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特開2024-113242情報処理システム、情報処理方法および情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113242
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法および情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20240815BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20240815BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20240815BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20240815BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240815BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/382
G01R31/385
G01R31/367
H01M10/48 P
H02J7/00 Q
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018076
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】下岡 和也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 広規
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 厳
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BA21
2G216BA33
2G216CB11
5G503BB01
5G503BB02
5G503EA09
5G503GD02
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD06
5H030AA10
5H030AS18
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】      (修正有)
【課題】開示されている技術では、劣化速度特性を生成する際に必要となる蓄電池の試験に必要なコストが大きくなる可能性がある。
【解決手段】この情報処理システムでは、次の各ステップがなされるようにプログラムを実行可能な少なくとも1つのプロセッサを備える。取得ステップでは、二次電池に対して行われた第1の劣化試験の試験条件と、第1の劣化試験による試験結果と、を取得する。速度算出ステップでは、容量劣化量に基づき、試験条件における二次電池の容量劣化速度を算出する。推定ステップでは、算出された容量劣化速度に基づき、取得されていない試験条件を表す未試験条件の少なくとも1つにおける二次電池の容量劣化速度を推定する。マップ生成ステップでは、算出された容量劣化速度と推定された容量劣化速度とに基づき、試験条件と容量劣化速度との対応関係を示す劣化速度マップを生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理システムであって、
次の各ステップがなされるようにプログラムを実行可能な少なくとも1つのプロセッサを備え、
取得ステップでは、二次電池に対して行われた第1の劣化試験の試験条件と、前記第1の劣化試験による試験結果と、を取得し、ここで、
前記試験条件は、前記第1の劣化試験を行うための試験時間を含み、
前記試験結果は、前記二次電池の容量劣化量を含み、
速度算出ステップでは、前記容量劣化量に基づき、前記試験条件における前記二次電池の容量劣化速度を算出し、
推定ステップでは、算出された前記容量劣化速度に基づき、取得されていない試験条件を表す未試験条件の少なくとも1つにおける前記二次電池の容量劣化速度を推定し、
マップ生成ステップでは、算出された前記容量劣化速度と推定された前記容量劣化速度とに基づき、前記試験条件と前記容量劣化速度との対応関係を示す劣化速度マップを生成し、
優先度算出ステップでは、生成された前記劣化速度マップに基づき、第2の劣化試験を行う前記未試験条件のそれぞれの優先度を算出し、
候補出力ステップでは、算出された前記優先度に基づき、前記未試験条件の少なくとも1つを試験条件とする前記第2の劣化試験の候補を、ユーザが選択可能な態様で出力する、もの。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記優先度算出ステップでは、少なくとも1つの前記未試験条件において前記二次電池に対してさらに第2の劣化試験を行うことによる前記劣化速度マップの信頼性と、当該第2の劣化試験を行うコストとのうちの少なくとも1つに基づき、前記優先度を算出する、もの。
【請求項3】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記取得ステップでは、さらに前記二次電池に対して行われた前記第1の劣化試験の履歴を取得し、
前記速度算出ステップでは、さらに前記履歴に基づき前記容量劣化速度を算出する、もの。
【請求項4】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記取得ステップでは、複数の二次電池のそれぞれに対して行われる複数の第1の劣化試験の試験条件と、複数の前記第1の劣化試験のそれぞれから得られる前記二次電池のそれぞれの容量劣化量とを取得し、ここで、前記試験条件のうちの少なくとも1つは、ユーザによって選択される試験条件の候補によらず設定される基準試験条件であり、
さらに補正ステップでは、前記基準試験条件での前記第1の劣化試験による前記二次電池の容量劣化量に基づき、算出された前記二次電池の容量劣化速度を補正する、もの。
【請求項5】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
さらに交換判定ステップでは、取得された前記容量劣化量に基づき、前記第2の劣化試験が行われる二次電池を交換するか否かを判定する、もの。
【請求項6】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記劣化速度マップの信頼性は、推定された前記容量劣化速度の統計量および前記劣化速度マップの前記試験条件に関するパラメータに対する算出された前記容量劣化速度の傾きの少なくとも1つに基づき算出される、もの。
【請求項7】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記優先度算出ステップでは、さらに前記第1の劣化試験の試験条件と、前記第2の劣化試験の試験条件とに基づき、前記第1の劣化試験から前記第2の劣化試験に移行する際に要する移行時間を算出し、
前記候補出力ステップでは、さらに、前記移行時間に基づき、前記第2の劣化試験の候補を出力する、もの。
【請求項8】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記取得ステップでは、さらに生成された前記劣化速度マップの信頼性を取得し、
前記推定ステップでは、前記劣化速度マップに基づき、前記未試験条件における前記二次電池の容量劣化速度を推定し、
さらに分類ステップでは、推定された前記二次電池の容量劣化速度に基づき、前記未試験条件を第1の分類と第2の分類とに分類し、ここで、第1の分類は、前記第2の分類に属する未試験条件に比べて容量劣化速度の誤差が大きい未試験条件を示す分類であり、
前記マップ生成ステップでは、前記劣化速度マップの信頼性と、少なくとも前記第1の分類に属する未試験条件に対して推定された前記容量劣化速度とに基づき前記劣化速度マップを更新する、もの。
【請求項9】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
さらに、優先度設定ステップでは、ユーザの指定に基づき優先度対応関係を設定し、ここで、前記優先度対応関係は、少なくとも、前記二次電池に対してさらに前記第2の劣化試験を行うことによる前記劣化速度マップの信頼性と、当該第2の劣化試験を行うコストとに対する前記優先度の対応関係を示し、
前記優先度算出ステップでは、設定された前記優先度対応関係に基づき前記優先度を算出する、もの。
【請求項10】
情報処理方法であって、
請求項1~請求項9の何れか1つに記載の情報処理システムの各ステップを含む、方法。
【請求項11】
情報処理プログラムであって、
