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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113114
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】チップ認識システム
(51)【国際特許分類】
   A63F 3/00 20060101AFI20240814BHJP
   A63F 1/06 20060101ALI20240814BHJP
   A63F 9/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A63F3/00 515
A63F1/06 Z
A63F9/00 512Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024092343
(22)【出願日】2024-06-06
(62)【分割の表示】P 2023005018の分割
【原出願日】2018-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2017010135
(32)【優先日】2017-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000103301
【氏名又は名称】エンゼルグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230120651
【弁護士】
【氏名又は名称】山口 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】重田 泰
(57)【要約】      (修正有)
【課題】積み重ねられたチップを精度よく認識できるチップ認識システムを提供する。
【解決手段】遊戯テーブルを有する遊技場における遊戯テーブル上のチップを認識するチップ認識システムであって、前記遊戯テーブル上に積み重ねられたチップの状態をカメラを用いて画像として記録するゲーム記録装置と、前記記録されたチップの状態の画像を画像分析する画像分析装置と、前記画像分析装置による画像分析結果を用いて、積み重ねられたチップの枚数を判定する第1人工知能装置を少なくとも含む複数のチップ判定装置と、前記複数のチップ判定装置において異なる枚数の判定結果が得られた場合に、正解チップ枚数を決定する第2人工知能装置と、を備えたチップ認識システムが提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップが重ねて配置されるゲームテーブルのチップ認識システムであって、
前記ゲームテーブル上に積み重ねられたチップを斜め上方から撮影して第1画像を得る第1記録装置と、
前記ゲームテーブル上に積み重ねられたチップを斜め上方から撮影して第2画像を得る第2記録装置と、
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
人工知能技術を用いて前記第1画像に対して画像分析を行い、人工知能技術を用いて前記第2画像に対して画像分析を行い、
それぞれの画像分析の結果に基づいて、前記第1画像と前記第2画像のそれぞれに映っているチップの枚数を判定し、
前記第1及び第2画像に対する画像分析で判定されたチップの枚数と位置に基づいて、前記ゲームテーブル上のチップの枚数と位置を判定する、
チップ認識システム。
【請求項2】
前記第2画像からは認識されない1または複数のチップが前記第1画像に写っている場合、及び/又は、前記第1画像からは認識されない1または複数のチップが前記第2画像に写っている場合であっても、前記ゲームテーブル上に重ねられたチップの枚数と位置を決定可能である、請求項1に記載のチップ認識システム。
【請求項3】
前記第2画像には写っていない1または複数のチップが前記第1画像に写っている場合、及び/又は、前記第1画像には写っていない1または複数のチップが前記第2画像に写っている場合であっても、前記ゲームテーブル上に重ねられたチップの枚数と位置を決定可能である、請求項1に記載のチップ認識システム。
【請求項4】
前記ゲームテーブル上に重ねられたチップの枚数と位置を、前記第1画像及び前記第2画像のうちの、よりピクセル数が多い方の画像から判定された枚数及び位置を用いて決定する、請求項1に記載のチップ認識システム。
【請求項5】
