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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113220
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】緩衝装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 5/02 20060101AFI20240815BHJP
   E05F 1/16 20060101ALI20240815BHJP
   E05F 3/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
E05F5/02 E
E05F1/16 B
E05F3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018034
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000137959
【氏名又は名称】株式会社ムラコシ精工
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100167863
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 恵
(72)【発明者】
【氏名】横山 辰朗
(57)【要約】
【課題】係合・捕捉動作時の衝突音をできる限り和らげることができる緩衝装置を提供する。
【解決手段】クローザー本体20は、収容体30と、収容体30に対して開閉方向に移動するスライダ40と、スライダ40に取り付けられ、受金具11を捕捉するラッチ80と、収容体30とスライダ40とを連結し、開閉方向に付勢する引込ばね50と、スライダ40に取り付けられ、スライダ40に対して開閉方向に移動可能に構成したダンパー60とを備え、ラッチ80とダンパー60との間に介在し、スライダ40に対して開閉方向に移動可能に構成され、ラッチ80およびダンパー60と常に接触する連結スライダ90を設けた。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋側または引戸側のいずれか一方に取り付けられた受金具と、前記建屋側または前記引戸側のいずれか他方に取り付けられ、所定の位置で前記受金具を捕捉して前記引戸を強制的に移動させるとともに、前記引戸の移動を緩衝するクローザー本体とを備えた緩衝装置であって、
前記クローザー本体は、
収容体と、
前記収容体に対して開閉方向に移動するスライダと、
前記スライダに取り付けられ、前記受金具を捕捉するラッチと、
前記収容体と前記スライダとを連結し、開閉方向に付勢する引込ばねと、
前記スライダに取り付けられ、前記スライダに対して開閉方向に移動可能に構成したダンパーと、を備え、
前記ラッチと前記ダンパーとの間に介在し、前記スライダに対して開閉方向に移動可能に構成され、前記ラッチおよび前記ダンパーと常に接触する連結スライダを設けたことを特徴とする緩衝装置。
【請求項2】
前記スライダには前記ダンパーを開閉方向に付勢するダンパー復帰用ばねが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の緩衝装置。
【請求項3】
前記ラッチを回動可能に構成し、前記連結スライダが前記ラッチと接触する押圧面を、前記ラッチの回動中心よりもずらした位置で接触させたことを特徴とする請求項2に記載の緩衝装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸などの開閉体を、閉じ際に強制的に緩やかに閉じさせることができる緩衝装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、引戸を勢いよく閉じたときに、この引戸が強く建屋側に突き当たるのを防止するための引戸クローザー(緩衝装置)が知られている。また、この引戸クローザーは、閉じ際で引戸を完全に閉じた位置まで強制的に移動させる(引き込む)ことで、引戸が半開きの状態のままで放置されるのを防止する機能も有している。
【0003】
