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  • 特開-FRP板ばね及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113239
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】FRP板ばね及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/42 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
B29C70/42
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018070
(22)【出願日】2023-02-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000176833
【氏名又は名称】三菱製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉野 友梨
(72)【発明者】
【氏名】佐野 正典
(72)【発明者】
【氏名】佐山 博信
(72)【発明者】
【氏名】川尻 剛大
(72)【発明者】
【氏名】平山 紀夫
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AA36
4F205AD16
4F205AG08
4F205AH05
4F205AR02
4F205AR08
4F205AR17
4F205HA02
4F205HA06
4F205HA08
4F205HA14
4F205HA25
4F205HA33
4F205HA37
4F205HA46
4F205HB01
(57)【要約】
【課題】FRP板ばねの生産性及び耐クリープ特性という少なくとも2つの要求を満たす。
【解決手段】FRP板ばね7の製造方法は、強化用繊維束2を引き揃えて供給する工程と、少なくとも2種類のマトリックス樹脂用の液体21を送液する工程と、2種類の液体21を混合する工程と、混合した液状のマトリックス樹脂3を強化用繊維束2に含浸させる工程と、マトリックス樹脂3を含浸した強化用繊維束2を、周方向に一列に並んだ複数の成形溝54を有するマンドレル52に巻き付けて厚み方向に重ねる工程と、成形溝54に巻き付けられた未硬化樹脂繊維複合材4を加熱して一次硬化させる工程と、一次硬化した硬化樹脂繊維複合材5を、隣り合う成形溝54の間で切断して複数の繊維強化樹脂成形体6に脱形する工程と、繊維強化樹脂成形体6をプレス成形して二次硬化させる工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化用繊維束を引き揃えて供給する工程と、
少なくとも2種類のマトリックス樹脂用液体を送液する工程と、
前記2種類のマトリックス樹脂用液体を混合する工程と、
混合した液状のマトリックス樹脂を前記強化用繊維束に含浸させる工程と、
前記マトリックス樹脂を含浸した前記強化用繊維束を、周方向に一列に並んだ複数の成形溝を有するマンドレルに巻き付けて厚み方向に重ねる工程と、
前記成形溝に巻き付けられた未硬化樹脂繊維複合材を加熱して一次硬化させる工程と、
一次硬化した硬化樹脂繊維複合材を、隣り合う前記成形溝の間で切断して複数の繊維強化樹脂成形体に脱形する工程と、
前記繊維強化樹脂成形体をプレス成形して二次硬化させる工程と、
を含む、FRP板ばねの製造方法。
【請求項2】
含浸時の前記マトリックス樹脂の粘度が20mPa・s以上且つ1000mPa・s未満であり、液状の前記マトリックス樹脂を前記強化用繊維束に垂らして含浸させる、請求項1に記載のFRP板ばねの製造方法。
【請求項3】
前記マンドレルへの前記未硬化樹脂繊維複合材の巻付速度を10m/min以上且つ60m/min未満とし、前記2種類のマトリックス樹脂用液体の流量を3mL/min以上且つ20mL/min未満とし、且つ、前記マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、一次硬化温度を60℃以上且つ180℃未満とする、請求項1又は2に記載のFRP板ばねの製造方法。
【請求項4】
プレス圧を0.5MPa以上且つ20MPa未満とし、前記マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、プレス成形時の二次成形温度を150℃以上とする、請求項1又は2に記載のFRP板ばねの製造方法。
【請求項5】
前記強化用繊維束の形態をロービング系及びヤーン系のいずれかとし、FW法により一方向プリフォーム材である前記繊維強化樹脂成形体を一次成形した後、プレス成形法により前記一方向プリフォーム材を二次成形する、請求項1又は2に記載のFRP板ばねの製造方法。
【請求項6】
前記FRP板ばねの繊維体積含有率を30%以上とし、前記繊維強化樹脂成形体のプレス圧を1.0MPa以上且つ20MPa未満とし、且つ前記強化用繊維束に炭素繊維及びガラス繊維のいずれかを用いる、請求項1又は2に記載のFRP板ばねの製造方法。
【請求項7】
前記マトリックス樹脂を成形現場において前記強化用繊維束に含浸させる前には25℃での粘度が1000mPa・s未満の低粘度のモノマー状態であり、前記強化用繊維束に含浸させた後に加熱することで20分以内に直鎖状に重合する現場重合型の熱可塑性樹脂とし、前記熱可塑性樹脂がウレタン系、エポキシ系、アクリル系、及びポリアミド系のうちのいずれか一つである、請求項1又は2に記載のFRP板ばねの製造方法。
【請求項8】
前記成形溝は、一対の側面と、一対の側面により囲まれる底面と、により構成され、前記側面及び前記底面がいずれも平面である、請求項1又は2に記載のFRP板ばねの製造方法。
【請求項9】
FRP板ばねであって、
熱可塑性樹脂からなるマトリックス樹脂と、
前記マトリックス樹脂中に存在していて前記FRP板ばねの長手方向に延び且つ前記FRP板ばねの厚み方向に重なる複数の強化用繊維束と、
を備え、
前記マトリックス樹脂のガラス転移温度が120℃以上である、FRP板ばね。
【請求項10】
前記FRP板ばねの曲げクリープひずみ量が0%以上且つ6%未満である、請求項9に記載のFRP板ばね。
【請求項11】
前記FRP板ばねの振動減衰特性を示す損失係数が0.5以上である、請求項9又は10に記載のFRP板ばね。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、FRP板ばね及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、FRP(繊維強化プラスチック)板ばねの製造方法として、合成樹脂を含浸させた強化繊維をFW(フィラメントワインディング)法によりマンドレルに巻き付け、硬化させた成形物を切断して製造する方法が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭55-057737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、加熱することで三次元架橋する熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂として使用しているため、硬化時間が比較的長く、板ばねの生産性が低くなる傾向がある。また特許文献1に記載のマンドレルに巻き付けて加熱成形するだけでは、板ばねの寸法精度が良好ではない。
【0005】
一方、硬化後の分子構造が直鎖状であって三次元架橋構造をとらない熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として使用した場合は、熱可塑性樹脂の溶融粘度が非常に高いため、強化用繊維束の間にマトリックス樹脂を完全に含浸させることが非常に困難である。また、ポリプロピレン樹脂のようなガラス転移温度の低い樹脂を選定した場合は、高温高圧下で溶融樹脂を繊維束中に含浸させる大掛かりな成形設備が必要になってしまう。
【0006】
さらに、ガラス転移温度の低い樹脂をマトリックス樹脂として使用した場合には、温度又はひずみ速度に依存した非線形材料挙動を示し、室温レベルにおいても機械的性質が温度又は時間経過により大きく変化する。従って、長時間繰り返し負荷がかかる環境下で使用される板ばねを製造する場合は、クリープ現象による破断の可能性が極めて高い。
【0007】
そこで、本開示の技術は、上記課題に鑑み、FRP板ばねの生産性及び耐クリープ特性という少なくとも2つの要求を満たすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様によれば、
強化用繊維束を引き揃えて供給する工程と、
少なくとも2種類のマトリックス樹脂用液体を送液する工程と、
前記2種類のマトリックス樹脂用液体を混合する工程と、
混合した液状のマトリックス樹脂を前記強化用繊維束に含浸させる工程と、
前記マトリックス樹脂を含浸した前記強化用繊維束を、周方向に一列に並んだ複数の成形溝を有するマンドレルに巻き付けて厚み方向に重ねる工程と、
前記成形溝に巻き付けられた未硬化樹脂繊維複合材を加熱して一次硬化させる工程と、
一次硬化した硬化樹脂繊維複合材を、隣り合う前記成形溝の間で切断して複数の繊維強化樹脂成形体に脱形する工程と、
前記繊維強化樹脂成形体をプレス成形して二次硬化させる工程と、
を含む、FRP板ばねの製造方法が提供される。
【0009】
本開示の他の態様によれば、
FRP板ばねであって、
熱可塑性樹脂からなるマトリックス樹脂と、
前記マトリックス樹脂中に存在していて前記FRP板ばねの長手方向に延び且つ前記FRP板ばねの厚み方向に重なる複数の強化用繊維束と、
を備え、
前記マトリックス樹脂のガラス転移温度が120℃以上である、FRP板ばねが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、FRP板ばねの生産性及び耐クリープ特性という少なくとも2つの要求を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係るFRP板ばねの製造装置の構成図である。
図2】一実施形態に係るFRP板ばねの製造装置の構成図である。
図3】一実施形態に係るFRP板ばねを用いたリーフ式サスペンションの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について詳細に説明する。各図面において、同一構成要素には同一符号を付与し、重複した説明を適宜省略する。また本開示において「~」により範囲を示す場合は、当該範囲には下限値が含まれ、上限値が含まれないものとする。
【0013】
(板ばねの製造方法)
先ず、一実施形態に係るFRP板ばね7の製造方法について説明する。図1及び図2は一実施形態に係るFRP板ばね7の製造装置1の構成図である。製造装置1は、マトリックス樹脂3を含浸させた強化用繊維束2をFW法によりマンドレル52に巻き付けて加熱して一次硬化させ、マンドレル52から脱形した後にプレス成形して二次硬化させることにより、FRP板ばね7を製造する。
【0014】
より詳細には、製造装置1は、繊維供給部10と、液体供給部20と、混合部30と、含浸部40と、巻付部50と、一次硬化部60と、脱形部70と、二次硬化部80と、を備える。
【0015】
<繊維供給工程>