前記ゲームテーブル上に重ねられたチップの枚数と位置を、前記第1画像及び前記第2画像のうちの、より焦点が合っている方の画像から判定された枚数及び位置を用いて決定する、請求項1に記載のチップ認識システム。
【請求項6】
前記ゲームテーブル上に重ねられたチップの枚数と位置を、前記第1画像及び前記第2画像のうちの、より前記チップに近くから撮影された方の画像から判定された枚数及び位置を用いて決定する、請求項1に記載のチップ認識システム。
【請求項7】
前記第1記録装置は第1カメラを含み、
前記第2記録装置は第2カメラを含み、
前記第1カメラと前記第2カメラは、異なる場所及び/または異なる角度に設置されることで前記第1カメラと前記第2カメラは同一のチップの異なる面を撮影し、前記第1画像に対する画像分析では判定されるが、前記第2画像に対する画像分析では判定されない1または複数のチップが存在する、請求項1に記載のチップ認識システム。
【請求項8】
前記チップの枚数及び位置は、前記第1カメラと前記第2カメラのそれぞれの位置又は前記第1カメラ及び前記第2カメラのそれぞれのピクセル数に基づいて決定する、請求項7に記載のチップ認識システム。
【請求項9】
前記チップの枚数及び位置は、
前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれの焦点の位置、
前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれの鮮明度、
前記第1記録装置及び前記第2記録装置のそれぞれに基づいて、前記少なくとも1つのプロセッサによって行われた過去の判定結果、
の少なくとも1つに基づいて決定される、請求項2に記載のチップ認識システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのプロセッサは、各画像への画像分析に基づいて、前記第1画像及び前記第2画像の少なくとも1つのチップのそれぞれの種類を判定し、
前記第1画像及び前記第2画像から判定されたそれぞれのチップの種類に基づいて、前記ゲームテーブル上に重ねられた少なくとも1つのチップの種類を決定する、請求項1に記載のチップ認識システム。
【請求項11】
前記第1記録装置は第1カメラを含み、
前記第2記録装置は第2カメラを含み、
前記第1カメラと前記第2カメラは、異なる場所及び/または異なる角度に設置されることで前記第1カメラと前記第2カメラは同一のチップの異なる面を撮影し、前記第1画像に対する画像分析では判定されるが、前記第2画像に対する画像分析では判定されない1または複数のチップが存在する、請求項10に記載のチップ認識システム。
【請求項12】
前記チップの種類は、前記第1カメラと前記第2カメラのそれぞれの位置又は前記第1カメラ及び前記第2カメラのそれぞれのピクセル数に基づいて決定する、請求項11に記載のチップ認識システム。
【請求項13】
前記チップの種類は、
前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれの焦点の位置、
前記第1画像及び前記第2画像のそれぞれの鮮明度、
前記第1記録装置及び前記第2記録装置のそれぞれに基づいて、前記少なくとも1つのプロセッサによって行われた過去の判定結果、
の少なくとも1つに基づいて決定される、請求項10に記載のチップ認識システム。
【請求項14】
前記第1記録装置及び/又は前記第2記録装置は、前記ゲームテーブルの一部を撮影する、請求項1に記載のチップ認識システム。
【請求項15】
前記第1記録装置及び/又は前記第2記録装置は、前記ゲームテーブル全体を撮影する、請求項1に記載のチップ認識システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積み重ねられたチップを認識するチップ認識システムに関する。
【背景技術】
【0002】
バカラゲームなどのゲームでは、複数のチップを積み重ねることによって賭けが行われる。そのため、積み重ねられたチップを正確に認識する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/120749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は積み重ねられたチップを精度よく認識できるチップ認識システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、遊戯テーブルを有する遊技場における遊戯テーブル上のチップを認識するチップ認識システムであって、前記遊戯テーブル上に積み重ねられたチップの状態をカメラを用いて画像として記録するゲーム記録装置と、前記記録されたチップの状態の画像を画像分析する画像分析装置と、前記画像分析装置による画像分析結果を用いて、積み重ねられたチップの枚数を判定する第1人工知能装置を少なくとも含む複数のチップ判定装置と、前記複数のチップ判定装置において異なる枚数の判定結果が得られた場合に、正解チップ枚数を決定する第2人工知能装置と、を備えたチップ認識システムが提供される。
