(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113237
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】水素アンモニア関連のアセット管理装置、管理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
F23C 1/00 20060101AFI20240815BHJP
F23N 5/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
F23C1/00
F23N5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018067
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】園田 隆
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓俊
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 輝幸
(72)【発明者】
【氏名】井上 由起彦
【テーマコード(参考)】
3K003
3K091
【Fターム(参考)】
3K003EA07
3K003FB00
3K003GA01
3K003GA03
3K003GA05
3K003HA04
3K091AA20
3K091BB02
3K091CC06
3K091CC12
3K091CC23
(57)【要約】
【課題】脱炭素目標の実現に向けて水素やアンモニア利用を行う最適なアセット管理を実施する。
【解決手段】アセット管理装置は、評価対象システムの設備状況と、実用可能な設備を表す設備情報と、評価対象システムに対する要求事項とを入力する入力部と、評価対象システムが、水素またはアンモニアの供給装置と、化石燃料と水素またはアンモニアとを混焼する燃焼装置と、燃焼装置の排気ガスから二酸化炭素を回収する回収装置とを備える場合に、選択肢となる供給装置と燃焼装置と回収装置との組み合わせを、設備状況と設備情報とに基づいて設定する選択肢設定部と、評価対象システムが排出する二酸化炭素に係る所定の指標をおよび要求事項に基づいて、目的関数と制約条件を設定し、選択肢を評価対象として、目的関数を最小化または最大化する選択肢を求める最適化部と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象システムの設備状況と、実用可能な設備を表す設備情報と、前記評価対象システムに対する要求事項とを入力する入力部と、
前記評価対象システムが、水素またはアンモニアの供給装置と、化石燃料と前記水素またはアンモニアとを混焼する燃焼装置と、前記燃焼装置の排気ガスから二酸化炭素を回収する回収装置とを備える場合に、選択肢となる前記供給装置と前記燃焼装置と前記回収装置との組み合わせを、前記設備状況と前記設備情報とに基づいて設定する選択肢設定部と、
前記評価対象システムが排出する二酸化炭素に係る所定の指標および前記要求事項に基づいて、目的関数と制約条件を設定し、前記選択肢を評価対象として、前記目的関数を最小化または最大化する前記選択肢を求める最適化部と、
を備える設備構成の提案を含むアセット管理装置。
【請求項2】
前記最適化部は、前記目的関数を最小化または最大化する、前記選択肢と、前記水素またはアンモニアと前記化石燃料との推奨混焼率とを求める
請求項1に記載のアセット管理装置。
【請求項3】
前記指標は、前記評価対象システムの二酸化炭素排出削減率、二酸化炭素削減コスト効率、二酸化炭素の単位排出量当たりの創出利益、または、バリューチェーン総二酸化炭素排出量の1つ以上を含む
請求項1または2に記載のアセット管理装置。
【請求項4】
前記選択肢設定部は、前記評価対象システムのメンテナンス情報および/または市場情報に基づき、段階的に混焼率を向上させるよう複数の前記選択肢を設定する
請求項3に記載のアセット管理装置。
【請求項5】
前記燃焼装置は、ガスタービン、ボイラ、発電用エンジンまたは舶用エンジンの1以上を含む
請求項4に記載のアセット管理装置。
【請求項6】
前記供給装置は、水素またはアンモニアの製造装置、貯蔵装置または輸送船の少なくとも1つを含む
請求項5に記載のアセット管理装置。
【請求項7】
前記評価対象システムは、前記排気ガスに対する脱硝装置または脱硫装置の少なくとも1つをさらに備える
請求項6に記載のアセット管理装置。
【請求項8】
前記設備情報は、前記実用可能な設備として前記燃焼装置の構成部品の一部を更新した設備を含む
請求項7に記載のアセット管理装置。
【請求項9】
評価対象システムの設備状況と、実用可能な設備を表す設備情報と、前記評価対象システムに対する要求事項とを入力するステップと、
前記評価対象システムが、水素またはアンモニアの供給装置と、化石燃料と前記水素またはアンモニアとを混焼する燃焼装置と、前記燃焼装置の排気ガスから二酸化炭素を回収する回収装置とを備える場合に、選択肢となる前記供給装置と前記燃焼装置と前記回収装置との組み合わせを、前記設備状況と前記設備情報とに基づいて設定するステップと、
前記評価対象システムが排出する二酸化炭素に係る所定の指標および前記要求事項に基づいて、目的関数と制約条件を設定し、前記選択肢を評価対象として、前記目的関数を最小化または最大化する前記選択肢を求めるステップと、
を含む管理方法。
【請求項10】
評価対象システムの設備状況と、実用可能な設備を表す設備情報と、前記評価対象システムに対する要求事項とを入力するステップと、
