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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113232
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】コッター嵌入治具
(51)【国際特許分類】
   B25B 27/02 20060101AFI20240815BHJP
   F16L 55/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
B25B27/02 Z
F16L55/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018060
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】角井 邦大
(72)【発明者】
【氏名】石関 宏真
【テーマコード(参考)】
3C031
【Fターム(参考)】
3C031DD01
(57)【要約】
【課題】リング部材の周方向両端部間にコッターを嵌入する作業の作業性を向上させることが可能なコッター嵌入治具を提供する。
【解決手段】治具本体2と、治具本体2の一端側部分に設けられ、治具本体2の長手方向からコッターの端面に当接される打撃面3と、治具本体2の一端側部分に設けられ、打撃面3よりも治具本体2の一端側に突出するガイド部4と、を有する。ガイド部4は、治具本体2の長手方向に直交する方向からコッターの表面に当接される当接面4aを有する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路の内張り材の長手方向端部をシールするためのリング部材の周方向両端部間にコッターを嵌入する際に使用されるコッター嵌入治具であって、
治具本体と、
前記治具本体の一端側部分に設けられ、前記治具本体の長手方向から前記コッターの端面に当接される打撃面と、
前記治具本体の前記一端側部分に設けられ、前記打撃面よりも前記治具本体の一端側に突出するガイド部と、
を有し、
前記ガイド部は、前記長手方向に直交する方向から前記コッターの表面に当接される当接面を有することを特徴とするコッター嵌入治具。
【請求項2】
前記治具本体の前記一端側部分において、前記ガイド部に対して前記打撃面とは反対側に設けられ、前記長手方向に対して傾斜された傾斜面を有することを特徴とする請求項1に記載のコッター嵌入治具。
【請求項3】
前記ガイド部の前記当接面が前記コッターの前記表面に当接する方向を幅方向としたときに、前記幅方向における前記打撃面の幅は、前記幅方向における前記コッターの厚みよりも狭いことを特徴とする請求項1又は2に記載のコッター嵌入治具。
【請求項4】
前記リング部材の内周側において、前記リング部材の周方向両端部間に跨って配置された連結板と、前記コッターとの間に隙間が形成されており、
前記ガイド部の前記当接面が前記コッターの前記表面に当接する方向を幅方向としたときに、前記幅方向における前記ガイド部の幅は、前記幅方向における前記隙間の幅よりも狭いことを特徴とする請求項1又は2に記載のコッター嵌入治具。
【請求項5】
前記打撃面のうち、前記打撃面に対して前記ガイド部とは反対側の端部が面取りされていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコッター嵌入治具。
【請求項6】
前記打撃面が焼き入れされていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコッター嵌入治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路の内張り材の長手方向端部をシールするためのリング部材の周方向両端部間にコッターを嵌入する際に使用されるコッター嵌入治具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガス導管、上水道管、下水道管などの主として地中に略水平に埋設された管路に貼着した内張り材の長手方向端部をシールするために、内張り材の長手方向端部にC字状のリング部材を配置して、リング部材の周方向両端部間に、楔形片(コッター)を嵌入することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6021265号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リング部材の周方向両端部間にコッターを嵌入する際に、コッターに鋼材などの打撃片をあてがい、この打撃片をハンマーで叩くことでコッターを打ち込んでいる。そのため、打撃片がコッターから容易に外れやすく、コッターを嵌入する作業がし難いという問題がある。また、内張り材とリング部材との間は弾性部材でシールされているが、コッターから外れた打撃片が弾性部材に接触して弾性部材を傷つけると、シール性が低下する恐れがある。
