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特開2024-113318自動車給電スタンド用トラフ構造体、ワイヤレス給電用装置、自動車給電用装置による自動車への給電方法、自動車給電スタンド用トラフ構造体の敷設方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113318
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】自動車給電スタンド用トラフ構造体、ワイヤレス給電用装置、自動車給電用装置による自動車への給電方法、自動車給電スタンド用トラフ構造体の敷設方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 9/04 20060101AFI20240815BHJP
   H02G 9/06 20060101ALI20240815BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20240815BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240815BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20240815BHJP
   B60L 53/30 20190101ALI20240815BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20240815BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
H02G9/04
H02G9/06
H02G1/06
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J50/12
B60L53/30
B60L53/12
B60M7/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018205
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】501314396
【氏名又は名称】古河樹脂加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】山本 清旭
(72)【発明者】
【氏名】泉水 誠
【テーマコード(参考)】
5G352
5G369
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G352CG01
5G352CG03
5G369AA01
5G369BA03
5G369DB03
5G369DB05
5G369DB06
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA06
5G503GB08
5H125AA01
5H125AC25
5H125AC26
5H125FF15
(57)【要約】
【課題】 自動車用の給電装置において、高い放熱性と電磁遮蔽性能を有する、内部に給電ケーブルが収容される自動車給電スタンド用トラフ構造体等を提供する。
【解決手段】 ケーブルトラフ3は、トラフ本体3aとトラフ蓋3bからなる。トラフ本体3aは、底部7と底部7の両側の側面部9からなる略コの字型である。トラフ本体3aは、内部には、セパレータ11が収容される。セパレータ11は、トラフ本体3aの内部を上下に区画する水平方向の水平仕切り板21とこれを支持する垂直仕切り板とを有する。給電用ケーブルがセパレータで区画されたいずれかの空間に配置される。トラフ本体3aの内周面は、金属板19によって被覆されるか、セパレータ11の少なくとも表面が金属部材により構成されているかの少なくともいずれかを満足することで、トラフ本体3aとセパレータ11のいずれかの金属部材が、放熱部材及び電磁遮蔽部材として機能する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と両側面部からなる略コの字型のトラフ本体と、トラフ蓋と、からなるケーブルトラフと、
前記トラフ本体の内部を上下に区画する水平方向の水平仕切り板とこれを支持する垂直仕切り板とを有し、前記ケーブルトラフ内を複数の空間に仕切るセパレータと、
給電用ケーブルと、
を備える自動車給電スタンド用トラフ構造体であって、
前記給電用ケーブルが前記セパレータで区画されたいずれかの空間に配置され、
前記トラフ本体の内周面が、放熱部材及び電磁遮蔽部材として金属板により被覆されているか、及び/または前記セパレータの少なくとも表面が放熱部材及び電磁遮蔽部材として金属部材により構成されているかであり、
さらに、前記トラフ本体の両側面部の上面に前記トラフ蓋が被冠され、
前記トラフ蓋がトラフ蓋固定部材で前記トラフ本体に固定されていることを特徴とする自動車給電スタンド用トラフ構造体。
【請求項2】
前記トラフ本体には、ワイヤレス給電用コイルが内装され、前記ワイヤレス給電用コイルが前記トラフ本体の内部の前記水平仕切り板の上側の空間に配置され、前記給電用ケーブルは、少なくとも前記セパレータの下側の空間に配置されることを特徴とする請求項1記載の自動車給電スタンド用トラフ構造体。
【請求項3】
ガイドセンサー用の誘導線またはケーブルが、前記トラフ蓋の幅方向の中心に対して対称に、前記トラフ蓋の内部の表面近傍にインサート成形により配置されているか、あるいは前記トラフ蓋の両側部における段部に配置された前記ガイドセンサー用の誘導線またはケーブルがカバー部材で保護されているか、あるいは前記トラフ蓋の上部がコンクリート又はアスファルトで覆われており、前記トラフ蓋の上部を覆うコンクリート又はアスファルトの内部に前記ガイドセンサー用の誘導線またはケーブルが埋め込まれていることを特徴する請求項1記載の自動車給電スタンド用トラフ構造体。
【請求項4】
前記トラフ本体には、情報の交換用としてコントロールケーブルが配置され、
前記給電用ケーブルは高周波ケーブルであり、前記コントロールケーブルは、ツイストケーブル又は高周波ケーブルであることを特徴とする請求項1に記載の自動車給電スタンド用トラフ構造体。
【請求項5】
前記ワイヤレス給電用コイルは、円形コイル又はDDコイルであり、リッツ線、又は自己融着リッツ線のいずれかからなることを特徴とする請求項2記載の自動車給電スタンド用トラフ構造体。
【請求項6】
前記ワイヤレス給電用コイルは、ケース部材に収納され、
前記ケース部材は、高透磁率かつ低導電率の電磁誘導材料で形成された磁性コア材であって、フェライト系の焼結部材、Ni-Zn又はMn-Zn材料で形成されたものであり、
前記ケース部材は平板上の底部と外周部側面が一体に形成された箱型のトレイ形状を有するか、あるいは、前記ケース部材はトレイ形状の中心部に側面と同方向に突出する側面と略同等の高さの突出部を有するかのいずれかの構造を有し、
前記ワイヤレス給電用コイルが前記ケース部材の中心部を囲うように前記ケース部材に収納されていることを特徴とする請求項2に記載の自動車給電スタンド用トラフ構造体。
【請求項7】
前記ワイヤレス給電用コイルが収納された前記ケース部材の外周部側面の上面及び前記突出部の上面を含むように、樹脂製カバーで前記ケース部材の上面全体が覆われ、前記ケース部材と前記樹脂製カバーの界面が接着剤で固定されるか、あるいは前記ワイヤレス給電用コイルが収納された前記ケース部材の外周面全体が樹脂製カバー部材に収納被覆されていることを特徴とする請求項6記載の自動車給電スタンド用トラフ構造体。
【請求項8】
前記ワイヤレス給電用コイルが収納された前記ケース部材の外周部側面の上面及び前記突出部の上面と、前記トラフ蓋の裏面とを対向させて当接させ、前記ケース部材の外周部側面の上面と前記トラフ蓋の当接面及び/またはその当接面の外周部をモルタル又はパテで止水するか、あるいは、前記ワイヤレス給電用コイルが収納された前記ケース部材の外周部側面の上面及び前記突出部の上面と、前記トラフ蓋の裏面とを対向させて当接させ、前記ワイヤレス給電用コイルがコイル形状を維持したまま樹脂材料あるいはグリースで封止されることで止水するかのいずれかであることを特徴とする請求項6記載の自動車給電スタンド用トラフ構造体。
【請求項9】
前記ワイヤレス給電用コイルが、前記水平仕切り板の上部に直接配置されることを特徴とする請求項2記載の自動車給電スタンド用トラフ構造体。
【請求項10】
前記セパレータは、前記水平仕切り板の所定位置から複数の垂直仕切り板が下方に向けて立設されて前記水平仕切り板の下側に複数の独立した収納空間が形成されている構造か、前記水平仕切り板の両端部を含む所定位置から複数の垂直仕切り板が下方に向けて立設されて前記水平仕切り板の下側に複数の独立した収納空間が形成されている構造か、2枚の上下に対向する平行な前記水平仕切り板を繋いで仕切る垂直仕切り板が、平行な前記水平仕切り板の両端部を含む所定位置から複数本垂直方向に向けて立設されて、前記垂直仕切り板により、ハモニカ形状の収納用の閉空間が形成されている構造かのいずれかであり、前記セパレータのいずれかの下部構造の収納空間に、少なくとも前記給電用ケーブルが配置されることを特徴とする請求項1記載の自動車給電スタンド用トラフ構造体。
【請求項11】
前記セパレータの前記水平仕切り板より上方の空間が、上方に向けて立設された垂直仕切り板により複数の空間に仕切られている上部構造を有することを特徴とする請求項10記載の自動車給電スタンド用トラフ構造体。
【請求項12】
前記トラフ本体の内周面が金属板により被覆されている場合には、前記セパレータは、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、鉄、又はステンレスのいずれかの金属製であるか、またはその表面が前記いずれかの金属により被覆されているか、あるいは前記セパレータが合成樹脂製であるかのいずれかであり、
前記トラフ本体の内周面が金属板により被覆されていない場合には、前記セパレータは、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、鉄、又はステンレスのいずれかの金属製であるか、またはその表面が前記いずれかの金属により被覆されているかのいずれかであることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の自動車給電スタンド用トラフ構造体。
【請求項13】
前記水平仕切り板の上部空間の中央部に、前記ワイヤレス給電用コイルが配置されることを特徴とする請求項2記載の自動車給電スタンド用トラフ構造体。
【請求項14】
