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特開2024-113102組換えウイルス粒子の特徴付けのための分析超遠心分離法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113102
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】組換えウイルス粒子の特徴付けのための分析超遠心分離法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/70 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
C12Q1/70
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024091914
(22)【出願日】2024-06-06
(62)【分割の表示】P 2022065460の分割
【原出願日】2016-01-19
(31)【優先権主張番号】62/105,714
(32)【優先日】2015-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン・アール・オリオーダン
(72)【発明者】
【氏名】ブレンダ・バーナム
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造の均一性、純度および整合性に関して薬物製品品質をモニターするための、組換えウイルス粒子の調製物を特徴付ける方法を提供する。
【解決手段】組換えウイルス粒子の調製物を特徴付ける方法であって、a)該調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、およびc)C(s)分布での各ピーク下面積を積分して、各ピークの相対濃度を決定する工程であって、各ピークが組換えウイルスの組換えウイルス粒子の種に相当する工程を含む、前記方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えウイルス粒子の調製物を特徴付ける方法であって、
a)該調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、
b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、および
c)C(s)分布での各ピーク下面積を積分して、各ピークの相対濃度を決定する工程であって、各ピークが組換えウイルスの組換えウイルス粒子の種に相当する工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子のベクターゲノムの完全性を評価する方法であって、
a)該調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、
b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、および
c)S値に対応するプロット上のピークの存在によって該調製物中の組換えウイルス粒子の種を同定する工程であって、組換えウイルスの組換えウイルス粒子の具体的な種のゲノムサイズは、該種のS値を、周知のヌクレオチドサイズを有するカプシド化されたウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子のS値によって作成された標準曲線と比較することによって算出される工程
を含む、前記方法。
【請求項3】
C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルスの組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
組換えウイルス粒子の調製物中の空のカプシドまたは変種のサイズの組換えウイルスゲノムを含むカプシド粒子の存在を決定するための方法であって、
a)該調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、ならびに
b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程であって、インタクトな組換えウイルスゲノムを含む完全カプシド粒子に対するピーク以外の1つまたはそれ以上のピークの存在は、変種のサイズのゲノムを含むカプシド粒子および/または空のカプシドの存在を表す工程
を含む、前記方法。
【請求項5】
組換えウイルス粒子の調製物中の空のカプシド相対量を測定する方法であって、
a)該調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、
b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、
c)C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程、および
d)空のカプシド粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量を、インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量または調製物中の組換えウイルス粒子の総量と比較する工程
を含む、前記方法。
【請求項6】
組換えウイルス粒子の調製物中の変種の組換えウイルスゲノムを含むカプシド粒子また
は空のウイルスカプシド粒子の相対量を測定する方法であって、
a)該調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、
b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、
c)C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程、
d)インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子に対応しないS値を有する組換えウイルス粒子の量を、インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量または調製物中の組換えウイルス粒子の総量と比較する工程
を含む、前記方法。
【請求項7】
組換えウイルス粒子の調製物中の変種の組換えウイルスゲノムを含むカプシド粒子の相対量を測定する方法であって、
a)該調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、
b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、
c)C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程、
d)インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子または空のカプシド粒子に対応しないS値を有する組換えウイルス粒子の量を、調製物中の組換えウイルス粒子の総量と比較する工程
を含む、前記方法。
【請求項8】
組換えウイルス粒子の調製物中のインタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子の相対量を測定する方法であって、
a)該調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、
b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、
c)C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程、
d)インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量を、空のカプシド粒子、変種の組換えウイルスゲノムを含むカプシド粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量、および/または調製物中の組換えウイルス粒子の総量と比較する工程
を含む、前記方法。
【請求項9】
組換えウイルス粒子の調製物の精製の際に、空のカプシドおよび/または、変種の組換えウイルスゲノムを含むカプシド粒子の除去をモニターする方法であって、精製工程における1つまたはそれ以上の工程に続いて、調製物から組換えウイルス粒子サンプルを除去すること、ならびに請求項5~8のいずれか1項に記載の方法により、空のカプシドおよび/または変種の組換えウイルスゲノムを含むカプシド粒子の相対量についてサンプルを分析することを含み、空のカプシドおよび/または変種のゲノムを含むカプシドの完全カプシドに対する相対量における減少は、組換えウイルス粒子の調製物からの空のカプシドの除去を示す方法。
【請求項10】
空のカプシド粒子のS値に対応するピークの存在は、空のカプシド粒子の存在を示す、
請求項4~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
インタクトな組換えウイルスゲノムを含む完全カプシド粒子または空のカプシド粒子に対するピーク以外の1つまたはそれ以上のピークの存在は、変種のサイズのゲノムを含むカプシド粒子の存在を表す、請求項4~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
変種のサイズのゲノムを含むカプシド粒子は、切断型ゲノム、凝集体、組換え体および/またはDNA不純物を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子の不均一性を決定する方法であって、
a)該調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、
b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程であって、インタクトなウイルスゲノムを含むカプシドに相当するピークに追加してピークが存在することは、調製物中の組換え粒子の不均一性を示す工程
を含む、前記方法。
【請求項14】
追加のピークの存在は、空のカプシド粒子および/または変種のゲノムを含む組換えウイルス粒子の存在を示す、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
変種のゲノムは、切断型ウイルスゲノム、凝集体、組換え体および/またはDNA不純物である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程をさらに含む、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
組換えウイルス粒子の調製物の精製の際に組換えウイルス粒子の均一性をモニターする方法であって、精製工程における1つまたはそれ以上の工程に続いて、調製物から組換えウイルス粒子サンプルを除去すること、ならびに請求項16に記載の方法により、組換えウイルス粒子の不均一性を決定することを含み、インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子の相対量における増加は、組換えウイルス粒子の調製物中の全ウイルス粒子の均一性の増大を示す、前記方法。
【請求項18】
組換えウイルス粒子の沈降は吸光度によってモニターされる、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
吸光度は約230nm、260nmまたは280nmにおけるものである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
吸光度は約260nmにおけるものである、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
組換えウイルス粒子の沈降は干渉によってモニターされる、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
干渉はレイリー干渉である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
調製物は水溶液である、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
水溶液は医薬製剤を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
水溶液は緩衝液を含む、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
緩衝液は生理学的pHを有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
緩衝液は生理学的浸透圧を有する、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
医薬製剤はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む、請求項24~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
PBSは、約7.2のpHおよび約300mOsm/Lの浸透圧を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
モニターすることは、参照サンプルとの比較をさらに含み、参照サンプルは組換えウイルス粒子を含まない水溶液を含む、請求項24~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
C(S)値はラム方程式解を含むアルゴリズムによって決定される、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
アルゴリズムはSEDFITアルゴリズムである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
沈降は、最低密度を有する組換えウイルス粒子が超遠心機のセクターの底に沈降するまでモニターされる、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
超遠心分離法は超遠心速度セルを含む超遠心機を利用する、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
沈降は組換えウイルス粒子が超遠心速度セルの底に沈降するまでモニターされる、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
沈降は最低密度を有する組換えウイルス粒子が沈降し、光学ウインドウが透明化するまでモニターされる、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも30スキャンが組換えウイルス粒子の沈降をモニターするために使用される、請求項33~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
約30スキャンが組換えウイルス粒子の沈降をモニターするために使用される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
約30から約75スキャンが組換えウイルス粒子の沈降をモニターするために使用される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
約30から約50スキャンが組換えウイルス粒子の沈降をモニターするために使用される、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
約50から約75スキャンが組換えウイルス粒子の沈降をモニターするために使用される、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
正則化は、少なくとも約0.68のF統計の信頼レベルでフィッティングレベルに適用される、請求項31~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
正則化は二次微分正則化である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
正則化は最大エントロピー正則化である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
正則化は約0.68から約0.90のF統計の信頼レベルでフィッティングレベルに適用される、請求項42~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
正則化は約0.68から約0.99のF統計の信頼レベルでフィッティングレベルに適用される、請求項42~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
正則化は約0.68のF統計の信頼レベルでフィッティングレベルに適用される、請求項42~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
以下のC(S)パラメーターは一定に保たれ:分解能は約200Sから約5000Sであり、Sminは約1Sから約100Sであり、Smaxは約100Sから約5000Sであり、摩擦比は約1.0であり、または遠心分離ソフトウェアによって決定された値に移行させる、請求項31~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
分解能は約200Sから約1000Sである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
分解能は約200Sである、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
Sminは約1である、請求項48~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
Smaxは約100Sから約1000Sである、請求項48~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
Smaxは約200Sから約5000Sである、請求項48~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
Smaxは約200Sである、請求項48~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
摩擦比は遠心分離ソフトウェアによって決定された値に移行される、請求項48~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
摩擦比は約1.0である、請求項48~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
半径方向不変(RI)および時不変(TI)ノイズサブトラクションが適用される、請求項31~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
組換えウイルス粒子の沈降は約10~60秒間ごとにモニターされる、請求項1~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
組換えウイルス粒子の沈降は約10秒間ごとにモニターされる、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
組換えウイルス粒子の沈降は約60秒間ごとにモニターされる、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
境界沈降速度は約3,000rpmから約20,000rpmで実行される、請求項1~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
境界沈降速度は約3,000rpmから約10,000rpmで実行される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
境界沈降速度は約10,000rpmから約20,000rpmで実行される、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
境界沈降速度は約15,000rpmから約20,000rpmで実行される、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
境界沈降速度は約4℃から約20℃で実行される、請求項1~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
境界沈降速度は約4℃で実行される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
組換えウイルス粒子は、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子、組換えアデノウイルス粒子、組換えレンチウイルス粒子または組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)粒子である、請求項1~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
請求項1~67のいずれか1項に記載の方法を含む組換えウイルス粒子の産生のための工程を評価する方法であって、空のカプシド粒子の相対量と比較したインタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子、および/または組換えウイルス粒子の参照調製物と比較した変種の組換えウイルスゲノムを含む組換えウイルスカプシド粒子の相対量における増大が、組換えウイルス粒子の産生の改善を示す、前記方法。
【請求項69】
ウイルス粒子はrAAV粒子である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
rAAV粒子は産生細胞株から産生される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
rAAV粒子は、i)AAV repおよびcapをコードする核酸、ii)rAAVベクター配列、ならびにiii)アデノウイルスヘルパー機能をコードする核酸の三重トランスフェクションによって産生される、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
組換えウイルス粒子はAAV/HSVハイブリッドによって産生される、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
組換えウイルス粒子は昆虫細胞から産生される、請求項69に記載の方法。
【請求項74】
組換えウイルス粒子は、AAVベクター配列、AAV repおよびcapコード領域ならびにAAVヘルパーウイルス機能をコードする核酸の好適な宿主細胞への一過性トランスフェクションによって産生される、請求項69に記載の方法。
【請求項75】
組換えウイルス粒子は、AAVベクター配列、AAV repおよびcapコード領域ならびにAAVヘルパーウイルス機能をコードする1つまたはそれ以上の核酸の好適な宿主細胞への導入によって産生され、1つまたはそれ以上の核酸は組換えヘルパーウイルスを使用して細胞に導入される、請求項69に記載の方法。
【請求項76】
組換えヘルパーウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスまたはバキュロウ
イルスである、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
組換えウイルス粒子は、アデノウイルスベクター配列ならびにアデノウイルス複製およびパッケージング配列をコードする核酸の好適な宿主細胞への一過性トランスフェクションによって産生される、請求項68に記載の方法。
【請求項78】
組換えウイルス粒子は、レンチウイルスベクター配列ならびに/またはレンチウイルス複製およびパッケージング配列をコードする核酸の好適な宿主細胞への一過性トランスフェクションによって産生される、請求項68に記載の方法。
【請求項79】
組換えウイルス粒子は、HSVベクター配列ならびに/またはHSV複製およびパッケージング配列をコードする核酸の好適な宿主細胞への一過性トランスフェクションによって産生される、請求項68に記載の方法。
【請求項80】
空のカプシドが低減された組換えウイルス粒子および/または変種のゲノムを含む組換えウイルス粒子を調製するための方法であって、
a)組換えウイルス産生のために好適な条件下で宿主細胞を培養する工程であり、細胞は、
i)少なくとも1つのAAV ITRを端に有する異種性導入遺伝子をコードする核酸、
ii)AAV repおよびcapコード領域を含む核酸であり、変異導入されたp5プロモーターを含み、p5プロモーターからのrep発現は野生型p5プロモーターと比較して低減されている核酸、ならびに
iii)AAVヘルパーウイルス機能をコードする核酸
を含む工程;
b)組換えウイルス粒子を放出するように宿主細胞を溶解する工程;
c)宿主細胞によって産生された組換えウイルス粒子を単離する工程;ならびに
d)空のカプシドおよび/または変種のゲノムを有する組換えウイルス粒子の存在について請求項1~79のいずれか1項に記載の方法による分析超遠心分離法によって組換えウイルス粒子を分析する工程
を含む、前記方法。
【請求項81】
p5プロモーターは、repおよび/またはcapコード領域の3’に位置付けられている、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
AAVヘルパーウイルス機能は、アデノウイルスE1A機能、アデノウイルスE1B機能、アデノウイルスE2A機能、アデノウイルスVA機能およびアデノウイルスE4 orf6機能を含む、請求項80または81に記載の方法。
【請求項83】
組換えウイルス粒子は、1つまたはそれ以上の精製工程を使用して精製される、請求項1~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
組換えウイルス粒子は、自己相補性AAV(scAAV)ゲノムを含む、請求項67、69~76、80~83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
scAAVゲノムの単量体形態またはscAAVゲノムの二量体形態を含む組換えウイルス粒子の存在を検出するために使用される、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
組換えウイルス粒子は、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV4カプシド、AAV5カプシド、AAV6カプシド、AAV7カプシド、AAV8カ
プシド、AAVrh8カプシド、AAV9カプシド、AAV10カプシド、AAVrh10カプシド、AAV11カプシド、AAV12カプシド、AAV2R471Aカプシド、AAV2/2-7m8カプシド、AAV DJカプシド、AAV2 N587Aカプシド、AAV2 E548Aカプシド、AAV2 N708Aカプシド、AAV V708Kカプシド、ヤギAAVカプシド、AAV1/AAV2キメラカプシド、ウシAAVカプシドまたはマウスAAVカプシドrAAV2/HBoV1(キメラAAV/ヒトボカウイルスウイルス1)を含む、請求項67、69~76、80~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
組換えウイルス粒子は、AAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAVrh8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、AAVrh10 ITR、AAV11 ITR、AAV12 ITR、AAV DJ ITR、ヤギAAV ITR、ウシAAV ITRまたはマウスAAV ITRを含む、請求項67、69~76、80~86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
AAVカプシドは、チロシン変異またはヘパリン結合変異を含む、請求項86または87に記載の方法。
【請求項89】
組換えウイルス粒子は組換えアデノウイルス粒子である、請求項67または68に記載の方法。
【請求項90】
組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdまたはブタAd3型由来のカプシドを含む、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2カプシドの変種またはアデノウイルス血清型5カプシドの変種を含む、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
組換えウイルス粒子は組換えレンチウイルス粒子である、請求項67または68に記載の方法。
【請求項93】