図1に示すように、繊維供給部10は、強化用繊維束2を引き揃えて含浸部40に供給する。繊維供給部10には、強化用繊維束2を所定の張力Fに制御する張力制御装置11が設けられる。張力制御装置11としては、クリールスタンドが挙げられる。クリールスタンドの張力制御方式は、張力精度に優れたサーボ制御式が好ましいが、パーマトルクを使用する磁気トルク式、パウダブレーキを使用するコンピュータ制御式等の他の制御方式を用いてもよい。
【0016】
張力制御装置11は、強化用繊維束2を巻き付けたボビン12から強化用繊維束2を引き出し、強化用繊維束2を複数のガイドロール13及びダンサーロール14に案内する。また、張力制御装置11は、巻付部50の動作に起因する強化用繊維束2の張力変動を吸収するため、ダンサーロール14の位置に応じてサーボモータ15により強化用繊維束2を所定の張力Fに制御する。強化用繊維束2の張力Fは、強化用繊維束2を構成する繊維によるが、20N~60Nであることが好ましく、より好ましくは25N~55Nであり、さらに好ましくは30N~50Nである。
【0017】
強化用繊維束2を構成する繊維としては、例えば、無機繊維、有機繊維、及び金属繊維等が挙げられる。無機繊維又は金属繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、炭化ケイ素繊維、ステンレス鋼繊維、アルミニウム繊維、アルミナ繊維、タングステンカーバイド繊維、及びバサルト繊維等が挙げられる。有機繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、及びポリフェニレンサルファイド繊維等が挙げられる。中でも、FRP板ばね7の曲げ弾性率等の観点からガラス繊維が好ましく、曲げ強度の観点から炭素繊維が好ましい。繊維は、1種を使用してもよいし、又は2種を併用してもよい。
【0018】
ガラス繊維の組成としては、例えば、Eガラス、Sガラス、及びCガラス等が挙げられる。特に曲げ強度及び曲げ弾性率の観点では、Eガラスが好ましく、より好ましくはSガラスである。ガラス繊維の断面は、円形であるが、楕円形等の扁平形状であってもよい。
【0019】
炭素繊維の組成としては、例えば、コールタールピッチ又は石油ピッチを原料とするピッチ系、ポリアクリロニトリルを原料とするPAN系、及びセルロース繊維を原料とするレーヨン系等が挙げられる。中でも、最終的に得られるFRP板ばね7の曲げ強度と曲げ弾性率のバランスの観点からPAN系炭素繊維が好ましい。
【0020】
強化用繊維束2の形態としては、例えば、数本~数百本のフィラメントを集束させたストランドを引き揃えたロービング系、及びストランドに撚りをかけて加工が施されたヤーン系等が挙げられる。また、強化用繊維束2の他の形態としては、例えば、ロービング系又はヤーン系を用いて長尺に加工が施された、織物、編物、及び不織布等が挙げられる。強化用繊維束2へのマトリックス樹脂3の含有率の観点では、ロービング系が好ましい。また、FRP板ばね7の長手方向の曲げ強度及び曲げ弾性率の観点ではヤーン系が好ましい。
【0021】
ボビン12には、例えば、ストランドを引き揃えて円筒状に巻いたロービング、単糸、合糸、及び合撚糸のいずれか一つを円筒状に巻いたヤーン、及び、長尺の織物、長尺の編物、及び長尺の不織布等のいずれか一つを円筒状に巻いたロール等がセットされる。また、複数のボビン12を用意して、複数のボビン12から複数の強化用繊維束2を引き揃えて供給してもよい。
【0022】
強化用繊維束2には、マトリックス樹脂3の結合を促進するシランカップリング剤等の表面処理剤が付与されてもよい。また、強化用繊維束2へのマトリックス樹脂3の含浸性を高めるため、強化用繊維束2を事前に加熱又は乾燥させて水分を除去してもよい。さらに、強化用繊維束2としては、予め樹脂を含浸させたトウプリプレグが用いられてもよい。
【0023】
FRP板ばね7に占める強化用繊維束2の繊維体積含有率Vfは、30%~70%であることが好ましく、より好ましくは40%~60%であり、さらに好ましくは45%~55%である。斯かる範囲であれば、FRP板ばね7の曲げ強度、耐クリープ特性、及び振動減衰特性のバランスに優れる。
【0024】
<液体供給工程>
液体供給部20は、マトリックス樹脂3の成分として、2個の容器22に貯留された少なくとも2種類の液体21を2本のチューブ24を介して混合部30に送液する。液体供給部20には、2種類の液体21を所定の流量にて送液する容積式ポンプ23が設けられる。容積式ポンプ23としては、例えば、往復ポンプ、及び回転ポンプ等が挙げられる。中でも、液体の脈動が少なく定量性に優れた回転ポンプが好ましい。
【0025】
往復ポンプとしては、ピストンポンプ、プランジャーポンプ、及びダイヤフラムポンプ等が挙げられる。回転ポンプとしては、ペリスタルティックポンプ(チューブポンプ)、ギヤポンプ、及びベーンポンプ等が挙げられる。中でも、ポンプ部材が液体に接触しないペリスタルティックポンプが好ましい。
【0026】
第1容積式ポンプ23aは、第1容器22aから第1液体21aを所定の流量ρ1にて第1チューブ24aを通じて送液する。第2容積式ポンプ23bは、第2容器22bから第2液体21bを所定の流量ρ2にて第2チューブ24bを通じて送液する。2種類の液体の流量ρは、マトリックス樹脂3の組成によるが、例えば、3mL/min~20mL/minが好ましく、より好ましくは5mL/min~18mL/min、さらに好ましくは7mL/min~16mL/minである。斯かる範囲であれば、FRP板ばね7の生産性と樹脂含有率RCとのバランスが優れる。
【0027】
マトリックス樹脂3の組成としては、例えば、リサイクル又はリユースによる環境負荷低減のため、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、架橋構造を持たない直鎖状の高分子であるため、加熱により再溶融ができ、二次賦形が容易である。一般に熱可塑性樹脂は、非常に粘度の高いポリマーの状態で供給されているため、高温高圧下で成形を行ったとしても、強化用繊維束2への良好な含浸が非常に難しい。そこで、成型現場において強化用繊維束2に含浸させる前には20℃~26℃での粘度が500mPa・s未満の低粘度のモノマー状態であり、強化用繊維束2に含浸させた後に加熱することで10分以内に直鎖状に重合する現場重合型の熱可塑性樹脂が好ましい。現場重合型の熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン系、エポキシ系、アクリル系、及びポリアミド系等が挙げられる。
【0028】
マトリックス樹脂3を熱可塑性ウレタン樹脂とする場合、第1液体21aには、一分子中に2個のイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物が含まれ、第2液体21bには、一分子中に2個の水酸基を有する2官能活性水素化合物が含まれる。ジイソシアネート化合物と2官能活性水素化合物とを1:1のモル比にて重付加させることにより、直鎖状に重合した熱可塑性ウレタン樹脂が生成される。
【0029】
2官能活性水素化合物がジオールを含む場合は、熱可塑性ポリウレタン樹脂になり、2官能活性水素化合物がジアミンを含む場合は、熱可塑性ポリウレア樹脂になる。2官能活性水素化合物がジオールとジアミンを含む場合は、熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂になる。
【0030】
ジイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、及びこれらの変性体等が挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、及び2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、他の脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、及び3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ジイソシアネートの変性体としては、脂肪族ジイソシアネートとジオールとを反応させてなるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー体、2官能のアダクト型変性体、2官能のアロファネート型変性体等が挙げられる。脂肪族ジイソシアネート及びその変性体は、1種を使用してもよいし、又は2種を併用してもよい。
【0031】
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート、4,4′-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、及び1,4-シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。また、他の脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、及び1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。脂環式ジイソシアネートの変性体としては、脂環式ジイソシアネートとジオールとを反応させてなるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー体、2官能のアダクト型変性体、2官能のアロファネート型変性体等が挙げられる。脂環式ジイソシアネート及びその変性体は、1種を使用してもよいし、又は2種を併用してもよい。
【0032】
活性水素化合物としては、例えば、ジオール、及びジアミン等が挙げられる。ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール等が挙げられる。また、他のジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノール、及びビスフェノールA等が挙げられる。ジオールは、1種を使用してもよいし、又は2種を併用してもよい。
【0033】
ジアミンとしては、例えば、ジメチルチオトルエンジアミン、ジエチルチオトルエンジアミン、ジプロピルチオトルエンジアミン等のジアルキルチオトルエンジアミン等が挙げられる。ジアミンは、1種を使用してもよいし、又は2種を併用してもよい。
【0034】
マトリックス樹脂3を熱可塑性エポキシ樹脂とする場合、第1液体21aには、一分子中に2個のエポキシ基を有する2官能エポキシ化合物と、一分子中に2個のフェノール性水酸基を有する2官能フェノール化合物と、を予め調合した主剤が含まれる。2官能エポキシ化合物と2官能フェノール化合物は、1:1のモル比で混合される。第2液体21bには、重合反応を開始又は促進する重合触媒である硬化剤が含まれる。また、第2液体21bには、含浸前の重合反応を抑制する反応遅延剤が含まれることが好ましい。
【0035】
2官能エポキシ化合物としては、例えば、カテコールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、及びt-ブチルヒドロキノンジグリシジルエーテル等の1個のベンゼン環を有する一核体芳香族ジエポキシ化合物等が挙げられる。他の2官能エポキシ化合物には、例えば、ジメチロールシクロヘキサンジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3,4-エポキシシクロヘキセニルカルボキシレート、及びリモネンジオキシド等の脂環式エポキシ化合物等が含まれる。さらに他の2官能エポキシ化合物としては、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタンジグリシジルエーテル、及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンジグリシジルエーテル等のビスフェノール型エポキシ化合物等が挙げられる。2官能エポキシ化合物は、1種を使用してもよいし、又は2種を併用してもよい。