前記トラフ本体の内周面が金属板により被覆されている場合、前記金属板は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、又は銅合金のいずれかからなり、前記トラフ本体の内周面に沿ってインサート成形されているか、あるいは前記金属板が前記トラフ本体の内周面に沿って折り曲げ加工された成形体として配置されているかのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の自動車給電スタンド用トラフ構造体。
【請求項15】
前記トラフ本体の長手方向の両端部近傍にそれぞれ止水板が設けられ、さらに前記止水板の少なくとも一方には前記給電用ケーブルを挿通するための挿通孔が設けられていて、前記止水板と前記トラフ本体及び前記挿通孔と前記給電用ケーブルとの隙間が、防水パテ、シリコン樹脂、ゴム、エポキシ樹脂または水膨張性不織布の少なくともいずれかにより止水される止水構造を有していることを特徴とする請求項1記載の自動車給電スタンド用トラフ構造体。
【請求項16】
前記トラフ本体の少なくとも両側の内側面には、前記止水板を固定する溝または所定間隔の平行な縦リブが垂直方向に形成され、前記溝または前記縦リブの間に前記止水板が挿入されて固定され、前記溝または前記縦リブと前記止水板の隙間が、防水パテ、シリコン樹脂、ゴム、エポキシ樹脂または水膨張性不織布の少なくともいずれかにより止水されることを特徴とする請求項15に記載の自動車給電スタンド用トラフ構造体。
【請求項17】
複数の前記トラフ本体同士が連結され、前記トラフ本体同士の連結部の隙間が、防水パテ、シリコン樹脂、ゴム、エポキシ樹脂または水膨張性不織布の少なくともいずれかによって止水される止水構造を有することを特徴とする請求項1記載の自動車給電スタンド用トラフ構造体。
【請求項18】
底部と両側面部からなる略コの字型のトラフ本体とトラフ蓋とからなるケーブルトラフと、
ワイヤレス給電用コイルと、
前記ワイヤレス給電用コイルと接続される給電用ケーブルと、
前記ワイヤレス給電用コイルが収容されるケース部材と、
前記トラフ本体の内部を上下に区画する水平仕切り板を有するセパレータと、
を備えるトラフ構造体を用いたワイヤレス給電スタンド用のワイヤレス給電装置であって、
前記給電用ケーブルは、前記水平仕切り板の下側の空間に配置され、
前記ワイヤレス給電用コイルが前記ケース部材の内部に収納され、
前記トラフ本体の内周面は、前記トラフ本体の内周面に沿って連続するように放熱部材及び電磁遮蔽部材としての金属板により被覆されていて、
前記ワイヤレス給電用コイルが収納された前記ケース部材が前記セパレータの上側の空間に配置され、前記ケース部材は前記セパレータの上面により支持され、
前記給電用ケーブルは、電源装置に接続されており、
前記トラフ本体の両側面部の上面に前記トラフ蓋が被冠され、前記トラフ蓋がトラフ蓋固定部材で前記トラフ本体へ固定されていることを特徴とするワイヤレス給電用装置。
【請求項19】
車を停車するための方向を案内するガイドセンサー用の誘導線またはケーブルが、前記トラフ蓋の幅方向の中心に対して対称な所定位置に、前記トラフ蓋の内部にインサート成形により配置されていることを特徴とする請求項18に記載のワイヤレス給電用装置。
【請求項20】
前記トラフ構造体の前記トラフ蓋の上面が、アスファルト、コンクリート、又は繊維補強コンクリートの少なくともいずれかの材料で被覆されていることを特徴とする請求項18記載のワイヤレス給電用装置。
【請求項21】
請求項18から請求項20のいずれかに記載のワイヤレス給電スタンド用装置を駐車場に設置して、駐車中に自動車に給電を行うことを特徴とする自動車給電用装置による自動車への給電方法。
【請求項22】
請求項18から請求項20のいずれかに記載のワイヤレス給電スタンド用装置において、
前記トラフ蓋の上面が、路面に露出して配置され、隣接する路面と前記トラフ蓋の表面が連続した表面構造を形成することを特徴とする自動車給電スタンド用トラフ構造体の敷設方法。
【請求項23】
請求項18から請求項20のいずれかに記載のワイヤレス給電スタンド用装置において、
前記トラフ蓋の上面が、アスファルト、コンクリート、又は繊維補強コンクリートの少なくともいずれかの路面舗装用材料で被覆されていることで、周囲の路面と略連続した平面または曲面を形成することが可能であることを特徴とする自動車給電スタンド用トラフ構造体の敷設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車給電スタンドにおいて、内部に給電ケーブルが収容される自動車給電スタンド用トラフ構造体、ワイヤレス給電用装置、及びこれを用いた自動車給電用装置による自動車への給電方法、自動車給電スタンド用トラフ構造体の敷設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車用の充電スタンドでは、電気自動車とのプラグ接続により充電を行うワイヤ給電装置により給電を行う方法が主流である。この場合、ワイヤ給電装置は充電時間の短縮が課題になっており、時間短縮のための大電流化を図る必要がある。
【0003】
このような電気自動車用のワイヤ給電装置は、電気自動車の種類により給電電流、給電電圧が異なっており、必要な電圧・電流を自動車側からコントロールする必要が有る。このため、商用電源(交流電源)を直流変換後にインバーターを使って、必要な電圧・電流を出力する仕組みになっている。
【0004】
しかし、これら大電流化と直流交流変換は、一方で大量の熱発生と高周波ノイズを発生させることとなる。また、入力側の電源供給用ケーブル側にも同様な課題を発生させることとなり、熱対策と高周波ノイズ対策が必要とされる。このため、従来の充電スタンドには、電源供給用のケーブルやコントロールケーブル等のそれぞれに対して個別に放熱性や電磁遮蔽特性を考慮した設計とする必要があった。
【0005】
一方、最近では、ワイヤレス給電による方法が検討されており、駐車場などに配置したワイヤレス給電ユニットに電源装置を接続して給電を行う方法や、ワイヤレス給電ユニットを地中埋設する方法などが提案されている(特許文献1~特許文献5)。
【0006】
特許文献1に記載された車両用ワイヤレス給電装置では、外部から受電して所定周波数の電力を出力する送電回路と、送電回路から入力した所定周波数の電力をワイヤレスで送電する送電カプラーとを備える送電部が地面に設けられる。また、送電カプラーからワイヤレスで所定周波数の電力を受電する受電カプラーと、受電カプラーから所定周波数の電力を入力して直流に変換する受電回路とを備える受電部が車両に搭載されている。
【0007】
特許文献1のワイヤレス給電装置を用いれば、地面に設置された送電カプラーから車両底部に設置された受電カプラーへのワイヤレス給電が、電界共鳴方式を用いて行われる。このように、電界共鳴方式でワイヤレス電力伝送を行うことにより、位置ずれによる伝送効率の低下を抑制したワイヤレス給電を行うことができる。
【0008】
また、特許文献2に記載れた給電導体の埋設構造及び非接触型給電走行路は、絶縁性の素材からなる基体側部材と、所定間隔で左右に並べて配置される第一導体及び第二導体と、誘電損失の少ない素材からなる表面部材と、を備える。基体側部材は、アスファルト材料又はセメント系材料にセラミックス等の比誘電率又は誘電正接又はその両方が一般骨材よりも低い物質を混入させた素材からなる。第一導体及び第二導体は、基体側部材及び表面部材のいずれか一方又は両方にわたって埋設され、基体側部材又は表面部材により周囲が覆われる。
【0009】
特許文献2の給電導体の埋設構造及び非接触型給電走行路を用いれば、電流リークに伴う効率低下が抑制されると共に、伝播損失が低減され、高い給電効率でのワイヤレス給電を行うことができる。
【0010】
また、特許文献3に記載れた無線給電システムでは、移動体が駐車又は停車中に移動体の車輪と接触する車輪止めブロックに送電コイルが収容される。このため、送電コイルと受電コイルとの間の空間に障害物が入り込むおそれを低減させることができ、無線給電における給電効率を向上させることができる。
【0011】
このように、特許文献3の無線給電システム、送電装置、及び車輪止めブロックを用いれば、移動体に対して無線で電力を供給する無線給電技術の有用性を向上させることが可能となる。
【0012】
また、特許文献4に記載されたワイヤレス給電路盤は、路面よりも下方に設けられ、路面の幅方向に対して間隔を開けて配置された複数の送電電極と、送電電極の下側に配置される上層路盤と、上層路盤を下方から支持する路盤支持部と、路盤支持部の下側に配置され上下に水を通す開口と、導電性材料から形成されたグランド材からなる。また、路盤支持部は、グランド材に対して上方に間隔を開けて配置され、上層路盤を下方から支持する路盤支持体と、路盤支持体の上方から下方に水を通す第一通水部と、路盤支持体とグランド材との間に第一空間を形成する第一支持脚とを備える。
【0013】
特許文献4のワイヤレス給電路盤を用いれば、ワイヤレス給電装置を屋外に設置した場合であっても、含水量の増加に起因する給電性能の低下を抑えてワイヤレス給電を行うことが可能になる。
【0014】
また、特許文献5に記載された車両用ワイヤレス給電システムは、車両の走行路の走行面を形成する路面形成部材と、走行面よりも下方に設けられ、車両にワイヤレスで給電する送電電極と、路面形成部材に埋設された内部に電気機器が収容可能な中空状の収容ボックスと、貫通電極部材を介して収容ボックス内の電気機器と前記送電電極とを接続する電極配線とからなる。
【0015】
特許文献5に記載の車両用ワイヤレス給電システムを用いれば、ボックス本体の内外で配線を電気的に接続し、内部への水の浸入を確実に抑え、施工の容易化と、短工期化を図る貫通電極部材と収容ボックス及びこれらを備える車両用ワイヤレス給電システムを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2014-150648号公報
【特許文献2】特開2017-163798号公報
【特許文献3】特開2021-061727号公報
【特許文献4】特開2021-193239号公報
【特許文献5】特開2022-121803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述したように、駐車場などに配置したワイヤレス給電ユニットに電源装置を接続して給電を行う従来の方法は、ワイヤレス給電ユニットが地上に露出して配置されているので、給電ユニットを破損する恐れがある。一方、給電ユニットを地中移設する方法では、給電ユニットを破損する可能性がないが、故障時に地面を掘り起こしたりする必要がある。
