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特開2024-113324可変バルブタイミング機構の制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113324
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】可変バルブタイミング機構の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 13/02 20060101AFI20240815BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20240815BHJP
   F01L 1/344 20060101ALI20240815BHJP
   F01L 9/22 20210101ALI20240815BHJP
【FI】
F02D13/02 G
F02D45/00 362
F01L1/344
F01L9/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018215
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(72)【発明者】
【氏名】小須田 雅貴
【テーマコード(参考)】
3G018
3G092
3G384
【Fターム(参考)】
3G018AB10
3G018CA13
3G018FA01
3G018FA07
3G018GA11
3G092AA11
3G092DA03
3G092DG08
3G092EA11
3G092FA03
3G092GA01
3G092HA13Z
3G092HE03Z
3G384BA26
3G384CA01
3G384DA13
3G384EB08
3G384FA59Z
3G384FA61Z
(57)【要約】
【課題】クランキング開始後にVVT機構の実角度を早期に算出することができるようにする。
【解決手段】ECM280は、クランクシャフト130における各気筒の基準位置を示す歯欠け部230Cが複数形成されたクランクプレート230の歯部230Bを検知してパルス状のクランク信号を出力するクランク角センサ240、及び気筒判別用のカム信号を出力するカム角センサ260の各出力信号を読み込み、電動式のVVT機構270の実角度を所定の算出式から算出する。ここで、カム信号とクランク信号により歯欠け部230Cであることが判定された歯欠け判定位置から所定角度隔てた位置にある各気筒の基準位置との間の角度が基準位置によって異なる場合、ECM280は、カム信号と基準位置との間の角度に応じて、VVT機構270の実角度を算出する所定の算出式を切り替える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフトにおける各気筒の基準位置を示す歯欠け部が複数形成されたクランクプレートの歯部を検知してパルス状のクランク信号を出力するクランク角センサ、及び気筒判別用のカム信号を出力するカム角センサの各出力信号を読み込み、前記クランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転角度をアクチュエータによって変更する可変バルブタイミング機構の実角度を所定の算出式から算出する、可変バルブタイミング機構の制御装置であって、
前記カム信号と前記クランク信号により前記歯欠け部であることが判定された歯欠け判定位置から所定角度隔てた位置にある各気筒の基準位置との間の角度が当該基準位置によって異なり、
クランキング開始時に、前記カム信号と前記基準位置との間の角度に応じて、前記可変バルブタイミング機構の実角度を算出する所定の算出式を切り替える、
可変バルブタイミング機構の制御装置。
【請求項2】
前記カム信号と前記基準位置との間の角度が前記基準位置間の角度以下であるとき、「可変バルブタイミング機構の基準位置-(基準位置間の角度-カム信号と基準位置との間の角度)」という第1の算出式を使用して、前記可変バルブタイミング機構の実角度を算出し、
前記カム信号と前記基準位置との間の角度が前記基準位置間の角度より大きいとき、「可変バルブタイミング機構の基準位置-(基準位置間の角度×2-カム信号と基準位置との間の角度)」という第2の算出式を使用して、前記可変バルブタイミング機構の実角度を算出する、
請求項1に記載の可変バルブタイミング機構の制御装置。
【請求項3】
前記カム信号と前記基準位置との間の角度は、前記カム信号とその後のクランク信号との間の角度、前記その後のクランク信号と前記基準位置との間の角度、及び前記カム信号と前記基準位置との間において変化した前記可変バルブタイミング機構の角度変化量に基づいて算出される、
請求項1に記載の可変バルブタイミング機構の制御装置。
【請求項4】
前記可変バルブタイミング機構の角度変化量は、前記アクチュエータの操作量から推定される、
請求項3に記載の可変バルブタイミング機構の制御装置。
【請求項5】
前記アクチュエータは、出力軸の回転角度を検知可能な電動モータであって、
前記可変バルブタイミング機構の角度変化量は、前記電動モータの出力軸の回転角度から算出される、
請求項3に記載の可変バルブタイミング機構の制御装置。
【請求項6】