少なくとも1つのコンピュータに、請求項1~請求項9の何れか1つに記載の情報処理システムの各ステップを実行させる、もの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理方法および情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、簡単な構成で充放電を実行しながら蓄電池の劣化状態を知らせることを目的とする蓄電池診断装置が開示されている。
【0003】
当該蓄電池診断装置は、蓄電池のSOCを取得するSOC取得部と、蓄電池の温度を取得する温度取得部と、蓄電池の温度およびSOCと劣化速度との関係を示す劣化速度特性を記憶する記憶部と、取得された温度およびSOCと、劣化速度特性とに基づいて蓄電池の劣化速度を特定し、所定期間における劣化速度を累積することにより蓄電池の劣化度を算出する診断部と、劣化度に基づいて、蓄電池の劣化状態に関する情報を出力する出力部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-38138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示の技術では、劣化速度特性を生成する際に必要となる蓄電池の試験に必要なコストが大きくなる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、情報処理システムが提供される。この情報処理システムでは、次の各ステップがなされるようにプログラムを実行可能な少なくとも1つのプロセッサを備える。取得ステップでは、二次電池に対して行われた第1の劣化試験の試験条件と、第1の劣化試験による試験結果と、を取得する。試験条件は、第1の劣化試験を行うための試験時間を含む。試験結果は、二次電池の容量劣化量を含む。速度算出ステップでは、容量劣化量に基づき、試験条件における二次電池の容量劣化速度を算出する。推定ステップでは、算出された容量劣化速度に基づき、取得されていない試験条件を表す未試験条件の少なくとも1つにおける二次電池の容量劣化速度を推定する。マップ生成ステップでは、算出された容量劣化速度と推定された容量劣化速度とに基づき、試験条件と容量劣化速度との対応関係を示す劣化速度マップを生成する。優先度算出ステップでは、生成された劣化速度マップに基づき、第2の劣化試験を行う未試験条件のそれぞれの優先度を算出する。候補出力ステップでは、算出された優先度に基づき、未試験条件の少なくとも1つを試験条件とする第2の劣化試験の候補を、ユーザが選択可能な態様で出力する。
【0007】
このような構成によれば、従来の試験方法に比して、試験コストを低減しつつ劣化速度マップを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】情報処理システム1を表す構成図である。
図2】情報処理装置2のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】ユーザ端末3のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】劣化試験装置4の構成の一例を示す図である。
図5】プロセッサ23が備える機能部の一例を示す図である。
図6】情報処理システム1において実行される情報処理の流れの概要を示すフローチャートである。
図7】探索処理の流れを表すフローチャートである。
図8】補正処理の流れを示すフローチャートである。
図9】容量劣化量ΔCの時間依存性の推定結果の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0011】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0または1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、または量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0012】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、およびメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0013】
1.ハードウェア構成
本節では、ハードウェア構成について説明する。
【0014】
<情報処理システム1>
図1は、情報処理システム1を表す構成図である。情報処理システム1は、情報処理装置2と、ユーザ端末3と、劣化試験装置4と、を備える。情報処理装置2と、ユーザ端末3と、劣化試験装置4と、は、電気通信回線を通じて通信可能に構成されている。一実施形態において、情報処理システム1とは、1つまたはそれ以上の装置または構成要素からなるものである。仮に例えば、情報処理装置2のみからなる場合であれば、情報処理システム1は、情報処理装置2となりうる。以下、これらの構成要素について説明する。
【0015】
<情報処理装置2>
図2は、情報処理装置2のハードウェア構成を示すブロック図である。情報処理装置2は、通信部21と、記憶部22と、プロセッサ23とを備え、これらの構成要素が情報処理装置2の内部において通信バス20を介して電気的に接続されている。各構成要素についてさらに説明する。
【0016】
通信部21は、USB、IEEE1394、Thunderbolt(登録商標)、有線LANネットワーク通信等といった有線型の通信手段が好ましいものの、無線LANネットワーク通信、3G/LTE/5G等のモバイル通信、BLUETOOTH(登録商標)通信等を必要に応じて含めてもよい。すなわち、これら複数の通信手段の集合として実施することがより好ましい。すなわち、情報処理装置2は、通信部21およびネットワークを介して、外部から種々の情報を通信してもよい。
【0017】
記憶部22は、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する。これは、例えば、プロセッサ23によって実行される情報処理装置2に係る種々のプログラム等を記憶するソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。記憶部22は、プロセッサ23によって実行される情報処理装置2に係る種々のプログラムや変数等を記憶している。
【0018】
プロセッサ23は、情報処理装置2に関連する全体動作の処理・制御を行う。プロセッサ23は、例えば不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。プロセッサ23は、記憶部22に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、情報処理装置2に係る種々の機能を実現する。すなわち、記憶部22に記憶されているソフトウェアによる情報処理が、ハードウェアの一例であるプロセッサ23によって具体的に実現されることで、プロセッサ23に含まれる各機能部として実行されうる。これらについては、次節においてさらに詳述する。なお、プロセッサ23は単一であることに限定されず、機能ごとに複数のプロセッサ23を有するように実施してもよい。またそれらの組合せであってもよい。
【0019】
<ユーザ端末3>
図3は、ユーザ端末3のハードウェア構成を示すブロック図である。ユーザ端末3は、通信部31と、記憶部32と、プロセッサ33と、表示部34と、HMIデバイス35とを備え、これらの構成要素がユーザ端末3の内部において通信バス30を介して電気的に接続されている。通信部31、記憶部32およびプロセッサ33の説明は、情報処理装置2における各部の説明と同様のため省略する。
【0020】
表示部34は、ユーザ端末3筐体に含まれるものであってもよいし、外付けされるものであってもよい。表示部34は、ユーザが操作可能なグラフィカルユーザインターフェース(Graphical User Interface:GUI)の画面を表示する。これは例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイおよびプラズマディスプレイ等の表示デバイスを、ユーザ端末3の種類に応じて使い分けて実施することが好ましい。
【0021】
HMIデバイス35は、ヒューマン・マシン・インターフェースデバイスである。HMIデバイス35は、ユーザ端末3の筐体に含まれるものであってもよいし、外付けされるものであってもよい。例えば、HMIデバイス35は、表示部34と一体となってタッチパネルとして実施されてもよい。タッチパネルであれば、ユーザは、タップ操作、スワイプ操作等を入力することができる。もちろん、タッチパネルに代えて、スイッチボタン、マウス、QWERTYキーボード、音声認識装置、ジェスチャ検出装置、視線検出装置、生体信号検出装置、撮像装置などを採用してもよい。すなわち、HMIデバイス35がユーザによってなされた操作入力を受け付ける。HMIデバイス35は、応答として、通信バス30を介し操作入力に対応する信号をプロセッサ33に転送する。プロセッサ33が必要に応じて所定の制御や演算を実行しうる。HMIデバイス35は、ユーザからの入力を受付可能に構成されている入力部を含むともいえる。
【0022】
