(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113245
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】電源用集積回路および電源システム
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
H02M3/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018081
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】由沢 剛
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS01
5H730BB43
5H730BB57
5H730CC01
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE07
5H730FD11
5H730FG05
5H730XC00
5H730XX02
5H730XX13
5H730XX22
5H730XX33
5H730XX41
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コンデンサを有する入力回路と、入力回路を介して交流電源と接続される電源用集積回路と、を備える電源システムを提供する。
【解決手段】電源用集積回路100は、入力電圧を分圧して分圧電圧を生成する分圧部110と、分圧電圧と予め定められた基準電圧とを比較して、交流電源の遮断を検出する遮断検出部120と、交流電源の遮断が検出された場合に、コンデンサの蓄積電荷を放電する放電部140と、を備える。分圧部は、交流電源の遮断が検出されない場合、第1スイッチ118をオン状態にして入力電圧に対する分圧電圧の比を第1分圧比に設定し、交流電源の遮断が検出された場合、第1スイッチ118をオフ状態にして入力電圧に対する分圧電圧の比を、第1分圧比よりも大きい第2分圧比に設定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサを有する入力回路を介して交流電源に接続される電源用集積回路であって、
入力電圧を分圧して分圧電圧を生成する分圧部と、
前記分圧電圧と予め定められた基準電圧とを比較して、前記交流電源の遮断を検出する遮断検出部と、
前記交流電源の遮断が検出された場合に、前記コンデンサの蓄積電荷を放電する放電部と、
を備え、
前記分圧部は、前記交流電源の遮断が検出されない場合、前記入力電圧に対する前記分圧電圧の比を第1分圧比に設定し、前記交流電源の遮断が検出された場合、前記入力電圧に対する前記分圧電圧の比を、前記第1分圧比よりも大きい第2分圧比に設定する、
電源用集積回路。
【請求項2】
前記分圧部は、
第1ノードと第2ノードとの間に接続された第1分圧抵抗Rdiv1と、
前記第2ノードとグランドとの間に接続された第2分圧抵抗Rdiv2と、
一端が前記第2ノードに接続され、前記第2分圧抵抗Rdiv2と並列に接続された第3分圧抵抗Rdiv3と、
前記第3分圧抵抗Rdiv3の他端とグランドとの間に接続された第1スイッチと、を含む、
請求項1に記載の電源用集積回路。
【請求項3】
前記第1分圧比は、(Rdiv2||Rdiv3)/(Rdiv1+(Rdiv2||Rdiv3))である、
請求項2に記載の電源用集積回路。
【請求項4】
前記第2分圧比は、Rdiv2/(Rdiv1+Rdiv2)である、
請求項2に記載の電源用集積回路。
【請求項5】
前記第1分圧比は、(Rdiv2||Rdiv3)/(Rdiv1+(Rdiv2||Rdiv3))であり、
前記第2分圧比は、Rdiv2/(Rdiv1+Rdiv2)であり、
前記第1分圧比に対する前記第2分圧比の比である分圧比率は、1.1以上、2以下である、
請求項2に記載の電源用集積回路。
【請求項6】
前記第1分圧抵抗Rdiv1は、30MΩ以上、750MΩ以下である、
請求項2に記載の電源用集積回路。
【請求項7】
前記第2分圧抵抗Rdiv2は、0.3MΩ以上、7.5MΩ以下である、
請求項2に記載の電源用集積回路。
【請求項8】
前記第3分圧抵抗Rdiv3は、0.6MΩ以上、15MΩ以下である、
請求項2に記載の電源用集積回路。
【請求項9】
前記遮断検出部は、前記交流電源の遮断を検出しない場合、前記第1スイッチをオン状態に制御し、前記交流電源の遮断を検出する場合に、前記第1スイッチをオフ状態に制御する、
請求項2に記載の電源用集積回路。
【請求項10】
前記放電部は、前記第1ノードに接続された放電抵抗Rdisを含み、
前記第1ノードは、保護抵抗Rproを介して前記コンデンサと接続され、
前記第1分圧抵抗Rdiv1と、前記第2分圧抵抗Rdiv2と、前記第3分圧抵抗Rdiv3と、前記放電抵抗Rdisと、前記保護抵抗Rproとは、(数1)式を満たす、
[数1]
請求項2に記載の電源用集積回路。
【請求項11】
前記放電抵抗Rdisは、2kΩ以上、50kΩ以下である、
請求項10に記載の電源用集積回路。
【請求項12】
前記保護抵抗Rproは、1kΩ以上、25kΩ以下である、
請求項10に記載の電源用集積回路。
【請求項13】
前記放電部は、
一端が前記第1ノードに接続され、前記第1分圧抵抗Rdiv1と並列に接続された放電抵抗Rdisと、
前記放電抵抗Rdisの他端とグランドとの間に接続された第2スイッチと、を含み、
前記遮断検出部は、前記交流電源の遮断を検出しない場合、前記第2スイッチをオフ状態に制御し、前記交流電源の遮断を検出する場合に、前記第2スイッチをオン状態に制御する、
請求項2に記載の電源用集積回路。
【請求項14】
前記遮断検出部は、
前記分圧電圧と前記基準電圧とを比較するコンパレータと、
前記コンパレータの出力信号が、前記分圧電圧が前記基準電圧よりも低くなったことを示してからの経過時間を計測するタイマ回路と、を含む、
請求項1から13のいずれか一項に記載の電源用集積回路。
【請求項15】
