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特開2024-113270産業機器用制御システム及びノイズフィルタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113270
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】産業機器用制御システム及びノイズフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20240815BHJP
   B25J 19/06 20060101ALI20240815BHJP
   H03H 17/00 20060101ALI20240815BHJP
   H04L 25/03 20060101ALI20240815BHJP
   G05B 19/042 20060101ALN20240815BHJP
【FI】
B25J19/00 J
B25J19/06
H03H17/00 601C
H04L25/03 C
G05B19/042
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018127
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩也
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 正和
(72)【発明者】
【氏名】長松 健司
【テーマコード(参考)】
3C707
5H220
5K029
【Fターム(参考)】
3C707AS02
3C707BS10
3C707CY12
3C707JS07
5H220AA05
5H220BB09
5H220CC06
5H220CC07
5H220CX01
5H220CX05
5H220JJ07
5H220JJ32
5H220JJ34
5H220JJ36
5H220KK03
5H220LL02
5H220MM02
5K029AA02
(57)【要約】
【課題】ノイズ耐性の向上を図りつつ通信量の増加に対応可能な産業機器用制御システムを実現すること。
【解決手段】ロボット15は、サーボモータ31及びロータリエンコーダ32が搭載されたロボット本体21と、ロボット本体21を制御するロボットコントローラ52とを備えている。ロータリエンコーダ32は信号線93を介してロボットコントローラ52の入出力部62に接続されており、入出力部62にはロータリエンコーダ32から入力信号が入力される。入出力部62では、ノイズ除去部66におけるフィルタ処理を経てノイズが除去された出力信号が生成され、当該出力信号は駆動制御部61へ出力されることとなる。ノイズ除去部66には、多数決によって多数派となる論理値を特定する多数決論理フィルタ部と、多数決論理フィルタ部による多数決結果を踏まえて出力信号を生成する出力信号生成部とが設けられている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機器を対象として制御を行う産業機器用制御システムであって、
入力された入力信号をフィルタ処理し当該フィルタ処理を経ることでノイズを除去した信号を出力信号として出力する入出力部を備え、
前記入力信号は、予め設定されている単位期間に亘って値が一定となるようにして生成される信号であり、
前記入出力部は、前記フィルタ処理を実行する手段として、
前記単位期間よりも短くなるように設定された判定周期毎に前記入力信号の値を判定し、当該判定を前記単位期間内で複数回繰り返すように構成された判定手段と、
前記判定手段による所定回数分の判定結果について最も多く判定された値を特定する特定手段と、
前記特定手段による特定結果に応じた信号となるようにして前記出力信号を生成可能な生成手段と
を有している産業機器用制御システム。
【請求項2】
前記所定回数は、前記単位期間を前記判定周期で除した数以下の整数となるように設定されており、
前記特定手段による前記特定は周期的に実行される構成となっており、
前記特定手段により前記特定が行われる周期の長さは、前記判定周期の長さ以上且つ前記単位期間の長さ以下となるように設定されている請求項1に記載の産業機器用制御システム。
【請求項3】
前記所定回数は、前記単位期間を前記判定周期で除した数と一致するように規定されており、
直近となる前記所定回数分の前記判定結果を記憶する記憶手段を備え、
前記特定手段は、前記判定手段による前記判定の都度、前記記憶手段に記憶されている前記判定結果に基づいて前記特定を行う請求項1又は請求項2に記載の産業機器用制御システム。
【請求項4】
前記入力信号は、第1所定値及び第2所定値の何れかとなる二値信号であり、
前記特定手段は、前記所定回数分の判定結果について前記第1所定値となった回数と前記第2所定値となった回数とを比較することにより前記第1所定値及び前記第2所定値のうち判定された回数が多数となる一方を特定し、
前記生成手段は、
前記特定手段による特定結果が前記第1所定値となった回数が多数であるとする第1結果となった場合に前記出力信号として第1信号を生成する手段と、前記特定手段による特定結果が前記第2所定値となっている回数が多数であるとする第2結果となった場合に前記出力信号として第2信号を生成する手段とを有し、
前記第1信号及び前記第2信号の一方の出力が開始されてから前記判定周期よりも長く且つ前記単位期間よりも短い期間である所定期間が経過するまでは、前記特定手段による前記特定及び前記特定手段による特定結果の何れかを無効とし、前記一方の出力が継続されるようにして前記出力信号を生成する請求項1に記載の産業機器用制御システム。
【請求項5】
産業機器を対象として制御を行う産業機器用制御システムに適用され、入力された入力信号をフィルタ処理し当該フィルタ処理を経ることでノイズを除去した信号を出力信号として出力するノイズフィルタであって、
前記入力信号は、予め設定されている単位期間に亘って値が一定となるようにして生成される信号であり、
前記単位期間よりも短くなるように設定された判定周期毎に前記入力信号の値を判定し、当該判定を前記単位期間内で複数回繰り返すように構成された判定手段と、
前記判定手段による所定回数分の判定結果について最も多く判定された値を特定する特定手段と、
前記特定手段による特定結果に応じた信号となるようにして前記出力信号を生成可能な生成手段と
を有しているノイズフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機器用制御システム及び産業機器用制御システムに適用されるノイズフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
工場等で用いられる産業用ロボット等の産業機器には、ソレノイドやサーボモータ等の電動式アクチュエータが搭載されているものがある。この種の産業機器においては、電動式アクチュエータへ駆動電力を供給するための電源線をノイズ源としたノイズ(高電圧サージノイズ)が信号線に印加される可能性がある。特に強電線である電源線と弱電線である信号線とが近接配置される場合にはそのような懸念が一層強くなる。また、工場においては産業機器が多数設置されることが多く、他の産業機器の電源線等がノイズ源になる可能性もある。信号線に印加されたノイズによって信号の送受信が適切に行われなくなることは、産業機器の動作安定性等を損なう要因になる。そこで、産業機器用の制御システムにおいては、ノイズの影響を抑えるべく、ノイズ除去用のフィルタ回路(ノイズフィルタ)を搭載するといった対策が講じられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-63406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、産業機器の多機能化や高機能化等の様々な理由から制御システムにおける通信量は増加傾向にある。例えば、産業用ロボットにおいては、多関節化や安全機能の実装要求によって通信量が増加している。ここで、上述したフィルタ回路を用いてノイズの影響を抑えることには技術的意義があるものの、通信量の増加によって以下の懸念が顕在化する。すなわち、産業機器用の制御システムではPID制御等の各種制御にて通信データ等を参照するサイクルタイムが予め規定されているが、このサイクルタイムの間延びを抑えつつ通信量の増加に対応しようとすれば、送受信の効率化(通信の高速化)を実現する必要が生じる。ここで、ノイズ耐性の向上を図る上でノイズを除去するための所要期間が嵩むことは、その妨げになる。このように、産業機器用の制御システムにおいては、ノイズ耐性の向上を図りつつ通信量の増加に対応する上でノイズの除去に係る構成に未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記例示した課題等に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、ノイズ耐性の向上を図りつつ通信量の増加に対応可能な産業機器用制御システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段について記載する。
【0007】
第1の手段.産業機器を対象として制御を行う産業機器用制御システムであって、
入力された入力信号をフィルタ処理し当該フィルタ処理を経ることでノイズを除去した信号を出力信号として出力する入出力部を備え、
前記入力信号は、予め設定されている単位期間に亘って値が一定となるようにして生成される信号であり、
前記入出力部は、前記フィルタ処理を実行する手段として、
前記単位期間よりも短くなるように設定された判定周期毎に前記入力信号の値を判定し、当該判定を前記単位期間内で複数回繰り返すように構成された判定手段と、
前記判定手段による所定回数分の判定結果について最も多く判定された値を特定する特定手段と、
前記特定手段による特定結果に応じた信号となるようにして前記出力信号を生成可能な生成手段と
を有している。
【0008】
上記構成によれば、判定手段による所定回数分の判定結果について最も多く判定された入力信号の値を特定し、その特定結果に応じた信号となるようにして出力信号が生成される。入力信号にノイズが印加されることで、入力信号の値が部分的(瞬間的)に変化したとしても、当該変化した部分については特定手段による特定→生成手段によって除去し得る。これにより、ノイズの印加(混入)による信号の改変を抑制できる。
【0009】
ここで、上述の如く最も多く判定された値に基づいて出力信号が生成される構成は、以下の理由から、通信量の増加に伴った通信速度の低下を抑制する上で有利である。すなわち、入力信号の幅(上記単位期間)を規定する上では、産業機器自身やその周辺で発生し得るノイズの印加の幅(印加期間)よりも長くすることが好ましい、具体的には印加されるノイズによって本来の信号(値)を適切に検出できなくなることを回避可能な長さとすることが好ましい。一方で、単位期間を過度に長くしてしまうとノイズ耐性の向上が期待できる反面、入力信号が間延びして多量の情報を短期間で送受信することは難しくなる。従来のフィルタのように、入力信号において予め設定された長さよりも短い部分をノイズとして除去する構成では、入力信号がノイズによって前後に分かれる等した場合に各部分が除去され得る。つまり、本来の信号が消失し得る。このような事情を考慮すると、想定されるノイズの印加期間の3倍+αとなるようにして単位期間を設定する必要が生じる。これに対して、第1の手段に示す構成(特定手段等)では、本来の信号の消失を抑制する上で、最も短いパターンでは単位期間を想定されるノイズの印加期間の2倍+αとなるように設定することが可能となる。つまり、単位時間の短縮に寄与できる。これにより、産業機器用制御システムにおける通信量の増加に伴った通信速度の低下を抑制できる。
【0010】
第2の手段.産業機器を対象として制御を行う産業機器用制御システムに適用され、入力された入力信号をフィルタ処理し当該フィルタ処理を経ることでノイズを除去した信号を出力信号として出力するノイズフィルタであって、
前記入力信号は、予め設定されている単位期間に亘って値が一定となるようにして生成される信号であり、
前記単位期間よりも短くなるように設定された判定周期毎に前記入力信号の値を判定し、当該判定を前記単位期間内で複数回繰り返すように構成された判定手段と、
前記判定手段による所定回数分の判定結果について最も多く判定された値を特定する特定手段と、
前記特定手段による特定結果に応じた信号となるようにして前記出力信号を生成可能な生成手段と
を有している。
【0011】
上記構成によれば、産業機器用制御システムにおける通信量の増加に伴った通信速度の低下を抑制可能なデジタルフィルタの実現に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態におけるロボットシステムを示す概略図。
図2】ロボットの正面斜視図。
図3】ロボットシステムの電気的構成を示すブロック図。
図4】(a)ロボットコントローラとロータリエンコーダとの関係を示す概略図、(b)ポジションデータを例示した概略図、(c)ノイズを示す概略図。
図5】従来のデジタルフィルタを示す概略図。
図6】ノイズ除去に係る電気的構成を示すブロック図。
図7】(a)フィルタ処理を示すフローチャート、(b)信号設定処理を示すフローチャート。
図8】(a)ノイズ非発生時の出力信号の生成の流れを示すタイミングチャート、(b)各タイミングにおける判定履歴と多数決結果とを示す概略図。
図9】(a)ノイズ発生時の出力信号の生成の流れを示すタイミングチャート、(b)各タイミングにおける判定履歴と多数決結果とを示す概略図。
図10】(a)ノイズ発生時の出力信号の生成の流れを示すタイミングチャート、(b)各タイミングにおける判定履歴と多数決結果とを示す概略図。
図11】(a)ノイズ発生時の出力信号の生成の流れを示すタイミングチャート、(b)各タイミングにおける判定履歴と多数決結果とを示す概略図。
図12】ノイズ非発生時の出力信号の生成の流れを示すタイミングチャート。
図13】ノイズ発生時の出力信号の生成の流れを示すタイミングチャート。
図14】第2の実施形態における車両を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
以下、工場などで用いられるロボットシステムに具現化した第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1に示すように、工場の一画には、前工程にて成型されたワークWを搬送するコンベア11が設けられている。コンベア11によって受渡位置へ配置されたワークWは当該コンベア11に併設された垂直多関節型の産業用ロボット(ロボット15という)によってケースに収容される。ワークWはケースに収容された状態でコンベア12又はコンベア13により後工程(例えば加工工程や組付工程)に搬送されることとなる。
