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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113265
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】薬液投与装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20240815BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
A61M5/20 510
A61M5/20 500
A61M5/315 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018120
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】沖原 等
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD13
4C066EE14
4C066FF05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】未使用の保管時及び使用後の廃棄時にかさばることが抑制され、保管場所及び廃棄場所の省スペース化が可能な薬液投与装置を提供する。
【解決手段】薬液投与装置10は、中空筒状に形成される筐体12と、筐体12に対して筐体12の軸線方向に沿って相対移動可能に設けられる伸縮部24とを備える。伸縮部24は、筐体12に対して第1位置に位置する収縮状態と、筐体12に対して第1位置よりも基端側の第2位置に位置する伸長状態とを切替可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空筒状に形成される筐体と、
前記筐体内に収容され薬液の充填されるバレル及び該バレルと連通して生体内に前記薬液を投与する穿刺針を有したシリンジと、
前記筐体の内部に設けられ前記穿刺針の少なくとも先端側を覆うと共に穿刺対象に対して押し付けられることで前記筐体に対して基端方向に相対変位する中空筒状の針カバーと、
前記筐体の内部に設けらればねの弾発作用下に先端が前記バレルの内部へと移動することで前記薬液を前記穿刺針から吐出させるプランジャと、
を備える薬液投与装置であって、
前記筐体に対して前記筐体の軸線方向に沿って相対移動可能に設けられ、前記筐体に対して第1位置に位置する収縮状態と、前記筐体に対して前記第1位置よりも基端側の第2位置に位置する伸長状態と、に切替可能な伸縮部を備える、薬液投与装置。
【請求項2】
請求項1記載の薬液投与装置において、
前記伸縮部の前記収縮状態において、前記筐体に対する前記伸縮部の前記軸線方向への移動を規制する収縮状態保持部を備える、薬液投与装置。
【請求項3】
請求項2記載の薬液投与装置において、
前記収縮状態保持部は、前記筐体及び前記伸縮部の一方に配置された凸部と、
前記筐体及び前記伸縮部の他方に形成され前記収縮状態において前記凸部が係合される凹部と、
を備える、薬液投与装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の薬液投与装置において、
前記伸縮部は、筒状に形成され前記筐体の前記軸線方向と直交する前記筐体の径方向外方に配置され、
前記筐体の外周面と前記伸縮部の内周面とが径方向に向かい合い、
前記筐体と前記伸縮部とを前記軸線方向に相対移動可能に案内するガイド部を備え、
前記ガイド部は、前記筐体の前記外周面及び前記伸縮部の前記内周面のいずれか一方の面に配置され前記径方向に突出したガイド突起と、
前記外周面及び前記内周面の他方の面に形成され、前記軸線方向に沿って延在して前記ガイド突起が係合されるガイド溝と、
を備える、薬液投与装置。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の薬液投与装置において、
前記伸縮部の前記伸長状態において、前記伸縮部の先端方向への移動を規制する伸長状態保持部を備える、薬液投与装置。
【請求項6】
請求項5記載の薬液投与装置において、
前記伸長状態保持部は、前記筐体及び前記伸縮部の一方に設けられる係止溝部と、
前記筐体及び前記伸縮部の他方に設けられ前記伸長状態において前記係止溝部に挿入される係止突起と、
を備える、薬液投与装置。
【請求項7】
請求項6記載の薬液投与装置において、
前記伸縮部は、筒状に形成され前記筐体の前記軸線方向と直交する前記筐体の径方向外方に配置され、
前記筐体の外周面と前記伸縮部の内周面とが径方向に向かい合い、
前記筐体と前記伸縮部とを前記軸線方向に相対移動可能に案内するガイド部を備え、
前記ガイド部は、前記筐体の前記外周面及び前記伸縮部の前記内周面のいずれか一方の面に配置され前記径方向に突出したガイド突起と、
前記外周面及び前記内周面の他方の面に形成され、前記軸線方向に沿って延在して前記ガイド突起が係合されるガイド溝と、
前記ガイド突起と前記ガイド溝とが、前記筐体の軸線を中心とした前記筐体と前記伸縮部との相対回転を規制する回転規制部を構成し、
前記筐体に対して前記伸縮部が前記第2位置よりも基端側の第3位置まで移動したときに、前記筐体の周方向における前記ガイド突起と前記ガイド溝との係合が解除されて、前記筐体に対する前記伸縮部の相対回転が可能となり、
前記筐体に対して前記伸縮部が相対回転したときに、前記係止突起が前記係止溝部から離脱して、前記伸縮部が前記第1位置へと移動可能となる、薬液投与装置。
