(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113271
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】癌の腫瘍マーカー
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
G01N33/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018129
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】505155528
【氏名又は名称】公立大学法人横浜市立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098121
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 世津子
(74)【代理人】
【識別番号】100107870
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 健一
(72)【発明者】
【氏名】川崎 ナナ
(72)【発明者】
【氏名】高倉 大輔
(72)【発明者】
【氏名】向 武志
(72)【発明者】
【氏名】市川 靖史
(72)【発明者】
【氏名】小林 規俊
(72)【発明者】
【氏名】徳久 元彦
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CA26
2G045DA44
2G045FB06
(57)【要約】
【課題】 新規な腫瘍マーカーを提供すること。
【解決手段】被験者由来の生物学的試料におけるN-型糖鎖で修飾されたFGG(Fibrinogen gamma chain)のレベルを測定することを含む、がんの診断を補助するための方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者由来の生物学的試料におけるN-型糖鎖で修飾されたFGG(Fibrinogen gamma chain)のレベルを測定することを含む、がんの診断を補助するための方法。
【請求項2】
N-型糖鎖及びFGGを検出することにより、N-型糖鎖で修飾されたFGGのレベルを測定する請求項1記載の方法。
【請求項3】
被験者由来の生物学的試料を還元剤で処理してから、N-型糖鎖で修飾されたFGGのレベルを測定する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
N-型糖鎖で修飾されたFGGのレベルが高い場合に、がんに罹患している可能性が高いことを示し、N-型糖鎖で修飾されたFGGのレベルが低い場合に、がんに罹患している可能性が低いことを示す請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
N-型糖鎖による修飾が、FGGのAsn78への2本鎖シアロ複合型糖鎖の付加である請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
2本鎖シアロ複合型糖鎖が、HexNAc(4)Hex(5)NeuAc(1)またはHexNAc(4)Hex(5)NeuAc(2)である請求項5記載の方法。
【請求項7】
2本鎖シアロ複合型糖鎖のシアル酸が隣接する糖にα2-3結合している請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
生物学的試料が、細胞、組織、体液、腹腔液、腹腔洗浄液、糞便又は尿である請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
体液が血液である請求項8記載の方法。
【請求項10】
血液が、全血、血清、血漿又は血漿交換外液のいずれかである請求項9記載の方法。
【請求項11】
がんが膵がんである請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
N-型糖鎖で修飾されたFGG(Fibrinogen gamma chain)を特異的に検出することができる試薬を含む、検査キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の腫瘍マーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
膵がんは特有の症状が少なく、早期発見が難しいことから、診断時の80%はステージIVの進行度とされている。そのため、手術適応症例は少なく、多くは抗悪性腫瘍剤であるゲムシタビン塩酸塩を軸とした化学療法が選択されるものの予後は極めて悪く、進行性膵がん患者の5年生存率は概ね10%以下とされている。進行膵がんの臨床症状はその病巣占拠部位によって異なるが、腹水や消化管出血、腹部腫瘤が主である。
【0003】