組換えレンチウイルス粒子は、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モコラウイルス、狂犬病ウイルス、RD114またはその変種で偽型化される、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
組換えウイルス粒子はrHSV粒子である、請求項67または68に記載の方法。
【請求項95】
HSV粒子はHSV-1粒子またはHSV-2粒子である、請求項94に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許の相互参照
本出願は、すべての目的についてその全体を参照によって本明細書に組み入れる米国仮特許出願第62/105,714号、2015年1月20日出願に優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、分析超遠心分離法を使用して組換えウイルスベクター;例えば組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子、組換えアデノウイルス(rAd)粒子、組換えレンチウイルス粒子および組換え単純ヘルペスウイルス(rHSV)粒子を特徴付ける方法に関する。
【背景技術】
【0003】
組換えウイルスは、遺伝子治療適用のための治療用核酸を送達するためのビヒクルとしての将来性および有用性を示している。多数の異なる組換えウイルスが、送達される核酸のサイズ、核酸を送達する標的細胞または組織、治療用核酸の短期または長期発現の必要性およびレシピエントのゲノムへの治療用核酸の組み込みを含む多数の因子に基づいてこれらの遺伝子治療適用において使用されている。遺伝子治療適用において使用されるウイルスの例は、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レンチウイルスおよび単純ヘルペスウイルス(HSV)を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
臨床用の組換えウイルスベクターの生成は、製造の均一性、純度および整合性に関して薬物製品品質をモニターする分析方法を必要としているが、今日までにそのような特徴付けを支持する方法は確立されていない。典型的には、組換えウイルスDNAウイルスベクターのDNA含有量は、配列特異的プローブを使用するサザンブロット分析によって測定される。ウイルスカプシドまたはエンベロープは、具体的な組換えウイルスのカプシドまたはエンベロープタンパク質に特異的に結合する抗体を使用するイムノアッセイによって特徴付けられる。例えば、Steinbach,Sら、(1997)J.Gen.Virol.,78:1453~1462頁は、rAAV血清型についてのイムノアッセイを提供している。必要とされているのは、組換えウイルスゲノムの核酸配列またはカプシドの血清型を問わない組換えウイルス調製物を特徴付けるための包括的なアッセイである。
【0005】
特許出願および刊行物を含む本明細書に引用するすべての参考文献は、その全体を参照によって組み入れる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物の特徴付け方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、b)微分沈降係数分布値(differential sedimentation coefficient distribution value)(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、およびc)C(s)分布での各ピーク下面積を積分して、各ピークの相対濃度を決定する工程であって、各ピークが組換えウイルスの組換えウイルス粒子の種に相当する工程を含む、組換えウイルス粒子の調製物の特徴付け方法を提供する。
【0007】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子のベク
ターゲノムの完全性を評価するための方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、およびc)S値に対応するプロット上のピークの存在によって調製物中の組換えウイルス粒子の種を同定する工程であって、組換えウイルスの組換えウイルス粒子の具体的な種のゲノムサイズは、種のS値を、周知のヌクレオチドサイズを有するカプシド化されたウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子のS値によって作成された標準曲線と比較することによって算出される工程を含む、方法を提供する。一部の実施形態では方法は、C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルスの組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程をさらに含む。
【0008】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物中の空のカプシドまたは変種のサイズの組換えウイルスゲノムを含むカプシド粒子の存在を決定する方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、およびb)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程であって、インタクトな組換えウイルスゲノムを含む完全カプシド粒子に対するピーク以外の1つまたはそれ以上のピークの存在は、変種のサイズのゲノムを含むカプシド粒子および/または空のカプシドの存在を表す工程を含む、方法を提供する。
【0009】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物中の空のカプシドの相対量を測定する方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、c)C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程、およびd)空のカプシド粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量を、インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量または調製物中の組換えウイルス粒子の総量と比較する工程を含む、組換えウイルス粒子の調製物中の空のカプシドの相対量を測定する方法を提供する。
【0010】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物中の変種の組換えウイルスゲノムを含むカプシド粒子または空のウイルスカプシド粒子の相対量を測定する方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、c)C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程、d)インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子に対応しないS値を有する組換えウイルス粒子の量を、インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量または調製物中の組換えウイルス粒子の総量と比較する工程を含む、方法を提供する。
【0011】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物中の変種の組換えウイルスゲノムを含むカプシド粒子の相対量を測定する方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、c)C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程、d)インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子または空のカプシド粒子に対応しないS値を有する組換えウイルス粒子の量を、調製物中の組換えウイルス粒子の総量と比較する工程を含む、方法を提
供する。
【0012】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物中のインタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子の相対量を測定する方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、c)C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程、d)インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量を、空のカプシド粒子、変種の組換えウイルスゲノムを含むカプシド粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量、および/または調製物中の組換えウイルス粒子の総量と比較する工程を含む、方法を提供する。
【0013】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物の精製の際に、空のカプシドおよび/または、変種の組換えウイルスゲノムを含むカプシド粒子の除去をモニターする方法であって、精製プロセスにおける1つまたはそれ以上の工程に続いて、調製物から組換えウイルス粒子サンプルを除去すること、ならびに請求項5~8のいずれか1項に記載の方法により、空のカプシドおよび/または変種の組換えウイルスゲノムを含むカプシド粒子の相対量についてサンプルを分析することを含み、空のカプシドおよび/または、変種のゲノムを含むカプシドの完全カプシドに対する相対量における減少は、組換えウイルス粒子の調製物からの空のカプシドの除去を示す方法を提供する。一部の実施形態では、空のカプシド粒子のS値に対応するピークの存在は、空のカプシド粒子の存在を示す。一部の実施形態では、インタクトな組換えウイルスゲノムを含む完全カプシド粒子または空のカプシド粒子に対するピーク以外の1つまたはそれ以上のピークの存在は、変種のサイズのゲノムを含むカプシド粒子の存在を表す。一部の実施形態では、変種のサイズのゲノムを含むカプシド粒子は、切断型ゲノム、凝集体、組換え体および/またはDNA不純物を含む。
【0014】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子の不均一性を決定する方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程であって、インタクトなウイルスゲノムを含むカプシドに相当するピークに追加してピークが存在することは、調製物中の組換え粒子の不均一性を示す工程を含む、方法を提供する。一部の実施形態では追加のピークの存在は、空のカプシド粒子および/または変種のゲノムを含む組換えウイルス粒子の存在を示す。一部の実施形態では、変種のゲノムは、切断型ウイルスゲノム、凝集体、組換え体および/またはDNA不純物である。一部の実施形態では方法は、C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程をさらに含む。
【0015】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物の精製の際に組換えウイルス粒子の均一性をモニターする方法であって、精製プロセスにおける1つまたはそれ以上の工程に続いて、調製物から組換えウイルス粒子サンプルを除去すること、ならびに上記方法により、組換えウイルス粒子の不均一性を決定することを含み、インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子の相対量における増加は、組換えウイルス粒子の調製物中の全ウイルス粒子の均一性の増大を示す、方法を提供する。
【0016】
上記態様の一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降は、吸光度によってモニターされる。一部の実施形態では吸光度は、約230nm、260nmまたは280nmにおけるものである。一部の実施形態では吸光度は、約260nmにおけるものである。一部
の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降は、干渉によってモニターされる。一部の実施形態では干渉は、レイリー干渉である。
【0017】
上記態様の一部の実施形態では調製物は水溶液である。さらなる実施形態では水溶液は、医薬製剤を含む。一部の実施形態では水溶液は緩衝液を含む。一部の実施形態では緩衝液は生理学的pHを有する。一部の実施形態では緩衝液は生理学的浸透圧を有する。一部の実施形態では医薬製剤はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。一部の実施形態ではPBSは、7.2のpHおよび約300mOsm/Lの浸透圧を有する。一部の実施形態ではモニターすることは、参照サンプルとの比較をさらに含み、参照サンプルは組換えウイルス粒子を含まない水溶液を含む。
【0018】
上記態様の一部の実施形態ではC(S)値は、ラム方程式解を含むアルゴリズムによって決定される。一部の実施形態ではアルゴリズムは、SEDFITアルゴリズムである。一部の実施形態では、沈降は最低密度を有する組換えウイルス粒子が超遠心機のセクターの底に沈降するまでモニターされる;例えばセクターは、検出系を含む超遠心機の一部であってよい。一部の実施形態では超遠心分離法は、超遠心速度セルを含む超遠心機を利用する。一部の実施形態では沈降は、組換えウイルス粒子が超遠心速度セルの底に沈降するまでモニターされる。一部の実施形態では沈降は、最低密度を有する組換えウイルス粒子が沈降し、光学ウインドウが透明化するまでモニターされる。
【0019】
一部の実施形態では半径方向の濃度は、少なくとも約0.5時間、0.75時間、1.0時間、1.5時間、2.0時間、3.0時間、4.0時間または5.0時間のいずれかについて記録される。一部の実施形態では半径方向の濃度は、約1.0時間記録される。一部の実施形態では半径方向の濃度は、約1.2時間記録される。一部の実施形態では半径方向の濃度は、約0.5時間から約2.0時間記録される。一部の実施形態では半径方向の濃度は、約1.0時間から約2.0時間記録される。
【0020】
上記態様の一部の実施形態では少なくとも30スキャンが組換えウイルス粒子の沈降をモニターするために使用される。一部の態様では約30スキャンが組換えウイルス粒子の沈降をモニターするために使用される。他の実施形態では約30から約75スキャンが組換えウイルス粒子の沈降をモニターするために使用される。他の実施形態では、約30から約50スキャンが組換えウイルス粒子の沈降をモニターするために使用される。他の実施形態では、約50から約75スキャンが組換えウイルス粒子の沈降をモニターするために使用される。
【0021】
上記態様の一部の実施形態では正則化は、少なくとも約0.68のF統計の信頼レベルでフィッティングレベルに適用される。一部の実施形態では正則化は二次微分正則化(derivative regularization)である。一部の実施形態では正則化は最大エントロピー正則化(Max entropy regularization)である。一部の実施形態では正則化は約0.68から約0.90のF統計の信頼レベルでフィッティングレベルに適用される。一部の実施形態では正則化は約0.68から約0.99のF統計の信頼レベルでフィッティングレベルに適用される。一部の実施形態では正則化は約0.68のF統計の信頼レベルでフィッティングレベルに適用される。
【0022】
上記態様の一部の実施形態では以下のC(S)パラメーターは一定に保たれ:分解能は約200Sから約5000Sであり、Sminは約1Sから約100Sであり、Smaxは約100Sから約5000Sであり、摩擦比は約1.0であるか、または遠心分離ソフトウェアによって決定された値に移行させる。一部の実施形態では分解能は、約200Sから約1000Sである。一部の実施形態では分解能は、約200Sである。一部の実施形態ではSminは、約1である。一部の実施形態ではSmaxは、約100Sから約1
000Sである。他の実施形態ではSmaxは、約200Sから約5000Sである。他の実施形態ではSmaxは、約200Sである。一部の実施形態では摩擦比は遠心分離ソフトウェアによって決定された値に移行させる。一部の実施形態では摩擦比は約1.0である。一部の実施形態では半径方向不変(radial invariant)(RI)および時不変(TI)ノイズサブトラクションが適用される。
【0023】
上記態様の一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降は、約10~60秒間ごとにモニターされる。一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降は、約10秒間ごとにモニター(例えばスキャン)される。他の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降は、約60秒間ごとにモニターされる。一部の実施形態では超遠心分離法の際の組換えウイルスの沈降速度は、約15秒間、30秒間、45秒間、1分間(60秒間)、2分間、3分間、4分間、5分間、6分間、7分間、8分間、9分間、10分間、15分間、20分間、25分間を超えるごとに1回組換えウイルス粒子の沈降をモニターすることによって決定される。
【0024】
上記態様の一部の実施形態では境界沈降速度は、約3,000rpmから約20,000rpmで実行される。一部の実施形態では境界沈降速度は、約3,000rpmから約10,000rpmで実行される。他の実施形態では境界沈降速度は、約10,000rpmから約20,000rpmで実行される。他の実施形態では境界沈降速度は、約15,000rpmから約20,000rpmで実行される。
【0025】
上記態様の一部の実施形態では境界沈降速度は、約4℃から約20℃で実行される。一部の実施形態では境界沈降速度は、約4℃で実行される。
【0026】
上記態様の一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子、組換えアデノウイルス粒子、組換えレンチウイルス粒子または組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)粒子である。一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV4カプシド、AAV5カプシド、AAV6カプシド、AAV7カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8カプシド、AAV9カプシド、AAV10カプシド、AAVrh10カプシド、AAV11カプシド、AAV12カプシド、AAV2R471Aカプシド、AAV2/2-7m8カプシド、AAV DJカプシド、AAV2 N587Aカプシド、AAV2 E548Aカプシド、AAV2 N708Aカプシド、AAV V708Kカプシド、ヤギAAVカプシド、AAV1/AAV2キメラカプシド、ウシAAVカプシドまたはマウスAAVカプシドrAAV2/HBoV1(キメラAAV/ヒトボカウイルスウイルス1)を含む。一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、AAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAVrh8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、AAVrh10 ITR、AAV11 ITRまたはAAV12 ITRを含む。一部の実施形態ではAAVカプシドは、チロシン変異またはヘパリン結合変異を含む。他の実施形態では組換えウイルス粒子は、組換えアデノウイルス粒子である。一部の実施形態では組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdまたはブタAd3型由来のカプシドを含む。一部の実施形態では組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2カプシドの変種またはアデノウイルス血清型5カプシドの変種を含む。他の実施形態では組換えウイルス粒子は組換えレンチウイルス粒子である。一部の実施形態では組換えレンチ
ウイルス粒子は、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モコラウイルス、狂犬病ウイルス、RD114またはその変種で偽型化される。他の実施形態では組換えウイルス粒子はrHSV粒子である。一部の実施形態ではHSV粒子はHSV-1粒子またはHSV-2粒子である。
【0027】
一部の態様では本発明は、請求項1から67のいずれか1項に記載の方法を含む組換えウイルス粒子の産生のための工程を評価するための方法であって、空のカプシド粒子の相対量と比較したインタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子、および/または組換えウイルス粒子の参照調製物と比較した変種の組換えウイルスゲノムを含む組換えウイルスカプシド粒子の相対量における増大が、組換えウイルス粒子の産生の改善を示す、方法を提供する。一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子、組換えアデノウイルス粒子、組換えレンチウイルス粒子または組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)粒子である。一部の実施形態ではrAAV粒子は、産生細胞株から産生される。他の実施形態ではrAAV粒子は、i)AAV repおよびcapをコードする核酸、ii)rAAVベクター配列、およびiii)アデノウイルスヘルパー機能をコードする核酸の三重トランスフェクションによって産生される。他の実施形態では組換えウイルス粒子は、AAV/HSVハイブリッドによって産生される。他の実施形態では組換えウイルス粒子は、バキュロウイルス細胞から産生される。一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、AAVベクター配列、AAV repおよびcapコード領域ならびにAAVヘルパーウイルス機能をコードする核酸の好適な宿主細胞への一過性トランスフェクションによって産生される。一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、AAVベクター配列、AAV repおよびcapコード領域ならびにAAVヘルパーウイルス機能をコードする1つまたはそれ以上の核酸の好適な宿主細胞への導入によって産生され、1つまたはそれ以上の核酸は組換えヘルパーウイルスを使用して細胞に導入される。一部の実施形態では組換えヘルパーウイルスは、アデノウイルスまたは単純ヘルペスウイルスである。一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、自己相補性AAV(scAAV)ゲノムを含む。一部の実施形態では方法は、scAAVゲノムの単量体形態またはscAAVゲノムの二量体形態を含む組換えウイルス粒子の存在を検出するために使用される。
【0028】
上記態様の一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、アデノウイルスベクター配列ならびにアデノウイルス複製およびパッケージング配列をコードする核酸の好適な宿主細胞への一過性トランスフェクションによって産生される。他の実施形態では組換えウイルス粒子は、レンチウイルスベクター配列ならびに/またはレンチウイルス複製およびパッケージング配列をコードする核酸の好適な宿主細胞への一過性トランスフェクションによって産生される。他の実施形態では、組換えウイルス粒子は、HSVベクター配列ならびに/またはHSV複製およびパッケージング配列をコードする核酸の好適な宿主細胞への一過性トランスフェクションによって産生される。
【0029】
一部の態様では本発明は、空のカプシドが低減された組換えウイルス粒子および/または変種のゲノムを含む組換えウイルス粒子を調製するための方法であって、a)組換えウイルス産生のために好適な条件下で宿主細胞を培養する工程であり、細胞は、i)少なくとも1つのAAV ITRを端に有する異種性導入遺伝子をコードする核酸、ii)AAV repおよびcapコード領域を含む核酸であり、p5プロモーターを含む核酸、およびiii)AAVヘルパーウイルス機能をコードする核酸を含む工程;b)組換えウイルス粒子を放出するように宿主細胞を溶解する工程;c)宿主細胞によって産生された組換えウイルス粒子を単離する工程;ならびにd)空のカプシドおよび/または変種のゲノムを有する組換えウイルス粒子の存在について上記方法による分析超遠心分離法によって組換えウイルス粒子を分析する工程を含む、方法を提供する。一部の態様において本発明
は、空のカプシドが低減された組換えウイルス粒子および/または変種のゲノムを含む組換えウイルス粒子を調製するための方法であって、a)組換えウイルス産生のために好適な条件下で宿主細胞を培養する工程であり、細胞は、i)少なくとも1つのAAV ITRを端に有する異種性導入遺伝子をコードする核酸、ii)AAV repおよびcapコード領域を含む核酸であり、変異導入されたp5プロモーターを含み、p5プロモーターからのrep発現は野生型p5プロモーターと比較して低減されている核酸、およびiii)AAVヘルパーウイルス機能をコードする核酸を含む工程;b)組換えウイルス粒子を放出するように宿主細胞を溶解する工程;c)宿主細胞によって産生された組換えウイルス粒子を単離する工程;ならびにd)空のカプシドおよび/または変種のゲノムを有する組換えウイルス粒子の存在について上記方法による分析超遠心分離法によって組換えウイルス粒子を分析する工程を含む、空のカプシドが低減された組換えウイルス粒子および/または変種のゲノムを含む組換えウイルス粒子を調製するための方法を提供する。一部の実施形態では、p5プロモーターは、repおよび/またはcapコード領域の3’に位置付けられている。一部の実施形態ではAAVヘルパーウイルス機能は、アデノウイルスE1A機能、アデノウイルスE1B機能、アデノウイルスE2A機能、アデノウイルスVA機能およびアデノウイルスE4 orf6機能を含む。
【0030】
先行する実施形態のいずれかの一部の実施形態では、組換えウイルス粒子は、1つまたはそれ以上の精製工程を使用して精製される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1A】分析超遠心分離法(AUC)が組換えウイルスベクター粒子を特徴付けるために使用できることを示す図である。(図1A)1.2時間の時間間隔(T)でのAAV2混合物の吸光度(260nm)を半径(cm)に対して示す境界沈降速度の代表的スキャンプロファイル。AAV2混合物は、空のカプシド(「空のCap」)および全ゲノムカプシド(「インタクトなベクター」)を含有していた。
図1B】分析超遠心分離法(AUC)が組換えウイルスベクター粒子を特徴付けるために使用できることを示す図である。(図1B)空のカプシドおよび全ゲノムカプシドの濃度を80%/20%混合物から測定するためにAUCを使用できることを示す沈降係数(スベドベルグ単位、S)に対する検出単位、C(S)での濃度のプロット。各ピークに粒子種ならびにその対応する沈降係数(S)および相対存在(%)が示されている。
図2図2Aおよび2Bは、空のAAV2カプシド(図2A)およびゲノム含有AAV2-導入遺伝子1カプシド(図2B)の純粋集団のAUCを示すグラフである。各ピークにカプシド種およびその沈降係数(S)が示されている。
図3図3Aおよび3Bは、AUCによる干渉と吸光度検出法との比較を示すグラフである。(図3A)スベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値、c(s)のプロットは、空のカプシドおよびゲノム含有カプシドの1:1混合物について、干渉光学検出を使用して作成された沈降係数の分布を示す。各種についての沈降係数および相対存在(%)が示されている。(図3B)スベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値、c(s)のプロットは、空のカプシドおよびゲノム含有カプシドの1:1混合物について、吸光度光学検出(260nm)を使用して作成された沈降係数の分布を示す。各種についての沈降係数および相対存在(%)が示されている。
図4】AAVベクター産生のための三重トランスフェクション法を例示する図である。目的の遺伝子(「pVector」)AAV RepおよびCap遺伝子(「pHLP」)ならびにアデノウイルス構成成分(「pIAdeno」)を含有する3種のベクターが示されている。ゲノム含有(図において「ITR導入遺伝子ITR」と示される)および空のカプシド(空欄)の両方が産生されることに注目されたい。