【請求項8】
請求項6記載の薬液投与装置において、
前記伸長状態では、前記係止溝部と前記係止突起との係合により前記筐体に対する前記伸縮部の周方向の相対回転が阻止され、
前記筐体に対して前記伸縮部が前記第2位置よりも基端側の第3位置まで移動したときに、前記筐体に対する前記伸縮部の相対回転が可能となり、
前記筐体に対して前記伸縮部が相対回転したときに、前記係止突起が前記係止溝部から離脱して、前記伸縮部が前記第1位置へと移動可能となる、薬液投与装置。
【請求項9】
請求項6記載の薬液投与装置において、
前記係止溝部は、
前記係止突起の先端方向への移動を阻止する溝先端部と、
前記溝先端部の基端側に隣接して設けられ、前記筐体の先端方向に向けてテーパ状の傾斜面と、を有する、薬液投与装置。
【請求項10】
請求項8記載の薬液投与装置において、
前記筐体の前記周方向において前記係止溝部と隣接して配置され、前記第3位置において前記筐体と前記伸縮部とが相対回転したとき、前記係止突起が挿入される隣接溝部を備え、
前記係止溝部に対して前記隣接溝部が基端方向にオフセットして配置される、薬液投与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液を穿刺した生体内へと投与する薬液投与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の薬液投与装置は、ケーシング内に摺動自在に設けられる針保護スリーブ及びピストンと、薬液を放出する際にピストンに作用するスリーブ状の作動部材と、作動部材に作用するばね部材とを備える。ばね部材の弾発力によってピストンを軸方向に移動させることで、製品容器内の薬液を外部へと放出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6154061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の薬液投与装置は、薬液を投与する投与装置の機能と、薬液を保管する保管装置としての機能を兼ね備えるため、薬液投与装置が軸線方向に大型化するという問題がある。薬液の投与後に装置を廃棄する際、廃棄物の嵩が増大してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の態様は、中空筒状に形成される筐体と、前記筐体内に収容され薬液の充填されるバレル及び該バレルと連通して生体内に前記薬液を投与する穿刺針を有したシリンジと、前記筐体の内部に設けられ前記穿刺針の少なくとも先端側を覆うと共に穿刺対象に対して押し付けられることで前記筐体に対して基端方向に相対変位する中空筒状の針カバーと、前記筐体の内部に設けらればねの弾発作用下に先端が前記バレルの内部へと移動することで前記薬液を前記穿刺針から吐出させるプランジャと、を備える薬液投与装置であって、前記筐体に対して前記筐体の軸線方向に沿って相対移動可能に設けられ、前記筐体に対して第1位置に位置する収縮状態と、前記筐体に対して前記第1位置よりも基端側の第2位置に位置する伸長状態と、に切替可能な伸縮部を備える、薬液投与装置である。
【0007】
この薬液投与装置によれば、薬液投与装置の未使用時及び使用後において、伸縮部を収縮状態とすることで、薬液投与装置を軸線方向にコンパクト化することができる。薬液投与装置が未使用の保管時及び使用後の廃棄時にかさばることが抑制され、保管場所及び廃棄場所の省スペース化が可能である。薬液投与装置の使用時において、伸縮部を伸長状態とすることで、ユーザの操作性を高めることができる。
【0008】
(2)上記の(1)記載の薬液投与装置において、前記伸縮部の前記収縮状態において、前記筐体に対する前記伸縮部の前記軸線方向への移動を規制する収縮状態保持部を備えてもよい。
【0009】
この構成により、薬液投与装置の未使用時又は薬液投与装置の使用後において、収縮状態にある伸縮部が誤って移動して伸長状態になることが阻止される。
【0010】
(3)上記の(2)記載の薬液投与装置において、前記収縮状態保持部は、前記筐体及び前記伸縮部の一方に配置された凸部と、前記筐体及び前記伸縮部の他方に形成され前記収縮状態において前記凸部が係合される凹部と、を備えてもよい。
【0011】
この構成により、凸部及び凹部を設けて互いに係合させるという簡素な構成で、薬液投与装置の未使用時及び使用後における伸縮部の軸線方向への移動を確実に規制できる。
【0012】
(4)上記の(1)~(3)のいずれか1つに記載の薬液投与装置において、前記伸縮部は、筒状に形成され前記筐体の前記軸線方向と直交する前記筐体の径方向外方に配置され、前記筐体の外周面と前記伸縮部の内周面とが径方向に向かい合い、前記筐体と前記伸縮部とを前記軸線方向に相対移動可能に案内するガイド部を備え、前記ガイド部は、前記筐体の前記外周面及び前記伸縮部の前記内周面のいずれか一方の面に配置され前記径方向に突出したガイド突起と、前記外周面及び前記内周面の他方の面に形成され、前記軸線方向に沿って延在して前記ガイド突起が係合されるガイド溝と、を備えてもよい。
【0013】
この構成により、筐体に対して伸縮部を軸線方向に移動させるとき、ガイド部によって伸縮部を筐体に沿って効果的に直進させることができる。筐体の軸線を中心とした筐体に対する伸縮部の回転を阻止することができる。
【0014】
(5)上記の(1)~(4)のいずれか1つに記載の薬液投与装置において、前記伸縮部の前記伸長状態において、前記伸縮部の先端方向への移動を規制する伸長状態保持部を備えてもよい。