【0036】
2官能フェノール化合物としては、例えば、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、t-ブチルヒドロキノン、及び2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン等の1個のベンゼン環を有する一核体芳香族ジヒドロキシ化合物等が挙げられる。他の2官能フェノール化合物としては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、及びビス(ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)等のビスフェノール等が挙げられる。さらに他の2官能フェノール化合物としては、例えば、ジヒドロキシナフタレン、ジアリルレゾルシン、ジアリルビスフェノールA等が挙げられる。2官能フェノール化合物は、1種を使用してもよいし、又は2種を併用してもよい。
【0037】
重合触媒としては、例えば、有機リン系化合物、1,2-アルキレンベンズイミダゾール、及び2-アリール-4,5-ジフェニルイミダゾール等が挙げられる。有機リン系化合物としては、例えば、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、及びシクロヘキシルジフェニルホスフィン等が挙げられる。また、他の有機リン系化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン-トリフェニルボラン錯体、トリ-m-トリルホスフィン-トリフェニルボラン錯体等が挙げられる。重合触媒の配合量としては、例えば、第1液体21aを100質量部とした場合に、0.1~10質量部が好ましく、より好ましくは0.4~6質量部であり、さらに好ましくは1~5質量部である。
【0038】
反応遅延剤としては、例えば、トリ-n-ブチルボレート、トリ-n-オクチルボレート、トリ-n-ドデシルボレート等のトリアルキルボレート、トリフェニルボレート等のトアリールボレート等が挙げられる。トリ-n-オクチルボレートは、室温で液状であるため混和性に優れていて、80℃以下で反応を著しく遅延するため、特に好ましい。反応遅延剤の配合量としては、例えば、重合触媒の1モルに対して0.1~2.0モルが好ましく、より好ましくは0.5~1.2モルであり、さらに好ましくは0.7~1.0モルである。
【0039】
マトリックス樹脂3を熱可塑性アクリル樹脂とする場合、第1液体21aには、(メタ)アクリル基を有するアクリル系モノマー化合物が含まれ、第2液体21bには、溶剤が含まれる。また、第3液体として、重合反応を開始又は促進する重合触媒が含まれることが好ましい。
【0040】
また、第1液体21aには、アクリル系モノマー化合物及び溶剤を予め調合した第1主剤が含まれ、第2液体21bには、重合反応を開始又は促進する重合触媒を含む第2硬化剤が含まれてもよい。アクリル系モノマー化合物、溶剤、及び重合触媒を溶液重合させることにより、直鎖状に重合した熱可塑性アクリル樹脂が生成される。
【0041】
アクリル系モノマー化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、及び(メタ)アクリル酸ヘキシル等が挙げられる。他のアクリル系モノマー化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、アクリルニトリル等が挙げられる。アクリル系モノマー化合物は、1種を使用してもよいし、又は2種を併用してもよい。
【0042】
溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸エチル、キシレン、トルエン、及びジメチルホルムアミド等が挙げられる。溶剤は、1種を使用してもよいし、又は2種を併用してもよい。
【0043】
重合触媒としては、例えば、有機系過酸化物、無機系過酸化物、及びアゾ化合物等が挙げられる。有機系過酸化物としては、例えば、t-ブチルハイドロパ-オキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパ-オキサイド、スクシン酸パ-オキサイド、パ-オキシマレイン酸t-ブチルエステル、及びクメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。無機系過酸化物としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸アンモニウム等が挙げられる。アゾ化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0044】
マトリックス樹脂3を熱可塑性ポリアミド樹脂とする場合、第1液体21aには、ラクタムモノマー化合物が含まれる。第2液体21bには、活性剤が含まれる。また、第3液体として、重合反応を開始又は促進する重合触媒が含まれることが好ましい。
【0045】
また、第1液体21aには、ラクタムモノマー化合物及び活性剤を予め調合した第1主剤が含まれ、第2液体21bには、重合反応を開始又は促進する重合触媒を含む第2硬化剤が含まれてもよい。ラクタムモノマー化合物、活性剤、及び重合触媒を混合することにより、直鎖状に重合した熱可塑性ポリアミド樹脂が生成される。
【0046】
ラクタムモノマー化合物としては、例えば、γ-ブチロラクタム、δ-バレロラクタム、及びε-カプロラクタム等が挙げられる。ラクタムモノマー化合物は、1種を使用してもよいし、又は2種を併用してもよい。
【0047】
活性剤としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソシアネートとブロックトイソシアネート、イソフタロイルビスカプロラクタム、テトラフタロイルビス-カプロラクタム、及びジメチルフタレート-ポリエチレングリコール等が挙げられる。また、他の活性剤としては、例えば、ビス酸塩化物と組み合せたポリオール、ビス酸塩化物と組み合せたポリジエン、及びホスゲンをカプロラクタムと反応させて得たカルボニルビスカプロラクタム等が挙げられる。活性剤は、1種を使用してもよいし、又は2種を併用してもよい。
【0048】
重合触媒としては、例えば、ナトリウムカプロラクタメート、カリウムカプロラクタメート、リチウムカプロラクタメート、臭化マグネシウムを付加したアルミニウムカプロラクタム、マグネシウムカプロラクタム、及びアルコキシド等が挙げられる。
【0049】
以上のマトリックス樹脂3には、必要に応じて添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、難燃剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、耐侯剤、帯電防止剤、防黴剤、吸湿剤、セラミックス粉末等の充填剤、顔料又は染料等の着色剤等が挙げられる。
【0050】
また、マトリックス樹脂3は、例えば、室温が23℃で、相対湿度が50%の恒温恒湿室で混合してから1万mPa・sの粘度に達するまでの時間(すなわち、ポットライフ)が30秒以上であることが好ましい。また、ポットライフは、より好ましくは60秒以上であり、さらに好ましくは90秒以上である。斯かる範囲であれば、マトリックス樹脂3の粘度が比較的低いため、強化用繊維束2の中に高い含有率で含浸させることが可能になる。
【0051】
また、FRP板ばね7に占めるマトリックス樹脂3の樹脂含有率RCは、30%~80%であることが好ましく、より好ましくは40%~70%であり、さらに好ましくは50%~60%である。斯かる範囲であれば、FRP板ばね7のプリフォーム材である繊維強化樹脂成形体6の成形し易さと、FRP板ばね7の曲げ弾性率及び曲げ強度のバランスとに優れる。
【0052】
また、重合後のマトリックス樹脂3のガラス転移温度Tgは120℃以上であることが好ましく、より好ましくは140℃以上であり、さらに好ましくは160℃以上である。斯かる範囲であれば、長時間の繰り返し負荷がかかる使用環境であっても、最終的に得られるFRP板ばね7の耐熱性及び耐クリープ特性が優れる。
【0053】
マトリックス樹脂3は、比較的短い硬化時間による生産性の観点と、リサイクル又はリユースによる環境負荷低減との観点と、から熱可塑性樹脂が好ましい。但し、FRP板ばね7を高温環境で使用する場合は、熱硬化性樹脂を用いてもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系、不飽和ポリエステル系、フェノール系、メラミン系、及びポリウレタン系等が挙げられる。熱硬化性樹脂の組成に関しては、公知のものを適宜用いることができる。
【0054】
<混合工程>
混合部30は、液体供給部20から供給された2種類の液体21を混合して液状のマトリックス樹脂3を生成し、マトリックス樹脂3を含浸部40に供給する。混合部30には、2種類の液体21を混合する混合器31が設けられる。混合器31としては、スタティックミキサー、及びダイナミックミキサー等が挙げられる。
【0055】
スタティックミキサーは、螺旋状の右ねじり要素と、螺旋状の左ねじり要素と、を一列に交互に並べて固定したものである。スタティックミキサーは、2種類の液体21を分割し、再合流させ、流れの方向を反転させることを繰り返しながら、2種類の液体21を均一に撹拌混合させる。ダイナミックミキサーは、撹拌羽根をモータ等により回転駆動させて2種類の液体21を撹拌混合させる。スタティックミキサー及びダイナミックミキサーは、生成されるマトリックス樹脂3の粘度に応じて適宜用いられることが好ましい。
【0056】
<含浸工程>
含浸部40は、混合部30で生成されたマトリックス樹脂3を強化用繊維束2に含浸させて未硬化樹脂繊維複合材4を生成し、未硬化樹脂繊維複合材4を巻付部50に供給する。含浸部40は、2種類の液体21が混合された後すぐに液状のマトリックス樹脂3を強化用繊維束2に垂らして含浸させる。含浸時のマトリックス樹脂3の粘度は、20mPa・s~1000mPa・sの範囲であることが好ましい。粘度が比較的低い液体の状態でマトリックス樹脂3を強化用繊維束2に含浸させるため、マトリックス樹脂3を強化用繊維束2の中に高い含有率で含浸させることができる。ひいては、ボイド(気泡)等の欠陥がなく、繊維体積含有率Vfを高め、剛性及び強度に優れたFRP板ばね7を製造することができる。
【0057】
また含浸部40には、液状のマトリックス樹脂3を強化用繊維束2の上に確実に垂らして含浸させるため、強化用繊維束2を含浸位置に案内する一対のガイド部材41が設けられている。ガイド部材41としては、リング状に形成されたガイドリング、又は、互いに平行に配置された2本のガイドバー等を用いることができる。
【0058】
第1ガイド部材41aは、繊維供給部10から供給される強化用繊維束2を含浸位置に案内する。第2ガイド部材41bは、巻付部50における巻付け動作に起因する未硬化樹脂繊維複合材4のバタつきを抑制することにより、強化用繊維束2を含浸位置に位置決めする。強化用繊維束2を含浸位置に安定的に位置決めすることにより、液状のマトリックス樹脂3を強化用繊維束2の上に確実に垂らして含浸させることが可能になる。強化用繊維束2に含浸されなかったマトリックス樹脂3は、含浸位置の下方に配置された樹脂槽42に収容される。
【0059】