この引戸クローザーは、建屋の開口の上側に取り付けられる受金具と、引戸側に取り付けられるクローザー本体とで構成されている。このクローザー本体は、受金具と係合(捕捉)するラッチと、ラッチを開閉方向に引き込むスライダを有し、引戸を開閉する際に所定の位置でラッチが受金具を捕捉して、スライダが引戸を引き込むようになっている。また、この引き込み動作は、クローザー本体の内部に設けられたダンパー(緩衝手段)と、付勢バネ(付勢手段)とが協働することによって行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/068760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、クローザー本体のラッチが受金具と係合(捕捉)する際に、ラッチが受金具と当接する音や、ラッチとスライダが当接するときの衝突音などが発生してしまう。
【0006】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、係合・捕捉動作時の衝突音をできる限り和らげることができる緩衝装置を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述課題を解決するため、本発明は、建屋側または引戸側のいずれか一方に取り付けられた受金具と、建屋側または引戸側のいずれか他方に取り付けられ、所定の位置で前記受金具を捕捉して前記引戸を強制的に移動させるとともに、前記引戸の移動を緩衝するクローザー本体とを備えた緩衝装置であって、前記クローザー本体は、収容体と、前記収容体に対して開閉方向に移動するスライダと、前記スライダに取り付けられ、前記受金具を捕捉するラッチと、前記収容体と前記スライダとを連結し、開閉方向に付勢する引込ばねと、前記スライダに取り付けられ、前記スライダに対して開閉方向に移動可能に構成したダンパーと、を備え、前記ラッチと前記ダンパーとの間に介在し、前記スライダに対して開閉方向に移動可能に構成され、前記ラッチおよび前記ダンパーと常に接触する連結スライダを設けたことを特徴とする。
【0008】
また、前記スライダには前記ダンパーを開閉方向に付勢するダンパー復帰用ばねが設けられている。
【0009】
さらに、前記ラッチを回動可能に構成し、前記連結スライダが前記ラッチと接触する押圧面を、前記ラッチの回動中心よりもずらした位置で接触させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る緩衝装置では、ラッチとダンパーとの間に介在し、スライダに対して開閉方向に移動可能に構成され、ラッチおよびダンパーと常に接触する連結スライダを設けているので、クローザー本体のラッチが受金具を捕捉する際に、連結スライダを介してその衝撃をダンパーが吸収する。そのため、この突き当たるときの衝突音を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る緩衝装置を用いた引戸装置を正面から見た図であって、(A)は戸開時、(B)は戸閉時の状態である。
図2図1(B)を斜め上側から見た斜視図である。
図3】(A)はクローザー本体を単体で斜め下側から見た斜視図、(B)は(A)から底蓋を取り外したものである。
図4図3(A)の分解斜視図である。
図5】連結スライダを単体で示す図であって、(B)は底面図、(A)は(B)を紙面上側から見た図、(C)は(B)を紙面下側から見た図である。
図6】連結スライダを単体で示す図であって、(A)は図5(B)を紙面右側から見た図、(B)は全体斜視図である。
図7】(A)(B)はラッチを単体で示す斜視図である。
図8】収容体を単体で示す底面図である。
図9】スライダを単体で示す底面図である。
図10図3(B)を上側から見た図であって、(A)は、捕捉前の状態(通常状態)、(B)は、捕捉した状態を示す。
図11図3(B)を上側から見た図であって、捕捉後に引き込んだ状態を示す。
図12】(A)は、図10(A)のX1の拡大図、(B)はX2の拡大図である。
図13】(A)は、図10(B)のY1の拡大図、(B)はY2の拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る引戸クローザーT(緩衝装置)について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、引戸装置1を正面から見た図であって、(A)は戸開時、(B)は戸閉時の状態である。また、図2は、図1(B)を斜め上側から見た斜視図である。なお、図1および図2において、説明を容易にするために、建屋側に取り付けられる上レールを省略して示してある。