前記評価対象システムが、水素またはアンモニアの供給装置と、化石燃料と前記水素またはアンモニアとを混焼する燃焼装置と、前記燃焼装置の排気ガスから二酸化炭素を回収する回収装置とを備える場合に、選択肢となる前記供給装置と前記燃焼装置と前記回収装置との組み合わせを、前記設備状況と前記設備情報とに基づいて設定するステップと、
前記評価対象システムが排出する二酸化炭素に係る所定の指標および前記要求事項に基づいて、目的関数と制約条件を設定し、前記選択肢を評価対象として、前記目的関数を最小化または最大化する前記選択肢を求めるステップと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、設備構成の提案を含むアセット管理装置、管理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、次のようなシステムが記載されている。すなわち、特許文献1に記載されているシステムは、ガスタービンシステムを備える。また、このガスタービンシステムは、ガスタービンと、ガスタービンシステムから排気ガスを受けるように構成された後処理システムと、制御装置とを含む。また、この制御装置は、入力を受け、入力に基づいてガスタービンおよび後処理システムを有する産業プラントの作動挙動をモデル化し、産業プラント用の1つ以上の動作パラメータ設定値を決定し、コスト関数の出力を減らす1つ以上の動作パラメータ設定値を選択し、産業プラントを制御するために1つ以上の動作パラメータ設定値を適用するように構成されている。特許文献1に記載されているシステムでは、ガスタービンおよび後処理システムのための設定値をリアルタイムで生成することによって、例えば、効率を高めたり、排出量を減らしたりすることで、燃料費および生涯運転費を削減しながら、長期間にわたってコンプライアンスを維持し、触媒の健全性監視を提供することができるとされる。
【0003】
ところで、現在の脱炭素技術には、バリューチェーン全体でのCO2(二酸化炭素)をはじめとする排出ガス管理が求められており、その制約の中でシステム最適化を図る必要がある。また、既存設備からより脱炭素を実現する設備への移行において、実現可能かつ最も有効なアセット管理が課題となっている。また、本開示が対象とする水素やアンモニア関連設備については、既存の化石燃料からの段階的に置き換えが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、脱炭素目標の実現に向けて水素やアンモニア利用を行う最適なアセット管理を実施することができる設備構成の提案を含むアセット管理装置、管理方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る設備構成の提案を含むアセット管理装置は、評価対象システムの設備状況と、実用可能な設備を表す設備情報と、前記評価対象システムに対する要求事項とを入力する入力部と、前記評価対象システムが、水素またはアンモニアの供給装置と、化石燃料と前記水素またはアンモニアとを混焼する燃焼装置と、前記燃焼装置の排気ガスから二酸化炭素を回収する回収装置とを備える場合に、選択肢となる前記供給装置と前記燃焼装置と前記回収装置との組み合わせを、前記設備状況と前記設備情報とに基づいて設定する選択肢設定部と、前記評価対象システムが排出する二酸化炭素に係る所定の指標および前記要求事項に基づいて、目的関数と制約条件を設定し、前記選択肢を評価対象として、前記目的関数を最小化または最大化する前記選択肢を求める最適化部と、を備える。
【0007】
本開示に係る管理方法は、評価対象システムの設備状況と、実用可能な設備を表す設備情報と、前記評価対象システムに対する要求事項とを入力するステップと、前記評価対象システムが、水素またはアンモニアの供給装置と、化石燃料と前記水素またはアンモニアとを混焼する燃焼装置と、前記燃焼装置の排気ガスから二酸化炭素を回収する回収装置とを備える場合に、選択肢となる前記供給装置と前記燃焼装置と前記回収装置との組み合わせを、前記設備状況と前記設備情報とに基づいて設定するステップと、前記評価対象システムが排出する二酸化炭素に係る所定の指標および前記要求事項に基づいて、目的関数と制約条件を設定し、前記選択肢を評価対象として、前記目的関数を最小化または最大化する前記選択肢を求めるステップと、を含む。
【0008】
本開示に係るプログラムは、評価対象システムの設備状況と、実用可能な設備を表す設備情報と、前記評価対象システムに対する要求事項とを入力するステップと、前記評価対象システムが、水素またはアンモニアの供給装置と、化石燃料と前記水素またはアンモニアとを混焼する燃焼装置と、前記燃焼装置の排気ガスから二酸化炭素を回収する回収装置とを備える場合に、選択肢となる前記供給装置と前記燃焼装置と前記回収装置との組み合わせを、前記設備状況と前記設備情報とに基づいて設定するステップと、前記評価対象システムが排出する二酸化炭素に係る所定の指標および前記要求事項に基づいて、目的関数と制約条件を設定し、前記選択肢を評価対象として、前記目的関数を最小化または最大化する前記選択肢を求めるステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の設備構成の提案を含むアセット管理装置、管理方法およびプログラムによれば、脱炭素目標の実現に向けて水素やアンモニア利用を行う最適なアセット管理を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る設備構成の提案を含むアセット管理装置(以下、アセット管理装置ともいう)の構成例を示すブロック図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係る産業システムの構成例を示すブロック図である。