前記可変バルブタイミング機構の実角度の算出は、前記カム信号及び前記クランク信号の基準位置に基づいて前記可変バルブタイミング機構の実角度が算出可能となるまで、エンジン回転速度が所定回転速度以下であるとき、又はクランキング開始から所定時間経過するまで行われる、
請求項1~請求項4のいずれか1つに記載の可変バルブタイミング機構の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転角度を変更する可変バルブタイミング(VVT:Variable Valve Timing)機構の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クランキング開始時におけるVVT機構の実角度を早期に算出するために、特開2017-8729号公報(特許文献1)に記載されるような技術が提案されている。特許文献1に記載された技術では、クランキング開始時の初回のカム信号とその後に検出されるクランク信号の最初の基準位置とに基づいて、VVT機構の実角度が算出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-8729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カム信号は、カムシャフトが1回転する間に、気筒数に応じた等間隔ごとに出力され、クランク信号は、カムシャフトの2倍の回転速度で回転するクランクシャフトが2回転する間に、気筒数に応じた等間隔ごとに出力される。従って、4気筒や6気筒などのエンジンの場合には、カム信号とクランク信号の基準位置との間の角度が一定となり、特許文献1で提案された技術によってVVT機構の実角度を早期に算出することができる。しかしながら、3気筒や5気筒などのエンジンの場合には、カム信号とクランク信号の基準位置との間の角度が基準位置に応じて変化するため、特許文献1で提案された技術によってVVT機構の実角度を早期に算出することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、カム信号とクランク信号の基準位置との間の角度が基準位置に応じて変化する3気筒や5気筒などのエンジンであっても、クランキング開始後にVVT機構の実角度を早期に算出することができる、VVT機構の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
VVT機構の制御装置は、クランクシャフトにおける各気筒の基準位置を示す歯欠け部が複数形成されたクランクプレートの歯部を検知してパルス状のクランク信号を出力するクランク角センサ、及び気筒判別用のカム信号を出力するカム角センサの各出力信号を夫々読み込み、クランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転角度をアクチュエータにより変更するVVT機構の実角度を所定の算出式から算出する。ここで、カム信号とクランク信号により歯欠け部であることが判定された歯欠け位置から所定角度隔てた位置にある各気筒の基準位置との間の角度が基準位置によって異なり、VVT機構の制御装置は、クランキング開始時に、カム信号と基準位置との間の角度に応じて、VVT機構の実角度を算出する所定の算出式を切り替える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カム信号とクランク信号の基準位置との間の角度が基準位置に応じて変化する3気筒や5気筒などのエンジンであっても、クランキング開始時にVVT機構の実角度を早期に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】4サイクルエンジンの制御システムの一例を示す概略図である。
図2】クランクプレートの一例を示す平面図である。
図3】カムプレートの一例を示す平面図である。
図4】VVT機構の一例を示す斜視図である。
図5】4気筒や6気筒などのエンジンにおけるカム信号とクランク信号の関連性の説明図である。
図6】3気筒や5気筒などのエンジンにおけるカム信号とクランク信号の関連性の説明図である。
図7】第1のVVT制御処理の一例を示すフローチャートである。
図8】第1の算出式の導出方法の説明図である。
図9】第2の算出式の導出方法の説明図である。
図10】第1のVVT制御処理による効果の説明図である。
図11】第1の算出式によりVVT機構の実角度を算出したときのVVT機構の実角度及び算出角度の変化状態の説明図である。
図12】第2の算出式によりVVT機構の実角度を算出したときのVVT機構の実角度及び算出角度の変化状態の説明図である。
図13】第2のVVT制御処理の一例を示すフローチャートである。
図14】第2のVVT制御処理の一例を示すフローチャートである。
図15】第2のVVT制御処理の一例を示すフローチャートである。
図16】カム信号とクランク信号の基準位置との間において変化したVVT機構の角度変化量を算出する方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳述する。
図1は、3気筒の4サイクルエンジンの制御システムの一例を示している。なお、本実施形態は、3気筒の4サイクルエンジンに限らず、5気筒の4サイクルエンジンなどにも適用することができる。
