IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝テック株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-液体吐出ヘッド 図1
  • 特開-液体吐出ヘッド 図2
  • 特開-液体吐出ヘッド 図3
  • 特開-液体吐出ヘッド 図4
  • 特開-液体吐出ヘッド 図5
  • 特開-液体吐出ヘッド 図6
  • 特開-液体吐出ヘッド 図7
  • 特開-液体吐出ヘッド 図8
  • 特開-液体吐出ヘッド 図9
  • 特開-液体吐出ヘッド 図10
  • 特開-液体吐出ヘッド 図11
  • 特開-液体吐出ヘッド 図12
  • 特開-液体吐出ヘッド 図13
  • 特開-液体吐出ヘッド 図14
  • 特開-液体吐出ヘッド 図15
  • 特開-液体吐出ヘッド 図16
  • 特開-液体吐出ヘッド 図17
  • 特開-液体吐出ヘッド 図18
  • 特開-液体吐出ヘッド 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113250
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240815BHJP
   B41J 2/045 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 401
B41J2/045
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018094
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003362
【氏名又は名称】弁理士法人i.PARTNERS特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仁田 昇
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EC03
2C056EC07
2C056EC37
2C056EC38
2C056FA04
2C056FA13
2C057AG44
2C057AM03
2C057AM16
2C057AN05
2C057BA04
2C057BA14
2C057DB04
2C057DE02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】駆動波形を構成するすべての電位について、各電圧レベルに制御された電源を用意しなくてすむ液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】液体吐出ヘッドは、圧電アクチュエータ、電源供給部、中間電位生成回路、電荷補正回路を備える。圧電アクチュエータは、ノズルから液体を吐出する。中間電位生成回路は、電源供給部に供給される電圧から駆動波形の中間電位を生成し、圧電アクチュエータに充放電可能に電荷を蓄える。電荷補正回路は、中間電位生成回路を中間電位と異なる第1の電源電位にインダクターを介して接続するスイッチ素子をONして、電荷を注入又は排出するとともに、インダクターにエネルギーを蓄え、スイッチ素子のOFFに伴ってONするダイオードで、中間電位生成回路を中間電位と異なる第2の電源電位にインダクターを介して接続して、インダクターに蓄えたエネルギーによって電荷を中間電位生成回路又は電源供給部に還流する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから液体を吐出するように構成した圧電アクチュエータと、
電源供給部と、
前記電源供給部に供給される電圧から前記圧電アクチュエータに与える駆動波形の中の中間電位を生成し、前記圧電アクチュエータに充放電可能に電荷を蓄える中間電位生成回路と、
前記中間電位生成回路を、前記中間電位と異なる第1の電源電位にインダクターを介して接続するスイッチ素子をONして、
前記インダクターを介して前記中間電位生成回路に電荷を補充又は前記中間電位生成回路から電荷を放出すると共に、前記インダクターにエネルギーを蓄え、
前記スイッチ素子をOFFして、これに伴ってONするダイオードで、前記中間電位生成回路を前記中間電位と異なる第2の電源電位に前記インダクターを介して接続して、
前記インダクターに蓄えたエネルギーによって電荷を前記中間電位生成回路又は前記電源供給部に還流する電荷補正回路と、を備えることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記電荷補正回路は、前記液体を吐出する駆動周期内に前記中間電位生成回路の電荷の補正を完了することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記電荷補正回路は、前記中間電位の電圧が所定範囲から外れたときに補正パルスを出力し、パルス幅に対応する時間、前記スイッチ素子をONすることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記電荷補正回路は、複数の前記圧電アクチュエータに与える前記駆動波形から前記中間電位の電荷の全体の収支を求める監視回路を備え、
前記電荷の収支バランスが所定範囲から外れたときに、補正パルスを出力し、パルス幅に対応する時間、前記スイッチ素子をONすることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記監視回路は、前記中間電位の電荷を増す駆動波形を検出すると累積カウンタ値を加算し、前記中間電位の電荷を減ずる駆動波形を検出すると累積カウンタ値を減算し、
前記累積カウンタ値が基準値を超えたときに前記補正パルスを出力し、パルス幅に対応する時間、前記スイッチ素子をONすることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
所定量の液体を所定の位置に供給する液体吐出ヘッドが知られている。液体吐出ヘッドは、例えばインクジェットプリンタ、3Dプリンタ、分注装置などに搭載する。インクジェットプリンタは、インクの液滴をインクジェットヘッドから吐出して、記録媒体の表面に画像等を形成する。3Dプリンタは、造形材の液滴を造形材吐出ヘッドから吐出し、硬化させて、三次元造形物を形成する。分注装置は、試料の液滴を吐出して複数の容器等へ所定量供給する。
【0003】
液体吐出ヘッドは、液体を吐出するチャネルを複数有している。各チャネルは、液体を吐出するノズル、ノズルに連通する圧力室、圧力室の容積を変える圧電アクチュエータを備える。液体吐出ヘッドは、複数のチャネルの中から液体を吐出するチャネルを選択し、選択したチャネルの圧電アクチュエータに駆動波形を与えて液体を吐出させる。駆動波形は、例えば良好な吐出特性を得るために、複数の電圧レベルで構成する。そのため、各電圧レベルに制御された複数の電源を用意しなくてはならず、液体吐出ヘッドの電源回路が複雑になることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-171654号公報
【特許文献2】特開2016-519号公報
【特許文献3】特開2017-170652号公報
【特許文献4】特開2003-285441号公報
【特許文献5】特開2004-306395号公報
