(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113307
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】蓄電装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/636 20210101AFI20240815BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240815BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240815BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20240815BHJP
【FI】
H01M50/636
H01M10/04 Z
H01M10/052
H01M10/0585
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018193
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【氏名又は名称】全 哲洙
(72)【発明者】
【氏名】栗田 幹也
(72)【発明者】
【氏名】石黒 文彦
(72)【発明者】
【氏名】弘瀬 貴之
【テーマコード(参考)】
5H023
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5H023AA03
5H023AS01
5H023BB05
5H023CC11
5H023CC14
5H023CC30
5H028AA07
5H028AA08
5H028BB01
5H028BB04
5H028BB05
5H028CC08
5H028CC19
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029BJ12
5H029BJ17
5H029CJ02
5H029CJ03
5H029CJ05
5H029HJ03
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】枠体と封止部材との間における封止不良を抑制することができる蓄電装置の製造方法を提供する。
【解決手段】蓄電装置の製造方法は、複数の電極を含む積層体の側面に設けられた封止体を有するモジュール本体を準備する準備工程と、封止体に形成された注液口40aを封止する封止工程と、を備える。封止体は、封止本体40の側面40cから突出し且つ側面40cに交差する方向から見た場合に注液口40aを囲むように配置された辺部51,53を含む枠体50と、を有している。準備工程では、注液口40aを囲む枠体50の辺部51,53の幅D1,D3が枠体50の基端50bから枠体50の先端50cに至るまで減少するように枠体50を形成している。封止工程では、枠体50の先端50cを封止部材30によって押圧しながら、枠体50の先端50cが変形するように枠体50に封止部材30を溶着する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の電極を含む積層体、及び前記積層体の側面に設けられた封止体を有するモジュール本体を準備する準備工程と、
前記封止体に形成され且つ前記積層体の内部空間に連通する注液口を封止する封止工程と、を備え、
前記封止体は、前記注液口を含む封止本体と、前記封止本体の側面から突出し且つ前記側面に交差する方向から見た場合に前記注液口を囲むように配置された辺部を含む枠体と、を有し、
前記準備工程では、前記注液口を囲む前記枠体の前記辺部の幅が前記枠体の基端から前記枠体の先端に至るまで減少するように前記枠体を形成し、
前記封止工程では、前記枠体の前記先端を封止部材によって押圧しながら、前記枠体の前記先端が変形するように前記枠体に前記封止部材を溶着する、蓄電装置の製造方法。
【請求項2】
前記準備工程では、前記複数の電極の積層方向に交差する前記枠体の第1外面が前記積層方向に交差する前記封止本体の第2外面と面一となるように前記枠体を形成する、請求項1に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項3】
前記枠体は、前記複数の電極の積層方向に交差する前記枠体の第1外面を含む第1辺部と、前記側面に交差する方向から見た場合に、前記注液口に対して前記第1辺部とは反対側に位置し且つ前記積層方向における前記封止本体の両端よりも内側に位置する第2辺部と、を含み、
前記準備工程では、前記第1辺部の幅が前記第2辺部の幅よりも小さくなるように前記枠体を形成する、請求項1又は2に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項4】
前記封止工程では、前記側面に交差する方向から見た場合に、前記複数の電極の積層方向における前記封止部材の一端が前記積層方向に交差する前記枠体の第1外面よりも突出するように、前記枠体の前記先端に前記封止部材を溶着した後、前記封止部材のうち前記第1外面よりも突出する突出部分を前記第1外面に溶着する、請求項1又は2に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項5】
前記準備工程では、前記枠体の前記先端側における前記枠体の前記辺部の幅の減少率が前記枠体の前記基端側における前記枠体の前記辺部の幅の減少率よりも大きくなるように前記枠体を形成する、請求項1又は2に記載の蓄電装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電装置の製造方法として、蓄電装置の内部に電解液を注入するための注液口を蓄電装置の一側面に設け、その注液口を取り囲む複数の辺部を有するとともに蓄電装置の一側面から突出する枠体を蓄電装置の一側面に設け、その枠体の各辺部の先端に封止部材を溶着することで注液口を封止する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような技術では、注液口を封止するための封止部材と、枠体との間の封止不良を低減することが望まれている。
【0005】
