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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113262
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】回転抵抗発生装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 63/00 20060101AFI20240815BHJP
   F16D 65/16 20060101ALI20240815BHJP
   F16D 57/00 20060101ALI20240815BHJP
   F16D 125/06 20120101ALN20240815BHJP
【FI】
F16D63/00 P
F16D65/16
F16D57/00
F16D125:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018117
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000516
【氏名又は名称】曙ブレーキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】町田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】成澤 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】野田 武志
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AB27
3J058BA01
3J058CC03
3J058CC13
(57)【要約】
【課題】磁束漏れを抑制でき、回転抵抗の発生効率の向上を図れる、回転抵抗発生装置を提供する。
【解決手段】回転抵抗発生装置1を、電磁コイル2と、静止部材3と、回転部材4と、MR流体5と、非磁性材製の磁束漏れ抑制部材6とを含んで構成し、静止部材3を、円筒面状の第1~第4静止側周面を有するものとし、回転部材4を、円筒面状の第1~第4回転側周面が形成された第1挿入筒部57及び第2挿入筒部68を有するものとする。MR流体5を、第1~第4静止側周面のそれぞれと第1~第4回転側周面のそれぞれとの間に形成され、かつ、軸方向に関して電磁コイル2の側方に配置された、第1~第4環状空間65、66、77、78に充填する。磁束漏れ抑制部材6を、電磁コイル2の側面と第1、第2挿入筒部57、68の端面との間の軸方向位置に配置する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環形状を有する電磁コイルと、
前記電磁コイルの中心軸を含む仮想平面で切断した断面において、前記電磁コイルの周囲を囲むように配置され、かつ、前記電磁コイルの周囲の少なくとも1箇所に不連続部を有する、静止部材と、
前記不連続部に挿入配置される挿入部を有し、前記静止部材に対して相対回転する、回転部材と、
前記電磁コイルにより印加される磁場により見かけ上の粘度が変化する、MR流体と、
非磁性材製の磁束漏れ抑制部材と、を備え、
前記不連続部は、円筒面状の静止側周面を有しており、
前記挿入部は、前記静止側周面に対し径方向に対向する円筒面状の回転側周面を有しており、
前記MR流体は、前記静止側周面と前記回転側周面との間に形成された環状空間に充填されており、
前記環状空間は、軸方向に関して前記電磁コイルの側方に配置されており、
前記磁束漏れ抑制部材は、前記環状空間を径方向に横切る磁路を形成する磁気回路から磁束が漏洩するのを抑制するもので、前記電磁コイルの側面と前記挿入部の端面との間の軸方向位置に配置されている、
回転抵抗発生装置。
【請求項2】
前記電磁コイルは、導線からなるコイル本体と、前記コイル本体を支持した非磁性材製のコイルボビンとを有し、
前記磁束漏れ抑制部材は、前記コイルボビンの側面に隣接して配置され、前記静止部材に対し支持又は固定されている、
請求項1に記載した回転抵抗発生装置。
【請求項3】
前記回転部材は、それぞれが円筒形状を有し、且つ、互いに同軸に配置された複数の前記挿入部を有しており、
前記静止部材は、前記不連続部を有する静止部材本体と、前記静止部材本体に対し相対回転不能に支持された静止環状体とを有し、
前記静止環状体は、磁性金属製で、径方向に隣り合う前記挿入部同士の間に配置され、かつ、内周面及び外周面のそれぞれに前記回転側周面と径方向に対向する前記静止側周面を有しており、
前記磁束漏れ抑制部材は、前記静止環状体を前記静止部材本体に対し相対回転不能に支持する、
請求項1に記載した回転抵抗発生装置。
【請求項4】
前記磁束漏れ抑制部材は、円環形状を有し、前記静止部材本体に対し支持又は固定されており、
前記静止環状体と前記磁束漏れ抑制部材とは、互いに固定されておらず、円周方向に関する相対変位を不能に係合している、
請求項3に記載した回転抵抗発生装置。
【請求項5】
前記静止環状体は、円筒形状を有する筒状部と、前記筒状部のうちで、軸方向に関して前記電磁コイル側の端部から径方向に伸長した係合爪とを有し、
前記磁束漏れ抑制部材は、軸方向側面に前記係合爪と円周方向に係合する係合凹部を有する、
請求項4に記載した回転抵抗発生装置。
【請求項6】
前記係合凹部は、前記磁束漏れ抑制部材のうちで、軸方向に関して前記電磁コイルの側面と対向する軸方向側面に備えられている、請求項5に記載した回転抵抗発生装置。
【請求項7】
前記筒状部の径方向厚さは、前記係合爪の軸方向厚さよりも大きい、請求項5に記載した回転抵抗発生装置。
【請求項8】
前記静止環状体と前記磁束漏れ抑制部材とは、軸方向の相対変位を可能に係合している、請求項4に記載した回転抵抗発生装置。
【請求項9】
前記静止環状体は、軸方向に関して前記電磁コイルに近づく方向に弾性的に付勢され、前記電磁コイルの側面に弾性的に押し付けられている、請求項8に記載した回転抵抗発生装置。
【請求項10】
前記磁束漏れ抑制部材は、軸方向に貫通した貫通孔を有しており、
前記貫通孔の内側には、前記静止環状体を付勢するための付勢部材が配置されている、
請求項9に記載した回転抵抗発生装置。
【請求項11】
前記付勢部材は、プランジャである、請求項10に記載した回転抵抗発生装置。
【請求項12】
前記磁束漏れ抑制部材は、前記静止部材本体に対し、ピンを利用して支持又は固定されている、請求項4に記載した回転抵抗発生装置。
【請求項13】
前記回転部材は、前記静止部材に対し回転自在に支持された回転部材本体と、径方向に伸長し、かつ、前記回転部材本体と前記挿入部とを連結する連結部とをさらに有し、
前記連結部は、円周方向1乃至複数箇所に、透孔を有する、
請求項1に記載した回転抵抗発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転抵抗発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種機械装置には、回転部材に対して回転抵抗を付与するために、回転抵抗発生装置が組み込まれている。
【0003】
特開2017-116013号公報(特許文献1)などには、MR流体を利用した回転抵抗発生装置が開示されている。
【0004】
特開2017-116013号公報に記載された回転抵抗発生装置は、電磁コイルの径方向内側に、回転部材に固定された回転ディスクと静止部材に固定された静止ディスクとを、電磁コイルの軸方向に交互に配置している。そして、回転ディスクと静止ディスクとの間のディスク隙間に、MR流体を充填している。
【0005】
回転部材に回転抵抗を付与する際には、電磁コイルに通電し、ヨークとして機能する静止部材に磁気回路を形成することで、MR流体に磁場を印加する。これにより、MR流体の見かけ上の粘度を変化させ、回転部材に回転抵抗を付与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-116013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2017-116013号公報に記載された回転抵抗発生装置は、電磁コイルの径方向内側に、それぞれが円板形状を有する回転ディスク及び静止ディスクを配置しており、電磁コイルと、回転ディスク及び静止ディスクとが、電磁コイルの径方向に重なるように配置されている。このため、回転抵抗発生装置の径方向幅寸法が嵩む原因となる。
【0008】
