(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011311
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】管内検査ロボット
(51)【国際特許分類】
B61B 13/10 20060101AFI20240118BHJP
F16L 55/134 20060101ALI20240118BHJP
G02B 23/24 20060101ALN20240118BHJP
【FI】
B61B13/10
F16L55/134
G02B23/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113214
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】518042833
【氏名又は名称】株式会社ソラリス
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】梅田 清
(72)【発明者】
【氏名】中村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】風間 祐人
(72)【発明者】
【氏名】内田 千春
【テーマコード(参考)】
2H040
3H025
【Fターム(参考)】
2H040AA02
2H040BA00
2H040CA03
2H040CA21
2H040DA43
2H040DA55
2H040FA01
2H040GA02
3H025DA02
3H025DB19
3H025DC01
3H025DD05
(57)【要約】
【課題】配管内の検査において流体を止めずに検査を可能とする管内検査ロボットを提供する。
【解決手段】流体の流れる管内を移動可能に構成された移動体を備えた管内検査ロボットであって、移動体は、作動媒体の給排により管の半径方向に膨縮するとともに管の中心線方向に伸縮する管状体により構成され、前後方向に並ぶように配置された複数の伸縮部と、前後方向に配置された一方の伸縮部の端部に対向する他方の伸縮部の端部とを連結する管状に構成された連結部とを備え、複数の伸縮部を前記連結部により連結したときに、先頭の伸縮部の前端から最後尾の伸縮部の後端まで貫通する内部流路を備える構成とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流れる管内を移動可能に構成された移動体を備えた管内検査ロボットであって、
前記移動体は、
作動媒体の給排により管の半径方向に膨縮するとともに管の中心線方向に伸縮する管状体により構成され、前後方向に並ぶように配置された複数の伸縮部と、
前後方向に配置された一方の伸縮部の端部に対向する他方の伸縮部の端部とを連結する管状に構成された連結部と、を備え、
前記複数の伸縮部を前記連結部により連結したときに、先頭の伸縮部の前端から最後尾の伸縮部の後端まで貫通する内部流路を備えたことを特徴とする管内検査ロボット。
【請求項2】
管壁との間に前記流体の流れを許容する外周流路を形成する先頭部と、
前記先頭部の後端部と先頭に位置する伸縮部の前端部とを連結する先頭側連結部と、を備え、
前記先頭側連結部は、
前記外周流路から前記内部流路へと導入する導入流路を備えたことを特徴とする請求項1に記載の管内検査ロボット。
【請求項3】
前記連結部は、外周から内周の前記内部流路に連通する取込口を備えたことを特徴とする請求項2に記載の管内検査ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管内検査ロボットに関し、特に、流体を給排することにより膨張収縮するユニットを複数連結し、複数のユニットを蠕動運動を模すように動作させて管内を移動させながら管内を検査するための管内検査ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
社会のインフラとして上下水道、ガス管等の配管が張り巡らされている。このようなインフラの環境の保全、衛生状態を維持するために、配管の内部を検査することで老朽化の状態や破損等を防ぐことが必要とされている。このような配管内を検査するための技術の一つとして、例えば、特許文献1に開示された先頭部に検査ユニットが設けられた管状移動体が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の管状移動体による配管内の検査は、配管内を流れる上水や下水、ガス等の流れを長時間にわたり止める必要があり、検査時の課題とされていた。
