(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011327
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】予測装置、学習装置、予測プログラム、及び学習プログラム
(51)【国際特許分類】
B21B 1/088 20060101AFI20240118BHJP
B21B 37/00 20060101ALI20240118BHJP
B21B 38/00 20060101ALI20240118BHJP
B21B 38/04 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B21B1/088
B21B37/00 222
B21B38/00 C
B21B38/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113243
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富尾 悠索
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 栄利
(72)【発明者】
【氏名】田中 正博
【テーマコード(参考)】
4E002
4E124
【Fターム(参考)】
4E002AC03
4E002BC07
4E002BC10
4E002CA17
4E002CB01
4E124AA09
4E124BB07
4E124EE21
4E124GG10
(57)【要約】
【課題】H形鋼のフランジ部又はウェブ部の長手方向の各位置について精度よく特性を予測する。
【解決手段】材質予測装置10は、製造ラインで製造される、前記製造ラインの方向に延びるH形鋼のフランジ部又はウェブ部の特性を予測する。材質予測装置10は、前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の長手方向における各位置について、前記製造ラインにおける複数のセンサで測定される複数の測定データを取得する測定データ取得部32と、各位置についての前記複数の測定データに基づいて前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置の特性を予測するための予め学習されたニューラルネットワークを用いて、各位置について前記取得された前記複数の測定データから、前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置の特性を予測する予測部40と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造ラインで製造される、前記製造ラインの方向に延びるH形鋼のフランジ部又はウェブ部の特性を予測する予測装置であって、
前記H形鋼の長手方向における各位置について、前記製造ラインにおける複数のセンサで測定される複数の測定データを取得する取得部と、
予め学習されたニューラルネットワークを用いて、前記取得部により取得された前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置についての前記複数の測定データから、前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置の特性を予測する予測部と、を含み、
前記ニューラルネットワークは、前記製造ラインで製造されるH形鋼の長手方向における各位置についての前記複数の測定データに基づいて、前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置の特性を予測するためのニューラルネットワークである予測装置。
【請求項2】
製造ラインで製造される、前記製造ラインの方向に延びるH形鋼のフランジ部又はウェブ部の特性を予測するためのニューラルネットワークを学習する学習装置であって、
複数本の前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置について、前記製造ラインにおける複数のセンサで測定される複数の測定データを取得する取得部と、
前記取得部により取得された、各位置についての前記複数の測定データと、各位置について計測された前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の特性とに基づいて、ニューラルネットワークを学習する学習部と、を含み、
前記ニューラルネットワークは、前記製造ラインで製造されるH形鋼の長手方向における各位置についての複数の測定データに基づいて、前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置の特性を予測するためのニューラルネットワークである学習装置。
【請求項3】
前記取得部は、複数本の前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各々の先端部、中間部及び後端部の少なくとも何れか一方の各位置について、前記複数の測定データを取得し、
前記学習部は、前記取得部により取得された、各々の前記先端部、中間部及び後端部の少なくとも何れか一方の各位置についての前記複数の測定データと、各々の前記先端部、中間部及び後端部の少なくとも何れか一方の各位置について計測された前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の特性とに基づいて、前記ニューラルネットワークを学習する請求項2記載の学習装置。