【0013】
また、以下の説明で使用する「戸閉側(左側)」「戸開側(右側)」「上側」「下側」とは、図1および図2に示すように、引戸装置1を手前側から見た方向(利用者側から見た方向)をいい、「開閉方向」とは、引戸が移動する左右方向をいうものとする。
【0014】
引戸装置1は、図1に示すように、建屋の開口2の上部2aに配置され、開閉方向へ延びる上レール(図示せず)と、この上レールによって上側を支障され、上レールに沿って開閉方向へ移動する引戸3とで構成されている。なお、図1では、引戸3を1枚で構成しているが、2枚或いはそれ以上の枚数の引戸3を前後方向に並設するような一般的な引き違いの引戸装置であってもよい。
【0015】
上レールには、開閉方向の所定の位置に被捕捉装置10が取り付けられている。また、引戸3の上部3aには、被捕捉装置10の受金具11を捕捉して引き込むためのクローザー本体20が取り付けられている。引戸クローザーTは、これらの被捕捉装置10(受金具11)およびクローザー本体20によって構成されている。
【0016】
この引戸クローザーTは、引戸3を強い力で閉じようとしたときに、クローザー本体20が受金具11を捕捉して、緩やかに引戸3を閉じた状態に移動させる機能を有している。また、完全に閉じた位置まで引戸3を強制的に移動させるので、引戸3が半開きの状態のまま放置されるのを防止する機能も有している。なお、これらの機能・動作についての詳細は後述する。
【0017】
図3(A)はクローザー本体20を単体で斜め下側から見た斜視図、(B)は(A)から底蓋70を取り外したものである。また、図4は、図3(A)の分解斜視図である。なお、図3および図4で示すクローザー本体20は、図1および図2で示すクローザー本体20の上側と下側を逆にした状態で記載してある。
【0018】
さらに、図5は、連結スライダ90を単体で示す図であって、(B)は底面図、(A)は(B)を紙面上側から見た図、(C)は(B)を紙面下側から見た図、図6(A)は、図5(B)を紙面右側から見た図、(B)は全体斜視図である。また、図7(A)(B)はラッチ80を単体で示す斜視図、図8は、収容体30を単体で示す底面図、図9は、スライダ40を単体で示す底面図である。
【0019】
クローザー本体20は、図3(A)、(B)に示すように、開閉方向に長尺な略直方体形状をなしており、外側を構成する収容体30と、この収容体30に組み込まれるスライダ40、引込ばね50、ダンパー60、底蓋70、ラッチ80、および連結スライダ90とで構成されている。
【0020】
収容体30は、図2に示すように、前後方向(利用者から見て手前側から奥側に向かう方向)の厚みが引戸3の厚みよりも小さくなるように形成されている。この収容体30は、図4および図8に示すように、底部が開口する箱形に形成されており、開閉方向の両端部には、引戸3の上部3aに固定するための取付穴32、32が設けられている。
【0021】
収容体30の上面部31には、戸閉側の端部から戸開側に向かって直線状に延びる引込用スリット33が形成されている。また、上面部31の内側であって引込用スリット33の手前側には、略L字形状の第1誘導溝36a、第2誘導溝36bが形成されている。さらに、収容体30の戸閉側の端部には、詳細は後述する引込ばね50、ダンパー60を受けるためのダンパーロッド受部34、引込ばね受部35が設けられている。
【0022】
スライダ40は、図4および図9に示すように、開閉方向に長尺に形成されており、収容体30の箱形の内部に組み込まれて、収容体30に対して開閉方向にスライド移動できるようになっている。
【0023】
スライダ40の手前側には、戸閉側に位置し、上面部41から下側に延びる支持部42と、戸開側に位置し、スライダ40の戸開側を塞ぐ壁部43とが設けられている。この支持部42と壁部43の間には、詳細は後述するダンパー本体60aが収容される空間が形成される。また、スライダ40の上面部41には、ダンパー本体60aを開閉方向へスライドさせるための溝部46が開閉方向に連続して形成されている。
【0024】
また、スライダ40の上面部41には、溝部46よりも奥側であって戸閉側寄りの部分に案内溝47が設けられている。この案内溝47は、溝部46と同様に、開閉方向に連続して形成されており、詳細は後述する連結スライダ90の開閉方向への移動を案内する。
