(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113231
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】自動車車体設計方法、装置及びプログラム、並びに自動車車体の製造方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/15 20200101AFI20240815BHJP
G06F 30/23 20200101ALI20240815BHJP
B62D 25/00 20060101ALI20240815BHJP
G06F 111/04 20200101ALN20240815BHJP
G06F 111/10 20200101ALN20240815BHJP
【FI】
G06F30/15
G06F30/23
B62D25/00
G06F111:04
G06F111:10
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018059
(22)【出願日】2023-02-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】揚場 遼
(72)【発明者】
【氏名】樋貝 和彦
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 毅
【テーマコード(参考)】
3D203
5B146
【Fターム(参考)】
3D203CB24
3D203CB47
5B146AA05
5B146DC04
5B146DC05
5B146DJ02
5B146DJ07
5B146EA11
(57)【要約】
【課題】振動騒音低減対象部位の制振性を向上させた自動車車体を設計する自動車車体設計方法、装置及びプログラム、並びに自動車車体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る自動車車体設計方法は、自動車車体のホワイトボディ構造100を構成する車体部品の表面に樹脂材料を貼付又は塗布し、ホワイトボディ構造100における振動騒音低減対象部位の制振性を向上させた自動車車体を設計するために、コンピュータが以下の各ステップを実行するものであって、ホワイトボディ構造100における車体部品に貼付又は塗布する樹脂材料の最適な形状についての最適化解析を行う最適化解析モデルを生成する最適化解析モデル生成ステップS1と、生成した最適化解析モデルにおける樹脂材料モデルの最適な形状を求める最適化解析を行う樹脂材料最適化解析ステップS3と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車車体のホワイトボディ構造を構成する車体部品の表面に樹脂材料を貼付又は塗布し、前記ホワイトボディ構造において振動騒音を低減させる対象である振動騒音低減対象部位の制振性を向上させた自動車車体を設計するために、コンピュータが以下の各ステップを実行する自動車車体設計方法であって、
前記ホワイトボディ構造における全ての又は一部の前記車体部品に貼付又は塗布する樹脂材料の最適な形状についての最適化解析を行う最適化解析モデルを生成する最適化解析モデル生成ステップと、
該生成した最適化解析モデルを用いて前記最適化解析を行う樹脂材料最適化解析ステップと、を含み、
前記最適化解析モデル生成ステップは、
前記ホワイトボディ構造における全ての又は一部の前記車体部品の表面に沿って、前記最適化解析の対象とする設計空間を設定する設計空間設定工程と、
該設定された設計空間に、シェル要素又はソリッド要素でモデル化されて最適化の解析処理を行う樹脂材料モデルを生成する樹脂材料モデル生成工程と、
該生成した樹脂材料モデルを前記ホワイトボディ構造における前記車体部品に結合する結合処理工程と、を有し、
前記樹脂材料最適化解析ステップは、
前記最適化解析モデルにおける前記樹脂材料モデルの材料特性として、少なくとも弾性率、密度及び減衰率を設定する材料特性設定工程と、
前記最適化解析において前記最適化解析モデルに与える振動に関する振動入力条件を設定する振動入力条件設定工程と、
前記最適化解析モデルにおける前記振動騒音低減対象部位の制振性の評価に用いる振動特性に関する目的関数と、前記樹脂材料モデルの重量又は体積に関する制約条件と、を最適化解析条件として設定する最適化解析条件設定工程と、
前記振動入力条件と前記最適化解析条件との下で、前記最適化解析モデルにおける前記樹脂材料モデルの最適な形状を求める最適化解析を行う最適化解析工程と、を有することを特徴とする自動車車体設計方法。
【請求項2】
前記設計空間設定工程において、前記車体部品同士の隙間に前記設計空間を設定する、ことを特徴とする請求項1に記載の自動車車体設計方法。
【請求項3】
前記設計空間設定工程において、前記車体部品の片面のみに沿う二次元空間を前記設計空間として設定し、
前記樹脂材料モデル生成工程において、シェル要素で前記樹脂材料モデルをモデル化する、ことを特徴とする請求項1に記載の自動車車体設計方法。
【請求項4】
前記最適化解析条件設定工程において、前記目的関数を、前記振動騒音低減対象部位の所定の周波数帯における加速度、イナータンス若しくは等価放射パワーのいずれかの周波数応答値の最小化、又はこれらを変数とする関数の最小化、とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の自動車車体設計方法。
【請求項5】
自動車車体のホワイトボディ構造を構成する車体部品の表面に樹脂材料を貼付又は塗布し、前記ホワイトボディ構造において振動騒音を低減させる対象である振動騒音低減対象部位の制振性を向上させた自動車車体を設計する自動車車体設計装置であって、
前記ホワイトボディ構造における全ての又は一部の前記車体部品に貼付又は塗布する樹脂材料の最適な形状についての最適化解析を行う最適化解析モデルを生成する最適化解析モデル生成ユニットと、
該生成した最適化解析モデルを用いて前記最適化解析を行う樹脂材料最適化解析ユニットと、を備え、
前記最適化解析モデル生成ユニットは、
前記ホワイトボディ構造における全ての又は一部の前記車体部品の表面に沿って、前記最適化解析の対象とする設計空間を設定する設計空間設定部と、
該設定された設計空間に、シェル要素又はソリッド要素でモデル化されて最適化の解析処理を行う樹脂材料モデルを生成する樹脂材料モデル生成部と、
該生成した樹脂材料モデルを前記ホワイトボディ構造における前記車体部品に結合する結合処理部と、を有し、
前記樹脂材料最適化解析ユニットは、
前記最適化解析モデルにおける前記樹脂材料モデルの材料特性として、少なくとも弾性率、密度及び減衰率を設定する材料特性設定部と、
前記最適化解析において前記最適化解析モデルに与える振動に関する振動入力条件を設定する振動入力条件設定部と、
前記最適化解析モデルにおける前記振動騒音低減対象部位の制振性の評価に用いる振動特性に関する目的関数と、前記樹脂材料モデルの重量又は体積に関する制約条件と、を最適化解析条件として設定する最適化解析条件設定部と、
前記振動入力条件と前記最適化解析条件との下で、前記最適化解析モデルにおける前記樹脂材料モデルの最適な形状を求める最適化解析を行う最適化解析部と、を有することを特徴とする自動車車体設計装置。
【請求項6】
