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特開2024-113199プラスチックカードおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113199
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】プラスチックカードおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B42D 15/00 20060101AFI20240814BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240814BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B42D15/00 341B
B32B27/30 101
B32B27/36
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024096651
(22)【出願日】2024-06-14
(62)【分割の表示】P 2020041875の分割
【原出願日】2020-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】赤間 浩紀
(72)【発明者】
【氏名】上原 隆志
(57)【要約】
【課題】磁気カードリーダーを用いてプラスチックカードの磁気情報を読取る際に、プラスチックカードの側面がカードリーダーと擦り合わされても、カードの側面が摩耗し、意匠性が損なわれる事が無いプラスチックカードを提供する。
【解決手段】少なくとも1層からなる内側の塩化ビニル層1と、塩化ビニル層の表裏面に備えられた外側のポリエチレンテレフタレート層2を備えた積層体からなるプラスチックカード20は、側面には装飾層4を有し、プラスチックカードの側面の断面において、塩化ビニル層の表面が、塩化ビニル層とポリエチレンテレフタレート層とが接する2つの点を結ぶ直線の内側に備えられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層からなる内側の塩化ビニル層と、前記塩化ビニル層の表裏面に備えられた外側のポリエチレンテレフタレート層を備えた積層体からなるプラスチックカードであって、
前記プラスチックカードの側面には装飾層が備えられており、
前記プラスチックカードの側面の断面において、前記塩化ビニル層の表面が、前記塩化ビニル層と前記ポリエチレンテレフタレート層とが接する2つの点を結ぶ直線の内側に備えられている、
プラスチックカード。
【請求項2】
内側の層となるシート状またはフィルム状の樹脂Aの表裏面に外側の層となるシート状またはフィルム状の樹脂Bを積層した積層体をカード状に個片化し、
基材上に装飾層を備えた転写箔を、ロール式熱転写機を用いて、転写温度180℃以上240℃以下、かつ送り速度20mm/秒以上50mm/秒以下の条件で前記積層体の側面に接触させて前記装飾層を前記側面に転写する、
プラスチックカードの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂Aの成形収縮率が前記樹脂Bの成形収縮率よりも大きい、
請求項2に記載のプラスチックカードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
側面に装飾層を形成する事により意匠性を高めたプラスチックカードに関する。
【背景技術】
【0002】
側面を高意匠化したプラスチックカードとしては、特許文献1に、ICモジュールを収納する開口を備えたシート状スペーサの両面に外装シートを積層する事により一体化してなるプラスチックカードの側面に露出した前記シート状スペーサの全周に亘って印刷が施されたプラスチックカードが開示されている。また、特許文献2には、プラスチックカードの側面にパッド印刷による印刷画像を有するプラスチックカードが開示されている。
【0003】
これらのプラスチックカードの磁気記録部に記録された情報を読取る際に、カードをカードリーダーのスリット部に差し込み、カードリーダーのスリット部の底面にカードの側面を押し当てながら摺動させて読み取る。その際に、カードの側面が摩耗し、意匠性が損なわれるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-130100号公報