前記遮断検出部は、前記タイマ回路によって計測された前記経過時間が、予め定められた基準時間を超える場合に、前記交流電源の遮断を検出する、
請求項14に記載の電源用集積回路。
【請求項16】
コンデンサを有する入力回路と、
前記入力回路を介して交流電源と接続される電源用集積回路と、を備える電源システムであって、
前記電源用集積回路は、
入力電圧を分圧して分圧電圧を生成する分圧部と、
前記分圧電圧と予め定められた基準電圧とを比較して、前記交流電源の遮断を検出する遮断検出部と、
前記交流電源の遮断が検出された場合に、前記コンデンサの蓄積電荷を放電する放電部と、を含み、
前記分圧部は、前記交流電源の遮断が検出されない場合、前記入力電圧に対する前記分圧電圧の比を第1分圧比に設定し、前記交流電源の遮断が検出された場合、前記入力電圧に対する前記分圧電圧の比を、前記第1分圧比よりも大きい第2分圧比に設定する、
電源システム。
【請求項17】
前記分圧部は、
第1ノードと第2ノードとの間に接続された第1分圧抵抗Rdiv1と、
前記第2ノードとグランドとの間に接続された第2分圧抵抗Rdiv2と、
一端が前記第2ノードに接続され、前記第2分圧抵抗Rdiv2と並列に接続された第3分圧抵抗Rdiv3と、
前記第3分圧抵抗Rdiv3の他端とグランドとの間に接続された第1スイッチと、を含む、
請求項16に記載の電源システム。
【請求項18】
前記コンデンサと前記第1ノードとの間に接続された保護抵抗Rproを備え、
前記放電部は、前記第1ノードに接続された放電抵抗Rdisを含み、
前記第1分圧抵抗Rdiv1と、前記第2分圧抵抗Rdiv2と、前記第3分圧抵抗Rdiv3と、前記放電抵抗Rdisと、前記保護抵抗Rproとは、(数2)式を満たす、
[数2]
請求項17に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源用集積回路および電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「交流電源の遮断時」に「コンデンサの放電を行う電源用集積回路装置および電源遮断検出方法」が記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 国際公開第2012/033120号
[特許文献2] 特開2015-177687号公報
[特許文献3] 特開2019-47621号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、コンデンサを有する入力回路を介して交流電源に接続される電源用集積回路であって、入力電圧を分圧して分圧電圧を生成する分圧部と、前記分圧電圧と予め定められた基準電圧とを比較して、前記交流電源の遮断を検出する遮断検出部と、前記交流電源の遮断が検出された場合に、前記コンデンサの蓄積電荷を放電する放電部と、を備え、前記分圧部は、前記交流電源の遮断が検出されない場合、前記入力電圧に対する前記分圧電圧の比を第1分圧比に設定し、前記交流電源の遮断が検出された場合、前記入力電圧に対する前記分圧電圧の比を、前記第1分圧比よりも大きい第2分圧比に設定する、電源用集積回路を提供する。
【0004】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図3】電源用集積回路100の動作を表す波形図の一例を示す。
【
図4】電源用集積回路100の構成の変形例を示す。
【
図5】電源用集積回路100の動作を表す波形図の変形例を示す。
【
図6】比較例に係る電源用集積回路500の構成の一例を示す。
【
図7】比較例に係る電源用集積回路500の動作を表す波形図の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0007】
図1は、電源システム1000の構成の一例を示す。電源システム1000は、入力回路10と、電源用集積回路100とを備える。電源システム1000は、一次側整流平滑回路20と、トランス30と、二次側整流平滑回路40と、トランス用スイッチ50と、ゲート抵抗52と、両波整流回路60と、保護抵抗70と、を備えてよい。電源システム1000は、交流電源と負荷との間に接続され、入力された交流電圧から予め定められた直流電圧を生成し、負荷に供給するシステムであってよい。
【0008】
入力回路10は、コンデンサC1、C2を有してよく、インダクタLを有してよい。入力回路10は、交流電源から入力された入力交流電圧からコモンモードノイズを除去してよい。入力回路10は、交流電源から入力された入力交流電圧に重畳するディファレンシャルモードノイズまたはノーマルモードノイズを低減してよい。
【0009】
一次側整流平滑回路20は、ダイオードD1、D2、D3、D4を有してよく、電解コンデンサEC1を有してよい。一次側整流平滑回路20は、入力交流電圧を直流に変換してよい。一次側整流平滑回路20は、整流した直流電圧の電圧変動を平滑化してよい。
【0010】
トランス30は、一次側のエネルギーを二次側に伝達してよい。トランス30は、入力された直流電圧を予め定められた直流電圧に変換するDC/DCコンバータとして動作してよい。
【0011】
二次側整流平滑回路40は、ダイオードD5を有してよく、電解コンデンサEC2を有してよい。二次側整流平滑回路40は、直流電圧の電圧変動を平滑化してよい。
【0012】
トランス用スイッチ50は、ゲート抵抗52を介してトランス30と後述するPWM制御回路150とを接続してよい。電源システム1000は、トランス用スイッチ50をPWM制御回路150によって制御することで、予め定められた直流電圧を供給してよい。
【0013】
両波整流回路60は、ダイオードD6、D7を有してよい。両波整流回路60は、入力回路10と電源用集積回路100の間に接続されてよい。両波整流回路60は、入力回路10を介して入力された入力交流電圧を両波整流してよい。すなわち、両波整流回路60は、入力回路10を介して入力された入力交流電圧を、出力電圧が正となるように整流してよい。両波整流回路60は、両波整流された電圧Vcxを出力してよい。
【0014】