【
図3】本開示の第1実施形態に係る評価対象システムの構成例を示すブロック図である。
【
図4】本開示の第1実施形態に係るアセット管理装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図5】本開示の第1実施形態に係る設備状況の例を示す模式図である。
【
図6】本開示の第1実施形態に係る設備情報の例を示す模式図である。
【
図7】本開示の第1実施形態に係る要求事項の例を示す模式図である。
【
図8】本開示の第1実施形態に係る出力結果の例を示す模式図である。
【
図9】本開示の第1実施形態に係る出力結果の例を示す模式図である。
【
図10】本開示の第2実施形態に係る評価対象システムの構成例を示すブロック図である。
【
図11】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態に係る水素アンモニア関連の設備構成の提案を含むアセット管理装置、管理方法およびプログラムについて、図面を参照して説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0012】
<第1実施形態>
以下、本開示の第1実施形態に係る設備構成の提案を含むアセット管理装置、管理方法およびプログラムについて、
図1~
図9を参照して説明する。
図1は、本開示の第1実施形態に係るアセット管理装置の構成例を示すブロック図である。
図2は、本開示の第1実施形態に係る産業システムの構成例を示すブロック図である。
図3は、本開示の第1実施形態に係る評価対象システムの構成例を示すブロック図である。
図4は、本開示の第1実施形態に係るアセット管理装置の動作例を示すフローチャートである。
図5は、本開示の第1実施形態に係る設備状況の例を示す模式図である。
図6は、本開示の第1実施形態に係る設備情報の例を示す模式図である。
図7は、本開示の第1実施形態に係る要求事項の例を示す模式図である。
図8および
図9は、本開示の第1実施形態に係る出力結果の例を示す模式図である。
【0013】
(アセット管理装置の概要)
図1に示すように、本開示の第1実施形態に係るアセット管理装置10は、パーソナルコンピュータ、タブレット端末等の1または複数のコンピュータ等のハードウェアと、そのコンピュータが実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせ等から構成される機能的構成として次の各部を備える。すなわち、アセット管理装置10は、入力部11と、収集部12と、選択肢設定部13と、最適化部14と、出力部15と、記憶部16とを備える。本実施形態に係るアセット管理装置10は、例えば、プラント等の産業システムにおける既存設備からより脱炭素を実現する設備への移行に際し、設備構成を適切に提案等、管理するための装置である。ここで、
図2を参照して、アセット管理装置10の適用対象となる産業システムの例について説明する。
【0014】
(産業システム)
図2に示すように、アセット管理装置10の適用対象となる産業システム1は、例えば、混焼制御装置101と、水素/アンモニア供給装置102と、化石燃料供給装置103と、バルブ104および105と、燃焼装置106と、排気ガス処理装置107と、モニタリング装置110とを備える。なお、
図2では、黒塗りの矢印が燃料の流れを、白塗りの矢印が排気ガスの流れを、破線の矢印が制御信号の流れを、鎖線の矢印がセンサ信号の流れを示している。産業システム1は、例えば、プラント等の施設、船舶等の移動体等である。
【0015】
水素/アンモニア供給装置102は、バルブ104を介して燃焼装置106に対して水素またはアンモニア(燃料アンモニア)121を供給する。水素/アンモニア供給装置102は、例えば、水素製造装置、水素貯蔵タンク、アンモニア製造装置、アンモニア貯蔵タンク(貯蔵装置)等を含む。なお、水素/アンモニア供給装置102は、水素のみを供給する装置、アンモニアのみを供給する装置、または、水素とアンモニアを供給する装置とすることができる。
【0016】
化石燃料供給装置103は、バルブ105を介して燃焼装置106に対してLNG(液化天然ガス)、石炭等の化石燃料122を供給する。化石燃料供給装置103は、化石燃料の貯蔵装置等を含む。
【0017】
燃焼装置106は、例えば、ガスタービン(GT)、ボイラ、発電用エンジンまたは舶用エンジンの1以上を含み、水素/アンモニア供給装置102から供給された水素またはアンモニア121と、化石燃料供給装置106から供給された化石燃料122とを混焼する。
【0018】
燃焼装置106が排出した排気ガスと、水素/アンモニア供給装置102が排出した排気ガスとを含む排気ガス123は、排気ガス処理装置107へ入力される。ただし、水素/アンモニア供給装置102が、排気ガスを排出しない場合(例えば排気ガスを排出しない水素またはアンモニア製造装置で水素またはアンモニアを製造する場合)、あるいは、水素またはアンモニア製造装置を備えていない場合、水素/アンモニア供給装置102は排気ガスを排出しない。
【0019】