自動車車体のホワイトボディ構造を構成する車体部品の表面に樹脂材料を貼付又は塗布し、前記ホワイトボディ構造において振動騒音を低減させる対象である振動騒音低減対象部位の制振性を向上させた自動車車体を設計する自動車車体設計プログラムであって、
コンピュータを、
前記ホワイトボディ構造における全ての又は一部の前記車体部品に貼付又は塗布する樹脂材料の最適な形状についての最適化解析を行う最適化解析モデルを生成する最適化解析モデル生成ユニットと、
該生成した最適化解析モデルを用いて前記最適化解析を行う樹脂材料最適化解析ユニットと、して実行させる機能を備え、
さらに、
前記最適化解析モデル生成ユニットを、
前記ホワイトボディ構造における全ての又は一部の前記車体部品の表面に沿って、前記最適化解析の対象とする設計空間を設定する設計空間設定部と、
該設定された設計空間に、シェル要素又はソリッド要素でモデル化されて最適化の解析処理を行う樹脂材料モデルを生成する樹脂材料モデル生成部と、
該生成した樹脂材料モデルを前記ホワイトボディ構造における前記車体部品に結合する結合処理部と、して機能させ、
前記樹脂材料最適化解析ユニットを、
前記最適化解析モデルにおける前記樹脂材料モデルの材料特性として、少なくとも弾性率、密度及び減衰率を設定する材料特性設定部と、
前記最適化解析において前記最適化解析モデルに与える振動に関する振動入力条件を設定する振動入力条件設定部と、
前記最適化解析モデルにおける前記振動騒音低減対象部位の制振性の評価に用いる振動特性に関する目的関数と、前記樹脂材料モデルの重量又は体積に関する制約条件と、を最適化解析条件として設定する最適化解析条件設定部と、
前記振動入力条件と前記最適化解析条件との下で、前記最適化解析モデルにおける前記樹脂材料モデルの最適な形状を求める最適化解析を行う最適化解析部と、して機能させることを特徴とする自動車車体設計プログラム。
【請求項7】
自動車車体のホワイトボディ構造を構成する車体部品に樹脂材料を貼付又は塗布し、前記ホワイトボディ構造において振動騒音を低減させる対象である振動騒音低減対象部位の制振性を向上させた自動車車体を製造する自動車車体の製造方法であって、
請求項1又は2に記載の自動車車体設計方法を用いて前記樹脂材料の最適な形状を求め、
該求めた樹脂材料の最適な形状に基づいて、前記車体部品に貼付又は塗布する前記樹脂材料の最適な形状と位置を決定し、
該形状と位置を決定した前記樹脂材料を、前記ホワイトボディ構造における前記車体部品に貼付又は塗布する、ことを特徴とする自動車車体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車車体のホワイトボディ構造において振動騒音の低減対象となる部位の制振性を向上させた自動車車体を設計する自動車車体設計方法、装置及びプログラム、並びに自動車車体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、制振性に優れた自動車車体の効率的な設計手法の開発が、これまで以上に求められている。これは、電気自動車の普及拡大が大きな要因の一つとして挙げられる。電気自動車は内燃機関による振動及び騒音の発生がないため、その他の振動源による振動や騒音に対する乗員の感度が高まるためである。また、電気自動車は大容量バッテリーを搭載する必要があり、それらの保護構造と相まって車体骨格構造が大きく異なるケースがある。これにより振動伝達経路が従来のガソリン車と異なるため、振動や騒音を低減する制振構造に関する従来の経験則が通用しない。
【0003】
そのため、自動車車体の設計に関する経験則を要さずに、高い制振構造の設計指針を得る手段として、コンピュータを用いた最適化解析技術が提案されている。例えば特許文献1には、自動車における起振源から振動伝達骨格部品を介してパネル部品に伝達する振動に起因する振動騒音を低減するために、振動伝達骨格部品を複数の領域を区分し、区分した領域ごとに最適な板厚を求める技術が開示されている。
また、特許文献2には、金属製の板状部材を備えた自動車部品に対し、板状部材の内面に樹脂層を塗布又は貼付し、樹脂層の反対側の表面に金属板製の振動抑制部材を接着することにより、当該自動車部品の制振性を向上させる技術が開示されている。
【0004】
また、高性能な自動車車体を効率的に設計する技術として、例えば特許文献3には、コンピュータを用いて車体部品の最適な形状を求める最適化解析が適用されている。当該技術は、最適化の対象とする車体部品の設計空間や拘束条件及び荷重条件を設定し、自動車車体の剛性や重量等の車体性能に関する目的条件を満たすように設計空間上の不要な部位を削除することで、車体部品の最適形状を求める方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6769536号公報
【特許文献2】特開2022-132725号公報
【特許文献3】特許第5585672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術は、振動伝達骨格部品における領域ごとの板厚を変更するため、振動騒音低減対象とするパネル部品の制振性は向上するものの、他の車体性能(例えば車体剛性)が低下してしまう場合があり、制振性と他の車体性能との両立が困難であった。
【0007】
また、特許文献2の技術は、自動車部品の板状部材に設ける樹脂層と振動抑制部材の位置や範囲については何ら規定されていないため、自動車部品の制振性を十分に向上させるためには試行錯誤的に樹脂層と振動抑制部材の位置や範囲を決定する必要があった。
さらに、特許文献2の技術は、自動車部品を単体で加振したときの制振性向上を対象とするものであった。そのため、自動車車体の全体に振動が入力した場合において、特許文献2の技術により自動車車体において振動騒音の低減対象となる部位の制振性が効率よく向上させることはするかどうかは不明であった。
【0008】
また、特許文献3に開示されている方法によれば、設定した複数の入力荷重に対し、ひずみエネルギーの最小化、発生応力の最小化、衝突吸収エネルギーの最大化等の目的関数を達成する車体部品の最適な3次元形状を求めることができる。
そこで、自動車車体のホワイトボディ構造の制振性の向上を図るために、特許文献1に記載の最適化解析技術を、振動・音響分野に関する周波数応答の最適化に適用し、制振性を向上させる車体部品の最適形状を求めることが考えられる。しかし、これを試行した結果、車体部品の最適形状は3次元的にまばらに散在する形状となり、実際のホワイトボディ構造に対して有用な形状が得られなかった。そのため、たとえ最適化解析技術により最適な3次元形状を求めたとしても、求めた最適形状からプレス成形等により製造可能な部品形状を求めることができなかった。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、制振性以外の車体性能を維持しつつ、振動騒音の低減対象となる部位の制振性を効果的に向上させた自動車車体を設計する自動車車体設計方法、装置及びプログラムを提供することを目的とする。
さらに、本発明は、車体剛性等の制振性以外の車体性能を維持しつつ、振動騒音の低減対象となる部位の制振性を向上させた自動車車体を製造する自動車車体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る自動車車体設計方法は、自動車車体のホワイトボディ構造を構成する車体部品の表面に樹脂材料を貼付又は塗布し、前記ホワイトボディ構造において振動騒音を低減させる対象である振動騒音低減対象部位の制振性を向上させた自動車車体を設計するために、コンピュータが以下の各ステップを実行するものであって、
