(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113312
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】印刷方法、および、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/387 20060101AFI20240815BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240815BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20240815BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240815BHJP
B41J 21/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
H04N1/387 200
H04N1/00 838
B41J29/00 Z
B41J29/38
B41J21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018199
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】宮阪 洋一
【テーマコード(参考)】
2C061
2C187
5C062
5C076
【Fターム(参考)】
2C061AP07
2C061AQ05
2C061AQ06
2C061AR01
2C061CL02
2C187AC07
2C187AC08
2C187AD14
2C187BF26
2C187BH17
2C187BH23
2C187GD01
5C062AA02
5C062AA05
5C062AB02
5C062AB17
5C062AB22
5C062AC02
5C062AC04
5C062AC58
5C062AC64
5C062AE03
5C062AE08
5C062AE15
5C062AF00
5C076AA02
5C076BA01
5C076BA02
5C076BA06
(57)【要約】
【課題】オーバー印刷を確実に行うことができ、機密情報の流出を防止可能な画像形成装置による印刷方法を提供すること。
【解決手段】画像形成装置による印刷方法であって、用紙の記載情報をスキャナーで読み取る第1読取工程と、読み取った前記記載情報を隠匿するための重ね印刷パターンを生成するパターン生成工程と、生成された前記重ね印刷パターンを印刷する印刷工程と、前記記載情報の上に、前記重ね印刷パターンが重畳印刷された前記用紙を前記スキャナーで読み取る第2読取工程と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置による印刷方法であって、
用紙の記載情報をスキャナーで読み取る第1読取工程と、
読み取った前記記載情報を隠匿するための重ね印刷パターンを生成するパターン生成工程と、
生成された前記重ね印刷パターンを印刷する印刷工程と、
前記記載情報の上に、前記重ね印刷パターンが重畳印刷された前記用紙を前記スキャナーで読み取る第2読取工程と、を含む、
印刷方法。
【請求項2】
前記スキャナーは、OCR機能を有し、
前記第1読取工程では、前記OCR機能により文字認識された文字領域を抽出し、
前記パターン生成工程では、前記文字領域に対応する前記重ね印刷パターンを生成する、
請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記第2読取工程における前記重畳印刷の読み取り結果に基づき、隠匿度合いを判定する工程を、さらに含む、
請求項1または2に記載の印刷方法。
【請求項4】
用紙の記載情報を読み取るスキャナーと、
前記用紙に印刷パターンを印刷する印刷部と、
制御部と、を備え、
前記スキャナーにより前記用紙の記載情報を読み取り、
前記制御部は、読み取った前記記載情報を隠匿するための重ね印刷パターンを生成し、
前記印刷部により、生成された前記重ね印刷パターンを、前記用紙の記載情報に重ねて印刷し、
前記スキャナーにより前記記載情報の上に前記重ね印刷パターンが重畳印刷された前記用紙を読み取る、
画像形成装置。
【請求項5】
前記スキャナーは、OCR部を有し、前記用紙の記載情報を読み取る際には、前記OCR部により文字認識された文字領域を抽出し、
前記制御部は、前記文字領域に対応する前記重ね印刷パターンを生成する、
請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
隠匿レベルに応じた複数の前記重ね印刷パターンを記憶する記憶部を、さらに備え、
前記制御部は、前記複数の前記重ね印刷パターンのうち、いずれか1つを選択し、
選択された前記重ね印刷パターンを用いて、前記重畳印刷を行う、