【0006】
第2人工知能装置を設けることで、複数のチップ判定装置が異なる枚数の判定結果を出したとしても、精度よく正解チップ枚数を決定できる。
【0007】
前記複数のチップ判定装置は、前記画像分析装置による第1画像の画像分析結果を用いて、積み重ねられたチップの枚数を判定する前記第1人工知能装置と、前記画像分析装置による、前記第1画像とは異なる第2画像の画像分析結果を用いて、積み重ねられたチップの枚数を判定する第3人工知能装置と、を少なくとも有してもよい。
【0008】
あるいは、前記複数のチップ判定装置は、前記画像分析装置による画像分析結果を用いて、積み重ねられたチップの枚数を判定する前記第1人工知能装置と、前記第1人工知能装置とは異なる物理的な計測方法によって、積み重ねられたチップの枚数を判定する物理計測判定装置と、を少なくとも有してもよい。
【0009】
さらに、前記複数のチップ判定装置は、前記画像分析装置による第1画像の画像分析結果を用いて、積み重ねられたチップの枚数を判定する前記第1人工知能装置と、前記画像分析装置による、前記第1画像とは異なる第2画像の画像分析結果を用いて、積み重ねられたチップの枚数を判定する第3人工知能装置と、前記第1および第3人工知能装置とは異なる物理的な計測方法によって、積み重ねられたチップの枚数を判定する物理計測判定装置と、を少なくとも有してもよい。
【0010】
前記物理計測判定装置は、三角法を用いた計測結果を用いてチップの枚数を判定してもよい。
【0011】
前記第2人工知能装置は、前記ゲーム記録装置が用いるカメラの位置、カメラから得られる画素数、画像の焦点の位置、および、前記複数のチップ判定装置の過去の成績、の少なくとも一を用いて正解チップ枚数を決定するのが望ましい。
【0012】
また、本発明の別の態様によれば、遊戯テーブルを有する遊技場における遊戯テーブル上のチップを認識するチップ認識システムであって、前記遊戯テーブル上に積み重ねられたチップの状態をカメラを用いて画像として記録するゲーム記録装置と、前記記録されたチップの状態の画像を画像分析する画像分析装置と、前記画像分析装置による画像分析結果を用いて、積み重ねられたチップの枚数および種類を判定する第1人工知能装置を少なくとも含む複数のチップ判定装置と、前記複数のチップ判定装置において異なる枚数または種類の判定結果が得られた場合に、正解チップ枚数または正解チップ種類を決定する第2人工知能装置と、を備えたチップ認識システムが提供される。
【0013】
第2人工知能装置を設けることで、複数のチップ判定装置が異なる枚数あるいは種類の判定結果を出したとしても、精度よく正解チップ枚数および正解チップ種類を決定できる。
【0014】
前記複数のチップ判定装置は、前記画像分析装置による第1画像の画像分析結果を用いて、積み重ねられたチップの枚数および種類を判定する前記第1人工知能装置と、前記画像分析装置による、前記第1画像とは異なる第2画像の画像分析結果を用いて、積み重ねられたチップの枚数および種類を判定する第3人工知能装置と、を少なくとも有してもよい。
【0015】
あるいは、前記複数のチップ判定装置は、前記画像分析装置による画像分析結果を用いて、積み重ねられたチップの枚数および種類を判定する前記第1人工知能装置と、前記第1人工知能装置とは異なる物理的な計測方法によって、積み重ねられたチップの枚数を判定する物理計測判定装置と、を少なくとも有してもよい。
【0016】
さらに、前記複数のチップ判定装置は、前記画像分析装置による第1画像の画像分析結果を用いて、積み重ねられたチップの枚数および種類を判定する前記第1人工知能装置と、前記画像分析装置による、前記第1画像とは異なる第2画像の画像分析結果を用いて、積み重ねられたチップの枚数および種類を判定する第3人工知能装置と、前記第1および第3人工知能装置とは異なる物理的な計測方法によって、積み重ねられたチップの枚数を判定する物理計測判定装置と、を少なくとも有してもよい。
【0017】
前記物理計測判定装置は、三角法を用いた計測結果を用いてチップの枚数を判定してもよい。