【0015】
図2に示すように、ロボット15の本体部(ロボット本体21)は、台座等に固定されるベース部22と、当該ベース部22により支持されているショルダ部23と、ショルダ部23により支持されている下アーム部24と、下アーム部24により支持されている第1上アーム部25と、第1上アーム部25により支持されている第2上アーム部26と、第2上アーム部26により支持されている手首部27と、手首部27により支持されているフランジ部28とを有している。
【0016】
ベース部22及びショルダ部23には、それらベース部22及びショルダ部23を連結する第1関節部が形成されており、ショルダ部23は第1関節部の連結軸(第1軸AX1)を中心として水平方向に回動可能となっている。ショルダ部23及び下アーム部24には、それらショルダ部23及び下アーム部24を連結する第2関節部が形成されており、下アーム部24は第2関節部の連結軸(第2軸AX2)を中心として上下方向に回動可能となっている。下アーム部24及び第1上アーム部25には、それら下アーム部24及び第1上アーム部25を連結する第3関節部が形成されており、第1上アーム部25は第3関節部の連結軸(第3軸AX3)を中心として上下方向に回動可能となっている。第1上アーム部25及び第2上アーム部26には、それら第1上アーム部25及び第2上アーム部26を連結する第4関節部が形成されており、第2上アーム部26は第4関節部の連結軸(第4軸AX4)を中心として捻り方向に回動可能となっている。第2上アーム部26及び手首部27には、それら第2上アーム部26及び手首部27を連結する第5関節部が形成されており、手首部27は第5関節部の連結軸(第5軸AX5)を中心として上下方向に回動可能となっている。手首部27及びフランジ部28には、それら手首部27及びフランジ部28を連結する第6関節部が形成されており、フランジ部28は第6関節部の連結軸(第6軸AX6)を中心として捻り方向に回動可能となっている。各関節部には、関節部を回動させる電動式アクチュエータとしてのサーボモータ31と、サーボモータ31に発生する動力を伝達する伝達機構と、各サーボモータ31に付属のロータリエンコーダ32とが配設されており、サーボモータ31及びロータリエンコーダ32はロボットコントローラ52に接続されている(図3参照)。
【0017】
ショルダ部23、下アーム部24、第1上アーム部25、第2上アーム部26、手首部27、フランジ部28は、一連となるように配列されることでロボット本体21におけるアームを構成しており、当該アームの先端部であるフランジ部28にはハンドタイプのエンドエフェクタ29が取り付けられている。このエンドエフェクタ29によってワークWが把持される。
【0018】
ここで、図3を参照して、ロボットシステム10の電気的構成について補足説明する。ロボット本体21に付属の上記ロボットコントローラ52には、サーボモータ31等の駆動制御を行う駆動制御部61と、サーボモータ31、ロータリエンコーダ32及び上位コントローラ51(例えばティーチングペンダントやPC)について信号の入出力を担う入出力部62とが設けられている。駆動制御部61は、上位コントローラ51から箱詰め作業用の動作指示を受けて動作目標位置を特定する。そして、当該動作目標位置と、ロータリエンコーダ32から取得したポジションデータ、すなわちサーボモータ31の回転角度(回転位置)を示すエンコーダ値とに基づいてサーボモータ31の駆動制御を行う。
【0019】
入出力部62には、ロボットコントローラ52の外部から入力された信号(以下、入力信号という)、例えば上位コントローラ51からの動作指示やロータリエンコーダ32からのポジションデータ等からノイズを除去するノイズ除去部66が設けられている。このノイズ除去部66にてノイズが除去された信号(後述する出力信号)が駆動制御部61に入力される。駆動制御部61には、当該出力信号からデータ(後述する論理値)を検出するデータ検出部(例えばフリップフロップ)が設けられており、このデータ検出部における検出結果に基づいて上述した駆動制御が実行される。
【0020】
ここで、ロボットシステム10については、上述した入力信号を含む各種信号にノイズが印加される可能性がある。入力信号に印加されるノイズは、ロボット15自身の動きに起因するものと、ロボット15の周辺機器の動きに起因するものとに大別される。ここで、入力信号にノイズが印加されるメカニズムについて補足説明する。
【0021】
先ず、ロボット15の動きに起因するものについて説明する。上述したようにロボット15にはサーボモータ31が多数搭載されており、それらサーボモータ31は駆動制御部61によって駆動制御(PWM制御)される。具体的には、各サーボモータ31は動力線92を介してロボットコントローラ52に接続されており、それら動力線92を通じて駆動制御部61からサーボモータ31にPWMパルスが出力される。このPWMパルスのエッジ(立ち上がり/立ち下がり部分)においては、動力線92の周辺の磁界が変化する。本実施形態では、各サーボモータ31に併設されたロータリエンコーダ32についても信号線93を介してロボットコントローラ52に各々接続されており、上位コントローラ51についても信号線91を介してロボットコントローラ52に接続されている。このため、これら信号線91,93と動力線92とが近接又は接触した状態で上述した磁界の変化が生じると、電磁誘導によって信号線91,93(詳しくは送受信中の信号)にノイズが印加され得る。
【0022】
また、図1に示したように、ロボット15が配置された箱詰め工程では、当該ロボット15とコンベア11~13との協働によってワークWが搬送される。コンベア11~13には駆動部としてモータ11a~13aが設けられており、それらモータ11a~13aには動力線11b~13bを介して電力が供給されている(図1参照)。モータ11a~13aは、箱詰め作業の進行状況等に応じてON/OFFが制御され、ON/OFFのタイミングでは動力線11b~13bの周辺の磁界が変化することとなる。磁界の変化の影響が及ぶ範囲に上記信号線91,93が位置すると、電磁誘導によって信号線91,93(詳しくは送受信中の信号)にノイズが印加され得る。
【0023】
信号線91,93に印加されたノイズについては、信号の適切な送受信を妨げる要因になる可能性がある。例えば図4(a)に示すように、ロボットコントローラ52の入出力部62とロータリエンコーダ32の入出力部41とを繋ぐ信号線93は、ロボットコントローラ52からロータリエンコーダ32に送信要求コマンドが送信され、当該送信要求コマンドの受信を契機として回転角度(回転位置)を示すポジションデータがロータリエンコーダ32からロボットコントローラ52に送信される通信ラインを構成している(所謂Uart通信)。送信要求コマンドにノイズが印加された場合には、当該ノイズの影響により、ロータリエンコーダ32が送信要求コマンドを正常に受信できない可能性が生じる。また、ポジションデータにノイズが印加された場合には、当該ノイズの影響により、ロボットコントローラ52がポジションデータを正常に受信できない可能性が生じる。
【0024】
ここで、送信要求コマンド及びポジションデータは、何れも複数のビットで構成されており、各ビットは「1」及び「0」の何れかの値となる。例えば、図4(b)にはポジションデータを例示している。ポジションデータは、通信開始のトリガとなるスタートビット、複数(8個)のデータビット、通信終了のトリガとなるストップビットの各値で構成される。ビットの値=「1」に対応する信号はHIGHレベル信号、ビットの値=「0」に対応する信号はLOWレベル信号に対応付けられており、ロータリエンコーダ32のデータ生成部42では、サーボモータ31の回転位置を特定し、その特定した位置をHIGHレベル信号及びLOWレベル信号の組み合せに置き換えるようにしてポジションデータを生成する。なお、HIGHレベル信号及びLOWレベル信号については、HIGHレベル信号=閾値よりも高い第1の電圧となる信号、LOWレベル信号=当該閾値よりも低い第2の電圧となる信号となるように区別されているのであれば足り、HIGHレベル信号及びLOWレベル信号の具体的な電圧については任意である。また、HIGHレベル信号及びLOWレベル信号は、上記閾値を跨がないのであれば足り、HIGHレベル信号及びLOWレベル信号値の各値がある程度の幅を有することを否定するものではない。
【0025】
以下、説明の便宜上、入力信号において各ビットに対応する個々の信号部分を「単位信号」、ビットの値=「1」を示す論理値を論理値「H」、ビットの値=「0」を示す論理値を論理値「L」ともいう。
【0026】
各単位信号の出力期間、すなわちデータ周期については一定(本実施形態では125ns)となるように規定されている。このデータ周期については、送信側と受信側とで同期するように構成されており、送信側と受信側でタイミングを合わせてデータをやり取り可能となっている。例えばロボットコントローラ52(駆動制御部61)では、スタートビットに対応した単位信号の受信後は、ストップビットを受信するまで上記データ周期毎にデータの検出(データサンプリング)を実行する。データサンプリングのタイミングについては、各単位信号(出力期間)の中央となるように設定され、通信に若干のずれが生じた場合であっても論理値を適正に取得できるように配慮されている。
【0027】
なお、ロボットコントローラ52及びロータリエンコーダ32には、上記データ周期よりも短い周期でクロック(本実施形態では25ns)を発生させる内部クロック63,43(図6参照)が設けられており、クロック周期×N(2以上の整数:本実施形態では5)が上記データ周期に相当する。
【0028】
図4(c)では、図4(b)における2個目のデータビットに対応した単位信号にノイズが印加された場合について例示している。具体的には、2個目のデータビットについては論理値「L」であり単位信号としてLOWレベル信号が設定されている。この単位信号の出力は、ta1のタイミングにて開始され、ta4のタイミングにて終了される。この出力期間中にノイズ(+側のノイズ)が印加されることにより、実際の波形がta1~ta2の区間ではHIGHレベル、ta2~ta3の区間ではLOWレベル、ta3~ta4の区間ではHIGHレベルとなっている。仮にta2~ta3の区間にてサンプリングが実行された場合には、本来であれば論理値「L」と判定されるはずの単位信号がノイズの影響によって論理値「H」と誤判定されることとなる。つまり、ロータリエンコーダ32からのポジションデータがノイズの影響で改変され、ロボットコントローラ52に不適切なポジションデータが届くことになる。
【0029】
なお、図示は省略しているが、ポジションデータ等の入力信号(デジタル信号)には、データが適切に送信されたかを確認するためのビット(パリティビット)が含まれており、このビットの値をデータビットの値と照合することによりデータの改変等の見逃しを抑制することが可能となっている。しかしながら、このような対策が講じられていたとしても、適正なデータの受信ができなければ、制御の遅れや誤動作等の不都合が生じやすくなるため、ノイズの影響を抑えるための対策を講じることが好ましい。
【0030】
このような事情から、ロボットシステム(制御システム)には送受信される信号からノイズを除去するためのデジタルフィルタが実装されることがある。従来のデジタルフィルタにおいては、ロボットの仕様や設置される周辺機器との関係から印加されるノイズ(幅が最大となるノイズ)を想定し、この想定したノイズを除去するようにフィルタが設定される。
【0031】
ここで、図5の例を参照して従来のデジタルフィルタの動きについて説明する。なお、図5には、ロボットの仕様や設置される周辺機器との関係から印加される最大のノイズの幅(以下、想定ノイズ幅ともいう)を50ns(2クロック分)と想定し、50ns以下の幅となる特定の波形をノイズとして除去する構成について例示している。
【0032】
図5(a)に示す例では、印加されたノイズによって単位信号が、LOWレベルとなる第1パート(tb1~tb2の区間)、HIGHレベルとなる第2パート(tb2~tb3の区間)、LOWレベルとなる第3パート(tb3~tb4の区間)に分かれている。これらの3つのパートについては幅が何れも20ns以下となるため、デジタルフィルタによるフィルタ処理によってLOWレベル部分(本来の信号)が消失する。
【0033】
上述したような信号消失については、以下の対策を講じることにより回避される。すなわち、想定ノイズ幅の3倍+α(例えば1クロック分)の長さとなるように単位信号の幅を設定することで回避できる。図5(b)に示す例では、想定ノイズ幅=2クロック分として、2クロック分×3+1クロック分=7クロック分の幅となるように単位信号の長さが規定されている。この単位信号は、印加されたノイズによって、LOWレベルとなる第1パート(tc1~tc2の区間)、HIGHレベルとなる第2パート(tc2~tc3の区間)、LOWレベルとなる第3パート(tc3~tc4の区間)に分かれているものの、第3パートの幅は2クロック分(50ns)よりも長いため、ノイズ除去による消失が回避されている。以上の通り、単位信号の幅を想定ノイズ幅の3倍+1クロック分とすることで単位信号の消失を回避できるものの、単位信号の幅をこの長さよりも短くすることは難しいとも言える。
【0034】
なお、上記デジタルフィルタにおいては、ノイズの確認結果が出力信号に反映されるまでに、想定ノイズ幅のクロック分(2クロック分)とノイズの判定を行うクロック分(1クロック分)の計3クロック分のタイムラグが生じる。
【0035】
近年では、ロボットの高機能化や多機能化、安全機能の強化等の様々な理由から、データの送受信量は増加傾向にある。このため、上述した従来のデジタルフィルタのようにノイズ除去を実現する上で単位信号の幅を大きくとることは、通信時の所要時間が間延びする要因になり、多量の情報を短時間で処理可能なロボットシステム(制御システム)を実現する上で妨げになり得る。本実施形態に示すロボットシステム10(制御システム50)では、このような事情に配慮して、印加されたノイズを除去可能としつつもその除去機能がデータ通信の高速化の妨げになること(通信速度の低下を招くこと)を抑制する工夫がなされていることを特徴の1つとしている。以下、図6及び図7を参照して、当該工夫について説明する。
【0036】