【特許文献6】特開2010-18028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、駆動波形を構成する各電圧レベルを簡単な構成で生成する液体吐出ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の液体吐出ヘッドは、圧電アクチュエータ、電源供給部、中間電位生成回路、電荷補正回路を備える。圧電アクチュエータは、ノズルから液体を吐出するように構成する。中間電位生成回路は、前記電源供給部に供給される電圧から前記圧電アクチュエータに与える駆動波形の中の中間電位を生成し、前記圧電アクチュエータに充放電可能に電荷を蓄える。電荷補正回路は、前記中間電位生成回路を、前記中間電位と異なる第1の電源電位にインダクターを介して接続するスイッチ素子をONして、前記インダクターを介して前記中間電位生成回路に電荷を補充又は前記中間電位生成回路から電荷を放出すると共に、前記インダクターにエネルギーを蓄え、前記スイッチ素子をOFFして、これに伴ってONするダイオードで、前記中間電位生成回路を前記中間電位と異なる第2の電源電位に前記インダクターを介して接続して、前記インダクターに蓄えたエネルギーによって電荷を前記中間電位生成回路又は前記電源供給部に還流する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に従うインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタの全体構成図である。
図2】上記インクジェットヘッドの斜視図である。
図3】上記インクジェットヘッドのヘッド部を部分拡大した断面図である。
図4】上記インクジェットヘッドのヘッド部を部分拡大した断面図である。
図5】上記インクジェットヘッドのヘッド部を部分拡大した平面図である。
図6】上記インクジェットヘッドの駆動回路である。
図7】上記駆動回路の中間電位生成回路である。
図8】上記駆動回路の波形生成回路である。
図9】上記インクジェットヘッドのアクチュエータに与える駆動波形である。
図10】上記駆動波形を与えたアクチュエータの動作説明図である。
図11】中間電位の電荷の補正を行ったときのシミュレーション結果である。
図12】中間電位の電荷を補正しなかったときのシミュレーション結果である。
図13】第2実施形態に従うインクジェットヘッドのアクチュエータに与える駆動波形である。
図14】上記インクジェットヘッドの各駆動波形のステップごとの電位と時間の設定を示す図である。
図15】上記インクジェットヘッドの駆動回路の波形生成回路である。
図16】上記駆動回路の電荷計数カウンタの構成図である。
図17】上記駆動回路の中間電位生成回路である。
図18】放出する電荷Q、電圧差ΔV、インダクターの関係を説明する図である。
図19】補充する電荷Q、電圧差ΔV、インダクターの関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に従う液体吐出ヘッドについて、添付図面を参照しながら詳述する。なお、各図において、同一構成は同一の符号を付している。
【0009】
(第1実施形態)
実施形態の液体吐出ヘッドを搭載した画像形成装置の一例として、記録媒体に画像を印刷するインクジェットプリンタ10を説明する。図1は、インクジェットプリンタ10の概略構成を示す。インクジェットプリンタ10は、筐体11の内部に、記録媒体の一例であるシートSを収納するカセット12、シートSの上流搬送路13、カセット12内から取り出したシートSを搬送する搬送ベルト14、搬送ベルト14上のシートSに向けてインクの液滴を吐出する複数のインクジェットヘッド100~103、シートSの下流搬送路15、排出トレイ16、及び制御基板17を配置する。ユーザーインターフェイスである操作部18は、筐体11の上部側に配置する。
【0010】
シートSに印刷する画像データは、例えば外部接続機器であるコンピュータ200で生成する。コンピュータ200で生成した画像データは、ケーブル201、コネクタ202,203を通してインクジェットプリンタ10の制御基板17に送る。
【0011】
ピックアップローラ204は、カセット12からシートSを一枚ずつ上流搬送路13へ供給する。上流搬送路13は、送りローラ対131、132と、シート案内板133、134で構成する。シートSは、上流搬送路13を経由して、搬送ベルト14の上面に送る。図中の矢印104は、カセット12から搬送ベルト14へのシートSの搬送経路を示す。
【0012】
搬送ベルト14は、表面に多数の貫通孔を形成した網状の無端ベルトである。駆動ローラ141、従動ローラ142,143の3本のローラは、搬送ベルト14を回転自在に支持する。モータ205は、駆動ローラ141を回転することによって搬送ベルト14を回転させる。モータ205は、駆動装置の一例である。図中105は、搬送ベルト14の回転方向を示す。搬送ベルト14の裏面側に、負圧容器206を配置する。負圧容器206は、減圧用のファン207と連結する。ファン207は、形成する気流によって負圧容器206内を負圧にし、搬送ベルト14の上面にシートSを吸着保持させる。図中106は、気流の流れを示す。
【0013】
液体吐出ヘッドの一例であるインクジェットヘッド100~103は、搬送ベルト14上に吸着保持したシートSに対して、例えば1mmの僅かな隙間を介して対向するように配置する。インクジェットヘッド100~103は、シートSに向けてインクの液滴を夫々吐出する。インクジェットヘッド100~103は、下方をシートSが通過する際に画像を印刷する。各インクジェットヘッド100~103は、吐出するインクの色が異なることを除けば、同じ構造である。インクの色は、例えば、シアン,マゼンタ,イエロー,ブラックである。
【0014】
インクジェットヘッド100~103は、夫々、インク流路311~314を介してインクタンク315~318及びインク供給圧力調整装置321~324と連結する。各インクタンク315~318は、各インクジェットヘッド100~103の上方に配置する。待機時に、インクジェットヘッド100~103のノズル24(図2参照)からインクが漏れ出ないように、各インク供給圧力調整装置321~324は、各インクジェットヘッド100~103内を大気圧に対して負圧、例えば-1.2kPaに調整している。画像形成時、各インクタンク315~318のインクは、インク供給圧力調整装置321~324によって各インクジェットヘッド100~103に供給する。
【0015】
画像形成後、搬送ベルト14から下流搬送路15へシートSを送る。下流搬送路15は、送りローラ対151,152,153,154と、シートSの搬送経路を規定するシート案内板155,156で構成する。シートSは、下流搬送路15を経由し、排出口157から排出トレイ16へ送る。図中矢印107は、シートSの搬送経路を示す。
【0016】
続いて、インクジェットヘッド100~103の構成について説明する。以下は、図2図5を参照しながら、インクジェットヘッド100について説明しているが、インクジェットヘッド101~103もインクジェットヘッド100と同じ構造である。
【0017】
図2に示すように、インクジェットヘッド100は、液体吐出部の一例であるヘッド部2を備える。ヘッド部2は、フィルム配線基板の一例であるフレキシブルプリント配線板21と接続する。フレキシブルプリント配線板21は、中継基板の一例であるプリント基板22と接続する。ヘッド部2は、ノズル部の一例であるノズルプレート23を備える。ヘッド部2は、インク流路311を介して図1のインク供給圧力調整装置321と接続する。
【0018】
インクを吐出する各チャネルのノズル24は、ノズルプレート23の第1の方向の例えばX方向に沿って配列する。ノズル密度は、例えば150~1200dpiの範囲内に設定する。ノズル24は、一列に限らず、複数列であってもよい。ヘッド部2の詳しい構成は、後述する。