【0018】
また、特許文献1~5はいずれも、ワイヤレス給電の送電側コイルと受電側コイル間での送電効率と安定性に関するものであって、前述したような送受電コイル間および、電源供給用ケーブル側における熱対策と高周波ノイズ対策が考慮されたものではない。このため、高い放熱性や電磁遮蔽性能を有する給電用装置が望まれる。
【0019】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、自動車用の給電装置において、高い放熱性と電磁遮蔽性能を有する、内部に給電ケーブルが収容される自動車給電スタンド用トラフ構造体、ワイヤレス給電用装置、及びこれを用いた自動車給電用装置による自動車への給電方法、自動車給電スタンド用トラフ構造体の敷設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、底部と両側面部からなる略コの字型のトラフ本体と、トラフ蓋と、からなるケーブルトラフと、前記トラフ本体の内部を上下に区画する水平方向の水平仕切り板とこれを支持する垂直仕切り板とを有し、前記ケーブルトラフ内を複数の空間に仕切るセパレータと、給電用ケーブルと、を備える自動車給電スタンド用トラフ構造体であって、前記給電用ケーブルが前記セパレータで区画されたいずれかの空間に配置され、前記トラフ本体の内周面が、放熱部材及び電磁遮蔽部材として金属板により被覆されているか、及び/または前記セパレータの少なくとも表面が放熱部材及び電磁遮蔽部材として金属部材により構成されているかであり、さらに、前記トラフ本体の両側面部の上面に前記トラフ蓋が被冠され、前記トラフ蓋がトラフ蓋固定部材で前記トラフ本体に固定されていることを特徴とする自動車給電スタンド用トラフ構造体である。
【0021】
つまり、トラフ本体の内周面が金属板により被覆されていてもよいし、セパレータの少なくとも表面が金属部材により構成されているかのいずれかであってもよいが、もちろんトラフ本体の内周面が金属板により被覆されていると同時にセパレータの少なくとも表面が金属部材により構成されていてもよい。ここで、トラフ本体の内周面が金属板により被覆されている場合には、セパレータの少なくとも表面が金属部材により構成されている必要なく、例えば樹脂製でも良く、トラフ本体の内周面が金属板により被覆されていない場合には、セパレータの少なくとも表面が金属部材により構成されている必要がある。
【0022】
前記トラフ本体には、ワイヤレス給電用コイルが内装され、前記ワイヤレス給電用コイルが前記トラフ本体の内部の前記水平仕切り板の上側の空間に配置され、前記給電用ケーブルは、少なくとも前記セパレータの下側の空間に配置されてもよい。
【0023】
ガイドセンサー用の誘導線またはケーブルが、前記トラフ蓋の幅方向の中心に対して対称に、前記トラフ蓋の内部の表面近傍にインサート成形により配置されているか、あるいは前記トラフ蓋の両側部における段部に配置された前記ガイドセンサー用の誘導線またはケーブルがカバー部材で保護されているか、あるいは前記トラフ蓋の上部がコンクリート又はアスファルトで覆われており、前記トラフ蓋の上部を覆うコンクリート又はアスファルトの内部に前記ガイドセンサー用の誘導線またはケーブルが埋め込まれてもよい。
【0024】
前記トラフ本体には、情報の交換用としてコントロールケーブルが配置され、前記給電用ケーブルは高周波ケーブルであり、前記コントロールケーブルは、ツイストケーブル又は高周波ケーブルであってもよい。
【0025】
前記ワイヤレス給電用コイルは、円形コイル又はDDコイルであり、リッツ線、又は自己融着リッツ線のいずれかからなってもよい。
【0026】
前記ワイヤレス給電用コイルは、ケース部材に収納され、前記ケース部材は、高透磁率かつ低導電率の電磁誘導材料で形成された磁性コア材であって、フェライト系の焼結部材、Ni-Zn又はMn-Zn材料で形成されたものであり、前記ケース部材は平板上の底部と外周部側面が一体に形成された箱型のトレイ形状を有するか、あるいは、前記ケース部材はトレイ形状の中心部に側面と同方向に突出する側面と略同等の高さの突出部を有するかのいずれかの構造を有し、前記ワイヤレス給電用コイルが前記ケース部材の中心部を囲うように前記ケース部材に収納されてもよい。
【0027】
前記ワイヤレス給電用コイルが収納された前記ケース部材の外周部側面の上面及び前記突出部の上面を含むように、樹脂製カバーで前記ケース部材の上面全体が覆われ、前記ケース部材と前記樹脂製カバーの界面が接着剤で固定されるか、あるいは前記ワイヤレス給電用コイルが収納された前記ケース部材の外周面全体が樹脂製カバー部材に収納被覆されてもよい。ここで、樹脂材料は、一般に比誘電率が低いことから電磁波透過性に優れカバー部材に適し、熱可塑樹脂も、熱硬化樹脂のいずれも用いることができる。実際に使用する樹脂は、樹脂の比誘電率や強度などを考慮して適宜選択することができる。
【0028】
前記ワイヤレス給電用コイルが収納された前記ケース部材の外周部側面の上面及び前記突出部の上面と、前記トラフ蓋の裏面とを対向させて当接させ、前記ケース部材の外周部側面の上面と前記トラフ蓋の当接面及び/またはその当接面の外周部をモルタル又はパテで止水するか、あるいは、前記ワイヤレス給電用コイルが収納された前記ケース部材の外周部側面の上面及び前記突出部の上面と、前記トラフ蓋の裏面とを対向させて当接させ、前記ワイヤレス給電用コイルがコイル形状を維持したまま樹脂材料あるいはグリースで封止されることで止水するかのいずれかであってもよい。
【0029】
コイルを封止する樹脂材料としては、例えば、樹脂製接着剤や熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を使用することができる。熱硬化樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ビニルエステル樹脂、マレイミド樹脂及び熱硬化アクリル樹脂等を用いることができる。また、熱硬化樹脂の代わりにポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、PET樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネイト樹脂などの熱可塑樹脂を用いることもできる。これらの樹脂にゴム成分を混ぜたものも用いることもできる。
【0030】
前記ワイヤレス給電用コイルが、前記水平仕切り板の上部に直接配置されてもよい。
【0031】
前記セパレータは、前記水平仕切り板の所定位置から複数の垂直仕切り板が下方に向けて立設されて前記水平仕切り板の下側に複数の独立した収納空間が形成されている構造か、前記水平仕切り板の両端部を含む所定位置から複数の垂直仕切り板が下方に向けて立設されて前記水平仕切り板の下側に複数の独立した収納空間が形成されている構造か、2枚の上下に対向する平行な前記水平仕切り板を繋いで仕切る垂直仕切り板が、平行な前記水平仕切り板の両端部を含む所定位置から複数本垂直方向に向けて立設されて、前記垂直仕切り板により、ハモニカ形状の収納用の閉空間が形成されている構造かのいずれかであり、前記セパレータのいずれかの下部構造の収納空間に、少なくとも前記給電用ケーブルが配置されてもよい。
【0032】
前記セパレータの前記水平仕切り板より上方の空間が、上方に向けて立設された垂直仕切り板により複数の空間に仕切られている上部構造を有してもよい。
【0033】
前記トラフ本体の内周面が金属板により被覆されている場合には、前記セパレータは、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、鉄、又はステンレスのいずれかの金属製であるか、またはその表面が前記いずれかの金属により被覆されているか、あるいはセパレータが合成樹脂製であるかのいずれかであり、前記トラフ本体の内周面が金属板により被覆されていない場合には、前記セパレータは、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、鉄、又はステンレスのいずれかの金属製であるか、またはその表面が前記いずれかの金属により被覆されているかのいずれかであってもよい。
【0034】
この理由は、トラフ本体の底部上面と両側面の内側面が、金属部材で被覆されている場合には、放熱部材及び電磁遮蔽部材としての機能はトラフ本体が受け持つことができるので、セパレータは、金属製であるかあるいはセパレータの表面が金属部材で覆われている必要がなく、樹脂製とすることができるためである。セパレータを樹脂製とする場合には、ポリエチレンやポリプロピレンなどの汎用樹脂でもよいが、難燃性の硬質樹脂とすることが望ましい。
【0035】
前記水平仕切り板の上部空間の中央部に、前記ワイヤレス給電用コイルが配置されてもよい。
【0036】
前記トラフ本体の内周面が金属板により被覆されている場合、前記金属板は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、又は銅合金のいずれかからなり、前記トラフ本体の内周面に沿ってインサート成形されているか、あるいは前記金属板が前記トラフ本体の内周面に沿って折り曲げ加工された成形体として配置されているかのいずれかであってもよい。
【0037】
トラフ本体の内周面に前記金属板が配置されていない場合には、トラフ本体が放熱部材及び電磁遮蔽部材としての機能を有しないため、前記セパレータは、前記のアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、鉄、又はステンレスのいずれかの金属製であるか、あるいはその表面が前記金属部材により被覆されているものを用いる必要がある。
【0038】
ここで、セパレータがこのような構造を有していればトラフ本体に金属板が内装されていなくても、放熱部材及び電磁遮蔽部材としての機能はトラフ本体に代わってセパレータが受け持つことができる。
【0039】
前記トラフ本体の長手方向の両端部近傍にそれぞれ止水板が設けられ、さらに前記止水板の少なくとも一方には前記給電用ケーブルを挿通するための挿通孔が設けられていて、前記止水板と前記トラフ本体及び前記挿通孔と前記給電用ケーブルとの隙間が、防水パテ、シリコン樹脂、ゴム、エポキシ樹脂または水膨張性不織布の少なくともいずれかにより止水される止水構造を有していてもよい。
【0040】
前記トラフ本体の少なくとも両側の内側面には、前記止水板を固定する溝または所定間隔の平行な縦リブが垂直方向に形成され、前記溝または前記縦リブの間に前記止水板が挿入されて固定され、前記溝または前記縦リブと前記止水板の隙間が、防水パテ、シリコン樹脂、ゴム、エポキシ樹脂または水膨張性不織布の少なくともいずれかにより止水されてもよい。