前記ホワイトボディ構造における全ての又は一部の前記車体部品に貼付又は塗布する樹脂材料の最適な形状についての最適化解析を行う最適化解析モデルを生成する最適化解析モデル生成ステップと、
該生成した最適化解析モデルを用いて前記最適化解析を行う樹脂材料最適化解析ステップと、を含み、
前記最適化解析モデル生成ステップは、
前記ホワイトボディ構造における全ての又は一部の前記車体部品の表面に沿って、前記最適化解析の対象とする設計空間を設定する設計空間設定工程と、
該設定された設計空間に、シェル要素又はソリッド要素でモデル化されて最適化の解析処理を行う樹脂材料モデルを生成する樹脂材料モデル生成工程と、
該生成した樹脂材料モデルを前記ホワイトボディ構造における前記車体部品に結合する結合処理工程と、を有し、
前記樹脂材料最適化解析ステップは、
前記最適化解析モデルにおける前記樹脂材料モデルの材料特性として、少なくとも弾性率、密度及び減衰率を設定する材料特性設定工程と、
前記最適化解析において前記最適化解析モデルに与える振動に関する振動入力条件を設定する振動入力条件設定工程と、
前記最適化解析モデルにおける前記振動騒音低減対象部位の制振性の評価に用いる振動特性に関する目的関数と、前記樹脂材料モデルの重量又は体積に関する制約条件と、を最適化解析条件として設定する最適化解析条件設定工程と、
前記振動入力条件と前記最適化解析条件との下で、前記最適化解析モデルにおける前記樹脂材料モデルの最適な形状を求める最適化解析を行う最適化解析工程と、を有することを特徴とするものである。
【0011】
(2)上記(1)に記載のものにおいて、
前記設計空間設定工程において、前記車体部品同士の隙間に前記設計空間を設定する、ことを特徴とするものである。
【0012】
(3)上記(1)に記載のものにおいて、
前記設計空間設定工程において、前記車体部品の片面のみに沿う二次元空間を前記設計空間として設定し、
前記樹脂材料モデル生成工程において、シェル要素で前記樹脂材料モデルをモデル化する、ことを特徴とするものである。
【0013】
(4)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、
前記最適化解析条件設定工程において、前記目的関数を、前記振動騒音低減対象部位の所定の周波数帯における加速度、イナータンス若しくは等価放射パワーのいずれかの周波数応答値の最小化、又はこれらを変数とする関数の最小化、とすることを特徴とするものである。
【0014】
(5)本発明に係る自動車車体設計装置は、自動車車体のホワイトボディ構造を構成する車体部品の表面に樹脂材料を貼付又は塗布し、前記ホワイトボディ構造において振動騒音を低減させる対象である振動騒音低減対象部位の制振性を向上させた自動車車体を設計するものであって、
前記ホワイトボディ構造における全ての又は一部の前記車体部品に貼付又は塗布する樹脂材料の最適な形状についての最適化解析を行う最適化解析モデルを生成する最適化解析モデル生成ユニットと、
該生成した最適化解析モデルを用いて前記最適化解析を行う樹脂材料最適化解析ユニットと、を備え、
前記最適化解析モデル生成ユニットは、
前記ホワイトボディ構造における全ての又は一部の前記車体部品の表面に沿って、前記最適化解析の対象とする設計空間を設定する設計空間設定部と、
該設定された設計空間に、シェル要素又はソリッド要素でモデル化されて最適化の解析処理を行う樹脂材料モデルを生成する樹脂材料モデル生成部と、
該生成した樹脂材料モデルを前記ホワイトボディ構造における前記車体部品に結合する結合処理部と、を有し、
前記樹脂材料最適化解析ユニットは、
前記最適化解析モデルにおける前記樹脂材料モデルの材料特性として、少なくとも弾性率、密度及び減衰率を設定する材料特性設定部と、
前記最適化解析において前記最適化解析モデルに与える振動に関する振動入力条件を設定する振動入力条件設定部と、
前記最適化解析モデルにおける前記振動騒音低減対象部位の制振性の評価に用いる振動特性に関する目的関数と、前記樹脂材料モデルの重量又は体積に関する制約条件と、を最適化解析条件として設定する最適化解析条件設定部と、
前記振動入力条件と前記最適化解析条件との下で、前記最適化解析モデルにおける前記樹脂材料モデルの最適な形状を求める最適化解析を行う最適化解析部と、を有することを特徴とするものである。
【0015】
(6)本発明に係る自動車車体設計プログラムは、自動車車体のホワイトボディ構造を構成する車体部品の表面に樹脂材料を貼付又は塗布し、前記ホワイトボディ構造において振動騒音を低減させる対象である振動騒音低減対象部位の制振性を向上させた自動車車体を設計するものであって、
コンピュータを、
前記ホワイトボディ構造における全ての又は一部の前記車体部品に貼付又は塗布する樹脂材料の最適な形状についての最適化解析を行う最適化解析モデルを生成する最適化解析モデル生成ユニットと、
該生成した最適化解析モデルを用いて前記最適化解析を行う樹脂材料最適化解析ユニットと、して実行させる機能を備え、
さらに、
前記最適化解析モデル生成ユニットを、
前記ホワイトボディ構造における全ての又は一部の前記車体部品の表面に沿って、前記最適化解析の対象とする設計空間を設定する設計空間設定部と、
該設定された設計空間に、シェル要素又はソリッド要素でモデル化されて最適化の解析処理を行う樹脂材料モデルを生成する樹脂材料モデル生成部と、
該生成した樹脂材料モデルを前記ホワイトボディ構造における前記車体部品に結合する結合処理部と、して機能させ、
前記樹脂材料最適化解析ユニットを、
前記最適化解析モデルにおける前記樹脂材料モデルの材料特性として、少なくとも弾性率、密度及び減衰率を設定する材料特性設定部と、
前記最適化解析において前記最適化解析モデルに与える振動に関する振動入力条件を設定する振動入力条件設定部と、
前記最適化解析モデルにおける前記振動騒音低減対象部位の制振性の評価に用いる振動特性に関する目的関数と、前記樹脂材料モデルの重量又は体積に関する制約条件と、を最適化解析条件として設定する最適化解析条件設定部と、
前記振動入力条件と前記最適化解析条件との下で、前記最適化解析モデルにおける前記樹脂材料モデルの最適な形状を求める最適化解析を行う最適化解析部と、して機能させることを特徴とするものである。
【0016】
(7)本発明に係る自動車車体の製造方法は、自動車車体のホワイトボディ構造を構成する車体部品に樹脂材料を貼付又は塗布し、前記ホワイトボディ構造において振動騒音を低減させる対象である振動騒音低減対象部位の制振性を向上させた自動車車体を製造するものであって、
上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の自動車車体設計方法を用いて前記樹脂材料の最適な形状を求め、
該求めた樹脂材料の最適な形状に基づいて、前記車体部品に貼付又は塗布する前記樹脂材料の最適な形状と位置を決定し、
