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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011316
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ダンプトラックの荷台被覆装置
(51)【国際特許分類】
   B60P 1/28 20060101AFI20240118BHJP
   B62D 33/023 20060101ALI20240118BHJP
   B60R 13/01 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B60P1/28 Z
B62D33/023 Z
B60R13/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113222
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515310951
【氏名又は名称】未来テクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】井坂 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】丹澤 文秀
(72)【発明者】
【氏名】山口 曜士郎
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 亮
(72)【発明者】
【氏名】大森 健吾
(57)【要約】
【課題】荷台を改良せずに、搬送中における漏液防止、積載物の飛散防止および積載物のこぼれ落ち防止を同時に達成できる荷台被覆装置を提供すること。
【解決手段】着脱式の荷台カバー30と、着脱式のサポート装置30とを具備し、荷台カバー30は荷台11の床面12を被覆する底膜31と、荷台11の周壁を被覆する周膜32と、周壁の一部に延設した複数のカバー膜37~39と、底膜31に一体に付設し、サポート装置40に係留する複数の懸架ベルト36とを具備し、複数のカバー膜37~39が周膜の上口を閉鎖可能な寸法を有し、荷台11に積載した積載物の上面を複数のカバー膜37~39を重合させて被覆して周膜の上口を封止可能に構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダンプトラックの荷台の床面と周壁を被覆可能な有底構造を呈する着脱式の荷台カバーと、荷台の内側前部に移動不能に設置し、荷台の内面から反力を得て荷台カバーを位置決めする着脱式のサポート装置とを少なくとも具備するダンプトラックの荷台被覆装置であって、
前記荷台カバーは荷台の床面を被覆する底膜と、荷台の周壁を被覆する周膜と、前記周壁の一部に延設した複数のカバー膜と、前記底膜に一体に付設し、前記サポート装置に係留可能な複数の懸架ベルトとを具備し、
前記複数のカバー膜が周膜の上口を閉鎖可能な寸法を有し、
前記荷台に積載した積載物の上面を前記複数のカバー膜を重合させて被覆して前記周膜の上口を封止可能に構成したことを特徴とする、
ダンプトラックの荷台被覆装置。
【請求項2】
前記荷台の後部に積載する間詰ブロックを追加して具備し、前記荷台カバーの後部と荷台の後扉との間に間詰ブロックを介装したことを特徴とする、請求項1に記載のダンプトラックの荷台被覆装置。
【請求項3】
前記複数のカバー膜が前記周膜の相対向する左右の側膜から延設した右カバー膜および左カバー膜と、前記周膜の前部から延設した中央カバー膜とからなることを特徴とする、請求項1に記載のダンプトラックの荷台被覆装置。
【請求項4】
前記右カバー膜、左カバー膜および中央カバー膜を重合し、重合させた前記複数のカバー膜の後端辺と周膜の後端辺との間を、前記周膜の後端辺に設けた複数の単輪を介して連結したことを特徴とする、請求項3に記載のダンプトラックの荷台被覆装置。
【請求項5】
前記荷台カバーの周膜は荷台の前壁を覆う前膜と、荷台の側壁を覆う一対の側膜および荷台の後扉を覆う扉膜とからなり、前記扉膜に芯板を設けて扉膜を自立可能に構成したことを特徴とする、請求項1に記載のダンプトラックの荷台被覆装置。
【請求項6】
前記サポート装置は荷台の側壁の内側前面に相対向して配置する一対の押圧板と、該押圧板の間に横架した長さ調整機能を具備する単数または複数の伸縮梁とを少なくとも具備すると共に、荷台の設置幅に合わせて伸縮梁の長さ調整を行った一対の押圧板が荷台の内面に着脱可能であり、前記荷台カバーは懸架ベルトを介してサポート装置の一部の掛止要素に係留可能であることを特徴とする、請求項1に記載のダンプトラックの荷台被覆装置。
【請求項7】
前記懸架ベルトを荷台カバーの底膜の少なくとも両側部に付設してあることを特徴とする、請求項1に記載のダンプトラックの荷台被覆装置。
【請求項8】
前記懸架ベルトは荷台カバーの底膜の長手方向に沿って一体化した補強部と、底膜の前方へ突出した係留部とを具備し、前記係留部がサポート装置の一部に係留可能であることを特徴とする、請求項1に記載のダンプトラックの荷台被覆装置。
【請求項9】
前記サポート装置の掛止要素が一対の押圧板の対向面に突設した片持ち梁であることを特徴とする、請求項1に記載のダンプトラックの荷台被覆装置。
【請求項10】
