(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113330
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】ダイカストマシンの生産管理システム
(51)【国際特許分類】
B22D 17/32 20060101AFI20240815BHJP
B22D 46/00 20060101ALI20240815BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
B22D17/32 Z
B22D46/00
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018227
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久保田 亘
(72)【発明者】
【氏名】村上 工成
(72)【発明者】
【氏名】反納 清貴
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM23
4F206AP02
4F206AP10
4F206JA07
4F206JL02
4F206JL09
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP27
4F206JP30
4F206JQ88
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】突発的かつ微細な変化を見落とすことなく、視認性と操作性および精度の高いダイカストマシンの状態管理や鋳造品の品質管理等の生産管理を行う、ダイカストマシンの生産管理システムを提供することを目的とする。
【解決手段】金型キャビティ内に溶湯を射出充填して鋳造品を製造するダイカストマシンから収集した鋳造データを用いて生産管理を行うダイカストマシンの生産管理システムにおいて、鋳造データに識別符号をつけて保存する鋳造データ保存部と、鋳造データ保存部から少なくとも1つ以上の鋳造データを抽出し波形グラフに変換して表示する波形表示部と、波形表示部は、波形グラフに計測ポイントを指定するカーソルと、カーソルを操作するカーソル操作部と、計測ポイントの波形値を表示する数値ボックスと、を更に備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型キャビティ内に溶湯を射出充填して鋳造品を製造するダイカストマシンから収集した鋳造データを用いて生産管理を行う、ダイカストマシンの生産管理システムにおいて、
前記鋳造データに識別符号をつけて保存する鋳造データ保存部と、前記鋳造データ保存部から少なくとも1つ以上の前記鋳造データを抽出し波形グラフに変換して表示する波形表示部と、を備え、
前記波形表示部は、前記波形グラフに計測ポイントを指定するカーソルと、前記カーソルを操作するカーソル操作部と、前記計測ポイントの波形値を表示する数値ボックスと、を更に備えることを特徴とするダイカストマシンの生産管理システム。
【請求項2】
前記数値ボックスは、前記計測ポイント付近に表示する、請求項1に記載のダイカストマシンの生産管理システム。
【請求項3】
前記計測ポイントを複数指定し、それぞれの指定に応じた複数の前記波形値を前記数値ボックスに表示するとともに、複数の前記波形値の差分値を前記数値ボックスに合わせて表示する、請求項1に記載のダイカストマシンの生産管理システム。
【請求項4】
前記波形グラフを複数指定し、それぞれの指定に応じた複数の前記波形値を前記数値ボックスに表示するとともに、複数の前記波形値の差分値を前記数値ボックスに合わせて表示する、請求項1に記載のダイカストマシンの生産管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型キャビティ内に溶湯を射出充填して鋳造品を製造するダイカストマシンから収集した鋳造データを用いて生産管理を行う、ダイカストマシンの生産管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