【特許文献2】特開2018-122563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の問題点を解決する為、本発明は、磁気カードリーダーを用いてプラスチックカードの磁気情報を読取る際に、プラスチックカードの側面がカードリーダーと擦り合わされても、カードの側面が摩耗することで意匠性が損なわれる事が無いプラスチックカードを提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様の一つは、少なくとも1層からなる内側の塩化ビニル層と、塩化ビニル層の表裏面に備えられた外側のポリエチレンテレフタレート層を備えた積層体からなるプラスチックカードである。
プラスチックカードの側面には装飾層が備えられており、プラスチックカードの側面の断面において、塩化ビニル層の表面が、塩化ビニル層とポリエチレンテレフタレート層とが接する2つの点を結ぶ直線の内側に備えられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のプラスチックカードによれば、内側の層と、内側の層の表裏面に備えられた外側の層と、を備えているプラスチックカードの断面において、内側の層の表面が、内側の層が外側の層と接する2つの点を結ぶ直線の内側に備えられている。その為、磁気カードリーダーを用いてプラスチックカードの磁気情報を読取る際に、プラスチックカードの側面がカードリーダーと擦り合わされても、外側の層だけが擦り合わされることになり、カードの側面に備えられた装飾層が摩耗する事が無く、意匠性が損なわれる事が無い。
【0008】
また、本発明のプラスチックカードの製造方法によれば、本発明のプラスチックカード
を製造可能とする事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のプラスチックカードの形成過程を例示する断面説明図であって、(a)は装飾層を転写する前、(b)は転写した後、のカード側面の断面形状の変化を模式的に示している。
図2】本発明のプラスチックカードの側面の断面形態を説明する断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<プラスチックカード>
本発明のプラスチックカードを図1図2を用いて説明する。
本発明のプラスチックカード20は、少なくとも1層からなる内側の層1と、該内側の層1の表裏面に備えられた外側の層2、2´を備えた積層体からなるプラスチックカードである。
【0011】
本発明のプラスチックカード20の側面3には装飾層4が備えられており、カードの意匠性を高める機能を発揮する。図1は、装飾層4を形成する前の状態を例示した断面図であり、側面3が平坦な表面である。一方、図2は、装飾層4を側面に形成した後の状態を例示した断面図である。当初、平坦な側面3であったが、装飾層を形成後は、内側に凹んだ側面7となっており、その上に装飾層4が備えられている(図1(b)参照)。
【0012】
即ち、本発明のプラスチックカード20の側面の断面において、内側の層1の側面の表面が、内側の層1が外側の層2、2´と接する2つの点5、5´を結ぶ直線6の内側に備えられている事が特徴である。
【0013】
(内側の層)
内側の層1は、本発明のプラスチックカード20のコアとなる層である。
内側の層1の層構成は、単層であっても良いし、2層以上の積層体であっても良い。
内側の層1を構成する材料は、PVC(ポリ塩化ビニル)、PETG(グリコール変性ポリエチレンテレフタレート)などの耐熱性が低い樹脂である事が好ましい。
【0014】
ここで耐熱性とは、例えば樹脂の成形収縮率や熱変形温度を指す。樹脂(プラスチック)の体積は、温度が高いほど膨張し、低いほど収縮する。その比率が成形収縮率である。金型で樹脂成形する場合、金型の寸法を1c、成形品の対応する部分の寸法を1、とする時、成形収縮率は、{(1c-1)/1c}×100(%)で表される。その為、成形収縮率が大きい程、樹脂が軟化し固化した場合の収縮が大きくなる。また、熱変形温度は、樹脂に荷重をかけた状態で、一定速度で加熱した時に、所定の変形を起こす温度である。例えば、ASTM D648 A法またはB法に従って測定した温度とする事ができる。また、JIS K7191-2:2015のA 法またはB法に従って測定した温度としても構わない。
【0015】
以上に説明した様に、内側の層1に、成形収縮率が大きい樹脂を採用する事によって、プラスチックカード20の側面の断面において、内側の層1の体積が減少し、側面の断面が凹んだ構造を形成し易くなる。同様に、内側の層1に、熱変形温度が低い樹脂を採用する事によって、外側の層2が軟化しない温度であっても内側の層1が軟化し、積層(外側の層2/内側の層1/外側の層2)を形成する時に内側の層1に発生した、縮もうとする応力が解放される。この事により、内側の層1の体積が減少する為、プラスチックカード20の側面の断面が凹んだ構造が形成される。
【0016】