前記サポート装置の掛止要素が一対の押圧板の対向面に横架した伸縮梁であることを特徴とする、請求項1に記載のダンプトラックの荷台被覆装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷台の内面と積載物をシート製の荷台カバーで被覆して積載物の漏出防止性能を高めたダンプトラックの荷台被覆装置に関する。
【背景技術】
【0002】
土砂等の積載物を運搬するダンプトラックにおいて、ダンプトラックの荷台の床面の保護や積載物の付着防止等を目的として、ダンプトラックの荷台の床面を一枚ものの保護シートで覆うことが知られている。
荷台の床面を単に保護シートで覆っただけでは、ダンプアップ時に保護シートが積載物と一緒にずり落ちるため、繰り返し使用するためには保護シートを荷台に固定しておく必要がある。
【0003】
保護シートを荷台の床面に取付ける手段としては、接着剤を使用して保護シートを貼付する方法(特許文献1)や、ボルト、ナットと帯板を使用して保護シートを固定する方法(特許文献2)等が知られている。
【0004】
さらに保護シートを荷台の床面に固定する他の手段として、荷台の前端部に1本のパイプサポートを取付け、パイプサポートに対して複数のシャックルを取り付け、各シャックルを介して緩衝シートをパイプサポートに連結することが知られている(特許文献3)。
【0005】
一方、ダンプトラックで土砂等の積載物を運搬する際には、積載物の飛散防止対策を講じる必要がある。
土砂等の積載物の飛散防止手段としては、積載物の上面を一枚ものの被覆シート(ホロシート)で覆い、被覆シートの周縁部を荷台に取りけることが知られている(特許文献4,5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭52-130312号公報
【特許文献2】特開2004-51029号公報
【特許文献3】特開2012-101728号公報
【特許文献4】特開2020-6861号公報
【特許文献5】実用新案登録第3083828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の保護シートの取付け技術はつぎの問題点を内包している。
<1>特許文献1に記載の取り付け技術は、強力な接着剤を使用するため、一度、貼り付けると保護シートを簡単に取り外すことができない。
<2>特許文献2に記載の取り付け技術は、荷台側に複数の受け金具を溶接する等して加工しておく必要であり、荷台の改造コストがたかくつく。
<3>ダンプトラックの荷台の寸法(幅、長さ)は、メーカにより様々であり、同一寸法ではない。
そのため、荷台に保護シートを取り付ける際に使用する取付具は、特定の荷台寸法に合わせて製作した専用品となり、汎用性に乏しい。
<4>1本のパイプサポートと複数のシャックルを介して緩衝シートを取り付ける特許文献3に記載の取付け手段にあっては、ダンプアップ時に緩衝シートに引張られてパイプサポートのパイプ本体が撓むため、パイプサポートによる取付力が低下する。
パイプサポートの取付力が不足すると、荷台内でパイプサポートが緩衝シートと一緒に滑落する。
<5>特許文献3に記載の取付け手段は、シャックルを介して緩衝シートを点状に支持する構造であるため、ダンプアップ時において、シャックルの連結箇所に荷重が集中するので緩衝シートの連結部が破れ易い。
【0008】
従来の積載物の被覆技術はつぎの問題点を内包している。
<1>積載物の上面を被覆シートの単体で被覆した従来の被覆技術は、走行に伴う風圧による飛散を想定したものである。
そのため、ダンプトラックの姿勢が左右片側に大きく傾いたり、横転したりすると、被覆シートと荷台の間から積載物がこぼれ落ちる。
<2>積載物が例えば汚染土壌である場合は、こぼれ落ちた汚染土壌の回収処理に多大の労力と時間を要する。
<3>積載物が水等の液体を含む場合は、搬送中に漏液が生じるため、ダンプトラックの荷台に積載物の漏液対策を講じる必要がある。
従来は、積載物の漏液防止、積載物の飛散防止および積載物のこぼれ落ち防止を同時に達成できる積載物の被覆技術が存在しなかった。
【0009】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは以上の問題点を解消できる、ダンプトラックの荷台被覆装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ダンプトラックの荷台の床面と周壁を被覆可能な有底構造を呈する着脱式の荷台カバーと、荷台の内側前部に移動不能に設置し、荷台の内面から反力を得て荷台カバーを位置決めする着脱式のサポート装置とを少なくとも具備する荷台被覆装置であって、前記荷台カバーは荷台の床面を被覆する底膜と、荷台の周壁を被覆する周膜と、前記周壁の一部に延設した複数のカバー膜と、前記底膜に一体に付設し、前記サポート装置に係留可能な複数の懸架ベルトとを具備し、前記複数のカバー膜が周膜の上口を閉鎖可能な寸法を有し、前記荷台に積載した積載物の上面を前記複数のカバー膜を重合させて被覆して前記周膜の上口を封止可能に構成した。
本発明の他の形態において、前記荷台の後部に積載する間詰ブロックを追加して具備し、前記荷台カバーの後部と荷台の後扉との間に間詰ブロックを介装した。
本発明の他の形態において、前記複数のカバー膜が前記周膜の相対向する左右の側膜から延設した右カバー膜および左カバー膜と、前記周膜の前部から延設した中央カバー膜とからなる。
本発明の他の形態において、前記右カバー膜、左カバー膜および中央カバー膜を重合し、重合させた前記複数のカバー膜の後端辺と周膜の後端辺との間を、前記周膜の後端辺に設けた複数の単輪を介して連結してもよい。