本発明は、枠体と封止部材との間における封止不良を抑制することができる蓄電装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の蓄電装置の製造方法は、積層された複数の電極を含む積層体、及び積層体の側面に設けられた封止体を有するモジュール本体を準備する準備工程と、封止体に形成され且つ積層体の内部空間に連通する注液口を封止する封止工程と、を備え、封止体は、注液口を含む封止本体と、封止本体の側面から突出し且つ側面に交差する方向から見た場合に注液口を囲むように配置された辺部を含む枠体と、を有し、準備工程では、注液口を囲む枠体の辺部の幅が枠体の基端から枠体の先端に至るまで減少するように枠体を形成し、封止工程では、枠体の先端を封止部材によって押圧しながら、枠体の先端が変形するように枠体に封止部材を溶着する。
【0007】
この蓄電装置の製造方法の封止工程では、枠体の先端が封止部材によって押圧されながら、枠体の先端が変形するように枠体に封止部材が溶着される。しかも、準備工程では、注液口を囲む枠体の辺部の幅が枠体の基端から枠体の先端に至るまで減少するように枠体が形成される。これにより、辺部の先端の幅が辺部の基端の幅よりも小さいため、枠体の先端が受ける封止部材からの面圧の低下が抑制される。さらに、辺部の基端の幅が辺部の先端の幅よりも大きいため、枠体の強度の低下が抑制される。したがって、枠体への封止部材の溶着の制御が容易となる。よって、この蓄電装置の製造方法によれば、枠体と封止部材との間における封止不良を抑制することができる。
【0008】
準備工程では、複数の電極の積層方向に交差する枠体の第1外面が積層方向に交差する封止本体の第2外面と面一となるように枠体を形成してもよい。辺部の先端の幅が辺部の基端の幅よりも小さいため、封止工程における辺部の先端の変形量が比較的少なくなる。これにより、辺部の先端の変形によって生じるバリの量が少なくなる結果、枠体の第1外面よりも突出するバリの量が少なくなる。したがって、積層方向における蓄電装置の大型化が抑制される。
【0009】
枠体は、複数の電極の積層方向に交差する枠体の第1外面を含む第1辺部と、側面に交差する方向から見た場合に、注液口に対して第1辺部とは反対側に位置し且つ積層方向における封止本体の両端よりも内側に位置する第2辺部と、を含み、準備工程では、第1辺部の幅が第2辺部の幅よりも小さくなるように枠体を形成してもよい。第1辺部の幅が第2辺部の幅よりも小さいため、封止工程における第1辺部の変形量が少なくなる。これにより、第1辺部の変形によって生じるバリの量が少なくなる結果、枠体の第1外面よりも突出するバリの量が少なくなる。したがって、積層方向における蓄電装置の大型化が抑制される。
【0010】
封止工程では、側面に交差する方向から見た場合に、複数の電極の積層方向における封止部材の一端が積層方向に交差する枠体の第1外面よりも突出するように、枠体の先端に封止部材を溶着した後、封止部材のうち枠体の第1外面よりも突出する突出部分を枠体の第1外面に溶着してもよい。枠体の先端に封止部材を溶着すると、辺部の先端の変形によって生じたバリが枠体の第1外面よりも突出する場合がある。このような場合において、封止部材のうち枠体の第1外面よりも突出する突出部分を枠体の第1外面に溶着することによって、枠体の第1外面よりも突出するバリの厚みを小さくすることができる。したがって、積層方向における蓄電装置の大型化が抑制される。
【0011】
準備工程では、枠体の先端側における枠体の辺部の幅の減少率が枠体の基端側における枠体の辺部の幅の減少率よりも大きくなるように枠体を形成してもよい。これにより、枠体の先端が受ける封止部材からの面圧の分布が均一になる。したがって、枠体への封止部材の溶着の制御がさらに容易となる結果、注液口をさらに高精度に封止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、枠体と封止部材との間における封止不良を抑制することができる蓄電装置の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る蓄電装置の平面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示される蓄電装置の製造方法の工程を示す図である。
【
図5】
図5は、
図1に示される蓄電装置の製造方法の工程を示す図である。
【
図6】
図6は、
図1に示される蓄電装置の製造方法の工程を示す図である。
【
図7】
図7は、
図1に示される蓄電装置の製造方法の工程を示す図である。
【
図8】
図8は、
図1に示される蓄電装置の製造方法の工程を示す図である。
【
図9】
図9は、
図1に示される蓄電装置の製造方法の工程を示す図である。
【
図14】
図14は、変形例の蓄電装置の製造方法の工程を示す図である。
【
図15】
図15は、変形例の蓄電装置の製造方法の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1及び
図2に示されるように、蓄電装置1は、積層体10と、封止体20と、封止部材30と、を備えている。蓄電装置1は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車又は電気自動車等に搭載される。蓄電装置1は、例えば二次電池である。本実施形態では、蓄電装置1は、リチウムイオン二次電池である。蓄電装置1は、例えばニッケル水素二次電池等であってもよい。
【0016】
積層体10は、Z軸方向(積層方向)において積層された複数の電極を含んでいる。具体的には、積層体10は、複数のバイポーラ電極11と、正極終端電極12と、負極終端電極13と、複数のセパレータ14と、を含んでいる。
【0017】
バイポーラ電極11は、集電体15と、正極活物質層16と、負極活物質層17と、を有している。集電体15は、Z軸方向から見た場合に、例えば矩形状を呈している。集電体15は、表面15a、及び表面15aとは反対側の表面15bを含んでいる。例えば、
図2においては、表面15aは、後述する負極終端電極13側を向く面として図示されており、表面15bは、後述する正極終端電極12側を向く面として図示されている。集電体15は、Z軸方向に積層された複数の層を有していてもよい。隣り合う各層は、電気的に接続されている。
【0018】
正極活物質層16は、表面15aに設けられている。正極活物質層16は、Z軸方向から見た場合に、例えば矩形状を呈している。表面15aは、正極活物質層16が設けられていない未塗工領域を含んでいる。未塗工領域は、Z軸方向から見た場合に、正極活物質層16を囲んでいる。負極活物質層17は、表面15bに設けられている。負極活物質層17は、Z軸方向から見た場合に、例えば矩形状を呈している。表面15bは、負極活物質層17が設けられていない未塗工領域を含んでいる。未塗工領域は、Z軸方向から見た場合に、負極活物質層17を囲んでいる。