現在、膵がんのスクリーニング検査としては、血中膵酵素測定、腹部超音波検査および腫瘍マーカー測定がある。これらの検査は、主に、腹痛などの腹部症状や糖尿病の新規発症、増悪を認める場合に実施される。血中膵酵素測定法では、膵型アミラーゼやエラスターゼ1などの血中濃度を測定する。腫瘍マーカー法では、糖鎖抗原に対してCA19-9、Span-1、CA50、CA242、Dupan-2及びTAG-72、糖鎖以外の抗原に対してCEA等が用いられており(非特許文献1)、その上昇が診断の目安にされているが*1、これらは必ずしも膵がんに特徴的ではない。
【0004】
糖鎖は最も重要な翻訳後修飾の1つであり、N-型糖鎖とO-型糖鎖に大別される。糖タンパク質の糖鎖部分は、タンパク質のコンフォメーションやシグナル伝達に関与する。癌では糖鎖の変化が頻繁に観察されることから、癌の診断マーカーとして利用されてきた。がんにおける糖タンパク質の糖鎖変化を利用した腫瘍マーカーとしては肝細胞がんにおけるAFP(alpha-Fetoprotein)コアフコシル化の亢進を利用したAFP-L3(富士フィルム和光純薬)が開発されている。また、大腸がんと膵がんにおけるHP(Haptoglobin)コアフコシル化の亢進を利用したレクチンELISAキットの開発も進められている(大阪大学、タカラバイオ、免疫生物研究所)。両者の感度は共に40-50%である。さらに、近年、既存の前立腺がんマーカーPSAの診断精度向上を目指し、PSA糖鎖の変化(LacdiNAc構造の有無)を新たな診断指標に加えたPSA G-indexも開発されている(がん研究会、LSIメディエンス)。これらは全てN-型糖鎖の糖鎖変化を利用しており、主に抗タンパク質抗体と糖鎖結合タンパク質レクチンを用いたサンドイッチELISA(Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay)系*2で検出している。
*1膵癌診療ガイドライン参照
*2腫瘍マーカー法で一般的に用いられているELISAフォーマットには、「サンドイッチ法」と「競合法」がある。サンドイッチ法は、使用前に抗原を精製する必要がなく、検出感度と特異性が高いことからELISA系を構築するための第一選択となる。しかし、同一抗原に対する競合しない2種類の抗体 (捕捉抗体・検出抗体)が必要となり、この「マッチドペア」と呼ばれる抗体の組み合わせを開発するためには、多くの費用と時間がかかる。そして、「マッチドペア」抗体が開発できない場合、「競合法」が選択される。抗原に対するモノクローナル抗体(捕捉抗体)と、検出のための標識レクチンを用いることで、検出感度と特異性を保ったまま、「マッチドペア」抗体の開発のための費用と時間を大幅に抑えることが可能になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】膵癌診療ガイドライン 2019年版(日本膵臓学会、膵癌治療ガイドライン改定委員会 編)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
血中膵酵素である血清アミラーゼやエラスターゼ1などは膵癌に特異的ではなく、膵癌における異常率は20-50%に留まる。また、腹部超音波検査の膵画像による有所見率は約1%であり、膵癌発見率は約0.06%以下と低い。
【0007】
一方、腫瘍マーカー法で主に用いられているCA19-9の感度は、進行癌で70-80%とされるが、早期膵癌では50%程度と低下する。また、偽陽性の高さ(早期膵癌では52%)も課題となっており、膵癌の早期診断における有用性は低く、主にフォローアップ、予後予測および治療効果の判定に適している(膵癌診療ガイドライン参照)。偽陽性率の高さの原因として、CA19-9の標的であるシアリルルイスaをはじめとする糖鎖腫瘍抗原ががんと無関係のタンパク質にも結合しており、検査用抗体ががんと無関係のタンパク質上の糖鎖抗原も認識していることが考えられる。したがって、膵がんでは早期発見方法の確立とともに、患者の状態をより正確にモニタリングするための新しい臨床検査指標の探索が求められている。
【0008】
本発明は、新たな腫瘍マーカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、膵癌患者血清中に存在するFGG(Fibrinogen gamma chain)由来N-型糖鎖修飾ペプチドに着目したものである。FGGは、FGA(Fibrinogen alpha chain)およびFGB(Fibrinogen beta chain)とホモダイマーを形成し、トロンビンの作用によりフィブリンに転換されることで血栓形成に関与する。膵臓癌をはじめ、さまざまな癌における血栓症の相対リスクは他疾患に比べて高く、癌患者における凝固の活性化は罹患率と死亡率に有意に寄与することが知られている。本発明は、血栓形成に対する生体応答の結果として亢進した抗血栓形成作用(溶解作用)機序に基づく。すなわち、血栓形成により惹起されたプラスミンによるフィブリンの切断・分解(Gamma鎖:aa84-85、aa88-89)により血中へ遊離されたN-型糖鎖修飾部位(Asn78)を含むFGGのN-末端側ペプチド領域を検出する。