【0019】
フレキシブルプリント配線板21は、例えばポリイミドなどの合成樹脂フィルムを用いたフレキシブルなプリント配線基板である。フレキシブルプリント配線板21は、ドライバチップである駆動用のIC(Integrated Circuit)3を搭載している(以下、駆動ICと称す)。プリント基板22は、ガラス繊維入りのエポキシ樹脂層と銅配線層を多重に積層した硬質のスルーホール基板である。インクジェットヘッド100の制御部としての駆動IC3は、インクジェットプリンタ10の制御部としてのCPUを備えた制御基板17からプリント基板22を介して送られてくるデータを一時的に格納し、所定のタイミングでインクを吐出するよう各チャネルに駆動信号を与える。
【0020】
図3図5は、ヘッド部2の部分断面図である。図4は、図3のA-Aの断面図であり、図5は、図3のB-Bの断面図である。ノズルプレート23は、圧力室基板4の一面に接合する。ノズルプレート23は、例えばポリイミドなどの樹脂又はステンレスなどの金属で形成した矩形状のプレートである。振動板5は、ノズルプレート23とは反対側の圧力室基板4の一面に接合する。振動板5は、外力を加えたときに変形する可撓性を有する。振動板5は、例えばニッケルやステンレスなどの金属で形成した薄板状のプレートである。振動板5の材質は、ポリイミドフィルムなど、金属以外でもよい。
【0021】
圧力室42は、圧力室基板4に形成する。複数の圧力室42は、各ノズル24の位置に配列して、ノズル24とそれぞれ連通させている。圧力室基板4は、例えばステンレスなどの金属で形成する。圧力室42は、一例として、第2の方向の例えばZ方向に貫通する矩形状の開口を圧力室基板4に形成し、両側の開口をノズルプレート23と振動板5でそれぞれ塞ぐことによって形成する。
【0022】
圧力室42は、狭窄部を有するガイド流路43と連通し、さらに振動板5を貫通する開口穴であるインク供給口44を介してインク供給マニホールド45に連通する。ガイド流路43は、圧力室42ごとに、圧力室基板4の振動板5側の一面に第3の方向の例えばY方向に溝状に形成する。インク供給マニホールド45は、振動板5の一面に接合したフレーム46内に形成する。インク供給マニホールド45は、X方向に延び、各チャネルのインク供給口44及びガイド流路43を介して、各チャネルの圧力室42とそれぞれ連通する。共通インク室としてのインク供給マニホールド45は、インク流路311と連通する(図1図2参照)。
【0023】
各チャネルのアクチュエータ6は、振動板5を挟んで圧力室42と対向する位置に配列している。各アクチュエータ6は、Z方向における振動板5とは反対側の一面を支持部材47にそれぞれ接合することによって固定している。
【0024】
圧電アクチュエータの一例であるアクチュエータ6は、例えばピエゾ素子などの圧電体61、第1の内部電極62、及び第2の内部電極63を交互に層状に積層して形成した積層型圧電アクチュエータである(特に図3参照)。各圧電体61は、分極方向が例えばZ方向において互いに逆向きに配置し、d33モードで変形させる。第1の内部電極62と第2の内部電極63は、圧電体61の主面にそれぞれ形成した導電膜である。第1の内部電極62は、それぞれY方向におけるアクチュエータ6の一方の端面まで形成し、この端面に形成した第1の外部電極64に接続する。第2の内部電極63は、それぞれY方向におけるアクチュエータ6の他方の端面まで形成し、この端面に形成した第2の外部電極65に接続する。ダミー層68は、圧電体61と同材料である。但し、ダミー層68は、内部電極を設けず、電界が印加されないので変形しない。ダミー層68は、アクチュエータ6を支持部材47に固定するベースとなり(特に図4参照)、あるいは組立中や組立後の精度を出すために研磨する研磨代となる。
【0025】
複数の圧電体61を積層したアクチュエータ6は、一例として、薄板状に加工した各圧電体61の主面に第1の内部電極62と第2の内部電極63をそれぞれ成膜する。そして圧電体61同士を積層し焼成して一体にする。その後、第1の外部電極64と第2の外部電極65を成膜する。その後、圧電体61を着分極する。圧電体61は、チタン酸ジルコン酸鉛 (PZT)などの鉛含有圧電材料、或いはニオブ酸ナトリウムカリウムなどの鉛非含有圧電材料で形成する。第1の内部電極62と第2の内部電極63は、銀パラジウムなどの焼成可能な導電性材料で成膜する。第1の外部電極64と第2の外部電極65は、メッキ法やスパッタ法など既知の方法で、Ni、Cr、Auなどで成膜する。
【0026】
各アクチュエータ6の第1の外部電極64は、フレキシブルプリント配線板21の個別配線66にそれぞれ接続する(図3参照)。フレキシブルプリント配線板21は、基材となる樹脂フィルム26,個別配線66,絶縁フィルム27で構成する。フレキシブルプリント配線板21は、個別配線66が第1の外部電極64と接触するように配置し、例えばNCF(Non-Conductive Film)などによって固定する。NCFはACF(Anisotropic Conductive Film)から導電粒子を取り除いたものであって、それ自体は絶縁体だが第1の外部電極64と個別配線66を接触させつつ熱硬化することによって第1の外部電極64と個別配線66を導通させる。或いはハンダなどによって固定してもよい。一方、各チャネルの第2の外部電極65は、共通配線(不図示)に接続し、例えばフレキシブルプリント配線板21を介して共通電位に接続する。
【0027】
支柱60は、各チャネルのアクチュエータ6の間に溝69を介して配置する。駆動用のアクチュエータ6および支柱60とするダミーのアクチュエータは、共通の圧電体61、第1の内部電極62、及び第2の内部電極63を用いて一括で形成し、溝69を形成することで個々のアクチュエータ6と支柱60に分ける。支柱60は、隣接する圧力室42間の隔壁40にあたる位置に配置する(図4参照)。支柱60は、アクチュエータ6と同様に圧電体61等で形成するのに代えて、別の部材で形成してもよい。例えば支持部材47と一体的に支柱を形成してもよい。
【0028】
図6は、インクジェットヘッド100の駆動回路である。図6に示すように、各チャネルのアクチュエータ6(CX1~CXn)は、第1の外部電極64に接続した個別配線66を介して駆動IC3の出力端子にそれぞれ接続する。第1の外部電極64と個別配線66の接続点がアクチュエータ6の個別端子である。一方、各アクチュエータ6(CX1~CXn)の第2の外部電極65は、共通配線67を介して例えばグランド(GND)などの共通電位に接続する。第2の外部電極65と共通配線67の接続点がアクチュエータ6のコモン端子である。
【0029】
各アクチュエータ6(CX1~CXn)の個別配線66は、駆動IC3の各チャネルの駆動ドライバDにそれぞれ接続する。各駆動ドライバDには、アクチュエータ6に与える電位V1,V2,V3,V0の電源を接続する。最大電位である電位V1、最低電位である電位V0は、電源7から供給する。中間電位である電位V2、V3は、外部供給せず、電源7から供給されるV1-V0の電圧を電源にして中間電位生成回路70で生成する。この場合、V1-V0の供給線が電源供給部の一例である。電位V2,V3は、電位V1と電位V0の間にある互いに異なる電位である。なお、中間電位の数は、電位V2と電位V3の2個に限らない。アクチュエータ6に与える駆動波形の形状に応じて増減してよい。
【0030】
