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特開2024-113323変位計測用ターゲット及びトンネル坑内変位計測システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113323
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】変位計測用ターゲット及びトンネル坑内変位計測システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/06 20060101AFI20240815BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
G01C15/06 T
G01C15/00 104A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018213
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤木 俊文
(72)【発明者】
【氏名】坂井 一雄
(57)【要約】
【課題】変位計測用ターゲット及びトンネル坑内変位計測システムを提供する。
【解決手段】変位計測用ターゲット1は、サンプリングモアレカメラ20により撮影するものであり、表面に二次元格子状の模様Mが設けられた二次元格子パネル3と、二次元格子パネル3を計測対象に固定する固定具1Aと、を備えている。固定具1Aは、二次元格子パネル3と計測対象との距離を調整可能とする第一移動手段と、二次元格子パネル3をパネル面に直交する直交軸周りに回動可能とする第一回動手段と、二次元格子パネルをパネル面と平行な軸周りに回動可能する第二回動手段と、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプリングモアレカメラにより撮影する変位計測用ターゲットであって、
表面に二次元格子状の模様が設けられた二次元格子パネルと、
前記二次元格子パネルを計測対象に固定する固定具と、を備え、
前記固定具は、
前記二次元格子パネルと前記計測対象との距離を調整可能とする第一移動手段と、
前記二次元格子パネルをパネル面に直交する直交軸周りに回動可能とする第一回動手段と、
前記二次元格子パネルをパネル面と平行な軸周りに回動可能する第二回動手段と、
を備えたことを特徴とする変位計測用ターゲット。
【請求項2】
前記固定具は、
前記計測対象としてのトンネル坑内の壁面に埋め込まれたアンカーに取り付けられる長尺ロッドと、
前記長尺ロッドに一端部が取り付けられるとともに、前記二次元格子パネルに他端部が取り付けられ、前記長尺ロッドの軸方向にスライド移動可能に設けられた連結部材と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の変位計測用ターゲット。
【請求項3】
前記連結部材は、前記長尺ロッドの軸周りに回動可能であることを特徴とする請求項2に記載の変位計測用ターゲット。
【請求項4】
トンネル坑内の壁面に設置された変位計測用ターゲットと、
前記変位計測用ターゲットの表面に設けられた二次元格子状の模様を撮影するサンプリングモアレカメラと、
前記サンプリングモアレカメラで撮影した映像を表示する表示部を備えた管理端末装置と、
を備えたトンネル坑内変位計測システムであって、
前記変位計測用ターゲットは、トンネル坑内の壁面に、トンネルの軸方向に間隔をあけて複数配置され、
前記変位計測用ターゲットは、前記模様が設けられた二次元格子パネルと、前記二次元格子パネルをトンネル横断方向へ移動可能とする第一移動手段と、前記二次元格子パネルをパネル面に直交する直交軸周りに回動可能とする第一回動手段と、前記二次元格子パネルをパネル面と平行な軸周りに回動可能する第二回動手段と、を備え、
トンネルの軸方向に向けた前記サンプリングモアレカメラにより複数の前記変位計測用ターゲットを撮影し、
前記サンプリングモアレカメラにより撮影した映像に基づいて、複数の前記変位計測用ターゲットの前記二次元格子パネル同士の重なりを調整し、
前記表示部には、前記二次元格子パネルの数に対応して略四角形の計測枠が表示され、前記第一回動手段と前記第二回動手段とにより前記各二次元格子パネルの模様の配列方向の縦横と前記計測枠の外形線の縦横とが一致または平行となるように調整する、