【0015】
この構成により、ユーザによる薬液投与装置の使用時において、誤って伸縮部が先端方向に移動して収縮状態となることが阻止される。
【0016】
(6)上記の(5)記載の薬液投与装置において、前記伸長状態保持部は、前記筐体及び前記伸縮部の一方に設けられる係止溝部と、前記筐体及び前記伸縮部の他方に設けられ前記伸長状態において前記係止溝部に挿入される係止突起と、を備えてもよい。
【0017】
この構成により、係止突起及び係止溝部を設け、係止突起を係止溝部に挿入するという簡素な構成で、薬液投与装置の使用時における伸縮部の先端方向に向けた移動を効果的に規制できる。
【0018】
(7)上記の(6)記載の薬液投与装置において、前記伸縮部は、筒状に形成され前記筐体の前記軸線方向と直交する前記筐体の径方向外方に配置され、前記筐体の外周面と前記伸縮部の内周面とが径方向に向かい合い、前記筐体と前記伸縮部とを前記軸線方向に相対移動可能に案内するガイド部を備え、前記ガイド部は、前記筐体の前記外周面及び前記伸縮部の前記内周面のいずれか一方の面に配置され前記径方向に突出したガイド突起と、前記外周面及び前記内周面の他方の面に形成され、前記軸線方向に沿って延在して前記ガイド突起が係合されるガイド溝と、前記ガイド突起と前記ガイド溝とが、前記筐体の軸線を中心とした前記筐体と前記伸縮部との相対回転を規制する回転規制部を構成し、前記筐体に対して前記伸縮部が前記第2位置よりも基端側の第3位置まで移動したときに、前記筐体の周方向における前記ガイド突起と前記ガイド溝との係合が解除されて、前記筐体に対する前記伸縮部の相対回転が可能となり、前記筐体に対して前記伸縮部が相対回転したときに、前記係止突起が前記係止溝部から離脱して、前記伸縮部が前記第1位置へと移動可能となってもよい。
【0019】
この構成により、薬液が投与される第2位置(伸長状態)では、ガイド突起とガイド溝とによって筐体と伸縮部との相対回転が阻止される。第3位置において、筐体と伸縮部とを相対回転させ、ガイド突起とガイド溝との係合を解除することで、薬液投与の完了した薬液投与装置において、筐体に対して伸縮部を先端方向に移動させて収縮状態とすることができる。
【0020】
(8)上記の(6)記載の薬液投与装置において、前記伸長状態では、前記係止溝部と前記係止突起との係合により前記筐体に対する前記伸縮部の周方向の相対回転が阻止され、前記筐体に対して前記伸縮部が前記第2位置よりも基端側の第3位置まで移動したときに、前記筐体に対する前記伸縮部の相対回転が可能となり、前記筐体に対して前記伸縮部が相対回転したときに、前記係止突起が前記係止溝部から離脱して、前記伸縮部が前記第1位置へと移動可能となってもよい。
【0021】
この構成により、薬液が投与される第2位置(伸長状態)では、係止溝部と係止突起とによって筐体と伸縮部との相対回転が阻止される。第3位置において、筐体と伸縮部とを相対回転させ、伸長状態保持部の係止溝部と係止突起との係合を解除することで、薬液投与の完了した薬液投与装置において、筐体に対して伸縮部を先端方向に移動させて収縮状態とすることができる。
【0022】
(9)上記の(6)~(8)のいずれか1つに記載の薬液投与装置において、前記係止溝部は、前記係止突起の先端方向への移動を阻止する溝先端部と、前記溝先端部の基端側に隣接して設けられ、前記筐体の先端方向に向けてテーパ状の傾斜面と、を有してもよい。
【0023】
この構成により、伸縮部の伸長位置において、ユーザが誤って伸縮部を筐体に対して基端方向に移動させたとき、テーパ状の傾斜面によって、係止突起が先端方向へと移動することで溝先端部へと戻されて、伸縮部が伸長位置へと好適に戻る。このため、伸縮部の意図しない回転を抑制することができる。
【0024】
(10)上記の(8)記載の薬液投与装置において、前記筐体の前記周方向において前記係止溝部と隣接して配置され、前記第3位置において前記筐体と前記伸縮部とが相対回転したとき、前記係止突起が挿入される隣接溝部を備え、前記係止溝部に対して前記隣接溝部が基端方向にオフセットして配置されてもよい。
【0025】
この構成により、隣接溝部が係止溝部に対してオフセットしているため、筐体と伸縮部とが相対回転して係止突起が隣接溝部に挿入されたとき、係止突起が隣接溝部から係止溝部へと戻ることが阻止されることで、筐体と伸縮部との相対回転が規制される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、筐体に対して筐体の軸線方向に沿って相対移動可能に設けられる伸縮部を備え、伸縮部が、筐体に対して第1位置に位置する収縮状態と、筐体に対して第1位置よりも基端側の第2位置に位置する伸長状態とを切替可能である。これにより、薬液投与装置の未使用時及び使用後において、伸縮部を収縮状態とすることで、薬液投与装置を軸線方向にコンパクト化することができる。薬液投与装置の保管時及び廃棄時にかさばることが抑制され、保管場所及び廃棄場所の省スペース化が可能である。薬液投与装置の使用時に、伸縮部を伸長状態とすることで、ユーザの操作性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の実施形態に係る薬液投与装置の全体平面図である。
図2図2は、ガイド部を含んだ薬液投与装置の全体平面図である。
図3図3は、図2に示す薬液投与装置の全体側面図である。
図4図4は、薬液投与装置の伸縮部が伸長状態(第2位置)である場合を示す一部省略斜視図である。
図5図5は、図4のV-V線に沿った断面図である。