このような事情に鑑みて、本発明者等は、回転抵抗発生装置の径方向幅寸法を小さくするために、電磁コイルと、MR流体が充填される環状空間とを、電磁コイルの軸方向に並べて配置することを考えた。図15は、本発明者等が本願発明を完成する以前に考えた、未公開の先願(特願2022-124494号)に開示された回転抵抗発生装置100を示している。
【0009】
回転抵抗発生装置100は、電磁コイル101と、静止部材102と、回転部材103と、MR流体104とを有している。
【0010】
静止部材102は、磁性金属製で、ヨークとして機能する。静止部材102は、静止部材本体105と静止筒106とを有している。静止部材本体105は、電磁コイル101の中心軸を含む仮想平面で切断した断面において、電磁コイル101の周囲を覆うように配置されており、電磁コイル101の側面に隣接した部分に不連続部107を有している。不連続部107は、円筒状空間であり、径方向に対向する2つの静止側周面を有している。
【0011】
静止筒106は、円筒形状を有しており、不連続部107を径方向に二分割するように、不連続部107に配置されている。静止筒106は、外周面及び内周面のそれぞれに、静止側周面を有しており、支持環108を利用して静止部材本体105に支持固定されている。
【0012】
回転部材103は、磁性金属製で、それぞれが薄肉円筒状の2つの挿入筒部109a、109bを有している。挿入筒部109a、109bは、外周面及び内周面のそれぞれに回転側周面を有しており、静止筒106を径方向両側から挟むようにして不連続部107に挿入されている。
【0013】
MR流体104は、複数の静止側周面と複数の回転側周面との間にそれぞれ形成された複数の環状空間110a~110dに充填されている。
【0014】
先発明にかかる回転抵抗発生装置100では、MR流体104が充填された複数の環状空間110a~110dが、電磁コイル101の側面に隣接して配置されている。このため、回転抵抗発生装置100によれば、径方向寸法の小型化を図れる。また、電磁コイル101に通電した際に、図15中に実線Xで示したように、環状空間110a~110dを径方向に横切るような磁路が形成される。したがって、電磁コイル101に大きな電流を流さなくても、MR流体104の見かけ上の粘度を十分に上昇させることができる。したがって、回転抵抗発生装置100によれば、回転抵抗の発生効率の向上を図ることもできる。
【0015】
ただし、先発明にかかる回転抵抗発生装置100は、回転抵抗の発生効率のさらなる向上を図る面から改良の余地がある。
すなわち、回転抵抗発生装置100においては、静止筒106を静止部材本体105に支持固定するための支持環108を、電磁コイル101の側面と挿入筒部109a、109bの端面との間の軸方向位置に配置している。つまり、支持環108を、環状空間110a~110dよりも電磁コイル101の近傍に位置する部分に配置している。このため、支持環108が透磁率の高い磁性材製である場合には、図15中に破線Yで示すように、一部の磁束が、静止部材本体105から支持環108を経由して静止筒106へと漏洩してしまい、環状空間110a~110dを径方向に横切る磁束が減少する可能性がある。この結果、所定の回転抵抗を発生させるのに必要な消費電力が増大し、回転抵抗の発生効率を低下させる可能性がある。
【0016】
上述したような磁束漏れの問題は、先発明にかかる回転抵抗発生装置100に限らず、環状空間よりも電磁コイルの近傍に位置する部分に、所定の機能を果たす磁性材製の部材を配置した場合に、同様に生じる可能性がある。
【0017】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、磁束漏れを抑制し、回転抵抗の発生効率の向上を図れる、回転抵抗発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様にかかる回転抵抗発生装置は、電磁コイルと、静止部材と、回転部材と、MR流体と、磁束漏れ抑制部材とを備える。
前記電磁コイルは、円環形状を有している。
前記静止部材は、前記電磁コイルの中心軸を含む仮想平面で切断した断面において、前記電磁コイルの周囲を囲むように配置され、かつ、前記電磁コイルの周囲の少なくとも1箇所に不連続部を有している。
前記回転部材は、前記不連続部に挿入配置される挿入部を有し、前記静止部材に対して相対回転する。
前記MR流体は、前記電磁コイルにより印加される磁場により、見かけ上の粘度、すなわち、降伏せん断力が変化する。
前記不連続部は、円筒面状の静止側周面を有している。
前記挿入部は、前記静止側周面に対し径方向に対向する円筒面状の回転側周面を有している。
前記MR流体は、前記静止側周面と前記回転側周面との間に形成された環状空間に充填されている。
前記環状空間は、軸方向に関して前記電磁コイルの側方に配置されている。
前記磁束漏れ抑制部材は、非磁性材製で、前記環状空間を径方向に横切る磁路を形成する磁気回路から磁束が漏洩するのを抑制するもので、前記電磁コイルの側面と前記挿入部の端面との間の軸方向位置に配置されている。
【0019】
なお、前記磁束漏れ抑制部材が、前記電磁コイルの側面と前記挿入部の端面との間の軸方向位置に配置されているとは、前記磁束漏れ抑制部材が、軸方向に関して前記電磁コイル又は前記挿入部と重なる位置に配置される場合に限らず、前記電磁コイル及び前記挿入部に対して径方向内側又は径方向外側にずれて配置される場合を含む。
また、前記磁束漏れ抑制部材が、前記電磁コイルの側面と前記挿入部の端面との間の軸方向位置に配置されているとは、前記磁束漏れ抑制部材の全体が、前記電磁コイルの側面と前記挿入部の端面との間の軸方向位置に配置されている場合に限らず、前記磁束漏れ抑制部材の一部が、前記電磁コイルの側面と前記挿入部の端面との間の軸方向位置に配置されている場合を含む。
【0020】
本発明の一態様にかかる回転抵抗発生装置では、前記電磁コイルを、導線からなるコイル本体と、前記コイル本体を支持した非磁性材製のコイルボビンと、を有するものとすることができる。
そして、前記磁束漏れ抑制部材を、前記コイルボビンの側面に隣接して配置し、前記静止部材に対し支持又は固定することができる。
【0021】
本発明の一態様にかかる回転抵抗発生装置では、前記回転部材を、それぞれが円筒形状を有し、且つ、互いに同軸に配置された複数の前記挿入部を有するものとすることができる。
また、前記静止部材を、前記不連続部を有する静止部材本体と、前記静止部材本体に対し相対回転不能に支持された静止環状体と、を有するものとすることができる。
そして、前記静止環状体を、磁性金属製で、径方向に隣り合う前記挿入部同士の間に配置され、かつ、内周面及び外周面のそれぞれに前記回転側周面と径方向に対向する静止側周面を有するものとすることができる。
また、前記磁束漏れ抑制部材により、前記静止環状体を前記静止部材本体に対し相対回転不能に支持することができる。
【0022】
本発明の一態様にかかる回転抵抗発生装置では、前記磁束漏れ抑制部材を、円環形状を有するものとし、前記静止部材本体に対し支持又は固定することができる。
また、前記静止環状体と前記磁束漏れ抑制部材とを、互いに固定せず、円周方向に関する相対変位を不能に係合させることができる。
【0023】
本発明の一態様にかかる回転抵抗発生装置では、前記静止環状体を、円筒形状を有する筒状部と、前記筒状部のうちで、軸方向に関して前記電磁コイル側の端部から径方向に伸長した係合爪と、を有するものとすることができる。
そして、前記磁束漏れ抑制部材を、軸方向側面に前記係合爪と円周方向に係合する係合凹部を有するものとすることができる。
【0024】
本発明の一態様にかかる回転抵抗発生装置では、前記係合凹部を、前記磁束漏れ抑制部材のうちで、軸方向に関して前記電磁コイルの側面と対向する軸方向側面に備えることができる。
あるいは、本発明の一態様にかかる回転抵抗発生装置では、前記係合凹部を、前記磁束漏れ抑制部材のうちで、軸方向に関して前記電磁コイルの側面とは反対側を向いた軸方向側面に備えることもできる。
【0025】
本発明の一態様にかかる回転抵抗発生装置では、前記筒状部の径方向厚さを、前記係合爪の軸方向厚さよりも大きくすることができる。
【0026】
本発明の一態様にかかる回転抵抗発生装置では、前記静止環状体と前記磁束漏れ抑制部材とを、軸方向の相対変位を可能に係合させることができる。
あるいは、本発明の一態様にかかる回転抵抗発生装置では、前記静止環状体と前記磁束漏れ抑制部材とを、軸方向の相対変位を不能に係合させることもできる。
【0027】
本発明の一態様にかかる回転抵抗発生装置では、前記静止環状体を、軸方向に関して前記電磁コイルに近づく方向に弾性的に付勢し、前記電磁コイルの側面に弾性的に押し付けることができる。