図6に示すように、ロボットコントローラ52(入出力部62)のノイズ除去部66には、ロボットコントローラ52の外部から入力された入力信号に含まれるノイズを特定するための多数決論理フィルタ部71と、当該多数決論理フィルタ部71における特定結果(後述する多数決結果)に基づいて出力信号を生成する出力信号生成部72と、多数決論理フィルタ部71におけるフィルタ処理等に際して参照される各種情報を記憶可能な記憶部73とが設けられている。多数決論理フィルタ部71等では内部クロック63にてクロックが発生する毎に、具体的にはクロックがONになる毎に、ノイズ除去用の処理であるフィルタ処理を実行する。ここで、図7(a)を参照して、多数決論理フィルタ部71によるフィルタ処理の流れについて説明する。
【0037】
フィルタ処理においては先ず、クロックが発生したタイミング、すなわち入力信号について後述する二値判定(論理値判定)及び多数決判定を行うタイミングとなっているかを確認する(ステップS101)。当該タイミングとなっている場合には(ステップS101:YES)、入力信号が論理値「H」(HIGHレベル信号)及び論理値「L」(LOWレベル信号)の何れとなっているかを判定し(ステップS102)、その判定結果を記憶部73の判定履歴記憶エリア75に記憶する(ステップS103)。
【0038】
判定履歴記憶エリア75は、第1エリア~第5エリアの5つのエリアで構成されており、直近の判定結果を時系列順に並べて5つ記憶可能となっている(図6参照)。ステップS103では、判定履歴記憶エリア75の第5エリアに記憶されている最も古い判定結果を消去し、第1エリア~第4エリアに記憶されている判定結果を第4エリア→第5エリア、第3エリア→第4エリア、第2エリア→第3エリア、第1エリア→第2エリアの順にシフトさせる。そして、今回の判定結果を第1エリアに記憶する。
【0039】
その後、判定履歴記憶エリア75に記憶されている5つの判定結果に基づいて多数決を行う。具体的には、判定履歴記憶エリア75に記憶されている直近5回分の判定結果について、論理値「H」であると判定した回数と論理値「L」であると判定した回数とを比較して、どちらが多いかを判定する。
【0040】
論理値「H」であると判定した回数の方が多い場合には(ステップS105:YES)、論理値「H」を多数決結果として記憶し(ステップS106)、論理値「L」であると判定した回数の方が多い場合には(ステップS105:NO)、論理値「L」を多数決結果として記憶する(ステップS107)。入出力部62の出力信号生成部72では、これら記憶された多数決結果を参照して、出力信号の設定→生成を行う。
【0041】
次に、図7(b)を参照して、出力信号生成部72にて実行される出力信号の設定処理の流れについて説明する。出力信号生成部72は、生成される信号の幅がデータ検出部81による論理の取得に不十分である場合に、信号を伸長させる信号幅伸長回路(パルス幅再生回路)を有している。
【0042】
信号設定処理では、多数決論理フィルタ部71にて多数決が実施されたタイミングであり(ステップS201:YES)、且つ今回の多数決結果が前回設定された論理値(出力信号生成用に設定された論理値)と一致する場合には(ステップS202:YES)、今回の多数決結果を反映した出力信号を設定する。具体的には、今回の多数決結果が論理値「H」=多数の場合には、今回の論理値として論理値「H」を設定し、今回の多数決結果が論理値「L」=多数の場合には今回の論理値として論理値「L」を設定する。出力信号生成部72においては、今回設定された論理値が論理値「H」である場合には当該論理値「H」に対応した出力信号(本実施形態ではHIGHレベル信号)を生成し、今回設定された論理値が論理値「L」である場合には当該論理値「L」に対応した出力信号(本実施形態ではLOWレベル信号)を生成する。
【0043】
一方、多数決論理フィルタ部71にて多数決が実施されたタイミングであり(ステップS201:YES)、且つ今回の多数決結果が前回設定された論理値と不一致となる場合には(ステップS202:NO)、直近の論理値の孤立状況に応じて論理値の設定態様が異なる。以下、孤立状況と設定態様との関係について説明する。
【0044】
今回の多数決結果をそのまま出力信号に反映することで直近1クロック分の論理値が孤立し得る場合、すなわち2回前の論理値と1回前(前回)の論理値とが不一致となり且つ前回の論理値と今回の多数決結果とが不一致となる場合には、出力信号生成用の論理値として前回の論理値と同じ論理値を設定する。具体的には、前回設定された論理値が論理値「H」である場合には今回の多数決結果が論理値「L」であったとしても論理値「H」を設定し、前回設定された論理値が論理値「L」である場合には今回の多数決結果が論理値「H」であったとしても論理値「L」を設定する。出力信号生成部72においては、設定された論理値が論理値「H」である場合には当該論理値「H」に対応した出力信号(本実施形態ではHIGHレベル信号)を生成し、設定された論理値が論理値「L」である場合には当該論理値「L」に対応した出力信号(本実施形態ではLOWレベル信号)を生成する。
【0045】
また、今回の多数決結果をそのまま出力信号に反映することで直近2クロック分の論理値が孤立し得る場合、すなわち3回前の論理値と2回前及び1回前(前回)の両論理値とが不一致となり且つ2回前及び前回の両論理値と今回の多数決結果とが不一致となる場合には、出力信号生成用の論理値として前回の論理値と同じ論理値を設定する。具体的には、前回設定された論理値が論理値「H」である場合には今回の多数決結果が論理値「L」であったとしても論理値「H」を設定し、前回設定された論理値が論理値「L」である場合には今回の多数決結果が論理値「H」であったとしても論理値「L」を設定する。出力信号生成部72においては、設定された論理値が論理値「H」である場合には当該論理値「H」に対応した出力信号(本実施形態ではHIGHレベル信号)を生成し、設定された論理値が論理値「L」である場合には当該論理値「L」に対応した出力信号(本実施形態ではLOWレベル信号)を生成する。
【0046】
今回の多数決結果をそのまま出力信号に反映したとしても直近の論理値(1クロック分又は2クロック分)が孤立しない場合には、出力信号生成用の論理値として今回の多数決結果に対応した論理値を設定する。具体的には、今回の多数決結果が論理値「H」を多数とする多数決結果である場合には論理値「H」を設定し、今回の多数決結果が「L」の場合には論理値「L」を設定する。出力信号生成部72においては、設定された論理値が論理値「H」である場合には当該論理値「H」に対応した出力信号(本実施形態ではHIGHレベル信号)を生成し、設定された論理値が論理値「L」である場合には当該論理値「L」に対応した出力信号(本実施形態ではLOWレベル信号)を生成する。
【0047】
なお、生成されるHIGHレベル信号及びLOWレベル信号の値(電圧値)については任意であり、例えば上記入力信号のHIGHレベル/LOWレベルの各値(電圧値)と同じ値(電圧値)としてもよいし、異なる値としてもよい。
【0048】
ステップS203,S205にて設定された論理値は、次のクロックタイミングにて出力信号に反映され、当該出力信号は1クロック(25ns)に亘って当該論理値に対応したレベル(HIGHレベル/LOWレベル)に維持される。
【0049】
出力信号の設定後は、出力信号生成用に設定した論理値を履歴として残すべく、論理値の設定履歴を更新する。具体的には、設定した論理値を記憶部73の設定履歴記憶エリア76に記憶する(ステップS206)。設定履歴記憶エリア76は、第1エリア~第4エリアの4つのエリアで構成されており、直近の論理値を時系列順に4つ記憶可能となっている(図6参照)。設定履歴の更新では、設定履歴記憶エリア76の第4エリアに記憶されている最も古い論理値を消去し、第1エリア~第3エリアに記憶されている論理値を第3エリア→第4エリア、第2エリア→第3エリア、第1エリア→第2エリアの順にシフトさせる。そして、今回の論理値を第1エリアに記憶する。
【0050】
出力信号生成部72にて生成された出力信号は駆動制御部61のデータ検出部81に入力され、データ検出部81ではこの出力信号からデータを検出する(データサンプリング)。データサンプリングについては、上述の如くスタートビットに対応した単位信号を受信したことを契機として開始され、以降はストップビットに対応した単位信号を受信するまで一定周期(本実施形態では125ns)で繰り返し実行される。
【0051】
なお、図6では、ロータリエンコーダ32からロボットコントローラ52に入力される入力信号(ポジションデータ)からノイズを除去して駆動制御部61へ出力信号を生成する場合の流れを矢印で示している。図示は省略しているが、ロータリエンコーダ32の入出力部41にも、ロボットコントローラ52から入力される入力信号(送信要求コマンド)からノイズを除去してデータ生成部42へ出力する信号(出力信号)を生成する構成を備えている。つまり、ロータリエンコーダ32の入出力部41には、多数決論理フィルタ部71、出力信号生成部72、記憶部73に相当する構成が設けられている。因みに、上位コントローラ51の入出力部に、多数決論理フィルタ部71、出力信号生成部72、記憶部73に相当する構成を設けてもよい。
【0052】
次に、図8図11を参照して、出力信号の生成の流れについて説明する。図8はノイズが印加されていない場合について例示しており、図9図11はノイズが印加されている場合について例示している。
【0053】
図8に示す例では、td1~td5のタイミングにおいては入力信号(単位信号)がHIGHレベル(論理値「H」)、直近5回分の判定結果も全てHIGHレベル(論理値「H」)となっている。このため、td1~td5のタイミングにおける多数決結果は、全て論理値「H」を多数とする多数決結果となっており、これらの結果を踏まえてtd2~td6のタイミングにて出力信号に反映されている。
【0054】
td6のタイミングでは、入力信号がHIGHレベル→LOWレベルに変化している(立ち下がっている)。このtd6のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「L」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×4、論理値「L」×1となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「H」となっている。この設定はtd7のタイミングにて出力信号に反映される。
【0055】
td7のタイミングでは、入力信号がLOWレベルに維持されている。このtd7のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「L」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×3、論理値「L」×2となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「H」となっている。この設定はtd8のタイミングにて出力信号に反映される。
【0056】
td8のタイミングでは、入力信号がLOWレベルに維持されている。このtd8のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「L」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×2、論理値「L」×3となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「L」となっている。この設定はtd9のタイミングにて出力信号に反映される。
【0057】
td9のタイミングでは、入力信号がLOWレベルに維持されている。このtd9のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「L」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×1、論理値「L」×4となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「L」となっている。この設定はtd10のタイミングにて出力信号に反映される。
【0058】
td10のタイミングでは、入力信号がLOWレベルに維持されている。このtd10のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「L」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×0、論理値「L」×5となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「L」となっている。この設定はtd11のタイミングにて出力信号に反映される。
【0059】
td11のタイミングでは、入力信号がLOWレベル→HIGHレベルに変化している(立ち上がっている)。このtd11のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「H」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×1、論理値「L」×4となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「L」となっている。この設定はtd12のタイミングにて出力信号に反映される。
【0060】
td12のタイミングでは、入力信号がHIGHレベルに維持されている。このtd12のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「H」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×2、論理値「L」×3となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「L」となっている。この設定はtd13のタイミングにて出力信号に反映される。
【0061】
td13のタイミングでは、入力信号がHIGHレベルに維持されている。このtd13のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「H」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×3、論理値「L」×2となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「H」となっている。この設定はtd14のタイミングにて出力信号に反映される。
【0062】