【請求項4】
前記先端部、中間部及び後端部の少なくとも何れか一方を含む各位置についての前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の特性は、当該位置から採取した試料について計測されたものである請求項3記載の学習装置。
【請求項5】
製造ラインで製造される、前記製造ラインの方向に延びるH形鋼のフランジ部又はウェブ部の特性を予測する予測装置であって、
前記H形鋼の長手方向における各位置について、前記製造ラインにおける複数のセンサで測定される複数の測定データを取得する取得部と、
請求項2~請求項4の何れか1項記載の学習装置により予め学習された前記ニューラルネットワークを用いて、前記取得部により取得された前記H形鋼の各位置についての前記複数の測定データから、当該H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置の特性を予測する予測部と、
を含む予測装置。
【請求項6】
前記複数の測定データは、前記製造ラインにおける前記複数のセンサで測定される、前記H形鋼の温度及びサイズの少なくとも一方を含む請求項1記載の予測装置。
【請求項7】
前記特性は、降伏応力及び引張り強さの少なくとも一方を含む請求項1又は6に記載の予測装置。
【請求項8】
製造ラインで製造される、前記製造ラインの方向に延びるH形鋼のフランジ部又はウェブ部の特性を予測するための予測プログラムであって、
コンピュータを、
前記H形鋼の長手方向における各位置について、前記製造ラインにおける複数のセンサで測定される複数の測定データを取得する取得部、及び
予め学習されたニューラルネットワークを用いて、前記取得部により取得された前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置についての前記複数の測定データから、前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置の特性を予測する予測部
として機能させるための予測プログラムであり、
前記ニューラルネットワークは、前記製造ラインで製造されるH形鋼の長手方向における各位置についての前記複数の測定データに基づいて、前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置の特性を予測するためのニューラルネットワークである予測プログラム。
【請求項9】
製造ラインで製造される、前記製造ラインの方向に延びるH形鋼のフランジ部又はウェブ部の特性を予測するためのニューラルネットワークを学習するための学習プログラムであって、
コンピュータを、
複数本の前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置について、前記製造ラインにおける複数のセンサで測定される複数の測定データを取得する取得部、及び
前記取得部により取得された、各位置についての前記複数の測定データと、各位置について計測された前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の特性とに基づいて、ニューラルネットワークを学習する学習部
として機能させるための学習プログラムであり、
前記ニューラルネットワークは、前記製造ラインで製造されるH形鋼の長手方向における各位置についての複数の測定データに基づいて、前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置の特性を予測するためのニューラルネットワークである学習プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、H形鋼のフランジ部又はウェブ部の特性を予測するための予測装置、学習装置、予測プログラム、及び学習プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、連続焼鈍プロセスについて、階層型ニューラルネットワークを用いて高強度冷延鋼板の材質と複数の材質影響因子との間の非線形な関係式を構築して材質予測に利用する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法は、H形鋼のように鋼材断面が複雑な形状を有し、それぞれの部位ごとに異なる特性となる場合には適用できない。また、鋼材の長手方向に材質にばらつきがあることを考慮していない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、H形鋼のフランジ部又はウェブ部の長手方向の各位置について精度よく特性を予測することができる予測装置、学習装置、予測プログラム、及び学習プログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1態様に係る予測装置は、製造ラインで製造される、前記製造ラインの方向に延びるH形鋼のフランジ部又はウェブ部の特性を予測する予測装置であって、前記H形鋼の長手方向における各位置について、前記製造ラインにおける複数のセンサで測定される複数の測定データを取得する取得部と、予め学習されたニューラルネットワークを用いて、前記取得部により取得された前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置についての前記複数の測定データから、前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置の特性を予測する予測部と、を含み、前記ニューラルネットワークは、前記製造ラインで製造されるH形鋼の長手方向における各位置についての前記複数の測定データに基づいて、前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置の特性を予測するためのニューラルネットワークである。
