(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113168
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/494 20060101AFI20240814BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20240814BHJP
A61F 13/475 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A61F13/494 111
A61F13/49 315Z
A61F13/475 112
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024094226
(22)【出願日】2024-06-11
(62)【分割の表示】P 2021106660の分割
【原出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長野 亜希子
(57)【要約】
【課題】内向きの起き上がりギャザーの起き上がり角度を改善する。
【解決手段】上記課題は、起き上がりギャザー60は、遮断位置より幅方向WDの外側に位置する付根部65と、付根部65から折り返されることなく幅方向WDの内側に延びる本体部66とを有し、本体部66は、トップシート30との固定部BPを有する前端部67及び後端部69と、トップシート30に非固定の中間部68とを有し、中間部68の先端部にギャザー弾性部材63が取り付けられ、前端部67及び後端部69における幅方向WDの内側の端部に、トップシート30に非固定の自由部FPが中間部68から続くように設けられ、前端部67及び後端部69の自由部FP以外が固定部BPとなっており、自由部FPの幅x1は、中間部68の幅x2の1/6~1/3であり、自由部FPの前後方向LDの寸法y1は、自由部FPの幅x1の1~9.5倍であることにより解決される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と、
吸収体の表側に配置された液透過性のトップシートと、
前記トップシートの表面の幅方向両側にそれぞれ設けられた起き上がりギャザーと、を備え、
前記起き上がりギャザーは、前記トップシートの表面の幅方向両側における遮断位置を通り前後方向に続く仮想線の幅方向の外側に取り付けられた付根部と、前記付根部の幅方向の内側の縁から折り返されることなく幅方向の内側に延びる本体部とを有し、
前記本体部は、前記トップシートに固定された固定部を有する前端部及び後端部と、これら前端部及び後端部の間に位置し、前記トップシートに固定されていない中間部とを有し、
前記中間部の少なくとも先端部に、前後方向に沿う細長状のギャザー弾性部材が取り付けられており、
前記中間部は、前記ギャザー弾性部材の収縮力により前記ギャザー弾性部材とともに収縮しているとともに、前記ギャザー弾性部材とともに伸長可能であり、
前記前端部及び前記後端部の少なくとも一方における幅方向の内側の端部に、前記トップシートに固定されていない自由部が前記中間部から続くように設けられているとともに、前記前端部及び前記後端部の前記自由部以外が固定部となっており、
前記自由部の幅は、前記中間部の幅の1/6~1/3であるとともに、前記自由部の前後方向の寸法は、前記自由部の幅の1~9.5倍である、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記自由部の幅は、3.5mm以上であり、
前記中間部は、前記自由部の幅に等しい幅の先端側領域に前記ギャザー弾性部材を有し、かつ当該先端側領域以外に前記ギャザー弾性部材を有しない、
請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
展開状態で前記中間部の裏側に重なる領域のうち、前記固定部の幅に等しい付根部側領域における前記トップシートよりも裏側に、前後方向に沿う細長状のインサイド弾性部材を有し、
前記付根部側領域は、前記インサイド弾性部材の収縮力により前記インサイド弾性部材とともに収縮しているとともに、前記インサイド弾性部材とともに伸長可能である、
請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体は、前後方向の中間にその前後両側よりも幅の狭い括れ部を有しており、
前記インサイド弾性部材は括れ部を通るように配置されている、
請求項3記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記前端部及び前記後端部の両方が前記自由部を有し、
前記前端部の前記自由部の幅が、前記後端部の前記自由部の幅よりも広い、
請求項1~4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
低出生体重児用の使い捨ておむつである、
請求項1~5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起き上がりギャザーの追従性を向上させた吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在では、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品のほとんど多くは、トップシート表面の幅方向両側から起き上がる起き上がりギャザー(立体ギャザーとも呼ばれている)を備えている。起き上がりギャザーを備えることにより、排泄物の横方向移動が起き上がりギャザーにより遮断され、いわゆる横漏れが防止される。
【0003】
多くの起き上がりギャザーは、トップシート表面の幅方向両側における遮断位置を通り前後方向に続く仮想線の幅方向外側に取り付けられた付根部と、この付根部の幅方向内側の縁から延びる本体部と、この本体部における前端部及び後端部が倒伏状態でトップシート表面に固定された固定部と、本体部における前後の固定部の間に位置し、トップシート表面に固定とされていない中間部とを有している。これらの部分は不織布等のギャザーシートにより形成されている。このうち、少なくとも起き上がりギャザーの先端部は、ギャザーシートが先端(突端)で折り返されて二層構造となっており、中間部の少なくとも先端部の層間には細長状のギャザー弾性部材が前後方向に沿って伸長した状態で取り付けられている。(例えば特許文献1、2参照)。
【0004】