請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記スキャナーによる前記重畳印刷の読み取り結果に基づき、隠匿度合いを判定する、
請求項4または5に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷方法、および、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境意識の高まりにともない用紙を有効活用する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、表面に印刷済みの用紙の裏面を活用する際に、表面の印刷内容の情報が読み取れないように重ね印刷を行う画像形成装置が開示されている。当該文献によれば、印字対象となる画像を所定方向にずらして作成した重ね印字用画像を、表面の印字内容に重ねて印字することにより、印字内容を十分に判読不能にできるため、機密情報の流出を防止することができる、としている。
【0003】
また、使用済みの用紙を回収して、新しい用紙に再生する技術も知られている。古紙の再生技術の中には、使用済みの用紙を乾式で解繊して繊維化した後、加圧、加熱、切断することによって、新しい紙を製造する技術もある。当該技術によれば、多量の水を使うことなく、繊維化された原料にさまざまな添加物を混合することによって、用途に合わせた用紙を作成することができる。
このように古紙を再生する場合でも、用紙を回収する際には、特許文献1と同様、機密情報の流出を防ぐ必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、セキュリティーリスクが残留するという課題があった。詳しくは、重ね印刷用画像による隠匿印刷後、隠匿度合いの確認は行われていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に係る一態様の印刷方法は、画像形成装置による印刷方法であって、用紙の記載情報をスキャナーで読み取る第1読取工程と、読み取った前記記載情報を隠匿するための重ね印刷パターンを生成するパターン生成工程と、生成された前記重ね印刷パターンを印刷する印刷工程と、前記記載情報の上に、前記重ね印刷パターンが重畳印刷された前記用紙を前記スキャナーで読み取る第2読取工程と、を含む。
【0007】
本願に係る一態様の画像形成装置は、用紙の記載情報を読み取るスキャナーと、前記用紙に印刷パターンを印刷する印刷部と、制御部と、を備え、前記スキャナーにより前記用紙の記載情報を読み取り、前記制御部は、読み取った前記記載情報を隠匿するための重ね印刷パターンを生成し、前記印刷部により、生成された前記重ね印刷パターンを、前記用紙の記載情報に重ねて印刷し、前記スキャナーにより前記記載情報の上に前記重ね印刷パターンが重畳印刷された前記用紙を読み取る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1に係る複合装置の概要を示す斜視図。
【
図3】オーバー印刷の印刷方法の流れを示すフローチャート図。
【
図6】実施形態2に係るオーバー印刷の印刷方法の流れを示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態1
***複合装置の概要***
図1は、複合装置の概要を示す斜視図である。以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0010】
図1に示す複合装置200は、スキャナー機能、印刷機能、コピー機能等を備えた情報処理装置であり、デジタル複合機ともいう。画像形成装置としての複合装置200は、印刷装置30の上にスキャナー装置20を配置したタワー型の複合機である。
印刷装置30は、好適例ではインクジェット方式の吐出ヘッドを有する印刷エンジン部32を備えたインクジェット式のプリンターである。なお、インクジェット式に限定するものではなく、レーザー式のプリンターであっても良い。
【0011】
印刷装置30の下側には、用紙を収納する用紙カセット35が3つ配置されている。用紙カセット35は、用紙のサイズごとに設けられている。用紙カセット35の上部には、印刷エンジン部32が収納されており、その上部には、排紙トレイ36が設けられている。用紙カセット35から給紙された用紙は、印刷エンジン部32で印刷された後、排紙トレイ36に排紙される。
【0012】
スキャナー装置20は、フラッドヘッド型のスキャナーであり、印刷装置30の上に設けられている。
図1では、カバーが閉じた状態となっているが、スキャナー装置20は、板状の透明な用紙台や、読取エンジン部21、A/D変換部22などを備えている。読取エンジン部21は、光源、レンズ、走査用モータ、CCD(Charge Coupled Device)センサーなどから構成されている。