【0019】
複数のバイポーラ電極11は、一のバイポーラ電極11の正極活物質層16と他のバイポーラ電極11の負極活物質層17とが対向するように、積層されている。すなわち、複数のバイポーラ電極11は、隣り合うバイポーラ電極11のうち、一方のバイポーラ電極11の集電体15の表面15aと、他方のバイポーラ電極11の集電体15の表面15bとが対向するように積層されている。
【0020】
正極終端電極12は、複数のバイポーラ電極11に対してZ軸方向における一方側に配置されており、負極終端電極13は、複数のバイポーラ電極11に対してZ軸方向における他方側に配置されている。正極終端電極12は、集電体15と、正極活物質層16と、を有している。正極終端電極12は、負極活物質層17を有していない点で、バイポーラ電極11と異なる。正極終端電極12のその他の構成は、バイポーラ電極11と同じである。正極終端電極12は、正極終端電極12の正極活物質層16がバイポーラ電極11の負極活物質層17に対向するように配置されている。すなわち、正極終端電極12は、正極終端電極12の集電体15の表面15aと、正極終端電極12に隣り合うバイポーラ電極11の集電体15の表面15bとが対向するように積層されている。
【0021】
負極終端電極13は、集電体15と、負極活物質層17と、を有している。負極終端電極13は、正極活物質層16を有していない点で、バイポーラ電極11と異なる。負極終端電極13のその他の構成は、バイポーラ電極11と同じである。負極終端電極13は、負極終端電極13の負極活物質層17がバイポーラ電極11の正極活物質層16に対向するように配置されている。すなわち、負極終端電極13は、負極終端電極13の集電体15の表面15bと、負極終端電極13に隣り合うバイポーラ電極11の集電体15の表面15aとが対向するように積層されている。
【0022】
各バイポーラ電極11の間、バイポーラ電極11と正極終端電極12との間、及び、バイポーラ電極11と負極終端電極13との間には、電解液が収容された内部空間Sが形成されている。Z軸方向から見た場合に、正極活物質層16の面積は、負極活物質層17の面積よりも小さい。Z軸方向から見た場合に、正極活物質層16の外縁は、負極活物質層17の外縁よりも内側に位置している。なお、正極活物質層16の厚さは、負極活物質層17の厚さよりも大きくてもよい。複数の集電体15の外縁は、積層体10の側面10cを構成している。
【0023】
セパレータ14は、各バイポーラ電極11の間、バイポーラ電極11と正極終端電極12との間、及び、バイポーラ電極11と負極終端電極13との間に配置されている。セパレータ14は、互いに対向する正極活物質層16及び負極活物質層17の間に位置している。セパレータ14は、例えばシート状を呈している。セパレータ14は、Z軸方向から見た場合に、例えば矩形状を呈している。Z軸方向から見た場合に、セパレータ14の外縁は、正極活物質層16の外縁及び負極活物質層17の外縁のそれぞれよりも外側に位置している。セパレータ14は、リチウムイオン等の電荷担体を通過させる部材である。セパレータ14は、互いに隣接する各電極11,12,13を隔離する。これにより、各電極11,12,13の接触による電気的短絡が防止される。
【0024】
集電体15は、蓄電装置1の放電又は充電の間、正極活物質層16及び負極活物質層17における電流の流れを維持する機能を有する。集電体15は、例えば化学的に不活性な電気伝導体である。集電体15の材料は、例えば、金属材料、導電性樹脂材料、導電性無機材料等である。導電性樹脂材料は、例えば、導電性高分子材料、又は導電性フィラーが添加された非導電性高分子材料等である。集電体15が複数の層を有している場合、各層の材料は、上述した各材料のいずれであってもよい。集電体15の表面には、被覆層が形成されていてもよい。被覆層は、例えばメッキ処理又はスプレーコート等のような公知の方法によって形成されていてもよい。
【0025】
集電体15は、例えば、板状、箔状、シート状、フィルム状又はメッシュ状等を呈している。集電体15は、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、チタン箔又はステンレス鋼箔等であってもよい。集電体15は、上記金属の合金箔又はクラッド箔であってもよい。集電体15が箔状である場合、集電体15の厚さは、例えば1μm以上100μm以下である。集電体15は、例えば、アルミニウム箔、及びアルミニウム箔の片面に形成された銅メッキを含んでいてもよい。集電体15は、貼り合わせにより一体化されていてもよい。
【0026】
正極活物質層16は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出し得る正極活物質を含む。正極活物質は、例えば複合酸化物、金属リチウム、及び硫黄等である。複合酸化物は、例えば、鉄、マンガン、チタン、ニッケル、コバルト、及びアルミニウムのうちの少なくとも1つと、リチウムとを含んでいる。複合酸化物は、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、LiCoO2、LiNiMnCoO2等である。
【0027】
負極活物質層17は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出し得る負極活物質を含む。負極活物質は、例えば、黒鉛、人造黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物、ホウ素添加炭素等である。リチウムと合金化可能な元素は、例えば、シリコン(ケイ素)又はスズである。
【0028】
正極活物質層16及び負極活物質層17のそれぞれは、活物質のほか、結着剤及び導電助剤を含んでいてもよい。結着剤は、活物質又は導電助剤を互いに繋ぎ止め、電極中の導電ネットワークを維持する機能を有する。結着剤は、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン-アクリル酸グラフト重合体等である。これらの結着剤は、単独で又は複数で用いられ得る。導電助剤は、導電性材料であり、電気伝導性を高める機能を有する。導電助剤は、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等である。粘度調整溶媒は、例えば、N-メチル-2-ピロリドン等である。
