(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113309
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】廃棄物焼却設備
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20240815BHJP
F23G 5/00 20060101ALI20240815BHJP
F23J 15/00 20060101ALI20240815BHJP
F23L 7/00 20060101ALI20240815BHJP
F23C 9/06 20060101ALI20240815BHJP
B01D 53/50 20060101ALI20240815BHJP
B01D 53/68 20060101ALI20240815BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20240815BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
F23G5/50 H
F23G5/00 C ZAB
F23G5/50 N
F23J15/00 A
F23L7/00 B
F23C9/06
B01D53/50 200
B01D53/68 120
B01D53/78
B01D53/14 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018196
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】泉澤 由弥
(72)【発明者】
【氏名】大島 翼
(72)【発明者】
【氏名】石破 滉也
【テーマコード(参考)】
3K062
3K070
3K091
4D002
4D020
【Fターム(参考)】
3K062AA01
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3K062AC01
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4D002AA02
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4D020DA01
4D020DA02
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4D020DB20
(57)【要約】
【課題】排ガス中のNOx濃度を低減する。
【解決手段】廃棄物焼却設備1は、排ガス流路4を流れる排ガスの一部を再循環排ガスライン52により再循環排ガスとして取り出して焼却炉3内に供給する排ガス再循環部5と、再循環排ガスライン52を流れる再循環排ガスに対して、空気よりも酸素濃度が高い高濃度酸素ガスを混合する酸素混合部6と、再循環排ガスライン52を流れる再循環排ガスの二酸化炭素濃度を測定する濃度測定部21,22とを備える。焼却炉3内に供給される再循環排ガスは、焼却炉3内において廃棄物の焼却に利用される燃焼用ガスの主ガスであり、焼却炉3内に供給される再循環排ガスの二酸化炭素濃度に関する濃度関連値が、濃度測定部21,22による測定値から導かれる。制御部は、焼却炉3においてNOx濃度が低減される設定範囲内に濃度関連値が収まるように、酸素混合部6による高濃度酸素ガスの混合量を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物焼却設備であって、
廃棄物を焼却する焼却炉と、
前記焼却炉から排出される排ガスが流れる排ガス流路と、
前記排ガス流路に設けられる集じん器と、
前記排ガス流路における前記集じん器よりも下流側の取出位置と前記焼却炉とを接続する再循環排ガスラインを有し、前記排ガス流路を流れる前記排ガスの一部を前記再循環排ガスラインにより再循環排ガスとして取り出して前記焼却炉内に供給する排ガス再循環部と、
前記再循環排ガスラインを流れる前記再循環排ガスに対して、空気よりも酸素濃度が高い高濃度酸素ガスを混合する酸素混合部と、
前記再循環排ガスラインを流れる前記再循環排ガスの少なくとも二酸化炭素濃度を測定する濃度測定部と、
前記焼却炉内に供給される前記再循環排ガスが、前記焼却炉内において前記廃棄物の焼却に利用される燃焼用ガスの主ガスであり、前記焼却炉内に供給される前記再循環排ガスの二酸化炭素濃度に関する濃度関連値が、前記濃度測定部による測定値から導かれ、前記焼却炉においてNOx濃度が低減される設定範囲内に前記濃度関連値が収まるように、前記酸素混合部による前記高濃度酸素ガスの混合量を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする廃棄物焼却設備。
【請求項2】
請求項1に記載の廃棄物焼却設備であって、
前記排ガス流路において前記集じん器と前記取出位置との間に配置され、前記再循環排ガスに含まれる水分量を一定にする湿式洗煙塔をさらに備えることを特徴とする廃棄物焼却設備。
【請求項3】
請求項1に記載の廃棄物焼却設備であって、
前記再循環排ガスラインを流れる前記再循環排ガスに対して、前記再循環排ガスよりも窒素濃度が高い高濃度窒素ガスを混合する窒素混合部をさらに備え、
前記制御部が、前記濃度関連値が前記設定範囲内に収まるように、前記窒素混合部による前記高濃度窒素ガスの混合量を制御することを特徴とする廃棄物焼却設備。
【請求項4】
廃棄物焼却設備であって、
廃棄物を焼却する焼却炉と、
前記焼却炉から排出される排ガスが流れる排ガス流路と、
前記排ガス流路に設けられる集じん器と、
前記排ガス流路における前記集じん器よりも下流側の取出位置と前記焼却炉とを接続する再循環排ガスラインを有し、前記排ガス流路を流れる前記排ガスの一部を前記再循環排ガスラインにより再循環排ガスとして取り出して前記焼却炉内に供給する排ガス再循環部と、
前記再循環排ガスラインを流れる前記再循環排ガスに対して、空気よりも酸素濃度が高い高濃度酸素ガスを混合する酸素混合部と、
前記再循環排ガスラインを流れる前記再循環排ガスに対して、前記再循環排ガスよりも窒素濃度が高い高濃度窒素ガスを混合する窒素混合部と、
前記再循環排ガスラインを流れる前記再循環排ガスの少なくとも二酸化炭素濃度を測定する濃度測定部と、
前記焼却炉内に供給される前記再循環排ガスが、前記焼却炉内において前記廃棄物の焼却に利用される燃焼用ガスの主ガスであり、前記焼却炉内に供給される前記再循環排ガスの二酸化炭素濃度に関する濃度関連値が、前記濃度測定部による測定値から導かれ、前記焼却炉においてNOx濃度が低減される設定範囲内に前記濃度関連値が収まるように、前記窒素混合部による前記高濃度窒素ガスの混合量を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする廃棄物焼却設備。