【0010】
上記従来技術における腫瘍マーカーはいずれも、コアフコシル化の亢進をはじめ癌における“N-型糖鎖の構造変化”に着目している。そのため、N-型糖鎖の部分的な構造変化を利用したマーカーとなっており、検出には複雑な糖鎖構造の微細な違いを識別する方法を構築する必要がある。一方、本発明では、癌細胞における血栓の形成作用に対する生体応答の結果として血中に遊離したFGG由来のN-型糖ペプチドを利用する。発明者らは、独自に糖鎖修飾解析プラットフォームの開発に成功し、供与血清から得られたN-型グリコフォームから、非ラベル化定量法により統計学的に有意(Differece≧5.0、FDR LogWorth≧1.3)なN-型グリコフォームをリスト化した。その中から、Asn78を含むFGG由来N-型糖鎖修飾ペプチドを腫瘍マーカーとした。
【0011】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)被験者由来の生物学的試料におけるN-型糖鎖で修飾されたFGG(Fibrinogen gamma chain)のレベルを測定することを含む、がんの診断を補助するための方法。
(2)N-型糖鎖及びFGGを検出することにより、N-型糖鎖で修飾されたFGGのレベルを測定する(1)記載の方法。
(3)被験者由来の生物学的試料を還元剤で処理してから、N-型糖鎖で修飾されたFGGのレベルを測定する(1)又は(2)に記載の方法。
(4)N-型糖鎖で修飾されたFGGのレベルが高い場合に、がんに罹患している可能性が高いことを示し、N-型糖鎖で修飾されたFGGのレベルが低い場合に、がんに罹患している可能性が低いことを示す(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5)N-型糖鎖による修飾が、FGGのAsn78への2本鎖シアロ複合型糖鎖の付加である(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
(6)2本鎖シアロ複合型糖鎖が、HexNAc(4)Hex(5)NeuAc(1)またはHexNAc(4)Hex(5)NeuAc(2)である(5)記載の方法。
(7)2本鎖シアロ複合型糖鎖のシアル酸が隣接する糖にα2-3結合している(5)又は(6)に記載の方法。
(8)生物学的試料が、細胞、組織、体液、腹腔液、腹腔洗浄液、糞便又は尿である(1)~(7)のいずれかに記載の方法。
(9)体液が血液である(8)記載の方法。
(10)血液が、全血、血清、血漿又は血漿交換外液のいずれかである(9)記載の方法。
(11)がんが膵がんである(1)~(10)のいずれかに記載の方法。
(12)N-型糖鎖で修飾されたFGG(Fibrinogen gamma chain)を特異的に検出することができる試薬を含む、検査キット。
【0012】
エピトープに適したターン構造はFGGのaa96-128領域に限定されており、サンドイッチ法で必要とされる異なるエピトープを認識する抗体ペアを準備することは難しい。抗FGG抗体と標識レクチンを用いることで、サンドイッチ法の構築が容易となる(サンドイッチ法の感度は直接法や間接法と比べて2-5倍)。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、新たながん腫瘍マーカーとしてFGG由来N型糖ペプチドが同定された。これを単独、または組み合わせで用いることにより、糖鎖部分のみを認識抗原とする従来の腫瘍マーカーと比べ、感度と特異度に優れた診断が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】N-グライコプロテオミクスのワークフロー。網羅的なN-グリコフォームの分析は、大きく3つの段階に分けられた。ステップ1:アルブミン及びIgG除去血清タンパク質のトリプシン/リシルエンドペプチダーゼ消化、ステップ2:親水性相互作用クロマトグラフィーを用いたN-糖ペプチドの濃縮、ステップ3:LC/MS/MSによるN-糖ペプチドの同定と統計解析。
【
図2】LC/MS/MSで同定されたN-グリコフォームの定性比較。
【
図3】N-グリコフォームピーク面積値を用いた主成分分析(PCA)。
【
図4】進行膵がんと健常者血清試料のN-グリコフォームの定量比較。健常群と比較した進行膵がん患者のN-グリコフォームピーク面積値のVolcano Plot。赤:Difference ≧2.00; FDR LogWorth ≧1.3を示す。
【
図5】FGG由来N-グリコフォームのプロダクトイオンスペクトル。上段;HexNAc(4)Hex(5)NeuAc(1)、下段;HexNAc(4)Hex(5)NeuAc(2)。
【
図6】FGG由来N-グリコフォームのBoxPlotによる比較。上段;HexNAc(4)Hex(5)NeuAc(1)、下段;HexNAc(4)Hex(5)NeuAc(2)。**, p < 0.01。
【
