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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113113
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】照明光源装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/06 20060101AFI20240814BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A61B1/06 610
A61B1/00 511
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024092326
(22)【出願日】2024-06-06
(62)【分割の表示】P 2024522399の分割
【原出願日】2024-01-15
(31)【優先権主張番号】P 2023004588
(32)【優先日】2023-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】516096313
【氏名又は名称】株式会社OKファイバーテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】松田 伸也
(57)【要約】      (修正有)
【課題】被写体に含まれる蛍光物質を励起可能な励起光を照明光とともに被写体に同時に照射するときに、照明光と励起光との混合光の色再現性を自然光の色再現性に近づけることが可能な照明光源装置を提供する。
【解決手段】本発明の照明光源装置100は、被写体101に照明光L1を照射する光源110と、被写体101に含まれる蛍光物質を励起可能な励起光L2を照射する励起光源120と、照明光源110および励起光源120を制御する制御部140とを備え、制御部140は、照明光L1と励起光L2とが同時に被写体101に照射するとき、照明光L1と励起光L2との混合光L3の分光分布が、照明光L1のみを被写体101に照射する場合に比べて、より自然光の分光分布に近づくように、照明光L1または励起光L2の強度および波長の少なくとも一つを調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光源装置に関し、特に、内視鏡に用いられて人体の腸管、胃などの消化器、さらには呼吸器など体内の管腔組織全般に適用可能な照明光源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から内視鏡などでは、人体の管腔内を照らす照明光源装置として、光ファイバーなどの導光部材を介して、被写体に対して照明光だけでなく励起光を照射するものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、蛍光観察装置として、白色光を照明光として出射する照明光源と、励起光を出射する励起光源とを備え、照明光観察において被写体に対して照明光を照射し、励起光観察において被写体に対して励起光を照射することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-237652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、照明光である白色光は、赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子が出射する3色の光(つまり、赤色光、緑色光、および青色光)を混合することで作り出すことができるが、これらの3色の光を混合して得られる白色光は、自然光(昼間の太陽光)のように、可視光のすべての波長の光を含むものではなく、被写体の色再現性が自然光に比べると劣っている。
【0006】
そこで、本件発明者は、通常照明光観察では照射しない励起光を同時に照射することで、照明光の3つの色の波長成分に励起光の波長成分を混ぜることで、色再現性を向上させることが可能であることに初めて気づいた。さらに、赤色、緑色、青色の3色の波長成分にその他の色の波長成分(励起光)を混ぜた状態で、これらの光を混ぜて得られる混合光の分光分布を自然光の分光分布に近づけることで、照明装置に含まれる限られた数の光源によって、色再現性を自然光の色再現性により一層近づけた白色光を作り出すことが可能であることを見出した。
【0007】
本発明は、被写体に含まれる蛍光物質を励起可能な励起光を照明光とともに被写体に同時に照射するときに、照明光と励起光との混合光の色再現性を自然光の色再現性に近づけることが可能な照明光源装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の項目を提供する。
【0009】
(項目1)
被写体に照明光を照射する照明光源と、
前記被写体に含まれる蛍光物質を励起可能な励起光を照射する励起光源と、
前記照明光源および前記励起光源を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記照明光と前記励起光とが同時に前記被写体に照射するとき、前記照明光と前記励起光との混合光の分光分布が、前記照明光のみを前記被写体に照射する場合
に比べて、より自然光の分光分布に近づくように、前記照明光または前記励起光の強度および波長の少なくとも一つを調整する、照明光源装置。
【0010】
(項目2)
前記制御部は、前記照明光と前記励起光とが同時に前記被写体に照射するとき、前記照明光の強度および波長を調整する、項目1に記載の照明光源装置。
【0011】
(項目3)
前記制御部は、前記照明光と前記励起光とが同時に前記被写体に照射するとき、前記励起光の強度および波長を調整する、項目1に記載の照明光源装置。
【0012】
(項目4)
前記照明光源は、波長が異なる照明光を出力する複数の照明用光源を含み、
前記励起光の波長は、前記複数の照明用光源から照射される前記照明光の波長とは異なる、項目1に記載の照明光源装置。
【0013】
(項目5)
前記制御部は、前記照明光と前記励起光とが同時に前記被写体に照射するとき、前記照明光のみが前記被写体に照射されるときに比べて、前記励起光の波長に隣接して位置する波長を有する前記照明用光源からの光の強度を下げるように制御する、項目4に記載の照明光源装置。
【0014】
(項目6)
前記制御部は、前記照明光と前記励起光とが同時に前記被写体に照射するとき、前記照明光のみが前記被写体に照射されるときに比べて、前記励起光の波長に隣接して位置する波長を有する前記照明用光源からの光の波長を前記励起光の波長から遠ざけるように制御する、項目4または項目5に記載の照明光源装置。
【0015】
(項目7)
前記制御部は、前記照明光と前記励起光とが同時に前記被写体に照射するとき、前記励起光の波長に隣接していない前記照明用光源からの光の強度については、変化させない、項目5に記載の照明光源装置。
【0016】
(項目8)
前記照明光源は、青色光源と、緑色光源と、赤色光源とを含み、
前記励起光源が有する波長は、前記青色光源からの光の波長と前記緑色光源からの光の波長との間の波長を有する、項目4に記載の照明光源装置。