ことを特徴とするトンネル坑内変位計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位計測用ターゲット及びトンネル坑内変位計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
格子状の模様を描いた変位計測用ターゲットをサンプリングモアレカメラで撮影し、その撮影データにより変位計測を行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような変位計測用ターゲットとサンプリングモアレカメラとを用いて、トンネル坑内の変位を計測する技術の開発が進められている。
従来は、図10(a)(b)に示すような寸切りボルト50を用いてトンネル坑内の壁面W1に変位計測用ターゲット60を設置していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-76629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、変位計測を精度良く行うためには、サンプリングモアレカメラの画角の縦横の軸と変位計測用ターゲットの模様の縦横の軸が一致または平行となること、及び変位計測用ターゲットがサンプリングモアレカメラに正対するように設置することが望ましい。また、サンプリングカメラの画角内に電線や通信ケーブルといった障害物や作業機械等の障害物が入らないように、変位計測用ターゲットとサンプリングカメラを設置することが望ましい。
しかしながら、従来の変位計測用ターゲット60は、上記設置条件を満たすように寸切りボルトの軸方向の位置調整や、模様の傾き及び向きを調整可能な構成とはなっていなかった。このため、図11(a)(b)に示すように、壁面W1に対する寸切りボルト50の設置角度を予め決めてから固定する必要があり、設置に時間を要していた。また、設置後に、十分な角度調整を行うことも難しかった。
トンネル坑内にも、電線や通信ケーブルといった障害物や作業機械等の障害物が存在する。そのため、サンプリングモアレカメラの画角内に障害物が入らないように変位計測用ターゲットを設置する必要があり、事前に変位計測用ターゲットの設置位置を設計したうえで、角度等を決定しておくことが困難であった。
本発明は、前記した課題を解決し、位置調整が簡単であり、サンプリングモアレカメラによる計測精度を確保できる変位計測用ターゲット及びトンネル坑内変位計測システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明の変位計測用ターゲットは、サンプリングモアレカメラにより撮影するものであり、表面に二次元格子状の模様が設けられた二次元格子パネルと、前記二次元格子パネルを計測対象に固定する固定具と、を備えている。前記固定具は、前記二次元格子パネルと前記計測対象との距離を調整可能とする第一移動手段と、前記二次元格子パネルをパネル面に直交する直交軸周りに回動可能とする第一回動手段と、前記二次元格子パネルをパネル面と平行な軸周りに回動可能とする第二回動手段と、を備えている。
本発明では、固定具の第一移動手段により所定位置に二次元格子パネルを位置調整できるとともに、第一回動手段及び第二回動手段によりサンプリングモアレカメラに対する二次元格子パネルの傾き及び向きを好適に調整できる。これにより、サンプリングモアレカメラとターゲットとの間の障害物を回避しつつ、サンプリングモアレカメラの画角内に適切な傾き及び向きで二次元格子パネルを映り込ませることができる。したがって、計測精度を確保できる。
【0006】
また、前記固定具は、前記計測対象としてのトンネル坑内の壁面に埋め込まれたアンカーに取り付けられる長尺ロッドと、前記長尺ロッドに一端部が取り付けられるとともに、前記二次元格子パネルに他端部が取り付けられ、前記長尺ロッドの軸方向にスライド移動可能に設けられた連結部材と、を備えることが好ましい。
このように構成することで、変位計測用ターゲットの設置後に、二次元格子パネルの位置調整を迅速かつ簡便に行うことができるため、計測時の作業効率が向上する。
【0007】
また、前記連結部材は、前記長尺ロッドの軸周りに回動可能であることが好ましい。
このように構成することで、サンプリングモアレカメラに対する二次元格子パネルの傾きを容易に調整でき、計測時の作業効率が向上する。
【0008】