【0029】
表面15aへの正極活物質層16の形成、及び、表面15bへの負極活物質層17の形成には、例えばロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法等の従来から公知の方法が用いられる。具体的には、活物質、溶剤、並びに必要に応じて結着剤及び導電助剤を混合してスラリー状の活物質層形成用組成物を製造し、当該活物質層形成用組成物を表面15a又は表面15bに塗布後、乾燥する。溶剤は、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水である。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮してもよい。
【0030】
セパレータ14は、例えば、電解液を吸収保持するポリマーを含む多孔性シート又は不織布である。セパレータ14の材料は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリエステル等である。セパレータ14は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。セパレータ14が多層構造である場合、セパレータ14は、例えば、基材層及び一対の接着層を含み、一対の接着層により正極活物質層16及び負極活物質層17に接着固定されてもよい。セパレータ14は、耐熱層となるセラミック層を含んでもよい。セパレータ14は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されていてもよい。
【0031】
セパレータ14に含浸される電解液は、例えば、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む液体等である。電解液の電解質塩は、例えば、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2等の公知のリチウム塩等である。非水溶媒は、環状カーボネート類、環状エステル類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類等である。なお、これら公知の溶媒材料を二種以上組合せて用いてもよい。
【0032】
封止体20は、積層体10の各内部空間Sを封止するための部材である。封止体20は、積層体10の側面10cに設けられている。封止体20は、例えば矩形筒状を呈している。封止体20は、電気絶縁性を有している。
【0033】
封止体20は、封止本体40と、枠体50と、を有している。封止本体40は、シール部材41と、スペーサ42と、シール部材41とスペーサ42が溶着されてなる溶着部分43と、溶着部分43の一部を覆うように設けられた側壁部分44と、側壁部分44と一体的に設けられたオーバーハング部分45と、を有している。Z軸方向において積層されたシール部材41とスペーサ42は、それぞれの外縁同士が溶着されることで溶着部分43を形成している。側壁部分44、オーバーハング部分45及び枠体50は、例えば射出成形によって一体的に形成されている。側壁部分44及びオーバーハング部分45は、溶着部分43に溶着されている。側壁部分44、オーバーハング部分45及び枠体50は、同一の材料によって一体的に形成されている。
【0034】
シール部材41は、例えば矩形枠状を呈している。シール部材41は、各集電体15の周縁部を覆っている。シール部材41は、各集電体15の表面15a及び表面15bの両面に設けられている。各集電体の両面に設けられたシール部材41は、Z軸方向から見て、集電体15の外縁よりも外側に位置する部分同士が溶着されている。すなわち、各集電体15の周縁部は、
図2に示されるように、表面15aから表面15bにわたってシール部材41によって覆われている。シール部材41は、Z軸方向から見た場合に、正極活物質層16及び負極活物質層17を枠状に囲んでいる。集電体15の表面上において、シール部材41の内縁は、正極活物質層16及び負極活物質層17から離れている。シール部材41の外縁は、Z軸方向から見た場合に、集電体15の外縁よりも外側に位置している。すなわち、シール部材41は、Z軸方向から見て、集電体15に重なる内側部分と、集電体15に重ならない外側部分とを有している。シール部材41は、その内側部分において集電体15に溶着されている。
【0035】
スペーサ42は、例えば矩形枠状を呈している。スペーサ42は、隣り合うシール部材41の間に設けられている。スペーサ42は、隣り合うシール部材41によって挟まれている。スペーサ42の内縁は、Z軸方向から見た場合に、シール部材41の内縁よりも外側に位置している部分を含んでいてもよく、Z軸方向から見た場合に、シール部材41の内縁よりも内側に位置している部分を含んでいてもよい。つまり、スペーサ42の内縁は、シール部材41の内縁よりも正極活物質層16又は負極活物質層17から離れている部分を含んでいてもよい。スペーサ42の外縁は、Z軸方向から見た場合に、シール部材41の外縁と略一致している。すなわち、スペーサ42は、Z軸方向から見て、集電体15の外縁よりも外側に位置する部分を有している。
【0036】
セパレータ14の周縁部は、集電体15の表面15bに設けられたシール部材41とスペーサ42との間に位置している。セパレータ14の周縁部は、シール部材41もしくはスペーサ42に固定されていてもよい。
【0037】
溶着部分43は、各シール部材41及び各スペーサ42の外縁部の溶着によって形成されている。溶着部分43は、各シール部材41及び各スペーサ42のうち集電体15の外縁よりも外側に位置する領域の溶着によって形成されている。溶着部分43は、例えば矩形筒状を呈している。溶着部分43の内縁は、Z軸方向から見た場合に、集電体15の外縁よりも外側に位置していてもよい。つまり、溶着部分43の内縁は、集電体15の外縁から離れていてもよい。
【0038】