【0017】
(項目9)
前記制御部は、前記照明光と前記励起光とが同時に前記被写体に照射するとき、前記照明光のみが前記被写体に照射されるときに比べて、前記励起光の波長の両側に隣接して位置する波長を有する前記青色光源からの光および前記緑色光源からの光の強度を下げるように制御する、項目8に記載の照明光源装置。
【0018】
(項目10)
前記制御部は、前記照明光と前記励起光とが同時に前記被写体に照射するとき、前記照明光のみが前記被写体に照射されるときに比べて、前記青色光源からの光および前記緑色光源からの光の波長を前記励起光源からの光の波長から遠ざけるように制御する、項目8または項目9に記載の照明光源装置。
【0019】
(項目11)
前記制御部は、前記照明光と前記励起光とが同時に前記被写体に照射するとき、前記励起光の波長に隣接していない前記赤色光源からの光の強度については、変化させない、項目9に記載の照明光源装置。
【0020】
(項目12)
前記制御部は、照明光観察モードとして、前記照明光のみを照射するモードと、前記照明光と前記励起光とを同時に照射するモードとを有し、励起光観察モードとして、前記励起光のみを照射するモードを有し、これらのモードを選択可能に構成されており、前記照明光と前記励起光とを同時に照射するモードにおいて、前記励起光源からの光の強度を、前記励起光観察モードで照射する前記励起光源からの光の強度よりも低くするように制御する、項目1に記載の照明光源装置。
【0021】
(項目13)
前記制御部は、前記照明光の強度および波長の少なくとも一方の調整を、前記照明光と前記励起光との混合光による色再現性が、前記照明光のみによる色再現性よりも、平均演色評価数Raで約10~約30程度向上するように行う、項目1に記載の照明光源装置。
【0022】
(項目14)
項目1に記載の照明光源装置を備えた内視鏡。
【0023】
(項目15)
請求項1に記載の照明光源装置を備えた導光部材。
【0024】
(項目16)
被写体の蛍光物質を励起する励起光と同時に前記被写体に照射される照明光の波長を設定する方法であって、
前記照明光の波長を、前記照明光と前記励起光とが同時に前記被写体に照射するとき、前記照明光と前記励起光との混合光の分光分布が、前記照明光のみを前記被写体に照射する場合に比べて、より自然光の分光分布に近づくように設定する、照明光の波長設定方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、被写体に含まれる蛍光物質を励起可能な励起光を照明光とともに被写体に同時に照射するときに、照明光と励起光との混合光の色再現性を自然光の色再現性に近づけることが可能な照明光源装置を得ることを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の照明光源装置を概念的に示す図である。
図2図2は、本発明の実施形態1による照明光源装置10の具体的な構成を示す図である。
図3図3は、図2に示す実施形態1の照明光源装置100の動作を示す図である。
図4図4は、図2に示す実施形態1の照明光源装置100の変形例1を示す図である。
図5図5は、図2に示す実施形態1の照明光源装置100の変形例2を示す図である。
図6図6は、図2に示す実施形態1の照明光源装置100の変形例3を示す図である。
図7図7は、本発明の実施形態2による照明光源装置200の構成を示す図である。
図8図8は、図7に示す実施形態2の照明光源装置200の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0028】
本明細書において、「約」とは、後に続く数字の±10%の範囲内をいう。
【0029】
図1は、本発明の照明光源装置を概念的に示す図である。
【0030】
本発明は、被写体に含まれる蛍光物質を励起可能な励起光を照明光とともに被写体に同時に照射するときに、照明光と励起光との混合光の色再現性を自然光の色再現性に近づけることが可能な照明光源装置を得ることを課題とし、
被写体101に照明光L1を照射する照明光源110と、
被写体101に含まれる蛍光物質を励起可能な励起光L2を照射する励起光源120と、
照明光源110および励起光源120を制御する制御部140と
を備え、
制御部140は、照明光L1と励起光L2とが同時に被写体101に照射するとき、照明光L1と励起光L2との混合光L3の分光分布が、照明光L1のみを被写体101に照射する場合に比べて、より自然光の分光分布に近づくように、照明光L1または励起光L2の強度および波長の少なくとも一つを調整する、照明光源装置100を提供することにより、上記の課題を解決したものである。
【0031】
従って、本発明の照明光源装置100は、照明光L1と励起光L2とが同時に被写体101に照射するとき、照明光L1と励起光L2との混合光の分光分布が、照明光L1のみを被写体に照射する場合に比べて、より自然光の分光分布に近づくように、照明光あるいは励起光の強度および波長の少なくとも一つを調整するものであれば、その他の構成は特に限定されるものではなく、任意であり得る。
【0032】
例えば、制御部は、照明光と励起光とが同時に被写体に照射するとき、照明光の強度および波長を調整するものでもよいし、照明光の強度および波長のいずれか一方を調整するものでもよい。
【0033】
さらに、制御部は、照明光と励起光とが同時に被写体に照射するとき、励起光の強度および波長を調整するものでもよいし、照明光の強度および波長のいずれか一方を調整するものでもよいし、励起光および照明光の両者を調整してもよい。
【0034】
また、照明光源は、それぞれ波長が異なる照明用光を出力する複数の照明用光源を含み、励起光源からの光の波長は、照明光源から照射される複数の照明光の波長とは異なる波長であることが好ましい。なぜなら、照明光に含まれない波長の光を励起光で補完することができ、これにより被写体を照明する光の分光分布を、照明光と励起光との同時照射により自然光の分光分布に近づけることができるからである。
【0035】
ただし、照明光(たとえば、波長が異なる複数の照明用光)と同時に、照明光の波長とは波長が異なる励起光を被写体に同時に照射する場合、照明光と励起光との混合光では、励起光の波長およびその近傍付近の光のエネルギーが、自然光に対応する波長部分でのエネルギーより強くならないように、励起光の波長に隣接して位置する波長を有する照明用光源からの光の強度を下げることは有効である。
【0036】
さらにこの場合、照明光と励起光との混合光では、励起光の波長およびその近傍付近の光のエネルギーが、自然光の対応する波長部分でのエネルギーより強くなるのを抑制するために、励起光の波長に隣接して位置する波長を有する照明用光源からの光の波長を励起光の波長から遠ざけることも有効である。
【0037】
さらに、波長が異なる複数の照明用光と同時に、複数の照明用光の波長とは波長が異なる励起光を被写体に照射する場合、励起光の波長に隣接して位置する波長を有する照明用光源からの光の強度を下げ、かつ、励起光の波長に隣接して位置する波長を有する照明用光源からの光の波長を励起光の波長から遠ざけることは、励起光の波長と、これに隣接して位置する波長を有する照明用光源からの光の波長とが近い場合などにおいて、より好ましい場合もある。
