(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113264
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/29 20180101AFI20240815BHJP
F21V 17/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
F21S41/29
F21V17/00 154
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018119
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 貴丈
(72)【発明者】
【氏名】薦田 良
(72)【発明者】
【氏名】奥村 亜耶
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆一
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 葵
【テーマコード(参考)】
3K011
【Fターム(参考)】
3K011BA02
3K011EL03
(57)【要約】
【課題】本発明は、被係合部材が係合する係合部を有するランプボディを有し、軽量化を図ることができる車両用灯具を提供することを目的とする。
【解決手段】前面開口部を有する容器状のランプボディと、前記ランプボディの前記前面開口部に組付けられて、内側に灯室を画成する前面カバーと、を備え、前記ランプボディは、被係合部材を係合する係合部を有し、前記係合部の少なくとも一部は前記ランプボディの壁面の一部を構成するように車両用灯具を提供する。前記係合部であるランプボディが弾性変形することで、前記係合部は前記被係合部材を係合し、ネジなどの係合部材なしに被係合部材はランプボディに直接係合される。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面開口部を有する容器状のランプボディと、前記ランプボディの前記前面開口部に組付けられて、内側に灯室を画成する前面カバーと、を備え、
前記ランプボディは、被係合部材を係合する係合部を有し、
前記係合部の少なくとも一部は前記ランプボディの壁面の一部を構成する、
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記係合部を構成する前記ランプボディの少なくとも一部が弾性変形することで、前記係合部は前記被係合部材を係合する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記係合部には、前記被係合部材に向かって膨らむ膨張部が設けられている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記係合部に設けられたランスが、前記被係合部材に掛り、前記被係合部材を抜け止め固定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記ランプボディの前記被係合部材が当接する当接面には、突起が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、被係合部材が係合する係合部が設けられたランプボディを備える車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
ランプボディには、被係合部材が係合する係合部が設けられているものがある。例えば、特許文献1では、ランプボディに設けられたランス構造の係合部により、前面カバーが前記ランプボディに抜け止め固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、カーボンニュートラルの観念から、軽量化を図ることができる車両用灯具が望まれている。
【0005】
本発明は、これを鑑みてなされたものであり、被係合部材が係合する係合部を有するランプボディを有し、軽量化を図ることができる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するため、本発明の第1の態様の車両用灯具は、前面開口部を有する容器状のランプボディと、前記ランプボディの前記前面開口部に組付けられて、内側に灯室を画成する前面カバーと、を備え、前記ランプボディは、被係合部材を係合する係合部を有し、前記係合部の少なくとも一部は前記ランプボディの壁面の一部を構成するように構成した。
【0007】
この態様によれば、係合部が係合時にランプボディの壁面に直接係合でき、係合部品を用いる必要がなく、車両用灯具の軽量化を図ることができる。
【0008】
第2の態様の車両用灯具は、第1の態様において、前記係合部は、前記ランプボディの一部が弾性変形することで、前記係合部は前記被係合部材を係合するように構成した。この態様によれば、ランプボディが変形することで係合させることができるため、固定部材が不要で、灯室内の空間を有効に活用でき、車両用灯具を小型化でき、軽量化を図ることができる。