図6図6は、薬液投与装置における伸縮部が第3位置である場合を示す一部省略斜視図である。
図7図7は、図6の薬液投与装置における伸縮部を回転させた場合を示す一部省略斜視図である。
図8図8は、薬液投与装置の使用後に伸縮部を収縮状態に戻した場合を示す一部省略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に示されるように、本実施形態に係る薬液投与装置10は、例えば、ユーザである患者の皮下に対して薬液を投与するために用いられるものである。薬液投与装置10は、中空筒状に形成される筐体12と、筐体12内に収容され薬液の充填されるシリンジ14と、筐体12の内部に設けられ患者(穿刺対象)に対して押し付けられることで筐体12に対して基端方向に相対変位する針カバー16と、筐体12の内部に設けらればね18の弾発作用下に先端方向に向けて移動可能なプランジャ20と、筐体12の先端に対して着脱自在に設けられるキャップ22とを備える。図2に示すように、薬液投与装置10は、筐体12に対して筐体12の軸線方向に沿って相対移動可能に設けられる伸縮部24と、筐体12と伸縮部24とを筐体12の軸線方向に相対移動可能に案内するガイド部26とをさらに備える。
【0029】
図1に示すように、筐体12は、例えば樹脂材料から形成され、断面略円形状で軸線方向に沿った筒体28と、筒体28の基端を塞ぐエンドキャップ30とを備える。筒体28の先端が開口する。
【0030】
筒体28の周壁281は、確認窓32と、把持部34とを備える。確認窓32は、筒体28の先端近傍に配置される。確認窓32は、筒体28の軸線方向に沿って長尺に開口する。確認窓32は、筒体28の径方向に貫通する。筒体28の軸線を中心として確認窓32が一対設けられる。
【0031】
把持部34は、薬液投与装置10をユーザが使用するときに把持する部位である。把持部34は、筒体28の軸線を中心とした筒体28の周方向において、一対の確認窓32と略直交する位置に一対配置される。把持部34は、筒体28の径方向内方に窪んだ凹状に形成される。
【0032】
シリンジ14は、薬液の充填される中空状のバレル36と、バレル36と連通して生体内に薬液を投与する穿刺針38とを備え、バレル36の内部にはガスケット40が軸線方向に沿って摺動可能に配置される。穿刺針38は、バレル36の先端に設けられ先端方向へ突出する。なお、使用される薬液としては、例えば、患者の皮下注射に用いられるものがある。筐体12の内部において、確認窓32に向かい合うようにシリンジ14のバレル36が保持される。バレル36内における薬液の残量を確認窓32を通じて筐体12の外部から視認可能である。
【0033】
針カバー16は、中空筒状に形成され穿刺前の状態において穿刺針38の先端側を覆う。なお、穿刺針38は、バレル36の先端に予め固定されている構成に限定されるものではない。穿刺針38が、例えば先端及び基端の各々に針を有し、薬液投与装置10の未使用時にシリンジ14に接続されておらず、使用時において基端の針がシリンジ14のバレル36に接続される構成であってもよい。
【0034】
図2に示すように、伸縮部24は、有底筒状に形成され筐体12の径方向外方に配置される。伸縮部24は、筐体12の基端部を覆う。すなわち、伸縮部24は、筐体12の軸線方向と直交する筐体12の径方向外方に配置される。伸縮部24の内周面と筐体12における筒体28の外周面とが向かい合う。なお、伸縮部24は、有底筒状に形成される場合に限定されず、底部を有していない筒体であってもよい。
【0035】
伸縮部24は、筐体12に対して第1位置に位置する収縮状態と、筐体12に対して第1位置よりも基端方向の第2位置に位置する伸長状態(図4参照)とを切替可能に設けられる。伸長状態にある第2位置に対し、伸縮部24がさらに基端方向に移動して第3位置に移動可能である。第3位置は、筐体12に対して伸縮部24がその可動範囲の最も基端側に相対移動した位置である。
【0036】
第1位置は、筐体12に対して伸縮部24がその可動範囲の最も先端側に相対移動した位置である。第1位置において、筐体12に対して伸縮部24が収縮した収縮状態となる。このとき、伸縮部24の先端は、確認窓32の基端方向に配置される。伸縮部24の先端が確認窓32に重ならない。
【0037】
図3に示すように、薬液投与装置10は、伸縮部24の収縮状態において、筐体12に対する伸縮部24の基端方向(軸線方向)への移動を規制する収縮状態保持部42を備える。
【0038】
収縮状態保持部42は、筐体12の筒体28の外周面に形成される凸部44と、伸縮部24の内周面に形成され収縮状態において凸部44が係合される凹部46とを備える。
【0039】
凸部44は、筒体28の外周面から径方向外方に突出する。凸部44は、筒体28の軸線を中心として対称となるように一対設けられる。筐体12の軸線方向から見たとき、一対の確認窓32に対して一対の凸部44が軸線を中心として180°離間した位置に配置される。筒体28の軸線方向において、凸部44は、確認窓32の基端位置に対して若干先端寄りに配置される。なお、凸部44は一対設けられる場合に限定されない。1つの凸部44であってもよいし、3つ以上の凸部44を備えていてもよい。
【0040】