図5】AAVベクター産生のための産生細胞株法を例示する図である。表示のとおりHeLa S3細胞株は、組み込まれたRep、Capおよびピューロマイシン耐性遺伝子を、目的のITR隣接導入遺伝子とともに含有する。この細胞株に組換えウイルス産生を刺激するためにアデノウイルス(「Ad5」)を感染させる。アデノウイルス粒子に加えてゲノム含有(「組換えウイルスベクター」と示される)および空のカプシドの両方が産生されることに注目されたい。
図6図6A、6Bおよび6Cは、産生細胞株および三重トランスフェクション法によるベクター産生は、AUC分析によって明らかなとおり異なるベクター調製物を生じることを示す図である。(図6A)AAV2-導入遺伝子2ベクターおよびその3.4kbゲノムの模式図。(図6B)スベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値、c(s)のプロットは、産生細胞株法によるベクター調製物についての沈降係数の分布を示す。各種について沈降係数および相対存在(%)が示されている。(図6C)スベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値、c(s)のプロットは、三重トランスフェクション法によって産生されたベクター調製物についての沈降係数の分布を示す。各種についての沈降係数および相対存在(%)が示されている。
図7-1】図7A、7Bおよび7Cは、AUC法がベクター精製の品質および有効性をモニターするために使用できることを示すグラフである。(図7A)アニオン交換クロマトグラフィーを使用する空のカプシドからの全ゲノムAAV2-導入遺伝子1カプシドの精製を示すプロットである。各種に対応するピークフラクションが示されている。(図7B)スベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値、c(s)のプロットは、アニオン交換カラムから溶出後のベクター調製物についての沈降係数の分布を示す。各種についての沈降係数および相対存在(%)が示されている。(図7C)スベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値、c(s)のプロットは、クロマトグラフィー前のベクター調製物についての沈降係数の分布を示す。各種についての沈降係数および相対存在(%)が示されている。
図7-2】図7-1の続き。
図8】沈降係数とベクターゲノムサイズとの間の直線関係を示すグラフである。ゲノムサイズに対して沈降係数(S)をプロットする標準曲線が最良適合直線、その式およびその相関R値と共に示されている。
図9-1】図9A、9Bおよび9Cは、AUCデータを使用するカプシドゲノムサイズの評価がサザンブロットによるゲノムサイズの評価と相関することを示す図である。(図9A)スベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値、c(s)のプロットは、scAAV9 EGFPベクター調製物についての沈降係数の分布を示す。1本鎖単量体(82S)および2本鎖二量体(101S)種は対応する沈降係数および相対存在量値(%)で示されている。ベクターの模式的図も提供されている。(図9B)scAAV9 EGFP(レーン1)および1本鎖AAV9 EGFP(レーン2)ベクターカプシド由来のDNAのアルカリサザンブロット分析。対応するバンドをブロット凡例に記載のとおり示す。4.2および2.4kbサイズ標準物は標識として提供される。(図9C)スベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値、c(s)のプロットは、1本鎖AAV9 EGFPベクター調製物についての沈降係数の分布を示す。82Sおよび99S(全ゲノム)ピークは対応する沈降係数および相対存在量値(%)で示されている。
図9-2】図9-1の続き。
図10図10A、10Bおよび10Cは、Rep/Capプロモーター位置が三重トランスフェクション法によって産生された組換えウイルスベクターでのゲノムパッケージングに影響を与えることを示す図である。(図10A)二量体および単量体ゲノム種についての推定沈降係数を伴う自己相補性scAAV2 EGFPベクターの模式図である。(図10B)スベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値、c(s)のプロットは、Rep78/6発現を駆動する内在性p5プロモーター(「WT Rep」)を有する「野生型」ヘルパープラスミドを使用して産生されたscAAV2 EGFPベクター調製物についての沈降係数の分布を示す。1本鎖単量体(80S)および2本鎖二量体(100S)種についてのピークは対応する相対存在量値(%)で示されている。(図10C)スベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値、c(s)のプロットは、cap2配列(「pHLP Rep」)の下流に移動したRep78/68発現を駆動するp5プロモーターを有する「野生型」ヘルパープラスミドを使用して産生されたscAAV2 EGFPベクター調製物についての沈降係数の分布をもたらした。1本鎖単量体(82S)および2本鎖二量体(100S)種についてのピークは対応する相対存在量値(%)で示されている。
図11図11A、11B、11Cおよび11Dは、Rep/Capプロモーター位置が2個の追加のAAVベクターでのゲノムパッケージングに影響を与えることを示す図である。(図11Aおよび11B)スベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値、c(s)のプロットは、内在性p5プロモーター(「WT Rep」図11B)またはcap5配列の下流にp5プロモーター(「pHLP Rep」図11A)を有するヘルパープラスミドで産生されたcap5配列を含有する1本鎖AAV5第IX因子ベクター(AAV5 hFIX16)についての沈降係数の分布を示す。(図11C~11D)スベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値、c(s)のプロットは、内在性p5プロモーター(「WT Rep」図11D)またはcap5配列の下流にp5プロモーター(「pHLP Rep」図11C)を有するヘルパープラスミドで産生されたcap5配列を含有する1本鎖AAV5hSMNベクター(AAV5SMN)についての沈降係数の分布を示す。
図12図12Aおよび12Bは、サザンブロット分析はAUC分析と相関するが、AUCによって検出可能な一部の断片化ゲノムを見逃すことを明らかにした図である。(図12A)pHLPヘルパープラスミド(レーン2)またはWT Repプラスミド(レーン1)で作られたAAV5SMN調製物由来のベクターDNAのサザンブロット分析。4.6および2.4kbサイズ標準物は、標識として提供される。(図12B)pHLPヘルパープラスミド(レーン1)またはWT Repプラスミド(レーン2)で作られたAAV5FIX調製物由来のベクターDNAのサザンブロット分析。4.3、3.0および1.9kbサイズ標準物は標識として提供される。
図13】他の特性と共にhFIX導入遺伝子、ITR、Rep開始点およびAmpRマーカー遺伝子の位置を示すAAV5第IX因子ベクターのマップを示す図である。AmpRマーカーがITR、エンハンサーおよびプロモーター領域の上流にあることに注目されたい。
図14図14Aおよび14Bは、WT Repベクターゲノムは、pHLP Repベクターゲノムとは異なり、AAV5第IX因子ベクター中の5’ITRの上流に配列をパッケージすることを示す図である。(図14A)pHLP Rep(レーン1)とWT Rep(レ-ン2)ベクターゲノムとを比較するhFIX導入遺伝子特異的プローブを使用するサザンブロット分析。(図14B)pHLP Rep(レーン1)とWT Rep(レーン2)ベクターゲノムとを比較するRep ori/AmpR特異的プローブを使用するサザンブロット分析。
図15図15Aおよび15Bは、AUC分析によって実証された大型のAAVベクターゲノムの断片化を示す図である。(図15A)大型のゲノムを有するAAVベクターについてAUCによって作成された沈降係数(S)に対する濃度、C(S)のプロット。このゲノムは、β-リン酸ジエステラーゼの発現を駆動する全長ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターを含有している(ssAAV2/5CBA-βPDE)。検出された種についてのピークは、観察された沈降係数(S)および相対存在量値(%)によって示されている。(図15B)切断型ゲノムを含むAAVベクターについてAUCによって作成された沈降係数(S)に対する濃度、C(S)のプロット。このゲノムは、β-リン酸ジエステラーゼの発現を駆動する低減されたサイズのイントロンを有するCBAプロモーターを含有している(AAV5 minCBAPDE6B)。検出された種についてのピークは、観察された沈降係数(S)および相対存在量値(%)によって示されている。
図16】アデノウイルスカプシドの純粋調製物のAUCプロファイルを示す図である。沈降係数(S)および干渉値は各ピークに与えられている。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、分析超遠心分離法を使用して.ウイルス粒子の調製物を特徴付ける方法を提供する。調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法(AUC)に供することによって、ウイルス粒子の沈降は、時間間隔で(例えば、1回またはそれ以上)モニターされる。次にスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対する微分沈降係数分布値(C(s))は、プロットされ、C(S)分布での各ピーク下面積は積分され、各ピークの相対濃度が決定される。各ピークは、その分子量を反映したウイルス粒子の種に相当する。これらの方法によって検出できる種は、これらに限らないが組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子、組換えアデノウイルス(rAd)粒子、組換えレンチウイルス粒子および組換え単純ヘルペスウイルス(rHSV)粒子を含む。例示的例としてrAAV粒子を使用してこれらの方法は、インタクトなrAAVゲノムを含むrAAVカプシド粒子(例えば完全カプシド)、rAAVゲノムがウイルスカプシドにカプシド化されていない空のウイルスカプシドおよび、変種rAAVゲノムがウイルスカプシドにカプシド化されているrAAV粒子変種(例えばAAVカプシド化DNA不純物、切断型ウイルスゲノム、凝集体などを含有する粒子)を含むrAAV種の検出を可能にする。これらの方法は、ウイルスゲノムのヌクレオチド配列、組換えウイルス粒子の場合は組換えウイルスカプシドの血清型に関わらずウイルス粒子の調製に適用できる。これらの方法は、rAAV、rAd、組換えレンチウイルスおよびrHSVウイルス粒子に適用できる。
【0033】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子のベクターゲノムの完全性を、調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供することによって評価する方法であって、組換えウイルス粒子の沈降は時間間隔で(例えば、1回またはそれ以上)モニターされる方法を提供する。微分沈降係数分布値C(S)をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットすることによって調製物中の組換えウイルス粒子の種は、S値に対応するプロット上のピークの存在によって同定できる。組換えウイルス粒子の具体的な種のゲノムサイズは、例えば種のS値を、さまざまな周知のサイズを有するカプシド化されたウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子のS値によって作成された標準曲線と比較することによって算出できる。これらの方法によって評価できるベクターゲノムは、これらに限らないがインタクトな組換えウイルスゲノムを含む組換えウイルスカプシド粒子(例えば完全カプシド)、組換えウイルスゲノムがウイルスカプシドにカプシド化されていない空のウイルスカプシド、および変種の組換えウイルスゲノム(例えばAAVカプシド化DNA不純物、切断型ウイルスゲノム、凝集体などを含有する粒子)がウイルスカプシドにカプシド化された組換えウイルス粒子変種を含む。一部の実施形態ではウイルス粒子は、rAAV、rAd、組換えレンチウイルスまたはrHSVウイルス粒子である。
【0034】
一部の実施形態では本発明は、境界沈降速度条件下でのAUCによって組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の不均一性を決定する方法であって、C(S)対Sのプロットにおけるインタクトなウイルスゲノムを含むカプシドに相当するピークに追加してピークが存在することは、調製物中の組換えウイルス粒子の不均一性を示す方法を提供する。一部の実施形態では調製物中の各組換えウイルス種の相対量は、プロット中の各ピークの面積を積分することによって算出される。
【0035】
本発明の一部の実施形態ではAUCは、組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の調製物中の空のカプシドおよび/または組換えウイルス粒子変種の存在を決定するために使用され、C(S)対Sのプロットにおいて空のカプシド粒子および/または組換えウイルス粒子変種のS値に対応するピークの存在は、空のカプシド粒子および/または組換えウイルス粒子変種の存在を示す。一部の実施
形態では、組換えウイルス粒子の調製物中の空のカプシドおよび/または組換えウイルス粒子変種の相対量は、Sに対するC(S)のプロットにおける各ピーク下面積を積分することならびに空のカプシド粒子および/または組換えウイルス粒子変種に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量を、インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量と比較することによって決定される。一部の実施形態では、空のカプシド粒子および/または組換えウイルス粒子変種に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量は、プロットのすべてのピーク下面積を積分および合計することによって調製物中のすべての組換えウイルス粒子の量と比較される。
【0036】
一部の実施形態では本発明は、AUCを使用することによって組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の調製物の精製の際の空のカプシドおよび/または組換えウイルス粒子変種の除去をモニターする方法を提供する。精製プロセスの1つまたはそれ以上の工程後の調製物由来の組換えウイルス粒子サンプルは、空のカプシドおよび/または組換えウイルス粒子変種の相対量について分析され、完全カプシド粒子に対する空のカプシドおよび/または組換えウイルス粒子変種の相対量の減少は、組換えウイルス粒子の調製物からの空のカプシドおよび/または組換えウイルス粒子変種の除去を示す。
【0037】
一部の実施形態では本発明は、組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の産生についてAUCによってプロセスを評価する方法を提供する。組換えウイルス粒子の調製物は、インタクトな全ウイルスカプシド粒子、空の粒子および/または組換えウイルス粒子変種の存在について分析される。空のカプシド粒子の相対量と比較したインタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子の相対量および/または組換えウイルス粒子(例えば、標準組換えウイルス調製プロセス)の参照調製物と比較した組換えウイルス粒子変種(例えば、AAVカプシド化DNA不純物、切断型ウイルスゲノム、凝集体などを含有する粒子)における増大は、組換えウイルス粒子の産生の改善を示す。
【0038】
I.一般的技術
例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrookら、第4版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,2012);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、2003);the series Methods
in Enzymology(Academic Press,Inc.);PCR 2:A Practical Approach(M.J.MacPherson,B.D.Hames and G.R.Taylor編、1995);Antibodies,A Laboratory Manual(Harlow and Lane編、1988);Culture of Animal Cells: A Manual of
Basic Technique and Specialized Applications(R.I.Freshney,第6版,J.Wiley and Sons,2010);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、Academic Press,1998);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,Plenum Press,1998);Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell編、J.Wiley and Sons,1993-8);Handboo
k of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell編、1996);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos編、1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991);Short Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、J.Wiley and Sons,2002);Immunobiology(C.A.Janewayら、2004);Antibodies(P.Finch,1997);Antibodies:A Practical Approach(D.Catty.編、IRL Press,1988-1989);Monoclonal
Antibodies:A Practical Approach(P.Shepherd and C.Dean編、Oxford University Press,2000);Using Antibodies:A Laboratory Manual(E.Harlow and D.Lane,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra編、Harwood Academic Publishers,1995)およびCancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVitaら編、J.B.Lippincott Company,2011)に記載の広く利用される方法など本明細書に記載および参照する技術および手順は、一般に十分に理解され、当業者によって従来の方法を使用して一般に用いられている。
【0039】
II.定義
本明細書において使用される「ベクター」は、in vitroまたはin vivoのいずれかで宿主細胞に送達される核酸を含む組換えプラスミドまたはウイルスを指す。
【0040】
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さ、リボヌクレオチドまたはデオキシリボ核酸のいずれかのヌクレオチドのポリマー形態を指す。それによりこの用語は、これらに限らないが、1本、2本もしくは多本鎖DNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッドもしくはプリンおよびピリミジン塩基を含むポリマー、または他に天然で、化学的にもしくは生化学に修飾された、非天然もしくは誘導ヌクレオチド塩基を含む。ポリヌクレオチドの骨格は、糖およびリン酸基(典型的にはRNAもしくはDNAにおいて見出されるとおり)または修飾されたもしくは置換された糖もしくはリン酸基を含む。代替的にポリヌクレオチドの骨格はホスホロアミデートなどの合成サブユニットのポリマーを含む場合があり、それによりオリゴデオキシヌクレオシドホスホロアミデート(P-NH)または混合ホスホロアミデート-リン酸ジエステルオリゴマーであってよい。付加的に2本鎖ポリヌクレオチドは、相補鎖を合成し、適切な条件下で鎖をアニーリングすることによってまたは、DNAポリメラーゼを適切なプライマーと共に使用して原位置で相補鎖を合成することによってのいずれかで化学合成1本鎖ポリヌクレオチド産生物から得られる。
【0041】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指して互換的に用いられ、最短の長さに限定されない。アミノ酸残基のそのようなポリマーは、天然またはアミノ酸残基を含有でき、これらに限らないが、ペプチド、オリゴペプチド、アミノ酸残基の二量体、三量体および多量体を含むことができる。全長タンパク質およびその断片の両方は、定義に包含される。用語は、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアリル化、アセチル化、リン酸化なども含む。さらに本発明の目的のために「ポリペプチド」は、タンパク質が望ましい活性を維持している限り天然配列への欠失、付加および置換(一般に性質において保存的)などの修飾を含むタンパク質を指す。これら
の修飾は、部位特異的変異導入を通じて意図的であってよく、またはタンパク質を産生する宿主の変異を通じてまたはPCR増幅による誤りなどの偶然であってよい。
【0042】
「組換えウイルスベクター」は、1つまたはそれ以上の異種性配列(すなわち、ウイルス由来ではない核酸配列)を含む組換えポリヌクレオチドベクターを指す。組換えAAVベクターの場合、組換え核酸は少なくとも1つの末端逆位配列(ITR)を端に有する。一部の実施形態では組換え核酸は、2個の末端逆位配列(ITR)を端に有する。
【0043】
「組換えAAVベクター(組換えアデノ随伴ウイルスベクター)」は、少なくとも1つのAAV末端逆位配列(ITR)を端に有する1つまたはそれ以上の異種性配列(すなわち、AAV由来ではない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。一部の実施形態では組換え核酸は、2個の末端逆位配列(ITR)を端に有する。そのような組換えウイルスベクターは、好適なヘルパーウイルスを感染させ(または好適なヘルパー機能を発現しており)、AAV repおよびcap遺伝子産生物(すなわちAAV RepおよびCapタンパク質)を発現している宿主細胞中に存在する場合、感染性ウイルス粒子中に複製およびパッケージングされる。組換えウイルスベクターが大きなポリヌクレオチド(例えば染色体またはクローニングもしくはトランスフェクションのために使用されるプラスミドなどの別のベクター中)に組み込まれる場合、組換えウイルスベクターは、AAVパッケージング機能および好適なヘルパー機能の存在下で複製およびカプシド化によって「レスキュー」される「プロベクター」と称される場合がある。組換えウイルスベクターは、これらに限らないが、プラスミド、直鎖状人工染色体、脂質を含む複合体、リポソーム内にカプシド化されているおよびウイルス粒子中にカプシド化されている、例えばAAV粒子を含む任意の多数の形態であってよい。組換えウイルスベクターは、「組換えアデノ随伴ウイルス粒子(組換えウイルス粒子)」を生成するAAVウイルスカプシドにパッケージングされる。
【0044】
「rAAVウイルス」または「rAAVウイルス粒子」は、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質およびカプシド化されたrAAVベクターゲノムからなるウイルス粒子を指す。
【0045】
「組換えアデノウイルスベクター」は、少なくとも1つのアデノウイルス末端逆位配列(ITR)を端に有する1つまたはそれ以上の異種性配列(すなわち、アデノウイルス由来ではない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。一部の実施形態では組換え核酸は、2個の末端逆位配列(ITR)を端に有する。そのような組換えウイルスベクターは、組換えウイルスゲノムから欠失された重要なアデノウイルス遺伝子(例えば、E1遺伝子、E2遺伝子、E4遺伝子など)を発現している宿主細胞中に存在する場合、感染性ウイルス粒子中に複製およびパッケージングされる。組換えウイルスベクターが大きなポリヌクレオチド(例えば染色体またはクローニングもしくはトランスフェクションのために使用されるプラスミドなどの別のベクター中)に組み込まれる場合、組換えウイルスベクターは、アデノウイルスパッケージング機能の存在下で複製およびカプシド化によって「レスキュー」される「プロベクター」と称される場合がある。組換えウイルスベクターは、これらに限らないが、プラスミド、直鎖状人工染色体、脂質を含む複合体、リポソーム内にカプシド化されているおよびウイルス粒子中にカプシド化されている、例えばアデノウイルス粒子を含む任意の多数の形態であってよい。組換えウイルスベクターは、「組換えアデノウイルス粒子」を生成するアデノウイルスウイルスカプシドにパッケージングされる。
【0046】
「組換えレンチウイルスベクター」は、少なくとも1つのレンチウイルス末端反復配列(LTR)を端に有する1つまたはそれ以上の異種性配列(すなわち、レンチウイルス由来ではない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。一部の実施形態では組換
え核酸は、2個のレンチウイルス末端反復配列(LTR)を端に有する。そのような組換えウイルスベクターは、好適なヘルパー機能を感染させた宿主細胞中に存在する場合感染性ウイルス粒子中に複製およびパッケージングされる。組換えレンチウイルスベクターは、「組換えレンチウイルス粒子」を生成するレンチウイルスカプシドにパッケージングされる。
【0047】
「組換え単純ヘルペスベクター(組換えHSVベクター)」は、HSV末端反復配列を端に有する1つまたはそれ以上の異種性配列(すなわち、HSV由来ではない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。そのような組換えウイルスベクターは、好適なヘルパー機能を感染させた宿主細胞中に存在する場合、感染性ウイルス粒子中に複製およびパッケージングされる。組換えウイルスベクターが大きなポリヌクレオチド(例えば染色体またはクローニングもしくはトランスフェクションのために使用されるプラスミドなどの別のベクター中)に組み込まれる場合、組換えウイルスベクターは、HSVパッケージング機能の存在下で複製およびカプシド化によって「レスキュー」される「プロベクター」と称される場合がある。組換えウイルスベクターは、これらに限らないが、プラスミド、直鎖状人工染色体、脂質を含む複合体、リポソーム内にカプシド化されているおよびウイルス粒子中にカプシド化されている、例えばHSV粒子を含む任意の多数の形態であってよい。組換えウイルスベクターは、「組換え単純ヘルペスウイルス粒子」を生成するHSVカプシドにパッケージングされる。
【0048】
「異種性」は、それが比較される、またはそれに導入もしくは組み込まれる実体の他の部分とは遺伝子型が異なる実体に由来することを意味する。例えば遺伝子工学技術によって異なる細胞型に導入されるポリヌクレオチドは、異種性ポリヌクレオチドである(および発現された場合異種性ポリペプチドをコードできる)。同様にウイルスベクターに組み込まれている細胞性配列(例えば、遺伝子またはその部分)は、ベクターに関して異種性ヌクレオチド配列である。
【0049】
用語「導入遺伝子」は、細胞に導入され、RNAに転写され、場合により好適な条件下で翻訳および/または発現されるポリヌクレオチドを指す。態様では、それが導入される細胞に望ましい特性を付与する、または望ましい治療もしくは診断結果を導く。別の態様では、siRNAなどのRNA干渉を媒介する分子に転写される。
【0050】
ウイルス力価を参照して使用される用語「ゲノム粒子(gp)」、「ゲノム等価物」または「ゲノムコピー」は、感染性または機能性に関わらず組換えウイルスDNAゲノムまたはRNAゲノムを含有するビリオンの数を指す。具体的なベクター調製物中のゲノム粒子の数は、本明細書の実施例または例えばClarkら、(1999)Hum.Gene
Ther.,10:1031~1039頁;Veldwijkら、(2002)Mol.Ther.,6:272~278頁に記載などの手順によって測定できる。
【0051】
ウイルス力価を参照して本明細書で使用される用語「感染単位(iu)」、「感染性粒子」または「複製単位」は、例えばAAVについて、McLaughlinら、(1988)J.Virol.,62:1963~1973頁に記載の、複製中心アッセイとしても周知の感染中心アッセイによって測定される、感染性および複製適格組換えウイルスベクター粒子の数を指す。