【0009】
第3の態様の車両用灯具では、第1または第2の態様において、前記係合部には前記被係合部材に向かって膨らむ膨出部が設けられているように構成した。この態様によれば、膨出部が被係合部材への当て部となり、被係合部材の押し返す力により係合が強固となる。
【0010】
第4の態様の車両用灯具では、第1~3のいずれかの態様において、前記係合部に設けられたランスが、前記被係合部材に掛り、前記被係合部材を抜け止め固定するように構成した。この態様によれば、被係合部材が強固にランプボディに直接固定される。
【0011】
第5の車両用灯具では、第1~4のいずれかの態様において、前記ランプボディの前記被係合部材が当接する当接面には、突起が設けられているように構成した。突起を被係合部材が押し返す力により係合が強固となる。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、被係合部材が係合する係合部を有するランプボディを有し、軽量化を図ることができる車両用灯具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用灯具1の概略正面図である。
【
図2】同車両用灯具1のランプボディ2の概略正面図である。
【
図3】
図2のランプボディ2の端面図である。
図3(A)は
図2のA-A線に沿った端面図である。
図3(B)は、
図2のB-B線に沿った端面図である。
図3(C)は、
図2のC-C線に沿った端面図である。
図3(D)は、
図2のD-D線に沿った端面図である。
【
図4】
図2のランプボディに形成されるトラス構造を説明する図である。
【
図5】
図2に示すH部の正面図である。
図5(A)はランプボディ2のみであり、被係合部材が係合していない状態(係合前)を示す。
図5(B)は、ランプボディ2に被係合部材が係合した状態(係合後)を示す。
【
図6】
図2に示すH部のランプボディ2を示す。
図7(A)はH部の正面斜視図である。
図7(B)はH部の背面斜視図である。
【
図8】
図8(A)は、
図5(A)に示すH-H線に沿った端面図である。
図8(B)は、
図5(A)に示すG-G線に沿った端面図である。
【
図9】
図5(A)に示すJ-J線に沿った端面図であり、被係合部材99がランプボディ2に係合する過程を示す。
【
図10】
図5(A)に示すJ-J線に沿った端面図であり、被係合部材99がランプボディ2に係合する別の過程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。また、以下の実施形態および変形例の説明において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0015】
(車両用灯具)
図1は、本発明の好適な実施形態に係る車両用灯具1の概略正面図である。車両用灯具1は車両の前方の左右の角部に装着される前照灯である。
図1に示すように、車両用灯具1は、前面開口部2´を有する容器状のランプボディ2と、ランプボディ2の前面開口部2´に組付けられる前面カバー4とを備える。前面カバー4は例えばポリカーボネイトなどの透光性を有する樹脂やガラスなどで構成され、前面カバー4がランプボディ2の前面開口部2´に取付けられることで、内側に灯室Sが画成される。
【0016】
画成された灯室S内には、ハイビーム用のランプユニットHiおよびロービーム用のランプユニットLoが収容される。ハイビーム用のランプユニットHiおよびロービーム用のランプユニットLoは、光源から出射した光を車両前方に照射して、ハイビーム配光/ロービーム配光を形成するよう構成された光学ユニットである。各ランプユニット(Hi,Lo)には、従来周知の構成、例えば反射型、プロジェクタ型などのランプユニットを用いてよく、その種類は問わない。
【0017】
(ランプボディの全体形状)
ランプボディ2の形状について詳しく説明する。
図2はランプボディ2の概略正面図である。
【0018】
ランプボディ2は、硬質の合成樹脂材料を用いて射出成形により成形される。ランプボディ2の前面開口部2´の周縁には、前面カバー4の周縁に設けられたシール脚と係合するためのシール溝3が周設されている。ランプボディ2の前面開口部2´の周縁部外表面には、車両用灯具1が車体に取付けられるための車体取付部5が、車体側の取付部の形状に対応させて突設されている。車体取付部5は、ランプボディ2の外表面に、上方に三箇所、左方に二箇所、合計五箇所に設けられている。
【0019】
ランプボディ2は、構成面として、背面壁6、天井面7、底面8、左右の側面9,9を有し、背面壁6が後方に膨らみ、隣接する天井面7、底面8、および側面9,9と稜線を介して曲線的に連続して接続されている。また、天井面7、底面8、および側面9,9は基本としてランプボディ2の外側に向かって緩やかに膨らむ凸状の湾曲形状となっており、互いの縁部で緩やかに湾曲して、屈曲部や段差なく連続して連結されている。このため、ランプボディ2は全体として丸みを帯びた容器状に形成されている。
