(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113254
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20240815BHJP
F16H 59/40 20060101ALI20240815BHJP
F16H 59/18 20060101ALI20240815BHJP
F16H 61/688 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
E02F9/22 H
F16H59/40
F16H59/18
F16H61/688
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018102
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】亀倉 寛尚
(72)【発明者】
【氏名】碇 政典
【テーマコード(参考)】
2D003
3J552
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003AC01
2D003BA02
2D003BB12
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB03
2D003FA02
3J552MA04
3J552NA05
3J552NB05
3J552SA01
3J552SB02
3J552VA01
3J552VB01W
3J552VD01W
(57)【要約】
【課題】作業機械において、高速走行時に高い牽引力を発生させる。
【解決手段】作業機械は、第1モータと、第2モータと、走行体と、トランスミッションと、コントローラとを備える。トランスミッションは、出力軸と、主伝達経路と、第1伝達経路と、第2伝達経路と、第1クラッチと、第2クラッチと、を含む。出力軸は、走行体に接続される。主伝達経路は、第1モータを出力軸に接続する。第1伝達経路は、第2モータに接続され、第1減速比を有する。第2伝達経路は、第2モータに接続され、第1減速比よりも低い第2減速比を有する。第1クラッチは、第1伝達経路と主伝達経路とに接続される。第2クラッチは、第2伝達経路と主伝達経路とに接続される。コントローラは、第1走行モードでは、第1クラッチを係合し、且つ、第2クラッチを開放する。コントローラは、第2走行モードでは、第2クラッチを係合し、且つ、第1クラッチを開放する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械であって、
第1モータと、
第2モータと、
前記作業機械を走行させる走行体と、
前記走行体に接続される出力軸と、前記第1モータを前記出力軸に接続する主伝達経路と、前記第2モータに接続され第1減速比を有する第1伝達経路と、前記第2モータに接続され第1減速比よりも低い第2減速比を有する第2伝達経路と、前記第1伝達経路と前記主伝達経路とに接続される第1クラッチと、前記第2伝達経路と前記主伝達回路とに接続される第2クラッチと、を含むトランスミッションと、
前記第1クラッチを係合し、且つ、前記第2クラッチを開放することで、前記第2モータの駆動力を前記第1伝達経路を介して前記主伝達経路に伝達する第1走行モードと、前記第2クラッチを係合し、且つ、前記第1クラッチを開放することで、前記第2モータの駆動力を前記第2伝達経路を介して前記主伝達経路に伝達する第2走行モードとを含む複数の走行モードを切り替えるコントローラと、
を備える作業機械。
【請求項2】
前記コントローラは、
車速を検出し、
前記車速に応じて前記第1走行モードと前記第2走行モードとを切り替える、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記作業機械への負荷を検出し、
前記負荷に応じて前記第1走行モードと前記第2走行モードとを切り替える、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記作業機械の作業局面を判別し、
前記作業局面に応じて前記第1走行モードと前記第2走行モードとを切り替える、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項5】
前記複数の走行モードは、前記第1クラッチと前記第2クラッチとを開放することで、前記第2モータを前記主伝達経路から遮断する第3走行モードを含む、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記作業機械への負荷を検出し、