<劣化試験装置4>
図4は、劣化試験装置4の構成の一例を示す図である。劣化試験装置4は、少なくとも1つの恒温槽41と、1つの基準恒温槽42と、充放電装置43と、インピーダンス測定装置44とを備え、これらの構成要素は互いに通信可能に構成されている。
【0023】
各恒温槽41および基準恒温槽42は、二次電池Bを収容可能に構成されている。恒温槽41は、二次電池Bに対して劣化試験を実行可能に構成されている。基準恒温槽42は、恒温槽41と同様に、二次電池Bに対し例えば、劣化試験を実行可能に構成されている。基準恒温槽42は、後述される初期試験条件に基づく劣化試験を二次電池Bに対して行うように構成されている。なお、二次電池Bは鉛蓄電池、ニッケルカドミウム蓄電池、リチウムイオン蓄電池、空気電池など、充放電可能に構成されていれば任意である。
【0024】
充放電装置43は、恒温槽41、基準恒温槽42、および二次電池Bの動作を制御することで二次電池Bに対する劣化試験を実行するように構成されている。充放電装置43は、例えば、劣化試験の試験条件に従って、恒温槽41および基準恒温槽42の温度を制御可能に構成されている。また、充放電装置43は、試験条件に従って、二次電池Bの充放電、例えば、二次電池Bの充放電レート、および充放電中の電圧ならびに電流、を制御可能に構成されている。
【0025】
インピーダンス測定装置44は、充放電装置43による二次電池Bの制御に伴い、二次電池Bのインピーダンスおよび開回路電圧(OCV)を測定可能に構成されている。
【0026】
本実施形態の試験条件は、第1の劣化試験を行うための試験時間、恒温槽41の温度(言い換えれば二次電池Bの温度)、二次電池Bの電流レート、平均SOC(State of Charge)、SOC幅を含む。試験条件を規定するこれらの要素は、後述される劣化速度マップを生成する際の試験条件を表す状態空間の要素として用いられる。なお、試験条件は、このような状態空間の要素として上述した要素以外の要素を含んでいてもよい。例えば、試験条件は、恒温槽41等の調温速度、調温時間、目標となるSOCに到達した際の待機時間などを含み得る。
【0027】
試験条件は、予め定められた試験範囲内で設定される。試験範囲は、例えば、恒温槽41の温度範囲、二次電池Bの電流レートの範囲、平均SOCの範囲、SOC幅の値などである。
【0028】
2.情報処理装置2の機能構成
図5は、プロセッサ23が備える機能部の一例を示す図である。図5に示すように、プロセッサ23は、取得部231と、速度算出部232と、推定部233と、優先度設定部234と、優先度算出部235と、候補出力部236と、交換判定部237と、補正部238と、マップ生成部239とを備える。本節では、これらの機能部の概要を説明する。各機能部の詳細は、後述の情報処理と合わせて説明される。
【0029】
取得部231は、ユーザ端末3、劣化試験装置4、または他のデバイスからの情報を取得可能に構成される。取得部231は、記憶部22の少なくとも一部であるストレージ領域に記憶されている種々の情報を読み出し、読み出された情報を記憶部22の少なくとも一部である作業領域に書き込むことで、種々の情報を取得可能に構成されている。ストレージ領域とは、例えば、記憶部22のうち、SSD等のストレージデバイスとして実施される領域である。作業領域とは、例えば、RAM等のメモリとして実施される領域である。なお、取得部231による取得は、プロセッサ23に含まれる各機能部の出力結果を取得することを含む。
【0030】
速度算出部232は、取得部231による取得結果に基づき、容量劣化速度V等の種々の情報を算出可能に構成されている。容量劣化速度Vは、ある環境における二次電池Bの電池容量Cの単位時間あたりの劣化量を表す。
【0031】
推定部233は、取得部231の取得結果や速度算出部232の算出結果等の種々の情報に基づき、ある試験条件における容量劣化速度V等の種々の情報を推定可能に構成される。
【0032】
優先度設定部234は、種々の情報およびユーザの操作に基づき、二次電池Bに対して実行される劣化試験の試験条件の優先度を設定可能に構成される。
【0033】
優先度算出部235は、優先度設定部234によって設定された優先度等の種々の情報に基づき、試験条件のそれぞれに対応する優先度を算出可能に構成される。優先度の詳細は後述される。
【0034】
候補出力部236は、二次電池Bのそれぞれに対して行われる劣化試験の試験条件の候補等の種々の情報を出力可能に構成される。当該情報は、ユーザ端末3の表示部34または他のデバイスを介して、ユーザに提示可能である。かかる場合、例えば、候補出力部236は、画面、静止画または動画を含む画像、アイコン、メッセージ等の視覚情報を、ユーザ端末3の表示部34に表示させるように制御する。候補出力部236は、視覚情報をユーザ端末3に表示させるためのレンダリング情報だけを生成してもよい。なお、候補出力部236は、ユーザ端末3または他のデバイスユーザを介さずに、出力された情報をユーザに対して提示してもよい。
【0035】
交換判定部237は、種々の情報に基づき劣化試験を行う二次電池Bの交換の要否に関する判定を実行可能に構成される。
【0036】
補正部238は、種々の情報に基づき推定部233による推定結果等を補正可能に構成される。
【0037】
マップ生成部239は、速度算出部232の算出結果、推定部233の推定結果、補正部238の補正結果等に基づき、二次電池Bの劣化速度と試験条件との対応関係を表す劣化速度マップを生成可能に構成される。劣化速度マップの更新は、劣化速度マップの生成の一態様である。
【0038】
分類部240は、種々の情報に基づき、試験条件の分類を行うように構成される。
【0039】
3.情報処理について
本節では、前述した情報処理システム1において実行される情報処理について説明する。
【0040】
3.1.情報処理の流れについて
図6は、情報処理システム1において実行される情報処理の流れの概要を示すフローチャートである。なお、当該情報処理は、図示されない任意の例外処理を含みうる。例外処理は、当該情報処理の中断や、各処理の省略を含む。当該情報処理にて行われる選択または入力は、ユーザによる操作に基づくものでも、ユーザの操作に依らず自動で行われるものでもよい。
【0041】
[ステップS1]
まず、処理がステップS1に進み、プロセッサ23は、予め恒温槽41および基準恒温槽42のそれぞれに収容された二次電池Bの初期容量C_iniを測定する。これらの二次電池Bは、劣化試験が過去に行われたことのないものである。例えば、プロセッサ23は、まず、恒温槽41および基準恒温槽42を制御することにより、二次電池Bの温度を所定の設定温度に到達させる。次に、プロセッサ23は、二次電池Bの公称容量C_noninalに基づき、二次電池Bの充放電に用いられる電流値を設定する。次に、プロセッサ23は、設定された電流値でのSOC100%までの定電流定電圧充電およびSOC0%までの定電流定電圧放電を行い、その際の放電容量を初期容量C_iniとする。
【0042】
[ステップS2]
次に、処理がステップS2に進み、プロセッサ23は、取得部231として、予め設定された初期試験条件を取得する。初期試験条件は、最初に行われる劣化試験の試験条件である。以下、説明の便宜上、前回までに行われた劣化試験を第1の劣化試験といい、次に実行される劣化試験を第2の劣化試験という。上述された初期試験は、第1の劣化試験の一例である。なお、第1の劣化試験は、過去に行われた劣化試験ともいえる。
【0043】
[ステップS3]
次に、処理がステップS3に進み、プロセッサ23は、取得された初期試験条件に基づき劣化試験を実行する。実行された劣化試験の試験結果、およびその試験条件は、例えば、記憶部22等に記憶される。
【0044】
[ステップS4]
次に、処理がステップS4に進み、プロセッサ23は、ステップS3での劣化試験による各二次電池Bの容量劣化量ΔCの測定を行う。測定方法は任意であるが、例えば、プロセッサ23は、初期容量C_iniと同様の方法により劣化試験後の電池容量Cを測定し、初期容量C_iniから当該電池容量Cを減算することにより、容量劣化量ΔCを測定する。なお、二次電池Bの電池容量Cおよび容量劣化量ΔCの測定は、プロセッサ23によって直接的に行われるものに限られない。例えば、プロセッサ23は、充放電装置43およびインピーダンス測定装置44が電池容量C等を測定するように劣化試験装置4を制御し、劣化試験装置4から出力される測定結果を取得してもよい。
【0045】
[ステップS5]
次に、処理がステップS5に進み、プロセッサ23は、速度算出部232として、初期試験条件と容量劣化量ΔCとに基づき、各二次電池Bの容量劣化速度Vの算出を行う。
【0046】
[ステップS6]