【0020】
底面8は、背面壁6の下方縁部から前方に向かって延出して形成され、ランプボディ2の前面開口部2´の縁部に設けられたシール溝3に接続する。側面9,9は、背面壁6の左右の縁部からそれぞれの側方かつやや前方に向かって延出して形成され、シール溝3に接続する。天井面7は、延出量が小さく、シール溝3の縁部から緩やかに後方下方に向かって湾曲しながら延在して背面壁6と接続し、背面壁6と略一体的に形成されている。
【0021】
このため、背面壁6、天井面7、底面8、および側面9,9は、主として平面ではなく曲率半径の大きな湾曲面で構成され、かつ、ランプボディ2は全体として、背面壁6を底部とみる容器状に形成され、背面壁6、天井面7、底面8、および側面9,9のそれぞれが、互いに曲面同士が滑らかに連続した容器面を形成している。
【0022】
ランプボディ2には、第1ユニット取付用孔31、第2ユニット取付用孔32、および第3ユニット取付用孔33が形成されている。第1ユニット取付用孔31は、ロービーム用のランプユニットLoを装着するための孔で、背面壁6の左上方に形成されている。第2ユニット取付用孔32は、バックカバー(図示せず)を取付けるための孔で、背面壁6の右上方に形成されている。第3ユニット取付用孔33は、ランプユニット(Hi,Lo)の点灯を制御するライトドライバモジュール(図示せず)を取付けるための孔で、背面壁6の下部略中央に形成されている。
【0023】
また、ランプボディ2には、第1エイミング部材取付用孔41、第2エイミング部材取付用孔42、および第3エイミング部材取付用孔43が、第3ユニット取付用孔33の回りに形成されている。各エイミング部材取付用孔41,42,43には、従来周知の構成のエイミング部材(図示略)が取付けられる。
【0024】
第1エイミング部材取付用孔41は、第1ユニット取付用孔31および第3ユニット取付用孔33の間に配置されるように、背面壁6の下縁部に設けられている。第2エイミング部材取付用孔42は、第3ユニット取付用孔33から第1エイミング部材取付用孔41までの距離と略等距離だけ、第1エイミング部材取付用孔41と反対方向にオフセットされるように、背面壁6の右方の下縁部に設けられている。第3エイミング部材取付用孔43は、第2エイミング部材取付用孔42の略鉛直上方に配置されるように、背面壁6の右方の上端部に設けられている。
【0025】
(背面壁と梁)
背面壁6には、該背面壁6の一部を構成する、第1梁61、第2梁62、第3梁63、および第4梁64が、背面壁6の上端部から下端部に亘り延在している。ここで、背面壁6の梁61~64の構成部分以外の部分を背面壁本体69と称する。
【0026】
第1梁61は、背面壁6の左下方の第1エイミング部材取付用孔41から、背面壁6の上端部まで、上方の右方に向かって延在している。このため、第1梁61は、正面視して、右方に傾いて形成されている。
【0027】
第2梁62は、背面壁6の右下方の第2エイミング部材取付用孔42から、背面壁6の上端部まで、上方の左上に向かって延在している。このため、第2梁62は、正面視して、左方に傾いて形成されている。
【0028】
第3梁63は、背面壁6の右下方の第2エイミング部材取付用孔42と、上方の第3エイミング部材取付用孔43を端点として、両者を結ぶように延在している。このため、第3梁63は、正面視しておおむね上方に向かって、まっすぐに背面壁6の上端部まで延在している。
【0029】
第4梁64は、背面壁6の右下方の第2エイミング部材取付用孔42と、上方の第2ユニット取付用孔32を端点として、両者を結ぶようにして延在している。このため、第4梁64は、正面視して、右方に傾いて形成されている。
【0030】
図3は、
図2に示す切断線に沿った、各梁61~64の端面図である。
図3(A)は
図2のA-A線に沿った端面図であり、主として第1梁61の断面形状を示す。
図3(B)は、
図2のB-B線に沿った端面図であり、主として第2梁62の断面形状を示す。
図3(C)は、
図2のC-C線に沿った端面図であり、主として第3梁63の断面形状を示す。
図3(D)は、
図2のD-D線に沿った端面図であり、主として第4梁64の断面形状を示す。
【0031】
図3(A)~
図3(D)に示すように、各梁61~64は、その延在方向に直行した横断面形状が、それぞれの曲率半径や幅、および突出量は異なるものの、全て略円弧状に構成される。各梁61~梁64の湾曲面の突出方向は、灯室Sの方向(前方)または灯室Sの外方向(後方)のどちらに形成されていてもよく、本実施形態では、各梁は61~64は、灯室Sの方向(前方)に向かって湾曲する梁として形成されている。背面壁本体69とは稜線を介して滑らかに接続されており、ランプボディ2の該当断面形状は、一定の肉厚を保ったまま、屈曲部なく連続して構成されている。
