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  • 特開-飛沫防止器具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113230
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】飛沫防止器具
(51)【国際特許分類】
   A61C 17/06 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
A61C17/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018058
(22)【出願日】2023-02-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000200677
【氏名又は名称】泉工医科工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100161090
【弁理士】
【氏名又は名称】小田原 敬一
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】福原 隆宏
(57)【要約】
【課題】飛沫防止器具の安定した保持が可能となり、飛沫の付着及び飛散を防止しながら処置をする。
【解決手段】飛沫防止器具100は、組み立てられた状態において立体形状を構成するシート状の飛沫防止器具であって、飛沫を防止するための遮蔽部11を備え、遮蔽部は、湾曲縁部12と、湾曲縁部と接続されている第1辺部15及び第2辺部16と、第1辺部及び第2辺部に接続されており且つ湾曲縁部側に凹んでいる凹部17とを有しており、遮蔽部には、手によって保持するための保持部13が設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み立てられた状態において立体形状を構成するシート状の飛沫防止器具であって、
飛沫を防止するための遮蔽部を備え、
前記遮蔽部は、湾曲縁部と、前記湾曲縁部と接続されている第1辺部及び第2辺部と、前記第1辺部及び前記第2辺部に接続されており且つ前記湾曲縁部側に凹んでいる凹部とを有しており、
前記遮蔽部には、手によって保持するための保持部が設けられている、飛沫防止器具。
【請求項2】
前記保持部は、前記第1辺部から前記湾曲縁部とは反対側に突出し、且つ指穴が形成されている突出部である、請求項1に記載の飛沫防止器具。
【請求項3】
前記突出部が突出している前記第1辺部の端から前記凹部までの長さは、前記凹部から最も離れた前記湾曲縁部の末端から前記凹部までの長さよりも短い、請求項2に記載の飛沫防止器具。
【請求項4】
前記湾曲縁部の長さと、前記第1辺部及び前記第2辺部の長さとは、前記組み立てた状態において、前記凹部が形成する挿入開口側から見た場合に、前記湾曲縁部が形成する開口の内側に前記挿入開口が位置するように設定されている、請求項1に記載の飛沫防止器具。
【請求項5】
前記突出部から前記凹部までの長さは、前記突出部から前記第1辺部の端までの長さよりも長い、請求項2に記載の飛沫防止器具。
【請求項6】
前記第1辺部と前記湾曲縁部との間に、スリット部が形成されており、
前記遮蔽部は、前記スリット部に挿入される係合部を有し、
前記係合部は、前記第2辺部から前記湾曲縁部とは反対側に突出している、請求項1から5のいずれか一項に記載の飛沫防止器具。
【請求項7】
前記係合部には、前記スリット部と係合する返し部が形成されている、請求項6に記載の飛沫防止器具。
【請求項8】
前記湾曲縁部の長さと、前記第1辺部及び前記第2辺部の長さとは、前記組み立てた状態において、前記凹部が形成する挿入開口から前記湾曲縁部が形成する開口までの高さが10cmを超えないように設定されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の飛沫防止器具。
【請求項9】