td14のタイミングでは、入力信号がHIGHレベルに維持されている。このtd14のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「H」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×4、論理値「L」×1となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「H」となっている。この設定はtd15のタイミングにて出力信号に反映される。
【0063】
td15のタイミングでは、入力信号がHIGHレベルに維持されている。このtd15のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「H」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×5、論理値「L」×0となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「H」となっている。この設定は次のクロックタイミングにて出力信号に反映される。
【0064】
図9に示す例では、単位信号(LOWレベル)における中間部分にノイズ(想定ノイズよりも幅が小さいノイズ)が印加されることで、信号幅が短くなっているものの、当該単位信号は消失せず、駆動制御部61のデータ検出部81にて論理を取ることが可能となっている。以下、図8に示した例との相違点を中心に、ノイズ除去及び出力信号生成の流れについて説明する。なお、te1~te6の各タイミングにおける挙動については上記td1~td6の各タイミングにおける挙動と同様であるため説明を省略する。
【0065】
te7のタイミングでは、印加されたノイズによって入力信号がLOWレベル→HIGHレベルに変化している(立ち上がっている)。このte7のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「H」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×4、論理値「L」×1となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「H」となっている。
【0066】
te8のタイミングでは、印加されたノイズが終了して入力信号がHIGHレベル→LOWレベルに変化している(立ち下がっている)。このte8のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「L」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×3、論理値「L」×2となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「H」となっている。
【0067】
te9のタイミングでは、入力信号がLOWレベルに維持されている。このte9のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「L」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×2、論理値「L」×3となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「L」となっている。
【0068】
te10のタイミングでは、入力信号がLOWレベルに維持されている。このte9のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「L」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×1、論理値「L」×4となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「L」となっている。
【0069】
te11のタイミングでは、入力信号がLOWレベル→HIGHレベルに変化している(立ち上がっている)。このte11のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「H」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×2、論理値「L」×3となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「L」となっている。
【0070】
te12のタイミングでは、入力信号がHIGHレベルに維持されている。このte12のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「H」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×2、論理値「L」×3となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「L」となっている。
【0071】
te13のタイミングでは、入力信号がHIGHレベルに維持されている。このte13のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「H」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×3、論理値「L」×2となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「H」となっている。
【0072】
te14のタイミングでは、入力信号がHIGHレベルに維持されている。このte14のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「H」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×4、論理値「L」×1となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「H」となっている。
【0073】
te15のタイミングでは、入力信号がHIGHレベルに維持されている。このte15のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「H」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×5、論理値「L」×0となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「H」となっている。
【0074】
上述したように、本実施形態では信号の幅を5クロック分、すなわち想定ノイズ幅に対応したクロック数(2クロック分)の2倍+1クロック分となるように設定している。このため、想定している最大幅(50ns)よりも幅の小さいノイズ(25ns)が信号の中間部分に印加された場合であっても、多数決によるノイズ除去によって信号全体が消失することはない。そして、残存する信号の幅(100ns)については、後述する事象等によってサンプリングタイミングがずれた場合であっても(図9の破線矢印参照)、データ検出部81にてデータを検出するために必要となる幅(データのサンプリング周期の半分)が確保されるため、データ検出部81にてデータが検出できなくなることもない。
【0075】
図10に示す例では、単位信号(LOWレベル)における端部(図中の左側の端部)にノイズが印加されることで、信号幅が短くなっているものの、当該単位信号は消失せず、駆動制御部61のデータ検出部81にて論理を取ることが可能となっている。以下、図8に示した例との相違点を中心に、ノイズ除去及び出力信号生成の流れについて説明する。なお、tf1~tf5の各タイミングにおける挙動については上記td1~td5の各タイミングにおける挙動と同様であるため説明を省略する。
【0076】
tf6~tf7の各タイミングでは、印加されたノイズによって入力信号がHIGHレベルに維持されている。これらtf6~tf7の各タイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「H」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×5、論理値「L」×0となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「H」となっている。
【0077】
tf8のタイミングでは、印加されたノイズによって入力信号がHIGHレベル→LOWレベルに変化している(立ち下がっている)。このtf8のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「L」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×4、論理値「L」×1となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「H」となっている。
【0078】
tf9のタイミングでは、入力信号がLOWレベルに維持されている。このtf9のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「L」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×3、論理値「L」×2となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「H」となっている。
【0079】
tf10のタイミングでは、入力信号がLOWレベルに維持されている。このtf10のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「L」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×2、論理値「L」×3となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「L」となっている。
【0080】
tf11のタイミングでは、入力信号がLOWレベル→HIGHレベルに変化している(立ち上がっている)。このtf11のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「H」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×2、論理値「L」×3となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「L」となっている。
【0081】
tf12のタイミングでは、入力信号がHIGHレベルに維持されている。このtf12のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「H」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×2、論理値「L」×3となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「L」となっている。
【0082】
tf13のタイミングでは、入力信号がHIGHレベルに維持されている。このtf13のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「H」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×3、論理値「L」×2となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「H」となっている。
【0083】
tf14のタイミングでは、入力信号がHIGHレベルに維持されている。このtf14のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「H」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×4、論理値「L」×1となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「H」となっている。
【0084】
tf15のタイミングでは、入力信号がHIGHレベルに維持されている。このtf15のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「H」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×5、論理値「L」×0となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「H」となっている。
【0085】
上述したように、本実施形態では信号の幅を5クロック分、すなわち想定ノイズ幅に対応したクロック数(2クロック分)の2倍+1クロック分となるように設定している。このため、想定している最大幅(50ns)のノイズが信号の端部に印加された場合であっても、多数決によるノイズ除去によって信号全体が消失することはない。そして、残存する信号の幅(75ns)については、後述する事象等によってサンプリングタイミングがずれた場合であっても(図10の破線矢印参照)、データ検出部81にてデータを検出するために必要となる幅(データのサンプリング周期の半分)が確保されるため、データ検出部81にてデータが検出できなくなることもない。
【0086】
図9及び図10に例示したようなノイズの印加パターンであれば、多数決結果を出力信号にそのまま反映したとしても、データ検出部81によるデータの検出が可能である。これに対して、信号の中間部分に想定ノイズが印加された場合には、多数決結果をそのまま出力信号に反映することでデータ検出部81におけるデータの検出が困難になり得る。この点、本実施形態に示すノイズ除去部66(出力信号生成部72)では、データ検出部81に配慮して出力信号が生成される。以下、図11を参照して、ノイズ除去及び出力信号生成の流れについて説明する。なお、tg1~tg7の各タイミングにおける挙動については上記td1~td7の各タイミングにおける挙動と同様であるため説明を省略する。
【0087】
tg8のタイミングでは、印加されたノイズによって入力信号がLOWレベル→HIGHレベルに変化している(立ち上がっている)。このtg8のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「H」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×3、論理値「L」×2となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「H」となっている。
【0088】