【0052】
ウイルス力価を参照して使用される用語「導入単位(tu)」は、本明細書実施例に記載のものまたは例えばAAVに関してXiaoら、(1997)Exp.Neurobiol.,144:113~124頁またはFisherら、(1996)J.Virol.,70:520~532頁(LFUアッセイ)に記載のものなどの機能性アッセイで測定される機能性導入遺伝子産生物の産生を生じる感染性組換えウイルスベクター粒子の数
を指す。
【0053】
「末端逆位配列」または「ITR」配列は、当技術分野において十分に理解されている用語であり、ウイルスゲノムの末端に見出され反対方向にある比較的短い配列を指す。
【0054】
当技術分野において十分理解されている用語、「AAV末端逆位配列(ITR)」配列は、天然1本鎖AAVゲノムの両末端に存在するおよそ145ヌクレオチド配列である。ITRの最外側の125ヌクレオチドは、2つの別の方向で存在する場合があり、異なるAAVゲノム間および単一のAAVゲノムの2つの末端間に不均一性を生じる。最外側の125ヌクレオチドは、自己相補性のいくつかの短い領域(A、A’、B、B’、C、C’およびD領域と記される)も含有し、ITRのこの部分内に生じる鎖内塩基対合を可能にしている。
【0055】
「末端分解配列(terminal resolution sequence)」または「trs」は、ウイルスDNA複製の際にAAV repタンパク質によって切断されるAAV ITRのD領域中の配列である。変異体末端分解配列は、AAV repタンパク質による切断に抵抗性である。
【0056】
「AAVヘルパー機能」は、宿主細胞によるAAVの複製およびパッケージングを可能にする機能を指す。AAVヘルパー機能は、これらに限らないが、ヘルパーウイルスまたはAAV複製およびパッケージングを補助するヘルパーウイルス遺伝子を含む任意の多数の形態で提供される。他のAAVヘルパー機能は、遺伝毒性剤など当技術分野において周知である。
【0057】
AAVのための「ヘルパーウイルス」は、AAV(欠損パルボウイルス)が宿主細胞によって複製およびパッケージングされるようにするウイルスを指す。ヘルパーウイルスは、AAVの複製を可能にする「ヘルパー機能」を提供する。多数のそのようなヘルパーウイルスは同定されており、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアなどのポックスウイルスおよびバキュロウイルスを含む。アデノウイルスは、多数の異なるサブグループを含むが、サブグループCのアデノウイルス5型(Ad5)は最も一般的に使用される。ヒト、非ヒト哺乳動物および鳥類由来の多数のアデノウイルスは周知であり、ATCCなどの受託者から利用可能である。ATCCなどの受託者から同様に利用可能であるヘルペスファミリーのウイルスは、例えば単純ヘルペスウイルス(HSV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)および仮性狂犬病ウイルス(PRV)を含む。AAVの複製のためのアデノウイルスヘルパー機能の例は、E1A機能、E1B機能、E2A機能、VA機能およびE4orf6機能を含む。受託者から利用可能なバキュロウイルスは、オートグラファ・カルフォルニカ核多核体病ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis
virus)を含む。
【0058】
rAAVの調製物は、感染性AAV粒子の感染性ヘルパーウイルス粒子に対する比が少なくとも約10:1、少なくとも約10:1、少なくとも約10:1または少なくとも約10:1以上である場合はヘルパーウイルスを「実質的に含まない」と考えられる。一部の実施形態では調製物は、等量のヘルパーウイルスタンパク質(すなわち、上に記載のヘルパーウイルス粒子不純物が破壊された形態で存在した場合、そのようなレベルのヘルパーウイルスの結果として存在するタンパク質)も含まない。ウイルスおよび/または細胞性タンパク質混入物は、SDSゲル上のクーマシー染色バンドの存在として一般に観察される(例えば、AAVカプシドタンパク質VPl、VP2およびVP3に対応するもの以外のバンドの出現)。
【0059】
本明細書において使用される「微分係数分布値(differential coefficient distribution value)」または「C(S)」は、例えば超遠心分離法の際の、沈降粒子の分布を記載するためのラム方程式解の分布の変数である。
【0060】
本明細書において使用される「スベドベルグ単位」は、沈降速度の単位を指す。所与のサイズおよび形状の粒子の沈降速度は、どの程度早く粒子が沈降するかを測定する。1スベドベルグ単位は10-13秒間に等しい。例えばスベドベルグ単位は、遠心分離の遠心力下で分子が移動する速度を反映するためにしばしば使用される。
【0061】
本明細書において使用される「沈降速度条件」または「境界沈降速度条件」は、サンプル溶液が沈降速度分析に供される任意の実験条件を指す。沈降速度は、幅広い範囲のpHおよびイオン強度条件ならびに温度4から40℃にわたる粒子の研究を可能にする。沈降境界が移動する速度は、沈降する種の沈降係数の測定値である。沈降係数は、分子量(大きな粒子がより早く沈降する)および分子形状にも依存する。沈降境界の最小幅は分子の拡散係数に関連し;同様の沈降係数を有する複数の種の存在は拡散単独に基づいて予測されるよりも幅広い境界を生じる。沈降速度条件は、非限定的にローター速度、サンプルとローター中心との間の距離、温度、溶媒、サンプル、緩衝液、超遠心分離時間、検出の時間間隔、セクターおよび光学ウインドウ特徴、AUC計測手段(超遠心機および検出装置を含む)、参照溶媒の平衡透析およびデータ分析アルゴリズムに関連する任意の条件を含む場合がある。
【0062】
本明細書において使用される用語「分析的密度グラジエント沈降平衡」は、粒子の浮遊密度を測定する、または粒子の異なる種を分離するために浮遊密度における差異を使用するための方法に関する。これらの方法は、例えばAUC沈降平衡技術を使用できる。これらの方法では粒子溶液(例えば、非限定的にポリペプチド、ポリヌクレオチドまたはウイルスカプシドの溶液)は、溶媒和化合物での平衡が達成されるまで、塩化セシウムまたは硫酸セシウムグラジエントなどの溶媒和化合物グラジエント中で超遠心分離法に供される。平衡では、粒子溶液は粒子の密度が溶媒和化合物のものと等しいグラジエント中の位置に集まる、またはバンドになる。バンドの位置は粒子密度を算出するために使用でき、バンドは粒子の単一種を単離するために抽出される。
【0063】
本明細書において使用される「SEDFITアルゴリズム」は、沈降速度などの水力学的データを分析できるようにするアルゴリズムである(Schuck(2000)Biophys.J.,78:1606~19頁)。SEDFITアルゴリズムでは沈降係数のグリッドは、予測される範囲にわたって作製される。沈降境界は各沈降係数についてラム方程式への解を使用してシミュレートされ、一定の粒子形状および溶媒摩擦比を推定する。
【0064】
本明細書において使用される用語「F統計」または「F比」は、信頼レベルを指す。このパラメーターは、使用される正則化の量を制御する。それは、異なる範囲では異なる意味を有する:0から0.5では正則化は使用されない。値0.5から0.999は、蓋然性P(信頼レベル)に対応する。これらのP値から望ましいカイ二乗増加は、正則化の節減制約(parsimony constraint)がF統計で算出される。値0.51ではほとんど正則化を生じず;値0.68から0.90は一般に使用される信頼レベルに対応する(通常、50スキャン以上で0.7の蓋然性に対応するカイ二乗増加は0.1%程度である)、一方0.99に近い値は、非常に高い正則化を生じる。これらの値と蓋然性との関連は、F統計計算機を使用して検討される。数>1が入力される場合、それらは、直接カイ二乗比と見なされる(>1である蓋然性はないことから)。例えば1.1の値は、10%カイ二乗増加を有する正則化を生じる。
【0065】
「低減する」は、参照と比較して活性、機能および/または量を減少させる、低現する、または抑止することである。特定の実施形態では「低減する」によって、全体で20%以上の減少を生じる能力を意味する。別の実施形態では「低減」によって、全体で50%以上の減少を生じる能力を意味する。さらに別の実施形態では「低減」によって、75%、85%、90%、95%以上の減少を生じる能力を意味する。
【0066】
本明細書において使用される「参照」は、比較目的のために使用される任意のサンプル、標準物またはレベルを指す。例えば水溶液中のAAVの吸光度または屈折を測定する場合、溶液の吸光度または屈折はAAVを含まない水溶液(すなわち参照溶液)の吸光度または屈折と比較される。他の例では参照物は、当技術分野において周知の標準的手順を指す場合がある。例えばAAV産生の品質(例えば、均一性)の改善のための手順を分析する場合、候補手順によって産生されたAAVは、当技術分野において周知の手順(すなわち参照手順)と比較される。
【0067】
「単離された」分子(例えば、核酸もしくはタンパク質)または細胞は、それがその天然環境の構成成分から同定および分離および/または回収されていることを意味する。したがって、例えば、単離されたrAAV粒子は、培養溶解物または産生培養上清などの供給源混合物からそれを濃縮する精製技術を使用して産生される。下に記載の通り濃縮は、例えば溶液中に存在するDNase抵抗性粒子(DRP)の割合によってもしくは感染力によってなどの種々の方法によって測定される、またはそれは産生培養混入物もしくはヘルパーウイルス、培地構成成分などを含むプロセス混入物を含む混入物などの供給混合物中に存在する第2の潜在的干渉物質との関連で測定される。
【0068】
本明細書において値またはパラメーターの「約」を参照することは、値またはパラメーターそれ自体を対象とする実施形態を含む(および記載する)。例えば、「約X」を参照する記載は「X」の記載を含む。
【0069】
本明細書において使用される品目の単数形態「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、他に示す場合を除いて複数参照物を含む。例えば句「rAAV粒子(a rAAV particle)」は1つまたはそれ以上のrAAV粒子を含む。
【0070】
本明細書に記載の本発明の態様および実施形態が態様および実施形態を「含む」、「からなる」および/または「本質的にからなる」ことを含むことは理解される。
【0071】
III.分析超遠心分離法
分析超遠心分離法は、タンパク質または他の巨大分子の分子量ならびに水力学的および熱力学的特性を評価するための手段である。濃度、温度、イオン強度およびpHを含む幅広い条件にわたる沈降速度によるタンパク質または巨大分子の不均一性。例えばタンパク質は、臨床関連製剤において分析される。アデノウイルス調製物を特徴付けるための分析超遠心分離法の使用は、Berkowitz,SA & Philo JS,(2007)Anal.Biochem.,362:16~37頁によって提供されている。
【0072】
特定の態様では本発明は、分析超遠心分離法(AUC)を使用するウイルス粒子の調製物を特徴付ける方法を提供する。例えば一部の実施形態では本発明は、完全、インタクトなゲノムを有するウイルス粒子、空のウイルスカプシドおよび変種(例えば、切断型、凝集体、不純物など)ウイルスゲノムを含むウイルス粒子を識別するためにAUCを使用するrAAV粒子の調製物中の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子のベクターゲノムの完全性を評価するための方法を提供する。他の実施形態ではこれらの方法は、アデノ
ウイルス、レンチウイルスおよび単純ヘルペスウイルス(HSV)粒子を分析するために同様の方法で適用される。AUC分析は、遠心場における溶媒を通じた移行を測定することによる、粒子(例えば、ポリペプチド、ポリヌクレオチドおよびウイルスカプシド)の生物物理学的特性を特徴付けるための定量的方法を指す。AUC分析は、数十年にわたって十分に特徴付けられており、非常に多用途である。AUC分析が第1原理水力学および熱力学情報に依存していることから、AUCは、幅広い粒子濃度およびサイズにわたって多くの種類の粒子の生物物理学的特性を決定するために応用できる。AUC分析は、典型的には基本的な2種類の実験:沈降速度および沈降平衡を包含する。沈降平衡分析は、化学量論および会合定数などの特徴を測定するために使用できる粒子の熱力学的特性をもたらす。沈降速度は、サイズ、形状および濃度などの特徴を測定するために使用できる粒子の水力学的特性をもたらす。ウイルス調製物のAUC分析の特性は、同じアッセイ条件をウイルスゲノムのヌクレオチド配列またはカプシドの血清型に関わらずウイルス粒子のさまざまな調製物を分析するために使用できることである。
【0073】
本開示のある特定の態様は、ウイルスカプシド特性を特徴付けるための沈降速度分析の使用に関する。一部の実施形態では沈降速度分析は、光がコンパートメントを通過できるようにするそれぞれ2個の光学ウインドウを有する透析平衡にある2つのセクター(1つは実験サンプル用、もう1つは溶媒のみの参照サンプル用)を有する超遠心速度セルを使用する。超遠心分離法は、セルに角速度を適用し、溶質粒子のセクター底への急速な沈降を導く。沈降が生じると溶質は、セル上部のメニスカス近くでは枯渇し、枯渇領域と沈降した溶質との間に沈降境界を生じる。沈降境界の移動または移行の速度は、特定の時間間隔でサンプルおよび参照セクターの特性を比較する測定値を取ることによって測定される(沈降速度について、これらの間隔は典型的には数分程度である)。複数種の溶質が存在する場合、これはそれぞれ分解可能な種に対応する複数の沈降境界の形成を生じる。
【0074】
沈降境界を光学的に検出し、その移動または移行の速度を測定するためのいつくかの方法は、当技術分野において周知である(参考のためにColeら、(2008)Methods Cell Biol.,84:143~79頁を参照されたい)。一部の実施形態では参照およびサンプルセクターは、吸光度検出を使用してアッセイされる。この検出方法では具体的な波長での吸光度は、各セクター内の異なる半径位置でサンプルおよび参照セクターについて測定される。代替的に単一の半径位置での吸光度の経時変化は測定される。ベールの法則は、吸光度と溶質の消衰係数との間の数学的関係を提供する。
【0075】
一部の実施形態では参照物およびサンプルセクターは、干渉検出(例えば、レイリー干渉検出)を使用してアッセイされる。レイリー干渉検出法では、干渉光学系は、2個の平行スリットを有する。光の単一のコヒーレントビームは両方のウインドウを通り抜けるように分割され、次いで2本のビームは再混合される。これら2本の光波が混合される場合、それらは明暗交互のフリンジの干渉パターンを形成する。サンプルおよび参照サンプルが同一の屈折率を有する場合、生じる干渉フリンジは完全に直線状になる。溶質の濃度が増大すると、溶液の屈折率が増大し、それによりサンプル光ビームを遅らせ、垂直方向のフリンジのシフトを生じる。このフリンジシフトを測定することによって、サンプル中の溶質の濃度を測定できる。サンプルおよび参照物について絶対値を測定する吸光度検出とは異なり、干渉検出はサンプルと参照との間の相対差異を測定する。しかし干渉検出は、濃度に直接比例する統合されたピークを生じ、顕著には吸収しない種類のサンプルについて使用される。AUCでレイリー干渉光学を使用することについての参考のために、Furst(1997)Eur.Biophys.J.35:307~10頁を参照されたい。
【0076】
沈降境界が移動する速度の測定は、溶質粒子の多数の物理的特性を導くために使用される。境界移動の速度は、粒子の質量および形状(摩擦係数)に基づく沈降係数を決定する
。粒子の沈降係数sは、その速度と、遠心力場によってそれに適用される加速度との比を指す。沈降係数は、スベドベルグ単位、S(1スベドベルグ単位は10-13秒間に等しい)で表される。粒子または粒子の溶液の沈降係数は、その特性、例えば分子量(浮力について補正される)および溶媒の特性に依存する。
【0077】
超遠心分離法の際の経時的な溶質の濃度境界における変化は、ラム方程式を使用して決定できる(Schuck(2000)Biophys.J.,78:1606~19頁)。簡潔にはラム方程式は、ローターによって生じるセクター形の細胞および遠心力場を考慮して、沈降(溶質を濃縮する)および拡散(溶質を分散する)の競合する力への応答における経時的な溶質の濃度境界での変化を算出する。ラム方程式は:
式1:∂c/∂t=D[(∂^2c/∂r^2)+1/r(∂c/∂r)]-sω^2[r(∂c/∂r)+2c]
と表すことができ、
式中cは溶質濃度、Dは溶質拡散定数を表し、sは沈降係数を表し、ωはローターの角速度を表し、rは半径であり、tは時間である。
【0078】
生AUCデータをラム方程式の解にフィットさせることによって、沈降係数および濃度分布の変化などの溶液の特徴を決定できる。例えば沈降境界の変化の速度について実験的に決定された値は、沈降係数、分子量または境界を形成する溶質の濃度を導くためにラム方程式を使用してモデル化される。SEDFITなどのいくつかのプログラムが当技術分野において周知であり(Schuck(2000)Biophys.J.,78:1606~19頁)、ラム方程式をAUCデータにモデル化するために使用される。これらのプログラムは、複数の溶質または複数の沈降境界を含有する溶液にラム方程式を適用できるようにもする。
【0079】
溶質の特徴の決定のための好適なプログラムの一例は、SEDFITアルゴリズムである。一部の実施形態ではSEDFITアルゴリズムは、粒子種の混合物を含有する溶液由来のAUCデータを使用して微分係数分布値またはC(S)を算出するために使用される(参考のためにSchuck(2000)Biophys.J.,78:1606~19頁を参照されたい)。SEDFITアルゴリズムでは、予測される範囲にわたって沈降係数のグリッドが作成される。沈降境界は各沈降係数についてラム方程式への解を使用してシミュレートされ、一定の粒子形状および溶媒摩擦比を推定する。次いで実際のAUCデータは微分係数分布値またはC(S)を導くためにこれらのラム解にフィットされる。AUCデータを分析するために有用な多数の他のプログラムは、Cole and Hansen(1999)J.Biomol.Tech.10:163~76頁に見出される。
【0080】
本発明の一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、高度に精製され、適切に緩衝され、濃縮される。一部の実施形態ではウイルス粒子は、少なくとも約1x10vg/mL、2x10vg/mL、3x10vg/mL、4x10vg/mL、5x10vg/mL、6x10vg/mL、7x10vg/mL、8x10vg/mL、9x10vg/mL、1x10vg/mL、2x10vg/mL、3x10vg/mL、4x10vg/mL、5x10vg/mL、6x10vg/mL、7x10vg/mL、8x10vg/mL、9x10vg/mL、1x10vg/mL、2x10vg/mL、3x10vg/mL、4x10vg/mL、5x10vg/mL、6x10vg/mL、7x10vg/mL、8x10vg/mL、9x10vg/mL、1x1010vg/mL、2x1010vg/mL、3x1010vg/mL、4x1010vg/mL、5x1010vg/mL、6x1010vg/mL、7x1010vg/mL、8x1010vg/mL、9x1010vg/mL、1x1011vg/mL、2x1011vg/mL、3x1011vg/mL、4x1011vg/mL、5x1011vg/mL、6x1011vg/mL、7x1011vg/mL、8
x1011vg/mL、9x1011vg/mL、1x1012vg/mL、2x1012vg/mL、3x1012vg/mL、4x1012vg/mL、5x1012vg/mL、6x1012vg/mL、7x1012vg/mL、8x1012vg/mL、9x1012vg/mL、1x1013vg/mL、2x1013vg/mL、3x1013vg/mL、4x1013vg/mL、5x1013vg/mL、6x1013vg/mL、7x1013vg/mL、8x1013vg/mL、9x1013vg/mLのいずれかに濃縮される。一部の実施形態ではウイルス粒子は、約1x10vg/mLから約1x1013vg/mL、約1x10vg/mLから約1x1013vg/mL、約1x10vg/mLから約1x1013vg/mL、約1x1010vg/mLから約1x1013vg/mL、約1x1011vg/mLから約1x1013vg/mL、約1x1012vg/mLから約1x1013vg/mL、約1x10vg/mLから約1x1012vg/mL、約1x10vg/mLから約1x1012vg/mL、約1x10vg/mLから約1x1012vg/mL、約1x1010vg/mLから約1x1012vg/mL、約1x1011vg/mLから約1x1012vg/mL、約1x10vg/mLから約1x1011vg/mL、約1x10vg/mLから約1x1011vg/mL、約1x10vg/mLから約1x1011vg/mL、約1x1010vg/mLから約1x1011vg/mL、約1x10vg/mLから約1x1010vg/mL、約1x10vg/mLから約1x1010vg/mL、約1x10vg/mLから約1x1010vg/mL、約1x10vg/mLから約1x10vg/mL、約1x10vg/mLから約1x10vg/mLまたは約1x10vg/mLから約1x10vg/mLに濃縮される。
【0081】
一部の実施形態ではウイルス粒子は、好適な宿主細胞において生成され、精製される。一部の実施形態ではウイルス粒子は、親和性クロマトグラフィーによって精製される。ウイルス粒子(例えば、AAV粒子、アデノウイルス粒子、レンチウイルス粒子、HSV粒子)を精製するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、クロマトグラフィー媒体に固定したウイルスカプシドタンパク質の抗体またはウイルスカプシドタンパク質の結合リガンドの使用による。ウイルスカプシド親和性クロマトグラフィーの例は、これらに限らないがAAVのためのAVB親和性クロマトグラフィー(GE Healthcare)、アデノウイルスおよびHSVのための金属親和性クロマトグラフィー、ならびにAAVおよびレンチウイルスのためのヘパリン親和性クロマトグラフィーなどを含む。アデノウイルス粒子を精製するための方法は、例えばBo,Hら、(2014)Eur.J.Pharm.Sci.67C:119~125頁に見出される。レンチウイルス粒子を精製するための方法は、例えばSegura MM,ら、(2013)Expert
Opin Biol Ther.13(7):987~1011頁に見出される。HSV粒子を精製するための方法は例えばGoins,WFら、(2014)Herpes Simplex Virus Methods in Molecular Biology 1144:63~79頁に見出される。
【0082】
一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、医薬組成物中に製剤化される。関連する実施形態では医薬組成物は、生理学的pHおよび/または生理学的浸透圧を有する緩衝剤を含有する。医薬製剤の非限定的例はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)であり、一部の実施形態ではPBSは生理学的浸透圧(例えば、約pH7.2および約300mOsm/L)である。一部の実施形態ではサンプル調整は、260nmでの光学密度測定によって0.1から1.0の標的濃度に行われる。一部の例ではこの濃度は、再現性があり一致したAUCデータを生じる。一部の例ではウイルス粒子の濃度は、PBSでの直接希釈によってまたはさらなる濃縮によって;例えば遠心フィルターデバイスを使用することによってのいずれかで調整される。
【0083】
本発明の一部の実施形態では、沈降速度分析超遠心分離法(SV-AUC)分析は、生
物学的に適切な溶液条件下でその天然状態にあるサンプルを特徴付けることができる分析用超遠心機を使用して実施される(例えば、ProteomeLab(商標)XL-I(Beckman Coulter))。ProteomeLab(商標)XL-1を使用する場合、サンプルは2個のセクター速度セルのサンプルセクターにロードされ、ビヒクル対照(例えば、組換えウイルスを含まないPBS)は対応する参照セクターにロードされる。サンプルは4穴ローターに置かれ、約20℃の温度まで装置内で平衡化され、高真空は約1時間維持される。例示的実施形態では沈降速度遠心分離は、約20,000rpm、約20℃および約0.003cm半径工程設定で、遅延なし、反復なしで実施される。下に記載のとおり、さまざまなパラメーターが遠心分離のために使用できる。一部の実施形態では吸光度(260nm)および/または干渉光学(例えば、レイリー干渉光学)は、最小沈降構成成分が光学ウインドウを透明化するまで半径方向の濃度を時間の関数として同時に記録するために使用される。一部の実施形態では半径方向の濃度は、最低密度を有する沈降種がセクターを透明化するまで記録される。一部の実施形態では沈降は、最低密度を有する組換えウイルス粒子が超遠心機のセクターの底に沈降するまでモニターされる。セクターは、超遠心機の一部;例えば超遠心速度セルである。一部の実施形態ではセクターは、サンプルが検出される超遠心機の一部である場合がある。一部の実施形態では超遠心分離法は、超遠心速度セルを含む超遠心機を利用する。一部の実施形態では、組換えウイルス粒子が超遠心速度セルの底に沈降するまでモニターされる。一部の実施形態では沈降は、最低密度を有する組換えウイルス粒子が沈降し、光学ウインドウを透明化するまでモニターされる。一部の実施形態では半径方向の濃度は、少なくとも約0.5時間、0.75時間、1.0時間、1.5時間、2.0時間、3.0時間、4.0時間または5.0時間のいずれかについて記録される。一部の実施形態では半径方向の濃度は、約0.5時間から約0.75時間、約0.75時間から約1.0時間、約1.0時間から約1.5時間、約1.5時間から約2.0時間、約2時間から約3時間、約3時間から約4時間、約4時間から約5時間のいずれかの間について記録される。一部の実施形態では半径方向の濃度は、約1.2時間について記録される。実行条件を最適化することは、例えば、沈降する種がすべてセクターの底に完全に沈降するまで温度を20℃に一定に保ち、18,000rpmから20,000rpmの速度で実行を継続することを含む。下に記載のとおり、他の温度および速度も使用できる。
【0084】
完全カプシド百分率は、SEDFIT連続サイズC(S)分布モデルを使用する各検出方法からの複数のスキャン(例えば、75)を分析することによって決定される。二次(2nd)微分正則化はフィッティングに適用される。一部の実施形態では、F統計の信頼レベルは約0.68である。一部の実施形態ではF統計の信頼レベルは約0.68、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95または0.99のいずれかより高い。一部の実施形態ではF統計の信頼レベルは、約0.68から約0.90である。一部の実施形態ではF統計の信頼レベルは、約0.68から約0.99である。一部の実施形態では以下のC(S)パラメーターは一定に保たれ:分解能は約200Sから約5000Sであり、Sminは約1Sから約100Sであり、Smaxは約100Sから約5000Sであり、摩擦比は約1.0であり、または遠心分離ソフトウェアによって決定された値に移行させる。一部の実施形態では分解能は、約200S、300S、400S、500S、600S、700S、800S、900Sまたは1000Sのいずれかである。一部の実施形態では分解能は、約200Sから約1000S、200Sから約900S、200Sから約800S、200Sから約700S、200Sから約600S、200Sから約500S、200Sから約400S、200Sから約300S、300Sから約1000S、300Sから約900S、300Sから約800S、300Sから約700S、300Sから約600S、300Sから約500S、300Sから約400S、400Sから約1000S、400Sから約900S、400Sから約800S、400Sから約700S、400Sから約600S、400Sから約500S、500Sから約1000S、500Sから約900S、500Sから約800S、500Sから約700S、