【0010】
エンジン100は、シリンダブロック110と、ピストン120と、クランクシャフト130と、コネクティングロッド140と、シリンダヘッド150と、を備えている。シリンダブロック110には、ピストン120が往復動可能に嵌挿されるシリンダボア110Aが形成されている。シリンダブロック110の下部には、図示しないベアリングを介して、シリンダブロック110に対して相対回転可能にクランクシャフト130が配置されている。そして、ピストン120は、コネクティングロッド140を介して、クランクシャフト130に相対回転可能に連結されている。
【0011】
シリンダヘッド150には、吸気を導入する吸気ポート150Aと、排気を導出する排気ポート150Bと、が夫々形成されている。そして、シリンダヘッド150がシリンダブロック110の上面に締結されることで、シリンダブロック110のシリンダボア110A、ピストン120の冠面及びシリンダヘッド150の下面によって区画される領域が燃焼室160として機能する。燃焼室160を臨む吸気ポート150Aの開口端には、吸気カムシャフト170によって開閉駆動される吸気バルブ180が配置されている。また、燃焼室160を臨む排気ポート150Bの開口端には、排気カムシャフト190によって開閉駆動される排気バルブ200が配置されている。
【0012】
燃焼室160を臨むシリンダヘッド150の所定箇所には、燃焼室160に燃料を噴射する電磁式の燃料噴射弁210と、燃料と吸気との混合気を点火する点火プラグ220と、が夫々取り付けられている。なお、燃料噴射弁210は、燃焼室160に燃料を直接噴射する構成に限らず、吸気ポート150A又はこれらの両方に燃料を噴射する構成であってもよい。
【0013】
クランクシャフト130の端部には、クランクプレート230が取り付けられている。クランクプレート230は、図2に示すように、円板形状のプレート部230Aと、プレート部230Aの外周端から半径外方に向かって任意の所定角度ごとに延びる複数の歯部230Bと、が一体化された被検知部材である。また、クランクプレート230には、歯部230Bの一部が切り取られることで、クランク角度0°及び120°に対応する各気筒の角度基準位置、即ち、吸気カムシャフト170が1回転するときのクランク角度0°、120°、360°及び480°に対応する各気筒の角度基準位置を示す歯欠け部230Cが形成されている。ここで、歯欠け部230Cは、2つの歯部230Bを切り取ることで形成されているが、任意数の歯部230Bを切り取って歯欠け部230Cを形成するようにしてもよい。なお、図示の3気筒エンジンでは、クランクプレート230は、例えば、所定角度を10°とし、32個の歯部230Bと、2個の歯部230Bが切り取られた30°に亘る2つの歯欠け部230Cと、を有している。
【0014】
シリンダブロック110の下部であって、クランクプレート230の外周端に対面する所定箇所には、クランクプレート230の歯部230Bを検知してパルス状のクランク信号を出力するクランク角センサ240が取り付けられている。従って、クランク角センサ240は、クランクシャフト130の回転に伴って、歯部230Bを検知した所定角度ごとの角度位置信号と、歯欠け部230Cを検知したクランク角度0°及び120°に対応する各気筒の角度基準位置信号と、を含むクランク信号を出力する。
【0015】
吸気カムシャフト170の端部には、カムプレート250が取り付けられている。カムプレート250は、図3に示すように、円板形状のプレート部250Aと、プレート部250Aの外周端から半径外方に向かって延びる複数の歯部250Bと、が一体化された被検知部材である。3気筒エンジンの場合、カムプレート250には、120°ごとに気筒判別用の3つの歯部250Bが設けられている。
【0016】
また、シリンダヘッド150の上部であって、カムプレート250の外周端に対面する所定箇所には、カムプレート250の歯部250Bを検知してパルス状のカム信号を出力するカム角センサ260が取り付けられている。従って、カム角センサ260は、吸気カムシャフト170が1回転する間に、歯部250Bを検知した0°、120°及び240°でカム信号を出力、要するに、クランク角度0°、240°及び480°に対応する角度で気筒判別用のカム信号を出力する。
【0017】
さらに、吸気バルブ180を開閉駆動する吸気カムシャフト170の端部には、クランクシャフト130に対する吸気カムシャフト170の相対回転角度を変化させることで、吸気バルブ180のバルブタイミングを変更する電動式のVVT機構270が取り付けられている。VVT機構270は、図4に示すように、クランクシャフト130の回転駆動力を伝達するカムチェーン(図示省略)が巻き回されるカムスプロケット270Aと一体化され、減速機が内蔵された電動モータ270Bにより、カムスプロケット270Aに対して吸気カムシャフト170を相対回転させることで、バルブタイミングを進角又は遅角させる。図4において符号270Cで示すものは、電動モータ270Bへの電力及び制御信号を供給するハーネスを接続するためのコネクタである。ここで、VVT機構270は、吸気バルブ180に限らず、吸気バルブ180及び排気バルブ200のうち少なくとも吸気バルブ180に配置されていればよい。なお、VVT機構270の電動モータ270Bが、アクチュエータの一例として挙げられる。