tg9のタイミングでは、入力信号がHIGHレベルに維持されている。このtg9のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「H」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×3、論理値「L」×2となっており、多数決結果を踏まえて設定される出力信号の論理値は論理値「H」となっている。
【0089】
tg10のタイミングでは、印加されたノイズを抜けることで入力信号がHIGHレベル→LOWレベルに変化している(立ち下がっている)。このtg10のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「L」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×2、論理値「L」×3となっており、多数決結果を踏まえて設定される出力信号の論理値は論理値「L」となっている。
【0090】
tg11のタイミングでは、入力信号がLOWレベル→HIGHレベルに変化している(立ち上がっている)。このtg11のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「H」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×3、論理値「L」×2となっており、多数決結果は論理値「H」を多数とする多数決結果となっている。ここで、出力信号については、仮にtg11の多数決結果がtg12のタイミングでそのまま反映されると、tg11のタイミングで論理値「L」となった部分が1クロック分で孤立することとなる。つまり、論理値「L」の出力期間は1クロック分となり、データ検出部81による検出にて必要となる期間よりも短くなる可能性がある。つまり、後述する事象等によってサンプリングタイミングがずれた場合に(図11の破線矢印参照)、本来検出されるべき論理値とは異なる論理値が検出され得る。このような論理値の孤立が発生する状況である場合には、多数決結果を出力信号にそのまま反映するのではなく、孤立が発生しないように論理値の引継ぎが行われる。具体的には、tg11のタイミングにおける多数決結果がそのまま設定されるのではなく、前回の論理値と同じ論理値(図11に示す例では論理値「L」)が設定される。この設定はtg12のタイミングにて出力信号に反映される。つまり、出力信号は、tg11のタイミングで論理値「L」となった後は、少なくともtg12のタイミングにおいても同論理値に維持されることとなる。
【0091】
tg12のタイミングでは、入力信号がHIGHレベルに維持されている。このtg12のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「H」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×4、論理値「L」×1となっており、多数決結果は論理値「H」を多数とする多数決結果となっている。ここで、出力信号については、仮にtg12の多数決結果がtg13のタイミングでそのまま反映されると、tg12のタイミングで論理値「L」となった部分が2クロック分で孤立することとなる。つまり、論理値「L」の出力期間は2クロック分となり、データ検出部81による検出にて必要となる期間よりも短くなる。このような論理値の孤立が発生する状況である場合には、多数決結果を出力信号にそのまま反映するのではなく、孤立が発生しないように論理値の引継ぎが行われる。つまり、tg12のタイミングにおける多数決結果をそのまま設定するのではなく、前回の論理値と同じ論理値(図11に示す例では論理値「L」)を設定する。この設定は、tg13のタイミングにて出力信号に反映される。つまり、出力信号は、tg11のタイミングで論理値「L」となった後は、少なくともtg13のタイミングにおいても同論理値に維持されることとなる。
【0092】
tg13のタイミングでは、入力信号がHIGHレベルに維持されている。このtg13のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「H」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×4、論理値「L」×1となっており、多数決結果は論理値「H」を多数とする多数決結果となっている。出力信号については、3クロックに亘って論理値「L」となっており、データ検出部81における必要期間を満足している。よって、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「H」となる。
【0093】
tg14のタイミングでは、入力信号がHIGHレベルに維持されている。このtg14のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「H」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×4、論理値「L」×1となっており、多数決結果は論理値「H」を多数とする多数決結果となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「H」となっている。
【0094】
tg15のタイミングでは、入力信号がHIGHレベルに維持されている。このtg15のタイミングにおいては、二値判定の結果は論理値「H」、直近5回分の判定結果は論理値「H」×5、論理値「L」×0となっており、多数決結果は論理値「H」を多数とする多数決結果となっており、多数決結果を踏まえて設定される論理値は論理値「H」となっている。
【0095】
次に、図12及び図13を参照して、上述したサンプリングタイミングのずれが発生する理由について説明する。
【0096】
本実施形態では、スタートビットに対応する信号がLOWレベルの単位信号となるように構成されている。データ検出部81は、3クロックに亘ってLOWレベル信号が続いた場合、すなわち論理値「L」が3回連続した場合に、サンプリングを開始し、以降はストップビットに到達するまでサンプリング周期毎にサンプリングを実行する。
【0097】
図12に示す例では、スタートビットに対応する単位信号にノイズが印加されておらず、th1~th5の各タイミングにおける二値判定の結果が何れも論理値「L」となっている。上述したタイムラグによってth4のタイミングで出力信号がLOWレベルとなり、th4~th6の各タイミングでデータ検出部81にて論理値「L」が検出されることでサンプリング開始条件成立となる。以降は、上記サンプリング周期(125ns:5クロック毎)にサンプリングが実行されることとなる。
【0098】
ここで、スタートビットにノイズが印加された場合には、当該ノイズの影響によってサンプリングのタイミングがずれる(遅れる)可能性がある。図13には、タイミングのずれが最大となるパターンについて例示している。この例では、ti1~ti2のタイミングにおける二値判定の結果は論理値「H」となっているものの、印加されたノイズの影響によってti3~ti4の各タイミングでは二値判定の結果が論理値「H」となっている。その後、ti5のタイミングにて再び論理値「L」となることで、多数決結果が論理値「L」を多数とする多数決結果となり、直後のti6のタイミングにて出力信号が論理値「L」に対応したLOWレベルに変化している。
【0099】
但し、ti6のタイミング以降は、二値判定の結果は論理値「H」となり、多数決結果が論理値「H」を多数とする多数決結果となる。ここで、上述したように1クロック分又は2クロック分の論理値「L」の孤立が発生する場合には、データ検出部81にて論理を取るためのクロック分まで信号(当該信号の出力期間)が伸長される。つまり、出力信号についてはti6~ti8の各タイミングでLOWレベルとなり、それらti6~ti8の各タイミングでデータ検出部81にて論理値「L」が検出されることで、サンプリング開始となる。以降は、上記サンプリング周期(125ns:5クロック毎)にサンプリングが実行されることとなる。
【0100】
つまり、スタートビットに対応する単位信号にノイズが印加された場合には、サンプリングの開始及びその後の各サンプリングタイミングが最大で2クロック分ずれる(遅れる)こととなる。サンプリングのタイミングに上記遅れが発生する場合であっても、仮に各データビットやストップビットに対応した単位信号について上述した孤立が発生する状況等となってデータ検出部81による検出に必要な期間が不足する事象が発生し得る場合には、スタートビットへのノイズ印加の場合と同様に3クロック分の出力期間を確保すべく出力期間が伸長(延長)される。これにより、データ検出部81における検出が適正に行われなくなることを好適に抑制できる。
【0101】
以上詳述した実施形態によれば、以下の優れた効果が期待できる。
【0102】
二値判定による5回分(「所定回数」に相当)の判定結果について多数決を行い、その多数決結果に応じた信号となるようにして出力信号が生成される。これにより入力信号に含まれる少数の論理値については除去されることとなる。入力信号に印加されるノイズに(詳しくは上述想定ノイズ幅よりも小さいもの)については多数決→出力信号の生成によって除去されるため、ノイズの印加(混入)による信号の改変を好適に抑制できる。
【0103】
入力信号(単位信号)の幅(「単位期間」に相当)を規定する上では、ロボット15自身やその周辺機器が原因となって発生し得るノイズの幅(印加期間)よりも当該単位信号の幅を大きくとることが好ましい。但し、単位信号の幅を過度に大きくしてしまうとノイズ耐性の向上が期待できる反面、単位信号が間延びして多量の情報を短期間で送受信することは難しくなる。上述した従来のデジタルフィルタのように、単位信号において予め設定された幅よりも短くなった部分をノイズとして除去する構成では、単位信号がノイズによって前後に分断等された場合に各部分が設定された上記幅よりも小さくなってしまうと、本来の信号が消失する。このような事象を回避する上では、想定ノイズ幅の3倍+αとなるよう単位信号の幅を設定する必要がある。言い換えれば、単位信号の幅を想定ノイズ幅の3倍+αよりも短くすることはノイズ耐性を考慮する上で困難となる。これに対して、本実施形態に示したノイズ除去部66によれば、多数決を用いてノイズ除去のロジックを構築することにより、単位信号の幅を想定ノイズ幅の2倍+αとすることが可能となる。つまり、多数決によって、単位信号の出力期間(5クロック分=125ns)の1/2未満のノイズ(少数派となる論理)を除去することが可能となる。これにより、単位信号の幅を極力小さくすることができる。これは、データ送受信の所要期間を短くして、通信量の増加に伴った通信速度の低下を抑制する上で好ましい。
【0104】
ノイズが混入するタイミングについては様々になり得る。そして、入力信号のどの部分にノイズが混入するかによって信号の波形が大きく異なることになる。例えば入力信号がノイズによって分断された場合には、多数決の機会が二値判定の機会よりも少なくなることで、ノイズを見逃したり、本来の信号が消失したりする機会が増えると想定される。本実施形態に示したように、二値判定の都度、多数決を実施する構成とすることは、それらの不都合を生じにくくする上で好ましい。
【0105】
図9,10等に示したように、瞬間的に印加されるノイズの影響は二値判定の結果に離散的に反映されるのではなく、二値判定の結果に連続的(集中的)に反映される。そこで、このようなノイズを除去する上では、本実施形態に示したように、比較対象とする判定結果を直近のもの(連続するもの)とすることが効果的である。
【0106】
多数決の対象とする二値判定結果の数(「所定回数」に相当)を、奇数とすることにより、論理値「H」と論理値「L」とが同数となることを回避できる。これは、出力信号の生成の適正化を図る上で好ましい。
【0107】
また、本実施形態では、単位信号の出力期間(125ns)を判定周期(25ns)で除した数を多数決の対象とする二値判定結果の数となっている。これは、ノイズ除去を図りつつ、単位信号の出力期間を極力短くする上で好ましい。
【0108】
多数決が実行される周期の長さは二値判定の周期の長さ以上とする(詳しくは二値判定の周期と揃える)ことにより、多数決が同じ二値判定の結果群について過剰に繰り返されることを抑制できる。これは、ノイズ除去に係る制御負荷を抑える上で好ましい。また、多数決が実行される周期の長さを単位信号の出力期間の長さ以下、且つ多数決の対象となる二値判定結果の数を二値判定の周期で単位信号の出力期間を除した数以下の整数となるように設定している。これにより、多数決が少なくとも1回は該当する信号に係る二値判定結果のみを対象として実行される構成が実現されている。これは、先行する信号等影響を受けてノイズを上手く除去できなくなることを抑制する上で好ましい。
【0109】
本実施形態に示したノイズ除去部66によれば、ロボット15に搭載されたサーボモータ31への駆動信号が原因となって発生するノイズを適切に除去可能となる。このような構成とすれば、ロボット15の多様な動きを実現する上でサーボモータ31の数が嵩む場合であっても動力線92や信号線93等の取り回しにかかる制約を緩和できる。また、制御対象となるサーボモータ31の数が多くなれば通信量についても増加することとなるが、ノイズ除去部66によれば、そのような通信量の増加にも好適に対応できる。
【0110】
上述したように多数決結果に応じて出力信号を生成する構成においては、例えば論理値「H」又は論理値「L」が孤立して本来の信号の出力期間が短くなることで、データ検出部81にて論理を取ることが困難になり得る。この点、本実施形態に示したように、論理値の孤立が発生する場合には、信号の出力期間が3クロック分となるように伸長されることにより、上記不都合の発生を抑制できる。
【0111】
<第2の実施形態>
自動車等の車両(車両用制御システム)においては、高い信頼性を求められる通信にシリアル通信プロトコルが用いられることがある。車両には車両内部及び外部の様々な要因によってノイズが発生し、それらのノイズの影響が上記通信に及ぶことで車両用の制御が適正に行われなくなると懸念される。
【0112】
本実施形態に示す車両100の車両用制御システム150においては(図14参照)、デバイス(車両用の各種機器)間の通信に係る構成に上記第1の実施形態と同様の工夫がなされている。以下、図14を参照して、本実施形態における車両用制御システム150について説明する。
【0113】