各電位V1,V2,V3,V0の値は、例えばアクチュエータ6の構造やインクの種類などに基づいて決めてよい。一例を挙げると、電位V1が18V、電位V2が12V、電位V3が8V、電位V0が0Vである。
【0031】
図7は、中間電位生成回路70の好ましい一例である。中間電位生成回路70は、電位V1と電位V0の間に3個の分圧抵抗Rd,Rd,Rdを直列に接続している。これにより電位V1と電位V0の電位差を、抵抗値の比に応じた電位に分圧する。例えば電位V1が18Vで電位V0が0Vの場合、抵抗値が75kΩ,50kΩ,100kΩの分圧抵抗Rd,Rd,Rdを用いることで、電位V2を12V、電位V3を8Vにする。さらに電位V1と電位V0の間に、3個のキャパシタCS1,CS2,CS3を直列に接続する。キャパシタCS1,CS2,CS3の静電容量は、夫々、全チャネルのアクチュエータ6(CX1~CXn)の合計静電容量よりも大きくする。好ましくは10倍以上である。一例として、個々のアクチュエータ6(CX1~CXn)の静電容量が1000pF、チャネル数nが300chの場合、合計静電容量は0.3μFである。この場合、キャパシタCS1,CS2,CS3は、夫々、静電容量が10倍以上となる3μF以上のものを用いる。
【0032】
中間電位生成回路70は、分圧抵抗Rd,Rd,Rdで生成した電位V2,V3の電荷をキャパシタCS1,CS2,CS3に充電する。キャパシタCS1,CS2,CS3に充電した電位V2,V3の電荷は、アクチュエータ6の充電に用いる。さらにキャパシタCS1,CS2,CS3は、アクチュエータ6から放電された電位V2,V3の電荷を受け取って蓄える。つまり、電位V2,V3のアクチュエータ6の充放電は、キャパシタCS1,CS2,CS3とアクチュエータ6との間の電荷の受け渡しによって行う。これによりアクチュエータ6を駆動させるときの電源の消費電力を軽減する。但し、アクチュエータ6に与える駆動波形の形状によっては、駆動波形を与える前と後で、中間電位生成回路70の電位V2,V3の電圧が目標値からズレることがある。そのため、中間電位生成回路70に、電位V2,V3の電圧を目標値に補正する電荷補正回路を設けている。
【0033】
電荷補正回路は、電位V3の電圧を目標値に補正する第1の電荷補正回路71と、電位V2の電圧を目標値に補正する第2の電荷補正回路72を有する。第1の電荷補正回路71は、比較器73、パルス発生器74、スイッチ素子SW1、インダクターL1、ダイオードD1で構成する。比較器73は、電位V3の供給線の電圧を目標値と比較する。電位V3の目標値は、電位V1と電位V0を分圧抵抗Rdと分圧抵抗Rdで分圧して設定する。例えば、抵抗値が125kΩの分圧抵抗Rdと、抵抗値が100kΩの分圧抵抗Rdを用いて、電位V3の目標値を8Vに設置する。比較器73は、電位V3の供給線の電圧が目標値から所定の範囲外れた場合、パルス発生器74をONする。所定の範囲は、例えば目標値との差が0.5V以内である。0.5Vの所定の範囲は、例えば比較器73に0.5Vのヒステリシスを設けることによって設定する。パルス発生器74は、補正パルスとして例えばパルス幅6μsの単発パルスを出力し、スイッチ素子SW1をONする。
【0034】
スイッチ素子SW1は、一方の端子をインダクターL1を介して電位V3の供給線に接続し、他方の端子を電位V1の供給線に接続している。従って、スイッチ素子SW1をONすると、電位V3の供給線には、インダクターL1を介して電位V1の供給線が接続される。この場合の電位V1は、スイッチ素子SW1をONすると電位V3の供給線に接続される第1の電源電位の一例である。スイッチ素子SW1をONすると、インダクターL1を介して電位V3の供給線に電荷が補充されると共に、インダクターL1にエネルギーが蓄えられる。スイッチ素子SW1は、例えばトランジスタである。インダクターL1の静電容量は、例えば60μHである。
【0035】
ダイオードD1は、カソードをインダクターL1とスイッチ素子SW1の間のノードに接続し、アノードを電位V0の供給線に接続して、スイッチ素子SW1をONしたときに電流が流れない向きにしている。すなわち、ダイオードD1は、スイッチ素子SW1がOFFしたとき、それに伴ってONして、電位V3の供給線にインダクターL1を介して電位V0の供給線を接続する。この場合の電位V0は、ダイオードD1がONすると電位V3の供給線に接続される第2の電源電位の一例である。ダイオードD1がONすると、インダクターL1に残っているエネルギーによって、電位V0から電位V3の供給線に向けて電荷が追加補充される。すなわち、ダイオードD1は、還流用のダイオードである。
【0036】
一方、第2の電荷補正回路72は、比較器75、パルス発生器76、スイッチ素子SW2、インダクターL2、ダイオードD2で構成する。比較器75は、電位V2の供給線の電圧を目標値と比較する。電位V2の目標値は、電位V1と電位V0を分圧抵抗Rdと分圧抵抗Rdで分圧して設定する。例えば、抵抗値が75kΩの分圧抵抗Rdと、抵抗値が150kΩの分圧抵抗Rdを用いて、電位V2の目標値を12Vに設置する。比較器75は、電位V2の供給線の電圧が目標値から所定の範囲外れた場合、パルス発生器76をONする。所定の範囲は、例えば目標値との差が0.5V以内である。0.5Vの所定の範囲は、例えば比較器75に0.5Vのヒステリシスを設けることによって設定する。パルス発生器76は、補正パルスとして例えばパルス幅3μsの単発パルスを出力し、スイッチ素子SW2をONする。
【0037】
スイッチ素子SW2は、一方の端子をインダクターL2を介して電位V2の供給線に接続し、他方の端子をグランド(GND)に接続している。グランドは、例えば0Vである。従って、スイッチ素子SW2をONすると、電位V2の供給線には、インダクターL2を介してグランド(GND)が接続される。この場合のグランド(GND)は、スイッチ素子SW2をONすると電位V2の供給線に接続される第1の電源電位の一例である。スイッチ素子SW2をONすると、インダクターL2を介して電位V1の供給線に電荷が放出されると共に、インダクターL2にエネルギーが蓄えられる。スイッチ素子SW2は、例えばトランジスタである。インダクターL2の静電容量は、例えば120μHである。
【0038】
ダイオードD2は、カソードを電位V1の供給線に接続し、アノードをインダクターL2とスイッチ素子SW2の間のノードに接続して、スイッチ素子SW2をONしたときに電流が流れない向きにしている。すなわち、ダイオードD2は、スイッチ素子SW2をOFFしたとき、それに伴ってONして、電位V2の供給線にインダクターL2を介して電位V1の供給線を接続する。この場合の電位V1は、ダイオードD2がONすると電位V2の供給線に接続される第2の電源電位の一例である。ダイオードD2がONすると、インダクターL2に残っているエネルギーによって、電位V2から電位V1の供給線に向けて電荷が放出される。すなわち、ダイオードD2は、還流用のダイオードである。
【0039】
駆動IC3の各チャネルの駆動ドライバDは、電位V1,V2,V3,V0を電源にして、チャネル毎に独立して駆動波形を生成する。図8は、チャネルごとの波形生成回路77の一例である。波形生成回路77は、電位V1をアクチュエータ6に与えるスイッチSW3、電位V2をアクチュエータ6に与えるスイッチSW4、電位V3をアクチュエータ6に与えるスイッチSW5、電位V0をアクチュエータ6に与えるスイッチSW6を有する。中間電位である電位V2,V3は、アクチュエータ6を充電する場合と放電させる場合の両方があるため、スイッチSW4,SW5は、双方向スイッチとする。
【0040】