さらに含浸部40には、余分なマトリックス樹脂3を未硬化樹脂繊維複合材4から除去する除去部材43が設けられる。除去部材43としては、例えば、ドクターブレード、絞りダイ、及び絞りロール等が挙げられる。除去部材43によって掻き落とされたマトリックス樹脂3は、除去部材43の下方に配置された樹脂槽42に収容される。
【0060】
なお、第1液体21aと第2液体21bを撹拌混合した瞬間から重合反応が始まるため、含浸部40には、複数の混合器31を設け、マトリックス樹脂3を滴下させる含浸位置を複数用意してもよい。含浸位置を複数用意することにより、滞留するマトリックス樹脂3の流動を促すことができる。また、マトリックス樹脂3を強化用繊維束2に垂らして含浸させるのではなく、強化用繊維束2を挟み込む複数の含浸ローラを設け、含浸圧をかけてマトリックス樹脂3を強化用繊維束2に含浸させてもよい。
【0061】
また含浸部40には、マトリックス樹脂3を予め収容した含浸槽内に強化用繊維束2を通過させて(潜らせて)、マトリックス樹脂3を強化用繊維束2に含浸させるディッピング法を用いてもよい。但し、含浸槽内のマトリックス樹脂3の粘度が少なくとも20mPa・s~1000mPa・sの範囲となるように調整することが好ましい。斯かる範囲であれば、マトリックス樹脂3を強化用繊維束2に高い含有率で含浸させることができる。また、粘度調整方法としては、例えば、含浸槽内の温度湿度調整、及び反応遅延剤の混合等が挙げられる。
【0062】
<巻付工程(一次成形工程)>
巻付部50は、含浸部40から供給された未硬化樹脂繊維複合材4をマンドレル52に巻き付けて厚み方向に重ねる。巻付部50には、未硬化樹脂繊維複合材4を挿通して水平方向に往復運動するデリバリーアイ51が設けられる。デリバリーアイ51は、マンドレル52の回転タイミングに合わせて水平方向に移動し、未硬化樹脂繊維複合材4をマンドレル52の巻付位置に案内する。デリバリーアイ51の水平方向への往復運動は、非図示の駆動制御装置のサーボモータ等により駆動制御される。
【0063】
マンドレル52は、周方向に一列に並んだ複数の成形溝54を有する。マンドレル52は側面視で多角形状に形成されており、多角形の各辺に成形溝54が設けられる。マンドレル52の側面視の形状としては、三角形状、四角形状、五角形状、及び六角形状等が挙げられる。また、マンドレル52の多角形状の各辺は、直線形状ではなく、円弧形状であってもよい。
【0064】
本例のマンドレル52は側面視で正三角形状であり、マンドレル52には3個の成形溝54が設けられている。マンドレル52に3個の成形溝54を設けることにより、1個のマンドレル52から3個の繊維強化樹脂成形体6に脱形することができる。ひいては、1個のマンドレル52から3個のFRP板ばね7を製造することが可能となり、FRP板ばね7の生産性を高める。
【0065】
成形溝54は、一対の側面と、一対の側面により囲まれる底面と、により構成される。底面の側面視の形状としては、円弧形状、及び直線形状等が挙げられる。特に側面及び底面が平面であることにより、マンドレル52から脱形される繊維強化樹脂成形体6は概ね直方体形状となり、繊維強化樹脂成形体6を二次成形し易くなる。斯かるマンドレル52の形状は、FRP板ばね7の生産性に寄与する。
【0066】
成形溝54は、溝長、溝幅、及び溝高を有する。成形溝54の長手方向はFRP板ばね7の長手方向となり、成形溝54の短手方向はFRP板ばね7の短手方向となる。3個の成形溝54の溝長、溝幅、及び溝高の各々は互いに同一であるため、1個のマンドレル52から、長さ、幅、及び厚さの各々が同じ3個の繊維強化樹脂成形体6を脱形することができる。
【0067】
また、3個の成形溝54の溝長、溝幅、及び溝高の少なくとも一つを異ならせることにより、1個のマンドレル52から、長さ、幅、及び厚さの少なくとも一つが異なる3個の繊維強化樹脂成形体6を脱形することも可能である。所望のFRP板ばね7の種類に応じて、多種多様な繊維強化樹脂成形体6を脱形することが可能である。
【0068】
成形溝54の溝高は、FRP板ばね7の所望の厚さの1.5倍以上であることが好ましく、より好ましくは2倍以上であり、さらに好ましくは2.5倍以上である。成形溝54の側面には、ミリ単位等の目盛りが設けられていることが好ましい。
【0069】
マンドレル52は回転軸53を有しており、回転軸53は非図示の駆動制御装置に接続される。マンドレル52は、駆動制御装置のサーボモータ等により回転軸53回りに所定の巻付速度V(未硬化樹脂繊維複合材4の搬送速度)で回転する。巻付速度Vは、強化用繊維束2へのマトリックス樹脂3の含有率及び含浸時間等を考慮して決定されることが好ましい。
【0070】
巻付速度Vは、例えば、10m/min~60m/minが好ましいが、より好ましくは15m/min~50m/minであり、さらに好ましくは20m/min~40m/minである。斯かる範囲であれば、強化用繊維束2へのマトリックス樹脂3の含有率と、FRP板ばね7の生産性とのバランスが優れる。
【0071】
未硬化樹脂繊維複合材4は、所定の巻付パターンで所定の厚みまでマンドレル52の成形溝54に巻き付けられる。巻付パターンとしては、例えば、パラレル巻き、及びヘリカル巻き等が挙げられる。FRP板ばね7の長手方向の曲げ強度が要求される場合、又は、平織りクロス等の織物の場合は、パラレル巻きが好ましい。また、FRP板ばね7の短手方向の強度が要求される場合には、ヘリカル巻きが好適である。
【0072】
<一次硬化工程>
一次硬化部60は、マンドレル52に巻き付けられた未硬化樹脂繊維複合材4を加熱し、未硬化樹脂繊維複合材4を一次硬化させることにより、硬化樹脂繊維複合材5を生成する。一次硬化部60には、マンドレル52に巻き付けられた未硬化樹脂繊維複合材4を加熱する加熱装置61が設けられる。加熱装置61としては、例えば、加熱炉、又は、マンドレル52の中に配置された電気ヒータ等が用いられる。
【0073】
加熱装置61として加熱炉を用いる場合、未硬化樹脂繊維複合材4が巻き付けられたマンドレル52ごと加熱炉に搬入し、未硬化樹脂繊維複合材4を加熱して一次硬化させ、硬化樹脂繊維複合材5を生成する。マンドレル52の加熱装置61への搬入及び加熱装置61からの搬出は、例えば、ハンドツールをアーム先端に取り付けた産業用ロボット等により行われてもよい。
【0074】
加熱装置61として電気ヒータを用いる場合、マンドレル52への未硬化樹脂繊維複合材4の巻き付けが完了した後、未硬化樹脂繊維複合材4を加熱して一次硬化させ、硬化樹脂繊維複合材5を生成する。
【0075】
加熱装置61は、未硬化樹脂繊維複合材4を所定の一次硬化温度T1及び所定の一次硬化時間t1で加熱し、未硬化樹脂繊維複合材4を一次硬化させ、硬化樹脂繊維複合材5を生成する。硬化樹脂繊維複合材5の硬化状態としては、半硬化状態、及び完全硬化状態等が挙げられる。
【0076】
マトリックス樹脂3に熱可塑性樹脂を用いる場合、一次硬化温度T1は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgよりも低い温度であればよく(T1<Tg)、好ましくはガラス転移温度Tgよりも10℃~40℃以上低い温度である。
【0077】
一次硬化温度T1としては、熱可塑性樹脂の組成によるが、例えば、60℃~180℃が好ましく、より好ましくは80℃~150℃であり、さらに好ましくは100℃~130℃である。斯かる範囲であれば、一次硬化時間t1と樹脂硬化度とのバランスに優れる。また、一次硬化時間t1としては、例えば、60分以下が好ましく、より好ましくは30分以下又は20分以下であり、さらに好ましくは10分以下である。
【0078】
一方、マトリックス樹脂3に熱硬化性樹脂を用いる場合、一次硬化温度T1は、完全硬化状態(Cステージ)よりも低い温度であればよく(T1<完全硬化温度)、好ましくは完全硬化温度よりも10℃~40℃以上低い温度である。
【0079】
一次硬化温度T1としては、熱硬化性樹脂の組成によるが、例えば、60℃~200℃が好ましく、より好ましくは70℃~190℃であり、さらに好ましくは80℃~180℃である。斯かる範囲であれば、一次硬化時間t1と樹脂硬化度とのバランスに優れる。また、一次硬化時間t1としては、例えば、3時間以下が好ましく、より好ましくは2時間30分以下であり、さらに好ましくは2時間以下である。
【0080】
<脱形工程>
脱形部70は、マンドレル52に巻き付けられた硬化樹脂繊維複合材5を切断し、マンドレル52から複数の繊維強化樹脂成形体6を脱形する。脱形部70には、硬化樹脂繊維複合材5を切断する切断装置71が設けられている。切断装置71としては、例えば、ダイヤモンドカッター、ウオータージェット加工機、及びレーザ加工機等が挙げられる。切断装置71による硬化樹脂繊維複合材5の切断は、例えば、切断装置71をアーム先端に取り付けた産業用ロボット等により行われてもよい。
【0081】
マンドレル52は、切断装置71がマンドレル52を傷付けずに硬化樹脂繊維複合材5を切断できるように、周方向に一列に並んだ複数の切断溝72を有することが好ましい。マンドレル52は側面視で多角形状に形成され、多角形の各頂点に切断溝72が設けられる。
【0082】
本例のマンドレル52は側面視で三角形状であるため、マンドレル52には3個の切断溝72が設けられている。マンドレル52に3個の切断溝72を設けることにより、マンドレル52を傷付けずに、硬化樹脂繊維複合材5から3個の繊維強化樹脂成形体6に切断することができる。
【0083】
3個の切断溝72の各々は、隣り合う2個の成形溝54の間に設けられている。第1切断溝72aは第1成形溝54aと第2成形溝54bとの間に設けられ、第2切断溝72bは第2成形溝54bと第3成形溝54cとの間に設けられ、第3切断溝72cは第3成形溝54cと第1成形溝54aとの間に設けられる。切断溝72の側面視の形状としては、V字形状、C字形状、及びU字形状等が挙げられる。
【0084】
3個の切断溝72の各位置で、マンドレル52に巻き付けられた硬化樹脂繊維複合材5を切断装置71で切断することにより、FRP板ばね7のプリフォーム材である3個の繊維強化樹脂成形体6が生成される。繊維強化樹脂成形体6の形状としては、直方体形状、及び円弧形状等が挙げられる。第1繊維強化樹脂成形体6a、第2繊維強化樹脂成形体6b、及び第3繊維強化樹脂成形体6cは、二次成形のし易さの観点から、いずれも概ね直方体形状である。
【0085】
<二次硬化工程(プレス成形工程)>
図2に示すように、二次硬化部80は、プリフォーム材である繊維強化樹脂成形体6をプレス成形して二次硬化させることにより、最終的なFRP板ばね7を生成する。二次硬化部80には、プレス機81が設けられる。プレス機81は、金型82を用いて繊維強化樹脂成形体6をプレス成形するが、複数の回転ロール等を用いて繊維強化樹脂成形体6をプレス成形(ロール曲げ等)してもよい。プレス機81は、金型82として上型82a及び下型82bを有し、上型82a及び下型82bはFRP板ばね7の最終形状に対応した窪みを有する。
【0086】
マトリックス樹脂3に熱可塑性樹脂を用いる場合、プレス機81としては、例えば、加熱装置61等で繊維強化樹脂成形体6を予備加熱して軟化させた後に、コールドプレスを行うものか、又はホットアンドコールドプレスを行うもの等が挙げられる。一方、マトリックス樹脂3に熱硬化性樹脂を用いる場合、プレス機81としては、例えば、加熱装置61等で繊維強化樹脂成形体6を予備加熱して軟化させた後にホットプレスを行うものか、又は予備加熱及び完全硬化をホットプレスで行うもの等が挙げられる。
【0087】