【0028】
本発明の一態様にかかる回転抵抗発生装置では、前記磁束漏れ抑制部材を、軸方向に貫通した貫通孔を有するものとし、前記貫通孔の内側に、前記静止環状体を付勢するための付勢部材を配置することができる。
この場合には、前記付勢部材を、プランジャとすることができる。
あるいは、前記付勢部材を、圧縮コイルばね、又は板ばねとすることもできる。
【0029】
本発明の一態様にかかる回転抵抗発生装置では、前記磁束漏れ抑制部材を、前記静止部材本体に対し、ピンを利用して支持又は固定することができる。
あるいは、本発明の一態様にかかる回転抵抗発生装置では、前記磁束漏れ抑制部材を、前記静止部材本体に対し、ボルトを利用して固定することもできるし、かしめ、圧入又は溶接により固定することもできる。
【0030】
本発明の一態様にかかる回転抵抗発生装置では、前記回転部材を、前記静止部材に対し回転自在に支持された回転部材本体と、径方向に伸長し、かつ、前記回転部材本体と前記挿入部とを連結する連結部と、をさらに有するものとすることができる。
そして、前記連結部を、円周方向1乃至複数箇所に、透孔を有するものとすることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一態様にかかる回転抵抗発生装置によれば、磁束漏れを抑制でき、回転抵抗の発生効率の向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、実施の形態の第1例にかかる回転抵抗発生装置を示す断面図である。
図2図2は、図1の上部拡大図である。
図3図3は、図1の下部拡大図である。
図4図4は、図2の部分拡大図である。
図5図5は、実施の形態の第1例にかかる回転抵抗発生装置を示す、断面斜視図である。
図6図6は、実施の形態の第1例にかかる回転抵抗発生装置から、磁性漏れ抑制部材、静止環状体及び本体副体を組み合わせてなる中間組立体を取り出して示す、断面図である。
図7図7は、実施の形態の第1例にかかる回転抵抗発生装置から、磁性漏れ抑制部材、静止環状体及び本体副体を組み合わせてなる中間組立体を取り出して示す、断面斜視図である。
図8図8は、実施の形態の第1例にかかる回転抵抗発生装置を構成する中間組立体の分解斜視図である。
図9図9は、実施の形態の第1例にかかる回転抵抗発生装置から静止環状体を取り出して示す斜視図である。
図10図10は、実施の形態の第1例にかかる回転抵抗発生装置から磁性漏れ抑制部材を取り出して示す斜視図である。
図11図11は、実施の形態の第1例にかかる回転抵抗発生装置から回転部材を取り出して示す、断面図である。
図12図12は、実施の形態の第1例にかかる回転抵抗発生装置から回転部材を取り出して示す、断面斜視図である。
図13図13は、実施の形態の第1例にかかる回転抵抗発生装置を構成する回転部材の分解斜視図である。
図14図14は、実施の形態の第1例にかかる回転抵抗発生装置から第1回転環状体及び第2回転環状体を取り出して示す斜視図である。
図15図15は、未公開の先願にかかる回転抵抗発生装置を示す、部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[実施の形態の第1例]
実施の形態の第1例について、図1図14を用いて説明する。
【0034】
本例の回転抵抗発生装置1は、電磁コイル2と、静止部材3と、回転部材4と、MR流体5と、磁束漏れ抑制部材6とを備えている。
【0035】
本例の回転抵抗発生装置1は、磁場を加えると液体状から半固体状に変化するといったMR流体5の特性を利用して、回転部材4に回転抵抗を付与する非摩擦式の抵抗発生装置である。本例の回転抵抗発生装置1は、例えば、MRダンパ又はMRブレーキとして利用できる。
【0036】
回転抵抗発生装置1は、全体が略円筒形状を有しており、径方向中央部に軸方向に貫通した挿通孔7を有する。挿通孔7の内側には、例えば、往復移動可能なロッドなどを配置することができる。なお、挿通孔7は、省略することもできる。
本明細書及び特許請求の範囲で、「軸方向」、「周方向」及び「径方向」とは、特に断らない限り、円環状の電磁コイル2の軸方向、周方向及び径方向をいう。
【0037】
〈電磁コイル〉
電磁コイル2は、MR流体5に磁場を印加するための磁場発生装置であり、円環形状を有している。電磁コイル2は、電流が流れると、静止部材3に、図2及び図3に一部を実線αで示したような磁気回路(磁場)を形成する。前記磁気回路は、静止部材3のうちで、電磁コイル2の軸方向一方側(図2及び図3の右側)及び軸方向他方側(図2及び図3の左側)に存在する部分に、径方向(放射方向)を向いた磁路を形成し、電磁コイル2の径方向外側及び径方向内側に存在する部分に、軸方向を向いた磁路を形成する。
【0038】
本例では、電磁コイル2は、導線からなるコイル本体8と、該コイル本体8を支持したコイルボビン9とから構成されている。
【0039】
コイルボビン9は、アルミニウム合金製で、全体が円環状に構成されており、略U字形の断面形状を有する。コイルボビン9は、それぞれが円環板形状を有する1対の側板部10a、10bと、円筒形状を有し、1対の側板部10a、10bの径方向内側の端部同士を連結する底筒部11とからなる。
【0040】
1対の側板部10a、10bのうちで、軸方向一方側に配置された側板部10aは、径方向外側の端部に、軸方向一方側に向けて突出した短円筒形状の鍔部12を有する。
【0041】
〈静止部材〉
静止部材3は、静止部材本体13と、静止環状体14と、静止補助体15とから構成されており、使用時にも回転しない。
【0042】
《静止部材本体》
静止部材本体13は、略円筒形状を有しており、電磁コイル2と同軸に配置されている。静止部材本体13は、図1に示すように、電磁コイル2の中心軸Oを含む仮想平面で切断した断面において、電磁コイル2の周囲を囲むように配置され、ヨークとして機能する。このため、静止部材本体13は、電磁コイル2の外周面、内周面、軸方向一方側の側面、及び軸方向他方側の側面のそれぞれを覆うように配置されている。
【0043】
静止部材本体13は、電磁コイル2の中心軸Oを含む仮想平面で切断した断面において、電磁コイル2の周囲の1箇所に、不連続部16を有する。具体的には、静止部材本体13は、前記断面において、電磁コイル2の軸方向一方側の側面に隣接した部分に、不連続部16を有する。
【0044】
不連続部16は、径方向幅寸法に比べて軸方向寸法の大きい円筒状空間であり、電磁コイル2と同軸に配置されている。不連続部16の径方向幅寸法は、軸方向及び円周方向にわたりほぼ一定であり、電磁コイル2の径方向幅寸法よりも小さい。具体的には、不連続部16の径方向幅寸法は、電磁コイル2の径方向幅寸法の1/4~1倍程度であり、図示の例では、電磁コイル2の径方向幅寸法の1/2程度である。不連続部16の軸方向寸法は、電磁コイル2の軸方向寸法の1/2~3/2程度であり、図示の例では、電磁コイル2の軸方向寸法とほぼ同じである。
【0045】
不連続部16は、軸方向に関して電磁コイル2と重なる位置に配置されている。具体的には、不連続部16は、電磁コイル2の径方向外側部と軸方向に重なる位置に配置されている。
【0046】
本例の静止部材本体13は、複数の部材から構成されている。静止部材本体13は、本体主体17と本体副体18とから構成されている。本体主体17及び本体副体18のそれぞれは、例えば鉄(純鉄)などの磁性金属製、好ましくは強磁性材製である。本体主体17と本体副体18とは、複数本のボルト19を用いて軸方向に連結されている。
【0047】
本体主体17は、略コ字形の断面形状を有しており、全体が略円筒状に構成されている。本体主体17は、軸方向一方側のみが開口したコイル収容空間20を有する。コイル収容空間20は、円筒状空間であり、その内側に電磁コイル2が配置されている。このため、静止部材本体13を構成する本体主体17は、電磁コイル2の外周面、内周面、及び軸方向他方側の側面を覆っている。
【0048】
本体主体17は、外径側筒部21と、内径側筒部22と、側壁部23とを有している。外径側筒部21と内径側筒部22と側壁部23とは、一体に構成されている。
【0049】
外径側筒部21は、略円筒形状を有し、電磁コイル2の径方向外側に配置されている。このため、外径側筒部21は、電磁コイル2を径方向外側から覆っている。外径側筒部21の内周面と電磁コイル2を構成するコイルボビン9の鍔部12の外周面との間には、Oリング29aを挟持している。
【0050】
