒子中で目的の種を特徴付けることにおいて見出す(例えば、切断型ゲノムを含むウイルス粒子および/またはDNA不純物を含むウイルス粒子と比較する全ゲノムを含むウイルス粒子)。
【0106】
一部の実施形態ではウイルス粒子は、1つまたは2つのITRを端に有する導入遺伝子を含む核酸を含む組換えAAV粒子である。核酸は、AAV粒子中にカプシド化されている。AAV粒子はまた、カプシドタンパク質も含む。一部の実施形態では核酸は、転写開始および終結配列を含む制御配列、構成成分に転写方向で作動可能に連結された目的のタンパク質コード配列(複数可)(例えば、治療用導入遺伝子)を含み、それにより発現カセットを形成する。発現カセットは、少なくとも1つの機能性AAV ITR配列に5’および3’末端で隣接している。「機能性AAV ITR配列」によって、ITR配列がAAVビリオンのレスキュー、複製およびパッケージングを目的として機能することが意味される。その全体を参照により本明細書に組み入れるDavidsonら、PNAS,2000,97(7)3428~32頁;Passiniら、J.Virol.,2003,77(12):7034~40頁およびPechanら、Gene Ther.,2009,16:10~16頁を参照されたい。本発明のいくつかの態様を実行するために組換えベクターは、rAAVによる感染のためのカプシド化および物理的構造に不可欠なAAVの配列の少なくとも全体を含む。本発明のベクターにおける使用のためのAAV ITRは、野生型ヌクレオチド配列を有する必要はなく(例えばKotin,Hum.Gene Ther.,1994,5:793~801頁に記載のとおり)、ヌクレオチドの挿入、欠失もしくは置換によって変更することができ、AAV ITRはいくつかのAAV血清型のいずれにも由来できる。AAVの40を超える血清型が現在周知であり、新たな血清および既存の血清型の変種は同定され続けている。Gaoら、PNAS,2002,99(18):11854~6頁;Gaoら、PNAS,2003,100(10):6081~6頁およびBossisら、J.Virol.,2003,77(12):6799~810頁を参照されたい。任意のAAV血清型の使用は、本発明の範囲内と考えられる。一部の実施形態ではrAAVベクターは、非限定的に、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh.10、AAV11、AAV12、チロシンカプシド変異体、ヘパリン結合カプシド変異体、AAV2R471Aカプシド、AAVAAV2/2-7m8カプシド、AAV DJカプシド、AAV2 N587Aカプシド、AAV2 E548Aカプシド、AAV2 N708Aカプシド、AAV V708Kカプシド、ヤギAAVカプシド、AAV1/AAV2キメラカプシド、ウシAAVカプシドまたはマウスAAVカプシドなどを含むAAV血清型由来のベクターである。一部の実施形態ではAAV中の核酸は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11、AAV12などのITRを含む。さらなる実施形態ではrAAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh.10、AAV11、AAV12などのカプシドタンパク質を含む。さらなる実施形態では
rAAV粒子は、Clades A-F由来のAAV血清型のカプシドタンパク質を含む(Gaoら、J.Virol.2004,78(12):6381頁)。
【0107】
さまざまなAAV血清型は、具体的な標的細胞の形質導入を最適化するためまたは具体的な標的組織(例えば、疾患組織)内の特定の細胞型を標的化するために使用される。rAAV粒子は、同じ血清型または混合血清型のウイルスタンパク質およびウイルス核酸を含むことができる。例えばrAAV粒子は、AAV9カプシドタンパク質および少なくとも1つのAAV2 ITRを含むことができ、またはAAV2カプシドタンパク質および少なくとも1つのAAV9 ITRを含むことができる。さらに別の例ではrAAV粒子は、AAV9およびAAV2の両方由来のカプシドタンパク質を含むことができ、少なくとも1つのAAV2 ITRをさらに含む。rAAV粒子の産生のためのAAV血清型の任意の組合せは、各組合せが本明細書で明確に述べられた場合と同様に本明細書で提供される。
【0108】