シール部材41及びスペーサ42のそれぞれの材料は、例えば、酸変性ポリエチレン(酸変性PE)、酸変性ポリプロピレン(酸変性PP)、ポリエチレン、又はポリプロピレン等である。シール部材41及びスペーサ42のそれぞれは、耐電解質性を有している。シール部材41及びスペーサ42のそれぞれの材料は、同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。本実施形態では、シール部材41の材料は、例えば、酸変性ポリエチレン又は酸変性ポリプロピレンである。本実施形態では、スペーサ42の材料は、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンである。酸変性ポリエチレン及び酸変性ポリプロピレンは、酸変性されていないポリエチレン及び酸変性されていないポリプロピレンと比較して、金属に接合しやすい。集電体15が金属からなる場合、シール部材41を酸変性ポリエチレン又は酸変性ポリプロピレンにより構成することで、集電体15に対するシール部材41の接合強度を向上させることができる。
【0039】
側壁部分44は、X軸方向に交差する溶着部分43の側面43cに設けられている。側壁部分44は、溶着部分43の側面43cの一部に設けられている。側壁部分44は、例えば矩形板状を呈している。すなわち、Z軸方向における側壁部分44の長さは、Z軸方向における溶着部分43の長さと略同じであり、Y軸方向における側壁部分44の長さは、Y軸方向における側面43cの長さよりも小さい。側壁部分44は、溶着部分43とは反対側を向く表面44cを有している。表面44cは、X軸方向に交差している。表面44cは、封止本体40の側面40cの一部である。
【0040】
オーバーハング部分45は、Z軸方向における側壁部分44の両端のそれぞれに設けられている。すなわち、それぞれのオーバーハング部分45は、その一端がZ軸方向における側壁部分44の端部に接続されている。オーバーハング部分45は、Z軸方向における溶着部分43の両端を覆うように設けられている。オーバーハング部分45は、正極終端電極12に設けられたシール部材41の外面41aを覆うように設けられている。オーバーハング部分45は、負極終端電極13に設けられたシール部材41の外面41bを覆うように設けられている。オーバーハング部分45は、例えば矩形板状を呈している。Z軸方向から見た場合に、X軸方向におけるオーバーハング部分45の一端は、積層体10の側面10cよりも内側に位置していてもよい。Z軸方向から見た場合に、X軸方向におけるオーバーハング部分45の一端は、積層体10の側面10cとスペーサ42の内縁との間に位置していてもよい。
【0041】
図2及び
図3に示されるように、封止体20の封止本体40には、注液口40aが形成されている。注液口40aは、積層体10の内部空間Sに連通している。本実施形態では、封止本体40は、複数の注液口40aを含んでいる。具体的には、封止本体40は、複数の注液口列40A,40B,40Cを有している。各注液口列40A,40B,40Cは、それぞれ、Z軸方向の位置が異なり且つY軸方向に並ぶ複数の注液口40aを含んでいる。各注液口列40A,40B,40Cは、それぞれ、例えば10個の注液口40aを含んでいる。注液口列40Bは、Z軸方向において注液口列40Aに隣接している。注液口列40Cは、Z軸方向において注液口列40Bに隣接している。注液口列40Cは、注液口列40Bに対して注液口列40Aとは反対側に位置している。
【0042】
注液口列40Aのうちの第n番目(nは自然数)の注液口40a、注液口列40Bのうちの第n番目の注液口40a、及び注液口列40Cのうちの第n番目の注液口40aは、Y軸方向の同じ位置においてZ軸方向において並んでいる。注液口列40Aの各注液口40aは、1層目から10層目までの内部空間Sに連通している。注液口列40Bの各注液口40aは、11層目から20層目までの内部空間Sに連通している。注液口列40Cの各注液口40aは、21層目から30層目までの内部空間Sに連通している。
【0043】
各注液口列40A,40B,40Cにおいて、Z軸方向において隣り合う2つの内部空間Sに連通する2つの注液口40aは、Y軸方向において互いに離れている。具体的には、X軸方向から見た場合に、一の内部空間Sに連通する注液口40a、及び当該一の内部空間Sに隣り合う他の内部空間Sに連通する注液口40aは、Y軸方向において異なる位置に形成されている。各注液口列40A,40B,40Cにおいて、複数の注液口40aは、Y軸方向に対して斜めに並んでいる。
【0044】
注液口40aは、内部空間Sに電解液を注入するための経路として機能する。注液口40aは、連通孔42a及び連通孔44aを含んでいる。注液口40aは、連通孔42a及び連通孔44aによって構成されている。連通孔42aは、スペーサ42及び溶着部分43に形成されている。連通孔42aは、スペーサ42及び溶着部分43を貫通している。連通孔42aは、溶着部分43の外縁及びスペーサ42の内縁のそれぞれに開口している。連通孔42aは、内部空間Sに連通している。連通孔42aは、X軸方向から見た場合に、例えば矩形状を呈している。連通孔44aは、側壁部分44に形成されている。連通孔44aは、側壁部分44を貫通している。連通孔44aは、側壁部分44の表面44cに開口している。連通孔44aは、連通孔42aに連通している。連通孔4aは、X軸方向から見た場合に、例えば矩形状を呈している。
【0045】
封止体20は、複数の枠体50を有している。枠体50は、封止本体40の側面40cに設けられている。複数の枠体50は、Y軸方向において並んでいる。Y軸方向に隣り合う枠体50は、互いに離れていてもよい。一つの枠体50は、X軸方向(封止本体40の側面40cに交差する方向)から見た場合に、Z軸方向に並ぶ三つの注液口40aのそれぞれを囲んでいる。具体的には、第n番目の枠体50は、注液口列40Aのうちの第n番目の注液口40a、注液口列40Bのうちの第n番目の注液口40a、及び、注液口列40Cのうちの第n番目の注液口40aのそれぞれを囲んでいる。
【0046】
封止部材30は、例えばシート状又は板状を呈している。封止部材30は、X軸方向から見た場合に複数の枠体50のそれぞれの開口を覆うように、複数の枠体50に取付けられている。封止部材30は、例えばラミネートシート等である。ラミネートシートは、例えば金属層及び樹脂層を含んで構成されている。ラミネートシートの金属層の材料は、例えばアルミニウム等である。封止部材30は、複数の枠体50の先端に溶着されている。これにより、複数の注液口40aが封止されている。なお、
図3においては、封止部材30の図示が省略されている。
【0047】
次に、蓄電装置1の製造方法について説明する。まず、積層体10及び封止体20が準備される(準備工程)。具体的には、