なお、樹脂が固体の状態で縮もうとする原因は、成形収縮率の他に、樹脂をシート状に成形する際に発生した内部応力がある。例えば、樹脂に力をかけてシート状やフィルム状に加工すると、シートの中に応力が残存する。例えば、一軸延伸フィルムでは流れ方向に引っ張られた反動で、シートやフィルムの中には縮もうとする圧縮応力が残存する。この応力は、シートやフィルムが軟化した時、シートやフィルムが縮む事で解放される。内側の層1として使用する樹脂シートや樹脂フィルムとしては、この様な圧縮応力が残存した樹脂シートや樹脂フィルムを使用する事が好ましい。
【0017】
この様に、プラスチックカード20の側面の断面のうち、内側の層1が凹んだ構造となる事によって、プラスチックカード20の側面が、カードリーダーのスリット部の底面に擦り付けられたり、あるいはその他の物体に擦り付けられたりしても、装飾層4が擦り付けられる事が無い。その為、装飾層4が損傷を受けることを避けることができる。外側の層2の上に形成されている装飾層4は損傷を受けるが、内側の層1の上に形成されている装飾層4は損傷を受けない為、装飾層4としては殆ど損傷を受ける事が無い。
【0018】
内側の層1は1層の構成となっているが、必ずしも単一の層である必要はなく、2層以上の複数層から構成されてあっても良く、またICチップやアンテナなどを含むICイン
レットが内包されてあっても良い。
【0019】
ICインレットを内包する場合には、ICインレットとして公知のものを任意に使用することができるが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、紙、合成紙などからなるICインレット用支持体上に、互いに電気的に接続されたICチップとアンテナが設けられたものなどを、使用することができる。
【0020】
アンテナはアルミニウムや銅などに代表される金属箔をパターン状にエッチングまたは抜き加工したものや、導電性インキをスクリーン印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、インクジェット方式などの公知手段によってパターン状にもうけたもの、あるいは巻線溶着加工によるものなどを例示することができる。
【0021】
内側の層1を構成する樹脂には、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、白鉛華など従来公知の顔料や体質顔料をはじめ、熱安定剤、紫外線吸収剤などを各種添加剤が添加されてあっても何ら問題ない。
【0022】
(外側の層)
外側の層2は、本発明のプラスチックカード20のコアとなる内側の層1の表裏面に配置される層である。
外側の層2の層構成は、単層であっても良いし、2層以上の積層体であっても良い。
外側の層2を構成する材料は、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPC(ポリカーボネート)などの耐熱性が高い樹脂である事が好ましい。
【0023】
外側の層2の厚さは、0.040mm~0.120mmが好ましい。外側の層2の厚さが薄い場合、内側の層1が厚くなるため、装飾層4の熱転写後のカード側面の凹み幅は広くなるが、その反面、硬い層の面積が少なくなる為、側面の擦れに対する強度が低下する。その為、0.040mm以上の厚さは必要となる。一方、外側の層2が厚い場合は、擦れによって削れる幅が広くなり、装飾層4を保護する効果が薄れる事から、0.120mm以下が好ましい。
【0024】
また、外側の層2の色は、透明もしくは装飾層4と同系色にするのが望ましい。
【0025】
外側の層2には、熱安定剤や紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤など従来公知の各種添加剤の添加やマット処理などの特殊処理等を施すことができる。
【0026】
また、内側の層1と外側の層2との間には、例えばレーザー印字特性などを有する層や接着性付与層のような機能層などが、別途設けられてあっても何ら問題ない。
【0027】
このような機能層は、シート状のものとして設置されてあっても良く、またコーティング層あるいは印刷層として設けられてあっても良い。
【0028】
(装飾層)
装飾層4は、本発明のプラスチックカード20の側面の意匠性を高める層である。
装飾層4は、単層であっても良いし、2層以上から構成されている層であっても良い。少なくとも、最表面に意匠性を高める絵柄や光学的な効果を備えた層が配置されたものである。
【0029】
装飾層4は、少なくとも接着層、保護層を含む層からなり、中間層がそれらの間に設けられてあっても良い。
【0030】
また、装飾層4は、装飾転写フィルムとして形成され、プラスチックカード10の側面3(図1(a)参照)に熱転写することにより形成される。
【0031】
以下に、装飾転写フィルムの層構成について、説明する。