保護抵抗70は、両波整流回路60と電源用集積回路100の間に接続されてよい。保護抵抗70は、入力回路10のコンデンサC1、C2と電源用集積回路100の第1ノードN1との間に接続されてよい。保護抵抗70は、電源用集積回路100をサージ電流から保護してよい。保護抵抗70の抵抗値Rproは、1kΩ以上、25kΩ以下であってよい。一例として、保護抵抗70の抵抗値Rproは、5kΩである。
【0015】
電源用集積回路100は、入力回路10のコンデンサC1、C2に残留する蓄積電荷を、保護抵抗70による電圧降下の影響を考慮して放電してよい。電源システム1000が交流電源から遮断されると、入力回路10のコンデンサC1、C2に蓄積電荷が残留する。コンデンサC1、C2に残留する蓄積電荷による電圧によって感電する危険があるため、電源システム1000が交流電源から遮断された後、蓄積電荷は放電されてよい。電源システム1000が交流電源から遮断されるとは、電源システム1000と交流電源との接続が解除されることを意味してよい。電源用集積回路100が保護抵抗70による電圧降下を考慮することによって、入力回路10のコンデンサC1、C2に残留する蓄積電荷を確実に放電することができる。電源用集積回路100による放電の詳細については、後述する。
【0016】
電源用集積回路100は、分圧部110と、遮断検出部120と、放電部140と、を備える。電源用集積回路100は、PWM制御回路150を備えてよい。電源用集積回路100は、コンデンサを有する入力回路10を介して交流電源に接続されてよい。
【0017】
分圧部110は、複数の抵抗素子を備えてよい。分圧部110は、入力電圧VHを分圧して分圧電圧Vh_divを生成する。分圧電圧Vh_divは、複数の抵抗素子によって生成されてよい。分圧部110の構成例については、後述する。
【0018】
遮断検出部120は、コンパレータを備えてよい。遮断検出部120は、分圧電圧Vh_divと予め定められた基準電圧とを比較して、交流電源の遮断を検出する。すなわち、遮断検出部120は、分圧電圧Vh_divと予め定められた基準電圧とを比較して、電源システム1000と交流電源との接続が解除されたことを検出してよい。分圧電圧Vh_divと基準電圧とは、コンパレータによって比較されてよい。遮断検出部120の構成例については、後述する。
【0019】
放電部140は、放電抵抗142と、放電スイッチ144と、を含んでよい。放電スイッチ144のオンオフが制御されることで、入力回路10のコンデンサC1、C2の蓄積電荷の放電が制御されてよい。
【0020】
放電抵抗142は、一端が第1ノードN1に接続されてよい。放電抵抗142の抵抗値Rdisは、2kΩ以上、50kΩ以下であってよい。一例として、放電抵抗142の抵抗値Rdisは、10kΩである。
【0021】
放電スイッチ144は、放電抵抗142の他端とグランドとの間に接続されてよい。放電スイッチ144は、遮断検出部120によって制御されてよい。遮断検出部120は、交流電源の遮断を検出しない場合、放電スイッチ144をオフ状態に制御してよく、交流電源の遮断を検出する場合に、放電スイッチ144をオン状態に制御してよい。
【0022】
放電部140は、遮断検出部120によって交流電源の遮断が検出された場合に、入力回路10のコンデンサC1、C2の蓄積電荷を放電してよい。すなわち、放電部140は、交流電源の遮断が検出された場合に、放電スイッチ144がオン状態に制御されることで、入力回路10のコンデンサC1、C2の蓄積電荷を放電してよい。
【0023】
電源システム1000が交流電源と接続されている間、放電スイッチ144がオフ状態に制御されるため、放電抵抗142に電流が流れず、入力回路10のコンデンサC1、C2の蓄積電荷は放電されない。これにより、交流電源に接続される入力回路10に定常的な電力損失が発生しないようにすることができる。電源システム1000が交流電源と遮断された場合、放電スイッチ144がオン状態に制御されるため、放電抵抗142に電流が流れ、入力回路10のコンデンサC1、C2の蓄積電荷を放電することができる。
【0024】
放電部140の構成は、入力回路10のコンデンサC1、C2の蓄積電荷を放電することができるものであれば、特に限定されない。本例では、放電部140は、放電抵抗142と放電スイッチ144とを含むものとして説明したが、放電抵抗142は、直列接続された複数の抵抗素子からなってよく、並列接続された複数の抵抗素子からなってよく、または、これらの組み合わせからなってもよい。
【0025】
PWM制御回路150は、トランス用スイッチ50のオンオフを制御してよい。電源システム1000は、トランス用スイッチ50をPWM制御回路150によって制御することで、予め定められた直流電圧を供給してよい。本例では、PWM制御回路150が電源用集積回路100に含まれるものとして説明したが、PWM制御回路150は電源用集積回路100の外部に設けられてもよい。
【0026】
図2は、電源用集積回路100の構成の一例を示す。本例の電源用集積回路100は、交流電源の遮断が検出された場合に、放電期間中に放電スイッチ144のオンオフを制御することで、保護抵抗70による電圧降下の影響を考慮することができる。
【0027】
分圧部110は、第1分圧抵抗112と、第2分圧抵抗114とを含んでよい。分圧部110は、第1分圧抵抗112と第2分圧抵抗114とによって、入力電圧VHを分圧して、分圧電圧Vh_divを生成してよい。
【0028】
第1分圧抵抗112は、第1ノードN1と第2ノードN2との間に接続される。第1分圧抵抗112の抵抗値Rdiv1は、30MΩ以上、750MΩ以下であってよい。一例として、第1分圧抵抗112の抵抗値Rdiv1は、149MΩである。
【0029】
第2分圧抵抗114は、第2ノードN2とグランドとの間に接続される。第2分圧抵抗114の抵抗値Rdiv2は、0.2MΩ以上、5MΩ以下であってよい。一例として、第2分圧抵抗114の抵抗値Rdiv2は、1MΩである。放電抵抗142は、第1分圧抵抗112および第2分圧抵抗114と並列に接続されてよい。
【0030】