一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAV1 ITRならびにAAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11および/またはAAV12のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAV2 ITRならびにAAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11および/またはAAV12のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAV3 ITRならびにAAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11および/またはAAV12のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAV4 ITRならびにAAV1、AAV2、AAV3、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11および/またはAAV12のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAV5 ITRならびにAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11および/またはAAV12のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAV6 ITRならびにAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11および/またはAAV12のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAV7 ITRならびにAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11および/またはAAV12のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAV8 ITRならびにAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11および/またはAAV12のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAV9 ITRならびにAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11および/またはAAV12のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAVrh8 ITRならびにAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAV9、AAVrh10、AAV11および/またはAAV12のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAVrh10 ITRならびにAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV11および/またはAAV12のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAV11 ITRならびにAAV1、AAV2、
AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAV9、AAVrh10および/またはAAV12のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAV12 ITRならびにAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV
rh8、AAV9、AAVrh10、および/またはAAV11のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。
【0109】
自己相補性AAVウイルスゲノム
一部の態様では本発明は、組換え自己相補的ゲノムを含むウイルス粒子を提供する。自己相補的ゲノムを有するAAVウイルス粒子および自己相補的AAVゲノムの使用方法は、それぞれその全体を参照によって本明細書に組み入れる米国特許第6,596,535号、7,125,717号、第7,765,583号、第7,785,888号、第7,790,154号、第7,846,729号、第8,093,054号および第8,361,457号ならびにWang Z.ら、(2003)Gene Ther 10:2105~2111頁に記載されている。自己相補的ゲノムを含むrAAVは、その部分的相補的配列(例えば、導入遺伝子の相補的コードおよび非コード鎖)の長所により2本鎖DNA分子を急速に形成する。一部の実施形態では本発明は、AAVゲノムを含むAAVウイルス粒子を提供し、rAAVゲノムが第1の異種性ポリヌクレオチド配列(例えば、治療用導入遺伝子コード鎖)および第2の異種性ポリヌクレオチド配列(例えば、治療用導入遺伝子の非コードまたはアンチセンス鎖)を含み、第1の異種性ポリヌクレオチド配列が第2のポリヌクレオチド配列とその長さの大部分または全てに沿って鎖間塩基対を形成できる。