本発明の他の形態において、前記荷台カバーの周膜は荷台の前壁を覆う前膜と、荷台の側壁を覆う一対の側膜および荷台の後扉を覆う扉膜とからなり、前記扉膜に芯板を設けて扉膜を自立可能に構成してもよい。
本発明の他の形態において、前記サポート装置は荷台の側壁の内側前面に相対向して配置する一対の押圧板と、該押圧板の間に横架した長さ調整機能を具備する単数または複数の伸縮梁とを少なくとも具備すると共に、荷台の設置幅に合わせて伸縮梁の長さ調整を行った一対の押圧板が荷台の内面に着脱可能であり、前記荷台カバーは懸架ベルトを介してサポート装置の一部の掛止要素に係留可能である。
本発明の他の形態において、前記懸架ベルトを荷台カバーの底膜の少なくとも両側部に付設してある。
本発明の他の形態において、前記懸架ベルトは荷台カバーの底膜の長手方向に沿って一体化した補強部と、底膜の前方へ突出した係留部とを具備し、前記係留部がサポート装置の一部に係留可能である。
本発明の他の形態において、前記サポート装置の掛止要素が一対の押圧板の対向面に突設した片持ち梁である。
本発明の他の形態において、前記サポート装置の掛止要素が一対の押圧板の対向面に横架した伸縮梁である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る荷台被覆装置は少なくともつぎのひとつの効果を奏する。
<1>有底構造の荷台カバーに高い遮水性を付与しつつ、重合させた複数のカバー膜で荷台カバーの上口を封止可能に構成したことで、荷台被覆装置を荷台に取付けるだけで、搬送中における漏液防止、積載物の飛散防止および積載物のこぼれ落ち防止を同時に達成することができる。
したがって、従来と比べて積載物の輸送の安全性が格段に向上する。
<2>荷台カバーの後部と荷台の後扉との間に間詰ブロックを介装することで、積載物の側圧を、間詰ブロックを介装して後扉で支持しながら安全に搬送でき、ダンプアップ時は事前に間詰ブロックを撤去するので、積載物を円滑に放出することができる。
特に、間詰ブロックを併用することで、荷台カバーの繰り返しの使用がし易くなる。
<3>荷台カバーは複数のシート片を接合しただけの簡単な構造であるため、製造が簡単であり、低コストに製作できる。
<4>荷台カバーを荷台に直接固定して取り付けるのではなく、荷台の内側前部に設置したサポート装置に対して、荷台カバーの底膜に一体に付設した懸架ベルトを取り付けるように構成した。
そのため、荷台をまったく改造せずに荷台カバーを簡易な取付け構造により取付けできる。
<5>ダンプアップ時に荷台から荷台カバーを垂下させて荷台カバーの滑落を防止できるので、荷台カバーを繰り返し使用することができる。
<6>荷台カバーの底膜に設けた懸架ベルトの補強作用により、ダンプアップ時に積載物が滑落しても荷台カバーの底膜が破断し難い。
<7>サポート装置はサポート装置の横幅寸法を任意に調整できるため、メーカによって荷台の横幅寸法が多少異なっても、サポート装置を現場で調整して設置できるので、メーカ毎の専用品を製作しなくて済む。
<8>サポート装置に対して荷台カバーが着脱可能であるため、荷台にサポート装置を残したまま荷台カバーを簡単に付け替えすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1に係る荷台被覆装置とダンプトラックの荷台との関係の説明図
図2】荷台被覆装置を構成する荷台カバーの展開図
図3】ダンプトラックの荷台に取り付けた一部を破断した荷台被覆装置の平面図
図4図3におけるIV-IVの断面図
図5】荷台被覆装置のサポート装置と荷台カバーの一部を省略した斜視図
図6】伸縮梁の伸縮機構の説明図
図7】荷台被覆装置を構成するサポート装置の設置方法の説明図で、(A)はサポート装置の横断図、(B)はサポート装置の平面図
図8】荷台被覆装置の作用の説明図で、(A)は荷台の水平時における荷台被覆装置のモデル図、(B)は(A)におけるB-Bの断面図
図9】複数のカバー膜の被覆方法の説明図で、(A)は右カバー膜の被覆時の説明図、(B)は左カバー膜の被覆時の説明図、(C)は中央右カバー膜の被覆時の説明図
図10】複数のカバー膜と扉膜の間の連結構造の説明図で、(A)は連結前の状態の説明図、(B)は単輪を用いて連結した状態の説明図
図11】荷台カバーで荷台を被覆した封止構造の説明図で、(A)は荷台を縦断したモデル図、(B)は(A)におけるB-Bの断面図
図12】実施例2に係る荷台被覆装置の説明図で、(A)は荷台カバーの底膜を見上げたときの荷台被覆装置の平面図、(B)は(A)におけるB-Bの断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施例1]
1.ダンプトラック
図1にダンプトラック10の一例を示す。
ダンプトラック10は昇降可能な荷台11を具備するリアダンプである。
荷台11はフラットな床面12と、床面12の四方を覆う前壁13、一対の側壁14および後扉15とを具備する。
本例では後扉15が下開き式の形態について説明するが、後扉15は上開き式(Fゲート)であってもよい。
【0014】
以降の説明にあたり、「前部」とはダンプトラック10の前進方向側を意味し、「後部」とはダンプトラック10の後進方向側を意味する。
さらに「左右」とは、ダンプトラック10の前進方向に対する左右を意味する。
さらに荷台11の「幅寸法」とは荷台11の長手方向に対して直交する方向の寸法を意味するものとして説明する。
【0015】
2.荷台被覆装置