駆動IC3の各チャネルの駆動ドライバDは、所定の順に制御信号を排他的に出力し、各スイッチSW3~SW6のON-OFFを切り替えて駆動波形を生成する。図9は、マルチドロップの駆動波形の一例と、各スイッチSW3~SW6をON/OFFするタイミングのシーケンスを示す。各スイッチSW3~SW6のうち2以上が同時にONすることは無い。どのチャネルからインクを吐出するかは、例えばインクジェットプリンタ10の制御部としての制御基板17(図1参照)から送られてくるプリントデータに基づく。
【0041】
図10は、図9の駆動波形をアクチュエータ6に与えたときのアクチュエータ6の動作を模式的に示す。以下、図9及び図10を参照しながらインクを吐出する動作について説明する。
【0042】
例えば印刷に先立って駆動ドライバDはスイッチSW4をONし、アクチュエータ6に電位V2を与えておく。電位V2が与えられたアクチェータ6は、圧電体61の分極軸の向きに電界が印加され、図10(a)に示すように、圧電体61の積層方向(Z方向)に伸長して圧力室42の容積が縮小した状態になる。これはインク吐出のタイミングに先立って行っておく。そして、プリントデータに従ってインクの吐出動作が開始されるまで、電位V2を保持して、待機状態とする。
【0043】
その後、プリントデータに従ってインクを吐出する動作を開始する場合、スイッチSW6をONし、アクチュエータ6に電位V0を与える。これにより、図10(b)に示すように、伸長していたアクチュエータ6が元に戻り、すなわち相対的に収縮し、圧力室42の容積が相対的に拡張する。圧力室42の容積が拡張した分、ガイド流路43を介して圧力室42内にインクが流れ込むと共にノズル24のインクのメニスカスが後退する。
【0044】
そして、例えばヘッド部2の圧力振動周期の1/2の時間が経過した後、スイッチSW5をONし、アクチュエータ6に電位V3を与える。これにより、図10(c)に示すように、アクチュエータ6が積層方向(Z方向)に伸長して相対的に圧力室42の容積が縮小することでノズル24から1ドロップ目のインクの液滴Rが吐出する。続けて、スイッチSW6をONしてアクチュエータ6に電位V0を与え、例えばヘッド部2の圧力振動周期の1/2の時間が経過した後、スイッチSW5をONしてアクチュエータ6に電位V3を与えることによって、2ドロップ目のインクのインクの液滴Rが吐出する。同様にすることで3ドロップ目のインクのインクの液滴Rが吐出する。
【0045】
そして、例えばヘッド部2の圧力振動周期の1/2の時間が経過した後、スイッチSW3をONし、アクチュエータ6に電位V1を与え、所定時間後にスイッチSW4をONし、電位V2に戻す。その際のアクチュエータ6の伸長(図10(d))と復帰(図10(a))によって圧力室42の容積を縮小、復帰させ、この動作によって残留振動を減衰させる。この一連の動作によって、1ドットのインクの液滴Rを吐出することができる。続けてインクを吐出する場合、電位V2で始まり電位V2で終わる1ドットのインクの吐出動作を繰り返す。最後のドットのインクの吐出が終了し一連の液体吐出動作を終了するときはスイッチSW4をOFFし、スイッチSW6をONしてアクチュエータ6の電位をゼロにしてもよい。
【0046】
このように駆動周期内で1ドットのインクの液滴Rを吐出する動作を行っている最中、第1の電荷補正回路71と第2の電荷補正回路72は、中間電位生成回路70内の電荷のバランスを監視して、電荷のバランスのズレを補正する。図11は、補正動作を回路シミュレータでシミュレーションした結果を示す。比較のため、補正動作を行わなかったときのシミュレーション結果を図12に示す。
【0047】
中間電位である電位V2,V3の電圧は、容量の大きいキャパシタCS1,CS2,CS3によって安定化させているが、電荷の補正を行わない場合、図12のように、電位V3の電圧レベルが低下し、電位V2の電圧レベルが上昇する。すなわち、駆動波形Voutのタイミングr1,r2,r3で電位V3の供給線からアクチュエータ6に電荷を供給する為、一回の駆動を終了すると電位V3は各タイミングで3段階に低下する。一方、タイミングf1ではアクチュエータ6から電位V2の供給線に向かって電荷が供給される為、一回の駆動を終了すると電位V2は上昇する。電圧レベルの変化は、同じ駆動周期に全チャネルのアクチュエータ6を駆動させたときに特に発生し易い。キャパシタCS1,CS2,CS3の静電容量値を大きくすれば動作一回あたりの電位V3の電圧低下と電位V2の電圧上昇を抑えることができるが、高い周波数で複数回の吐出を行うと電圧低下、電圧上昇は吐出特性に影響を与える程度まで累積してしまう。
【0048】
これに対して補正を行う場合、図11に示すように、第1の電荷補正回路71の比較器73が電位V3の供給線の電圧の値を目標値と比較し、時刻9μsにおいて目標値から所定の範囲外れると、パルス発生器74をONする。パルス発生器74は、例えば6μsの単発パルスP1を出力して、パルス幅に対応する時間、スイッチ素子SW1をONする。
【0049】
そうすると電位V3の供給線にインダクターL1を介して電位V1の供給線が接続され、電位V3に電荷が補充される。さらにスイッチ素子SW1がONしている時刻9μs~15μsの間、インダクターL1にはエネルギーが蓄えられる。図11のi1は、インダクターL1を流れる電流を示す。次いでパルス幅の時間が経過してスイッチ素子SW1がOFFすると、それに伴ってダイオードD1がONする。そしてインダクターL1に残っているエネルギーによって、電位V0からダイオードD1を介して電荷が電位V3に補充される(時刻15μs~約22μsまで)。この補充に際しては電源のエネルギーを消費しないので高効率に電荷が調節できる。こうして駆動周期が終了した時点で、電位V3の電圧が目標値と同じ値まで、或いは所定の範囲内に収まるように補正される。この補正動作は、駆動周期内に完了させて次の駆動周期の吐出に影響させないようにするのが望ましい。そのために補正パルスのパルス幅やインダクターL1の静電容量などの条件を上述のように設定している。
【0050】
同様に、第2の電荷補正回路72の比較器75が電位V2の供給線の電圧の値を目標値と比較し、時刻20μsにおいて目標値から所定の範囲外れると、パルス発生器76をONする。パルス発生器76は、例えば3μsの単発パルスP2を出力して、パルス幅に対応する時間、スイッチ素子SW2をONする。
【0051】
そうすると電位V2の供給線にインダクターL2を介してグランドが接続され、電位V2の電荷がグランドに向けて放出される。さらにスイッチ素子SW2がONしている20μs~23μsの間、インダクターL2にはエネルギーが蓄えられる。図11のi2は、インダクターL2を流れる電流を示す。次いでパルス幅の時間が経過してスイッチ素子SW2がOFFすると、それに伴ってダイオードD2がONする。そしてインダクターL2に残っているエネルギーによって、電位V2の電荷が電位V1の供給線を経由して電源供給部に向かって放出される(23μs~約28.5μsまで)。この放出は電位V1への回生になるので高効率に電荷が調節できる。こうして駆動周期が終了した時点で、電位V2の電圧が目標値と同じ値まで、或いは所定の範囲内に収まるように補正される。この補正動作は、駆動周期内に完了させて次の駆動周期の吐出に影響させないようにするのが望ましい。そのために補正パルスのパルス幅やインダクターL2の静電容量などの条件を上述のように設定している。
【0052】