【0007】
本発明の第1態様に係る予測装置によれば、H形鋼のフランジ部又はウェブ部の長手方向における各位置について、製造ラインにおける複数のセンサで測定される複数の測定データを取得し、ニューラルネットワークを用いて、H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置の特性を予測することにより、H形鋼のフランジ部又はウェブ部の長手方向の各位置について精度よく特性を予測することができる。
【0008】
ここで、測定データとは、製造ラインにおいて製造中のH形鋼のフランジ部又はウェブ部についてセンサによって測定されるデータであり、各位置についての測定データとは、製造ラインにおいて製造中のH形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置についてセンサによって測定されるデータである。また、H形鋼のフランジ部又はウェブ部の特性とは、製造ラインにおいて最終的に製造されたH形鋼のフランジ部又はウェブ部の性質であり、例えば、H形鋼のフランジ部又はウェブ部の材質である。また、各位置の特性とは、製造ラインにおいて最終的に製造されたH形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置での性質である。
【0009】
本発明の第2態様に係る予測装置は、第1態様に係る予測装置において、前記複数の測定データは、前記製造ラインにおける前記複数のセンサで測定される、前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の温度及びサイズの少なくとも一方を含む。
【0010】
本発明の第3態様に係る予測装置は、第1態様又は第2態様に係る予測装置において、前記特性は、降伏応力及び引張り強さの少なくとも一方を含む。
【0011】
本発明の第4態様に係る学習装置は、製造ラインで製造される、前記製造ラインの方向に延びるH形鋼のフランジ部又はウェブ部の特性を予測するためのニューラルネットワークを学習する学習装置であって、複数本の前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置について、前記製造ラインにおける複数のセンサで測定される複数の測定データを取得する取得部と、前記取得部により取得された、各位置についての前記複数の測定データと、各位置について計測された前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の特性とに基づいて、ニューラルネットワークを学習する学習部と、を含み、前記ニューラルネットワークは、前記製造ラインで製造されるH形鋼の長手方向における各位置についての複数の測定データに基づいて、前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置の特性を予測するためのニューラルネットワークである。
【0012】
本発明の第4態様に係る学習装置によれば、複数本の前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置について、製造ラインにおける複数のセンサで測定される複数の測定データを取得し、各位置についての前記複数の測定データと、各位置について計測された前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の特性とに基づいて、ニューラルネットワークを学習することにより、H形鋼のフランジ部又はウェブ部の長手方向の各位置について精度よく特性を予測することができる。
【0013】
本発明の第5態様に係る学習装置は、第4態様に係る学習装置において、前記取得部は、複数本の前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各々の先端部、中間部及び後端部の少なくとも何れか一方の各位置について、前記複数の測定データを取得し、前記学習部は、前記取得部により取得された、各々の前記先端部、中間部及び後端部の少なくとも何れか一方の各位置についての前記複数の測定データと、各々の前記先端部、中間部及び後端部の少なくとも何れか一方の各位置について計測された前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の特性とに基づいて、前記ニューラルネットワークを学習する。
【0014】
本発明の第6態様に係る学習装置は、第4態様又は第5態様に係る学習装置において、前記先端部、中間部及び後端部の少なくとも何れか一方を含む各位置についての前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の特性は、当該位置から採取した試料について計測されたものである。