【0041】
複数の前記トラフ本体同士が連結され、前記トラフ本体同士の連結部の隙間が、防水パテ、シリコン樹脂、ゴム、エポキシ樹脂または水膨張性不織布の少なくともいずれかによって止水される止水構造を有してもよい。
【0042】
第1の発明によれば、給電用ケーブルがトラフ本体に収容され、トラフ本体の底面と両側面に、放熱性の向上と電磁遮蔽特性の向上を目的とした金属板を設置することで、放熱性を向上させることができるとともに、内部の電気部品及び給電用ケーブル等のノイズ対策が可能となる。
【0043】
また、トラフ本体の内部にセパレータを設置することで、必要に応じて、トラフ本体の内部空間を複数の空間に仕切ることができる。例えば、給電ケーブルを設置する空間と、ノイズ対策が必要なコントロールケーブルが設置される空間と、電装部品が設置される空間とを、適正に分離することが可能となる。
【0044】
また、トラフ本体の両側面の上面にトラフ蓋が被冠されることで、トラフを駐車場等の地中に埋設して使用することが可能となる。また、トラフ本体が地上に露出して配置されている場合に比較し、内蔵電気部品やケーブル等の破損を抑制することができる。
【0045】
また、トラフ本体にワイヤレス給電用コイルを収容することで、ワイヤレス給電スタンド用のワイヤレス給電装置として使用することができる。この際、トラフ本体に収容されたワイヤレス給電用コイルは、セパレータにより駐車場等の地表面に最も近い場所に設置することが可能となる、また、トラフ蓋によって、ワイヤレス給電用コイルが地上に露出していないので、ワイヤレス給電用コイルの破損のおそれが無い。また、ワイヤレス給電用コイルが故障した場合も、トラフ蓋を取り外すことにより、容易にワイヤレス給電用コイル等の交換やメンテナンス作業が可能である。
【0046】
また、トラフ蓋又はトラフ蓋を覆う舗装材に、自動車のガイドセンサー用の誘導線またはケーブルを配置することで、自動車を適正な位置に誘導することができるため、自動車の定位置への停止が容易になる。また誘導線またはケーブルが故障した場合もトラフ蓋を持ち上げることにより、容易に誘導線またはケーブルのメンテナンス作業が可能となる。
【0047】
また、トラフ本体には、情報の交換用としてコントロールケーブルを収容することもできる。この際、コントロールケーブルとしては、ツイストケーブルを用いることもできる。ツイストケーブルは、平衡接続された2本の配線をねじり合わせることにより、外部ノイズを低減させた電線で、複数のケーブルを多数本併設する場合には、1mあたりのツイスト回数であるツイスト率を変えて、ケーブル間のクロストークを防止などにも使用することができる。
【0048】
また、ワイヤレス給電用コイルとしては、円形コイルの他にDDコイルを適用することもできる。DDコイルは、コイルが丸形でなく、8の字またはDを2つ並べた形状のコイルである。また、ワイヤレス給電用コイルは、リッツ線を使用することができる。リッツ線は、1本の導体の周りに、1本の導体を囲うように所定距離関して6本の導体を配置した導体で、表皮効果、自己インダクタンス、相互インダクタンス、近接効果などの影響を配慮した設計がなされた編組線である。
【0049】
また、ワイヤレス給電用コイルをケース部材に収容した際には、ケース部材として、高透磁率かつ低導電率の電磁誘導材料で形成されたフェライト系の焼結部材等の磁性コア材を適用することができる。このように、ケース部材を、高透磁率、低導電率の電磁誘導部材であるコア材料で形成することで、収納容器としての機能の他に、ワイヤレス給電用コイルの磁束を制御することができ、自動車側の受電用コイルに効率的に給電することができる。
【0050】
また、ワイヤレス給電用コイルが収容されるケース部材の外周面全体を、電磁波透過性の高い材料で形成されたカバー部材により収納被覆されることで、ワイヤレス給電用コイルが収容されるケース部材の水密性を確保することができる。このため、ワイヤレス給電用コイルの性能安定性が優れる上、工事が簡単であり、故障時にも補修が容易である。また、ケース部材を止水することで、ワイヤレス給電用コイルにより形成される磁界を安定させることができ、ワイヤレス給電用コイルの性能を安定させることができる。
【0051】
また、ワイヤレス給電用コイルが収納されたケース部材の上面をトラフ蓋の裏面に対向させて当接させ、モルタルやパテ等の止水部材で止水することで、ケース部材を止水することができる。このため、ワイヤレス給電用コイルにより形成される磁界を安定させることができ、ワイヤレス給電用コイルの性能を安定させることができる。
【0052】
また、ケース部材を用いずに、ワイヤレス給電用コイルをセパレータの水平仕切り板の上部に直接配置することもできる。このように、高透磁率、低導電率の電磁誘導部材で形成されたケース部材にワイヤレス給電用コイルが収納されていなくても、ワイヤレス給電用コイルの容量を大きくすることで、給電か可能となる。この場合にワイヤレス給電用コイルの容量を大きくする必要があるため、ワイヤレス給電用コイルのコストは増加するが、電磁誘導部材製の収納容器としてのケース部材が不要になるため、その点ではコストを低減することができる。
【0053】
また、セパレータとしては、水平仕切り板の所定位置から下方に向けて複数の垂直仕切り板を設けて、水平仕切り板の下方を複数の空間に仕切ることで、それぞれの空間に、給電用ケーブルやコントロールケーブルなどを分けて収容することができる。
【0054】
さらに、セパレータとして、水平仕切り板の所定位置から上方に向けても複数の垂直仕切り板を設けることで、セパレータの水平仕切り板より上方の空間を複数の空間に仕切ることができる。
【0055】
また、セパレータを金属製とすることで、冷却効果と電磁遮蔽効果、耐荷重性、不燃性などを付与することができる。また、セパレータの本体を樹脂製として、樹脂本体に金属箔、メッキ、塗装等の金属皮膜で被覆することでも同様の効果を得ることができる。
【0056】
また、トラフ本体の内周面が金属板により被覆されている場合には、セパレータが冷却効果と電磁遮蔽効果を有していなくても、トラフ構造体全体としてみれば、トラフ本体の内周面に被覆された金属板により上記の冷却効果と電磁遮蔽効果は確保される。そのため、セパレータ全体を金属製もしくはその表面を金属被覆された構造としてもよいが、必ずしもその必要はないため、セパレータ全体は樹脂製であってもよい。セパレータを樹脂製とする場合には、ポリエチレンやポリプロピレンなどの汎用樹脂でも良いが、難燃性の硬質樹脂を用いることがより望ましい。
【0057】
また、水平仕切り板の上部空間の中央部にワイヤレス給電用コイルを配置することで、ワイヤレス給電用コイルの性能を安定させることができる。
【0058】
また、放熱用及び電磁遮蔽用の金属板として、トラフ本体の内周面に沿ってインサート成形又はトラフ本体の内周面に沿って折り曲げ加工された成形体とすることで、トラフ本体の内面を確実に金属板で覆うことができる。また、金属板としては、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金のいずれかで構成し、上述のようにトラフ本体を被覆することで、放熱特性と電磁遮蔽特性を両立することができる。
【0059】
また、トラフ本体の長手方向の両端部近傍にそれぞれ止水板を設け、止水板とトラフ本体及び止水板の挿通孔と給電用ケーブルとの隙間を止水部材によって止水することで、トラフ本体への水の浸入を防ぐことができる。このため、ワイヤレス給電用コイルへの水分の浸入を防ぐことができるため、ワイヤレス給電用コイルによって形成される磁界を安定させることができ、ワイヤレス給電用コイルの性能を安定させることができる。
【0060】
この場合、トラフ本体の内側面に止水板を固定する溝または所定間隔の平行な縦リブを形成することで、トラフ本体へ止水板を固定するのが容易である。また、止水板と溝または縦リブの間に止水構造を形成することで、トラフ構造体内部への水の浸入を防ぐことができる。
【0061】
また、複数のトラフ本体同士を連結して使用することもできる。この場合には、トラフ本体同士の連結部の隙間を止水材で止水することで、トラフ構造体内部への水の浸入を防ぐことができる。
【0062】
第2の発明は、底部と両側面部からなる略コの字型のトラフ本体とトラフ蓋とからなるケーブルトラフと、ワイヤレス給電用コイルと、前記ワイヤレス給電用コイルと接続される給電用ケーブルと、前記ワイヤレス給電用コイルが収容されるケース部材と、前記トラフ本体の内部を上下に区画する水平仕切り板を有するセパレータと、を備えるトラフ構造体を用いたワイヤレス給電スタンド用のワイヤレス給電装置であって、前記給電用ケーブルは、前記水平仕切り板の下側の空間に配置され、前記ワイヤレス給電用コイルが前記ケース部材の内部に収納され、前記トラフ本体の内周面は、前記トラフ本体の内周面に沿って連続するように放熱部材及び電磁遮蔽部材としての金属板により被覆されていて、前記ワイヤレス給電用コイルが収納された前記ケース部材が前記セパレータの上側の空間に配置され、前記ケース部材は前記セパレータの上面により支持され、前記給電用ケーブルは、電源装置に接続されており、前記トラフ本体の両側面部の上面に前記トラフ蓋が被冠され、前記トラフ蓋がトラフ蓋固定部材で前記トラフ本体へ固定されていることを特徴とするワイヤレス給電用装置である。
【0063】
車を停車するための方向を案内するガイドセンサー用の誘導線またはケーブルが、前記トラフ蓋の幅方向の中心に対して対称な所定位置に、前記トラフ蓋の内部にインサート成形により配置されてもよい。
【0064】
前記トラフ構造体の前記トラフ蓋の上面が、アスファルト、コンクリート、又は繊維補強コンクリートの少なくともいずれかの材料で被覆されてもよい。
【0065】
第2の発明によれば、ワイヤレス給電用コイルがトラフに収容され、トラフ本体の底面と両側面に、放熱性の向上と電磁遮蔽特性の向上を目的とした金属板を設置することで、放熱性を向上させることができるとともに、内部に収容される電気部品及び給電用ケーブル等のノイズ対策が可能となる。
【0066】
また、トラフ本体の内部にセパレータを設置することで、ワイヤレス給電用コイルを給電対象となる自動車に近いトラフ本体の上部に配置することができる。この際、セパレータによって下部空間を仕切ることができるため、各空間に各部材を適正に分離して配置することが可能となる。
【0067】
また、車を停車するための方向を案内するガイドセンサー用の誘導線またはケーブルを、トラフ蓋の幅方向の中心に対して対称位置に配置することで、自動車を給電スタンドへ停車する際に停止位置等の案内が可能になる。このため、給電時のワイヤレス給電装置への停車がしやすくなる。