図4に示されるように、シール部材41が設けられた各電極11,12,13が積層される(積層工程)。積層工程では、スペーサ42が、隣り合うシール部材41の間に配置される。スペーサ42には、連通孔42aが形成されている。積層工程では、セパレータ14が、隣り合う電極11の間、隣り合う電極11と電極12との間、隣り合う電極11と電極13との間に配置される。
【0048】
続いて、
図5に示されるように、スペーサ42の連通孔42aに、注液口形成部材8が挿入される。注液口形成部材8は、例えば板状を呈している。注液口形成部材8は、スペーサ42の外側から内部空間Sまで至っている。続いて、連通孔42aに注液口形成部材8が挿入された状態で、各シール部材41及び各スペーサ42の周縁部が互いに溶着される(溶着工程)。具体的には、各シール部材41及び各スペーサ42の外側面が、加熱装置によって溶融される。加熱装置は、例えば赤外線ヒータ等である。加熱装置は、各シール部材41及び各スペーサ42の外側面に対して赤外線を照射する。これにより、各シール部材41及び各スペーサ42の外縁部が溶融する。溶融した各シール部材41及び各スペーサ42の外縁部が凝固する結果、溶着部分43が形成される。
【0049】
続いて、
図6に示されるように、例えば射出成形によって、側壁部分44、オーバーハング部分45及び枠体50が形成される。具体的には、まず、溶着部分43の側面43cのうち、複数の連通孔42aが形成された領域が、例えば金型等によって覆われる。続いて、連通孔42aに注液口形成部材8が挿入された状態で、金型の成形空間内に樹脂が射出される。
【0050】
続いて、
図7に示されるように、注液口形成部材8が連通孔42aから抜き出される。これにより、側壁部分44に連通孔44aが形成される。つまり、注液口40aが形成される。これにより、積層体10の側面10cに封止体20が設けられる。つまり、積層体10及び封止体20を有するモジュール本体60が準備される。
【0051】
続いて、積層体10の内部空間Sに電解液が注入される(注液工程)。具体的には、まず、枠体50にノズル9が押当てられる。本実施形態では、一つの枠体50に一つのノズル9が押し当てられる。ノズル9は、支持部材91及びシール部材92を有している。シール部材92は、支持部材91の表面に設けられている。シール部材92は、例えば弾性体である。シール部材92は、例えばパッキン等である。シール部材92の表面が枠体50に押当てられると、枠体50の少なくとも一部は、シール部材92へ食い込む。ノズル9は、複数の注液口9aが形成されている。注液口9aは、ノズル9を貫通している。続いて、注液口9a及び注液口40aを介して、内部空間Sに電解液が注入される。本実施形態では、複数の内部空間Sに対して、電解液が同時に注入される。
【0052】
続いて、注液口40aが封止される(封止工程)。具体的には、
図8に示されるように、封止部材30が枠体50に溶着される。本実施形態では、一つの封止部材30が複数の枠体50に溶着される。これにより、
図1に示される蓄電装置1が製造される。
【0053】
封止工程について、さらに詳細に説明する。
図9に示されるように、準備工程で準備される枠体50は、X軸方向から見た場合に、例えば矩形枠状を呈している。枠体50は、4つの外面50aを含んでいる。枠体50は、一対の辺部(第1辺部)51、一対の辺部52、及び複数の辺部(第2辺部)53を含んでいる。辺部51は、Z軸方向における枠体50の両端に位置している。辺部51は、Y軸方向に沿って延びている。辺部51は、Z軸方向に交差している。辺部51は、外面(第1外面)51aを含んでいる。辺部51の外面51aは、Z軸方向に交差する枠体50の外面50aである。つまり、辺部51は、Z軸方向に交差する枠体50の外面50aを含んでいる。
【0054】
辺部52は、Y軸方向における枠体50の両端に位置している。辺部52は、Z軸方向に沿って延びている。辺部52は、Y軸方向に交差している。辺部52は、外面52aを含んでいる。辺部52の外面52aは、Y軸方向に交差する枠体50の外面50aである。つまり、辺部52は、Y軸方向に交差する枠体50の外面50aを含んでいる。一対の辺部51及び一対の辺部52は、枠体50の外枠を構成している。
【0055】
辺部53は、Z軸方向における封止本体40の両端よりも内側に位置している。辺部53は、一対の辺部51の間に位置している。辺部53は、一対の辺部52の間に位置している。辺部53は、Y軸方向に沿って延びている。辺部53は、Z軸方向に交差している。辺部53は、X軸方向から見た場合に、注液口列40Aの注液口40aに対して辺部51とは反対側に位置している。辺部53は、注液口列40Cの注液口40aに対して、辺部51とは反対側に位置している。辺部53は、注液口列40Aの注液口40aと注液口列40Bの注液口40aとの間、及び、注液口列40Bの注液口40aと注液口列40Cの注液口40aとの間に位置している。X軸方向から見た場合に、各注液口40aは、各辺部51,52,53によって囲まれている。各注液口40aは、各辺部51,52,53によって隔離されている。
【0056】
図10及び
図11に示されるように、枠体50は、封止本体40の側面40c(側壁部分44の表面44c)から突出している。枠体50の基端50bは、X軸方向において側面40cと一致している。枠体50の先端50cは、X軸方向に交差する平面である。つまり、枠体50の先端50cは、所定の面積を有している。辺部51の外面51aは、オーバーハング部分45の外面45aと面一に形成されている。つまり、外面51a及び外面45aは、同一の平面上に位置している。外面45aは、Z軸方向に交差する封止本体40の外面(第2外面)40bである。
【0057】
枠体50の各辺部51,52,53の幅(厚み)は、枠体50の基端50bから枠体50の先端50cに至るまで減少している。Z軸方向における辺部51の幅D1は、枠体50の基端50bから枠体50の先端50cに至るまで減少している。Z軸方向における辺部51の先端の幅は、Z軸方向における辺部51の基端の幅よりも小さい。辺部51の外面51aは、XY面に対して平行な平面である。辺部51の内面51bは、XY面に対して傾斜する平面である。内面51bとXY面との交線は、Y軸方向に対して平行な直線である。辺部51の内面51bは、枠体50の基端50bから先端50cに向かうに従って、辺部51の外面51aに近付く。
【0058】