【0018】
クランク角センサ240のクランク信号、及びカム角センサ260のカム信号は、マイクロコンピュータを内蔵したエンジンコントロールモジュール(ECM)280に入力されている。また、ECM280には、クランク角センサ240及びカム角センサ260の各出力信号に加え、エンジン100の回転速度Neを検出する回転速度センサ290、エンジン100の負荷Qを検出する負荷センサ300、エンジン100の水温Twを検出する水温センサ310、及び排気中の空燃比ABFを検出する空燃比センサ320の各出力信号が入力されている。ここで、エンジン100の負荷Qとしては、例えば、吸気流量、吸気負圧、過給圧力、アクセル開度、スロットル角など、エンジン100の要求トルクと密接に関連する状態量を使用することができる。なお、ECM280は、回転速度センサ290に代えて、クランク角センサ240及びカム角センサ260の各出力信号からエンジン100の回転速度Neを算出するようにしてもよい。
【0019】
ECM280は、マイクロコンピュータの不揮発性メモリに格納されたアプリケーションプログラムを実行することで、以下のように、クランク角センサ240、カム角センサ260、回転速度センサ290、負荷センサ300、水温センサ310及び空燃比センサ320の各出力信号に応じて、燃料噴射弁210、点火プラグ220及びVVT機構270を夫々電子制御する。
【0020】
ECM280は、回転速度センサ290及び負荷センサ300から回転速度Ne及び負荷Qを夫々読み込み、これらに基づいてエンジン運転状態に応じた基本燃料噴射量を算出する。また、ECM280は、水温センサ310から水温Twを読み込み、基本燃料噴射量を水温Twで補正した燃料噴射量を算出する。そして、ECM280は、エンジン運転状態に応じたタイミングで、燃料噴射量に応じた駆動信号を燃料噴射弁210に出力し、燃料噴射弁210から燃焼室160に燃料を噴射させる。さらに、ECM280は、燃料噴射後のエンジン運転状態に応じたタイミングで、点火プラグ220に駆動信号を出力し、燃料と吸気との混合気を点火する。このとき、ECM280は、空燃比センサ320から空燃比ABFを読み込み、排気中の空燃比ABFが目標空燃比に近づくように燃料噴射弁210をフィードバック制御する。
【0021】
また、ECM280は、回転速度センサ290及び負荷センサ300から回転速度Ne及び負荷Qを夫々読み込み、エンジン運転状態に応じたVVT機構270の目標角度を算出する。そして、ECM280は、少なくともクランク角センサ240及びカム角センサ260の各出力信号を読み込み、これらから求められるVVT機構270の実角度が目標角度に近づくように、VVT機構270の電動モータ270Bに供給する電流を増減制御する。
【0022】
ここで、VVT機構270の制御について詳細に説明する前に、従来技術の問題点について説明する。
4気筒や6気筒などのエンジンでは、図5に示すように、カム信号からクランク信号の基準位置までの角度が、クランク信号の基準位置にかかわらず一定となる。このため、引用文献1で提案された技術によってVVT機構270の実角度を早期に算出することができる。しかしながら、3気筒や5気筒などのエンジンでは、クランク信号の基準位置が等角度になっていないことにより、図6に示すように、カム信号からクランク信号の基準位置までの角度が、クランク信号の基準位置によって異なっている。このため、引用文献1で提案された技術によってVVT機構270の実角度を早期に算出することができない可能性がある。
【0023】
そこで、本実施形態で提案する技術では、VVT機構270を制御するECM280は、クランクシャフト130における各気筒の基準位置を示す歯欠け部230Cが複数形成されたクランクプレート230の歯部230Bを検知してパルス状のクランク信号を出力するクランク角センサ240、及び気筒判別用のカム信号を出力するカム角センサ260の各出力信号を読み込み、VVT機構270の実角度を所定の算出式から算出する。ここで、本実施形態で提案する技術では、カム信号とクランク信号により歯欠け部230Cであることが判定された歯欠け判定位置から所定角度隔てた位置にある各気筒の基準位置との間の角度が、クランク信号の基準位置によって異なる構成であることを前提とする。そして、ECM280は、クランキング開始時に、カム信号と基準位置との間の角度に応じて、VVT機構270の実角度を算出する所定の算出式を切り替える。以下、このようなECM280の詳細について説明する。
【0024】
図7は、ECM280が起動されたことを契機として、ECM280に内蔵されたマイクロコンピュータが所定時間ごとに繰り返し実行する、第1のVVT制御処理の一例を示している。なお、ECM280は、マイクロコンピュータの不揮発性メモリに予め格納されたアプリケーションプログラムに従って、第1のVVT制御処理を実行する(以下同様。)。
【0025】
