(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011321
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】耐火パネル
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20240118BHJP
C09K 21/02 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
E04B1/94 V
C09K21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113234
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】391029509
【氏名又は名称】イソライト工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522283549
【氏名又は名称】一般社団法人建築開口部協会
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(72)【発明者】
【氏名】末吉 篤
(72)【発明者】
【氏名】岡部 聖大
(72)【発明者】
【氏名】馬立 勝
(72)【発明者】
【氏名】小野 清人
(72)【発明者】
【氏名】朝内 文博
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 晴久
【テーマコード(参考)】
2E001
4H028
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001DE01
2E001DE03
2E001FA04
2E001GA12
2E001GA29
2E001HB01
4H028AA10
4H028AB04
4H028BA03
4H028BA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】施工厚さ30~50mmの範囲内に抑えることが可能な耐火被覆材を有する耐火パネルをロックウール以外の材質を用いて提供する。
【解決手段】建築物の外周部に配される耐火パネルであって、ロックウールを含まずに好ましくはアルカリアースシリケート繊維を含む無機繊維質からなる複数の断熱材層3,5と、該複数の断熱材層の各々の加熱面側に設けた好ましくは水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化カルシウムからなる群から選ばれる1種以上の吸熱剤を含む遮熱層2,4とからなる積層構造の耐火被覆材が金属壁板1の裏側に貼り付けられており、互いに隣接する断熱材層同士の間の遮熱層の厚さが4mm以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の外周部に配される耐火パネルであって、ロックウールを含まない無機繊維質からなる複数の断熱材層と、該複数の断熱材層の各々の加熱面側に設けた遮熱層とからなる積層構造の耐火被覆材が金属壁板の裏側に貼り付けられており、互いに隣接する断熱材層同士の間の遮熱層の厚さが4mm以上であることを特徴とする耐火パネル。
【請求項2】
前記複数の断熱材層がアルカリアースシリケート繊維を含むことを特徴とする、請求項1に記載の耐火パネル。
【請求項3】
前記遮熱層が吸熱剤を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の耐火パネル。
【請求項4】
前記吸熱剤が水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化カルシウムからなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項3に記載の耐火パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の壁面に使用される耐火性能に優れた金属壁板を含む耐火パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
ビル、家屋等の建築物には、その外周部に耐火性能を備えた壁面用の耐火パネルが一般的に配されている。耐火パネルの耐火性能は建築基準法で定められており、火災による破壊その他の損傷を生じない性能である非損傷性、非加熱面の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しない性能である遮熱性、及び非加熱面側に火災を出さない性能である遮炎性に区分される。
【0003】