上述の実施形態は、中間電位である電位V2,V3については、キャパシタCS1,CS2,CS3とアクチュエータ6との間で電荷の受け渡しをするようにして、その分、アクチュエータ6を駆動させるときの電源の消費電力を軽減する。但し、この構成では駆動波形を与える前と後で電位V2,V3の電圧レベルが変化し易いことから、電荷補正回路を設けて電位V2,V3の電圧レベルを目標値に補正する。その結果、所定の電圧レベルに制御した各電位V1,V2,V3,V0で駆動波形を生成することが可能となる。
【0053】
なお上述の実施形態では、電位V2,V3の供給線の電圧を検出して電荷の補正を行っているが、駆動波形とチャネル数が既知なのでインクジェットヘッド100の駆動内容を参照して論理回路によってスイッチ素子SW1,SW2のON/OFFを制御してもよい。電荷補正の条件は、最も電荷の偏りが大きくなる条件(通常はベタ印字)でその駆動周期内に補正が完了可能な条件としておく。勿論、電位V2,V3の電圧を検出して補正する構成であれば、必要なときにだけ自動的に補正できるという利点がある。
【0054】
グレースケール印字など、駆動波形が変化するような場合には、印字内容次第で電荷が過多となるか不足となるか定まらない場合がある。そのような場合はスイッチSW1とダイオードD1の対と、スイッチSW2とダイオードD2の対を一つのインダクターL1/L2に対して並列に設けておけば、どちらにも対応可能な回路となる。以下に説明する第2実施形態はその一例である。
【0055】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態に従うインクジェットヘッド100について説明する。第2実施形態に従うインクジェットヘッド100は、駆動回路の構成が異なることを除けば、第1実施形態と同様の構成である。従って、第1実施形態と同様の構成については詳しい説明を省略する。
【0056】
図13は、本実施形態の駆動回路が生成する複数種類の駆動波形(データ0~3)を示す。図14には、各駆動波形(データ0~3)のステップごとの電位と時間の設定を示している。この例におけるヘッド部2の圧力振動周期の1/2の時間は、2μsである。データ0~3の駆動波形は、各チャネルで選択的に生成してアクチュエータ6に与える。
【0057】
データ0の駆動波形は、一周期の間、電位V2をアクチュエータ6に与える。データ0の波形は、例えばインクを吐出しないチャネル或いは次の駆動周期でインクを吐出するチャネルに与えて、アクチュエータ6を待機状態にする(図10(a)参照)。
【0058】
データ1の駆動波形は、電位V2を与えて待機状態にしたアクチュエータ6に対し、ステップ1で電位V3を与え、ステップ2で電位V2を与える。電位V0ではなく電位V3を与えることで、インクを吐出させずにノズル24内のインクのメニスカスを微振動させる。そしてステップ3で電位V1を与え、ステップ4で電位V2に戻すことで、残留振動を減衰させる。データ1の駆動波形は、例えばインクを連続で吐出したチャネルに対して、例えばインクを吐出しない次の駆動周期で与える。これにより、ノズル24内のインクのメニスカスを元の状態に復帰させる。
【0059】
データ2の駆動波形は、駆動周期内に1ドロップのインクを吐出する駆動波形である。データ2の駆動波形は、電位V2を与えて待機状態にしたアクチュエータ6に対し、ステップ1で電位V3を与え、ステップ2で電位V0を与える。この動作を2μsで行う。次いでステップ3で電位V3を与えることでノズル24からインクの液滴を吐出させる。そしてステップ4で電位V2を与え、さらにステップ5で電位V1を与えた後、ステップ6で電位V2に戻すことで、残留振動を減衰させる。データ2の駆動波形は、例えば1階調の印字を行うチャネルに与える。
【0060】
データ3の駆動波形は、駆動周期内に2ドロップのインクを吐出する駆動波形である。データ3の駆動波形は、電位V2を与えて待機状態にしたアクチュエータ6に対し、ステップ1で電位V3を与え、ステップ2で電位V0を与える。この動作を2μsで行う。次いでステップ3で電位V3を与えることで1ドロップ目のノズル24からインクの液滴を吐出させる。次いでステップ4で電位V0を与え、ステップ5で電位V3を与えることで2ドロップ目のインクを吐出させる。そしてステップ6で電位V2を与え、さらにステップ7で電位V1を与えた後、ステップ8で電位V2に戻すことで、残留振動を減衰させる。データ3の駆動波形は、例えば2階調の印字を行うチャネルに与える。
【0061】
図13には、データ0~3の駆動波形毎に、一連の駆動波形を通しての電荷の収支を示している。すなわち、アクチュエータ6は、駆動波形の変化点で電位V1,V2,V3,V0から電荷を流入又は排出するが、一連の駆動波形を通しての電荷の収支は駆動波形によって異なる。例えばデータ0~3の駆動波形は、電位V2に対してはどの波形でも電荷の収支がゼロ(0)となる。一方、電位V3に対する電荷の収支を考えると、データ0とデータ2では収支がゼロ(0)、データ1では正(+Q)、データ3では負(-Q)となる。正は電源への流出、負は電源からの流入を表す。データ0~3のどの駆動波形が選択されるかは印字内容によって異なり又チャネル毎に異なるので、電位V3は、電荷の流出源として働く必要があるのか電荷の流入源として働く必要があるのかが定まらない。
【0062】
本実施形態の駆動回路は図15のように構成する。駆動回路は、波形生成回路77,シフトレジスタ81及びセレクター82をチャネル毎に有する。さらに全チャネルに共通の構成として、波形情報記憶部83と電荷計数カウンタ84を有する。
【0063】
波形情報記憶部83は、各駆動波形(データ0~3)の波形情報を記憶する。波形情報記憶部83は、図14に例示したように各駆動波形(データ0~3)のステップごとの電位と時間を設定できる。波形情報記憶部83は、例えば駆動波形のシーケンスを記憶し駆動の際に読み出すメモリである。アクチュエータ6にどの駆動波形を与えるかは、例えばインクジェットプリンタ10の制御部としての制御基板17のCPUが印字内容に従って決定する。駆動回路は、例えば1ドットライン毎の0~3のデータを受け取り、各チャネルのシフトレジスタ81が該当する0~3のデータを選択して、セレクター82に与える。
【0064】
各チャネルのセレクター82は、与えられた0~3のデータに対応する波形情報を波形情報記憶部83から読み出し、そのシーケンスに従ってスイッチSW3~SW6のON/OFF信号を出力する。波形生成回路77は、セレクター82からのON/OFF信号に従いスイッチSW3~W6を排他的にONすることで駆動波形を生成して、アクチュエータ6に与える。どのタイミングでどのチャネルにどのデータが与えられるかは各チャネル宛てに送られるデータの値(0,1,2,3)に依存する。
【0065】
電荷計数カウンタ84は、送られてくる0~3のデータを監視する。電荷計数カウンタ84は、監視回路の一例である。電荷計数カウンタ84は、図16に一例を示すように、データ検出部85、累積カウンタ86、比較器87で構成する。データ検出部85は、全チャネルにどの駆動波形を与えるかを例えば1ドットライン毎に設定して送られてくるデータ0,1,2,3を検出する。累積カウンタ86は、検出した各データ0,1,2,3の数を累積カウントする。好ましい一例として、電位V3の電荷を増す駆動波形を出力するデータ1を検出したときは+1をカウントし、電位V3の電荷を減ずる波形を出力するデータ3を検出したときは-1をカウントする。従って、例えばデータ1を2回検出すると累積カウンタ値は+2に増加し、次にデータ3を検出すると累積カウンタ値は+1に減る。
【0066】