500Sから約600S、600Sから約1000S、600Sから約900S、600Sから約800S、600Sから約700S、700Sから約1000S、700Sから約900S、700Sから約800S、800Sから約1000S、800Sから約900Sまたは900Sから約1000Sのいずれかの間である。一部の実施形態では分解能は、約200Sである。一部の実施形態ではSmaxは、約100S、200S、300S、400S、500S、600S、700S、800S、900Sまたは1000Sのいずれかである。一部の実施形態ではSmaxは、約100Sから約1000S、100Sから約900S、100Sから約800S、100Sから約700S、100Sから約600S、100Sから約500S、100Sから約400S、100Sから約300S、100Sから約200S、200Sから約1000S、200Sから約900S、200Sから約800S、200Sから約700S、200Sから約600S、200Sから約500S、200Sから約400S、200Sから約300S、300Sから約1000S、300Sから約900S、300Sから約800S、300Sから約700S、300Sから約600S、300Sから約500S、300Sから約400S、400Sから約1000S、400Sから約900S、400Sから約800S、400Sから約700S、400Sから約600S、400Sから約500S、500Sから約1000S、500Sから約900S、500Sから約800S、500Sから約700S、500Sから約600S、600Sから約1000S、600Sから約900S、600Sから約800S、600Sから約700S、700Sから約1000S、700Sから約900S、700Sから約800S、800Sから約1000S、800Sから約900Sまたは900Sから約1000Sのいずれかの間である。一部の実施形態ではSmaxは約200Sから約5000Sである。一部の実施形態ではSmaxは約200Sである。一部の実施形態では摩擦比は、遠心分離ソフトウェアによって決定された値に移行させる。一部の実施形態では摩擦比は約1.0である。一部の実施形態では半径方向不変(RI)および時不変(TI)ノイズサブトラクションが適用される。一部の実施形態ではメニスカス位置を移行させ、ソフトウェアが最適な位置を選ぶようにされている。一部の実施形態では摩擦比を移行させ、ソフトウェアが最適な位置を選ぶようにされている。モデルはデータをラム方程式にフィットし、生じたサイズ分布はフリンジの単位またはOD260単位で濃度に比例する各ピーク下面積を有するクロマトグラムのような「沈降係数の分布」である。(スベドベルグ単位での)沈降係数および(OD単位での)相対濃度は、分布における各構成成分について決定される。一部の実施形態では複数回のAUC実行は独立アッセイであり、各分析は以下の帰属について結果の品質を確実にするためにモニターされる:適合度(rmsd)、各ピークについてのOD260nm/フリンジにおける干渉シグナルの比(A260/IF比)、実行間での各種についての沈降係数の一致およびスキャンの全体的な品質。
【0085】
本発明の一部の実施形態では消衰係数は、吸光度データからモル濃度およびインタクトなベクターピークの実際の百分率値を算出するために使用される。空のカプシド(Ε260カプシド=3.72e6)およびインタクトなベクター(Ε260/ベクター=3.00e7)の両方についてのモル吸光度消衰係数は、公開されている式(Sommerら、(2003)Mol Ther.,7:122~8頁)に基づいて算出できる。消衰係数は、空のカプシドおよびインタクトなベクターピークについて利用可能である。C(S)値は、Schuck(2000)Biophys.J.,78:1606~19頁に記載されるSEDFITアルゴリズムを使用して決定できる。インタクトなベクターおよび空のカプシドの両方のモル濃度は、ベールの法則を使用して算出され、完全カプシドの百分率はこれらの値から算出される。一部の実施形態では値は、完全カプシドの百分率として報告される。
【0086】
一部の実施形態では、組換えウイルス粒子(例えば、未知のサイズおよび配列の断片化ゲノムを有するウイルス粒子)の具体的な種の消衰係数を実験的に決定することは不可能
である。S値とゲノムサイズとの関係は、周知のヌクレオチドサイズを有するカプシド化されたウイルスゲノムを含む組換えウイルスベクター調製物を分析することによって確立され、対応するS値は本明細書に記載のとおり決定される。算出されたS値は、未知の分子量またはゲノムサイズの組換えウイルス種が未知の種の分子量を決定するために比較される標準曲線を生成するためにプロットされる。
【0087】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の調製物を特徴付ける方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程(例えば、1回またはそれ以上)、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、c)C(S)分布における各ピーク下面積を積分して、各ピークの相対濃度を決定する工程であって、各ピークが組換えウイルス粒子の種に相当する工程を含む、方法を提供する。一部の実施形態では本発明の方法により同定される組換えウイルス粒子の種は、これらに限らないが;インタクトな組換えウイルスゲノムを含む完全組換えウイルス粒子、空の組換えウイルスカプシド粒子、および変種の組換えウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒を含む。一部の実施形態では変種のゲノムは、インタクトな組換えウイルスゲノムより小さい(例えば、切断型ゲノム)。一部の実施形態では変種のゲノムは、インタクトな組換えウイルスゲノムより大きい(例えば、凝集体、組換え体など)。一部の実施形態では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子のベクターゲノムの完全性を評価するための方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程(例えば、1回またはそれ以上)、b)微分沈降係数分布値C(s)をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、c)S値に対応するプロット上のピークの存在によって調製物中の組換えウイルス粒子の種を同定する工程であって、組換えウイルス粒子の具体的な種のゲノムサイズが種のS値を、さまざまな周知のサイズを有するカプシド化されたウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子のS値によって作成された標準曲線と比較することによって算出される工程を含む、組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子のベクターゲノムの完全性を評価するための方法を提供する。一部の実施形態では方法は、C(S)分布における各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程をさらに含む。一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降は、時間間隔で1回モニターされる。一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降は、時間間隔で1回より多くモニターされる。
【0088】
本発明の一部の実施形態では組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の沈降は、約260nmでの光学密度または吸光度を測定することによってモニターされる。吸光度を測定する手段は、当技術分野において周知である。一部の実施形態ではAUCのために使用される超遠心機は、吸光度を測定する手段を備えている。他の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降は、干渉によってモニターされる。一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降は、レイリー干渉によってモニターされる。干渉を測定する手段は、当技術分野において周知である(Furst(1997)Eur.Biophys.J.35:307~10頁)。一部の実施形態ではAUCのために使用される超遠心機は、干渉を測定する手段を備えている。一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降は、吸光度および干渉の両方によってモニターされる。一部の実施形態では吸光度および/または干渉は、参照標準を使用して測定される。一部の実施形態では参照標準は、組換えウイルスが存在しないことを除いて組換えウイルス調製物の溶液と一致している。例えば組換えウイルス調製物は、リン酸緩衝生理食塩水などの緩衝液中に組換えウイルスを含む。この例では参照標準は、組換えウイルス粒子を含まないリン酸緩衝生理食塩水である。
【0089】
本発明の一部の実施形態ではウイルス粒子の調製物は、医薬製剤中にある。そのような製剤は、当技術分野において十分に周知である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第15版,1035~1038頁および1570~1580頁を参照されたい)。そのような医薬製剤は、水および、石油、動物、ピーナッツ油、ダイズ油、ミネラルオイルなどの植物または合成由来のものを含む油などの滅菌液体であってよい。生理食塩水およびブドウ糖水溶液、ポリエチレングリコール(PEG)およびグリセリン溶液も液体担体として、特に注射可能な溶液に用いることができる。医薬製剤は、追加の成分、例えば保存剤、緩衝液、等張化剤、抗酸化物質および安定化剤、非イオン性湿潤剤または清澄剤、増粘剤などをさらに含む場合がある。本発明の一部の実施形態では医薬製剤は、リン酸緩衝生理食塩水を含む。
【0090】
本発明の一部の実施形態では超遠心分離法の際のウイルス粒子の沈降速度は、超遠心分離法の際に継続的にウイルス粒子の沈降をモニターすることによって決定される。さまざまな種類のウイルス粒子のためにAUCのパラメーターを最適化することは当業者の管理の範囲内である。理論に束縛されることを意図せず、AAVおよびアデノウイルス粒子の両方の分析を可能にするAUC設定の範囲は、HSVおよびレンチウイルス粒子のサイズがAAVおよびアデノウイルス粒子のものの間であることから、レンチウイルスおよびHSVを含む他のウイルス粒子の分析も可能にするはずである。一部の実施形態ではrAAV、rHSV、レンチウイルス、および/またはrAd粒子についてのデータ取得は、約3,000から約20,000rpmの間のAUC速度で実施される。一部の実施形態ではrAAV、HSV、レンチウイルスおよび/またはアデノウイルス粒子についてのデータ分析は、約1SのSminおよび約1000SのSmaxで実施される。一部の実施形態ではrAAV、rHSV、レンチウイルスおよび/またはrAd粒子についてのデータ分析は、約200Sから約1,000Sの分解能で実施される。一部の実施形態では分解能は、約200S、300S、400S、500S、600S、700S、800S、900Sまたは1000Sのいずれかである。一部の実施形態では分解能は、約200Sから約1000S、200Sから約900S、200Sから約800S、200Sから約700S、200Sから約600S、200Sから約500S、200Sから約400S、200Sから約300S、300Sから約1000S、300Sから約900S、300Sから約800S、300Sから約700S、300Sから約600S、300Sから約500S、300Sから約400S、400Sから約1000S、400Sから約900S、400Sから約800S、400Sから約700S、400Sから約600S、400Sから約500S、500Sから約1000S、500Sから約900S、500Sから約800S、500Sから約700S、500Sから約600S、600Sから約1000S、600Sから約900S、600Sから約800S、600Sから約700S、700Sから約1000S、700Sから約900S、700Sから約800S、800Sから約1000S、800Sから約900Sまたは900Sから約1000Sのいずれかの間である。一部の実施形態では分解能は、約200Sである。rAAV、rHSV、レンチウイルスおよび/またはrAd粒子についてのデータ分析は、約100S、200S、300S、400S、500S、600S、700S、800S、900Sまたは1000SいずれかのSmaxで実施される。一部の実施形態ではSmaxは、約100Sから約1000S、100Sから約900S、100Sから約800S、100Sから約700S、100Sから約600S、100Sから約500S、100Sから約400S、100Sから約300S、100Sから約200S、200Sから約1000S、200Sから約900S、200Sから約800S、200Sから約700S、200Sから約600S、200Sから約500S、200Sから約400S、200Sから約300S、300Sから約1000S、300Sから約900S、300Sから約800S、300Sから約700S、300Sから約600S、300Sから約500S、300Sから約400S、400Sから約1000S、400Sから約900S、400Sから約800S、400Sから約700S、400Sから約600S、400Sから約500S、
500Sから約1000S、500Sから約900S、500Sから約800S、500Sから約700S、500Sから約600S、600Sから約1000S、600Sから約900S、600Sから約800S、600Sから約700S、700Sから約1000S、700Sから約900S、700Sから約800S、800Sから約1000S、800Sから約900Sまたは900Sから約1000Sのいずれかの間である。一部の実施形態ではSmaxは、約200Sから約5000Sである。一部の実施形態ではSmaxは約200Sである。一部の実施形態では、半径方向不変(RI)および時不変(TI)ノイズサブトラクションが適用される。一部の実施形態ではメニスカス位置を移行させ、ソフトウェアが最適な位置を選ぶようにされている。一部の実施形態では摩擦比を移行させ、ソフトウェアが最適な位置を選ぶようにされている。一部の実施形態ではrAAVおよび/またはアデノウイルス粒子についてのデータ分析は、1で一定に保たれる。一部の実施形態ではrAAV、HSV、レンチウイルス、および/またはアデノウイルス粒子についてのデータ分析は、非線形回帰を使用して最適化された値でFITコマンドを使用して移行される。
【0091】
組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)に関して、一部の実施形態では超遠心分離法の際の組換えウイルスの沈降速度は、約15秒間、30秒間、45秒間、1分間(60秒間)、2分間、3分間、4分間、5分間、6分間、7分間、8分間、9分間、10分間、15分間、20分間、25分間を超えるごとに1回組換えウイルス粒子の沈降をモニター(例えば、スキャンニング)することによって決定される。スキャンは、光学系が可能な限り迅速に遅延無く継続的に取得される。干渉スキャンは迅速であり、1回のスキャンは約10~15秒間で完了し、一方で吸光度スキャンは約60秒間必要である。二重検出が使用される場合、両方についてのスキャン取得速度は吸光度系によって決定される。本発明の一部の実施形態では、超遠心分離法の際に約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100を超えるスキャンが組換えウイルス粒子の沈降をモニターするために使用される。一部の実施形態では最少30スキャンが分析のために必要であり、スキャンは沈降工程が完了するまでに回収される。一部の実施形態では沈降工程は、典型的には40から75スキャンの間で記載される。一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降速度は、約75スキャンに基づいて決定される。一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降速度は、約55スキャンから約75スキャンに基づいて決定される。一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降速度は、約55スキャンから約60スキャンに基づいて決定される。一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降速度は、約60スキャンから約75スキャンに基づいて決定される。一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降速度は、約60スキャンから約70スキャンに基づいて決定される。一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降速度は、複数回の超遠心分離法(実行)に基づいて決定される。一部の実施形態では組換えウイルス粒子の沈降速度は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回のいずれかまたはそれを超える超遠心分離法の実行に基づいて決定される。一部の実施形態では沈降速度は、SEDFITアルゴリズムを使用してC(S)値を決定するために使用される。一部の実施形態では二次微分正則化は、約0.68のF統計の信頼レベルを有するフィッティングレベルに適用される。一部の実施形態では以下のC(S)パラメーターは一定に保たれ:分解能は100Sから約200Sであり、Sminは約1であり、Smaxは約200Sから300Sであり、摩擦比は約1.0から1.2Sである。一部の実施形態では半径方向不変(RI)および時不変(TI)ノイズサブトラクションが適用される。
【0092】
本発明の一部の実施形態では、約5,000rpm;10,000rpm;15,000rpm;20,000rpm;25,000rpm;30,000rpm;35,000rpm;40,000rpm;45,000rpm;または50,000rpmのいずれかを超えて組換えウイルス粒子の調製物を超遠心分離することによる組換えウイルス粒
子の調製物中の組換えウイルス粒子(例えばrAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の境界沈降速度。一部の実施形態では超遠心分離法は、約5,000rpmから約50,000rpm;約10,000rpmから約50,000rpm;約15,000rpmから約50,000rpm;約20,000rpmから約50,000rpm;約25,000rpmから約50,000rpm;約30,000rpmから約50,000rpm;約35,000rpmから約50,000rpm;約40,000rpmから約50,000rpm;約45,000rpmから約50,000rpm;約5,000rpmから約45,000rpm;約10,000rpmから約45,000rpm;約15,000rpmから約45,000rpm;約20,000rpmから約45,000rpm;約25,000rpmから約45,000rpm;約30,000rpmから約45,000rpm;約40,000rpmから約45,000rpm;約5,000rpmから約40,000rpm;約10,000rpmから約40,000rpm;約15,000rpmから約40,000rpm;約20,000rpmから約40,000rpm;約25,000rpmから約40,000rpm;約30,000rpmから約40,000rpm;約35,000rpmから約40,000rpm;約5,000rpmから約35,000rpm;約10,000rpmから約35,000rpm;約15,000rpmから約35,000rpm;約20,000rpmから約35,000rpm;約25,000rpmから約35,000rpm;約30,000rpmから約35,000rpm;約5,000rpmから約30,000rpm;約10,000rpmから約30,000rpm;約15,000rpmから約30,000rpm;約20,000rpmから約30,000rpm;約25,000rpmから約30,000rpm;約5,000rpmから約25,000rpm;約10,000rpmから約25,000rpm;約20,000rpmから約25,000rpm;約5,000rpmから約20,000rpm;約10,000rpmから約20,000rpm;約15,000rpmから約20,000rpm;約5,000rpmから約15,000rpm;約10,000rpmから約15,000rpmまたは約5,000rpmから約10,000rpmの間のいずれかで実行される。本発明の一部の実施形態では、組換えウイルス粒子の調製物を約20,000rpmで超遠心分離することによる組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子の境界沈降速度。本発明の一部の実施形態では、組換えウイルス粒子の調製物を約15,000rpmから約20,000rpmで超遠心分離することによる組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子の境界沈降速度。
【0093】
本発明の一部の実施形態では約4℃、10℃、15℃、20℃、25℃もしくは30℃またはそれ以上での組換えウイルス粒子の調製物を超遠心分離することによる組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の調製物中の組換えウイルス粒子の境界沈降速度。一部の実施形態では超遠心分離法は、約4℃から約30℃、約4℃から約25℃、約4℃から約20℃、約4℃から約15℃、約4℃から約10℃、約10℃から約30℃、約10℃から約25℃、約10℃から約20℃、約10℃から約15℃、約15℃から約30℃、約15℃から約25℃、約15℃から約20℃、約20℃から約30℃または約20℃から約25℃のいずれかの間で実行される。一部の実施形態では、組換えウイルス粒子の調製物を約20℃で超遠心分離することによる組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子の境界沈降速度。一部の実施形態では、組換えウイルス粒子の調製物を約15℃から約20℃で超遠心分離することによる組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子の境界沈降速度。
【0094】
本明細書で開示のとおり多数の種類の組換えウイルス粒子は、本開示の方法によって分析される(例えば、AAV、アデノウイルス、レンチウイルスおよび/またはHSV粒子)。好適な超遠心分離法条件、分析アルゴリズムおよび他のパラメーターは、当技術分野において周知の方法を通じて実験的に決定できる。AAV、アデノウイルス、レンチウイ
ルスおよびHSV粒子についての例示的パラメーターは、具体的なパラメーター選択肢の選択についての指針と共に非限定的に下の表1に提供される。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の調製物中の空のカプシドの存在を決定する方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程(例えば、1回またはそれ以上)、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程であって、空のカプシド粒子のS値に対応するピークの存在は、空のカプシド粒子の存在を示す工程を含む、組換えウイルス粒子の調製物中の空のカプシドの存在を決定する方法を提供する。一部の実施形態では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物中の空のカプシド相対量を測定する方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程(例えば、1回またはそれ以上)、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、c)C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程、d)空のカプシド粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量を、インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量と比較する工程を含む、方法を提供する。一部の実施形態では空のカプシド粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量は、C(S)対Sのプロットでのすべてのピークを積分することによる調製物中のすべての組換えウイルス粒子の全量と比較される。
【0098】
一部の態様では本発明は、組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の調製物中の組換えウイルス粒子変種の存在を決定する方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程(例えば、1回またはそれ以上)、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程であって、インタクトな完全組換えウイルスゲノムを含む組換えウイルスカプシド粒子のS値とは異なるS値に対応するピークの存在が組換えウイルス粒子変種の存在を示す工程を含む、組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子変種の存在を決定する方法を提供する。一部の実施形態では本発明は、組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子変種の相対量を測定する方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程(例えば、1回またはそれ以上)、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程、c)C(S)分布中の各ピーク下面積を積分して、組換えウイルス粒子の各種の相対濃度を決定する工程、d)空のカプシド粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量を、インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子に対応するS値を有する組換えウイルス粒子の量と比較する工程を含む、組換えウイルス粒子の調製物中の組換えウイルス粒子変種の相対量を測定する方法を提供する。一部の実施形態では、インタクトな完全組換えウイルスゲノムを含む組換えウイルスカプシド粒子のS値とは異なるS値を有する組換えウイルス粒子の量は、C(S)対Sのプロットでの全てのピークを積分することによって調製物中のすべての組換えウイルス粒子の全量と比較される。一部の実施形態では組換えウイルス粒子変種は、全長インタクトなウイルスゲノムより小さい(例えば、切断型)または大きい組換えウイルスゲノムを含む。他のウイルス性カプシド化DNA不純物も検出される。
【0099】
一部の実施形態では本発明は、組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の調製物の精製の際に空のカプシドおよび/または変種のゲノムを含む組換えウイルス粒子の除去をモニターする方法であって、精製プロセスにおける1つまたはそれ以上の工程に続いて、調製物から組換えウイルス粒子サンプルを除去すること、および本明細書に記載のAUCを使用して空のカプシドの相対量についてサンプルを分析することを含む方法を提供する。空のカプシドおよび/または変種のゲノムを含む組換えウイルス粒子の完全カプシドに対する相対量における減少は、組換えウイルス粒子の調製物からの空のカプシドの除去を示す。
【0100】
一部の実施形態では本発明は、組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の調製物中の組換えウイルス粒子の不均一性を決定する方法であって、a)調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供する工程であって、組換えウイルス粒子の沈降が時間間隔でモニターされる工程(例えば、1回またはそれ以上)、b)微分沈降係数分布値(C(s))をスベドベルグ単位での沈降係数(S)に対してプロットする工程であって、インタクトなウイルスゲノムを含むカプシドに相当するピークに加えたピークの存在が調製物中の組換えウイルス粒子の不均一性を示す、工程を含む、方法を提供する。一部の実施形態では本発明の方法によって同定された組換えウイルス粒子の種は、これらに限らないがインタクトな組換えウイルスゲノムを含む完全組換えウイルス粒子、空の組換えウイルスカプシド粒子および変種の組換えウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子を含む。一部の実施形態では変種のゲノムは、インタクトな組換えウイルスゲノムより小さい(例えば、切断型ゲノム)。一部の実施形態では変種のゲノムは、インタクトな組換えウイルスゲノムより大きい(例えば、凝集体、組換え体など)。一部の実施形態では変種のゲノムは、インタクトな組換えウイルスゲノムより小さいまたは大きいゲノムを含む。
【0101】
一部の実施形態では本発明は、組換えウイルス粒子(例えば、rAAV、rAd、レンチウイルスまたはrHSV粒子)の調製物の精製の際に組換えウイルス粒子の不均一性をモニターする方法であって、精製プロセスにおける1つまたはそれ以上の工程に続いて、調製物から組換えウイルス粒子サンプルを除去すること、ならびに本明細書に記載のAUCを使用して、インタクトな組換えウイルスゲノムを含む完全カプシド、空のカプシドおよび/または変種のゲノムを含む組換えウイルス粒子の相対量を決定することを含み、インタクトなウイルスゲノムを含む組換えウイルス粒子の相対量における増大が組換えウイルス粒子の調製物中の全ウイルス粒子の不均一性の増大を示す方法を提供する。