【0068】
また、トラフ蓋の上面を、アスファルト、コンクリート、又は繊維補強コンクリート等の舗装材で被覆することで、トラフ蓋が地上に露出することなくトラフ構造体を設置することができる。また、トラフ蓋の上面に舗装材を被冠することで美観性が向上し、対候性も向上する。
【0069】
第3の発明は、第2の発明にかかるワイヤレス給電スタンド用装置を駐車場に設置して、駐車中に自動車に給電を行うことを特徴とする自動車給電用装置による自動車への給電方法である。
【0070】
第3の発明によれば、ワイヤレス給電装置を駐車場に設置することで、自動車を駐車場に駐車している間に自動車の給電が可能となる。この際、車を停車するための方向を案内するガイドセンサー用の誘導線またはケーブルを用いれば、駐車場への停車位置を容易に把握することができる。
【0071】
第4の発明は、第2の発明にかかるワイヤレス給電スタンド用装置において、前記トラフ蓋の上面が、路面に露出して配置され、隣接する路面と前記トラフ蓋の表面が連続した表面構造を形成することを特徴とする自動車給電スタンド用トラフ構造体の敷設方法である。
【0072】
また、第4の発明としては、第2の発明にかかる前記トラフ蓋の上面が、アスファルト、コンクリート、又は繊維補強コンクリートの少なくともいずれかの路面舗装用材料で被覆されていることで、周囲の路面と略連続した平面または曲面を形成することが可能であることを特徴とする自動車給電スタンド用トラフ構造体の敷設方法としてもよい。
【0073】
第4の発明によれば、トラフ構造体の上面と路面とが一致し連続した平面又は曲面を構成することで、トラフ構造体の表面が道路と同様の構造になるので、視覚的な一体感が増し、美観が増加する。
【0074】
この際、トラフ蓋の上面を路面に露出させることで、自動車の受電装置の受電側コイルとの距離を近づけることができる。このため、自動車への給電効率が向上する。
【0075】
また、トラフ蓋の上部に舗装材を被覆することで、トラフ蓋の設置作業や、メンテナンスなどの際にトラフ蓋を取り外す作業が容易である。また、トラフ構造体を設置した後に、別途の舗装作業が不要となる。
【発明の効果】
【0076】
本発明によれば、自動車用の給電装置において、高い放熱性と電磁遮蔽性能を有する、内部に給電ケーブルが収容される自動車給電スタンド用トラフ構造体、ワイヤレス給電用装置、及びこれを用いた自動車給電用装置による自動車への給電方法、自動車給電スタンド用トラフ構造体の敷設方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1】自動車給電スタンド用トラフ構造体1を示す分解斜視図。
図2】自動車給電スタンド用トラフ構造体1の断面図。
図3】自動車給電スタンド用トラフ構造体1aの断面図。
図4】自動車給電スタンド用トラフ構造体1bの断面図。
図5】ワイヤレス給電用コイル25とケース部材27の斜視図。
図6】(a)は、ワイヤレス給電用コイル25とケース部材27に樹脂カバー31が設けられた状態の断面図、(b)は、ワイヤレス給電用コイル25とケース部材27にカバー部材31aが被覆された状態の断面図。
図7】(a)は、自動車給電スタンド用トラフ構造体1cの断面図、(b)は、自動車給電スタンド用トラフ構造体1dの断面図。
図8】(a)は、自動車給電スタンド用トラフ構造体1eの断面図、(b)は、自動車給電スタンド用トラフ構造体1fの断面図。
図9】(a)は、自動車給電スタンド用トラフ構造体1gの断面図、(b)は、自動車給電スタンド用トラフ構造体1hの断面図。
図10】(a)は、自動車給電スタンド用トラフ構造体1iの断面図、(b)は、自動車給電スタンド用トラフ構造体1jの断面図。
図11】(a)は、セパレータ11gを示す図、(b)は、セパレータ11hの他の実施形態を示す図。
図12】(a)は、自動車給電スタンド用トラフ構造体1nの断面図、(b)は、自動車給電スタンド用トラフ構造体1oの断面図。
図13】自動車給電スタンド用トラフ構造体1kの断面図。
図14】(a)は、自動車給電スタンド用トラフ構造体1lの断面図、(b)は、自動車給電スタンド用トラフ構造体1mの断面図。
図15】(a)はワイヤレス給電装置40の構成を示す図、(b)はワイヤレス給電装置40の長手方向断面図、(c)は(a)のB部拡大図。
図16】(a)はトラフ本体3a同士を連結した状態を示す図、(b)は(a)のC部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0078】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態にかかる自動車給電スタンド用トラフ構造体について説明する。図1は自動車給電スタンド用トラフ構造体1を示す分解斜視図であり、図2は、自動車給電スタンド用トラフ構造体1の断面図である。自動車給電スタンド用トラフ構造体1は、主に、ケーブルトラフ3、給電用ケーブル5、セパレータ11、金属板19等から構成される。
【0079】
ケーブルトラフ3は、トラフ本体3aとトラフ蓋3bからなる。トラフ本体3aは、底部7と、底部7の両側に垂直に起立する側面部9からなる略コの字型である。トラフ本体3aおよびトラフ蓋3bは、例えば樹脂製であり、プレス成型や射出成型によって成型される。なお、トラフ本体3aの長手方向の両端には、それぞれ連結部13a、13bが設けられ、トラフ本体3a同士を長手方向に連結することができる。
【0080】
トラフ本体3aの内部には、セパレータ11が収容される。図2に示すように、セパレータ11は、トラフ本体3aの内部を上下に区画する水平方向の水平仕切り板21とこれを支持する垂直仕切り板23とを有する。すなわち、セパレータ11は、水平仕切り板21の所定位置から複数の垂直仕切り板23が下方に向けて立設される。垂直仕切り板23によって、水平仕切り板21の下側に、複数の独立した収納空間が形成される。なお、セパレータ11としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、鉄、又はステンレスのいずれかを適用可能である。
【0081】
トラフ本体3aの内部には、自動車へ給電を行うための給電用ケーブル5が収容される。また、トラフ本体3aには、情報の交換用としてコントロールケーブル5aが配置される。給電用ケーブル5は高周波ケーブルであり、また、コントロールケーブル5aは、ツイストケーブル又は高周波ケーブルである。前述したように、セパレータ11の垂直仕切り板23によって、水平仕切り板21の下側に、複数の独立した収納空間が形成される。すなわち、セパレータ11によって、ケーブルトラフの内部を複数の空間に仕切ることができる。給電用ケーブル5は、セパレータ11で区画されたいずれかの空間に配置される。例えば、給電用ケーブル5とコントロールケーブル5aは、別々の空間に配置することができる。
【0082】
トラフ本体3aの底部7の上面と、両方の側面部9の内周面は、金属板19によって被覆される。金属板19は、放熱部材及び電磁遮蔽部材として機能する。すなわち、トラフ本体3aの内周面は、トラフ本体3aの内周面に沿って連続するように放熱部材及び電磁遮蔽部材としての金属板19により被覆される。
【0083】
なお、金属板19として、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、又は銅合金のいずれかを適用可能である。また、金属板19は、トラフ本体3aの内周面に沿ってインサート成形されていてもよく、あるいは、金属板19がトラフ本体3aの内周面に沿って折り曲げ加工された成形体として配置されていてもよい。
【0084】
トラフ本体3aの両方の側面部9の上面には、トラフ蓋3bが被冠される。すなわち、トラフ蓋3bは、トラフ本体3aの上方の開口部を塞ぐように配置される。トラフ蓋3bは、トラフ蓋固定部材15(図1)によって、トラフ本体3aに固定される。なお、図視したトラフ蓋固定部材15は、ばね性を有する略コの字状の部材であって、トラフ蓋3bの上方から取り付けることで、両脚部の先端がトラフ本体3aに係止されて固定される部材であるが、トラフ蓋固定部材としては、ボルト等を用いる方法でもよい。
【0085】
本実施形態の自動車給電スタンド用トラフ構造体1によれば、トラフ本体3aの内部にセパレータ11を設置することで、トラフ本体3aの内部空間を仕切ることができる。このため、給電用ケーブル5を設置する空間と、ノイズ対策が必要なコントロールケーブル5aが設置される空間とを分けることができる。この際、セパレータ11が金属製であるため、セパレータ11の冷却効果と電磁遮蔽効果、耐荷重性、不燃性などを付与することができる。
【0086】
トラフ本体の内周面が金属板19により被覆されている場合には、セパレータ11全体またはその外表面を金属製とすることで冷却効果と電磁遮蔽効果をセパレータに付与しなくても、トラフ構造体全体としてみれば、トラフ本体の内周面に被覆された金属板により冷却効果と電磁遮蔽効果は確保される。このため、セパレータ11は金属製であることが望ましいが、必ずしもセパレータ11は金属製でなくてもよく、樹脂製のセパレータを用いることができる。
【0087】
例えば、トラフ本体3aの内周面が金属板19により被覆されている場合には、セパレータ11は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、鉄、又はステンレスのいずれかの金属製であるか、またはその表面がいずれかの金属により被覆されているか、あるいはセパレータ11が合成樹脂製であるかのいずれかであればよい。
【0088】
また、給電用ケーブル5がトラフ本体3aに収容され、トラフ本体3aの底部7と側面部9が、連続した金属板19によって被覆されるため、放熱性が高く、電磁遮蔽特性も得ることができる。このため、急速充電のための大電流化と直流交流変換において生じる大量の熱と高周波ノイズの問題を解消することができる。
【0089】
例えば、従来は、給電用ケーブルや電気機器に対して個別に熱対策や電磁遮蔽対策が必要であったが、本実施形態によれば、セパレータ11によってケーブルを分類化することができるとともに、トラフ本体3aによって放熱と電磁遮蔽の諸問題を解決することができる。このように、本実施形態によれば、トラフ本体3aに収納された配線類から発生する熱を、セパレータ11からトラフ本体3aの内周面に配置された金属板19を通じて地中に逃がすことができるとともに、EMC性にも優れ、電磁ノイズ対策の上でも効果がある。
【0090】