一部の実施形態では第1の異種性ポリヌクレオチド配列と第2の異種性ポリヌクレオチド配列とは、鎖間塩基対合を促進する配列によって連結される;例えばヘアピンDNA構造。ヘアピン構造は、例えばsiRNA分子において当技術分野において周知である。一部の実施形態では第1の異種性ポリヌクレオチド配列と第2の異種性ポリヌクレオチド配列とは、変異導入ITR(例えば正しいITR)によって連結される。変異導入ITRは、末端分解配列を含むD領域の欠失を含む。結果としてAAVウイルスゲノムを複製する際に、以下の:AAV ITR、制御配列を含む第1の異種性ポリヌクレオチド配列、変異導入AAV ITR、第1の異種性ポリヌクレオチドとは逆の方向で第2の異種性ポリヌクレオチドおよび第3のAAV ITRを5’から3’の順で含む組換えウイルスゲノムがウイルスカプシド中にパッケージングされるようにrepタンパク質はウイルスゲノムを変異導入ITRで切断しない。
【0110】
一部の実施形態ではウイルス粒子は、アデノウイルス粒子である。一部の実施形態ではアデノウイルス粒子は、組換えアデノウイルス粒子、例えば2つのITR間に1つまたはそれ以上の異種性配列(すなわち、アデノウイルス由来ではない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターである。一部の実施形態ではアデノウイルス粒子は、アデノウイルスを複製不全にする1つまたはそれ以上のE1遺伝子の欠損コピーを欠失している、または含有している。アデノウイルスは、大きな(約950Å)、非エンベロープ正二十面体カプシド内に直鎖の2本鎖DNAゲノムを含む。アデノウイルスは、30kbを超える異種性配列を組み込むことができる(例えば、E1および/またはE3領域の代わりに)大きなゲノムを有し、大きな異種性遺伝子での使用に他になく適している。それらはまた、分裂および非分裂細胞に感染することが周知であり、天然では宿主ゲノムに組み込まれない(しかしハイブリッド変種はこの能力を有する場合がある)。一部の実施形態ではアデノウイルスベクターは、E1の代わりに異種性配列を有する第1世代アデノウイルスベクターである場合がある。一部の実施形態ではアデノウイルスベクターは、E2A、E2B、および/またはE4に追加の変異または欠失を有する第2世代アデノウイルスベクターである場合がある。一部の実施形態ではアデノウイルスベクターは、すべてのウイルスコード遺伝子を欠失しており、ITRおよびパッケージングシグナルだけを保持し、複製およびパッケージングのためにトランスでヘルパーアデノウイルスを必要とする第3世代また
はガッティド(gutted)アデノウイルスベクターである場合がある。アデノウイルス粒子は、哺乳動物細胞の一過性トランスフェクションのためのベクターとしておよび遺伝子治療ベクターとしての使用のために調査されている。さらなる記載は、例えば、Danthinne,X.and Imperiale,M.J.(2000)Gene Ther.7:1707~14頁およびTatsis,N.and Ertl,H.C.(2004)Mol.Ther.10:616~29頁を参照されたい。
【0111】
一部の実施形態ではウイルス粒子は、導入遺伝子を含む核酸を含む組換えアデノウイルス粒子である。任意のアデノウイルス血清型の使用は、本発明の範囲内と考えられる。一部の実施形態では組換えアデノウイルスベクターは、AdHu2、AdHu 3、AdHu4、AdHu5、AdHu7、AdHu11、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdおよびブタAd3型を非限定的に含むアデノウイルス血清型由来のベクターである。アデノウイルス粒子はまた、カプシドタンパク質も含む。一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、1つまたはそれ以上の外来ウイルスカプシドタンパク質との組合せでアデノウイルス粒子を含む。そのような組合せは、偽型化組換えアデノウイルス粒子と称される場合がある。一部の実施形態では偽型化組換えアデノウイルス粒子において使用される外来ウイルスカプシドタンパク質は、外来ウイルスまたは別のアデノウイルス血清型由来である。一部の実施形態では外来ウイルスカプシドタンパク質は、非限定的に、レオウイルス3型を含むもの由来である。偽型化アデノウイルス粒子において使用されるベクターおよびカプシドタンパク質組み合わせの例は、以下の参考文献(Tatsis,N.ら、(2004)Mol.Ther.10(4):616~629頁およびAhi,Y.ら、(2011)Curr.Gene Ther.11(4):307~320頁)において見出すことができる。さまざまなアデノウイルス血清型が、具体的な標的細胞の形質導入を最適化するためまたは具体的な標的組織(例えば、疾患組織)内の特定の細胞型を標的化するために使用される。具体的なアデノウイルス血清型によって標的化される組織または細胞は、非限定的に、肺(例えばHuAd3)、脾臓および肝臓(例えばHuAd37)、平滑筋、滑膜細胞、樹状細胞、心血管系細胞、腫瘍細胞株(例えばHuAd11)ならびに樹状細胞(例えばレオウイルス3型で偽型化されたHuAd5、HuAd30またはHuAd35)を含む。さらなる記載についてAhi,Y.ら、(2011)Curr.Gene Ther.11(4):307~320頁,Kay,M.ら、(2001)Nat.Med.7(1):33~40頁およびTatsis,N.ら、(2004)Mol.Ther.10(4):616~629頁を参照されたい。