車両用制御システム150は、例えば先行する車両等の障害物を検知するレーダ装置133とレーダ装置133からの検知情報に基づいて車両の駆動制御やブレーキ制御等を行う車両制御装置153とを有してなる。車両制御装置153には、上記各種制御を行う制御部161と、他のデバイスとの信号の送受信を行う入出力部162とが設けられている。入出力部162においてレーダ装置133等の各種デバイスから信号を受信する部分(ノイズ除去部170)には、上記第1の実施形態に示したノイズ除去部66と同様の構成が適用されている。具体的には、図示は省略しているが、ノイズ除去部170には、第1の実施形態に示した、多数決論理フィルタ部71、出力信号生成部72、判定履歴記憶エリア75、設定履歴記憶エリア76等に相当する各種構成を有してなる。これら各種構成については、第1の実施形態に示した入出力部62と同様であるため説明を省略する。なお、レーダ装置133にも第1の実施形態に示したロータリエンコーダ32と同様に、入出力部41、データ生成部42、内部クロック43に相当する各種構成が設けられているが、これら各種構成についての説明は省略する。また、ノイズ除去の態様についても、上記第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0114】
このノイズ除去部170によれば、上記ノイズ除去部66と同じ態様でノイズが除去され、入力信号に印加されるノイズの影響を抑制することができるだけでなく、多数決方式が用いられることにより単位信号の出力期間の1/2未満のノイズ(少数派となる論理)を除去することが可能となる。これにより、単位信号の幅を極力小さくすることができる。これは、データ送受信の所要期間を短くして、通信量の増加に伴った通信速度の低下を抑制する上で好ましい。
【0115】
なお、上記図14には、多数決方式によってノイズを除去する「ノイズ除去部」の適用例として、レーダ装置133から車両制御装置153に入力される入力信号用の入出力部162を示したが、これに限定されるものではない。例えば、車両制御装置153にてレーダ装置133以外のデバイスから入力される信号用の入出力部に当該「ノイズ除去部」を適用してもよいし、レーダ装置133に設けられた入出力部に当該「ノイズ除去部」を適用してもよい。また、エンジン制御、モータ制御、バッテリ制御、サスペンション制御、トランスミッション制御、ABS制御、エアバック制御、ワイパー制御、エアコン制御、センタードアロック制御等の各種制御に係る他のデバイスの入出力部に当該「ノイズ除去部」を適用してもよい。
【0116】
<その他の実施形態>
なお、上述した各実施形態の記載内容に限定されず例えば次のように実施してもよい。ちなみに、以下の各構成を個別に上記各実施形態に対して適用してもよく、一部又は全部を組み合わせて上記各実施形態に対して適用してもよい。
【0117】
・上記各実施形態では、ノイズ幅が2クロック分となるノイズを想定して5クロック分の論理値(二値判定の結果)を対象とした多数決を行う構成について例示した。ノイズ幅が3クロック分となるノイズを想定して多数決を行う場合には、7クロック分の論理値(二値判定の結果)を多数決の対象とするとよい。また、ノイズ幅が4クロック分となるノイズを想定して多数決を行う場合には、9クロック分の論理値(二値判定の結果)を多数決の対象とするとよい。すなわち、想定するノイズ幅に相当するクロック分×2+1クロック分の論理値(二値判定の結果)を多数決の対象とするとよい。
【0118】
・上記各実施形態では、単位信号の出力期間に相当するクロック数(5クロック分)と、多数決を行う場合に参照する二値判定の結果の数(5クロック分)とを一致させる構成としたが、それらが不一致となる構成とすることも可能である。但し、ノイズ除去とデータ通信量の増加への対応とを考慮する上では単位信号の出力期間に相当するクロック数と、多数決を行う場合に参照する二値判定の結果の数とを一致させる構成とすることが好ましい。
【0119】
・ノイズ除去を考慮した単位信号の長さ(クロック数)については、想定ノイズ幅に相当するクロック分×2+1クロック部となるように設定することが好ましい。例えばノイズ幅が3クロック分となるノイズを想定している場合には単位信号の長さを3クロック分×2+1クロック分=7クロック分とし、ノイズ幅が4クロック分となるノイズを想定している場合には単位信号の長さを4クロック分×2+1クロック分=9クロック分とするとよい。
【0120】
・上記各実施形態では、多数決結果が次のクロックタイミングで出力信号に反映される構成としたが、多数決結果が当該多数決結果となったクロックタイミングにて出力信号に反映される構成を否定するものではない。
【0121】
・上記各実施形態では、仮に多数決結果をそのまま出力信号に反映すると論理値の孤立(必要クロック数に満たない長さ)が発生する状況である場合には、出力信号において当該孤立し得る論理値に対応する部分を1クロック分又は2クロック分→3クロック分まで伸長させる構成とした。これを変更し、当該孤立し得る論理値に対応する部分を4クロック分まで伸長させる構成としてもよいし5クロック分まで伸長させる構成としてもよい。言い換えれば、データ検出部81にて論理を取ることが可能な長さであって且つサンプリング周期(1データ分:5クロック分)に相当する長さの範囲内となるのであれば、伸長の程度については任意に変更してもよい。
【0122】
なお、サンプリングを単位信号の中央に合わせて実行することには、偶発的な理由等によってサンプリングのタイミングにずれ(特に遅れ)が生じた場合であっても論理を適切に取るためのマージンを確保できるという技術的意義がある。この構成に鑑みれば、サンプリングから当該単位信号が終了するまでの残りは2.5クロックとなる。これよりも大きい整数である3クロック分の長さを確保すべく出力期間を伸長させる構成には技術的意義がある。なお、3クロック分を確保すべく出力期間を伸長させる構成とすることはセットアップタイム等を確保する上でも好ましい。
【0123】
因みに、データ検出部81等にて論理を取る場合に必要となる信号の出力期間(クロック数)がMである場合には、上記伸長によって確保する信号の出力期間をMクロック分以上とするとよい。
【0124】
・併設されるコンベア11~13及びロボット15に内蔵されたサーボモータ31の動力線92がノイズ源となり得る構成において、サーボモータ31の動力線92をノイズ源として印加されるノイズの幅よりも、コンベア11~13をノイズ源として印加されるノイズの幅の方が大きくなる場合には、コンベア11~13をノイズ源として印加されるノイズの幅を「想定ノイズ幅」とするとよい。
【0125】
・上記各実施形態では、ロータリエンコーダ32からのポジションデータやロボットコントローラ52からの送信要求コマンドを対象としてノイズを除去する構成について例示したが、これに限定されるものではない。例えば、上位コントローラ51からロボットコントローラ52に入力される指令が二値信号である場合には、当該指令がノイズ除去部66に入力される構成(ノイズ除去等の対象となる構成)としてもよい。なお、上位コントローラ51からの指令が信号線91を通り、上記ポジションデータや送信要求コマンドが信号線93を通る点に鑑みれば、各信号線91,93について想定すべきノイズが異なる可能性がある。このような事情を考慮する上では、信号線91,93毎に、単位信号の長さ、多数決の対象となる二値判定の結果(論理値)の数、伸長の度合いを個別に設定可能とすることが望ましい。
【0126】
・上記各実施形態では、スタートビットに対応した入力信号について論理値「L」が3回連続した場合にサンプリングの開始条件が成立する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、論理値「L」が4回連続した場合にサンプリングの開始条件が成立する構成としたり、論理値「L」が5回連続した場合にサンプリングの開始条件が成立する構成としたりすることも可能である。
【0127】
・上記各実施形態では、サンプリング開始前に論理値の孤立が発生し得る場合には出力期間が3クロック分となるまで伸長され、サンプリング中に論理値の孤立が発生し得る場合にも出力期間が3クロック分となるまで伸長される構成としたが、伸長の程度(最低出力期間)については、サンプリング開始前とサンプリング中とで相違させてもよい。例えば、サンプリング開始前と比べてサンプリング中では伸張の程度が大きくなる(最低出力期間が長くなる)構成としてもよい。
【0128】
・上記各実施形態では、一部例外を除いて出力信号の論理値「H」と入力信号の論理値「H」とを対応付けるとともに、出力信号の論理値「L」と入力信号の論理値「L」とを対応付けたが、これに限定されるものではない。例えば、出力信号の論理値「H」と入力信号の論理値「L」とを対応付けるとともに、出力信号の論理値「L」と入力信号の論理値「H」とを対応付けることも可能である。
【0129】
・上記各実施形態では、入力信号がHIGHレベル/LOWレベルの二値信号となる場合について例示したが、予め定められた期間に亘って一定の値となるようにして入力信号が生成される構成であれば足り、入力信号の値は2つに限定されるものではない。例えば、3つ以上の値が規定されていてもよい。
【0130】
・上記各実施形態では、二値信号であるポジションデータや要求コマンドからノイズを除去する構成とした。例えば、力覚センサ等のセンサから入力されるアナログ信号に基づいて所定の処理(例えばハンドの開閉)を実行するか否かを決定する構成においては、当該アナログ信号に印加されたノイズを上記フィルタに相当する構成によって除去する構成とすることも可能である。
【0131】
・上記各実施形態では、入力信号から判定した論理値を判定履歴記憶エリア75の第1エリア~第5エリアに時系列順に記憶し、それら第1エリア~第5エリアに記憶されている判定結果(論理値)について多数決を行う構成とした。判定履歴をどのように記憶するかについては任意である。
【0132】
・上記各実施形態では、デバイス間の通信(ロボットコントローラ52とロータリエンコーダ32との通信)として、Uart通信を例示したが、通信プロトコルについてはこれに限定されるものではない。例えば、SPI、I2C(登録商標)等の他の通信プロトコルとすることも可能である。
【0133】
・上記第1の実施形態では、工場の箱詰め工程に適用されたロボットシステム10にノイズ除去や信号再生に係る構成を適用した場合について例示したが、ノイズ除去等に係る構成を例えば製品の組立工程、検査工程、梱包工程に適用されたロボットシステムに適用することも可能である。また、工場以外で使用される産業用ロボット以外のロボット(例えば飲食店や病院で使用されるロボット)に上記ノイズ除去等に係る構成を適用してもよい。更には、当該ノイズ除去等に係る構成を、無人搬送ロボット等の搬送車やNC工作機械等の工作機械に適用してもよい。
【0134】
<上記実施形態から抽出される発明群について>
以下、上記実施形態から抽出される発明群の特徴について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、上記実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0135】
<特徴A群>
以下の特徴A群は、「工場等で用いられる産業用ロボット等の産業機器には、ソレノイドやサーボモータ等の電動式アクチュエータが搭載されているものがある。この種の産業機器においては、電動式アクチュエータへ駆動電力を供給するための電源線をノイズ源としたノイズ(高電圧サージノイズ)が信号線に印加される可能性がある。特に強電線である電源線と弱電線である信号線とが近接配置される場合にはそのような懸念が一層強くなる。また、工場においては産業機器が多数設置されることが多く、他の産業機器の電源線等がノイズ源になる可能性もある。信号線に印加されたノイズによって信号の送受信が適切に行われなくなることは、産業機器の動作安定性等を損なう要因になる。そこで、産業機器用の制御システムにおいては、ノイズの影響を抑えるべく、ノイズ除去用のフィルタ回路(ノイズフィルタ)を搭載するといった対策が講じられている(例えば、特許文献1参照)。という背景技術について、「近年では、産業機器の多機能化や高機能化等の様々な理由から制御システムにおける通信量は増加傾向にある。例えば、産業用ロボットにおいては、多関節化や安全機能の実装要求によって通信量が増加している。ここで、上述したフィルタ回路を用いてノイズの影響を抑えることには技術的意義があるものの、通信量の増加によって以下の懸念が顕在化する。すなわち、産業機器用の制御システムではPID制御等の各種制御にて通信データ等を参照するサイクルタイムが予め規定されているが、このサイクルタイムの間延びを抑えつつ通信量の増加に対応しようとすれば、送受信の効率化(通信の高速化)を実現する必要が生じる。ここで、ノイズ耐性の向上を図る上でノイズを除去するための所要期間が嵩むことは、その妨げになる。このように、産業機器用の制御システムにおいては、ノイズ耐性の向上を図りつつ通信量の増加に対応する上でノイズの除去に係る構成に未だ改善の余地がある。」という課題等に鑑みてなされたものである。
【0136】
特徴A1.産業機器(ロボット15)を対象として制御を行う産業機器用制御システム(制御システム50)であって、
入力された入力信号をフィルタ処理し当該フィルタ処理を経ることでノイズ(例えば50ns以下の長さのノイズ)を除去した信号を出力信号として出力する入出力部(入出力部62)を備え、
前記入力信号は、予め設定されている単位期間(例えば125ns)に亘って値が一定となるようにして生成される信号であり、
前記入出力部は、前記フィルタ処理を実行する手段として、
前記単位期間よりも短くなるように設定された判定周期(例えば25ns)毎に前記入力信号の値を判定し、当該判定を前記単位期間内で複数回繰り返すように構成された判定手段(多数決論理フィルタ部71における二値判定機能)と、
前記判定手段による所定回数分(例えば5回分)の判定結果について最も多く判定された値を特定する特定手段(多数決論理フィルタ部71における多数決機能)と、
前記特定手段による特定結果に応じた信号となるようにして前記出力信号を生成可能な生成手段(出力信号生成部72において出力信号を生成する機能)と
を有している産業機器用制御システム。
【0137】
本特徴に示す構成によれば、判定手段による所定回数分の判定結果について最も多く判定された入力信号の値を特定し、その特定結果に応じた信号となるようにして出力信号が生成される。入力信号にノイズが印加されることで、入力信号の値が部分的(瞬間的)に変化したとしても、当該変化した部分については特定手段による特定→生成手段によって除去し得る。これにより、ノイズの印加(混入)による信号の改変を抑制できる。
【0138】
