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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113335
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20240815BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240815BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240815BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
C08G59/40
C08K3/013
C08L63/00 C
C08K5/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018234
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】前田 貴紀
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4J002CD001
4J002CD031
4J002CD041
4J002CD051
4J002DE076
4J002DE086
4J002DE146
4J002DE226
4J002DE236
4J002DG056
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ056
4J002DK006
4J002EN007
4J002FA107
4J002FB087
4J002FD016
4J002FD147
4J002GJ00
4J002GQ00
4J002GQ01
4J036AA02
4J036AD08
4J036AF07
4J036AJ14
4J036DA10
4J036DC01
4J036DC40
4J036FA05
4J036FA10
4J036FA11
4J036HA05
4J036HA07
4J036HA12
4J036JA06
4J036JA07
4J036KA03
(57)【要約】
【課題】高い隙間浸透性を実現しつつ、高温で硬化した際にムラが無く、硬化物外観に優れたエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂と、(B)潜在性硬化剤と、
を、含有するエポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂組成物を80℃で30分間加熱した際の反応率が20%未満であり、
示差走査熱量測定において20℃/minで昇温した際の発熱頂点温度が80℃以上160℃以下である、エポキシ樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂と、(B)潜在性硬化剤と、
を、含有するエポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂組成物を80℃で30分間加熱した際の反応率が20%未満であり、
示差走査熱量測定において20℃/minで昇温した際の発熱頂点温度が80℃以上160℃以下である、
エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
(C)反応性希釈剤を、さらに含む、
請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)反応性希釈剤が、芳香環を有する、
請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
(D)無機充填剤を、さらに含有する、
請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)潜在性硬化剤は、常温で固体であり、120℃における溶融粘度が1Pa・s以上100Pa・s以下である、
請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)潜在性硬化剤が、(b)硬化剤成分のコアと、前記コアを被覆するシェルとを有するマイクロカプセル型である、
請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記(B)潜在性硬化剤は、前記(b)硬化剤成分の円形度が0.90以上ある、
請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
90℃で30分間加熱した際の反応率が20%未満である、
請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
前記(B)潜在性硬化剤は、三級アミン濃度が4質量%以上10質量%以下である、
請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂組成物は、電子機器、電気電子部品の絶縁材料、封止材料、接着剤、及び導電性材料等の、幅広い用途に利用されている。
特に電子機器は、高機能化、小型化、薄型化に伴い、半導体チップの小型集積化、回路の高密度化と共に、生産性の大幅な改善や、電子機器のモバイル用途における可搬性、信頼性の向上等が求められている。
【0003】