凹部46は、伸縮部24の先端近傍に配置される。凹部46は、伸縮部24の内周面に開口すると共に伸縮部24を径方向に貫通する。凹部46は、伸縮部24の軸線を中心として対称となるように一対設けられる。一対の凹部46と筐体12の一対の凸部44とが、筐体12の軸線方向において直線上に配置される。図3に示すように、筐体12に対して伸縮部24が先端方向に相対移動して収縮状態となったとき、一対の凸部44が一対の凹部46にそれぞれ挿入され係合される。これにより、筐体12に対する伸縮部24の基端方向への相対移動が規制される。なお、凹部46は一対設けられる場合に限定されない。凸部44と同数であれば、1つの凹部46であってもよいし、3つ以上の凹部46を備えていてもよい。
【0041】
なお、収縮状態保持部42は、凸部44が筐体12に設けられ、凹部46が伸縮部24に設けられる場合に限定されない。例えば、伸縮部24の内周面に凸部44を設け、筐体12の外周面に凹部46を備えてもよい。
【0042】
図4に示すように、伸縮部24の第2位置は、筐体12に対して伸縮部24がその可動範囲の基端側に相対移動した位置である。第2位置の伸縮部24は、第1位置に対して基端方向に配置される。第2位置において、筐体12に対して伸縮部24が伸長した伸長状態となる。
【0043】
薬液投与装置10は、伸縮部24の伸長状態において、筐体12に対する伸縮部24の先端方向(軸線方向)への移動を規制する伸長状態保持部48を備える。
【0044】
伸長状態保持部48は、筐体12の筒体28の外周面に形成される係止溝部50と、伸縮部24の内周面に形成され伸長状態において係止溝部50に挿入される係止突起52とを備える。
【0045】
係止溝部50は、筒体28の基端部に設けられる。係止溝部50が、筒体28の外周面から径方向内方に窪む。係止溝部50は、筒体28の軸線を中心として対称となるように一対設けられる。筐体12の軸線方向から見たとき、一対の確認窓32に対して一対の係止溝部50が軸線を中心として180°離間した位置に配置される。一対の係止溝部50と一対の係止突起52とが、筐体12の軸線方向において直線上に配置される。
【0046】
図5に示すように、係止溝部50は、係止突起52の先端方向への移動を阻止する溝先端部501と、溝先端部501の基端方向に隣接して設けられる第1傾斜面502とを備える。
【0047】
溝先端部501は、係止溝部50の先端方向に配置される。溝先端部501は、筒体28の軸線方向に延在し、筒体28の外周面に対して一定深さである。第1傾斜面502は、筒体28の外周面から溝先端部501に向けてテーパ状に形成される。溝先端部501と第1傾斜面502とが筐体12の軸線方向において直線上に配置される(図4参照)。
【0048】
係止突起52は、伸縮部24の凹部46よりも基端側に設けられる。係止突起52は、伸縮部24の内周面に固定される固定端521と、固定端521に対して先端方向に延出する自由端522とを備える。係止突起52の自由端522は、伸縮部24の内周面から径方向内方に向けて斜めに突出する。係止突起52は、伸縮部24の軸線を中心として対称となるように一対設けられる。係止突起52は、固定端521を支点として自由端522が径方向に弾性変形可能な弾性片である。伸縮部24の軸線方向から見たとき、一対の係止突起52が軸線を中心として180°離間した位置に配置される。一対の係止突起52の自由端522が、一対の係止溝部50に係合可能である。
【0049】
なお、伸長状態保持部48は、係止溝部50が筐体12に設けられ、係止突起52が伸縮部24に設けられる場合に限定されない。例えば、伸縮部24の内周面に係止溝部50を設け、筐体12の外周面に係止突起52を備えていてもよい。
【0050】
図3に示すように、収縮状態である伸縮部24の第1位置において、係止突起52が、筒体28の外周面に形成され収容溝部56に挿入される。収容溝部56は、凸部44に対して基端方向に離間して配置される。収容溝部56は、筒体28の外周面から径方向内方に窪む。
【0051】
図2に示すように、ガイド部26は、伸縮部24の内周面に設けられ径方向内方に突出したガイド突起58と、筐体12の外周面に軸線方向に沿って延在してガイド突起58が係合されるガイド溝60とを備える。
【0052】
ガイド突起58は、伸縮部24の先端部に設けられる。ガイド突起58は、伸縮部24の先端部から基端方向に向けて延在する。
【0053】
図3に示すように、ガイド溝60は、筒体28の外周面から径方向内方に窪む。ガイド溝60には、ガイド突起58が挿入される。図4に示すように、ガイド溝60は、第1ガイド601と、第2ガイド602とを備える。第1ガイド601は、図2に示す伸縮部24の収縮状態から伸縮部24が基端方向に向けて移動する際、ガイド突起58がガイドされる。第2ガイド602は、伸縮部24が伸長状態から先端方向に向けて移動する際、ガイド突起58がガイドされる(図8参照)。第1ガイド601と第2ガイド602とが、軸線方向に延在し、筒体28の周方向において互いに隣接する。第1ガイド601と第2ガイド602とが平行である。第1ガイド601と第2ガイド602との間に境界壁62を有する。
【0054】
図2に示すように、ガイド溝60の基端には、基端連通部64が設けられる。基端連通部64は、ガイド溝60の基端において第1ガイド601の基端と第2ガイド602の基端とを連通させる。
【0055】
境界壁62の先端部は、傾斜部66を有する。傾斜部66は、第2ガイド602から第1ガイド601に向けて、上方に向かうように傾斜する。傾斜部66は、第1ガイド601から第2ガイド602へのガイド突起58の移動を規制する。傾斜部66は、第2ガイド602から第1ガイド601へのガイド突起58の移動を許容する。
【0056】