所定の組成に調整したアルミニウム合金等の金属を加熱溶融した溶湯を、鋳造金型を型締して形成される金型キャビティに向けて射出部から射出充填して、鋳造品を製造する工程を鋳造といい、鋳造する設備をダイカストマシンという。ここで、鋳造の生産性を高めるために、ダイカストマシンから収集した鋳造データを波形グラフとして表示させて、鋳造を操作するオペレータや鋳造を管理する鋳造管理者(合わせて鋳造技術者という)に対して、鋳造状態の見える化(または視認性という)を高め、ダイカストマシンの状態管理や鋳造品の品質管理等の生産管理を行う手段が広く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1に示すように、ダイカストマシンおよび付随装置の動作を鋳造データとし、グラフ表示する表示装置を備え、表示装置に表示されたグラフに所定範囲を設定し、設定した所定範囲のグラフのデータを読み取って平均値を算出し、表示装置に平均値を表示する手段が提案されている。これによると、ダイカストマシンや付随装置の動作特性を瞬時に把握でき、精度の高い生産管理を行うことができるとされている。
【0004】
また、特許文献2に示すように、複数の鋳造データのモニタ数値と波形グラフを表示する表示手段を備え、カーソルで指定したモニタ数値に該当する波形グラフを識別可能に重ね書き表示する手段が提案されている。これによると、指定したモニタ数値および波形グラフの前後数ショット分を含めて、モニタ数値と波形グラフが表示されることで、鋳造データの変化を読み取ることができ、ダイカストマシンの状態変化や鋳造品の品質変化の予測を含めた、精度の高い生産管理を行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-298876号公報
【特許文献2】特開2007-196604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1に示す手段は、射出装置の変動やセンサの分解能の精度等によって、計測された鋳造データは上下に乱れた波形グラフになるとされており、これに対して、所定範囲を設定して平均値を算出することで鋳造データの乱れを回避しようとしている。しかしながら、この鋳造データの上下の乱れには、ダイカストマシンや鋳造品の突発的な状態変化が存在していることが考えられ、その結果、平均値を表示する手段では、存在する重篤な問題点の兆候を見落とすことが危惧される。また、特許文献2に示す手段は、鋳造データの中でモニタ数値を読み取るポイントが予め決められている。そのために、ダイカストマシンや鋳造品の突発的な状態変化や兆候を見落とすことが危惧される。つまり、特許文献1および特許文献2では、精度の高い生産管理を行うことは困難である。
【0007】
そこで、本発明は、突発的かつ微細な変化を見落とすことなく、視認性と操作性および精度の高いダイカストマシンの状態管理や鋳造品の品質管理等の生産管理を行う、ダイカストマシンの生産管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のダイカストマシンの生産管理システムは、
金型キャビティ内に溶湯を射出充填して鋳造品を製造するダイカストマシンから収集した鋳造データを用いて生産管理を行う、ダイカストマシンの生産管理システムにおいて、
前記鋳造データに識別符号をつけて保存する鋳造データ保存部と、前記鋳造データ保存部から少なくとも1つ以上の前記鋳造データを抽出し波形グラフに変換して表示する波形表示部と、を備え、
前記波形表示部は、前記波形グラフに計測ポイントを指定するカーソルと、前記カーソルを操作するカーソル操作部と、前記計測ポイントの波形値を表示する数値ボックスと、を更に備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のダイカストマシンの生産管理システムにおいて、
前記数値ボックスは、前記計測ポイント付近に表示する、ことが好ましい。
【0010】
本発明のダイカストマシンの生産管理システムにおいて、
前記計測ポイントを複数指定し、それぞれの指定に応じた複数の前記波形値を前記数値ボックスに表示するとともに、複数の前記波形値の差分値を前記数値ボックスに合わせて表示する、ことが好ましい。
【0011】
本発明のダイカストマシンの生産管理システムにおいて、
前記波形グラフを複数指定し、それぞれの指定に応じた複数の前記波形値を前記数値ボックスに表示するとともに、複数の前記波形値の差分値を前記数値ボックスに合わせて表示する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、突発的かつ微細な変化を見落とすことなく、視認性と操作性および精度の高いダイカストマシンの状態管理や鋳造品の品質管理等の生産管理を行う、ダイカストマシンの生産管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るダイカストマシンの概念図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る生産管理システムの概念図である。