次に、処理がステップS6に進み、プロセッサ23は、推定部233として、算出された容量劣化速度Vに基づき未試験条件での容量劣化速度Vを推定する。未試験条件は、本情報処理において過去に取得されていない試験条件を表し、例えば、記憶部22等に試験結果が記憶されていない試験条件である。未試験条件での容量劣化速度Vの推定方法は任意であるが、例えば、プロセッサ23は、算出された容量劣化速度Vを学習データとして機械学習を行うことにより、予め定められた二次電池Bの物理モデルを表す学習済みモデルの生成および更新を行う。学習済みモデルは、試験条件を入力することにより容量劣化速度V等の二次電池Bに関するパラメータを出力するように構成される。プロセッサ23は、このような学習済みモデルに対して未試験条件を入力することにより、未試験条件での容量劣化速度Vを推定する。学習済みモデルの生成および更新の具体的態様は任意であり、例えば、線形回帰、リッジ回帰、ガウス過程回帰、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシンなどが挙げられる。例えば、ガウス過程回帰による容量劣化速度Vの推定方法は、非特許文献「J.Wang, D.Fleet, and A. Hertzmann, "Gaussian Process Dynamical Models", NIPS2005」などに開示される方法などが挙げられる。なお、プロセッサ23は、機械学習等によらず、上記回帰分析に基づく統計的手法を用いて、算出された容量劣化速度Vに基づき未試験条件での容量劣化速度Vを推定してもよい。
【0047】
[ステップS7]
次に、処理がステップS7に進み、プロセッサ23は、マップ生成部239として、試験条件と、当該試験条件に対応する容量劣化速度Vに基づき、劣化速度マップMを生成する。劣化速度マップMは、試験条件と容量劣化速度Vとの対応関係を示す。劣化速度マップMの表現形式は、関数、ルックアップテーブル、学習済みモデルなど任意である。なお、既存の劣化速度マップMが存在する場合、プロセッサ23は、当該既存の劣化速度マップMを、生成された劣化速度マップMに更新してもよい。
【0048】
[ステップS8]
次に、処理がステップS8に進み、プロセッサ23は、取得部231として、記憶部22等を参照することにより、第1の劣化試験に関する情報を取得する。例えば、プロセッサ23は、取得部231として、二次電池Bに対して行われた第1の劣化試験の試験条件と、第1の劣化試験による試験結果と、を取得する。詳細には、プロセッサ23は、複数の二次電池Bのそれぞれに対して行われる複数の第1の劣化試験の試験条件と、複数の第1の劣化試験のそれぞれから得られる二次電池のそれぞれの容量劣化量ΔCとを取得する。本実施形態では、直近の第1の劣化試験の試験条件と試験結果だけでなく、プロセッサ23は、さらに二次電池Bに対して行われた第1の劣化試験の履歴を取得する。第1の劣化試験の履歴は、過去に行われた複数の第1の劣化試験の試験条件と試験結果とを含む。
【0049】
[ステップS9]
次に、処理がステップS9に進み、プロセッサ23は、取得された第1の劣化試験の試験条件と試験結果とに基づき、第1の劣化試験に関する情報が所定数以上蓄積されているか否かを判定する。例えば、プロセッサ23は、1つの二次電池Bに対して本情報処理に含まれる任意の処理が所定数以上行われている場合に、過去の試験結果が所定数以上蓄積されていると判定する。所定数は測定誤差に関する情報の精度に応じて任意に設定可能であり、2以上、より好ましくは3以上である。
【0050】
[ステップS10]
過去の試験結果が所定数以上蓄積されていると判定された場合、処理がステップS10に進み、プロセッサ23は、分類部240として、容量劣化量ΔCの測定誤差に応じて第2の劣化試験の試験条件の候補を分類する。
【0051】
ここで、ステップS10の処理の一例について説明する。まず、プロセッサ23は、試験条件ごとの容量劣化量ΔCの測定誤差に関する判定を行う。これにより、プロセッサ23は、探索範囲内の試験条件のなかで比較的測定誤差が大きいことを表す第1の分類に属する試験条件と、探索範囲内の試験条件のなかで比較的測定誤差が小さいことを表す第2の分類に属する試験条件とに分類する。例えば、プロセッサ23は、(1)現在の容量劣化速度Vの推定結果が全ての試験条件における容量劣化速度Vの推定結果の平均値以下であるか否か、および(2)現在の容量劣化速度Vの推定結果と、対象となる試験条件における前回の容量劣化速度Vの推定結果との差の絶対値が、現在の容量劣化速度Vの推定結果の所定倍(0以上1未満)以下であるか否か、に基づき、当該判定を行う。プロセッサ23は、(1)および(2)の条件をともに満たす試験条件を、第1の分類に属する試験条件であると判定し、分類する。一方、プロセッサ23は、(1)および(2)のうちの少なくとも1つの条件を満たさない試験条件を、第2の分類に属する試験条件であると判定し、分類する。(1)は、容量劣化量ΔCの相対的な測定誤差が大きい試験条件であるか否かを表す条件である。これは、電池容量の測定誤差は劣化量の大小に関わらず一定レベルで生じる、という考えに基づく条件である。(2)は、試験条件における容量劣化速度Vの推定結果が、過去の推定結果に対する変動が小さいか否かを表す条件であり、推定結果の安定性を示す。
【0052】
また、プロセッサ23は、温度、平均SOC、およびSOC幅が共通となる試験条件を抽出し、抽出された試験条件の1つである特定試験条件に基づいて、当該抽出された試験条件を分類してもよい。例えば、プロセッサ23は、抽出された試験条件のなかで電流レートが比較的高いもの(具体的には最も高いもの)を特定試験条件として取り扱う。そして、プロセッサ23は、分類部240として、当該特定試験条件を第1の分類に分類した場合、抽出された試験条件のなかで特定試験条件より電流レートが低いもの(この場合は抽出された試験条件の全て)を、特定試験条件と同様に第1の分類に分類する。このとき、仮に抽出された試験条件に第1の分類に分類されていないものが含まれていたとしても、プロセッサ23は、抽出された試験条件のうち、上記条件を満たすものを第1の分類に分類する。容量劣化速度Vは、二次電池Bの種類によらず電流レートに対して単調増加する、言い換えれば、容量劣化速度Vは、電流レートが小さいほど小さい、傾向があるからである。これにより、分類する処理の負荷を軽減することができる。
【0053】
[ステップS11]
ステップS10の後、処理がステップS11に進む。一方、過去の試験結果が所定数以上蓄積されていないと判定された場合、ステップS10の処理は省略され、処理がステップS11に進む。ステップS11において、プロセッサ23は、優先度設定部234として、優先度を設定する。優先度は、後述される第2の劣化試験の試験条件の候補を探索する際の指標として機能する。優先度は、二次電池Bに対して第2の劣化試験を行うことによる劣化速度マップMの信頼性や、当該第2の劣化試験を行うコストなどの、第2の劣化試験によるメリットまたはデメリットを表す少なくとも1つのパラメータによって規定される。本実施形態の優先度は,推定部233で推定された容量劣化速度Vの標準偏差と、劣化速度マップMにおける容量劣化速度Vの傾きと、容量劣化速度Vの逆数と、により少なくとも規定される。例えば、優先度は、これらのパラメータの重み付き線形和によって規定される。プロセッサ23は、これらのパラメータを互いに比較可能とするようにパラメータの標準化を行い、例えば、これらのパラメータがそれぞれ0から1までの値を取るように処理を行う。以下、説明の便宜上、「劣化速度マップMにおける容量劣化速度Vの傾き」を、単に「容量劣化速度Vの傾き」という。容量劣化速度Vの傾きは、極限的にはある試験条件を表すパラメータについての容量劣化速度Vの微分値(または勾配)ともいえる。容量劣化速度Vの傾きは、スカラー量によって表現されていても、勾配ベクトルのようなベクトル量によって表現されていても、より高次のテンソル量によって表現されていてもよい。
【0054】
容量劣化速度Vの標準偏差は、当該試験条件での容量劣化速度Vの推定結果の信頼度を表す。この値が大きくなるにつれて、当該試験条件での容量劣化速度Vの推定結果の信頼度が低くなることが示唆される。したがって、当該容量劣化速度Vの推定結果の信頼度が低い試験条件ほど、劣化試験によって容量劣化速度Vを算出することが好ましい。したがって、優先度は、容量劣化速度Vの標準偏差が大きくなるほど大きくなるように設定される。言い換えれば、容量劣化速度Vの標準偏差は、容量劣化速度Vの統計量の1つであり、二次電池Bに対して第2の劣化試験を行うことによる劣化速度マップMの信頼性を表すパラメータの1つである。
【0055】
容量劣化速度Vの傾きは、試験条件の周辺における劣化速度の変化の度合いを表す。この値が大きくなるにつれて、当該試験条件の周辺の容量劣化速度Vの推定結果の精度が低くなる傾向がある。そのため、容量劣化速度Vの傾きは、二次電池Bに対して第2の劣化試験を行うことによる劣化速度マップMの信頼性を表すパラメータの1つである。容量劣化速度Vの傾きが大きい試験条件では、劣化試験を行うことにより容量劣化速度Vの算出結果をより豊富にし、劣化速度マップMの推定精度を効率良く向上させることができる。そのため、優先度は、容量劣化速度Vの傾きが大きくなるにつれて大きくなるように設定される。第1の劣化試験の容量劣化量ΔCに基づき容量劣化速度Vの標準偏差および傾きを算出することは、生成された劣化速度マップMの信頼性を取得することの一態様である。したがって、劣化速度マップMの信頼性は、算出された容量劣化速度Vの統計量および劣化速度マップMの試験条件に関するパラメータに対する算出された容量劣化速度Vの傾きの少なくとも1つに基づき算出される。