該形状と位置を決定した前記樹脂材料を、前記ホワイトボディ構造における前記車体部品に貼付又は塗布する、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、自動車車体のホワイトボディ構造における全部又は一部の車体部品の表面に沿って設定した設計空間に樹脂材料モデルを生成し、振動騒音低減対象部位の制振性を向上させる樹脂材料モデルの最適形状を求める最適化解析を行う。これにより、ホワイトボディ構造を構成する車体部品の表面に貼付又は塗布する樹脂材料の最適な形状を求めることができる。その結果、車体剛性等の制振性以外の車体性能を維持しつつ、振動騒音低減対象部位の制振性を向上させた自動車車体を設計し、さらには製造することができる。
また、車体部品の片面のみの表面に沿う二次元空間を設計空間として設定し、樹脂材料モデルの最適形状を求める最適化解析を行うことにより、板状又はシート状の製造しやすい形状を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る自動車車体設計装置を示すブロック図である。
【
図2】本実施の形態1において解析対象とした自動車車体のホワイトボディ構造と、最適化解析において振動を入力する部位と振動騒音低減対象部位の一例を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る自動車車体設計方法における処理の流れを示すフロー図である。
【
図4】本実施の形態1において、フロアパネルを振動騒音低減対象部位とし、その制振性の評価に用いる振動特性の一例として求めた、フロアパネルの等価放射パワーの周波数応答を示すグラフである。
【
図5】実施例1において、(a)車体部品同士の空間に設定した設計空間及び最適化解析前の樹脂材料モデルと、(b)最適化解析前の樹脂材料モデルをホワイトボディ構造に結合して生成した最適化解析モデル、を示す図である。
【
図6】実施例1において、最適化解析により求めた最適形状樹脂材料モデルを示す図である。
【
図7】実施例1において、最適形状樹脂材料モデルを車体部品同士の空間に設けたホワイトボディ構造におけるフロアパネルの等価放射パワーの周波数応答を求めたグラフである(破線:元のホワイトボディ構造、実線:最適形状樹脂材料モデルを設けたホワイトボディ構造)。
【
図8】実施例2において、(a)車体部品の片面のみに設定した設計空間及び最適化解析前の樹脂材料モデルと、(b)最適化解析前の樹脂材料モデルをホワイトボディ構造に結合して生成した最適化解析モデル、を示す図である。
【
図9】実施例2において、最適化解析により求めた最適形状樹脂材料モデルを示す図である。
【
図10】実施例2において、最適形状樹脂材料モデルを車体部品の片面に設けたホワイトボディ構造におけるフロアパネルの等価放射パワーの周波数応答を求めたグラフである(破線:元のホワイトボディ構造、実線:最適形状樹脂材料モデルを設けたホワイトボディ構造)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態1及び実施の形態2について説明するに先立ち、本発明で対象とする自動車車体のホワイトボディ構造について説明する。なお、本願の図面において、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、それぞれ、車体前後方向、車体幅方向及び車体上下方向を示す。
【0020】
<ホワイトボディ構造>
自動車車体のホワイトボディ構造100は、一例として
図2に示すように、車体骨格部品、補強部品及びパネル部品等の車体部品で構成されたものである。
車体骨格部品は、自動車の車体骨格を構成する部品であり、フロントサイドメンバー101、サイドシル103、リアサイドメンバー105、Aピラーロア106、トンネル108等が例示できる。
補強部品は、各車体骨格部品に設けられて補強する部品であり、レインフォース(図示なし)等が例示できる。
パネル部品は、薄板構造の部品である外板パネルや内板パネルであり、フロアパネル107、等が例示できる。
【0021】
そして、ホワイトボディ構造100においては、振動騒音を低減させる対象となる部位として、フロアパネル107等のパネル部品が例示できる。
【0022】
本発明は、後述するように、ホワイトボディ構造100を構成する車体部品に貼付又は塗布する樹脂材料の最適形状を求める最適化解析を行うものである。そのため、ホワイトボディ構造100は、シェル要素及び/又はソリッド要素でモデル化された車体部品を備えて構成されたものであるとする。そして、シェル要素及び/又はソリッド要素でモデル化された各車体部品の要素情報や材料特性等は、後述するホワイトボディ構造モデルファイル21(
図1)に保存されているものとする。
【0023】
[実施の形態1]
<自動車車体設計装置>
本発明の実施の形態1に係る自動車車体設計装置は、自動車車体のホワイトボディ構造100を構成する車体部品に樹脂材料を貼付又は塗布し、ホワイトボディ構造100における振動騒音低減対象部位の制振性を向上させた自動車車体を設計するものである。そして、自動車車体設計装置1は、一例として
図1に示すように、PC(パーソナルコンピュータ)等によって構成され、表示装置3と、入力装置5と、記憶装置7と、作業用データメモリ9と、演算処理部11と、を備えている。自動車車体設計装置1において、表示装置3、入力装置5、記憶装置7及び作業用データメモリ9は、演算処理部11に接続され、演算処理部11からの指令によってそれぞれの機能が実行される。
以下、自動車車体設計装置1の各構成について説明する。
【0024】
表示装置3は、解析結果の表示等に用いられ、液晶モニター等で構成される。
入力装置5は、ホワイトボディ構造モデルファイル21の表示指示や操作者の条件入力等に用いられ、キーボードやマウス等で構成される。
記憶装置7は、ホワイトボディ構造モデルファイル21等の各種ファイルの記憶等に用いられ、ハードディスク等で構成される。
作業用データメモリ9は、演算処理部11で使用するデータの一時保存や演算に用いられ、RAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0025】
演算処理部11は、
図1に示すように、最適化解析モデル生成ユニット13と、樹脂材料最適化解析ユニット15と、を有し、PC等のCPU(中央演算処理装置)によって構成される。これらの各ユニットは、CPUが所定のプログラムを実行することによって機能する。
演算処理部11における上記の各ユニットの機能を以下に説明する。
【0026】
≪最適化解析モデル生成ユニット≫
最適化解析モデル生成ユニット13は、ホワイトボディ構造100における全ての又は一部の車体部品に貼付又は塗布する樹脂材料の最適な形状についての最適化解析を行う最適化解析モデルを生成するものである。そして、最適化解析モデル生成ユニット13は、
図1に示すように、設計空間設定部13aと、樹脂材料モデル生成部13bと、結合処理部13cと、を有する。
【0027】
(設計空間設定部)
設計空間設定部13aは、ホワイトボディ構造100における全ての又は一部の車体部品の表面に沿って、最適化解析の対象とする設計空間を設定するものである。
【0028】
ここで、設計空間を設定する車体部品は、自動車車体の外観を損ねずに樹脂材料を貼付又は塗布することができる車体部品、又は、樹脂材料を貼付又は塗布するスペースが確保されている車体部品、を対象とするとよい。
【0029】