【
図4】本発明の第2実施形態および第3実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが、各請求項に係る発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、本実施形態においては、各構成要素の尺度や寸法が誇張されて示されている場合や、一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0015】
(ダイカストマシン)
先ず、本発明の実施形態に係るダイカストマシンについて、
図1を用いて説明する。
図1に示すダイカストマシン100は、鋳造金型10と、型締部20と、射出部30と、成形制御部40と、周辺設備80と、を備える。なお、
図1において、鋳造金型10と射出部30が水平方向に配置された形態(横型締横鋳込み鋳造装置という)としたが、これに限定されることなく、例えば、水平方向に配置された鋳造金型10と鉛直方向に配置された射出部30の形態(横型締竪鋳込み鋳造装置という)であっても良く、鋳造金型10と射出部30が鉛直方向に配置された形態(竪型締竪鋳込み鋳造装置という)であっても良い。また、鋳造金型10に対して複数の射出部30を配置した形態であっても良く、射出部30に対して複数の鋳造金型10を配置した形態であっても良い。いずれにおいても、構成要素は変わらず、鋳造金型10と射出部30の配置の組合せを変えたものであるので、ここでは横型締横鋳込みの鋳造装置であるダイカストマシン100を用いて説明する。
【0016】
鋳造金型10は、型締部20を操作して固定金型11と可動金型12を型締することで金型キャビティ13と金型ゲート14が形成される。射出部30から金型キャビティ13に向けて溶湯を射出充填する前に、金型キャビティ13および金型ゲート14に離型剤を塗布することが好ましい。また、固定金型11および可動金型12には、図示しない温調回路を含む金型温調手段を設けて、加熱または冷却して所定の温度に調整することが好ましい。また、鋳造金型10に図示しない真空吸引手段を設け、この真空吸引手段を用いて金型キャビティ13内を直接的に真空吸引するとしても良い。
【0017】
型締部20は、固定金型11を支持する固定盤21と、可動金型12を支持する可動盤22と、型締駆動部26を支持する型締盤23と、を備える。型締駆動部26は、回転運動する電動モータ等の電動駆動手段とし、トグルリンク部25を介して型締駆動部26と可動盤22が接続される。トグルリンク部25のボールネジ253で型締駆動部26の回転運動を直線運動に変換し、クロスヘッド252を前後方向に動作させる。クロスヘッド252の動作によって複数のリンク251が動いて、固定盤21と型締盤23を連結した複数のタイバー24をガイドとして、可動盤22が前後方向に動作する。型締制御部27で型締駆動部26の回転運動を操作する。
【0018】
ここで、可動盤22および可動金型12が固定盤21および固定金型11に近接する動作を型閉動作といい、離間する動作を型開動作という。また、可動金型12と固定金型11がタッチした後も(金型タッチ点という)、型締制御部27で型締駆動部26を操作して、トグルリンク部25を介して可動金型12と固定金型11を強固に押圧すると、タイバー24が伸張し弾性回復力が発生する。この弾性回復力を型締力として可動金型12と固定金型11を型締して金型キャビティ13を形成する。金型タッチ点から金型キャビティ13を形成する型閉動作を昇圧動作といい、昇圧動作の完了位置を型締限といい、型締限から金型タッチ点に向けた型開動作を降圧動作という。また、型閉動作と昇圧動作を合わせて型締動作という。
【0019】
なお、
図1において、型締駆動部26を電動モータ等の電動駆動手段としたが、例えば、回転運動する油圧モータ等の油圧駆動手段であっても良い。また、トグルリンク部25で型開閉動作するとしたが、例えば、型締駆動部26に前後方向に動作するロッド部材を備えた油圧シリンダ等の油圧駆動手段を用い、ロッド部材と可動盤22を連結して型開閉動作させる形態であっても良い。また、例えば、型締盤23に型締駆動部26を複数配置しても良く、タイバー24に型締駆動部26を配置した形態であっても良い。
【0020】
射出部30は、水平方向に配置された円筒状の射出スリーブ31と、射出スリーブ31内で前後方向に摺動するプランジャチップ32と、射出スリーブ31内にアルミニウム合金等の溶湯Mを供給する注湯口34と、プランジャチップ32の摺動を操作する射出駆動部36と、を備える。射出スリーブ31の先端部(注湯口34と反対側)は、固定盤21と固定金型11を貫通して、金型ゲート14に接続される。ここで、プランジャチップ32の摺動について、金型ゲート14に近接する方向を前方F、前方Fに向かう動作を前進動作といい、金型ゲート14から離間する方向を後方R、後方Rに向かう動作を後退動作という。