中間部は、ギャザー弾性部材の収縮力によりギャザー弾性部材とともに収縮しているとともに、ギャザー弾性部材とともに伸長可能となっている。装着状態では、ギャザー弾性部材の収縮力により中間部の先端の前後方向の寸法が短くなること、及び中間部がトップシートに固定されていないことにより、中間部が先端(付根部側から最も遠い部位)に近いほど高くなるように、かつ前端部及び後端部の固定部に近づくにつれて低くなるように起き上がる。
【0005】
また、テープタイプ使い捨ておむつ等の一部の吸収性物品では、起き上がりギャザーの本体部が、付根部から折り返されることなく幅方向内側に延び、本体部の先端が幅方向内側を向くものが多い。
【0006】
しかしながら、このような内向きタイプの起き上がりギャザーは、股間部における起き上がり角度(ひいては起き上がり高さ)に限界があるという問題点や、トップシート表面から起き上がる中間部は、外側に倒れにくく軟便等の漏れ防止性に優れる反面、側臥位時等において脚の動きに追従して外側に移動しにくく、先端が肌にきつく当たりやすいという問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-130278号公報
【特許文献2】特開2018-140068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の主たる課題は、内向きの起き上がりギャザーの起き上がり角度を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した吸収性物品は以下のとおりである。
<第1の態様>
吸収体と、
吸収体の表側に配置された液透過性のトップシートと、
前記トップシートの表面の幅方向両側にそれぞれ設けられた起き上がりギャザーと、を備え、
前記起き上がりギャザーは、前記トップシートの表面の幅方向両側における遮断位置を通り前後方向に続く仮想線の幅方向の外側に取り付けられた付根部と、前記付根部の幅方向の内側の縁から折り返されることなく幅方向の内側に延びる本体部とを有し、
前記本体部は、前記トップシートに固定された固定部を有する前端部及び後端部と、これら前端部及び後端部の間に位置し、前記トップシートに固定されていない中間部とを有し、
前記中間部の少なくとも先端部に、前後方向に沿う細長状のギャザー弾性部材が取り付けられており、
前記中間部は、前記ギャザー弾性部材の収縮力により前記ギャザー弾性部材とともに収縮しているとともに、前記ギャザー弾性部材とともに伸長可能であり、
前記前端部及び前記後端部の少なくとも一方における幅方向の内側の端部に、前記トップシートに固定されていない自由部が前記中間部から続くように設けられているとともに、前記前端部及び前記後端部の前記自由部以外が固定部となっており、
前記自由部の幅は、前記中間部の幅の1/6~1/3であるとともに、前記自由部の前後方向の寸法は、前記自由部の幅の1~9.5倍である、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0010】
(作用効果)
従来の内向きの起き上がりギャザーでは、本体部の前後の固定部は、本体部の幅方向のほぼ全体にわたり設けられていた。この場合、装着状態では前後の固定部が中間部の起き上がりを幅方向全体にわたり抑制するため、中間部の起き上がり角度が確実に制限され、中間部の先端が外側に倒れることも抑制される。また、中間部が脚の動きに追従して外側に移動しにくく、中間部の先端が肌にきつく当たりやすくなる。
これに対して、本吸収性物品では、本体部の前端部及び後端部の少なくとも一方における幅方向の内側の端部に、ある程度の幅を有する自由部(トップシートに固定されていない部分)が中間部から続くように設けられている。このため、装着状態では前後の固定部が中間部の起き上がりを抑制するものの、その抑制の程度は自由部の起き上がり(中間部に続くように起き上がるが、自由部の幅が短いため中間部ほどには起き上がらない)により緩和されるため、中間部の起き上がり角度は自由部が無い場合よりも確実に大きくなる。また、自由部の存在により、中間部の先端が外側に倒れやすくなり、中間部が脚の動きに追従して外側に移動しやすくなる。さらにその結果、中間部の先端が肌にきつく当たりにくくなる。
【0011】
<第2の態様>
前記自由部の幅は、3.5mm以上であり、
前記中間部は、前記自由部の幅に等しい幅の先端側領域に前記ギャザー弾性部材を有し、かつ当該先端側領域以外に前記ギャザー弾性部材を有しない、
第1の態様の吸収性物品。
【0012】
(作用効果)
自由部の幅は適宜定めることができるが、3.5mm以上であることが好ましい。また、中間部は自由部の幅に等しい幅の先端側領域にのみギャザー弾性部材を有することにより、ギャザー弾性部材を有する部分が肌にきつく当たりにくくなるため好ましい。
ギャザー弾性部材は自由部まで延びていてもよく、その場合固定されていてもよいし、非固定で収縮力を作用しない状態であってもよい。
【0013】
<第3の態様>
展開状態で前記中間部の裏側に重なる領域のうち、前記固定部の幅に等しい付根部側領域における前記トップシートよりも裏側に、前後方向に沿う細長状のインサイド弾性部材を有し、
前記付根部側領域は、前記インサイド弾性部材の収縮力により前記インサイド弾性部材とともに収縮しているとともに、前記インサイド弾性部材とともに伸長可能である、
第1又は2の態様の吸収性物品。
【0014】
(作用効果)
本態様の位置にインサイド弾性部材を設けることにより、インサイド弾性部材を有する部分が持ち上がり、中間部の起き上がり角度が大きくなるように、起き上がりギャザーの土台になる部分が傾斜するため好ましい。
【0015】
<第4の態様>
前記吸収体は、前後方向の中間にその前後両側よりも幅の狭い括れ部を有しており、
前記インサイド弾性部材は括れ部を通るように配置されている、
第3の態様の吸収性物品。
【0016】
(作用効果)
括れ部は吸収体を有しない部分であるため、吸収体を有する部分よりは剛性が低く、変形しやすい。よって、この位置を通過するようにインサイド弾性部材を設けると、起き上がりギャザーの土台になる部分がより傾斜しやすくなるため好ましい。
【0017】
<第5の態様>
前記前端部及び前記後端部の両方が前記自由部を有し、
前記前端部の前記自由部の幅が、前記後端部の前記自由部の幅よりも広い、
第1~4のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0018】
(作用効果)