比較器87は、累積カウンタ値を基準値と比較する。基準値は、例えばヘッド部2のノズル数を用いて±ノズル数(例えば±300)に設定する。累積カウンタ値が正の基準値を上回ったときは、全チャネルがデータ1に対応する駆動波形で1回駆動された場合と同じだけ電位V3の電圧が増加している。このとき、比較器87は、補正を開始する制御信号TG1を出力し、同時にOR回路88を介して累積カウンタ値をリセットする。反対に、累積カウンタ値が負の基準値を下回ったときは、全チャネルがデータ3に対応する駆動波形で1回駆動された場合と同じだけ電位V3の電圧が低下している。このとき、比較器87は、補正を開始する制御信号TG2を出力し、同時にOR回路88を介して累積値をリセットする。この実施形態ではデータ1で電位V3に追加される電荷の大きさとデータ3で電位V3から消費される電荷の大きさが等しい為、電荷Qを表す数値として累積カウンタに1を加算または1を減算するようにしているが、電位V3に追加される電荷の大きさと電位V3から消費される電荷の大きさは駆動波形と電圧設定に依存する。例えば電位V3から消費される電荷の大きさが電位V3に追加される電荷の大きさの2倍ある場合には、累積カウンタに1を加算または2を減算するするようにして適宜基準値を見直せばよい。電位V3に追加される電荷の大きさと電位V3から消費される電荷の大きさが他の値であったとしても、累積カウンタに加算する値、減算する値と基準値を適宜調整すればよい。
【0067】
図17は、中間電位生成回路90の好ましい一例である。中間電位生成回路90は、図7の回路にオペアンプ91,92と制限抵抗RS1,RS2を追加した構成である。オペアンプ91は、プラス入力に分圧抵抗Rd,Rd間のノードを接続し、マイナス入力にアンプの出力を接続したボルテージフォロワーの構成とする。さらにオペアンプ91の出力とキャパシタCS1,CS1間のノードとの間に、制限抵抗RS1を接続する。同様に、オペアンプ92は、プラス入力に分圧抵抗Rd,Rd間のノードを接続し、マイナス入力にアンプの出力を接続したボルテージフォロワーの構成とする。さらにオペアンプ92の出力とキャパシタCS2,CS3間のノードとの間に、制限抵抗RS2を接続する。オペアンプ91,92は、分圧抵抗Rd,Rd,Rdで決まる中間電位を目標値として、キャパシタCS1,CS2,CS3を充放電する。この例では、電位V1が18V、電位V0が0Vであり、同じ抵抗値の分圧抵抗Rd,Rd,Rdを用いて、電位V2を12V、電位V3を6Vにする。本実施形態では中間電位生成回路90にオペアンプ91,92を用いているので第1実施形態の図7の回路に比べて分圧抵抗Rd,Rd,Rdの値を大きくすることができ、分圧抵抗Rd,Rd,Rdに流れる電流を削減できる。分圧抵抗Rd,Rd,Rdに流れる電流が問題無ければこの部分を図7の回路のように構成して回路を簡略化してもよく、逆に第1実施形態の図7の中間電位生成回路70の分圧回路に本実施形態のオペアンプを使った回路を適用して分圧抵抗Rd,Rd,Rdに流れる電流を削減してもよい。
【0068】
中間電位生成回路90には、電位V3の電圧を目標値に補正する電荷補正回路93を設ける。但し、上述したように電位V3は、電荷の流出源として働く場合と電荷の流入源として働く場合の両方があるので、どちらでも補正可能にしている。一方で、第1実施形態では電位V2の補正回路を設けたが、本実施形態の電位V2はデータ0~3のどの駆動波形を与えても電荷の収支がゼロとなるので(図13)、電位V2は変動しない。よって制限抵抗RS1,RS2を設けた中間電位生成回路90(すなわち高いインピーダンス有する供給源)から安定した電圧レベルで電位V2を与えることができる。制限抵抗RS1,RS2の抵抗値は、例えば10kΩである。
【0069】
電荷補正回路93は、スイッチ素子SW7,SW8、インダクターL3、ダイオードD3,D4、単安定マルチバイブレータ94,95で構成する。スイッチ素子SW7、ダイオードD3、インダクターL3、単安定マルチバイブレータ94は、電位V3の電圧レベルを上げる方向に補正する。スイッチ素子SW7は、一方の端子をインダクターL3を介して電位V3の供給線に接続し、他方の端子を電位V1の供給線に接続している。従って、スイッチ素子SW7をONすると、電位V3の供給線には、インダクターL3を介して電位V1の供給線が接続される。この場合の電位V1は、スイッチ素子SW7をONすると電位V3の供給線に接続される第1の電源電位の一例である。スイッチ素子SW7をONすると、インダクターL3を介して電位V3の供給線に電荷が補充されると共に、インダクターL3にエネルギーが蓄えられる。
【0070】
ダイオードD3は、カソードをインダクターL3とスイッチ素子SW7の間のノードに接続し、アノードを電位V0の供給線に接続して、スイッチ素子SW7をONしたときに電流が流れない向きにしている。ダイオードD3は、スイッチ素子SW7がOFFしたとき、それに伴ってONして、電位V3の供給線にインダクターL3を介して電位V0の供給線を接続する。この場合の電位V0は、ダイオードD3がONすると電位V3の供給線に接続される第2の電源電位の一例である。ダイオードD3がONすると、インダクターL3に残っているエネルギーによって、電位V0から電位V3の供給線に電荷が補充される。すなわち、ダイオードD3は、還流用のダイオードである。
【0071】
一方、スイッチ素子SW8、ダイオードD4、インダクターL3、単安定マルチバイブレータ95は、電位V3の電圧レベルを下げる方向に補正する。スイッチ素子SW8は、一方の端子をインダクターL3を介して電位V3の供給線に接続し、他方の端子をグランドに接続している。従って、スイッチ素子SW8をONすると、電位V3の供給線には、インダクターL3を介してグランドが接続される。この場合のグランドは、スイッチ素子SW8をONすると電位V3の供給線に接続される第1の電源電位の一例である。スイッチ素子SW8をONすると、インダクターL3を介して電位V3からグランドに向けて電荷が放出されると共に、インダクターL3にエネルギーが蓄えられる。
【0072】
ダイオードD4は、カソードを電位V1の供給線に接続し、アノードをインダクターL3とスイッチ素子SW8の間のノードに接続して、スイッチ素子SW8をONしたときに電流が流れない向きにしている。ダイオードD4は、スイッチ素子SW8をOFFしたとき、それに伴ってONして、電位V3の供給線にインダクターL3を介して電位V1の供給線を接続する。この場合の電位V1は、ダイオードD4がONすると電位V3の供給線に接続される第2の電源電位の一例である。ダイオードD4がONすると、インダクターL3に残っているエネルギーによって、電位V3から電位V1の供給線に向けて電荷が放出される。すなわち、ダイオードD4は、還流用のダイオードである。
【0073】
単安定マルチバイブレータ94は、電荷計数カウンタ84から制御信号TG2が入力されると、補正パルスとして例えばパルス幅Tのパルスを出力し、NOT回路96を介してスイッチ素子SW7をONする。
【0074】
そうすると電位V3の供給線にインダクターL3を介して電位V1の供給線が接続され、電位V3に電荷が補充される。さらにスイッチ素子SW7がONの間、インダクターL3にはエネルギーが蓄えられる。次いでパルス幅の時間が経過してスイッチ素子SW7がOFFすると、それに伴ってダイオードD3がONする。そしてインダクターL3に残っているエネルギーによって、電位V0からダイオードD3を介して電位V3に電荷が追加補充される。こうして電位V3の電圧が目標値と同じ値まで、或いは所定の範囲内に収まるように補正される。
【0075】
補充する電荷Qと、電位V1,V2,V3,V0間の各々の電圧差ΔV、インダクターL3の関係は、図18のようになる。電荷Qのうち前半Q1は電位V1から補充するが、後半Q2は電源を経由しないダイオードD3経由で電力消費無く補給される。図のiはこのときインダクターLを流れる電流波形である。