従来、建築物の壁面用に使用する金属壁板を含む耐火パネルにおいては、その耐火性能を高めるため、金属壁板の裏面にセメント、水、及びロックウールを主成分とした混合物を耐火被覆材として吹付け施工する技術が一般的に採用されてきた。この施工法は、施工後に自然乾燥してもセメントの水和生成物等の形態で耐火パネルに水分を含ませることができるので、施工厚さ30mm程度であってもISO基準で1時間耐火の耐火性能の要件を満たしている。
【0004】
しかしながら、上記混合物の吹付け施工は、原材料配合や施工を現場で行なうので品質にばらつきが生じやすいうえ、粉塵等により現場及び周辺環境を劣悪にすることが問題になっていた。また、施工後に脱落・剥落を生じやすい等の短所も抱えていた。更に、労働安全衛生上の観点から、ロックウールに代わる素材を用いるか、あるいはロックウールを含む材料を用いる場合は吹付け以外の施工法で施工することが求められていた。
【0005】
ロックウールに代わる材料を用いる技術として、例えば特許文献1には、金属壁板の裏面にセメント、発泡有機樹脂粒子、無機軽量粒子、吸熱物質、水溶性金属塩、及び水溶性高分子化合物を含む組成物の硬化体からなる耐火断熱層を設け、更に金属壁板の表面及び/又は裏面に加熱時に発泡する発泡性被膜層を設ける技術が提案されている。これにより、吸熱物質が加熱される際の水の気化熱による吸熱効果と、発泡性被膜層による厚さの増加効果によって高い遮熱性が得られる。しかしながらこの特許文献1の技術では、断熱材の施工時に吹付け施工、こて塗り施工等の各種手段により上記組成物を塗付し、硬化させるので、依然として粉塵等により現場及び周辺環境影を劣悪にする問題や、施工後に脱落・剥落が生じやすい問題を抱えていた。
【0006】
他方、ロックウールを含む材料を吹付け以外の施工法で設ける技術として、特許文献2には、金属壁板の裏側にロックウールフェルト層、セラミック繊維フェルト層等の無機繊維フェルトからなる耐火被覆材を設ける技術が提案されている。これにより、吹付け施工において生じやすい品質のばらつきを抑えることができるうえ、粉塵等により現場及び周辺環境が劣悪になる問題も軽減することができる。
【0007】
また、特許文献3には、鉄骨用の耐火被覆材として、人が吸入しても健康への影響が少ない生体溶解性無機繊維などの無機繊維断熱材を用いる技術が提案されている。この耐火被覆材は、無機繊維断熱材を加圧圧縮した状態で可燃性の糸又は留め具により縫製するものであり、加圧解除後は平均厚さが元の厚さよりも薄い圧縮状態に保持され、火災時には可燃性の糸又は留め具が焼失することにより圧縮状態から開放され、加圧圧縮前の厚さに対して70%以上の圧縮復元率で復元させることが可能になる。
【0008】
更に、特許文献4には、アルミナセメントと、ケイ素の酸化物を含む材料と、水とからなる混合物の硬化物で形成される成形体を備え、該硬化物がストラトリンガイトを含有する耐火パネルが開示されている。この特許文献4の耐火パネルは、結晶水を多く含む材料を含有するセメントを主成分とするので、加熱時にその気化熱により遮熱効果を発揮させることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特登05374423号公報
【特許文献2】実開平3-113013号公報
【特許文献3】特開2013-019157号公報
【特許文献4】特開2021-161016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の特許文献2~4の技術を採用することにより、現場での断熱材の吹付け施工が不要になるので、現場での原材料の配合や施工の際に生じやすい品質のばらつきを抑えることができるうえ、粉塵等により現場及び周辺環境を劣悪にする問題も軽減することができる。しかしながら、特許文献2の技術では、ISOに準拠する耐火性能を満たすために被覆材の施工厚みを60~70mm程度にまで厚くする必要があった。
【0011】
すなわち、ISOに準拠する耐火性能では、金属壁板を含む耐火パネルの該金属壁板側をISO834の標準加熱曲線「T=345log10(8t+1)+20」(Tは加熱温度[K]、tは経過時間[分])に沿って60分後に945℃になるように加熱した後、3時間自然降温したときに、耐火被覆材が施工されている面(非加熱面)の最高値の平均が140K(140℃+外気温度)以下、最大でも180K(180℃+外気温度)以下であることが必要になる。
【0012】