そして、設計空間設定部13aは、車体部品同士の空間に設計空間を設定してもよいし、車体部品の表面に沿う二次元空間を設計空間として設定してもよい。これにより、樹脂材料を貼付又は塗布するスペースを確保したり、樹脂材料を貼付又は塗布することにより自動車車体の外観を損ねることを防止することが容易となる。
【0030】
本実施の形態1において、車体部品同士の空間に設計区間を設定する場合、樹脂材料の施工可能な空間の目安として、厚みが25mm以内の空間を対象とする。
そして、設計空間を設定する車体部品同士の空間として、サイドシル、フロントサイドメンバー、トンネル、フロントピラー等の車体骨格部品と、車体骨格部品の補強部品として内部に配置されるレインフォースと、の間に形成される空間が例示できる。
【0031】
また、設計空間を設定する車体部品の表面としては、サイドシル、Aピラーロア、フロントサイドメンバー、トンネル、フロントピラー、センターピラー等の車体骨格部品の内側又は外側の表面が例示できる。さらに、ドアパネル、ルーフパネル、フロアパネル等のパネル部品の車内側の表面も例示できる。
【0032】
(樹脂材料モデル生成部)
樹脂材料モデル生成部13bは、設計空間設定部13aにより設定された設計空間に、シェル要素又はソリッド要素でモデル化されて最適化の解析処理を行う樹脂材料モデルを生成するものである。
また、前記設計空間設定部13aにより設定された設計空間が車体部品の表面に沿う二次元空間である場合、シェル要素でモデル化されて最適化の解析処理を行う樹脂材料モデルを生成する。最適化の解析処理により、板状又はシート状の製造しやすい樹脂材料モデルの最適な形状を得るためである。
【0033】
(結合処理部)
結合処理部13cは、樹脂材料モデル生成部13bにより生成した樹脂材料モデルをホワイトボディ構造100における車体部品に結合するものである。そして、結合処理部13cにより樹脂材料モデルを車体部品に結合することで、最適化解析モデルを生成することができる。
【0034】
樹脂材料モデルとホワイトボディ構造100における車体部品との結合は、例えば、樹脂材料モデルの節点と車体部品の節点とを要素(剛体要素、弾性体要素、又は弾塑性体要素)で結合(剛体結合、又は弾性体結合)とすればよい。または、樹脂材料モデルの節点と車体部品の節点とを共有させることで、樹脂材料モデルと車体部品とを結合してもよい。
【0035】
≪樹脂材料最適化解析ユニット≫
樹脂材料最適化解析ユニット15は、最適化解析モデル生成ユニット13により生成した最適化解析モデルを用いて車体部品に貼付又は塗布する樹脂材料の最適な形状についての最適化解析を行うものである。そして、樹脂材料最適化解析ユニット15は、
図1に示すように、材料特性設定部15aと、振動入力条件設定部15bと、最適化解析条件設定部15cと、最適化解析部15dと、を有する。
【0036】
(材料特性設定部)
材料特性設定部15aは、樹脂材料モデルの材料特性として、少なくとも弾性率、密度及び減衰率を設定するものである。
樹脂材料モデルの材料特性として設定する弾性率、密度及び減衰率は、それぞれ以下のように設定すればよい。
【0037】
樹脂材料の弾性率(又は貯蔵弾性率)は、その値が大きいほど振動特性に及ぼす影響が強く、振動騒音低減対象部位の制振性を向上させることができる。また、樹脂材料の密度(硬化後の密度)は、振動特性に影響を及ぼすだけでなく、車体軽量化にも大きく影響し、その値が小さいほど振動特性及び車体軽量化に対する効果が高い。
したがって、樹脂材料の弾性率と密度は、弾性率の密度に対する比(密度比弾性率)が大きい(密度比で剛性が高い)樹脂材料の値を設定すればよく、好ましくは1000(MPa/g・cm-3)以上、より好ましくは1400(MPa/g・cm-3)以上とすればよい。また、弾性率は200MPa以上6GPa以下、密度は0.7g/cm3以上1.8g/cm3以下、の範囲内で設定するとよい。
また、樹脂材料の減衰率(又は減衰係数tanδ)は、最適化解析において大きな影響はないものの、実際の樹脂材料の減衰率に相当する値を設定することが好ましく、0.1以上0.15以下の範囲内で設定するとよい。
【0038】
(振動入力条件設定部)
振動入力条件設定部15bは、最適化解析において最適化解析モデルに与える振動に関する振動入力条件を設定するものである。
【0039】
振動入力条件設定部15bは、振動入力条件として、振幅(振動の大きさ)、周波数、及び、ホワイトボディ構造100における振動を与える部位、を設定する。そして、振動入力条件は、例えば自動車の走行時にホワイトボディ構造100に入力する振動、等を想定して適宜設定すればよい。
【0040】
振動を与える部位としては、
図2に示すように、フロントサブフレーム109とロアアーム(図示なし)との結合部(図中の△印)が例示できる。
【0041】
(最適化解析条件設定部)
最適化解析条件設定部15cは、最適化解析モデルにおける振動騒音低減対象部位の制振性の評価に用いる振動特性に関する目的関数と、樹脂材料モデルの重量又は体積に関する制約条件と、を最適化解析条件として設定するものである。
【0042】
目的関数は、振動騒音低減対象部位の制振性の評価に用いる振動特性に応じて設定する条件である。振動特性は、例えば振動騒音低減対象部位の振動強度とすることができる。振動強度としては、所定の周波数帯における加速度、イナータンス若しくは等価放射パワー(ERP)、等の周波数応答値、又はこれらを変数とする関数、が挙げられる。
【0043】
振動騒音低減対象部位は、操作者の指示により適宜設定すればよい。振動騒音低減対象部位としては、
図2に示すように、ホワイトボディ構造100におけるフロアパネル107が例示できる。
【0044】
イナータンスは、物体に入力する力と、それによって発生する加速度の比で表される振動特性であり、振動伝達関数とも呼ばれる。
【0045】
等価放射パワーとは、振動している構造物が発する音のレベルを簡易的に表現する指標であり、構造物の振動速度の面直成分が音響空間にエネルギーを与える、という考えに基づいて表される振動特性である。
【0046】
加速度、イナータンス若しくは等価放射パワーを変数とする関数としては、例えば、振動騒音低減対象部位とする車体部品(パネル部品等)における複数の位置での加速度等の平均値や最大値を与える関数、が挙げられる。
【0047】
制約条件は、最適化解析モデルを用いて、振動騒音低減対象部位の制振性の向上に対する樹脂材料モデルの最適化解析を行う上で、樹脂材料モデルの重量又は体積に関する制約である。
【0048】
重量に関する制約条件としては、例えば、樹脂材料モデルの重量を所定の重量以下とする制約を設定することができる。
また、体積に関する制約条件としては、ホワイトボディ構造100に設定された設計空間の体積を基準とする樹脂材料モデルの体積の割合を所定の値以下とする制約を設定することができる。
なお、樹脂材料モデルの重量や体積についての制約条件は、最適化解析モデルの総重量や体積を基準として設定してもよい。
【0049】
(最適化解析部)
最適化解析部15dは、振動入力条件設定部15bにより設定された振動入力条件と、最適化解析条件設定部15cにより設定された最適化解析条件と、の下で、最適化解析モデルにおける樹脂材料モデルの最適な形状を求める最適化解析を行うものである。
【0050】