【0032】
図4は、ランプボディ2の正面図であり、各梁61~64を薄墨で示している。
図4に示すように、各梁61~64は、背面壁6の上端部から下端部まで延在し、かつある梁の端部から他の梁が斜めに延出するなど、三角形を単位としたトラス構造となっている。ここで、肉厚に構成されるシール溝3はトラス構造に組込まれる。このため、背面壁6を含むランプボディ2は、荷重に対して変形しにくい構造となっている。また、梁61~64自体が応力を分散させる横断面略円弧状の湾曲面であることから、より変形に強い剛性の高い構造となっている。
【0033】
このため、本実施形態のランプボディ2は、このようなトラス構造を有さないランプボディに比して、剛性の高い構造となっている。ランプボディ2の剛性の向上により、ランプボディ2は、従来のランプボディよりも薄肉で、かつ従来のランプボディと同等の剛性を備えている。
【0034】
(係合構造)
灯室S内に配置される被係合部材99は、ランプボディ2に設けられた係合構造により、ランプボディ2に直接係合される。ランプボディ2に設けられた係合構造について詳しく説明する。
【0035】
図5~
図8は、
図2に示すH部である。被係合部材99はランプボディ2のH部に係合される。
図5は、
図2に示すH部の正面図である。
図5(A)はランプボディ2のみであり、被係合部材99が係合していない状態(係合前)を示す。
図6(A)はH部のランプボディ2の正面斜視図である。
図6(B)はH部のランプボディ2の背面斜視図である。
図7は、H部の分解斜視図である。
図8(A)は、
図5(A)に示すH-H線に沿った端面図である。
図8(B)は、
図5(A)に示すJ-J線に沿った端面図である。
【0036】
ランプボディ2に係合される被係合部材99は、除湿ユニットであり、灯室S内の湿気を灯室S外に排出する機能を有する。被係合部材99はこれに限られず、レベリングアクチュエータやドライバ回路など、灯室S内に配置される部品であればよく、その形状や大きさは限定されない。
【0037】
図7に示すように、被係合部材99は、被係合部材本体90およびカバー80で構成される。被係合部材本体90は、略直方体の外形を有し、上面に二つ、底面に一つ、合計三つの突起が、カバー被係合部96として形成されている。
【0038】
カバー80は平板状に構成され、被係合部材本体90の背面を蓋のように覆い、被係合部材本体90に固定される。カバー80の上縁部および下端部には、カバー被係合部96に対応するカバー係合部86が設けられており、カバー係合部86がカバー被係合部96に係合することで、被係合部材本体90とカバー80が一体化して被係合部材99と成る。カバー80と被係合部材本体90の係合は、凹凸係合やランス係合など従来の係合構造を用いてよく、特に限定はされない。ネジなどの固定部材を用いてカバー80を被係合部材本体90に締結してもよい。
【0039】
カバー80の上縁部と下端部にはさらに、前方に向かって水平に突出する平板状の雌型係合部81~83が形成されている。雌型係合部81~83の中央部には、係合孔81a~83aが形成されている。
【0040】
第1雌型係合部81は、カバー80の上縁部中央に、二つのカバー係合部86の間に設けられる。第2雌型係合部82および第3雌型係合部83が、カバー80の下縁部に、カバー係合部86を挟んで設けられ、雌型係合部81~83は三つのカバー係合部86とは互い違いに配置される。
【0041】
カバー80が被係合部材本体90に係合して一体化すると、カバー80に設けられた雌型係合部81~83が、被係合部材99の上面および下面に配置される。カバー80を用いず、被係合部材本体90の上面および下面に、直接に雌型係合部81~83を設けてもよい。
【0042】
ランプボディ2に設けられた係合構造について説明する。主として湾曲面で構成される背面壁6の一部領域には、被係合部材99が係合した際に当接する鉛直平面部74が形成されている。
【0043】
鉛直平面部74は、略直方体の被係合部材99の当接面(背面)に対応して、略矩形に形成される。鉛直平面部74は、上辺74a、下辺74b、左辺74c、右辺74dの側辺を有する。
【0044】
背面壁6は、鉛直平面部74の左辺74c、右辺74dから背面側(後方)に屈曲しており、鉛直平面部74の下辺74bから前方に略直角に屈曲している。このため、鉛直平面部74の下端から連続して水平部78が形成されている。背面壁6は水平部78の前端でさらに下方に屈曲しており、水平部78は階段状に形成された背面壁6の水平面として構成される。
【0045】
被係合部材99が係合されると、水平部78に被係合部材99の一部が載置される。
【0046】
水平部78の表面には、突起(ランス)であり、上方に突出する第2雄型係合部72および第3雄型係合部73が形成されている。
【0047】