【0112】
一部の実施形態ではウイルス粒子は、レンチウイルス粒子である。一部の実施形態ではレンチウイルス粒子は、組換えレンチウイルス粒子、例えば1つまたはそれ以上の異種性配列(すなわち、レンチウイルス由来ではない核酸配列)を2つのLTR間に含むポリヌクレオチドベクターである。レンチウイルスは、およそ10kbのゲノムを有するプラスセンス、ssRNAレトロウイルスである。レンチウイルスは、分裂および非分裂細胞のゲノムに組み込まれることが周知である。レンチウイルス粒子は、例えば複数のプラスミド(典型的にはレンチウイルスゲノムと、複製および/またはパッケージングのために必要な遺伝子とはウイルス複製を妨げるために分離されている)を、修飾レンチウイルスゲノムをレンチウイルス粒子にパッケージングするパッケージング細胞株にトランスフェクトすることによって産生される。一部の実施形態ではレンチウイルス粒子は、エンベロープタンパク質を欠失している第1世代ベクターを指す場合がある。一部の実施形態ではレンチウイルス粒子はgag/polおよびtat/rev領域以外のすべての遺伝子を欠失している第2世代ベクターを指す場合がある。一部の実施形態ではレンチウイルス粒子は、内在性rev、gagおよびpol遺伝子だけを含有し、tat遺伝子を含まない形質導入のためのキメラLTRを有する第3世代ベクターを指す場合がある(Dull,T
.ら、(1998)J.Virol.72:8463~71頁を参照されたい)。さらなる記載についてDurand,S.and Cimarelli,A.(2011)Viruses 3:132~59頁を参照されたい。
【0113】
一部の実施形態ではウイルス粒子は、導入遺伝子を含む核酸を含む組換えレンチウイルス粒子である。任意のレンチウイルスベクターの使用は、本発明の範囲内と考えられる。一部の実施形態ではレンチウイルスベクターは、非限定的にヒト免疫不全ウイルス-1(HIV-1)、ヒト免疫不全ウイルス-2(HIV-2)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ジャンブラナ病ウイルス(JDV)、ビスナウイルス(VV)およびヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)を含むレンチウイルス由来である。レンチウイルス粒子はまた、カプシドタンパク質も含む。一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、レンチウイルスベクターを1つまたはそれ以上の外来ウイルスカプシドタンパク質との組合せで含む。そのような組合せは、偽型化組換えレンチウイルス粒子と称される場合がある。一部の実施形態では偽型化組換えレンチウイルス粒子において使用される外来性ウイルスカプシドタンパク質は、外来性ウイルス由来である。一部の実施形態では偽型化組換えレンチウイルス粒子において使用される外来性ウイルスカプシドタンパク質は、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV-GP)である。VSV-GPは、偏在性細胞受容体と相互作用し、偽型化組換えレンチウイルス粒子に対する広範な組織指向性を提供する。付加的にVSV-GPは、偽型化組換えレンチウイルス粒子へのより高い安定性を提供すると考えられている。他の実施形態では外来性ウイルスカプシドタンパク質は、非限定的に、チャンディプラウイルス、狂犬病ウイルス、モコラウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス(SFV)、ベネゼイラウマ脳炎ウイルス、エボラウイルスレストン、エボラウイルスザイール、マールブルグウイルス、ラッサウイルス、トリ白血病ウイルス(ALV)、ヤーグジークテヒツジレトロウイルス(JSRV)、モロニーマウス白血病ウイルス(MLV)、テナガザル白血病ウイルス(GALV)、ネコ内在性レトロウイルス(RD114)、ヒトT-リンパ球向性ウイルス1(HTLV-1)、ヒト泡沫状ウイルス、マエディビスナウイルス(MVV)、SARS-CoV、センダイウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ヒトパラインフルエンザウイルス3型、C型肝炎ウイルス(HCV)、インフルエンザウイルス、ニワトリペストウイルス(FPV)またはオートグラファカリホルニカマルチプル核多核体ウイルス(AcMNPV)を含むものに由来する。