前記凹部から最も離れた前記湾曲縁部の末端から前記凹部までの長さが10cmを超えている、請求項8に記載の飛沫防止器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛沫を防止するための医療用の飛沫防止器具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、患者の口部領域を覆うのに適用され、遮蔽シールド本体を含む口部医療補助具が記載されている。この遮蔽シールド本体は、少なくとも一部分が透明状を呈している。また、内部空間は、吸引接続部及び操作部を含んでいる。そして、吸引接続部と操作部は、互いに相対するように設置されている。さらに、操作部は、少なくとも1つの開口を含んでいる。また、吸引接続部は、遮蔽シールド本体が患者の口部領域を覆った時に、医療用の吸引器に接続するように設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3228965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鼻腔吸引又は気管内吸引等の処置をする場合には、患者が咳き込んだ際の分泌物(例えば痰等)の飛沫が、医療従事者に付着すること又は患者の周囲へ飛散することを防止する必要がある。また、細胞診をする場合にも、細胞の飛沫が医療従事者に付着すること又は周囲に飛散することを防止する必要がある。
【0005】
特許文献1に記載の口部医療補助具においては、吸引接続部にパイプフィッティングを取り付ける必要がある。そのため、医療従事者は、遮蔽シールド本体から離れた位置に位置するパイプフィッティングを手で保持して処置しなければならない。これにより、処置中の安定した保持が困難となってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様に係る飛沫防止器具は、組み立てられた状態において立体形状を構成するシート状の飛沫防止器具であって、飛沫を防止するための遮蔽部を備え、前記遮蔽部は、湾曲縁部と、前記湾曲縁部と接続されている第1辺部及び第2辺部と、前記第1辺部及び前記第2辺部に接続されており且つ前記湾曲縁部側に凹んでいる凹部とを有しており、前記遮蔽部には、手によって保持するための保持部が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
これにより、医療従事者は、飛沫防止器具の遮蔽部を手によって保持できる。そのため、飛沫防止器具の安定した保持が可能となり、医療従事者は、飛沫の付着及び飛散を防止しながら処置をすることができる。
【0008】
本開示のさらなる特徴は、添付図面を参照して例示的に示した以下の実施例の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】組み立てられた状態の飛沫防止器具の概略斜視図。
図2】組み立て前の状態の第1実施形態に係る飛沫防止器具の概略平面図。
図3】組み立てられた状態の飛沫防止器具の概略側面図。
図4】組み立て前の状態の第2実施形態に係る飛沫防止器具の概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態において説明する寸法、材料、形状及び構成要素の相対的な位置は任意に設定でき、本発明が適用される装置又は方法の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施形態に限定されない。
【0011】
[第1実施形態]
図1から図3を参照して、第1実施形態に係る飛沫防止器具100について説明する。なお、図1は、組み立てられた状態の飛沫防止器具100の概略斜視図である。また、図2は、組み立て前の状態の飛沫防止器具100の概略平面図である。また、図3は、組み立てられた状態の飛沫防止器具100の概略側面図である。
【0012】
飛沫防止器具100は、組み立てられた状態において、略円錐状の立体形状を有している。また、飛沫防止器具100を組み立てることによって、略円状の挿入開口21が形成される。そして、飛沫防止器具100は、患者が咳をした場合等に、痰等の分泌物の飛沫を防止するための遮蔽部11を備えている。この遮蔽部11によって、飛沫防止器具100の外側に飛沫が漏洩しないため、飛沫の飛散又は医療従事者への付着を防止できる。
【0013】
また、遮蔽部11は、挿入開口21から湾曲縁部12まで伸びている。この湾曲縁部12は、飛沫防止器具100の周縁部であり、使用時に患者側に位置する。そして、飛沫防止器具100を組み立てると、湾曲縁部12によって略楕円状の開口22(図3)が形成される。この開口22によって、患者の処置部分(例えば、気管切開部分)が覆われる。そのため、分泌物の飛沫は、遮蔽部11の内側に付着して、飛沫防止器具100の外側に漏洩しない。
【0014】