ダンプトラック10の荷台被覆装置20は、荷台11の被覆機能と積載物の被覆機能を併有した装置である。
荷台被覆装置20は、荷台11の内周面を被覆可能に製作した函形の荷台カバー30と、荷台カバー30を荷台11の内側に位置決めするサポート装置40と、荷台11の後部に積載する間詰ブロック50とからなる。
サポート装置40は荷台11に対して着脱が可能であり、荷台カバー30はサポート装置40に対して着脱が可能である。
【0016】
<1>荷台カバー(図1,2)
図1は荷台カバー30の斜視図を示し、図2(A)は下方から見上げた荷台カバー30の展開図の一例を示している。図2(A)の一点鎖線はシートの折線を示している。
【0017】
荷台カバー30は、荷台21の床面12を覆う底膜31と、荷台21の周壁(前壁13、一対の側壁14および後扉15)を覆う周膜32(前膜33、一対の側膜34および扉膜35)と、周膜32の一部に延設した複数のカバー膜(カバー膜37と、左カバー膜38と、周膜32の前部に延設した中央カバー膜39)と、底膜31の一部に積載物の滑落方向に沿って一体に付設した複数の懸架ベルト36と、を具備する。
荷台カバー30は、底膜31と周膜32とを接合した有底構造を呈する函体であり、高い防水性(遮水性)を有している。
【0018】
荷台カバー30を構成する素材としては、耐久性と遮水性等に優れたゴムシート等の樹脂製シートや、ポリエステル等の公知の防水シートを使用でき、適宜の形状に切断した複数のシート片を縫製、熱融着、接着等の接合手段で接合し、各接合部は高い止水性を有している。
【0019】
<1.1>底膜
底膜31は荷台11の床面12を被覆する矩形シートである。
底膜31の全長は荷台11の床面12の全長より短い寸法関係にある。
底膜31の周囲の4辺は底膜31と連続性を有する周膜32(前膜33、一対の側膜34、扉膜35)を形成している。
【0020】
<1.2>周膜(図1,2)
周膜32は荷台11の前壁13、側壁14、後扉15の内面を被覆する長方形のシートである。
周膜32は荷台11の前壁13を覆う前膜33と、側壁14を覆う一対の側膜34および後扉15を覆う扉膜35とからなる。
前膜33および一対の側膜34の後部側の端辺には複数のハト目33a,34aを形成している。
【0021】
周膜32を構成する各膜33~35の側端辺を突き合せて接合した角部は、漏水が生じないように、融着、接着等で高い止水性を付与して接合する。
側膜34と扉膜35との間は、扇状の折畳み膜35bを介装して、折畳み膜35bの伸縮により扉膜35を単独で傾倒を許容するように構成する。
【0022】
前膜33は、荷台11の側壁14の高さより高い寸法に設定しておくとよい。
これは、荷台カバー30内に積載物を投入した際に、前膜33の自由変形を許容させるためである。
【0023】
前膜33は紐等を使って荷台11の前壁13の上部等に係脱が可能である。
なお、前膜33は紐等を使ってサポート装置40の一部に取付けてもよい。
側膜34と扉膜35は、紐やゴムベルト等を使って荷台11の一部に係脱が可能である。
【0024】
側膜34は側壁14の内面だけを覆う寸法でもよいし、側壁14の内面および外面の両面を被覆可能な寸法でもよい。
【0025】
図2(B)に例示した扉膜35の構造について説明する。
扉膜35は袋状になっていて、その内部に帯板状を呈する芯板35aを収容している。
扉膜35を硬質に形成したのは扉膜35の自立性を高めて、積載物の積載時に扉膜35を起立させ、積載物の放出時に扉膜35を床面12に沿って平伏させるためである。
【0026】
<1.3>懸架ベルト(図2~4)
荷台カバー30の底膜31には、底膜31の長手方向に沿って複数の懸架ベルト36を一体に付設する。
【0027】
<1.3.1>懸架ベルトの機能
本発明では、荷台カバー30を荷台11に直接固定して取り付けるのではなく、荷台11の内部に位置決めしたサポート装置40に対して、荷台カバー30を構成する底膜31の前辺を取り付けるようにした。
底膜31の前辺をサポート装置40に直接取り付けただけの構造であると、ダンプアップ時に底膜31に荷重が集中して底膜31が破損し易い。
【0028】
そこで本発明では、底膜31に一体に設けた懸架ベルト36を介して底膜31をサポート装置40に取り付けることで、ダンプアップ時において、底膜31に作用する荷重を分散して底膜31が破損することを回避するように構成した。
【0029】
<1.3.2>懸架ベルトの構成
懸架ベルト36は、底膜31の長手方向に沿って一体に付設した補強部36aと、補強部36aの前部に連続性を持たせて形成したループ状の係留部36bとを有する。
懸架ベルト36の素材としては、例えば引張強度に優れたポリエステル等の素材をベルト状に編み込んだものを使用できる。
補強部36aと係留部36bは、同一のベルト素材で形成してもよいし、別途のベルト素材で形成してもよい。
【0030】
<1.3.2.1>補強部
補強部36aは底膜31の全長とほぼ同一の長さを有する。
底膜31の全長に亘って補強部36aを一体に付設することで、底膜31の全長に亘って引張耐力を高めることが可能となる。
底膜31と補強部36aの一体化方法としては、例えば縫合手段や接着手段等を適用できる。
補強部36aで底膜31を補強できるので、底膜31の全体を高強度の素材で形成しなくてよく、荷台カバー30の素材に安価なものを使用できる。
【0031】
<1.3.2.2>係留部
係留部36bは底膜31の前辺から前方へ向けて突出した接続要素であり、サポート装置40の片持ち梁43に対して係脱が可能である。