【0015】
本発明の第7態様に係る予測プログラムは、製造ラインで製造される、前記製造ラインの方向に延びるH形鋼のフランジ部又はウェブ部の特性を予測するための予測プログラムであって、コンピュータを、前記H形鋼の長手方向における各位置について、前記製造ラインにおける複数のセンサで測定される複数の測定データを取得する取得部、及び予め学習されたニューラルネットワークを用いて、前記取得部により取得された前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置についての前記複数の測定データから、前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置の特性を予測する予測部として機能させるための予測プログラムであり、前記ニューラルネットワークは、前記製造ラインで製造されるH形鋼の長手方向における各位置についての前記複数の測定データに基づいて、前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置の特性を予測するためのニューラルネットワークである。
【0016】
本発明の第8態様に係る学習プログラムは、製造ラインで製造される、前記製造ラインの方向に延びるH形鋼のフランジ部又はウェブ部の特性を予測するためのニューラルネットワークを学習するための学習プログラムであって、コンピュータを、複数本の前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置について、前記製造ラインにおける複数のセンサで測定される複数の測定データを取得する取得部、及び前記取得部により取得された、各位置についての前記複数の測定データと、各位置について計測された前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の特性とに基づいて、ニューラルネットワークを学習する学習部として機能させるための学習プログラムであり、前記ニューラルネットワークは、前記製造ラインで製造されるH形鋼の長手方向における各位置についての複数の測定データに基づいて、前記H形鋼のフランジ部又はウェブ部の各位置の特性を予測するためのニューラルネットワークである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、H形鋼のフランジ部又はウェブ部の長手方向の各位置について精度よく特性を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】熱間圧延ラインの概略構成の一例を示す図である。
【
図5】H形鋼の断面の各位置を説明するための図である。
【
図6】フランジ部における、上降伏点、下降伏点、引張強度、上降伏点に対する降伏比、及び下降伏点に対する降伏比の実測値と、予測モデルによる予測値の相関を示す図である。
【
図7】ウェブ部における、上降伏点、下降伏点、引張強度、上降伏点に対する降伏比、及び下降伏点に対する降伏比の実測値と、予測モデルによる予測値の相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明の実施形態では、予測装置及び学習装置を、H形鋼のフランジ部及びウェブ部の材質を予測する材質予測装置に適用した場合を例に説明する。
【0020】
<本発明の実施の形態の概要>
これまで製造現場におけるH形鋼の製造における機械特性の予測および制御は、原理原則をもとにした物理冶金モデルも参考にはされるが、主としてプロセスデータの挙動をみて、製造現場の経験と実績を簡単な回帰式に置き換えたものにより行われてきた。しかし、最近になって導入された、高い水量を用いる強制冷却装置を適用した高強度H形鋼の製造では既存の経験式による予測精度が十分ではなく、H形鋼の両側のフランジ部とそれを繋ぐウェブ部の要求特性を同時に満たす最適製造条件を、フランジ部、ウェブ部の厚さおよび長さが異なる多種多様なサイズで予測可能なモデルが要求されている。
【0021】
H形鋼の材質予測の高精度化には、以下の(1)~(5)のような課題がある。
【0022】
(1)原理原則に基づく物理モデルの高精度化が必要である。
【0023】
(2)工場での各部位の冷却挙動などを予測するプロセスモデルの高精度化が必要である。
【0024】
(3)各部位の温度、厚さなどを随時計測できる装置の設置が必要である。
【0025】
(4)プロセス温度などのプロセス状態の測定誤差の同定が必要である。
【0026】
(5)各工場における隠れた変数の明確化が必要である。
【0027】
(6)外乱による確率因子の同定が必要である。
【0028】
これまで原理原則に基づく物理モデルによる材質予測を中心に行われてきたが、これのみでは実際の製品の材質予測には限界がある。なぜならば、予測精度には上記物理モデル以外の要因が大きく影響するからである。
【0029】