図7】FGG由来N-グリコフォームの進行膵がん診断のための受信者動作特性 (ROC) 曲線。
【
図8】FGG由来非糖鎖修飾ペプチドのBoxPlotによる比較。上段;aa32-40領域ペプチド、下段;aa329-347領域ペプチド。
【
図9】FGG由来非糖鎖修飾ペプチドの進行膵がん診断のための受信者動作特性 (ROC) 曲線。
【
図10】フィブリノーゲンによる血栓形成と線溶。黄色;血清に含まれるフィブリノーゲン/フィブリン分解物(血清FDP)、赤色;血漿に含まれるフィブリノーゲン/フィブリン分解物(血漿FDP)。
【
図11】ウエスタンブロットによる血清FGGレベルの比較。
【
図12】ウエスタンブロットによる血漿及び血清中FGGの比較。
【
図13】α2-3ノイラミニダーゼ処理によるFGG由来グリコフォームピーク面積値の変化。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明は、被験者由来の生物学的試料におけるN-型糖鎖で修飾されたFGG(Fibrinogen gamma chain)のレベルを測定することを含む、がんの診断を補助するための方法を提供する。
【0017】
フィブリノーゲンγ鎖(FGG)は、フィブリノーゲンα鎖(FGA)及びフィブリノーゲンβ鎖(FGA)とS-S結合を介してフィブリンモノマーを形成し、さらにモノマー同士が結合しフィブリンダイマーを形成することで、血栓形成に関与する。FGG、FGB、FGAは共通してN末端側のEドメイン、中央のcoiled coilドメイン、C末端側のDドメインに分かれており、プラスミンによる切断の有無により、生体内で血栓形成と線溶がバランスよく機能している。フィブリノーゲンγ鎖は、453アミノ酸から構成される分子量51,512-Daの分泌型糖タンパク質であり、分子内に1箇所のN-糖鎖付加部位(Asn78)が存在する。
【0018】
線溶とは、血液の塊(凝血塊、フィブリン塊)が溶解されることである。血栓形成時にフィブリン塊が溶解されることを2次線溶、血栓形成とは無関係に活性化されたプラスミンにより惹起されたフィブリノーゲンの溶解を、1次線溶と呼び区別する(
図10)。フィブリノーゲンやフィブリンモノマーは血漿に存在し、血清にはE分画、D分画が存在する。膵がん患者の血清中にFGGの全長が検出されたが、FGBとFGAは検出されなかったことから、膵がん患者の血清中に存在するFGG鎖は膵がん細胞が産生したものと本発明者らは考えている。FGGのアミノ酸配列を配列番号1に示す。
【0019】
N-型糖鎖で修飾されたFGGのレベルが高い場合に、がんに罹患している可能性が高いことを示し、N-型糖鎖で修飾されたFGGのレベルが低い場合に、がんに罹患している可能性が低いことを示しうる。
【0020】
N-型糖鎖による修飾は、FGGのAsn78への2本鎖シアロ複合型糖鎖の付加であるとよい。
【0021】
2本鎖シアロ複合型糖鎖は、HexNAc(4)Hex(5)NeuAc(1)(モノシアロ二本鎖複合型糖鎖)またはHexNAc(4)Hex(5)NeuAc(2)(ジシアロ二本鎖複合型糖鎖)であるとよい。
【0022】
2本鎖シアロ複合型糖鎖のシアル酸は隣接する糖にα2-3結合しているとよい。
【0023】
本発明の方法において、被験者はがんへの罹患(がんの再発も含む)が疑われる患者であるが、発病の危険性が考えられるすべてのヒトを対象としてもよい。被験者は、がんの治療中あるいは治療後の患者であってもよい。
【0024】
本発明の方法において、生物学的試料は、細胞、組織、体液、腹腔液、腹腔洗浄液、糞便又は尿でありうる。体液は血液であるとよく、血液は、全血、血清、血漿又は血漿交換外液のいずれかであるとよい。
【0025】
本発明の方法は、被験者由来の生物学的試料におけるN-型糖鎖で修飾されたFGGのレベルを測定することを含む。
【0026】
N-型糖鎖で修飾されたFGGのレベルの測定は、N-型糖鎖で修飾されたFGGの有無を検出してもよいし、N-型糖鎖で修飾されたFGGの量(濃度)を測定してもよい。
【0027】
N-型糖鎖で修飾されたFGGレベルの測定には、糖タンパク質を検出できるいかなる方法を用いてもよく、N-型糖鎖及びFGGの両方を検出することが好ましい。検出とは、測定対象の物質の有無を確認するだけでなく、量(濃度)の測定も含む概念である。検出の対象となるFGGは全長であってもよいし、FGGの一部の領域を含むペプチド断片であってもよい。FGGの一部の領域を含むペプチド断片は、N-型糖鎖修飾部位(Asn78)を含むとよく、例えば、N-型糖鎖修飾部位(Asn78)を含むFGGのN-末端側ペプチド領域(例えば、FGGの65-79アミノ酸領域ペプチド)である。また、検出の対象となるN-型糖鎖についても、全長であっても、N-型糖鎖構造の一部であってもよい。N-型糖鎖構造の一部は、シアル酸が結合している糖を含むとよい。
【0028】
N-型糖鎖で修飾されたFGGレベルの測定には、例えば、抗タンパク質抗体と糖鎖検出用レクチンを用いたサンドイッチELISA系、質量分析法、電気泳動法などを用いることができる。