【0056】
容量劣化速度Vの逆数は、劣化試験による二次電池Bの負荷の小ささを表し、第2の劣化試験を行うコストを表す指標の1つである。容量劣化速度Vの逆数の値が大きいほど、劣化試験における一定の試験時間における容量劣化量ΔCが小さくなる。したがって、当該値が大きいほど、対応する劣化試験によって二次電池Bにかかる負荷が小さくなるため、1つの二次電池Bに対してより多くの劣化試験を実行しやすくなる。
【0057】
優先度とこれらのパラメータの対応関係は、優先度対応関係によって規定される。本実施形態の優先度対応関係は、二次電池Bに対して第2の劣化試験を行うことによる劣化速度マップMの信頼性と当該第2の劣化試験を行うコストとに対する優先度の対応関係を示し、例えば、優先度に含まれる線形和における各パラメータの重み(言い換えれば係数)によって規定される。
【0058】
本実施形態では、プロセッサ23は、優先度設定部234として、ユーザの指定に基づき優先度対応関係を設定する。例えば、ユーザは、HMIデバイス35への入力を介して優先度に含まれる各パラメータの重みを指定する。プロセッサ23は、指定された重みとなるように優先度対応関係に含まれるそれぞれのパラメータの重みを更新し、更新されたパラメータに基づき優先度を設定する。プロセッサ23は、優先度算出部235として、設定された優先度対応関係に基づき優先度を算出する。
【0059】
[ステップS12]
次に、処理がステップS12に進み、プロセッサ23は、設定された優先度に基づき探索範囲内のみ試験条件に対応する優先度を算出し、当該優先度に基づき、各二次電池Bに対して次に実行される第2の劣化試験の試験条件の候補を探索する。以下、説明の便宜上、当該候補を探索する処理を、単に探索処理という。言い換えれば、プロセッサ23は、優先度算出部235として、生成された劣化速度マップMに基づき、第2の劣化試験を行う未試験条件のそれぞれの優先度を算出する。本実施形態では、プロセッサ23は、少なくとも1つの未試験条件において二次電池Bに対してさらに第2の劣化試験を行うことによる劣化速度マップMの信頼性、および当該第2の劣化試験を行うコストの少なくとも1つに基づき、第2の劣化試験を行う未試験条件のそれぞれの優先度を算出する。なお、ステップS10にて、第2の劣化試験の試験条件の分類が行われている場合、探索範囲は、当該分類の1つに属する試験条件に限られる。本実施形態では、比較的測定誤差が小さいと分類された試験条件を探索範囲とする。
【0060】
[ステップS13]
次に、処理がステップS13に進み、プロセッサ23は、候補出力部236として、ステップS10での探索結果を出力する。これにより、プロセッサ23は、算出された優先度に基づき、未試験条件の少なくとも1つを試験条件とする第2の劣化試験の候補を、ユーザが選択可能な態様で出力する。本実施形態では、出力された第2の劣化試験の候補は、表示部34を介してユーザに提示される。ユーザは、HMIデバイス35に対する操作を通じて、表示部34に表示された第2の劣化試験の候補を選択することができる。例えば、プロセッサ23は、算出された優先度が規定の閾値より高く、かつ上位n番目(nは任意の自然数)であるものを、ユーザが優先的に把握可能な態様で出力する。
【0061】
[ステップS14]
次に、処理がステップS14に進み、取得部231は、ステップS13でのユーザからの試験条件の選択を取得する。
【0062】
[ステップS15]
次に、処理がステップS15に進み、プロセッサ23は、取得された試験条件の選択に基づき、各恒温槽41および基準恒温槽42に対して試験条件を設定する。本実施形態のプロセッサ23は、基準恒温槽42に対して基準試験条件を設定する。基準試験条件は、第1の劣化試験と第2の劣化試験とで共通であり、基準恒温槽42に収容されている二次電池Bに対して同じ試験条件での劣化試験を行うように設定される。本実施形態の基準試験条件は、ステップS3にて基準恒温槽42に収容されている二次電池Bに対して行われた初期試験条件と一致している。言い換えれば、試験条件のうちの少なくとも1つは、ユーザによって選択される試験条件の候補によらず設定される基準試験条件である。
【0063】
[ステップS16]
次に、処理がステップS16に進み、プロセッサ23は、交換判定部237として、恒温槽41または基準恒温槽42に収容されている二次電池Bの交換が必要か否かを判定する。例えば、プロセッサ23は、初期容量C_iniに対する、過去の劣化試験による容量劣化量ΔCの合計C_deg_total(いわゆる、総劣化量)の割合(C_deg_total/C_ini)が既定値以上となる場合に、当該二次電池Bの交換が必要であると判定する。一方、プロセッサ23は、C_deg_total/C_iniが既定値未満となる場合に、当該二次電池Bの交換は不要であると判定する。既定値は任意に設定可能である。このように、プロセッサ23は、交換判定部237として、取得された容量劣化量ΔCに基づき、劣化試験が行われる二次電池Bを交換するか否かを判定する。
【0064】
[ステップS17]
少なくとも1つの二次電池Bの交換が必要と判定された場合、処理がステップS17に進み、交換判定部237は、ユーザに対して表示部34を通じて交換が必要な二次電池Bを提示し、二次電池Bの交換を要求する。その後、ユーザによって当該二次電池Bの交換が行われた場合、処理がステップS18に進む。
【0065】
[ステップS18]
ステップS18にて、プロセッサ23は、交換後の二次電池Bの初期容量C_iniを測定する。当該初期容量C_iniの測定方法は任意であるが、例えば、ステップS1にて説明した方法と同様である。その後、処理がステップS19に進む。なお、いずれの二次電池Bの交換も不要と判定された場合は、ステップS17およびステップS18の処理は省略され、処理がステップS19に進む。
【0066】
[ステップS19]
ステップS19では、プロセッサ23は、ステップS15にて設定された試験条件に基づき、それぞれの二次電池Bに対して第2の劣化試験を実行する。
【0067】
[ステップS20]
次に、処理がステップS20に進み、プロセッサ23は、第2の劣化試験による各二次電池Bの容量劣化量ΔCを測定する。当該測定結果を含む試験結果は、対応する第2の試験条件とともに記憶部22等に記憶する。プロセッサ23は、記憶部22等を参照することにより、取得部231として、二次電池Bに対して行われた第1の劣化試験の試験条件と、第1の劣化試験による試験結果と、を取得する。試験結果は、二次電池Bの容量劣化量ΔCを含む。
【0068】
[ステップS21]
次に、処理がステップS21に進み、プロセッサ23は、速度算出部232として、容量劣化量ΔCに基づき、試験条件における二次電池Bの容量劣化速度Vを算出する。例えば、プロセッサ23は、直前に行われた第2の劣化試験の試験時間ΔTと、第2の劣化試験による容量劣化量ΔCと、当該第2の劣化試験が行われる直前までの容量劣化量ΔCの累計である累計容量劣化量ΔC_Tとに基づき、容量劣化速度Vを算出する。本実施形態では、プロセッサ23は、さらに、二次電池Bに対して過去に行われた第1の劣化試験の試験時間の累計である累計試験時間T_sを算出する。累計試験時間T_sは、例えば、劣化試験が行われていない新品の二次電池Bの容量劣化量ΔCが、累計容量劣化量ΔC_Tに達するまでの時間として規定される。累計容量劣化量ΔC_Tおよび累計試験時間T_sは、第1の劣化試験の履歴の一態様である。したがって、プロセッサ23は、速度算出部232は、さらに履歴に基づき容量劣化速度Vを算出するといえる。例えば、プロセッサ23は、以下のような電池容量Cの時間依存性とその1次の変分に基づき、容量劣化速度Vおよび累計試験時間T_sを算出する。
【数1】
【数2】
【0069】
aは、累計容量劣化量ΔC_Tの容量劣化速度Vに対する時間依存性の次数である。これらの条件式から、以下のように容量劣化速度Vおよび累計試験時間T_sが求められる。
【数3】
【数4】
【0070】
本実施形態では、αの初期値は0.5に設定されている。
【0071】
[ステップS22]
次に、処理がステップS22に進み、プロセッサ23は、推定部233として、算出された容量劣化速度Vに基づき、第2の劣化試験の試験条件における二次電池Bの容量劣化速度Vを推定する。上述したように、設定される試験条件は未試験条件である。そのため、プロセッサ23は、推定部233として、算出された容量劣化速度Vに基づき、取得されていない試験条件を表す未試験条件の少なくとも1つにおける二次電池Bの容量劣化速度Vを推定する。測定された容量劣化量ΔC、算出された容量劣化速度V、および推定された容量劣化速度Vは、それぞれの試験条件と対応付けられた状態で、試験結果として記憶部22等に記憶される。