【0032】
装飾転写フィルムに用いられる支持体としては、コンデンサ紙などの紙類をはじめ、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリイミド(PI)などの樹脂フィルムを用いることができ、中でも取扱いの容易性やコスト面を考慮するとポリエチレンテレフタレート(PET)を好適に用いることができる。
【0033】
また、支持体には、帯電防止処理、易接着処理、離型処理などの各種処理が施されてあっても良い。
【0034】
この様な支持体の厚みは、1μm~100μmとすることができ、取扱いの容易性を考慮すると、3μm~50μm程度とすることができる。
【0035】
以上に説明した装飾層4の形成方法は、装飾転写フィルムをプラスチックカードの側面に熱転写する方法であるが、特にこれに限定するものでは無く、側面に絵柄が形成されていたり、光学的な効果を持つ層が形成されていれば良い。絵柄は、印刷法でも形成する事が可能である。光学的な機能層は、各種の塗布技術や転写法を用いて形成する事ができる。熱転写する方法は、プラスチックカードの側面に転写フィルムを押圧した状態で加熱し、絵柄層や光学的機能層を転写する事により、側面の内側の層1に熱的な影響を与えながら、転写する事ができる為、好ましい。しかし、例えば印刷法などの熱がかからない方法で装飾層4を形成した場合は、別途、プラスチックカードの少なくとも側面を、熱転写する方法の時と同様の温度に加熱する事で、同等の効果を得る事ができる。
【実施例0036】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0037】
<実施例1>
まず、コア材である内側の層と外装シート(またはオーバーシート)である外側の層をラミネートする事により、プラスチックカードとなる積層体を作製した。その積層体を打ち抜き加工によってプラスチックカードを作製した。
【0038】
具体的には、下記の手順にてプラスチックカードを作製した。
まず、内側の層(コア材)として厚さ0.70mmの塩化ビニルシートと、外側の層(外装シート)として厚さ0.05mmのポリエチレンテレフタレートシートを用意した。
【0039】
これらのシートを用いて、内側の層の表裏面に外側の層を積層し、熱ラミネート装置を用いて熱ラミネートする事により、ポリエチレンテレフタレートシート(0.05mm)/塩化ビニルシート(0.70mm)/ポリエチレンテレフタレートシート(0.05mm)なる層構成の積層体を作製した。
【0040】
内側の層と外側の層の厚さを、それぞれ0.70mmと0.05mmとした理由は、予備試験の結果、表1に示した様な結果が得られた為である。即ち、外側の層の厚さ:0.038mm、0.050mm、0.100mm、0.125μm、0.188mmと、内側の層の厚さ:0.424mm、0.550mm、0.600mm、0.700mm、0.724mmと、の組み合わせを表1の様にした時、表1に示した様に、良好な結果が得られたのは、水準2と水準3だけであった。その為、カードの厚さの規格0.76mmに近い水準2の組み合わせを採用した。
なお、表1における判定の基準を下記の様にした。
〇:剥がれた幅が、プラスチックカードの側面の幅の30%未満
△:剥がれた幅が、プラスチックカードの側面の幅の30%以上50%未満
×:剥がれた幅が、プラスチックカードの側面の幅の50%以上
ただし、水準1は、剥がれが目立たなかったが、剥がれた幅が外側の層の幅より広く剥がれ、内側の層にまで剥がれていた為、カードとしての強度も低下している事から△とした。
なお、剥がれた幅の百分率による表現は、(両端の剥がれ幅×2)÷プラスチックカードの厚さ×100(%)として算出した。例えば、水準2では、(0.05mm×2)÷(0.050×2+0.700)×100≒12.5(%)となる。水準4では、(0.125×2)÷(0.125×2+0.550)×100≒31.3(%)となる。
【0041】
【表1】
【0042】
次に、この積層体をJIS規格(X6301:2005)に規定されるID-Iに適合する抜き型を用いて上記の積層体をカード形状に抜いて、個片化したカードを得た。
【0043】
得られた個片化したカードの側面部に対し、下記に説明する装飾転写フィルムをロール式熱転写機RH-150(ナビタス株式会社製)により、保護層、レリーフ構造形成層、反射層、接着層からなる装飾層を転写し、本発明のプラスチックカードを得た。
【0044】
なお、ロール式熱転写機による転写条件は、設定温度(転写温度):180℃、設定圧力(転写圧):4000N、装飾転写フィルムの送り速度:20mm/秒とした。
【0045】
この様にして作製したプラスチックカードの側面における転写後の凹み量7(図2参照)を測定した結果、20μm~30μmであった。
【0046】