枠体50の先端50c側における辺部51の幅D1の減少率は、枠体50の基端50b側における辺部51の幅D1の減少率よりも大きい。具体的には、辺部51は、先端部51cを含んでいる。先端部51cは、辺部51の先端に形成された面取り(C面取り又はR面取り)等である。枠体50の先端50c側においては、辺部51の幅D1が段階的に減少している。なお、その他図においては、先端部51cの図示が省略されている場合がある。
【0059】
Y軸方向における辺部52の幅D2は、枠体50の基端50bから枠体50の先端50cに至るまで減少している。Y軸方向における辺部52の先端の幅は、Y軸方向における辺部52の基端の幅よりも小さい。辺部52の外面52aは、XZ面に対して平行な平面である。辺部52の内面52bは、XZ面に対して傾斜する平面である。内面52bとXZ面との交線は、Z軸方向に対して平行な直線である。辺部52の内面52bは、枠体50の基端50bから先端50cに向かうに従って、辺部52の外面52aに近付く。
【0060】
枠体50の先端50c側における辺部52の幅D2の減少率は、枠体50の基端50b側における辺部52の幅D2の減少率よりも大きい。具体的には、辺部52は、先端部52cを含んでいる。先端部52cは、辺部52の先端に形成された面取り(C面取り又はR面取り)等である。枠体50の先端50c側においては、辺部52の幅D2が段階的に減少している。なお、その他図においては、先端部52cの図示が省略されている場合がある。
【0061】
Z軸方向における辺部53の幅D3は、枠体50の基端50bから枠体50の先端50cに至るまで減少している。Z軸方向における辺部53の先端の幅は、Z軸方向における辺部53の基端の幅よりも小さい。辺部53の各側面53aは、XY面に対して傾斜する平面である。各側面53bとXY面との交線は、Y軸方向に対して平行な直線である。辺部53の各側面53aは、枠体50の基端50bから先端50cに向かうに従って、互いに近づく。
【0062】
枠体50の先端50c側における辺部53の幅D3の減少率は、枠体50の基端50b側における辺部53の幅D3の減少率よりも大きい。具体的には、辺部53は、先端部53cを含んでいる。先端部53cは、辺部53の先端に形成された面取り(C面取り又はR面取り)等である。枠体50の先端50c側においては、辺部53の幅D3が段階的に減少している。なお、その他図においては、先端部53cの図示が省略されている場合がある。
【0063】
枠体50は、XY面に対して面対称である。枠体50は、XZ面に対して面対称である。XY面に対する辺部51の内面51bの傾斜角度、XZ面に対する辺部52の内面52bの傾斜角度、及びXY面に対する辺部53の側面53aの傾斜角度のそれぞれは、同じである。X軸方向の同位置において、辺部51の幅D1と辺部52の幅D2とは、互いに同じである。X軸方向の同位置において、辺部51の幅D1及び辺部52の幅D2のそれぞれは、辺部53の幅D3よりも小さい。枠体50の先端50cにおいて、辺部51の幅D1と辺部52の幅D2と辺部53の幅D3とは、互いに同じである。枠体50の基端50bにおいて、辺部51の幅D1及び辺部52の幅D2のそれぞれは、辺部53の幅D3よりも小さい。
【0064】
図12及び
図13に示されるように、封止工程では、枠体50に封止部材30が溶着される。具体的には、まず、枠体50及び封止部材30のそれぞれが所定の温度まで加熱される。枠体50及び封止部材30は、例えば赤外線ヒータ等によって加熱される。続いて、枠体50の先端50cが封止部材30によって押圧されながら、枠体50の先端50cが変形するように枠体50に封止部材30が溶着される。これにより、枠体50の先端50cが押し潰され、その結果、各辺部51,52,53の先端にバリ50dが形成される。バリ50dは、各辺部51,52,53の幅方向において各辺部51,52,53から突出している。なお、その他図においては、バリ50dの図示が省略されている場合がある。
【0065】
以上説明したように、蓄電装置1の製造方法の封止工程では、枠体50の先端50cが封止部材30によって押圧されながら、枠体50の先端50cが変形するように枠体50に封止部材30が溶着される。しかも、準備工程では、注液口40aを囲む枠体50の辺部51,52,53の幅D1,D2,D3が枠体50の基端50bから枠体50の先端50cに至るまで減少するように枠体50が形成される。これにより、辺部51,52,53の先端の幅が辺部51,52,53の基端の幅よりも小さいため、枠体50の先端50cが受ける封止部材30からの面圧の低下が抑制される。さらに、辺部51,52,53の基端の幅が辺部51,52,53の先端の幅よりも大きいため、枠体50の強度の低下が抑制される。したがって、枠体50への封止部材30の溶着の制御が容易となる。よって、蓄電装置1の製造方法によれば、枠体50と封止部材30との間における封止不良を抑制することができる。枠体50の辺部51,52,53の幅(厚み)D1,D2,D3は、十分な封止性を確保するために必要となる面圧又は枠体50の強度に影響するため、辺部51,52,53の幅D1,D2,D3を大きくし過ぎたり小さくし過ぎたりすると、枠体50と封止部材30との間における封止制御が困難となるおそれがある。蓄電装置1の製造方法によれば、上述したように、枠体50と封止部材30との間における封止不良を抑制することができる。さらに、準備工程では、枠体50の辺部51,52,53の幅D1,D2,D3が枠体50の基端50bから枠体50の先端50cに至るまで減少するように枠体50が形成されているため、注液工程において、枠体50の強度を確保しつつ、枠体50とノズル9のシール部材92との間のシール性を確保することができる。
【0066】
準備工程では、各電極11,12,13の積層方向(Z軸方向)に交差する枠体50の外面50a(辺部51の外面51a)がZ軸方向に交差する封止本体40の外面40b(オーバーハング部分45の外面45a)と面一となるように枠体50を形成している。辺部51の先端の幅が辺部51の基端の幅よりも小さいため、封止工程における辺部51の先端の変形量が比較的少なくなる。これにより、辺部51の先端の変形によって生じるバリ50dの量が少なくなる結果、枠体50の外面50aよりも突出するバリの50d量が少なくなる。したがって、Z軸方向における蓄電装置1の大型化が抑制される。
【0067】