【0005】
本発明の目的は、リング部材の周方向両端部間にコッターを嵌入する作業の作業性を向上させることが可能なコッター嵌入治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、管路の内張り材の長手方向端部をシールするためのリング部材の周方向両端部間にコッターを嵌入する際に使用されるコッター嵌入治具であって、治具本体と、前記治具本体の一端側部分に設けられ、前記治具本体の長手方向から前記コッターの端面に当接される打撃面と、前記治具本体の前記一端側部分に設けられ、前記打撃面よりも前記治具本体の一端側に突出するガイド部と、を有し、前記ガイド部は、前記長手方向に直交する方向から前記コッターの表面に当接される当接面を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、治具本体の一端側部分に設けられたガイド部は、治具本体の長手方向に直交する方向からコッターの表面に当接される当接面を有している。例えば、外部からの打撃が治具本体の他端側部分に加えられることで、コッターの端面に当接された打撃面がコッターを打撃する。これにより、コッターがリング部材の周方向両端部間に嵌入される。このとき、ガイド部の当接面がコッターの表面に当接されることで、打撃面がコッターから外れるのが抑制される。よって、リング部材の周方向両端部間にコッターを嵌入する作業の作業性を向上させることができる。また、コッターから外れた治具本体で、管路に貼着された内張り材や弾性部材が傷つくのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】管路の縦断面図である。
図2図1の要部Aの拡大図である。
図3図2のB-B断面図である。
図4】弾性部材の斜視図である。
図5】弾性部材の断面図である。
図6】リング部材の斜視図である。
図7】コッターを嵌合した状態のリング部材の斜視図である。
図8】コッター嵌入治具の側面図である。
図9図8をC方向から見た図である。
図10】コッター嵌入治具の斜視図である。
図11】コッター嵌入治具でコッターを打ち込んでいる様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
本発明の実施形態によるコッター嵌入治具は、管路の内張り材の長手方向端部をシールするためのリング部材の周方向両端部間にコッターを嵌入する際に使用されるものである。内張り材の長手方向端部は、内張り材の端部処理構造(端部処理構造)によってシールされる。端部処理構造は、上記のリング部材を有している。
【0011】
(端部処理構造の構成)
管路51の縦断面図である図1に示すように、管路51の内面には、内張り材52が内張りされる。管路51は、円筒状であって、地中に略水平方向に敷設されている。管路51は、例えば既設のガス導管路などである。管路51の内径は、例えば100~900mmである。
【0012】
内張り材52は、例えば、筒状織布の片面に熱可塑性樹脂層が被膜された構成であって、その厚みは例えば2~4mmである。内張り材52は、管路51の内面に接着剤(図示せず)によって接着されている。内張り材52の長手方向端部は、管路51の管端51aから所定距離離れた位置に配置されている。
【0013】
図1の要部Aの拡大図である図2、および、図2のB-B断面図である図3に示すように、端部処理構造100は、弾性部材53と、2つのリング部材(押さえ部材)55と、を有している。
【0014】
弾性部材53は、筒状であって、内張り材52の長手方向端部の内側に配置される。弾性部材53は、その軸方向中央部が内張り材52の縁に位置するように配置される。
【0015】
リング部材55は、例えば、SS400などの炭素鋼製であって、弾性部材53の内側に配置される。リング部材55は、管路51の長手方向における弾性部材53の両端部において、弾性部材53の内側にそれぞれ配置される。リング部材55は、弾性部材53の内周面に押し付けられている。
【0016】