【0029】
本発明においては、被験者由来の生物学的試料を還元剤で処理してから、N-型糖鎖で修飾されたFGGのレベルを測定するとよい。本発明者らは、膵がん患者血清のWestern Blottingの結果から、癌細胞由来のFGGがダイマー(ペプチド結合)を形成している可能性を見出している。被験者由来の生物学的試料を還元剤で処理することにより、FGGのダイマーをモノマーにすることができる。還元剤としては、2-メルカプトエタノール(2-mercaptoethanol, 2-ME)、ジチオトレイトール (dithiothreitol, DTT)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(tris(2-carboxyethyl)phosphine, TCEP)などを使用することができる。
【0030】
抗タンパク質抗体と糖鎖検出用レクチンを用いたサンドイッチELISA系により、N-型糖鎖で修飾されたFGGのレベルを測定するには、例えば、固定化されたレクチンに試料中のN-型糖鎖で修飾されたFGGを反応させて、複合体を形成させる。次いで蛍光標識抗FGG抗体と反応させ、レクチン-N-型糖鎖修飾FGG-抗FGG抗体複合体を蛍光で検出する。
【0031】
抗FGG抗体は市販されており、その市販の抗体を用いてもよいし、公知の方法によりモノクローナル抗体あるいはポリクローナル抗体を作製して、それを用いてもよい。N-型糖鎖検出用レクチンとしては、ガラクトースに選択的に結合するMAL-I (Maackia amrensis Lectin I)、シアル酸に結合するSNL(Sambucus Nigra Lectin)や MAL-II(Maackia amrensis Lectin II)レクチンなどを用いることができる。膵癌患者血清中のFGGのシアル酸はα2-3結合であることが示唆されるので、例えば、α2-6ではなくα2-3シアル酸に選択的に結合すると考えられているMAL-II(Maackia amrensis Lectin II)レクチンが好ましい。
【0032】
質量分析法によるN-型糖鎖で修飾されたFGGのレベルの測定は、例えば、
図1に示した通り、大きく3つの段階に分けられる。ステップ1:アルブミン及びIgG除去血清タンパク質のトリプシン/リシルエンドペプチダーゼ消化、ステップ2:親水性相互作用クロマトグラフィーを用いたN-糖ペプチドの濃縮、ステップ3:LC/MS/MSによるN-糖ペプチドの同定。LC/MS/MSのスペクトルデータを得て、FGGに由来するN-グリコフォームのプリカーサーイオンのピーク面積値を出すとよい。ピーク面積値がカットオフ値よりも高ければ、がんに罹患している可能性が高く、ピーク面積値がカットオフ値よりも低ければ、がんに罹患している可能性が低いと判定することができる。カットオフ値は、ROC曲線を用い、感度と特異度を考慮して、設定することができる。質量分析法においては、例えば、FGG/HexNAc(4)Hex(5)NeuAc(1)(m/z 924.40, z=4; m/z 1232.20, z=3)、FGG/HexNAc(4)Hex(5)NeuAc(2) (m/z 997.18, z=4; m/z 1329.23, z=3)などのN-グリコフォームのプリカーサーイオンをFGG糖ペプチドの診断イオンとして利用できる。N-グリコフォームのプリカーサーイオンのピーク面積のカットオフ値の設定においては、患者血清で最もピーク面積値が低い値をカットオフ値とするとよい。FGG/HexNAc(4)Hex(5)NeuAc(1)のプリカーサーイオンのピーク面積のカットオフ値としては、例えば、5E+04~4E+08の範囲内で設定することができ、その一例として、後述の実施例では、4E+06の値を設定した。FGG/HexNAc(4)Hex(5)NeuAc(2) のプリカーサーイオンのピーク面積のカットオフ値としては、例えば、5E+04~3E+08の範囲内で設定することができ、その一例として、後述の実施例では、6E+05の値を設定した。
【0033】
電気泳動によるN-型糖鎖で修飾されたFGGのレベルの測定は、例えば、血清タンパク質を還元処理した後、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離する。ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜等に電気的に転写し、抗FGG抗体とホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)標識抗体を用いて検出する。FGGが検出されていればがんに罹患している可能性が高く、検出されなければがんに罹患している可能性が低いと判定することができる。電気泳動法においては、検出されるFGGの分子量(サイズ)も診断基準として利用できる。健常血漿においては、50-kDaおよび100-kDa近傍にFGG由来のバンドが検出される一方で、膵がん患者血清では90-kDa近傍にスメアー上のFGG由来のバンドが検出される。