【0072】
[ステップS23]
次に、処理がステップS23に進み、プロセッサ23は、記憶部22等を参照することにより、過去の試験結果として、ステップS3で行われた劣化試験以外の第1の劣化試験の試験結果があるか否かを判定する。言い換えれば、プロセッサ23は、一連の情報処理のなかで過去にステップS19の処理が行われたか否かを判定する。
【0073】
[ステップS24]
ステップS3で行われた劣化試験以外の第1の劣化試験の試験結果があると判定された場合、処理がステップS24に進み、プロセッサ23は、補正部238として、ステップS22での容量劣化速度Vの推定結果に対する補正処理を行う。これにより、プロセッサ23は、補正部238として、基準試験条件での第1の劣化試験による二次電池Bの容量劣化量ΔCに基づき、算出された二次電池Bの容量劣化速度Vを補正し、補正後の容量劣化速度Vを出力する。プロセッサ23は、例えば、当該補正処理によって次数aを更新し、更新後の次数aによって表される時間依存性を示すように、算出され、または推定された容量劣化速度Vを補正する。当該補正処理の詳細は後述される。その後、処理がステップS25に進む。なお、ステップS3で行われた劣化試験以外の第1の劣化試験の試験結果がないと判定された場合、ステップS24の処理は省略され、処理がステップS25に進む。
【0074】
[ステップS25]
次に、処理がステップS25に進み、プロセッサ23は、マップ生成部239として、算出された容量劣化速度Vと推定された容量劣化速度Vとに基づき、劣化速度マップMを生成する。本実施形態では、ステップS7にて劣化速度マップMが既に生成されているため、プロセッサ23は、既存の劣化速度マップMを新たに生成した劣化速度マップMに更新する。
【0075】
[ステップS26]
次に、処理がステップS26に進み、プロセッサ23は、過去の試験結果が所定数以上蓄積しているか否かを判定する。当該過去の試験結果、および当該所定数は、ステップS9の判定に用いられるものと同様である。
【0076】
[ステップS27]
過去の試験結果が所定数以上蓄積していると判定された場合、処理がステップS27に進み、未試験条件における容量劣化量ΔCの測定誤差を判定し、比較的測定誤差が大きい未試験条件を抽出する。当該処理の具体的態様は任意であるが、例えば、プロセッサ23は、ステップS10と同様の手法により、劣化速度マップに基づき未試験条件における容量劣化量ΔCの測定誤差を推定し、分類部240として当該推定結果に応じて未試験条件を第1の分類と第2の分類とに分類し、第1の分類に分類された未試験条件を、比較的測定誤差が大きい未試験条件として抽出する。プロセッサ23は、このような分類に際し、上述した(2)の条件に少なくとも基づき分類を行う。そのため、当該分類には、劣化速度マップの信頼性が反映されている。
【0077】
[ステップS28]
次に、処理がステップS28に進み、プロセッサ23は、上記劣化速度マップMの信頼性と上記測定誤差とに基づき、第1の分類に属する未試験条件における容量劣化速度Vを推定し、推定結果に基づき劣化速度マップMを更新する。例えば、プロセッサ23は、既存の劣化速度マップMに基づき推定される容量劣化速度Vを、劣化速度マップMの学習データとして追加する。これにより、プロセッサ23は、二次電池Bの物理モデルを表す学習済みモデルを更新する。そして、プロセッサ23は、更新された学習済みモデルに基づき、劣化速度マップMを再度生成し、既存の劣化速度マップMを更新する。このように、一定レベルの精度が担保された容量劣化速度Vの推定値を学習データとして追加することにより、劣化速度マップMの精度をさらに向上することができる。言い換えれば、プロセッサ23は、推定部233として、劣化速度マップMに基づき未試験条件における二次電池Bの容量劣化速度Vを推定し、分類部240として、推定された二次電池Bの容量劣化速度Vに基づき、未試験条件を第1の分類と第2の分類とに分類する。ここで、第1の分類は、第2の分類に属する未試験条件に比べて容量劣化速度Vの誤差が大きい未試験条件を示す分類である。そして、プロセッサ23は、マップ生成部239として、劣化速度マップMの信頼性と、少なくとも第1の分類に属する未試験条件に対して推定された容量劣化速度Vとに基づき劣化速度マップMを更新する。
【0078】
このような構成によれば、比較的容量劣化速度Vの誤差が大きい未試験条件については容量劣化速度Vの推定結果を用いて劣化速度マップMを更新することができるため、劣化速度マップMの精度をより向上させることができる。本実施形態では、プロセッサ23は、特に容量劣化速度Vの測定誤差が比較的小さい試験条件の領域内で実際に劣化試験を行わせ、測定誤差が比較的大きい試験条件については実際に試験を行う場合に比べて信頼度が高い容量劣化速度Vの推定結果を用いて当該試験条件に対応する学習データを追加する。プロセッサ23は、このような試験結果と推定結果とに基づき新たに追加された学習データを用いて劣化速度マップMを更新する。これにより、劣化速度マップの精度をさらに向上させることができる。
【0079】
ここで、第1の分類に属する試験条件のなかから、容量劣化速度Vを推定する試験条件を抽出する処理の一例について説明する。まず、プロセッサ23は、最初に試験条件の抽出数を設定する。抽出数は、例えば、これまで実行してきた劣化試験の試験条件の総数未満であれば任意である。次に、優先度を規定するパラメータのうちの1つ(本実施形態では容量劣化速度Vの標準偏差)が最大となる試験条件を選択する。次に、プロセッサ23は、最新の劣化速度マップMに基づき、選択された試験条件での容量劣化速度Vを仮想的な容量劣化速度V_mとして取得する。次に、プロセッサ23は、取得された仮想的な容量劣化速度V_mを学習データに追加し、容量劣化速度Vの標準偏差を更新する。これにより、選択された試験条件の周辺での容量劣化速度Vの標準偏差が小さくなることがある。その後、プロセッサ23は、更新後の状態で再び容量劣化速度Vの標準偏差が最大となる試験条件を選択し、当該選択された試験条件の数が抽出数に達するまで、上記処理を繰り返す。このようにして、実際に劣化試験を行っていない試験条件を劣化速度マップMに反映させることにより、劣化試験にかかるコストを低減しつつ劣化速度マップMの精度を向上させることができる。
【0080】
[ステップS29]
次に、処理がステップS29に進み、プロセッサ23は、終了条件が達成されているか否かを判定する。終了条件は任意であるが、例えば、プロセッサ23は、最新の劣化速度マップMに基づき探索範囲内の全ての試験条件における容量劣化速度Vの標準偏差の平均値が、初期の劣化速度マップMにおける容量劣化速度Vの標準偏差の平均値に対して所定の割合以下となった場合に、終了条件が満たされていると判定する。所定の割合は、例えば、1%、5%、10%など、任意に設定可能である。
【0081】
終了条件が満たされていると判定された場合、情報処理システム1は、最新の劣化速度マップMを最終結果として出力し、本情報処理を終了する。
【0082】
一方、終了条件が満たされていないと判定された場合、処理がステップS8に戻り、上述した処理を繰り返すことにより、さらに第2の劣化試験を行い、劣化速度マップMの更新を行う。本サイクルでは、プロセッサ23は、直近のステップS19にて行われた第2の劣化試験を第1の劣化試験として取り扱う。このような情報処理を繰り返すことにより、第1の劣化試験の試験結果等が記憶部22等に蓄積される。
【0083】
3.2.探索処理の詳細について
本章では、ステップS12での探索処理の詳細について説明する。図7は、探索処理の流れを表すフローチャートである。
【0084】
[ステップS101]
まず、ステップS101にて、プロセッサ23は、試験条件の候補の探索対象が最初の二次電池Bか否かを判定する。探索対象が最初の二次電池Bである場合、後述される仮想的な容量劣化速度V_mが生成されていない。そのため、プロセッサ23は、仮想的な容量劣化速度V_mが生成されているか否かを判定してもよい。試験条件の候補の探索対象が最初の二次電池Bであると判定された場合、処理がステップS102に進む。一方、試験条件の候補の探索対象が最初の二次電池Bでない、言い換えれば、探索対象が2つ目移行の二次電池Bであると判定された場合、処理がステップS110に進む。
【0085】
[ステップS102]
ここでは、時系列に沿って、試験条件の候補の探索対象が最初の二次電池Bであると判定され、処理がステップS102に進んだ場合について説明する。ステップS102にて、プロセッサ23は、既存の容量劣化速度Vの推定結果に基づき、試験条件ごとの容量劣化速度Vの標準偏差、傾き、逆数を算出し、標準化する。なお、これらの処理の具体的態様は上述の通りである。
【0086】
[ステップS103]
次に、処理がステップS103に進み、プロセッサ23は、標準化された値に基づき、試験条件ごとの優先度を算出する。優先度は、ステップS11にて設定されたものを用いる。