本例の分圧部110において生成される分圧電圧Vh_divは、(数1)式で表される。
[数1]
Vh_div = VH × Rdiv2/(Rdiv1+Rdiv2)
すなわち、分圧部110は、入力電圧VHを分圧して、入力電圧VHのRdiv2/(Rdiv1+Rdiv2)倍の分圧電圧Vh_divを生成してよい。一例として、第1分圧抵抗112の抵抗値Rdiv1が149MΩであり、第2分圧抵抗114の抵抗値Rdiv2が1MΩである場合、分圧部110は、入力電圧VHの1/150倍の分圧電圧Vh_divを生成する。
【0031】
放電スイッチ144がオフ状態であり、放電されていない場合、第1分圧抵抗112と第2分圧抵抗114の抵抗値は保護抵抗70の抵抗値と比較して大きいため、保護抵抗70による電圧降下の影響はほとんど受けず、入力電圧VHは、両波整流回路60の出力電圧Vcxとほとんど同じであるとみなすことができる。一方、放電スイッチ144がオン状態であり、放電されている場合、保護抵抗70および放電抵抗142からなる電流経路に電流が流れ、保護抵抗70による電圧降下の影響が無視できなくなる。この場合、入力電圧VHは、(数2)式で表される。
[数2]
VH = Vcx × Rdis/(Rpro+Rdis)
【0032】
以上のように、放電スイッチ144のオンオフ状態に依存して、電源用集積回路100に入力される入力電圧VHが変化するため、分圧電圧Vh_divの値も変化し、遮断検出部120において行われる分圧電圧Vh_divと基準電圧との比較結果にも影響を及ぼすこととなる。電源用集積回路100は、保護抵抗70による電圧降下の影響を考慮して、入力回路10のコンデンサC1、C2に残留する蓄積電荷を放電してよい。
【0033】
遮断検出部120は、遮断検出回路122と、パルス発生回路130とを含んでよい。遮断検出回路122は、電圧源124と、コンパレータ126と、タイマ回路128とを有してよい。
【0034】
コンパレータ126は、分圧電圧Vh_divと電圧源124によって生成された基準電圧Vrefとを比較する。分圧電圧Vh_divが基準電圧Vrefよりも高い場合にコンパレータ126の出力信号S1はローレベルであってよく、分圧電圧Vh_divが基準電圧Vrefよりも低い場合にコンパレータ126の出力信号S1はハイレベルであってよい。
【0035】
タイマ回路128は、コンパレータ126の出力信号S1が、分圧電圧Vh_divが基準電圧Vrefよりも低くなったことを示してからの経過時間を計測してよい。一例として、タイマ回路128は、コンパレータ126の出力信号S1のレベルがローになってからの経過時間を計測してよい。すなわち、本例の遮断検出回路122においては、コンパレータ126の出力信号S1のレベルがローになることで、コンパレータ126の出力信号S1は、分圧電圧Vh_divが基準電圧Vrefよりも低くなったことを示している。遮断検出部120は、タイマ回路128によって計測された経過時間が、予め定められた基準時間を超える場合に、交流電源の遮断を検出してよい。タイマ回路128は、計測時間が基準時間を超える場合に、出力信号S2をローレベルからハイレベルに切り替えてよい。コンパレータ126とタイマ回路128の動作例については、後述する。
【0036】
パルス発生回路130は、放電スイッチ144のオンオフを制御するための周期パルス信号S3を発生してよい。放電スイッチ144は、パルス発生回路130の出力信号S3がハイレベルの場合にオン状態に制御されてよく、パルス発生回路130の出力信号S3がローレベルである場合にオフ状態に制御されてよい。
【0037】
タイマ回路128は、パルス発生回路130を制御してよい。タイマ回路128の出力信号S2がハイレベルの場合にパルス発生回路130が動作状態に制御されてよく、タイマ回路128の出力信号S2がローレベルの場合にパルス発生回路130が待機状態に制御されてよい。
【0038】
パルス発生回路130の出力信号S3のレベル情報は、遮断検出回路122に提供されてよい。パルス発生回路130の出力信号S3がハイレベルである場合、すなわち、放電スイッチ144がオン状態に制御され放電が行われている場合、遮断検出回路122は待機状態に制御されてよい。パルス発生回路130の出力信号S3がローレベルである場合、すなわち、放電スイッチ144がオフ状態に制御され放電が行われていない場合、遮断検出回路122は動作状態に制御されてよい。遮断検出回路122とパルス発生回路130と放電スイッチ144の動作例については、後述する。
【0039】
図3は、電源用集積回路100の動作を表す波形図の一例を示す。第1段は両波整流回路60の出力電圧Vcxの時間波形を表し、第2段は分圧電圧Vh_divの時間波形を表し、第3段はコンパレータ126の出力信号S1を表し、第4段はタイマ回路128の出力信号S2を表し、第5段はパルス発生回路130の出力信号S3を表す。
【0040】
時刻T0は電源システム1000が交流電源から遮断された時刻を示し、時刻T0以前は、電源システム1000は交流電源と接続されている。交流電源が接続されている間、Vcxは交流電源を両波整流した電圧波形となっている。分圧電圧Vh_divは、Vcxとほとんど同じであるとみなすことができる入力電圧VHをRdiv2/(Rdiv1+Rdiv2)倍にした電圧波形となっている。コンパレータ126において、分圧電圧Vh_divと基準電圧Vrefが比較される。コンパレータ126の出力信号S1は、分圧電圧Vh_divが基準電圧Vrefを下回るとハイレベルとなり、上回るとローレベルとなる。すなわち、コンパレータ126の出力信号S1は、両波整流された信号に合わせて交流電源の周波数の2倍の周波数の出力信号となる。
【0041】
タイマ回路128は、コンパレータ126の出力信号S1のレベルがローになってからの経過時間を計測してよい。タイマ回路128は、計測時間が基準時間Tdelayを超える場合に、出力信号S2をローレベルからハイレベルに切り替えてよい。基準時間Tdelayは、電源システム1000が交流電源と接続されている間にコンパレータ126が出力する出力信号S1の周期より長い時間に定められてよい。一例として、交流電源の周波数が50Hzである場合、コンパレータ126の出力信号S1の周期は10msである。この場合、基準時間Tdelayは10msより長い時間に定められてよい。