【請求項5】
請求項3または4に記載の廃棄物焼却設備であって、
前記酸素混合部が、空気から酸素を抽出することにより前記高濃度酸素ガスを生成する酸素生成部を備え、
前記高濃度窒素ガスが、前記酸素生成部から排出される、酸素抽出後の空気を含むことを特徴とする廃棄物焼却設備。
【請求項6】
請求項3または4に記載の廃棄物焼却設備であって、
前記再循環排ガスラインが、前記焼却炉の一次燃焼室に接続される一次燃焼用ガスラインと、前記焼却炉の二次燃焼室に接続される二次燃焼用ガスラインとに分岐しており、
前記窒素混合部が、
前記一次燃焼用ガスラインに前記高濃度窒素ガスを供給する第1窒素供給部と、
前記二次燃焼用ガスラインに前記高濃度窒素ガスを供給する第2窒素供給部と、
を備えることを特徴とする廃棄物焼却設備。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の廃棄物焼却設備であって、
前記焼却炉から排出される前記排ガスのNOx濃度を測定するNOx濃度測定部をさらに備え、
前記制御部が、前記NOx濃度測定部による測定値が所定値以上となる場合に、前記排ガス再循環部による前記再循環排ガスの流量を、前記測定値が前記所定値未満である場合よりも増加させることを特徴とする廃棄物焼却設備。
【請求項8】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の廃棄物焼却設備であって、
前記焼却炉から排出される前記排ガスのNOx濃度を測定するNOx濃度測定部をさらに備え、
前記制御部による前記混合量の制御が、前記NOx濃度測定部による測定値が所定値以上となる場合に実行されることを特徴とする廃棄物焼却設備。
【請求項9】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の廃棄物焼却設備であって、
前記再循環排ガスラインが、前記焼却炉の一次燃焼室に接続される一次燃焼用ガスラインと、前記焼却炉の二次燃焼室に接続される二次燃焼用ガスラインとに分岐しており、
前記酸素混合部が、
前記一次燃焼用ガスラインに前記高濃度酸素ガスを供給する第1酸素供給部と、
前記二次燃焼用ガスラインに前記高濃度酸素ガスを供給する第2酸素供給部と、
を備えることを特徴とする廃棄物焼却設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物焼却設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排ガス中のNOx(窒素酸化物)を低減する様々な廃棄物焼却設備が提案されている。例えば、特許文献1および2の焼却炉では、空気からN2(窒素)を分離して得られるO2(酸素)により都市ゴミを焼却することにより、NOx生成が抑制される。特許文献2の焼却炉では、さらに、排ガス中の残存O2濃度が所定濃度以下となるように、焼却炉への燃料の供給割合が設定される。特許文献3の燃焼装置では、被燃焼物が投入されるストーカ下方より、O2量が不足した一次空気を導入し、還元雰囲気を作ることにより、NOxの発生が防がれる。
【0003】
特許文献4では、排ガスのNOx濃度を計測し、計測されたNOx濃度が予め定められた設定範囲から外れたとき、排ガスのO2濃度の目標値または目標範囲を増減補正する燃焼制御方法について記載されている。特許文献5では、燃焼状態の大幅な変動に対しても適正範囲内においてNOx,CO濃度のバランスを取る手法が開示されている。当該手法では、O2濃度の制御範囲内において一定の許容変動幅を持った適正範囲が設定され、適正範囲内にO2濃度を維持するように、O2濃度を指標として空気流量が制御されるとともに、NOx,CO濃度を指標としてO2濃度の適正範囲がシフトされる。
【0004】
なお、非特許文献1では、石炭のO2燃焼において、CO2ガス濃度が高くなるに従ってNOx転換率が減少することが開示されている。非特許文献2では、一次ガスに加えて、二次ガスの吹き込みが可能な実験装置において、CO2濃度を一次ガス、二次ガス共に70%、60%と変化させつつ、一次ガスより流入させたNH3のNOへの転換率と、二次ガスより流入させたNOの還元率とを求める実験について記載されている。当該実験結果によれば、一次NOの転換率はCO2濃度による差異は見られないが、二次ガスに流入させたNOの還元率はCO2濃度の影響を強く受け、CO2濃度が70%と60%の条件を比較すると、CO2濃度が60%の条件の方が二次NO還元率が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-126324号公報
【特許文献2】特開平10-9538号公報
【特許文献3】特開2001-241629号公報
【特許文献4】特許第3902454号公報
【特許文献5】特開平11-72215号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】氣駕尚志、他3名、「ニアゼロエミッション石炭火力に向けて―微粉炭酸素燃焼技術の開発と実証試験―」、日本燃焼学会誌、2011年、第53巻、166号、230-237頁
【非特許文献2】丸毛孝、他3名、「石炭酸素燃焼における再循環NOxの還元メカニズムの解明」、第48回燃焼シンポジウム講演論文集、2010年、590-591頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、廃棄物焼却設備では、排ガス流路を流れる排ガスの一部を再循環排ガスとして取り出して焼却炉内に供給することが行われている。再循環排ガスの利用により、廃棄物焼却設備からの排ガス量を低減することが可能となる。また、高濃度O2ガスを再循環排ガスに混合して燃焼用ガスとして利用する場合には、焼却炉内をCO2(二酸化炭素)濃度を高い雰囲気とし、排気中のCO2濃度も高くすることが可能となり、効率よく二酸化炭素を分離することができる。一方、このような廃棄物焼却設備においても、排ガス中のNOx濃度を低減することが求められている。