ガイド突起58とガイド溝60とが、筐体12の軸線を中心とした筐体12と伸縮部24との相対回転を規制する回転規制部68を構成する。収縮状態にある第1位置(図2参照)及び伸長状態にある第2位置(図4参照)において、ガイド突起58とガイド溝60とが筐体12の周方向に係合される。すなわち、第1及び第2位置において、ガイド突起58とガイド溝60とが筐体12の周方向に向かい合う。これにより、回転規制部68によって筐体12の軸線を中心とした筐体12と伸縮部24との相対回転が規制される。
【0057】
図6に示すように、筐体12に対して伸縮部24が第2位置よりも基端方向に移動した第3位置において、ガイド突起58が基端連通部64に配置される。すなわち、筒体28の周方向におけるガイド突起58と境界壁62(ガイド溝60)との係合が解除される。すなわち、回転規制部68による筐体12と伸縮部24との相対回転規制状態が解除される。筐体12に対して伸縮部24が相対回転可能となる。筐体12に対する伸縮部24の回転方向は、ガイド突起58が第1ガイド601から第2ガイド602へと移動する方向である。
【0058】
図4に示すように、筐体12の外周面は、径方向内方に窪んだ隣接溝部70を備える。筐体12の周方向において、隣接溝部70が係止溝部50と隣接して配置される。係止溝部50に対して隣接溝部70が基端方向にオフセットして配置される。第3位置において筐体12に対して伸縮部24が回転するときの回転方向に、係止溝部50に対して隣接溝部70が隣接する。筐体12の軸線方向において、係止溝部50と隣接溝部70との一部が互いに重なるように配置される。
【0059】
隣接溝部70は、係止突起52の基端方向への移動を阻止する溝基端部701と、溝基端部701の先端方向に隣接して設けられる第2傾斜面702とを備える。
【0060】
溝基端部701は、隣接溝部70の基端方向に配置される。溝基端部701は、筒体28の軸線方向に延在し、筒体28の外周面に対して一定深さである。第2傾斜面702は、筒体28の外周面から溝基端部701に向けてテーパ状に形成される。溝基端部701と第2傾斜面702とが筐体12の軸線方向において直線上に配置される。
【0061】
図6に示すように、第2位置から伸縮部24が基端方向に移動した第3位置において、筐体12に対して伸縮部24が相対回転したときに、係止突起52が第1傾斜面502に沿って係止溝部50から離脱し、隣接溝部70へと挿入されて係合される。これにより、係止溝部50に対する係止突起52の係合が解除され、伸縮部24が第1位置へと移動可能となる。係止突起52が隣接溝部70へ係合されたとき、隣接溝部70と係止溝部50とが軸線方向にオフセットしているため、筐体12に対する伸縮部24の反対方向への相対回転が規制される。第3位置から伸縮部24が先端方向に移動するとき、係止突起52が第2傾斜面702に沿って隣接溝部70から離脱する。
【0062】
なお、ガイド部26は、ガイド突起58が伸縮部24に設けられ、ガイド溝60が筐体12に設けられる場合に限定されない。例えば、伸縮部24の内周面にガイド溝60を設け、筐体12の外周面にガイド突起58を備えていてもよい。
【0063】
図2に示すように、薬液投与装置10の使用前において、筐体12の先端にはキャップ22が装着される。キャップ22によって、筐体12の先端が覆われる。薬液投与装置10を使用するとき、ユーザによってキャップ22が取り外される(図6参照)。
【0064】
次に、ユーザが薬液投与装置10を使用する場合について説明する。
【0065】
図2に示す薬液投与装置10の使用前の状態(例えば保管状態)では、筐体12に対して伸縮部24が先端方向に移動して第1位置に配置された収縮状態である。収縮状態では、伸縮部24が最も先端方向に移動した状態となり、薬液投与装置10の軸線方向における長手寸法が最小となる。伸縮部24の収縮状態では、収縮状態保持部42の凸部44と凹部46とが係合される。収縮状態保持部42によって、筐体12に対する伸縮部24の基端方向への移動が規制される。伸縮部24が誤って基端方向へ移動することが阻止される。第1位置では、伸縮部24の先端が確認窓32の基端方向に配置される。伸縮部24の先端が確認窓32に重ならない。確認窓32を通じてユーザがシリンジ14の薬液を確認可能である。
【0066】
ユーザが薬液投与装置10を使用するとき、筐体12に対して伸縮部24を基端方向へ相対移動させる。伸縮部24が基端方向へ付勢されることで、筐体12の凸部44に対して凹部46が径方向外方へ離脱し、凸部44と凹部46との係合状態が解除される。これにより、収縮状態保持部42による筐体12と伸縮部24との移動規制状態が解除され、筐体12に対して伸縮部24が基端方向へ向けて移動可能となる。筐体12の軸線方向に沿って伸縮部24が基端方向へ移動する。このとき、伸縮部24のガイド突起58が、筐体12のガイド溝60(第1ガイド601)に沿って基端方向へ移動することで、伸縮部24が筐体12の軸線方向に沿って直線状に移動する。第1ガイド601に沿ってガイド突起58が移動する間、筐体12に対して伸縮部24が相対回転することがない。伸縮部24の基端方向への移動に伴い、係止突起52が収容溝部56から離脱し、係止突起52が筒体28の外周面に沿って基端方向に移動する。
【0067】
図4に示すように、筐体12に対して伸縮部24が基端方向に移動して第2位置に到達すると伸長状態となる。伸縮部24の伸長状態は、収縮状態から伸縮部24が基端方向に移動し、収縮状態に対して薬液投与装置10の軸線方向における長手寸法が大きい(図2中、二点鎖線形状参照)。伸長状態(第2位置)は、薬液投与装置10によってユーザ(患者)への薬液投与が行われるときの状態である。