脚の可動域は後側よりも前側に大きいため、本態様のように本体部の前端部の自由部の幅を後端部の自由部の幅よりも広くするのは一つの好ましい態様である。
【0019】
<第6の態様>
低出生体重児用の使い捨ておむつである、
第1~5のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0020】
(作用効果)
低出生体重児用の使い捨ておむつでは、しっかりとしたフィット性というよりは、弱くても柔軟なフィット性の方が好ましい。よって、上述の自由部を有する起き上がりギャザーは低出生体重児用の使い捨ておむつに好適である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、起き上がりギャザーの付根部における排泄液の染み出しを抑制できるようになる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】連結式使い捨ておむつの内面を示す、展開状態における平面図である。
【
図2】連結式使い捨ておむつの外面を示す、展開状態における平面図である。
【
図7】起き上がりギャザーの要部を拡大して示す断面図である。
【
図8】起き上がりギャザーの要部を拡大して示す断面図である。
【
図9】装着状態の内面を概略的に示す斜視図である。
【
図10】連結式使い捨ておむつの内面を示す、展開状態における平面図である。
【
図11】連結式使い捨ておむつの内面を示す、展開状態における平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1~
図6は吸収性物品の一例である連結式使い捨ておむつ(一般に、テープタイプ使い捨ておむつともいう)を示しており、図中の符号Xは連結テープ13を除いたおむつの全幅を示しており、符号Lはおむつの全長を示している。なお、断面図における点模様部分及び*印は、特に示さない限り、その表側及び裏側に位置する各構成部材を接合する接合手段としてのホットメルト接着剤を示している。ホットメルト接着剤は、スロット塗布、連続線状又は点線状のビード塗布、スパイラル状、Z状、波状等のスプレー塗布、又はパターンコート(凸版方式でのホットメルト接着剤の転写)等、公知の手法により塗布することができる。これに代えて又はこれとともに、弾性部材の固定部分では、ホットメルト接着剤を弾性部材の外周面に塗布し、弾性部材を隣接部材に固定することができる。ホットメルト接着剤としては、例えばEVA系、粘着ゴム系(エラストマー系)、オレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系などの種類のものが存在するが、特に限定無く使用できる。各構成部材を接合する固定又は接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。厚み方向の液の透過性が要求される部分では、厚み方向に隣接する構成部材は間欠的なパターンで固定又は接合される。例えば、ホットメルト接着剤によりこのような間欠的な固定又は接合を行う場合、スパイラル状、Z状、波状等の間欠パターン塗布を好適に用いることができ、一つのノズルによる塗布幅以上の範囲に塗布する場合には、幅方向に間隔を空けて又は空けずにスパイラル状、Z状、波状等の間欠パターン塗布を行うことができる。
【0024】
この連結式使い捨ておむつは、前後方向LDの中央を含む股間部Mと、前後方向LDの中央より前側に延びる腹側部分Fと、前後方向LDの中央より後側に延びる背側部分Bとを有している。また、この連結式使い捨ておむつは、股間部Mを含む範囲に内蔵された吸収体56と、吸収体56の表側を覆う液透過性のトップシート30と、吸収体56の裏側を覆う液不透過性シート11と、液不透過性シート11の裏側を覆い、製品外面を構成する外装不織布12とを有するものである。股間部Mは、吸収体56が後述する括れ部56nを有する場合にはこの括れ部56nを有する前後方向LDの範囲を意味し、吸収体56が括れ部56nを有しない場合には前後方向LDの中央に位置する部分であって、かつ前後方向LDの寸法が製品全長の30~60%である部分を意味する。
【0025】
以下、各部の素材及び特徴部分について順に説明する。なお、以下の説明における不織布としては、部位や目的に応じて公知の不織布を適宜使用することができる。不織布の構成繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維(単成分繊維の他、芯鞘等の複合繊維も含む)の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等、特に限定なく選択することができ、これらを混合して用いることもできる。不織布の柔軟性を高めるために、構成繊維を捲縮繊維とするのは好ましい。また、不織布の構成繊維は、親水性繊維(親水化剤により親水性となった繊維を含む)であっても、疎水性繊維若しくは撥水性繊維(撥水剤により撥水性となった繊維を含む)であってもよい。また、不織布は一般に繊維の長さや、シート形成方法、繊維結合方法、積層構造により、短繊維不織布、長繊維不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド(エアスルー)不織布、ニードルパンチ不織布、ポイントボンド不織布、積層不織布(スパンボンド層間にメルトブローン層を挟んだSMS不織布、SMMS不織布等を含む)等に分類されるが、これらのどの不織布も用いることができる。
(吸収体)
吸収体56は、排泄液を吸収し、保持する部分であり、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100~300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30~120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1~16dtex、好ましくは1~10dtex、さらに好ましくは1~5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、2.54cm当たり5~75個、好ましくは10~50個、さらに好ましくは15~50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いることができる。
【0026】