【0018】
前記第2人工知能装置は、前記ゲーム記録装置が用いるカメラの位置、カメラから得られる画素数、画像の焦点の位置、および、前記複数のチップ判定装置の過去の成績、の少なくとも一を用いて正解チップ枚数または正解チップ種類を決定するのが望ましい。
【0019】
前記画像分析装置は、積み重ねられた複数のチップが前記カメラの死角により一部もしくは一枚全体が隠れた状態となっていても、チップの種類、枚数と位置の情報を得ることが可能な構造であるのが望ましい。
【0020】
本発明の別の態様によれば、遊技テーブルを有する遊技場における遊技テーブル上のチップを認識するチップ認識システムであって、前記遊技テーブル上に積み重ねられたチップの状態をカメラを用いて画像として記録するゲーム記録装置と、前記記録されたチップの状態を画像分析する画像分析装置と、前記画像分析装置による画像分析結果を用いてプレーヤが賭けたチップの枚数を判定する人工知能装置を含むチップ判定装置と、前記人工知能装置とは異なる物理的な計測方法によってプレーヤが賭けたチップの枚数を判定する物理計測判定装置と、前記画像分析装置、前記チップ判定装置及び前記物理計測判定装置を制御する管理制御装置と、を備え、前記管理制御装置は、前記チップ判定装置から得たチップ枚数の判定結果と前記物理計測判定装置から得たチップ枚数の判定結果とが異なる場合に、判定不明としてその旨を判定結果として出力表示する機能を更に備えた、チップ認識システムが提供される。
【0021】
前記物理計測判定装置は、三角法を用いた計算結果を用いてチップの枚数を判定してもよい。
【0022】
本発明の別の態様によれば、遊技テーブルを有する遊技場における遊技テーブル上のチップを認識するチップ認識システムであって、異なる位置もしくは角度からプレーヤが賭けたチップの画像を得る複数のカメラと、前記遊技テーブル上に積み重ねられたチップの状態を前記複数のカメラを用いて画像として記録するゲーム記録装置と、前記記録されたチップの状態を画像分析する画像分析装置と、前記画像分析装置による画像分析結果を用いて、積み重ねられたチップの枚数を判定する第1人工知能装置を少なくとも含む複数のチップ判定装置と、前記画像分析装置及び前記複数のチップ判定装置を制御する管理制御装置と、を備え、前記管理制御装置は、前記複数のチップ判定装置において異なる枚数の判定結果が得られた場合に、前記ゲーム記録装置の画像を分析して、判定結果の相違の原因が前記遊技テーブル上に積み重ねられたチップの重なり状態にあるか否かを判定し、前記複数のチップ判定装置の各々の判定結果を基に正解チップ枚数を決定する第2人工知能装置機能を更に備えた、チップ認識システムが提供される。
【発明の効果】
【0023】
精度よくチップを認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】遊技場を模式的に示す図。
図2】バカラゲームの進行を示す図。
図3】チップ認識システムの概略構成を示すブロック図。
図4】三角法を利用してチップWの枚数を判定する方法を説明する図。
図5】三角法を利用してチップWの枚数を判定する方法を説明する図。
図6】チップWの認識手法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0026】
まずは、遊戯テーブル10を有する遊技場において行われるゲームについて説明する。本実施形態では、遊戯テーブル10がバカラテーブルであり、バカラゲームが行われる例を示すが、他の遊技場あるいは他のゲームにも本発明は適用可能である。
【0027】
図1は、遊技場を模式的に示す図である。図示のとおり、遊技場には、略半円状の遊戯テーブル10と、遊戯テーブル10の円弧側に沿ってディーラーDと向かい合うように並べられた椅子11とが配置されている。椅子11の数は任意であり、図1の例では6つ設けられている(遊戯テーブル10の紙面右側から順に椅子11a~11fと呼び、これらを総称して椅子11と呼ぶ)。また、椅子11のそれぞれに対応して、遊戯テーブル10上にベットエリア12が設けられている(遊戯テーブル10の紙面右側から順にベットエリア12a~12fと呼び、これらを総称してベットエリア12と呼ぶ)。すなわち、6個のベットエリア12a~12fが円弧状に並んでいる。また、遊戯テーブル10条にはチップチェックエリアが設けられており、チップチェックエリア上に置かれたチップの種類と枚数をRFIDによって読み取ることができる。
【0028】