エポキシ樹脂組成物を硬化させる方法としては、使用時にエポキシ樹脂と硬化剤とを混合して硬化させる方法があり、これは二成分系エポキシ樹脂組成物の硬化方法である。前記二液性エポキシ樹脂組成物の硬化方法においては、エポキシ樹脂と硬化剤とを別々に保管し、使用時には両者を計量した上で迅速かつ均一に混合する必要があり、取扱いが煩雑であるという問題点がある。さらに、エポキシ樹脂と硬化剤とを一旦混合してしまうと、その後の可使時間が限定されるため、両者を予め大量に混合しておくことができないという問題点もある。
【0004】
上述したような二液性エポキシ樹脂組成物の問題点を解決する目的で、一液性エポキシ樹脂組成物が提案されており、例えば、潜在性硬化剤をエポキシ樹脂に配合した、一液性エポキシ樹脂組成物が提案されている。
【0005】
前記一液性のエポキシ樹脂組成物は、その取扱い性の高さから、近年、特に電子機器分野において、接着と信頼性確保のため、チップと基板の隙間を埋めるアンダーフィルとして用いられている。このようなアンダーフィルは、エポキシ樹脂組成物を80~90℃に加熱してエポキシ樹脂組成物の粘度を下げ、毛細管現象を利用して前記チップと基板の隙間への充填が行われる。そのため加熱時にはエポキシ樹脂の硬化反応による粘度上昇がなく、高い安定性を有していることが求められる。一方で、アンダーフィルは外観上の観点から、硬化後の硬化物はムラなく均一であることが求められる。
【0006】
このような要求に対し、エポキシ樹脂の硬化剤として、アミン系硬化剤を含むコアを特定のシェルで被覆したマイクロカプセル型硬化剤が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1には、前記マイクロカプセル型硬化剤を使用したエポキシ樹脂組成物として、隙間浸透性が良好なエポキシ樹脂組成物が開示されており、特許文献2には、速硬化性と貯蔵安定性を両立しうるエポキシ樹脂組成物が開示されている。
【0007】
前記特許文献1には、浸透性と硬化物外観について改善を図ったエポキシ樹脂組成物が開示されているが、半導体チップを用いた際の浸透性や、ミクロレベルでの硬化物外観については改善の余地がある、という問題点を有している。
また、前記特許文献2には、溶融粘度が低い硬化剤を使用することで潜在性硬化剤の安定性と反応性とのバランスを良好なものに制御できる旨の記載があり、隙間浸透性に関しては改善が図られているが、硬化物外観については記載されておらず未だ改善の余地がある、という問題点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-31227公報
【特許文献2】特開2009-132931公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、従来提案されているエポキシ樹脂組成物は、隙間浸透性が良いものは硬化性が悪く硬化物外観が損なわれ、硬化物外観が良いものは隙間浸透性が十分でない、という問題点を有している。
【0010】
そこで本発明においては、高い隙間浸透性を実現しつつ、高温で硬化した際にムラが無く、硬化物外観に優れたエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上述した課題を解決するために鋭意検討した結果、エポキシ樹脂と潜在性硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物において、所定の加熱条件下での反応率、及び示差走査熱量測定における発熱頂点温度が、それぞれ所定の数値範囲であるものとすることにより、上述した従来技術の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0012】
〔1〕
(A)エポキシ樹脂と、(B)潜在性硬化剤と、
を、含有するエポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂組成物を80℃で30分間加熱した際の反応率が20%未満であり、
示差走査熱量測定において20℃/minで昇温した際の発熱頂点温度が80℃以上160℃以下である、
エポキシ樹脂組成物。
〔2〕
(C)反応性希釈剤を、さらに含む、前記〔1〕に記載のエポキシ樹脂組成物。
〔3〕
前記(C)反応性希釈剤が、芳香環を有する、前記〔2〕に記載のエポキシ樹脂組成物。
〔4〕
(D)無機充填剤を、さらに含有する、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のエポキシ樹脂組成物。
〔5〕
前記(B)潜在性硬化剤は、常温で固体であり、120℃における溶融粘度が1Pa・s以上100Pa・s以下である、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載のエポキシ樹脂組成物。
〔6〕
前記(B)潜在性硬化剤が、(b)硬化剤成分のコアと、前記コアを被覆するシェルとを有するマイクロカプセル型である、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載のエポキシ樹脂組成物。
〔7〕
前記(B)潜在性硬化剤は、前記(b)硬化剤成分の円形度が0.90以上ある、前記〔6〕に記載のエポキシ樹脂組成物。
〔8〕
90℃で30分間加熱した際の反応率が20%未満である、前記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一に記載のエポキシ樹脂組成物。
〔9〕
前記(B)潜在性硬化剤は、三級アミン濃度が4質量%以上10質量%以下である、前記〔1〕乃至〔8〕のいずれか一に記載のエポキシ樹脂組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高い隙間浸透性を実現しつつ、高温で硬化した際にムラが無く、硬化物外観に優れたエポキシ樹脂組成物が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施できる。