【0025】
この案内溝47のさらに奥側であって戸閉側には、引込ばね50を取り付けるためのばね受け部48が形成されている。また、支持部42の戸閉側には、ラッチ80を取り付けるためのラッチ回動穴44が形成されており、このラッチ回動穴44を中心にして、ラッチ80が自由に回動するようになっている。
【0026】
また、ラッチ回動穴44とばね受け部48との奥行き方向の間には、戸開側に向けて窪んだ凹部45が形成されている。この凹部45には、ラッチ80が受金具11を捕捉した状態で、受金具11がこの凹部45に入り込むようになる。
【0027】
引込ばね50は、図4に示すように、所謂コイルばねであって、引戸クローザーTの動作前の状態では、開閉方向に伸ばした状態で取り付けられる。また、引込ばね50の開閉方向の両側の端部51、51は、縮径したくびれた形状になっている。戸開側の端部51は、スライダ40のばね受け部48に取り付けられ、戸閉側の端部51は、収容体30の引込ばね受け部35に取り付けられている。
【0028】
ダンパー60は、図4に示すように、開閉方向に伸縮動作(緩衝動作)するように配置されており、戸閉側に位置するダンパー本体60aと、このダンパー本体60aから戸開側に延びるダンパーロッド60bとで構成されている。
【0029】
ダンパーロッド60bには、戸閉側から平ワッシャ61と、所謂コイルばねであるダンパー復帰用ばね62とがそれぞれ挿通されている。このダンパー復帰用ばね62は、ダンパー60がスライダ40に組み付けられた状態で、戸閉側の一端が平ワッシャ61を介してダンパー本体60aに支持され、戸開側の一端がスライダ40の壁部43に支持される。また、ダンパーロッド60bは、スライダ40の壁部43に形成された切欠き部43aからスライダ40の外側に延びるように取り付けられ、戸開側の端部が収容体30のダンパーロッド受部34によって受けられる。
【0030】
ラッチ80は、図7(A)(B)に示すように、基端部81c、延出部81b、係合部81aによって略コ字形状に形成されており、基端部81cと係合部81aとに挟まれるようにして捕捉空間81dが設けられる。この捕捉空間81dには、引戸クローザーTの動作時に受金具11が入り込み、ラッチ80と係合されるようになる。
【0031】
基端部81c側には、回動用突起82が上側に向かって突出している。この回動用突起82は、スライダ40のラッチ回動穴44に取り付けられる。また、基端部81c側には、ラッチ80が回動したとき(詳細には、ラッチが解除された状態のとき)の位置を規制する第1当接面84が形成されている。
【0032】
係合部81a側には、案内用突起83が上側に向かって突出するように形成されている。この案内用突起83は、収容体30の第1誘導溝36aおよび第2誘導溝36bに入り込み、これらの誘導溝36a、36bを移動するようになっている。また、係合部81aには、ラッチ80が回動したとき(詳細には、捕捉された状態のとき)の位置を規制する第2当接面85が形成されている。
【0033】
連結スライダ90は、図4図5(A)~(C)、図6(A)、(B)に示すように、ラッチ受け押圧部91aとダンパー受部91bとで構成され、図5(B)に示すように、下側から見て略T字状に形成されている。
【0034】
ラッチ受け押圧部91aは、引込ばね50とダンパー60との間に配置される。また、ラッチ受け押圧部91aの戸閉側の先端には、ラッチ80の第2当接面85の下側と接触する押圧面93が傾斜して形成されている。また、ラッチ受け押圧部91aの戸開側部分は、ダンパー受け部91bよりも戸開側に延在しており、この部分がスライダ40の案内溝47に入り込むように組み立てられる。これにより、連結スライダ90の開閉方向への移動が案内されるとともに、連結スライダ90の奥行き方向の位置が規制される。
【0035】
ダンパー受け部91bは、ラッチ受け押圧部91aから手前側に向けて突出しており、そのほぼ中央にダンパー本体取付凹部92が形成されている。このダンパー本体取付凹部92には、ダンパー本体60aの戸閉側の端部が挿入される。
【0036】
底蓋70は、図4に示すように、収容体30の内部にスライダ40、引込ばね50、ダンパー60、ラッチ80、連結スライダ90がそれぞれ組み付けられた状態で、収容体30の下側の開口部を覆うようにして蓋がされる。
【0037】
次に、本発明の実施の形態に係る引戸クローザーTの動作・作用について説明する。