そして、椅子11a~11fのそれぞれに客(プレーヤ)Cが着席する。客(プレーヤ)Cは、バカラゲームの勝敗結果として、プレーヤ(PLAYER)とバンカー(BANKER)のどちらが勝利するか、または引き分け(TIE)となるかを、着席した椅子11の目の前に設けられたベットエリア12にチップWを積み重ねることにより賭ける(以下、これを「ベット」とする)。
【0029】
ベットするチップWは、1種類のみであってもよいし、複数種類あってもよい。また、ベットするチップWの枚数は客(プレーヤ)Cが任意に決定してよい。本実施形態は、この積み重ねられたチップWの枚数(さらには種類)を認識するものである。
【0030】
ディーラーDは、客(プレーヤ)Cによるベットを終了させるためタイミングを計り(″No More Bet(ベットの受付終了″)とコールし、手を横方向に動かす等を行う。その後、カードシュータ装置Sからカードを1枚ずつ遊戯テーブル10に引き出す。図2に示すとおり各々1枚目のカードはプレーヤ(PLAYER)、2枚目のカードはバンカー(BANKER)、3枚目のカードはプレーヤ(PLAYER)、4枚目のカードはバンカー(BANKER)の手となる(以下、1枚目から4枚目のカードの引き出しを、「ディーリング」とする)。
【0031】
なお、カードはカードシュータ装置Sからすべて裏面が上向きの状態で引き出されるため、ランク(数)やスート(ハート・ダイヤ・スペード・クラブ)はディーラーDからも客(プレーヤ)Cからも把握することはできない。
【0032】
4枚目のカードが引き出された後、プレーヤ(PLAYER)にベットをした客(プレーヤ)C(PLAYERにベットをした客が複数いる場合は一番高額のベットをした客C、PLAYERにベットをした客がいない場合はディーラーD)は、裏面が上向きになっている1枚目と3枚目のカードを表面に返す。同様にバンカー(BANKER)にベットをした客(プレーヤ)C(BANKERにベットをした客が複数いる場合は一番高額のベットをした客C、BANKERにベットをした客がいない場合はディーラーD)は、2枚目と4枚目のカードを表面に返す(一般に、この裏面のカードを表面に返すことを、「スクイーズ」と呼ぶ)。
【0033】
そしてこの1から4枚目のカードのランク(数)と、バカラゲームの詳細なルールにもとづき、ディーラーDにより5枚目のカード、さらに6枚目のカードが引き出され、これらは各々プレーヤ(PLAYER)またはバンカー(BANKER)の手となる。同じくプレーヤ(PLAYER)の手となるカードをプレーヤ(PLAYER)にベットをした客(プレーヤ)Cがスクイーズし、バンカー(BANKER)の手となるカードをバンカー(BANKER)にベットをした客(プレーヤ)がスクイーズする。
【0034】
1~4枚目のカードを引き出し後、5枚目、6枚目のカードをスクイーズして勝敗結果が判明するまでの時間は、客(プレーヤ)Cにとって醍醐味となる時間である。
【0035】
さらに、カードのランク(数)によっては1から4枚目までで勝敗が決まることもあり、また5枚目、さらには6枚目でようやく勝敗が決まることもある。ディーラーDは、スクイーズされたカードのランク(数)にもとづき、勝敗が決まったことや勝敗結果を把握し、カードシュータ装置Sにおける勝敗結果表示ボタンを押して、勝敗結果を客(プレーヤ)Cに知らせるためにモニタに表示させる等の作業を行う。
【0036】
また同時に、前記カードシュータ装置Sが有する勝敗判定部により、ゲームの勝敗結果が判定される。勝敗が決まっているにもかかわらず、勝敗結果の表示を行わずにさらにカードを引こうとした場合はエラーとなる。カードシュータ装置Sは前記エラーを検知し、エラー信号が出力される。最後に、ディーラーDは勝敗結果が表示されている間、客(プレーヤ)Cによる賭け金の精算を行い、勝った客(プレーヤ)Cへの支払いおよび負けた客(プレーヤ)Cの賭け金の回収を行う。精算が完了した後、勝敗結果の表示を終了し、次のゲームのベットを開始する。
【0037】
なお、上記のバカラゲームの流れは一般のカジノで広く行われているものであり、前記カードシュータ装置Sは、カードをディーラーDの手により引き出す構造をとりつつ、引き出されるカードを読み取るように構成され、さらに結果表示ボタンや結果表示部を有し、勝敗判定や勝敗結果の表示を行う機能を備えた、既存のカードシュータ装置である。前述のとおり、一般のカジノフロアにおいて、複数台並べられている遊戯テーブル10ごとにカードシュータ装置Sやモニタ等が配置され、各遊戯テーブル10またはその下のキャビネット210に、使用するカードがパッケージまたはセット単位で、さらにはカートン単位で供給され、運用されている。