最適化解析部15dによる最適化解析には、例えば、トポロジー最適化を適用するとよい。密度法を用いたトポロジー最適化においては、樹脂材料モデルの要素(シェル要素又はソリッド要素)の仮想的な材料密度を設計変数とし、最適化の解析処理を行って要素が残存又は消去することにより、樹脂材料モデルの最適形状が求められる。さらに、最適化の解析処理において残存した要素の位置から、樹脂材料モデルの最適な位置を求めることができる。
【0051】
<自動車車体設計方法>
本実施の形態1に係る自動車車体設計方法は、自動車車体のホワイトボディ構造100を構成する車体部品に樹脂材料を貼付又は塗布し、ホワイトボディ構造100における振動騒音低減対象部位の制振性を向上させた自動車車体を設計するものである。そして、本実施の形態1に係る自動車車体設計方法は、
図3に示す各ステップをコンピュータが実行するものであり、最適化解析モデル生成ステップS1と、樹脂材料最適化解析ステップS3と、を含む。
以下、
図3に示すフロー図に基づいて、上記の各ステップについて説明する。なお、以下の説明では、上記の各ステップとも、コンピュータによって構成された本発明の実施の形態1に係る自動車車体設計装置1(
図1)を用いて実行する。
【0052】
≪最適化解析モデル生成ステップ≫
最適化解析モデル生成ステップS1は、ホワイトボディ構造100における車体部品に貼付又は塗布する樹脂材料の最適な形状を求めるための最適化解析モデルを生成するステップである。そして、最適化解析モデル生成ステップS1は、
図3に示すように、設計空間設定工程S1aと、樹脂材料モデル生成工程S1bと、結合処理工程S1cと、を有する。
本実施の形態1において、最適化解析モデル生成ステップS1は、自動車車体設計装置1の最適化解析モデル生成ユニット13が実行する。
【0053】
(設計空間設定工程)
設計空間設定工程S1aは、ホワイトボディ構造100における全ての又は一部の車体部品の表面に沿って、最適化解析の対象とする設計空間を設定する工程である。
本実施の形態1において、設計空間設定工程S1aは、自動車車体設計装置1の設計空間設定部13aが実行する。
【0054】
設計空間設定工程S1aにおいては、車体部品同士の空間に設計空間を設定してもよいし、車体部品の表面に沿う二次元空間を設計空間として設定してもよい。これにより、樹脂材料を貼付又は塗布するスペースを確保したり、樹脂材料を貼付又は塗布することにより自動車車体の外観を損ねることを防止することが容易となる。
【0055】
(樹脂材料モデル生成工程)
樹脂材料モデル生成工程S1bは、設計空間設定工程S1aにおいて設定された設計空間に、シェル要素又はソリッド要素でモデル化されて最適化の解析処理を行う樹脂材料モデルを生成する工程である。
本実施の形態1において、樹脂材料モデル生成工程S1bは、自動車車体設計装置1の樹脂材料モデル生成部13bが実行する。
【0056】
なお、設計空間設定工程S1aにおいて設定された設計空間が、車体部品の表面に沿う二次元空間である場合、シェル要素でモデル化されて最適化の解析処理を行う樹脂材料モデルを生成する。最適化の解析処理により、板状又はシート状の製造しやすい樹脂材料モデルの最適な形状を得るためである。
【0057】
(結合処理工程)
結合処理工程S1cは、樹脂材料モデル生成工程S1bにおいて生成した樹脂材料モデルをホワイトボディ構造100における車体部品に結合である。
本実施の形態1において、結合処理工程S1cは、自動車車体設計装置1の結合処理部13cが実行する。そして、結合処理工程S1cにおいて樹脂材料モデルを車体部品に結合することで、最適化解析モデルを生成することができる。
【0058】
結合処理工程S1cにおいて、樹脂材料モデルとホワイトボディ構造100における車体部品との結合は、例えば、樹脂材料モデルの節点と車体部品の節点とを要素(剛体要素、弾性体要素、又は弾塑性体要素)で結合(剛体結合、又は弾性体結合)とするとよい。または、樹脂材料モデルの節点と車体部品の節点とを共有させることで結合してもよい。
【0059】
≪樹脂材料最適化解析ステップ≫
樹脂材料最適化解析ステップS3は、最適化解析モデル生成ステップS1において生成した最適化解析モデルを用いて、振動騒音低減対象部位の制振性向上に対する樹脂材料の最適な形状を求める最適化解析を行うステップである。そして、樹脂材料最適化解析ステップS3は、
図3に示すように、材料特性設定工程S3aと、振動入力条件設定工程S3bと、最適化解析条件設定工程S3cと、最適化解析工程S3dと、を有する。
本実施の形態1において、樹脂材料最適化解析ステップS3は、自動車車体設計装置1の樹脂材料最適化解析ユニット15が実行する。
【0060】
(材料特性設定工程)
材料特性設定工程S3aは、樹脂材料モデルの材料特性として、少なくとも弾性率、密度及び減衰率を設定する工程である。
本実施の形態1において、材料特性設定工程S3aは、自動車車体設計装置1の材料特性設定部15aが実行する。
【0061】
樹脂材料モデルの材料特性として、弾性率は200MPa以上6GPa以下、密度は0.7g/cm3以上1.8g/cm3以下、減衰率は0.1以上0.15以下、の範囲内で設定するとよい。
【0062】
(振動入力条件設定工程)
振動入力条件設定工程S3bは、最適化解析において最適化解析モデルに与える振動に関する振動入力条件を設定するものである。
本実施の形態1において、振動入力条件設定工程S3bは、自動車車体設計装置1の振動入力条件設定部15bが実行する。
【0063】
振動入力条件設定工程S3bにおいては、振動入力条件として、振幅(振動の大きさ)、周波数(振動数)及び振動を与える部位を設定する。そして、振動入力条件は、例えば自動車の走行時にホワイトボディ構造100に入力する振動、等を想定して適宜設定すればよい。
【0064】
振動を与える部位は、前述した
図2に示したように、フロントサブフレーム109とロアアームとの結合部(図中の△印)が例示できる。
【0065】
(最適化解析条件設定工程)
最適化解析条件設定工程S3cは、最適化解析モデルにおける振動騒音低減対象部位の制振性の評価に用いる振動特性に関する目的関数と、前記樹脂材料モデルの重量又は体積に関する制約条件と、を最適化解析条件として設定する工程である。
本実施の形態1において、最適化解析条件設定工程S3cは、自動車車体設計装置1の最適化解析条件設定部15cが実行する。
【0066】
最適化解析条件設定工程S3cにおいて、目的関数は、最適化解析モデルにおける振動騒音低減対象部位の振動強度の最小化とすることができる。そして、振動強度としては、所定の周波数帯における加速度、イナータンス若しくは等価放射パワー(ERP)の周波数応答値、又はこれらを変数とする関数、が挙げられる。
【0067】
(最適化解析工程)
最適化解析工程S3d、振動入力条件設定工程S3bにおいて設定された振動入力条件と、最適化解析条件設定工程S3cにおいて設定された最適化解析条件と、の下で、最適化解析モデルにおける樹脂材料モデルの最適な形状を求める最適化解析を行うものである。
本実施の形態1において、最適化解析工程S3dは、自動車車体設計装置1の最適化解析部15dが実行する。
【0068】
最適化解析工程における最適化解析には、例えば、トポロジー最適化を適用するとよい。トポロジー最適化を適用した場合、最適化の解析処理において残存した要素の位置から、樹脂材料モデルの最適な位置を求めることができる。
【0069】
<自動車車体設計プログラム>