吸収体56の形状は適宜定めることができる。例えば、吸収体56は、図示例のように股間部Mに位置する部分がその前後両側よりも幅の狭い括れ部56nを有する略砂時計状に形成するほか、長方形状等、適宜の形状とすることができる。吸収体56は、通常の場合、股間部の前側から後側にかけて設けることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0027】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56には、その一部又は全部に高吸収性ポリマー粒子を含有させることができる。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子としては、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用できる。高吸収性ポリマー粒子の粒径は特に限定されないが、例えば500μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)、及びこのふるい分けでふるい下に落下する粒子について180μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)を行ったときに、500μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が30重量%以下で、180μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が60重量%以上のものが望ましい。
【0028】
高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0029】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0030】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0031】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、通常の場合、50~350g/m2とすることができる。
【0032】
(包装シート)
高吸収性ポリマー粒子の抜け出しを防止するため、あるいは吸収体56の形状維持性を高めるために、吸収体56は包装シート58で包んでなる吸収要素50として内蔵させることができる。包装シート58としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。繊維目付けは、5~40g/m2、特に10~30g/m2のものが望ましい。
【0033】
この包装シート58は、
図3に示すように、一枚で吸収体56の全体を包む構造とするほか、上下2枚等の複数枚のシートで吸収体56の全体を包むようにしてもよい。包装シート58は省略することもできる。
【0034】
(トップシート)
トップシート30は液透過性を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、有孔プラスチックシートなどを用いることができる。
【0035】
トップシート30は、前後方向では製品前端から後端まで延びているが、必要に応じて、適宜の変形が可能である。また、図示例のトップシート30は、幅方向WDでは後述する起き上がりギャザー60の本体部66と付根部65との境界よりも外側まで延びているが、これに限定されるものではない。図示例のトップシート30は、吸収体56の側縁よりも側方に延びているが、必要に応じて、トップシート30の側縁を吸収体56の側縁よりも内側に位置させる等、適宜の変形が可能である。
【0036】
(中間シート)
図示しないが、トップシート30を透過した液の逆戻りを防止するために、トップシート30の裏側に隣接して中間シート(「セカンドシート」とも呼ばれている)を設けることもできる。
【0037】
中間シートとしては、各種の不織布を好適に用いることができ、特に嵩高なエアスルー不織布を好適に用いることができる。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは17~80g/m2が好ましく、25~60g/m2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.0~10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯かつ中空の繊維を用いるのも好ましい。
【0038】
中間シートは、吸収体56の幅より短く中央に配置されていてもよいし、吸収体56の全幅を覆うように配置されていてもよい。また、中間シートは、おむつの全長にわたり設けられていてもよいし、排泄位置を含む中間部分にのみ設けられていてもよい。
【0039】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11は、特に限定されるものではないが、透湿性を有するものが好ましい。液不透過性シート11としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを好適に用いることができる。また、液不透過性シート11としては、不織布を基材として防水性を高めたものも用いることができる。
【0040】
液不透過性シート11は、トップシート30よりも幅方向WDの外側に延び出た延出部分を有していることが好ましい。液不透過性シート11は、前後方向LD及び幅方向WDにおいて吸収体56と同じか又はより広範囲にわたり延びていることが望ましい。
【0041】
(外装不織布)
外装不織布12は液不透過性シート11の裏側全体を覆い、製品外面を布のような外観とするものである。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。不織布を用いる場合、その構成繊維の繊度が1.0~6.0dtex、目付けが15~45g/m2、かつ厚みが0.5~3.0mmの不織布であると好ましい。
【0042】
外装不織布12に代えて不織布以外のシートを用いることもでき、また外装不織布12を省略することもできる。
【0043】
(エンドフラップ部、サイドフラップ部)
図示例の連結式使い捨ておむつは、吸収体56の前側及び後側にそれぞれ延出する、吸収体56を有しない一対のエンドフラップ部EFと、吸収体56の両方の側縁よりも側方にそれぞれ延出する、吸収体56を有しない一対のサイドフラップ部SFとを有している。サイドフラップ部SFは、図示例のように、吸収体56を有する部分から連続する素材(外装不織布12等)からなるものであっても、他の素材を取り付けて形成してもよい。