【0038】
また、照明光と励起光とが同時に被写体に照射するとき、励起光の波長に隣接していない照明用光源からの光の強度について、変化させない(照明光のみが被写体に照射されるときと同じとする)ことが好ましい場合もある。
【0039】
例えば、照明光を形成する複数の照明用光源からの光と同時に励起光源からの光を被写体に照射する場合、照明光と励起光との混合光では、励起光の波長およびその近傍付近の光のエネルギーが、自然光の対応する波長部分でのエネルギーより強くなるのを抑制するには、励起光の波長に隣接して位置する波長を有する照明用光源からの光の強度を下げるなどで対応すればよく、励起光の波長に隣接していない照明用光源からの光の強度を下げるなどの対応は、かえって、混合光の分光分布を自然光の分光分布から遠ざけることとなることがあるからである。
(照明光源)
照明光源は、照明観察時に用いられる光源であり、可視領域全体(具体的には約400nm~約650nm)にわたって部分的に波長を有する白色光を照射するものである。1つの実施形態では、照明光源に含まれる複数の照明用光源は、青色光源、緑色光源、および赤色光源であり、励起光は、青色光と緑色光との間の波長を有するものであるが、照明光源に含まれる複数の照明用光源は、白色光を出力可能な2つの光源でもよいし、出射光の波長が異なる4つ以上の光源でもよい。
【0040】
ここで、照明光源を構成する複数の照明用光源には、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)などの半導体発光素子を用いることができる。
【0041】
レーザーダイオードでは、出射光は中心波長の両側での分光分布の広がりが発光ダイオードに比べると狭いものであるが、レーザーダイオードには、制御信号により共振器長を物理的に調整して動的な波長変更を可能としたものもある。
【0042】
照明用光源は、波長が可変できるものであってもよい。波長を変化させる手段は任意の手段であり得る。例えば、波長変換素子としてグレーティングを用いてもよいし、照明用光源として波長可変型の半導体レーザを用いてもよい。波長可変型の半導体レーザには、例えば、温度変化により屈折率を変化させる温度同調DFB(分布帰還型)レーザ、電流注入により屈折率を変化させるDBR(分布反射型)レーザ、電流注入による屈折率変化を倍増させる機構を備えた広帯域波長可変DBRレーザ、マイクロマシンにより共振器長を変化させるマイクロマシン面発光レーザ、あるいはマイクロマシンにより光フィルタの
角度を変化させるマイクロマシン外部鏡型レーザがある。
(励起光源)
励起光源は、所定の狭帯域の励起光を出射する光源である。励起光の波長は診断、治療目的で被写体内部に投与される蛍光物質が励起され得る波長であれば任意の波長であり得る。
【0043】
1つの実施形態において、励起光源から照射される励起光の波長は、蛍光物質を励起するものであって青色光と緑色光の間の波長である490nmである。しかし、本発明はこれに限定されない。例えば、蛍光物質が5-アミノレブリン酸である場合、これを励起するための波長は約410nmである。また、蛍光物質がヒドロキシルチルローダミングリーンを用いた蛍光プローブである場合、これを励起するための波長は約450nm~480nmである。さらに蛍光物質がタラポルフィンナトリウム重合体である場合、これを励起するための波長は約670nmである。また、励起光源から照射される励起光の波長は、近赤外線領域(約800nm~約1000nm)であってもよい。具体的には、例えば、蛍光物質がICG(インドシアニングリーン)である場合、これを励起するための波長は約800nmである。このように、励起したい蛍光物質に応じて任意の励起光の波長を選択し得る。なお、励起光の波長が近赤外線領域の場合は、近赤外線用検出用カメラを用いて蛍光物質を検出するように構成されている。上記の構成を有することで、近赤外領域の画像を可視光領域の画像に追加することが可能となり、その結果、より広範囲に病変の検出を行うことが可能となる。具体的な近赤外線領域の画像の表示方法としては、可視光領域の帯域幅を狭小し、長波長側の領域を追加するなどしてもよい。
【0044】
特に、蛍光物質が5-アミノレブリン酸やヒドロキシルチルローダミングリーンである場合,照明光源の出力が低い紫色から青緑色の波長を補うこうこととなり、色再現性を高めることが可能となる。また、蛍光物質がタラポルフィンナトリウム重合体である場合、血液に近い橙色から赤色の波長を補うことが可能となり、患部の状態をより正確に把握することが可能となる。
(制御部)
照明光源からの光および励起光光源からの光の出射のタイミング、光の強度や波長などについて制御する。例えば、1つの実施形態では、照明光源を構成する複数の照明用光源が青色光源、緑色光源、および赤色光源であり、励起光は、青色光と緑色光との間の波長を有する場合、制御部は、照明光と励起光とが同時に被写体に照射するとき、照明光のみが被写体に照射されるときに比べて、励起光の波長の両側に隣接して位置する波長を有する青色光および緑色光の強度を下げるように制御する。
【0045】
あるいは、他の実施形態では、照明光源を構成する複数の光源が青色光源、緑色光源、および赤色光源であり、励起光は、青色光と緑色光との間の波長を有する場合、制御部は、照明光と励起光とが同時に被写体に照射するとき、照明光のみが被写体に照射されるときに比べて、青色光および緑色光の波長を励起光の波長から遠ざけるように制御する。
【0046】
さらに、このように励起光の波長に基づいて、青色光および緑色光の強度あるいは波長を調整するときには、励起光の波長に隣接していない赤色光の強度について、照明光のみが被写体に照射されるときに同じで変化させないようにしてもよい。
【0047】
また、1つの実施形態では、制御部は、照明光観察モードとして、照明光のみを照射するモードと、照明光と励起光とを同時に照射するモードとを有し、励起光観察モードとして、励起光のみを照射するモードを有し、これらのモードを選択可能に構成されていてもよい。この場合、制御部は、照明光と励起光とを同時に照射するモードにおいて、励起光の強度を、励起光観察モードで照射する励起光の強度よりも低くするように制御することが可能である。
【0048】
さらに、制御部は、照明光の強度および波長の少なくとも一方の調整を、照明光と励起光との混合光による色再現性が、照明光のみによる色再現性よりも高めるように行う。色再現性を評価するにあたっては、照明分野で一般に使用される平均演色評価数Raで評価する。
【0049】
制御部において、照明光と励起光との混合光による色再現性が、照明光のみによる色再
現性よりも平均演色評価数Raで約10以上向上するように行うことが好ましい。
【0050】
このような照明光源装置は、内視鏡で用いることができ、被検者の大腸、胃などの消化器、あるいは呼吸器などの管腔内の表面の励起光による蛍光観察、および白色光による観察をしたりする際に、白色光の色再現性を励起光と照明光との同時照射により高めることができる。
【0051】
また、本発明は、被写体の蛍光物質を励起する励起光と同時に被写体に照射される照明光の波長を設定する方法を提供するものであり、この照明光の波長設定方法は、照明光の波長を、照明光と励起光とが同時に被写体に照射するとき、照明光と励起光との混合光の分光分布が、照明光のみを被写体に照射する場合に比べて、より自然光の分光分布に近づくように設定するものであり、照明光の波長設定にその他の条件が限定されるものではなく、照明光の波長設定のためのその他の条件は任意である。