また、上型82a及び下型82bには、軟化した樹脂が接着しないように、金型にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)がコーティングされているか、又は上型82a及び下型82bの形状に対応する薄いPTFE製の中子型を設置することが好ましい。また、繊維強化樹脂成形体6のプレス機81への搬入及びプレス機81からの搬出は、例えば、ハンドツールをアーム先端に取り付けた産業用ロボット等により行われてもよい。
【0088】
マトリックス樹脂3に熱可塑性樹脂を用いる場合、例えば、繊維強化樹脂成形体6をガラス転移温度Tgよりも高くビカット軟化温度よりも低い軟化温度で予備加熱して軟化させ、所定のプレス圧P及び所定の二次成形温度T2でプレス成形を行う。プレス圧Pには、第1プレス圧、第2プレス圧、及び第3プレス圧等の複数のプレス圧が含まれてもよい。また、二次成形温度T2には、第1成形温度、第2成形温度、及び第3成形温度等の複数の成形温度が含まれてもよい。
【0089】
プレス圧Pとしては、例えば、1.0MPa~20.0MPaが好ましく、より好ましくは2.0MPa~15.0MPaであり、さらに好ましくは5.0MPa~10.0MPaである。斯かる範囲であれば、曲げ強度及び耐クリープ特性等の物性に優れると共に、プレス時のマトリックス樹脂3の過度な流動を抑制することができる。
【0090】
二次成形温度T2としては、熱可塑性樹脂の組成によるが、例えば、150℃~300℃が好ましく、より好ましくは180℃~250℃であり、さらに好ましくは200℃~220℃である。斯かる範囲であれば、二次成形時間t2と樹脂硬化度のバランスに優れる。なお、二次成形時間t2には、プレス成形時間に加え、予備加熱時間が含まれる。二次成形時間t2としては、例えば、60分以下が好ましく、より好ましくは40分以下であり、さらに好ましくは20分以下である。
【0091】
一方、マトリックス樹脂3に熱硬化性樹脂を用いる場合、例えば、繊維強化樹脂成形体6を半硬化状態(Bステージ)となる軟化温度で予備加熱して軟化させ、所定のプレス圧P及び所定の二次成形温度T2でプレス成形を行う。
【0092】
プレス圧Pとしては、例えば、0.5MPa~20MPaが好ましく、より好ましくは1MPa~15MPaであり、さらに好ましくは2MPa~10MPaである。斯かる範囲であれば、成形品内部のボイドがなく曲げ強度及び耐クリープ特性等の物性に優れると共に、プレス時のマトリックス樹脂3の過度な流動を抑制することができる。
【0093】
二次成形温度T2としては、熱硬化性樹脂の組成によるが、例えば、60℃以上且つ250℃未満が好ましく、より好ましくは80℃以上且つ200℃未満であり、さらに好ましくは100℃以上且つ180℃未満である。斯かる範囲であれば、二次成形時間t2と樹脂硬化度のバランスに優れる。二次成形時間t2としては、例えば、4時間以下が好ましく、より好ましくは3時間以下であり、さらに好ましくは2時間以下である。
【0094】
以上のように、本実施形態に係る製造方法では、FW法により未硬化樹脂繊維複合材4をマンドレル52で一次成形してプリフォーム材である繊維強化樹脂成形体6を生成した後、プレス成形法により繊維強化樹脂成形体6をプレス機81で二次成形する。FRP板ばね7の最終形状に近似したプリフォーム材の一次成形により、プレス機81による二次成形が容易になる。また、プレス成形により耐クリープ特性に優れたFRP板ばね7を製造することができる。従って、生産性及び耐クリープ特性に優れたFRP板ばね7を製造することができる。
【0095】
<他の成形工程>
二次成形工程の後、必要に応じて、三次成形工程、及び四次成形工程等を行ってもよい。三次成形工程及び四次成形工程としては、例えば、FRP板ばね7の端部をロール成形して目玉部を形成するロール工程、及び、FRP板ばね7の中央部を穴あけ加工してボルト締結用の貫通孔を形成する穴あけ工程等が挙げられる。
【実施例0096】
以下、実施例により本開示の技術をさらに具体的に説明するが、本開示の技術は次の実施例により限定されるものではない。
【0097】
図1に示す製造装置1を用いて室温が23℃で、相対湿度が50%の恒温恒湿室にて実施例及び比較例のFRP板ばねを製造し、以下に示す評価項目について評価した。
【0098】
(1)生産性
マンドレル52の巻付速度Vと、未硬化樹脂繊維複合材4の一次硬化時間t1と二次成形時間t2とを加算した合計成形時間taと、により、次のように評価した。
【0099】
◎:巻付速度Vが30m/min以上であり、合計成形時間taが1時間30分未満
〇:巻付速度Vが20m/min以上且つ30m/min未満であり、合計成形時間taが1時間30分以上且つ2時間未満
△:巻付速度Vが10m/min以上且つ20m/min未満であり、合計成形時間taが2時間以上且つ2時間30分未満
×:巻付速度Vが10m/min未満であり、合計成形時間taが2時間30分以上
【0100】
(2)耐熱性
JIS K7244-5に準拠し、曲げ振動法(非共振法)により動的粘弾性試験(DMA)を行ってガラス転移温度Tgを算出した。ダイヤモンド切断機により、長さが50mm、幅が10mm、厚さが2mmの短冊状の試験片を切り出した。動的粘弾性試験装置(セイコーインスツルメンツ(株)製、SIIEXSTAR6100 DMS)を用いて、昇温速度が1℃/min、周波数が1Hz、及び25℃~185℃の試験温度で両端曲げモードで測定を行った。ガラス転移温度Tgは、得られた貯蔵弾性率E´及び損失正接tanδの温度依存性の関係を示すグラフにおいて、損失正接tanδのピークを示す温度とした。ガラス転移温度Tgにより、次のように評価した。
【0101】
◎:ガラス転移温度が160℃以上
〇:ガラス転移温度が140℃以上且つ160℃未満
△:ガラス転移温度が120℃以上且つ140℃未満
×:ガラス転移温度が120℃未満
【0102】
(3)曲げ特性
JIS K7017に準拠し、静的4点曲げ試験を行った。強化用繊維束2が長さ方向に延び、厚み方向に重なるように、長さが300mm、幅が30mm、厚さが15mmの試験片を作製した。万能試験機((株)島津製作所、AG-25TB)を用いて曲げ強度を測定し、測定した曲げ強度σにより、次のように評価した。
【0103】
◎:曲げ強度σが700MPa以上
〇:曲げ強度σが600MPa以上700MPa未満
△:曲げ強度σが500MPa以上600MPa未満
×:曲げ強度σが500MPa未満
【0104】
(4)耐クリープ特性
JIS K7116及びJIS K7088に準拠し、3点負荷による曲げクリープ試験を行った。強化用繊維束2が長さ方向に延び、厚み方向に重なるように、長さが300mm、幅が30mm、厚さが15mmの試験片を作製した。室温が23℃で、相対湿度が50%の恒温恒湿室内で、卓上形精密万能試験機((株)島津製作所製、AGS-X)を用いて、支点間距離80mmにて試験片の中央に50Nの荷重を500時間加え、試験片のたわみを測定した。また、試験片のたわみから算出した曲げクリープひずみ量εtにより、次のように評価した。
【0105】
◎:曲げクリープひずみ量εtが0%以上且つ3%未満
〇:曲げクリープひずみ量εtが3%以上且つ6%未満
△:曲げクリープひずみ量εtが6%以上且つ10%未満
×:曲げクリープひずみ量εtが10%以上
【0106】
(5)振動減衰特性
JIS G0602に準拠し、振動減衰特性を測定した。強化用繊維束2が長さ方向に延び、厚み方向に重なるように、長さが250mm、幅が25mm、厚さが2mmの試験片を切り出した。室温が23℃で、単純支持打撃加振法により、両端自由はりにセットした試験片の中央をインパルスハンマ((株)小野測器製、GK-3100)により打撃加振して、加速度計((株)小野測器製、NP-3211)で振動波形を計測した。振動波形をFFT(Fast Fourier Transform)アナライザ((株)小野測器製、DS-3000))で解析して、減衰法により算出した損失係数により、次のように評価した。
【0107】
◎:損失係数が0.6以上
〇:損失係数が0.5以上且つ0.6未満
△:損失係数が0.4以上且つ0.5未満
×:損失係数が0.4未満
【0108】
なお、FRP板ばね7のボイド(気泡)の有無を確認するため、光学顕微鏡(オリンパス(株)、GX51)を用いて拡大倍率を50倍にしてFRP板ばね7の断面を観察した。
【0109】
(実施例1-3)
先ず、強化用繊維束2として、ガラス繊維ロービング(日東紡績(株)製、RS110QL-520)を用意し、張力制御装置11のボビン12にセットした。また、厚さ15mm以上のFRP板ばね7を製造するため、成形溝54の溝高が25mmで、側面視が正三角形のマンドレル52を用意し、強化用繊維束2の端部をマンドレル52にセットした。強化用繊維束2の張力はいずれも40Nとした。巻付速度Vは、強化用繊維束2へのマトリックス樹脂3の含有率による評価項目への影響を確認するため、実施例1では、20m/minとし、実施例2では、30m/minとし、実施例3では、40m/minとした。
【0110】
マトリックス樹脂3は、現場重合型熱可塑性ウレタン樹脂として、第1液体21aと、第2液体21bと、からなる二液硬化型組成物を用意した(第一工業製薬(株)製、H-6FP22)。第1液体21aには、ジアルキルチオトルエンジアミンが含まれ、第2液体21bには、脂肪族ジイソシアネートの変性体が含まれる。そして、第1液体21aを第1容器22aに投入し、第2液体21bを第2容器22bに投入した。
【0111】
FRP板ばね7の繊維体積含有率Vfの差異による評価項目への影響を確認するため、第1液体21aと第2液体21bの配合比に応じて2種類の液体21の各流量を変化させた。実施例1では、FRP板ばね7の繊維体積含有率Vfが概ね50%になるように、第1液体21aの流量ρ1を7mL/minとし、第2液体21bの流量ρ2を6mL/minとした。実施例2では、FRP板ばね7の繊維体積含有率Vfが概ね55%になるように、第1液体21aの流量ρ1を9mL/minとし、第2液体21bの流量ρ2を8mL/minとした。実施例3では、FRP板ばね7の繊維体積含有率Vfが概ね60%になるように、第1液体21aの流量ρ1を11mL/minとし、第2液体21bの流量ρ2を10mL/minとした。
【0112】
容積式ポンプ23としてペリスタルティックポンプを用いて2種類の液体21を送液し、混合器31としてスタティックミキサーを用いて撹拌混合させ、強化用繊維束2であるガラス繊維束上に現場重合型ウレタン樹脂を滴下した(垂らした)。現場重合型ウレタン樹脂をガラス繊維束に含浸させた未硬化樹脂繊維複合材4をパラレル巻きでマンドレル52に巻き付けた。そして、加熱装置61である加熱炉に、未硬化樹脂繊維複合材4を巻き付けたマンドレル52を搬入し、一次硬化させた硬化樹脂繊維複合材5を作製した。実施例1-3のいずれも、未硬化樹脂繊維複合材4の一次硬化温度T1を120℃とし、一次硬化時間t1を10分とした。
【0113】
次いで、一方向プリフォーム材である3個の繊維強化樹脂成形体6をマンドレル52から脱形した。そして、一方向プリフォーム材である繊維強化樹脂成形体6を210℃×30minで予備加熱した後、プレス機81の金型82にチャージして加熱プレスした。実施例1-3のいずれも、プレス機81による二次成形温度T2を210℃とした。
【0114】
プレス機81のプレス圧Pの差異による評価項目への影響を確認するため、プレス圧Pを変化させた。実施例1では、プレス圧Pを1~4MPa(第1プレス圧を1MPa×10分、第2プレス圧を4MPa×1分)とした。実施例2では、プレス圧Pを0.75~3MPa(第1プレス圧を0.75MPa×10分、第2プレス圧P2を3MPa×1分)とした。実施例3では、プレス圧Pを0.5~2MPa(第1プレス圧P1を0.5MPa×10分、第2プレス圧P2を2MPa×1分)とした。