特許文献3の技術においても、上記のISOに準拠する耐火性能を満たすために、圧縮状態から開放されたときの復元時に断熱材の厚みを60~70mm程度にまで厚くする必要があった。一方、特許文献4の耐火被覆材は、結晶水の脱水温度が200℃付近であるため、ISO834の標準加熱曲線において厚さ25mmでは30分耐火仕様を満たすが、1時間耐火の仕様を得るには、被覆材の厚さを50~60mmにする必要があった。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、現場での原材料の配合や施工による品質のばらつきの問題や、粉塵により現場及び周辺環境を劣悪にする問題、更には施工後において脱落・剥落が生じる問題を生じにくくすることに加えて、耐火被覆材の厚さを施工可能な空間の制約を受けにくい施工厚さ30~50mmの範囲内に抑えることが可能な耐火被覆材を有する耐火パネルをロックウール以外の材質を用いて提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係る耐火パネルは、建築物の外周部に配される耐火パネルであって、ロックウールを含まない無機繊維質からなる複数の断熱材層と、該複数の断熱材層の各々の加熱面側に設けた遮熱層とからなる積層構造の耐火被覆材が金属壁板の裏側に貼り付けられており、互いに隣接する断熱材層同士の間の遮熱層の厚さが4mm以上であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、施工厚さを30~50mmの範囲内に抑えることが可能な耐火被覆材を有する耐火パネルをロックウール以外の材質を用いて提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例で作製した耐火パネルの部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る耐火パネルについて説明する。本発明の実施形態の耐火パネルは、建築物の主として外壁などの外周部に配される耐火パネルであり、複数の遮熱層とロックウールを含まない複数の無機繊維質断熱材層とがこの順に金属壁板の裏側に交互に積層された構造を有している。換言すれば、複数の断熱材層の各々の加熱面側に遮熱層が設けられている積層構造の耐火被覆材からなり、これが金属壁板の裏側に貼り付けられている。これにより、耐火被覆材の施工厚さをISO基準の1時間耐火の仕様で30~50mmの範囲内に抑えることが可能になる。なお、本発明の実施形態の耐火パネルには、カーテンウォール、外壁材などの建築物の外周部に配される様々な耐火材が含まれる。
【0018】
上記の無機繊維質断熱材層の材質は、アルカリアースシリケート繊維であるのが好ましい。アルカリアースシリケート繊維は人が吸入しても健康への悪影響が少ないうえ、耐熱性の高い生体溶解性繊維であるからである。アルカリアースシリケート繊維は、平均繊維径が1~10μmであるのが好ましく、3~6μmであるのがより好ましい。この平均繊維径が1μm未満では繊維自体の機械的強度が小さくなりすぎるおそれがある。また、人体の健康に対する影響の観点からは3μm以上であるのが好ましい。逆にこの平均繊維径が10μmより太くなると、繊維自体の伝導伝熱が増加して断熱性の低下を招くおそれがあり、この影響をより抑えうる点から6μm以下がより好ましい。なお、上記の平均繊維径とは、測定対象となる繊維群を電子顕微鏡で撮影し、得られた画像上の任意の200本の繊維に対して、それらの任意の部分の幅を計測し、それらを算術平均して求めたものである。
【0019】
上記の無機繊維質断熱材層は、取り扱い易さや優れた施工性の観点から、ブランケット、フェルト、又は成形品の形態で用いるが好ましい。この場合のかさ密度は、115kg/m3未満では機械的強度が小さくなるおそれがあるので、115kg/m3以上が好ましい。但し、このかさ密度が210kg/m3以上になると熱伝導率が大きくなりすぎるおそれがあるので210kg/m3未満が好ましく、130~180kg/m3がより好ましい。なお、施工時の粉塵飛散を防止する点から、ブランケットやフェルトを用いる場合は、その非加熱面側に不織布等を貼り付けてもよい。
【0020】
上記の無機繊維質断熱材層は貼り付けにより施工するのが好ましい。これにより、吹付け施工において問題となる現場での原材料の配合時や施工時において生じやすい品質のばらつきを抑えることができるうえ、粉塵等により現場及び周辺環境を劣悪にする問題を軽減することができる。更に、施工後の脱落や剥落も生じにくくなる。
【0021】
ところで、上記の無機繊維質断熱材層のみで耐火被覆材を構成する場合は、所望の耐火性能を満たすのに必要な施工厚さが前述した施工厚さの上限値である50mmを超えてしまう。そこで、本発明の実施形態の耐火パネルは、上記の無機繊維質断熱材に対して断熱するため、該無機繊維質断熱材の厚さ方向における加熱側(すなわち金属壁板側)に遮熱層が設けられている。この遮熱層の材質には、吸熱剤を含んだ無機接着剤を用いることが好ましく、これにより、上記の無機繊維質断熱材を貼り付ける際に遮熱層に接着剤の役割を担わせることができるうえ、該断熱材の脱落・剥落を抑制することができる。