図10は、図3(B)を上側から見た図であって、(A)は、受金具11の捕捉前の状態(通常状態)、(B)は、受金具11を捕捉した状態、図11は、捕捉後に受金具11を引き込んだ状態を示す。また、図12(A)は、図10(A)のX1の拡大図、(B)はX2の拡大図、図13は、(A)は、図10(B)のY1の拡大図、(B)はY2の拡大図である。
【0038】
受金具11の捕捉前の状態(通常状態)では、図10(A)、図12(A)(B)に示すように、クローザー本体20のスライダ40およびラッチ80は、収容体30の戸閉側にある。また、ラッチ80は、手前側に回動した状態にある。このとき、ラッチ80の案内用突起83は、収容体30の第1誘導溝36a内に位置し、ラッチ80が戸開側に移動しないようになっている。また、ラッチ80の第1当接面84は、収容体30の内側面に接触することによって回動位置が規制される。
【0039】
また、引込ばね50は、伸張された状態にある。さらに、ダンパー復帰用ばね62は、ダンパー本体60aを戸閉側へと付勢している。ダンパー本体60aはスライダ40の溝部46に沿ってスライダ40に対して開閉方向に移動可能であり、ダンパー本体60aの戸閉側の端部を受けている連結スライダ90も同様に戸閉側へと付勢されている。そのため、連結スライダ90の押圧面93は、ラッチ80の第2当接面85の奥側部分(回動用突起82よりも奥側にずらした位置)と常に接触した状態で、ラッチ80を図12(A)の紙面時計回りに回動させようとしている。
【0040】
また、捕捉前の状態では、図12(A)に示すように、受金具11はラッチ80よりも戸閉側にある。
【0041】
この状態から引戸3を戸閉側に移動させると、図10(B)、図13(A)(B)に示すように、受金具11が収容体30の引込用スリット33から収容体30の内部へと入り込み、ラッチ80の基端部81cに突き当たる。この捕捉した状態では、受金具11がラッチ80を奥側へと回動させ、受金具11が捕捉空間81d内に捕捉される。このとき、ラッチ80の案内用突起83は、収容体30の第1誘導溝36aから第2誘導溝36bに移動し、ラッチ80が戸開側に移動可能になる。また、ラッチ80の第2当接面85は、収容体30の支持部42に接触することによって回動位置が規制される。
【0042】
また、ラッチ80が回動したことによって連結スライダ90が押圧されて案内溝47に沿って戸開側へと移動し、ダンパー本体60aも戸開側へ押圧される。これにより、ダンパー復帰用ばね62は、ダンパー本体60aによって圧縮される。すなわち、ダンパー本体60aとラッチ80は、連結スライダ90を介して常に接触した状態にあるため、従来技術のようにラッチ80とダンパー60との間に介在していたラッチの移動空間(回動等の動作に必要な空間)がなくなり、ラッチ80が移動してダンパー60(或いはダンパー60を組み付けたスライダ40)に突き当たる衝突音の発生を抑止することができる。
【0043】
また、ダンパー復帰用ばね62は、ラッチ80の回動の勢いを緩衝することで、受金具11とラッチ80とが突き当たるときにクローザー本体20の内部で生じる衝撃を緩和させるようになる。
【0044】
受金具11がラッチ80に捕捉されると、図11に示すように、引込ばね50が収縮し、収容体30に対してスライダ40が戸開側へと引き込まれる。また、ラッチ80の案内用突起83は、収容体30の第2誘導溝36bに沿って戸開側へと移動する。さらに、ダンパー60のダンパーロッド60bは、スライダ40の移動に伴ってダンパー本体60a内に押し込まれることで、スライダ40の移動を緩衝する。これにより、引戸3を勢いよく閉じたときでも、ダンパー60の作用で引戸3が緩やかに閉じるようになる。また、引込ばね50の作用で、閉じ際で半開きの引戸3を強制的に閉じた位置まで移動させるようになる。
【0045】
また、引戸3を開くときには、上述と逆の動作によって引き込まれた状態が解除され、連結スライダ90がラッチ80を戸閉側に押圧することでラッチ80が回動して捕捉が解除される。
【0046】