ステップ10(図7では「S10」と略記する。以下同様。)では、ECM280が、本提案技術によるVVT機構270の実角度を算出するVVT角度算出条件が成立しているか否かを判定する。VVT角度算出条件は、例えば、従来方式によりVVT機構270の実角度を算出できない第1の条件、エンジン回転速度が所定回転速度以下である第2の条件、又はクランキング開始から所定時間経過するまでの第3の条件のいずれかとすることができる。ここで、従来方式の一例では、例えば、クランク信号の基準位置とその直後に読み込まれたカム信号に基づいて、要するに、これらの相関関係に基づいてVVT機構270の実角度を算出することができる。また、所定回転速度は、エンジン100のクランキングが終了する回転速度、所定時間は、エンジン100のクランキングが終了すると見做される時間とすることができる。そして、ECM280は、VVT角度算出条件が成立していると判定すれば(Yes)、処理をステップ11へと進める。一方、ECM280は、VVT角度算出条件が成立していないと判定すれば(No)、処理をステップ17へと進める。
【0026】
ステップ11では、ECM280が、前回の制御サイクルから今回の制御サイクルまでの間にクランク角センサ240からクランク信号が入力されたか否か、具体的には、クランク角度を示すパルス信号が入力されたか否かを判定する。そして、ECM280は、クランク信号が入力されたと判定すれば(Yes)、処理をステップ12へと進める。一方、ECM280は、クランク信号が入力されていないと判定すれば(No)、今回の制御サイクルにおける第1のVVT制御処理を終了させる。
【0027】
ステップ12では、ECM280が、時間的に連続するクランク信号を解析して、各気筒の基準位置であるか否か、要するに、クランク信号により歯欠け部230Cであることを判定した歯欠け判定位置から所定角度隔てた位置にある各気筒の基準位置であるか否かを判定する。そして、ECM280は、各気筒の基準位置であると判定すれば(Yes)、処理をステップ13へと進める。一方、ECM280は、各気筒の基準位置でないと判定すれば(No)、今回の制御サイクルにおける第1のVVT制御処理を終了させる。
【0028】
ステップ13では、ECM280が、カム信号とクランク信号の基準位置との間の角度、即ち、カム角センサ260からカム信号が出力された時点のクランク角度から、クランク角センサ240から出力されたクランク信号によって基準位置が検知された時点のクランク角度までの角度を算出する。
【0029】
ステップ14では、ECM280が、カム信号とクランク信号の基準位置との間の角度がクランク信号の基準位置間の角度以下であるか否かを判定する。ここで、ECM280は、ステップ12において各気筒の基準位置であると判定した時点のクランク角度について、時間的に連続する2つのクランク角度を一時的に記憶し、これらの差分から基準位置間の角度を算出することができる。そして、ECM280は、カム信号とクランク信号の基準位置との間の角度が基準位置間の角度以下であると判定すれば(Yes)、処理をステップ15へと進める。一方、ECM280は、カム信号とクランク信号の基準位置との間の角度が基準位置間の角度より大きいと判定すれば(No)、処理をステップ16へと進める。
【0030】
ステップ15では、ECM280が、第1の算出式を使用して、VVT機構270の基準位置学習値、カム信号とクランク信号の基準位置との間の角度、及びクランク信号の基準位置間の角度から、VVT機構270の実角度を算出する。基準位置学習値は、VVT機構270の遅角側への変位がストッパによって規制された状態のクランク角度、要するに、クランクシャフト130の任意の角度位置からVVT機構270の遅角側への変位が規制された位置までの角度であって、例えば、ECM280の製造時や起動時に学習されてマイクロコンピュータの不揮発性メモリに記憶されたものである。具体的には、ECM280は、第1の算出式「VVT機構の基準位置学習値-(基準位置間の角度-カム信と基準位置との間の角度)」に対して各変数を代入し、VVT機構270の実角度を算出する。その後、ECM280は、今回の制御サイクルにおける第1のVVT制御処理を終了させる。
【0031】
ステップ16では、ECM280が、第2の算出式を使用して、VVT機構270の基準位置学習値、カム信号とクランク角度の基準位置との間の角度、及びクランク信号の基準位置間の角度から、VVT機構270の実角度を算出する。具体的には、ECM280は、第2の算出式「VVT機構の基準位置学習値-(基準位置間の角度×2-カム信号と基準位置との間の角度)」に対して各変数を代入し、VVT機構270の実角度を算出する。その後、ECM280は、今回の制御サイクルにおける第1のVVT制御処理を終了させる。
【0032】
ステップ17では、ECM280が、上述した従来方式により、VVT機構270の実角度を算出する。その後、ECM280は、今回の制御サイクルにおける第1のVVT制御処理を終了させる。
【0033】
かかる第1のVVT制御処理によれば、VVT角度算出条件が成立している場合に、本実施形態で提案する方法でVVT機構270の実角度が算出される。本実施形態で提案するVVT機構270の実角度の算出処理は、従来方式の算出処理よりも早期にVVT機構270の実角度が算出できるものの、従来方式よりも演算負荷が若干大きいという特性を有している。このため、本実施形態で提案するVVT機構270の実角度を算出する条件を限定することによって、ECM280の演算負荷の増加を抑制することができる。なお、クランキング中は、クランキング終了後よりもエンジン100の回転速度が低いため、演算負荷が若干大きくても問題となる不具合が発生する可能性がない。