【0102】
上に記載の実施形態では組換えウイルス粒子は、1つまたはそれ以上の精製工程を使用して精製された。精製工程の例は、これらに限らないが平衡遠心分離、アニオン交換ろ過、接線流ろ過(TFF)、アパタイトクロマトグラフィー、ヘルパーウイルスの熱不活性化、疎水性相互作用クロマトグラフィー、免疫親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、ナノ濾過、カチオン交換クロマトグラフィーおよびアニオン交換クロマトグラフィーを含む。
【0103】
上に記載の実施形態では組換えウイルス粒子は、自己相補性AAV(scAAV)ゲノムを含む。一部の実施形態では組換えAAVゲノムは、第1の異種性ポリヌクレオチド配列(例えば、治療用導入遺伝子コード鎖)および第2の異種性ポリヌクレオチド配列(例えば、治療用導入遺伝子の非コードまたはアンチセンス鎖)を含み、第1の異種性ポリヌクレオチド配列は第2のポリヌクレオチド配列とその長さの大部分または全体に沿って鎖内塩基対を形成できる。一部の実施形態では第1の異種性ポリヌクレオチド配列と第2の異種性ポリヌクレオチド配列とは、鎖内塩基対合を促進する配列によって連結される;例えばヘアピンDNA構造。ヘアピン構造は、例えばsiRNA分子において当技術分野において周知である。一部の実施形態では第1の異種性ポリヌクレオチド配列と第2の異種性ポリヌクレオチド配列とは、変異導入ITRによって連結される。一部の実施形態ではscAAVウイルス粒子は、scAAVゲノムの単量体形態を含む。一部の実施形態ではscAAVウイルス粒子は、scAAVゲノムの二量体形態を含む。一部の実施形態では本明細書に記載のAUCは、scAAVゲノムの単量体形態を含むrAAV粒子の存在を検出するために使用される。一部の実施形態では本明細書に記載のAUCは、scAAVゲノムの二量体形態を含むrAAV粒子の存在を検出するために使用される。一部の実施形態ではscAAVゲノムのカプシドへのパッケージングは本明細書に記載のAUCによってモニターされる。
【0104】
上に記載の実施形態ではrAAV粒子は、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV4カプシド、AAV5カプシド、AAV6カプシド(例えば、野生型AAV6カプシドもしくはShH10などの変種AAV6カプシド、U.S.PG Pub.2012/0164106に記載のとおり)、AAV7カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8カプシド、AAVrh8R、AAV9カプシド(例えば、野生型AAV9カプシド、もしくは修飾AAV9カプシド、U.S.PG Pub.2013/0323226に記載のとおり)、AAV10カプシド、AAVrh10カプシド、AAV11カプシド、AAV12カプシド、チロシンカプシド変異体、ヘパリン結合カプシド変異体、AAV2R471Aカプシド、AAVAAV2/2-7m8カプシド、AAV DJカプシド(例えば、AAV-DJ/8カプシド、AAV-DJ/9カプシドもしくはU.S.PG Pub.2012/0066783に記載の任意の他のカプシド)、AAV2 N587Aカプシド、AAV2 E548Aカプシド、AAV2 N708Aカプシド、AAV V708Kカプシド、ヤギAAVカプシド、AAV1/AAV2キメラカプシド、ウシAAVカプシド、マウスAAVカプシドまたは米国特許第8,283,151号もしくは国際公開第WO2003/042397号に記載のAAVカプシドを含む。上に記
載の実施形態ではrAAV粒子は、少なくとも1つのAAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAVrh8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、AAVrh10 ITR、AAV11 ITR、AAV12 ITR、AAV DJ ITR、ヤギAAV ITR、ウシAAV ITRまたはマウスAAV ITRを含む。一部の実施形態ではrAAV粒子は、1つのAAV血清型由来のITRおよび別の血清型由来のAAVカプシドを含む。例えばrAAV粒子は、AAV9カプシド中にカプシド化された少なくとも1つのAAV2 ITRを端に有する治療用導入遺伝子を含むことができる。そのような組合せは、偽型化rAAV粒子と称される場合がある。
【0105】
IV.ウイルス粒子
本明細書に開示の方法は、使用を、とりわけ種々のウイルス粒子中で目的の種を特徴付けることにおいて見出す(例えば、切断型ゲノムを含むウイルス粒子および/またはDNA不純物を含むウイルス粒子と比較する全ゲノムを含むウイルス粒子)。
【0106】
一部の実施形態ではウイルス粒子は、1つまたは2つのITRを端に有する導入遺伝子を含む核酸を含む組換えAAV粒子である。核酸は、AAV粒子中にカプシド化されている。AAV粒子はまた、カプシドタンパク質も含む。一部の実施形態では核酸は、転写開始および終結配列を含む制御配列、構成成分に転写方向で作動可能に連結された目的のタンパク質コード配列(複数可)(例えば、治療用導入遺伝子)を含み、それにより発現カセットを形成する。発現カセットは、少なくとも1つの機能性AAV ITR配列に5’および3’末端で隣接している。「機能性AAV ITR配列」によって、ITR配列がAAVビリオンのレスキュー、複製およびパッケージングを目的として機能することが意味される。その全体を参照により本明細書に組み入れるDavidsonら、PNAS,2000,97(7)3428~32頁;Passiniら、J.Virol.,2003,77(12):7034~40頁およびPechanら、Gene Ther.,2009,16:10~16頁を参照されたい。本発明のいくつかの態様を実行するために組換えベクターは、rAAVによる感染のためのカプシド化および物理的構造に不可欠なAAVの配列の少なくとも全体を含む。本発明のベクターにおける使用のためのAAV ITRは、野生型ヌクレオチド配列を有する必要はなく(例えばKotin,Hum.Gene Ther.,1994,5:793~801頁に記載のとおり)、ヌクレオチドの挿入、欠失もしくは置換によって変更することができ、AAV ITRはいくつかのAAV血清型のいずれにも由来できる。AAVの40を超える血清型が現在周知であり、新たな血清および既存の血清型の変種は同定され続けている。Gaoら、PNAS,2002,99(18):11854~6頁;Gaoら、PNAS,2003,100(10):6081~6頁およびBossisら、J.Virol.,2003,77(12):6799~810頁を参照されたい。任意のAAV血清型の使用は、本発明の範囲内と考えられる。一部の実施形態ではrAAVベクターは、非限定的に、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh.10、AAV11、AAV12、チロシンカプシド変異体、ヘパリン結合カプシド変異体、AAV2R471Aカプシド、AAVAAV2/2-7m8カプシド、AAV DJカプシド、AAV2 N587Aカプシド、AAV2 E548Aカプシド、AAV2 N708Aカプシド、AAV V708Kカプシド、ヤギAAVカプシド、AAV1/AAV2キメラカプシド、ウシAAVカプシドまたはマウスAAVカプシドなどを含むAAV血清型由来のベクターである。一部の実施形態ではAAV中の核酸は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11、AAV12などのITRを含む。さらなる実施形態ではrAAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh.10、AAV11、AAV12などのカプシドタンパク質を含む。さらなる実施形態では
rAAV粒子は、Clades A-F由来のAAV血清型のカプシドタンパク質を含む(Gaoら、J.Virol.2004,78(12):6381頁)。
【0107】
さまざまなAAV血清型は、具体的な標的細胞の形質導入を最適化するためまたは具体的な標的組織(例えば、疾患組織)内の特定の細胞型を標的化するために使用される。rAAV粒子は、同じ血清型または混合血清型のウイルスタンパク質およびウイルス核酸を含むことができる。例えばrAAV粒子は、AAV9カプシドタンパク質および少なくとも1つのAAV2 ITRを含むことができ、またはAAV2カプシドタンパク質および少なくとも1つのAAV9 ITRを含むことができる。さらに別の例ではrAAV粒子は、AAV9およびAAV2の両方由来のカプシドタンパク質を含むことができ、少なくとも1つのAAV2 ITRをさらに含む。rAAV粒子の産生のためのAAV血清型の任意の組合せは、各組合せが本明細書で明確に述べられた場合と同様に本明細書で提供される。
【0108】
一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAV1 ITRならびにAAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11および/またはAAV12のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAV2 ITRならびにAAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11および/またはAAV12のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAV3 ITRならびにAAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11および/またはAAV12のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAV4 ITRならびにAAV1、AAV2、AAV3、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11および/またはAAV12のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAV5 ITRならびにAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11および/またはAAV12のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAV6 ITRならびにAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11および/またはAAV12のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAV7 ITRならびにAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11および/またはAAV12のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAV8 ITRならびにAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11および/またはAAV12のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAV9 ITRならびにAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11および/またはAAV12のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAVrh8 ITRならびにAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAV9、AAVrh10、AAV11および/またはAAV12のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAVrh10 ITRならびにAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV11および/またはAAV12のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAV11 ITRならびにAAV1、AAV2、
AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAV9、AAVrh10および/またはAAV12のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態ではAAVは、少なくとも1つのAAV12 ITRならびにAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV
rh8、AAV9、AAVrh10、および/またはAAV11のいずれか由来のカプシドタンパク質を含む。
【0109】
自己相補性AAVウイルスゲノム
一部の態様では本発明は、組換え自己相補的ゲノムを含むウイルス粒子を提供する。自己相補的ゲノムを有するAAVウイルス粒子および自己相補的AAVゲノムの使用方法は、それぞれその全体を参照によって本明細書に組み入れる米国特許第6,596,535号、7,125,717号、第7,765,583号、第7,785,888号、第7,790,154号、第7,846,729号、第8,093,054号および第8,361,457号ならびにWang Z.ら、(2003)Gene Ther 10:2105~2111頁に記載されている。自己相補的ゲノムを含むrAAVは、その部分的相補的配列(例えば、導入遺伝子の相補的コードおよび非コード鎖)の長所により2本鎖DNA分子を急速に形成する。一部の実施形態では本発明は、AAVゲノムを含むAAVウイルス粒子を提供し、rAAVゲノムが第1の異種性ポリヌクレオチド配列(例えば、治療用導入遺伝子コード鎖)および第2の異種性ポリヌクレオチド配列(例えば、治療用導入遺伝子の非コードまたはアンチセンス鎖)を含み、第1の異種性ポリヌクレオチド配列が第2のポリヌクレオチド配列とその長さの大部分または全てに沿って鎖間塩基対を形成できる。一部の実施形態では第1の異種性ポリヌクレオチド配列と第2の異種性ポリヌクレオチド配列とは、鎖間塩基対合を促進する配列によって連結される;例えばヘアピンDNA構造。ヘアピン構造は、例えばsiRNA分子において当技術分野において周知である。一部の実施形態では第1の異種性ポリヌクレオチド配列と第2の異種性ポリヌクレオチド配列とは、変異導入ITR(例えば正しいITR)によって連結される。変異導入ITRは、末端分解配列を含むD領域の欠失を含む。結果としてAAVウイルスゲノムを複製する際に、以下の:AAV ITR、制御配列を含む第1の異種性ポリヌクレオチド配列、変異導入AAV ITR、第1の異種性ポリヌクレオチドとは逆の方向で第2の異種性ポリヌクレオチドおよび第3のAAV ITRを5’から3’の順で含む組換えウイルスゲノムがウイルスカプシド中にパッケージングされるようにrepタンパク質はウイルスゲノムを変異導入ITRで切断しない。
【0110】
一部の実施形態ではウイルス粒子は、アデノウイルス粒子である。一部の実施形態ではアデノウイルス粒子は、組換えアデノウイルス粒子、例えば2つのITR間に1つまたはそれ以上の異種性配列(すなわち、アデノウイルス由来ではない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターである。一部の実施形態ではアデノウイルス粒子は、アデノウイルスを複製不全にする1つまたはそれ以上のE1遺伝子の欠損コピーを欠失している、または含有している。アデノウイルスは、大きな(約950Å)、非エンベロープ正二十面体カプシド内に直鎖の2本鎖DNAゲノムを含む。アデノウイルスは、30kbを超える異種性配列を組み込むことができる(例えば、E1および/またはE3領域の代わりに)大きなゲノムを有し、大きな異種性遺伝子での使用に他になく適している。それらはまた、分裂および非分裂細胞に感染することが周知であり、天然では宿主ゲノムに組み込まれない(しかしハイブリッド変種はこの能力を有する場合がある)。一部の実施形態ではアデノウイルスベクターは、E1の代わりに異種性配列を有する第1世代アデノウイルスベクターである場合がある。一部の実施形態ではアデノウイルスベクターは、E2A、E2B、および/またはE4に追加の変異または欠失を有する第2世代アデノウイルスベクターである場合がある。一部の実施形態ではアデノウイルスベクターは、すべてのウイルスコード遺伝子を欠失しており、ITRおよびパッケージングシグナルだけを保持し、複製およびパッケージングのためにトランスでヘルパーアデノウイルスを必要とする第3世代また
はガッティド(gutted)アデノウイルスベクターである場合がある。アデノウイルス粒子は、哺乳動物細胞の一過性トランスフェクションのためのベクターとしておよび遺伝子治療ベクターとしての使用のために調査されている。さらなる記載は、例えば、Danthinne,X.and Imperiale,M.J.(2000)Gene Ther.7:1707~14頁およびTatsis,N.and Ertl,H.C.(2004)Mol.Ther.10:616~29頁を参照されたい。
【0111】
一部の実施形態ではウイルス粒子は、導入遺伝子を含む核酸を含む組換えアデノウイルス粒子である。任意のアデノウイルス血清型の使用は、本発明の範囲内と考えられる。一部の実施形態では組換えアデノウイルスベクターは、AdHu2、AdHu 3、AdHu4、AdHu5、AdHu7、AdHu11、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdおよびブタAd3型を非限定的に含むアデノウイルス血清型由来のベクターである。アデノウイルス粒子はまた、カプシドタンパク質も含む。一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、1つまたはそれ以上の外来ウイルスカプシドタンパク質との組合せでアデノウイルス粒子を含む。そのような組合せは、偽型化組換えアデノウイルス粒子と称される場合がある。一部の実施形態では偽型化組換えアデノウイルス粒子において使用される外来ウイルスカプシドタンパク質は、外来ウイルスまたは別のアデノウイルス血清型由来である。一部の実施形態では外来ウイルスカプシドタンパク質は、非限定的に、レオウイルス3型を含むもの由来である。偽型化アデノウイルス粒子において使用されるベクターおよびカプシドタンパク質組み合わせの例は、以下の参考文献(Tatsis,N.ら、(2004)Mol.Ther.10(4):616~629頁およびAhi,Y.ら、(2011)Curr.Gene Ther.11(4):307~320頁)において見出すことができる。さまざまなアデノウイルス血清型が、具体的な標的細胞の形質導入を最適化するためまたは具体的な標的組織(例えば、疾患組織)内の特定の細胞型を標的化するために使用される。具体的なアデノウイルス血清型によって標的化される組織または細胞は、非限定的に、肺(例えばHuAd3)、脾臓および肝臓(例えばHuAd37)、平滑筋、滑膜細胞、樹状細胞、心血管系細胞、腫瘍細胞株(例えばHuAd11)ならびに樹状細胞(例えばレオウイルス3型で偽型化されたHuAd5、HuAd30またはHuAd35)を含む。さらなる記載についてAhi,Y.ら、(2011)Curr.Gene Ther.11(4):307~320頁,Kay,M.ら、(2001)Nat.Med.7(1):33~40頁およびTatsis,N.ら、(2004)Mol.Ther.10(4):616~629頁を参照されたい。
【0112】
一部の実施形態ではウイルス粒子は、レンチウイルス粒子である。一部の実施形態ではレンチウイルス粒子は、組換えレンチウイルス粒子、例えば1つまたはそれ以上の異種性配列(すなわち、レンチウイルス由来ではない核酸配列)を2つのLTR間に含むポリヌクレオチドベクターである。レンチウイルスは、およそ10kbのゲノムを有するプラスセンス、ssRNAレトロウイルスである。レンチウイルスは、分裂および非分裂細胞のゲノムに組み込まれることが周知である。レンチウイルス粒子は、例えば複数のプラスミド(典型的にはレンチウイルスゲノムと、複製および/またはパッケージングのために必要な遺伝子とはウイルス複製を妨げるために分離されている)を、修飾レンチウイルスゲノムをレンチウイルス粒子にパッケージングするパッケージング細胞株にトランスフェクトすることによって産生される。一部の実施形態ではレンチウイルス粒子は、エンベロープタンパク質を欠失している第1世代ベクターを指す場合がある。一部の実施形態ではレンチウイルス粒子はgag/polおよびtat/rev領域以外のすべての遺伝子を欠失している第2世代ベクターを指す場合がある。一部の実施形態ではレンチウイルス粒子は、内在性rev、gagおよびpol遺伝子だけを含有し、tat遺伝子を含まない形質導入のためのキメラLTRを有する第3世代ベクターを指す場合がある(Dull,T
.ら、(1998)J.Virol.72:8463~71頁を参照されたい)。さらなる記載についてDurand,S.and Cimarelli,A.(2011)Viruses 3:132~59頁を参照されたい。
【0113】
一部の実施形態ではウイルス粒子は、導入遺伝子を含む核酸を含む組換えレンチウイルス粒子である。任意のレンチウイルスベクターの使用は、本発明の範囲内と考えられる。一部の実施形態ではレンチウイルスベクターは、非限定的にヒト免疫不全ウイルス-1(HIV-1)、ヒト免疫不全ウイルス-2(HIV-2)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ジャンブラナ病ウイルス(JDV)、ビスナウイルス(VV)およびヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)を含むレンチウイルス由来である。レンチウイルス粒子はまた、カプシドタンパク質も含む。一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、レンチウイルスベクターを1つまたはそれ以上の外来ウイルスカプシドタンパク質との組合せで含む。そのような組合せは、偽型化組換えレンチウイルス粒子と称される場合がある。一部の実施形態では偽型化組換えレンチウイルス粒子において使用される外来性ウイルスカプシドタンパク質は、外来性ウイルス由来である。一部の実施形態では偽型化組換えレンチウイルス粒子において使用される外来性ウイルスカプシドタンパク質は、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV-GP)である。VSV-GPは、偏在性細胞受容体と相互作用し、偽型化組換えレンチウイルス粒子に対する広範な組織指向性を提供する。付加的にVSV-GPは、偽型化組換えレンチウイルス粒子へのより高い安定性を提供すると考えられている。他の実施形態では外来性ウイルスカプシドタンパク質は、非限定的に、チャンディプラウイルス、狂犬病ウイルス、モコラウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス(SFV)、ベネゼイラウマ脳炎ウイルス、エボラウイルスレストン、エボラウイルスザイール、マールブルグウイルス、ラッサウイルス、トリ白血病ウイルス(ALV)、ヤーグジークテヒツジレトロウイルス(JSRV)、モロニーマウス白血病ウイルス(MLV)、テナガザル白血病ウイルス(GALV)、ネコ内在性レトロウイルス(RD114)、ヒトT-リンパ球向性ウイルス1(HTLV-1)、ヒト泡沫状ウイルス、マエディビスナウイルス(MVV)、SARS-CoV、センダイウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ヒトパラインフルエンザウイルス3型、C型肝炎ウイルス(HCV)、インフルエンザウイルス、ニワトリペストウイルス(FPV)またはオートグラファカリホルニカマルチプル核多核体ウイルス(AcMNPV)を含むものに由来する。偽型化レンチウイルス粒子において使用されるベクターとカプシドタンパク質との組合せの例は、例えばCronin,J.ら、(2005).Curr.Gene Ther.5(4):387~398頁において見出すことができる。さまざまな偽型化組換えレンチウイルス粒子は、具体的な標的細胞の形質導入を最適化するためまたは具体的な標的組織(例えば、疾患組織)内の特異的な細胞型を標的化するために使用される。例えば特異的偽型化組換えレンチウイルス粒子によって標的化される組織は、非限定的に肝臓(例えばVSV-G、LCMV、RRVもしくはSeV Fタンパク質で偽型化されている)、肺(例えばエボラ、マールブルグ、SeV FおよびHN、またはJSRVタンパク質で偽型化されている)、膵島細胞(例えばLCMVタンパク質で偽型化されている)、中枢神経系(例えばVSV-G、LCMV、狂犬病またはモコラタンパク質で偽型化されている)、網膜(例えばVSV-Gもしくはモコラタンパク質で偽型化されている)、単球または筋肉(例えばモコラもしくはエボラタンパク質で偽型化されている)、造血系(例えばRD114もしくはGALVタンパク質で偽型化されている)またはがん細胞(例えばGALVもしくはLCMVタンパク質で偽型化されている)を含む。さらなる記載について、Cronin,J.ら、(2005).Curr.Gene Ther.5(4):387~398頁およびKay,M.ら、(2001)Nat.Med.7(1):33~40頁を参照されたい。
【0114】
一部の実施形態ではウイルス粒子は、単純ヘルペスウイルス(HSV)粒子である。一部の実施形態ではHSV粒子は、rHSV粒子、例えば2つのTRの間に1つまたはそれ以上の異種性配列(すなわち、レンチウイルス由来の核酸配列ではない)を含むポリヌクレオチドベクターである。HSVは、およそ152kbのゲノムを有するエンベロープ付き、2本鎖DNAウイルスである。有利なことに、その遺伝子のおよそ半分は必須ではなく、異種性配列に適応するために欠失することができる。HSV粒子は、非分裂細胞に感染する。付加的にそれらは、天然でニューロン中の潜伏を確立し、逆行性輸送によって移動し、シナプス間を移行でき、ニューロンのトランスフェクションおよび/または神経系に関与する遺伝子治療手法のためにそれらを有利にしている。一部の実施形態ではHSV粒子は、複製欠損または複製適格(例えば、1つまたはそれ以上の後期遺伝子の不活性化を通じて単一複製サイクルについて適格性)である場合がある。さらなる記載について、Manservigi,R.ら、(2010)Open Virol.J.4:123~56頁を参照されたい。
【0115】
一部の実施形態ではウイルス粒子は、導入遺伝子を含む核酸を含むrHSV粒子である。任意のHSVベクターの使用は、本発明の範囲内と考えられる。一部の実施形態ではHSVベクターは、非限定的にHSV-1およびHSV-2を含むHSV血清型由来である。HSV粒子はまた、カプシドタンパク質も含む。一部の実施形態では組換えウイルス粒子は、HSVベクターを1つまたはそれ以上の外来性ウイルスカプシドタンパク質との組合せで含む。そのような組合せは、偽型化rHSV粒子と称される場合がある。一部の実施形態では偽型化rHSV粒子において使用される外来性ウイルスカプシドタンパク質は、外来性ウイルス由来または別のHSV血清型由来である。一部の実施形態では偽型化rHSV粒子において使用される外来性ウイルスカプシドタンパク質は、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV-GP)である。VSV-GPは偏在性細胞受容体と相互作用し、偽型化rHSV粒子に対する広範な組織指向性を提供する。付加的にVSV-GPは、偽型化rHSV粒子へのより高い安定性を提供すると考えられている。他の実施形態では外来性ウイルスカプシドタンパク質は、異なるHSV血清型由来であってよい。例えばHSV-1ベクターは、1つまたはそれ以上のHSV-2カプシドタンパク質を含有する場合がある。さまざまなHSV血清型は、具体的な標的細胞の形質導入を最適化するためまたは具体的な標的組織(例えば、疾患組織)内の特定の細胞型を標的化するために使用される。具体的なアデノウイルス血清型によって標的化される組織または細胞は、非限定的に中枢神経系およびニューロン(例えばHSV-1)を含む。さらなる記載について、Manservigi,R.ら、(2010)Open Virol J 4:123~156頁,Kay,M.ら、(2001)Nat.Med.7(1):33~40頁およびMeignier,B.ら、(1987)J.Infect.Dis.155(5):921~930頁を参照されたい。
【0116】
V.ウイルスベクターの産生