近年、物理モデルにかわり、ニューラルネットワーク(NN)モデルによる材質予測が注目されてきている。実際の製造現場においては、ある範囲のばらつきは存在するものの、製造条件に対して一定の特性が得られている。このことから、製造条件と材質との間に相関関係が存在しているはずである。そこで工場の材質に紐づけられた製造条件に関するビッグデータを教師データに用いて、NNにより相関関係をモデル化できれば、物理モデルに比較して高精度な材質予測モデルが構築できる可能性があり、これまでにもいくつかの先行文献が存在する。例えば、上記特許文献1には、NNを用いて冷延鋼板の材質と複数の材質影響因子との間の非線形な関係式を求め、この非線形な関係式に、冷延鋼板の目標材質と、材質影響因子のうちの1つである意図的制御因子を除く残りの材質影響因子を代入して上記目標材質が得られる意図的制御因子の目標値を求め、この目標値に上記意図的制御因子を制御して冷延鋼板間の材質バラツキが極めて小さい製造方法が記述されている。
【0030】
しかし、従来技術は薄板での特性と予測に関するものが主であり、H形鋼分野でのフランジ部、ウェブ部の厚さ、長さが広範囲に異なるような製品の機械的性能予測に関する技術はまだない。
【0031】
さらに、各H形鋼間の平均的なバラツキ低減に加えて、一本のH形鋼の長手方向の材質バラツキの低減も必要であるが、これらに関する技術はまだない。
【0032】
また、NNモデルには問題がある。製造現場では、様々な外乱が存在しており、プロセス条件に関する測定データと材質との関係は決定論的ではない。そのため、通常のNNでは、過学習により、汎化誤差を小さくできない可能性が有る。その対策として、NNにベイズ推定を組み合わせたベイジアンニューラルネットワーク(BNN)が有効であり、本実施形態では、予測モデルとしてBNNを用いる。
【0033】
また、このBNNによる予測モデルを用いて、フランジ部、ウェブ部の機械的性質をそれぞれ予測する。しかしながら、フランジ部、ウェブ部は同一の材質であったとしても、その2つの部位は最終形状(長さ、厚さ)が異なり、各圧延機の後段箇所、及び冷却装置の後段箇所での温度も異なることから、特定の部位に対して測定した温度情報で熱延履歴を代表させることができない。さらに各部位毎の冷却過程が異なることは、変態温度と変態により生成する相が異なる場合もあるため、圧延機毎にそれぞれの部位の温度、また可能であれば圧下率を考慮することが必要であった。
これに対応するため、既存のモデルで採用されていた主に板厚と特定部位(例えばウェブ部の幅方向1/2位置)温度の計測だけでは情報が不足しており、スラブサイズや各ロール間での狙いサイズ、仕上げサイズといった形状の情報、スラブ加熱温度やフランジ部、ウェブ部のそれぞれの部分を狙って測定した圧延ロール間の温度、冷却装置前の温度、冷却装置後の温度といった温度情報と、それにより製造された圧延材の長手方向での先端位置、中間位置、後端位置の結果を基にモデルを構築する。
【0034】
<熱間圧延ラインの構成の概略>
図1は、材質予測装置10の適用先の一例である熱間圧延ラインの概略構成の一例を示す図である。
【0035】
図1において、熱間圧延ラインは、加熱炉11と、粗圧延機13と、中間圧延機14と、仕上圧延機15と、冷却装置16と、を有する。
【0036】
加熱炉11は、スラブ(鋳片)Sを加熱する。
【0037】
粗圧延機13は、加熱炉11で加熱されたスラブSをブレークダウンミルで粗形材に粗圧延する。
【0038】
中間圧延機14は、粗圧延機13で粗圧延された粗形材を圧延してH形鋼にする。
図1に示す例では、中間圧延機14は、エッジャーロール圧延機14aと、ユニバーサル圧延機14bと、ユニバーサル圧延機14cと、エッジャーロール圧延機14dと、を有する。
【0039】
仕上圧延機15は、中間圧延機14で製造されたH形鋼をさらに所定のウェブ幅に整形するように仕上圧延を行う。
【0040】
冷却装置16は、仕上圧延機15により整形されたH形鋼を冷却水により冷却する。
【0041】
尚、熱間圧延ラインは、公知の技術で実現することができ、
図1に示す構成に限定されるものではない。
【0042】
また、加熱炉11の後段箇所において、加熱炉11から抽出したスラブSのサイズを随時計測するセンサ20が設けられている。これにより、センサ20は、スラブSの長手方向の各位置のサイズを計測して出力する。ここで、サイズとは、スラブSの厚みと幅との少なくとも何れか一方を意味する。
【0043】
また、粗圧延機13の後段箇所において、粗形材の温度及びサイズを随時計測するセンサ21が設けられている。これにより、センサ21は、粗形材の長手方向の各位置の温度及びサイズを計測して出力する。ここで、サイズとは、ウェブ部の厚みとフランジ部の厚みとの少なくとも何れか一方を意味する。
【0044】
また、中間圧延機14のユニバーサル圧延機14bの後段箇所において、H形鋼の温度及びサイズを随時計測するセンサ22が設けられている。これにより、センサ22は、H形鋼の長手方向の各位置の温度及びサイズを計測して出力する。ここで、サイズとは、ウェブ部の厚みとフランジ部の厚みとの少なくとも何れか一方を意味する。
【0045】
また、中間圧延機14のエッジャーロール圧延機14dの後段箇所において、H形鋼の温度を随時計測するセンサ23が設けられている。これにより、センサ23は、H形鋼の長手方向の各位置の温度を計測して出力する。
【0046】
また、仕上圧延機15の後段箇所において、H形鋼の温度及びサイズを随時計測するセンサ24が設けられている。これにより、センサ24は、H形鋼の長手方向の各位置の温度及びサイズを計測して出力する。ここで、サイズとは、ウェブ部の厚み、ウェブ部の長さ、フランジ部の厚み、及びフランジ部の長さの少なくとも何れか一つを意味する。ウェブ部の長さとは、
図5に示す長さHであり、フランジ部の長さとは、