さらに、遮蔽部11には、手によって保持するための保持部の一例として、指穴14が形成されている突出部13が設けられている。使用時に医療従事者は、手の指(例えば、中指又は薬指)を突出部13の指穴14に挿入して、飛沫防止器具100を手に装着する。これにより、医療従事者は、指穴14に挿入した指と、他の指及び/又は手の平とで遮蔽部11を保持できる。このように指をかける指穴14があるので、飛沫防止器具100の安定した保持が可能となる。さらに、指穴14があるので、指を挿入した状態で手によって遮蔽部11に力を加えることによって遮蔽部11を変形させることができる。そのため、突出部13を基点として湾曲縁部12が形成する開口22の大きさを可変にできる。
【0015】
例えば、医療従事者は、飛沫防止器具100の遮蔽部11を手で保持して処置を行う。このとき、挿入開口21が医療従事者側(すなわち上側)を向き、湾曲縁部12が患者側(すなわち下側)を向く。具体的に、医療従事者は、挿入開口21に吸引器具を挿入する。そして、医療従事者は、吸引器具によって患者の分泌物を吸引する。一例として、挿入開口21には、病棟における診療若しくは治療の際又は在宅における看護の際、気管切開チューブを介して気管内の痰等を気管内吸引する処置を行う場合に、吸引器具(例えば、吸引カテーテル等)が挿入される。
【0016】
代替的に、耳鼻咽喉科において鼻腔吸引する処置を行う場合に、飛沫防止器具100が使用されてもよい。さらに、コロナウィルス等の検体を採取する処置を行う場合に、飛沫防止器具100が使用されてもよい。検体を採取する場合、挿入開口21には、採取器具が挿入される。
【0017】
また、組み立てられた状態において立体形状を構成するシート状の飛沫防止器具100は、丸めることによって略円錐状の立体形状を構成する。そのために、一例として、飛沫防止器具100は、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の可撓性を有する透明樹脂によって形成されている。代替的に、処置部分を視認できる範囲で、飛沫防止器具100が有色の樹脂によって形成されていてもよい。
【0018】
図2に示すように、飛沫防止器具100は、飛沫を防止するための遮蔽部11を備えている。そして、遮蔽部11は、湾曲縁部12と、湾曲縁部12と接続されている第1辺部15及び第2辺部16とを備えている。ここで、「接続されている」とは、構成部分が一体的に連続していることを意味しており、接続されている構成部分の一部に、又は構成部分同士の間に凹凸が存在していてもよい。
【0019】
また、図2に示すように、遮蔽部11は、略半円状の形状を有している。そして、湾曲縁部12の両端の一方に第1辺部15が接続されており、湾曲縁部12の両端の他方に第2辺部16が接続されている。なお、図2においては、第1辺部15及び第2辺部16と接続されている湾曲縁部12の両端は、それぞれ直線状の辺を構成している。ただし、湾曲縁部12の両端は、湾曲していてもよい。
【0020】
第1辺部15は、湾曲縁部12の両端の一方から第2辺部16に向かって延びている。また、第2辺部16は、湾曲縁部12の両端の他方から第1辺部15に向かって延びている。そして、第1辺部15の延在方向は、第2辺部16の延在方向に対してわずかに傾いている。一例として、第1辺部15の第2辺部16に対する傾きは1度以上且つ5度以下である。なお、図2の例では、第1辺部15の第2辺部16に対する傾きが2度である。
【0021】
さらに、遮蔽部11は、第1辺部15及び第2辺部16に接続されており且つ湾曲縁部12側に凹んでいる凹部17を有している。この凹部17は、第1辺部15と、第2辺部16との間に形成されている。そして、凹部17は、組み立てた状態において、前述した挿入開口21を形成する。なお、挿入開口21と、当該挿入開口21に挿入される器具との間には、隙間が生じている。この場合であっても、挿入開口21に挿入された器具の先端を介して吸引又は採取の処置を行うことができる。
【0022】
また、図2においては、凹部17が略半円上の切り欠きである。しかし、凹部17は、二つ以上の直線によって形成されていてもよい。例えば、二つの直線によって形成されている場合、凹部17は、略V字状の切り欠きとなる。また、三つの直線によって形成されている場合、凹部17は、略コの字状の切り欠きとなる。
【0023】
一例として、このような飛沫防止器具100は、樹脂材料を打ち抜き加工することによって製造できる。また、遮蔽部11は、組み立てた状態で自立可能な程度の硬さを有しており、一例として0.3mm程度の厚さを有している。
【0024】