【0052】
このように、本発明の照明光源装置は、照明光と励起光とが同時に被写体に照射するとき、照明光と励起光との混合光の分光分布が、照明光のみを被写体に照射する場合に比べて、より自然光の分光分布に近づくように、照明光の強度および波長の少なくとも一方を調整するものであれば、その他の構成は特に限定されるものではないが、以下の実施形態では、照明光の強度を動的に変更するものを実施形態1として挙げ、照明光の強度および波長を動的に調整するものを実施形態2として挙げる。
【0053】
また、実施形態1の照明光源装置は、照明光源における複数の照明用光源である青色光源、緑色光源、および赤色光源には発光ダイオードを用いたものとし、実施形態2の照明光源装置は、照明光源における複数の照明用光源である青色光源、緑色光源、および赤色光源にはレーザーダイオードを用いたものとし、いずれの実施形態の照明光源装置も励起光源としてレーザーダイオードを用いたものとする。
【0054】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0055】
(実施形態1)
図2は、本発明の実施形態1による照明光源装置100の具体的な構成を示す図である。
【0056】
この実施形態1の照明光源装置100は、内視鏡に用いられて人体の腸管、胃などの消化器、あるいは呼吸器などの管腔組織全般に適用可能なものである。しかし、本発明の照明光源装置は内視鏡による観察に限定されず、開腹状態などでの観察においても使用し得る。
【0057】
この照明光源装置100は、被写体101に照明光L10を照射する照明光源110と、被写体101に含まれる蛍光物質を励起可能な励起光L2を照射する励起光源120と、照明光源110および励起光源120を制御する制御部140aとを備えている。
【0058】
制御部140aは、照明光L10と励起光L2とが同時に被写体101に照射するとき、照明光L10と励起光L2との混合光L3の分光分布が、照明光L10のみを被写体101に照射する場合に比べて、より自然光の分光分布に近づくように、照明光L10および励起光L2の強度を調整するものである。
【0059】
(照明光源110)
ここで、照明光源110は、白色光を出力するための3色の光源を有しており、3色の光源は、青色光源111、緑色光源112、および赤色光源113である。
【0060】
青色光源(青色LED)111には、青色光(波長約440nm)L11を出力する青色発光ダイオードが用いられ、緑色光源(緑色LED)112には、緑色光L12(波長約540nm)を出力する緑色発光ダイオードが用いられ、赤色光源(赤色LED)113には、赤色光(波長約635nm)L13を出力する赤色発光ダイオードが用いられている。これらの3色の照明用光L11~L13の混合により得られる白色光の色再現性は、3色の照明用光L11~L13の強度が同一である場合、色再現性を自然光(昼間の太陽光)と比較して示す指標である平均演色評価数Raでは、Ra=80となっている。なお、自然光の場合は、平均演色評価数RaはRa=100となる。
【0061】
照明光源110は、制御部140aからの照明制御信号Ct1に基づいて青色LED111、緑色LED112、および赤色LED113を駆動するLED駆動回路110を有しており、LED駆動回路110は、青色LED111、緑色LED112、および赤色LED113にそれぞれ、青色駆動電流D11、緑色駆動電流D12、および赤色駆動電流D13を供給するように構成されている。
【0062】
(励起光源120)
また、励起光源120は、励起光(波長約490nm)L2を出力するレーザーダイオード(励起LD)121と、励起LD121を制御部140aからの励起制御信号Ct2に基づいて駆動するLD駆動回路120aを有しており、LD駆動回路120aは、励起LD121に励起用駆動電流D2を供給するように構成されている。なお、励起光L2は、上記のとおり、青色光L11と緑色光L12との間の波長を有している。
【0063】
(混合器30)
また、照明光源装置100は、青色LED111からの青色光L11、緑色LED112からの緑色光L12、赤色LED113からの赤色光L13、および励起LD121からの励起光L2を混合して混合光L31を白色光として出力する混合器130を有している。
【0064】
なお、言うまでもないが、混合器130は、青色光L11、緑色光L12および赤色光L13のみが出力される場合は、青色光L11、緑色光L12および赤色光L13を混合して混合光L31として照明光L10のみを被写体101に照射し、励起光L2のみが出力される場合は、励起光L2のみを被写体101に照射する。
【0065】
(導光部材)
混合器30で混合された混合光L31を被写体101周辺まで導く導光部材(図示せず)を備え得る。
【0066】
導光部材の形態は任意であり得る。1つの実施形態において、導光部材は光ファイバーであるが、これに限定されない。例えば、ガラスの屈折率差を利用した光ファイバーのほか、空気や不活性ガスをコアとする中空ファイバー、液体をコアとする液体ファイバー、ガラスや樹脂を加工した変形しない導波路などにも適用が可能である。
【0067】
(制御部140a)
さらに、制御部140aは、照明光観察モードとして、照明光L10のみを照射する第1動作モードと、照明光L10と励起光L2とを同時に照射する第2動作モードとを有し、励起光観察モードとして、励起光のみを照射する第3動作モードを有しており、これらの動作モードを操作者の操作による操作信号Smに基づいて選択し、選択した動作モードに応じてLED駆動回路110aおよびLD駆動回路120aを制御するように構成されている。
【0068】
ここで、制御部140aは、照明光L1と励起光L2とが同時に被写体101に照射するとき、照明光L10のみが被写体101に照射されるときに比べて、励起光L2の波長の両側に隣接して位置する波長を有する青色光L11および緑色光L12の強度が差分X1(元の強度の約20%)だけ下がるように制御する(図3(b)参照)。
【0069】
また、制御部140aは、照明光と励起光とを同時に照射する動作モードにおいて、励起光の強度が、第2動作モード(励起光観察モード)で照射する励起光の強度よりも差分X2(元の強度の約90%)下がるように励起光源120を制御する(図3(a)参照)。具体的な例としては、励起時には、照明時の照度(410〔lm〕)を40〔lm〕に減光する。ただし、励起光の強度は蛍光物質の感度によって大きく異なる。
【0070】
次に、実施形態1の照明光源装置100の動作を説明する。
【0071】
以下では、この照明光源装置100を含む内視鏡の先端部を被検者の管腔内に挿入して目標部位まで移動させて目標部位の表面を観察する場合に行われる、照明光源装置100での動作モードの切り替えを説明する。
【0072】
図3は、図2に示す照明光源装置100の動作を示す図であり、図3(a)は、励起光L2の強度の動的な切り替えを示し、図3(b)は、照明光L10(青色光L11および緑色光L12)の強度の動的な切り替えを示し、図3(c)は、同時照射される照明光L10(青色光L1、緑色光L2、赤色光L13)および励起光L2の分光分布を重ね合わせて示している。