排気ガス回収装置107は、CO2回収装置と、脱硝装置、脱硫装置等とを備え、入力された排気ガス123からCO2を回収したり、窒素酸化物を除去したり、硫黄分を除去したりする。排気ガス回収装置107によって回収されたCO2(108)は、有効利用されたり、貯留されたりし、大気中には放出されない。一方、排気ガス回収装置107によって処理された処理済み排気ガス(109)は、例えば煙突等を介して大気中に放出される。処理済み排気ガス(109)に含まれるCO2(109a)は低濃度になっている。
【0020】
モニタリング装置110は、水素/アンモニア供給装置102、燃焼装置106、排気ガス処理装置107等において各種センサ等を用いて計測された所定の物理量を示すセンサ信号や、制御状態、制御指令等を示す制御信号等(以下、センサ信号と制御信号をまとめて運転状態信号という)を取得し、運転状態信号を混焼制御装置101へ出力する。なお、混焼制御装置101が取得するセンサ信号としては、例えば、燃料、排気ガス等の流量、各部の温度、圧力、出力、回転速度、CO2濃度等である。
【0021】
混焼制御装置101は、モニタリング装置110が出力した運転状態信号を入力し、例えば運転状態信号に基づいて混焼率の指令値を決定し、水素/アンモニア供給装置102、燃焼装置106、排気ガス処理装置107等に対して混焼率の指令値等を通知するとともに、バルブ104および105等を制御して混焼率等を調節する。水素/アンモニア供給装置が水素/アンモニア製造装置を備えている場合は、水素/アンモニア供給装置102は混焼率指令値に適合する運転を行う。また、例えば混焼制御装置101は、混焼率に応じた燃焼装置106の燃焼制御も行う。なお、混焼率は、化石燃料と水素またはアンモニアの混合比率を表す値であり、例えば、燃焼装置106に対する投入燃料の全熱量に占める水素またはアンモニアの熱量の比率とすることができる。混焼制御装置101は、例えば水素/アンモニア供給装置102、燃焼装置106、排気ガス処理装置107等の運転状態に応じて、予め設定されている混焼率の指令値を出力する。
【0022】
(評価対象システム)
次に、
図3を参照して、
図2に示す産業システム1において、
図1に示すアセット管理装置10が評価対象とするシステムについて説明する。ここで、本実施形態において評価対象とするシステムは、アセット管理装置10が最適な組み合わせを提案する際に組み合わせの対象となる複数の装置から構成される。
図3は、
図2に示す構成のうち、水素/アンモニア供給装置102、化石燃料供給装置103、燃焼装置106、および排気ガス処理装置107を示す。また、
図3に示す、排気ガス処理装置107は、CO
2回収装置111を備えている。CO
2回収装置111は、排気ガス123からCO
2を回収し、CO
2を利用する装置へ供給したり、CO
2を貯留(例えば所定の場所に輸送して地層内に隔離)したりする。さらに排気ガス処理装置107は、NOxなどCO
2以外の成分除去を強化するオプションも考慮される。
図3に示す例では、アセット管理装置10が評価対象とするシステム(以下、評価対象システムという)20は、水素/アンモニア供給装置102、燃焼装置106、および排気ガス処理装置107を含む。
【0023】
(アセット管理装置の構成および動作)
次に、
図1および
図4~
図9を参照して、
図1に示すアセット管理装置10の構成および動作例について説明する。
【0024】
入力部11は、例えばオペレータの入力操作等に応じて、評価対象システム20の「設備状況」と、実用可能な設備を表す「設備情報」と、更新後あるいは新規の評価対象システム20に対する「要求事項」とを入力する。入力部11は、入力した「設備状況」と、「設備情報」と、「要求事項」とを記憶部16に記憶する。なお、記憶部16は、例えば1または複数の記憶装置から構成される。
【0025】
評価対象システム20の「設備状況」は、更新の対象である既存の水素/アンモニア供給装置102、燃焼装置106、および排気ガス処理装置107についての情報であり、アセット管理装置10が新しい設備の構成を提案する際の基準となる設備についての情報である。既存設備を持たず新設を行う場合は「設備状況」の入力は不要である(例えば「設備状況」として「無し」を入力する)。
図5は、産業システム1が発電プラントであり、燃焼装置106がガスタービン(GT)発電装置であり、水素/アンモニア供給装置102が水素を供給し、排気ガス処理装置107がCO
2回収装置111である場合の「設備状況」の例E1を示す。
図5に示す「設備状況」の例E1は、産業システム1が発電プラントであり、発電プラントについての情報としてCO
2排出量に関する情報を含んでいる。このCO
2排出量に関する情報は、例えば、更新後の設備の組み合わせに対する比較基準となる。また、「設備状況」の例E1は、燃焼装置106についての情報としてGT発電装置の性能情報、メンテナンス情報およびモデル情報を含んでいる。性能情報は、例えば、発電性能等に関する情報である。メンテナンス情報は、当該装置のメンテナンスの時期や内容についての情報(例えば装置や部品の交換や整備の時期や内容、制御プログラム等のソフトウェアの更新の時期や内容等についての情報(以下、同様))である。モデル情報は、GT発電装置のプロセス構成要素を模擬したモデルを表す情報である。モデル情報を用いることで、例えば、GT発電装置の動作状態(出力、効率、温度、圧力等の状態)を推定したり、他の構成機器間との熱交換を推定したりすることができる(以下、モデル情報については同様である)。なお、モデルの作成手法について限定はなく、既存の技術を用いることができる。また、「設備状況」の例E1は、水素/アンモニア供給装置102についての情報として水素製造装置の性能情報、メンテナンス情報およびモデル情報と、水素貯蔵タンクの性能情報、メンテナンス情報およびモデル情報とを含んでいる。性能情報は、例えば、水素の製造能力、タンクの貯蔵量等に関する情報である。メンテナンス情報は、当該装置のメンテナンスの時期や内容についての情報である。また、「設備状況」の例E1は、排気ガス処理装置107についての情報としてCO