【0044】
(ウイング部分)
本連結式使い捨ておむつでは、背側部分Bは股間部Mよりも幅方向WD外側に延び出たウイング部分WPを有している。同様に、腹側部分Fも股間部Mよりも幅方向WD外側に延び出たウイング部分WPを有している。これらウイング部分WPは、それ以外の部分と別の部材により形成することもできる。しかし、図示例のようにサイドフラップ部SFを有する構造において、サイドフラップ部SFの側部における前後方向LDの中間を切除することにより、股間部Mの側縁からウイング部分WPの下縁71までの括れ側縁70が形成され、その結果としてウイング部分WPが形成されていると、製造が容易であるため好ましい。
【0045】
(連結テープ)
図1、
図2及び
図6に示すように、背側部分Bにおけるウイング部分WPには、腹側部分Fの外面に対して着脱可能に連結される連結テープ13がそれぞれ設けられている。おむつ10の装着に際しては、連結テープ13を腰の両側から腹側部分Fの外面に回して、連結テープ13の連結部13Aを腹側部分F外面の適所に連結する。
【0046】
連結テープ13は、
図6に示すように、ウイング部分WPに固定された基端部13C、及びこの基端部13Cから延び出た本体部13Bをなすシート基材と、このシート基材における本体部13Bの幅方向WDの中間部に設けられた、腹側部分Fに対する連結部13Aとを有している。本体部13Bにおける、連結部13Aより基端部13C側が腹側部分Fと連結されない非連結部となる。基端部13Cの側縁はウイング部分WPの側縁に一致していてもよいし、図示例のように、ウイング部分WPの側縁から幅方向WDの内方にわずかに離間していてもよい。連結部13Aの幅方向内方の縁は、ウイング部分WPの側縁に一致していてもよいが、
図6に示すように、ウイング部分WPの側縁から幅方向WDの外方に十分に離間していることが好ましい。
【0047】
連結部13Aとしては、メカニカルファスナー(面ファスナー)のフック材(雄材)を設ける他、粘着剤層を設けてもよい。フック材は、その連結面に多数の係合突起を有するものであり、係合突起の形状としては、(A)レ字状、(B)J字状、(C)マッシュルーム状、(D)T字状、(E)ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。
【0048】
また、基端部13Cから本体部13Bまでを形成するシート基材としては、不織布、プラスチックフィルム、ポリラミ不織布、紙やこれらの複合素材を用いることができるが、繊度1.0~3.5dtex、目付け60~100g/m2、厚み1mm以下のスパンボンド不織布、エアスルー不織布、又はスパンレース不織布が好ましい。
【0049】
連結テープ13は、少なくとも非連結部の一部が幅方向WDに伸縮するものであっても、全体が伸縮しないものであってもよい。
【0050】
(ターゲット部)
腹側部分Fにおける連結テープ13の連結箇所には、ターゲット部12Tが設けられている。ターゲット部12Tは、図示例のように、連結を容易にするためのシート材を腹側部分Fの外面に貼り付けることにより設けることができる。
【0051】
ターゲット部12Tを形成するためのシート材は特に限定されるものではないが、連結部13Aがフック材の場合、例えば間欠的なパターンの超音波溶着により部分的に繊維相互が溶着された長繊維不織布を用いることができる。
【0052】
また、連結部13Aがフック材の場合、ターゲット部12Tを形成するためのシート材として、フック材の係合突起が絡まるようなループ糸がプラスチックフィルムや不織布からなる基材の表面に多数縫い出された複合的なシート材を用いることができる。
【0053】
さらに、連結部13Aがフック材であり、腹側部分Fにおける連結テープ13の連結箇所が不織布からなる場合(例えば図示例のように外装不織布12を有する場合)には、ターゲット部12Tを形成するためにシート材を付加せずに、外装不織布12の適所をターゲット部12Tとし、フック材を外装不織布12の繊維に絡ませて連結することもできる。
【0054】
一方、連結部13Aが粘着材層の場合には、ターゲット部12Tを形成するためのシート材として、粘着性に富むような表面が平滑なプラスチックフィルムからなるシート材の表面に剥離処理を施したものを用いることができる。
【0055】
(起き上がりギャザー)
トップシート30上を伝わって横方向に移動する排泄物を遮断し、いわゆる横漏れを防止するために、トップシート30の表面の幅方向WDの両側には起き上がりギャザー60がそれぞれ設けられている。
【0056】
起き上がりギャザー60は、トップシート30の表面の幅方向WD両側における遮断位置を通り前後方向LDに続く仮想線60Bの幅方向WDの外側に取り付けられた付根部65と、付根部65の幅方向WDの内側の縁から折り返されることなく幅方向WDの内側に延びる本体部66とを有する。また、本体部66は、トップシート30に固定された固定部BPを有する前端部67及び後端部69(換言すると、本体部66のうち固定部BPを有する前後方向LDの範囲が前端部67及び後端部69となる)と、これら前端部67及び後端部69の間に位置し、トップシート30に固定されていない中間部68とを有しており、中間部68の少なくとも先端部には、前後方向LDに沿う細長状のギャザー弾性部材63が取り付けられている。
【0057】
これら本体部66及び付根部65は、本体部66の先端(付根部65側と反対側の端)で二つ折りされることにより内側層62n及び外側層62fの2層構造とされたギャザーシート62により形成することができる。この場合、内側層62n及び外側層62fの間に、ギャザー弾性部材63を設けることができる。内側層62nは
図3に示すように付根部65まで延びていても、また図示しないが本体部66の幅方向WDの中間位置までしか延びていなくてもよい。つまり、本体部66の付根部65側に一層の部分を有していてもよい。また、ギャザーシート62は3層以上の層構造を有していてもよく、特に中間層として液不透過性フィルムを有していてもよい。ギャザーシート62を複数層構造とする場合、一枚の不織布を折り返すことなく、又は一枚の不織布の折り返しによる層数の増加とともに、別の不織布を貼り付けることにより層数を増加させてもよい。
【0058】
付根部65は、トップシート30の側部上に幅方向WDの接合始端を有し、この接合始端が遮断位置を通り前後方向LDに連続している。また、図示例の付根部65は、トップシート30よりも幅方向WDの外側に延び出た延出部分を有しており、この延出部分は、各サイドフラップ部SFの内面、つまり図示例では液不透過性シート11の側部及びその幅方向WD外側に位置する外装不織布12の側部にホットメルト接着剤などにより接合されている。