【0032】
<1.3.3>懸架ベルトの設置数
本例では底膜31の左右の両側辺部に2本の懸架ベルト36を付設した形態について説明するが、懸架ベルト36は間隔を隔てて3本以上設置してもよい。
【0033】
<1.4>カバー膜(図1,2)
荷台カバー30は複数のカバー膜を具備している。複数のカバー膜は重ね合わせて周膜32の上口を封止可能である。
荷台カバー30が複数のカバー膜を具備するのは、積載物の漏出防止効果を高めるためである。
【0034】
本例では、荷台カバー30が、周膜32の一部に相対向して延設した右カバー膜37と、左カバー膜38と、周膜32の前部に延設した中央カバー膜39の合計3枚のカバー膜を具備する形態について説明するが、複数のカバー膜は3枚に限定されず、2枚以上であればよい。
【0035】
3枚のカバー膜37~39は矩形シートであり、積載物の上面全面を被覆し得るように、矩形を呈する周膜32の上口を閉鎖可能な寸法を有する。
右カバー膜37と左カバー膜38は、左右の各側膜34の一部から分岐して延設し、中央カバー膜39は前膜33の一部から分岐して延設している。
右カバー膜37および左カバー膜38の後部辺には複数のハト目37a,38aを設け、中央カバー膜39の先端辺にも複数のハト目39aを設けている。
【0036】
<2>サポート装置(図1,5)
サポート装置40は、荷台11の内側に荷台カバー30を取り付けるための金属製の支保構造体である。
サポート装置40は相対向する一対の押圧板41,41と、押圧板41,41の間に横架した長さ調整機能(伸長機能)を具備する単数または複数の伸縮梁42と、押圧板41,41の対向面にそれぞれ突設した棒状の片持ち梁43とを具備する。
サポート装置40は伸縮梁42の両端を一対の押圧板41,41に固着してユニット化してある。
サポート装置40は伸縮梁42の長さを調整することで一対の押圧板41,41の押圧間隔が調整性可能である。
【0037】
<2.1>押圧板(図3~5)
押圧板41は摩擦抵抗式の平板であり、ダンプトラック10の荷台11の左右の側壁14,14の内面に当接して位置決めする機能を有する。
押圧板41の全体形状は特に制約がなく、本例では矩形の押圧板41について説明するが、その他に多角形、円形、楕円形等でもよい。
【0038】
<2.2>伸縮梁(図3~5)
伸縮梁42は一対の押圧板41,41の間を支保する部材である。
伸縮梁42は、棒状またはパイプ状の梁本体42aと、梁本体42aの端部に設けた伸縮機構42bとを具備する。
【0039】
<2.2.1>伸縮梁と押圧板の固着
本例で例示した伸縮梁42と押圧板41の取付け構造について説明すると、伸縮梁42の端部に位置する伸縮機構42bの外端部に当板42cを溶接等により固着し、該当板42cを押圧板41に溶接等により固着してある。
【0040】
<2.2.2>伸縮機構
伸縮機構42bは伸縮梁42の全長を調整するための長さ調整機構である。
図6に例示したねじ式の伸縮機構42bについて説明すると、ねじ式の伸縮機構42bは梁本体42aの端部に内挿したボルト42dと、ボルト42dに回転可能に螺着したナット42eとを具備し、ナット42eの正回転または逆回転操作により、伸縮梁42の全長を調整する。
伸縮機構42bはねじ式に限定されず、流体式であってもよい。
【0041】
<2.2.3>伸縮機構の設置位置
図3を参照して、伸縮梁42に対する伸縮機構42bの設置位置について説明する。
本例では伸縮機構42bを梁本体42aの両端部にそれぞれ配置した形態を示すが、伸縮機構42bは梁本体42aの一端部に設けたり、梁本体42aの中間部に介挿したりしてもよい。
【0042】
<2.3>伸縮梁の設置数(図4,5)
本例では、相対向する一対の押圧板41,41の間において、押圧板41の前後および上下の三箇所に3本の伸縮梁42を配置した形態を示しているが、伸縮梁42の設置数は3本に限定されない。
伸縮梁42は1本または2本でもよいし、4本以上でもよい。
【0043】
<2.4>片持ち梁(図5
片持ち梁43は、荷台カバー30に設けた懸架ベルト36の係留部36bを掛止するための掛止要素である。
片持ち梁43は押圧板41の対向面に突設した棒状またはパイプ状のフック本体43aと、フック本体43aの先端に設けたストッパ43bとを有する。
フック本体43aは当板43cを介して押圧板41の内面に溶接手段等により固着する。
【0044】
<3>サポート装置の取付け力について
本発明では、想定される荷台カバー30に作用する積載物の滑落力に対して、サポート装置40の取付け力(押圧板41と荷台11の側壁14の内面14aとの接触面の摩擦抵抗力)が卓越するように構成してある。
【0045】
本発明では、押圧板41の大きさと伸縮梁42の設置本数によってサポート装置40の取付け力を調整することができる。
押圧板41の面積を大きくすることで、荷台11の側壁14の内面14aとの接触面積が大きくなり、伸縮梁42の設置数に比例して押圧板41を介した荷台11の側壁14の内面14aに対する押付力が大きくなる。
したがって、想定される荷台カバー30に作用する積載物の滑落力に対してサポート装置40の位置決め力が対抗し得るように、押圧板41の大きさと伸縮梁42の設置数を適宜選択する。
【0046】
<4>間詰ブロック
間詰ブロック50は荷台11に荷台カバー30を設置する際の隙間調整材である。
図2(B)に示すように、荷台11の床面12上で硬質の扉膜35を平伏させるため、扉膜35の起立位置を荷台11の前部側に移動すると、扉膜35と後扉15との間に空隙が生じる。