【0034】
本発明において、診断を補助する対象となるがんは、膵がんであるとよい。がんは進行性あるいは再発がんであってもよい。
【0035】
本発明の方法により、がんに罹患している可能性が高いことが示された場合、被験者にはがんの治療を施すとよい。がんの治療法としては、手術(外科治療)、薬物療法、放射線治療、内視鏡治療、造血幹細胞移植、免疫療法、がんゲノム医療、リハビリテーション、緩和ケアなどがあり、これらの治療法を単独で、あるいは組み合わせて治療するとよい。膵がんの治療には、手術、放射線治療、薬物療法、免疫療法などを単独で、あるいは組み合わせて行うとよい。化学放射線療法は、放射線治療と化学療法(細胞傷害性抗がん薬による治療)を組み合わせた治療である。薬物療法には、術前補助化学療法・術後補助化学療法、手術できない場合に用いる化学療法、化学療法後に進行・再発した場合に用いる薬物療法がある。術前補助化学療法・術後補助化学療法には、テガフール、ギメラシル、オテラシルカリウム配合剤(TS-1:ティーエスワン)、ゲムシタビンなどを使用することができる。手術できない場合に用いる化学療法には、ゲムシタビン単剤治療、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、FOLFIRINOX療法(フルオロウラシル[5-FU]+レボホリナートカルシウム+イリノテカン+オキサリプラチン)、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル(アブラキサン)併用療法などがある。化学療法後に進行・再発した場合に用いる薬物療法には、ぺムブロリズマブ(キイトルーダ)(免疫チェックポイント阻害薬)、エヌトレクチニブ(分子標的薬)などを使用することができる。免疫療法には、免疫チェックポイント阻害薬であるペムブロリズマブを使用することができる。
【0036】
本発明の方法は、がんの治療効果、がんの再発や進行、がんの転移リスクの評価のために実施してもよく、がんの治療方針の決定などにも利用することができる。
【0037】
また、本発明は、N-型糖鎖で修飾されたFGG(Fibrinogen gamma chain)を特異的に検出することができる試薬を含む、検査キットを提供する。
【0038】
本発明の検査キットに含まれるN-型糖鎖で修飾されたFGGを特異的に検出することができる試薬としては、抗FGG抗体(蛍光標識されているとよい)とN-型糖鎖検出用レクチンの組み合わせ、LC/MS/MSに用いる試薬(カラム、溶媒など)、電気泳動に用いる試薬(アガロースやポリアクリルアミドゲル、バッファー、分子量マーカー、タンパク質染色試薬など)などを挙げることができる。さらに、本発明の検査キットには、コントロール(例えば、がん患者と健常者由来の生物学的試料において差異がないことが期待される公知のタンパク質など)、希釈液、洗浄液、検出液、反応停止液、96-wellマイクロプレート、還元剤、アルキル化剤、消化酵素、レクチン、取扱説明書などが含まれてもよい。
【0039】
本発明の検査キットは、がんの診断を補助することができ、がんの治療効果、がんの再発や進行、がんの転移リスクの評価、がんの治療方針の決定などにも利用することができる。
【実施例0040】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
〔実施例1〕
【0041】
1. 材料と方法
1.1 一般情報
使用されたすべての試薬は、質量分析グレードが保証されたものであり、Promega (米国ウィスコンシン州)、富士フイルム和光純薬 (大阪、日本)、関東化学 (東京、日本) から購入された。
【0042】
1.2 臨床検体と倫理
ヒト血清サンプルは、横浜市立大学付属病院で収集された。 血清サンプルは、15人の患者、およびインフォームドコンセントを提供した15人の健康なドナーから得られ、研究は横浜市立大学の施設倫理委員会によって承認された(No. B160301015)。 すべての癌の診断は、組織病理学的方法に基づいて行われた。 すべての検体は匿名化され、性別、年齢、がん関連の検査病理学的結果、および病理学的診断が記録された。
【0043】
1.3 血清タンパク質からの糖ペプチド濃縮
すべての血清タンパク質はBCA法を使用して定量され、100 μg の血清タンパク質が アセトンを用いて精製された。沈殿された血清タンパク質は、還元、カルバミドメチル化された後、トリプシン/リシルエンドペプチダーゼで消化された。血清タンパク質のトリプシン/リシルエンドペプチダーゼ消化物の一部から、親水性相互作用クロマトグラフィー法を用いてN-糖ペプチドが濃縮された。
【0044】
1.4 液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析及び糖ペプチドの同定