【0059】
本体部66における前後方向LDの両端部にはトップシート30表面に固定された固定部BPが設けられているものの、前後の固定部BPの間に位置する中間部68はトップシート30表面に固定されていない部分である。中間部68は、ギャザー弾性部材63の収縮力によりギャザー弾性部材63とともに収縮しているとともに、ギャザー弾性部材63とともに伸長可能となっている。この結果、装着状態では、ギャザー弾性部材63の収縮力により中間部68の先端の前後方向LDの寸法が短くなること、及び中間部68がトップシート30に固定されていないことにより、
図7及び
図9に示すように、中間部68が先端(付根部65側から最も遠い部位)に近いほど高くなるように、かつ前端部67及び後端部69の固定部BPに近づくにつれて低くなるように起き上がる。
【0060】
ギャザーシート62の種類は特に限定されないが、通常の場合、肌触り及び液遮断性の観点から撥水性不織布が用いられる。特に、肌触り及び液遮断性を両立できる点で、スパンボンド層間にメルトブローン層を有する不織布(SMS不織布、SMMS不織布、SSMS不織布、SSMMS不織布)が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。
【0061】
ギャザー弾性部材63としては糸状、紐状、帯状等の細長状のゴム等の弾性部材を用いることができる。ギャザー弾性部材63は、図示例のように各側に1本のみ設ける他、各側に複数本設けることができる。展開状態におけるギャザー弾性部材63の伸長率は適宜定めることができるが、150~250%程度であると好ましく、180~230%であるとより好ましい。ギャザー弾性部材63としてスパンデックス等の合成糸ゴムを用いる場合、その太さは300~700dtexが好ましく、400~500dtexがより好ましい。
【0062】
特徴的には、本体部66の前端部67及び後端部69における幅方向WDの内側の端部に、トップシート30に固定されていない自由部FPが前記中間部68から続くように設けられているとともに、本体部66における自由部FP以外が固定部BPとなっている。また、自由部FPの幅x1は、中間部68の幅x2の1/6~1/3であるとともに、自由部FPの前後方向LDの寸法は自由部FPの幅x1の1~9.5倍となっている。なお、自由部FPの幅x1は図示例では一定であるが、前後方向LDの位置により変化していてもよく、その場合は最小値を意味する。中間部68の幅x2は図示例では一定であるが、前後方向LDの位置により変化していてもよく、その場合は最大値を意味する。
【0063】
このような内向きの起き上がりギャザー60では、
図7及び
図9に示すように、装着状態では前後の固定部BPが中間部68の起き上がりを抑制するものの、その抑制の程度は自由部FPの起き上がり(中間部68に続くように起き上がるが、自由部FPの幅x1が短いため中間部68ほどには起き上がらない)により緩和されるため、中間部68の起き上がり角度は自由部FPが無い場合よりも確実に大きくなる。また、自由部FPの存在により、
図8に示すように、中間部68の先端が外側に倒れやすくなり、中間部68が脚の動きに追従して外側に移動しやすくなる。さらにその結果、中間部68の先端が肌にきつく当たりにくくなる。
【0064】
自由部FPの寸法は上述の範囲内で適宜定めることができる。自由部FPの幅x1は、中間部68の幅x2の2/11~1/4であると特に好ましい。より具体的には、自由部FPの幅x1の下限は3.5mmであることが好ましい。また、前端部67及び後端部69の両方が自由部FPを有する場合、前端部67の自由部FPの幅x1と後端部69の自由部FPの幅x1とが等しくてもよいが、脚の可動域は後側よりも前側に大きいため、
図10に示すように、本体部66の前端部67の自由部FPの幅x1を後端部69の自由部FPの幅x1よりも広く(例えば1.2~1.5倍に)するのは一つの好ましい態様である。
【0065】
自由部FPの前後方向LDの寸法y1は、自由部FPの幅x1の2~8.5倍であるとより好ましい。自由部FPは、
図1に示す例のように、本体部66の前端部67に設ける場合には前端部67の全長にわたり、及び本体部66の後端部69に設ける場合には後端部69の全長にわたり設けられていると好ましい。しかし、自由部FPを前端部67に設ける場合、
図11に示すように、前端部67の後側にのみ自由部FPを設け、前端部67の前側は幅方向WD全体にわたり固定部BPとすることもできる。同様に、自由部FPを後端部69に設ける場合、
図11に示すように、後端部69の前側にのみ自由部FPを設け、後端部69の後側は幅方向WD全体にわたり固定部BPとすることもできる。このことから分かるように、自由部FPを本体部66の前端部67及び後端部69の両方に設ける場合、前端部67の自由部FPの前後方向LDの寸法と後端部69の自由部FPの前後方向LDの寸法とは等しくても、異なっていてもよい。自由部FPは、図示例のように、本体部66の前端部67及び後端部69の両方に設けることが好ましいが、前端部67のみ、又は後端部69のみに設けることもできる。
【0066】
ギャザー弾性部材63は、図示例と異なり中間部68の先端部以外に設けてもよいが、図示例のように、自由部FPの幅x1に等しい幅の先端側領域にのみ設け、当該先端側領域以外にギャザー弾性部材63を有しないと、ギャザー弾性部材63を有する部分が肌にきつく当たりにくくなるため好ましい。
【0067】
また、ギャザー弾性部材63は自由部FPまで延びていてもよいし、自由部FPまで延びていなくてもよい。前者の場合、ギャザー弾性部材63における自由部FPに位置する部分が自由部FPに固定されて、ギャザー弾性部材63の収縮力が自由部FPに作用していてもよいし、ギャザー弾性部材63における自由部FPに位置する部分が自由部FPに固定されておらず、ギャザー弾性部材63の収縮力が自由部FPに作用しない状態となっていてもよい。
【0068】
(インサイド平面ギャザー)
図示例のように、展開状態で中間部68の裏側に重なる領域のうち、固定部BPの幅x3に等しい付根部側領域におけるトップシート30よりも裏側に、前後方向LDに沿う細長状のインサイド弾性部材61を設け、付根部側領域は、インサイド弾性部材61の収縮力によりインサイド弾性部材61とともに収縮しているとともに、インサイド弾性部材61とともに伸長可能になっている(いわゆる平面ギャザーになっている)と好ましい。このようなインサイド弾性部材61を設けることにより、インサイド弾性部材61を有する部分が