【0068】
伸縮部24の伸長状態では、伸長状態保持部48の係止突起52と係止溝部50とが係合される(図5参照)。係止溝部50の溝先端部501に係止突起52の先端が挿入され係合されることで、筐体12に対する伸縮部24の先端方向への移動が規制される。
【0069】
ユーザが筐体12の先端からキャップ22を取り外した後、筐体12の外周面及び伸縮部24の外周面を把持した状態で、筐体12の先端から突出した針カバー16の先端を皮膚に押し当てる。針カバー16が基端方向に移動することで、穿刺針38が露出して皮膚を穿刺すると共に、ばね18の弾発力によってプランジャ20が先端方向に付勢される。プランジャ20によってガスケット40が押されることで、シリンジ14内の薬液が穿刺針38を通じてユーザの皮下に投与される。このとき、伸長状態保持部48によって、筐体12に対して伸縮部24が先端方向に相対移動することが阻止される。回転規制部68によって、筐体12に対する伸縮部24の相対回転が阻止される。
【0070】
ユーザに対する薬液投与が完了した後、薬液投与装置10を廃棄するために伸縮部24を再び収縮状態とする。伸縮部24を再び収縮状態とするために、以下の操作を行う。
【0071】
図6に示すように、伸縮部24を第2位置よりもさらに基端方向に移動させて第3位置とする。伸縮部24が第3位置に到達すると、ガイド突起58が基端連通部64に向かい合いガイド突起58と境界壁62(ガイド溝60)との係合が解除される。係止溝部50の第1傾斜面502に沿って係止突起52が基端方向に移動することで、係止突起52が溝先端部501から基端方向に離脱する。これにより、溝先端部501に対する係止突起52の係合が解除される。
【0072】
図7に示すように、筐体12に対して伸縮部24を回転させる。このとき、薬液投与装置10を軸線方向に沿って先端から基端に向けて見たとき、伸縮部24の回転方向(図6参照)は時計回り(右回り)である。筐体12に対して伸縮部24が回転することで、ガイド突起58が基端連通部64を介して第1ガイド601から第2ガイド602へ移動する。係止突起52が筒体28の外周面に沿って周方向に移動し、係止突起52が隣接溝部70の溝基端部701に挿入されて係合される。
【0073】
このとき、係止突起52は、隣接溝部70の側壁によって係止溝部50に向けた周方向への移動が規制される。そのため、周方向において反対方向(薬液投与装置10を軸線方向に沿って先端から基端に向けて見たときの反時計回り)に伸縮部24が回転することがない。
【0074】
なお、図4に示す伸長状態にある伸縮部24の第2位置からユーザが誤って伸縮部24を筐体12に対して基端方向に移動させた場合でも、テーパ状の第1傾斜面502に沿って係止突起52が溝先端部501へと戻されるため、伸縮部24が先端方向に移動する。伸縮部24が第2位置に戻ることで、回転規制部68によって伸縮部24の回転が阻止される。
【0075】
図8に示すように、筐体12に対して伸縮部24を先端方向に向けて押すと、ガイド突起58が第2ガイド602に沿って先端方向に移動する。筐体12の軸線方向に沿って伸縮部24が先端方向に向けて直線状に移動する。第2ガイド602に沿ってガイド突起58が移動する間、筐体12に対して伸縮部24が相対回転することがない。伸縮部24が先端方向に移動するのに伴い、隣接溝部70の第2傾斜面702に沿って係止突起52が隣接溝部70から離脱する。伸縮部24の移動によって、ガイド突起58がガイド溝60の傾斜部66に向かい合い、筐体12の凸部44に伸縮部24の凹部46が係合されることで、筐体12に対して伸縮部24が先端方向に移動した収縮状態となる。この収縮状態では、薬液投与装置10の軸線方向における長手寸法が最小となり、薬液投与装置10を使用する前の第1位置と略同一長さとなる。係止突起52は収容溝部56に挿入される。
【0076】
筐体12に対して第3位置の回転方向とは反対方向(薬液投与装置10を軸線方向に沿って先端から基端に向けて見たときの反時計回り)に伸縮部24を回転させる。ガイド突起58が傾斜部66を乗り越えて第1ガイド601へと移動する。係止突起52が、収容溝部56に挿入された状態で収容溝部56で周方向に移動する。このとき、収縮状態保持部42の凸部44と凹部46とが係合されることで、筐体12に対して伸縮部24が基端方向へ移動することが阻止され、伸縮部24の収縮状態が維持される。
【0077】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0078】
図2に示すように、薬液投与装置10が、筐体12に対して筐体12の軸線方向に沿って相対移動可能に設けられる伸縮部24を備え、伸縮部24は、筐体12に対して第1位置に位置する収縮状態と、図3に示される筐体12に対して第1位置よりも基端側の第2位置に位置する伸長状態(図4参照)とに切替可能である。
【0079】
これにより、図2に示す薬液投与装置10の未使用時及び使用後において、伸縮部24を収縮状態とすることで、薬液投与装置10を軸線方向にコンパクト化することができる。薬液投与装置10の未使用の保管時及び使用後の廃棄時にかさばることが抑制され、薬液投与装置10の保管場所及び廃棄場所の省スペース化が可能である。図4に示す薬液投与装置10の使用時に、伸縮部24を伸長状態とすることで、ユーザの操作性を高めることができる。
【0080】
図2に示すように、伸縮部24の収縮状態において、筐体12に対する伸縮部24の軸線方向への移動を規制する収縮状態保持部42を備えることで、薬液投与装置10の未使用時及び薬液投与装置10の使用後において、収縮状態にある伸縮部24が誤って移動して伸長状態になることが阻止される。