【0021】
プランジャチップ32と連結するプランジャロッド33は、連結部35を介して射出駆動部36に連結される。プランジャチップ32が注湯口34よりも後方Rに待機している間に、図示しない給湯手段を用いて、注湯口34から射出スリーブ31内に溶湯Mを供給する。射出制御部37で射出駆動部36を操作し、連結部35およびプランジャロッド33を介して、プランジャチップ32の前進動作および後退動作が制御される。プランジャチップ32の前進動作により、射出スリーブ31内に供給された溶湯Mが押圧され、金型ゲート14を経由して金型キャビティ13内に射出充填される。
【0022】
また、射出スリーブ31およびプランジャチップ32には、冷却水等の冷却媒体が流れる流路を含む図示しない冷却手段が設けられている。また、プランジャチップ32および射出スリーブ31の強固な接触によるカジリ損傷の防止や摺動状態の安定化及び溶湯残渣物の付着抑制等のため、射出スリーブ31とプランジャチップ32との摺動面に潤滑剤を塗布することが好ましい。また、射出スリーブ31に図示しない真空吸引手段を設け、射出スリーブ31内を真空吸引し、金型ゲート14を介して金型キャビティ13内を間接的に真空吸引するとしても良く、直接的な真空吸引と間接的な真空吸引を組み合せて行う形態であっても良い。
【0023】
ここで、
図1に示す射出駆動部36は、例えば、電動モータの回転運動を直線運動に変換するボールネジ等の変換手段を用いた電動駆動手段とする。なお、これに限定することなく、例えば、油圧シリンダ等の油圧駆動手段であっても良く、油圧駆動手段と電動駆動手段を組み合せたハイブリット駆動手段であっても良い。また、油圧駆動手段の場合は、アキュムレータ等の蓄圧手段を更に備える形態であっても良い。
【0024】
また、
図1において、射出スリーブ31を水平方向に配置したが、例えば、金型キャビティ13および金型ゲート14に対して水平方向から鉛直下方の範囲で任意に配置するとしても良い。また、注湯口34から溶湯Mを供給するとしたが、例えば、溶湯Mを保持する図示しない溶解炉と射出スリーブ31を給湯管等の連結手段を用いて連結し、連結手段を経由して溶湯Mを供給するとしても良い。また、射出スリーブ31とプランジャチップ32の組合せとしたが、例えば、図示しない密閉された溶湯Mの保持炉内に加圧ガス等を供給し、給湯管を経由して金型キャビティ13に溶湯Mを射出充填する形態であっても良く、加圧ガスの供給の代わりに輸送ポンプ等の輸送手段を用いて、溶湯Mを射出充填するとしても良い。
【0025】
成形制御部40は、型締制御部27および射出制御部37と接続し、予め設定された鋳造条件に基づいて、型締制御部27で型締駆動部26を操作して、鋳造金型10の型締動作および型開閉動作を行う。また、射出制御部37で射出駆動部36を操作して、金型キャビティ13内に向けて溶湯Mの射出充填、等の鋳造成形を行う。その他に、図示しない給湯手段や冷却手段および真空吸引手段等の周辺設備80に対して操作指令を発信し、ダイカストマシン100を操作して鋳造成形を管理する。
【0026】
周辺設備80は、鋳造成形を行うに際して併用される設備であって、例えば、鋳造金型10の温度調整手段や離型剤塗布手段、鋳造品の離型手段や搬送手段、インサート部材を用いる鋳造成形ではインサート部材搬送手段、射出スリーブ31やプランジャチップ32の温度調整手段や潤滑剤塗布手段、溶湯Mの溶解手段や搬送手段、射出スリーブ31内に所定量の溶湯Mを供給する給湯手段、溶湯Mの酸化防止のための不活性ガス供給手段、鋳造金型10や射出部30の稼働状況を監視する監視手段、金型キャビティ13や射出スリーブ31内を真空吸引する真空吸引手段、等の設備が挙げられる。
【0027】
(生産管理システム)
次に、本発明の実施形態に係る生産管理システムについて、
図2(a)を用いて説明する。
図2(a)に示す生産管理システム50は、鋳造データ送受信部51と、鋳造データ保存部52と、波形表示部53と、を備える。また、
図1および
図2(a)に示すように、ダイカストマシン100の成形制御部40と生産管理システム50を分けて配置したが、これに限定されることなく、例えば、成形制御部40と生産管理システム50を一体構造とする形態であっても良い。
【0028】