間詰ブロック50はこの空隙を解消するためのブロックである。積載物の積載時には起立状態の扉膜35を支持し、積載物の放出時には間詰ブロック50を事前に撤去して扉膜35の平伏を許容する。
なお、間詰ブロック50は必須ではなく、後扉15が上開き式(Fゲート)である場合は扉膜35を後扉15で直接支持させるように構成して間詰ブロック50を省略することも可能である。
【0047】
[荷台被覆装置の使用方法]
1.荷台被覆装置の設置方法
荷台被覆装置20を構成するサポート装置40と荷台カバー30の設置方法について説明する。
【0048】
<1>サポート装置の設置
図7を参照しながらサポート装置40の設置方法について説明する。
【0049】
<1.1>サポート装置のセット
一対の押圧板41,41を荷台11の側壁14の内面14aに向けた状態で、サポート装置40を荷台11の前方に載置する(図7(A))。
【0050】
<1.2>伸縮梁の突っ張り
つぎに、伸縮機構42bにより各伸縮梁42を伸長して、一対の押圧板41,41の対向間隔を徐々に拡げる。
伸縮梁42の伸長を続けて一対の押圧板41,41を荷台11の側壁14の内面14aに押し付ける(図7(B))。
押圧板41,41が所定の押付力(突っ張り力)に達するまで、各伸縮梁42の伸長操作を継続して行う。
【0051】
このように、荷台11の内側で、荷台11の設置幅に合わせて伸縮梁42の長さ調整を行い、一対の押圧板41,41を荷台11の側壁14の内面14aへ強く押し付けることでサポート装置40を荷台11の最前部に変位不能に取付ける。
【0052】
サポート装置40は伸縮梁42の長さ調整をすることでサポート装置40の横幅寸法(突っ張り寸法)を任意に調整することが可能である。
そのため、メーカによって荷台11の横幅寸法が多少異なっても、サポート装置40を現場で調整して設置できるので、メーカ毎の専用品を製作しなくて済み、汎用性に富む。
【0053】
<2>荷台カバーの設置(図1,3,4)
ダンプトラック10の荷台11の寸法に合わせて製作した函状の荷台カバー30を荷台11の内側に積載する。
【0054】
<2.1>懸架ベルトの係留(図4,5)
底膜31に設けた懸架ベルト36の係留部36bをサポート装置40の片持ち梁43に係留する。
懸架ベルト36の係留部36bをサポート装置40に係留した状態で底膜31を荷台11の後方へ展張する。
片持ち梁43に設けたストッパ43bがフック本体43aに掛止した係留部36bの脱落を防止する。
【0055】
<2.2>荷台カバーの周膜の取付け
荷台カバー30の前膜33を荷台11の前部に取り付ける。
前膜33を取り付けるには、例えば前膜33の周辺に形成したハトメ33aにロープ紐等を挿通し、これらのロープ紐等を介して荷台11の前部に取り付けることが可能である。
【0056】
また、荷台カバー30の底膜31と側膜34をそれぞれ荷台11の床面12と側壁14に被せ、ゴムバンドやロープ紐等を介して側膜34を荷台11の一部に取り付ける。
【0057】
各膜34~35を荷台11に取り付ける他の手段としては、磁石や面ファスナー等を適用することも可能である。
【0058】
<2.3>荷台カバーのカバー膜
左右カバー膜37,38は積載物の積載作業の邪魔にならないように荷台11の外方に垂らしておき、中央カバー膜39も同様に荷台11の前部へ折り畳んでおく。
【0059】
2.積載物の積載と被覆方法
積載物60の積載と積載物60の被覆方法について説明する。
【0060】
<1>積載物の積載
図8は荷台11に設置した荷台カバー30内に土砂等の積載物60を積載した状態を示している。
荷台カバー30内に積載物60を収容することで、荷台カバー30が荷台11内で押し広げらる。積載物60の側圧は最終的に荷台11が支持する。
【0061】
荷台カバー30の前膜33に積載物60の側圧が作用すると、前膜33が自由変形を許容して前膜33に作用する積載物60の側圧をサポート装置40または荷台11の前壁13で支持する。
【0062】
扉膜35に作用する積載物60の側圧は、間詰ブロック50を介装して後扉15が支持する。
【0063】
<2>カバー膜による被覆作業
図9を参照してカバー膜37~39による被覆作業について説明する。
荷台11に積載物60を積載したら、3枚のカバー膜37~39を順次被せる。
例えば、左右カバー膜37,38の何れか一方を積載物60の上面に被せた後に、左右カバー膜37,38の何れか他方を被せて二重被覆とする(図9(A),(B))。
最後に中央カバー膜39を被せて三重被覆とする(図9(C))。
【0064】
単に3枚のカバー膜37~39を重ねただけでは、カバー膜がバタつくおそれがある。
そこで重合させた3枚のカバー膜37~39の後端辺と扉膜35の端辺との間に連結用のロープ等を挿通して封止する。
【0065】
図10に例示した連結手段について説明すると、扉膜35の端辺に沿って予め複数の単輪35cを設けておく。
重合させた3枚のカバー膜37~39の後端辺に沿って形成したハト目37a,38a,39aに単輪35cを挿通しつつ、隣り合う単輪35cの相互間を係留するように連鎖的に編み込んで、3枚のカバー膜37~39の後端辺と扉膜35の端辺との間を連結する。
なお、連鎖的に編み込んだ最終の単輪35cは解けないように固定しておく。
連結を解除する場合は、最終の単輪35cの固定を解くだけの簡単な操作で、複数の単輪35cの連結を一斉に解除することができる。
【0066】
<3>荷台カバーによる漏液防止作用