前記負荷に応じて前記第2走行モードと前記第3走行モードとを切り替える、
請求項1に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械には、作業機械を走行させるための複数のモータを備えるものがある。例えば、特許文献1の作業機械は、第1油圧モータと第2油圧モータとを備えている。車速が低速域である場合には、作業機械は、第1油圧モータと第2油圧モータとの両方によって走行する。車速が高速域である場合には、作業機械は、第2油圧モータのみによって走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような作業機械では、第1油圧モータからの回転は、第2油圧モータよりも、高い減速比で減速される。そのため、低速域では、第1油圧モータと第2油圧モータとの両方が使用されることで、作業機械は、作業時における高い牽引力性能を得ることができる。一方、高速域では、第1油圧モータの回転速度が、許容回転速度を越えてしまうため、第1油圧モータは用いられず、低い減速率で減速される第2油圧モータのみが用いられる。それにより、作業機械は、走行時における高い最高車速性能を得ることができる。
【0005】
しかし、高速域では、第1油圧モータは有効に使用されない。そのため、例えば登坂、或いは悪路などのように高い牽引力を必要とする走行時には、高い最高車速性能を得ることは困難である。本開示は、作業機械において、高速走行時に高い牽引力を発生させることに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る作業機械は、第1モータと、第2モータと、走行体と、トランスミッションと、コントローラとを備える。走行体は、作業機械を走行させる。トランスミッションは、出力軸と、主伝達経路と、第1伝達経路と、第2伝達経路と、第1クラッチと、第2クラッチと、を含む。出力軸は、走行体に接続される。主伝達経路は、第1モータを出力軸に接続する。第1伝達経路は、第2モータに接続され、第1減速比を有する。第2伝達経路は、第2モータに接続され、第1減速比よりも低い第2減速比を有する。第1クラッチは、第1伝達経路と主伝達経路とに接続される。第2クラッチは、第2伝達経路と主伝達経路とに接続される。
【0007】
コントローラは、複数の走行モードを切り替える。複数の走行モードは、第1走行モードと、第2走行モードとを含む。コントローラは、第1走行モードでは、第1クラッチを係合し、且つ、第2クラッチを開放することで、第2モータの駆動力を、第1伝達経路を介して主伝達経路に伝達する。コントローラは、第2走行モードでは、第2クラッチを係合し、且つ、第1クラッチを開放することで、第2モータの駆動力を、第2伝達経路を介して主伝達経路に伝達する。
【0008】
本態様に係る作業機械は、第1走行モードでは、第1モータの駆動力が主伝達経路を介して出力軸に伝達され、第2モータの駆動力が、第1伝達経路と主伝達経路とを介して出力軸に伝達される。従って、第1走行モードでは、作業機械は、第1モータと第2モータとによって走行する。また、第1走行モードでは、第2伝達経路の第2減速比よりも高い第1減速比で、第2モータからの回転速度が減速される。それにより、作業機械は、高い牽引力性能を得ることができる。
【0009】
第2走行モードでは、第1モータの駆動力が主伝達経路を介して出力軸に伝達され、第2モータの駆動力が、第2伝達経路と主伝達経路とを介して出力軸に伝達される。従って、第1伝達経路の第1減速比よりも低い第2減速比で、第2モータからの回転速度が減速される。そのため、作業機械が高速走行する場合であっても、第2モータの回転速度が許容回転速度を超えることが抑えられる。また、第2走行モードにおいても、作業機械は、第1モータと第2モータとによって走行する。そのため、高速走行時においても高い牽引力性能が得られる。以上のように、本態様に係る作業機械では、高速走行時に高い牽引力を発生させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、作業機械において、高速走行時に高い牽引力を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】トランスミッションの構成を示す模式図である。
【
図4】複数の走行モードにおける各クラッチの状態を示す表である。
【
図5】第1走行モードでのトランスミッションを示す模式図である。
【
図6】複数の走行モードにおける牽引力特性を示す図である。
【
図7】第2走行モードでのトランスミッションを示す模式図である。
【
図8】第3走行モードでのトランスミッションを示す模式図である。
【