さらに、上辺74aから前方に突出して、第1雄型係合部71が形成されている。第1雄型係合部71の、被係合部材99に接触する底面部71cの表面には、下方に向かって突出するランス71aが形成されている。
【0048】
第1雄型係合部71、第2雄型係合部72、および第3雄型係合部73は、それぞれ第1雌型係合部81、第2雌型係合部82、および第3雌型係合部83に対応して形成されている。被係合部材99の背面が鉛直平面部74に当接して配置され、雌型係合部81~83がそれぞれ雄型係合部71~73に係合することで、ボルトやネジなどの固定部材など無しに、被係合部材99がランプボディ2の背面壁6に直接固定される。
【0049】
雌型係合部81~83と雄型係合部71~73の係合は、いわゆるランス係合である。ランス係合とは、係合部同士の係合過程において、雌型係合部または雄型係合部に一時的に係合抵抗を生じさせ、これに打ち勝って通過したときには、係合抵抗の緩和により、作業者に節度感(クリック感)を与え、また、通過時の勢いによって両係合部が係合状態に至る構成となっている。雄型係合部の通過部の一部は返し形状(ランス)となっており、いったん雄型係合部が雌型係合部に係合すると、ランスが雌型係合部に掛り、係合が外れることを抑制し、係合状態が維持される。
【0050】
第1雄型係合部71は中空であり、背面壁6の一部で形成されている。すなわち、
図8(A)に示すように、背面壁6には、前方に突出して第1雄型係合部71が形成されているが、これは、鉛直平面部74の上辺74aから連続する背面壁6が、いったん前方に屈曲したのち、上方に屈曲し、さらに後方に折り返して屈曲することにより、第1雄型係合部71が形成される。このため、第1雄型係合部71は、背面壁6の一部を構成して、中空に構成される。
【0051】
同様に、鉛直平面部74の下辺74bで屈曲して形成されてる水平部78も、背面壁6の一部を構成している。すなわち、鉛直平面部74、水平部78、および第1雄型係合部71は全て背面壁6の一部を構成して連続している。鉛直平面部74、水平部78、および第1雄型係合部71により形成される空間S2に、被係合部材99が嵌り込み収容される。
【0052】
(作用効果)
本構成の作用効果を、
図9を用いて説明する。
図9は、
図5(A)に示すJ-J線に沿った端面図であり、被係合部材99がランプボディ2に係合する過程を示す。
【0053】
上述したように、雌型係合部81~83と雄型係合部71~73の係合はランス係合であり、雌型係合部81~83と雄型係合部71~73のいずれかもしくは両方が、係合抵抗に対して弾性変形することで、係合抵抗に打ち勝ってランスが通過して、係合状態に至る。
【0054】
被係合部材99を背面壁6に係合するとき、まず水平部78の第2雄型係合部72および第3雄型係合部73に、被係合部材99の底面に設けられた第2雌型係合部82および第3雌型係合部83を、斜め上から嵌めるようにして第2係合孔72aおよび第3係合孔73aに引っ掛けて係合させる(
図9(A)参照)。次に、この係合した二点を支点として被係合部材99を回転させるようにして、被係合部材99を背面にある鉛直平面部74に向かって押し付ける。後方に移動しようとする被係合部材99に押し上げられて、第1雄型係合部71が上方に開くように弾性変形する(
図9(A)中の白色矢印参照)。これにより空間S2が広げられ、空間S2に向かって突出するランス71aが第1雌型係合部81を乗り越えて第1係合孔81aに嵌り、係合状態となる(
図9(B)参照)。第1雄型係合部71の弾性変形は負荷のない元の状態に戻り、被係合部材99が背面壁6に抜け止め固定される。
【0055】
このように、少なくとも係合部を構成するランプボディ2の一部や係合部近傍のランプボディ2が弾性変形することで、被係合部材99がランプボディ2に係合される。ボルトやネジなどの固定部材が不要で、ランプボディ2に設けられた係合部に、被係合部材99を直接にかつ容易に係合できる。
【0056】
係合のためのランプボディ2の弾性変形は、ランプボディ2の形状にて達成してもよく、ランプボディ2の薄肉化により達成してもよい。係合させたい箇所を薄肉化することで、ランプボディ2が弾性変形しやすくなり、ランプボディ2に設けた係合部で被係合部材99をランプボディ2に直接係合することができる。
【0057】
第1雄型係合部71のように、係合部をランプボディ2で構成される中空の突出部とすると、係合部自体がランプボディ2を構成しつつ、かつ弾性変形しやすく好ましい。突出する中空状の第1雄型係合部71は必須ではなく、例えば、水平部78と同様に、第1雄型係合部71も階段状に構成されてもよい。この場合、空間S2は、背面壁6から背面へ凹む窪み部として構成され、窪みを構成する構成面にランスが形成される。
【0058】