トランスフェクション、安定細胞株産生ならびにアデノウイルスAAVハイブリッド、ヘルペスウイルスAAVハイブリッド(Conway,JEら、(1997)J.Virology 71(11):8780~8789頁)およびバキュロウイルスAAVハイブリッドを含む感染性ハイブリッドウイルス産生系を含む多数の方法が、rAAVベクターの産生のために当技術分野において周知である。rAAVウイルス粒子の産生のためのrAAV産生培養はすべて;1)例えばHeLa、A549もしくは293細胞などのヒト由来細胞株またはバキュロウイルス産生系の場合はSF-9などの昆虫由来細胞株を含む好適な宿主細胞;2)野生型もしくは変異体アデノウイルス(温度感受性アデノウイルスなど)、ヘルペスウイルス、バキュロウイルスまたはヘルパー機能を提供するプラスミド構築物によって提供される好適なヘルパーウイルス機能;3)AAV repおよびcap遺伝子ならびに遺伝子産生物;4)少なくとも1つのAAV ITR配列を端に有する導入遺伝子(治療用導入遺伝子など);ならびに5)rAAV産生を支持する好適な培
地および培地構成成分を必要とする。一部の実施形態ではAAV repおよびcap遺伝子産生物は、任意のAAV血清型由来である。必須ではなく一般的にAAV rep遺伝子産生は、rep遺伝子産生物がrAAVゲノムを複製およびパッケージングするように機能できる限り、rAAVベクターゲノムのITRと同じ血清型のものである。当技術分野において周知の好適な培地は、rAAVベクターの産生のために使用される。これらの培地は、非限定的に、変法イーグル培地(MEM)、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を含むHyclone LaboratoriesおよびJRHによって産生される培地、特に組換えAAVベクターの産生における使用のためのカスタム培地製剤に関してそれぞれその全体を参照によって本明細書に組み入れる米国特許第6,566,118号に記載のものなどのカスタム製剤、および米国特許第6,723,551号に記載のSf-900 II SFM培地を含む。一部の実施形態ではAAVヘルパー機能は、アデノウイルスまたはHSVによって提供される。一部の実施形態ではAAVヘルパー機能は、バキュロウイルスによって提供され、宿主細胞は昆虫細胞(例えば、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(Sf9)細胞)である。
【0117】
本発明の好適なrAAV産生培養培地は、血清または血清由来組換えタンパク質を0.5%~20%(v/vまたはw/v)のレベルで補充される場合がある。代替的に当技術分野において周知のとおり、rAAVベクターは動物由来成分不含有培地とも称される無血清条件で産生される。rAAVベクターの産生を支持するように設計された商業的またはカスタム培地は、産生培養物中のrAAVの力価を増加させるためのグルコース、ビタミン、アミノ酸およびまたは増殖因子を非限定的に含む当技術分野において周知の1つまたはそれ以上の細胞培養構成成分を補充されることを当業者は認識する。
【0118】
一部の態様では本発明は、空のカプシドが低減しているrAAV粒子を調製するための方法であって、a)rAAV産生のために好適な条件下で宿主細胞を培養する工程であって、細胞はi)少なくとも1つのAAV ITRを端に有する異種性導入遺伝子をコードする核酸、ii)AAV repおよびcapコード領域を含む核酸であり、変異導入p5プロモーターを含み、p5プロモーターからの発現が野生型p5プロモーターと比較して低減されている核酸、およびiii)AAVヘルパーウイルス機能をコードする核酸を含む工程;b)rAAV粒子を放出するように宿主細胞を溶解する工程;c)宿主細胞によって産生されたrAAV粒子を単離する工程;ならびにd)空のカプシドおよび/または変種のゲノムを有するrAAV粒子の存在について上に記載の分析超遠心分離法によってrAAV粒子を分析する工程を含む、空のカプシドが低減されたrAAV粒子を調製するための方法を提供する。一部の実施形態では、AAV repおよびcap領域をコードする核酸のp5プロモーターは、repおよび/またはcapコード領域の3’に位置付けられている。一部の実施形態ではAAV repおよびcapコード領域をコードする核酸は、プラスミドpHLP、pHLP19またはpHLP09である(それぞれの内容はその全体を本明細書に組み入れる米国特許第5,622,856号;第6,001,650号;第6,027,931号;第6,365,403号;第6,376,237号;および第7,037,713号を参照されたい)。一部の実施形態ではAAVヘルパーウイルス機能は、アデノウイルスE1A機能、アデノウイルスE1B機能、アデノウイルスE2A機能、アデノウイルスVA機能およびアデノウイルスE4 orf6機能を含む。
【0119】
rAAV産生培養物は、利用される具体的な宿主細胞に好適な種々の条件下(広い温度範囲で、さまざまな時間にわたってなど)で増殖される。当技術分野において周知のとおり、rAAV産生培養は接着依存培養を含み、例えば回転ボトル、中空繊維フィルター、マイクロキャリアおよび充填ベッドまたは流動ベッドバイオリアクターなどの好適な接着依存容器で培養できる。rAAVベクター産生培養物は、例えばスピナーフラスコ、撹拌タンクバイオリアクターおよびウェーブバッグシステムなどのディスポーザブルシステム
を含む種々の方法で培養できるHeLa、293およびSF-9細胞などの懸濁適合宿主細胞も含む。
【0120】
本発明のrAAVベクター粒子は、産生培養物の宿主細胞の溶解によってまたは、細胞がインタクトな細胞から培地へのrAAV粒子の放出を生じることが当技術分野において周知である条件下で培養される場合、産生培養物からの消費培地の収集によってrAAV産生培養物から収集できる、さらに完全に米国特許第6,566,118号に記載のとおり)。細胞を溶解する好適な方法は、当技術分野において周知であり、例えば複数回の凍結/融解周期、超音波処理、顕微溶液化ならびに界面活性剤などの化学物質および/またはプロテアーゼでの処理を含む。
【0121】
多数の方法が、アデノウイルスベクター粒子の産生のために当技術分野において周知である。例えばガッティドアデノウイルスベクター、アデノウイルスベクターゲノムおよびヘルパーアデノウイルスゲノムは、パッケージング細胞株(例えば293細胞株)にトランスフェクトできる。一部の実施形態ではヘルパーアデノウイルスゲノムは、そのパッケージングシグナルに隣接する組換え部位を含有でき、両ゲノムは、目的のアデノウイルスベクターがヘルパーアデノウイルスよりもさらに効率的にパッケージングされるようにリコンビナーゼ(例えばCre/loxP系が使用される)を発現しているパッケージング細胞株にトランスフェクトされる(例えば、Alba,R.ら、(2005)Gene Ther.12 Suppl 1:S18-27を参照されたい)。アデノウイルスベクターは、本明細書に記載のものなどの標準的方法を使用して収集および精製できる。
【0122】
多数の方法が、レンチウイルスベクター粒子の産生のために当技術分野において周知である。例えば第3世代レンチウイルスベクターのために、目的のレンチウイルスゲノムをgagおよびpol遺伝子と共に含有するベクターは、パッケージング細胞株(例えば293細胞株)にrev遺伝子を含有するベクターと共に同時トランスフェクトされる。目的のレンチウイルスゲノムは、Tatの非存在下で転写を促進するキメラLTRも含有する(Dull,T.ら、(1998)J.Virol.72:8463~71頁を参照されたい)。レンチウイルスベクターは、本明細書に記載の方法(例えば、Segura MM,ら、(2013)Expert Opin Biol Ther.13(7):987~1011頁)を使用して収集および精製できる。
【0123】
多数の方法が、HSV粒子の産生のために当技術分野において周知である。HSVベクターは、本明細書に記載のものなどの標準的方法を使用して収集および精製できる。例えば複製欠損HSVベクターのために、最初期(IE)遺伝子のすべてを欠失している目的のHSVゲノムは、ICP4、ICP27およびICP0などのウイルス産生のために必要な遺伝子を提供する補完細胞株にトランスフェクトされる(例えば、Samaniego,L.A.ら、(1998)J.Virol.72:3307~20頁を参照されたい)。HSVベクターは、記載の方法を使用して収集および精製できる(例えば、Goins,WFら、(2014)Herpes Simplex Virus Methods
in Molecular Biology 1144:63~79頁)。
【0124】
VI.rAAVベクターの精製
収集の際に、本発明のrAAV産生培養物は、以下の(1)宿主細胞タンパク質;(2)宿主細胞DNA;(3)プラスミドDNA;(4)ヘルパーウイルス;(5)ヘルパーウイルスタンパク質;(6)ヘルパーウイルスDNA;および(7)例えば、血清タンパク質、アミノ酸、トランスフェリンおよび他の低分子量タンパク質を含む培地構成成分、の1つまたはそれ以上を含有できる。付加的にrAAV産生培養物は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11またはAAV12からなる群から選択
されるAAVカプシド血清型を有するrAAV粒子をさらに含む。一部の実施形態ではrAAV産生培養物は、空のAAVカプシド(例えば、カプシドタンパク質を含むがrAAVゲノムを含まないrAAV粒子)をさらに含む。一部の実施形態ではrAAV産生培養物は、変種rAAVゲノムを含むrAAV粒子(例えば、インタクトな全長rAAVゲノムとは異なるrAAVゲノムを含むrAAV粒子)をさらに含む。一部の実施形態ではrAAV産生培養物は、切断型rAAVゲノムを含むrAAV粒子をさらに含む。一部の実施形態ではrAAV産生培養物は、AAVカプシド化DNA不純物を含むrAAV粒子をさらに含む。
【0125】
一部の実施形態ではrAAV産生培養収集物は、宿主細胞デブリを除去して清澄化される。一部の実施形態では産生培養収集物は、例えばgrade DOHC Millipore Millistak+ HC Pod Filter、grade A1HC Millipore Millistak+ HC Pod Filterおよび0.2μm Filter Opticap XL1O Millipore Express
SHC親水性膜フィルターを含む一連のデプスフィルターを通じたろ過によって清澄化される。清澄化は、遠心分離または、当技術分野において周知の0.2μmまたはさらに大きなポアサイズの任意のセルロースアセテートフィルターを通じたろ過などの当技術分野において周知の種々の他の標準的技術によっても達成される。
【0126】
一部の実施形態ではrAAV産生培養収集物は、産生培養物中に存在するいかなる高分子量DNAも消化するためにBenzonase(登録商標)でさらに処理される。一部の実施形態ではBenzonase(登録商標)消化は、例えば最終濃度1~2.5単位/mlのBenzonase(登録商標)、周囲温度から37℃の範囲の温度で30分間から数時間を含む当技術分野において周知の標準的条件下で実施される。
【0127】
rAAV粒子は、以下の精製工程:平衡遠心分離;フロースルーアニオン交換ろ過;rAAV粒子を濃縮するための接線流ろ過(TFF);アパタイトクロマトグラフィーによるrAAV捕捉;ヘルパーウイルスの熱不活性化;疎水性相互作用クロマトグラフィーによるrAAV捕捉;サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による緩衝液交換;ナノ濾過;ならびにアニオン交換クロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィーまたは親和性クロマトグラフィーによるrAAV捕捉、の1つまたはそれ以上を使用して単離または精製される。これらの工程は、単独で、種々の組合せでまたはさまざまな順序で使用される。一部の実施形態では方法は、下に記載の順ですべての工程を含む。rAAV粒子を精製するための方法は、例えばXiaoら、(1998)Journal of Virology 72:2224~2232頁、米国特許第6,989,264号および第8,137,948号およびWO2010/148143において見出される。アデノウイルス粒子を精製するための方法は、例えばBo,Hら、(2014)Eur.J.Pharm.Sci.67C:119~125頁に見出される。レンチウイルス粒子を精製するための方法は、例えばSegura MMら、(2013)Expert Opin Biol Ther.13(7):987~1011頁に見出される。HSV粒子を精製するための方法は、例えばGoins,WFら、(2014)Herpes Simplex Virus Methods in Molecular Biology 1144:63~79頁に見出される。
【実施例0128】
本発明は、以下の実施例を参照することによってさらに完全に理解される。しかしそれらは、本発明の範囲を限定するものとして解釈されない。本明細書に記載の実施例および実施形態は、例示的目的のみのためであり、その観点から種々の改変または変更は当業者に示唆され、本出願の趣旨および管理範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれることが理解される。
【実施例0129】
分析超遠心分離法による組換えアデノ随伴ウイルスベクター調製物の特徴付け
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、それらを遺伝子治療のためのベクターとして魅力的なものにする特性を有する。野生型AAVは、会合、複製および感染のために必要なすべての構造および制御エレメントをコードする2個の翻訳領域(repおよびcap)からなる。rep ORFは、ゲノム複製機能を有するRep78および68タンパク質ならびに、1本鎖複製およびパッケージングに関与するRep52および40タンパク質をコードする。cap ORFは、3個の構造カプシドタンパク質:VP1、VP2およびVP3をコードする。組換えAAVベクターは、「ガットレス」ベクター手法(Xiao,Xら、1998,J.Virol.3:2224~2232頁)を使用する三重トランスフェクション法によって典型的には産生された。repおよびcap遺伝子は治療用遺伝子で置き換えられ、その制御エレメントは、5’および3’末端逆位配列(ITR)の間に挟まれ、repおよびcap遺伝子は別々のプラスミドにトランスで提供され、第3のプラスミドは必要とされるアデノウイルスヘルパー遺伝子に寄与する。ウイルスカプシドは、完全に会合し、次いでITR隣接ベクターゲノムは、カプシドポアを介してカプシドに挿入されることが想定された(Myers,MW & Carter,BJ,1980,Virology,102:71~82頁)。生じたカプシドの集団は、ゲノム不含有カプシド(空のカプシド)およびゲノム含有カプシドの両方を含有した。付加的にカプシドは、組換えウイルスゲノムの不完全な一部を含有する場合があった。ベクター調製物は、次いで細胞デブリからカプシドを単離するための親和性クロマトグラフィーによって精製され、アニオン交換クロマトグラフィーによってインタクトなベクターについて濃縮するためにさらに処理された。
【0130】
遺伝子治療における使用のための近年の承認に基づいて、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、新規バイオ医薬製品(biopharmaceutical drug product)の重要なクラスとして現れた。AAVベクター製品の生成は、製品の品質を均一性、純度および製造の整合性に関してモニターする分析方法を必要とするが、今日までにAAVベクター特徴付けを支持する方法は確立されていない。この要求に応えるために、AAVベクターの均一性を特徴付けるための技術としての分析超遠心分離法(AUC)の潜在的使用を調査した。
【0131】
方法
サンプル調製
正確なAUC評価を支持するために、ベクター産生物(AAV2導入遺伝子2)を高度に精製し、適切に緩衝し、5x1011vg/mLより高く濃縮した。これを達成するために細胞上清実行物をAVB親和性クロマトグラフィー(GE Healthcare)を使用して精製し、10K MWCO Slide-a-Lyzer(Thermo Scientific)を使用してPBS、pH7.2に緩衝液交換した。産生物濃度を分光光学的方法による260nm(OD260)での光学密度測定によって決定した。再現性のある一致したAUCデータを作成するためにサンプル調整を、260nmでの光学密度測定によって0.1から1.0の標的濃度に、PBSでの直接希釈またはAmicon
Ultra-0.5/30K MWCO遠心フィルターデバイスを使用するさらなる濃縮によってのいずれかで行った。
【0132】
沈降速度AUCデータ取得
沈降速度分析超遠心分離法(SV-AUC)分析をProteomeLab(商標)XL-I(Beckman Coulter)を使用して実施した。400μLサンプルを2個のセクター速度セルのサンプルセクターにロードし、400μL PBSを対応する参照セクターにロードした。サンプルを4穴ローターに置き、20℃の温度まで装置内で
平衡化し、高真空を約1時間維持した。沈降速度遠心分離を、20,000rpm、20℃、0.003cm半径工程設定で、遅延なし、反復なしで実施した。吸光度(260nm)およびレイリー干渉光学を、最小沈降構成成分が光学ウインドウを透明化するまで(1.2時間)半径方向の濃度を時間の関数として同時に記録するために使用した。アッセイ処理量は、1分間より長い吸光度スキャン回収時間ならびにAAVの大きなサイズおよび急速な沈降に基づいて実行1回あたり単一のサンプルに限定した。
【0133】
AUCデータ分析
完全カプシド百分率をSEDFIT(NIH/ analyticalultracentrifugation.comのワールドワイドウエブを参照されたい)継続的サイズC(S)分布モデルを使用して各検出方法からのおよそ75スキャンを分析することによって決定した。二次(2nd)微分正則化をF統計=0.68の信頼レベルを有するフィッティングに適用した。以下のC(S)パラメーターを一定に保った:分解能=200S、Smin=1、Smax=200および摩擦比=1.0。RIおよびTIノイズサブトラクションを適用し、メニスカス位置を移行させ、ソフトウェアに最適な位置を選ばせた。このモデルはデータをラム方程式にフィットさせ、得られたサイズ分布は、フリンジの単位またはOD260単位で濃度に比例する各ピーク下面積を有するクロマトグラムに似た「沈降係数の分布」であった。沈降係数(スベドベルグ単位)および相対濃度(OD単位)を分布中の各構成成分について決定した。各AUC実行は独立アッセイであり、各分析を結果の品質を確実にするために以下の特質についてモニターした:適合度(rmsd)、各ピークについてのOD260nm/フリンジにおける干渉シグナルの比(A260/IF比)、実行間での各種についての沈降係数の一致性およびスキャンの全体的品質。
【0134】
吸光度光学(260nm)
消衰係数を吸光度データからインタクトなベクターのモル濃度およびピークの実際の百分率値を算出するために使用した。空のカプシド(Ε260カプシド=3.72e6)およびインタクトなベクター(Ε260ベクター=3.00e7)の両方についてのモル吸光度消衰係数を公開された式(Sommerら、(2003)Mol Ther.,7:122~8頁)に基づいて算出した。消衰係数は、空のカプシドおよびインタクトなベクターピークについて利用可能であった。C(S)値は、Schuck(2000)Biophys.J.,78:1606~19頁に記載されたSEDFITアルゴリズムを使用して決定した。インタクトなベクターおよび空のカプシドの両方のモル濃度をベールの法則を使用して算出し、完全カプシドの百分率をこれらの値から算出した。値は完全カプシドの百分率で報告した。
【0135】
AUC標準曲線の生成
未知のサイズおよび配列の断片化ゲノムの消衰係数を実験的に決定することは不可能であることから、S値とゲノムサイズとの関係を確立した。これを達成するために、周知のヌクレオチドサイズを有するカプシド化されたウイルスゲノムを含むrAAVベクター調製物をAUCによって分析し、対応するS値を上に記載のとおり決定した。
【0136】
一過性トランスフェクションによるrAAVの産生
組換えAAVベクターを「ガットレス」ベクター手法(Xiao,Xら、1998,J.Virol.3:2224~2232頁)を使用する三重トランスフェクション法によって産生した。この手法ではrepおよびcap遺伝子は治療用遺伝子で置き換えられ、その制御エレメントは、5’および3’末端逆位配列(ITR)の間に挟まれた。repおよびcap遺伝子は別々のプラスミドにトランスで提供され、第3のプラスミドは必要とされるアデノウイルスヘルパー遺伝子に寄与する。理論に束縛されることなく、ウイルスカプシドは、完全に会合し、次いでITR隣接ベクターゲノムは、カプシドポアを介し
てカプシドに挿入されることが想定された(Myers & Carter,1980,Virology,102:71~82頁)。生じたカプシドの集団は、ゲノム不含有カプシド(空のカプシド)およびゲノム含有カプシドの両方を含有していた。
【0137】
産生細胞プラットホームによるrAAVの産生
AAV産生細胞株は、臨床用rAAVベクターを生成するために使用される代替的産生プラットホームである。この方法で懸濁中での培養に適合されたHeLa S3細胞をベクター配列および選択可能マーカーに加えてベクター複製およびパッケージングのために必要なAAV repおよびcap遺伝子の組み込まれたコピーを有するように操作した(例えばPuro:Thorneら、(2009)Hum.Gene Ther.,20:707~14頁を参照されたい)。複製のために必要なヘルパー機能を提供するWTアデノウイルスで感染させると、細胞は続くイオン交換クロマトグラフィーを使用する精製工程の際に除去された組換えAAVベクターおよびアデノウイルスを産生した。
【0138】
他の方法
合成導入遺伝子を最適なプロモーターおよびウシ増殖ホルモンポリアデニル化シグナル配列(polyA)を含有するプラスミドにクローニングした。次いで導入遺伝子発現カセット全体を、AAV2末端逆位配列を含有するプレウイルスプラスミドベクターpAAVDC64にクローニングした。それぞれの発現プラスミド中の得られたAAVゲノムの合計サイズは(ITRを端に有する領域を含む)は4~4.6kbであった。組換えベクターをrep2/cap配列およびアデノウイルスヘルパー機能、pAdヘルパー(Stratagene、La Jolla、CA USA)を発現するヘルパープラスミドを使用する293細胞の三重トランスフェクションによって産生した。rep/capヘルパーはAAV血清型2由来のrepを発現し、一方cap配列は以下の配列の1つをコードした:AAV cap 1、2、5、9またはrh8R。ベクターを親和性クロマトグラフィーによって精製し、一部の場合では空の粒子を除去するためにさらに精製した(例えばQuら、(2007)J.Virol.Methods.140:183~92頁を参照されたい)。
【0139】
結果
古典的境界沈降速度を使用する分析超遠心分離法(AUC)を組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター調製物の粒子不均一性を明らかにするために使用した。完全ゲノムを含む20%rAAV2粒子および80%空のカプシドを含有する混合物を、精製した空のカプシドと精製したゲノム含有カプシドとを規定の比で混合することによって作製した。空のカプシドおよび完全カプシドは三重トランスフェクション産生後に空のカプシドおよび完全カプシドの混合物のCsClグラジエント精製によって生成した。遠心力への応答でのrAAV2粒子の移動をモニターするために、rAAV2カプシドのこの混合物を規定の時間間隔で遠心分離場に沿って260nm吸光度をスキャンした。図1Aは、AAV2混合物の20,000rpm、1.2時間(最小沈降種が光学ウインドウを透明化するまで)での遠心分離後の代表的なスキャンプロファイルを示す。スキャンは、rAAV2ベクター調製物中の構成分ベクター粒子の完全な移行パターンを明らかにする一連の濃度スキャンを得るための、時間tでの半径rの関数としての濃度データの取得を表した。これらのシグモイド曲線または境界では、曲線の前縁はより速く沈降する種(すなわちゲノム含有rAAV2カプシド)を表し、後縁はより遅く沈降する種(すなわち「空の」rAAV2カプシド)を表す(図1A)。
【0140】
微分沈降係数分布値、C(S)を沈降係数(スベドベルグ単位、S)に対してプロットすることは、空のカプシドおよびゲノム含有カプシド種の両方について固有の沈降係数を有する異なるピークをもたらした(図1B)。C(S)値をSchuck(2000)Biophys.J.,78:1606~19頁に記載のSEDFITアルゴリズを使用し
て決定した。吸光度データから各カプシド種についてのモル濃度および百分率値を算出するために、消衰係数を表2に従って使用した。
【0141】
【表3】
【0142】
空のカプシド(ε260カプシド=3.72e6)およびゲノム含有カプシド(ε260カプシド=3e7)両方についてのモル吸光度消衰係数をゲノムサイズおよび公開された式(Sommerら、2003)を使用して算出した。次いでゲノム含有カプシドおよび空のカプシドの両方のモル濃度をベールの法則を使用して算出した。各種のモル濃度は、全てのカプシドの百分率として表されるその相対存在を算出するために使用した(図1)。これらの結果は、不均一なベクター調製物から空のカプシドとゲノム含有カプシドとを正確に識別し、定量するためにAUCを使用できることを実証した。
【0143】
図1に示すrAAV2ベクター調製物について、完全ゲノムを含有するカプシドは、94Sで沈降するピークによって表され、ベクター調製物の21%を占めた。空のカプシドは64SのS値で沈降し、ベクター調製物の79%を占めた。これらの沈降係数値は、空の(図2A)またはゲノム含有粒子の純粋な集団のAUC分析によって確認された(図2B)。rAAV2空のカプシドの純粋な集団のAUCプロファイルは、64Sの沈降係数を有する単一のピークを明らかにした一方で、rAAV2AUCゲノム含有カプシドの純粋な集団のAUCプロファイルは、94Sのより高い沈降係数を有する単一のピークを明らかにした。これらの結果は、不均一な調製物から生じた値と一致し、AUC法をゲノム含有カプシドおよび空のAAVカプシドを両方の種を含有する不均一な調製物から定量するために使用できることをさらに確認した。
【0144】
AUC法を、表3に示すとおり、同じベクターサンプル(scAAV2/9LP2)の5回の独立したAUC実行を実施することによって再現性についてさらに評価した。ゲノム含有カプシドおよび空のAAV2カプシドの両方についての沈降係数は、0.5~0.6%の変動で係数をもたらして高度に再現性があった。同様にゲノム含有カプシドの相対存在(合計の百分率として表される)は、係数のおよそ2%の変動を有して決定された。これらの結果は、ゲノム含有カプシドおよび空のAAV2カプシドを定量するためのAUC法が高度に再現性があり、整合がある値をもたらすことを示した。
【0145】
【表4】
【実施例0146】
AUCのための干渉および吸光度検出法の比較
AUCのための代替的光学的検出法、レイリー干渉光学も評価した。この検出法は、参照溶液とAAV含有サンプルとの間の屈折率差異に基づいてサンプル濃度を測定する。吸光度検出と同様に干渉検出は、ゲノムの配列に関わらず任意のrAAVに適用できる。吸光度検出とは異なり、それは消衰係数を必要とし、干渉検出は、濃度に直接比例する積分ピークをもたらす。
【0147】
空のカプシドおよびゲノム含有AAV2カプシドの純粋な集団を比1:1で混合し、干渉(図3A)および吸光度検出法(図3B)の両方を使用してAUCによって分析した。干渉検出は、43%空のおよび57%ゲノム含有のおよそ予測した比でAAVカプシドの2個の集団を明らかにした(図3A)。両方の検出方法は、同様の存在比をもたらした。しかし両法によって生成されたピークサイズの比較は、ピーク高と吸光度検出での濃度との間のずれを例示した(図3Aおよび3Bでの「空のカプシド」ピークのサイズを比較されたい)。両法によって生成されたデータを表4で比較した。吸光度シグナルに対する干渉シグナルの比(A260nm/IF)は吸光度データの260/280比に類似する様式で使用でき、これはC(S)分布においてピークを同定することを支援した。
【0148】
【表5】
【0149】
干渉光学が精度および分解能を提供する一方で、それは高濃度のサンプルを必要とする。さらに干渉光学は、参照およびAAVサンプル緩衝液間の不一致によって影響を受ける場合がある。しかしAAVサンプルは典型的には低いタンパク質濃度を含有し、AAVサンプルと参照緩衝液とを完全に一致させる必要がある可能性がある。
【実施例0150】
AAVベクター不均一性への産生方法の影響
先行する例は、AUC法が、不均一な混合物から空のカプシドおよびゲノム含有AAVカプシドを分解し、定量するための非常に正確で再現性がある方法であることを実証した。この能力は、AAVベクター調製物の品質を評価するための種々の応用のために有利である可能性がある。例えば純粋なAAVベクター調製物を生成するための主な問題は、部分または断片化ゲノムを含むカプシドの存在である。これらの種を分解するためのAUC法の有用性を例示するために、「三重トランスフェクション」および「産生細胞株」方法と名付けられた2つの異なる方法によって生成されたAAVベクターをAUCによって分析した。
【0151】