弾性部材53の斜視図である図4に示すように、弾性部材53は、例えば、ニトリルゴム(NBR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)等の弾性材料で形成されている。弾性部材53のJIS6253に準拠したデュロメータA硬度(デジタル硬度計により計測)は、例えば60~70である。
【0017】
弾性部材53の断面図である図5に示すように、弾性部材53は、本体部53aと、4つのリブ部53bと、を有している。本体部53aは、弾性部材53の軸方向にわたって厚さが一定である。リブ部53bは、本体部53aの外周面から外側に突出している。弾性部材53の軸方向において、本体部53aの長さは、弾性部材53の長さと同じである。4つのリブ部53bは、それぞれ環状であって、弾性部材53の軸方向に間隔を空けて並んで配置されている。4つのリブ部53bの形状(突出高さ及び幅)はすべて同じである。リブ部53bは、弾性部材53の軸方向における弾性部材53の両端部に、2つずつ設けられている。弾性部材53の軸方向において、2つのリブ部53bがそれぞれ設けられた範囲には、リング部材55がそれぞれ配置される(図2参照)。
【0018】
本体部53aの外径は、弾性部材53が管路51内に設置される前の状態(弾性部材53に外力が作用していない状態)において、管路51の内径よりも大きくなっている。したがって、弾性部材53の外径も、管路51の内径よりも大きく、弾性部材53は、周方向に圧縮された状態で管路51の内面に沿って配置される。弾性部材53の外径は、例えば、管路51の内径に2mm足した数値に、さらに弾性部材53の厚み(例えば5mm)を足した数値である。
【0019】
また、弾性部材53は、リング部材55によって厚み方向に圧縮された状態で配置されている。弾性部材53を管路51の内面に周方向に圧縮して配置した状態からの厚み方向の圧縮率は5~20%が好ましく、特に10~20%が好ましい。
【0020】
外力が作用していない状態における弾性部材53の軸方向長さ、リブ部53bの軸方向長さ、および、リブ部53bの離隔距離の一例を図5に示す。なお、これらの数値は図示の数値に限定されない。なお、弾性部材53を気体が透過するのを防止するために、本体部53aの厚さは2mm以上が好ましい。また、管路51の内面に対する弾性部材53の追従性を高くするために、リブ部53bの突出高さは3mm以上が好ましい。
【0021】
リング部材55の斜視図である図6に示すように、リング部材55は、C字状に形成されたばね弾性を有する板状部材である。弾性部材53の端部に配置される2つのリング部材55(図2参照)は、互いの周長が若干異なるが、その他の構成は同じである。リング部材55の周方向両端部には、テーパー縁55aが形成されている。リング部材55の2つのテーパー縁55aは、リング部材55の軸方向に対して互いに逆方向に傾斜している。また、テーパー縁55aは、リング部材55の内周側に向かうほどテーパー縁55a同士の間隔が広くなるように、リング部材55の径方向に対して傾斜している(図3参照)。
【0022】
また、リング部材55の周方向両端部において、テーパー縁55aよりも内周側には、テーパー縁55aからリング部材55の周方向に突出した突出部55bが形成されている。この突出部55bは、後述するコッター56が、管路51の径方向内側に抜けるのを防止する役割を果たす。リング部材55の径方向における、リング部材55の周方向両端部の厚みは、突出部55bの分だけ他の部分よりも厚くなっている。なお、本実施形態では、リング部材55の周方向端部は、リング部材55の最下端に位置しているが、周方向端部の位置はこれに限定されるものではない。
【0023】
また、図2および図3に示すように、端部処理構造100は、コッター(楔形片)56と、敷板54と、連結板57と、を有している。コッター56を嵌合した状態のリング部材55の斜視図である図7に示すように、コッター56は、リング部材55の周方向両端部のテーパー縁55aの間に嵌合される。コッター56は、例えば、SS400などの炭素鋼製である。リング部材55の周方向におけるコッター56の両端部は、リング部材55の軸方向及び径方向に対して、テーパー縁55aとほぼ同じ角度で傾斜している。リング部材55の周方向において、コッター56のR形状は、リング部材55のR形状とほぼ同じであり、コッター56は、リング部材55の径方向にわずかに湾曲している。リング部材55の径方向において、コッター56の厚みは、リング部材55の周方向両端部以外の部分の厚みとほぼ同じである。
【0024】