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、高濃度O2ガスを再循環排ガスに混合して燃焼用ガスとして利用する廃棄物焼却設備において、排ガス中のNOx濃度を低減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様1は、廃棄物焼却設備であって、廃棄物を焼却する焼却炉と、前記焼却炉から排出される排ガスが流れる排ガス流路と、前記排ガス流路に設けられる集じん器と、前記排ガス流路における前記集じん器よりも下流側の取出位置と前記焼却炉とを接続する再循環排ガスラインを有し、前記排ガス流路を流れる前記排ガスの一部を前記再循環排ガスラインにより再循環排ガスとして取り出して前記焼却炉内に供給する排ガス再循環部と、前記再循環排ガスラインを流れる前記再循環排ガスに対して、空気よりも酸素濃度が高い高濃度酸素ガスを混合する酸素混合部と、前記再循環排ガスラインを流れる前記再循環排ガスの少なくとも二酸化炭素濃度を測定する濃度測定部と、前記焼却炉内に供給される前記再循環排ガスが、前記焼却炉内において前記廃棄物の焼却に利用される燃焼用ガスの主ガスであり、前記焼却炉内に供給される前記再循環排ガスの二酸化炭素濃度に関する濃度関連値が、前記濃度測定部による測定値から導かれ、前記焼却炉においてNOx濃度が低減される設定範囲内に前記濃度関連値が収まるように、前記酸素混合部による前記高濃度酸素ガスの混合量を制御する制御部とを備える。
【0010】
本発明の態様2は、態様1の廃棄物焼却設備であって、前記排ガス流路において前記集じん器と前記取出位置との間に配置され、前記再循環排ガスに含まれる水分量を一定にする湿式洗煙塔をさらに備える。
【0011】
本発明の態様3は、態様1(態様1または2であってもよい。)の廃棄物焼却設備であって、前記再循環排ガスラインを流れる前記再循環排ガスに対して、前記再循環排ガスよりも窒素濃度が高い高濃度窒素ガスを混合する窒素混合部をさらに備え、前記制御部が、前記濃度関連値が前記設定範囲内に収まるように、前記窒素混合部による前記高濃度窒素ガスの混合量を制御する。
【0012】
本発明の態様4は、廃棄物焼却設備であって、廃棄物を焼却する焼却炉と、前記焼却炉から排出される排ガスが流れる排ガス流路と、前記排ガス流路に設けられる集じん器と、前記排ガス流路における前記集じん器よりも下流側の取出位置と前記焼却炉とを接続する再循環排ガスラインを有し、前記排ガス流路を流れる前記排ガスの一部を前記再循環排ガスラインにより再循環排ガスとして取り出して前記焼却炉内に供給する排ガス再循環部と、前記再循環排ガスラインを流れる前記再循環排ガスに対して、空気よりも酸素濃度が高い高濃度酸素ガスを混合する酸素混合部と、前記再循環排ガスラインを流れる前記再循環排ガスに対して、前記再循環排ガスよりも窒素濃度が高い高濃度窒素ガスを混合する窒素混合部と、前記再循環排ガスラインを流れる前記再循環排ガスの少なくとも二酸化炭素濃度を測定する濃度測定部と、前記焼却炉内に供給される前記再循環排ガスが、前記焼却炉内において前記廃棄物の焼却に利用される燃焼用ガスの主ガスであり、前記焼却炉内に供給される前記再循環排ガスの二酸化炭素濃度に関する濃度関連値が、前記濃度測定部による測定値から導かれ、前記焼却炉においてNOx濃度が低減される設定範囲内に前記濃度関連値が収まるように、前記窒素混合部による前記高濃度窒素ガスの混合量を制御する制御部とを備える。
【0013】
本発明の態様5は、態様3または4の廃棄物焼却設備であって、前記酸素混合部が、空気から酸素を抽出することにより前記高濃度酸素ガスを生成する酸素生成部を備え、前記高濃度窒素ガスが、前記酸素生成部から排出される、酸素抽出後の空気を含む。
【0014】
本発明の態様6は、態様3または4(態様3ないし5のいずれか1つであってもよい。)の廃棄物焼却設備であって、前記再循環排ガスラインが、前記焼却炉の一次燃焼室に接続される一次燃焼用ガスラインと、前記焼却炉の二次燃焼室に接続される二次燃焼用ガスラインとに分岐しており、前記窒素混合部が、前記一次燃焼用ガスラインに前記高濃度窒素ガスを供給する第1窒素供給部と、前記二次燃焼用ガスラインに前記高濃度窒素ガスを供給する第2窒素供給部とを備える。
【0015】
本発明の態様7は、態様1ないし4のいずれか1つ(態様1ないし6のいずれか1つであってもよい。)の廃棄物焼却設備であって、前記焼却炉から排出される前記排ガスのNOx濃度を測定するNOx濃度測定部をさらに備え、前記制御部が、前記NOx濃度測定部による測定値が所定値以上となる場合に、前記排ガス再循環部による前記再循環排ガスの流量を、前記測定値が前記所定値未満である場合よりも増加させる。
【0016】
本発明の態様8は、態様1ないし4のいずれか1つ(態様1ないし7のいずれか1つであってもよい。)の廃棄物焼却設備であって、前記焼却炉から排出される前記排ガスのNOx濃度を測定するNOx濃度測定部をさらに備え、前記制御部による前記混合量の制御が、前記NOx濃度測定部による測定値が所定値以上となる場合に実行される。
【0017】
本発明の態様9は、態様1ないし4のいずれか1つ(態様1ないし8のいずれか1つであってもよい。)の廃棄物焼却設備であって、前記再循環排ガスラインが、前記焼却炉の一次燃焼室に接続される一次燃焼用ガスラインと、前記焼却炉の二次燃焼室に接続される二次燃焼用ガスラインとに分岐しており、前記酸素混合部が、前記一次燃焼用ガスラインに前記高濃度酸素ガスを供給する第1酸素供給部と、前記二次燃焼用ガスラインに前記高濃度酸素ガスを供給する第2酸素供給部とを備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、排ガス中のNOx濃度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】ごみ焼却設備の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の一の実施の形態に係るごみ焼却設備1の構成を示すブロック図である。ごみ焼却設備1は、廃棄物焼却設備であり、焼却炉3と、排ガス流路4とを備える。焼却炉3は、廃棄物であるごみを焼却する。排ガス流路4は、焼却炉3から排出される排ガスが流れる煙道である。
図1の例では、排ガス流路4は、焼却炉3から後述の煙突47に至る流路である。
図1では、焼却炉3の直後の矢印のみに符号4を付している。
【0021】
図2は、焼却炉3の構成を示す図であり、焼却炉3に接続される他の構成も図示している。焼却炉3は、投入ホッパ31と、ごみ供給部32と、一次燃焼室33と、二次燃焼室34とを備える。投入ホッパ31には、図示省略のごみピットからごみが投入される。ごみ供給部32は、プッシャまたはスクリューフィーダ等を有し、投入ホッパ31の底部から一次燃焼室33内にごみを供給する。
【0022】