外径側筒部21の軸方向寸法は、電磁コイル2の軸方向寸法よりも大きい。図示の例では、外径側筒部21の軸方向寸法は、電磁コイル2の軸方向寸法のおよそ2倍である。電磁コイル2をコイル収容空間20に配置した状態で、外径側筒部21の軸方向一方側の半部は、電磁コイル2から軸方向に突出している。外径側筒部21は、内周面の軸方向一方側の半部に、軸方向にわたり内径が変化しない円筒面状の第1静止側周面24を有している。
【0051】
外径側筒部21は、軸方向中間部の円周方向1箇所に、径方向に貫通した連通孔25を有している。連通孔25の径方向内側の端部は、第1静止側周面24に開口しており、連通孔25の径方向外側の端部は、外径側筒部21の外周面に開口している。連通孔25の径方向外側の開口部は、袋状に構成された金属製又はゴム製のベローズ26で覆われている。
【0052】
内径側筒部22は、略円筒形状を有し、電磁コイル2の径方向内側に配置されている。このため、内径側筒部22は、電磁コイル2を径方向内側から覆っている。内径側筒部22の軸方向寸法は、電磁コイル2の軸方向寸法よりも少しだけ大きく、かつ、外径側筒部21の軸方向寸法よりも小さい。図示の例では、内径側筒部22の軸方向寸法は、電磁コイル2の軸方向寸法のおよそ1.5倍である。
【0053】
内径側筒部22は、軸方向一方側の端部の円周方向複数箇所に、ボルト19を螺合するための第1雌ねじ孔27を有している。第1雌ねじ孔27のそれぞれは、内径側筒部22の軸方向一方側の端面に開口している。また、内径側筒部22は、軸方向他方側の端部の円周方向複数箇所に、第2雌ねじ孔28を有している。第2雌ねじ孔28のそれぞれは、内径側筒部22の軸方向他方側の端面に開口している。
【0054】
側壁部23は、円環形状を有し、外径側筒部21及び内径側筒部22のそれぞれの軸方向他方側の端部を連結している。このため、側壁部23は、電磁コイル2を軸方向他方側から覆っている。側壁部23の径方向寸法は、電磁コイル2の径方向寸法よりも少しだけ大きい。側壁部23の軸方向一方側の側面と電磁コイル2の軸方向他方側の側面(側板部10bの軸方向他方側の側面)との間には、Oリング29bを挟持している。側壁部23は、円周方向複数箇所に、第3雌ねじ孔30を有している。第3雌ねじ孔30のそれぞれは、側壁部23の軸方向他方側の端面に開口している。
【0055】
本体副体18は、略L字形又は略T字形の断面形状を有しており、全体が略円環状に構成されている。本体副体18は、その径方向外側部によってコイル収容空間20を軸方向一方側から塞いでいる。これにより、静止部材本体13を構成する本体副体18は、電磁コイル2の軸方向一方側の側面の一部(径方向内側部分)を覆っている。本体副体18は、外径側筒部21の軸方向一方側の半部の径方向内側で、かつ、内径側筒部22の軸方向一方側に配置されている。
【0056】
本体副体18は、外周面に、軸方向にわたり外径が変化しない円筒面状の第2静止側周面31を有している。
【0057】
本体副体18は、径方向外側部に、軸方向他方側に向けて張り出した張出部32を有している。張出部32は、円環形状を有しており、コイル収容空間20の軸方向一方側部に挿入されている。張出部32は、内径側筒部22の外径寸法よりもわずかに大きな内径寸法を有している。張出部32の径方向幅寸法は、電磁コイル2の径方向幅寸法のおよそ1/2である。
【0058】
本体副体18のうちで、張出部32よりも径方向内側部分の軸方向他方側の側面は、内径側筒部22の軸方向一方側の側面に全周にわたり突き当てられている。本体副体18の径方向内側部分の軸方向他方側の側面と内径側筒部22の軸方向一方側の側面との間には、Oリング29cを挟持している。
【0059】
本体副体18は、張出部32よりも径方向内側部分の円周方向複数箇所に、通孔33を有する。通孔33は、本体副体18を軸方向に貫通した貫通孔である。図示の例では、通孔33は、段付き孔である。通孔33は、本体主体17に備えられた第1雌ねじ孔27と等ピッチで配置されている。
【0060】
本体副体18は、張出部32が備えられた径方向外側部分の円周方向複数箇所に、取付孔34を有する。取付孔34は、本体副体18の径方向外側部分を軸方向に貫通した貫通孔であり、内周面に図示しない雌ねじが形成されている。取付孔34には、付勢部材である後述のプランジャ47が取り付けられる。
【0061】
本体副体18は、張出部32が備えられた径方向外側部分のうちで、円周方向に関する位相が取付孔34から外れた複数箇所に、支持孔35を有する。支持孔35は、本体副体18の軸方向他方側の端面にのみ開口した有底孔である。支持孔35には、後述するピン44が挿入支持される。
【0062】
図示の例では、本体副体18に備えられた通孔33を挿通したボルト19を、本体主体17の第1雌ねじ孔27に螺合することで、本体主体17と本体副体18とを、電磁コイル2を囲むように結合固定している
【0063】
本例では、本体主体17と本体副体18とを結合固定した状態で、本体主体17と本体副体18との間に、不連続部16が形成される。具体的には、本体主体17に備えられた外径側筒部21のうちで電磁コイル2から軸方向一方側に突出した部分の内周面と、本体副体18の外周面との間に、不連続部16が形成される。
【0064】
このため、不連続部16の径方向外側の周面は、外径側筒部21の内周面に備えられた円筒面状の第1静止側周面24によって構成されており、不連続部16の径方向内側の周面は、本体副体18の外周面に備えられた円筒面状の第2静止側周面31によって構成されている。したがって、不連続部16は、径方向に対向する2つの静止側周面である、第1静止側周面24及び第2静止側周面31を有する。
【0065】
また、本体主体17と本体副体18とを結合固定した状態で、本体主体17のコイル収容空間20に収容された電磁コイル2と本体副体18との間に、環状隙間36が形成される。具体的には、コイルボビン9の側板部10aの軸方向一方側の側面と、本体副体18の張出部32の軸方向他方側の側面との間に、環状隙間36が形成される。
【0066】
なお、本体副体18は、本体主体17に固定する以前に、磁束漏れ抑制部材6及び静止環状体14と組み合わせて、図6及び図7に示すような中間組立体42を構成する。
【0067】
《静止環状体》
静止環状体14は、磁束漏れ抑制部材6を利用して、静止部材本体13に支持されている。本例の回転抵抗発生装置1は、静止環状体14を1つ備える。
【0068】
静止環状体14は、例えば鉄(純鉄)などの磁性金属製、好ましくは強磁性材製である。静止環状体14は、図9に示すように、筒状部37と、係合爪38とを有している。
【0069】
筒状部37は、円筒形状を有しており、不連続部16を径方向に二分割するように、不連続部16に配置されている。筒状部37の径方向厚さは、不連続部16の径方向寸法よりも小さい。図示の例では、筒状部37の径方向厚さは、不連続部16の径方向寸法のおよそ1/2である。筒状部37の軸方向寸法は、本体副体18の径方向外側部分の軸方向寸法よりも少しだけ大きい。筒状部37は、径方向に隣り合う後述の第1挿入筒部57と第2挿入筒部68の間に配置される。
【0070】
筒状部37は、外周面に、軸方向にわたり外径が変化しない円筒面状の第3静止側周面39を有する。第3静止側周面39の外径は、第1静止側周面24の内径よりも小さい。第1静止側周面24と第3静止側周面39との間には、回転部材4を構成する後述する第1挿入筒部57が挿入される。
【0071】
筒状部37は、内周面に、軸方向にわたり内径が変化しない円筒面状の第4静止側周面40を有する。第4静止側周面40の内径は、第2静止側周面31の外径よりも大きい。第2静止側周面31と第4静止側周面40との間には、回転部材4を構成する後述する第2挿入筒部68が挿入される。
【0072】
筒状部37は、外周面の軸方向他方側の端部に、円筒面状の小径部41を有する。小径部41は、第3静止側周面39よりも外径が小さく、かつ、電磁コイル2を構成する鍔部12の内径よりもわずかに小さい。また、小径部41の軸方向幅は、鍔部12の軸方向寸法よりも少しだけ大きい。小径部41は、鍔部12の径方向内側に配置されている。
【0073】
係合爪38は、筒状部37の軸方向他方側の端部から径方向内側に向けて伸長している。本例では、係合爪38は、筒状部37の軸方向他方側の端部の円周方向複数箇所に備えられている。図示の例では、係合爪38は4つ備えられている。複数の係合爪38は、円周方向に等間隔に配置されている。係合爪の数は、4つに限定されず、1つ、2つ又は3つでも良いし、5つ以上としても良い。ただし、漏洩磁束を減少する面からは、係合爪の数をいたずらに多くすることは好ましくない。
【0074】