図5に示す長さBである。
【0047】
また、冷却装置16の後段箇所において、冷却されたH形鋼の温度を随時計測するセンサ25が設けられている。これにより、センサ25は、H形鋼の長手方向の各位置の温度を計測して出力する。本実施形態では、センサ25は、H形鋼の断面全周の各点(例えば、断面の左右各フランジ部の上から1/6位位置、1/2位置、5/6位置、及びウェブ部板幅1/4位置、1/2位置、3/4位置)の温度を計測する。
【0048】
センサ20、21、22、23、24、25は、例えば、温度を計測するための赤外線センサや、画像を撮像し、撮像画像を解析して、サイズを計測するセンサを用いて構成されている。
【0049】
<材質予測装置の構成>
次に、材質予測装置の構成について説明する。
図2には、材質予測装置10の機能的な構成を示した。
【0050】
図2に示すように、材質予測装置10は、測定データ取得部32、材質データ取得部34、学習部36、予測モデル記憶部38、予測部40、及び表示部42を備える。
【0051】
測定データ取得部32は、学習時に、複数本のH形鋼の各位置について、熱間圧延ラインにおける複数のセンサ20、21、22、23、24、25で測定される、温度及びサイズの少なくとも一方を取得する。
【0052】
具体的には、測定データ取得部32は、学習時に、入力部(図示省略)により入力された化学組成を取得する。また、測定データ取得部32は、スラブSの長手方向の各位置に対応する、センサ20の出力(サイズ)を取得する。また、測定データ取得部32は、粗形材の長手方向の各位置に対応する、センサ21の出力(サイズ及び温度)を取得する。
また、測定データ取得部32は、H形鋼の長手方向の各位置に対応する、センサ22、23、24、25の各々の出力(サイズ及び/又は温度)を取得する。なお、先端部、中間部、及び後端部を含む複数の位置について、熱間圧延ラインにおける複数のセンサ20、21、22、23、24、25で測定される、温度及びサイズの少なくとも一方を取得するようにしてもよい。
【0053】
測定データ取得部32は、予測時に、H形鋼の長手方向の各位置について、熱間圧延ラインにおける複数のセンサ20、21、22、23、24、25で測定される、温度及びサイズの少なくとも一方を取得する。
【0054】
具体的には、測定データ取得部32は、予測時に、入力部(図示省略)により入力された化学組成を取得する。また、測定データ取得部32は、スラブSの長手方向の各位置に対応する、センサ20の出力(サイズ)を取得する。また、測定データ取得部32は、粗形材の長手方向の各位置に対応する、センサ21の出力(サイズ及び温度)を取得する。
また、測定データ取得部32は、H形鋼の長手方向の各位置に対応する、センサ22、23、24、25の各々の出力(サイズ及び/又は温度)を取得する。
【0055】
材質データ取得部34は、学習時に、入力部(図示省略)により入力された、複数本のH形鋼のウェブ部の各位置及びフランジ部の各位置から採取した試料について計測された材質データを取得する。材質データは、例えば、降伏応力及び引張り強さの少なくとも一方を含む。
【0056】
学習部36は、複数本のH形鋼の各々について、当該H形鋼のウェブ部の各位置及びフランジ部の各位置に対する、測定データ取得部32によって取得した各種測定データ及び材質データ取得部34によって取得した材質データからなる教師データを作成する。
【0057】
学習部36は、熱間圧延ラインで製造されるH形鋼の長手方向における各位置についての各種測定データに基づいてH形鋼の各位置の材質を予測するためのニューラルネットワークである予測モデルを、作成した教師データに基づいて学習し、予測モデル記憶部38に格納する。本実施形態では、ニューラルネットワークとして、ベイジアンニューラルネットワークを用いる。また、化学組成と、加熱炉11の後段箇所における、スラブSの長手方向の各位置に対応するサイズと、粗圧延機13の後段箇所における、粗形材の長手方向の各位置に対応するサイズ及び温度と、中間圧延機14のユニバーサル圧延機14bの後段箇所における、H形鋼の長手方向の各位置に対応するサイズ及び温度と、中間圧延機14のエッジャーロール圧延機14dの後段箇所における、H形鋼の長手方向の各位置に対応する温度と、仕上圧延機15の後段箇所における、H形鋼の長手方向の各位置に対応する温度及びサイズと、冷却装置16の後段箇所における、H形鋼の長手方向の各位置に対応する温度とをニューラルネットワークの入力とする。また、H形鋼のウェブ部の各位置及びフランジ部の各位置に対する、降伏応力及び引張り強さの少なくとも一方をニューラルネットワークの出力とする。
【0058】
また、学習部36は、各教師データについて、当該教師データの各種測定データをニューラルネットワークに入力したときの出力と、当該教師データの材質データとの差分を表す損失関数が最小となるように、ニューラルネットワークを学習する。
【0059】
予測部40は、予測モデル記憶部38に格納された予測モデルを用いて、測定データ取得部32によって取得された各位置についての各種測定データから、H形鋼のウェブ部の各位置及びフランジ部の各位置の材質データを予測する。
【0060】
表示部42は、予測部40による予測結果を表示する。
【0061】
次に、材質予測装置10で実行される学習処理について、
図3に示すフローチャートを参照して説明する。なお、