また、トラフ本体の両側面の上面にトラフ蓋が被冠されて固定されることで、トラフ本体3aの内部への異物の侵入や、ケーブル等へのいたずら、ケーブル等の盗難などを防止することができる。また、トラフを駐車場等の地中に埋設して使用することが可能となる。また、トラフ本体が地上に露出して配置されている場合に比較し、内蔵電気部品やケーブル等の破損を抑制することができる。
【0091】
(第2実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図3は、第2の実施形態にかかる自動車給電スタンド用トラフ構造体1aを示す断面図である。なお、以下の説明において、自動車給電スタンド用トラフ構造体1と同一の機能を奏する構成については、図1図2と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0092】
自動車給電スタンド用トラフ構造体1aは、自動車給電スタンド用トラフ構造体1とほぼ同様の構成であるが、ワイヤレス給電用コイル25が配置される点で異なる。すなわち、自動車給電スタンド用トラフ構造体1aは、ワイヤレス給電スタンドにおけるワイヤレス給電用装置として利用可能である。
【0093】
なお、ワイヤレス給電とは、ワイヤレス充電ともいい、ワイヤレス電力伝送された電力を給電することを意味し、非接触給電ともいう。ワイヤレス給電の原理としては、電磁誘導方式と磁界共鳴方式がある。磁界共鳴方式は電磁誘導の条件を絞ったものである。磁界共鳴方式も電磁誘導方式も磁界の結合であり、その結合部分に関しては、電磁誘導の原理が使用されておりその点では同一である。両者の違いは、1次側、2次側とも共振回路を形成することで、磁界共鳴は、共振をうまく使う回路構成になっている点であり、これにより、大きなエネルギーギャップにおいても、高効率かつ大電力を実現することができる。
【0094】
結合タイプは、波長の長さがワイヤレス給電用コイルの大きさより十分に大きい必要があるので、1GHz以上の周波数になると、結合タイプとしてはサイズが小さくなりすぎてしまう問題があり、使用する周波数帯域には、一定の制約があり、kHz帯が使用される。例えば、日本国内では、電気自動車向けとしては、周波数は79~90kHzであり、7.7kW以下と定められる。
【0095】
図3に示すように、トラフ本体3aには、ワイヤレス給電用コイル25が内装される。なお、ワイヤレス給電用コイル25は、トラフ本体3aの内部に配置されたセパレータ11の水平仕切り板21の上側の空間に配置される。また、ワイヤレス給電用コイル25と接続される給電用ケーブル5は、少なくともセパレータ11の下部構造におけるいずれかの収容空間に配置される。
【0096】
なお、図視した例では、ワイヤレス給電用コイル25は、セパレータ11の水平仕切り板21の上部に直接配置される。この際、ワイヤレス給電用コイル25は、セパレータ11の水平仕切り板21の上部空間の中央部に配置されることが望ましい。
【0097】
ワイヤレス給電用コイル25としては、円形コイル又はDDコイルが適用可能である。DDコイルは、8の字、もしくは「D」の字を2つ並べたかのような形状である。丸型のコイルはコイル全面に磁石を敷き詰めなければならないが、DD方式は2つの「D」の字の内側に磁石を配置すればよいので磁石の使用量が少なくて済む。このため同じ出力電力であれば、DD方式のコイルの重量は丸型コイルよりも30%軽くて済む。
【0098】
ワイヤレス給電用コイル25に用いられる線材としては、リッツ線、又は自己融着リッツ線のいずれかを適用可能である。リッツ線は、1本の導体の周りに、1本の導体を囲うように所定距離関して6本の導体を配置した導体で、表皮効果、自己インダクタンス、相互インダクタンス、近接効果などの影響を配慮した設計がなされた編組線である。このため、ワイヤレス給電装置において有効である。
【0099】
本実施形態の自動車給電スタンド用トラフ構造体の敷設方法では、自動車給電スタンド用トラフ構造体1aが地中に埋設される。この際、トラフ蓋3bの上面が、路面39に露出して配置され、隣接する路面39とトラフ蓋3bの表面が連続した表面構造を形成する。このようなワイヤレス給電スタンド用装置を駐車場に設置して、自動車給電スタンド用トラフ構造体1aの上方に停車することで、駐車中に自動車に給電を行うことができる。
【0100】
なお、前述したように、給電に使用する周波数帯は、例えば、85kHz帯を中心にした79~90kHzである。また、その際の1次側コイル入力電力は7.7kw~11.1kwであり、受電側(自動車側)の2次側コイルの地上高は、100~250mm程度と考えられる。
【0101】
ここでトラフ蓋3bの幅方向の中心に対して対称な所定位置に、トラフ蓋3bの内部にインサート成形により誘導線33が配置される。誘導線33は、自動車を停車するための方向を案内するガイドセンサー用の誘導線またはケーブルである。図示した例では、トラフ蓋3bの上部に設けられた段部4の内部において、誘導線33が配置される。
【0102】
給電対象の自動車にセンサーを有する案内装置を配備し、誘導線33に流した電流による磁束を給電対象の自動車のセンサーで受信することで、受電を行う自動車の走行方向を最適化して、正しい位置に自動車を誘導して停車させることが可能である。
【0103】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、トラフ本体3aの内部にワイヤレス給電用コイル25を配置することで、自動車のワイヤレス給電装置として使用することができる。この際、ワイヤレス給電用コイル25がトラフ本体3aのセパレータ11の上側の空間に配置されるため、給電対象の自動車に近づけて配置することができる。
【0104】
また、セパレータ11によって、トラフ本体3aの内部を目的別に区画を区分して使用することができるため、ワイヤレス給電用コイル25に接続される給電用ケーブル5とコントロールケーブル5aを、セパレータ11の下側の別々の空間に配置することができる。
【0105】
例えば、従来は、給電用コイルに対し、個別に熱対策や電磁遮蔽対策が必要であったが、本実施形態によれば、セパレータ11によって給電コイルとケーブルを分類化することができるとともに、トラフ本体3aによって放熱と電磁遮蔽の諸問題を解決することができる。このように、本実施形態によれば、トラフ本体3aに収納された給電コイルや配線類から発生する熱を、セパレータ11からトラフ本体3aの内周面に配置された金属板19を通じて地中に逃がすことができるとともに、EMC性にも優れ、電磁ノイズ対策の上でも効果がある。
【0106】
また、トラフ本体3aの上方にはトラフ蓋3bが配置されるため、ワイヤレス給電用コイル25が地上に露出配置されることがない。このため、ワイヤレス給電用コイル25が破損する心配がなく、さらに故障時には、トラフ内に配置された部品を交換するだけで済むので、補修工事を容易とすることができる。
【0107】
また、本実施形態の自動車給電用装置による自動車への給電方法によれば、トラフ蓋3bに自動車を適正位置に誘導する誘導線33を配置することで、自動車を適切な位置に誘導することができる。このため、自動車を適正な停止位置に停車することが容易である。
【0108】
なお、トラフ本体3a及びトラフ蓋3bには、高密度ポリエチレン系のリサイクル材を使用することができる。この場合、トラフ蓋3bの電波透過性がよく電波の吸収が少ない。また、非吸水性樹脂であるため、トラフ蓋3bの吸水が殆どない上に、トラフ蓋3bとして必要な強度と剛性を有する。
【0109】
(第3実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図4は、第3の実施形態にかかる自動車給電スタンド用トラフ構造体1bを示す断面図である。自動車給電スタンド用トラフ構造体1bは、自動車給電スタンド用トラフ構造体1aとほぼ同様の構成であるが、ワイヤレス給電用コイル25がケース部材27に収納される点で異なる。
【0110】
ワイヤレス給電用コイル25が収納されたケース部材27は、セパレータ11の上側の空間に配置される。すなわち、ケース部材27はセパレータ11の水平仕切り板21の上面により支持される。なお、給電用ケーブル5及びコントロールケーブル5aは、セパレータ11の下側の別々の空間に配置される。
【0111】
図5は、ケース部材27に収容されたワイヤレス給電用コイル25を示す斜視図であり、図6(a)は、図5のA-A線断面図である。ケース部材27は、平板上の底部と外周部側面(側壁部28)が一体に形成された箱型のトレイ形状を有する。トレイ形状のケース部材27の中心部には、側壁部28と同方向に突出し、側壁部28と略同等の高さの突出部29が一体で設けられる。
【0112】
ワイヤレス給電用コイル25は、ケース部材27の中心部を囲うようにケース部材27に収納されている。すなわち、ワイヤレス給電用コイル25は、突出部29の周囲に配置される。なお、ケース部材27は、突出部29を有さずに、平板上の底部と外周部側面が一体に形成された箱型のトレイ形状のみであってもよい。
【0113】
ここで、ワイヤレス給電では、ワイヤレス給電用コイル25によって発生する磁界により電力伝送を行うが、一方でこの磁界は近傍の導電材料(金属等)に渦電流を発生させ、伝送電力の損失や導電材料の発熱につながる。これを防ぐため、磁性コア材として高透磁率、低導電率の材料であるフェライトを配置することにより磁界の最適化が行われる。
【0114】
材料としては、Ni-Zn系かMn-Zn系が使用されており高周波用途のものを選定する必要が有る。また近年は大容量化に伴い、広温度帯域においても低損失・高磁束密度の材料が求められている。このように、ケース部材27としては、高透磁率かつ低導電率の電磁誘導材料で形成された磁性コア材であって、フェライト系の焼結部材、Ni-Zn又はMn-Zn材料で形成される。
【0115】
なお、図6(a)に示すように、ワイヤレス給電用コイル25が収納されたケース部材27の外周部側面(側壁部28)の上面及び突出部29の上面を含むように、ワイヤレス給電用コイル25は、樹脂カバー31で被覆される。樹脂カバー31は、電磁波透過性の高い材料で形成され、樹脂カバー31によって、ケース部材27の上面全体が覆われる。なお、ケース部材27と樹脂カバー31の界面は接着剤で固定される。このように、ワイヤレス給電用コイル25を樹脂カバー31で覆うことで、止水性を高めることができる。
【0116】
なお、図6(b)に示すように、ワイヤレス給電用コイル25が収納されたケース部材27の外周面全体を、カバー部材31aに収納してワイヤレス給電用コイル25及びケース部材27を被覆してもよい。カバー部材31aとしては、電磁波透過性の高い材料で形成される。このようにしても、同様の効果を得ることができる。
【0117】