ペプチドと糖ペプチドは、Acclaim PepMap100 C18 LC カラム (75 μm × 20 mm、3 μm、Thermo Fisher Scientific)、およびnano HPLCキャピラリーカラム ( 75 μm × 120 mm、3 μm、C18、日京テクノス)で分離された。移動相は、0.1% v/v ギ酸を含む水 (ポンプ A) と 0.1% v/v ギ酸を含むアセトニトリル (ポンプ B) で構成された。ペプチドと糖ペプチドは、0.3 μL/min の流速で 0~35% Bの直線勾配で120 分かけて溶出された。質量スペクトルは、ポジティブイオンモードで動作する Nanospray Flexイオン源(Thermo Fisher Scientific) を装備した Q Exactive 質量分析計 (Thermo Fisher Scientific) で取得された。 質量分析器の制御とデータ取得には、Xcalibur 4.4 ワークステーション (Thermo Fisher Scientific) が使用された。スプレー電圧は 1.8 kV、キャピラリー温度は 250 °C に維持され、S レンズの RFレベルは 50に設定された。質量スペクトルは70,000の解像度で350~2000のm/z 範囲を使用して取得された。プロダクトイオンスペクトルは、17,500 の解像度およびNCE値35の設定によるデータ依存取得法を使用して取得された。
【0045】
N-グリコフォームは、Byonic検索エンジン ver. 3.11 (Protein Metrics)を用いて同定された。ヒト UniprotKB、及びヒトN-glycanデータベースを用いた。
【0046】
1.5 N-グリコフォームの非ラベル化定量化と統計解析
Proteome Discoverer 2.4 (Thermo Fisher Scientific) の Minora Feature Detector、Feature Mapper、および Precursor Ions Quantifier ノードを組み合わせ、N-グリコフォームのラベルフリー定量化を実行した。 主成分分析 (PCA)、および Wilcoxon の対応するペアの符号付き順位検定を使用して、膵がんと正常な血清サンプル間のグリコフォームピーク面積を比較した。N-糖タンパク質の診断性能は、受信者動作特性 (ROC) 曲線下の面積(AUC)を使用して評価した。 全ての統計解析は、JMP Pro 15ソフトウェア(SAS Institute)を使用した。
【0047】
2. 結果
2.1 糖ペプチド濃縮およびN-グライコプロテオミクス
血清中のN-糖タンパク質を検出するための、ラベルフリーの定量N-グリコプロテオミクスのワークフローを
図1に示す。アルブミンと免疫グロブリンを除いた血清タンパク質をトリプシンとリシルエンドペプチダーゼで消化した後、親水性相互作用クロマトグラフィーを使用して N-糖ペプチドを濃縮した。濃縮されたN-糖ペプチドは、ラベルフリー定量LC/MS/MSに供され、得られたスペクトルデータは、Byonic検索エンジンで処理された。
【0048】
LC/MS/MS で同定されたN-グリコフォームの定性的な比較を
図2に示す。進行膵がん 患者および健常者の血清より、それぞれ 5,073 および 4,586 種のN-グリコフォームが同定された。全体として、501のタンパク質に由来する 6,715のN-グリコフォームが同定された。これらのうち、2,129のN-グリコフォームが進行膵がん患者で、1,642のN-グリコフォームが健常人でそれぞれ特徴的であった。
【0049】
2.2 膵がん関連N-グライコプロテオームの同定
N-糖タンパク質の変化により進行膵がん患者と健常人を区別できるかを検証するために、N-グリコフォームのプリカーサーイオンのピーク面積値を用いて PCAを実行した(
図3)。 散布図は、進行膵がん患者と健常人が異なるデータ分布を持っていることを示している。
【0050】
Volcano プロットは、進行膵がん患者と健常人間でN-グリコフォームのプリカーサーイオンのピーク面積値の比較分布を示している(
図4)。統計的に有意な差 (Difference ≧ 3、FDR LogWorth ≧ 1.3) を持つ 126のN-グリコフォームは赤で示した。抗タンパク質抗体とレクチンを用いたサンドイッチ酵素免疫測定法 (ELISA) システムを構築するには、特定のレクチンに効率的に結合できる異常なN-糖タンパク質を選択することが重要である。グリカンの不均一性は修飾部位ごとに異なる。我々は、1箇所の潜在的な糖鎖修飾部位をもつフィブリノーゲンγ鎖 (FGG)を選択して、膵がん腫瘍マーカーとしての潜在的な有用性を評価した。Byonicの検索結果によると、FGGのAsn78への2本鎖シアロ複合型糖鎖:HexNAc(4)Hex(5)NeuAc(1)またはHexNAc(4)Hex(5)NeuAc(2)、の付加が推定された。これらのN-グリコフォームは、プロダクトイオンスペクトルによっても支持された(