また、前記課題を解決するために、本発明のトンネル坑内変位計測システムは、トンネル坑内の壁面に設置された変位計測用ターゲットと、前記変位計測用ターゲットの表面に設けられた二次元格子状の模様を撮影するサンプリングモアレカメラと、前記サンプリングモアレカメラで撮影した映像を表示する表示部を備えた管理端末装置と、を備えている。前記変位計測用ターゲットは、トンネル坑内の壁面に、トンネルの軸方向に間隔をあけて複数配置されている。前記変位計測用ターゲットは、前記模様が設けられた二次元格子パネルと、前記二次元格子パネルをトンネル横断方向へ移動可能とする第一移動手段と、前記二次元格子パネルをパネル面に直交する直交軸周りに回動可能とする第一回動手段と、前記二次元格子パネルをパネル面と平行な軸周りに回動可能する第二回動手段と、を備えている。そして、トンネルの軸方向に向けた前記サンプリングモアレカメラにより複数の前記変位計測用ターゲットを撮影し、前記サンプリングモアレカメラにより撮影した映像に基づいて、複数の前記変位計測用ターゲットの前記二次元格子パネル同士の重なりを調整し、前記表示部には、前記二次元格子パネルの数に対応して略四角形の計測枠が表示され、前記第一回動手段と前記第二回動手段とにより前記各二次元格子パネルの模様の配列方向の縦横と前記計測枠の外形線の縦横とが一致または平行となるように調整することを特徴とする。
このトンネル坑内変位計測システムでは、トンネルの軸方向に間隔をあけて複数配置された変位計測用ターゲットをサンプリングモアレカメラで同時計測し、管理端末装置の表示部にその撮影した映像を表示できる。そして、計測時には、第一移動手段によりトンネル坑内の所定位置に二次元格子パネルを位置調整できるとともに、第一回動手段及び第二回動手段によりサンプリングモアレカメラに対する二次元格子パネルの傾き及び向きを調整できるので、表示部の略四角形の計測枠に、各二次元格子パネルの模様を好適に合わせることができる。これにより、サンプリングモアレカメラと各変位計測用ターゲットとの間の障害物を回避しつつ、表示部の計測枠に各二次元格子パネルが適切な傾き及び向きで、かつ各二次元格子パネル同士が干渉しない状態で映り込ませることができる。したがって、計測精度を確保できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る変位計測用ターゲット及びトンネル坑内変位計測システムによれば、位置調整が簡単であり、サンプリングモアレカメラによる計測精度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係るトンネル坑内変位計測システムを示した概略説明図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る変位計測用ターゲットを背面側から見た斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る変位計測用ターゲットを示した図であり、(a)は平面図、(b)は背面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る変位計測用ターゲット及びサンプリングモアレカメラのトンネル坑内における配置例を示した図であり、(a)はトンネル開口側の上方斜め後方から見た模式配置図、(b)はトンネル開口側から見たトンネル横断方向における変位計測用ターゲットの模式配置図、(c)はトンネル開口側から見たトンネル横断方向におけるサンプリングモアレカメラの模式配置図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る変位計測用ターゲットを撮影する際の位置合わせ方法を説明する図であり、(a)は二次元格子パネルの模様が鉛直及び水平方向に合致する場合の位置合わせを示した説明図、(b)は二次元格子パネルの模様が鉛直及び水平方向に対して傾いている場合の位置合わせを示した説明図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る変位計測用ターゲットの設置調整を示した図であり、(a)は二次元格子パネルの傾き及び向きがサンプリングモアレカメラの画角に対応している場合の模様の模式図、(b)は(a)の一部拡大図、(c)はサンプリングモアレカメラの画角に対して二次元格子パネルが傾いている場合の模様の模式図、(d)は(c)の一部拡大図、(d)はサンプリングモアレカメラの画角に対して二次元格子パネルの向きがずれている場合の模様の模式図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る変位計測用ターゲット及びサンプリングモアレカメラのトンネル坑内における配置例を示した模式平面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るトンネル坑内変位計測システムを示した概略説明図である。