ここで、本特徴に示すように最も多く判定された値に基づいて出力信号が生成される構成は、以下の理由から、通信量の増加に伴った通信速度の低下を抑制する上で有利である。すなわち、入力信号の幅(上記単位期間)を規定する上では、産業機器自身やその周辺で発生し得るノイズの印加の幅(印加期間)よりも長くすることが好ましい、具体的には印加されるノイズによって本来の信号(値)を適切に検出できなくなることを回避可能な長さとすることが好ましい。一方で、単位期間を過度に長くしてしまうとノイズ耐性の向上が期待できる反面、入力信号が間延びして多量の情報を短期間で送受信することは難しくなる。従来のフィルタのように、入力信号において予め設定された長さよりも短い部分をノイズとして除去する構成では、入力信号がノイズによって前後に分かれる等した場合に各部分が除去され得る。つまり、本来の信号が消失し得る。このような事情を考慮すると、想定されるノイズの印加期間の3倍+αとなるようにして単位期間を設定する必要が生じる。これに対して、本特徴に示す構成(特定手段等)では、本来の信号の消失を抑制する上で、最も短いパターンでは単位期間を想定されるノイズの印加期間の2倍+αとなるように設定することが可能となる。つまり、単位時間の短縮に寄与できる。これにより、産業機器用制御システムにおける通信量の増加に伴った通信速度の低下を抑制できる。例えば、単位期間を判定周期で除した数となるように所定回数を設定するとよい。
【0139】
特徴A2.前記入力信号は、第1所定値(HIGHレベル、論理値「H」)及び第2所定値(LOWレベル信号、論理値「L」)の何れかとなる二値信号であり、
前記特定手段は、前記所定回数分の判定結果について前記第1所定値となった回数と前記第2所定値となった回数とを比較することにより前記第1所定値及び前記第2所定値のうち判定された回数が多数となる一方を特定し、
前記生成手段は、前記特定手段による特定結果が前記第1所定値となった回数が多数であるとする第1結果となった場合に前記出力信号として第1信号(LOWレベル信号)を生成する手段と、前記特定手段による特定結果が前記第2所定値となっている回数が多数であるとする第2結果となった場合に前記出力信号として第2信号(HIレベル信号)を生成する手段とを有している産業機器用制御システム。
【0140】
本特徴に示す構成によれば、特徴A1に示した構成を好適に具現化できる。なお、本特徴に示す「第1所定値」及び「第2所定値」については何れも1の値である必要は必ずしもなく、「第1所定値」及び「第2所定値」に幅(範囲)を設けてもよい。このような事情に配慮すれば「前記入力信号は、第1所定値及び第2所定値の何れかとなる二値信号であり」との記載を「前記入力信号は、閾値よりも大きい値及び当該閾値よりも小さい値の何れかとなる信号であり」とすることも可能である。
【0141】
特徴A3.産業機器(ロボット15)を対象として制御を行う産業機器用制御システム(制御システム50)であって、
入力された入力信号をフィルタ処理し当該フィルタ処理を経ることでノイズ(例えば50ns以下の長さのノイズ)を除去した信号を出力信号として出力する入出力部(入出力部62)を備え、
前記入力信号は、予め設定されている単位期間(例えば125ns)に亘って値が一定となるようにして生成される信号であり、
前記入力信号の値として、第1所定値(HIGHレベル、論理値「H」)及び第2所定値(LOWレベル信号、論理値「L」)が規定されており、
前記入出力部は、前記フィルタ処理を実行する手段として、
前記単位期間よりも短くなるように設定された判定周期(例えば25ns)毎に前記入力信号の値を判定し、当該判定を前記単位期間内で複数回繰り返すように構成された判定手段(多数決論理フィルタ部71における二値判定機能)と、
前記判定手段による所定回数分(例えば5回分)の判定結果について前記第1所定値となった回数と前記第2所定値となった回数とを比較することにより前記第1所定値及び前記第2所定値のうち判定された回数が多数となる一方を特定する特定手段(多数決論理フィルタ部71における多数決機能)と、
前記特定手段による特定結果に応じた信号となるようにして前記出力信号を生成可能な生成手段(出力信号生成部72において出力信号を生成する機能)と
を有している産業機器用制御システム。
【0142】
本特徴に示す構成によれば、判定手段による所定回数分の判定結果について最も多く判定された入力信号の値を特定し、その特定結果に応じた信号となるようにして出力信号が生成される。ノイズが印加され入力信号の値が部分的(瞬間的)に変化したとしても、当該変化した部分については特定手段による特定→生成手段による生成の過程で除去されるため、ノイズの印加(混入)による信号の改変を抑制できる。
【0143】
ここで、本特徴に示すように第1所定値及び第2所定値のうち多数派となる一方に基づいて出力信号が生成される構成は、以下の理由から、通信量の増加に伴った通信速度の低下を抑制する上で有利である。すなわち、入力信号の幅(上記単位期間)を規定する上では、産業機器自身やその周辺で発生し得るノイズの印加の幅(印加期間)よりも長くすることが好ましい、具体的には印加されるノイズによって本来の信号(値)を適切に検出できなくなることを回避可能な長さとすることが好ましい。一方で、単位期間を過度に長くしてしまうとノイズ耐性の向上が期待できる反面、入力信号が間延びして多量の情報を短期間で送受信することは難しくなる。従来のフィルタのように、入力信号において予め設定された長さよりも短い部分をノイズとして除去する構成では、入力信号がノイズによって前後に分かれる等した場合に各部分が除去され得る。つまり、本来の信号が消失し得る。このような事情を考慮すると、単位期間を想定されるノイズの印加期間の3倍+αとなるように設定する必要が生じる。これに対して、本特徴に示す構成(特定手段等)では、本来の信号の消失を抑制する上で、最も短いパターンでは単位期間を想定されるノイズの印加期間の2倍+αとなるように設定することが可能となる。つまり、単位時間の短縮に寄与できる。これにより、産業機器用制御システムにおける通信量の増加に伴った通信速度の低下を抑制することができる。
【0144】
なお、特徴A1乃至特徴A3に示した産業機器用制御システムについては、「前記単位期間及び前記判定周期は、前記単位期間を前記判定周期で除した数が3以上となるように規定されている構成」、すなわち判定手段による入力信号の値の判定が単位期間中に3回以上実行されるようにすることが好ましい。
【0145】
特徴A4.前記所定回数は、前記単位期間を前記判定周期で除した数以下の整数となるように設定されており、
前記特定手段による前記特定は周期的に実行される構成となっており、
前記特定手段により前記特定が行われる周期の長さは、前記判定周期の長さ以上且つ前記単位期間の長さ以下となるように設定されている特徴A1乃至特徴A3のいずれか1つに記載の産業機器用制御システム。
【0146】
本特徴に示すように、特定手段によって上記特定が実行される周期の長さを判定周期の長さ以上とすることにより、特定手段による特定が同じ結果群について過剰に繰り返されることを抑制できる。これは、ノイズ除去に係る制御負荷を抑える上で好ましい。また、特定手段によって上記特定が実行される周期の長さを単位期間の長さ以下且つ所定回数が単位期間を判定周期で除した数以下の整数となるように設定することにより、特定手段による特定が少なくとも1回は該当する信号に係る判定結果のみを対象として実行される構成とすることにより、該当する信号に対して先行する信号等の影響を受けてノイズを上手く除去できなくなることを抑制できる。
【0147】
特徴A5.前記所定回数は、前記単位期間を前記判定周期で除した数と一致するように規定されている特徴A1乃至特徴A4のいずれか1つに記載の産業機器用制御システム。
【0148】
本特徴に示すように、所定回数=単位期間/判定周期とすることにより、単位期間の間延びを抑えつつノイズを効率よく除去することができる。
【0149】
特徴A6.前記特定手段は、前記判定手段による前記判定の都度、前記特定を行う特徴A1乃至特徴A5のいずれか1つに記載の産業機器用制御システム。
【0150】
ノイズが混入するタイミングについては様々になり得る。入力信号のどの部分にノイズが混入するかによってノイズ混入後の信号の波形は大きく異なる。例えば入力信号がノイズによって分断された場合には、特定手段による上記特定の機会が判定手段による上記判定の機会よりも少なくなることで、ノイズを見逃したり、本来の信号が消失したりする機会が増えると想定される。本特徴に示すように、判定の都度、特定手段による上記特定を実施する構成とすることは、それらの不都合を生じにくくする上で好ましい。
【0151】
特徴A7.直近となる前記所定回数分の前記判定結果を記憶する記憶手段(記憶部73の判定履歴記憶エリア75)を備え、
前記特定手段は、前記記憶手段に記憶されている前記判定結果に基づいて前記特定を行う特徴A6に記載の産業機器用制御システム。
【0152】
瞬間的に印加されるノイズの影響は判定結果に離散的に反映されるのではなく、判定結果に連続的(集中的)に反映される。そこで、このようなノイズを除去する上では、本特徴に示すように、比較対象とする判定結果を直近のもの(連続するもの)にすることが効果的である。
【0153】
特徴A8.前記所定回数は、3以上の奇数(例えば5)である特徴A1乃至特徴A7のいずれか1つに記載の産業機器用制御システム。
【0154】
所定回数を3以上且つ奇数とすることにより、判定された回数が各値について同数となることを回避できる。これは、出力信号の生成の適正化を図る上で好ましい。
【0155】
特徴A9.前記所定回数は、前記入力信号への印加が想定される所定のノイズの印加期間(50ns)を前記判定周期で除した数の2倍+1回となるように規定されており、
前記単位期間は、前記判定周期と前記所定回数との積と同一又は略同一となるように規定されている特徴A1乃至特徴A8のいずれか1つに記載の産業機器用制御システム。
【0156】
本特徴に示す構成によれば、所定のノイズを除去する構成を実現しつつ、それによる信号の消失を抑制する上で、入力信号を極力短くすることができる。これは、通信量の増加に伴う通信速度の低下を抑制する上で好ましい。
【0157】
なお、「前記単位期間は、~略同一となるように規定されている」とは、タイムラグ等に配慮して判定周期と所定回数との積よりも僅かに長く(例えば1判定周期分又は2判定周期分長く)なるようにして単位期間が規定されている構成を想定した記載である。
【0158】
また、「前記入力信号への印加が想定される所定のノイズの印加期間」とは、ノイズの影響によって判定結果が改変され得る期間を示し、判定周期の整数倍に相当する。
【0159】
因みに、本特徴に示す「前記所定回数は、前記入力信号への印加が想定される所定のノイズの印加期間を前記判定周期で除して端数を繰り上げることで算出される整数の2倍+1回となるように規定されており」との記載を、「前記所定回数は、前記入力信号への印加が想定される所定のノイズの印加期間中に前記判定手段による判定が実行され得る回数(2回)の2倍+1回となるように規定されており」とすることも可能である。
【0160】
特徴A10.前記所定のノイズの印加期間は、前記産業機器に搭載されているモータ(サーボモータ31)へ出力される駆動信号(PWMパルス)の立ち上がり及び当該駆動信号の立ち下がりの少なくとも何れかに起因して前記入力信号に印加され得るノイズの印加期間である特徴A9に記載の産業機器用制御システム。
【0161】
産業用機器に搭載されたモータへの駆動信号が原因となってノイズが印加され得る場合であっても、特徴A1等に示した構成を適用することで当該ノイズを適切に除去可能となる。このような構成とすれば、例えば産業機器における様々な動き等を実現すべくモータの数が嵩む場合であっても配線等の取り回しにかかる制約を緩和できる。また、制御対象となるモータの数が多くなれば通信量についても増加することとなるが、特徴A1等に示したフィルタによれば、そのような通信量の増加にも好適に対応できる。
【0162】
特徴A11.前記判定周期よりも長く且つ前記単位期間よりも短い期間である所定期間(例えば75ns)に亘って前記出力信号が前記第1信号に維持されている場合に、予め定められた制御処理(サンプリングを開始させる処理)が実行される構成となっており、
前記生成手段は、前記特定手段による特定結果が前記第1結果となった場合には前記第1信号の出力期間が前記所定期間以上の長さとなるようにして前記出力信号を生成する特徴A2乃至特徴A10のいずれか1つに記載の産業機器用制御システム。
【0163】
特徴A1等に示したように特定手段による特定結果に応じて出力信号を生成する構成においては、例えば第2結果→第1結果→第2結果となった場合には第1結果が孤立して第1信号の出力期間が短くなることで、本来実行されるべき制御処理が実行されなくなるといった不都合が生じ得る。この点、本特徴に示すように、特定手段による特定結果が第1結果となった場合には第1信号の出力期間が所定期間以上の長さとなるようにして出力信号を生成することにより、そのような不都合の発生を抑制できる。
【0164】
特徴A12.前記生成手段は、前記第1信号及び前記第2信号の一方の出力が開始されてから前記判定周期よりも長く且つ前記単位期間よりも短い期間である所定期間(例えば75ns)が経過するまでは、前記特定手段による前記特定及び前記特定手段による特定結果の何れかを無効とし、前記一方の出力が継続されるようにして前記出力信号を生成する特徴A2乃至特徴A10のいずれか1つに記載の産業機器用制御システム。
【0165】
特徴A1等に示したように特定手段による特定結果に応じて出力信号を生成する構成においては、例えば第2結果→第1結果→第2結果となった場合には第1結果が孤立して第1信号の出力期間が短くなったり、第1結果→第2結果→第1結果となった場合には第2結果が孤立して第2信号の出力期間が短くなったりすることで、本来実行されるべき制御処理が実行されなくなるといった不都合が生じ得る。この点、本特徴に示すように、第1信号及び第2信号の一方の出力が開始されてから所定期間が経過するまでは特定手段による多数派の特定及びその特定結果との何れかを無効として当該一方の出力を継続することにより、そのような不都合の発生を抑制できる。
【0166】
特徴A13.前記入力信号は、前記特定手段による前記特定を開始させるための開始信号と、前記開始信号に後続となる複数のデータ信号とを含み、
前記開始信号及び各前記データ信号は、出力期間が何れも前記単位期間となるように構成されており、
前記開始信号が前記判定周期よりも長く且つ前記単位期間よりも短い期間である所定期間(例えば75ns)に亘って前記第2信号に維持されている場合に、前記出力信号の値のサンプリングを開始する開始条件が成立となり、その後は、前記単位期間毎に前記出力信号の値がサンプリングされる構成となっており、