【0073】
(第1動作モード)
まず、内視鏡を被写体101の管腔内を移動させて目標部位に到達するまでは、操作者は、操作部(図示せず)の操作により、被写体101に照明光L10を単独で照射するモード(第1動作モード)を選択する。これは、内視鏡を管腔内で移動させる状態では、照明範囲を特段明るく照明する必要はないためである。
【0074】
このとき、操作部(図示せず)からの操作信号Smが制御部140aに入力されると、制御部140aは、LED駆動回路110aおよびLD駆動回路120aをそれぞれ照明制御信号Ct1および励起制御信号Ct2により制御する。これにより、青色LED111、緑色LED112および赤色LED113は、決められた最適強度の青色光L11、緑色光L12および赤色光L13を出力する(図3(b)の左側の分光分布を参照)。この場合、青色光L11、緑色光L12および赤色光L13は同じ強度としている。また、励起光源120は励起光L2を出力しない。このときの照明光L10による色再現性は、平均演色評価数Raで表すと、Ra=80であった。
【0075】
(第2動作モード)
また、内視鏡が被写体101の管腔内の目標部位に到達した状態で、自然光観察を行う場合は、操作者は、操作部(図示せず)の操作により照明光L10と励起光L2とを同時に照射するモード(第2動作モード)を選択する。
【0076】
このとき、操作部(図示せず)からの操作信号Smを受けた制御部140aからLED駆動回路110aおよびLD駆動回路120aに照明制御信号Ct1および励起制御信Ct2が出力されると、青色LED111、緑色LED112および赤色LED113がそれぞれ青色光L11、緑色光L12、および赤色光L13を出力し、励起LD121が励起光L2を出力する状態となる。
【0077】
この場合、青色LED111および緑色LED112はそれぞれ、青色光L11および緑色光L12の強度を、赤色光L13の強度の約0.8倍程度に低下させる(図3(b)の右側の分光分布を参照)。つまり、青色光L11および緑色光L12の強度は、照明光の単独照射の場合に比べて差分X1(元の強度の約20%)だけ低下させる。
【0078】
これは、青色光L11と緑色光L12との間の波長を有する励起光L2が、青色光L11、緑色光L12、および赤色光L13に混合されることで、青色光L11および緑色光L12の波長近傍の波長を有する光の強度が高まり、混合光L31の全体としての分光分布が自然光の分光分布より遠ざかるのを抑制するためである。
【0079】
また、上記の場合において、励起光L2に隣接する青色光L11と緑色光L12の強度を調整したが、青色光L11と緑色光L12の強度を調整する代わりに、励起光L2の強度を調整してもよい。具体的には励起LD121は、励起光L2の強度を、励起光L2の単独照射の場合に比べて約0.1倍程度に低下させてもよい(図3(a)参照)。
【0080】
励起光観察における励起光の強度は、蛍光物質励起のため高く設定されている場合が多い。同時に励起光を照射する際に、励起光の強度を低下させることで、温度上昇など被写体への影響を最小限にすることが可能となる。
【0081】
なお、図3(c)は、照明光L1と励起光L2とを同時に照射する場合に、青色光L11および緑色光L12の強度を照明光L10の単独照射の場合に比べて低下させ、かつ、励起光L2の強度を励起光L2の単独照射の場合に比べて低下させた状態での各光の分光分布を重ね合わせて示している。
【0082】
このように、照明光L1と励起光L2とを同時に照射する場合に、照明光L10に含まれる励起光L2の波長の両側に隣接する波長を有する青色光L11および緑色光L12の強度を照明光L1の単独で照射する場合に比べて低下させることで、照明光L1と励起光L2との混合光L3の分光分布が自然光の分光分布に近づくこととなり、混合光L31の色再現性を自然光の色再現性に近づくように高めることが可能である。このときの照明光L10による色再現性は、平均演色評価数Raで表すと、Ra=90であった。
【0083】
このように色再現性を高めた状態で被写体を観察できるので、観察すべき場所を正確にかつ効率的に見つけ出すことが可能となる。
【0084】
なお、上記実施形態1では、照明光L10と励起光L2とを同時に照射する場合に、照明光L10に励起光L2が混入されることによる照明光L10の分光分布に対する悪影響を、励起光L2の波長に隣接する波長を有する青色光L11および緑色光L12の強度を低下させ、さらには混入する励起光L2の強度を低下させることにより抑制しているが、照明光L1に対する励起光L2の混入による悪影響を抑制する方法は実施形態1で示した青色光L11および緑色光L12、さらには励起光L2の強度を動的に低下させる方法に限定されるものではなく、さらにその他の方法を併用してもよく、以下の実施形態1の変形例1では、照明光L10に混入される励起光L2の波長に隣接する波長を有する青色光L11および緑色光L12の波長を予め調整しておく方法を併用する場合を説明する。
【0085】
(第3動作モード)
次に、内視鏡が被写体101の管腔内の目標部位に到達した状態で、励起光観察を行う場合は、操作者は、操作部(図示せず)の操作により、被写体101に励起光L2を単独で照射するモード(第3動作モード)を選択する。
【0086】
このとき、操作部(図示せず)からの操作信号Smが制御部140aに入力されると、LED駆動回路110aおよびLD駆動回路120aは、制御部140aからの照明制御信号Ct1および励起制御信号Ct2により制御される。これにより、青色LED111、緑色LED112および赤色LED113はその光出力を停止し、励起LD121が、決められた最適強度の励起光L2を出力する(図3(a)の左側の分光分布を参照)。
【0087】
(実施形態1の変形例1)
図4は、図2に示す照明光源装置100の変形例1を示す図であり、照明光L10と同時照射する励起光L2の波長に合わせて、照明光L10における青色光L11および緑色光L12の波長の変更を予め行った上で、実施形態1と同様の青色光L11および緑色光L12の強度の動的な切り替えを行う場合を示す。
【0088】
特に、図4(a)は、励起光L2の波長を考慮した青色光L11および緑色光L12の具体的な波長変更を示し、図4(b)は、励起光L2の強度の動的な切り替えを示し、図4(c)は、青色光L11および緑色光L12の強度の動的な切り替えを示し、図4(d)は、同時照射される、青色光L11、緑色光L12、赤色光L13および励起光L2の分光分布を重ね合わせて示している。
【0089】
この実施形態1の変形例1の照明光源装置は、実施形態1の照明光源装置100において照明光源110として搭載されている青色LED111および緑色LED112を構成する半導体材料の組成を調整することにより、青色光L11および緑色光L12の波長を、照明光L1に混入される励起光L2の波長から遠ざけたものである。
【0090】