【0022】
また、上記の遮熱層には、含有する吸熱剤が加熱されたときに該吸熱剤の脱水により生ずる水分の気化熱により吸熱効果を発揮させることができる。更に遮熱層内に熱がこもるので伝熱が抑制されて断熱効果が持続される。これらの複合的な効果の結果、施工厚さを従来に比べて顕著に薄くすることができる。上記の効果を奏させるため、遮熱層100質量部に対して、無機接着剤は45~55質量部含有させるのが好ましく、吸熱剤は35~45質量部含有させるのが好ましい。
【0023】
また、上記の効果を奏するには、互いに隣接する断熱材層同士の間の遮熱層の厚さは4mm以上であり、6mm以上が好ましい。但し、厚さ8mm以上では脱落の可能性があるので好ましくない。これにより、例えば厚み2mmの第1遮熱層、呼び厚さ25mmの第1無機繊維質断熱材層、厚み4mmの第2遮熱層、及び呼び厚さ12.5mmの第2無機繊維質断熱材層をこの順で金属壁板の裏側に設けることで、ISO基準で1時間耐火の要件を満たすことができる。なお、JIS R3311によれば、呼び厚さ25mm品は厚さの許容範囲が21~31mmであり、呼び厚さ12.5mm品は厚さの許容範囲が10.5~16.5mmである。
【0024】
上記の吸熱剤は、吸熱開始温度の上限値が400℃以下であるものを用いることが好ましく、300℃以下がより好ましい。吸熱剤の吸熱開始温度の上限値を400℃以下とすることで吸熱効果を速やかに生じさせることができる。他方、吸熱剤の吸熱開始温度の下限値は250℃以上が好ましい。250℃未満で吸熱効果が生じると加熱後の早い段階で吸熱剤が分解してしまい、吸熱効果が持続しないおそれがあるからである。
【0025】
上記の吸熱剤の具体的な材料としては、加熱により水分を放出することのできる金属水酸化物、ホウ素系化合物、金属塩の水和物などが挙げられ、これらの中では、金属水酸化物、又はホウ素系化合物が好ましく、金属水酸化物がより好ましい。金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ハイドロタルサイト、タルク等が挙げられ、これらの中では、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、又は水酸化カルシウムが好ましく、水酸化アルミニウム、又は水酸化マグネシウムがより好ましい。
【0026】
ホウ素系化合物としては、ホウ酸亜鉛等が挙げられる。ホウ酸亜鉛は例えば2ZnO・3B2O5・3.5H2Oなどの水和物であるのが好ましい。金属塩の水和物としては、硫酸カルシウムの水和物(例えば、2水和物)、硫酸マグネシウムの水和物(例えば、7水和物)、カオリンクレー、ベーマイト、ドーソナイトなどが好ましい。吸熱剤は吸熱量が700J/g以上のものが好ましい。吸熱剤の吸熱量が上記範囲であると、遮熱性がより良好となる。なお、吸熱量及び吸熱開始温度は、示差走査熱量計(DSC)や熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用いて測定することができる。
【0027】
上記無機接着剤は、珪酸ナトリウム(水ガラス由来物、Na2SiO3、Na2O・SiO2、又はNa2O・nSiO2・mH2O)、コロイダルシリカ、ベントナイト、シリカヒューム等の無機バインダーを挙げることができる。これらの中では、珪酸ナトリウムが好ましい。上記無機接着剤は、上記断熱材を金属壁板の裏側に施工する際にも用いることができる。吹付施工又はこて塗り施工で行い、施工厚さは1~2mmが好ましい。
【実施例0028】
[実施例1]
図1に示すような耐火パネルを作製してその耐火性能を評価した。具体的には、鉄製の金属壁板1(厚さ1.6mm)の裏側に、吸熱剤及び無機接着剤を含む混合物をモルタルガンを用いて吹付け施工することで厚さ2mmの第1遮熱層2を設けた。この吸熱剤及び無機接着剤を含む混合物には、日本化学工業株式会社製の珪酸ナトリウム(JIS K1408、3号ソーダ)11質量%、住友化学株式会社製の水酸化アルミニウム(C-31)41質量%、坂井化学工業製の耐熱性無機接着剤(ベタック1200)を39質量%、及び水9質量%の混合物を用いた。
【0029】
上記の第1遮熱層2を吹き付けた面に、その接着性を利用して第1無機繊維質断熱材層3としてイソライト工業株式会社製の厚さ25mmのブランケットの形態のアルカリアースシリケート繊維質(イソウールBSSR1300ブランケット、かさ密度130kg/m3)を貼り付けた。この第1無機繊維質断熱材層3の非加熱面に、上記の第1遮熱層2に用いた吸熱剤及び無機接着剤を含む混合物と同等のものをモルタルガンを用いて吹付け施工することで厚さ4mmの第2遮熱層4を設けた。