本発明の実施の形態に係る引戸クローザーTによれば、クローザー本体20は、収容体30と、収容体30に対して開閉方向に移動するスライダ40と、スライダ40に取り付けられ、受金具11を捕捉するラッチ80と、収容体30とスライダ40とを連結し、開閉方向に付勢する引込ばね50と、スライダ40に取り付けられ、スライダ40に対して開閉方向に移動可能に構成したダンパー60とを備えているので、ラッチ80の移動動作に追従してダンパー60を移動させることができる。そのため、ラッチ80とダンパー60との間に介在する連結スライダ90が、ラッチ80およびダンパー60と常に接触するように構成することができる。これにより、クローザー本体20のラッチ80が受金具11を捕捉する際に、連結スライダ90を介してその衝撃をダンパー60が吸収する。そのため、この突き当たるときの衝突音を防止する。
【0047】
また、スライダ40にはダンパー60を開閉方向に付勢するダンパー復帰用ばね62が設けられているので、クローザー本体20のラッチ80が受金具11を捕捉する際に、ラッチ80と受金具11とが突き当たるときの衝撃をダンパー60およびダンパー復帰用ばね62が緩衝する。その結果、ラッチ80が受金具11と当接するときの衝突音を和らげることができる。
【0048】
さらに、ラッチ80を回動可能に構成し、連結スライダ90がラッチ80と接触する押圧面93を、ラッチ80の回動中心(ラッチ回動穴44)よりもずらした位置で接触させるようにしているので、連結スライダ90がラッチ80を押圧する力でラッチ80を回動させることができる。そのため、ラッチ80の動作をより簡単な構造で行うことができる。特に、ダンパー復帰用ばね62と連結スライダ90があることでラッチの回動(戸開方向)に付勢力が作用する。そのため、ラッチ80が誤作動で通常状態(図10(A)の状態)から外れて勝手に引き込まれることが発生しずらくなる。ラッチ80と受金具11の衝突緩衝時、ダンパ60の動きを連結スライダ90があることで直線的に動かすことができるので、ダンパ60に対する負荷が減るため、耐久性が向上する。
【0049】
以上、本発明の実施の形態に係る引戸クローザーについて述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0050】
例えば、本実施の形態では、引戸3を強い力で閉じようとしたときについて説明したが、開く場合も同様である。詳細には、本実施形態と左右を逆にして引戸クローザーTを構成することで、引戸3を強い力で開いたときに、クローザー本体20が受金具11を捕捉して、緩やかに引戸3を開いた状態に移動させるようにすることもできる。
【0051】
また、本実施の形態では、引戸装置1に用いる引戸クローザーTについて説明したが、引戸装置1以外であっても、例えば、キッチンに使用される引出のような装置にも緩衝装置として適用することができる。
【0052】
さらに、本実施の形態では、ラッチ80が受金具11を捕捉するときにラッチ80が回動するように記載したが、これに限定されない。例えば、ラッチが上下または左右に直線的に移動して受金具11を捕捉するような場合でもクローザー本体を構成することもできる。
【0053】
また、本実施の形態の引戸クローザーTでは、建屋側の開口上部2aに受金具11を設け、引戸3側の上部3aにクローザー本体20を設けているが、逆に設置しても構わない。すなわち、建屋側の開口上部2aにクローザー本体20を設け、引戸3側の上部3aに受金具11を設けるように構成することもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 引戸装置
2 開口部
2a 開口上部
3 引戸(開閉体)
3a 引戸上部
10 被捕捉装置
11 受金具
20 クローザー本体
30 収容体
31 上面部
32 取付穴
33 引込用スリット
34 ダンパーロッド受部
35 引込ばね受部
36a 第1誘導溝
36b 第2誘導溝
40 スライダ
41 上面部
42 支持部
43 壁部
43a 切欠き部
44 ラッチ回動穴(回動中心)
45 凹部
46 溝部
47 案内溝
48 ばね受け部
50 引込ばね
51 引込ばねの端部
60 ダンパー
60a ダンパー本体
60b ダンパーロッド
61 平ワッシャ
62 ダンパー復帰用ばね
70 底蓋
80 ラッチ
81a 係合部
81b 延出部
81c 基端部
81d 捕捉空間
82 回動用突起
83 案内用突起
84 第1当接面
85 第2当接面
90 連結スライダ
91a ラッチ受け押圧部
91b ダンパー受部
92 ダンパー本体取付凹部
93 押圧面
T 引戸クローザー(緩衝装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13