鋳造データ送受信部51は、ダイカストマシン100の成形制御部40と接続し、成形制御部40を経由して、鋳造金型10を型締して形成される金型キャビティ13に向けて溶湯を射出充填して鋳造品を製造する際に、射出制御部37と型締制御部27および周辺設備80から発信される鋳造データを収集する。また、生産管理システム50の生産管理情報を、成形制御部40を経由して、射出制御部37と型締制御部27および周辺設備80に向けて情報発信する。必要に応じて、外部の管理手段に向けて生産管理情報を発信するとしても良い。
【0029】
ここで、ダイカストマシン100の型締制御部27から発信される鋳造データとして、例えば、鋳造成形の1ショット分の開始から終了までを時間軸として、型締力波形、型締駆動部26の駆動トルク波形、型締部20の振動波形、型開動作初期の型締駆動部26の離型力波形、型締部20に内蔵された図示しない押出手段の押出力波形、型開閉速度波形、複数のタイバー24に発生する応力波形、図示しない監視装置を用いた型締部20の稼動監視情報、等を示す。
【0030】
また、ダイカストマシン100の射出制御部37から発信される鋳造データとして、例えば、鋳造成形の1ショット分の開始から終了までを時間軸として、プランジャチップ32の前進速度波形(射出速度波形という)、プランジャチップ32による溶湯の押圧力波形(鋳造圧力波形または射出圧力波形という)、プランジャチップ32の位置波形(射出位置波形という)、射出駆動部36の駆動トルク波形、射出スリーブ31やプランジャチップ32の温度波形、溶湯の温度波形、プランジャチップ32の前進動作および後退動作時の振動波形または振動加速度波形、射出速度の切替え時間波形(加速度波形という)、あるいは、射出制御部37の操作指令波形と射出駆動部36の実行波形、金型キャビティ13に溶湯の射出充填に要した時間(射出時間という)、図示しない監視装置を用いた射出部30の稼動監視情報、等を示す。
【0031】
また、ダイカストマシン100の周辺設備80から発信される鋳造データとして、例えば、鋳造成形の1ショット分の開始から終了までを時間軸として、鋳造金型10または金型キャビティ13の温度波形、鋳造金型10の温調手段に用いる温調媒体の温度波形および流量波形、射出部30の温調手段に用いる温調媒体の温度波形および流量波形、金型キャビティ13や射出スリーブ31内の真空度波形や加圧ガス圧力波形、溶湯の組成および給湯量に関する情報、鋳造金型10の熱膨張波形、金型キャビティ13への離型剤塗布波形、鋳造金型10の変形量波形、図示しない給湯手段の溶湯の輸送時間波形および輸送量波形、気温および湿度あるいは気圧等の成形環境の状態を示す情報、あるいは、所定の位置に配置したカメラ等の画像撮影手段で撮影した画像データや、振動センサや加速度センサ等の計測手段で計測した振動または加速度の計測データ、または、マイク等の集音手段で集音した音響データ、等を示す。
【0032】
これらの鋳造データは、必要に応じて複数を選択しても良く、選択した複数の鋳造データを組み合せる形態としても良い。また、過去の鋳造成形の実績等からダイカストマシン100および鋳造品の状態を判定する指標(閾値という)を鋳造データに加えるとしても良い。さらに、例えば、流動解析等の解析手段を用いて解析を行った解析結果や、機械学習プログラム等の診断手段を用いて鋳造データを診断した診断結果(AI診断結果という)を鋳造データに加えるとしても良く、このAI診断結果に基づいてダイカストマシン100や鋳造品の良否判定を行う指標(判定基準値という)を鋳造データに加える形態であっても良い。
【0033】
鋳造データ保存部52は、鋳造データ送受信部51で収集した鋳造データに識別情報をつけて保存する。また、波形表示部53は、鋳造データ保存部52から少なくとも1つ以上の鋳造データを抽出し波形グラフに変換して表示し、
図2(b)に示すように、鋳造データ抽出部531と、カーソル操作部532と、数値ボックス533と、波形グラフ表示画面534と、を備える。
【0034】
鋳造データ抽出部531は、鋳造データ保存部52に保存した鋳造データの識別情報を指定する。また、波形グラフ表示画面534は、鋳造データ抽出部531で指定した鋳造データを波形グラフに変換して波形グラフを表示する。ここで、波形グラフ表示画面534の横軸X1および縦軸Y1のスケールは、自動設定または手動設定とする。また、波形グラフ表示画面534に表示する波形グラフは複数であっても良く、例えば、波形グラフを色分け等の識別を付与して重ね書き表示するとしても良い。あるいは、波形グラフ表示画面534を複数配置する形態であっても良い。この場合、鋳造データ抽出部531で複数の鋳造データを指定する。また、鋳造データの指定数に応じて、あるいは、波形グラフ表示画面534の配置数に応じて、横軸X1および縦軸Y1を複数配置することが好ましい。