なお、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いる。
【0015】
〔エポキシ樹脂組成物〕
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂(以下、成分Aと記載する場合がある。)と、(B)潜在性硬化剤(以下、成分Bと記載する場合がある。)と、を、含有し、前記エポキシ樹脂組成物を80℃で30分間加熱した際の反応率が20%未満であり、示差走査熱量測定(DSC)において20℃/分で昇温した際の発熱ピーク温度が80~160℃である。
前記構成を有することにより、隙間浸透性とムラのない硬化物外観を両立できるエポキシ樹脂組成物が得られる。
【0016】
((A)エポキシ樹脂)
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂を含有する。
(A)エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、各種公知のものを適宜選択して用いることができる。(A)エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
(A)エポキシ樹脂は、以下に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、テトラブロモビフェニル型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ベンゾフェノン型エポキシ樹脂、フェニルベンゾエート型エポキシ樹脂、ジフェニルスルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルスルホキシド型エポキシ樹脂、ジフェニルスルホン型エポキシ樹脂、ジフェニルジスルフィド型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、メチルヒドロキノン型エポキシ樹脂、ジブチルヒドロキノン型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、メチルレゾルシン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、N,N-ジグリシジルアニリン型エポキシ樹脂等の2官能型エポキシ樹脂類が挙げられる。
【0018】
また、(A)エポキシ樹脂としては、例えば、N,N-ジグリシジルアミノベンゼン型エポキシ樹脂、o-(N,N-ジグリシジルアミノ)トルエン型エポキシ樹脂、トリアジン型エポキシ樹脂等の3官能型エポキシ樹脂類が挙げられる。
【0019】
さらに、(A)エポキシ樹脂としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジアミノベンゼン型エポキシ樹脂等の4官能型エポキシ樹脂類が挙げられる。
【0020】
さらにまた、(A)エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ブロモ化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の多官能型エポキシ樹脂類が挙げられる。
【0021】
またさらに、(A)エポキシ樹脂としては、例えば、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレンエーテルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサン型ジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン型ジグリシジルエーテルのようなジエポキシ樹脂が挙げられる。
【0022】
また、(A)エポキシ樹脂としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテルのようなトリエポキシ樹脂が挙げられる。
【0023】
さらに、(A)エポキシ樹脂としては、例えば、ビニル(3,4-シクロヘキセン)ジオキシド、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-5,1-スピロ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-m-ジオキサンのような脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。
【0024】
さらにまた、(A)エポキシ樹脂としては、例えば、テトラグリシジルビス(アミノメチル)シクロヘキサンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0025】
またさらに、(A)エポキシ樹脂としては、例えば、1,3-ジグリシジル-5-メチル-5-エチルヒダントインのようなヒダントイン型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0026】
また、(A)エポキシ樹脂としては、例えば、1,3-ビス(3-グリシドキシプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンのようなシリコーン骨格を有するエポキシ樹脂が挙げられる。
【0027】