一次燃焼室33の底部には、ごみ供給部32から離れる方向に向かって順に、乾燥火格子部331、燃焼火格子部332、後燃焼火格子部333および排出口334が配列される。乾燥火格子部331、燃焼火格子部332および後燃焼火格子部333では、周知の搬送動作により、ごみ供給部32側から排出口334に向かってごみが搬送される。乾燥火格子部331、燃焼火格子部332および後燃焼火格子部333のそれぞれでは、後述の一次燃焼用ガスが一次燃焼室33内に向けて噴出され、搬送途上のごみが燃焼する。燃焼後のごみ(主として灰)は排出口334を介して一次燃焼室33外に排出される。なお、焼却炉3では、後燃焼火格子部333の上方を覆う天井部等にノズルが設けられ、当該ノズルから一次燃焼室33内を撹拌するガスが噴出されてもよい。
【0023】
二次燃焼室34は、側壁部に囲まれた空間であり、一次燃焼室33から直接的に連続し、一次燃焼室33から排出される排ガスの流路を形成する。
図2の例では、二次燃焼室34は、一次燃焼室33の床面積に比べて十分に小さい流路面積となって上方に向かう空間である。二次燃焼室34の側壁部には複数のノズル341が設けられ、後述の二次燃焼用ガスが複数のノズル341から噴出される。これにより、一次燃焼室33内で発生した未燃ガスが燃焼する。二次燃焼室34は焼却炉3の一部であり、二次燃焼室34の出口から下流側の流路が、既述の排ガス流路4である。
図2では、ボイラ管群が設けられる領域に符号41を付している。ボイラ管群41は、排ガスを熱源として蒸気を生成する。
【0024】
図1に示すように、ごみ焼却設備1は、ろ過式集じん器42(以下、単に「集じん器42」という。)と、湿式洗煙塔43と、排ガス分配部51と、CO
2(二酸化炭素)回収装置45と、誘引通風機46と、煙突47とをさらに備える。集じん器42、湿式洗煙塔43、排ガス分配部51、CO
2回収装置45、誘引通風機46および煙突47は、排ガス流路4に設けられ、排ガスの流れ方向における上流側から下流側に向かって(すなわち、焼却炉3から煙突47に向かって)順に配置される。
【0025】
集じん器42は、いわゆるバグフィルタであり、排ガスに含まれる飛灰をろ布により捕集する。集じん器42は、バグフィルタ以外であってもよい。集じん器42の上流側において、粉末状の排ガス処理薬剤が排ガスに供給され、集じん器42において飛灰と共に当該排ガス処理薬剤が捕集されてもよい。排ガス処理薬剤は、硫黄酸化物、塩化水素、ダイオキシン類、水銀化合物等の除去に利用される。集じん器42の出口における排ガスの温度は、例えば150℃~200℃である。集じん器42を通過した排ガスは湿式洗煙塔43に流入する。
【0026】
湿式洗煙塔43は、例えば、苛性ソーダ等のアルカリ薬剤および水を含む液体を排ガス中に噴霧する。これにより、排ガスの温度を、例えば30℃~70℃の略一定温度に低下させるとともに、排ガスに含まれる硫黄酸化物、塩化水素等を除去する。湿式洗煙塔43は、排ガス中の硫黄酸化物を除去する脱硫部であり、排ガス中の塩化水素を除去する脱塩部でもある。既述のように、湿式洗煙塔43を通過した排ガスの温度は略一定であり、排ガスに含まれる水分量(単位体積当たりの水分量)も、当該温度における飽和水蒸気量にて略一定となる。排ガス分配部51は、排ガス流路4を流れる排ガスの一部を後述の再循環排ガスライン52に導く。排ガス分配部51の詳細については後述する。
【0027】
CO2回収装置45は、排ガス分配部51を通過した排ガス(排ガス流路4を流れる排ガス)からCO2を回収する。CO2回収装置45の一例は、化学吸収法によりCO2を回収するものであり、吸収塔と、再生塔とを備える。吸収塔では、例えば、アミンおよび水を含む液体が排ガス中に噴霧され、CO2が当該液体に吸収される。すなわち、排ガスからCO2が除去される。CO2を吸収した液体は、再生塔に送られて加熱され、CO2が取り出されて回収される。回収されたCO2は、メタネーションによるメタンの生成等に利用されたり、地中等に貯留される(CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage))。後述するように、ごみ焼却設備1では、排ガス中のCO2濃度が高くなっているため、CO2を効率よく回収することが可能である。CO2回収装置45は、化学吸収法以外の方式によりCO2を回収するものであってもよい。
【0028】
誘引通風機46は、排ガス流路4において上流側から下流側へと向かうガスの流れ(すなわち、焼却炉3から煙突47へと向かうガスの流れ)を形成する。誘引通風機46を通過した排ガスは、煙突47から外部に排出される。
【0029】
ごみ焼却設備1は、排ガス再循環部5と、酸素混合部6と、窒素混合部7とをさらに備える。排ガス再循環部5は、既述の排ガス分配部51と、再循環排ガスライン52とを備える。再循環排ガスライン52は、ガス流路であり、排ガス流路4において集じん器42よりも下流側の取出位置に一端が接続される。
図1の例では、取出位置は、排ガス分配部51のブロックの位置である。再循環排ガスライン52により、排ガス流路4を流れる排ガスの一部が再循環排ガスとして取り出される。好ましい再循環排ガスライン52では、ファンが設けられており、当該ファンにより取出位置から離れる方向に向かう再循環排ガスの流れが形成される。排ガス流路4において、CO
2回収装置45は取出位置よりも下流側に設けられ、湿式洗煙塔43は取出位置よりも上流側に設けられるため、取出位置から取り出された再循環排ガスは、高いCO
2濃度、および、略一定の水分濃度(水分量)を有する。なお、ごみ焼却設備1の設計によっては、取出位置が集じん器42と湿式洗煙塔43との間に設けられてもよい。
【0030】
再循環排ガスライン52の他端は、焼却炉3に接続され、当該再循環排ガスが焼却炉3内に供給される。
図2の例では、再循環排ガスライン52は、一次燃焼用ガスライン521と、二次燃焼用ガスライン522とに分岐する。一次燃焼用ガスライン521は、複数のラインに分岐して、乾燥火格子部331、燃焼火格子部332および後燃焼火格子部333の風箱にそれぞれ接続する。二次燃焼用ガスライン522は、複数のラインに分岐して、複数のノズル341にそれぞれ接続する。後述するように、焼却炉3内に供給される再循環排ガスは、燃焼用ガスとして利用される。
【0031】
図1の排ガス分配部51は、例えば、第1ダンパと、第2ダンパとを備える。第1ダンパは、排ガス流路4において取出位置の下流側近傍に配置される。第2ダンパは、再循環排ガスライン52において取出位置近傍に配置される。排ガス分配部51が、第1および第2ダンパの開度を調整することにより、再循環排ガスライン52を流れる再循環排ガスの流量が変更可能である。再循環排ガスの流量は、第1および第2ダンパの開度により特定可能である。再循環排ガスライン52において、再循環排ガスの流量を測定する流量計が設けられてもよい。