図9】第1変形例に係る作業機械の構成を示すブロック図である。
【
図10】第2変形例に係る作業機械の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本開示の一実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る作業機械1の側面図である。本実施形態において、作業機械1は、ホイールローダである。
図1に示すように、作業機械1は、車体2と作業機3とを備えている。
【0013】
車体2は、前車体2aと後車体2bとを含む。後車体2bは、前車体2aに対して左右に旋回可能に接続されている。前車体2aと後車体2bとには、油圧シリンダ15が連結されている。油圧シリンダ15が伸縮することで、前車体2aが、後車体2bに対して、左右に旋回する。
【0014】
作業機3は、掘削、運搬、或いは排土等の作業に用いられる。作業機3は、前車体2aに対して動作可能に、取り付けられている。作業機3は、ブーム11と、バケット12と、油圧シリンダ13,14とを含む。油圧シリンダ13,14が伸縮することによって、ブーム11及びバケット12が動作する。
【0015】
図2は、作業機械1の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、作業機械1は、バッテリ21と、パワー分配ユニット(以下、PDU)22と、第1~3インバータ23-25と、第1~第3モータ26-28と、トランスミッション29と、走行体30と、作業機ポンプ31とを含む。バッテリ21は、充電可能であり、電力を蓄える。バッテリ21は、PDU22及び第1~第3インバータ23-25を介して、第1~第3モータ26-28に電気的に接続されている。PDU22は、バッテリ21の電力を、第1~第3モータ26-28に分配する。第1インバータ23は、第1モータ26に分配される電力を制御する。第2インバータ24は、第2モータ27に分配される電力を制御する。第3インバータ25は、第3モータ28に分配される電力を制御する。
【0016】
第1モータ26と第2モータ27とは、トランスミッション29を介して、走行体30に機械的に接続されている。トランスミッション29については、後に詳細に説明する。走行体30は、第1モータ26と第2モータ27とによって駆動されることで、作業機械1を走行させる。走行体30は、アクスル32と走行輪33,34とを含む。アクスル32は、トランスミッション29からの駆動力を走行輪33,34に伝達する。
【0017】
走行輪33,34は、回転可能に車体2に支持されている。走行輪33,34は、前輪33と後輪34とを含む。
図1に示すように、前輪33は、前車体2aに支持されている。後輪34は、後車体2bに支持されている。走行輪33,34には、例えばタイヤが取り付けられる。或いは、走行輪33,34には、履帯が取り付けられてもよい。作業機ポンプ31は、油圧ポンプである。作業機ポンプ31は、第3モータ28によって駆動され、作動油を吐出する。作業機ポンプ31から吐出された作動油は、上述した油圧シリンダ13-15に供給される。
【0018】
第1~第3モータ26-28は、電動モータである。詳細には、第1~第3モータ26-28は、モータ/ジェネレータである。第1モータ26と第2モータ27とは、バッテリ21からの電力により、モータとして機能して、走行体30を駆動する。それにより、作業機械1が走行する。第1モータ26と第2モータ27とは、走行体30からの回生力により、ジェネレータとして機能して、発電する。
【0019】
第3モータ28は、バッテリ21からの電力により、モータとして機能して、作業機ポンプ31を駆動する。それにより、作業機3が動作する。第3モータ28は、作業機ポンプ31からの回生力により、ジェネレータとして機能して、発電する。バッテリ21は、第1~第3モータ26-28によって発電された電力によって充電される。
【0020】
作業機械1は、車速センサ35を含む。車速センサ35は、トランスミッション29の出力回転速度を検出する。トランスミッション29の出力回転速度は、作業機械1の車速に相当する。ただし、出力回転速度は、トランスミッション29内、或いはトランスミッション29の下流に位置する他の回転要素の回転速度であってもよい。
【0021】
作業機械1は、負荷センサ36を含む。負荷センサ36は、作業機械1への負荷を検出する。負荷センサ36は、IMUを含んでもよい。IMUは、作業機械1の傾斜角を、作業機械1への負荷として検出する。負荷センサ36は、油圧センサを含んでもよい。油圧センサは、作業機を駆動するための油圧回路の油圧を、作業機3への負荷として検出する。
【0022】