そこで、本発明では、配管内の検査において流体を止めずに検査を可能とする管内検査ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための管内検査ロボットの構成として、流体の流れる管内を移動可能に構成された移動体を備えた管内移動ロボットであって、移動体は、作動媒体の給排により管の半径方向に膨縮するとともに管の中心線方向に伸縮する管状体により構成され、前後方向に並ぶように配置された複数の伸縮部と、前後方向に配置された一方の伸縮部の端部に対向する他方の伸縮部の端部とを連結する管状に構成された連結部とを備え、複数の伸縮部を前記連結部により連結したときに、先頭の伸縮部の前端から最後尾の伸縮部の後端まで貫通する内部流路を備えた構成とした。
本構成によれば、管内を流れる流体を内部流路を経由して流すことができるので、流体を流した状態であっても推進させることができる。
また、管壁との間に前記流体の流れを許容する外周流路を形成する先頭部と、先頭部の後端部と先頭に位置する伸縮部の前端部とを連結する先頭側連結部とを備え、先頭側連結部は、外周流路から内部流路へと導入する導入流路を備えたことにより、流体を流した状態であっても推進させることができる。
また、連結部は、外周から内周の内部流路に連通する取込口を備えたことにより、管内を流れる流体をより確実に内部流路を経由して流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図5】膨縮ユニットを構成する外筒の径方向断面図である。
【0007】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[管内移動ロボットの概略構成]
以下、本発明の実施形態について、各図に基づき説明する。
図1は、配管E内を移動する管内移動ロボット1の概略構成図である。
図1に示すように、管内移動ロボット1は、配管E内を移動する移動体2と、配管E内における移動体2の動作を制御する制御装置100とを備える。
【0009】
移動体2は、検査ユニット10と、複数の膨縮ユニット20(伸縮構成部)と、複数の連結ユニット(連結部)40とを備える。
移動体2は、先端に設けられた検査ユニット10と前側から数えて1番目の膨縮ユニット20とが前端側連結ユニット40を介して連結され、前側から数えて1番目の膨縮ユニット20と前側から数えて2番目の膨縮ユニット20とが連結ユニット40を介して連結され、以後同様に、前側の膨縮ユニット20と後側の膨縮ユニット20とが連結ユニット40を介して順次連結されて構成される。
【0010】
なお、本実施形態では、
図1に示すように、検査ユニット10及び4個の膨縮ユニット20が、複数の連結ユニット40を介してそれぞれ連結されて移動体2を構成するものとして説明する。また、膨縮ユニット20の位置を特定する場合には、前側から後側に向かって順に、膨縮ユニット20A、膨縮ユニット20B、膨縮ユニット20C、膨縮ユニット20Dと示して説明する場合がある。また、以下の説明では、矢印に沿う方向を移動体2の進行方向とし、この進行方向を前側、逆を後側としてその前後方向を特定する。
【0011】
図2は、検査ユニットの外観斜視図、
図3は、検査ユニットの平面図である。
検査ユニット10は、検査手段としての例えば撮像手段17及び照明手段18と、検査手段を所定の取付状態で収容するためのヘッド部材としての管状収容部12と、管状収容部12の周囲に設けられた支持手段15とを備えた構成とされている。
【0012】
管状収容部12の前端開口12Aは、光透過性を有した前側塞板13Aで塞がれている(
図2;
図3参照)。照明手段18が当該前側塞板13Aを通して前方を照射可能なように管状収容部12の管内に所定の状態で取り付けられ、撮像手段17が当該前側塞板13Aを通して前方を撮像可能なように管状収容部12内に所定の状態で取り付けられる。
【0013】
これにより、移動体2は、検査対象の管E内を進行方向に移動する際に、照明手段18で照射される光によって検査ユニット10の前方の管E内を照らし、撮像手段17によって検査ユニット10の前方の管E内を撮像することができるように構成される。
【0014】
撮像手段17及び照明手段18には、可撓性を有するケーブル19が接続される(
図1参照)。ケーブル19は、一端側が撮像手段17及び照明手段18と接続され、他端側が管E外に設けられた制御装置100に接続される。ケーブル19は、例えば、撮像手段17及び照明手段18に電力を供給する電力線、撮像手段17で受光して得られた画像データを出力する信号線等の可撓性を有するケーブルを束ねた構成とされる。