図2および図3に示すように、敷板54は、リング部材55の周方向両端部およびコッター56と、弾性部材53の内面との間に配置されている。敷板54は、例えば、SUS316などのステンレス鋼製である。敷板54は、リング部材55の周方向両端部間にコッター56を挿入する際の滑りを良くするとともに、コッター56の挿入部分の圧着力を均一に保つためのものである。
【0025】
図7に示すように、連結板57は、リング部材55の内周側において、リング部材55の周方向両端部間に跨って配置されている。連結板57は、リング部材55の周方向両端部の内周面に、ネジ部材によって固定されている。連結板57は、例えば、SS400などの炭素鋼製である。リング部材55の径方向において、連結板57とコッター56との間には、リング部材55の突出部55bの幅だけ隙間が形成されている。
【0026】
(コッター嵌入治具の構成)
コッター嵌入治具1の側面図である図8図8をC方向から見た図である図9、および、コッター嵌入治具1の斜視図である図10に示すように、コッター嵌入治具1は、治具本体2と、打撃面3と、ガイド部4と、被打撃面5と、傾斜面6と、を有している。
【0027】
治具本体2は、鋼などの金属性であり、円柱状である。治具本体2の一端側部分(図8の左側部分)には、打撃面3、ガイド部4、および、傾斜面6がそれぞれ設けられている。治具本体2の他端側部分(図8の右側部分)の端面は、被打撃面5である。
【0028】
治具本体2の他端側部分は、把持部2aとなっている。把持部2aは、作業者が把持する部分である。把持部2aには、滑り止め加工が施されている。把持部2aは、治具本体2の他の部分よりも太くされている。把持部2aにおける治具本体2の一端側の端部には、鍔2bが設けられている。この鍔2bの直径は、把持部2aの直径よりも大きい。鍔2bは、把持部2aを把持する作業者の手が治具本体2の一端側に移動するのを防止するものである。
【0029】
打撃面3は、治具本体2の一端側部分の端面の一部を構成する。図11は、コッター嵌入治具1でコッター56を打ち込んでいる様子を示す図である。図11に示すように、打撃面3は、治具本体2の長手方向からコッター56の端面56aに当接される。
【0030】
図8図10に示すように、ガイド部4は、打撃面3よりも治具本体2の一端側(図中左側)に突出している。図8図9に示すように、ガイド部4は、その突出方向の側面に、当接面4aを有している。図11に示すように、当接面4aは、治具本体2の長手方向に直交する方向からコッター56の表面56bに当接される。コッター56の表面56bに当接面4aが当接したときに、リング部材55の周方向におけるコッター56の湾曲形状に沿うように、当接面4aはわずかに湾曲している。
【0031】
図8図10に示すように、被打撃面5には、外部からの打撃が加えられる。外部からの打撃が被打撃面5に加えられることで、コッター56の端面に当接された打撃面3がコッター56を打撃する。これにより、コッター56がリング部材55の周方向両端部間に嵌入される。このとき、図11に示すように、ガイド部4の当接面4aがコッター56の表面56bに当接されることで、打撃面3がコッター56から外れるのが抑制される。よって、リング部材55の周方向両端部間にコッター56を嵌入する作業の作業性を向上させることができる。また、コッター56から外れた治具本体2で、管路51に貼着された内張り材52や弾性部材53が傷つくのを抑制することができる。
【0032】
図8図9に示すように、傾斜面6は、ガイド部4に対して打撃面3とは反対側に設けられている。図8図10に示すように、傾斜面6は、治具本体2の長手方向に対して傾斜されている。傾斜面6は、治具本体2の一端側部分の端面の一部を構成する。
【0033】
傾斜面6は、治具本体2の長手方向に対して傾斜されているので、この傾斜面6で治具本体2の長手方向にコッター56を打撃するのは困難である。よって、傾斜面6ではなく、打撃面3でコッター56を打撃するように、作業者を促すことができる。
【0034】
図8図9に示すように、ガイド部4の当接面4aがコッター56の表面56bに当接する方向を幅方向とする。幅方向における打撃面3の幅は、幅方向におけるコッター56の厚みよりも狭い。よって、図11に示すように、打撃面3でコッター56を打撃する際に、コッター56よりも内張り材52側にある部材(弾性部材53)に打撃面3が当たるのを抑制することができる。これにより、コッター56よりも内張り材52側にある部材が打撃面3で傷つくのを抑制することができる。
【0035】