偽型化レンチウイルス粒子において使用されるベクターとカプシドタンパク質との組合せの例は、例えばCronin,J.ら、(2005).Curr.Gene Ther.5(4):387~398頁において見出すことができる。さまざまな偽型化組換えレンチウイルス粒子は、具体的な標的細胞の形質導入を最適化するためまたは具体的な標的組織(例えば、疾患組織)内の特異的な細胞型を標的化するために使用される。例えば特異的偽型化組換えレンチウイルス粒子によって標的化される組織は、非限定的に肝臓(例えばVSV-G、LCMV、RRVもしくはSeV Fタンパク質で偽型化されている)、肺(例えばエボラ、マールブルグ、SeV FおよびHN、またはJSRVタンパク質で偽型化されている)、膵島細胞(例えばLCMVタンパク質で偽型化されている)、中枢神経系(例えばVSV-G、LCMV、狂犬病またはモコラタンパク質で偽型化されている)、網膜(例えばVSV-Gもしくはモコラタンパク質で偽型化されている)、単球または筋肉(例えばモコラもしくはエボラタンパク質で偽型化されている)、造血系(例えばRD114もしくはGALVタンパク質で偽型化されている)またはがん細胞(例えばGALVもしくはLCMVタンパク質で偽型化されている)を含む。さらなる記載について、Cronin,J.ら、(2005).Curr.Gene Ther.5(4):387~398頁およびKay,M.ら、(2001)Nat.Med.7(1):33~40頁を参照されたい。
【0114】
一部の実施形態ではウイルス粒子は、単純ヘルペスウイルス(HSV)粒子である。一部の実施形態ではHSV粒子は、rHSV粒子、例えば2つのTRの間に1つまたはそれ以上の異種性配列(すなわち、レンチウイルス由来の核酸配列ではない)を含むポリヌクレオチドベクターである。HSVは、およそ152kbのゲノムを有するエンベロープ付き、2本鎖DNAウイルスである。有利なことに、その遺伝子のおよそ半分は必須ではなく、異種性配列に適応するために欠失することができる。HSV粒子は、非分裂細胞に感染する。付加的にそれらは、天然でニューロン中の潜伏を確立し、逆行性輸送によって移動し、シナプス間を移行でき、ニューロンのトランスフェクションおよび/または神経系に関与する遺伝子治療手法のためにそれらを有利にしている。一部の実施形態ではHSV粒子は、複製欠損または複製適格(例えば、1つまたはそれ以上の後期遺伝子の不活性化を通じて単一複製サイクルについて適格性)である場合がある。さらなる記載について、Manservigi,R.ら、(2010)Open Virol.J.4:123~56頁を参照されたい。
【0115】
一部の実施形態ではウイルス粒子は、導入遺伝子を含む核酸を含むrHSV粒子である。任意のHSVベクターの使用は、本発明の範囲内と考えられる。一部の実施形態ではHSVベクターは、非限定的にHSV-1およびHSV-2を含むHSV血清型由来である。HSV粒子はまた、カプシドタンパク質も含む。一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、HSVベクターを1つまたはそれ以上の外来性ウイルスカプシドタンパク質との組合せで含む。そのような組合せは、偽型化rHSV粒子と称される場合がある。一部の実施形態では偽型化rHSV粒子において使用される外来性ウイルスカプシドタンパク質は、外来性ウイルス由来または別のHSV血清型由来である。一部の実施形態では偽型化rHSV粒子において使用される外来性ウイルスカプシドタンパク質は、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV-GP)である。VSV-GPは偏在性細胞受容体と相互作用し、偽型化rHSV粒子に対する広範な組織指向性を提供する。付加的にVSV-GPは、偽型化rHSV粒子へのより高い安定性を提供すると考えられている。他の実施形態では外来性ウイルスカプシドタンパク質は、異なるHSV血清型由来であってよい。例えばHSV-1ベクターは、1つまたはそれ以上のHSV-2カプシドタンパク質を含有する場合がある。さまざまなHSV血清型は、具体的な標的細胞の形質導入を最適化するためまたは具体的な標的組織(例えば、疾患組織)内の特定の細胞型を標的化するために使用される。具体的なアデノウイルス血清型によって標的化される組織または細胞は、非限定的に中枢神経系およびニューロン(例えばHSV-1)を含む。さらなる記載について、Manservigi,R.ら、(2010)Open Virol J 4:123~156頁,Kay,M.ら、(2001)Nat.Med.7(1):33~40頁およびMeignier,B.ら、(1987)J.Infect.Dis.155(5):921~930頁を参照されたい。
【0116】