また、遮蔽部11には、手によって保持するための保持部が設けられている。図2の例では、保持部の一例として、突出部13が遮蔽部11に設けられている。この突出部13は、第1辺部15から湾曲縁部12とは反対側に突出している。そして、突出部13には、指穴14が形成されている。このように指をかける部分があるので、飛沫防止器具100の安定した保持が可能となる。なお、図2の指穴14は円形であるが、多角形(例えば矩形又は三角形)であってもよい。
【0025】
さらに、突出部13が突出している第1辺部15の端15Eから凹部17までの長さL1は、凹部17から最も離れた湾曲縁部12の末端12Eから凹部17までの長さL2よりも短い。図2の例では、第1辺部15の端15Eから凹部17の端までの長さL1は、80mmである。そして、湾曲縁部12の末端12Eから凹部17までの長さL2は、108mmである。なお、第2辺部16の端16Eから凹部17までの長さL7は、80mmである。
【0026】
長さL1が長さL2よりも短いため、図3に示すように、組み立てた状態においては、挿入開口21の中心から湾曲縁部12の突出部13側の端までの長さL3がより短くなる。すなわち、長さL3は、挿入開口21の中心から湾曲縁部12の突出部13とは反対側の端までの長さL4よりも短い。これにより、医療従事者は、飛沫防止器具100のより短い部分が患者の目の近くに位置するように、突出部13に指を挿入して遮蔽部11を保持できる。
【0027】
言い換えると、医療従事者は、飛沫防止器具100のより長い部分が患者の目から遠くに位置するように遮蔽部11を保持できる。そのため、患者が視認する部分が小さくなり、患者に与える圧迫感又は恐怖感を低減できる。特に、飛沫防止器具100によって口部を覆いながら処置をする場合に、より短い部分を患者の目と対向する位置に位置付け、より長い部分を患者のあご側に位置付けることにより、患者に与える圧迫感又は恐怖感を低減できる。また、首の処置部分(例えば気管切開部分)を覆いながら処置をする際に、あごと処置部分との間の距離が短い場合であっても、飛沫防止器具100によって処置部分を覆うことができる。
【0028】
なお、図3においては、説明の便宜上、突出部13が遮蔽部11から延びる状態を示している。しかし、図1に示すように、突出部13は、組み立てられた状態において遮蔽部11の丸みに沿う方向へ延びている。さらに、図3においては、スリット部18を介して飛沫防止器具100の内部空間に挿入されている係合部19を、破線によって仮想的に示している。
【0029】
また、湾曲縁部12の長さと、第1辺部15及び第2辺部16の長さとは、組み立てた状態において、凹部17が形成する挿入開口21側から見た場合に、湾曲縁部12が形成する開口22の内側に挿入開口21が位置するように設定されている。すなわち、組み立てた状態において、挿入開口21側から平面視した場合、挿入開口21が開口22の内側に位置している。
【0030】
そのため、図3に示すように、挿入開口21の全体は、湾曲縁部12の端よりも内側に位置している。言い換えると、開口22を底面とする仮想的な円筒状の空間であって、図3の上下方向UPにおいて開口22から垂直に延びる円筒状の空間の外側には、挿入開口21が位置していない。
【0031】
これにより、挿入開口21が患者の目に近づく方向に延びることを防止できる。そのため、患者が挿入開口21を視認し難くなり、患者に与える圧迫感又は恐怖感を低減できる。特に、飛沫防止器具100によって口部を覆いながら処置をする場合に、患者に与える圧迫感又は恐怖感をより低減できる。また、首の処置部分(例えば気管切開部分)を覆いながら処置をする際に、あごと処置部分との間の距離が短い場合であっても、挿入開口21があごに接触することを防止できる。
【0032】
図2に戻り、突出部13から凹部17までの長さL5は、突出部13から第1辺部15の端15Eまでの長さL6よりも長い。一例として、突出部13の端から凹部17の端までの長さL5は、36mmである。また、突出部13の端から第1辺部15の端15Eまでの長さL6は14mmである。このように、突出部13は、凹部17よりも第1辺部15の端15Eに近い位置に設けられる。
【0033】
これにより、組み立てた状態において、突出部13は、挿入開口21よりも開口22に近い位置に設けられる。そのため、遮蔽部11の下部を保持できるので、より安定した保持が可能となる。また、突出部13によって、医療従事者は、飛沫防止器具100の上下の向きを判別しやすくなる。すなわち、突出部13に近い側が使用時に下方向に向くことを、医療従事者が視覚的に判別できる。
【0034】