導入遺伝子2を有するAAV2ベクターを三重トランスフェクション法(図4)または産生細胞株法(図5)のいずれかを使用して産生した。これらの方法の記載について実施例1を参照されたい。クロマトグラフィー精製に続いて、両ベクター調製物をAUCによって分析した。図6Aは、このAAV2ベクターゲノムの模式図を示す。
【0152】
これらの方法によって産生されたベクター調製物のAUCプロファイルは明らかに異なっていた。産生細胞株法を使用すると74%のカプシドが完全なゲノムを含有し、92S種によって表された(図6B)。19%は空のカプシドであり、残りは断片化ゲノム(75S種、7%)を含有した。対照的に三重トランスフェクション法によって産生されたカプシドの82%は空の、64S種であり(図6C)、11%のカプシドが断片化ゲノムを含有し(76Sおよび84S種)、8%のカプシドだけが完全なゲノム(94S)を有した。
【0153】
これらの結果は、産生細胞株技術を使用して生成されたベクター調製物が高い品質を有し、完全なゲノムを含むカプシドを主に含有していることを実証している。三重トランスフェクション法によって産生されたカプシドの大部分は空のであり、より多くの割合のカプシドが断片化ゲノムを有していた。これらの結果は、完全なゲノム含有カプシドおよび空のカプシドに加えて断片化ゲノムを含むカプシドを分解するAUC法の能力も強調した。さらにそれらは、ベクター調製物の品質および均一性を評価するAUC法の能力も例示した。
【実施例0154】
ベクター調製物からの空のカプシドの除去を評価するためのAUCの使用
AUC法をクロマトグラフィー法を使用する空のカプシドの除去をモニターするためのツールとして評価した(方法についてQuら、(2007)J.Virol.Methods,140:183~92頁を参照されたい)。空のカプシドとゲノム含有カプシドとの分離は、アニオン交換クロマトグラフィーを使用して実施した(図7A)。ゲノム含有rAAV2粒子が樹脂から溶出された後画分で濃縮されたことを実証するために、AUCを分解ピークに実施した(図7Aの「完全ゲノムカプシド」)。
【0155】
図7Bに示すとおりAUC分析は、カラムからの溶出でゲノム含有カプシドがベクター調製物の94%に相当することを明らかにした。この後画分は、92Sの沈降係数を有する単一のピークをもたらした。対照的にクロマトグラフィー工程前のrAAV2ベクター調製物(図7C)は、相当なレベルの空のカプシドを有した。AUC分析は、合計カプシド集団の52%に相当する63Sピーク(空のカプシド)を伴って、63および93のS値を有する2つのピークを明らかにした。これらの結果は、クロマトグラフィー法がAAVベクター調製物から空のカプシドを除去することに非常に有効であることを示している。重要なことにそれらは、精製においてベクター品質を評価するためにAUC法を適用す
ることの有用性を実証している。AUC法は、さまざまなベクター精製プロトコールまたは技術を評価するための有用なツールである。
【実施例0156】
AUC法によるウイルスゲノム完全性の評価
実施例3に例示のとおり、AAVベクター調製物は、完全ゲノムおよび空の種に加えて断片化ゲノムを含んでパッケージングされたカプシドを含有する場合がある。治療用および研究応用のための均一なAAV調製物を生成することにおける主な問題は、目的の導入遺伝子の異常な発現または発現の欠如を生じる場合がある断片化ゲノムを含むカプシドの存在である。実際にAAVベクター調製物に伴う不均一性は、断片化ゲノムまたはAAVカプシド化DNA不純物のパッケージングから生じることが報告されている(Kapranovら、(2012)Hum.Gene Ther.,23:46~55頁)。したがってAUCをrAAVベクター調製物中の断片化ゲノムの異常なパッケージングを定量するためのツールとして評価した。
【0157】
未知のサイズおよび配列の断片化ゲノムの消衰係数を実験的に決定することは不可能であることから、S値とゲノムサイズとの関係を確立した。これを達成するために、周知のサイズを有するカプシド化されたウイルスゲノムを含むrAAVベクター調製物をAUCによって分析し、それらの対応するS値を表5に示すとおり決定した。次いで標準曲線をゲノムサイズとS値とを相関させるために作成した(図8)。これは、沈降係数とゲノムサイズとの間の非常に直線的な相関(R=0.9978)を実証した。
【0158】
【表6】
【0159】
ゲノム断片を検出するためのAUCの有用性を実証するために、AAV2 ITRSを含む自己相補性ベクター、ミニマルCBAプロモーターおよびEGFP導入遺伝子をAAV9カプシドにパッケージングした(AAV2/9minCBAEGFP、図9Aの模式図を参照されたい)。空のカプシドを排除するためにベクター粒子を精製し、AUCによって分析した。次いで標準曲線をカプシドを含有する分解されたゲノムそれぞれにゲノムサイズを帰属させるために使用した。ベクター調製物のおよそ25%が101S種として沈降し、約4.3kbのカプシド化されたゲノムに相当した(図9A)。この101Sピークは、約4.3kbの予測サイズを有する2本鎖二量体ベクターゲノムに相当する。し
かしベクター調製物の大部分(75%)は、82のS値を有して沈降し、約2kbのベクターゲノムサイズに対応し(図9A)、1本鎖単量体のパッケージングと一致した。自己相補性ベクターを含む単量体ゲノムのパッケージングは、十分に記録されており、変異導入されたD配列を有するITRの存在にも関わらず、しばしば、疑似「trs様」配列での偶発的末端分解の結果である(McCartyら、(2001)Gene Ther.,8:1248~54頁)。
【0160】
図9Bは、サイズ約4.3kbおよび約2kbのゲノムを含む2つのベクター集団を明らかにした同じベクター、scAAV9 EGFPのアルカリサザンブロットを示し、図9AのAUCデータを実証している。サザンブロットは、単量体ウイルスゲノムが二量体ゲノムよりも優先的にパッケージングされたことも確認した。興味深いことに1本鎖AAV9 EGFPベクター(約4kb)のAUC分析は、99SのS測定値を有し、標準曲線によっておよそ4.1kbおよび84%のカプシド存在に対応する単一の主要なピークを明らかにした(図9C)。これらの結果は、1本鎖AAVベクターは、2本鎖ベクターよりもさらに均一な様式でパッケージングされることを示唆している。再度、AUC法と一致して、このベクター調製物のサザンブロット分析は、約4kbの予測されたサイズのウイルスゲノムの均一なカプシド化を明らかにした(レーン2、図9B)。これらの結果は、AUC法をAAVベクターゲノムのサイズを測定するために使用でき、標準的サザンブロット技術と一致するゲノムサイズデータをもたらすことを実証している。AUC法を使用して、1本鎖AAVベクターを、2本鎖のものよりさらに均一なベクター調製物を産生するために見出した。これらの結果は、AUC法がベクター調製物由来の不完全なゲノムを含むカプシド種を同定および定量するための強力なツールであることを示している。
【実施例0161】
ベクターゲノムのパッケージングに影響を与える因子を評価するためのAUCの使用
次にAUC法をインタクトなAAVベクターゲノムのパッケージングに影響を与える因子を同定するためのツールとして使用した。
【0162】
実施例3に考察のとおり、一過性トランスフェクション法によるrAAVベクターの産生は、rep/capヘルパー、ITRベクタープラスミドおよびpAdヘルパーを含む3種のプラスミドの使用を必要とする(図4を参照されたい)。AUCを1本鎖および自己相補性AAVベクター両方についてベクターゲノムパッケージングへのrep/capヘルパーの効果を評価するために使用した。第1に、EGFP導入遺伝子を有する自己相補性AAVベクター(図10A)を2つの方法の内の1つを使用して産生した。第1の方法では(図10B)、rep78/68発現が内在性p5プロモーターによって駆動されるヘルパープラスミドを使用した(「WT Rep」構築物)。第2の方法では(図10C)、ヘルパーを、p5プロモーターをcap2配列の下流に移動させることおよびTATAボックスに変異導入することによって78/68発現が低減されるように改変した(「pHLP Rep」構築物)。完全scAAV2 EFGPカプシドは、二量体ゲノム形態において100S、単量体ゲノム形態において80Sの沈降係数を有すると予測された(図10A)。
【0163】
これらのscAAV2EGFPベクター調製物のAUC分析は、ベクターゲノムパッケージングにおける顕著な差異を明らかにした。低減されたrep78/68(pHLP)の存在下で、半数を超える(55%)ベクター調製物が二量体ゲノムを含有し、100S種によって表された(図10C)。これは、4.4kbの二量体ゲノムを含有するカプシドについての予測沈降係数であった。対照的にrep78/68の完全な相補体を有して生成されたscAAV2EGFP調製物は、カプシドの大部分が単量体ゲノムを含有し、80Sで沈降して、顕著に少ない二量体ゲノムパッケージング(26%)を有した(図10B)。これらの結果はヘルパープラスミドのP5プロモーターをシフトし、rep78
/68タンパク質レベルの低減を導くことによって誘導されたゲノムパッケージングにおける顕著な差異を明らかにした。
【0164】
1本鎖AAV5第IX因子ベクター、AAV5FIX、(図11A~B)および1本鎖AAV5hSMNベクター(図11C~D)を、上に記載のとおりrep発現において異なるが、AAV2のcap配列がAAV5のcap配列によって置き換えられたrep/capヘルパーを使用して生成した。FIX発現カセットのヌクレオチドサイズ(4.3kb)に基づいて、AAV5 FIXベクターカプシドについて予測される沈降係数は、およそ101Sであった。低減されたrep78/68(「pHLP19 Rep」)の存在下で行ったAAV2/5FIXのAUC分析は、大部分のベクター(90%)が予測したサイズ、約101S(図11A)のS値で沈降する均一なプロファイルを明らかにした。対照的に野生型レベルのrep78/68タンパク質(「WT Rep」)を発現するrep/cap5ヘルパーを使用して生成されたAAV5 FIXベクターは、著しく異なるAUCプロファイルを生じた(図11B)。101Sの主要なピークの代わりにこのプロファイルは、大部分のAAV5 FIX(80%)が86Sの低いS値で沈降するさらなるカプシド不均一性を明らかにし、断片化ゲノムのパッケージングを表していると考えられる。さらにこのベクターサンプルではAAV5 FIXベクターカプシドの15%だけが約104Sの正しいS値で沈降した(図11B)。
【0165】
これらの同じ野生型および変異導入p5rep/capヘルパーを使用して作られたAAV5SMNベクターも著しく異なるAUCプロファイルを有した。1本鎖AAV5FIXベクターで見られるとおり、低減されたrep78/68の存在下で生成されたAAV5 SMNベクターは、約4.4kbの予測されたサイズのゲノムのパッケージングと一致して、101SのS値での単一カプシド種沈降を有してAUC分析によってより少ない不均一性を示した(図11C)。対照的に、「野生型」レベルのrep78/68タンパク質を使用してパッケージングされた同じベクターゲノムについてのAUCプロファイルは、100S(4400ntの完全なベクターゲノムについて予測されるS値)、92S(およそ3300ntの断片化ゲノムに相当する)および80S(2000ヌクレオチドの断片化ゲノムに相当する)の沈降係数を有する3種の異なるAAVベクター種を明らかにした(図11D)。これらの結果は、2つの追加のAAVベクターを使用するヘルパープラスミドP5プロモーターのシフトによって誘導されるゲノムパッケージングにおける顕著な差異を確認した。
【0166】
AAV5SMNおよびAAV5FIXベクター調製物のさらなる分析をベクターDNAのサザンブロット分析によって実施した。AUC法と一致して、野生型rep78/68タンパク質レベルで生成されたAAV5SMNのサザンブロット分析は、全長(4.4kb)および断片化(4.4kb未満)SMNゲノム(図12A、レーン1)のパッケージングを明らかにした。対照的に低減されたrep78/68タンパク質の存在下で生成されたAAV5SMNベクターは、全長SMNゲノムを含む多くのカプシドを含有した(図12A、レーン2)。興味深いことに、サザン分析による2つのAAV5FIXベクター調製物の比較は、ベクターが野生型レベルのrep78/68の存在下で産生された場合でさえ、FIX全長ゲノムの存在を明らかにした(図12B、レーン2)。しかしこのAAV5FIXベクターのAUC分析(図11B)は、80%のカプシドがFIXプローブによって検出されなかった断片化ゲノム(約3000ヌクレオチド)を含有したことを示した。
【0167】
2つの実験条件下で生成されたFIXベクター調製物のさらなる分析を骨格の領域を含むベクタープラスミドの別々の領域へのプローブを生成することによって実施した。このベクターのマップを図13に提供する。図14は、異なる条件下で生成されたこれらのFIXベクター調製物を比較するためにこれらのプローブを使用するサザンブロット分析を
示している。図14Aに示すとおり両方のベクター調製物(pHLPrep、レーン1;WTrep、レーン2)は、hFIX導入遺伝子を含有した。しかし図14Bレーン2は、WT Rep調製物中に観察された86Sで沈降するベクターゲノム種(図11B)が約3kb断片であったことを確認している。さらにこの種はAmp特異的プローブと反応し(図14B、レーン2)、5’ITRの上流でのパッケージングがrep依存的様式で生じたことを示唆している。対照的に低減されたレベルのrep68/78の存在下で生成されたrAAV5 FIXベクター調製物中にAmp含有断片の証拠はなかった(図14B、レーン1)。
【0168】
AAV FIX調製物中のDNA不純物をAmpに対して特異的なプライマーおよびプローブを使用してQ-PCRによっても評価した。Q-PCRによって、およそ35%Amp力価が「wt」repの存在下で生成されたAAV5FIXベクター調製物中で検出され、同じベクタープラスミドを低減されたrep68/78の存在下でAAV5FIXベクターを生成するために使用した場合の1%未満とは対照的であった(データ未記載)。これらの結果は、他に、遺伝子特異的サザンブロット分析によって検出されないパッケージングされたゲノムの存在を明らかにするためのAUC分析の有用性を強調している。
【0169】
AAVベクターのパッケージング能力は広範に研究されており、多数の報告が大型のAAVゲノムをパッケージングしているベクターでの良好な形質導入を実証しているが、後にサブゲノム長のDNAに断片化されていることが示されている。AUC法の適用性をさらに探索するために、大型のゲノムを使用して産生されたAAVベクターの不均一性を評価した。β-リン酸ジエステラーゼ導入遺伝子の発現を駆動する全長CBAプロモーターを保有する発現カセットを5.4kbの大型のゲノムとして(図15A)または4.6kbの野生型サイズゲノムとして(図15B)パッケージングした。4.6kbゲノムを生成するためにCBAプロモーターを以前報告されたイントロンのサイズの低減によって切断した(Gray,SJら、(2011)Hum.Gene Ther.22(9):1143~1153頁)。
【0170】
図15Aに示すとおり、大型のベクターゲノムを使用して生成されたAAVベクター調製物のAUCプロファイルは、ベクター調製物のおよそ半分が93S種として沈降しおよそ3.5kbの断片化ベクターゲノムのパッケージングと一致することを実証した。調製物の30%は、105Sで沈降するおよそ4.9kbの別のサブゲノムベクター種に相当した。108~109Sで沈降すると予測された全長5.4kbゲノムのパッケージングの証拠はなかった。対照的にAUC分析は、短縮されたCBAプロモーターの制御下で同じ導入遺伝子が102Sのベクター種として主に沈降し、4.6kbの予測された全長ベクターゲノムのパッケージングと一致したことを明らかにした(図15B)。これらの結果は、大型のゲノムを有するAAVベクターをプロファイリングすることにおけるAUC分析の有用性を実証し、ゲノム断片化の観察された事象を前提とするとこのプロファイリングは必須である。
【0171】
本実施例は、AUC法が不均一な調製物中のAAVベクターカプシドのゲノムサイズを分析することにおいて非常に有効であることを実証した。ゲノム含有カプシドをサイズ(例えば、二量体および単量体ゲノム、またはその部分断片)によって分解することによって、AUC法は、さまざまな条件下で産生されたAAVベクター調製物の品質をアッセイするための強力なツールとなる。さらに、3つの異なるベクター系からの結果は、AUC法が改善されたAAVベクター調製物を得るための品質管理および条件の最適化のために広く有用であることを実証した。重要なことにAUC法は、サザンブロット分析によって検出できない断片化ゲノムを検出できる。サザンブロッティングは、検出のためのDNAプローブ配列の存在に依存する一方で、AUC法は配列非依存性である。AUC法は、大
型のAAVゲノムを分析することにおいて有効なツールであることが実証された。全体としてこれらの結果は、ゲノムパッケージングに劇的に変化しやすい効果を示すことが見出された複数の種類のAAVベクター調製物を分析するための、AUC法の非常に有利で有効な実行を実証した。
【実施例0172】
分析超遠心分離法による組換えアデノウイルスベクター調製物の特徴付け
アデノウイルス(Ad)ベクターは、それらを遺伝子治療のためのベクターとして魅力的なものにする特性を有する。Adベクター産生物の生成は、製造の均一性、純度および整合性に関して産生物品質をモニターする分析方法を必要とする。この要求に応えるために、Adベクターの均一性を特徴付けるための技術としての分析超遠心分離法(AUC)の潜在的使用を調査した。
【0173】
方法
サンプル調製
正確なAUC評価を支持するために、組換えアデノウイルス血清型2ベクター(Ad2)を調製し、ゲノム含有粒子を濃縮するためにCsClグラジエント限外濾過によって高度に精製した。産生物濃度を分光光学的方法による260nm(OD260)での光学密度測定によって決定した。再現性のある一致したAUCデータを生成するためにサンプル調整を、260nmでの光学密度測定によって0.1から1.0の標的濃度に、PBSでの直接希釈またはAmicon Ultra-0.5/30K MWCO遠心フィルターデバイスを使用するさらなる濃縮によってのいずれかで行った。
【0174】
沈降速度AUCデータ取得
沈降速度分析超遠心分離法(SV-AUC)分析をProteomeLab(商標)XL-I(Beckman Coulter)を使用して実施した。400μLサンプルを2個のセクター速度セルのサンプルセクターにロードし、400μL PBSを対応する参照セクターにロードした。サンプルを4穴ローターに置き、20℃の温度まで装置内で平衡化し、高真空を1時間維持した。沈降速度遠心分離を6,000rpm、20℃、0.003cm半径工程設定で、遅延なし、反復なしで実施した。レイリー干渉光学を、最小沈降構成成分が光学ウインドウを透明化するまで(1.2時間)半径方向の濃度を時間の関数として同時に記録するために使用した。アッセイ処理量は、1分間より長い吸光度スキャン回収時間ならびにAd2の大きなサイズおよび急速な沈降に基づいて実行1回あたり単一のサンプルに限定した。
【0175】
AUCデータ分析
完全カプシド百分率をSEDFIT(NIH/ analyticalultracentrifugation.comのワールドワイドウエブを参照されたい)連続サイズC(S)分布モデルを使用する干渉検出法からおよそ75スキャンを分析することによって決定した。二次(2nd)微分正則化をF統計/比=0.68の信頼レベルでのフィッティングに適用した。以下のC(S)パラメーターを一定に保った:分解能=250S、Smin=10、Smax=1500および摩擦比=1.86935。RIおよびTIノイズサブトラクションを適用し、メニスカス位置を移行させ、ソフトウェアが最適な位置を選ぶようにされている。このモデルはデータをラム方程式にフィットし、生じたサイズ分布はフリンジの単位またはOD260単位で濃度に比例する各ピーク下面積を有するクロマトグラムのような「沈降係数の分布」であった。(スベドベルグ単位での)沈降係数および(OD単位での)相対濃度を分布における各構成成分について決定した。各AUC実行は独立アッセイであり、各分析を続く特性について結果の品質を確実にするためにモニターした:適合度(rmsd)、各ピークについてのOD260nm/フリンジにおける干渉シグナルの比(A260/IF比)、実行間での各種についての沈降係数の一致お
よびスキャンの全体的な品質。この代表的な例のrmsdは0.006584であった。
【0176】
結果
古典的境界沈降速度を使用する分析超遠心分離法(AUC)を組換えアデノウイルス血清型2ベクター(rAd2)ベクター調製物の粒子不均一性を明らかにするために使用した。遠心力への応答でのrAd2粒子の移動をモニターするために、rAd2カプシドのこの混合物を規定の時間間隔で遠心分離場に沿って干渉光学を使用してスキャンした。スキャンは、rAd2ベクター調製物中の構成分ベクター粒子の完全な移行パターンを明らかにする一連の濃度スキャンを得るための、時間tでの半径rの関数としての濃度データの取得を表した。微分沈降係数分布値、C(S)を沈降係数(スベドベルグ単位、S)に対してプロットすることは固有の沈降係数を有するrAd2種を含む異なるピークをもたらした(図16)。C(S)値は、Schuck(2000)Biophys.J.,78:1606~19頁に記載されるSEDFITアルゴリズムを使用して決定した。
【0177】
図16に示すrAd2ベクター調製物について、731のS値で沈降したrAd2ベクター調製物の87.8%は、カプシドを含有するゲノムから主に構成されるベクター調製物と一致した。このデータは、アデノウイルス粒子をAUCによって分解できることを確認している。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9-1】
図9-2】
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2024-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスカプシド内にカプシド化された組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを含むウイルス粒子の不均一混合物において各種の個別のウイルス粒子のモル濃度を決定する方法であって、
a)該ウイルス粒子の不均一混合物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供して沈降境界を生成する工程であって、沈降速度が約3,000rpmから約20,000rpmである工程、
b)沈降境界の移動または移行の速度を測定する工程であって、該ウイルス粒子の不均一混合物中の各種の個別のウイルス粒子の移動または移行が異なる沈降境界を生じ、各々の異なる沈降境界が分解可能なウイルス粒子の種に対応し、該ウイルス粒子の不均一混合物は完全ゲノム、断片化ゲノム、およびゲノムを含まない空のカプシドを含む工程、
c)該ウイルス粒子の不均一混合物中の個別のウイルス粒子の沈降係数を決定する工程、ならびに
d)該ウイルス粒子の不均一混合物中の各種の個別のウイルス粒子のモル濃度を定量する工程、
を含む、前記方法。
【請求項2】
工程(c)の後かつ工程(d)の前に、前記各種の個別のウイルス粒子の沈降係数を、既知のヌクレオチドサイズの組換えAAVゲノムを含むウイルス粒子の沈降係数から作成した標準曲線と比較することにより、該各種の個別のウイルス粒子のサイズを決定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
境界沈降速度が約10,000rpmから約20,000rpmまたは約15,000rpmから約20,000rpmで実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
境界沈降が約4℃の温度で実行される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
遠心分離が約0.5時間から約2時間実行される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)前の前記不均一混合物中のウイルス粒子の総濃度が5x1011vg/mLより高い、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(a)前の前記不均一混合物中のウイルス粒子の総濃度が約1x1011vg/mLから約1x1013vg/mLである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ウイルス粒子がAAV9カプシドタンパク質を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ウイルス粒子が少なくとも1つのAAV2 ITRを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ウイルス粒子の不均一混合物における各種の個別のウイルス粒子の相対比率を決定する工程をさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ウイルスカプシド内にカプシド化された組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを含むウイルス粒子の調製物において1つまたはそれ以上の断片化ゲノムのサイズを決定する方法であって、
a)該調製物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供して1つまたはそれ以上の沈降境界を生成する工程であって、境界沈降速度が約3,000rpmから約20,000rpmである工程、
b)該1つまたはそれ以上の沈降境界の移動または移行の速度を測定する工程であって、該ウイルス粒子の移動または移行が異なる沈降境界を生じ、各々の異なる沈降境界が分解可能なウイルス粒子に対応し、1つまたはそれ以上のウイルス粒子が断片化ウイルスを含む工程、および該調製物中の1つまたはそれ以上の断片化ゲノムを含むウイルス粒子の沈降係数を決定する工程、ならびに
c)該1つまたはそれ以上の断片化ゲノムを含むウイルス粒子の沈降係数の関数として1つまたはそれ以上の断片化ゲノムのサイズを決定する工程、
を含む、前記方法。
【請求項12】
工程(c)が、前記断片化ゲノムを含む1つまたはそれ以上のウイルス粒子の沈降係数を、既知のヌクレオチドサイズの組換えAAVゲノムを含むウイルス粒子の沈降係数から作成した標準曲線と比較することにより、1つまたはそれ以上の断片化ゲノムのサイズを決定することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記断片化ゲノムがサブゲノムDNA分子である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記調製物中のすべての断片化ゲノムのサイズを決定する工程を含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記断片化ゲノムのすべてを定量する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ウイルス粒子がAAV9カプシドタンパク質を含む、請求項11~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ウイルス粒子が少なくとも1つのAAV2 ITRを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ウイルス粒子の不均一混合物において断片化した組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV
)ゲノムを含む1つまたはそれ以上の種の個別の変種ウイルス粒子を定量する方法であって、
a)該ウイルス粒子の不均一混合物を境界沈降速度条件下で分析超遠心分離法に供して沈降境界を生成する工程であって、境界沈降速度が約3,000rpmから約20,000rpmである工程、
b)沈降境界の移動または移行の速度を測定する工程であって、該ウイルス粒子の不均一混合物中の各種の個別のウイルス粒子の移動または移行が異なる沈降境界を生じ、各々の異なる沈降境界が分解可能なウイルス粒子の種に対応し、該個別のウイルス粒子はゲノムを含まない空の粒子、完全ゲノムを含む粒子、および断片化ゲノムを含む粒子を含む工程、
c)該ウイルス粒子の不均一混合物中の1つまたはそれ以上の種の個別の変種ウイルス粒子のゲノムサイズを決定する工程、ならびに
d)該ウイルス粒子の不均一混合物中の1つまたはそれ以上の種の変種ウイルス粒子の量を決定する工程、
を含む、前記方法。
【請求項19】
前記ウイルス粒子の不均一混合物中の各種の個別の変種ウイルス粒子が完全に分解される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ウイルス粒子の不均一混合物中の1つまたはそれ以上の種の個別の変種ウイルス粒子のゲノムサイズを決定する工程が、該変種ウイルス粒子の沈降係数を、既知のヌクレオチドサイズの組換えAAVゲノムを含むウイルス粒子の沈降係数から作成した標準曲線と比較することを含む、請求項18または19に記載の方法。
【外国語明細書】