スキャナー装置20の給紙トレイ25にセットされた複数枚の用紙は、順次、用紙台に搬送される。読取エンジン部21は、用紙に光を当てながら走査し、その反射光を赤(R)、緑(G)、青(B)のフィルタをかけたCCDセンサーに入射させる。A/D変換部22は、CCDセンサーから出力されるRGBの色光ごとの濃淡のアナログ信号を、デジタル信号化して画像データとして出力する。読取りが終った用紙は、排紙トレイ26に順次排紙される。なお、用紙のことを原稿ともいう。
【0013】
スキャナー装置20の前面には、タッチパネルからなる操作部15が設けられている。操作部15の画面には、スキャナー、印刷、コピーなどの機能に応じた操作メニューが表示されている。操作メニューには、後述する用紙の記載情報を隠匿するためのオーバー印刷のボタンも含まれている。
操作部15と印刷装置30との間には、制御装置10が収納されている。制御装置10は、スキャナー装置20、および、印刷装置30の動作を制御する制御装置である。
換言すれば、画像形成装置としての複合装置200は、用紙の記載情報を読み取るスキャナー装置20と、用紙に印刷パターンを印刷する印刷部としての印刷装置30と、制御部としての制御装置10とを備える。
【0014】
図2は、複合装置の機能ブロック図である。
図2に示すように、スキャナー装置20、印刷装置30は、バスライン70を介して制御装置10と結合している。制御装置10は、制御部11、記憶部12などから構成される。制御部11は、1つ又は複数のプロセッサーを備えて構成され、記憶部12に記憶されている制御プログラムに従って動作することにより複合装置200の動作を統括制御する。制御部11は、例えば、周辺装置とのインターフェイス回路、演算装置及びレジスタを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)で構成される。
記憶部12は、RAM(Random Access Memory)、及び、ROM(Read Only Memory)を備えて構成される。RAMは、各種データ等の一時記憶に用いられ、ROMは、複合装置200の動作を制御するための制御プログラムや、付随するデータなどを記憶する。制御プログラムには、複合装置200を起動させるときの処理の順序と内容を指示する起動プログラムや、オーバー印刷を行う際の処理の順序と内容を規定したプログラムなどが記憶されている。付随データには、隠匿レベルに応じた複数の重ね印刷パターンが含まれている。
【0015】
スキャナー装置20は、前述の読取エンジン部21、A/D変換部22に加えて、画像解析部23を備えている。画像解析部23は、例えば、画像プロセッサーや、フレームメモリーを含んで構成されており、A/D変換部22から出力される画像データを解析する。画像解析部23には、OCR(Optical Character Recognition)部24が含まれており、画像データをレイアウト解析し、文字情報を抽出する。また、画像解析部23では、2値化処理も行われる。
印刷装置30は、前述の印刷エンジン部32に加えて、印刷データ生成部31を備えている。印刷データ生成部31は、例えば、制御部11が生成したオーバー印刷用の重ね印刷パターンデータを、印刷エンジン部32で印刷可能なイメージデータに変換する。
【0016】
また、バスライン70には、操作部15、インターフェイス部16も結合している。
インターフェイス部16は、外部ネットワークと接続するためのインターフェイス回路であり、例えば、LAN(Local Area Network)や、インターネットへの接続が可能である。
【0017】
***オーバー印刷の方法***
図3は、オーバー印刷の印刷方法の流れを示すフローチャート図である。
図4は、重ね印刷パターンの一例を示す図である。
図5は、重ね印刷パターンの異なる例を示す図である。ここでは、用紙の記載情報を隠匿するためのオーバー印刷の方法について
図3を主体に、適宜、他の図も含めて説明する。
なお、以下の各工程は、制御部11が記憶部12の関連プログラムを実行することにより、スキャナー装置20、印刷装置30の各部を制御することにより実行される。
【0018】
ステップS110では、オーバー印刷を行う用紙を、スキャナー装置20の給紙トレイ25にセットし用紙の記載情報を読み取る。具体的には、用紙を給紙トレイ25にセットした後、操作部15の操作メニューの中からオーバー印刷の初期読み取りボタンを操作する。これにより、用紙の記載情報がビットマップ化された初期画像データが読み取られる。この工程を第1読取工程という。なお、用紙の記載情報は黒色であるものとして説明する。
【0019】