【0015】
管状収容部12の後端部は、例えば、ケーブル19の外部への露出を可能としつつ後側蓋体13B等により閉鎖される。管状収容部12の内部は、前述の前側塞板13Aと、後側蓋体13Bにより気密状態が維持され、内部への液体や気体等の侵入が防止される。管状収容部12は、連結ユニット40の前端部に連結可能に構成される。
【0016】
支持手段15は、例えば、
図2に示すように、板状部材を所定の弾性を持つように形成した板ばね16が、管状収容部12の外周面12aに、外周面12aの周に沿った方向(以下、周方向という)に沿って所定の間隔を隔てて複数設けられる。
【0017】
板ばね16は、例えば、長尺な細幅の平板材の長手方向の一端部16aの一方の板面を管状収容部12の前端側の外周面12aに固定した後、平板材の長手方向の他端側を管状収容部12の前端12tより前方に延長させて当該平板材の一端側を管状収容部12の前端12tより前方の位置で平板材の板面を湾曲させた後に平板材の他端側を後方に折り返し、さらに、平板材の他端側の他端に近い側の板面を湾曲させた後に前方に折り返した他端部16bの一方の板面を管状収容部12の後端12s側の外周面12aに固定することによって、所定の弾性が付与される。
【0018】
当該板ばね16は、例えば、
図3に示すように、管状収容部12の外周面12aに、外周面12aの周方向に沿って所定の等しい間隔を隔てて6個配設されている。なお、各板ばね16の表面には、管Eの内壁との摩擦を低減するための摩擦低減シート等の摩擦低減手段を設けると良い。
【0019】
このように、検査ユニット10は支持手段15を備えることにより、管Eの中心線の近傍に撮像手段17を配置することができ、管Eの内壁の画像を円周方向に均等に撮影することができる。
また、支持手段15は、板ばね16により形成された湾曲面16tが管状収容部12の前端12tよりも前方に位置されるように構成されたので、移動体2が管E内の屈曲路を通過する際、管状収容部12の前端12tよりも先に当該湾曲面16tが屈曲路の内壁に衝突するので、先頭側の連結ユニット40の曲がって検査ユニット10が進路を変えやすくなり、移動体2が管E内における屈曲路のスムーズな通過が可能とされる。
【0020】
また、板ばね16は、管状収容部12の外周から突出するように設けられるとともに周方向に間隔を隔てて設けられていることから管状収容部12の外周と管壁との間に空間(以下外周空間という)S1が形成される。
【0021】
[膨縮ユニットの構成]
図4は、膨縮ユニット20の一構成例を示す軸方向断面図である。膨縮ユニット20は、内筒21と、内筒21とともに二重管を形成するように内筒21の外周を囲むように配設される外筒22と、内筒21及び外筒22の端部に設けられる一対の端部部材23;23とを備える。
【0022】
内筒21は、軸方向に沿って伸縮可能な蛇腹構造を有する断面円形の筒体である。本実施形態の蛇腹構造は、螺旋状の蛇腹構造を有するものとして説明するが、これに限定されない。内筒21を構成する素材には、例えば、軸線の曲がりを許容し、内周側や外周側からの圧力により変形しにくい可撓性を有する素材で構成されることが好ましい。内筒21は、各端部が端部部材23に設けられた内筒固定部28に取り付けられる。
【0023】
図5は、
図4中のA1-A1矢視における外筒22の断面を誇張して示した図である。同図に示すように、外筒22は、弾性体より形成される円筒状の筒本体22Aと、当該筒本体22Aの内部において密に内挿された複数の繊維22Bとから構成される。筒本体22Aの材質としては、シリコーンゴム等の合成ゴム、或いは天然ラテックスゴム等の天然ゴム等の気密性及び伸縮性を有する弾性素材が好適である。
【0024】
繊維22Bは、一端側から他端側まで連続するように、軸線に沿って延長するように外筒22の壁厚内に配置され、本実施例では層状に複数積層して密に内挿される。なお、繊維22Bは、積層せずに単層であっても良い。繊維22Bは、筒本体22Aの軸方向に沿って延在するものとして示すが、軸方向に対して交差するように設けても良い。
【0025】
この外筒22は、各端部が端部部材23に設けられる外筒固定部29に取り付けられる。また、前述の一端側から他端側まで連続するようにとは、一本の繊維22Bが外筒22の一端側から他端側に到達する状態や、外筒22の軸方向長さよりも短い複数の繊維が、軸方向に連続的に分布することで一端側から他端側まで到達する状態を意図する。
【0026】