【0076】
一方、単安定マルチバイブレータ95は、電荷計数カウンタ84から制御信号TG1が入力されると、補正パルスとして例えばパルス幅2Tのパルスを出力して、バッファ97を介してスイッチ素子SW8をONする。
【0077】
そうすると電位V3の供給線にインダクターL3を介してグランドが接続され、電位V3の電荷がグランドに向けて放出される。さらにスイッチ素子SW8がONの間、インダクターL3にはエネルギーが蓄えられる。次いでパルス幅の時間が経過してスイッチ素子SW8がOFFすると、それに伴ってダイオードD4がONし、インダクターL3に残っているエネルギーによって、電位V3の電荷が電位V1の供給線に向けて放出される。こうして電位V3の電圧が目標値と同じ値まで、或いは所定の範囲内に収まるように補正される。
【0078】
放出する電荷Qと、電位V1,V2,V3,V0間の各々の電圧差ΔV、インダクターL3の関係は、図19のようになる。電荷Qのうち前半Q1は電位V0に放出されるが、後半Q2は電位V1に回生される。図のiはこのときインダクターL3を流れる電流波形である。
【0079】
単安定マルチバイブレータ94,95が作るパルス幅と調節する電荷の大きさとの関係について、図18及び図19を用いて説明する。図18は、単安定マルチバイブレータ94が作動して所定期間スイッチSW7がONしその後の還流も利用して電位V3に電荷を補充する場合に、インダクターL3に流れる電流の時間変化を表す。単安定マルチバイブレータ94が生成する所定時間はTとする。この実施形態ではV1=18V,V2=12V,V3=6V,V0=0Vとしている。V1-V2=V2-V3=V3-V0=ΔV=6Vである。電荷補充時にインダクターL3に印加する電圧はV1-V3=2ΔVなので、インダクターL3に流れる電流をi、その最大値をipとすれば、
di/dt=ip/T=2ΔV/L、 ip=2T・ΔV/L
電位V1から補充されるされる電荷は、Q1=ip・T/2
その後還流によって電位V0から補充されるされる電荷は、Q2=ip・2T/2
補充される電荷の合計は、Q1+Q2=ip・3T/2=3T・ΔV/L となる。
【0080】
図19は、単安定マルチバイブレータ95が作動して所定期間スイッチSW8がONしその後の還流も利用して電位V3から電荷を放出する場合に、図18とは逆向きにインダクターL3に流れる電流の時間変化を表す。単安定マルチバイブレータ95が生成する所定時間は2Tとする。電荷放出時にインダクターL3に印加する電圧はV3-V0=ΔVなので、インダクターL3に流れる電流をi、その最大値をipとすれば、
di/dt=ip/2T=ΔV/L、 ip=2T・ΔV/L
電位V0へ放出されるされる電荷は、Q1=ip・2T/2
その後還流によって電位V1へ放電されるされる電荷は、Q2=ip・T/2
放出される電荷の合計は、Q1+Q2=ip・3T/2=3T・ΔV/L となる。
【0081】
すなわちこの実施形態では単安定マルチバイブレータ94が生成する時間に対して単安定マルチバイブレータ95が生成する時間を2倍にすれば電荷補正回路93が1回の動作で電位V3に補充する電荷の大きさと1回の動作で電位V3から放出する電荷の大きさを揃えることができる。想定される最大の電荷の調節量が正負等しい場合には、1回の動作で補充する電荷の大きさと1回の動作で放出する電荷の大きさは揃えた方が望ましい。
この実施形態で、アクチュエータ6の静電容量をC=1nF、アクチュエータ6のチャネル数をn=300chとしたとき、データ1またはデータ3で全チャネルが1回駆動するとき変化する電荷Qは、
Q=C・n・ΔV=1.8μC
T=4μs、2T=8μsに設定するなら、
L=3T・ΔV/Q=160μH
ip=2Q/3T=0.3A となる。
この実施形態では説明を簡単にするためにV1-V2=V2-V3=V3-V0=ΔV=6Vとしたが、これに限らない。電位V1、V2、V3の値がこの実施形態と異なる値であっても、単安定マルチバイブレータ94が生成する時間と単安定マルチバイブレータ95が生成する時間を調整すれば1回の動作で補充する電荷の大きさと1回の動作で放出する電荷の大きさを揃えることができる。
想定される最大の電荷の調節量が正と負で異なる場合は、単安定マルチバイブレータ94、95の動作時間を適宜調節することによって1回の動作で補充する電荷の大きさと1回の動作で放出する電荷の大きさのバランスを調節することができる。
【0082】
上記のように電荷を補正しても残ってしまう電荷バランスの若干のズレは、制限抵抗RS2を介してオペアンプ92によって調整される。さらに、上述したように電位V2は電荷バランスが取れているが、長い間には若干のずれを生じる。これについても制限抵抗RS1,を介してオペアンプ91によって調整される。
【0083】
インダクターL3の静電容量と単安定マルチバイブレータ94,95が出力するパルス幅は、電荷の収支のバランスが最も大きくずれる条件で、駆動周期の一周期以内に電荷のバランスを取れるように設定している。それよりも小さなズレは許容し、ズレの累積の積算値が電荷の収支のバランスが最も大きくずれる条件と一致した場合に、単安定マルチバイブレータ94,95を起動するようにしている。ズレの累積の積算値が電荷の収支のバランスが最も大きくずれる条件は、この実施形態ではデータ1の駆動波形を100%デューティーで全チャネルに与えた場合、又はデータ3の駆動波形を100%デューティーで全チャネルに与えた場合である。
【0084】
本実施形態は印字データから電荷の収支バランスを計算して電荷補正回路93を駆動しているが、第1実施形態のように電位V3の電圧を監視して、電圧変動が所定値を超えたときに電荷補正回路93を駆動するようにしてもよい。また第2実施形では電荷調整する対象を電位V3だけとしたがこれに限定されるものではなく、第1実施形態と同様な複数の中間電位に対して電荷の補充と放出の双方が可能な電荷補正回路93をそれぞれ設けてもよい。第1実施形態と第2実施形態の各要素は自由に組み合わせてよい。
【0085】
以上説明したように、上述のいずれかの実施形態によれば、駆動波形を構成するすべての電位V1,V2,V3,V0について、各電圧レベルに制御された電源を用意しなくてすむインクジェットヘッド100を提供することが可能である。
【0086】
なお、アクチュエータ6は、複数の圧電体61を積層した積層型に限らない。圧電体61が単一層のアクチュエータであってもよい。また、駆動電圧を印加したときのアクチュエータの動作は、縦振動に限らない。さらに、ドロップオンデマンド・ピエゾ方式に限らず、コンティニアス方式に適用してもよい。
【0087】
上述の実施形態では、インクジェットプリンタ10のインクジェットヘッド100を液体吐出ヘッドの一例として説明したが、液体吐出ヘッドは、3Dプリンタの造形材吐出ヘッド、分注装置の試料吐出ヘッドであってもよい。
【0088】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
10 インクジェットプリンタ
100~103 インクジェットヘッド
24 ノズル
3 駆動IC
6 アクチュエータ
7 電源
70 中間電位生成回路
71 第1の電荷補正回路
72 第2の電荷補正回路
77 波形生成回路
83 波形情報記憶部
84 電荷計数カウンタ
90 中間電位生成回路
93 電荷補正回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19