具体的には、この実施形態1の変形例1では、青色光L11の波長は約430nmであり、励起光L2の波長(約490nm)を考慮して、実施形態1における青色光L11の波長(約440nm)から約10nmだけ励起光L2の波長に対して遠ざけたものとなっている(図4(a))。また、実施形態1の変形例1では、緑色光L12の波長は約550nmであり(図4(a))、励起光L2の波長(約490nm)を考慮して、実施形態1における緑色光L12の波長(約540nm)を約10nmだけ励起光L2の波長に対して遠ざけたものとなっている(図4(a))。
【0091】
そして、この実施形態1の変形例1では、このように照明光L10と同時に照射される励起光L2の波長を考慮して、照明光L10におけるRGBの3色のうちの青色光L11および緑色光L12の波長を調整した上で、上述した実施形態1の照明光源装置100と同様に、照明光L10のみの照射(第1動作モード)、励起光L2のみの照射(第3動作モード)、および照明光L1と励起光L2との同時照射(第2動作モード)での光照射動作が行われる。
【0092】
すなわち、この変形例1では、予め、励起光L2を照明光L10に混入することによる悪影響を低減するために、励起光L2の波長を考慮して、照明光L10の単独照射に場合に比べて、励起光L2の波長から遠ざけた波長を有する青色光L11および緑色光L12を用い、さらに、照明光L10および励起光L2の同時照射の際には、励起光L2の波長に隣接する波長を有する青色光L11および緑色光L12の強度を、照明光L10の単独照射の場合に比べて動的に低下させる(図4(c))。さらには、上記同時照射の場合には、励起光L2の強度を、励起光L2の単独での照射の場合に比べて動的に低下させる(図4(b))。
【0093】
なお、図4(d)は、照明光L1と励起光L2とを被写体101に対して同時に照射したときの青色光L11、緑色光L12、赤色光L13および励起光L2の分光分布を重ね合わせて示している。
【0094】
これにより、この実施形態1の変形例1では、照明光L10と励起光L2との同時照射の場合に、照明光L10に励起光L2が混入されることによる悪影響を効果的に抑制することができる。
【0095】
このときの照明光L10と励起光L2との混合光による色再現性は、平均演色評価数Raで表すと、Ra=92であった。
【0096】
ただし、青色光L11、緑色光L12および赤色光L13の波長は、励起光L2が混入された場合の悪影響が小さくなるように、照明光L10の単独照射の場合に比べて変更されているので、照明光L10の単独照射時の分光分布が劣化する恐れがあり、従って、励起光L2の波長を考慮した青色光L11および緑色光L12の波長調整は、照明光L10の単独照射時と照明光L10および励起光L2の同時照射時のいずれの場合の色再現性を優先するかに応じて行う必要がある。
【0097】
なお、上述した実施形態1およびその変形例1では、照明光源110に含まれる青色光源、緑色光源、赤色光源には、発光ダイオードである青色LED111、緑色LED112、および赤色LED113を用いたものを示したが、これらの3色の光源には発光ダイオードに代えてレーザーダイオードを用いることもでき、以下、実施形態1において、発光ダイオードに代えてレーザーダイオードを用いた照明光源装置を実施形態1の変形例2として、実施形態1の変形例1において発光ダイオードに代えてレーザーダイオードを用いたものを実施形態1の変形例3として説明する。
【0098】
(実施形態1の変形例2)
図5は、図2に示す実施形態1の変形例2として、実施形態1の照明光源110において発光ダイオード(LED)に代えてレーザーダイオード(LD)を用いた場合を示す図である。
【0099】
特に、図5(a)は、LDを用いた青色光源、緑色光源、赤色光源の分光分布を、その3色の光源にLEDを用いた場合と対比して示し、図5(b)は、励起光L2の強度の動的な切り替えを示し、図5(c)は、LDが出力する青色光L11aおよび緑色光L12aの強度の動的な切り替えを示し、図5(d)は、LDから同時照射される、青色光L11a、緑色光L12a、赤色光L13aおよび励起光L2の分光分布を重ね合わせて示している。
【0100】
半導体発光素子としてレーザーダイオードを用いた青色光源、緑色光源および赤色光源では、青色光L11a、緑色光L12a、および赤色光L13aの波長はそれぞれ、470nm、530nm、および640nmとなり、発光ダイオードを用いた場合の青色光L11、緑色光L12、および赤色光L13bの波長(440nm、540nm、635nm)とは若干異なる(図5(a)参照)。
【0101】
ただし、照明光と励起光L2との同時照射の場合は、照明光の単独照射の場合に比べて、実施形態1と同様に、青色光L11aおよび緑色光L12aの強度が低下させられる(図5(c)参照)。具体的な低下の程度X5は、発光ダイオードの用いた場合の約20%とは異なり、約10%であり、同時照射の場合は、青色光L11aおよび緑色光L12aの強度が赤色光L13aの強度の約0.9倍にまで低下させられる。このときの照明光と励起光との混合光に含まれる青色光L11a、緑色光L12a、赤色光L13aおよび励起光L2の分光分布は、図5(d)に示すとおりであり、混合光L31による色再現性は、平均演色評価数Raで表すと、Ra=75であった。
【0102】
さらに、場合によっては、同時照射時には励起光L2の強度も実施形態1と同様に、励起光単独での照射の場合に比べて低下させられる(図5(b))。具体的な低下の程度X4は、約90%である。
【0103】
(実施形態1の変形例3)
図6は、図2に示す照明光源装置100の変形例3として、実施形態1の変形例1の照明光源において発光ダイオード(LED)に代えてレーザーダイオード(LD)を用いた場合を示す図である。
【0104】
すなわち、図6は、照明光と同時照射する励起光L2の波長に合わせて、LDが出力する青色光L11aおよび緑色光L12aの波長の変更を予め行った上で、実施形態1の変形例1と同様に、青色光L11aおよび緑色光L12aの強度の動的な切り替えを行う場合を示す。
【0105】
特に、図6(a)は、励起光L2の波長を考慮した青色光L11aおよび緑色光L12aの具体的な波長変更を示し、図6(b)は、励起光L2の強度の動的な切り替えを示し、図6(c)は、青色光L11aおよび緑色光L12aの強度の動的な切り替えを示し、図6(d)は、LDから同時照射される、青色光L11a、緑色光L12a、赤色光L13aおよび励起光L2の分光分布を重ね合わせて示している。
【0106】
この実施形態1の変形例3の照明光源装置は、実施形態1の変形例2の照明光源装置において照明光源として搭載されている青色LDおよび緑色LDを構成する半導体材料の組成を調整することにより、照明光に含まれる青色光L11aおよび緑色光L12aの波長を、照明光に混入される励起光L2の波長から遠ざけたものである。
【0107】
具体的には、この実施形態1の変形例3では、青色光L11aの波長は約430nmであり、励起光L2の波長(約490nm)を考慮して、実施形態1の変形例2における青色光L11aの波長(約470nm)から約40nmだけ励起光L2の波長に対して遠ざけたものとなっている(図6(a))。また、実施形態1の変形例3では、緑色光L12aの波長は約550nmであり、励起光L2の波長(約490nm)を考慮して、実施形態1の変形例2における緑色光L12aの波長(約530nm)から約20nmだけ励起光L2の波長に対して遠ざけたものとなっている(図6(a))。