【0081】
図3に示すように、収縮状態保持部42が、筐体12に配置された凸部44と、伸縮部24に形成され収縮状態において凸部44が係合される凹部46とを備えることにより、凸部44及び凹部46を設けて互いに係合させるという簡素な構成で、薬液投与装置10の未使用時又は薬液投与装置10の使用後における伸縮部24の軸線方向への移動を確実に規制できる。
【0082】
図2に示すように、伸縮部24は、筒状に形成され筐体12の軸線方向と直交する筐体12の径方向外方に配置され、筐体12の外周面と伸縮部24の内周面とが径方向に向かい合い、筐体12と伸縮部24とを軸線方向に相対移動可能に案内するガイド部26を備える。ガイド部26が、伸縮部24の内周面に配置され径方向内方に突出したガイド突起58と、筐体12の内周面に形成され軸線方向に沿って延在してガイド突起58が係合されるガイド溝60とを備えている。
【0083】
これにより、筐体12に対して伸縮部24を軸線方向に移動させるとき、ガイド部26によって伸縮部24を筐体12に沿って直進させることができる。筐体12の軸線を中心とした筐体12に対する伸縮部24の回転を阻止することができる。
【0084】
図4に示すように、伸縮部24の伸長状態において、伸縮部24の先端方向への移動を規制する伸長状態保持部48を備えることで、ユーザによる薬液投与装置10の使用時において、伸縮部24が誤って収縮状態となることが阻止される。
【0085】
伸長状態保持部48が、筐体12の外周面に設けられる係止溝部50と、伸縮部24の内周面に設けられ伸長状態において係止溝部50に挿入される係止突起52とを備える。これにより、係止突起52を係止溝部50に挿入するという簡素な構成で、薬液投与装置10の使用時における伸縮部24の先端方向に向けた移動を効果的に規制できる。
【0086】
伸縮部24の内周面に配置され径方向内方に突出したガイド突起58と、筐体12の外周面に形成され軸線方向に沿って延在してガイド突起58が係合されるガイド溝60とを備え、ガイド突起58とガイド溝60とが、筐体12の軸線を中心とした筐体12と伸縮部24との相対回転を規制する回転規制部68を構成する。筐体12に対して伸縮部24が第2位置よりも基端側の第3位置まで移動したときに、筐体12の周方向におけるガイド突起58とガイド溝60との係合が解除されて、筐体12に対する伸縮部24の相対回転が可能となり、筐体12に対して伸縮部24が相対回転したときに、係止突起52が係止溝部50から離脱して、伸縮部24が第1位置へと移動可能となる。
【0087】
これにより、薬液が投与される第2位置(伸長状態)では、ガイド突起58とガイド溝60とによって筐体12と伸縮部24との相対回転が阻止される。第3位置において、筐体12と伸縮部24とを相対回転させ、ガイド突起58とガイド溝60との係合を解除することで、薬液投与の完了した薬液投与装置10において、筐体12に対して伸縮部24を先端方向に移動させて収縮状態とすることができる。
【0088】
伸縮部24の伸長状態では、係止溝部50と係止突起52との係合により筐体12に対する伸縮部24の周方向の相対回転が阻止され、筐体12に対して伸縮部24が第2位置よりも基端側の第3位置まで移動したときに、筐体12に対する伸縮部24の相対回転が可能となる。筐体12に対して伸縮部24が相対回転したときに、係止突起52が係止溝部50から離脱して、伸縮部24が第1位置へと移動可能となる。これにより、薬液が投与される第2位置(伸長状態)では、係止溝部50と係止突起52とによって筐体12と伸縮部24との相対回転が阻止される。第3位置において、筐体12と伸縮部24とを相対回転させ、伸長状態保持部48の係止溝部50と係止突起52との係合を解除することで、薬液投与の完了した薬液投与装置10において、筐体12に対して伸縮部24を先端方向に移動させて収縮状態とすることができる。
【0089】
図6に示すように、係止溝部50は、係止突起52の先端方向への移動を阻止する溝先端部501と、溝先端部501の基端方向に隣接して設けられ筐体12の先端方向に向けてテーパ状の第1傾斜面502とを有する。これにより、伸縮部24の伸長位置において、ユーザが誤って伸縮部24を筐体12に対して基端方向に移動させたとき、テーパ状の第1傾斜面502の傾斜によって、係止突起52が先端方向へ移動することで溝先端部501へと戻されて、伸縮部24が伸長位置へと好適に戻る。このため、伸縮部24の意図しない回転を抑制することができる。
【0090】
筐体12の周方向において係止溝部50と隣接して配置され、第3位置において筐体12と伸縮部24とが相対回転したとき、係止突起52が挿入される隣接溝部70を備え、係止溝部50に対して隣接溝部70が基端方向にオフセットして配置される。これにより、筐体12と伸縮部24とが相対回転して係止突起52が隣接溝部70に挿入されたとき、係止突起52が隣接溝部70から係止溝部50へと戻ることが阻止されることで、筐体12と伸縮部24との相対回転が阻止される。
【0091】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0092】
10…薬液投与装置
12…筐体
14…シリンジ
16…針カバー
18…ばね
20…プランジャ
24…伸縮部
36…バレル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8