本実施形態のランプボディ2は、主として湾曲面で構成することで、剛性を高めており、従来と同程度の剛性を確保しながら、従来よりも薄肉化されており、弾性変形しやすく、かつ変形負荷に耐性がある。係合時には係合部を中心として、ランプボディ2全体が弾性変形するため、負荷が全体に分散され、変形しても破壊されにくい。係合時にランプボディ2の少なくとも一部が弾性変形して係合状態となる本係合構造に好適である。
【0059】
ランプボディ2全体が弾性変形する必要はなく、係合に必要な一部領域だけが弾性変形する構成でよい。係合時の、ランプボディ2が弾性変形する領域が広いと、弾性変形による負荷がその分だけ分散されて、係合負荷による係合部の破断が抑制されるため好ましい。
【0060】
第1雄型係合部71を含む係合部を中心として、係合部全体の広範囲で変形することで、被係合部材99を係合させてもよい。この場合の係合過程を、
図10を用いて説明する。
【0061】
図10は、
図5(A)に示すJ-J線に沿った端面図であり、被係合部材99がランプボディ2に係合する別の過程を示す。
【0062】
まず水平部78と第1雄型係合部71とに挟まれる空間S2に被係合部材99を配置する(
図10(A)参照)。つぎに、被係合部材99を空間S2に押し込むようにして背面方向へ移動させる(
図10(B)参照)。空間S2に入り込もうとする被係合部材99によって、ランス71aが設けられた第1雄型係合部71、および第2雄型係合部72および第3雄型係合部73の設けられた水平部78が、空間S2を広げるように上下に開く(
図10(B)中の白色矢印を参照)。背面壁6の変形により空間S2が広がり、空間S2に向かって突出するランス71a、第2雄型係合部72および第3雄型係合部73が、雌型係合部81~83が乗り越えて係合孔81a~83aに嵌り、係合状態となる(
図10(C)参照)。弾性変形した第1雄型係合部71および水平部78は、負荷や変形の無い元の状態に戻り、第1雄型係合部71および水平部78に設けられたランス71a、第2雄型係合部72および第3雄型係合部73が被係合部材99を抜け止め固定する。
【0063】
この係合過程では、第2雄型係合部72および第3雄型係合部73が設けられた水平部78が弾性変形し、第2雌型係合部82および第3雌型係合部83に係合する。このため、水平部78も係合部の一部に含まれる。鉛直平面部74も反り、係合達成のために弾性変形し、空間S2の設けられた領域周辺のランプボディ2が全体的に変形して、係合を達成させる。
【0064】
図7に示すように、被係合部材99は、除湿ユニットであることから、カバー80には、放湿口となるカバー開口部85が設けられている。ランプボディ2の鉛直平面部74にも、カバー開口部85に対応してランプボディ開口部75が設けられるとともに、ランプボディ開口部75を覆うフィルタFIが設けられている(
図6(B)参照および
図8(A)参照)。
図8(A)に示すように、被係合部材99が係合されると、両開口部は連通する。
【0065】
被係合部材99は除湿ユニットに限られないため、両開口部は必須ではないが、このように除湿ユニットがランプボディ2に直接固定されることで、除湿ユニットの放湿口からランプボディの放湿口までのエアダクトを設置する必要がなくなり、車両用灯具1の小型化、および軽量化を図ることができる。同様にして被係合部材99からランプボディ2の開口部を通過して灯室S外に取り出される部品や、例えばコネクタ口やケーブルが、係合状態でランプボディ2の開口部から露出するように被係合部材99が配置されると、灯室Sの省スペースとなり、車両用灯具1の小型化および軽量化を図ることができ、好ましい。
【0066】
図9に示すように、鉛直平面部74の表面には、突起76が設けられている。突起76は、空間S2に向かって突出しており、配置される被係合部材99の当て部となっている。すなわち、突出する突起76が、係合する被係合部材99の背面に押圧し、これに反抗する力で係合を強固なものとしている。突起76は、鉛直平面部74に三か所設けられているが、数や設ける場所はこれに限定されない。同効果を得るため、被係合部材99の当接面(背面)に突起を設けてもよい。
【0067】
同様に、
図5に示すように、第1雄型係合部71の底面部71cには空間S2に向かって膨らむ第1膨張部71bが設けられている。水平部78の中央にも、空間S2に向かって膨らむ第2膨張部78aが設けられている。第1膨張部71bおよび第2膨張部78aは、被係合部材99の配置を案内するとともに、被係合部材99を押圧して、各係合部の係合を強固にしている。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施の形態について述べたが、上記の実施の形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1 :車両用灯具
2 :ランプボディ
2´ :前面開口部
4 :前面カバー
6 :背面壁
71~73 :雄型係合部(係合部)
71a :ランス
76 :突起
78 :水平部
78a :膨張部
81~83 :雌型係合部
99 :被係合部材
S :灯室