【0115】
また、予備加熱時間による評価項目への影響を確認するため、二次成形時間t2を変化させた。実施例1では、二次成形時間t2を41分(予備加熱時間30分+プレス時間11分)とし、実施例2では、二次成形時間t2を31分(予備加熱時間20分+プレス時間11分)とし、二次成形時間t2を21分(予備加熱時間10分+プレス時間11分)とした。以上の組成及び製造条件にて、実施例1-3について、長さ300mm×幅30mm×厚さ15mmのFRP板ばね7を製造し、各評価項目に応じた試験片を用意し、各評価項目を測定した。
【0116】
(実施例4-6)
次に、強化用繊維束2として、炭素繊維ヤーン(東レ(株)製、T700SC-24000)を用意し、マトリックス樹脂3として、現場重合型熱可塑性ウレタン樹脂である二液硬化型組成物を用意した(第一工業製薬(株)製、H-6FP22)。実施例4-6の各々の製造条件については、実施例1-3の各々と同じ条件とした。以上の組成及び製造条件にて、実施例4-6について、長さ300mm×幅30mm×厚さ15mmのFRP板ばね7を製造し、各評価項目に応じた試験片を用意し、各評価項目について測定した。
【0117】
(比較例1)
実施例1~6の各評価項目の比較対象として、ガラス繊維を強化用繊維とし、熱硬化性エポキシ樹脂をマトリックス樹脂としたプリプレグシート(ENEOSテクノマテリアル(株)製、ENT19E-30G)を用意した。本例のプリプレグシートは、一枚の厚みが0.225mmであるため、厚さ15mmの繊維強化樹脂成形体6を得るために84枚(幅27mmに裁断したシート78枚、及び、幅50mmに裁断したシートを6枚)を用意した。84枚のプリプレグシートをプレス機81の金型82にチャージして加熱プレスした。プレス機81による二次成形温度T2を80℃とし、プレス圧Pを10.76MPaとし、二次成形時間t2を2時間とした。
【0118】
実施例1-6及び比較例1の組成、製造条件、及び評価試験の結果を次の表1に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
実施例1では、巻付速度Vが20m/minであり、合計成形時間taが1時間41分であったため、FRP板ばね7の生産性は〇であった。また、マトリックス樹脂3のガラス転移温度Tgは163℃であったため、耐熱性は◎であった。FRP板ばね7の曲げ強度σは694MPaであったため、曲げ特性は〇であった。また、FRP板ばね7の曲げクリープひずみ量εtは4.7%であったため、耐クリープ特性は〇であった。さらに、FRP板ばね7の損失係数は0.42であったため、振動減衰特性は△であった。
【0121】
実施例2では、巻付速度Vが30m/minであり、合計成形時間taが1時間31分であったため、FRP板ばね7の生産性は〇であった。また、マトリックス樹脂3のガラス転移温度Tgは165℃であったため、耐熱性は◎であった。FRP板ばね7の曲げ強度σは687MPaであったため、曲げ特性は〇であった。また、FRP板ばね7の曲げクリープひずみ量εtは5.8%であったため、耐クリープ特性は〇であった。しかし、FRP板ばね7の損失係数は0.56であったため、振動減衰特性は〇であった。
【0122】
実施例3では、巻付速度Vが40m/minであり、合計成形時間taが1時間21分であったため、FRP板ばね7の生産性は◎であった。また、マトリックス樹脂3のガラス転移温度Tgは161℃であったため、耐熱性も◎であった。FRP板ばね7の曲げ強度σは673MPaであったため、曲げ特性は〇であった。しかし、FRP板ばね7の曲げクリープひずみ量εtは6.2%であったため、耐クリープ特性は△であった。さらに、FRP板ばね7の損失係数は0.61であったため、振動減衰特性は◎であった。
【0123】
実施例4では、巻付速度Vが20m/minであり、合計成形時間taが1時間41分であったため、FRP板ばね7の生産性は〇であった。また、マトリックス樹脂3のガラス転移温度Tgは167℃であったため、耐熱性は◎であった。FRP板ばね7の曲げ強度σは2219MPaであったため、曲げ特性は◎であった。また、FRP板ばね7の曲げクリープひずみ量εtは5.2%であったため、耐クリープ特性は〇であった。さらに、FRP板ばね7の損失係数は0.59であったため、振動減衰特性は〇であった。
【0124】
実施例5では、巻付速度Vが30m/minであり、合計成形時間taが1時間31分であったため、FRP板ばね7の生産性は〇であった。また、マトリックス樹脂3のガラス転移温度Tgは164℃であったため、耐熱性は◎であった。FRP板ばね7の曲げ強度σは2132MPaであったため、曲げ特性は◎であった。しかし、FRP板ばね7の曲げクリープひずみ量εtは6.1%であったため、耐クリープ特性は△であった。一方、FRP板ばね7の損失係数は0.67であったため、振動減衰特性は◎であった。
【0125】
実施例6では、巻付速度Vが40m/minであり、合計成形時間taが1時間21分であったため、FRP板ばね7の生産性は◎であった。また、マトリックス樹脂3のガラス転移温度Tgは162℃であったため、耐熱性も◎であった。FRP板ばね7の曲げ強度σは2073MPaであったため、曲げ特性は◎であった。しかし、FRP板ばね7の曲げクリープひずみ量εtは6.6%であったため、耐クリープ特性は△であった。一方、FRP板ばね7の損失係数は0.71であったため、振動減衰特性は◎であった。
【0126】
比較例1では、巻付速度Vが無いため、合計成形時間taによりFRP板ばね7の生産性を評価したところ、合計成形時間taが2時間であったため、FRP板ばね7の生産性は△であった。但し、84枚のプリプレグシートを金型82にチャージするための労力が必要となるため、生産性は極めて×に近い結果であった。また、マトリックス樹脂のガラス転移温度Tgは138℃であったため、耐熱性も△であった。FRP板ばね7の曲げ強度σは541MPaであったため、曲げ特性も△であった。FRP板ばね7の曲げクリープひずみ量εtは12.8%であったため、耐クリープ特性は×であった。一方、FRP板ばね7の損失係数は0.32であったため、振動減衰特性は×であった。
【0127】
以上から、FRP板ばね7の生産性については、実施例1-6のいずれも要求を満たすことが分かった。生産性の要求は、次の条件A及び条件Bの少なくとも一方により満たされると考えられた。
【0128】
(条件A) FW法によりFRP板ばね7の最終形状に近似したプリフォーム材である繊維強化樹脂成形体6を一次成形した後、プレス成形法によりプリフォーム材を二次成形する。
【0129】
実施例1-6と比較例1の二次成形時間t2を比較すると、実施例1-6は予備加熱時間及びプレス時間を含めて21分~41分であるのに対し、比較例1は2時間であった。特に実施例1-6のプレス時間は11分であるため、プレス機81及び金型82を占有しないで済んだ。また、板厚が15mm以上の厚いFRP板ばね7を製造する場合、比較例1ではプリプレグシートの厚さが一般に0.1mm~0.3mmで供給されているため、非常に膨大な枚数のプリプレグシートを金型82にチャージする必要があり、生産性が極めて悪かった。対照的に、プリフォームチャージ方式によれば、FRP板ばね7の最終形状に近似した状態で金型82にチャージできるため、チャージに要する作業時間を秒のオーダーで済ますことができた。すなわち、特に板厚が厚いFRP板ばね7の場合、効率よく製造できることが確認できた。
【0130】
(条件B) マンドレル52への未硬化樹脂繊維複合材4の巻付速度Vを10m/min以上且つ50m/min未満とし、2種類の液体21の流量を5mL/min以上且つ20mL/min未満とし、一次硬化温度T1を100℃以上且つ150℃未満とする。
【0131】
巻付速度Vについては、10m/min未満では生産性が乏しく、50m/min以上では強化用繊維束2へのマトリックス樹脂3の含有率が低いと考えられた。2種類の液体21の流量については、5mL/min未満では巻付速度Vに対してマトリックス樹脂3の量が少なすぎ、20mL/min以上では巻付速度Vに対してマトリックス樹脂3の量が多すぎると考えられた。一次硬化温度T1については、マトリックス樹脂3が現場重合型の熱可塑性樹脂の場合は、100℃未満では一次硬化時間t1が長すぎ、150℃以上では、組成によるが、樹脂硬化度が低いと考えられた。
【0132】
FRP板ばね7の耐クリープ特性については、実施例1,2,4が要求を満たすことが分かった。耐クリープ特性の要求は、次の条件Cにより満たされると考えられた。
【0133】
(条件C) 繊維強化樹脂成形体6のプレス圧Pを0.75MPa以上且つ4MPa未満とし、プレス成形時の二次成形温度T2を200℃以上とする。
【0134】
プレス圧Pについては、0.75MPa未満ではプレス圧Pが低すぎてマトリックス樹脂3の内部にボイド(気泡)が残存し易く、4MPa以上ではプレス圧Pが高すぎてマトリックス樹脂3が過度に流動してしまうと考えられた。二次成形温度T2については、200℃未満では、マトリックス樹脂3の粘度が高く、マトリックス樹脂3の内部に気泡が残存してしまう可能性があると考えられた。
【0135】
FRP板ばね7の曲げ特性については、実施例1-6のいずれも要求を満たすことが分かった。曲げ特性の要求は、次の条件Dの少なくとも一方により満たされると考えられた。
【0136】
(条件D) 強化用繊維束2の形態をロービング系及びヤーン系のいずれかとし、FW法により一方向プリフォーム材である繊維強化樹脂成形体6を一次成形した後、プレス成形法により一方向プリフォーム材を二次成形する。
【0137】
実施例1-6と比較例1の曲げ強度σを比較すると、実施例1-6ではいずれも600MPa以上であるのに対し、比較例1では541MPaであり、実施例1-6はいずれも30%以上高い強度を示した。比較例1は薄いシート状のプリプレグを積層してプレス成形しているため、強化繊維とマトリックス樹脂との密着性が低く、曲げ強度が乏しくなったと考えられた。対照的に実施例1-6では、強化用繊維束2の形態をロービング系及びヤーン系のいずれかとし、FW法によりプリフォーム材を一次成形したため、プリグレグシートのような層間がなく、強化用繊維束2とマトリックス樹脂3の密着性が向上したと考えられた。また、繊維強化樹脂成形体6は一方向プリフォーム材であるため、曲げ強度σが高まったと考えられた。
【0138】
FRP板ばね7の振動減衰特性については、実施例1,4-6が要求を満たすことが分かった。振動減衰特性の要求は、次の条件Eにより満たされると考えられた。
【0139】
(条件E) FRP板ばね7の繊維体積含有率Vfを50%以上とし、繊維強化樹脂成形体6のプレス圧Pを0.75MPa以上且つ4MPa未満とし、且つ強化用繊維束2に炭素繊維を用いる。
【0140】
繊維体積含有率Vfについては、斯かる範囲であれば、貯蔵弾性率E′が高くなると考えられた。プレス圧Pについては、0.75MPa未満ではプレス圧Pが低すぎてボイド(気泡)が残存し易く、4MPa以上ではプレス圧Pが高すぎてマトリックス樹脂3が過度に流動してしまうと考えられた。強化用繊維束2については、炭素繊維を用いることにより、曲げ強度σが比較的高くなり、振動減衰特性が良好になると考えられた。
【0141】
以上の条件A-Eの少なくとも一つを満たすように製造装置1を実行させることにより、生産性、耐熱性、耐クリープ特性、曲げ特性、及び振動減衰特性等の少なくとも一つの要求を満たすことができると考えられた。