【0035】
カーソル操作部532は、波形グラフ表示画面534に表示した波形グラフに対して計測ポイントを指定するカーソル(K1、K2)の操作を行う。なお、
図2(b)において、カーソル(K1、K2)を2本としたが、これに限定されることなく、例えば、1本であっても良く、2本以上であっても良い。また、波形グラフ表示画面534から離れた位置にカーソル操作部532を配置したが、波形グラフ表示画面534内の任意の位置に配置する形態であっても良い。
【0036】
数値ボックス533は、カーソル(K1、K2)で指定した計測ポイントの波形グラフの数値(波形値という)を表示する。詳しくは、
図3および
図4を用いて説明する。なお、
図2(b)において、波形グラフ表示画面534から離れた位置に数値ボックス533を配置したが、これに限定されることなく、波形グラフ表示画面534内の任意の位置に配置する形態であっても良い。いずれにおいても、視認性および操作性を高めるために、波形表示部53内に数値ボックス533を配置する形態が好ましい。
【0037】
(第1実施形態)
次に、本発明の第1実施形態について、
図3を用いて説明する。
図3(a)は、生産管理システム50の波形表示部53を示す。なお、波形グラフ表示画面534の横軸X1および縦軸Y1は表記を省略している。また、
図3(b)は、
図3(a)に示す数値ボックス533の詳細を示す。
【0038】
先ず、
図3(a)に示すように、鋳造データ抽出部531を操作して、鋳造データ保存部52から複数の鋳造データ(D1~D3)を抽出し、波形グラフに変換して波形グラフ表示画面534に複数の波形グラフを重ね書き表示させる。なお、抽出する鋳造データ(D1~D3)は必要に応じて増減させても良い。また、複数の波形グラフは、例えば、
図3(a)に示すように線の種類を変えたり、または、色分けしたりして、識別表示することが好ましい。
【0039】
ここで、例えば、ダイカストマシン100や鋳造品の長期的な状態変化を観察する、または、予測する形態では、鋳造成形の設定条件と、鋳造サイクルや最大射出圧および鋳造の運転日時等の情報を整理し、鋳造成形の1ショットに1度のみ実測する運転データ(鋳造運転データまたはトレンド・ヒストリーデータという)を、鋳造データ(D1~D3)として抽出することが好ましい。また、例えば、ダイカストマシン100や鋳造品の突発的な状態変化を検出する、または、予知する形態では、鋳造成形の1ショットでの時間的推移における実測波形(鋳造ショットデータまたは実測波形データという)を、鋳造データ(D1~D3)として抽出することが好ましい。
図3(a)では、鋳造ショットデータまたは実測波形データを鋳造データ(D1~D3)として抽出した形態を示す。
【0040】
次に、カーソル操作部532でカーソル(K1、K2)を操作して、鋳造データ(D1~D3)に対して、それぞれ複数の計測ポイント(P1~P6)を指定する。なお、
図3(a)において、2本のカーソル(K1、K2)で計測ポイント(P1~P6)を指定するとしたが、これに限定されることなく、例えば、複数の鋳造データ(D1~D3)に対して、カーソル(K1、K2)をそれぞれに備え、それぞれに計測ポイント(P1~P6)を指定する形態としても良い。いずれにおいても、ダイカストマシン100や鋳造品の長期的あるいは突発的な状態変化を観察したり予測、あるいは、検出したり予知したりするために、鋳造データ(D1~D3)に対して計測ポイント(P1~P6)をそれぞれ複数指定することが好ましい。
【0041】
最後に、指定した計測ポイント(P1~P6)の鋳造データ(D1~D3)の数値(波形値という)を読み取り、数値ボックス533に波形値を表示させる。詳しくは、
図3(b)を用いて説明する。数値ボックス533は、
図3(b)に示すように、複数の表示列(R1~R4)を備える。ここで、表示列R1は、鋳造データ抽出部531で抽出した鋳造データ(D1~D3)の名称あるいは識別情報を表示する。また、表示列R2は、カーソルK1で指定した計測ポイント(P1、P3、P5)の波形値を表示する。同様に、表示列R3は、カーソルK2で指定した計測ポイント(P2、P4、P6)の波形値を表示する。そして、表示列R4は、計測ポイント(P1~P6)のそれぞれの波形値の偏差(差分値という)を表示する。また、表示列(R2、R3)には、カーソル(K1、K2)の横軸X1のスケールを表示することが好ましい。
【0042】