さらに、(A)エポキシ樹脂としては、例えば、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレンエーテルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサン型ジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン型ジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ビニル(3,4-シクロヘキセン)ジオキシド、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-5,1-スピロ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-m-ジオキサン、テトラグリシジルビス(アミノメチル)シクロヘキサンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂、1,3-ジグリシジル-5-メチル-5-エチルヒダントイン型エポキシ樹脂、1,3-ビス(3-グリシドキシプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン型エポキシ樹脂、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p-s-ブチルフェニルグリシジルエーテル、スチレンオキシド、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、o-フェニルフェノールグリシジルエーテル、p-フェニルフェノールグリシジルエーテル、N-グリシジルフタルイミド、n-ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、α-ピネンオキシド、アリルグリシジルエーテル、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-4-(2-メチルオキシラニル)-1-メチルシクロヘキサン、1,3-ビス(3-グリシドキシプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、ネオデカン酸グリシジルエステル等の反応性希釈剤としても使用できる脂肪族エポキシ樹脂、及び脂環式エポキシ樹脂類等が挙げられる。
【0028】
((B)潜在性硬化剤)
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、(B)潜在性硬化剤を含有する。
潜在性硬化剤とは、常温ではエポキシ樹脂と反応しないが、一定以上の温度条件下で反応性を発現する硬化剤のことである。
(B)潜在性硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、イミダゾール類、イミダゾール系アダクトやアミンアダクト、及びこれらをカプセル化したもの等が挙げられる。具体的には、アミキュア PN-40J、MY-24(味の素ファインテクノ株式会社製)、フジキュアー FXR-1020、FXR-1030(株式会社T&K TOKA社製)等が挙げられる。
(B)潜在性硬化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0029】
(B)潜在性硬化剤は、常温で液状でも固体でもよいが、常温(25℃)で固体であることが好ましい。(B)潜在性硬化剤が常温(25℃)で固体であることにより、本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、安定性が向上し、隙間浸透性が改善する傾向にある。常温で固体の(B)潜在性硬化剤としては、アミン系硬化剤が好ましい。
【0030】
(B)潜在性硬化剤は、本実施形態のエポキシ樹脂組成物において優れた隙間浸透性を得、かつ均質な硬化物を得る観点から、120℃での溶融粘度が100Pa・s以下であることが好ましい。120℃での溶融粘度が100Pa・s以下であることにより、本実施形態のエポキシ樹脂組成物の硬化時に速やかに均一に拡散し、ミクロレベルでムラのない均一な硬化物を得ることができる。より好ましくは90Pa・s以下であり、さらに好ましくは80Pa・s以下であり、さらにより好ましくは70Pa・s以下である。
また、(B)潜在性硬化剤は、120℃での溶融粘度の下限値が1Pa・s以上であることが好ましい。これにより、加熱時の安定性が良好になり、本実施形態のエポキシ樹脂組成物の隙間浸透性が高くなる傾向にある。より好ましくは5Pa・s以上であり、さらに好ましくは10Pa・s以上であり、さらにより好ましくは15Pa・s以上であり、よりさらに好ましくは20Pa・s以上である。
(B)潜在性硬化剤の120℃での溶融粘度は、硬化剤合成時、原材料同士の添加比率を調整することなどにより上述した数値範囲に制御することができる。
【0031】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物において、(B)潜在性硬化剤の含有量は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、2質量部以上50質量部以下が好ましい。(B)潜在性硬化剤の含有量が(A)エポキシ樹脂100質量部に対して2質量部以上であることにより硬化性が改善し、硬化物のTgが高くなる傾向にある。
一方、(B)潜在性硬化剤の含有量が、エポキシ樹脂(A)100質量部に対して50質量部以下であることにより、エポキシ樹脂組成物の粘度を低くすることができ、隙間浸透性が改善できる傾向にある。