【0042】
時刻T0以前において、コンパレータ126の出力信号S1は、予め定められた基準時間Tdelayよりも短い時間周期でローレベルとハイレベルを切り替えるため、タイマ回路128は出力信号S2をローレベルからハイレベルに切り替えず、出力信号S2はローレベルのままである。タイマ回路128の出力信号S2がローレベルのままであるため、パルス発生回路130は待機状態に制御され、パルス発生回路130の出力信号S3もローレベルのままである。
【0043】
時刻T0で交流電源が遮断されると、時刻T1でタイマ回路128の出力信号S2がハイレベルに変更されるまでの間、Vcxは入力回路10のコンデンサC1、C2に残留した蓄積電荷に対応する電圧信号となる。分圧電圧Vh_divは、Vcxとほとんど同じであるとみなすことができる入力電圧VHをRdiv2/(Rdiv1+Rdiv2)倍にした電圧となっている。分圧電圧Vh_divが基準電圧Vrefよりも高い電圧で保たれているため、コンパレータ126の出力信号S1もローレベルのままに保たれる。タイマ回路128の出力信号S2も、タイマ回路による計測時間が基準時間Tdelayを超えるまで、すなわち、時刻T1になるまでは、ローレベルのままである。したがって、パルス発生回路130の出力信号S3もローレベルのままである。
【0044】
時刻T1において、タイマ回路128の出力信号S2がハイレベルに変更される。すなわち、時刻T1は、コンパレータ126の出力信号S1のレベルがローになってからの経過時間が予め定められた基準時間Tdelayを超える時刻である。コンパレータ126の出力信号S1のレベルがローになってからの経過時間が予め定められた基準時間Tdelayを超えることによって、交流電源の遮断が検出され、タイマ回路128の出力信号S2がハイレベルに変更される。
【0045】
時刻T1でタイマ回路128の出力信号S2がハイレベルに変更されると、パルス発生回路130が動作状態に制御され、パルス発生回路130は周期パルス信号S3を発生する。出力信号S3がハイレベルの間(時刻T1からT2までの間)、放電スイッチ144がオン状態に制御されて放電が行われることで、Vcxは減少する。これに伴い、分圧電圧Vh_divも減少する。
【0046】
時刻T1からT2までの間の分圧電圧Vh_divの時間波形において、点線はVcxをRdiv2/(Rdiv1+Rdiv2)倍にした電圧を表し、実線はVHをRdiv2/(Rdiv1+Rdiv2)倍にした電圧、すなわち、実際にコンパレータ126に供給される電圧を表す。このように、放電スイッチ144がオン状態に制御される放電動作中は、保護抵抗70による電圧降下の影響により、分圧電圧Vh_divが低下する。この状態で、分圧電圧Vh_divと基準電圧Vrefの比較が行われると、放電状態の誤検出が生じるおそれがある。パルス発生回路130の出力信号S3がハイレベルである場合に遮断検出回路122を待機状態に制御することで、放電状態の誤検出を防止することができる。
【0047】
時刻T2からT3までの間、出力信号S3はローレベルとなる。これにより、放電スイッチ144がオフ状態に制御されて放電が停止されるとともに、遮断検出回路122が待機状態から動作状態となる。すなわち、保護抵抗70による電圧降下の影響がない状態で、分圧電圧Vh_divと基準電圧Vrefの比較が行われ、放電状態が検出される。時刻T2からT3までの間においては、分圧電圧Vh_divが基準電圧Vrefよりも大きいため、いずれの信号のレベルにも変化はない。
【0048】
このように、タイマ回路128の出力信号S2がハイレベルの間、パルス発生回路130は周期パルス信号S3を発生し、放電が行われてコンパレータ126による比較が行われない期間(出力信号S3のハイレベル期間)と、放電は行われずにコンパレータ126による比較が行われる期間(出力信号S3のローレベル期間)とが繰り返される。
【0049】
時刻T4でパルス発生回路130の出力信号S3のローレベル期間が始まると、分圧電圧Vh_divが基準電圧Vrefを下回るため、放電の終了が検出され、コンパレータ126の出力信号S1がハイレベルになり、タイマ回路128の出力信号S2がローレベルになり、パルス発生回路130が待機状態に制御されて、一連の放電動作が終了する。
【0050】
放電スイッチ144がオン状態に制御され放電が行われている場合に遮断検出回路122を待機状態に制御し、放電スイッチ144がオフ状態に制御され放電が行われていない場合に遮断検出回路122を動作状態に制御することで、保護抵抗70による電圧降下の影響を考慮して放電状態を検出することができ、入力回路10のコンデンサC1、C2に残留する蓄積電荷を確実に放電することができる。
【0051】
例えば、出力信号S3のハイレベル期間中の時刻Terrにおいて、分圧電圧Vh_divが基準電圧Vrefを下回っている。この期間中にはコンパレータ126による比較が行われないので、放電が終了したという誤検出を防止することができる。放電期間中に保護抵抗70による電圧降下の影響があることを考慮して、出力信号S3のハイレベル期間中には検出を行わず、出力信号S3のローレベル期間中に検出を行うことで、放電状態の誤検出を防止し、入力回路10のコンデンサC1、C2に残留する蓄積電荷を確実に放電することができる。
【0052】
図4は、電源用集積回路100の構成の変形例を示す。本例の電源用集積回路100は、交流電源の遮断が検出された場合に、分圧電圧Vh_divを生成するための分圧比を変更することで、保護抵抗70による電圧降下の影響を考慮することができる。
図2の例と対応する構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0053】