ステップS120では、初期画像データを2値化し、文字部分を抽出する。まず、初期画像データを2値化する。2値化処理における閾値は、用紙の最外縁における外周ドットの平均値を紙の基材色としてオフセットを掛けて、例えば、220階調(8ビット)とする。具体的には、元データの階調が220階調以上であれば白(255階調)とし、220未満であれば黒(0階調)で2値化する。なお、この階調に限定するものではなく、用紙の紙質や、色調に応じて、適宜、閾値を決めれば良い。2値化することにより、閾値より小さい階調のノイズとなる薄い画素データが消去される。続いて、OCR部24により2値化した画像データにおける文字領域を抽出し、第2画像データとして記憶する。
【0020】
ステップS130では、第2画像データに基づき重ね印刷パターンを生成する。この工程を、パターン生成工程ともいう。
図4に示す画像データ61は、第2画像データであり、「EP」という文字が縦に並んでいる。文字部分は黒(階調0)で、背景部分は白(階調1)で示されている。重ね印刷パターンは、対象の画素を中心にして、例えば、5mm相当のカーネルで膨張させて作成する。その一例が、
図4に示す補正データ62である。補正データ62では、膨張させる対象の画素3を中心にして、その周囲に2つずつの画素を配置している。この補正データ62は、画素3を中心にする5行×5列の領域の画素を全て黒とする補正データである。例えば、「EP」のEの右上の画素3に対して補正データ62を適用すると、画像データ63に示すように、その周囲の画素も黒となる。なお、補正データ62に限定するものではなく、膨張範囲は、文字の判読ができなくなる範囲で設定すれば良い。
図4に示す画像データ63は、重ね印刷パターンの一例であり、「EP」を構成する全ての画素に対して補正データ62による膨張処理を施した状態を示している。画像データ63では、文字が判読できなくなっているのが解る。画像データ63は、記憶部12に記憶される。
【0021】
図5に示す画像データ65は、異なる事例の第2画像データであり、「OS」という文字が縦に並んでいる。この画像データ65を、補正データ62により膨張させたパターンが、画像データ66である。「OS」のOの右上の画素5に対して補正データ62を適用すると、その周囲の画素も黒となる。
画像データ66は、重ね印刷パターンの一例であり、「OS」を構成する全ての画素に対して補正データ62による膨張処理を施した状態を示している。画像データ66においても、文字が判読できなくなっているのが解る。画像データ66は、記憶部12に記憶される。換言すれば、スキャナー装置20は、OCR部24を有し、第1読取工程では、OCR部24により文字認識された文字領域を抽出し、制御装置10は、文字領域に対応する重ね印刷パターンを生成する。
【0022】
ステップS140では、用紙に重ね印刷パターンを印刷する。この工程を、印刷工程ともいう。具体的には、用紙を用紙カセット35にセットし、操作部15の操作メニューの中からオーバー印刷の印刷ボタンを操作する。なお、用紙をセットする際には、用紙を初期読み取り時と同じ順番に重ねた状態でセットする。これにより、オーバー印刷された用紙が、排紙トレイ36に排紙される。
【0023】
ステップS150では、オーバー印刷された用紙を、再度、読み取る。この工程を第2読取工程ともいう。具体的には、オーバー印刷された用紙を給紙トレイ25にセットした後、操作部15の操作メニューの中からオーバー印刷の確認読み取りボタンを操作する。なお、用紙をセットする際には、用紙を初期読み取り時と同じ順番に重ねた状態でセットする。これにより、オーバー印刷後の確認用の画像データが読み取られる。
【0024】
ステップS160では、確認用の画像データと、記憶部12に記憶された重ね印刷パターンとを照合して、オーバー印刷による隠匿度合いを判定する。この工程を隠匿度合い判定工程ともいう。重ね印刷パターンが確認できた場合は、隠匿性は確保されていると判定し、処理を終了する。重ね印刷パターンが確認できなかった場合は、隠匿性が不十分と判定し、ステップS110に戻る。なお、用紙の位置ずれを考慮して、重ね印刷パターンをズラして照合しても良い。換言すれば、この工程では、スキャナー装置20による重畳印刷の読み取り結果に基づき、隠匿度合いを判定する。
【0025】
換言すれば、オーバー印刷の印刷方法は、用紙の記載情報をスキャナー装置20で読み取る第1読取工程と、読み取った記載情報を隠匿するための重ね印刷パターンを生成するパターン生成工程と、生成された重ね印刷パターンを印刷する印刷工程と、記載情報の上に、重ね印刷パターンが重畳印刷された用紙をスキャナー装置20で読み取る第2読取工程と、を含む。
また、画像形成装置としての複合装置200は、スキャナー装置20により用紙の記載情報を読み取り、制御装置10は、読み取った記載情報を隠匿するための重ね印刷パターンを生成し、印刷装置30により、生成された重ね印刷パターンを、用紙の記載情報に重ねて印刷し、スキャナー装置20により記載情報の上に重ね印刷パターンが重畳印刷された用紙を読み取る。そして、隠匿度合いの判定工程では、制御装置10は、第2読取工程における重畳印刷の読み取り結果に基づき、隠匿度合いを判定する。
【0026】