【0038】
本実施形態は、客(プレーヤ)Cがベットエリア12に積み重ねたチップWを認識するチップ認識システムに関し、より詳しくは、チップWの枚数および/または種類を認識するチップ認識システムに関する。
【0039】
チップ認識システムは1または複数(図1の例では2つ)のカメラ1a,1bを備えている。カメラ1aは遊戯テーブル10の紙面右側に配置され、ベットエリア12を撮影する。一方、カメラ1bは遊戯テーブル10の紙面左側に配置され、ベットエリア12を撮影する。なおカメラ1a,1bの配置位置は例示にすぎず、ベットエリア12を撮影できる任意の位置に配置されてよい。
【0040】
カメラ1aはベットエリア12a~12fの一部のみを撮影してもよいが、すべてを撮影するのが望ましい。カメラ1aが複数のベットエリア12を撮影する場合、カメラ1aに近いベットエリア12については鮮明な画像が得られることが期待されるが、カメラ1aから遠いベットエリア12については不鮮明な画像となることも考えられる。また、カメラ1aの焦点が合ったベットエリア12については鮮明な画像が得られることが期待されるが、焦点が合っていないベットエリア12については不鮮明な画像となることも考えられる。カメラ1bについても同様のことが言える。
【0041】
カメラ1a,1bによる撮影で得られた画像を用いてチップWの認識を行うが、鮮明な画像を用いればチップWの認識精度は高くなるし、不鮮明な画像を用いればチップWの認識精度は低くなる。
【0042】
図3は、チップ認識システムの概略構成を示すブロック図である。このチップ認識システムは、遊戯テーブル10を有する遊技場における遊戯テーブル10上のチップWを認識するものであり、カメラ1a,1bと、ゲーム記録装置2と、画像分析装置3と、複数のチップ判定装置4と、正解決定用人工知能装置5とを備えている。
【0043】
カメラ1a,1bは上述したように遊戯テーブル10におけるベットエリア12に積み重ねられたチップWを撮影する。撮影によって得られた画像は、無線通信あるいは有線通信により、ゲーム記録装置2に送信される。
【0044】
ゲーム記録装置2は、遊戯テーブル10で行われるゲームにおいて積み重ねられたチップWの状態を、カメラ1a,1bを用いて画像として記録する。すなわち、ゲーム記録装置2はカメラ1a,1bによって撮影された画像を記録する。
【0045】
画像分析装置3は記録されたチップWの状態の画像を画像分析する。例えば、画像分析装置3は、想定される対象物(チップW)の大きさ(ピクセル数)、形(パターンマッチング)などによるフィルタリングを行い、チップWと背景とを区別する。この画像分析装置3は、ベットエリア12に積み重ねられた複数のチップWが、カメラ1a,1bの死角により、一部もしくはチップWの一枚全体が隠れた状態となっていても、チップWの種類、枚数と位置の情報を得ることが可能な構造であるのが望ましい。具体的には、人工知能によって、画像と、その画像におけるチップ枚数とを教師データとして人工知能に教示することでこのようなことが可能となる。
【0046】
複数のチップ判定装置4は、例えば2つの枚数判定用人工知能装置4a,4bと、物理計測判定装置4cとを有する。なお、複数のチップ判定装置4は、2つの枚数判定用人工知能装置4a,4bのみを含んでいてもよいし、1つの枚数判定用人工知能装置4aおよび物理計測判定装置4cのみを含んでいてもよいし、あるいは、3以上の枚数判定用人工知能装置を含んでいたり、別の手法で枚数判定を行う装置を含んでいたりしてもよい。
枚数判定用人工知能装置4a,4bは、画像分析装置3による画像分析結果を用いてチップWの枚数判定が行えるよう、予め学習が行われている。
【0047】
枚数判定用人工知能装置4aは、カメラ1aによって撮影されて画像として記録され、さらに画像分析された結果を用い、積み重ねられたチップWの枚数を人工知能を用いて判定する。一方、枚数判定用人工知能装置4bは、カメラ1bによって撮影されて画像(つまりカメラ1aが撮影した画像とは異なる画像)として記録され、さらに画像分析された結果を用い、積み重ねられたチップWの枚数を人工知能を用いて判定する。
【0048】
物理計測判定装置4cは人工知能を用いることなく、物理的な計測方法によってチップWの枚数を判定する。物理的な計測方法の具体例として、カメラ1a,1bで撮影された画像に三角法を適用して得られる積み重ねられたチップWの高さに基づいて、チップWの枚数を判定してもよい。さらに具体的には、三角法を利用し、カメラ1a,1bからの視角と、画像におけるチップWの位置と、水平距離とを計算することで、チップWの枚数を判定できる。以下、具体的に説明する。