図7及び
図8に白抜き矢印で示す方向に持ち上がり、中間部68の起き上がり角度が大きくなるように、起き上がりギャザー60の土台になる部分を傾斜させることができる(
図7及び
図8にはこの状態は表現されていない)。インサイド弾性部材61は省略することもできる。
【0069】
インサイド弾性部材61の位置は上述の範囲内で適宜定めることができる。一例としては、インサイド弾性部材61の幅方向WDの位置は、遮断位置(付根部65と中間部68との境界)から幅方向WDに10mm以内、特に7.5mm以内であると好ましい。また、前後方向LDにおける製品前端の位置を0%とし、製品後端の位置を100%としたとき、インサイド弾性部材61により伸縮する部分の前端は20~30%の範囲に位置し、インサイド弾性部材61により伸縮する部分の後端は20~30%の範囲に位置していると好ましい。図示例のように吸収体56の前後方向LDの中間(特に、股間部Mを含む前後方向LDの範囲)にその前後両側よりも幅の狭い括れ部56nが形成されている場合には、インサイド弾性部材61は括れ部56nを通るように配置されているのは好ましい。括れ部56nは吸収体56を有しない部分であるため、吸収体56を有する部分よりは剛性が低く、変形しやすい。よって、この位置を通過するようにインサイド弾性部材61を設けると、起き上がりギャザー60の土台になる部分がより傾斜しやすくなる。
【0070】
インサイド弾性部材61は、包装シート58と液不透過性シート11との間に設けるほか、液不透過性シート11と外装不織布12との間に設けることもできる。インサイド弾性部材61は、図示例のように各側に1本のみ設ける他、各側に複数本幅方向に間隔を空けて設けることができる。
【0071】
インサイド弾性部材61としては糸状、紐状、帯状等の細長状のゴム等の弾性部材を用いることができる。インサイド弾性部材61は、図示例のように各側に1本のみ設ける他、各側に複数本設けることができる。展開状態におけるインサイド弾性部材61の伸長率は適宜定めることができるが、160~240%程度であると好ましく、180~220%であるとより好ましい。インサイド弾性部材61としてスパンデックス等の合成糸ゴムを用いる場合、その太さは400~700dtexが好ましく、500~650dtexがより好ましい。
【0072】
インサイド弾性部材61の収縮力作用部分(図中ではインサイド弾性部材61が図示された部分)は、インサイド弾性部材61の存在部分と同じでも、それより短くてもよい。すなわち、インサイド弾性部材61の収縮力作用部分よりも前側、後側又はその両側にわたりインサイド弾性部材61が存在しているが、収縮力作用部分以外ではインサイド弾性部材61を挟むシートに固定されていなかったり、インサイド弾性部材61が一か所又は多数個所で細かく切断されていたり、あるいはその両方であったりすることにより収縮力が作用せず(実質的には、弾性部材を設けないことに等しい)、イントサイド弾性部材の存在部分よりも収縮力作用部分が短くなっていてもよい。
【0073】
(アウトサイド平面ギャザー)
各サイドフラップ部SFにおける遮断位置の幅方向WDの外側に、アウトサイド弾性部材64を設け、各サイドフラップ部SFの脚周り部分がアウトサイド弾性部材64の収縮力によりアウトサイド弾性部材64とともに収縮しているとともに、アウトサイド弾性部材64とともに伸長可能になっていてもよい(いわゆる平面ギャザーになっていてもよい)。アウトサイド弾性部材64は省略することもできる。
【0074】
アウトサイド弾性部材64は、図示例のように、ギャザーシート62と液不透過性シート11との間に設けるほか、サイドフラップ部SFにおける液不透過性シート11と外装不織布12との間に設けることもできる。アウトサイド弾性部材64は、図示例のように各側に1本のみ設ける他、各側に複数本幅方向に間隔を空けて設けることもできる。
【0075】
アウトサイド弾性部材64としては糸状、紐状、帯状等の細長状のゴム等の弾性部材を用いることができる。アウトサイド弾性部材64は、図示例のように各側に1本のみ設ける他、各側に複数本設けることができる。展開状態におけるアウトサイド弾性部材64の伸長率は適宜定めることができるが、170~250%程度であると好ましく、190~230%であるとより好ましい。アウトサイド弾性部材64としてスパンデックス等の合成糸ゴムを用いる場合、その太さは400~700dtexが好ましく、500~650dtexがより好ましい。
【0076】
アウトサイド弾性部材64の収縮力作用部分(図中ではアウトサイド弾性部材64が図示された部分)は、アウトサイド弾性部材64の存在部分と同じでも、それより短くてもよい。すなわち、アウトサイド弾性部材64の収縮力作用部分よりも前側、後側又はその両側にわたりアウトサイド弾性部材64が存在しているが、収縮力作用部分以外ではアウトサイド弾性部材64を挟むシートに固定されていなかったり、アウトサイド弾性部材64が一か所又は多数個所で細かく切断されていたり、あるいはその両方であったりすることにより収縮力が作用せず(実質的には、弾性部材を設けないことに等しい)、アウトサイド弾性部材64の存在部分よりも収縮力作用部分が短くなっていてもよい。
【0077】
<明細書中の用語の説明>
明細書中で以下の用語が使用される場合、明細書中に特に記載がない限り、以下の意味を有するものである。
【0078】
「MD方向」及び「CD方向」とは、製造設備における流れ方向(MD方向)及びこれと直交する横方向(CD方向)を意味し、いずれか一方が製品の前後方向となるものであり、他方が製品の幅方向となるものである。不織布のMD方向は、不織布の繊維配向の方向である。繊維配向とは、不織布の繊維が沿う方向であり、例えば、TAPPI標準法T481の零距離引張強さによる繊維配向性試験法に準じた測定方法や、前後方向及び幅方向の引張強度比から繊維配向方向を決定する簡易的測定方法により判別することができる。
【0079】
・「前後方向」とは図中に符号LDで示す方向(縦方向)を意味し、「幅方向」とは図中にWDで示す方向(左右方向)を意味し、前後方向と幅方向とは直交するものである。
【0080】
・「表側」とは着用した際に着用者の肌に近い方を意味し、「裏側」とは着用した際に着用者の肌から遠い方を意味する。
【0081】
・「表面」とは部材の、着用した際に着用者の肌に近い方の面を意味し、「裏面」とは着用した際に着用者の肌から遠い方の面を意味する。