繊維22Bの素材には、軸方向への伸縮変化の小さい素材が好適である。例えば、繊維22Bの素材には、例えば、アラミド繊維、炭素(カーボン)繊維、ガラス繊維、ナイロン、ポリアミド系繊維やポリオレフィン系繊維、金属繊維等の被伸長性を有するものを適宜選択して用いることができる。
また、繊維22Bには、筒本体22Aとの密着性を考慮して、適当なプライマー処理、又は、表面酸化処理等を行うと良い。
【0027】
また、繊維22Bの形態は、フィラメント、ヤーン(スパン・ヤーン及びフィラメント・ヤーン)、ストランド等のいずれの形態でも用いることができ、さらに、撚りをかけずに収束させた無撚繊維、これらの繊維を複数本撚って作成した繊維を用いることも可能である。繊維の種類にもよるが、二種類以上の素材の異なる繊維や形態の異なる繊維を組み合わせても良い。
【0028】
筒本体22Aを形成する素材は、後述する気密室Vへの圧縮空気の給排によってその形状が変化し得る材質であれば如何なる材質であっても良い。また、筒本体22Aの厚さや繊維22Bの配置については、外筒22の空気排出時の伸長する力等を考慮して決められる。
【0029】
端部部材23は、例えば樹脂や硬質のゴム、金属等により円筒状に形成された円筒体であって、内筒21を固定する内筒固定部28と、外筒22を固定する外筒固定部29とを備える。内筒固定部28は、内筒21の外周を嵌着可能に端部部材23の内周面の一端側に設けられる。
【0030】
本実施形態では、内筒21が螺旋状の蛇腹構造を有するものとしたので、例えば、内筒固定部28は、内筒21の螺旋形状を利用し、内筒21の外周をねじ込み可能な螺旋溝として形成することができる。以下、端部部材23において軸方向に内筒固定部28が設けられた側を内側といい、その逆側を外側という。
【0031】
例えば、内筒固定部28を形成する螺旋溝は、内筒21との気密性を考慮し、少なくとも内筒21の外周側において螺旋を描く山部の1ピッチ以上となるように形成すると良い。また、内筒固定部28は、例えば、内筒21の外周面と密着するように形成することにより、内筒21との気密性をより確実なものとすることができる。このように、内筒21は、端部部材23;23と一体化されることにより、端部部材23;23の内周側の空間とともに軸方向に貫通する空間(以下、貫通空間という)S2を膨縮ユニット20に形成する。
【0032】
外筒固定部29は、端部部材23の外周面に形成される。外筒固定部29は、内筒固定部28に固定された内筒21の端面よりも所定距離軸方向外側に位置し、端部部材23の外周を軸方向外側に行くにしたがって外径が漸次小径となるように、例えば球面状やテーパー状等に形成すると良い。
【0033】
外筒22は、端部が外筒固定部29を軸方向外側に過ぎるように外筒22を配置した状態において、端部部材23の軸方向外側からリング状のカシメ部材30を外筒22の外周面側に被せ、さらにカシメ部材30の外側から半円状に形成された一対の固定部材32で端部部材23の外周面に挟み込むように固定することで端部部材23に固定される。
【0034】
このように内筒21及び外筒22の端部を端部部材23;23に固定することにより、膨縮ユニット20には、内筒21の外周面と端部部材23の外周面及び外筒22の内周面によって囲まれた閉空間としての気密室Vが形成される。
【0035】
さらに、端部部材23には、連結ユニット40を固定するためのジョイント固定部34と、気密室Vへの空気を給排を可能にする給排孔36が設けられる。
【0036】
ジョイント固定部34は、例えば、端部部材23に外筒22を固定した状態において前述の固定部材32よりも軸方向外側に露出して設けられる。ジョイント固定部34は、例えば、端部部材23の肉厚方向(半径方向)に貫通するねじ孔として形成される。
【0037】
給排孔36は、内周側から内筒固定部28と外筒固定部29との間に形成された気密室Vに空気を給排可能に形成される。例えば、給排孔36は、端部部材23の内周面から端部部材23の内側の端面に貫通する貫通孔として形成される。この給排孔36には、後述の制御装置100から延長するチューブ60が接続される。
【0038】
図6は、膨縮ユニット20の動作を示す図である。膨縮ユニット20は、気密室Vに空気を供給することにより、軸方向に長さがx1からx2へと収縮するとともに径方向に外径がd1からd2へと拡径する。また、気密室Vから空気を排出することにより軸方向の長さがx2からx1へと伸長するとともに径方向に外径がd2からd1へと収縮する。
【0039】