図3に示す学習処理は、複数本のH形鋼の各位置について、熱間圧延ラインにおける複数のセンサ20、21、22、23、24、25で測定された、温度及びサイズの少なくとも一方が入力されるとともに、複数本のH形鋼の各位置から採取した試料について計測された材質データが入力されたときに実行される。
【0062】
ステップS100では、測定データ取得部32は、複数本のH形鋼の各位置について、熱間圧延ラインにおける複数のセンサ20、21、22、23、24、25で測定された、温度及びサイズの少なくとも一方を取得する。また、測定データ取得部32は、複数本のH形鋼の各々について、入力部(図示省略)により入力された化学組成を取得する。
【0063】
ステップS102では、材質データ取得部34は、入力された、複数本のH形鋼の各位置から採取した試料について計測された材質データを取得する。
【0064】
ステップS104では、学習部36は、複数本のH形鋼の各々について、当該H形鋼のウェブ部の各位置及びフランジ部の各位置に対する、測定データ取得部32によって取得した各種測定データ及び材質データ取得部34によって取得した材質データからなる教師データを作成する。
【0065】
ステップS106では、学習部36は、熱間圧延ラインで製造されるH形鋼の長手方向における各位置についての各種測定データに基づいてH形鋼の各位置の材質を予測するためのニューラルネットワークである予測モデルを、作成した教師データに基づいて学習し、予測モデル記憶部38に格納する。
【0066】
次に、材質予測装置10で実行される材質予測処理について、
図4に示すフローチャートを参照して説明する。なお、
図4に示す材質予測処理は、H形鋼の長手方向の各位置について、熱間圧延ラインにおける複数のセンサ20、21、22、23、24、25で測定された、温度及びサイズの少なくとも一方が入力されたときに実行される。
【0067】
ステップS110では、測定データ取得部32は、H形鋼の長手方向の各位置について、熱間圧延ラインにおける複数のセンサ20、21、22、23、24、25で測定される、温度及びサイズの少なくとも一方を取得する。また、測定データ取得部32は、入力部(図示省略)により入力された化学組成を取得する。
【0068】
ステップS112では、予測部40は、予測モデル記憶部38に格納された予測モデルを用いて、測定データ取得部32によって取得された各位置についての各種測定データから、H形鋼のウェブ部の各位置及びフランジ部の各位置の材質データを予測する。
【0069】
ステップS114では、表示部42は、予測部40による予測結果を表示して、材質予測処理を終了する。
【0070】
<実施例>
まず、予測モデルの構築の際の学習では、教師データとして、複数本のH形鋼の先端部、中間部、及び後端部の測定データと、当該先端部、中間部、及び後端部の断面各位置(
図5)から採取した試料から測定した材質データとを利用する。
図5では、フランジ部の1/6位置、1/2位置、5/6位置、ウェブ部の1/4位置、1/2位置、3/4位置を、断面の各位置とする例を示している。
【0071】
学習で構築された予測モデルに、特定のH形鋼の長手方向の各位置(先端部、中間部、及び後端部)での測定データを入力することで、H形鋼の長手方向の各位置(先端部、中間部、及び後端部)の材質を予測する。
【0072】
学習に使用する教師データの例としては、測定データおよび材質データとして下記のものを使用する。
【0073】
測定データは、形状データ(加熱炉11の後段箇所におけるスラブの断面サイズ(幅、厚さ)、粗圧延機13の後段箇所における、粗形材のウェブ部の厚さ、及びフランジ部の厚さ、中間圧延機14のユニバーサル圧延機14bの後段箇所における、H形鋼のウェブ部の厚さ、及びフランジ部の厚さ、並びに仕上圧延機15の後段箇所における、H形鋼のウェブ部の厚さ及び長さ、フランジ部の長さ及び厚さ)と、プロセスデータ(圧延時総ひずみ量、粗圧延機13の後段箇所における、粗形材のウェブ部の温度、及びフランジ部の温度、中間圧延機14のユニバーサル圧延機14bの後段箇所における、H形鋼のウェブ部の温度、及びフランジ部の温度、中間圧延機14のエッジャーロール圧延機14dの後段箇所における、H形鋼のウェブ部の温度、及びフランジ部の温度、仕上圧延機15の後段箇所における、H形鋼のウェブ部の温度、及びフランジ部の温度、並びに冷却装置16の後段箇所における、H形鋼の断面全周温度)を含む。ここで、断面全周温度は、断面の左右各フランジ部の上から1/6位位置、1/2位置、5/6位置、及びウェブ部板幅1/4位置、1/2位置、3/4位置の各測定点の温度である(
図5参照)。
【0074】
入力として、測定データの他に、化学組成(C、Si、Mn、P、S、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、V、Ti、N、Al)と、組成式(焼入れ性(炭素当量:例えば、Ceqなど、参考文献1参照)、析出強化に寄与する析出物の体積率に関係する指標[Nb]1/2)とを含む。なお、ここでいうAlは鋼に含まれる総Al量のことを指す。
[参考文献1]:鈴木、鉄と鋼 70 (1984) pp.2179-2187
【0075】
材質データは、上降伏点と、下降伏点と、引張強度と、上降伏点に対する降伏比と、下降伏点に対する降伏比とを含む。
【0076】