枠体50は、枠体50の外面50aを含む辺部51と、X軸方向から見た場合に、注液口40aに対して辺部51とは反対側に位置し且つZ軸方向における封止本体40の両端よりも内側に位置する辺部53と、を含んでいる。準備工程では、辺部51の幅D1が辺部53の幅D3よりも小さくなるように枠体50を形成している。辺部51の幅D1が辺部53の幅D3よりも小さいため、封止工程における辺部51の変形量が少なくなる。これにより、辺部51の変形によって生じるバリ50dの量が少なくなる結果、枠体50の外面50aよりも突出するバリ50dの量が少なくなる。したがって、Z軸方向における蓄電装置1の大型化がさらに抑制される。また、辺部51の幅D1が辺部53の幅D3よりも小さいため、枠体50のうちの辺部51と辺部53との間の空間が比較的広くなる。これにより、注液口列40Aの注液口40a又は注液口列40Cの注液口40aの配置の自由度が向上する。
【0068】
準備工程では、枠体50の先端50c側における枠体50の辺部51,52,53の幅D1,D2,D3の減少率が枠体50の基端50b側における枠体50の辺部51,52,53の幅D1,D2,D3の減少率よりも大きくなるように枠体50を形成している。これにより、枠体50の先端50cが受ける封止部材30からの面圧の分布が均一になる。具体的には、たとえ、枠体50の先端50cが、枠体50(YZ面)に対して傾斜した状態の封止部材30に押圧されたとしても、枠体50の先端50cにおいて生じる応力集中が緩和される。したがって、枠体50への封止部材30の溶着の制御がさらに容易となる結果、注液口40aをさらに高精度に封止することができる。
【0069】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0070】
図14に示されるように、封止部材30は、本体部分31及び突出部分32を含んでいてもよい。Z軸方向における本体部分31の両端は、Z軸方向における枠体50の両端と略一致している。突出部分32は、Z軸方向における本体部分31の両端のそれぞれに設けられている。突出部分32は、X軸方向から見た場合に、枠体50の外面51aよりも突出している。封止工程では、封止部材30の突出部分32が枠体50の外面51aよりも突出するように、枠体50の先端に封止部材30の本体部分31を溶着してもよい。本体部分31が枠体50の先端に溶着されると、枠体50の辺部51の先端の変形によって生じたバリ50dが枠体50の外面51aよりも突出する場合がある。続いて、封止工程では、
図15に示されるように、封止部材30のうち枠体50の外面51aよりも突出する突出部分32を枠体50の外面51aに溶着してもよい。具体的には、封止工程では、突出部分32を枠体50の外面51aに向かって折り曲げた後、突出部分32を外面51aに溶着してもよい。これにより、枠体50の外面51aよりも突出するバリ50dを押し潰すことができ、Z軸方向における当該バリ50dの厚みを小さくすることができる。したがって、Z軸方向における蓄電装置1の大型化がさらに抑制される。
【0071】
実施形態において、枠体50の先端50c側における各辺部51,52,53の幅D1,D2,D3の減少率が、枠体50の基端50b側における各辺部51,52,53の幅D1,D2,D3の減少率よりも大きい例を示したが、各辺部51,52,53の幅D1,D2,D3の減少率は、枠体50の基端50bから枠体50の先端50cに至るまで一定であってもよい。各辺部51,52,53は、先端部51c,52c,53cを含んでいなくてもよい。
【0072】
枠体50が射出成形によって形成される例を示したが、枠体50は、例えば熱板溶着等によって形成されてもよい。
【0073】
封止工程において、枠体50及び封止部材30が、赤外線ヒータ等によって加熱される例を示したが、封止工程においては、枠体50と封止部材30とが、熱板溶着されてもよい。
【0074】
本開示の要旨は、以下の[1]~[5]のとおりである。
[1]積層された複数の電極を含む積層体、及び前記積層体の側面に設けられた封止体を有するモジュール本体を準備する準備工程と、前記封止体に形成され且つ前記積層体の内部空間に連通する注液口を封止する封止工程と、を備え、前記封止体は、前記注液口を含む封止本体と、前記封止本体の側面から突出し且つ前記側面に交差する方向から見た場合に前記注液口を囲むように配置された辺部を含む枠体と、を有し、前記準備工程では、前記注液口を囲む前記枠体の前記辺部の幅が前記枠体の基端から前記枠体の先端に至るまで減少するように前記枠体を形成し、前記封止工程では、前記枠体の前記先端を封止部材によって押圧しながら、前記枠体の前記先端が変形するように前記枠体に前記封止部材を溶着する、蓄電装置の製造方法。
[2]前記準備工程では、前記複数の電極の積層方向に交差する前記枠体の第1外面が前記積層方向に交差する前記封止本体の第2外面と面一となるように前記枠体を形成する、[1]に記載の蓄電装置の製造方法。
[3]前記枠体は、前記複数の電極の積層方向に交差する前記枠体の第1外面を含む第1辺部と、前記側面に交差する方向から見た場合に、前記注液口に対して前記第1辺部とは反対側に位置し且つ前記積層方向における前記封止本体の両端よりも内側に位置する第2辺部と、を含み、前記準備工程では、前記第1辺部の幅が前記第2辺部の幅よりも小さくなるように前記枠体を形成する、[1]又は[2]に記載の蓄電装置の製造方法。
[4]前記封止工程では、前記側面に交差する方向から見た場合に、前記複数の電極の積層方向における前記封止部材の一端が前記積層方向に交差する前記枠体の第1外面よりも突出するように、前記枠体の前記先端に前記封止部材を溶着した後、前記封止部材のうち前記枠体の前記第1外面よりも突出する突出部分を前記枠体の前記第1外面に溶着する、[1]~[3]のいずれかに記載の蓄電装置の製造方法。
[5]前記準備工程では、前記枠体の前記先端側における前記枠体の前記辺部の幅の減少率が前記枠体の前記基端側における前記枠体の前記辺部の幅の減少率よりも大きくなるように前記枠体を形成する、[1]~[4]のいずれかに記載の蓄電装置の製造方法。
【符号の説明】
【0075】
1…蓄電装置、10…積層体、11…バイポーラ電極、12…正極終端電極、13…負極終端電極、20…封止体、30…封止部材、32…突出部分、40…封止本体、40a…注液口、40b…外面(第2外面)、40c…側面、50…枠体、50a…外面(第1外面)、50b…基端、50c…先端、51,52,53…辺部、60…モジュール本体、D1,D2,D3…幅、S…内部空間。