また、第1辺部15と湾曲縁部12との間に、スリット部18が形成されている。そして、遮蔽部11は、スリット部18に挿入される係合部19を有している。この係合部19は、第2辺部16から湾曲縁部12とは反対側に突出している。また、スリット部18は、第1辺部15と略平行に延びており、係合部19の幅よりも長く形成されている切り込みである。そして、組み立てる際には、係合部19がスリット部18に挿入される。
【0035】
また、係合部19には、スリット部18と係合する返し部19Bが形成されている。図2の例では、返し部19Bとして、係合部19に略V字状の切り込みが形成されている。この返し部19Bの一部(例えば頂点部分)は、組み立てた際に、スリット部18から係合部19の挿入方向とは反対側に突出する。これにより、返し部19Bがスリット部18に引っかかって、スリット部18から係合部19が離脱することを防止できる。代替的に、返し部19Bは、他の形状(例えばU字形状)を有していてもよい。
【0036】
なお、組み立て時の係合手段として、係合部19及びスリット部18に代えて、スナップボタンを用いてもよい。または、フィルム状の接着部材によって第1辺部15の近傍に第2辺部16を接着してもよい。
【0037】
また、図3に示す組み立てた状態の飛沫防止器具100の高さH1は、10cmを超えない。より具体的には、開口22が形成する仮想的な楕円から挿入開口21の中心に向かって延ばした垂線の長さが、10cmを超えない。そのために、湾曲縁部12の長さと、第1辺部15及び第2辺部16の長さとは、組み立てた状態において、凹部17が形成する挿入開口21から湾曲縁部12が形成する開口22までの高さが10cmを超えないように設定されている。なお、挿入開口21が傾斜している場合、又は挿入開口21の一部が凹んでいる場合には、最も高い部分での高さH1が、10cmを超えないように設定されている。
【0038】
飛沫防止器具100の高さH1が10cmを超えると、挿入開口21から開口22までの距離が長くなる。そのため、器具(例えば吸引器具)を挿入開口21から挿入しても処置部分に届かないので処置が困難になってしまう。この点、飛沫防止器具100の高さH1が10cmを超えなければ、医療従事者による処置が制限を受けることを抑制できる。また、高さH1が10cmを超えないので、飛沫防止器具100を小型にでき、手で保持しやすくなる。
【0039】
ただし、挿入開口21に挿入される器具が十分な長さを有する場合には、飛沫防止器具100の高さH1が10cmを超えてもよい。なお、凹部17から最も離れた湾曲縁部12の末端12Eから凹部17までの長さが10cmを超えている。そのため、飛沫防止器具100を小型にできるとともに、飛沫を防止するために十分な大きさを確保できる。
【0040】
以上説明した第1実施形態に係る飛沫防止器具100によれば、医療従事者は、飛沫防止器具100の遮蔽部11を手によって保持できる。そのため、飛沫防止器具100の安定した保持が可能となり、飛沫の付着及び飛散を防止しながら処置をすることができる。特に、指穴14が形成されている突出部13により、医療従事者は、指穴14に挿入した指と、他の指及び/又は手の平とで遮蔽部11を保持できる。このように指をかける指穴14があるので、飛沫防止器具100のより安定した保持が可能となる。
【0041】
[第2実施形態]
図4を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る飛沫防止器具200は、保持部の構成が第1実施形態と異なる。なお、図4は、組み立て前の状態の飛沫防止器具200の概略平面図である。また、第2実施形態の説明においては、第1実施形態との相違点について説明し、既に説明した内容の説明は省略する。
【0042】
飛沫防止器具200は、組み立てられた状態において立体形状(不図示)を構成する。具体的には、シート状の飛沫防止器具200を丸めることによって、略円錐状の立体形状が構成される。また、飛沫防止器具200は、飛沫を防止するための遮蔽部211を備えている。そして、遮蔽部211は、湾曲縁部212と、湾曲縁部212と接続されている第1辺部215及び第2辺部216とを備えている。
【0043】
図4に示すように、遮蔽部211は略半円状の形状を有している。そして、湾曲縁部212の両端の一方に第1辺部215が接続されており、湾曲縁部212の両端の他方に第2辺部216が接続されている。さらに、遮蔽部211は、第1辺部215及び第2辺部216に接続されており且つ湾曲縁部212側に凹んでいる凹部217を有している。この凹部217は、第1辺部215と、第2辺部216との間に形成されている。そして、凹部217は、組み立てた状態において挿入開口21を形成する。
【0044】