予測モデルであるベイジアンニューラルネットワークの構造として、入力層と出力層の間に隠れ層として3層設ける。隠れ層の各層のニューロン数は、第1層から順に、128、64、32とした。また、活性化関数はすべて双曲線正接関数(ハイパボリックタンジェント関数)とした。
【0077】
学習したニューラルネットワークを用いて材質データを予測した例が
図6、
図7である。例えば、フランジ部の1/6位置における、上降伏点と、下降伏点と、引張強度と、上降伏点に対する降伏比と、下降伏点に対する降伏比の実測値と、予測モデルによる予測値の相関を
図6に示した。また、ウェブ部の1/2位置における、上降伏点と、下降伏点と、引張強度と、上降伏点に対する降伏比と、下降伏点に対する降伏比の実測値と、予測モデルによる予測値の相関を
図7に示した。上記
図6、
図7に示したように、良い相関が得られており、精度よく予測できていることが分かる。
【0078】
このように、本実施形態では、H形鋼の長手方向における各位置について、熱間圧延ラインにおける複数のセンサで測定される複数の測定データを取得し、ニューラルネットワークを用いて、H形鋼の各位置の材質を予測することにより、H形鋼の長手方向の各位置について精度よく材質を予測することができる。
【0079】
また、複数本のH形鋼の各位置について、熱間圧延ラインにおける複数のセンサで測定される複数の測定データを取得し、各位置についての複数の測定データと各位置について計測されたH形鋼の材質とに基づいて、H形鋼の各位置の材質を予測するためのニューラルネットワークを学習することにより、H形鋼の長手方向の各位置について精度よく材質を予測することができる。
【0080】
また、H形鋼の長手方向の各位置について精度よく材質を予測することができるため、種々のサイズに対するH形鋼についての最適な製造条件を決定することができる。
【0081】
また、事前に計測された化学成分から好ましい製造条件を決定することができるため、製品歩留まり向上を実現することができる。
【0082】
そこで、本実施形態では、ベイジアンニューラルネットワークによるH形鋼の長手方向の各位置の材質予測を行う。
【0083】
また、ニューラルネットワークの学習では、H形鋼の長手方向の各位置についての測定データ及び材質データからなる教師データを用いる。また、材質検査において不合格と判断されたH形鋼についての教師データも用いる。このとき、データ洗浄により、材質検査において合格と判断されたH形鋼についての教師データを減らすことにより、不合格と判断されたH形鋼についての教師データの割合を高くする。
【0084】
これにより、H形鋼の長手方向の各位置の材質予測を高精度化することができる。また、H形鋼の長手方向の端部、中間部について採取した試料に対して計測した材質データを用いるため、教師データを簡易に生成することができる。
【0085】
<変形例>
上記の実施の形態では、材質予測処理と学習処理とを1つの装置で実現する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、材質予測処理を行う予測装置と学習処理を行う学習装置とに分けて構成してもよい。この場合には、学習装置は、測定データ取得部32、材質データ取得部34、学習部36、及び予測モデル記憶部38を備える。予測装置は、測定データ取得部32、予測部40、及び表示部42を備える。
【0086】
また、本実施形態では、加熱炉11の後段箇所、粗圧延機13の後段箇所、中間圧延機14のユニバーサル圧延機14bの後段箇所、中間圧延機14のエッジャーロール圧延機14dの後段箇所、仕上圧延機15の後段箇所、冷却装置16の後段箇所にセンサを設置した場合について説明したが、設置箇所はこれに限られるものではない。他の箇所にセンサを設置してもよい。
【0087】
また、ニューラルネットワークの入力となる測定データは、上記で説明した例に限定されるものではない。また、ニューラルネットワークの出力となる材質データは、上記で説明した例に限定されるものではない。
【0088】
また、本実施形態では、H形鋼の材質を予測する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、H形鋼の特性であれば、材質以外の特性を予測するようにしてもよく、例えば、形状などの特性を予測するようにしてもよい。その場合、予測の入力として用いる測定データは、予測する特性に対して選定された影響因子に係る測定データとする。
【0089】
また、本実施形態では、先端部、中間部、及び後端部の各位置について測定データ及び材質データを取得する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。先端部、中間部及び後端部の少なくとも何れか一方の各位置について、測定データ及び材質データを取得するようにしてもよい。この場合、複数本のH形鋼の端部から試料を採取し、測定した材質データを用いて教師データを作成すればよいため、教師データの作成負担を軽減することができる。
【0090】
以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【符号の説明】
【0091】
10 材質予測装置
11 加熱炉
13 粗圧延機
14 中間圧延機
15 仕上圧延機
16 冷却装置
20、21、22、23、24、25 センサ
32 測定データ取得部
34 材質データ取得部
36 学習部
38 予測モデル記憶部
40 予測部
42 表示部