【0087】
[ステップS104]
次に、処理がステップS104に進み、プロセッサ23は、探索対象の二次電池Bに対して、優先度が最大となる試験条件を割り当てる。なお、割り当てられる試験条件の候補は1つに限られず、複数であってもよい。
【0088】
[ステップS105]
次に、処理がステップS105に進み、プロセッサ23は、全ての二次電池Bに対して試験条件が割り当てられているか否かを判定する。
【0089】
[ステップS106]
全ての二次電池Bに対して試験条件が割り当てられていないと判定された場合、処理がステップS106に進み、最新の劣化速度マップMに基づき、割り当てられてた試験条件における容量劣化速度Vを推定する。
【0090】
[ステップS107]
次に、処理がステップS107に進み、プロセッサ23は、劣化速度マップMの生成に用いられた容量劣化速度Vに対して新たに推定された容量劣化速度Vを学習データとして追加する。
【0091】
[ステップS108]
次に、処理がステップS108に進み、プロセッサ23は、追加された容量劣化速度Vに基づき、仮想的な劣化速度マップMを生成する。これにより、割り当てられた劣化試験が行われた場合における最適な試験条件を他の二次電池Bに割り当てることができる。なお、プロセッサ23は、仮想的な劣化速度マップMを最新の劣化速度マップMとして更新してもよい。その後、処理がステップS101に戻り、最初の二次電池Bか否かを判定する。
【0092】
[ステップS110]
ステップS108を経由してステップS101の処理が行われる場合、当該判定結果は否定となり、上述したように処理がステップS110に進む。ステップS110にて、プロセッサ23は、ステップS108にて生成された仮想的な劣化速度マップMに基づき容量劣化速度Vの標準偏差、傾き、逆数を算出し、標準化する。これらの処理は、ステップS102と同様である。その後、ステップS103~ステップS105の処理が行われる。ステップS105にて全ての二次電池Bに対して試験条件が割り当てられていると判定された場合、ステップS12の処理を終了し、割り当てられた試験条件を探索結果として出力し、ステップS13に進む。
【0093】
3.3.補正処理の詳細について
本章では、ステップS24にて行われる補正処理の詳細について説明する。図8は、補正処理の流れを示すフローチャートである。
【0094】
[ステップS201]
まず、ステップS201にて、プロセッサ23は、これまでの基準試験条件での劣化試験の試験結果に基づき、容量劣化量ΔCの時間依存性を推定する。当該時間依存性の推定は、例えば容量劣化量ΔCと累計試験時間T_sとで表されるデータセットについて、最小二乗法等に基づき次数aを最適化することで行われる。図9は、容量劣化量ΔCの時間依存性の推定結果の一例を表す図である。図9に示されるように、基準試験条件での劣化試験の試験結果は点P1として表される。このような複数の点P1に対して、試験時間の次数aを0.5から所定のステップ幅で変更した場合における容量劣化量ΔCの時間依存性が関数L1として表される。プロセッサ23は、関数L1と点P1の誤差が最小となる次数aを、最新の時間依存性を表す次数であると推定する。
【0095】
[ステップS202]
図8に戻り、次に、処理がステップS202に進み、プロセッサ23は、ステップS201にて推定された次数aが直近の次数a(初期設定では0.5)を比較することにより、時間依存性に変化があるか否かを判定する。例えば、プロセッサ23は、ステップS201にて推定された次数aと直近の次数aとの差分の絶対値が許容値以内の場合には時間依存性に変化がないと判定し、処理がステップS203に進む。
【0096】
[ステップS203]
ステップS203にて、プロセッサ23は、時間依存性の変化を示す補正情報を生成する。補正情報は、後述されるステップS204において次数aの変更および当該変更に伴う容量劣化速度Vの補正を行う指令ともいえる。なお、プロセッサ23は、次数aを初期値(本実施形態では0.5)から恒常的に更新せず、ステップS202の判定の結果、時間依存性に変化があると判定された場合に一時的に次数aを変更してもよい。
【0097】
[ステップS204]
その後、処理がステップS204に進み、プロセッサ23は、生成された補正情報に基づき、過去に行われた試験条件における容量劣化速度Vを補正し、ステップS201にて推定された次数aによって規定される時間依存性との整合性をとる。これにより、二次電池Bの種類による時間依存性を劣化速度マップMに反映させることができる。その後、ステップS24の補正処理が終了する。
【0098】
なお、ステップS202において、ステップS201にて推定された次数aと直近の次数aとの差分の絶対値が許容値以内の場合には、ステップS203およびステップS204の処理は省略され、プロセッサ23は、補正を行わずにステップS24の補正処理を終了する。
【0099】
4.その他
上記情報処理の態様はあくまで一例であり、これに限られない。
【0100】
プロセッサ23は、二次電池Bのインピーダンスおよび開回路電圧に基づき容量劣化量ΔCを算出してもよい。これらの値は、充放電装置43またはインピーダンス測定装置44によって測定される。例えば、プロセッサ23は、予め構築された二次電池Bのインピーダンスおよび開回路電圧に対する電池容量Cの対応関係を参照することにより、インピーダンスおよび開回路電圧から容量劣化量ΔCを算出する。当該対応関係は、例えば、ランダムフォッレストやサポートベクターマシン等の任意の学習アルゴリズムに従って予め構築された学習済みモデルや、予め測定等されたデータテーブル等によって表現される。
【0101】
プロセッサ23は、ステップS13にて、候補出力部236としてさらに、移行時間t12に基づき、第2の劣化試験の候補を出力する。移行時間t12は、第1の劣化試験から第2の劣化試験に移行する際に要する時間であり、第2の劣化試験を行うコストを表す指標の1つである。この場合、当該移行時間t12は、優先度を規定するパラメータの1つである。この場合、優先度は、例えば、上述された、容量劣化速度Vの標準偏差、容量劣化速度Vの傾き、および容量劣化速度Vの逆数に加え、さらに、移行時間t12の逆数の重み付き線形和によって規定される。移行時間t12の逆数は、第1の劣化試験から第2の劣化試験に移行するまでの時間が短くなるほど大きくなる。そのため、移行時間t12が短い試験条件ほど優先度が大きくなる。
【0102】
この場合、プロセッサ23は、例えば、ステップS11にて、優先度算出部235として、さらに第1の劣化試験の試験条件と、第2の劣化試験の試験条件とに基づき、移行時間t12を算出する。例えば、プロセッサ23は、第1の劣化試験の試験条件の温度と第2の劣化試験の試験条件の温度との差分を、恒温槽41による昇温速度の上限値で除算することにより、移行時間t12を算出する。また、プロセッサ23は、試験条件に含まれる平均SOCまたはSOC幅に基づいて移行時間t12を算出してもよい。例えば、プロセッサ23は、第1の劣化試験の終了後の二次電池BのSOCと、第2の劣化試験の開始時点でのSOCとを比較し、二次電池Bを充電する電流レートに基づき移行時間t12を算出する。プロセッサ23は、優先度のパラメータとして用いる移行時間t12として、これらのそれぞれの移行時間t12のうちの最大値を採用しても、これらの移行時間t12の合計を採用してもよい。
【0103】
プロセッサ23は、このように算出された移行時間t12にさらに基づき、第2の劣化試験の試験条件に対応する優先度を算出し、ステップS12にて、算出された優先度に基づき第2の劣化試験の試験条件の候補を探索する。
【0104】
優先度は、上述したパラメータの線形和によって規定されていなくてもよく、例えば、上述したパラメータのそれぞれの非線形結合等の任意の関数またはテーブルによって規定されていてもよい。例えば、優先度は、上述したパラメータの2乗数の線形和によって規定されていてもよい。
【0105】
二次電池Bの交換の要否の判定方法は上述されたものに限られず任意である。例えば、プロセッサ23は、容量劣化量ΔCの合計C_deg_totalや二次電池Bの内部抵抗に基づき二次電池Bの健康状態(SOH)を算出し、当該SOHが既定値以上か否かに基づき当該判定を行ってもよい。二次電池Bの内部抵抗は、例えば、二次電池Bに一定の電流を流した際に充放電装置43またはインピーダンス測定装置44によって測定される閉回路電圧と開回路電圧とを比較することによって算出可能である。また、プロセッサ23は、取得された容量劣化量ΔCに加え、さらに選択された第2の劣化試験の試験条件に基づき、二次電池Bを交換するか否かを判定してもよい。例えば、プロセッサ23は、予め定められた試験条件の負荷に応じてC_deg_total/C_iniとの比較対象である既定値を変更してもよい。
【0106】