図9】本発明の第2実施形態に係るトンネル坑内変位計測システムを示した説明図であり、管理表示装置に映し出された複数の変位計測用ターゲットの二次元格子パネルを示した説明図である。
図10】従来の変位計測用ターゲットの設置例を示した図であり、(a)は背面図、(b)は側面図である。
図11】従来の変位計測用ターゲットの設置例を示した図であり、(a)はトンネル坑内の壁面に対して変位計測用ターゲットが傾いて設置された場合の設置図であり、(b)はトンネル坑内の壁面に対して変位計測用ターゲットの向きがずれて設置された場合の設置図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の変位計測用ターゲット及びトンネル坑内変位計測システムについて適宜図面を参照して詳細に説明する。以下の説明において、変位計測用ターゲットの「前後」「左右」「上下」を言うときは図2等に示す方向を基準とするが、変位計測用ターゲットの使用方法(設置方向)を限定する趣旨ではない。実際の使用状態と一致しない場合もある。また、以下では、変位計測用ターゲットが設置される計測対象として、トンネル坑内の壁面を例に挙げて説明するが、これに限定する趣旨ではなく、掘削面、盛土面、さらには屋外や屋内の構造物等、種々のものが含まれる。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係るトンネル坑内変位計測システムを示した概略模式図である。また、図2は本発明の第1実施形態に係る変位計測用ターゲットを背面側から見た斜視図。図3(a)は同じく背面図、図3(b)は同じく平面図である。
図1に示すように、トンネル坑内変位計測システムS1は、変位計測用ターゲット1と、サンプリングモアレカメラ20と、照明装置30と、管理端末装置40とを備えている。このトンネル坑内変位計測システムS1は、トンネル坑内T1に設置した一つの変位計測用ターゲット1をサンプリングモアレカメラ20で撮影し、その撮影データに基づいて変位計測を行うシステムである。以下詳細に説明する。
【0012】
変位計測用ターゲット1は、図2に示すように長尺ロッド2と連結部材10とを備えた固定具1Aと、二次元格子パネル3とを備えている。長尺ロッド2は、トンネル坑内の横断面方向に延在しており、トンネル坑内の壁面W1に対して固定される。長尺ロッド2の端部には、壁面W1に埋め込まれた図示しないアンカーに螺合されるねじ部2aが形成されている。
二次元格子パネル3は、四角い平板状を呈している。二次元格子パネル3の表面には、図1に示すように、計測対象となる二次元格子状の模様Mが印刷等により付されている。模様Mは、複数の正方形(図1等においては黒色の正方形)を縦横に整列配置してなる。模様Mの縦と横の配列方向は直交している。サンプリングモアレカメラ20は、画角21を調整することにより所定の大きさの計測フレームF1(計測枠)を二次元格子パネル3上に設定し、その計測フレームF1内の模様Mを撮影する。サンプリングモアレカメラ20により撮影された撮影データは、ケーブル22を介して管理端末装置40に送られる。管理端末装置40は、撮影データに基づく計測フレームF1内の模様Mの輝度分布の位相変化により変位計測用ターゲット1の変位(移動距離)を算出する。管理端末装置40は、撮影した映像を表示する表示部41を備えている。管理端末装置40としては、大きな表示部41を有するタブレット装置を利用することができる。
照明装置30は、サンプリングモアレカメラ20の近傍位置に配置されており、二次元格子パネル3に向けて光を照射する。なお、照明装置30は、必ずしも必要ではなく、トンネル坑内の状況に応じて適宜設置すればよい。
【0013】
図2に示す固定具1Aの連結部材10は、二次元格子パネル3と壁面W1との距離を調整可能とする第一移動手段と、二次元格子パネル3をパネル面に直交する直交軸周りに回動可能とする第一回動手段と、二次元格子パネル3を、パネル面と平行な軸周りに回動可能とする第二回動手段と、を備えている。ここで、パネル面と平行な軸とは、パネル面と平行になるすべての軸を含む意味である。第一移動手段により、トンネル横断方向の二次元格子パネル3の位置調整が可能であり、第一回動手段により、二次元格子パネル3のパネル面に直交する直交軸周りの傾きが調整可能であり、さらに、第二回動手段により二次元格子パネル3のパネル面と平行な軸周りの向き(例えば、上下左右方向の向き)が調整可能である。具体的に、連結部材10は、図2図3(a)(b)に示すように、第一連結部材11と、前後ロッド12と、第二連結部材13と、上下ロッド14と、パネル固定部材15とを備えている。このうち、第一連結部材11が第一移動手段として機能し、前後ロッド12が第一回動手段として機能し、上下ロッド14及び第一連結部材11が第二回動手段として機能する。