以下、管Eの内壁に接するように気密室Vに空気が供給された状態を膨張状態、気密室Vから空気が排出された状態を収縮状態という。膨縮ユニット20は、空気を供給し、膨張させることにより、外筒22の外周面と管Eの内壁とに摩擦を生じさせるアクチュエータとして機能する。
【0040】
[連結体の構成について]
図7は、連結ユニット40の一例を示す外観図である。
連結ユニット40は、膨縮ユニット20に取り付けられる一対の取付体41と、取付体41同士を結合する結合体42と、コイルばね44とを備え、ユニバーサルジョイントとして機能するように構成される。
取付体41は、例えば、端部部材23の外周に嵌着可能な大きさに形成された円筒状の基部41Aと、基部41Aの一側側において直径方向に互いに対向し、基部41Aの軸方向に沿って延長するように同一の長さで突設された一対の突片41B;41Bを備える。
【0041】
結合体42は、取付体41の突片41B;41Bの内周面側を摺動可能な外径を有する環状部材として形成される。連結ユニット40は、一方の取付体41の突片41B;41Bと、他方の取付体41の突片41B;41Bとを対向させ、互いに90°捻じれた位置となるように結合体42を挟み込むように取り付けられる。
【0042】
各取付体41は、例えば、各突片41Bの肉厚方向及び結合体42の肉厚方向に軸部材43を介して連結することで、各取付体41が結合体42に対してそれぞれ軸部材43を軸として回転可能に取り付けられる。このように、結合体42を介して取付体41を連結することにより、一方の取付体41の端部から他方の取付体41の端部に連続する内周側空間S3が形成されるとともに、多自由度の屈曲を可能とする各取付体41と結合体42の間に逃げ空間S4が形成される。
【0043】
図7(a),(b)に示すように、コイルばね44は、結合体42を介して連結された一方の取付体41及び他方の取付体41の内周側に設けられる。コイルばね44は、例えば、一方の取付体41の内周側から結合体42の内周を経て他方の取付体41の内周側に至る長さを有し、外径が結合体42の内径よりもやや小さい寸法とされる。
【0044】
コイルばね44は、例えば、端部が一方の取付体41や他方の取付体41の基部41Aの内周面から突出するように端部を支持する着座部を設けることで、取付体41;41と一体化され、取付体41;41の内周から脱落不能とされる。このように、連結ユニット40がコイルばね44を内包していることにより、一方の取付体41に対する他方の取付体41の屈曲を許容しつつコイルばね44の弾性(復元力)により一方の取付体41と他方の取付体41とを直線的に配置させることができる。
【0045】
また、各取付体41;41の基部41Aは、貫通孔46を備える。貫通孔46は、取付体41に膨縮ユニット20の端部部材23を挿入したときに、膨縮ユニット20に設けられたジョイント固定部34に重なるように設けられる。そして、貫通孔46に図外のボルトを挿入し、ジョイント固定部34にねじ込み、締め付けることで、膨縮ユニット20の端部部材に取付体41が固定される。これにより、連結ユニット40を介して膨縮ユニット20;20同士が連結される。
【0046】
そして、連結ユニット40により連結された膨縮ユニット20:20は、
図5(a)に示す直線状態や、
図5(b)に示すように、膨縮ユニット20同士の軸線が交差するように屈曲することが可能となる。
【0047】
したがって、連結ユニット40により、前後に配置された一方の膨縮ユニット20の端部と対向する他方の膨縮ユニット20の端部とを順次連結することにより移動体2における推進力発生部8が構成される。
【0048】
そして、推進力発生部8の先頭側に位置する膨縮ユニット20の前端部と検査ユニット10の後端部とを連結ユニット40により連結することで移動体2が構成される。
【0049】
推進力発生部8を構成する膨縮ユニット20及び連結ユニット40がそれぞれ中空とされており、推進力発生部8は、全体として管状をなす。即ち、推進力発生部8には、先端から後端まで連続する中空の連続空間S5が形成されている。
【0050】
連続空間S5は、例えば、膨縮ユニット20に個別に接続されるチューブ60の配管路、及び検査ユニット10に接続されるケーブル19の配線路として利用される。
【0051】
[制御装置について]
制御装置100は、移動体2の前進や後退等の進行を制御するための装置である。
図1に示すように、制御装置100は、例えば、流体給排部110と、駆動制御部160とを備えた構成とすることができる。
【0052】
[流体給排部]