(装飾転写フィルム)
次に使用した装飾転写フィルムの製造方法について説明する。
まず、装飾転写フィルム用の支持体として、PETフィルム(ルミラー 25T60;
東レ株式会社製)を用意し、このPETフィルム上に下記の保護層用塗布液をグラビアコータによって、乾燥後の膜厚が5.0μmとなるように保護層を形成し、その上に下記のレリーフ構造形成層用塗布液をグラビアコータによって、乾燥後の膜厚が2.0μmになるようにレリーフ構造形成層を形成した。
【0047】
次いで、ホログラム柄である凹凸構造を設けたニッケル版を用いて、レリーフ構造形成層の表面にエンボス加工を施した後、真空蒸着法によりアルミニウムの薄膜を厚さ40nmとなるように形成した。
【0048】
その後、下記の接着層用塗布液をグラビアコータによって、乾燥後の膜厚が1.0μmとなるように接着層を設けて、装飾転写フィルムを得た。
【0049】
(保護層用塗布液)
アクリル樹脂 30質量部
シリカフィラー 3質量部
トルエン 40質量部
メチルエチルケトン 40質量部
メチルイソブチルケトン 20質量部
【0050】
(レリーフ構造形成層用塗布液)
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体とウレタン樹脂の混合物 25質量部
メチルエチルケトン 70質量部
トルエン 30質量部
【0051】
(接着層用塗布液)
ポリエステル樹脂 5質量部
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂 20質量部
メチルエチルケトン 40質量部
トルエン 40質量部
【0052】
<実施例2>
ロール式熱転写機による転写時の設定温度を240℃とした事以外は、実施例1と同様とした。
【0053】
<実施例3>
ロール式熱転写機による転写時の設定温度を180℃とし、送り速度を40mm/秒とした事以外は、実施例1と同様とした。
【0054】
<実施例4>
ロール式熱転写機による転写時の装飾転写フィルムの送り速度を50mm/秒とした事以外は、実施例1と同様とした。
【0055】
<比較例1>
ロール式熱転写機による転写時の設定温度を170℃とした事以外は、実施例1と同様とした。
【0056】
<比較例2>
ロール式熱転写機による転写時の設定温度を250℃とした事以外は、実施例1と同様とした。
【0057】
<比較例3>
ロール式熱転写機による転写時の装飾転写フィルムの送り速度を60mm/秒とした事以外は、実施例1と同様とした。
【0058】
<評価>
(スワイプ試験)
実施例1~4で作製したプラスチックカードのサンプルに対して、磁気カードの読取り装置を使って、人手によって1000回の読取り操作した後、プラスチックカードの側面を顕微鏡観察または目視によって装飾層の剥がれ具合を観察するスワイプ試験を行った。
その結果は、表1の水準2と同じ結果であり、カード側面の両端からの装飾層の剥がれは全て0.05mm程度であり、良好であった。
【0059】
(装飾層の品質)
装飾層の品質について、外側の層の収縮と装飾層の密着性について、目視により評価した。その結果を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
実施例1~4については、装飾層の転写温度が180℃~240℃、装飾転写フィルムの送り速度は20mm/秒~50mm/秒で作製したものであり、いずれも、外側の層(外装シート)の収縮は見られず、また装飾層が側面端部から剥がれた幅も0.05mm以下であった為、密着性も良好であった。その為、総合的に良好(〇)であると判定した。
【0062】
比較例1は、送り速度が20mm/秒、転写温度が170℃で作製したものであり、温度が低い為、外側の層の収縮は見られなかったが、装飾層の密着性が不十分であった。その為、総合的に不良(×)であると判定した。
【0063】
比較例2は、送り速度が20mm/秒、転写温度が250℃で作製したものであり、温度が高すぎる為、外側の層の収縮が見られた。装飾層の密着性は十分であった。その為、総合的に不良(×)であると判定した。
【0064】
比較例3は、送り速度が60mm/秒、転写温度が180℃で作製したものであり、送り速度が速すぎる為、加熱が不十分となった事が原因で、外側の層の収縮は見られなかったが、装飾層の密着性が不十分となった。その為、総合的に不良(×)であると判定した。
【符号の説明】
【0065】
1・・・内側の層
2・・・外側の層
3・・・プラスチックカードの側面
4・・・装飾層
5・・・内側の層と外側の層が接する点
6・・・内側の層と外側の層が接する2つの点を結ぶ直線
7・・・凹み量
10・・・(装飾層が転写される前の)プラスチックカード
20・・・(装飾層が転写された後の)プラスチックカード
図1
図2