以上、述べた通り、本実施形態の画像形成装置としての複合装置200、オーバー印刷の印刷方法によれば、以下の効果を得ることができる。
画像形成装置としての複合装置200による印刷方法は、用紙の記載情報をスキャナー装置20で読み取る第1読取工程と、読み取った記載情報を隠匿するための重ね印刷パターンを生成するパターン生成工程と、生成された重ね印刷パターンを印刷する印刷工程と、記載情報の上に、重ね印刷パターンが重畳印刷された用紙をスキャナー装置20で読み取る第2読取工程と、を含む。
【0027】
この方法によれば、重ね印刷パターンを用紙の記載情報に重ねて印刷した後、再度、スキャナー装置20により記載情報の上に重ね印刷パターンが重畳印刷された用紙を読み取ることにより、隠匿度合いの確認を行うことができる。
よって、重ね印刷用画像による隠匿印刷後、隠匿度合いの確認が行われていなかった従来技術と異なり、隠匿度合いの確認を行うことにより、セキュリティーリスクを低減することができる。
従って、オーバー印刷を確実に行うことができ、機密情報の流出を防止可能な複合装置による印刷方法を提供することができる。
【0028】
また、スキャナー装置20は、OCR部24を有し、第1読取工程では、OCR部24により文字認識された文字領域を抽出し、パターン生成工程では、文字領域に対応する重ね印刷パターンを生成する。
これによれば、機密性が高い文字領域に絞った重ね印刷パターンが生成されるため、印刷面積を少なくすることができ、インクの消費量を低減できる。
【0029】
また、複合装置200による印刷方法は、第2読取工程における重畳印刷の読み取り結果に基づき、隠匿度合いを判定する工程を、さらに含む。
これによれば、隠匿度合いの確認を行うことにより、機密情報の流出を防止することができる。
【0030】
また、画像形成装置としての複合装置200は、用紙の記載情報を読み取るスキャナー装置20と、用紙に印刷パターンを印刷する印刷部としての印刷装置30と、制御部としての制御装置10とを備え、スキャナー装置20により用紙の記載情報を読み取り、制御装置10は、読み取った記載情報を隠匿するための重ね印刷パターンを生成し、印刷装置30により、生成された重ね印刷パターンを用紙の記載情報に重ねて印刷し、スキャナー装置20により記載情報の上に重ね印刷パターンが重畳印刷された用紙を読み取る。
【0031】
この複合装置200によれば、重ね印刷パターンを用紙の記載情報に重ねて印刷した後、再度、スキャナー装置20により記載情報の上に重ね印刷パターンが重畳印刷された用紙を読み取ることにより、隠匿度合いの確認を行うことができる。
よって、重ね印刷用画像による隠匿印刷後、隠匿度合いの確認が行われていなかった従来技術と異なり、隠匿度合いの確認を行うことにより、セキュリティーリスクを低減することができる。
従って、オーバー印刷を確実に行うことができ、機密情報の流出を防止可能な複合装置200を提供することができる。
【0032】
また、スキャナー装置20は、OCR部24を有し、用紙の記載情報を読み取る際には、OCR部24により文字認識された文字領域を抽出し、制御装置10は、文字領域に対応する重ね印刷パターンを生成する。
これによれば、機密性が高い文字領域に絞った重ね印刷パターンが生成されるため、印刷面積を少なくすることができ、インクの消費量を低減できる。
【0033】
また、制御装置10は、スキャナー装置20による重畳印刷の読み取り結果に基づき、隠匿度合いを判定する。
これによれば、隠匿度合いの確認を行うことにより、機密情報の流出を防止することができる。
【0034】
実施形態2
***異なる重ね印刷パターン***
図6は、実施形態2に係るオーバー印刷の印刷方法の流れを示すフローチャート図であり、
図3に対応している。
図7は、重ね印刷パターンの一例を示す図である。
図8は、異なる印刷パターンの一例を示す図であり、
図7に対応している。
上記実施形態では、重ね印刷パターンを、第2画像データに基づき個別に生成するものとして説明したが、これに限定するものではなく、第2画像データに拘わらず、定型パターンによる重ね印刷パターンを用いても良い。以下、上記実施形態と同じ部位には、同じ付番を付し、重複する説明は省略する。
【0035】
まず、
図6において
図3と異なる処理工程は、ステップS131の重ね印刷パターン選択工程のみである。その他の処理工程は、
図3での説明と同じである。
ステップS131では、ユーザーにより重ね印刷パターンが選択される。具体的には、操作部15のオーバー印刷の重ね印刷パターンリストの中からユーザーにより所定の重ね印刷パターンが選択され、例えば、
図7に示すの重ね印刷パターン71が選択される。なお、記憶部12には、重ね印刷パターン71を含む隠匿レベルに応じた複数の重ね印刷パターンが予め記憶されている。また、本実施形態の印刷方法では、定型パターンの重ね印刷パターンを用いるため、ステップS110の第1読取工程と、ステップS120の2値化、OCR処理工程は必須ではなく、省略しても良い。これによれば、効率良くオーバー印刷を行うことができる。