第3の実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、ワイヤレス給電用コイル25がコア材として機能するケース部材27に収容されるため、より効率よくワイヤレス給電を行うことができる。
【0118】
また、ケース部材27を覆うように、樹脂カバー31又はカバー部材31aで被覆することで、ワイヤレス給電用コイル25の止水性を高めることができる。このように、ワイヤレス給電用コイル25への水分の浸入を防ぐことができるため、ワイヤレス給電用コイル25によって形成される磁界を安定させることができ、ワイヤレス給電用コイル25の性能を安定させることができる。
【0119】
(第4実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。図7(a)は、第4の実施形態にかかる自動車給電スタンド用トラフ構造体1cを示す断面図である。自動車給電スタンド用トラフ構造体1cは、自動車給電スタンド用トラフ構造体1bとほぼ同様の構成であるが、ワイヤレス給電用コイル25の止水構造が異なる。
【0120】
自動車給電スタンド用トラフ構造体1cでは、ワイヤレス給電用コイル25が収納されたケース部材27の外周部側面(側壁部28)の上面及び突出部29の上面と、トラフ蓋3bの裏面とが対向して当接する。また、ケース部材27の外周部側面の上面とトラフ蓋3bの当接面及び/またはその当接面の外周部が、止水部材35で止水される。止水部材35は、例えばモルタル又はパテを適用可能である。
【0121】
このようにすることで、ワイヤレス給電用コイル25の止水性を高めることができる。このように、ワイヤレス給電用コイル25への水分の浸入を防ぐことができるため、ワイヤレス給電用コイル25によって形成される磁界を安定させることができ、ワイヤレス給電用コイル25の性能を安定させることができる。
【0122】
なお、図7(b)に示す自動車給電スタンド用トラフ構造体1dのように、ワイヤレス給電用コイル25が収納されたケース部材27の外周部側面(側壁部28)の上面及び突出部29の上面と、トラフ蓋の裏面とを対向させて当接させるとともに、ワイヤレス給電用コイル25がコイル形状を維持したまま止水部材35aで封止されてもよい。止水部材35aは、例えば、電磁波透過性の高い樹脂材料あるいはグリースである。このようにしても、自動車給電スタンド用トラフ構造体1cと同様の効果を得ることができる。
【0123】
第4の実施の形態によれば、第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、ケース部材27の全体を止水部材で覆う必要が無いため、止水材の使用量を削減することができる。また、ワイヤレス給電用コイル25を、給電対象に対して近づけて配置することができる。
【0124】
(第5実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。図8(a)は、第5の実施形態にかかる自動車給電スタンド用トラフ構造体1eを示す断面図である。自動車給電スタンド用トラフ構造体1eは、自動車給電スタンド用トラフ構造体1bとほぼ同様の構成であるが、セパレータ11aが用いられる点で異なる。
【0125】
なお、以下の説明では、ワイヤレス給電用コイル25がケース部材27に収容され、上部を樹脂カバー31で覆われた形態で説明するが、ケース部材27を使用せず、ワイヤレス給電用コイル25をセパレータ上に直接配置してもよい。また、ケース部材27を用いる場合において、ワイヤレス給電用コイル25の止水方法については、他の実施形態を組み合わせることができる。
【0126】
セパレータ11aは、水平仕切り板21より上方の空間が、上方に向けて立設された垂直仕切り板23により複数の空間に仕切られている上部構造を有する。すなわち、セパレータ11aは、水平仕切り板21の上方と下方のそれぞれに垂直仕切り板23が配置され、水平仕切り板21の上下のそれぞれにおいて、複数の空間に仕切ることができる。
【0127】
図示した例では、ワイヤレス給電用コイル25が収容されたケース部材27が、水平仕切り板21の上方に設けられた垂直仕切り板23によって仕切られた中央の空間に配置される。このように、セパレータ11aを用いることで、セパレータ11aの上下に複数の空間を形成し、ケーブルや電子機器を収容することができる。
【0128】
なお、セパレータ11aでは、水平仕切り板21の上下に設けられるそれぞれの垂直仕切り板23が、水平仕切り板21に対して、同一の幅方向位置に形成されたが、これには限られない。例えば、図8(b)に示す自動車給電スタンド用トラフ構造体1fに用いられるセパレータ11bは、水平仕切り板21の上下で、垂直仕切り板23の位置が異なる。このため、水平仕切り板21の上下で、収容空間のサイズを変えることができる。
【0129】
また、図9(a)に示す自動車給電スタンド用トラフ構造体1gに用いられるセパレータ11cは、水平仕切り板21の両端部を含む所定位置から複数の垂直仕切り板23が下方に向けて立設されて水平仕切り板21の下側に複数の独立した収納空間が形成されている構造となる。なお、図視した例では、水平仕切り板21の幅方向両端部には、上方にも垂直仕切り板23が設けられるが、水平仕切り板21の上方において垂直仕切り板23の配置は特に限定されない。このように、水平仕切り板21の両端部にも垂直仕切り板23を配置することで、より高い剛性を得ることができる。
【0130】
また、図9(b)に示す自動車給電スタンド用トラフ構造体1hに用いられるセパレータ11dは、2枚の上下に対向する平行な水平仕切り板21を繋いで仕切る垂直仕切り板23が、平行な水平仕切り板21の両端部を含む所定位置から複数本垂直方向に向けて立設される。すなわち、垂直仕切り板23により、ハモニカ形状の収納用の閉空間が形成される。なお、図視した例では、水平仕切り板21の幅方向両端部には、上方にも垂直仕切り板23が設けられる。このように、一対の水平仕切り板21を垂直仕切り板23でつなぐことで、より高い剛性を得ることができる。また、セパレータ11dにより、セパレータの水壁仕切り板の下部側にハモニカ形状の閉空間が形成されることで断面方向の止水性を高めることができる。
【0131】
また、図10(a)に示す自動車給電スタンド用トラフ構造体1iに用いられるセパレータ11eは、一対の水平仕切り板21と、水平仕切り板21の上下の同一の部位に、それぞれ垂直仕切り板23が配置される。より詳細には、セパレータ11dに対して、水平仕切り板21の上方に、さらに垂直仕切り板23が設けられる。
【0132】
また、図10(b)に示す自動車給電スタンド用トラフ構造体1jに用いられるセパレータ11fは、セパレータ11eに対して、水平仕切り板21の上方の垂直仕切り板23の配置が異なる。すなわち、セパレータ11fは、水平仕切り板21の上方の垂直仕切り板23による収納空間と、水平仕切り板21の下方の垂直仕切り板23による収納空間のサイズが異なる。また、図9(b)と同様にセパレータ11e、11fにより、ハモニカ形状の閉空間が形成されることで断面方向の止水性を高めることができる。
【0133】
このように、セパレータの形状は、トラフ本体3aに収容されるケーブルや電子機器のサイズや種類に応じて適宜選択することができる。なお、前述したように、セパレータは金属製であると、セパレータの冷却効果と電磁遮蔽効果、耐荷重性、不燃性などを得ることができるが、これには限られない。
【0134】
図11(a)に示す、セパレータ11gは、水平仕切り板21の幅方向の両端部から、垂直仕切り板23が下方に延出し、水平仕切り板21の幅方向の両端部以外の所定位置から垂直仕切り板23が上方に延出する構造を有する。また、例えば樹脂製のセパレータ11の表面に金属皮膜19aが形成される。金属皮膜19aは、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、鉄、又はステンレスのいずれかが金属箔、メッキ、塗装のいずれかで形成されたものである。このように、セパレータを合成樹脂製で構成し、セパレータの外表面全体に金属皮膜19aを形成することで、セパレータの全体を金属で形成しなくてもよい。
【0135】
図11(b)に示すセパレータ11hは、垂直仕切り板23が水平仕切り板21の両端部と両端部以外のその他の位置から上下に配置される。このセパレータ11hに対して金属皮膜19aを形成する際には、水平仕切り板21の上方の垂直仕切り板23と水平仕切り板21の下方の垂直仕切り板23の表面も含めたセパレータの全周に金属皮膜19aが配置される。このように、他の各種のセパレータの形態に対しても、本体を樹脂で構成する場合には、水平仕切り板21、垂直仕切り板23を含めたセパレータの全周を全て金属皮膜19aで被覆することが望ましい。
【0136】
この際セパレータ11hは、水平仕切り板21の幅方向の両端部から少なくとも下方に垂直仕切り板23が形成されたくし型であり、水平仕切り板21の両端部から上方へも垂直仕切り板23が設けられていることが望ましい。このような形状を有していれば、トラフ外側面側への十分な電磁遮蔽効果を得ることができる。
【0137】
第5の実施の形態によれば、第3、第4の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、トラフ本体3aに収容されるケーブルや電子機器等に応じて、各種のセパレータを選択して使用することができる。また、セパレータを樹脂で構成する場合には、少なくとも水平仕切り板21よりも上方を金属皮膜19aで被覆することで、給電コイルに対しては、全体を金属製としたセパレータと同様の冷却効果と電磁遮蔽効果を得ることができるが、給電コイルだけでなく、通常セパレータの下部に配置される給電ケーブルに対するこれらの効果を考慮すると、図11に示すようにセパレータの表面全体の全周を金属被覆することが望ましい。
【0138】
このように、トラフ本体3aの内周面が、放熱部材及び電磁遮蔽部材として金属板19により被覆されているか、及び/又は、セパレータ11の少なくとも表面が放熱部材及び電磁遮蔽部材として金属部材により構成されていればよい。
【0139】
ここでセパレータ全体が金属製か、あるいは、セパレータの外表面が金属箔、メッキ、塗装のいずれかにより表面被覆された構造を有していれば、放熱部材及び電磁遮蔽部材としての機能は、セパレータが受け持つことができる。この際、セパレータの形状は、セパレータの水平仕切り板の幅方向の両端部には、垂直仕切り板が上下に延出していることが望ましい。例えば、セパレータがこのような形状を有していれば、セパレータで、給電コイルの外側面と下面に形成される空間や給電ケーブルの外側面と上面に形成される空間を遮蔽することができる。
【0140】