V.ウイルスベクターの産生
トランスフェクション、安定細胞株産生ならびにアデノウイルスAAVハイブリッド、ヘルペスウイルスAAVハイブリッド(Conway,JEら、(1997)J.Virology 71(11):8780~8789頁)およびバキュロウイルスAAVハイブリッドを含む感染性ハイブリッドウイルス産生系を含む多数の方法が、rAAVベクターの産生のために当技術分野において周知である。rAAVウイルス粒子の産生のためのrAAV産生培養はすべて;1)例えばHeLa、A549もしくは293細胞などのヒト由来細胞株またはバキュロウイルス産生系の場合はSF-9などの昆虫由来細胞株を含む好適な宿主細胞;2)野生型もしくは変異体アデノウイルス(温度感受性アデノウイルスなど)、ヘルペスウイルス、バキュロウイルスまたはヘルパー機能を提供するプラスミド構築物によって提供される好適なヘルパーウイルス機能;3)AAV repおよびcap遺伝子ならびに遺伝子産生物;4)少なくとも1つのAAV ITR配列を端に有する導入遺伝子(治療用導入遺伝子など);ならびに5)rAAV産生を支持する好適な培
地および培地構成成分を必要とする。一部の実施形態ではAAV repおよびcap遺伝子産生物は、任意のAAV血清型由来である。必須ではなく一般的にAAV rep遺伝子産生は、rep遺伝子産生物がrAAVゲノムを複製およびパッケージングするように機能できる限り、rAAVベクターゲノムのITRと同じ血清型のものである。当技術分野において周知の好適な培地は、rAAVベクターの産生のために使用される。これらの培地は、非限定的に、変法イーグル培地(MEM)、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を含むHyclone LaboratoriesおよびJRHによって産生される培地、特に組換えAAVベクターの産生における使用のためのカスタム培地製剤に関してそれぞれその全体を参照によって本明細書に組み入れる米国特許第6,566,118号に記載のものなどのカスタム製剤、および米国特許第6,723,551号に記載のSf-900 II SFM培地を含む。一部の実施形態ではAAVヘルパー機能は、アデノウイルスまたはHSVによって提供される。一部の実施形態ではAAVヘルパー機能は、バキュロウイルスによって提供され、宿主細胞は昆虫細胞(例えば、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(Sf9)細胞)である。
【0117】
本発明の好適なrAAV産生培養培地は、血清または血清由来組換えタンパク質を0.5%~20%(v/vまたはw/v)のレベルで補充される場合がある。代替的に当技術分野において周知のとおり、rAAVベクターは動物由来成分不含有培地とも称される無血清条件で産生される。rAAVベクターの産生を支持するように設計された商業的またはカスタム培地は、産生培養物中のrAAVの力価を増加させるためのグルコース、ビタミン、アミノ酸およびまたは増殖因子を非限定的に含む当技術分野において周知の1つまたはそれ以上の細胞培養構成成分を補充されることを当業者は認識する。
【0118】
一部の態様では本発明は、空のカプシドが低減しているrAAV粒子を調製するための方法であって、a)rAAV産生のために好適な条件下で宿主細胞を培養する工程であって、細胞はi)少なくとも1つのAAV ITRを端に有する異種性導入遺伝子をコードする核酸、ii)AAV repおよびcapコード領域を含む核酸であり、変異導入p5プロモーターを含み、p5プロモーターからの発現が野生型p5プロモーターと比較して低減されている核酸、およびiii)AAVヘルパーウイルス機能をコードする核酸を含む工程;b)rAAV粒子を放出するように宿主細胞を溶解する工程;c)宿主細胞によって産生されたrAAV粒子を単離する工程;ならびにd)空のカプシドおよび/または変種のゲノムを有するrAAV粒子の存在について上に記載の分析超遠心分離法によってrAAV粒子を分析する工程を含む、空のカプシドが低減されたrAAV粒子を調製するための方法を提供する。一部の実施形態では、AAV repおよびcap領域をコードする核酸のp5プロモーターは、repおよび/またはcapコード領域の3’に位置付けられている。一部の実施形態ではAAV repおよびcapコード領域をコードする核酸は、プラスミドpHLP、pHLP19またはpHLP09である(それぞれの内容はその全体を本明細書に組み入れる米国特許第5,622,856号;第6,001,650号;第6,027,931号;第6,365,403号;第6,376,237号;および第7,037,713号を参照されたい)。一部の実施形態ではAAVヘルパーウイルス機能は、アデノウイルスE1A機能、アデノウイルスE1B機能、アデノウイルスE2A機能、アデノウイルスVA機能およびアデノウイルスE4 orf6機能を含む。
【0119】