上記の本実施の形態1についての説明は、自動車車体設計装置及び方法についてのものであった。もっとも、本実施の形態1は、コンピュータによって構成された自動車車体設計装置1(
図1)の演算処理部11における各ユニットを機能させる自動車車体設計プログラムとして構成することができる。
【0070】
すなわち、本実施の形態1に係る自動車車体設計プログラムは、自動車車体のホワイトボディ構造を構成する車体部品に樹脂材料を貼付又は塗布し、ホワイトボディ構造100における振動騒音低減対象部位の制振性を向上させた自動車車体を設計するものである。そして、本実施の形態1に係る自動車車体設計プログラムは、コンピュータを、
図1に示す演算処理部11のように、最適化解析モデル生成ユニット13と、樹脂材料最適化解析ユニット15と、して機能させるものである。
【0071】
ここで、本実施の形態1に係る自動車車体設計プログラムは、コンピュータを、最適化解析モデル生成ユニット13として機能させるため、最適化解析モデル生成ユニット13が有する各部を機能させる。最適化解析モデル生成ユニット13は、前述した
図1に示すように、設計空間設定部13aと、樹脂材料モデル生成部13bと、結合処理部13cと、有する。
【0072】
さらに、本実施の形態1に係る自動車車体設計プログラムは、コンピュータを、樹脂材料最適化解析ユニット15として機能させるため、樹脂材料最適化解析ユニット15が有する各部を機能させる。樹脂材料最適化解析ユニット15は、前述した
図1に示すように、材料特性設定部15aと、振動入力条件設定部15bと、最適化解析条件設定部15cと、最適化解析部15dと、を有する。
【0073】
以上、本実施の形態1に係る自動車車体設計装置、方法及びプログラムにおいては、自動車車体のホワイトボディ構造を構成する車体部品の表面に貼付又は塗布する樹脂材料の最適な形状を求める。これにより、車体剛性等の制振性以外の車体性能を維持しつつ、ホワイトボディ構造における振動騒音低減対象部位の制振性を向上させた自動車車体を設計することができる。
【0074】
なお、本実施の形態1は、車体部品同士の空間、又は、車体部品の片面のみ、のいずれかに設計空間を設定する場合についてものであった。もっとも、本発明は、これに限定するものではなく、車体部品同士の空間と車体部品の片面の双方に設計空間を設定してもよいし、車体部品の両面に設計空間を設定してもよい。
【0075】
また、本実施の形態1は、ホワイトボディ構造100に樹脂材料モデルを結合した最適化解析モデルについて樹脂材料モデルの材料特性を設定するものであったが、ホワイトボディ構造100に結合する前の樹脂材料モデルについて材料特性を設定してもよい。
【0076】
さらに、本実施の形態1は、
図2に示したように、最適化解析において最適化解析モデルに振動を与える部位を1箇所とした場合のものであったが、本発明は、振動を与える部位は2箇所以上の複数の部位であってもよい。そして、複数の部位に振動を与える場合、これらの部位に対して振幅及び周波数が同一の振動を与えてもよいし、振幅又は周波数のいずれかが異なる振動を与えてもよく、さらに、振動の位相を互いにずらして与えてもよい。
【0077】
また、本発明は、樹脂材料モデルの最適な形状を求める最適化解析を上述したトポロジー最適化を行うものに限定するものではなく、他の計算方式による最適化解析であってもよい。また、最適化解析は、例えば市販されている有限要素法を用いた解析ソフトを使用することもできる。
【0078】
[実施の形態2]
前述した実施の形態1に係る自動車車体設計方法は、自動車車体のホワイトボディ構造100を構成する車体部品の樹脂材料を貼付又は塗布し、振動騒音低減対象部位の制振性を向上させた自動車車体を設計するものであった。
【0079】
もっとも、本発明は、自動車車体のホワイトボディ構造を構成する車体部品に樹脂材料を貼付又は塗布し、ホワイトボディ構造における振動騒音低減対象部位の制振性を向上させた自動車車体を製造する自動車車体の製造方法として構成することができる。
【0080】
本実施の形態2に係る自動車車体の製造方法においては、まず、前述した実施の形態1に係る自動車車体設計方法を用いて、最適化解析モデルにおける全ての又は一部の車体部品に貼付又は塗布する樹脂材料モデルの最適な形状を求める。
次に、求めた樹脂材料モデルの最適な形状に基づいて、最適な形状を求めた車体部品に貼付又は塗布する樹脂材料の最適な形状と位置を決定する。
そして、形状と位置を決定した樹脂材料を、ホワイトボディ構造における車体部品に貼付又は塗布する。
【0081】
樹脂材料を車体部品に貼付又は塗布する態様として、以下のものが例示できる。
樹脂材料を貼付する態様の具体例としては、まず、最適化解析モデルにおける樹脂材料モデルの最適な形状に基づいて、射出成形用金型を作成し、射出成型にて樹脂材料を製造する。そして、最適化解析モデルにおける最適な形状の樹脂材料モデルの位置に基づいて、製造した樹脂材料をホワイトボディ構造における車体部品に貼付する。
【0082】
また、樹脂材料を塗布する態様の具体例としては、最適化解析モデルにおける樹脂材料モデルの最適な形状と位置をNCデータに変換する。そして、変換したNCデータを用いて樹脂材料を塗布するロボットを動作させることで、ホワイトボディ構造における車体部品に樹脂材料を塗布する。なお、塗布する樹脂材料は、液状の樹脂であってもよいし、発泡樹脂であってもよい。
【0083】
このように、本実施の形態2に係る自動車車体の製造方法によれば、車体剛性等の制振性以外の車体性能を維持しつつ、振動騒音低減対象部位の制振性を向上させた自動車車体を製造することができる。
【実施例0084】
本発明に係る自動車車体設計方法、装置及びプログラムにより、自動車車体のホワイトボディ構造における振動騒音低減対象部位の制振性の向上効果を検証する解析を行ったので、以下、これについて説明する。
【0085】
解析は、
図2に示したホワイトボディ構造100を解析対象とし、ホワイトボディ構造100におけるフロアパネル107を振動騒音低減対象部位とした。そして、フロアパネル107の制振性向上に対して、ホワイトボディ構造100における一部の車体部品に貼付又は塗布する樹脂材料の最適な形状についての最適化解析を行うものとした。
【0086】
最適化解析では、自動車の走行時におけるロードノイズを想定し、フロントサブフレーム109とロアアームとが結合する部位(
図2中に△印で示す部位)に振幅1N、周波数1Hz~200Hzの振動を入力する振動入力条件を設定した。そして、100Hzから200Hzの範囲の周波数帯におけるフロアパネル107の等価放射パワーの周波数応答を制振性の評価対象とした。
【0087】
図4に、上記の振動入力条件の下で求めたフロアパネル107の等価放射パワーの周波数応答の結果を示す。
【0088】
樹脂材料の最適な形状についての最適化解析は、車体部品同士の空間に樹脂材料を貼付又は塗布する態様と(実施例1、実施例2)と、車体部品の片面のみに樹脂材料を貼付又は塗布する態様(実施例3)について実施した。
【0089】
<実施例1>
実施例1では、
図5(b)に示すように、ホワイトボディ構造100における車体部品同士の空間に設計空間111を設定した。車体部品同士の空間として、フロントサイドメンバー101、サイドシル103及びAピラーロア106、リアサイドメンバー105及びトンネル108等のそれぞれに対して、設計空間111a、111b、111c、111d等を設定した。