図11に示すように、連結板57とコッター56との間には、隙間sが形成されている。上述したように、リング部材55の周方向両端部の厚みが突出部55bの分だけ他の部分よりも厚くされていることで、この隙間sが形成されている。幅方向におけるガイド部4の幅(図8図9参照)は、幅方向(リング部材55の径方向)における隙間sの幅よりも狭い。よって、コッター56を嵌入していくと、ガイド部4が隙間sに入り込んでいく。これにより、ガイド部4に邪魔されることなく、リング部材55の周方向両端部間にコッター56を完全に嵌入することができる。
【0036】
図9に示すように、打撃面3のうち、この打撃面3に対してガイド部4とは反対側の端部が面取りされている。よって、打撃面3がコッター56からずれて、コッター56よりも内張り材52側にある部材に打撃面3が当接しても、この部材が傷つくのを抑制することができる。
【0037】
また、打撃面3が焼き入れされている。よって、打撃面3の摩耗や変形を抑制することができる。
【0038】
なお、リング部材55は、C字状の板状部材に限定されず、管路51の周方向に並んで配置された複数(例えば3つ)の円弧部材からなっていてもよい。この場合には、管路51の周方向に隣り合う円弧部材同士の間にコッター56がそれぞれ嵌入される。
【0039】
また、上記の実施形態では、治具本体2の被打撃面5(他端側部分)を打撃することで、リング部材55の周方向両端部間にコッター56を打ち込んで嵌入しているが、例えば、治具本体2の他端側部分を押すことで、リング部材55の周方向両端部間にコッター56を押し込んで嵌入してもよい。
【0040】
(内張り材の端部処理方法)
次に、内張り材52の長手方向端部を端部処理構造100でシールする、内張り材52の端部処理方法について説明する。
【0041】
まず、図1に示すように、管路51に内張りされた内張り材52の端部の内側に、弾性部材53を配置する。上述したように、施工前の弾性部材53の外径は管路51の内径よりも大きいため、管路51内に配置された弾性部材53には弛みが生じる。そこで、管路51の周方向の一か所に弾性部材53の弛みを寄せて、この弛みを内周側からハンマー等によって径方向に押しつぶすと同時に、弛みから周方向に約45°に離れた2箇所を掴んで下方に引き下げる。この動作を、弛みが無くなるまで複数回繰り返すことで、弾性部材53は周方向に圧縮される。これにより、管路51の長手方向における管端51aから遠い方の2つのリブ部53bは、内張り材52の内面に全周にわたって接し、管路51の長手方向における管端51a側の2つのリブ部53bは、管路51の内面に全周にわたって接する状態となる。
【0042】
次に、図2に示すように、弾性部材53の管端51aから遠い方の端部の内側に、リング部材55を配置する。リング部材55は、周方向両端部が最下端に位置するように配置する。また、リング部材55の周方向両端部と弾性部材53との間には、敷板54を配置する。
【0043】
次に、リング部材55を拡径させる。リング部材55の拡径は、公知の油圧式の拡径装置(図示せず)を用いて行う。なお、拡径装置を用いる方法以外の方法で、リング部材55を拡径させてもよい。次に、リング部材55を拡径させながら、リング部材55の周方向両端部のテーパー縁55aの間に、コッター56を嵌入する。このとき、本実施形態のコッター嵌入治具1を用いる。
【0044】
図11に示すように、コッター56の端面56aに当接された打撃面3がコッター56を打撃する。これにより、コッター56がリング部材55の周方向両端部間に嵌入される。このとき、ガイド部4の当接面4aがコッター56の表面56bに当接されることで、打撃面3がコッター56から外れるのが抑制される。よって、リング部材55の周方向両端部間にコッター56を嵌入する作業の作業性を向上させることができる。また、コッター56から外れた治具本体2で、管路51に貼着された内張り材52や弾性部材53が傷つくのを抑制することができる。
【0045】
ここで、図8図9に示すように、幅方向における打撃面3の幅は、幅方向におけるコッター56の厚みよりも狭い。よって、図11に示すように、打撃面3でコッター56を打撃する際に、コッター56よりも内張り材52側にある部材(弾性部材53)に打撃面3が当たるのを抑制することができる。これにより、コッター56よりも内張り材52側にある部材が打撃面3で傷つくのを抑制することができる。
【0046】
図11に示すように、コッター56を嵌入していくと、ガイド部4が隙間sに入り込んでいく。これにより、ガイド部4に邪魔されることなく、リング部材55の周方向両端部間にコッター56を完全に嵌入することができる。
【0047】