流体給排部110は、連結された膨縮ユニット20の作動媒体である流体の供給、停止、排出を制御する。本実施形態では、作動媒体に空気を利用するものとして説明する。なお、流体は、空気に限定されず、他の気体や水などの液体を利用しても良い。また、流体給排部110は、利用する流体に応じて、以下で説明する機能が得られるように構成すれば良い。
【0053】
流体給排部110は、例えば、コンプレッサー112、レギュレータ114、供給弁116、排出弁118、流量センサ120、圧力センサ122等を備える。
コンプレッサー112は、気密室Vに供給する空気を圧縮空気として生成する。圧縮空気は、少なくとも膨縮ユニット20の外筒22を膨張させたときに、外筒22の外周面が管Eの内壁に密接可能な圧力よりも高く設定される。
【0054】
レギュレータ114は、コンプレッサー112と接続され、コンプレッサー112により生成された圧縮空気を所定の圧力に減圧して一定圧の圧縮空気として出力する。
【0055】
供給弁116は、レギュレータ114と接続され、レギュレータ114から流入する圧縮空気を気密室Vに供給、及び、供給の停止を制御する。供給弁116は、電気的な信号に基づいて開閉する弁を有し、弁を開くことで圧縮空気を気密室Vに供給し、弁を閉じることで圧縮空気の供給を停止する。供給弁116は、駆動制御部160と電気的に接続され、駆動制御部160から入力される信号に基づいて弁を開閉する。
【0056】
排出弁118は、膨縮ユニット20と接続され、膨縮ユニット20内の圧縮空気の排出を制御する。排出弁118は、電気的な信号に基づいて開閉する弁を有し、弁を開くことで膨縮ユニット20内の圧縮空気を排出し、弁を閉じることで圧縮空気の排出を停止する。排出弁118は、駆動制御部160と電気的に接続され、駆動制御部160から入力される信号に基づいて弁を開閉する。
【0057】
なお、供給弁116及び排出弁118は、初期状態として信号が入力されない状態において弁を閉じた状態とし、信号が入力されることで弁を開き、信号が停止されることで弁を閉じるものとして説明する。
【0058】
供給弁116及び排出弁118には、例えば、ソレノイドバルブを適用することができる。供給弁116及び排出弁118は、ソレノイドバルブを用いることにより、膨縮ユニット20を膨張或いは収縮させるときの応答速度を向上させることができる。
【0059】
流量センサ120は、供給弁116と膨縮ユニット20との間に設けられ、供給弁116を介して膨縮ユニット20に供給される圧縮空気の流量を計測する。流量センサ120は、駆動制御部160と電気的に接続され、計測した圧縮空気の流量を駆動制御部160に出力する。
【0060】
圧力センサ122は、例えば、流量センサ120と膨縮ユニット20との間に設けられ、膨縮ユニット20の気密室V内の空気の圧力を検出する。圧力センサ122は、駆動制御部160と電気的に接続され、計測した気密室V内の空気の圧力を駆動制御部160に出力する。
【0061】
駆動制御部160は、膨縮ユニット20を動作させるための制御手段である。例えば、駆動制御部160は、演算処理手段としてのCPUや記憶手段としてのROM,RAM等のハードウェアを備えたコンピュータである。駆動制御部160は、演算処理手段が記憶手段に記憶されたプログラムに従って処理を実行し、各膨縮ユニット20に対応して設けられた流量センサ120から入力される流量及び圧力センサ122から入力される圧力に基づいて、膨縮ユニット20毎に設けられた供給弁116及び排出弁118に弁を開閉するための信号を個別に出力する。
【0062】
なお、駆動制御部160は、コンピュータに限定されず、PLC(Programmable Logic Controller)を利用することもできる。
【0063】
駆動制御部160は、膨縮ユニット20を膨張させる場合、供給弁116には信号を出力し、排出弁118には信号の停止状態を維持する。これにより、膨縮ユニット20は、気密室V内に圧縮空気が流入し、外筒22が膨張する。
【0064】
駆動制御部160は、気密室Vへの圧縮空気の供給過程において、流量センサ120から入力される流量の変化、及び、圧力センサ122から入力される圧力の変化を監視し、流量と圧力が所定値となったときに、必要とされる膨張状態に達したものとして供給弁116への信号の出力を停止する。
【0065】
また、駆動制御部160は、膨縮ユニット20を収縮させる場合、供給弁116には信号の停止状態を維持し、排出弁118には信号を出力する。これにより、膨縮ユニット20は、気密室V内の圧縮空気が排気弁118を介して大気に放出され、収縮する。
【0066】
図8は、移動体2の推進動作の一例を示す図である。駆動制御部160は、例えば、