【0108】
そして、この実施形態1の変形例3では、このように照明光と同時に照射される励起光L2の波長を考慮して、照明光に含まれる3色のレーザ光のうちの青色光L11aおよび緑色光L12aの波長を調整した上で、上述した実施形態1の変形例2と同様に、照明光のみの照射(第1動作モード)、励起光L2のみの照射(第2動作モード)、および照明光と励起光L2との同時照射(第2動作モード)での光照射動作が行われる。
【0109】
この変形例3では、予め、励起光L2を照明光に混入することによる悪影響を低減するために、励起光L2の波長を考慮して、照明光の単独照射に場合に比べて、励起光L2の波長から遠ざけた波長を有する青色光L11aおよび緑色光L12aを用い、さらに、照明光および励起光L2の同時照射の際には、励起光L2の波長に隣接する波長を有する青色光L11aおよび緑色光L12aの強度を、照明光L1の単独照射の場合に比べて動的に低下させる(図6(c))。このときの強度の低下の程度X5は、元の強度の約10%である。さらには、上記同時照射の場合には、励起光L2の強度を、励起光L2の単独での照射の場合に比べて動的に低下させる(図6(b))。このときの強度の低下の程度X5は、元の強度の約10%である。
【0110】
なお、図6(d)は、照明光と励起光L2とを被写体101に対して同時に照射したときの青色光L11a、緑色光L12a、赤色光L13aおよび励起光L2の分光分布を重ね合わせて示している。
【0111】
これにより、実施形態1の変形例1の発光ダイオード(LED)に代えてレーザーダイオード(LD)を用いた実施形態1の変形例3においても、半導体発光素子に発光ダイオードを用いた実施形態1の変形例1と同様に、照明光と励起光L2との同時照射の場合に、照明光に励起光L2が混入されることによる悪影響を効果的に抑制することができる。
【0112】
このときの照明光と励起光との混合光による色再現性は、平均演色評価数Raで表すと、Ra=80であった。
【0113】
ただし、青色光L11aおよび緑色光L12aの波長は、励起光L2が混入された場合の悪影響が小さくなるように、照明光の単独照射の場合に比べて変更されているので、実施形態1の変形例1の場合と同様に、照明光の単独照射時には、分光分布が劣化する恐れがあり、従って、励起光L2の波長を考慮した青色光L11aおよび緑色光L12aの波長調整は、照明光の単独照射時と照明光および励起光L2の同時照射時のいずれの場合の色再現性を優先するかに応じて行う必要がある。
【0114】
そこで、実施形態2では、照明光の単独照射時の分光分布と、照明光および励起光L2の同時照射時の照明光の分光分布とを独立して設定可能な照明光源装置として、照明光の単独照射のときと照明光と励起光との同時照射のときで、照明光の強度および波長の両方を動的に変更する照明光源装置を説明する。
【0115】
(実施形態2)
図7は、本発明の実施形態2による照明光源装置200の構成を示す図である。
【0116】
この実施形態2の照明光源装置200は、実施形態1の照明光源装置100における照明光源110に代えて、出射する照明光L20の強度および波長を動的に調整可能な照明光源210を備え、照明光L20と励起光L2とを同時に被写体101に照射するときに照明光L20の単独照射の場合に比べて、照明光L20の強度および波長を、照明光L20と励起光L2との混合光L32の分光分布がより自然光の分光分布に近づくように変更するものである。
【0117】
従って、この照明光源装置200の制御部240は、実施形態1の照明光源装置100の制御部140aとは異なり、照明光源210からの照明光L20の強度だけでなく、波長も制御可能な構成となっている。
【0118】
なお、励起光源120および混合器130は、実施形態1の照明光源装置100におけるものと同一のものであり、以下、照明光源210および制御部240を詳しく説明する。
【0119】
(照明光源210)
照明光源210は、実施形態1の照明光源110と同様に、青色光源211、緑色光源212、および赤色光源213を有しているが、この実施形態2では、青色および緑色の各色の光源には、波長可変型のレーザーダイオードが用いられており、赤色光源には波長固定型のレーザーダイオードが用いられている。
【0120】
従って、青色光源(青色LD)211は、所定の波長範囲(例えば、少なくとも約470nm~約430nmの範囲)で、出力する青色光L21の波長の調整が可能となっている。また、緑色光源(緑色LD)212は、所定の波長範囲(例えば、少なくとも約530nm~約550nmの範囲)で、出力する緑色光L22の波長の調整が可能となっている。なお、赤色光源(赤色LD)213は、出力する赤色光L23の波長が約640nmに固定されたものである。
【0121】
ただし、青色光源(青色LD)211は、出力する青色光L21の波長を約470nmと約430nmとの間で切替可能なものでもよく、緑色光源(緑色LD)212は、出力する緑色光L22の波長を約530nmと約550nmとの間で切替可能なものでもよい。ここで、青色光L21の波長である約470nm、および緑色光L22の波長である約530nmは、照明光L20の単独照射の場合に良好な色再現性を得るための波長であり、青色光L21の波長である約430nm、および緑色光L22の波長である約550nmは、照明光L20と励起光L2との同時照射の場合に良好な色再現性を得るための波長である。本実施形態においては、青色光源および緑色光源を波長可変としたが、赤色光源も波長可変にしてもよいし、青色光源、緑色光源、赤色光源のいずれか1つ以上を波長可変としてもよい。
【0122】
(制御部240)
そして、この照明光源装置200では、制御部240は、操作部(図示せず)での操作信号Smに基づいて照明制御信号Ct1を照明光源210に出力するとともに、励起制御信号Ct2を励起光源120に出力し、さらに、青色波長制御信号C21および緑色波長制御信号C22を照明光源210に出力するように構成されている。
【0123】
この照明光源210は、制御部240からの照明制御信号Ct1に基づいて青色LD211、緑色LD212、および赤色LD213を駆動するLD駆動回路210aを有している。このLD駆動回路210aは、具体的には、制御部240からの照明制御信号Ct1に基づいて青色LD211、緑色LD212、および赤色LD213にそれぞれ、青色駆動電流D21、緑色駆動電流D22、および赤色駆動電流D23を供給するように構成されている。また、制御部240は、照明光L20の単独照射の場合と、照明光L20と励起光L2との同時照射の場合とで、青色LD211への青色駆動電流D21および緑色LD212への緑色駆動電流D22を調整することにより、青色LD211からの青色光L21の強度および緑色LD212からの緑色光L22の強度を変更するように構成されている。
【0124】
また、制御部240は、青色LD211に青色波長制御信号C21を出力し、緑色LD212に緑色波長制御信号C22を出力することにより、青色光L21および緑色光L22の波長を、照明光L20の単独照射の場合と、照明光L20と励起光L2との同時照射の場合とで切り替えられるようになっている。
【0125】