ここで、コッター56は、その嵌入方向における後端部分が余るように、嵌入方向の長さが長め(例えば200mm)に作られている。リング部材55を拡径させる圧力が所定圧力に達すると、コッター56にマーキングを施した後に、リング部材55の周方向両端部間から一旦コッター56を引き抜く。そして、コッター56の嵌入方向におけるコッター56の後端部分のうち、余分な部分を切断する。その後、リング部材55の周方向両端部間に、再びコッター56を挿入し、コッター嵌入治具1を用いて、リング部材55の周方向両端部間にコッター56を嵌入する。その後、拡径装置を取り外す。
【0048】
次に、弾性部材53の管端51a側の略半分をめくって、内張り材52の端面にシール剤(図示せず)を塗布してから、弾性部材53を元に戻す。その後、弾性部材53の管端51a側の端部の内側に、リング部材55を配置して、他方のリング部材55と同様に拡径およびコッター56の嵌入を行う。以上の工程により、内張り材52の端部がシールされる。
【0049】
その後、2つのリング部材55の各々に対して、リング部材55の周方向両端部の内周面に連結板57を固定する。リング部材55の周方向両端部が連結板57で連結されていることにより、たとえコッター56が位置ずれした場合であっても、リング部材55が縮径するのを防止することができる。
【0050】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係るコッター嵌入治具1によれば、図8に示すように、治具本体2の一端側部分に設けられたガイド部4は、治具本体2の長手方向に直交する方向からコッター56の表面56bに当接される当接面4aを有している。外部からの打撃が被打撃面5に加えられることで、コッター56の端面56aに当接された打撃面3がコッター56を打撃する。これにより、コッター56がリング部材55の周方向両端部間に嵌入される。このとき、図11に示すように、ガイド部4の当接面4aがコッター56の表面56bに当接されることで、打撃面3がコッター56から外れるのが抑制される。よって、リング部材55の周方向両端部間にコッター56を嵌入する作業の作業性を向上させることができる。また、コッター56から外れた治具本体2で、管路51に貼着された内張り材52や弾性部材53が傷つくのを抑制することができる。
【0051】
また、図8に示すように、治具本体2の一端側部分において、ガイド部4に対して打撃面3とは反対側には、傾斜面6が設けられている。傾斜面6は、治具本体2の長手方向に対して傾斜されているので、この傾斜面6で治具本体2の長手方向にコッター56を打撃するのは困難である。よって、傾斜面6ではなく、打撃面3でコッター56を打撃するように、作業者を促すことができる。
【0052】
また、図8に示すように、ガイド部4がコッター56の表面56bに当接する方向を幅方向としたときに、幅方向における打撃面3の幅は、幅方向におけるコッター56の厚みよりも狭い。よって、図11に示すように、打撃面3でコッター56を打撃する際に、コッター56よりも内張り材52側にある部材(弾性部材53)に打撃面3が当たるのを抑制することができる。これにより、コッター56よりも内張り材52側にある部材が打撃面3で傷つくのを抑制することができる。
【0053】
また、図8に示すように、ガイド部4がコッター56の表面56bに当接する方向を幅方向としたときに、幅方向におけるガイド部4の幅は、幅方向における隙間s(図11参照)の幅よりも狭い。よって、図11に示すように、コッター56を嵌入していくと、ガイド部4が隙間sに入り込んでいく。これにより、ガイド部4に邪魔されることなく、リング部材55の周方向両端部間にコッター56を完全に嵌入することができる。
【0054】
また、図9に示すように、打撃面3のうち、打撃面3に対してガイド部4とは反対側の端部が面取りされている。よって、打撃面3がコッター56から外れて、コッター56よりも内張り材52側にある部材(弾性部材53)に打撃面3が当接しても、この部材が傷つくのを抑制することができる。
【0055】
また、打撃面3が焼き入れされている。よって、打撃面3の摩耗や変形を抑制することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0057】
1 コッター嵌入治具
2 治具本体
3 打撃面
4 ガイド部
4a 当接面
5 被打撃面
6 傾斜面
51 管路
52 内張り材
53 弾性部材
54 敷板
55 リング部材
56 コッター(楔形片)
56a 端面
56b 表面
57 連結板
100 端部処理構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11