有底構造を呈する荷台カバー30は、高い防水性(遮水性)を有している。
そのため、積載物60が水等の液体を含んでいても、荷台カバー30の内部に液体を貯留できるので、搬送中に液体の漏出を確実に防止することができる。
【0067】
<4>カバー膜による積載物の被覆作用
図11を参照して説明すると、荷台11に積載した積載物60の上面は、荷台11の左右および前部から延出した3枚のカバー膜37~39によって多重に被覆してある。
すなわち、荷台カバー30の上口を、蓋機能を有する3枚のカバー膜37~39で封鎖することで、荷台カバー30を全体として密封に近い構造体とすることができる。
【0068】
そのため、搬送中に積載物60の飛散を確実に防止できることは勿論のこと、ダンプトラックの姿勢が左右片側に大きく傾いたり、横転したりした場合でも、多重のカバー膜37~39が積載物60のこぼれ落ちを確実に抑止できる。
【0069】
このように、本発明は荷台被覆装置20を荷台11に取付けるだけで、搬送中における漏液防止、積載物60の飛散防止および積載物30のこぼれ落ち防止を同時に達成することができる。
したがって、従来と比べて積載物60の輸送の安全性が格段に向上する。
【0070】
3.ダンプアップ時
ダンプアップ時における荷台被覆装置20の各作用について説明する。
【0071】
<1>ダンプアップの準備操作
目的地に着いたら、図8に示すように、積載物60を覆っていたカバー膜37~39を開いて荷台カバー30の上口を開放すると共に、荷台11の後部に設置していた間詰ブロック50を撤去する。
【0072】
<2>ダンプアップ
図12は荷台11のダンプアップ時を示している。
荷台11のダンプアップに伴い、積載物60が荷台カバー30の底膜31に沿って滑落する。
【0073】
<2.1>扉膜の傾倒
図12(B)に示すように、滑落した積載物60は荷台11の後部の後扉15を押し広げて放出される。
この際、荷台11上で起立状態の扉膜35が後扉15と干渉せずに後方に倒れる。
これは扉膜35が後扉15と干渉しないように、荷台カバー30の全長を短く設定しつつ、間詰ブロック50により扉膜35の傾倒スペースが確保してあるからである。
【0074】
<2.2>サポート装置による荷台カバーの懸架支持作用
図12(A)に示すように、荷台被覆装置20は、荷台カバー30の底膜31に設けた懸架ベルト36を介して、荷台11内に位置決めしたサポート装置40の一部に、荷台カバー30の前部を掛止した構造となっている。
特に、荷台被覆装置20は、荷台カバー30に作用する積載物60の滑落力に対して、サポート装置40の位置決め力が卓越するように構成してある。
そのため、ダンプアップ時に荷台11の傾斜角度が大きくなって、荷台カバー30に積載物60の滑落力が作用しても、荷台カバー30はサポート装置40への懸架状態を維持することができる。
【0075】
さらに押圧板31に対して懸架ベルト36の取付け位置が偏倚しているので、ダンプアップ時に荷台被覆装置20に対して回転力が生じる。
荷台被覆装置20を構成する方形を呈する押圧板41,41が荷台11の床面12に当接しているので、荷台被覆装置20の回転を確実に規制できる。
そのため、荷台被覆装置20の位置決め力が低下することがない。
【0076】
このように、荷台カバー30はサポート装置40を介して荷台11に懸架して支持できるので、荷台カバー30は積載物60と一緒に滑落せず、荷台カバー30による荷台11の内面の被覆作用が保持される。
そのため、荷台カバー30内に収容した積載物60のみが、荷台カバー30の底膜31に沿って滑落する。
【0077】
<2.3>懸架ベルトによる荷台カバーの補強作用
荷台カバー30の底膜31に沿って積載物60が滑落する際に、荷台カバー30に対して積載物60の滑落方向へ向けた引張力が作用する。
荷台カバー30に作用する引張力は、底膜31が最も大きく、側膜34に作用する引張力は底膜31と比べて比較的小さい。
最も大きな引張力が作用する荷台カバー30の底膜31には、その全長に亘って付設した懸架ベルト36が薄厚の底膜31の耐力を増強している。
そのため、積載物60の滑落時に底膜31が容易に引き千切られて破断することを効果的に防止している。
【0078】
<3>荷台カバーの繰り返し使用
積載物60の放出を終えたら、荷台11を基の水平位置に戻すと、荷台カバー30が荷台11に追従して水平位置に復帰する。
荷台カバー30は新たな積載物60の積載に繰り返し使用することができる。
【0079】
<4>荷台カバーの交換作業
繰り返しの使用回数が増して荷台カバー30が老朽化したときは、サポート装置40を荷台11に残置したまま、サポート装置40から荷台カバー30を取り外し、新たな荷台カバー30に付け替える。
付け替えにあたり、サポート装置40に対して荷台カバー30の懸架ベルト36を付け替えると共に、荷台カバー30の周囲を荷台11に着脱するだけの簡単な作業で以て荷台カバー30を交換することができる。
【0080】
<5>サポート装置の取り外し作業
荷台11からサポート装置40を取り外したいときは、各伸縮梁42の収縮操作を行う。
サポート装置40の横幅を狭くして、押圧板41,41を荷台11の側壁14から離隔するだけの簡単な作業で以て、サポート装置40を荷台11から簡単に取り外すことができる。
サポート装置40を撤去したダンプトラック10は、別途の目的で使用することが可能である。
さらに撤去した荷台カバー30とサポート装置40は、別途のダンプトラック10に乗せ換えて使用することも可能である。
【0081】
[実施例2]