また、制御部240は、照明光L20の単独照射の場合と、照明光L20と励起光L2との同時照射の場合とで、励起LD121へ出力する励起用駆動電流D2を調整することにより、励起LD121からの励起光L2の強度を変更するように構成されている。
【0126】
次にこの実施形態2の照明光源装置200の動作を説明する。
【0127】
図8は、図7に示す実施形態2の照明光源装置200の動作を示す図であり、図8(a)は、励起光L2の強度の動的な切り替えを示し、図8(b)は、青色光L21および緑色光L22の強度および波長の動的な切り替えを示し、図8(c)は、同時照射される青色光L21、緑色光L22、赤色光L23および励起光L2の分光分布を重ね合わせて示している。
【0128】
このような構成の照明光源装置200では、照明光L20が単独で被写体101に照射される場合は、制御部240が操作部(図示せず)からの操作信号Smを受けて、制御部
240から照明制御信号Ct1が照明光源210のLD駆動回路210aに出力されると、LD駆動回路210aは、照明制御信号Ct1に基づいて青色LD211、緑色LD212および赤色LD213を駆動する。これにより、青色LD211、緑色LD212および赤色LD213は、青色LD211、緑色LD212および赤色LD213が同じ強度の青色光L21、緑色光L22、赤色光L23を、青色光L21の波長が約470nmとなり、緑色光L22の波長が約530nmとなり、赤色光L23の波長が約640nmとなるように出力する。このとき励起光源120は動作せず、被写体101に励起光L2は照射されない。
【0129】
励起光L2が単独で被写体101に照射される場合は、制御部240が操作部(図示せず)からの操作信号Smを受けて、制御部240から励起制御信号Ct2が励起光源120に出力されると、励起光源120のLD駆動回路122は、励起制御信号Ct2に基づいて励起LD121を駆動する。これにより、励起LD121は、励起光L2を、その波長が約490nmとなるように出力する。このとき照明光源210は動作せず、被写体101に照明光L20は照射されない。
【0130】
照明光L20と励起光L2とが同時に被写体101に照射される場合は、操作部(図示せず)からの操作信号Smを受けた制御部240が照明制御信号Ct1とともに青色波長制御信号C21および緑色波長制御信号C22を照明光源210に出力する。またこのとき制御部240は、同時に励起制御信号Ct2を励起光源120に出力する。
【0131】
照明光源210では、LD駆動回路210aは照明制御信号Ct1に基づいて、青色光L21および緑色光L22の強度が赤色光L23の強度の約0.9倍となるように青色LD21、緑色LD22および赤色LD23を駆動する(図8(b)の右上の分光分布を参照)。なお、実施形態では光ファイバーからなる導光部材を用いて体内を観察する装置について記載したが、本発明の照明光源装置は、外科や開腹手術など光源が患部を直接照射する装置にも適用可能であることはいうまでもない。
【0132】
また、このとき、青色LD21では青色波長制御信号C21に基づいて、出力する青色光L21の波長が、照明光L20の単独照射の場合の波長(約470nm)から、励起光L2の波長(約490nm)から遠ざかるように約430nmまで調整される。同時に、緑色LD22では緑色波長制御信号C22に基づいて、出力する緑色光L22の波長が、照明光L20の単独照射の場合の波長(約530nm)に比べて、励起光L2の波長(約490nm)から遠ざかるように、約550nmまで調整される(図8(b)の左下の分光分布を参照)。
【0133】
その結果、照明光源210からは、照明光L1と励起光L2との同時照射の場合は、照明光L10の単独照射の場合(図8(b)の左上の分光分布を参照)に比べて、波長が励起光L2の波長から遠ざかるように変更され、さらに強度が赤色光L23の約0.9倍まで低下させられた青色光L21および緑色光L22が出力される。このとき、赤色光L23の波長および強度は照明光L20の単独照射の場合と変化はない(図8(b)の右下の分光分布を参照)。
【0134】
上記のように3色の照明用光L21~L23の混合により得られる白色光の色再現性は、3色の照明用光L21~L23の強度が同一であり、それぞれの波長が約470nm、約530nm、約640nmである場合、色再現性(Ra)は、自然光(昼間の太陽光)と比較して示す指標である平均演色評価数Raでは、Ra=50となっている。
【0135】
一方、これらの3色の照明用光L21~L23と励起光L2との混合により得られる白色光の色再現性は、青色光L21と緑色光L22の波長を励起光L2の波長(約490n
m)から遠ざけてそれぞれ約430nm、約550nmとし、さらに、励起光L2の波長に隣接する波長を有する青色光L21および緑色光L22の強度を赤色光L23の強度より弱めることで、混合光の色再現性を自然光(昼間の太陽光)と比較して示す指標である平均演色評価数Raでは、Ra=80とすることができた。
【0136】
なお、実施形態2では、波長可変型の発光素子として、レーザーダイオードを用いた場合を示したが、発光素子として、波長固定の発光ダイオードを用い、波長変更は波長変換素子を用いて行うようにしてもよい。
【0137】
なお、上述した実施形態1および2では、照明光源装置として、照明光と励起光とが同時に被写体に照射するとき、照明光と励起光との混合光の分光分布が、照明光のみを被写体に照射する場合に比べて、より自然光の分光分布に近づくように、励起光の強度とともに、照明光の強度および波長の少なくとも一方を調整するものを示したが、本発明の照明光源装置は、照明光と励起光とが同時に被写体に照射するとき、照明光の強度および波長について調整するのではなく、励起光だけの強度および波長の少なくとも一方を調整するものであってもよいし、照明光と励起光とのそれぞれを調整してもよい。
【0138】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明は、被写体に含まれる蛍光物質を励起可能な励起光を照明光とともに被写体に同時に照射するときに、照明光と励起光との混合光の色再現性を自然光の色再現性に近づけることが可能な照明光源装置を得ることができるものとして有用である。
【符号の説明】
【0140】
100 照明光源装置
101 被写体
110 照明光源
110a LED駆動回路
111 青色光源(青色LED)
112 緑色光源(緑色LED)
113 赤色光源(赤色LED)
120 励起光源
120a、210a LD駆動回路
121 励起用発光素子(励起LD)
130 混合器
140、140a、240 制御部
211 青色光源(青色LD)
212 緑色光源(緑色LD)
213 赤色光源(赤色LD)
C21 青色波長制御信号
C22 緑色波長制御信号
Ct1 照明制御信号
Ct2 励起制御信号
D11、D21 青色駆動電流
D12、D22 緑色駆動電流
D13、D23 赤色駆動電流
D2 励起用駆動電流
L10、L20 照明光
L11、L11a 青色光(B)
L12、L12a 緑色光(G)
L13、L13a 赤色光(R)
L2 励起光(E)
L3、L31、L32 混合光
Sm 操作信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8