作業機械1は、コントローラ37を含む。コントローラ37は、CPU(central processing unit)などのプロセッサと、RAM及びROMなどの記憶装置とを含む。コントローラ37は、ハードディスク、或いはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含んでもよい。コントローラ37は、作業機械1を制御するためのプログラム及びデータを記憶している。コントローラ37は、記憶されているプログラム及びデータに従って、作業機械1を制御するための処理を実行する。コントローラ37は、車速センサ35から、車速を示す信号を受信する。コントローラ37は、負荷センサ36から、作業機械1への負荷を示す信号を受信する。
【0023】
コントローラ37は、PDU22及びインバータ23-25に指令信号を送信することで、第1~第3モータ26-28の出力を制御する。コントローラ37は、トランスミッション29に指令信号を送信することで、トランスミッション29を制御する。コントローラ37は、作業機ポンプ31に指令信号を送信することで、作業機ポンプ31の容量を制御する。なお、作業機ポンプ31の容量は、指令信号による電気的な制御に限らず、機械的に制御されてもよい。
【0024】
作業機械1は、アクセル操作部材38と作業機操作部材39とを含む。アクセル操作部材38は、作業機械1の車速を制御するためにオペレータによって操作可能である。アクセル操作部材38は、例えばペダルである。ただし、アクセル操作部材38は、レバー、或いはスイッチなどの他の部材であってもよい。作業機操作部材39は、作業機3を制御するためにオペレータによって操作可能である。作業機操作部材39は、例えばレバーである。ただし、作業機操作部材39は、スイッチ、或いはペダルなどの他の部材であってもよい。
【0025】
コントローラ37は、アクセル操作部材38から、アクセル操作量を示す信号を受信する。アクセル操作量は、アクセル操作部材38の操作量である。コントローラ37は、アクセル操作量に応じて、第1モータ26と第2モータ27との出力を制御する。それにより、作業機械1の車速が、アクセル操作量に応じて制御される。
【0026】
コントローラ37は、作業機操作部材39から、作業機操作量を示す信号を受信する。作業機操作量は、作業機操作部材39の操作量である。コントローラ37は、作業機操作量に応じて、作業機ポンプ31から油圧シリンダ13-15に供給される作動油を制御する。それにより、作業機3の動作が制御される。
【0027】
次にトランスミッション29の構成について詳細に説明する。
図3は、トランスミッション29の構成を示す模式図である。
図3に示すように、トランスミッション29は、第1入力軸41と、第2入力軸42と、出力軸43と、主伝達経路44と、第1伝達経路45と、第2伝達経路46と、第1クラッチ47と、第2クラッチ48とを含む。
【0028】
第1入力軸41は、第1モータ26に接続される。第2入力軸42は、第2モータ27に接続される。出力軸43は、走行体30に接続される。主伝達経路44は、第1モータ26と出力軸43とに接続される。第1伝達経路45は、第2モータ27に接続され、第1減速比を有する。第2伝達経路46は、第2モータ27に接続され、第1減速比よりも低い第2減速比を有する図示しないギアを含む。第2減速比は、例えば、第2モータ27からの回転速度が、第2伝達経路46から出力時に第1モータ26からの回転速度と一致し、第1モータ26の回転と第2モータ27の回転とを合流可能なように設定されている。
【0029】
詳細には、主伝達経路44は、第1主ギア51と、第2主ギア52と、連結軸53と、第3主ギア54と、第4主ギア55とを含む。第1主ギア51は、第1入力軸41に接続されている。第2主ギア52は、第1主ギア51と噛み合っている。連結軸53は、第2主ギア52と第3主ギア54とに接続されている。第4主ギア55は、第3主ギア54と噛み合っている。第4主ギア55は、出力軸43に接続されている。
【0030】
第1伝達経路45は、第1減速ギア56と、第2減速ギア57と、第1軸58を含む。第1減速ギア56は、第2入力軸42に接続されている。第2減速ギア57は、第1減速ギア56と噛み合っている。第1軸58は、第2減速ギア57に接続されている。第2伝達経路46は、第2軸59を含む。第2軸59は、第2入力軸42に接続されている。
【0031】
第1クラッチ47は、第1伝達経路45と主伝達経路44とに接続されている。詳細には、第1クラッチ47は、第1軸58と連結軸53とに接続されている。第1クラッチ47が係合されることで、第1伝達経路45が主伝達経路44に接続される。第1クラッチ47が開放されることで、第1伝達経路45が主伝達経路44から遮断される。