【0014】
第一連結部材11は、長尺ロッド2と前後ロッド12とを連結する部材であり、連結部材10の一端部をなす部材である。第一連結部材11は、長尺ロッド2の外周面に装着されるリング状の基部11aと、基部11aの外周面から下方(すなわち、長尺ロッド2と交差する方向)へ延在する板状の垂下部11bとを備えている。基部11aは、長尺ロッド2の軸方向に移動可能(スライド移動可能)であり、かつ、長尺ロッド2の軸周り方向に回動可能である。つまり、第一連結部材11は、第一移動手段として機能するとともに、二次元格子パネル3を長尺ロッド2の軸周りに回動可能とする第二回動手段としても機能する。
基部11aの後部には、長尺ロッド2に向けて締め付け可能な第一固定ネジ11cが螺合により取り付けられている。基部11aは、この第一固定ネジ11cを締め付けることにより、長尺ロッド2に対して移動不能及び回動不能に固定される。垂下部11bの下部には、前後方向に貫通する貫通孔11dが形成されている。この貫通孔11dには、前後ロッド12の後部が軸周り方向に回動可能に支持されている。
前後ロッド12は、第一連結部材11と第二連結部材13とを連結する部材であり、長尺ロッド2及び垂下部11bと交差する方向(図2において前後方向)に延在している。前後ロッド12は、垂下部11bに対して前後ロッド12の軸回りに回動可能である。前後ロッド12の後端部には、前後ロッド12を軸周り方向に回動操作するためのハンドル16が取り付けられている。前後ロッド12の前端部には、第二連結部材13が取り付けられている。
第二連結部材13は、円筒状を呈しており、上下方向に貫通する貫通孔13bを備えている。この貫通孔13bには、上下ロッド14が挿通されている。上下ロッド14は、第二連結部材13とパネル固定部材15とを連結する部材であり、長尺ロッド2及び前後ロッド12と交差する方向(図2において上下方向)に延在している。上下ロッド14は、貫通孔13bの軸方向に移動可能であり、かつ、貫通孔13bの軸周り方向に回動可能である。第二連結部材13の左側部には、長尺ロッド2に向けて締め付け可能な第二固定ネジ13cが螺合により取り付けられている。上下ロッド14は、この第二固定ネジ13cを締め付けることにより、第二連結部材13に対して上下移動不能及び回動不能に固定される。
【0015】
パネル固定部材15は、二次元格子パネル3の背面に固定される部材であり、連結部材10の他端部をなす部材である。すなわち、パネル固定部材15は、上下ロッド14と二次元格子パネル3とを連結する部材である。パネル固定部材15は、上下ロッド14の軸方向に移動可能(スライド移動可能)であり、かつ、上下ロッド14の軸周り方向に回動可能である。本実施形態のパネル固定部材15は、左右方向に延在する板状のフランジ部15aと、フランジ部15aから後方に向けて突出する左右一対の支持部15b,15bとを有している。支持部15b,15bは、スリ割り状の隙間15dをあけて相互に対向配置されている、支持部15b,15bの対向面には、上下ロッド14の左右の外周面に当接する円弧状の凹部15eが形成されている。
左側の支持部15bには、上下ロッド14に向けて締め付け可能な第三固定ネジ15cが螺合により取り付けられている。パネル固定部材15は、この第三固定ネジ15cを締め付けることにより、上下ロッド14に対して上下移動不能及び左右回動不能に固定される。
【0016】
次に、図4(a)~(c),図5(a)(b)を参照してトンネル孔内における変位計測用ターゲット1及びサンプリングモアレカメラ20の設置について説明する。図4(a)はトンネル開口側の上方斜め後方から見た模式配置図、(b)はトンネル開口側から見たトンネル横断方向における変位計測用ターゲットの模式配置図、(c)は同じくトンネル開口側から見たトンネル横断方向におけるサンプリングモアレカメラの模式配置図である。図5は変位計測用ターゲット及びサンプリングモアレカメラのトンネル坑内における配置例を示した模式平面図である。図5(a)は二次元格子パネルの模様が鉛直及び水平方向に合致する場合の位置合わせを示した説明図、(b)は二次元格子パネルの模様が鉛直及び水平方向に対して傾いている場合の位置合わせを示した説明図である。