係合爪38は、部分円環板状に構成されており、軸方向視で略扇形又は略矩形の端面形状を有している。係合爪38は、筒状部37に対して略直角に配置されている。係合爪38の内接円直径は、本体副体18の張出部32の内径及び本体主体17の内径側筒部22の外径のそれぞれと、ほぼ同じである。
【0075】
係合爪38の軸方向厚さは、径方向にわたり一定であり、筒状部37の径方向厚さよりも小さい。図示の例では、係合爪38の軸方向厚さは、筒状部37の径方向厚さの1/2程度である。
【0076】
係合爪38のそれぞれの円周方向幅は、筒状部37の内周の1/30~1/12程度である。図示の例では、係合爪38のそれぞれの円周方向幅は、筒状部37の内周のおよそ1/20である。
【0077】
係合爪38は、軸方向に関して、コイルボビン9の側板部10aと本体副体18の張出部32との間に配置されている。つまり、係合爪38は、環状隙間36に配置されている。
【0078】
本例では、静止環状体14は、電磁コイル2及び静止部材本体13のいずれにも固定されていない。静止環状体14は、磁束漏れ抑制部材6を利用して、静止部材本体13に対し、円周方向に関する相対変位を不能にかつ軸方向に関する相対変位を可能に支持されている。
【0079】
《静止補助体》
静止補助体15は、全体が略円筒形状を有している。静止補助体15は、静止部材本体13と同軸に配置されており、静止部材本体13に固定されている。具体的には、静止補助体15は、静止部材本体13の軸方向一方側に配置されており、図示しない複数本の連結ボルトを利用して、静止部材本体13を構成する外径側筒部21の軸方向一方側の端部に固定されている。静止補助体15の軸方向他方側の側面と外径側筒部21の軸方向一方側の側面との間には、Oリング29dが挟持されている。
【0080】
〈磁束漏れ抑制部材〉
磁束漏れ抑制部材6は、オーステナイト系ステンレス鋼などの非磁性材製で、静止部材3の内部を通り、かつ、後述する第1~第4環状空間65、66、77、78を径方向に横切る磁路を形成する磁気回路から磁束が漏洩することを抑制する。
【0081】
本例の磁束漏れ抑制部材6は、静止環状体14を静止部材本体13に対し支持する機能と、静止部材本体13を構成する本体主体17の内径側筒部22から静止環状体14の筒状部37へと磁束が漏洩するのを抑制する機能とを併せ持っている。
【0082】
磁束漏れ抑制部材6は、円環板形状を有しており、環状隙間36に配置されている。
【0083】
本例では、磁束漏れ抑制部材6は、電磁コイル2の側面と回転部材4を構成する後述の第1、第2挿入筒部57、68の端面との間の軸方向位置に配置されている。具体的には、磁束漏れ抑制部材6は、コイルボビン9の側板部10aの軸方向一方側の側面と、第1、第2挿入筒部57、68の軸方向他方側の端面(先端面)との間の軸方向位置(図4中の矢印βの範囲)に配置されている。
【0084】
図示の例では、磁束漏れ抑制部材6の全体が、コイルボビン9の側板部10aの軸方向一方側の側面と、第1、第2挿入筒部57、68の軸方向他方側の端面との間の軸方向位置に配置されている。ただし、磁束漏れ抑制部材6の一部のみ(例えば径方向内側部分に対して軸方向他方側にオフセットした径方向外側部分のみ)を、コイルボビン9の側板部10aの軸方向一方側の側面と、第1、第2挿入筒部57、68の軸方向他方側の端面との間の軸方向位置に配置することもできる。
【0085】
磁束漏れ抑制部材6の内径は、係合爪38の内接円直径及び本体副体18の張出部32の内径のそれぞれとほぼ同じであり、かつ、本体主体17の内径側筒部22の外径よりも少しだけ大きい。磁束漏れ抑制部材6の外径は、静止環状体14を構成する筒状部37の内径よりも小さい。磁束漏れ抑制部材6は、筒状部37の軸方向他方側の端部の径方向内側に配置されている。
【0086】
磁束漏れ抑制部材6は、コイルボビン9の側板部10aの軸方向一方側の側面に隣接して配置されており、静止部材本体13に支持されている。このために、磁束漏れ抑制部材6は、挿入孔43を有している。磁束漏れ抑制部材6は、円周方向の複数箇所(図示の例では4箇所)に、挿入孔43を有している。本例では、挿入孔43は、磁束漏れ抑制部材6を軸方向に貫通した貫通孔である。ただし、挿入孔は、軸方向一方側にのみ開口した有底孔とすることもできる。
【0087】
磁束漏れ抑制部材6に備えられた挿入孔43には、本体副体18に支持されたピン44が挿入されている。具体的には、挿入孔43には、本体副体18に備えられた支持孔35に挿入支持(圧入)されたピン44の軸方向他方側の端部が摺動可能に挿入されている。これにより、磁束漏れ抑制部材6は、本体副体18に対して、ピン44によって円周方向に関する相対変位を不能に、かつ、軸方向に関する相対変位を可能に支持されている。ただし、ピン44を挿入孔43に圧入することにより、磁束漏れ抑制部材6を本体副体18に固定しても良いし、ボルトなどのその他の部材を利用して、磁束漏れ抑制部材6を本体副体18に固定することもできる。
【0088】
磁束漏れ抑制部材6は、静止環状体14に固定されていない。本例では、磁束漏れ抑制部材6は、静止環状体14に対し、円周方向に関する相対変位を不能に、かつ、軸方向に関する相対変位を可能に係合している。
【0089】
このために、磁束漏れ抑制部材6は、軸方向に関して電磁コイル2の軸方向一方側の側面と対向する軸方向他方側の側面に、軸方向に凹んだ係合凹部45を有している。磁束漏れ抑制部材6は、係合凹部45を複数備えている。図示の例では、磁束漏れ抑制部材6は、静止環状体14に備えられた係合爪38と同数の4つ備えられている。複数の係合凹部45は、円周方向に等間隔に配置されている。
【0090】
係合凹部45のそれぞれの円周方向幅は、係合爪38のそれぞれの円周方向幅よりも少しだけ大きい。係合凹部45の軸方向深さは、係合爪38の軸方向厚さとほぼ同じか、係合爪38の軸方向厚さよりも少しだけ大きい。
【0091】
本例では、磁束漏れ抑制部材6に備えられた係合凹部45のそれぞれに、静止環状体14に備えられた係合爪38のそれぞれを嵌め込むことで、磁束漏れ抑制部材6と静止環状体14とを、円周方向に関する相対変位を不能にかつ軸方向に関する相対変位を可能に係合させている。これにより、磁束漏れ抑制部材6は、静止環状体14を静止部材本体13に対し相対回転不能に支持している。
【0092】
本例では、磁束漏れ抑制部材6は、軸方向他方側の側面に、軸方向に凹んだ係合凹部45を有しているため、磁束漏れ抑制部材6の軸方向厚さは、円周方向にわたり一定ではなく、円周方向位置に応じて変化する。具体的には、磁束漏れ抑制部材6の軸方向厚さは、係合凹部45が備えられた部分で小さく、係合凹部45から円周方向に外れた部分で大きい。
【0093】
本例の磁束漏れ抑制部材6は、円周方向に関して係合凹部45から外れた部分が、軸方向に関して、コイルボビン9の側板部10aと本体副体18の張出部32との間に配置されている。これに対し、磁束漏れ抑制部材6は、係合凹部45が備えられた部分が、軸方向に関して、静止環状体14の係合爪38と本体副体18の張出部32との間に配置されている。
【0094】
磁束漏れ抑制部材6は、円周方向に関する位相が係合凹部45と一致する部分に、軸方向に貫通した貫通孔46を有している。貫通孔46は、本体副体18に備えられた取付孔34と等ピッチで配置されている。磁束漏れ抑制部材6を本体副体18に対して円周方向の相対変位を不能に支持した状態で、貫通孔46と取付孔34とは同軸に配置されている。図示の例では、磁束漏れ抑制部材6は、貫通孔46を4つ備えており、4つの貫通孔46は、円周方向に等間隔に配置されている。
【0095】
本例では、貫通孔46及び取付孔34のそれぞれの内側に、静止環状体14を軸方向他方側に向けて付勢するための付勢部材が配置されている。本例では、付勢部材として、プランジャ47を使用している。ただし、付勢部材は、静止環状体14を軸方向他方側に付勢することが可能であれば、プランジャに限定されず、圧縮コイルばねなどのその他の部材を使用することもできる。
【0096】
プランジャ47は、外周面に雄ねじが備えられた有底筒形状のホルダと、該ホルダの内部空間の開口側部に配置されたボールと、ボールとホルダの底面との間に配置されたばねとを有している。プランジャ47は、本体副体18の取付孔34に軸方向一方側から挿入され、ホルダの外周面に備えられた雄ねじを取付孔34の内周面に備えられた雌ねじに螺合させている。磁束漏れ抑制部材6の貫通孔46の内側には、プランジャ47の軸方向他方側の端部、すなわち、ボールとホルダの軸方向他方側の端部が配置されている。
【0097】