図5)。典型的なオキソニウムイオンm/z204.08 (HexNAc)、274.09 および 292.10 (NeuAc)、および 366.14 (HexNAc+Hex)が認められ、FGGの65-79アミノ酸配列領域に由来するペプチド関連フラグメントに対応するb/yイオンが検出された。
【0051】
2.3フィブリノーゲンγ鎖のN-糖鎖利用による膵がん腫瘍マーカーとしての有用性評価
コントロールと比較して、進行膵がん患者の血清で著しく有意にアップレギュレートされたFGG由来N-グリコフォームのプリカーサーイオンのピーク面積値を比較するBoxPlotを図 6に示す。FGG/HexNAc(4)Hex(5)NeuAc(1)、及びFGG/HexNAc(4)Hex(5)NeuAc(2)のピーク面積値は、進行膵がん患者血清中で有意に増加した(p < 0.01)。
【0052】
進行膵がん患者血清中のFGGに由来するN-グリコフォームのプリカーサーイオンのピーク面積値を用いて、診断能力を評価するためにROC分析を実施した。
図7に示すように、FGG/HexNAc(4)Hex(5)NeuAc(1)、及びFGG/HexNAc(4)Hex(5)NeuAc(2)は、共にAUC値1.00(カットオフ値:4E+06および6E+05)を達成し、これらのN-グリコフォームが進行膵がんに対して高い感度と特異性を有していることを示している。
【0053】
〔実施例2〕
・ウエスタンブロットによるFGGの検出
血清/血漿由来FGGは、還元処理された後、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離された(21 mAで90分間)。ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に転写された後、抗FGG抗体(Fibrinogen gamma antibody, GeneTex)とホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)標識2次抗体を用いて検出された。
図11に血清FGGのウエスタンブロット像を示す。健常人由来血清と比べ、進行膵がん患者の血清では、90-kDa近傍にFGG由来の主要なスメアー状のバンドが特異的に検出された。
図12に健常血漿由来FGGのウエスタンブロット像を示す。健常血漿中では50-kDa近傍にFGG由来の主要なバンドが検出され、FGGのアミノ酸配列から推定される分子サイズと一致していた。これらの結果は、進行膵がん患者血清中において、癌細胞由来の異なるサイズのFGG分子種が存在する可能性を示唆している。
【0054】
〔実施例3〕
・α2-3ノイラミニダーゼ処理によるシアル酸結合様式の確認
3倍容の冷アセトンを用いて沈殿された血清及び血漿タンパク質は、還元、カルバミドメチル化された後、トリプシン/リシルエンドペプチダーゼで消化された。1μg相当の消化物をGlycoBuffer(New England BioLabs)に溶解し、1 unitのα2-3 Neuraminidase(New England BioLabs)を加えて37℃で60 minインキュベートした。GL-Tip SDB (GL Science)で精製した後、LC/MS/MSに供した。
図13にα2-3 Neuraminidase消化の有無によるFGG由来グリコフォームのピーク面積値の変化を示す。健常人血漿中のFGG/HexNAc(4)Hex(5)NeuAc(1)由来のピーク面積値は、α2-3 Neuraminidase消化後において殆ど減少は認められず、シアル酸の大部分はα2-6結合であると推定された。この結果は、文献報告(Townsend R.R. (1982) J. Biol. Chem. 257, 9704-9710)と一致している。一方、膵がん患者血清中において、FGG/HexNAc(4)Hex(5)NeuAc(1)由来のピーク面積値は、α2-3 Neuraminidase消化により顕著に減少した。この結果は、膵がん患者血清中のFGG糖鎖のシアル酸はα2-6とα2-3結合が混在しているものの、α2-3結合が優位であることを示している。
【0055】
〔参考例1〕
フィブリノーゲンγ鎖タンパク質の膵がん腫瘍マーカーとしての有用性評価
健常人と進行膵がん患者の血清で同定されたFGG由来非糖鎖修飾ペプチドのプリカーサーイオンのピーク面積値を比較するBoxPlotを
図8に示す。FGGの32-49アミノ酸領域、及び329-347アミノ酸領域ペプチドのピーク面積値は、進行膵がん患者血清中で有意に増加した(p < 0.01)。この結果は、進行膵がん患者血清中において、FGGタンパク質またはその分解物(フィブリノゲン・フィブリン分解産物:FDP)が増加していることを示す。進行膵がん患者血清中のFGGに由来する非糖鎖修飾ペプチドのプリカーサーイオンのピーク面積値を用いて、診断能力を評価するためにROC分析を実施した。
図9に示すように、32-49アミノ酸領域、及び329-347アミノ酸領域ペプチドは、共にAUC値0.90以上を達成し、これら非糖鎖修飾ペプチドも進行膵がんに対して高い感度と特異性を有していることを示している。