図4(a)~(c)は、トンネル坑内T1の左右の壁面W1及び天井の壁面W1の3箇所に、変位計測用ターゲット1を設置した例を示している。また、サンプリングモアレカメラ20は、3つの変位計測用ターゲット1に対してトンネルの軸方向に1対1の関係に対応するように、設置架台25a,25a及び天井吊り架台25bを介して壁面W1に設置している。変位計測用ターゲット1及びサンプリングモアレカメラ20の設置にあたっては、トンネル坑内T1の図示しない電線や通信ケーブルといった障害物、作業機械等の障害物がサンプリングモアレカメラ20の画角に映り込まないように、配置を調整する。なお、変位計測用ターゲット1及びサンプリングモアレカメラ20の設置台数は、上記した3台の関係に限られることはなく、1台の関係でもよいし、4台以上の関係であってもよい。
【0017】
変位計測用ターゲット1及びサンプリングモアレカメラ20の設置が完了したら、二次元格子パネル3の位置調整を連結部材10により行う。この場合、図5(a)に示すように、サンプリングモアレカメラ20の画角21を大きくして、二次元格子パネル3の全体が例えば画角21の四隅のいずれかに配置されるように映し出す。その後、位置調整手段、第一回動手段及び第二回動手段を操作して、二次元格子パネル3の模様Mの縦横の配列方向を示す軸X2,Y2(二次元格子パネル3の縦辺,横辺)が画角21の外形線の縦横を示す軸X1,Y1(画角21の縦枠,横枠)と一致または平行となるように、かつ、二次元格子パネル3がサンプリングモアレカメラ20に正対するように位置調整する。
具体的に、第一連結部材11を長尺ロッド2の軸方向に移動させて、二次元格子パネル3の壁面W1からの距離を調整する。また、第一連結部材11を長尺ロッド2の軸周り方向に回動させて二次元格子パネル3の向きを調整する。そして、調整を終えたら第一固定ネジ11cを締め付けて、長尺ロッド2に第一連結部材11を固定する。その後、ハンドル16を回動操作して、二次元格子パネル3のパネル面に直交する直交軸周りに回動させて二次元格子パネル3の傾きを調整する。その後、パネル固定部材15を上下ロッド14の軸方向に移動させて二次元格子パネル3の位置を調整するとともに、上下ロッド14の軸周り方向に回動させて二次元格子パネル3の向きを調整する。調整を終えたら第三固定ネジ15cを締め付けて、上下ロッド14に対してパネル固定部材15を固定する。なお、第二固定ネジ13cを緩めることにより、上下ロッド14の軸方向に第二連結部材13を移動させたり、上下ロッド14の軸周り方向に第二連結部材13を移動させたりすることもできる。
【0018】
このような位置調整により、二次元格子パネル3の模様Mの縦横の軸X2,Y2が画角21の縦横の軸X1,Y1と一致または平行に、かつ、二次元格子パネル3がサンプリングモアレカメラ20に正対するようになる。そして、位置調整後に、サンプリングモアレカメラ20の画角21を調整して、計測フレームF1(計測枠)に合わせる。これにより、図6(a)(b)に示すように、計測フレームF1内において、模様Mをなす複数の正方形が二次元格子状に規則正しく配列される。したがって、図5(b)に示すように、サンプリングモアレカメラ20の画角21が傾いている場合(設置状況によりサンプリングモアレカメラ20が傾いている場合)にも、画角21に合うように、かつ、正対するように、二次元格子パネル3を位置調整できる。
仮に、図6(c)(d)に示すように、サンプリングモアレカメラ20の計測フレームF1(画角21)が二次元格子パネル3に対して傾いている場合には、各模様Mが二次元格子状に規則正しく配列されなくなるため、正確な変位測定を行うことができない。また、仮に、図6(e)に示すように、二次元格子パネル3が左右方向に傾いている場合には、各模様Mに遠近感が生じてしまい、各模様Mが二次元格子状に規則正しく配列されなくなる。このため、正確な変位測定を行うことができない。
これに対して、本実施形態は、サンプリングモアレカメラ20の画角21を二次元格子パネル3の模様Mに合わせることができ、サンプリングモアレカメラ20に正対するように調整できるので、サンプリングモアレカメラ20の画角21内に適切な傾き及び向きで二次元格子パネル3を映り込ませることができる、したがって、計測精度を確保できる。
【0019】
図7は、トンネルの曲がり部分における変位計測用ターゲットとサンプリングモアレカメラとの設置例を示した平面模式図である。図7に示すようなトンネルの曲がり部分では、一般に、左右一方の壁面W1側にサンプリングモアレカメラ20を設置し、他方の壁面W1に変位計測用ターゲット1を配置することで変位計測用ターゲット1の見通しが確保し易くなる。しかしながら、このような設置を行うと、電線や通信ケーブルといった障害物や作業機械等の障害物Bがサンプリングモアレカメラ20の画角21に映り込み易くなるため、好ましくない。