【0142】
なお、FRP板ばね7の組成及び製造条件については、生産性、耐熱性、耐クリープ特性、曲げ特性、及び振動減衰特性等の種々の要求を満たせるように、MI(マテリアルズインフォマティクス)に基づき決定してもよい。例えば、PC(Personal Computer)、タブレット、及びサーバ等のいずれか一つのコンピュータで実行される、機械学習、特にAI(人工知能)ソフトウェアを用いてFRP板ばね7の最適な組成及び最適な製造条件を推定することができる。
【0143】
コンピュータとしては、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び入出力インターフェイス等を備えるものでよい。コンピュータは、ROMに記憶されているAIソフトウェア用プログラムをRAMにロードし、AIソフトウェア用プログラムをCPUに実行させることにより、AIソフトウェアを実行する。なお、コンピュータは、GPU(Graphics Processing Unit)、及びFPGA(Field Programmable Gate Array)等の少なくとも一つを組み合わせて構成されてもよい。
【0144】
AIソフトウェアには、例えばニューラルネットワーク、決定木(回帰木)、及びロジスティック回帰等の少なくとも一つにより構成された学習モデルが含まれる。学習モデルは、教師あり学習、半教師あり学習、教師なし学習、及び強化学習等の少なくとも一つの学習方法を用いて学習を行う学習済モデルであることが好ましい。また、学習モデルをサーバ側に設けて学習を行い、一方で、学習済モデルをPC側に設けてFRP板ばね7の最適な組成及び最適な製造条件を推定するといった分散処理を行ってもよい。
【0145】
学習モデルにニューラルネットワークを用いる場合、ニューラルネットワークとしては、DQN(Deep Q-Network)、GAN(敵対的生成ネットワーク)、MolGAN、及びグラフ畳み込みニューラルネットワーク等を挙げることができる。例えば、入力をFRP板ばね7の組成及び製造条件とし、出力をFRP板ばね7の特性の評価値とした構造のもの等を挙げることができる。或いは、他のニューラルネットワークとしては、入力をFRP板ばね7の特定の評価値とし、出力をFRP板ばね7の組成及び製造条件とした構造のもの等を挙げることができる。
【0146】
FRP板ばね7の組成としては、強化用繊維束2の材質、形態、及びストランドの本数、マトリックス樹脂3の成分、触媒、反応遅延剤、及び添加物、並びに繊維体積含有率Vf又は樹脂含有率RC等が挙げられる。また、FRP板ばね7の製造条件としては、強化用繊維束2の張力F、巻付速度V、各液体の流量ρ1,ρ2、一次硬化温度T1、二次硬化温度T2、及びプレス圧P等が挙げられる。FRP板ばね7の特定の評価値としては、生産性、耐熱性、曲げ特性(曲げ強度又は曲げ弾性率等)、耐クリープ特性、及び振動減衰特性等が挙げられる。
【0147】
コンピュータは、例えば、FRP板ばね7の組成、製造条件、及び各特性の評価値と、評価値が正解であるか又は不正解であるかを示すラベルデータと、を含む教師データを用いて、評価値の誤差を最小化するようにニューラルネットワークの各層の重みを更新する。ニューラルネットワークの重みの更新には、誤差逆伝播法(バックプロパゲーション)等を用いることができる。
【0148】
コンピュータは、学習済ニューラルネットワークを用いて、生産性、耐熱性、曲げ特性(曲げ強度又は曲げ弾性率等)、耐クリープ特性、及び振動減衰特性等の所望の要求が満たされるように、FRP板ばね7の組成及び製造条件を決定する。コンピュータは、MIに基づき決定されたFRP板ばね7の組成及び製造条件を、入出力インターフェイスを介して製造装置1、表示装置、及び他の外部装置等の少なくとも一つに出力することができる。
【0149】
(板ばねの適用例)
次に、製造装置1により製造されたFRP板ばね7の適用例について説明する。図3は一実施形態に係るFRP板ばね7を用いたリーフ式サスペンション90の構成図である。リーフ式サスペンション90は、例えば、トラック、バス、及びトレーラ等の車両に取り付けられる重ね板ばね式懸架装置(マルチリーフスプリング)である。
【0150】
リーフ式サスペンション90は、第1主板ばね7a、第2主板ばね7b、第3補助板ばね7c、第4補助板ばね7d、及び第5補助板ばね7eを層状に重ね合わせて構成される。いずれのFRP板ばね7も、熱可塑性樹脂からなるマトリックス樹脂3と、マトリックス樹脂3中に存在していてFRP板ばね7の長手方向に延び且つFRP板ばね7の厚み方向に重なる複数の強化用繊維束と、を備えている。
【0151】
第1主板ばね7aと、第1主板ばね7aの下側に配置される第2主板ばね7bとは、概ね同じ長さを有している。第2主板ばね7bの下側に配置される、第3補助板ばね7c、第4補助板ばね7d、及び第5補助板ばね7eは、下方に行くに従って順次長さが短くなっている。
【0152】
第1主板ばね7aの両端の各々には目玉部が設けられており、第1主板ばね7aの前端はシャックルピン93に回動可能に枢着され、第1主板ばね7aの後端はシャックルリンク94に回動可能に枢着される。第2主板ばね7bの前端には目玉部が形成されており、第1主板ばね7aの前端に設けられた目玉部に回動可能に枢着され、第2主板ばね7bの後端は撓み時の相対移動を許容するため遊動自在となっている。
【0153】
第3補助板ばね7c、第4補助板ばね7d、及び第5補助板ばね7eは、一対のUボルト91によりリーフ式サスペンション90の中央部で第1主板ばね7a及び第2主板ばね7bに接合される。第3補助板ばね7c、第4補助板ばね7d、及び第5補助板ばね7eの各々の両端は、撓み時の相対移動を許容するため遊動自在である。
【0154】
リーフ式サスペンション90の中央部は、一対のUボルト91により、車輪96に結合されたリアドライブシャフトを収容するリアアスクル92に締結される。一方、シャックルピン93は車両のシャシーフレーム95に固着され、シャックルリンク94の基端は車両のシャシーフレーム95に回動自在に枢着されている。
【0155】
車両の走行時に、路面の凹凸による車輪96の衝撃(ばね下荷重)は、リアアスクル92を介してリーフ式サスペンション90に伝達される。第1主板ばね7a、第2主板ばね7b、第3補助板ばね7c、第4補助板ばね7d、及び第5補助板ばね7eは、ばね下荷重を分担して吸収し、衝撃を減衰させる。減衰した衝撃は、シャックルピン93及びシャックルリンク94を介してシャシーフレーム95に伝達されるので、シャシーフレーム95への衝撃が和らげられる。
【0156】
ばね下荷重に応じて発生するリーフ式サスペンション90のリバウンドにより生じる振動は、隣り合うFRP板ばね7同士(特に、第3補助板ばね7c、第4補助板ばね7d、及び第5補助板ばね7e)が摩擦することにより減衰する。
【0157】
また、FRP板ばね7は、単独でも損失係数が0.5以上であり、優れた振動減衰特性を有するため、車両の乗り心地性能の向上を図れる。さらに、FRP板ばね7はステンレス鋼等のばね鋼に比べ、摩擦による軋み音の発生を抑制可能である。
【0158】
さらに、FRP板ばね7では、複数の強化用繊維束2がFRP板ばね7の長手方向に延び且つFRP板ばね7の厚み方向に重なっているため、曲げ強度及び曲げ弾性率のバランスに優れる。
【0159】
また、FRP板ばね7は、ガラス転移温度が120℃以上であるため、耐熱性を有し、曲げクリープひずみ量が0%以上且つ6%未満であるため、耐クリープ特性に優れる。従って、リーフ式サスペンション90のように長時間繰り返し負荷がかかる場合であっても、クリープ現象による破断が発生し難い。
【0160】
加えて、FRP板ばね7は、ステンレス鋼等のばね鋼と比べて軽量であるため、車両を軽量化でき、車両の燃費向上に寄与する。さらに、FRP板ばね7をFRTP(繊維強化熱可塑性プラスチック)板ばねとした場合は、加熱により再溶融して二次賦形が容易である。強化用繊維束2とマトリックス樹脂3を分離できるため、リサイクル又はリユースが可能であり、環境負荷を低減するリーフ式サスペンション90を提供することができる。
【0161】
FRP板ばね7の用途としては、自動車等の車両以外に、例えば、航空機、鉄道車両、船舶、土木建築部材、及び産業機械等を挙げることができる。FRP板ばね7は、サスペンション以外に、例えば、衝撃吸収構造材、振動減衰部材、及び防振構造材等に用いることができる。
【0162】
また、FRP板ばね7の他の用途として、医療器具、事務用品、及び生活用品等を挙げることができる。FRP板ばね7は、例えば、ピンセット、クリップ、及びトング等の挟締部材に用いることができる。また、FRP板ばね7の別の用途として、スポーツレジャー用品を挙げることができる。FRP板ばね7は、例えば、ゴルフシャフト、テニスラケット、アーチェリー、スキー板、及びスノーボード等の動力発生部材に用いることができる。
【0163】
(作用効果)
以上の一実施形態に係る製造方法によれば、FRP板ばね7の生産性及び耐クリープ特性という少なくとも2つの要求を満たすことができる。FW法によるFRP板ばね7の最終形状に近似したプリフォーム材の一次成形と、プレス成形法によるプリフォーム材の二次成形とを組み合わせることにより、生産性及び耐クリープ特性に優れたFRP板ばね7を製造することができる。また、マンドレル52は周方向に一列に並んだ複数の成形溝54を有するため、複数のFRP板ばね7を纏めて同時に製造することができ、FRP板ばね7の生産性を高めることができる。
【0164】
含浸時のマトリックス樹脂3の粘度は20mPa・s~1000mPa・sの範囲であり、液状のマトリックス樹脂3を強化用繊維束2に垂らして含浸させるため、マトリックス樹脂3を強化用繊維束2の中に高い含有率で含浸させることができる。ひいては、従来と比べて、マトリックス樹脂3の内部にボイド(気泡)等が少なく、曲げ特性及び耐クリープ特性に優れたFRP板ばね7を製造することができると考えられた。
【0165】
マンドレル52への未硬化樹脂繊維複合材4の巻付速度Vを10m/min以上且つ60m/min未満とし、2種類の液体21の流量を3mL/min以上且つ20mL/min未満とし、一次硬化温度T1を60℃以上且つ180℃未満としている。これにより、従来と比べてFRP板ばね7の生産性が一層高まると考えられた。
【0166】
プレス圧を0.5MPa以上且つ20MPa未満とし、マトリックス樹脂3が熱可塑性樹脂の場合は、プレス成形時の二次成形温度を150℃以上とすることにより、従来と比べて耐クリープ特性を高めることができると考えられた。
【0167】
強化用繊維束2の形態をロービング系及びヤーン系のいずれかとし、FW法により一方向プリフォーム材である繊維強化樹脂成形体6を一次成形した後、一方向プリフォーム材をプレス成形することにより、従来と比べて曲げ特性が向上したと考えられた。
【0168】
FRP板ばね7の繊維体積含有率Vfを30%以上とし、繊維強化樹脂成形体のプレス圧Pを1.0MPa以上且つ20MPa未満とし、且つ強化用繊維束2にガラス繊維又は炭素繊維を用いることにより、従来と比べて振動減衰特性が向上したと考えられた。
【0169】
加えて、マトリックス樹脂3を成形現場において強化用繊維束2に含浸させる前には20~26℃で500mPa・s未満の低粘度のモノマー状態であり、強化用繊維束への含浸後に加熱することで10分以内に直鎖状に重合する現場重合型の熱可塑性樹脂とする。従って、マトリックス樹脂3を強化用繊維束2の中に高い含有率で含浸させることができる。また、現場重合型の熱可塑性ウレタン樹脂は、強化用繊維束2への含浸後に速やかに直鎖状のポリマーへと重合し、一次硬化時間T1が比較的短時間になるため、生産性に優れると考えられた。