分圧部110は、第1分圧抵抗112と、第2分圧抵抗114と、第3分圧抵抗116と、第1スイッチ118と、を含んでよい。分圧部110は、第1分圧抵抗112と第2分圧抵抗114と第3分圧抵抗116とによる第1分圧比と、第1分圧抵抗112と第2分圧抵抗114とによる第2分圧比とを用いて、分圧電圧Vh_divを生成する。
【0054】
第1分圧抵抗112は、第1ノードN1と第2ノードN2との間に接続される。第1分圧抵抗112の抵抗値Rdiv1は、30MΩ以上、750MΩ以下であってよい。一例として、第1分圧抵抗112の抵抗値Rdiv1は、149MΩである。
【0055】
第2分圧抵抗114は、第2ノードN2とグランドとの間に接続される。第2分圧抵抗114の抵抗値Rdiv2は、0.3MΩ以上、7.5MΩ以下であってよい。一例として、第2分圧抵抗114の抵抗値Rdiv2は、1.505MΩである。
【0056】
第3分圧抵抗116は、一端が第2ノードN2に接続され、第2分圧抵抗114と並列に接続される。第3分圧抵抗116の抵抗値Rdiv3は、0.6MΩ以上、15MΩ以下であってよい。一例として、第3分圧抵抗116の抵抗値Rdiv3は、2.98MΩである。
【0057】
第1スイッチ118は、第3分圧抵抗116の他端とグランドとの間に接続される。第1スイッチのオンオフが制御されることで、分圧部110が分圧電圧Vh_divを生成するための分圧比が変更されてよい。
【0058】
第1スイッチがオン状態の場合、分圧部110を構成する抵抗は、第1分圧抵抗112と、第2分圧抵抗114と第3分圧抵抗116との並列接続と、の直列接続である。したがって、第1スイッチがオン状態の場合に分圧部110が設定する第1分圧比は、(数3)式で表される。
[数3]
第1分圧比 = (Rdiv2||Rdiv3)/(Rdiv1+(Rdiv2||Rdiv3))
ここで、(Rdiv2||Rdiv3)は、並列接続された第2分圧抵抗114と第3分圧抵抗116との合成抵抗を表す。第1スイッチがオン状態の場合、分圧電圧Vh_divは、入力電圧VHの第1分圧比倍となる。一例として、第1分圧抵抗112の抵抗値Rdiv1が149MΩであり、第2分圧抵抗114の抵抗値Rdiv2が1.505MΩであり、第3分圧抵抗116の抵抗値Rdiv3が2.98MΩである場合、第1分圧比は約1/150であり、分圧電圧Vh_divは入力電圧VH約1/150倍となる。
【0059】
第1スイッチがオフ状態の場合、分圧部110を構成する抵抗は、第1分圧抵抗112と、第2分圧抵抗114との直列接続である。したがって、第1スイッチがオフ状態の場合に分圧部110が設定する第2分圧比は、(数4)式で表される。
[数4]
第2分圧比 = Rdiv2/(Rdiv1+Rdiv2)
すなわち、第1スイッチがオフ状態の場合、分圧電圧Vh_divは、入力電圧VHの第2分圧比倍となる。一例として、第1分圧抵抗112の抵抗値Rdiv1が149MΩであり、第2分圧抵抗114の抵抗値Rdiv2が1.505MΩである場合、第2分圧比は約1/100であり、分圧電圧Vh_divは入力電圧VH約1/100倍となる。
【0060】
分圧部110は、交流電源の遮断が検出されない場合、入力電圧VHに対する分圧電圧Vh_divの比を第1分圧比に設定し、交流電源の遮断が検出された場合、入力電圧VHに対する分圧電圧Vh_divの比を、第1分圧比よりも大きい第2分圧比に設定してよい。すなわち、交流電源の遮断が検出されない場合、第1スイッチがオン状態に制御されて分圧部110が第1分圧比による分圧電圧Vh_divを生成してよく、交流電源の遮断が検出された場合、第1スイッチがオフ状態に制御されて分圧部110が第2分圧比による分圧電圧Vh_divを生成してよい。
【0061】
第1分圧抵抗112と、第2分圧抵抗114と、第3分圧抵抗116と、放電抵抗142と、保護抵抗70とは、(数5)式を満たしてよい。
[数5]
すなわち、第1分圧比に対する第2分圧比の比である分圧比率(左辺)は、(Rdis+Rpro)/Rdisに一致してよい。第1分圧比に対する第2分圧比の比である分圧比率は、1.1以上、2以下であってよい。一例として、放電抵抗142の抵抗値Rdisが10kΩであり、保護抵抗70の抵抗値Rproが5kΩである場合、分圧比率は1.5である。
【0062】
上述のように、放電スイッチ144がオフ状態の場合、保護抵抗70による電圧降下の影響はほとんど受けず、入力電圧VHはVcxとほとんど同じであるとみなすことができる一方、放電スイッチ144がオン状態の場合、保護抵抗70による電圧降下の影響が無視できなくなり、入力電圧VHはVcxのRdis/(Rpro+Rdis)倍になる。したがって、第1分圧比に対する第2分圧比の比である分圧比率を(Rdis+Rpro)/Rdisとすることで、保護抵抗70による電圧降下の影響を補い、放電されている場合および放電されていない場合のいずれの場合においても、分圧電圧Vh_divの値をほとんど等しくすることができる。
【0063】
このように、本例の分圧部110は、放電スイッチ144がオフ状態の場合と放電スイッチ144がオン状態の場合とで異なる分圧比を設定することで、保護抵抗70による電圧降下の影響を考慮して放電することができ、入力回路10のコンデンサC1、C2に残留する蓄積電荷を確実に放電することができる。
【0064】
遮断検出部120は、遮断検出回路122と、NOT回路132とを含んでよい。遮断検出回路122は、
図2の例で説明した構成と同一の構成であってよい。
【0065】
NOT回路132は、タイマ回路128と第1スイッチ118との間に接続される。NOT回路132は、タイマ回路128の出力信号S2を反転した信号S4を出力してよい。すなわち、タイマ回路128の出力信号S2がハイレベルである場合、NOT回路の出力信号S4はローレベルであってよく、タイマ回路128の出力信号S2がローレベルである場合、NOT回路の出力信号S4はハイレベルであってよい。
【0066】