本実施形態は、このようなトンネルの曲がり部分においても、左右一方の壁面W1(図7では右側の壁面W1)に対して、変位計測用ターゲット1及びサンプリングモアレカメラ20を設置できる。設置時には、第一移動手段により、長尺ロッド2に沿って二次元格子パネル3をトンネル横断面方向に移動することにより、サンプリングモアレカメラ20の画角21内に計測フレームF1(図6(a)参照)を収めることが可能である。なお、長さの大きい長尺ロッド2に交換することによって、トンネル横断面方向の移動距離をより大きく確保することが可能になり、サンプリングモアレカメラ20の画角21内に計測フレームF1(図6(a)参照)をより好適に収めることができる。
【0020】
以上説明した本実施形態の変位計測用ターゲットによれは、固定具1Aの第一移動手段によりトンネル坑内T1の所定位置に二次元格子パネル3を位置調整できるとともに、第一回動手段及び第二回動手段によりサンプリングモアレカメラ20に対する二次元格子パネル3の傾き及び向きを好適に調整できる。これにより、サンプリングモアレカメラ20と変位計測用ターゲット1との間の障害物を回避しつつ、サンプリングモアレカメラ20の画角21内に適切な傾き及び向きで二次元格子パネル3を映り込ませることができる。したがって、計測精度を確保できる。
【0021】
また、長尺ロッド2と連結部材10とを備えた固定具1Aにより、変位計測用ターゲット1の設置後に、二次元格子パネル3の位置調整を迅速かつ簡便に行うことができるため、変位計測用ターゲット1の設置作業時の作業効率が向上する。特に、変位計測用ターゲット1を切羽付近に設置する場合に迅速な設置が要求されるところ、その要求に好適に対応できる。
また、連結部材10は、長尺ロッド2の軸周りに回動可能であるので、サンプリングモアレカメラ20に対する二次元格子パネル3の傾きを容易に調整でき、計測時の作業効率が向上する。
【0022】
また、トンネル坑内変位計測システムS1は、変位計測用ターゲット1をサンプリングモアレカメラ20で撮影し、管理端末装置40の表示部41にその撮影した映像を表示できる。そして、計測時には、第一移動手段によりトンネル坑内T1の所定位置に二次元格子パネル3を位置調整できるとともに、第一回動手段及び第二回動手段によりサンプリングモアレカメラ20に対する二次元格子パネル3の傾き及び向きを調整できる。これにより、計測フレームF1内に、二次元格子パネル3の模様Mを好適に合わせることができる。これにより、サンプリングモアレカメラ20と変位計測用ターゲット1との間の障害物Bを回避しつつ、サンプリングモアレカメラ20の画角21内に適切な傾き及び向きで二次元格子パネル3を映り込ませることができる。したがって、計測精度を確保できる。
【0023】
(第2実施形態)
次に図8図9を参照して第2実施形態のトンネル坑内変位計測システムについて説明する。図8は本発明の第2実施形態に係るトンネル坑内変位計測システムを示した概略説明図、図9は本発明の第2実施形態に係るトンネル坑内変位計測システムにおいて、管理表示装置に映し出された複数の変位計測用ターゲットの二次元格子パネルを示した説明図である。
本実施形態のトンネル坑内変位計測システムS2が前記第1実施形態と異なるところは、複数の変位計測用ターゲット1をトンネル坑内T1の壁面W1に設置し、複数の二次元格子パネル3を一つのサンプリングモアレカメラ20で撮影して変位計測する点にある。なお、変位計測用ターゲット1は、第1実施形態で説明したものと同様の構成であるため詳細な説明は省略する。
【0024】
図8に示すように、トンネル坑内変位計測システムS2は、複数の変位計測用ターゲット1,1と、一つのサンプリングモアレカメラ20と、管理端末装置40とを備えている。サンプリングモアレカメラ20は、画角21を調整することにより複数(図8では2つ)の二次元格子パネル3,3の全体の模様Mを撮影する。サンプリングモアレカメラ20により撮影された撮影データは、ケーブル22を介して管理端末装置40に送られる。管理端末装置40は、撮影データに基づく複数の二次元格子パネル3,3の全体の模様Mの各輝度分布の位相変化により、各変位計測用ターゲット1,1の変位(移動距離)を算出可能である。管理端末装置40の表示部41には、撮影された各二次元格子パネル3,3の模様Mが表示される。照明装置30は、サンプリングモアレカメラ20の近傍位置に配置されており、各二次元格子パネル3,3の両方に向けて光を照射する。なお、照明装置30は、各二次元格子パネル3,3に対応して個別に配置してもよい。なお、図8では、照明装置30を設置しているが、照明装置30は必ずしも必要ではなく、トンネル坑内の状況に応じて適宜設置すればよい。