ここで、差分値は、ダイカストマシン100や鋳造品の長期的あるいは突発的な状態変化を正確に示す指標である。この差分値は、鋳造を操作するオペレータや鋳造を管理する鋳造管理者(合わせて鋳造技術者)が、カーソル(K1、K2)を操作して求めることができ、ダイカストマシン100や鋳造品の長期的あるいは突発的な状態変化を観察する、または、予測する、あるいは、検出や予知するために必要な情報を正確に入手することができ、操作性が高く、精度の高いダイカストマシン100の状態管理や鋳造品の品質管理等の生産管理を実現することができる。さらに、差分値を含めた波形値と鋳造データ(D1~D3)の波形グラフを重ね書き表示できる波形表示部53を備えたことにより、視認性の高い生産管理システム50を提供することができる。
【0043】
なお、
図3(b)において、表示列(R2~R4)で波形値と差分値を表示するとしたが、これに限定されることなく、例えば、最大値、最小値、平均値、バラツキ3σ、等を表示するとしても良い。また、表示する項目が増えた場合は、図示しない切替えスイッチ等を設けて、表示する項目に応じて表示列を増やすとする、または、表示列(R2~R4)で表示する項目を選択する形態とすることが好ましい。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、
図4(a)を用いて説明する。
図4(a)は、生産管理システム50の波形表示部53を示す。なお、波形グラフ表示画面534の横軸X1および縦軸Y1は表記を省略している。
【0045】
先ず、
図4(a)に示すように、鋳造データ抽出部531を操作して、鋳造データ保存部52から鋳造データD4を抽出し、波形グラフに変換して波形グラフ表示画面534に波形グラフを表示させる。なお、抽出する鋳造データD4は必要に応じて複数を選択しても良い。複数を選択した場合は、例えば、
図3(a)に示すように波形グラフの線の種類を変えたり、または、色分けしたりして、識別表示することが好ましい。また、抽出する鋳造データD4は、ダイカストマシン100や鋳造品の状態変化の観察や予測等により、運転データ(鋳造運転データまたはトレンド・ヒストリーデータ)、あるいは、実測波形(鋳造ショットデータまたは実測波形データ)を適宜選択する。ここで、
図4(a)では、実測波形を鋳造データD4として抽出した形態を示す。
【0046】
次に、カーソル操作部532でカーソルK3を操作して、鋳造データD4に対して計測ポイントP7を指定する。なお、
図4(a)において、1本のカーソルK3で1つの計測ポイントP7を指定するとしたが、これに限定されることなく、例えば、複数のカーソルK3を用いて複数の計測ポイントP7を指定する形態としても良い。
【0047】
最後に、指定した計測ポイントP7の鋳造データD4の波形値を読み取り、数値ボックス533に波形値を表示させる。なお、複数の計測ポイントP7を指定し、複数の波形値を読み取った場合には、数値ボックス533も複数配置させることが好ましい。また、数値ボックス533には、カーソルK3の横軸X1のスケールを合わせて表示させることが好ましい。
【0048】
ここで、数値ボックス533は、カーソルK3の移動に同調して、計測ポイントP7付近に配置させる。これにより、視認性が高まり、ダイカストマシン100や鋳造品の突発的かつ微細な変化を見落とすことなく、精度の高いダイカストマシン100の状態管理や鋳造品の品質管理等の生産管理を可能とする。さらに、鋳造技術者がカーソルK3を操作して計測ポイントP7を指定するに際して、計測ポイントP7の波形値の視認性が高いことから、計測ポイントP7の正確な微調整が容易にでき、その結果、精度の高い生産管理システム50を提供することができる。
【0049】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について、
図4(b)を用いて説明する。
図4(b)は、生産管理システム50の波形表示部53を示す。なお、波形グラフ表示画面534の横軸X1および縦軸Y1は表記を省略している。
【0050】
先ず、
図4(b)に示すように、鋳造データ抽出部531を操作して、鋳造データ保存部52から鋳造データ(D5、D6)を抽出し、波形グラフに変換して波形グラフ表示画面534に波形グラフを表示させる。なお、抽出する鋳造データ(D5、D6)は必要に応じて増減しても良い。複数を選択した場合は、例えば、
図4(b)に示すように波形グラフの線の種類を変えたり、または、色分けしたりして、識別表示することが好ましい。
【0051】
また、抽出する鋳造データ(D5、D6)は、ダイカストマシン100や鋳造品の状態変化の観察や予測等により、運転データ(鋳造運転データまたはトレンド・ヒストリーデータ)、あるいは、実測波形(鋳造ショットデータまたは実測波形データ)を適宜選択する。ここで、