【0032】
酸素混合部6は、酸素生成部60と、第1酸素供給部61と、第2酸素供給部62とを備える。酸素生成部60は、空気からO2(酸素)を抽出することにより、空気よりもO2濃度が高い高濃度O2ガスを生成する。高濃度O2ガスのO2濃度は、例えば、50%(体積%である。以下同様。)以上であり、好ましくは、65%以上であり、より好ましくは、80%以上であり、さらに好ましくは、100%である。酸素生成部60は、例えば、PSA式の酸素ガス発生装置である。
【0033】
第1酸素供給部61および第2酸素供給部62には、酸素生成部60から高濃度O2ガスが供給される。第1酸素供給部61は、一次燃焼用ガスライン521に接続され、一次燃焼用ガスライン521を流れる再循環排ガスに高濃度O2ガスを供給する。第2酸素供給部62は、二次燃焼用ガスライン522に接続され、二次燃焼用ガスライン522を流れる再循環排ガスに高濃度O2ガスを供給する。第1酸素供給部61および第2酸素供給部62のそれぞれでは、例えば、ダンパが設けられ、ダンパの開度を調整することにより、再循環排ガスに対する高濃度O2ガスの混合量が変更可能である。高濃度O2ガスの混合量は、ダンパの開度により特定可能である。高濃度O2ガスの流量を測定する流量計が設けられてもよい。
【0034】
一次燃焼用ガスライン521を流れる再循環排ガスと、第1酸素供給部61から供給される高濃度O2ガスとの混合ガスは、一次燃焼用ガスとして一次燃焼室33内に供給される。一次燃焼用ガスは、取出位置における排ガスよりもO2濃度が高い、または、当該排ガスとO2濃度が同じガスであり、一次燃焼室33におけるごみの燃焼に利用される。二次燃焼用ガスライン522を流れる再循環排ガスと、第2酸素供給部62から供給される高濃度O2ガスとの混合ガスは、二次燃焼用ガスとして二次燃焼室34内に供給される。二次燃焼用ガスは、取出位置における排ガスよりもO2濃度が高い、または、当該排ガスとO2濃度が同じガスであり、二次燃焼室34における未燃ガスの燃焼に利用される。一次燃焼用ガスライン521および二次燃焼用ガスライン522のそれぞれでは、例えば、ダンパの開度を調整することにより、燃焼用ガスの流量が調整可能である。燃焼用ガスの流量は、ダンパの開度により特定可能である。
【0035】
窒素混合部7は、窒素ガス貯留部70と、第1窒素供給部71と、第2窒素供給部72とを備える。窒素ガス貯留部70は、ボンベ等のガス容器であり、酸素生成部60に接続される。窒素ガス貯留部70では、酸素生成部60から排出されるO2抽出後の空気が貯留される。O2抽出後の空気は、取出位置から取り出される再循環排ガスよりもN2(窒素)濃度が高いガスであり、以下、このようなガスを「高濃度N2ガス」という。高濃度N2ガスのN2濃度は、例えば、50%以上であり、好ましくは、70%以上であり、より好ましくは、90%以上である。
【0036】
第1窒素供給部71および第2窒素供給部72には、窒素ガス貯留部70から高濃度N2ガスが供給される。第1窒素供給部71は、一次燃焼用ガスライン521に接続され、一次燃焼用ガスライン521を流れる再循環排ガスに高濃度N2ガスを供給可能である。第2窒素供給部72は、二次燃焼用ガスライン522に接続され、二次燃焼用ガスライン522を流れる再循環排ガスに高濃度N2ガスを供給可能である。第1窒素供給部71および第2窒素供給部72のそれぞれでは、例えば、ダンパが設けられ、ダンパの開度を調整することにより、再循環排ガスに対する高濃度N2ガスの混合量が変更可能である。高濃度N2ガスの混合量は、ダンパの開度により特定可能である。高濃度N2ガスの流量を測定する流量計が設けられてもよい。
【0037】
窒素混合部7では、再循環排ガスライン52を流れる再循環排ガスに対して、高濃度N2ガスが必要に応じて混合される。第1窒素供給部71および第2窒素供給部72では、外部の空気を高濃度N2ガスとして利用することも可能である。また、窒素ガス貯留部70に代えて、空気からN2ガスを抽出する装置(例えば、PSA式の窒素ガス発生装置)等が設けられてもよい。
【0038】
ごみ焼却設備1の通常運転では、好ましくは、高濃度O2ガス(および高濃度N2ガス)が混合された再循環排ガス以外の燃焼用ガス(空気等)は、焼却炉3内にほとんど供給されず、より好ましくは、焼却炉3内にガス管を介して供給される燃焼用ガスは、再循環排ガスのみである。これにより、ごみ焼却設備1において煙突47から排出される排ガス量を大幅に低減することが可能となる。また、燃焼用ガスとして空気がほとんど供給されないため、典型的には、排ガスおよび再循環排ガスにおけるCO2濃度は、N2濃度よりも高くなる。したがって、焼却炉3では、CO2濃度が高い雰囲気にてごみの燃焼が行われる。再循環排ガスでは、例えば、CO2濃度が10~70%であり、N2濃度が5~60%であり、O2濃度が18~24%である。
【0039】
既述のように、好ましいごみ焼却設備1では、焼却炉3内にガス管を介して供給される燃焼用ガスは、再循環排ガスのみであるが、焼却炉3内に供給される再循環排ガスが、燃焼用ガスの主ガスであると捉えられる範囲において、燃焼用ガスの一部として少量の空気がガス管を介して(すなわち、漏れ込み空気等以外として)供給されてもよい。実際には、漏れ込み空気等(例えば、ごみの投入時にごみと共に入ってくる空気)も燃焼に利用される。燃焼用ガスの主ガスは、例えば、当該燃焼用ガスの50%以上のガスであり、好ましくは、65%以上のガスであり、より好ましくは、80%以上のガスであり、さらに好ましくは、当該燃焼用ガスの100%のガスである。なお、ごみ焼却設備1の稼働の初期には、燃焼用ガスとして空気が利用される。系外から焼却炉3内に供給される空気の量を極力少なくして運転を続けることで、排ガスに含まれる窒素の量が徐々に減少し、CO2回収装置45を通過する排ガスの主な成分を二酸化炭素、水および余剰酸素にすることができる。このような運転をする場合、排ガスに含まれる二酸化炭素濃度が高くなるため、CO2回収装置45にて効率よく二酸化炭素を分離することができる。
【0040】
図1に示すように、ごみ焼却設備1は、第1濃度測定部21と、第2濃度測定部22と、NOx濃度測定部23とをさらに備える。第1濃度測定部21は、一次燃焼用ガスライン521を流れる再循環排ガスのCO
2濃度を測定する。
図1の例では、第1濃度測定部21の測定位置は、高濃度O
2ガスの混合位置および高濃度N
2ガスの混合位置よりも上流側(排ガス分配部51側)に設けられる。第1濃度測定部21による測定値は、後述の制御部10(
図3参照)に出力される。第1濃度測定部21では、O
2濃度およびN
2濃度も測定可能である。第1濃度測定部21の測定位置は、高濃度O