2回収装置の性能情報、メンテナンス情報およびモデル情報を含んでいる。性能情報は、例えば、CO
2回収装置の回収能力等に関する情報である。メンテナンス情報は、当該装置のメンテナンスの時期や内容についての情報である。
【0026】
また、実用可能な設備を表す「設備情報」は、設備の更新が予定される時期において、実用可能である設備と、実用可能となる時期が明確となっている設備についての情報を含む。ただし、実用可能となる時期が明確となっている設備についての情報は含んでいなくてもよい。また、実用可能となる時期がある程度幅をもっている(あるいは必ずしも明確でない)設備についての情報を含んでいてもよい。なお、設備の更新とは、設備や部品の交換(置き換え)や新設(追加設置等)、ソフトウェアの変更等を意味する。「設備情報」は、例えば、ある時期Aでは混焼率30%まで対応するGT発電装置が実用可能であり、時期Aより遅い時期Bでは混焼率50%まで対応するGT発電装置が実用可能であるという情報を含む。
図6は、「設備情報」の例E2を示す。
図6に示す「設備情報」の例E2は、例えば、GT発電装置Aについての性能情報、費用、導入可能時期およびモデル情報を含む。また、「設備情報」の例E2は、他に、GT発電装置B、GT発電装置Aの燃焼器のアップグレード、CO
2回収装置A、CO
2回収装置B、水素製造装置A、水素製造装置Bについて、性能情報、費用、導入可能時期およびモデル情報を含む。
【0027】
また、更新後あるいは新規の評価対象システム20に対する「要求事項」は、後述する最適化部14による最適化処理において用いる目的関数と制約条件を指定する情報を含む。あるいは、「要求事項」は、目的関数を指定する情報を含まずに制約条件を指定する情報を含んでいてもよい。この場合、目的関数は、例えば、予め設定しておくことができる。
図7は、「要求事項」の例E3を示す。「要求事項」の例E3において、目的関数は、例えば、CO
2排出削減率、CO
2削減コスト効率、単位CO
2排出量当たりの創出利益、バリューチェーン総二酸化炭素排出量等とすることができる。これらのCO
2排出削減率、CO
2削減コスト効率、単位CO
2排出量当たりの創出利益、および、バリューチェーン総二酸化炭素排出量は、いずれも評価対象システム20が排出する二酸化炭素に係る指標である。なお、後述する最適化部14による最適化処理では、1または複数の指標を目的関数として設定することができる。また、制約条件で示しているような発電出力やエネルギー効率等の産業システムに求められる指標を目的関数に組み合わせても良く、目的関数と制約条件を置き換えても良い。このような最適化問題の設定は、産業プラントの所有者等がカスタマイズすることができる。なお、各指標は、評価対象システム20を構成する全装置を対象として算出する(例えばCO
2排出量は全装置の総和で求める)。
【0028】
CO2排出削減率は、削減努力を測る指標であり、(CO2排出削減率)=((対策なしCO2排出量)-(対策ありCO2排出量))÷(対策なしCO2排出量)の式で算出することができる。ここで対策なしは更新前、対策ありは更新後を意味する。
【0029】
CO2削減コスト効率は、対策の有効性を測る指標であり、(CO2削減コスト効率)=((対策なしCO2排出量)-(対策ありCO2排出量))÷(CO2対策コスト)の式で算出することができる。
【0030】
単位CO2排出量当たりの創出利益は、経済の代償としてのCO2排出をどれくらい抑えるかを測る指標であり、(単位CO2排出量当たりの創出利益)=(創出利益)÷(対策ありCO2排出量)の式で算出することができる。ここで、創出利益は、対策ありCO2排出量のCO2の排出に伴って得られた経済的利益である。
【0031】
バリューチェーン総二酸化炭素排出量は、バリューチェーン全体での二酸化炭素排出量を測る指標であり、例えば水素やアンモニアをプラント内で製造せず、外部から調達する場合に、製造や輸送等において、外部で排出されたCO2を含めたCO2の排出量である。
【0032】
また、
図7は、「要求事項」の例E3では、制約条件は、発電出力下限、エネルギー効率下限、CO
2排出量上限、その他ガス成分上限、設備費上限、燃料費上限等である。更新後あるいは新規の設備構成は、この要求事項を満たすことが求められる。
【0033】
また、収集部12は、例えば、例えばオペレータの入力操作等に応じて、燃料価格、電力価格、炭素税等の市場情報を例えば外部の所定のサーバ等から収集する。ここには、環境規制や国・業界等の削減目標といった、法規制等の情報を含んでも良い。なお、これらの情報は、将来予測の値としてもよい。
【0034】