劣化試験装置4の構成は容量劣化量ΔCを測定可能であれば任意であり、充放電装置43およびインピーダンス測定装置44は統合されていてもよい。また、劣化試験装置4は、インピーダンス測定装置44を備えていなくてもよい。また、劣化試験装置4に含まれる容量劣化量ΔCの測定機能は、情報処理装置2等の他のデバイスによって実現されていてもよい。言い換えれば、情報処理装置2と、ユーザ端末3と、劣化試験装置4との区別はあくまで説明のための便宜的なものであり、これに限られない。
【0107】
情報処理装置2は、オンプレミス形態であってもよく、クラウド形態であってもよい。クラウド形態の情報処理装置2としては、例えば、SaaS(Software as a Service)、クラウドコンピューティングという形態で、上述の機能や処理を提供してもよい。
【0108】
上記実施形態では、情報処理装置2が種々の記憶・制御を行ったが、情報処理装置2に代えて、複数の外部装置が用いられてもよい。すなわち、種々の情報やプログラムは、ブロックチェーン技術等を用いて複数の外部装置に分散して記憶されてもよい。
【0109】
上記実施形態は、情報処理システム1に限定されず、情報処理方法であっても、情報処理プログラムであってもよい。情報処理方法は、情報処理システム1の各ステップを含む。情報処理プログラムは、少なくとも1つのコンピュータに、情報処理システム1の各ステップを実行させる。
【0110】
上記情報処理システム1等は、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0111】
(1)情報処理システムであって、次の各ステップがなされるようにプログラムを実行可能な少なくとも1つのプロセッサを備え、取得ステップでは、二次電池に対して行われた第1の劣化試験の試験条件と、前記第1の劣化試験による試験結果と、を取得し、ここで、前記試験条件は、前記第1の劣化試験を行うための試験時間を含み、前記試験結果は、前記二次電池の容量劣化量を含み、速度算出ステップでは、前記容量劣化量に基づき、前記試験条件における前記二次電池の容量劣化速度を算出し、推定ステップでは、算出された前記容量劣化速度に基づき、取得されていない試験条件を表す未試験条件の少なくとも1つにおける前記二次電池の容量劣化速度を推定し、マップ生成ステップでは、算出された前記容量劣化速度と推定された前記容量劣化速度とに基づき、前記試験条件と前記容量劣化速度との対応関係を示す劣化速度マップを生成し、優先度算出ステップでは、生成された前記劣化速度マップに基づき、第2の劣化試験を行う前記未試験条件のそれぞれの優先度を算出し、候補出力ステップでは、算出された前記優先度に基づき、前記未試験条件の少なくとも1つを試験条件とする前記第2の劣化試験の候補を、ユーザが選択可能な態様で出力する、もの。
【0112】
このような構成によれば、未試験条件のなかから次に行うべき劣化試験の条件をより効率的に選択することができる。したがって、劣化速度マップの精度をより効率的に向上させることができる。
【0113】
(2)上記(1)に記載の情報処理システムにおいて、前記優先度算出ステップでは、少なくとも1つの前記未試験条件において前記二次電池に対してさらに第2の劣化試験を行うことによる前記劣化速度マップの信頼性と、当該第2の劣化試験を行うコストとのうちの少なくとも1つに基づき、前記優先度を算出する、もの。
【0114】
このような構成によれば、次に行うべき劣化試験の条件の意義の解釈性を高めることができる。
【0115】
(3)上記(1)または(2)に記載の情報処理システムにおいて、前記取得ステップでは、さらに前記二次電池に対して行われた前記第1の劣化試験の履歴を取得し、前記速度算出ステップでは、さらに前記履歴に基づき前記容量劣化速度を算出する、もの。
【0116】
このような構成によれば、過去に劣化試験が行われて劣化している二次電池を用いて劣化速度マップを生成することができるため、劣化試験を行う際のコストを低減することができる。
【0117】
(4)上記(1)~(3)の何れか1つに記載の情報処理システムにおいて、前記取得ステップでは、複数の二次電池のそれぞれに対して行われる複数の第1の劣化試験の試験条件と、複数の前記第1の劣化試験のそれぞれから得られる前記二次電池のそれぞれの容量劣化量とを取得し、ここで、前記試験条件のうちの少なくとも1つは、ユーザによって選択される試験条件の候補によらず設定される基準試験条件であり、さらに補正ステップでは、前記基準試験条件での前記第1の劣化試験による前記二次電池の容量劣化量に基づき、算出された前記二次電池の容量劣化速度を補正する、もの。
【0118】
このような構成によれば、同一の試験条件における長期間の劣化試験により得られた情報に基づき,短時間での劣化試験により得られた劣化速度算出結果を補正することにより、劣化速度マップの精度をさらに向上させることができる。
【0119】
(5)上記(1)~(4)の何れか1つに記載の情報処理システムにおいて、さらに交換判定ステップでは、取得された前記容量劣化量に基づき、前記第2の劣化試験が行われる二次電池を交換するか否かを判定する、もの。
【0120】
このような構成によれば、二次電池に対して適切な負荷の劣化試験を行いやすくなる。
【0121】
(6)上記(1)~(5)の何れか1つに記載の情報処理システムにおいて、前記劣化速度マップの信頼性は、推定された前記容量劣化速度の統計量および前記劣化速度マップの前記試験条件に関するパラメータに対する算出された前記容量劣化速度の傾きの少なくとも1つに基づき算出される、もの。
【0122】
このような構成によれば、より精度の高い劣化速度マップを得ることができる。
【0123】
(7)上記(1)~(6)の何れか1つに記載の情報処理システムにおいて、前記優先度算出ステップでは、さらに前記第1の劣化試験の試験条件と、前記第2の劣化試験の試験条件とに基づき、前記第1の劣化試験から前記第2の劣化試験に移行する際に要する移行時間を算出し、前記候補出力ステップでは、さらに、前記移行時間に基づき、前記第2の劣化試験の候補を出力する、もの。
【0124】
このような構成によれば、劣化試験全体に要する時間を考慮して効率的に劣化試験を行うことができる。
【0125】
(8)上記(1)~(7)の何れか1つに記載の情報処理システムにおいて、前記取得ステップでは、さらに生成された前記劣化速度マップの信頼性を取得し、前記推定ステップでは、前記劣化速度マップに基づき、前記未試験条件における前記二次電池の容量劣化速度を推定し、さらに分類ステップでは、推定された前記二次電池の容量劣化速度に基づき、前記未試験条件を第1の分類と第2の分類とに分類し、ここで、第1の分類は、前記第2の分類に属する未試験条件に比べて容量劣化速度の誤差が大きい未試験条件を示す分類であり、前記マップ生成ステップでは、前記劣化速度マップの信頼性と、少なくとも前記第1の分類に属する未試験条件に対して推定された前記容量劣化速度とに基づき前記劣化速度マップを更新する、もの。
【0126】
このような構成によれば、比較的容量劣化速度の誤差が大きい未試験条件については容量劣化速度の推定結果を用いて劣化速度マップを更新することができるため、劣化速度マップの精度をより向上させることができる。
【0127】
(9)上記(1)~(8)の何れか1つに記載の情報処理システムにおいて、さらに、優先度設定ステップでは、ユーザの指定に基づき優先度対応関係を設定し、ここで、前記優先度対応関係は、少なくとも、前記二次電池に対してさらに前記第2の劣化試験を行うことによる前記劣化速度マップの信頼性と、当該第2の劣化試験を行うコストとに対する前記優先度の対応関係を示し、前記優先度算出ステップでは、設定された前記優先度対応関係に基づき前記優先度を算出する、もの。
【0128】
このような構成によれば、ユーザが重視する要素に合わせて適切な第2の劣化試験の候補を出力することができる。
【0129】
(10)情報処理方法であって、上記(1)~(9)の何れか1つに記載の情報処理システムの各ステップを含む、方法。
【0130】
(11)情報処理プログラムであって、少なくとも1つのコンピュータに、上記(1)~(9)の何れか1つに記載の情報処理システムの各ステップを実行させる、もの。
もちろん、この限りではない。
【0131】
最後に、本開示に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0132】
1 :情報処理システム
2 :情報処理装置
20 :通信バス
21 :通信部
22 :記憶部
23 :プロセッサ
231 :取得部
232 :速度算出部
233 :推定部
234 :優先度設定部
235 :優先度算出部
236 :候補出力部
237 :交換判定部
238 :補正部
239 :マップ生成部
3 :ユーザ端末
30 :通信バス
31 :通信部
32 :記憶部
33 :プロセッサ
34 :表示部
35 :HMIデバイス
4 :劣化試験装置
41 :恒温槽
42 :基準恒温槽
43 :充放電装置
44 :インピーダンス測定装置
B :二次電池
L1 :関数
P1 :点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9