【0049】
図4において、カメラ1a,1bおよびチップWが遊技テーブル10に垂直な同一平面上にあると仮定する。カメラ1aと最上位のチップWの中心Cとを結ぶ直線と遊技テーブル10がなす角度αと、カメラ1bと最上位のチップWの中心Cとを結ぶ直線と遊技テーブル10のなす角度βと、カメラ1aと最上位のチップWの中心Cとを結ぶ直線と遊技テーブル10の交点KRとカメラ1bと最上位のチップWの中心Cとを結ぶ直線と遊技テーブル10の交点KLとの間の距離Lと、重なったチップWの高さHと、の関係式は以下の(1)式で表される。
L=H/tanα+H/tanβ ・・・(1)
【0050】
ここで距離L、角度α,βは以下の方法によって求められる。交点KR,KLは、カメラ1a、1bの画角からみて、最上位のチップWの中心Cを遊技テーブル10上に射影した位置である。従って、カメラ1a,1bによる撮影画像の最上位のチップWの輪郭の中心を画像処理によって得ることで交点KR,KLを得る。さらに、カメラ1a,1bによる撮影画像を画像処理することによって、遊技テーブル10を真上から俯瞰する画像を得るなどして、交点KR,KL間の距離Lを得る。さらに、交点KR,KLの位置が分かれば、カメラ1a,1bのテーブルからの高さは一定なので、角度α,βを得ることができる。以上より、重なったチップWの高さHは、上記(1)式を変形した以下の(2)式で、上記で得た距離L及び角度α,βによって得ることができる。
H=(tanα×tanβ)/((tanα+tanβ) ) L ・・・(2)
【0051】
以上では説明を簡単にするためにカメラ1a,1bとチップWが遊技テーブル10に垂直な同一平面上にあると仮定したが、カメラ1a,1bとチップWが遊技テーブル10に垂直な同一平面上にない場合でも、図5において同様に計算することができる。中心Cから遊戯テーブル10への垂線の遊戯テーブル10との交点をO、交点O,KRを結ぶ直線と交点KR,KLを結ぶ直線とのなす角度をγ、交点O、KLを結ぶ直線と交点KR,KLを結ぶ直線とのなす角度をδとすると、詳細な計算は省略するが、以下の(2’)式で表せる。
H=tanαtanβ/(tanαcosδ+tanβcosγ)L ・・・(2’)
【0052】
以上に示した方法で重なったチップWの高さHを得ることで、所定の厚みtを有するチップWの枚数はH/tによって得ることができる。
【0053】
図3に戻り、正解決定用人工知能装置5は、どのような画像に基づいてチップWの枚数を判定した場合に、複数のチップ判定装置4における枚数判定用人工知能装置4a,4bおよび物理計測判定装置4cのいずれの判定結果が正解である可能性が高いかを、予め学習している。そして、正解決定用人工知能装置5は、枚数判定用人工知能装置4a,4bおよび物理計測判定装置4cから異なる枚数の判定結果が得られた場合に、人工知能を用いて正解のチップ枚数を決定する。この決定の際、正解決定用人工知能装置5は枚数判定用人工知能装置4a,4bによってチップWの枚数判定に用いられた画像を用いる。
【0054】
正解決定用人工知能装置5はゲーム記録装置2が用いるカメラ1a,1bの位置を考慮して正解チップ枚数を決定してもよい。例えば、カメラ1aはベットエリア12aに近く、ベットエリア12fから遠い(図1参照)。そのため、正解決定用人工知能装置5は、ベットエリア12aに積み重ねられたチップWの枚数を判定する際には、カメラ1bからの画像を用いる枚数判定用人工知能装置4bではなく、カメラ1aからの画像を用いる枚数判定用人工知能装置4aの判定結果によるチップ枚数を正解と決定してもよい。
【0055】
また、正解決定用人工知能装置5はカメラ1a,1bから得られる画素数などを考慮して正解チップ枚数を決定してもよい。例えば、各カメラ1a,1bから得られる画像数やピントの合い具合を比較して、カメラ1a,1bのいずれかを選定してもよい。すなわち、ピントが合っていると輪郭が明確になるので、コントラストがはっきりして画像処理による正解枚数が分かりやすい。そのため、例えばカメラ1a,1bで判定結果が異なる場合に、一般的には、よりピントが合っているカメラの方が正解チップ枚数を示している可能性が高い。
【0056】