また、選択肢設定部13は、更新後あるいは新規の評価対象システム20が、水素/アンモニア供給装置102と、化石燃料と水素またはアンモニアとを混焼する燃焼装置106と、燃焼装置106の排気ガス123から二酸化炭素を回収するCO2回収装置111とを備える場合に、選択肢となる水素/アンモニア供給装置102と燃焼装置106とCO2回収装置111との組み合わせを、「設備状況」と「設備情報」とに基づいて1または複数組設定する。選択肢設定部13は、「設備状況」に含まれている複数の設備と「設備情報」に含まれている複数の設備との組み合わせを例えばオペレータの入力操作等に応じて決定し、1または複数組の評価対象の選択肢となる設備の組み合わせを設定する。設備の組み合わせは、例えば、既存の設備と新規の設備との組み合わせ、既存の設備に対する新規の設備の追加、既存の設備の新規の設備による置き換え等とすることができる。また、選択肢設定部13は、評価対象システム20のメンテナンス情報および/または市場情報に基づき、段階的に混焼率を向上させるよう複数の選択肢(採用時期が異なる複数の段階的な選択肢)を設定するようにしてもよい。
【0035】
また、最適化部14は、評価対象システムが排出する二酸化炭素に係る所定の指標および「要求事項」に基づいて目的関数と制約条件を設定し、選択肢設定部13が設定した1または複数組の選択肢を評価対象として、目的関数を最小化または最大化する選択肢を求める。また、最適化部14は、目的関数を最小化または最大化する、選択肢と、水素またはアンモニアと化石燃料との推奨混焼率とを求めてもよい。市場情報で水素アンモニアや化石燃料および電力の価格等の変動を仮想的に入力し、推奨混焼率の変動を評価することもできる。また、制約条件の判定に用いる選択肢の全体性能を表す数値(出力、効率、排出量等)、指標の値を計算するための数値等については、例えば、モデル情報等を用いたシミュレーション結果や収集部12が収集した情報等に基づいて算出することができる。また、選択肢設定部13が段階的な複数の選択肢を設定した場合、最適化部14は、段階毎に目的関数を最小化または最大化する選択肢を複数求める。
【0036】
また、出力部15は、最適化部14による最適化処理の結果に基づいて選択された選択肢を示す情報等を所定の出力装置へ出力する。
図8および
図9は、出力部15による出力結果の例を示す。
図8に示す出力結果の例E4では、設備構成の組み合わせとして、GT発電装置A、水素貯蔵タンクAおよびCO
2回収装置Aが最適な組み合わせとして選択されている。また、指標として用いたCO
2排出削減率の値、推奨混焼率の値等も示されている。一方、
図9は、GT発電装置Aの燃焼器のアップグレードによる混焼率の向上が可能となった時期における最適化処理の結果の例を示す。
図9に示す出力結果の例E5では、設備構成の組み合わせとして、GT発電装置Aの燃焼器のアップグレード、水素製造装置AおよびCO
2回収装置Bが最適な組み合わせとして選択されている。また、指標として用いたCO
2排出削減率の値、推奨混焼率の値等も示されている。
図9に示す出力結果の例E5は、例えば、GT発電装置Aの燃焼器のアップグレードによって混焼率を向上させることで、水素製造装置Aによる水素製造と、CO
2回収装置B(CO
2回収装置BはCO
2回収装置Aよりも混焼率が向上した排ガスにおいて例えば濃度が低下したCO
2の除去に適する)との組み合わせによってCO
2排出削減率が向上した場合に対応する。
【0037】
次に、
図4を参照して、アセット管理装置10の動作例について説明する。
図4に示す処理が開始されると、まず、実用可能な設備情報はデータベースから参照する(ステップS101)。次に、入力部11が、評価対象システム20の設備状況を入力する(ステップS102)。次に、入力部11が、評価対象システム20の要求事項を入力する(ステップS103)。次に、収集部12が、市場情報等を収集する(ステップS104)。ここで市場情報の将来予測値を仮想的に入力しても良い。次に、選択肢設定部13が、設備構成の選択肢を設定する(ステップS105)。次に、最適化部12が、選択肢の一つを選択する(ステップS106)。次に、最適化部12が、例えばオペレータの入力操作等に応じて、推奨混焼率を設定する(ステップS107)。次に、最適化部12が、選択肢の全体性能を計算する(ステップS108)。次に、最適化部12が、要求事項への適合性をチェックする(ステップS109)。適合していない場合(ステップS110:NO)、最適化部12は、必要に応じて推奨混焼率等のパラメータを再設定し(ステップS111)、再度、選択肢の全体性能を計算する(ステップS108)。適合している場合(ステップS110:YES)、最適化部12は、すべての選択肢を評価したか否かを判定する(ステップS112)。すべての選択肢を評価していない場合(ステップS112:NO)、最適化部12は、次の選択肢を選択し(ステップS106)、ステップS107以降の処理を再度実行する。すべての選択肢を評価していた場合(ステップS112:YES)、出力部15が、指標の値が最も良好である選択肢を選択し、選択した選択肢を示す情報等を出力し(ステップS113)、
図4に示す処理を終了する。
【0038】
(作用効果等)
本実施形態では、選択肢設定部13が、更新後あるいは新規の評価対象システム20が、水素/アンモニア供給装置102と、化石燃料と水素またはアンモニアとを混焼する燃焼装置106と、燃焼装置106の排気ガスから二酸化炭素を回収するCO2回収装置111とを備える場合に、選択肢となる水素/アンモニア供給装置102と燃焼装置106とCO2回収装置111との組み合わせを、評価対象システム20の既存の設備状況と、実用可能な設備を表す設備情報とに基づいて設定する。また、最適化部14は、評価対象システム20が排出する二酸化炭素に係る所定の指標および要求事項に基づいて、目的関数と制約条件を設定し、選択肢を評価対象として、目的関数を最小化または最大化する選択肢を求める。この構成によれば、例えば既存設備からより脱炭素を実現する設備へ移行することができる。