プランジャ47の軸方向他方側の端部に備えられたボールは、ホルダの内部に備えられたばねの弾力を利用して、静止環状体14を構成する係合爪38の軸方向一方側の側面を、軸方向他方側に向けて弾性的に付勢している。これにより、係合爪38の軸方向他方側の側面を、電磁コイル2のコイルボビン9を構成する側板部10aの軸方向一方側の側面に押し付けている(面接触させている)。なお、プランジャとして、ボールを備えたいわゆるボールプランジャに限らず、ピンを備えたいわゆるピンプランジャなど、その他の構造のプランジャを利用することもできる。
【0098】
〈回転部材〉
回転部材4は、全体が略円筒形状を有しており、使用時に回転する。このため、回転部材4は、同軸に配置された静止部材3に対して相対回転する。
【0099】
図11に示すように、回転部材4は、回転部材本体48と、第1回転環状体49及び第2回転環状体50と、を有している。
【0100】
回転部材本体48は、段付円筒形状を有しており、軸方向一方側に配置された大径筒部51と、軸方向他方側に配置された小径筒部52とを有している。回転部材本体48は、非磁性材製であり、図示しない他の部材によって一方向又は両方向に回転駆動される。
【0101】
大径筒部51は、静止部材3を構成する静止補助体15の径方向内側に配置され、該静止補助体15に対し、転がり軸受53により回転自在に支持されている。また、大径筒部51の外周面と静止補助体15の内周面との間には、第1シール装置54が配置されている。
【0102】
小径筒部52は、静止部材3を構成する本体副体18の径方向内側に配置されている。また、小径筒部52の外周面と本体副体18の内周面との間には、第2シール装置55が配置されている。
【0103】
第1回転環状体49及び第2回転環状体50のそれぞれは、例えば鉄(純鉄)などの磁性金属製、好ましくは強磁性材製である。
【0104】
第1回転環状体49及び第2回転環状体50のそれぞれは、複数本のボルト56を用いて、回転部材本体48を構成する大径筒部51の軸方向他方側の端部に固定されている。
【0105】
第1回転環状体49は、略L字形の断面形状を有しており、薄肉円筒形状を有する第1挿入筒部57と、略円環板形状を有する第1連結部58とを有する。本例では、第1挿入筒部が、特許請求の範囲に記載した挿入部に相当する。
【0106】
第1挿入筒部57及び第1連結部58は、互いに一体に構成されている。ただし、第1挿入筒部と第1連結部とを、別体に構成し、互いに結合することもできる。第1挿入筒部と第1連結部とを、別体に構成する場合には、第1挿入筒部のみを強磁性材製とし、第1連結部を非磁性材製とすることができる。
【0107】
第1挿入筒部57は、軸方向全長にわたり外径及び内径が一定である。第1挿入筒部57は、外周面に円筒面状の第1回転側周面59を有し、かつ、内周面に円筒面状の第2回転側周面60を有する。
【0108】
第1挿入筒部57の軸方向寸法は、不連続部16の軸方向寸法とほぼ同じであるか、不連続部16の軸方向寸法よりも少しだけ大きい。
【0109】
第1連結部58は、第1挿入筒部57の軸方向一方側の端部から径方向内側に向けて伸長している。第1連結部58は、径方向内側の端部に、ボルト56を挿通するための第1ボルト挿通孔61を複数有している。
【0110】
第1連結部58は、径方向外側の端部から径方向中間部にわたる範囲に、除肉部である第1透孔62を有している。第1透孔62は、軸方向視で扇形状を有している。第1透孔62は、複数(図示の例では4つ)備えられており、円周方向に等間隔に配置されている。なお、第1連結部58に形成する第1透孔62の形状及び形成数は、適宜変更することができる。
【0111】
本例では、第1連結部58に、第1透孔62を複数形成することで、円周方向に隣り合う第1透孔62同士の間に、それぞれが放射方向に伸長した第1柱部63を形成している。
【0112】
第1柱部63のそれぞれは、第1挿入筒部57の軸方向一方側の端部につながった径方向外側の端部に、1対の第1リブ64を備えている。1対の第1リブ64は、第1柱部63の円周方向両側の端部に備えられている。本例では、1対の第1リブ64を第1柱部63の径方向外側の端部に設けることで、第1柱部63と第1挿入筒部57との接続部の円周方向寸法を長く確保している。
【0113】
第1回転環状体49の第1挿入筒部57は、不連続部16に挿入配置されている。具体的には、第1挿入筒部57は、不連続部16のうちで、本体主体17を構成する外径側筒部21の内周面に備えられた第1静止側周面24と静止環状体14を構成する筒状部37の外周面に備えられた第3静止側周面39との間に、軸方向一方側から軸方向に挿入されている。
【0114】
第1挿入筒部57を不連続部16に挿入配置した状態で、第1回転側周面59は、第1静止側周面24に対して微小隙間を介して全周にわたり近接対向し、かつ、第2回転側周面60は、第3静止側周面39に対して微小隙間を介して全周にわたり近接対向する。
【0115】
これにより、図4に示すように、径方向に対向する第1静止側周面24と第1回転側周面59との間に、円筒状の微小隙間である第1環状空間65が形成され、かつ、径方向に対向する第3静止側周面39と第2回転側周面60との間に、円筒状の微小隙間である第2環状空間66が形成される。
【0116】
第1環状空間65及び第2環状空間66のそれぞれは、軸方向に関して電磁コイル2の側方に配置されている。本例では、第1環状空間65及び第2環状空間66のそれぞれは、軸方向に関して電磁コイル2と重なるように配置されている。
【0117】
第1環状空間65及び第2環状空間66は、第1挿入筒部57を挟むようにして、第1挿入筒部57の径方向両側に配置される。このため、第1環状空間65と第2環状空間66とは、径方向に重なるように互いに同軸に配置されている。
【0118】
第1回転環状体49の第1連結部58は、本体副体18の軸方向一方側の側面と静止補助体15の軸方向他方側の側面との間に形成された側方空間67に配置されている。
【0119】
第2回転環状体50は、略L字形の断面形状を有しており、薄肉円筒形状を有する第2挿入筒部68と、略円環板形状を有する第2連結部69とを有する。本例では、第1挿入筒部だけでなく、第2挿入筒部についても、特許請求の範囲に記載した挿入部に相当する。
【0120】
第2挿入筒部68及び第2連結部69は、互いに一体に構成されている。ただし、第2挿入筒部と第2連結部とを、別体に構成し、互いに結合することもできる。第2挿入筒部と第2連結部とを、別体に構成する場合には、第2挿入筒部のみを強磁性材製とし、第2連結部を非磁性材製とすることができる。
【0121】
第2挿入筒部68は、軸方向全長にわたり外径及び内径が一定である。第2挿入筒部68は、第1挿入筒部57の内径よりも小さい外径を有している。第2挿入筒部68は、外周面に円筒面状の第3回転側周面70を有し、かつ、内周面に円筒面状の第4回転側周面71を有する。
【0122】
第2挿入筒部68の軸方向寸法は、第1挿入筒部57の軸方向寸法とほぼ同じである。
【0123】
第2連結部69は、第2挿入筒部68の軸方向一方側の端部から径方向内側に向けて伸長している。第2連結部69は、径方向内側の端部に、ボルト56を挿通するための第2ボルト挿通孔72を複数有している。第2ボルト挿通孔72は、第1回転環状体49に備えられた第1ボルト挿通孔61と等ピッチで配置されている。
【0124】
本例では、第2回転環状体50の第2連結部69を第1回転環状体49の第1連結部58に軸方向他方側から重ね合わせた状態で、第1ボルト挿通孔61及び第2ボルト挿通孔72のそれぞれを軸方向他方側から挿通したボルト56を、回転部材本体48を構成する大径筒部51の軸方向他方側の端面に開口した雌ねじ孔73に螺合している。これにより、第1回転環状体49及び第2回転環状体50を回転部材本体48に固定している。このように、第1回転環状体49及び第2回転環状体50を回転部材本体48に固定した状態で、第1挿入筒部57と第2挿入筒部68とは、同軸に配置される。
【0125】
第2連結部69は、径方向外側の端部から径方向中間部にわたる範囲に、除肉部である第2透孔74を有している。第2透孔74は、軸方向視で扇形状を有している。第2透孔74は、複数(図示の例では4つ)備えられており、円周方向に等間隔に配置されている。本例では、第1回転環状体49及び第2回転環状体50を回転部材本体48に固定した状態で、第2透孔74は、第1透孔62に対し半ピッチずれて配置されている。なお、第2連結部69に形成する第2透孔74の形状及び形成数は、適宜変更することができる。
【0126】