図12(a)、図12(b)は、それぞれ、図11(a)、図11(b)に示すセパレータを用いた自動車給電スタンド用トラフ構造体1n、1oを示す図である。この場合、セパレータは、トラフ本体3aの内周面に金属板19が被覆されていないトラフに配置される。より詳細には、図12(a)では、水平仕切り板21の幅方向の両端部に、垂直仕切り板23が上下に延出している構造を有するセパレータの表面が金属部材により構成されているセパレータ11gがトラフ本体3aの内部に配置される。セパレータ11gの水平仕切り板21の上方の、水平仕切り板21と垂直仕切り板23に囲まれた領域にはワイヤレス給電用コイル25が配置される。セパレータの水平仕切り板21の下方の水平仕切り板21と垂直仕切り板23に囲まれた領域には、給電用ケーブル5が配置される。
【0141】
このため、図12(a)に示す例では、セパレータ11gは、水平仕切り板21の幅方向の両端部及びその他の部位から、垂直仕切り板23が下方に延出し、水平仕切り板21の幅方向の両端部から垂直仕切り板23が上方に延出する構造を有する。又は図12(b)に示す例では、セパレータ11gは、水平仕切り板21の幅方向の両端部及びその他の部位から垂直仕切り板23が上下に延出している構造を有し、さらにセパレータ11gの表面が金属皮膜19aにより構成される。このようにすることで、トラフ本体3aの内周面に金属板19が被覆されていなくてもよい。
【0142】
このようにセパレータの表面が金属部材で構成されていて、セパレータが上記のような構造を有すれば、ワイヤレス給電用コイルの側面と下面を覆うだけでなく、給電用ケーブルの側面と上面を覆うことで、コイルが発生する熱を逃がし、電磁ノイズを防止することが可能になる。すなわち、トラフ本体の内周面に金属板が被覆されている場合とほぼ同様の効果が得られる。
【0143】
このように、トラフ本体3aの内周面が金属板19により被覆されていない場合には、セパレータ11は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、鉄、又はステンレスのいずれかの金属製であるか、またはその表面がいずれかの金属により被覆されているかのいずれかとする。
【0144】
(第6実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。図13は、第6の実施形態にかかる自動車給電スタンド用トラフ構造体1kを示す断面図である。なお、以下の説明では、セパレータ11を用いた例について説明するが、前述した他の形態のセパレータも適用可能である。
【0145】
自動車給電スタンド用トラフ構造体1kは、自動車給電スタンド用トラフ構造体1b等とほぼ同様の構成であるが、トラフ蓋3bの上面が、路面舗装用の舗装材37で被覆される点で異なる。舗装材37としては、例えば、アスファルト、コンクリート、又は繊維補強コンクリートの少なくともいずれかの材料で構成される。このように、トラフ蓋3bの上面が、アスファルト、コンクリート、又は繊維補強コンクリートの少なくともいずれかの舗装材37で被覆されていることで、周囲の路面39と略連続した平面または曲面を形成することが可能である。この図では、誘導線33がトラフ蓋3bの上部の段部4の内周面側に配置されている。このような配置はトラフ蓋3bをインサート成形することにより実現できる。
【0146】
なお、この場合には、図14(a)に示す自動車給電スタンド用トラフ構造体1lのように、誘導線33を舗装材37の内部に配置してもよい。この場合、誘導線33は、トラフ蓋3bの上面における、両側部の段部4近傍に配置される。誘導線33は、カバー部材38で保護される。すなわち、舗装材37の下方において、カバー部材38が取り付けられ、カバー部材38の内部に誘導線33が配置される。なお、カバー部材38は、下方が開口した略コの字状であってもよく、誘導線33の全周を覆う筒状であってもよい。
【0147】
また、図14(b)に示す自動車給電スタンド用トラフ構造体1mのように、誘導線33を舗装材37の内部に直接配置してもよい。すなわち、トラフ蓋3bの上部がコンクリート又はアスファルトで覆われている場合において、トラフ蓋3bの上部を覆う舗装材37の内部に誘導線33が埋め込まれていてもよい。
【0148】
第6の実施の形態によれば、第3~第5の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、トラフ蓋3bの上面が舗装材37で覆われるため、周囲の路面39の舗装部分との視覚的な一体感を増し、見た目が良好である。また、誘導線33をトラフ蓋3bや舗装材37に配置することで、誘導線33のメンテナンスが容易である。
【0149】
次に、ワイヤレス給電装置の構成について説明する。図15(a)は、ワイヤレス給電装置40の構成を示す平面図であり、図15(b)は、長手方向の断面図である。なお、図15(a)は、トラフ蓋3b及びセパレータ11を透視した平面図であり、止水板45は部分断面図である。
【0150】
前述したように、トラフ本体3aの内部にはセパレータ11が配置され、セパレータ11の上方にワイヤレス給電用コイル25が配置される。ワイヤレス給電用コイル25には給電用ケーブル5が接続され、トラフ本体3aの外部に配置された電源装置41と接続される。
【0151】
図15(c)は、図15(a)のB部拡大図である。トラフ本体3aの長手方向の両端部近傍には、それぞれ止水板45が設けられる。止水板45の少なくとも一方には給電用ケーブル5を挿通するための挿通孔49が設けられ、給電用ケーブル5が貫通する。この際、止水板45とトラフ本体3aの隙間と、挿通孔49と給電用ケーブル5との隙間は、止水材47で塞がれる。
【0152】
なお、止水材47としては、例えば、防水パテ、シリコン樹脂、ゴム、エポキシ樹脂または水膨張性不織布の少なくともいずれかを適用可能である。すなわち、止水材47によって、トラフ本体3aの止水構造が形成される。
【0153】
より詳細には、図15(c)に示すように、トラフ本体3aの少なくとも両側の内側面に、止水板45を固定するための所定間隔の平行な縦リブ43が垂直方向に形成される。なお、縦リブ43同士の間の溝に変えて、トラフ本体3aの内面に直接溝を形成してもよい。この場合、溝または縦リブ43の間に止水板45が挿入されて固定される。また、溝または縦リブ43と止水板45の隙間が、防水パテ、シリコン樹脂、ゴム、エポキシ樹脂または水膨張性不織布の少なくともいずれかにより構成される止水材47で止水される。
【0154】
このように、ワイヤレス給電装置40によれば、トラフ本体3aの内部への水の浸入を防ぐことができる。
【0155】
ここで、図1に示すように、トラフ本体3aの両端部には、連結部13a、13bが設けられ、複数のトラフ本体3a同士を連結することができる。図16(a)は、トラフ本体3a同士を連結した状態を示す図であり、図16(b)は、図16(a)のC部拡大図である。なお、給電用ケーブル5やワイヤレス給電用コイル25等の電気部品や、セパレータ11及び止水板45等の構成については図示を省略する。
【0156】
連結部13aは、内側面側に向けて凹形状が形成され、連結部13bは、外側面側に向けて凸形状を有する。このため、連結部13bの凸形状を連結部13aの凹形状に挿入することで、トラフ本体3a同士を連結することが可能である。このようにトラフ本体3a同士を連結することで、必要な長さのワイヤレス給電装置を形成することができる。
【0157】
ここで、連結部13a、13bの嵌合部は、クリアランスが形成される。このようにクリアランスを形成することで、トラフ本体3a同士の連結部で多少の曲がりを形成することができる。このため、敷設レイアウトの自由度が高い。
【0158】
このように、複数のトラフ本体3a同士が連結される場合には、トラフ本体3a同士の連結部13a、13bの隙間が、止水材47aによって塞がれる。止水材47aは、例えば、防水パテ、シリコン樹脂、ゴム、エポキシ樹脂または水膨張性不織布の少なくともいずれかで構成される。止水材47aによって連結部13a、13bの連結部からの水の浸入を抑制するための止水構造が形成される。
【0159】
なお、このように複数のトラフ本体3aを連結する場合には、連結されたトラフ本体3aの両端部側にのみ止水板45を配置すればよい。すなわち、トラフ本体3a同士の連結部近傍には、止水板45を省略してもよい。
【0160】
本発明の各実施形態において、第5の実施形態の図12に示す、トラフ内周面に金属板が被覆されておらずセパレータの表面が金属部材で構成されている11g、11hの場合を除き、自動車給電スタンド用トラフ構造体及び前記トラフ構造体を用いたワイヤレス給電装置は、トラフ内周面に金属板が被覆されているため、トラフ内の冷却効果と電磁遮蔽効果は、トラフ内周面に被覆された金属板により得ることができることから、実施形態の記載に関係なくセパレータは金属製に限らず、樹脂製のものを用いることもできる。また、トラフ内周面に金属板が被覆されていない場合には、セパレータの表面が金属部材で構成されているか、セパレ―タ全体が金属製である必要がある。
【0161】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0162】
例えば、上述した各実施形態及び各構成については、互いに組み合わせることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0163】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h、1i、1j、1k、1l、1m、1n、1o………自動車給電用トラフ構造体
3………ケーブルトラフ
3a………トラフ本体
3b………トラフ蓋
4………段部
5………給電用ケーブル
5a………コントロールケーブル
7………底部
9………側面部
11、11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11h………セパレータ
13a、13b………連結部
15………トラフ蓋固定部材
19………金属板
19a………金属皮膜
21………水平仕切り板
23………垂直仕切り板
25………ワイヤレス給電用コイル
27………ケース部材
28………側壁部
29………突出部
31………樹脂カバー
31a………カバー部材
33………誘導線
35………止水部材
37………舗装材
38………カバー部材
39………路面
40………ワイヤレス給電装置
41………電源装置
43………縦リブ
45………止水板
47、47a………止水材
49………挿通孔
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