2ガスの混合位置および高濃度N
2ガスの混合位置よりも下流側(焼却炉3側)に設けられてもよい。
【0041】
第2濃度測定部22は、二次燃焼用ガスライン522を流れる再循環排ガスのCO
2濃度を測定する。
図1の例では、第2濃度測定部22の測定位置は、高濃度O
2ガスの混合位置および高濃度N
2ガスの混合位置よりも上流側に設けられる。第2濃度測定部22による測定値は、制御部10に出力される。第2濃度測定部22では、O
2濃度およびN
2濃度も測定可能である。第2濃度測定部22の測定位置は、高濃度O
2ガスの混合位置および高濃度N
2ガスの混合位置よりも下流側に設けられてもよい。
【0042】
NOx濃度測定部23は、排ガス流路4を流れる排ガスのNOx(窒素酸化物)濃度を測定する。
図1の例では、NOx濃度測定部23の測定位置は、排ガス流路4において湿式洗煙塔43と排ガス分配部51との間(実際には、湿式洗煙塔43の出口付近)に設けられる。NOx濃度測定部23による測定値は、制御部10に出力される。NOx濃度測定部23の測定位置は、集じん器42の出口付近や煙突47に設けられてもよい。また、NOx濃度測定部23の測定位置が、再循環排ガスライン52において高濃度O
2ガスの混合位置および高濃度N
2ガスの混合位置よりも上流側に設けられてもよい。この場合も、実質的に、焼却炉3から排出される排ガスのNOx濃度が測定可能である。
【0043】
図3は、ごみ焼却設備1における制御部10等を示すブロック図である。制御部10は、例えば、CPU等を備えるコンピュータであり、ごみ焼却設備1の全体制御を担う。
図3では、制御部10に電気的に接続される一部の構成(第1濃度測定部21、第2濃度測定部22、NOx濃度測定部23、排ガス分配部51、第1酸素供給部61、第2酸素供給部62、第1窒素供給部71および第2窒素供給部72)も図示している。以下、制御部10による制御について説明する。
【0044】
ごみ焼却設備1では、焼却炉3内に燃焼用ガスとして供給される再循環排ガスのCO
2濃度と、排ガスのNOx濃度との関係を示す情報(以下、「CO
2-NOx濃度情報」という。)が予め取得されて準備される。
図4は、CO
2-NOx濃度情報の一例を示す図である。本実施の形態では、一次燃焼用ガスライン521を流れる一次燃焼用ガス、および、二次燃焼用ガスライン522を流れる二次燃焼用ガスのそれぞれについて、CO
2-NOx濃度情報が取得される。既述のように、一次燃焼用ガスおよび二次燃焼用ガスは、高濃度O
2ガスが混合された再循環排ガスである。
【0045】
一次燃焼用ガスのCO2-NOx濃度情報は、焼却炉3内に供給される一次燃焼用ガスのCO2濃度と、当該一次燃焼用ガスを用いたごみの焼却により発生する排ガスのNOx濃度とを対応付けたものである。一次燃焼用ガスのCO2濃度は、第1濃度測定部21によるCO2濃度の測定値と、第1酸素供給部61による高濃度O2ガスの混合量と、第1窒素供給部71による高濃度N2ガスの混合量と、一次燃焼用ガスの流量とを用いて算出される。第1濃度測定部21の測定位置が、高濃度O2ガスの混合位置および高濃度N2ガスの混合位置よりも下流側に設けられる場合には、第1濃度測定部21によるCO2濃度の測定値が、一次燃焼用ガスのCO2濃度として扱われる。一次燃焼用ガスのCO2-NOx濃度情報における排ガスのNOx濃度は、NOx濃度測定部23によるNOx濃度の測定値である。排ガスのNOx濃度は、一次燃焼用ガスの焼却炉3内への供給から、当該一次燃焼用ガスから発生する排ガスがNOx濃度測定部23の測定位置に到達するまでの時間差を考慮して、一次燃焼用ガスのCO2濃度に対応付けられる。
【0046】
一次燃焼用ガスのCO
2-NOx濃度情報が準備されると、焼却炉3においてNOx濃度が低減される一次燃焼用ガスのCO
2濃度の範囲(以下、「設定範囲」という。)が設定される。設定範囲は、CO
2-NOx濃度情報において排ガスのNOx濃度が所定値以下となる範囲である。ここで、CO
2濃度が十分に高い雰囲気にてごみの燃焼を行う場合、NOxが生成しにくくなる。また、燃焼用ガスである再循環排ガスに含まれるNOがN
2に還元されやすくなる。その結果、排ガスに含まれるNOxが減少する。上記設定範囲は、NOxの生成の抑制、および、NOxの還元の促進により、焼却炉3においてNOx濃度が低減されるCO
2濃度の範囲である。以上のようにして、一次燃焼用ガスのCO
2濃度の設定範囲が決定される。なお、
図4のCO
2-NOx濃度情報では、燃焼用ガスのCO
2濃度が高くなるに従って、排ガスのNOx濃度が低くなっているが、実際には、燃焼用ガスのCO
2濃度が過度に高い場合に、排ガスのNOx濃度が高くなる場合もある。
【0047】
二次燃焼用ガスについても、一次燃焼用ガスの場合と同様にして、CO2-NOx濃度情報が準備され、二次燃焼用ガスのCO2濃度の設定範囲が決定される。CO2濃度の設定範囲の決定では、再循環排ガスのCO2濃度と、排ガスのNOx量との関係が利用されてもよい。NOx量は、NOx濃度に排ガスの流量を掛けることにより求められる。この場合、当該関係において、NOx量が所定値以下となる範囲が、CO2濃度の設定範囲として決定される。
【0048】
ここで、ごみ焼却設備1では、焼却炉3において燃焼させるごみの質や、燃焼用ガスのO2濃度等により、排ガスのCO2濃度は変動する。制御部10の第1の制御例では、一次燃焼用ガスおよび二次燃焼用ガスのそれぞれについて、CO2濃度が設定範囲内に収まるように高濃度O2ガスの混合量が制御される。一次燃焼用ガスに注目すると、既述のように、一次燃焼用ガスのCO2濃度は、第1濃度測定部21によるCO2濃度の測定値と、第1酸素供給部61による高濃度O2ガスの混合量と、第1窒素供給部71による高濃度N2ガスの混合量と、一次燃焼用ガスの流量とを用いて算出される。例えば、第1酸素供給部61による高濃度O2ガスの現在の混合量では、算出される一次燃焼用ガスのCO2濃度が設定範囲よりも大きくなる場合には、高濃度O2ガスの混合量が現在の混合量よりも増加され、一次燃焼用ガスの実際のCO2濃度が小さくされる。算出される一次燃焼用ガスのCO2濃度が設定範囲よりも小さくなる場合には、高濃度O2ガスの混合量が現在の混合量よりも減少され、一次燃焼用ガスの実際のCO2濃度が大きくされる。
【0049】
本実施の形態では、一次燃焼用ガスについて、ごみの焼却に必要なO2濃度の範囲(例えば、18~24%の範囲であり、以下、「必要濃度範囲」という。)が予め定められている。したがって、高濃度O2ガスの混合量の増減は、一次燃焼用ガスのO2濃度が必要濃度範囲を外れない範囲で行われる。このように、一次燃焼用ガスのO2濃度が必要濃度範囲内を維持しつつ、一次燃焼用ガスのCO2濃度が設定範囲内に収まるように、第1酸素供給部61による高濃度O2ガスの混合量が制御される。なお、一次燃焼用ガスのO2濃度を必要濃度範囲内で維持するため、一次燃焼用ガスのCO2濃度が一時的に設定範囲外となってもよい。