以降に他の実施例について説明するが、その説明に際し、前記した実施例1と同一の部位は同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0082】
<1>懸架ベルトの他の掛止手段
先の実施例1では、荷台カバー30の懸架ベルト36を掛止するための掛止要素がサポート装置40の片持ち梁43である形態について説明したが、本例では掛止要素がサポート装置40の伸縮梁42である形態について説明する。
【0083】
<2>サポート装置
図13を参照して説明する。本例のサポート装置40は、相対向する一対の押圧板41,41と、押圧板41,41の間に横架した長さ調整機能(伸長機能)を具備する複数の伸縮梁42とにより構成する。
本例では、一対の押圧板41,41の間に複数の伸縮梁42を横架することを前提としていて、そのうちの一部の伸縮梁42を懸架ベルト36の係留部36bの掛止部材として活用する。
本例では、懸架ベルト36を押圧板41の最下位に位置する伸縮梁42に掛止する形態について示すが、懸架ベルト36の掛止対象の伸縮梁42は任意の高さのものを選択して使用してもよい。
【0084】
懸架ベルト36を掛止した伸縮梁42は、先の実施例1と同様に一対の押圧板41,41を押付けて位置決めする機能を有するだけでなく、懸架ベルト36を介した荷台カバー30の位置決め機能を併有する。
【0085】
懸架ベルト36を掛止した伸縮梁42は、ダンプアップ時に多少の撓み変形を生じるが、他の伸縮梁42は撓まないのでサポート装置40の必要な位置決め力を確保できる。
そのため、一部の伸縮梁42に懸架ベルト36を掛止しても、ダンプアップ時においてサポート装置40の滑落を確実に抑止することができる。
【0086】
<3>荷台カバー
図13(A)は荷台カバー30を底膜31の下方から見た荷台カバー30の前部を示している。
本例の荷台カバー30は、荷台21の床面12を覆う底膜31と、荷台21の周壁を覆う周膜32と、複数のカバー膜(図示省略)と、底膜31の全体に亘って一体に付設した複数の懸架ベルト36とを有する。
懸架ベルト36の補強部36aを底膜31の全長に亘って一体に付設することは先の実施例1と同様である。
【0087】
<3.1>懸架ベルトの設置間隔
先の実施例1では、底膜31の左右の両側部に2本の懸架ベルト36を付設した形態について説明したが、本例では、底膜31の全体に亘り、間隔を隔てて複数の懸架ベルト36を付設し、これら複数の懸架ベルト36を特定の伸縮梁42に掛止するようにしてもよい。
【0088】
底膜31に対する懸架ベルト36の設置間隔は均一でもよいし不均一でもよい。
懸架ベルト36の設置位置や設置間隔は、積載物の種類等に応じて適宜選択が可能である。
【0089】
<3.2>底膜の中央部に懸架ベルトを設置した場合
一般的に、土砂等の積載物を積載した場合、ダンプアップ時において、積載した積載物は均等に滑落せず、荷台の床面の中央部に位置する積載物が両側部に位置する積載物に対して先行して滑落する。
これは荷台の両側部に位置する積載物が、荷台の側壁と接して接触面積が増える分だけ滑落開始時間が遅れるからである。
【0090】
図13(A)に例示したように、底膜31の中央部付近に懸架ベルト36を追加して設けて補強しておくと、ダンプアップ時に荷台カバー30の底膜31の中央部に先行して引張力が作用しても、底膜31の中央部に作用する引張力を、懸架ベルト36とサポート装置40を通じて荷台11で支持することができる。
そのため、ダンプアップ時における底膜31の破断防止効果がさらに高くなる。
【0091】
さらに、底膜31の前端部に懸架ベルト36の交差方向に向けて交差補強ベルト36cを一体に付設する場合もある。
交差補強ベルト36cは懸架ベルト36と同一の素材で製作できる。
交差補強ベルト36cを追加設置することで、底膜31の前端部における荷重伝達性を改善できるので、ダンプアップ後において荷台カバー30の底膜31にシワが生じ難くなる。
【0092】
<4>本例の作用効果
本例の作用効果は基本的に既述した実施例1と同様である。
【0093】
特に本例ではつぎの効果を奏する。
1)片持ち梁43を省略することで、サポート装置40を小型でかつ軽量に製作できる。
2)懸架ベルト36を伸縮梁に掛止することで、荷台カバー30の底膜31の任意の位置に任意の数の懸架ベルト36を付設して掛止することができる。
懸架ベルト36の設置数に比例して荷台カバー30の底膜31の補強効果が向上する。
【符号の説明】
【0094】
10・・・・ダンプトラック
11・・・・ダンプトラックの荷台
12・・・・荷台の床面
13・・・・荷台の前壁
14・・・・荷台の側壁
15・・・・荷台の後扉
20・・・・荷台被覆装置
30・・・・荷台カバー
31・・・・荷台カバーの底膜
32・・・・荷台カバーの周膜
33・・・・荷台カバーの前膜
34・・・・荷台カバーの側膜
35・・・・荷台カバーの扉膜
36・・・・荷台カバーの懸架ベルト
36a・・・懸架ベルトの補強部
36b・・・懸架ベルトの係留部
36c・・・交差補強ベルト
37・・・・荷台カバーの右カバー膜
38・・・・荷台カバーの左カバー膜
39・・・・荷台カバーの中央カバー膜
40・・・・懸架装置
41・・・・押圧板
42・・・・伸縮梁
42a・・・梁本体
42b・・・伸縮機構
43・・・・片持ち梁
50・・・・間詰ブロック
60・・・・積載物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12