図8に示すように、移動体2の推進動作をさせることができる。
まず、
図8(a)に示すように、全ての膨縮ユニット20A~20Dを膨張させて、
推進力発生部8を全体として収縮させる。
次に、
図8(b)に示すように、膨縮ユニット20Dを除く膨縮ユニット20A~20Cを収縮させ、膨縮ユニット20Dを基準として推進力発生部8の全長を進行方向前方に伸長させる。
次に、
図8(c)に示すように、膨縮ユニット20Dの膨張状態及び膨縮ユニット20B;20Cの収縮状態を維持したまま、膨縮ユニット20Aを膨張させる。
次に、
図8(d)に示すように、膨縮ユニット20Aの膨張状態及び膨縮ユニット20B;20Cの収縮状態を維持したまま、膨縮ユニット20Dを収縮させる。
次に、
図8(e)に示すように、膨縮ユニット20Aの膨張状態を維持したまま膨縮ユニット20B~20Dを収縮させる。
【0067】
このように
図8(a)~
図8(d)に示す行程を1サイクルとして繰り返すことで管E内を前進することができる。
また、移動体2は、前進と逆の行程を1サイクルとして繰り返すことで後退させることができる。
【0068】
本実施形態の移動体2によれば、推進力発生部8を構成する膨縮ユニット20が連続空間S5及び連結ユニット40が内周側空間S3及び逃げ空間S4を有し、さらに検査ユニット10が管壁との間に外周空間S1、推進力発生部8と検査ユニット10とを連結する先頭側の連結ユニット40が内周側空間S3及び逃げ空間S4を有することから、移動体2を管E内に配置したときに、移動体2が前述のような推進動作をしても移動体2の前後の空間が閉鎖されることがない。
【0069】
つまり、管E内に流体を流した状態であっても、移動体2によって流れがせき止められることがない。
換言すれば、膨縮ユニット20を連結ユニット40により連結して構成された推進力発生部8の内部には、膨縮ユニット20及び連結ユニット40が連結されたことにより、膨縮ユニット20の貫通空間S2及び連結ユニット40の内周側空間S3で構成された一つの連通空間S5が内部流路J3として機能し、検査ユニット10の外周空間S1が外周流路J1として機能し、先頭側に位置する連結ユニット40の逃げ空間S4が導入流路J2として機能する。
また、推進力発生部8が推進動作をして膨張した膨縮ユニット20により管Eを閉塞したときに、膨張する膨縮ユニット20の上流側に連結された連結ユニット40が逃げ空間S4が、推進力発生部8の外周から内部流路J3に流体を取り込む取込口J4として機能する。
【0070】
図8を用いて管E内を移動体2が移動するときの移動体まわりの流体の流れについて説明する。図中にける矢印Fは、流体の流れを示している。
例えば、
図8(a)や
図8(e)に示すように、全ての膨縮ユニット20が膨張している場合には、管Eを流れる流体は、外周流路J1から先頭側の連結ユニット40の導入流路J2、内部流路J3を経て下流側に流れる。
また、
図8(b)に示すように、最後尾の膨縮ユニット20のみが膨張している場合には、管Eを流れる流体は、外周流路J1から先頭側の連結ユニット40の導入流路J2から内部流路J3に流入し内部流路J3を経た流れと、収縮状態の膨縮ユニット20の外周を流れて膨縮ユニット20同士を連結する各連結ユニット40の取込口J4から内部流路J3に合流する流れによって下流側に流れる。
また、
図8(c)に示すように、先頭及び最後尾の膨縮ユニット20のみが膨張している場合や、
図8(d)に示すように、先頭の膨縮ユニット20のみが膨張している場合には、管Eを流れる流体は、外周流路J1から先頭側の連結ユニット40の導入流路J2、内部流路J3を経て下流側に流れる。
【0071】
したがって、移動体2が、作動媒体の供給により管Eの半径方向に膨縮するとともに管Eの中心線方向に伸縮する管状体により構成され、前後方向に並ぶように配置された複数の膨縮ユニット20(伸縮部)と、前後方向に配置された一方の膨縮ユニット20(伸縮部)の端部に対向する他方の膨縮ユニット20(伸縮部)の端部とを連結する管状に構成された連結ユニット40(連結部)とを備え、複数の膨縮ユニット20(伸縮部)を連結ユニット40(連結部)により連結したときに、先頭の膨縮ユニット20(伸縮部)の前端から最後尾の膨縮ユニット20(伸縮部)の後端まで貫通する内部流路J3を備えたことにより、管E内に移動体2を配置し、推進動作させても管Eを流れる流体を内部流路J3を経て上流側から下流側へと流すことができる。