【0036】
図7に示す重ね印刷パターン71は、黒色の長方形と、白色の長方形とが交互に配置された市松模様の画像データである。塗り潰し部分が黒で、印刷しない部分が白となる。
図7では、比較のため用紙8の一部の記載情報を重ね印刷パターン71から露出させた状態としており、重ね印刷パターン71に重なる部分の記載情報の文字は判読できなくなっていることが解る。
【0037】
また、
図8に示す重ね印刷パターン72を用いても良い。重ね印刷パターン72は、黒色の正方形と、白色の正方形とが交互に配置された市松模様の画像データである。
なお、市松模様に限定するものではなく、記載情報を隠匿可能な重ね印刷パターンであれば良く、例えば、記載情報とは関係がない文字情報を用いた重ね印刷パターンであっても良い。例えば、「ABCDE」という文字列を繰り返す重ね印刷パターンであっても良いし、日本語や、中国語などの各国言語の文字や、数字を用いても良い。また、これらの文字列を傾けて配置しても良い。
【0038】
以上、述べた通り、本実施形態の画像形成装置としての複合装置200、オーバー印刷の印刷方法によれば、上記実施形態での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
複合装置200は、隠匿レベルに応じた複数の重ね印刷パターンを記憶する記憶部12を、さらに備え、制御装置10は、複数の重ね印刷パターンのうち、いずれか1つを選択し、選択された重ね印刷パターンを用いて、重畳印刷を行う。
【0039】
好適例では、重ね印刷パターンはユーザーの操作部15への操作内容に基づき、制御装置10により選択実行される。よって、用紙の記載情報の機密度に応じて、最適な隠匿レベルの重ね印刷パターンを選択することができる。
さらに、定型パターンの重ね印刷パターンを用いるため、ステップS110の第1読取工程と、ステップS120の2値化、OCR処理工程は必須ではなく、省略しても良い。よって、効率良くオーバー印刷を行うことができる。
従って、オーバー印刷を確実に行うことができ、機密情報の流出を防止可能な複合装置200を提供することができる。
【0040】
***変形例***
上記では、オーバー印刷により機密情報の流出を防ぐ印刷方法について説明した。機密情報の流出防止技術としてはシュレッダーを用いて用紙を細断する技術(細断方法)も知られている。ここでは、両技術を比較してオーバー印刷による印刷方法の有益性について説明する。まず、細断方法では、特許文献1のように用紙の裏面を利用することはできない。他方、オーバー印刷方法によれば、用紙の裏面を有効活用することができる。
【0041】
次に、古紙を再生する場合について考察する。
使用済みの用紙を乾式で解繊して繊維化した後、加圧、加熱、切断することによって、新しい紙を製造する乾式再生技術の場合、細断方法よりも、オーバー印刷方法の方が好適である。詳しくは、乾式再生技術の原料としては、50枚重ねの用紙を10mm×50mm程度に裁断したバルク片が好適である。これは、再生紙として必要なパルプの繊維長3~7mmを確保するのと、製造効率を高めるためである。さらに、再生装置までの運搬を考えた場合、用紙を重ねて箱詰めした状態での運搬ができるため、運搬効率が良い。
【0042】
これに対して細断方法では、まず、10mm×50mm程度のサイズでは、記載情報の隠匿性が不十分となってしまう。また、細かくし過ぎると、必要なパルプの繊維長を確保できない。さらに、通常のシュレッダーでは、50枚重ねの裁断は困難であり、小片化してしまう。小片化した場合、再生装置までの運搬を考えた場合、体積が膨大化してしまうため運搬効率が悪い。
このように、上記のオーバー印刷により機密情報の流出を防ぐ印刷方法は、用紙の裏面利用だけでなく、乾式再生技術により古紙を再生する場合においても極めて有益である。
【0043】
また、上記各実施形態では、オーバー印刷の色調は、黒色として説明したが、これに限定するものではなく、他の色調でオーバー印刷しても良い。再生紙ではなく、例えば、机上に置く仕切り板のようなリサイクル製品の材料を作成する場合、オーバー印刷の色調を、当該材料の色と同じ色とすることにより、ベースとなる着色を行うことができる。
【符号の説明】
【0044】
3…画素、5…画素、8…用紙、10…制御装置、11…制御部、12…記憶部、15…操作部、16…インターフェイス部、20…スキャナー装置、21…読取エンジン部、22…A/D変換部、23…画像解析部、24…OCR部、25…給紙トレイ、26…排紙トレイ、30…印刷装置、31…印刷データ生成部、32…印刷エンジン部、35…用紙カセット、36…排紙トレイ、61…画像データ、62…補正データ、63…画像データ、65…画像データ、66…画像データ、70…バスライン、71…重ね印刷パターン、72…重ね印刷パターン、200…複合装置。