【0025】
各変位計測用ターゲット1,1は、トンネルの軸方向に所定の間隔をあけて設置される。この場合、図9に示すように、サンプリングモアレカメラ20の画角21内において、各二次元格子パネル3,3が相互に干渉することなく(トンネルの軸方向に重なることなく)、一つの画角21内に収まるように各変位計測用ターゲット1,1を設置する。本実施形態では、各変位計測用ターゲット1,1を収めた一つの画角21が計測枠(計測フレームF)となる。
設置後の位置調整は、各変位計測用ターゲット1,1について、連結部材10(図2参照)の位置調整手段、第一回動手段及び第二回動手段を操作して、各二次元格子パネル3,3の模様Mの縦横の軸X2,Y2が画角21の縦横の軸X1,Y1(外形線)と一致または平行となるように、かつ、各二次元格子パネル3,3がサンプリングモアレカメラ20に正対するように行う。また、改めて、二次元格子パネル3,3同士が重なり合うことのないように位置調整する。
これにより、サンプリングモアレカメラ20の画角21内において、各二次元格子パネル3,3が相互に干渉することなく、各二次元格子パネル3,3の模様Mの縦横の軸X2,Y2が画角21の縦横の軸X1,Y1と一致または平行に、かつ、各二次元格子パネル3,3がサンプリングモアレカメラ20に正対するように配置される。
なお、変位計測用ターゲット1は、3つ以上設置してもよい。この場合には、その数に対応して各変位計測用ターゲット1がサンプリングモアレカメラ20の画角21内に収まるように設置する。
【0026】
本実施形態のトンネル坑内変位計測システムS2によれば、トンネルの軸方向に間隔をあけて複数配置された変位計測用ターゲット1,1をサンプリングモアレカメラ20で同時計測し、管理端末装置40の表示部41にその撮影した映像を表示できる。そして、計測時には、第一移動手段によりトンネル坑内T1の所定位置に二次元格子パネル3,3を位置調整できるとともに、第一回動手段及び第二回動手段によりサンプリングモアレカメラ20に対する二次元格子パネル3,3の傾き及び向きを調整できるので、表示部41の略四角形の計測枠(画角21)に、各二次元格子パネル3,3の模様Mの縦横を好適に合わせることができる。これにより、サンプリングモアレカメラ20と各変位計測用ターゲット1,1との間の障害物を回避しつつ、表示部41の計測枠の中に各二次元格子パネル3,3が適切な傾き及び向きで、かつ各二次元格子パネル3,3同士が干渉しない状態で映り込ませることができる。したがって、計測精度を確保できる。
【0027】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限られず、各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態は、連結部材10を複数の部材から構成したが、これに限られることはなく、長尺ロッド2に装着される雲台等の位置調整可能な手段を介して二次元格子パネル3を位置調整可能に構成してもよい。
また、二次元格子パネル3の格子状の模様Mは、四角形状のものを採用したが、これに限られることはなく、変位計測を実現可能な形状のものであれば種々の形状のものを採用することができる。
また、二次元格子パネル3の形状は、四角形のものを採用したが、これに限られることはなく、種々の形状のものを採用することができる。また、複数の変位計測用ターゲット1を設置する場合には、ターゲット毎に二次元格子パネル3の形状や格子状の模様Mを変更してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 変位計測用ターゲット
1A 固定具
2 長尺ロッド
3 二次元格子パネル
10 連結部材
20 サンプリングモアレカメラ
21 画角
30 照明装置
40 管理端末装置
41 表示部
F1 計測フレーム(計測枠)
M 模様
S1,S2 トンネル坑内変位計測システム
T1 トンネル坑内
W1 壁面(計測対象)
X1,Y1 画角の外形線の縦横を示す軸
X2,Y2 模様の縦横の配列方向を示す軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11