また、管壁との間に前記流体の流れを許容する外周流路J1を形成する検査ユニット10(先頭部)の後端部と先頭側に位置する膨縮ユニット20(伸縮部)の前端部とを連結ユニット40(先頭側の連結部)により連結し、連結ユニット40(先頭側の連結部)が外周流路J1から内部流路J3へと流入する導入流路J2を備えたことにより、管E内を流れる流体を停止することなく管E内を検査することができる。
さらに、連結ユニット40(連結部)が、外周から内周の内部流路J3に連通する取込口J4を備えることにより、連結された膨縮ユニット20の伸縮動作に関わらず管E内を流れる流体を内部流路J3を経由して移動体2の進行方向下流側に流出させることができる。
【0072】
図9は、移動体2の他の形態を示す図である。なお、
図9(b),(c)は、検査ユニット10を前後方向から平面視した図である。
上記実施形態では、検査ユニット10が支持手段15を備えることにより、管Eの中心線の近傍に撮像手段17が配置されるように移動体2を構成したが、例えば、
図9に示すように移動体2を構成しても良い。
【0073】
図9に示す移動体2は、板ばね16により構成された支持手段15が複数の繊維により
構成される点と、支持手段15が複数箇所に設けられている点とで
図1に示す移動体2と異なる構成である。
【0074】
図9(a)に示すように、複数の繊維により構成される支持手段15は、例えば、検査ユニット10の後端部や、各膨縮ユニット20を挟むように膨縮ユニット20の前側及び後側に設けられ、検査ユニット10や各膨縮ユニット20により構成される移動体2全体を管Eの中心線側に配置させるためのセンタリング手段として機能する。
【0075】
図9(b),(c)支持手段15は、例えば、検査ユニット10の後端部や、膨縮ユニット20の両端に設けられる端部部材23;23の外周、又は、膨縮ユニット20の両端に連結される連結ユニット40の外周に嵌着可能なリング状のベース部材15Aに、該ベース部材15Aの円周方向に複数の繊維15Bが放射状に延長するように構成される。
【0076】
図9(b)に示すように、放射状に設けられる複数の繊維15Bは、例えば、繊維15Bの先端が管Eの内壁に達する長さ、かつ、検査ユニット10や膨縮ユニット20が管Eの中心線近傍への配置状態が維持されるような剛性を有するものが好ましい。また、ベース部材15Aの外周に設けられる複数の繊維15Bは、例えば、移動体2が前進したときに、前方の空気が後方に逃げられる程度の繊維15Bの隙間を有するようにとすると良い。
より好ましくは、検査対象の管E内に移動体2を配置し、管E内を流れる流体を流したときに、移動体2の進行を妨げない程度で繊維15Bの間を流体が通過可能となるように、繊維15Bの密度や繊維15Bの剛性などの特性に応じた素材を設定すると良い。
【0077】
なお、支持手段15は、繊維15Bを用いたものに限定されないが、好ましくは、管E内の流れを許容するとともに、検査ユニット10や膨縮ユニット20の管Eの中心線近傍への配置状態が維持することができ、加えて移動時の摩擦が小さいものとすると良い。
【0078】
移動体2がこのような支持手段15を備えた場合であっても、管Eを流れる流体は、支持手段15を構成する繊維15Bの隙間を移動体2の外周側を流れ、
図8に示すように、移動体2が蠕動運動をした場合であっても流体をて移動体2の進行方向下流側に流出させることができる。
【0079】
なお、連結ユニット40は、上述したような剛体を素材としたユニバーサルジョイントに限定されず、管状の弾性体(管状弾性体)で構成しても良い。管状弾性体の例としては、膨縮ユニット20の内筒21に用いた蛇腹のような可撓性を有し、素材の弾性により復元力を有するものを用いることができる。
【0080】
例えば、管状弾性体を連結ユニットとする場合、少なくとも先頭側に設けられる連結ユニットは、筒状弾性体の内周面から外周面に貫通する孔を設け、先頭部の外周を流れた流体を推進力発生部8の内部流路J3へと流入可能とすると良い。
【0081】
本実施形態では、検査ユニット10と膨縮ユニット20とを連結する連結ユニット40や、膨縮ユニット20同士を連結する連結ユニット40を同じものを用いて説明したがこれに限定されず、異なる素材や異なる構成の連結ユニットを組み合わせて用いても良い。
【符号の説明】
【0082】
1 管内移動ロボット、2 移動体、8 推進力発生部、10 走行部、
20 膨縮ユニット、40 連結ユニット、
100 制御装置、110 流体給排部、160 駆動制御部、E 管、
J1 外周流路、J2 導入流路、J3 内部流路、J4 取込口
S1 外周空間、S2 貫通空間、S3 内周側空間、S4 逃げ空間、
S5 連続空間。