本例では、第2連結部69に第2透孔74を複数形成することで、円周方向に隣り合う第2透孔74同士の間に、それぞれが放射方向に伸長した第2柱部75を形成している。第2柱部75の径方向寸法は、第1柱部63の径方向寸法よりも短い。
【0127】
第2柱部75のそれぞれは、第2挿入筒部68の軸方向一方側の端部につながった径方向外側の端部に、1対の第2リブ76を備えている。1対の第2リブ76は、第2柱部75の円周方向両側の端部に備えられている。本例では、1対の第2リブ76を第2柱部75の径方向外側の端部に設けることで、第2柱部75と第2挿入筒部68との接続部の円周方向寸法を長く確保している。
【0128】
第2回転環状体50の第2挿入筒部68は、不連続部16に挿入配置されている。具体的には、第2挿入筒部68は、不連続部16のうちで、静止環状体14を構成する筒状部37の内周面に備えられた第4静止側周面40と本体副体18の外周面に備えられた第2静止側周面31との間に、軸方向一方側から軸方向に挿入されている。
【0129】
第2挿入筒部68を不連続部16に挿入配置した状態で、第3回転側周面70は、第4静止側周面40に対して微小隙間を介して全周にわたり近接対向し、かつ、第4回転側周面71は、第2静止側周面31に対して微小隙間を介して全周にわたり近接対向する。
【0130】
これにより、図4に示すように、径方向に対向する第4静止側周面40と第3回転側周面70との間に、円筒状の微小隙間である第3環状空間77が形成され、かつ、径方向に対向する第2静止側周面31と第4回転側周面71との間に、円筒状の微小隙間である第4環状空間78が形成される。
【0131】
第3環状空間77及び第4環状空間78のそれぞれは、軸方向に関して電磁コイル2の側方に配置されている。本例では、第3環状空間77及び第4環状空間78のそれぞれは、軸方向に関して電磁コイル2と重なるように配置されている。
【0132】
第3環状空間77及び第4環状空間78は、第2挿入筒部68を挟むようにして、第2挿入筒部68の径方向両側に配置される。このため、第3環状空間77と第4環状空間78とは、径方向に重なるように互いに同軸に配置されている。
【0133】
第2回転環状体50の第2連結部69は、側方空間67に配置されている。
【0134】
〈MR流体〉
MR流体5は、外部磁場に応じて見かけ上の粘度が変化する機能性流体の1種であり、粒子径が1μm~10μm程度の強磁性粒子(純鉄やカルボニル鉄など)を主に油系の溶媒中に分散させてなる混濁液である。
【0135】
本例では、MR流体5を、第1環状空間65、第2環状空間66、第3環状空間77及び第4環状空間78のそれぞれに充填するとともに、側方空間67にも充填している。すなわち、MR流体5は、第1シール装置54及び第2シール装置55により密封された、静止部材3と回転部材4との間の収容空間79に充填されている。
【0136】
MR流体5は、磁場が加えられると、静止部材3と回転部材4との間に鎖状粒子クラスターを形成し、見かけ上の粘度が変化する(半固体状に変化する)。具体的には、それぞれが径方向に対向する、第1静止側周面24と第1回転側周面59との間、第3静止側周面39と第2回転側周面60との間、第4静止側周面40と第3回転側周面70との間、第2静止側周面31と第4回転側周面71との間に、鎖状粒子クラスターを形成し、降伏せん断力を変化させる。なお、図1図4には、MR流体5を梨子地模様で表している。
【0137】
本例の回転抵抗発生装置1は、連結部材80及び抜け止め部材81をさらに備える。連結部材80及び抜け止め部材81のそれぞれは、非磁性材製である。連結部材80は、円環形状を有しており、本体主体17を構成する内径側筒部22の軸方向他方側の側面に、図示しないボルトを利用して固定される。抜け止め部材81は、円環形状を有しており、ボルト82を利用して、静止補助体15の軸方向一方側の端面に固定される。抜け止め部材81は、転がり軸受53と軸方向に係合することで、転がり軸受53が軸方向一方側に抜け出ることを防止する。
【0138】
〈動作説明〉
本例の回転抵抗発生装置1により、回転部材4に対して回転抵抗を付与するには、例えば制御器からの指令などに基づいて、電磁コイル2に電流を流す。これにより、ヨークとして機能する静止部材3に、磁気回路を形成する。そして、第1環状空間65、第2環状空間66、第3環状空間77及び第4環状空間78のそれぞれに充填されたMR流体5に磁場を印加する。特に本例では、第1環状空間65、第2環状空間66、第3環状空間77及び第4環状空間78のそれぞれを直交して横切る、換言すれば、第1環状空間65、第2環状空間66、第3環状空間77及び第4環状空間78を径方向に貫通する磁路を形成し、第1環状空間65、第2環状空間66、第3環状空間77及び第4環状空間78に充填されたMR流体5に磁場を印加する。
【0139】
MR流体5は、上述のような磁場が印加されると、分散粒子が磁気分極することにより鎖状構造を形成し、見かけ上の粘度(降伏せん断力)が高まって半固体状となる。そして、第1静止側周面24と第1回転側周面59との間、第3静止側周面39と第2回転側周面60との間、第4静止側周面40と第3回転側周面70との間、第2静止側周面31と第4回転側周面71との間に、粒子の鎖状構造(コラム構造)を形成する。この結果、回転部材4に対して、MR流体5の鎖状構造をせん断することに対する回転抵抗(トルク)が付与される。
【0140】
また、回転抵抗の大きさは、電磁コイル2に流れる電流の大きさを変化させることで調整できる。したがって、回転部材4に付与する抵抗の大きさを微調整することが可能になる。また、電磁コイル2に通電することで、回転部材4に回転抵抗を付与できるため、優れた応答性及び制御性を有する。さらに、回転抵抗を付与するのに摩耗粉を発生させずに済む。
【0141】
回転抵抗を解除するには、電磁コイル2への通電を中止(ストップ)する。これにより、MR流体5は、見かけ上の粘度が下がり液体状に戻るため、回転部材4に付与される抵抗は十分に低くなる。
【0142】
本例では、MR流体5を充填した第1~第4環状空間65、66、77、78のそれぞれを、軸方向に関して電磁コイル2の側方に配置している。このため、電磁コイル2に通電した際に、電磁コイル2の周囲に形成される磁路が、第1~第4環状空間65、66、77、78のそれぞれを直交するように横切りやすくなる。したがって、電磁コイル2に大きな電流を流さなくても、MR流体5の見かけ上の粘度を十分に上昇させることができる。この結果、本例の回転抵抗発生装置1によれば、所定の回転抵抗を発生させるのに必要な消費電力を抑制でき、回転抵抗の発生効率の向上を図ることができる。
【0143】
また、本例では、それぞれが円筒状の微小隙間である第1~第4環状空間65、66、77、78を、軸方向に関して電磁コイル2の側方に配置しているため、前述した特開2017-116013号公報に記載された従来構造のように、電磁コイルと、回転ディスク及び静止ディスクとを、径方向に重なるように配置した場合に比べて、回転抵抗発生装置1の径方向幅寸法の小型化を図ることができる。
【0144】
さらに本例では、第1~第4環状空間65、66、77、78のそれぞれを、軸方向に関して電磁コイル2と重なる位置に配置している。これにより、電磁コイル2の周囲に形成される磁路が、第1~第4環状空間65、66、77、78のそれぞれを直交するように横切るため、回転抵抗の発生効率の向上を図れる。また、回転抵抗発生装置1の径方向幅寸法の小型化も図れる。
【0145】
また、本例では、第1~第4環状空間65、66、77、78といった4つの環状空間を備えているため、電磁コイル2に通電した際に、第1~第4環状空間65、66、77、78のそれぞれに充填されたMR流体5の見かけ上の粘度を同時に変化させることができる。したがって、環状空間を1つだけ備える場合に比べて、回転抵抗発生装置1の回転抵抗の発生効率を向上できる。
【0146】
特に本例の回転抵抗発生装置1によれば、磁束漏れを抑制でき、回転抵抗の発生効率の向上を図れる。
すなわち、本例では、電磁コイル2の側面と第1、第2挿入筒部57、68の端面との間の軸方向位置に、静止環状体14を静止部材本体13に対し支持する機能を備えた非磁性材製の磁束漏れ抑制部材6を配置している。このため、静止部材本体13を構成する本体主体17の内径側筒部22から静止環状体14の筒状部37へと磁束が漏洩(短絡)するのを抑制できる。これにより、制動トルクの発生に寄与しない部分を流れる磁束量を減らすことができるため、制動トルクの発生に寄与する部分である第1~第4環状空間65、66、77、78を径方向に横切る磁束を十分に確保することができる。この結果、本例の回転抵抗発生装置1によれば、回転抵抗の発生効率の向上を図れる。
【0147】