【0090】
次に、設定した設計空間111について、ソリッド要素を用いて要素分割し、樹脂材料モデル113を生成した。樹脂材料モデル113の生成においては、ホワイトボディ構造100に設定した設計空間111a、111b、111c、111d等のそれぞれについて、樹脂材料モデル113a、113b、113c、113dを生成した。
図5(a)は、設計空間111および樹脂材料モデル113を取り出して表示したものである。
【0091】
続いて、生成した樹脂材料モデル113をホワイトボディ構造100に結合し、
図5(b)に示すように、最適化解析モデル115を生成した。最適化解析モデル115の生成において、樹脂材料モデル113の表面とその近傍の車体部品(例えば、樹脂材料モデル113aとその近傍のフロントサイドメンバー101)とは剛体ビーム要素にて結合した。
【0092】
続いて、最適化解析モデル115における樹脂材料モデル113の材料特性を設定した。実施例1では、樹脂材料モデル113の材料特性として、弾性率6.0GPa、密度1.4g/cm3(密度比弾性率は4285MPa/g・cm-3)減衰率0.15を設定した。
【0093】
続いて、最適化解析における最適化解析条件として、目的関数と、制約条件と、を設定した。
目的関数は、フロアパネル107の等価放射パワーの100Hzから200Hzまでの周波数帯における最大値の最小化、とした。
一方、制約条件は、樹脂材料モデル113の体積をホワイトボディ構造100に設定した設計空間の体積の10%以下とした。
【0094】
そして、上記のとおり設定した振動入力条件と最適化解析条件の下で、最適化解析モデル115における樹脂材料モデル113の最適な形状を求める最適化解析を行った。最適化解析には、密度法を用いたトポロジー最適化を適用した。
【0095】
図6に、最適化解析により求められた樹脂材料モデル113の最適な形状(最適形状樹脂材料モデル117)を示す。
【0096】
さらに、ホワイトボディ構造100に最適形状樹脂材料モデル117を結合し、最適化解析と同一の振動入力条件を与えて、フロアパネル107の等価放射パワーの周波数応答を算出した。
図7に、最適形状樹脂材料モデルを結合したホワイトボディ構造100におけるフロアパネルの等価放射パワーの周波数応答のグラフを示す。また、
図7には、比較として、最適形状樹脂材料モデル117を結合する前のホワイトボディ構造100について求めたフロアパネル107の等価放射パワーの周波数応答を併せて示す(破線)。
【0097】
図7に示すように、最適形状樹脂材料モデル117を結合したホワイトボディ構造100においては、100Hzから200Hzまでの周波数帯域におけるフロアパネル107の等価放射パワーERPの最大値が3.0dB低減した。この結果から、振動騒音低減対象部位であるフロアパネル107の制振性が向上していることが分かる。
【0098】
<実施例2>
実施例2では、実施例1における最適化解析モデル115における樹脂材料モデル113の材料特性(弾性率、密度)を変更し、密度比弾性率を実施例1とあわせて800~4300MPa/g・cm
-3の範囲で設定した。そして、実施例1の
図7と同様に、最適形状樹脂材料モデル117を結合したホワイトボディ構造100において、100Hzから200Hzまでの周波数帯域におけるフロアパネル107の等価放射パワーERPの最大値の低減量(ERP低減量)を求めた。ここで、ERP低減量は、最適形状樹脂材料モデル117を結合していない元のホワイトボディ構造100について求めたフロアパネル107の等価放射パワーの最大値を基準として算出した。
【0099】
表1に、樹脂材料モデル113の材料特性(弾性率、密度、減衰率)及び樹脂の密度比弾性率、等価放射パワーERPの最大値とERP低減量を示す。なお、表1には、元のホワイトボディ構造100ついて求めた等価放射パワーERPの最大値も併せて示す。
【0100】
【0101】
密度比弾性率が大きくなるに従い、ERP低減量は大きくなり、密度比弾性率が1000MPa/g・cm-3(実施例2-b)以上において、ERP低減量は1dB以上となった。さらに、密度比弾性率が1400MPa/g・cm-3(実施例2-d)以上において、ERP低減量は2dB以上となり、密度比弾性率が4286MPa/g・cm-3(実施例1)まで密度比弾性率の増加に伴い、ERP低減量は緩やかに向上した。
【0102】
この結果から、樹脂材料モデル113の密度比弾性率が大きいほど、振動騒音低減対象部位であるフロアパネル107の制振性が向上し、好ましくは1000(MPa/g・cm-3)以上、より好ましくは1400(MPa/g・cm-3)以上とすればよいことが分かる。
【0103】
<実施例3>
実施例3では、
図8(b)に示すように、ホワイトボディ構造100の下部を構成する車体部品(フロアパネル107を含む)の表面に沿う二次元空間を設計空間121として設定した。
【0104】
次に、設定した設計空間121について、
図8(b)に示すように、シェル要素を用いて樹脂材料モデル123を生成した。シェル要素を用いて樹脂材料モデル123を生成するにあたり、シェル要素の厚みは2mmとした。
図8(a)は設計空間121、樹脂材料モデル123を取り出して表示したものである。
【0105】
続いて、生成した樹脂材料モデル123をホワイトボディ構造100に結合し、
図8(b)に示すように、最適化解析モデル125を生成した。最適化解析モデル125の生成において、樹脂材料モデル123の表面とその近傍の車体部品とは剛体ビーム要素にて結合した。
【0106】
続いて、最適化解析モデル125における樹脂材料モデル123の材料特性を設定した。実施例2では、樹脂材料モデル123の材料特性として、弾性率6.0GPa、密度1.4g/cm3(密度比弾性率は4286MPa/g・cm-3)、減衰率0.15を設定した。
【0107】
次に、最適化解析条件として、目的関数と、制約条件と、を設定した。
目的関数は、最適化解析モデル125におけるフロアパネル107の等価放射パワーの100Hzから200Hzまでの周波数帯における最大値の最小化、とした。
一方、制約条件は、樹脂材料モデル123の体積を設計空間の体積の10%以下とした。
そして、上記のように設定した振動入力条件と最適化解析条件の下で、最適化解析モデル125における樹脂材料モデル123の最適な形状を求める最適化解析を行った。
最適化解析には、密度法を用いたトポロジー最適化を適用した。
【0108】
図9に、最適化解析により求められた樹脂材料モデル123の最適な形状(最適形状樹脂材料モデル127)を示す。
【0109】
さらに、
図10に、最適形状樹脂材料モデル127を結合したホワイトボディ構造100に対し、最適化解析と同一の振動入力条件を与えて算出した、フロアパネル107の等価放射パワーの周波数応答を示す。
【0110】
図10に示すように、最適形状樹脂材料モデル127を結合したホワイトボディ構造100においては、100Hzから200Hzまでの周波数帯域におけるフロアパネル107の等価放射パワーERPの最大値が2.0dB低減した。この結果から、車体部品の片面のみに設計空間を設定し、最適形状樹脂材料モデル127を求めた場合においても、振動騒音低減対象部位であるフロアパネル107の制振性が向上していることが分かる。