また、第1辺部215と湾曲縁部212との間に、スリット部218が形成されている。そして、遮蔽部211は、スリット部218に挿入される係合部219を有している。この係合部219は、第2辺部216から湾曲縁部212とは反対側に突出している。また、スリット部218は、第1辺部215と略平行に延びており、係合部219の幅よりも長く形成されている切り込みである。そして、組み立てる際には、係合部219がスリット部218に挿入される。
【0045】
また、係合部219には、スリット部218と係合する返し部219Bが形成されている。組み立てた際に、この返し部219Bの一部(例えば頂点部分)は、スリット部218から係合部219の挿入方向とは反対側に突出する。これにより、返し部219Bがスリット部218に引っかかって、スリット部218から係合部219が離脱することを防止できる。
【0046】
第2実施形態において、遮蔽部211には、手によって保持するための保持部の一例として、保持領域HRが設定されている部分が設けられている。使用時に医療従事者は、手の指及び/又は手の平を保持領域HRに当接させて、遮蔽部211を保持できる。また、保持領域HRは、スリット部218の近傍と係合部219の近傍に設けられている。なお、説明の便宜上、図4においては、保持領域HRを破線で示しており、遮蔽部211には保持領域HRが描かれていない。しかし、保持位置を示すように、保持領域HRが遮蔽部211に実線によって描かれていてもよい。
【0047】
第2実施形態に係る飛沫防止器具200は、第1実施形態に係る飛沫防止器具100よりも小さい。一例として、湾曲縁部212の末端212Eから凹部217までの長さは、100mmである。例えば、この飛沫防止器具200は、細胞診をする場合に用いられ、細胞の飛沫が医療従事者に付着すること又は周囲に飛散することを防止する。一例として、飛沫防止器具200は、スライドガラスを覆うように配置される。そして、凹部217が形成する挿入開口21からシリンジが挿入され、患者から採取された細胞をスライドガラスに注入する。この時に、遮蔽部211は、細胞の飛沫を防止する。
【0048】
以上説明した第2実施形態に係る飛沫防止器具200によれば、医療従事者は、飛沫防止器具200の遮蔽部211を手によって保持できる。そのため、飛沫防止器具200の安定した保持が可能となり、飛沫の付着及び飛散を防止しながら処置をすることができる。
【0049】
以上、各実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、各実施形態及び各変形形態、並びに各実施形態又は各変形形態に含まれる技術的手段は、本発明に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【0050】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0051】
(付記1)
組み立てられた状態において立体形状を構成するシート状の飛沫防止器具であって、
飛沫を防止するための遮蔽部を備え、
前記遮蔽部は、湾曲縁部と、前記湾曲縁部と接続されている第1辺部及び第2辺部と、前記第1辺部及び前記第2辺部に接続されており且つ前記湾曲縁部側に凹んでいる凹部とを有しており、
前記遮蔽部には、手によって保持するための保持部が設けられている、飛沫防止器具。
【0052】
(付記2)
前記保持部は、前記第1辺部から前記湾曲縁部とは反対側に突出し、且つ指穴が形成されている突出部である、付記1に記載の飛沫防止器具。
【0053】
(付記3)
前記突出部が突出している前記第1辺部の端から前記凹部までの長さは、前記凹部から最も離れた前記湾曲縁部の末端から前記凹部までの長さよりも短い、付記2に記載の飛沫防止器具。
【0054】
(付記4)
前記湾曲縁部の長さと、前記第1辺部及び前記第2辺部の長さとは、前記組み立てた状態において、前記凹部が形成する挿入開口側から見た場合に、前記湾曲縁部が形成する開口の内側に前記挿入開口が位置するように設定されている、付記1から3のいずれか一項に記載の飛沫防止器具。
【0055】
(付記5)
前記突出部から前記凹部までの長さは、前記突出部から前記第1辺部の端までの長さよりも長い、付記2又は3に記載の飛沫防止器具。
【0056】
(付記6)
前記第1辺部と前記湾曲縁部との間に、スリット部が形成されており、
前記遮蔽部は、前記スリット部に挿入される係合部を有し、
前記係合部は、前記第2辺部から前記湾曲縁部とは反対側に突出している、付記1から5のいずれか一項に記載の飛沫防止器具。
【0057】
(付記7)