【0170】
また、マンドレル52の成形溝54の側面及び底面はいずれも平面であるため、マンドレル52から脱形される繊維強化樹脂成形体6は、概ね直方体形状となり、プレス機81による二次成形が容易である。斯かるマンドレル52の形状もFRP板ばね7の生産性に寄与すると考えられる。
【0171】
以上のFRP板ばね7の組成及び製造条件については、MIに基づくAIソフトウェアを用いることにより、生産性、耐熱性、曲げ強度、耐クリープ特性、及び振動減衰特性等の種々の要求を満たすことができると考えられる。
【0172】
結果として得られるFRP板ばね7は、マトリックス樹脂3が熱可塑性樹脂からなる場合、熱可塑性樹脂は分子鎖が直鎖状に結合しているため、加熱により再溶融して二次賦形が容易である。強化用繊維束2とマトリックス樹脂3を分離できるため、特殊なリサイクル技術を用いなくともリサイクル又はリユースが可能であり、環境問題に配慮したFRP板ばね7を提供することができる。一方、熱硬化性樹脂の場合は、埋め立て処理又はサーマルリサイクルが一般的であり、環境負荷が高い。
【0173】
さらに、FRP板ばね7では、複数の強化用繊維束2がFRP板ばね7の長手方向に延び且つFRP板ばね7の厚み方向に重なっているため、曲げ強度及び曲げ弾性率のバランスに優れる。また、マトリックス樹脂3のガラス転移温度Tgが120℃以上であるため、FRP板ばね7の一般的な用途では、耐熱性を十分に満たすことができる。
【0174】
また、FRP板ばね7の曲げクリープひずみ量は0%以上且つ6%未満であるため、FRP板ばね7を車両のリーフ式サスペンションに適用した場合であっても、耐クリープ特性の要求を十分に満たすことができる。さらに、FRP板ばね7は、ステンレス鋼等のばね鋼と比べて軽量であるため、車両を軽量化でき、車両の燃費向上に寄与する。
【0175】
加えて、FRP板ばね7の損失係数は0.5以上であるため、優れた振動減衰特性を有する。FRP板ばね7を車両のリーフ式サスペンションに適用した場合は、振動を良好に減衰するため、車両の乗り心地性能を向上させる。また、FRP板ばね7はステンレス鋼等のばね鋼に比べ、摩擦による軋み音の発生を抑制可能である。
【0176】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0177】
また、上述した実施形態の説明で用いた序数、数量、単位、及び範囲等の数字は、全て本開示の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本開示は例示された数字に限定されない。また、構成要素間の接続関係は、本開示の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本開示の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【0178】
本開示の態様は、例えば以下の通りである。
<1>
強化用繊維束を引き揃えて供給する工程と、
少なくとも2種類のマトリックス樹脂用液体を送液する工程と、
前記2種類のマトリックス樹脂用液体を混合する工程と、
混合した液状のマトリックス樹脂を前記強化用繊維束に含浸させる工程と、
前記マトリックス樹脂を含浸した前記強化用繊維束を、周方向に一列に並んだ複数の成形溝を有するマンドレルに巻き付けて厚み方向に重ねる工程と、
前記成形溝に巻き付けられた未硬化樹脂繊維複合材を加熱して一次硬化させる工程と、
一次硬化した硬化樹脂繊維複合材を、隣り合う前記成形溝の間で切断して複数の繊維強化樹脂成形体に脱形する工程と、
前記繊維強化樹脂成形体をプレス成形して二次硬化させる工程と、
を含む、FRP板ばねの製造方法。
<2>
含浸時の前記マトリックス樹脂の粘度が20mPa・s以上且つ1000mPa・s未満であり、液状の前記マトリックス樹脂を前記強化用繊維束に垂らして含浸させる、前記<1>に記載のFRP板ばねの製造方法。
<3>
前記マンドレルへの前記未硬化樹脂繊維複合材の巻付速度を10m/min以上且つ60m/min未満とし、前記2種類のマトリックス樹脂用液体の流量を3mL/min以上且つ20mL/min未満とし、且つ、前記マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、一次硬化温度を60℃以上且つ180℃未満とする、前記<1>又は<2>に記載のFRP板ばねの製造方法。
<4>
プレス圧を0.5MPa以上且つ20MPa未満とし、前記マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、プレス成形時の二次成形温度を150℃以上とする、前記<1>から<3>のいずれか一つに記載のFRP板ばねの製造方法。
<5>
前記強化用繊維束の形態をロービング系及びヤーン系のいずれかとし、FW法により一方向プリフォーム材である前記繊維強化樹脂成形体を一次成形した後、プレス成形法により前記一方向プリフォーム材を二次成形する、前記<1>から<4>のいずれか一つに記載のFRP板ばねの製造方法。
<6>
前記FRP板ばねの繊維体積含有率を30%以上とし、前記繊維強化樹脂成形体のプレス圧を1.0MPa以上且つ20MPa未満とし、且つ前記強化用繊維束に炭素繊維及びガラス繊維のいずれかを用いる、前記<1>から<5>のいずれか一つに記載のFRP板ばねの製造方法。
<7>
前記マトリックス樹脂を成形現場において前記強化用繊維束に含浸させる前には25℃での粘度が1000mPa・s未満の低粘度のモノマー状態であり、前記強化用繊維束に含浸させた後に加熱することで20分以内に直鎖状に重合する現場重合型の熱可塑性樹脂とし、前記熱可塑性樹脂がウレタン系、エポキシ系、アクリル系、及びポリアミド系のうちのいずれか一つである、前記<1>から<6>のいずれか一つに記載のFRP板ばねの製造方法。
<8>
前記成形溝は、一対の側面と、一対の側面により囲まれる底面と、により構成され、前記側面及び前記底面がいずれも平面である、前記<1>から<7>のいずれか一つに記載のFRP板ばねの製造方法。
<9>
FRP板ばねであって、
熱可塑性樹脂からなるマトリックス樹脂と、
前記マトリックス樹脂中に存在していて前記FRP板ばねの長手方向に延び且つ前記FRP板ばねの厚み方向に重なる複数の強化用繊維束と、
を備え、
前記マトリックス樹脂のガラス転移温度が120℃以上である、FRP板ばね。
<10>
前記FRP板ばねの曲げクリープひずみ量が0%以上且つ6%未満である、前記<9>に記載のFRP板ばね。
<11>
前記FRP板ばねの振動減衰特性を示す損失係数が0.5以上である、前記<9>又は<10>に記載のFRP板ばね。
【符号の説明】
【0179】
1 製造装置
2 強化用繊維束
3 マトリックス樹脂
4 未硬化樹脂繊維複合材
5 硬化樹脂繊維複合材
6 繊維強化樹脂成形体
7 FRP板ばね
10 繊維供給部
11 張力制御装置
12 ボビン
13 ガイドロール
14 ダンサーロール
15 サーボモータ
20 液体供給部
21 液体
22 容器
23 容積式ポンプ
24 チューブ
30 混合部
31 混合器
41 ガイド部材
42 樹脂槽
43 除去部材
50 巻付部
51 デリバリーアイ
52 マンドレル
53 回転軸
54 成形溝
60 一次硬化部
61 加熱装置
70 脱形部
71 切断装置
72 切断溝
80 二次硬化部
81 プレス機
82 金型
90 リーフ式サスペンション
91 Uボルト
92 リアアスクル
93 シャックルピン
94 シャックルリンク
95 シャシーフレーム
96 車輪
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-03-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化用繊維束を引き揃えて供給する工程と、
少なくとも2種類のマトリックス樹脂用液体を送液する工程と、
前記2種類のマトリックス樹脂用液体を混合する工程と、
混合した液状のマトリックス樹脂を前記強化用繊維束に含浸させる工程と、
前記マトリックス樹脂を含浸した前記強化用繊維束を、周方向に一列に並んだ複数の成形溝を有するマンドレルに巻き付けて厚み方向に重ねる工程と、
前記成形溝に巻き付けられた未硬化樹脂繊維複合材を加熱して一次硬化させる工程と、
一次硬化した硬化樹脂繊維複合材を、隣り合う前記成形溝の間で切断して複数の繊維強化樹脂成形体に脱形する工程と、
前記繊維強化樹脂成形体をプレス成形して二次硬化させる工程と、
を含む、FRP板ばねの製造方法。
【請求項2】
含浸時の前記マトリックス樹脂の粘度が20mPa・s以上且つ1000mPa・s未満であり、液状の前記マトリックス樹脂を前記強化用繊維束に垂らして含浸させる、請求項1に記載のFRP板ばねの製造方法。
【請求項3】
前記マンドレルへの前記未硬化樹脂繊維複合材の巻付速度を10m/min以上且つ60m/min未満とし、前記2種類のマトリックス樹脂用液体の流量を3mL/min以上且つ20mL/min未満とし、且つ、前記マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、一次硬化温度を60℃以上且つ180℃未満とする、請求項1又は2に記載のFRP板ばねの製造方法。
【請求項4】
プレス圧を0.5MPa以上且つ20MPa未満とし、前記マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、プレス成形時の二次成形温度を150℃以上とする、請求項1又は2に記載のFRP板ばねの製造方法。
【請求項5】
前記強化用繊維束の形態をロービング系及びヤーン系のいずれかとし、FW法により一方向プリフォーム材である前記繊維強化樹脂成形体を一次成形した後、プレス成形法により前記一方向プリフォーム材を二次成形する、請求項1又は2に記載のFRP板ばねの製造方法。
【請求項6】
前記FRP板ばねの繊維体積含有率を30%以上とし、前記繊維強化樹脂成形体のプレス圧を1.0MPa以上且つ20MPa未満とし、且つ前記強化用繊維束に炭素繊維及びガラス繊維のいずれかを用いる、請求項1又は2に記載のFRP板ばねの製造方法。
【請求項7】
前記マトリックス樹脂を成形現場において前記強化用繊維束に含浸させる前には25℃での粘度が1000mPa・s未満の低粘度のモノマー状態であり、前記強化用繊維束に含浸させた後に加熱することで20分以内に直鎖状に重合する現場重合型の熱可塑性樹脂とし、前記熱可塑性樹脂がウレタン系、エポキシ系、アクリル系、及びポリアミド系のうちのいずれか一つである、請求項1又は2に記載のFRP板ばねの製造方法。
【請求項8】
前記成形溝は、一対の側面と、一対の側面により囲まれる底面と、により構成され、前記側面及び前記底面がいずれも平面である、請求項1又は2に記載のFRP板ばねの製造方法。
【請求項9】
FRP板ばねであって、
熱可塑性樹脂からなるマトリックス樹脂と、
前記マトリックス樹脂中に存在していて前記FRP板ばねの長手方向に延び且つ前記FRP板ばねの厚み方向に重なる複数の強化用繊維束と、
を備え、
前記マトリックス樹脂のガラス転移温度が10℃以上180℃以下である、FRP板ばね。
【請求項10】
前記FRP板ばねの曲げクリープひずみ量が0%以上且つ6%未満である、請求項9に記載のFRP板ばね。
【請求項11】
前記FRP板ばねの振動減衰特性を示す損失係数が0.5以上である、請求項9又は10に記載のFRP板ばね。