遮断検出部120は、交流電源の遮断を検出しない場合、第1スイッチ118をオン状態に制御してよく、交流電源の遮断を検出する場合に、第1スイッチ118をオフ状態に制御してよい。交流電源の遮断を検出しない場合、タイマ回路128の出力信号S2がローレベルに保たれることで、NOT回路132の出力信号S4がハイレベルに保たれるため、第1スイッチ118はオン状態に制御される。交流電源の遮断を検出する場合、タイマ回路128の出力信号S2がハイレベルに保たれることで、NOT回路132の出力信号S4がローレベルに保たれるため、第1スイッチ118はオフ状態に制御される。
【0067】
図5は、電源用集積回路100の動作を表す波形図の変形例を示す。第1段は両波整流回路60の出力電圧Vcxの時間波形を表し、第2段は分圧電圧Vh_divの時間波形を表し、第3段はコンパレータ126の出力信号S1を表し、第4段はタイマ回路128の出力信号S2を表し、第5段はNOT回路132の出力信号S4を表す。
図3の例と対応する動作について、重複する説明は省略する。
【0068】
時刻T0以前は、電源システム1000は交流電源と接続されており、タイマ回路128の出力信号S2はローレベルである。したがって、NOT回路132の出力信号S4はハイレベルとなる。これにより、分圧部110は、(数3)式で表される第1分圧比で分圧電圧Vh_divを生成する。すなわち、分圧部110は、交流電源の遮断が検出されない場合、入力電圧VHに対する分圧電圧Vh_divの比を第1分圧比に設定する。
【0069】
時刻T1でタイマ回路128の出力信号S2がハイレベルになると、NOT回路132の出力信号S4はローレベルとなる。これにより、分圧部110は、(数4)式で表される第2分圧比で分圧電圧Vh_divを生成する。すなわち、分圧部110は、交流電源の遮断が検出された場合、入力電圧VHに対する分圧電圧Vh_divの比を、第1分圧比よりも大きい第2分圧比に設定する。
【0070】
分圧電圧Vh_divの時間波形は、時刻T1で連続的に変化していてよい。時刻T1以前では、放電スイッチ144がオフ状態であるため、入力電圧VHはVcxとほとんど等しい。また、第1スイッチ118がオン状態であるため、分圧電圧Vh_divは第1分圧比で生成される。時刻T1以降では、放電スイッチ144がオン状態であるため、入力電圧VHは、VcxのRdis/(Rpro+Rdis)倍となる。また、第1スイッチ118がオフ状態であるため、分圧電圧Vh_divは第2分圧比で生成される。ここで、第1分圧比に対する第2分圧比の比である分圧比率が(数5)式を満たす、すなわち、第2分圧比が第1分圧比の(Rpro+Rdis)/Rdis倍であるため、保護抵抗70による電圧降下の影響を分圧比の変更によって補うことができる。
【0071】
放電スイッチ144がオフ状態に制御され放電が行われていない場合に分圧部110が分圧電圧Vh_divを生成するための分圧比を第1分圧比に設定し、放電スイッチ144がオン状態に制御され放電が行われている場合に分圧部110が分圧電圧Vh_divを生成するための分圧比を第1分圧比よりも大きい第2分圧比に設定することで、保護抵抗70による電圧降下の影響を考慮して放電状態を検出することができ、入力回路10のコンデンサC1、C2に残留する蓄積電荷を確実に放電することができる。
【0072】
また、分圧比を変更することにより保護抵抗70による電圧降下の影響を考慮することで、簡単な構成で入力回路10のコンデンサC1、C2に残留する蓄積電荷を確実に放電することができる。分圧比を変更することにより保護抵抗70による電圧降下の影響を考慮することで、放電停止期間を設けることなく、短時間で入力回路10のコンデンサC1、C2に残留する蓄積電荷を確実に放電することができる。
【0073】
図6は、比較例に係る電源用集積回路500の構成の一例を示す。
図2および
図4の例に対応する構成については類似の符号を付し、重複する説明は省略する。例えば、第1分圧抵抗512は第1分圧抵抗112に対応する。
【0074】
比較例に係る分圧部510は、第1分圧抵抗512と、第2分圧抵抗514とを含む点で、
図2の例と共通するが、第3分圧抵抗および第1スイッチを含まない点で
図4の例と相違する。すなわち、分圧部510が分圧電圧Vh_divを生成するための分圧比は一つのみである。比較例に係る遮断検出部520は、パルス発生回路およびNOT回路を含まない点で、
図2の例および
図4の例と相違する。以上の相違点により、比較例に係る電源用集積回路500は、保護抵抗70による電圧降下の影響を考慮しない。
【0075】
図7は、比較例に係る電源用集積回路500の動作を表す波形図の一例を示す。第1段は両波整流回路60の出力電圧Vcxの時間波形を表し、第2段は分圧電圧Vh_divの時間波形を表し、第3段はコンパレータ526の出力信号S1を表し、第4段はタイマ回路528の出力信号S2を表す。
【0076】
時刻T1でタイマ回路528の出力信号S2がハイレベルとなると、放電を開始する。放電スイッチ544がオン状態となり、保護抵抗70による電圧降下の影響が無視できず、分圧電圧Vh_divが低下する。時刻Terrで分圧電圧Vh_divが基準電圧Vrefを下回るため、入力回路10のコンデンサC1、C2に残留する蓄積電荷の放電終了が検出され、タイマ回路528の出力信号S2がローレベルとなり、放電スイッチ544がオフ状態となる。しかし、保護抵抗70による電圧降下の影響が考慮されていないため、実際には、分圧電圧Vh_divが基準電圧Vrefを上回る程度に蓄積電荷は残留しており、入力回路10のコンデンサC1、C2に残留する蓄積電荷を確実に放電することができないおそれがある。
【0077】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0078】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【0079】
<実施例>
本発明の第1の態様においては、コンデンサを有する入力回路を介して交流電源に接続される電源用集積回路であって、入力電圧を分圧して分圧電圧を生成する分圧部と、前記分圧電圧と予め定められた基準電圧とを比較して、前記交流電源の遮断を検出する遮断検出部と、前記交流電源の遮断が検出された場合に、前記コンデンサの蓄積電荷を放電する放電部と、を備え、前記分圧部は、前記交流電源の遮断が検出されない場合、前記入力電圧に対する前記分圧電圧の比を第1分圧比に設定し、前記交流電源の遮断が検出された場合、前記入力電圧に対する前記分圧電圧の比を、前記第1分圧比よりも大きい第2分圧比に設定する、電源用集積回路を提供する。