rAAV産生培養物は、利用される具体的な宿主細胞に好適な種々の条件下(広い温度範囲で、さまざまな時間にわたってなど)で増殖される。当技術分野において周知のとおり、rAAV産生培養は接着依存培養を含み、例えば回転ボトル、中空繊維フィルター、マイクロキャリアおよび充填ベッドまたは流動ベッドバイオリアクターなどの好適な接着依存容器で培養できる。rAAVベクター産生培養物は、例えばスピナーフラスコ、撹拌タンクバイオリアクターおよびウェーブバッグシステムなどのディスポーザブルシステム
を含む種々の方法で培養できるHeLa、293およびSF-9細胞などの懸濁適合宿主細胞も含む。
【0120】
本発明のrAAVベクター粒子は、産生培養物の宿主細胞の溶解によってまたは、細胞がインタクトな細胞から培地へのrAAV粒子の放出を生じることが当技術分野において周知である条件下で培養される場合、産生培養物からの消費培地の収集によってrAAV産生培養物から収集できる、さらに完全に米国特許第6,566,118号に記載のとおり)。細胞を溶解する好適な方法は、当技術分野において周知であり、例えば複数回の凍結/融解周期、超音波処理、顕微溶液化ならびに界面活性剤などの化学物質および/またはプロテアーゼでの処理を含む。
【0121】
多数の方法が、アデノウイルスベクター粒子の産生のために当技術分野において周知である。例えばガッティドアデノウイルスベクター、アデノウイルスベクターゲノムおよびヘルパーアデノウイルスゲノムは、パッケージング細胞株(例えば293細胞株)にトランスフェクトできる。一部の実施形態ではヘルパーアデノウイルスゲノムは、そのパッケージングシグナルに隣接する組換え部位を含有でき、両ゲノムは、目的のアデノウイルスベクターがヘルパーアデノウイルスよりもさらに効率的にパッケージングされるようにリコンビナーゼ(例えばCre/loxP系が使用される)を発現しているパッケージング細胞株にトランスフェクトされる(例えば、Alba,R.ら、(2005)Gene Ther.12 Suppl 1:S18-27を参照されたい)。アデノウイルスベクターは、本明細書に記載のものなどの標準的方法を使用して収集および精製できる。
【0122】
多数の方法が、レンチウイルスベクター粒子の産生のために当技術分野において周知である。例えば第3世代レンチウイルスベクターのために、目的のレンチウイルスゲノムをgagおよびpol遺伝子と共に含有するベクターは、パッケージング細胞株(例えば293細胞株)にrev遺伝子を含有するベクターと共に同時トランスフェクトされる。目的のレンチウイルスゲノムは、Tatの非存在下で転写を促進するキメラLTRも含有する(Dull,T.ら、(1998)J.Virol.72:8463~71頁を参照されたい)。レンチウイルスベクターは、本明細書に記載の方法(例えば、Segura MM,ら、(2013)Expert Opin Biol Ther.13(7):987~1011頁)を使用して収集および精製できる。
【0123】
多数の方法が、HSV粒子の産生のために当技術分野において周知である。HSVベクターは、本明細書に記載のものなどの標準的方法を使用して収集および精製できる。例えば複製欠損HSVベクターのために、最初期(IE)遺伝子のすべてを欠失している目的のHSVゲノムは、ICP4、ICP27およびICP0などのウイルス産生のために必要な遺伝子を提供する補完細胞株にトランスフェクトされる(例えば、Samaniego,L.A.ら、(1998)J.Virol.72:3307~20頁を参照されたい)。HSVベクターは、記載の方法を使用して収集および精製できる(例えば、Goins,WFら、(2014)Herpes Simplex Virus Methods
in Molecular Biology 1144:63~79頁)。
【0124】
VI.rAAVベクターの精製
収集の際に、本発明のrAAV産生培養物は、以下の(1)宿主細胞タンパク質;(2)宿主細胞DNA;(3)プラスミドDNA;(4)ヘルパーウイルス;(5)ヘルパーウイルスタンパク質;(6)ヘルパーウイルスDNA;および(7)例えば、血清タンパク質、アミノ酸、トランスフェリンおよび他の低分子量タンパク質を含む培地構成成分、の1つまたはそれ以上を含有できる。付加的にrAAV産生培養物は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11またはAAV12からなる群から選択
されるAAVカプシド血清型を有するrAAV粒子をさらに含む。一部の実施形態ではrAAV産生培養物は、空のAAVカプシド(例えば、カプシドタンパク質を含むがrAAVゲノムを含まないrAAV粒子)をさらに含む。一部の実施形態ではrAAV産生培養物は、変種rAAVゲノムを含むrAAV粒子(例えば、インタクトな全長rAAVゲノムとは異なるrAAVゲノムを含むrAAV粒子)をさらに含む。一部の実施形態ではrAAV産生培養物は、切断型rAAVゲノムを含むrAAV粒子をさらに含む。一部の実施形態ではrAAV産生培養物は、AAVカプシド化DNA不純物を含むrAAV粒子をさらに含む。