あるいは、正解決定用人工知能装置5はカメラ1a,1bが撮影した画像の焦点位置を考慮して正解チップ枚数を決定してもよい。例えば、ベットエリア12bに積み重ねられたチップWの枚数を判定する際に、カメラ1aの焦点はベットエリア12bに位置しており、カメラ1bの焦点はベットエリア12fに位置していたとする。この場合、正解決定用人工知能装置5は、カメラ1bからの画像を用いる枚数判定用人工知能装置4bではなく、カメラ1aからの画像を用いる枚数判定用人工知能装置4aの判定結果によるチップ枚数を正解と決定してもよい。
【0057】
また、正解決定用人工知能装置5は、枚数判定用人工知能装置4a,4bおよび物理計測判定装置4cの過去の成績を考慮して正解チップ枚数を決定してもよい。例えば、枚数判定用人工知能装置4a,4bより物理計測判定装置4cの過去の正解率が高い場合、正解決定用人工知能装置5は物理計測判定装置4cの判定結果によるチップ枚数を正解と決定してもよい。
【0058】
このように、正解決定用人工知能装置5は種々の要素を用いて正解を決定できる。例示したカメラ1a,1bの位置、カメラ1a,1bから得られる画素数、画像の焦点の位置、および、過去の成績の2以上を組み合わせてもよいし、他の情報をさらに用いてもよい。
【0059】
図6は、チップWの認識手法を示すフローチャートである。まず、カメラ1a,1bがチップWの状態を撮影し、チップWの状態を示す画像をゲーム記録装置2が記録する(ステップS1)。続いて、記録された画像を画像分析装置3が分析する(ステップS2)。そして、複数のチップ判定装置4における枚数判定用人工知能装置4a,4bおよび物理計測判定装置4cのそれぞれが、画像分析結果を用いてチップWの枚数を判定する(ステップS3)。
【0060】
ここで、枚数判定用人工知能装置4a,4bおよび物理計測判定装置4cによって得られたチップWの判定結果が互いに一致する場合(ステップS4のYES)、その判定結果をチップWの枚数とすればよい。一方、一致しない場合(ステップS4のNO)、正解決定用人工知能装置5はいずれの判定結果が正解であるかの決定、すなわち、正解チップ枚数を決定する(ステップS5)。また、一致しない場合には、チップチェックエリアにチップWを置いてRFIDの読み取りによってチップの枚数を確認してもよい。
【0061】
このように、本実施形態では、複数のチップ判定装置4を設け、さらに、正解決定用人工知能装置5を設ける。そのため、複数のチップ判定装置4のそれぞれが異なる判定結果を出した場合でも、正解決定用人工知能装置5によって精度よくチップWの枚数を決定できる。
【0062】
なお、上述した実施形態はチップWの枚数を決定するものであった。しかしながら、チップWの種類および枚数の両方を決定するものであってもよい。例えば、枚数判定用人工知能装置4a,4bがチップWの種類および枚数を判定するよう予め学習されており、画像分析された画像を用いてその両者を判定してもよい。その場合、正解決定用人工知能装置5は、判定結果が示すチップWの種類が一致しない場合には、さらに正解チップ種類を決定してもよいし、チップチェックエリアにチップWを置いてRFIDの読み取りによってチップの種類と枚数を確認してもよい。
【0063】
また、チップ認識システムは、ゲーム記録装置2、画像分析装置3、チップ判定装置4および正解決定用人工知能装置5の少なくとも一部を制御する管理制御装置を備えていてもよい。
【0064】
例えば、管理制御装置は、枚数判定用人工知能装置4a,4bから得たチップ枚数(および/または種類、以下同様)の判定結果と、物理計測判定装置4cから得たチップ枚数の判定結果とが異なる場合、判定不明としてその旨を判定結果として出力表示してもよい。
【0065】
また、管理制御装置は、チップ判定装置4において異なる枚数の判定結果が得られた場合に、ゲーム記録装置2の画像を分析して、判定結果の相違の原因が遊技テーブル10上に積み重ねられたチップWの重なり状態にあるか否かを判定し、チップ判定装置4の各々の判定結果を基に正解チップ枚数を決定してもよい。管理制御装置は人工知能装置機能を有し、この決定に人工知能装置機能を利用してもよい。
【0066】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0067】
1a,1b カメラ
2 ゲーム記録装置
3 画像分析装置
4 複数のチップ判定装置
4a,4b 枚数判定用人工知能装置
4c 物理計測判定装置
5 正解決定用人工知能装置
10 遊戯テーブル
11,11a~11f 椅子
12,12a~12f ベットエリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6