また、本実施形態によれば、脱炭素目標の実現に向けて水素やアンモニア利用を行う最適なアセット管理を実施することができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、火力混焼アセット管理において、化石燃料を使用する既存設備を出発点として、脱炭素燃料(水素またはアンモニア)へ段階的に移行することができる。また、少なくとも脱炭素燃料供給、燃焼、ガス処理(モニタリングを含む)のプロセスで構成されたシステムを評価対象とすることができる。なお、脱炭素供給設備は、製造装置だけでなくタンク等の貯蔵・輸送等の設備を含むことができる。また、メンテナンス情報を容易に参照することができ、機器劣化などメンテナンス要素を考慮し、最新技術へのアップグレード/リプレースを計画する際に有用である。また、設備最適化の目的関数として、CO2排出削減率、CO2削減コスト効率、単位CO2当たり創出利益等を含み、これらの1つによる最適化や多目的最適化を行うことができる。また、設備最適化の制約条件として、燃料製造などバリューチェーン全体のCO2排出を考慮することができる。なお、本実施形態では、脱炭素燃料サプライチェーンの制約(供給量や時期など)も考慮するようにしてもよい。例えば、特に混焼に対応した設備の初期導入期に脱炭素燃料の供給量や経済性に課題ある場合には、CO2回収等の他の脱炭素技術を組み合わせることで脱炭素化に対応した設備構成を提案することができる。なお、コスト評価においては、炭素税や排出権取引など、事業に影響するものを考慮し適宜最新化を図ることが望ましい。また、最適化を実現する際にプロセス構成要素をモデル化したシミュレーションを行う場合には、構成機器間の熱交換の最適化も行うようにしてもよい。
【0040】
第1実施形態は、具体的な設備計画と効果予測が示されるので、評価対象システムを運営する事業者の投資判断が適切に行われることに寄与することができる。また、プロセス間の燃料・熱・電力等の融通も考慮することで、システム全体の経済性を向上させることができる。
【0041】
<第2実施形態>
次に、本開示の第2実施形態に係る設備構成の提案を含むアセット管理装置、管理方法およびプログラムについて、
図10を参照して説明する。
図10は、本開示の第2実施形態に係る評価対象システムの構成例を示すブロック図である。
【0042】
第1実施形態では、水素/アンモニア供給装置102が製造装置、貯蔵装置等の少なくとも1つを含むこととした。一方、第2実施形態では、評価対象システム20a(
図3の評価対象システム20に対応)において、水素/アンモニア供給装置102が、水素/アンモニア製造装置112と水素/アンモニア輸送・貯蔵装置113とを含む。水素/アンモニア輸送・貯蔵装置113は、水素またはアンモニアの輸送装置(輸送船等)と貯蔵装置とを含む。すなわち、第2実施形態は、水素/アンモニア供給装置102は、遠方の製造装置から輸送船等によって燃焼装置106の近傍の貯蔵装置まで輸送されることを前提とした装置である。第2実施形態では、水素/アンモニア製造装置112と、水素/アンモニア輸送・貯蔵装置113とを別装置として明示することで、種々の水素/アンモニア製造装置112と、種々の水素/アンモニア輸送・貯蔵装置113との組み合わせを容易に定義することができる。但し、設備所有者が複数になる場合には、アセット管理はそれぞれで行い、CO
2排出情報などを共有する運用となる。
【0043】
なお、第2実施形態のアセット管理装置の構成は、
図1に示す第1実施形態のアセット管理装置10の構成と基本的に同一である。脱炭素サプライチェーン管理において、脱炭素の評価は、燃料の製造段階まで遡るなど、バリューチェーン全体として議論されているため、第2実施形態では、発電設備の整備計画や運転においてもこの議論を考慮した最適化を行うことができる。また、現段階では、脱炭素燃料は供給インフラの整備状況等により供給量にも制約が生じる可能性があり、これについても考慮することが望ましい。
【0044】
第1実施形態で製造設備を有する場合、および第2実施形態では、水素製造において、化石燃料やバイオマスからの改質、およびコークス炉など工業プロセスの副生ガスの精製でのCO2回収ニーズ、再エネ等電力を用いた水電解や熱分解による製造等を評価することができる。これらの構成に対応した情報を、例えば制約条件等に追加することで、これらの構成を評価することができる(以下、同様)。また、アンモニア製造において、例えば、ハーバーボッシュ法に加え、触媒開発による新合成法等を検討することができる。また、輸送において、インフラとして、パイプライン・輸送船などの輸送手段や受入基地など、構成要素とすることもできる。また、タンク・ポンプ・コンプレッサ等の機器には、漏洩や故障などの安全対策が講じられていること等を考慮してもよい。なお、水素は、液化や有機ハイドライドでの輸送も検討されており、これらを考慮できるようにしてもよい。また、液化アンモニアは水素キャリアとしても注目されており、水素・アンモニア共通技術になり得え、この技術を考慮できるようにしてもよい。なお、他に、回収したCO2についても有効利用や貯留のための輸送を考慮するようにしてもよい。また、燃焼機器においては、水素・アンモニアの燃焼にて稼働や、GTCC(Gas Turbine Combined Cycle)・ボイラ・ガスエンジン・燃料電池・船等を考慮してもよい。また、関連機器として、発電により生じた排熱を用いたコージェネ等を考慮するようにしてもよい。この場合、排熱はCO2回収にも利用することができる。また、水素やアンモニア製造において、メタノール等の有用物質の合成も考えられる。また、水素還元製鉄など水素を用いた産業応用が幅広く検討されており、この技術を考慮するようにしてもよい。また、交通利用においては、水素自動車やアンモニアで動く船舶等と燃料を共有できるので、水素ステーションなどのインフラを介して需給で連携することで運用効率化が図れるようにすることを考慮するようにしてもよい。なお、CO2有効利用・貯留においては、回収したCO2を化成品の合成や鉱物化などに利用したり、地中や海中の貯留による要素を考慮できるようにしたりしてもよい。