【0125】
一部の実施形態ではrAAV産生培養収集物は、宿主細胞デブリを除去して清澄化される。一部の実施形態では産生培養収集物は、例えばgrade DOHC Millipore Millistak+ HC Pod Filter、grade A1HC Millipore Millistak+ HC Pod Filterおよび0.2μm Filter Opticap XL1O Millipore Express
SHC親水性膜フィルターを含む一連のデプスフィルターを通じたろ過によって清澄化される。清澄化は、遠心分離または、当技術分野において周知の0.2μmまたはさらに大きなポアサイズの任意のセルロースアセテートフィルターを通じたろ過などの当技術分野において周知の種々の他の標準的技術によっても達成される。
【0126】
一部の実施形態ではrAAV産生培養収集物は、産生培養物中に存在するいかなる高分子量DNAも消化するためにBenzonase(登録商標)でさらに処理される。一部の実施形態ではBenzonase(登録商標)消化は、例えば最終濃度1~2.5単位/mlのBenzonase(登録商標)、周囲温度から37℃の範囲の温度で30分間から数時間を含む当技術分野において周知の標準的条件下で実施される。
【0127】
rAAV粒子は、以下の精製工程:平衡遠心分離;フロースルーアニオン交換ろ過;rAAV粒子を濃縮するための接線流ろ過(TFF);アパタイトクロマトグラフィーによるrAAV捕捉;ヘルパーウイルスの熱不活性化;疎水性相互作用クロマトグラフィーによるrAAV捕捉;サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による緩衝液交換;ナノ濾過;ならびにアニオン交換クロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィーまたは親和性クロマトグラフィーによるrAAV捕捉、の1つまたはそれ以上を使用して単離または精製される。これらの工程は、単独で、種々の組合せでまたはさまざまな順序で使用される。一部の実施形態では方法は、下に記載の順ですべての工程を含む。rAAV粒子を精製するための方法は、例えばXiaoら、(1998)Journal of Virology 72:2224~2232頁、米国特許第6,989,264号および第8,137,948号およびWO2010/148143において見出される。アデノウイルス粒子を精製するための方法は、例えばBo,Hら、(2014)Eur.J.Pharm.Sci.67C:119~125頁に見出される。レンチウイルス粒子を精製するための方法は、例えばSegura MMら、(2013)Expert Opin Biol Ther.13(7):987~1011頁に見出される。HSV粒子を精製するための方法は、例えばGoins,WFら、(2014)Herpes Simplex Virus Methods in Molecular Biology 1144:63~79頁に見出される。
【実施例0128】
本発明は、以下の実施例を参照することによってさらに完全に理解される。しかしそれらは、本発明の範囲を限定するものとして解釈されない。本明細書に記載の実施例および実施形態は、例示的目的のみのためであり、その観点から種々の改変または変更は当業者に示唆され、本出願の趣旨および管理範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれることが理解される。
遺伝子治療における使用のための近年の承認に基づいて、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、新規バイオ医薬製品(biopharmaceutical drug product)の重要なクラスとして現れた。AAVベクター製品の生成は、製品の品質を均一性、純度および製造の整合性に関してモニターする分析方法を必要とするが、今日までにAAVベクター特徴付けを支持する方法は確立されていない。この要求に応えるために、AAVベクターの均一性を特徴付けるための技術としての分析超遠心分離法(AUC)の潜在的使用を調査した。
AUC法を、表3に示すとおり、同じベクターサンプル(scAAV2/9LP2)の5回の独立したAUC実行を実施することによって再現性についてさらに評価した。ゲノム含有カプシドおよび空のAAV2カプシドの両方についての沈降係数は、0.5~0.6%の変動で係数をもたらして高度に再現性があった。同様にゲノム含有カプシドの相対存在(合計の百分率として表される)は、係数のおよそ2%の変動を有して決定された。これらの結果は、ゲノム含有カプシドおよび空のAAV2カプシドを定量するためのAUC法が高度に再現性があり、整合がある値をもたらすことを示した。