前記生成手段は、
前記開始信号に係る前記特定結果が前記第2結果となった場合であって前記第2信号の出力期間が前記所定期間よりも短くなり得る場合には、前記第2信号の出力期間が前記所定期間と同じ長さとなるようにして当該出力期間を伸長させる手段と、
前記データ信号に係る前記特定結果が前記第1結果及び前記第2結果の何れかとなった場合であって前記第1信号及び前記第2信号の何れかの出力期間が前記所定期間よりも短くなり得る場合には、当該出力期間が前記所定期間と同じ長さとなるようにして当該出力期間を伸長させる手段と、
を有している特徴A2乃至特徴A10のいずれか1つに記載の産業機器用制御システム。
【0167】
本特徴に示すように、開始信号について出力信号の出力期間を伸長させた場合には、開始条件の成立タイミングが遅れることとなる。後続となる複数のデータ信号について第1信号及び第2信号の何れかの出力期間が所定期間よりも短くなり状況となった場合には、当該出力期間が所定期間と同じ長さとなるようにして伸長される。これにより、開始信号について出力信号の伸張が発生することで、その後のデータ信号の値の検出にタイミングのずれが生じる等して、当該検出が適切に行われなくなることを抑制できる。
【0168】
特徴A14.産業機器(ロボット15)を対象として制御を行う産業機器用制御システム(制御システム50)であって、
入力された入力信号をフィルタ処理し当該フィルタ処理を経ることでノイズ(例えば50ns以下の長さのノイズ)を除去した信号を出力信号として出力する入出力部(入出力部62)を備え、
前記入力信号は、予め設定されている単位期間(例えば125ns)に亘って値が一定となるようにして生成される信号であり、
前記入力信号の値として、第1所定値(HIGHレベル、論理値「H」)及び第2所定値(LOWレベル信号、論理値「L」)が規定されており、
前記入出力部は、前記フィルタ処理を実行する手段として、
現時点から遡った前記単位期間と同じ長さの期間内にて前記入力信号が前記第1所定値となっている第1期間の長さと前記入力信号が第2所定値となっている第2期間の長さとを周期的に比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果に応じた信号となるようにして前記出力信号を生成可能な生成手段(出力信号生成部72において出力信号を生成する機能)と
を有している産業機器用制御システム。
【0169】
本特徴に示す構成によれば、産業機器用制御システムにおける通信量の増加に伴った通信速度の低下を抑制可能なデジタルフィルタの実現に寄与できる。
【0170】
特徴A15.産業機器(ロボット15)を対象として制御を行う産業機器用制御システム(制御システム50)に適用され、入力された入力信号をフィルタ処理し当該フィルタ処理を経ることでノイズを除去した信号を出力信号として出力するノイズフィルタ(ノイズ除去部66)であって、
前記入力信号は、予め設定されている単位期間(例えば125ns)に亘って値が一定となるようにして生成される信号であり、
前記単位期間よりも短くなるように設定された判定周期(例えば25ns)毎に前記入力信号の値を判定し、当該判定を前記単位期間内で複数回繰り返すように構成された判定手段(多数決論理フィルタ部71における二値判定機能)と、
前記判定手段による所定回数分(例えば5回分)の判定結果について最も多く判定された値を特定する特定手段(多数決論理フィルタ部71における多数決機能)と、
前記特定手段による特定結果に応じた信号となるようにして前記出力信号を生成可能な生成手段(出力信号生成部72において出力信号を生成する機能)と
を有しているノイズフィルタ。
【0171】
本特徴に示す構成によれば、産業機器用制御システムにおける通信量の増加に伴った通信速度の低下を抑制可能なデジタルフィルタの実現に寄与できる。
【0172】
特徴A16.産業機器(ロボット15)を対象として制御を行う産業機器用制御システム(制御システム50)に適用され、入力された入力信号をフィルタ処理し当該フィルタ処理を経ることでノイズを除去した信号を出力信号として出力するノイズフィルタ(ノイズ除去部66)であって、
前記入力信号は、予め設定されている単位期間(例えば125ns)に亘って値が一定となるようにして生成される信号であり、
前記入力信号の値として、第1所定値(HIGHレベル、論理値「H」)及び第2所定値(LOWレベル信号、論理値「L」)が規定されており、
前記単位期間よりも短くなるように設定された判定周期(例えば25ns)毎に前記入力信号の値を判定し、当該判定を前記単位期間内で複数回繰り返すように構成された判定手段(多数決論理フィルタ部71における二値判定機能)と、
前記判定手段による所定回数分の判定結果について前記第1所定値となった回数と前記第2所定値となった回数とを比較することにより前記第1所定値及び前記第2所定値のうち判定された回数が多数となる一方を特定する特定手段(多数決論理フィルタ部71における多数決機能)と、
前記特定手段による特定結果に応じた信号となるようにして前記出力信号を生成可能な生成手段(出力信号生成部72において出力信号を生成する機能)と
を有しているノイズフィルタ。
【0173】
本特徴に示す構成によれば、産業機器用制御システムにおける通信量の増加に伴った通信速度の低下を抑制可能なデジタルフィルタの実現に寄与できる。
【0174】
<特徴B群>
以下の特徴B群は、「車両用の制御システム(車両用制御システム)においては、車両自身や外部環境等の様々な要因によってノイズが発生し得る。このようなノイズが信号線に印加され、当該ノイズによって信号の送受信が適切に行われなくなることは、車両の適正な動作の妨げになると懸念される。そこで、車両用制御システムにおいては、ノイズの影響を抑えるべく、ノイズ除去用のフィルタ回路(ノイズフィルタ)を搭載するといった対策が講じられている(例えば、特許文献1参照)。」という背景技術について、「近年では、車両の多機能化や高機能化等の様々な理由から車両用制御システムにおける通信量は増加傾向にある。ここで、上述したフィルタ回路を用いてノイズの影響を抑えることには技術的意義があるものの、通信量の増加によって以下の懸念が顕在化する。すなわち、車両用制御システムでは各種制御にて通信データ等を参照するサイクルタイムが予め規定されている場合があるが、このサイクルタイムの間延びを抑えつつ通信量の増加に対応しようとすれば、送受信の効率化(通信の高速化)を実現する必要が生じる。ここで、ノイズ耐性の向上を図る上でノイズを除去するための所要期間が嵩むことは、その妨げになる。このように、車両用制御システムにおいては、ノイズ耐性の向上を図りつつ通信量の増加に対応する上でノイズの除去に係る構成に未だ改善の余地がある。」という課題等に鑑みてなされたものである。
【0175】
特徴B1.車両(車両100)を対象として制御を行う車両用制御システム(車両用制御システム150)であって、
入力された入力信号をフィルタ処理し当該フィルタ処理を経ることでノイズを除去した信号を出力信号として出力する入出力部(入出力部162)を備え、
前記入力信号は、予め設定されている単位期間に亘って値が一定となるようにして生成される信号であり、
前記入出力部は、前記フィルタ処理を実行する手段として、
前記単位期間よりも短くなるように設定された判定周期毎に前記入力信号の値を判定し、当該判定を前記単位期間内で複数回繰り返すように構成された判定手段と、
前記判定手段による所定回数分の判定結果について最も多く判定された値を特定する特定手段(多数決論理フィルタ部71における多数決機能)と、
前記特定手段による特定結果に応じた信号となるようにして前記出力信号を生成可能な生成手段と
を有している車両用制御システム。
【0176】
本特徴に示す構成によれば、判定手段による所定回数分の判定結果について最も多く判定された入力信号の値を特定し、その特定結果に応じた信号となるようにして出力信号が生成される。入力信号にノイズが印加されることで、入力信号の値が部分的(瞬間的)に変化したとしても、当該変化した部分については特定手段による特定→生成手段によって除去し得る。これにより、ノイズの印加(混入)による信号の改変を抑制できる。
【0177】
ここで、本特徴に示すように最も多く判定された値に基づいて出力信号が生成される構成は、以下の理由から、通信量の増加に伴った通信速度の低下を抑制する上で有利である。すなわち、入力信号の幅(上記単位期間)を規定する上では、車両自身やその周辺で発生し得るノイズの印加の幅(印加期間)よりも長くすることが好ましい、具体的には印加されるノイズによって本来の信号(値)を適切に検出できなくなることを回避可能な長さとすることが好ましい。一方で、単位期間を過度に長くしてしまうとノイズ耐性の向上が期待できる反面、入力信号が間延びして多量の情報を短期間で送受信することは難しくなる。従来のフィルタのように、入力信号において予め設定された長さよりも短い部分をノイズとして除去する構成では、入力信号がノイズによって前後に分かれる等した場合に各部分が除去され得る。つまり、本来の信号が消失し得る。このような事情を考慮すると、想定されるノイズの印加期間の3倍+αとなるようにして単位期間を設定する必要が生じる。これに対して、本特徴に示す構成(特定手段等)では、本来の信号の消失を抑制する上で、最も短いパターンでは単位期間を想定されるノイズの印加期間の2倍+αとなるように設定することが可能となる。つまり、単位時間の短縮に寄与できる。これにより、車両用制御システムにおける通信量の増加に伴った通信速度の低下を抑制できる。例えば、単位期間を判定周期で除した数となるように所定回数を設定するとよい。
【0178】
特徴B2.車両(車両100)を対象として制御を行う車両用制御システム(車両用制御システム150)であって、
入力された入力信号をフィルタ処理し当該フィルタ処理を経ることでノイズを除去した信号を出力信号として出力する入出力部(入出力部162)を備え、
前記入力信号は、予め設定されている単位期間に亘って値が一定となるようにして生成される信号であり、
前記入力信号の値として、第1所定値及び第2所定値が規定されており、
前記入出力部は、前記フィルタ処理を実行する手段として、
前記単位期間よりも短くなるように設定された判定周期毎に前記入力信号の値を判定し、当該判定を前記単位期間内で複数回繰り返すように構成された判定手段と、
前記判定手段による所定回数分の判定結果について前記第1所定値となった回数と前記第2所定値となった回数とを比較することにより前記第1所定値及び前記第2所定値のうち判定された回数が多数となる一方を特定する特定手段と、
前記特定手段による特定結果に応じた信号となるようにして前記出力信号を生成可能な生成手段と
を有している車両用制御システム。
【0179】
本特徴に示す構成によれば、判定手段による所定回数分の判定結果について最も多く判定された入力信号の値を特定し、その特定結果に応じた信号となるようにして出力信号が生成される。ノイズが印加され入力信号の値が部分的(瞬間的)に変化したとしても、当該変化した部分については特定手段による特定→生成手段による生成の過程で除去されるため、ノイズの印加(混入)による信号の改変を抑制できる。
【0180】
ここで、本特徴に示すように第1所定値及び第2所定値のうち多数派となる一方に基づいて出力信号が生成される構成は、以下の理由から、通信量の増加に伴った通信速度の低下を抑制する上で有利である。すなわち、入力信号の幅(上記単位期間)を規定する上では、車両自身やその周辺で発生し得るノイズの印加の幅(印加期間)よりも長くすることが好ましい、具体的には印加されるノイズによって本来の信号(値)を適切に検出できなくなることを回避可能な長さとすることが好ましい。一方で、単位期間を過度に長くしてしまうとノイズ耐性の向上が期待できる反面、入力信号が間延びして多量の情報を短期間で送受信することは難しくなる。従来のフィルタのように、入力信号において予め設定された長さよりも短い部分をノイズとして除去する構成では、入力信号がノイズによって前後に分かれる等した場合に各部分が除去され得る。つまり、本来の信号が消失し得る。このような事情を考慮すると、単位期間を想定されるノイズの印加期間の3倍+αとなるように設定する必要が生じる。これに対して、本特徴に示す構成(特定手段等)では、本来の信号の消失を抑制する上で、最も短いパターンでは単位期間を想定されるノイズの印加期間の2倍+αとなるように設定することが可能となる。つまり、単位時間の短縮に寄与できる。これにより、車両用制御システムにおける通信量の増加に伴った通信速度の低下を抑制することができる。
【0181】
特徴B3.車両(車両100)を対象として制御を行う車両用制御システム(車両用制御システム150)であって、
入力された入力信号をフィルタ処理し当該フィルタ処理を経ることでノイズを除去した信号を出力信号として出力する入出力部(入出力部162)を備え、
前記入力信号は、予め設定されている単位期間に亘って値が一定となるようにして生成される信号であり、
前記入力信号の値として、第1所定値及び第2所定値が規定されており、
前記入出力部は、前記フィルタ処理を実行する手段として、
現時点から遡った前記単位期間と同じ長さの期間内にて前記入力信号が前記第1所定値となっている第1期間の長さと前記入力信号が第2所定値となっている第2期間の長さとを周期的に比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果に応じた信号となるようにして前記出力信号を生成可能な生成手段と
を有している車両用制御システム。
【0182】
本特徴に示す構成によれば、車両用制御システムにおける通信量の増加に伴った通信速度の低下を抑制できる。
【0183】
なお、上記特徴A2,特徴A4~特徴A16に示した各技術的思想を特徴B1~特徴B3に適用してもよい。
【符号の説明】
【0184】
10…ロボットシステム、11~13…周辺機器としてのコンベア、15…産業機器としてのロボット、21…ロボット本体、31…サーボモータ、32…ロータリエンコーダ、41…入出力部、42…データ生成部、50…制御システム、51…上位コントローラ、52…ロボットコントローラ、62…入出力部、66…ノイズ除去部、71…多数決論路フィルタ部、72…出力信号生成部、74…記憶部、81…データ検出部、91…信号線、92…動力線、93…信号線、100…車両、150…車両用制御システム、162…入出力部、170…ノイズ除去部。
図1
図2
図3
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図10
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図14