【0034】
そして、ECM280は、クランク信号が入力され、かつこれによって各気筒の基準位置であると判定すると、カム信号とクランク信号の基準位置との間の角度を算出する。このように算出されたカム信号とクランク信号の基準位置との間の角度がクランク信号の基準位置間の角度以下であると、ECM280は、第1の算出式を使用して、VVT機構270の実角度を算出する。一方、カム信号とクランク信号の基準位置との間の角度がクランク信号の基準位置間の角度より大きいと、ECM280は、第2の算出式を使用して、VVT機構270の実角度を算出する。要するに、カム信号とクランク信号の基準位置との間の角度が基準位置に応じて変化することを考慮し、ECM280は、カム信号とクランク信号の基準位置との間の角度に応じて、VVT機構270の実角度を算出する算出式を切り替える。
【0035】
ここで、第1の算出式、及び第2の算出式の導出方法について説明する。
カム信号とクランク信号の基準位置との間の角度が基準位置間の角度以下である場合は、図8に示すように、クランクシャフト130の回転角度が比較的小さい状態(例えば、90°など)でエンジン100が始動された場合に該当する。同図に示すように、クランクシャフト130の任意の角度位置からVVT機構270の制御範囲における最遅角位置までの角度である基準位置学習値を(1)、クランクシャフト130の任意の角度位置からカム信号までの角度を(2)、カム信号から各気筒の基準位置までの角度を(3)、クランクシャフト130の任意の角度位置からクランク信号の基準位置までの角度を(4)で表す。すると、エンジン停止時にエンジン始動に備えてVVT機構270を最遅角位置と最進角位置との中間に制御したVVT機構270の実角度は、「(1)-(2)=(1)-((4)-(3))」、即ち、「(1)-((4)-(3))」という第1の算出式により算出することができる。
【0036】
カム信号とクランク信号の基準位置との間の角度が基準位置間の角度より大きい場合は、図9に示すように、クランクシャフト130の回転角度が比較的大きい状態(例えば、330°など)でエンジン100が始動された場合に該当する。同図に示すように、クランクシャフト130の任意の角度位置からVVT機構270の制御範囲における最遅角位置までの角度である基準位置学習値を(1)、クランクシャフト130の任意の角度位置からカム信号までの角度を(2)、カム信号から各気筒の基準位置までの角度を(3)、クランクシャフト130の任意の角度位置からクランク信号の基準位置までの角度を(4)×2で表す。すると、エンジン停止時にエンジン始動に備えてVVT機構270を最遅角位置と最進角位置との中間に制御したVVT機構270の実角度は、「(1)-(2)=(1)-((4)×2-(3))」、即ち、「(1)-((4)×2-(3))」という第2の算出式により算出することができる。
【0037】
VVT角度算出条件が成立していなければ、本実施形態で提案するVVT機構270の実角度の算出方法に代えて、例えば、クランク信号の基準位置とその直後に読み込まれたカム信号との相関関係によってVVT機構270の実角度を算出する従来方式によって、VVT機構270の実角度を算出することができる。従って、VVT機構270の実角度の算出方法が従来方式に切り替えられた後には、より演算負荷の小さい方法でVVT機構270の実角度を算出することができる。
【0038】
以上のような理由により、図10に示すように、連続するカム信号間に各気筒の基準位置が2つある場合、従来技術では、その後のカム信号を待ってVVT機構270の実角度を算出していたものが、本実施形態の提案技術では、カム信号の直後にある基準位置を待ってVVT機構270の実角度を算出することができる。このため、クランク信号の基準位置から次のカム信号までクランクシャフト130が回転することを待つ必要性がなくなり、少なくとも、この時間だけVVT機構270の実角度を早期に算出することができる。
【0039】
なお、VVT機構270の実角度が算出される前には、図11又は図12に示すように、VVT機構270の算出角度が0°になっており、VVT機構270の実角度から乖離したものとなっている。しかしながら、本実施形態の提案技術でVVT機構270の実角度が算出できたときには、VVT機構270の実角度と算出角度とが等しくなることから、その後におけるVVT機構270の制御精度を向上させることができる。
【0040】
図13図15は、ECM280が起動されたことを契機として、ECM280に内蔵されたマイクロコンピュータが所定時間ごとに繰り返し実行する、第2のVVT制御処理の一例を示している。なお、第1のVVT制御処理と同様な処理については、重複説明を避ける目的で、その説明を簡単にするものとする。必要であれば、第1のVVT制御処理の説明を参照されたい。
【0041】
ステップ20では、ECM280が、VVT角度算出条件が成立しているか否かを判定する。そして、ECM280は、VVT角度算出条件が成立していると判定すれば(Yes)、処理をステップ21へと進める。一方、ECM280は、VVT角度算出条件が成立していないと判定すれば(No)、処理をステップ39へと進める。
【0042】