【0080】
上記電源用集積回路において、前記分圧部は、第1ノードと第2ノードとの間に接続された第1分圧抵抗Rdiv1と、前記第2ノードとグランドとの間に接続された第2分圧抵抗Rdiv2と、一端が前記第2ノードに接続され、前記第2分圧抵抗Rdiv2と並列に接続された第3分圧抵抗Rdiv3と、前記第3分圧抵抗Rdiv3の他端とグランドとの間に接続された第1スイッチと、を含んでよい。
【0081】
上記いずれかの電源用集積回路において、前記第1分圧比は、(Rdiv2||Rdiv3)/(Rdiv1+(Rdiv2||Rdiv3))であってよい。
【0082】
上記いずれかの電源用集積回路において、前記第2分圧比は、Rdiv2/(Rdiv1+Rdiv2)であってよい。
【0083】
上記いずれかの電源用集積回路において、前記第1分圧比は、(Rdiv2||Rdiv3)/(Rdiv1+(Rdiv2||Rdiv3))であってよい。前記第2分圧比は、Rdiv2/(Rdiv1+Rdiv2)であってよい。前記第1分圧比に対する前記第2分圧比の比である分圧比率は、1.1以上、2以下であってよい。
【0084】
上記いずれかの電源用集積回路において、前記第1分圧抵抗Rdiv1は、30MΩ以上、750MΩ以下であってよい。
【0085】
上記いずれかの電源用集積回路において、前記第2分圧抵抗Rdiv2は、0.3MΩ以上、7.5MΩ以下であってよい。
【0086】
上記いずれかの電源用集積回路において、前記第3分圧抵抗Rdiv3は、0.6MΩ以上、15MΩ以下であってよい。
【0087】
上記いずれかの電源用集積回路において、前記遮断検出部は、前記交流電源の遮断を検出しない場合、前記第1スイッチをオン状態に制御し、前記交流電源の遮断を検出する場合に、前記第1スイッチをオフ状態に制御してよい。
【0088】
上記いずれかの電源用集積回路において、前記放電部は、前記第1ノードに接続された放電抵抗Rdisを含んでよい。前記第1ノードは、保護抵抗Rproを介して前記コンデンサと接続されてよい。前記第1分圧抵抗Rdiv1と、前記第2分圧抵抗Rdiv2と、前記第3分圧抵抗Rdiv3と、前記放電抵抗Rdisと、前記保護抵抗Rproとは、(数1)式を満たしてよい。
[数1]
【0089】
上記いずれかの電源用集積回路において、前記放電抵抗Rdisは、2kΩ以上、50kΩ以下であってよい。
【0090】
上記いずれかの電源用集積回路において、前記保護抵抗Rproは、1kΩ以上、25kΩ以下であってよい。
【0091】
上記いずれかの電源用集積回路において、前記放電部は、一端が前記第1ノードに接続され、前記第1分圧抵抗Rdiv1と並列に接続された放電抵抗Rdisと、前記放電抵抗Rdisの他端とグランドとの間に接続された第2スイッチと、を含んでよい。前記遮断検出部は、前記交流電源の遮断を検出しない場合、前記第2スイッチをオフ状態に制御し、前記交流電源の遮断を検出する場合に、前記第2スイッチをオン状態に制御してよい。
【0092】
上記いずれかの電源用集積回路において、前記遮断検出部は、前記分圧電圧と前記基準電圧とを比較するコンパレータと、前記コンパレータの出力信号が、前記分圧電圧が前記基準電圧よりも低くなったことを示してからの経過時間を計測するタイマ回路と、を含んでよい。
【0093】
上記いずれかの電源用集積回路において、前記遮断検出部は、前記タイマ回路によって計測された前記経過時間が、予め定められた基準時間を超える場合に、前記交流電源の遮断を検出してよい。
【0094】
本発明の第2の態様においては、コンデンサを有する入力回路と、前記入力回路を介して交流電源と接続される電源用集積回路と、を備える電源システムであって、前記電源用集積回路は、入力電圧を分圧して分圧電圧を生成する分圧部と、前記分圧電圧と予め定められた基準電圧とを比較して、前記交流電源の遮断を検出する遮断検出部と、前記交流電源の遮断が検出された場合に、前記コンデンサの蓄積電荷を放電する放電部と、を含み、前記分圧部は、前記交流電源の遮断が検出されない場合、前記入力電圧に対する前記分圧電圧の比を第1分圧比に設定し、前記交流電源の遮断が検出された場合、前記入力電圧に対する前記分圧電圧の比を、前記第1分圧比よりも大きい第2分圧比に設定する、電源システムを提供する。
【0095】
上記電源システムにおいて、前記分圧部は、第1ノードと第2ノードとの間に接続された第1分圧抵抗Rdiv1と、前記第2ノードとグランドとの間に接続された第2分圧抵抗Rdiv2と、一端が前記第2ノードに接続され、前記第2分圧抵抗Rdiv2と並列に接続された第3分圧抵抗Rdiv3と、前記第3分圧抵抗Rdiv3の他端とグランドとの間に接続された第1スイッチと、を含んでよい。
【0096】
上記いずれかの電源システムにおいて、前記コンデンサと前記第1ノードとの間に接続された保護抵抗Rproを備えてよい。前記放電部は、前記第1ノードに接続された放電抵抗Rdisを含んでよい。前記第1分圧抵抗Rdiv1と、前記第2分圧抵抗Rdiv2と、前記第3分圧抵抗Rdiv3と、前記放電抵抗Rdisと、前記保護抵抗Rproとは、(数2)式を満たしてよい。
[数2]
【符号の説明】
【0097】
10 入力回路、20 一次側整流平滑回路、30 トランス、40 二次側整流平滑回路、50 トランス用スイッチ、52 ゲート抵抗、60 両波整流回路、70 保護抵抗、100 電源用集積回路、110 分圧部、112 第1分圧抵抗、114 第2分圧抵抗、116 第3分圧抵抗、118 第1スイッチ、120 遮断検出部、122 遮断検出回路、124 電圧源、126 コンパレータ、128 タイマ回路、130 パルス発生回路、132 NOT回路、140 放電部、142 放電抵抗、144 放電スイッチ、150 PWM制御回路、1000 電源システム