図4(b)では、実測波形を鋳造データ(D5、D6)として抽出した。さらに、鋳造データD6は、ダイカストマシン100や鋳造品の安定した状態の実測波形(基準値波形という)を抽出した。また、鋳造データD5は、現在の鋳造の実測波形(現在値波形という)とし、基準値波形の鋳造データD6と現在値波形の鋳造データD5を重ね書き表示とした。これにより、安定した状態の基準値波形と現在値波形の比較の視認性が高まり、ダイカストマシン100や鋳造品の突発的かつ微細な状態変化の見落としを確実に回避でき、精度の高い生産管理を可能とした。
【0052】
次に、カーソル操作部532でカーソルK4を操作して、鋳造データ(D5、D6)に対して計測ポイント(P8、P9)を指定する。なお、
図4(b)において、1本のカーソルK4でそれぞれの計測ポイント(P8、P9)を指定するとしたが、これに限定されることなく、例えば、複数のカーソルK4を用いて複数の計測ポイント(P8、P9)を指定する形態としても良い。
【0053】
最後に、指定した計測ポイント(P8、P9)の鋳造データ(D5、D6)の波形値を読み取り、数値ボックス533に波形値を表示させる。また、
図4(b)において、波形グラフ表示画面534内に数値ボックス533を配置させたが、これに限定されることなく、波形表示部53の範囲内で、波形グラフ表示画面534と数値ボックス533を別に配置する形態であっても良い。
【0054】
ここで、数値ボックス533は、複数の表示列(R5~R8)を備える。表示列R5は、鋳造データ抽出部531で抽出した鋳造データ(D5、D6)の名称あるいは識別情報を表示する。また、表示列R6は、カーソルK4で指定した鋳造データD6の計測ポイントP9の波形値を表示する。同様に、表示列R7は、カーソルK4で指定した鋳造データD5の計測ポイントP8の波形値を表示する。そして、表示列R8は、計測ポイント(P8、P9)のそれぞれの波形値の差分値を表示する。また、カーソル操作部531には、カーソルK4の横軸X1のスケールを表示することが好ましい。
【0055】
ここで、差分値は、第1実施形態でも示したように、ダイカストマシン100や鋳造品の長期的あるいは突発的な状態変化を正確に示す指標である。さらに、基準値波形の鋳造データD6と現在値波形の鋳造データD5を重ね書き表示とし、この基準値波形と現在値波形の差分値を数値ボックス533に表示する形態とする。これにより、突発的かつ微細な変化を見落とすことなく、視認性と操作性および精度の高いダイカストマシンの状態管理や鋳造品の品質管理等の生産管理を行う、ダイカストマシンの生産管理システム50を提供することができる。
【0056】
なお、
図4(b)において、説明を簡単にするために、基準値波形と現在値波形の組合せを1つとしたが、これに限定されることなく、例えば、複数の異なる組合せを波形グラフ表示画面534に重ね書き表示するとしても良い。また、基準値波形と現在値波形の組合せを複数とした場合は、図示しない切替えスイッチ等を設けて、組合せ数に応じて表示列を増やすとする、または、表示列(R5~R8)で表示する項目を選択する形態とすることが好ましい。また、表示列(R6~R8)では波形値と差分値を表示するとしたが、例えば、図示しない切替えスイッチ等を操作して、最大値、最小値、平均値、バラツキ3σ、等を表示する形態であっても良い。
【0057】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に記載された範囲には限定されない。上記の実施形態には多様な変更または改良を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0058】
100 ダイカストマシン
10 鋳造金型
11 固定金型
12 可動金型
13 金型キャビティ
14 金型ゲート
20 型締部
21 固定盤
22 可動盤
23 型締盤
24 タイバー
25 トグルリンク部
251 リンク
252 クロスヘッド
253 ボールネジ
26 型締駆動部
27 型締制御部
30 射出部
31 射出スリーブ
32 プランジャチップ
33 プランジャロッド
34 注湯口
35 連結部
36 射出駆動部
37 射出制御部
40 成形制御部
50 生産管理システム
51 鋳造データ送受信部
52 鋳造データ保存部
53 波形表示部
531 鋳造データ抽出部
532 カーソル操作部
533 数値ボックス
534 波形グラフ表示画面
80 周辺設備
M 溶湯
F 前方
R 後方
X1 横軸
Y1 縦軸
K1~K4 カーソル
D1~D6 鋳造データ
P1~P9 計測ポイント
R1~R8 表示列