ステップ21では、ECM280が、カム信号とクランク信号の基準位置との間において変化したVVT機構270の角度変化量を求めるべく、所定時間間隔に設定された定時ジョブを実行するタイミングであるか否かを判定する。ここで、所定時間間隔は、例えば、必要とされる制御精度などを考慮して適宜決定することができる。そして、ECM280は、定時ジョブを実行するタイミングであると判定すれば(Yes)、処理をステップ22へと進める。一方、ECM280は、定時ジョブを実行するタイミングでないと判定すれば(No)、処理をステップ23へと進める。
【0043】
ステップ22では、ECM280が、例えば、マイクロコンピュータの揮発性メモリに確保された角度変化量を積算するためのカウンタに対して、前回の制御サイクルから今回の制御サイクルまでの間に変化したVVT機構270の角度変化量を逐次加算することで、カム信号とクランク信号の基準位置との間において変化したVVT機構270の角度変化量を更新する。
【0044】
ステップ23では、ECM280が、前回の制御サイクルから今回の制御サイクルまでの間に、カム角センサ260からカム信号の入力があったか否かを判定する。そして、ECM280は、カム信号の入力があったと判定すれば(Yes)、処理をステップ24へと進める。一方、ECM280は、カム信号の入力がなかったと判定すれば(No)、処理をステップ27へと進める。
【0045】
ステップ24では、ECM280が、例えば、マイクロコンピュータに備えられた計時機能を利用して、カム信号が入力される直前のクランク信号からカム信号が入力されるまでに要した時間を算出する。
【0046】
ステップ25では、ECM280が、カム信号からクランク信号の基準位置までの角度信号カウンタをクリア、要するに、0にリセットする。
ステップ26では、ECM280が、前回の制御サイクルから今回の制御サイクルまでの間に変化したVVT機構270の角度変化量を積算するためのカウンタをクリア、要するに、0にリセットする。
【0047】
ステップ27では、ECM280が、前回の制御サイクルから今回の制御サイクルの間に、クランク角センサ240からクランク信号の入力があったか否かを判定する。そして、ECM280は、クランク信号の入力があったと判定すれば(Yes)、処理をステップ28へと進める。一方、ECM280は、クランク信号の入力がなかったと判定すれば(No)、今回の制御サイクルにおける第2のVVT制御処理を終了させる。
【0048】
ステップ28では、ECM280が、前回の制御サイクルから今回の制御サイクルまでの間において、時間的に連続する2つのクランク信号の間にカム信号の入力があったか否か、要するに、クランク角センサ240がクランクプレート230の歯欠け部230Cを検知したか否かを判定する。そして、ECM280は、時間的に連続する2つのクランク信号間にカム信号の入力があったと判定すれば(Yes)、処理をステップ29へと進める。一方、ECM280は、時間的に連続する2つのクランク信号間にカム信号の入力がなかったと判定すれば(No)、処理をステップ30へと進める。
【0049】
ステップ29では、ECM280が、カム信号からクランク信号までの角度を算出する。具体的には、ECM280は、クランク角センサ240から入力された時間的に連続する複数のクランク信号から、クランクプレート230の歯欠け部230Cにより形成される歯欠け位置であるか否かを判定する。そして、ECM280は、歯欠け位置であると判定すると、「(クランク信号からカム信号までの時間/連続する2つのクランク信号の間の時間)×クランク信号間角度×3」という算出式から、カム信号からクランク信号までの角度を算出する。また、ECM280は、歯欠け位置でないと判定すると、「(クランク信号からカム信号までの時間/連続する2つのクランク信号の間の時間)×クランク信号間角度」という算出式から、カム信号からクランク信号までの角度を算出する。
【0050】
ステップ30では、ECM280が、クランク角センサ240から入力された時間的に連続する複数のクランク信号から、クランクプレート230の歯欠け部230Cにより形成される歯欠け位置であるか否かを再度判定する。そして、ECM280は、歯欠け位置であると判定すれば(Yes)、処理をステップ31へと進める。一方、ECM280は、歯欠け位置でないと判定すれば(No)、処理をステップ32へと進める。なお、歯欠け位置であるか否かの判定は、ステップ29の判定結果を利用してもよい。
【0051】
ステップ31では、ECM280が、カム信号からクランク信号の基準位置までの角度信号カウンタに3を加算する。その後、ECM280は、処理をステップ33へと進める。
ステップ32では、ECM280が、角度信号カウンタに1を加算する。その後、ECM280は、処理をステップ33へと進める。
【0052】
ステップ33では、ECM280が、例えば、歯欠け位置により特定される位置からのクランク信号をカウントすることで、クランク信号の基準位置であるか否かを判定する。そして、ECM280は、基準位置であると判定すれば(Yes)、処理をステップ34へと進める。一方、ECM280は、基準位置でないと判定すれば(No)、今回の制御サイクルにおける第2のVVT制御処理を終了させる。
【0053】
ステップ34では、ECM280が、「(カム信号からクランク信号の基準位置までの角度信号カウンタ-1)×クランク信号間角度」という算出式から、クランク信号からクランク信号の基準位置までの角度を算出する。