【0082】
「展開状態」とは、収縮(弾性部材による収縮等、あらゆる収縮を含む)や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
【0083】
「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。例えば、伸長率が200%とは、伸長倍率が2倍であることと同義である。
【0084】
「人工尿」は、尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%を混合したものであり、特に記載の無い限り、温度37度で使用される。
【0085】
「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。人工尿49.0gに、高吸収性ポリマーを1.0g加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを40℃×60%RHの恒温恒湿槽内に3時間放置したあと常温にもどし、カードメーター(I.techno Engineering社製:Curdmeter-MAX ME-500)でゲル強度を測定する。
【0086】
「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
【0087】
「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディー圧縮試験機)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
【0088】
「吸水量」は、JIS K7223-1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
【0089】
「吸水速度」は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
【0090】
各部の寸法は、特に記載がない限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【0091】
試験や測定における環境条件についての記載がない場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、起き上がりギャザーを備えるものであれば、上記例のようなテープタイプ使い捨ておむつに限られず、パッドタイプやパンツタイプ等、使い捨ておむつ全般に利用できることはもちろん、生理用ナプキン等の他の吸収性物品にも利用可能である。特に、低出生体重児用の使い捨ておむつでは、しっかりとしたフィット性というよりは、弱くても柔軟なフィット性の方が好ましい。よって、上述の自由部を有する起き上がりギャザーは低出生体重児用の使い捨ておむつに好適である。
【符号の説明】
【0093】
11…液不透過性シート、12…外装不織布、12T…ターゲット部、13…連結テープ、13A…連結部、30…トップシート、50…吸収要素、56…吸収体、56n…括れ部、58…包装シート、60…起き上がりギャザー、61…インサイド弾性部材、62…ギャザーシート、62f…外側層、62n…内側層、63…ギャザー弾性部材、64…アウトサイド弾性部材、65…付根部、66…本体部、67…前端部、68…中間部、69…後端部、BP…固定部、FP…自由部、LD…前後方向、M…股間部、WD…幅方向。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と、
吸収体の表側に配置された液透過性のトップシートと、
前記トップシートの表面の幅方向両側にそれぞれ設けられた起き上がりギャザーと、を備え、
前記起き上がりギャザーは、前記トップシートの表面の幅方向両側における遮断位置を通り前後方向に続く仮想線の幅方向の外側に取り付けられた付根部と、前記付根部の幅方向の内側の縁から折り返されることなく幅方向の内側に延びる本体部とを有し、
前記本体部は、前記トップシートに固定された固定部を有する前端部及び後端部と、これら前端部及び後端部の間に位置し、前記トップシートに固定されていない中間部とを有し、
前記中間部の少なくとも先端部に、前後方向に沿う細長状のギャザー弾性部材が取り付けられており、
前記中間部は、前記ギャザー弾性部材の収縮力により前記ギャザー弾性部材とともに収縮しているとともに、前記ギャザー弾性部材とともに伸長可能であり、
前記前端部及び前記後端部における幅方向の内側の端部に、前記トップシートに固定されていない自由部が、前記中間部から続くとともに前記前端部の全長及び前記後端部の全長にわたるようにそれぞれ設けられており、前記前端部及び前記後端部のうち前記自由部以外が前記固定部となっており、
前記自由部の幅は、前記中間部の幅の1/6~1/3であるとともに、前記自由部の前後方向の寸法は、前記自由部の幅の1~9.5倍であり、
前記中間部は、前記自由部の幅に等しい幅の先端側領域に前記ギャザー弾性部材を有し、かつ当該先端側領域以外に前記ギャザー弾性部材を有しない、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記自由部の幅は、3.5mm以上である、
請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
展開状態で前記中間部の裏側に重なる領域のうち、前記固定部の幅に等しい付根部側領域における前記トップシートよりも裏側に、前後方向に沿う細長状のインサイド弾性部材を有し、
前記付根部側領域は、前記インサイド弾性部材の収縮力により前記インサイド弾性部材とともに収縮しているとともに、前記インサイド弾性部材とともに伸長可能である、
請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体は、前後方向の中間にその前後両側よりも幅の狭い括れ部を有しており、
前記インサイド弾性部材は括れ部を通るように配置されている、
請求項3記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記前端部及び前記後端部の両方が前記自由部を有し、
前記前端部の前記自由部の幅が、前記後端部の前記自由部の幅よりも広い、
請求項1~4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
低出生体重児用の使い捨ておむつである、
請求項1~5のいずれか1項に記載の吸収性物品。