本例では、電磁コイル2の側面と第1、第2挿入筒部57、68の端面との間の軸方向位置に、静止環状体14を構成する磁性金属製の係合爪38が配置されるが、係合爪38は、円周方向に連続していないため、係合爪38の径方向内側の端面と内径側筒部22の外周面との接触面積は十分に小さくなる。このため、内径側筒部22から係合爪38を経由して筒状部37へと漏洩する磁束を十分に少なくできる。したがって、第1~第4環状空間65、66、77、78を径方向に横切る磁束を十分に確保でき、回転抵抗の発生効率の向上を図れる。
【0148】
さらに本例では、第1回転環状体49を構成する第1連結部58に第1透孔62を形成するとともに、第2回転環状体50を構成する第2連結部69に第2透孔74を形成しているため、第1連結部58及び第2連結部69のそれぞれの軸方向側面とMR流体5との接触面積を減らすことができる。このため、前記磁気回路から第1連結部58及び第2連結部69へと漏洩する磁束を減らすことができる。したがって、この面からも、第1~第4環状空間65、66、77、78を径方向に横切る磁束を確保できる。
【0149】
また、第1透孔62及び第2透孔74をそれぞれ形成することで、第1連結部58及び第2連結部69のそれぞれとMR流体5との接触面積(せん断面積)を減らすことができる。このため、電磁コイル2に通電していない無負荷時における回転部材4の回転トルクを小さくすることもできる。
【0150】
また、回転部材4に、第1透孔62及び第2透孔74をそれぞれ形成しているため、回転部材4の軽量化を図ることもできる。このため、回転抵抗発生装置1に関して、応答性の向上を図れるとともに装置全体の軽量化を図れる。
【0151】
また、第1連結部58に第1透孔62を形成することで、円周方向に隣り合う第1透孔62同士の間に、放射方向に伸長する第1柱部63を形成しているため、第1連結部58に第1透孔62を形成した場合にも、第1連結部58の径方向に関する剛性を十分に確保できる。同様に、第2連結部69に第2透孔74を形成することで、円周方向に隣り合う第2透孔74同士の間に、放射方向に伸長する第2柱部75を形成しているため、第2連結部69に第2透孔74を形成した場合にも、第2連結部69の径方向に関する剛性を十分に確保できる。
【0152】
さらに、第1柱部63の径方向外側の端部に1対の第1リブ64を設けているため、第1柱部63と第1挿入筒部57との接続部の強度を十分に確保できる。同様に、第2柱部75の径方向外側の端部に1対の第2リブ76を設けているため、第2柱部75と第2挿入筒部68との接続部の強度を十分に確保できる。したがって、第1挿入筒部57及び第2挿入筒部68のそれぞれの円筒度を確保でき、回転抵抗発生装置1の作動を安定させることができる。
【0153】
コイルボビン9の側板部10aは、コイル本体8の通電による熱膨張に起因して、軸方向一方側に変位する傾向となる。本例では、側板部10aの軸方向一方側に隣接配置された静止環状体14を、静止部材本体13に固定せずに、磁束漏れ抑制部材6を利用して、静止部材本体13に対し軸方向の相対変位を可能に支持しているため、静止環状体14の存在によって、側板部10aの軸方向一方側への変位が阻止されずに済む。つまり、静止環状体14を静止部材本体13に対し軸方向の相対変位を可能に支持することで、電磁コイル2と静止環状体14との間の熱膨張差を吸収できる。したがって、電磁コイル2の内部応力の上昇を抑え、電磁コイル2の破損を防止することができる。
【0154】
特に本例では、本体副体18に取り付けた付勢部材であるプランジャ47により、静止環状体14を軸方向他方側に向けて押圧し、静止環状体14の係合爪38の軸方向他方側の側面を、コイルボビン9の側板部10aの軸方向一方側の側面に押し付けている。このため、電磁コイル2に熱膨張が生じた場合には、プランジャ47のホルダ内のばねを撓ませて、側板部10aの軸方向一方側への変位を許容する。
【0155】
また、付勢部材であるプランジャ47を利用して、静止環状体14の係合爪38の軸方向他方側の側面を、コイルボビン9の側板部10aの軸方向一方側の側面に押し付けているため、静止環状体14の姿勢を安定させることができる。つまり、静止環状体14の中心軸が、静止部材本体13の中心軸に対して傾くことを防止できる。また、静止環状体14の軸方向位置を安定させることができる。
【0156】
また、本例では、静止環状体14の係合爪38を、磁束漏れ抑制部材6の軸方向他方側の側面に備えられた係合凹部45に対して、円周方向の相対変位を不能に係合させているため、電磁コイル2に通電した際に、静止環状体14の筒状部37に作用するトルクを、磁束漏れ抑制部材6を介して静止部材本体13により支承することができる。
【0157】
また、静止環状体14の係合爪38を、磁束漏れ抑制部材6の軸方向他方側の側面に備えられた係合凹部45に係合させているため、軸方向寸法を大型化することなく、静止環状体14と磁束漏れ抑制部材6との円周方向の相対変位を防止できる。
【0158】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、発明の技術思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0159】
本発明の回転抵抗発生装置は、例えば、MRダンパやMRブレーキとして利用できる。また、本発明の回転抵抗発生装置は、例えば、イナータやトルクリミッタなどの各種機械装置に組み込んで使用することもできる。
【0160】
また、本発明の回転抵抗発生装置は、静止部材に静止環状体を2個以上(N個)備えさせることもできる。静止部材が、静止環状体を2個以上(N個)備える場合には、回転部材に、回転環状体を静止環状体よりも1個だけ多く(N+1個)備えさせることができる。例えば、静止部材が、静止環状体を2個備える場合には、回転部材は、回転環状体を3個備えることができ、静止環状体を3個備える場合には、回転環状体を4個備えることができる。このように静止環状体及び回転環状体の数を増やすことで、環状空間の数を増やすことができるため、回転抵抗の発生効率の向上を図る面で有利になる。
【0161】
また、本発明の回転抵抗発生装置を実施する場合には、磁束漏れ抑制部材の外周面に、径方向外側に向けて突出する複数の係合爪を形成し、かつ、静止環状体を構成する筒状体の内周面に、径方向外側に向けて凹んだ複数の係合凹部を形成することができる。そして、係合爪と係合凹部とを、軸方向の相対変位を可能にかつ円周方向の相対変位を不能に係合させることができる。
【符号の説明】
【0162】
1 回転抵抗発生装置
2 電磁コイル
3 静止部材
4 回転部材
5 MR流体
6 磁束漏れ抑制部材
7 挿通孔
8 コイル本体
9 コイルボビン
10a、10b 側板部
11 底筒部
12 鍔部
13 静止部材本体
14 静止環状体
15 静止補助体
16 不連続部
17 本体主体
18 本体副体
19 ボルト
20 コイル収容空間
21 外径側筒部
22 内径側筒部
23 側壁部
24 第1静止側周面
25 連通孔
26 ベローズ
27 第1雌ねじ孔
28 第2雌ねじ孔
29a、29b、29c Oリング
30 第3雌ねじ孔
31 第2静止側周面
32 張出部
33 通孔
34 取付孔
35 支持孔
36 環状隙間
37 筒状部
38 係合爪
39 第3静止側周面
40 第4静止側周面
41 小径部
42 中間組立体
43 挿入孔
44 ピン
45 係合凹部
46 貫通孔
47 プランジャ
48 回転部材本体
49 第1回転環状体
50 第2回転環状体
51 大径筒部
52 小径筒部
53 転がり軸受
54 第1シール装置
55 第2シール装置
56 ボルト
57 第1挿入筒部
58 第1連結部
59 第1回転側周面
60 第2回転側周面
61 第1ボルト挿通孔
62 第1透孔
63 第1柱部
64 第1リブ
65 第1環状空間
66 第2環状空間
67 側方空間
68 第2挿入筒部
69 第2連結部
70 第3回転側周面
71 第4回転側周面
72 第2ボルト挿通孔
73 雌ねじ孔
74 第2透孔
75 第2柱部
76 第2リブ
77 第3環状空間
78 第4環状空間
79 収容空間
80 連結部材
81 抜け止め部材
82 ボルト
100 回転抵抗発生装置
101 電磁コイル
102 静止部材
103 回転部材
104 MR流体
105 静止部材本体
106 静止筒
107 不連続部
108 支持環
109a、109b 挿入筒部
110a~110d 環状空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15