【0030】
上記の第2遮熱層4を吹き付けた面に、その接着性を利用して第2無機繊維質断熱材層5としてイソライト工業株式会社製の厚さ12.5mmのブランケットの形態のアルカリアースシリケート繊維質(イソウールBSSR1300ブランケット、かさ密度130kg/m3)を貼り付けた。このようにして作製した実施例1の耐火パネルの耐火被覆材の総厚さは43.5mmであった。この実施例1の耐火パネルを40℃において恒量になるまで乾燥したときの耐火被覆材の含水率は1.5%であった。
【0031】
上記の実施例1の耐火パネルにおいて、耐火被覆材が施工されている面(非加熱面)の6ヶ所にJIS A1304の建築構造部分の耐火試験方法で示される固定熱電対を均等に配置した。そして、この実施例1の耐火パネルの金属壁板側をISO834の標準加熱曲線に沿って60分後に945℃になるように加熱した後、自然降温により3時間が経過するまで上記6ヶ所の温度を1分毎に記録した。
【0032】
その結果、上記6ヶ所の温度トレンドのそれぞれの最高値の平均が144℃、それら最高値の中の最大値が153℃であった。このときの外気温度は17℃であったので、ISO基準の最高値の平均157℃以下(140℃+外気温度)、それらの最大値197℃(180℃+外気温度)以下の遮熱性の条件を満たした。また、10秒を超えて継続する火炎の非加熱面側への噴出がなく、10秒を超えて継続する発炎もなく、火炎が通る亀裂等の損傷も生じなかった。これらの結果から、実施例1の耐火パネルは耐火性能の条件を満たすことが分かった。
【0033】
[実施例2]
第1無機繊維質断熱材層3に厚さ25mmに代えて厚さ22mmのものを用い、第2無機繊維質断熱材層5に厚さ12.5mmに代えて厚さ11mmのものを用いた以外は上記の実施例1と同様にして実施例2の耐火パネルを作製した。このようにして作製した実施例2の耐火パネルの耐火被覆材の総厚さは39mmであった。この実施例2の耐火パネルを40℃において恒量になるまで乾燥したときの耐火被覆材の含水率は1.8%であった。
【0034】
上記の実施例2の耐火パネルに対して、実施例1と同様に固定熱電対を6ヶ所に配置した後、実施例1と同様に加熱及び自然降温して温度を1分毎に記録した。その結果、上記6ヶ所の温度トレンドのそれぞれの最高値の平均が150℃、それら最高値の中の最大値が190℃であった。このときの外気温度は17℃であったので、ISO基準の最高値の平均157℃以下(140℃+外気温度)、それらの最大値197℃(180℃+外気温度)以下の遮熱性の条件を満たした。また、10秒を超えて継続する火炎の非加熱面側への噴出がなく、10秒を超えて継続する発炎もなく、火炎が通る亀裂等の損傷も生じなかった。これらの結果から、実施例2の耐火パネルは耐火性能の条件を満たすことが分かった。
【0035】
[比較例1]
第2遮熱層4として吹付け施工した吸熱剤及び無機接着剤を含む混合物の厚さを4mmに代えて3mmにした以外は上記の実施例2と同様にして比較例1の耐火パネルを作製した。このようにして作製した比較例1の耐火パネルの耐火被覆材の総厚さは38mmであった。この比較例1の耐火パネルを40℃において恒量になるまで乾燥したときの耐火被覆材の含水率は1.5%であった。
【0036】
上記の比較例1の耐火パネルに対して、実施例1と同様に固定熱電対を6ヶ所に配置した後、実施例1と同様に加熱及び自然降温して温度を1分毎に記録した。その結果、上記6ヶ所の温度トレンドのそれぞれの最高値の平均が160℃、それら最高値の中の最大値が198℃であった。このときの外気温度は17℃であったので、ISO基準の最高値の平均157℃以下(140℃+外気温度)、それらの最高値197℃(180℃+外気温度)以下の遮熱性の条件を満たさなかった。
【0037】
[比較例2]
第1無機繊維質断熱材層3に厚さ25mmに代えて厚さ41.5mmのものを用い、第2遮熱層4及び第2無機繊維質断熱材層5を設けなかった以外は上記の実施例2と同様にして比較例2の耐火パネルを作製した。このようにして作製した比較例2の耐火パネルの耐火被覆材の総厚さは43.5mmであった。この比較例2の耐火パネルを40℃において恒量になるまで乾燥したときの耐火被覆材の含水率は0.5%であった。
【0038】
上記の比較例2の耐火パネルに対して、実施例1と同様に固定熱電対を6ヶ所に配置した後、実施例1と同様に加熱及び自然降温して温度を1分毎に記録した。その結果、上記6ヶ所の温度トレンドのそれぞれの最高値の平均が230℃、それら最高値の中の最大値が240℃であった。このときの外気温度は17℃であったので、ISO基準の最高値の平均157℃以下(140℃+外気温度)、それらの最高値197℃(180℃+外気温度)以下の遮熱性の条件を満たさなかった。