【0050】
二次燃焼用ガスについても、一次燃焼用ガスと同様の制御が行われる。すなわち、二次燃焼用ガスのO2濃度が、二次燃焼用ガスの必要濃度範囲内を維持しつつ、二次燃焼用ガスのCO2濃度が設定範囲内に収まるように、第2酸素供給部62による高濃度O2ガスの混合量が制御される。二次燃焼用ガスのO2濃度を必要濃度範囲内で維持するため、二次燃焼用ガスのCO2濃度が一時的に設定範囲外となってもよい。
【0051】
制御部10の第2の制御例では、一次燃焼用ガスおよび二次燃焼用ガスのそれぞれについて、CO2濃度が設定範囲内に収まるように高濃度N2ガスの混合量が制御される。例えば、第1窒素供給部71による高濃度N2ガスの現在の混合量では、算出される一次燃焼用ガスのCO2濃度が設定範囲よりも大きくなる場合には、高濃度N2ガスの混合量が現在の混合量よりも増加され、一次燃焼用ガスの実際のCO2濃度が小さくされる。算出される一次燃焼用ガスのCO2濃度が設定範囲よりも小さくなる場合には、高濃度N2ガスの混合量が現在の混合量よりも減少され、一次燃焼用ガスの実際のCO2濃度が大きくされる。
【0052】
このように、一次燃焼用ガスのCO2濃度が設定範囲内に収まるように、第1窒素供給部71による高濃度N2ガスの混合量が制御される。二次燃焼用ガスについても、一次燃焼用ガスと同様の制御が行われる。すなわち、二次燃焼用ガスのCO2濃度が設定範囲内に収まるように、第2窒素供給部72による高濃度N2ガスの混合量が制御される。再循環排ガスに高濃度N2ガスを混合することにより、燃焼用ガスにおけるO2濃度を必要濃度範囲内で維持しつつ、CO2濃度を容易に設定範囲内とすることができる。再循環排ガスのO2濃度を比較的高くした場合、再循環排ガスに含まれるNOの還元が阻害されやすくなるが、再循環排ガスに高濃度N2ガスを混合する第2の制御例では、NOが適切に還元される。
【0053】
ごみ焼却設備1では、制御部10の第1および第2の制御例が組み合わされてもよい。例えば、第1酸素供給部61による高濃度O2ガスの現在の混合量、および、第1窒素供給部71による高濃度N2ガスの現在の混合量では、算出される一次燃焼用ガスのCO2濃度が設定範囲よりも大きくなる場合には、高濃度O2ガスの混合量、および、高濃度N2ガスの混合量のそれぞれが、現在の混合量よりも増加される。算出される一次燃焼用ガスのCO2濃度が設定範囲よりも小さくなる場合には、高濃度O2ガスの混合量、および、高濃度N2ガスの混合量のそれぞれが、現在の混合量よりも減少される。
【0054】
このように、一次燃焼用ガスのO2濃度が必要濃度範囲内を維持しつつ、一次燃焼用ガスのCO2濃度が設定範囲内に収まるように、第1酸素供給部61による高濃度O2ガスの混合量、および、第1窒素供給部71による高濃度N2ガスの混合量が制御される。二次燃焼用ガスについても、一次燃焼用ガスと同様に、二次燃焼用ガスのO2濃度が必要濃度範囲内を維持しつつ、二次燃焼用ガスのCO2濃度が設定範囲内に収まるように、第2酸素供給部62による高濃度O2ガスの混合量、および、第2窒素供給部72による高濃度N2ガスの混合量が制御される。
【0055】
上記処理例では、焼却炉3内に供給される再循環排ガス(燃焼用ガス)に対して、CO2濃度の設定範囲が設けられるが、設定範囲の対象となる値は、CO2濃度に関する値(以下、「濃度関連値」という。)であるならば、必ずしもCO2濃度そのものである必要はない。例えば、CO2濃度とN2濃度との比(CO2/N2濃度比)、または、CO2濃度とO2濃度との比(CO2/O2濃度比)を、濃度関連値として用いることが可能である。CO2/O2濃度比は、濃度測定部(第1濃度測定部21および第2濃度測定部22)によるCO2濃度およびO2濃度の測定値から導かれ、CO2/N2濃度比は、CO2濃度およびN2濃度の測定値から導かれる。燃焼用ガスの濃度関連値と排ガスのNOx濃度との関係から、濃度関連値の設定範囲が決定され、濃度関連値が設定範囲内に収まるように、酸素混合部6による高濃度O2ガスの混合量、または/および、窒素混合部7による高濃度N2ガスの混合量が制御される。いずれの場合も、濃度関連値の算出には、再循環排ガスのCO2濃度が必須となる。したがって、濃度測定部は、再循環排ガスライン52を流れる再循環排ガスの少なくともCO2濃度を測定すればよい。
【0056】
制御部10では、NOx濃度測定部23によるNOx濃度の測定値に基づいて再循環排ガスの流量を制御することも可能である。例えば、NOx濃度測定部23による測定値が所定値以上である場合、焼却炉3内のCO2濃度が設定範囲から大きく外れていると考えられる。この場合、排ガス再循環部5による再循環排ガスの流量が、NOx濃度の測定値が当該所定値未満である場合よりも増加される。これにより、焼却炉3内のCO2濃度を短時間で設定範囲内とすることが可能となる。また、ごみ焼却設備1の稼働の初期において、再循環排ガスの流量を増加することにより、焼却炉3内のCO2濃度を短時間で高くすることも可能である。なお、再循環排ガスの流量を変更する場合に、燃焼用ガスのO2濃度が一定であるときには、単位時間当たりに焼却炉3内に供給されるO2量が大幅に変化することがある。したがって、再循環排ガスの流量を変更する際に、当該O2量が略一定となるように、燃焼用ガスのO2濃度が変更されてもよい。
【0057】
制御部10による高濃度O2ガスの混合量の制御、または/および、高濃度N2ガスの混合量の制御は、必ずしも常時行われる必要はなく、所定の条件が満たされた場合にのみ実行されてもよい。例えば、NOx濃度測定部23によるNOx濃度の測定値が所定値以上である場合に、当該混合量の制御が実行される。すなわち、濃度関連値が設定範囲内に収まるように、酸素混合部6による高濃度O2ガスの混合量、または/および、窒素混合部7による高濃度N2ガスの混合量が制御される。混合量の制御により、焼却炉3から排出される排ガス中のNOx濃度が低減され、NOx濃度測定部23による測定値が所定値未満となると、当該混合量の制御が停止される。以上のように、制御部10による上記混合量の制御を、NOx濃度測定部23による測定値が所定値以上となる場合に制限して実行することにより、当該混合量の制御により生じる影響(例えば、焼却炉3内の温度の変動等)を抑制することが可能となる。
【0058】