【0054】
ステップ35では、ECM280が、「カム信号からクランク信号までの角度+クランク信号からクランク信号の基準位置までの角度+カム信号とクランク信号の基準位置との間において変化したVVT機構の角度変化量」という算出式から、カム信号からクランク信号の基準位置までの角度を算出する。
【0055】
ステップ36では、ECM280が、カム信号からクランク信号の基準位置までの角度が基準位置間の角度以下であるか否かを判定する。そして、ECM280は、カム信号からクランク信号の基準位置までの角度が基準位置間の角度以下であると判定すれば(Yes)、処理をステップ37へと進める。一方、ECM280は、カム信号からクランク信号の基準位置までの角度が基準位置間の角度より大きいと判定すれば(No)、処理をステップ38へと進める。
【0056】
ステップ37では、ECM280が、第1の算出式を使用して、VVT機構270の実角度を算出し、その後、今回の制御サイクルにおける第2のVVT制御処理を終了させる。
ステップ38では、ECM280が、第2の算出式を使用して、VVT機構270の実角度を算出し、その後、今回の制御サイクルにおける第2のVVT制御処理を終了させる。
【0057】
ステップ39では、ECM280が、従来方式によりVVT機構270の実角度を算出し、その後、今回の制御サイクルにおける第2のVVT制御処理を終了させる。
【0058】
かかる第2のVVT制御処理によれば、先に説明した第1のVVT制御処理に加えて、定時ジョブ間のVVT機構270の角度変化量を逐次積算することで、カム信号とクランク信号の基準位置との間において変化したVVT機構270の変化量が算出される。また、カム信号が入力されたことを契機として、クランク信号からカム信号までの時間が算出される。さらに、前回の制御サイクルから今回の制御サイクルまでの間においてクランク信号間にカム信号が入力されると、クランク信号による歯欠け位置の判定結果に応じて、カム信号からクランク信号までの角度が算出される。さらにまた、カム信号からクランク信号の基準位置までのクランク信号の数をカウントする角度信号カウンタが、クランク信号による歯欠け位置の判定結果に応じた数だけインクリメントされる。
【0059】
そして、クランク信号の基準位置になると角度信号カウンタ及びクランク信号間の角度に応じて、カム信号の直後に読み込まれたクランク信号から次のクランク信号の基準位置までの角度が算出される。また、カム信号からクランク信号までの角度、クランク信号からクランク信号の基準位置までの角度、及びカム信号とクランク信号の基準位置との間において変化したVVT機構270の角度変化量に応じて、カム信号からクランク信号の基準位置までの角度が算出される。その後、図16に示すように、カム信号からその後のクランク信号までの角度(a)、クランク信号からクランク信号の基準位置までの角度(b)、及びカム信号とその後のクランク信号の基準位置との間において変化したVVT機構270の角度変化量(c)に応じて、カム信号からクランク信号の基準位置までの角度が算出される。
【0060】
従って、カム信号とその後のクランク信号の基準位置との間において変化したVVT機構270の角度変化量を考慮することによって、カム信号からクランク信号の基準位置までの角度がより高精度に算出され、これによって、VVT機構270の制御精度を向上させることができる。
【0061】
なお、カム信号とその後のクランク信号の基準位置との間において変化したVVT機構270の角度変化量は、アクチュエータとしての電動モータ270Bの操作量から推定するようにしてもよい。このようにすれば、VVT機構270の電動モータ270Bの回転角度を検出するモータ回転角度センサが不要となり、例えば、車両にVVT機構270を搭載する費用を低減させることができる。また、アクチュエータとして、出力軸の回転角度を検知可能な電動モータ270Bとすることで、電動式のVVT機構270に対して容易に本提案技術を適用することができる。
【0062】
なお、当業者であれば、様々な上記実施形態の技術的思想について、その一部を省略したり、その一部を適宜組み合わせたり、その一部を置換したりすることで、新たな実施形態を生み出せることを容易に理解できるであろう。
【0063】
その一例を挙げると、VVT機構270は、図4に示す構成のものに限らず、クランクシャフト130と同期して回転する駆動回転体と、駆動回転体の内側に配置されて吸気カムシャフト170と一体的に回転する従動回転体と、駆動回転体に対する従動回転体の相対回転速度を変更する電動モータと、を有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0064】
100…エンジン、130…クランクシャフト、170…吸気カムシャフト(カムシャフト)、230…クランクプレート、230B…歯部、230C…歯欠け部、240…クランク角センサ、260…カム角センサ、270…VVT機構(可変バルブタイミング機構)、270B…電動モータ(アクチュエータ)、280…ECM(制御装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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