【0032】
第2クラッチ48は、第2伝達経路46と主伝達経路44とに接続されている。詳細には、第2クラッチ48は、第2軸59と第1入力軸41とに接続されている。第2クラッチ48が係合されることで、第2伝達経路46が主伝達経路44に接続される。第2クラッチ48が開放されることで、第2伝達経路46が主伝達経路44から遮断される。
【0033】
コントローラ37は、第1クラッチ47と第2クラッチ48とに供給される油圧を制御することで、第1クラッチ47と第2クラッチ48とのオン/オフを切り替える。「オン」とは、クラッチ47,48が係合されている状態を意味する。「オフ」とは、クラッチ47,48が開放されている状態を意味する。コントローラ37は、第1クラッチ47と第2クラッチ48とのオン/オフを切り替えることで、複数の走行モードを切り替える。
【0034】
図4は、複数の走行モードにおける各クラッチの状態を示す表である。
図4に示すように、複数の走行モードは、第1走行モードと、第2走行モードと、第3走行モードとを含む。
【0035】
コントローラ37は、第1走行モードでは、第1クラッチ47を係合し、第2クラッチ48を開放する。それにより、
図5に示すように、第1伝達経路45が主伝達経路44に接続され、第2伝達経路46は主伝達経路44から遮断される。それにより、第2モータ27からの駆動力は、第1伝達経路45を介して主伝達経路44に合流し、第1モータ26からの駆動力と共に、出力軸43に伝達される。
【0036】
第1伝達経路45は、第2伝達経路46の第2減速比より高い第1減速比を有する。そのため、作業機械1は、第1走行モードにおいて、高い牽引力性能を得ることができる。なお、コントローラ37は、第1クラッチ47を係合する際に、主伝達経路44と第1伝達経路45との回転速度を合わせるように、第1モータ26、或いは第2モータ27を制御してもよい。それにより、クラッチの切り替えによるショックが抑えられる。
【0037】
図6は、各走行モードにおける作業機械1の牽引力特性を示す図である。牽引力特性は、車速に対する牽引力を示す。
図6に示すように、第1走行モードにおける牽引力特性C1は、低速域において大きな最大牽引力F1を得る。コントローラ37は、例えば、作業機3を用いた作業時に、第1走行モードを選択する。
【0038】
コントローラ37は、第3走行モードでは、第1クラッチ47と第2クラッチ48とを開放する。それにより、
図7に示すように、第1伝達経路45と第2伝達経路46とが、共に、主伝達経路44から遮断される。それにより、第2モータ27からの駆動力は出力軸43に伝達されず、第1モータ26からの駆動力のみが、主伝達経路44を介して、出力軸43に伝達される。
図6に示すように、第3走行モードの牽引力特性C3では、最大牽引力F3は、第1走行モードの最大牽引力F1よりも小さい、しかし、第3走行モードの牽引力特性C3では、第1走行モードの最高速度V1よりも高い最高速度V3を得る。コントローラ37は、例えば、低負荷走行時に、第3走行モードを選択する。
【0039】
コントローラ37は、第2走行モードでは、第2クラッチ48を係合し、第1クラッチ47を開放する。それにより、
図8に示すように、第2伝達経路46が主伝達経路44に接続され、第1伝達経路45は主伝達経路44から遮断される。それにより、第2モータ27からの駆動力は、第2伝達経路46を介して主伝達経路44に合流し、第1モータ26からの駆動力と共に、出力軸43に伝達される。第2伝達経路46は、第1伝達経路45の第1減速比より低い第2減速比を有する。そのため、作業機械1が高速走行する場合であっても、第2モータ27の回転速度が許容回転速度を超えることが抑えられる。なお、コントローラ37は、第2クラッチ48を係合する際に、主伝達経路44と第2伝達経路46との回転速度を合わせるように、第1モータ26、或いは第2モータ27を制御してもよい。それにより、クラッチの切り替えによるショックが抑えられる。
【0040】
図6に示すように、第2走行モードの牽引力特性C2は、低速域において、第1走行モードと第3走行モードとの中間的な最大牽引力F2を得る。また、第2走行モードの牽引力特性は、第3走行モードと同等の高い最高速度V2を得る。そのため、第2走行モードでは、高い牽引力と高い最高車速性能とが両立される。コントローラ37は、例えば、高負荷走行時に、第2走行モードを選択する。高負荷走行は、例えば登坂走行、或いは、悪路走行を意味する。
【0041】