以上に説明したように、ごみ焼却設備1は、排ガス流路4を流れる排ガスの一部を再循環排ガスライン52により再循環排ガスとして取り出して焼却炉3内に供給する排ガス再循環部5と、再循環排ガスライン52を流れる再循環排ガスに対して、空気よりもO
2濃度が高い高濃度O
2ガス(高濃度酸素ガス)を混合する酸素混合部6と、再循環排ガスライン52を流れる再循環排ガスのCO
2濃度を測定する濃度測定部(
図1では、第1濃度測定部21および第2濃度測定部22)とを備える。焼却炉3内に供給される再循環排ガスは、焼却炉3内においてごみの焼却に利用される燃焼用ガスの主ガスであり、焼却炉3内に供給される再循環排ガス(すなわち、燃焼用ガス)のCO
2濃度に関する濃度関連値が、濃度測定部による測定値から導かれる。制御部10は、焼却炉3においてNOx濃度が低減される設定範囲内に濃度関連値が収まるように、酸素混合部6による高濃度O
2ガスの混合量を制御する。これにより、排ガス中のNOx濃度を低減することが可能となる。
【0059】
好ましくは、ごみ焼却設備1が、排ガス流路4において集じん器42と再循環排ガスの取出位置との間に配置される湿式洗煙塔43をさらに備える。湿式洗煙塔43は、再循環排ガスに含まれる水分量を一定にする。その結果、再循環排ガスに含まれる水分量が変動して(例えば、過度に上昇して)、NOx濃度を低減する上記制御に影響が及ぶことを抑制することができ、排ガス中のNOx濃度を精度よく低減することが可能となる。
【0060】
好ましくは、再循環排ガスライン52が、焼却炉3の一次燃焼室33に接続される一次燃焼用ガスライン521と、焼却炉3の二次燃焼室34に接続される二次燃焼用ガスライン522とに分岐する。酸素混合部6が、一次燃焼用ガスライン521に高濃度O2ガスを供給する第1酸素供給部61と、二次燃焼用ガスライン522に高濃度O2ガスを供給する第2酸素供給部62とを備える。
【0061】
ここで、焼却炉3の構造等によっては、一次燃焼用ガスの濃度関連値の設定範囲と、二次燃焼用ガスの濃度関連値の設定範囲とが相違する場合がある。また、一次燃焼用ガスおよび二次燃焼用ガスのうちの一方の燃焼用ガスが、他方の燃焼用ガスよりも、排ガス中のNOx濃度に大きな影響を及ぼす場合もある。いずれの場合でも、一次燃焼用ガスと二次燃焼用ガスとでCO2濃度を個別に制御することが可能なごみ焼却設備1では、排ガス中のNOx濃度を効率よく低減することが可能となる。
【0062】
好ましくは、ごみ焼却設備1が、再循環排ガスライン52を流れる再循環排ガスに対して、再循環排ガスよりもN2濃度が高い高濃度N2ガス(高濃度窒素ガス)を混合する窒素混合部7をさらに備える。制御部10は、濃度関連値が設定範囲内に収まるように、窒素混合部7による高濃度N2ガスの混合量を制御する。これにより、燃焼用ガスの濃度関連値を容易に調整することができ、排ガス中のNOx濃度をより確実に低減することができる。
【0063】
窒素混合部7を含むごみ焼却設備1では、制御部10が、酸素混合部6による高濃度O2ガスの混合量を濃度関連値とは独立して制御しつつ(例えば、ごみ量や発生蒸気量に合わせて制御しつつ)、濃度関連値が設定範囲内に収まるように、窒素混合部7による高濃度N2ガスの混合量を制御してもよい。この場合も、排ガス中のNOx濃度を低減することが可能となる。
【0064】
好ましくは、酸素混合部6が、空気からO2を抽出することにより高濃度O2ガスを生成する酸素生成部60を備える。高濃度N2ガスが、酸素生成部60から排出される、O2抽出後の空気を含む。このように、酸素生成部60が、高濃度O2ガスに加えて高濃度N2ガスも実質的に生成することにより、高濃度N2ガスを容易に準備することができる。
【0065】
好ましくは、窒素混合部7が、一次燃焼用ガスライン521に高濃度N2ガスを供給する第1窒素供給部71と、二次燃焼用ガスライン522に高濃度N2ガスを供給する第2窒素供給部72とを備える。これにより、一次燃焼用ガスと二次燃焼用ガスとでCO2濃度を個別に制御することができ、第1および第2酸素供給部61,62を設ける場合と同様に、排ガス中のNOx濃度を効率よく低減することができる。
【0066】
好ましくは、ごみ焼却設備1が、焼却炉3から排出される排ガスのNOx濃度を測定するNOx濃度測定部23をさらに備える。そして、制御部10による上記混合量の制御が、NOx濃度測定部23による測定値が所定値以上となる場合に実行される。このようなごみ焼却設備1では、混合量の制御により生じる副次的な影響を抑制することが可能となる。
【0067】
また、NOx濃度測定部23による測定値が所定値以上となる場合に、制御部10が、排ガス再循環部5による再循環排ガスの流量を、測定値が当該所定値未満である場合よりも増加させてもよい。これにより、焼却炉3内のCO2濃度を短時間で設定範囲内に調整することができる。
【0068】
上記ごみ焼却設備1では様々な変形が可能である。
【0069】
図1のごみ焼却設備1において、再循環排ガスライン52に1つの濃度測定部のみが設けられ、一次燃焼用ガスの濃度関連値、および、二次燃焼用ガスの濃度関連値の双方が、当該濃度測定部の測定値から導かれてもよい。
【0070】
上記実施の形態では、再循環排ガスライン52が、焼却炉3の一次燃焼室33および二次燃焼室34に接続され、高濃度O2ガスが混合された再循環排ガスが、一次燃焼用ガスおよび二次燃焼用ガスとして利用されるが、再循環排ガスライン52が、一次燃焼室33または二次燃焼室34のみに接続されてもよい。
【0071】
ごみ焼却設備1の設計によっては、窒素混合部7や、湿式洗煙塔43、NOx濃度測定部23等が省略されてもよい。また、酸素混合部6が、例えば、水の電気分解により、高濃度O2ガスを生成してもよい。さらに、酸素混合部6は、酸素を貯留するための酸素ガス貯留部であってもよい。酸素ガス貯留部は、例えば、ボンベ等のガス容器である。
【0072】
焼却炉3は、ストーカ式の焼却炉以外の焼却炉(例えば、流動床炉、キルン炉等)であってもよい。ごみ焼却設備1は、ごみ以外の一般廃棄物や、産業廃棄物を焼却する廃棄物焼却設備として利用されてよい。
【0073】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0074】
1 ごみ焼却設備
3 焼却炉
4 排ガス流路
5 排ガス再循環部
6 酸素混合部
7 窒素混合部
10 制御部
21,22 濃度測定部
23 NOx濃度測定部
33 一次燃焼室
34 二次燃焼室
42 集じん器
43 湿式洗煙塔
52 再循環排ガスライン
60 酸素生成部
61 第1酸素供給部
62 第2酸素供給部
71 第1窒素供給部
72 第2窒素供給部
521 一次燃焼用ガスライン
522 二次燃焼用ガスライン