【0045】
(第2実施形態の作用・効果)
バリューチェーン全体を扱うことができるため、燃料供給不足による稼働率低下のようなリスクを予測、回避することを評価対象とすることができる。また、脱炭素対策として、実効性と信頼度が向上する。
【0046】
<その他の実施形態>
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0047】
<コンピュータ構成>
図11は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、および、インタフェース94を備える。
上述のアセット管理装置10は、コンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。
【0048】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータは、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0049】
ストレージ93の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0050】
<付記>
各実施形態に記載のアセット管理装置10は、例えば以下のように把握される。
【0051】
(1)第1の態様に係るアセット管理装置10は、評価対象システム20の設備状況と、実用可能な設備を表す設備情報と、前記評価対象システムに対する要求事項とを入力する入力部11と、前記評価対象システムが、水素またはアンモニアの供給装置(水素/アンモニア供給装置102)と、化石燃料と前記水素またはアンモニアとを混焼する燃焼装置106と、前記燃焼装置の排気ガスから二酸化炭素を回収する回収装置(CO2回収装置111)とを備える場合に、選択肢となる前記供給装置と前記燃焼装置と前記回収装置との組み合わせを、前記設備状況と前記設備情報とに基づいて設定する選択肢設定部13と、前記評価対象システムが排出する二酸化炭素に係る所定の指標および前記要求事項に基づいて、目的関数と制約条件を設定し、前記選択肢を評価対象として、前記目的関数を最小化または最大化する前記選択肢を求める最適化部14と、を備える。本態様および以下の各態様によれば、例えば脱炭素目標の実現に向けて水素やアンモニア利用を行う最適なアセット管理を実施することができる。
【0052】
(2)第2の態様に係るアセット管理装置10は、(1)のアセット管理装置10であって、前記最適化部は、前記目的関数を最小化または最大化する、前記選択肢と、前記水素またはアンモニアと前記化石燃料との推奨混焼率とを求める。この態様によれば、装置構成と混焼率とを最適化することができる。
【0053】
(3)第3の態様に係るアセット管理装置10は、(1)または(2)のアセット管理装置10であって、前記指標は、前記評価対象システムの二酸化炭素排出削減率、前記評価対象システムの二酸化炭素削減コスト効率、前記評価対象システムの二酸化炭素の単位排出量当たりの創出利益、または、前記評価対象システムのバリューチェーン総二酸化炭素排出量の1つ以上を含む。
【0054】
(4)第4の態様に係るアセット管理装置10は、(1)~(3)のアセット管理装置10であって、前記選択肢設定部は、前記評価対象システムのメンテナンス情報および/または市場情報に基づき、段階的に混焼率を向上させるよう複数の前記選択肢を設定する。この態様によれば、段階的に混焼率を向上させるよう複数の選択肢を設定することができる。
【0055】
(5)第5の態様に係るアセット管理装置10は、(1)~(4)のアセット管理装置10であって、前記燃焼装置は、ガスタービン、ボイラ、発電用エンジンまたは舶用エンジンの1以上を含む。
【0056】
(6)第6の態様に係るアセット管理装置10は、(1)~(5)のアセット管理装置10であって、前記供給装置は、水素またはアンモニアの製造装置、貯蔵装置または輸送船の少なくとも1つを含む。
【0057】
(7)第7の態様に係るアセット管理装置10は、(1)~(6)のアセット管理装置10であって、前記評価対象システムは、前記排気ガスに対する脱硝装置または脱硫装置の少なくとも1つをさらに備える。
【0058】
(8)第8の態様に係るアセット管理装置10は、(1)~(7)のアセット管理装置10であって、前記設備情報は、前記実用可能な設備として前記燃焼装置の構成部品の一部を更新した設備を含む。
【符号の説明】
【0059】
1…産業システム
10…設備構成の提案を含むアセット管理装置(アセット管理装置)
11…入力部
12…収集部
13…選択肢設定部
14…最適化部
15…出力部
16…記憶部
20、20a…評価対象システム
101…混焼制御装置
102…水素/アンモニア供給装置
103…化石燃料供給装置
104、105…バルブ
106…燃焼装置
107…排気ガス処理装置
108…モニタリング装置
111…CO2回収装置
112…水素/アンモニア製造装置
113…水素/アンモニア輸送・貯蔵装置