コントローラ37は、車速、及び/又は、作業機械1への負荷に応じて、第1~第3走行モードを切り替える。例えば、コントローラ37は、車速が所定の速度閾値より小さい場合に、第1走行モードを選択する。コントローラ37は、車速が所定の速度閾値以上である場合に、第2走行モード又は第3走行モードを選択する。速度閾値は、例えば、作業機械1が作業機3により掘削等の作業を行っているときの車速の範囲を考慮して設定される。
【0042】
コントローラ37は、車速が所定の速度閾値以上であり、且つ、作業機械1への負荷が所定の負荷閾値より小さい場合には、第3走行モードを選択する。コントローラ37は、車速が所定の速度閾値以上であり、且つ、作業機械1への負荷が所定の負荷閾値以上である場合には、第2走行モードを選択する。負荷閾値は、例えば、作業機械1が悪路、或いは登坂路を走行しているときの負荷の範囲を考慮して設定される。
【0043】
或いは、コントローラ37は、作業局面を判定し、作業局面に応じて、第1~第3走行モードを切り替えてもよい。例えば、コントローラ37は、作業局面が掘削である場合には、第1走行モードを選択する。コントローラ37は、作業局面が低負荷走行である場合には、第3走行モードを選択する。コントローラ37は、作業局面が高負荷走行である場合には、第2走行モードを選択する。コントローラ37は、例えば、車速、作業機械1への負荷、作業機3の姿勢に応じて、作業局面を判定する。
【0044】
以上説明した、本実施形態に係る作業機械1は、第1走行モードでは、第1モータ26の駆動力が主伝達経路44を介して出力軸43に伝達され、第2モータ27の駆動力が、第1伝達経路45と主伝達経路44とを介して出力軸43に伝達される。従って、第1走行モードでは、作業機械1は、第1モータ26と第2モータ27とによって走行する。また、第1走行モードでは、第2伝達経路46の第2減速比よりも高い第1減速比で、第2モータ27からの回転速度が減速される。それにより、作業機械1は、高い牽引力性能を得ることができる。
【0045】
第2走行モードでは、第1モータ26の駆動力が主伝達経路44を介して出力軸43に伝達され、第2モータ27の駆動力が、第2伝達経路46と主伝達経路44とを介して出力軸43に伝達される。従って、第1伝達経路45の第1減速比よりも低い第2減速比で、第2モータ27からの回転速度が減速される。そのため、作業機械1が高速走行する場合であっても、第2モータ27の回転速度が許容回転速度を超えることが抑えられる。
【0046】
例えば、第1モータ26と第2モータ27との許容回転速度が同じであっても、第2モータ27の回転速度が許容回転速度を超えることが抑えられる。また、第2走行モードにおいても、作業機械1は、第1モータ26と第2モータ27とによって走行する。そのため、高速走行時においても高い牽引力性能が得られる。以上のように、本実施形態に係る作業機械1では、高い牽引力と高い最高車速性能とが両立される。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0048】
作業機械1は、ホイールローダに限らず、ブルドーザ、或いはモータグレーダなどの他の機械であってもよい。作業機械1は、遠隔から操作可能であってもよい。その場合、アクセル操作部材38と作業機操作部材39とは、作業機械1の外部に配置されてもよい。コントローラ37は、複数のコントローラによって構成されてもよい。上述した作業機械1の制御の処理は、複数のコントローラに分散して実行されてもよい。
【0049】
図9は、第1変形例に係る作業機械1の構成を示す図である。
図9に示すように、作業機械1は、エンジン61を備えてもよい。第1~第3モータ26-28は、エンジン61による駆動力によって発電された電気によって駆動されてもよい。例えば、第3モータ28がエンジン61によって駆動されることで発電された電力が、バッテリ21に充電されてもよい。
【0050】
図10は、第2変形例に係る作業機械1の構成を示す図である。
図10に示すように、作業機械1は、エンジン61と走行ポンプ62とを備えてもよい。第1モータ26と第2モータ27とは、油圧モータであってもよい。走行ポンプ62は、エンジン61によって駆動されることで、作動油を吐出してもよい。第1モータ26と第2モータ27とは、走行ポンプ62からの作動油によって駆動されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本開示によれば、作業機械において、高速走行時に高い牽引力を発生させることができる。
【符号の説明】
【0052】
26:第1モータ
27:第2モータ
29:トランスミッション
30:走行体
37:コントローラ
43:出力軸
44:主伝達経路
45:第1伝達経路
46:第2伝達経路
47:第1クラッチ
48:第2クラッチ