前記係合部には、前記スリット部と係合する返し部が形成されている、付記6に記載の飛沫防止器具。
【0058】
(付記8)
前記湾曲縁部の長さと、前記第1辺部及び前記第2辺部の長さとは、前記組み立てた状態において、前記凹部が形成する挿入開口から前記湾曲縁部が形成する開口までの高さが10cmを超えないように設定されている、付記1から7のいずれか一項に記載の飛沫防止器具。
【0059】
(付記9)
前記凹部から最も離れた前記湾曲縁部の末端から前記凹部までの長さが10cmを超えている、付記8に記載の飛沫防止器具。
【符号の説明】
【0060】
11 :遮蔽部
12 :湾曲縁部
12E :末端
13 :突出部(保持部)
14 :指穴
15 :第1辺部
15E :端
16 :第2辺部
17 :凹部
18 :スリット部
19 :係合部
19B :返し部
21 :挿入開口
22 :開口
100 :飛沫防止器具
200 :飛沫防止器具
211 :遮蔽部
212 :湾曲縁部
212E :末端
215 :第1辺部
216 :第2辺部
217 :凹部
218 :スリット部
219 :係合部
219B :返し部
H1 :高さ
HR :保持領域(保持部)
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-04-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み立てられた状態において立体形状を構成するシート状の飛沫防止器具であって、
飛沫を防止するための遮蔽部を備え、
前記遮蔽部は、湾曲縁部と、前記湾曲縁部と接続されている第1辺部及び第2辺部と、前記第1辺部及び前記第2辺部に接続されており且つ前記湾曲縁部側に凹んでいる凹部とを有しており、
前記遮蔽部には、手によって保持するための保持部が設けられており
前記保持部は、前記第1辺部から前記湾曲縁部とは反対側に突出し、且つ指穴が形成されている突出部であり、
前記突出部から前記凹部までの長さは、前記突出部から前記第1辺部の端までの長さよりも長い、飛沫防止器具。
飛沫防止器具。
【請求項2】
組み立てられた状態において立体形状を構成するシート状の飛沫防止器具であって、
飛沫を防止するための遮蔽部を備え、
前記遮蔽部は、湾曲縁部と、前記湾曲縁部と接続されている第1辺部及び第2辺部と、前記第1辺部及び前記第2辺部に接続されており且つ前記湾曲縁部側に凹んでいる凹部とを有しており、
前記遮蔽部には、手によって保持するための保持部が設けられており、
前記保持部は、前記第1辺部から前記湾曲縁部とは反対側に突出し、且つ指穴が形成されている突出部である、飛沫防止器具。
【請求項3】
組み立てられた状態において立体形状を構成するシート状の飛沫防止器具であって、
飛沫を防止するための遮蔽部を備え、
前記遮蔽部は、湾曲縁部と、前記湾曲縁部と接続されている第1辺部及び第2辺部と、前記第1辺部及び前記第2辺部に接続されており且つ前記湾曲縁部側に凹んでいる凹部とを有しており、
前記遮蔽部には、手によって保持するための保持部が設けられており、
前記保持部は、前記第1辺部から前記湾曲縁部とは反対側に突出し、且つ指穴が形成されている突出部であり、
前記突出部が突出している前記第1辺部の端から前記凹部までの長さは、前記凹部から最も離れた前記湾曲縁部の末端から前記凹部までの長さよりも短い、飛沫防止器具。
【請求項4】
前記湾曲縁部の長さと、前記第1辺部及び前記第2辺部の長さとは、前記組み立てた状態において、前記凹部が形成する挿入開口側から見た場合に、前記湾曲縁部が形成する開口の内側に前記挿入開口が位置するように設定されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の飛沫防止器具。
【請求項5】
前記第1辺部と前記湾曲縁部との間に、スリット部が形成されており、
前記遮蔽部は、前記スリット部に挿入される係合部を有し、
前記係合部は、前記第2辺部から前記湾曲縁部とは反対側に突出している、請求項1からのいずれか一項に記載の飛沫防止器具。
【請求項6】
前記係合部には、前記スリット部と係合する返し部が形成されている、請求項に記載の飛沫防止器具。
【請求項7】
前記湾曲縁部の長さと、前記第1辺部及び前記第2辺部の長さとは、前記組み立てた状態において、前記凹部が形成する挿入開口から前記湾曲縁部が形成する開口までの高さが10cmを超えないように設定されている、請求項1からのいずれか一項に記載の飛沫防止器具。
【請求項8】
前記凹部から最も離れた前記湾曲縁部の末端から前記凹部までの長さが10cmを超えている、請求項に記載の飛沫防止器具。