上述の観点から、(B)潜在性硬化剤の含有量は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して3質量部以上47質量部以下がより好ましく、4質量部以上45質量部以下がさらに好ましい。
【0032】
(B)潜在性硬化剤は、硬化性の観点から、(B)潜在性硬化剤中の三級アミン濃度が4質量%~10質量%であることが好ましい。より好ましくは4.2質量%~8質量%であり、さらに好ましくは4.4質量%~7質量%であり、さらにより好ましくは4.5質量%~6質量%である。
(B)潜在性硬化剤中の三級アミン濃度は、JIS K7245:2000に準拠した手法により測定でき、硬化剤成分合成時、原材料同士の添加比率を調整すること等により上記数値範囲に制御できる。
【0033】
さらに、(B)潜在性硬化剤は、均質な硬化物を得る観点、及び粒子同士の凝集を防止して硬化物の良好な物性を確保する観点から、篩下積算分率50%の粒径D50が、0.3μmを超えて10μm以下あることが好ましく、より好ましくは1μm以上8μm以下、さらに好ましくは1.5μm以上5μm以下である。粒径D50が10μm以下であると、均質な硬化物を得ることができる傾向にあり、粒径D50が0.3μm超であると、エポキシ樹脂用の硬化剤間での凝集を抑制でき、硬化ムラが発生せず、耐熱性向上につながる傾向にある。粒径D50が0.3μm超10μm以下である(B)潜在性硬化剤を得る方法としては、力学的な粉砕方法や溶媒中での粒子成長を行う方法が挙げられる。
【0034】
(B)潜在性硬化剤は、篩下積算分率50%の粒径D50に対する篩下積算分率99%の粒径D99の比率(以下、単に「D99/D50」とも表す。)が、粒子同士の凝集を防止する観点から、6.0以下であることが好ましく、同様の観点から、より好ましくは5.5以下であり、さらに好ましくは5.0以下である。
D99/D50が6.0以下であることにより、紛体粒子中の粗大粒子が少なく、凝集物の生成を抑制し、硬化物の物性が損なわれることを抑制できる傾向にある。D99/D50は、小さければ小さいほど粒度の分布はシャープなことを意味し、均質な硬化物を得やすく、良好な硬化性能が得られやすい傾向にある。
また、D99/D50の値が6.0以下であることにより、粒度分布が狭く、粒径の比較的大きな粒子が存在しにくくなるため、フィルム化後のギャップへの浸透性が優れる傾向にある。
さらに、D99/D50は、1.2以上が好ましい。D99/D50が1.2以上であることにより、硬化剤粒子間に多くの隙間ができることを抑制する傾向にあり、好ましく、同様の観点から、より好ましくは1.5以上であり、さらに好ましくは1.7以上であり、さらにより好ましくは2.0以上である。
【0035】
(B)潜在性硬化剤は、単層の硬化剤粒子の形態であってもよいが、硬化剤成分のコアと前記コアを被覆するシェルとを有するマイクロカプセル型の硬化剤粒子の形態であってもよい。
前記コアとして用いるエポキシ樹脂用硬化剤粒子(硬化剤成分(b))を、「エポキシ樹脂用硬化剤粒子」、「硬化剤粒子」、又は「硬化剤」という。
マイクロカプセル型の硬化剤粒子は、エポキシ樹脂用硬化剤粒子等から形成されるコアと、前記コアを被覆するシェルとを有し、前記シェルが、波数1630cm-1以上1680cm-1以下の赤外線を吸収する結合基と、波数1680cm-1以上1725cm-1以下の赤外線を吸収する結合基と、波数1730cm-1以上1755cm-1以下の赤外線を吸収する結合基と、を少なくともその表面に有することがより好ましい。このように構成されていると、エポキシ樹脂用硬化剤由来の粒子同士の凝集比率が低減され、硬化性、貯蔵安定性、及び隙間浸透性のいずれにも優れるものとなる傾向にある。
【0036】
前記マイクロカプセル化された(B)潜在性硬化剤は、液状のエポキシ樹脂に分散されたマスターバッチ型の形態であることが好ましい。
(B)潜在性硬化剤がマスターバッチ型の形態であることにより、上述した(A)エポキシ樹脂等の他の材料との混錬が容易になる傾向にある。
また、マスターバッチ化する際に用いるエポキシ樹脂は、後述する(C)反応性希釈剤を含有することが好ましい。すなわち、かかる場合、エポキシ樹脂、(C)反応性希釈剤が、マスターバッチ型の(B)潜在性硬化剤の構成成分となる。
マスターバッチ型の(B)潜在性硬化剤を100質量%としたときの(C)反応性希釈剤の含有割合は2質量%以上50質量%未満が好ましい。好ましくは5質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは7質量%以上30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以上50質量%以下である。マスターバッチ型の(B)潜在性硬化剤において、前記(B)を構成するエポキシ樹脂が(C)反応性希釈剤を含有することにより、マイクロカプセル型の潜在性硬化剤と反応性希釈剤がより高濃度で共存するため、後述するカプセル膜表面への反応性希釈剤の配位が起こりやすく、よりカプセル膜が強化される傾向がある。
また、マスターバッチ型の(B)潜在性硬化剤100質量%中の(b)硬化剤成分の含有割合は、硬化性と反応性の観点から、5~60質量%が好ましく、より好ましくは10~50質量%であり、さらに好ましくは15~45質量%である。
【0037】
(B)潜在性硬化剤の形状は、特に限定されないが、例えば、真球、顆粒状、粉末状、不定形、不定形の角が丸みを帯びた形状等のいずれでもよい。これらの中でも耐溶剤性の観点から、円形度が0.90以上であるものが好ましい。
【0038】
(B)潜在性硬化剤がコアシェル構造を有するマイクロカプセル型硬化剤である場合、前記コアである(b)硬化剤成分の円形度は、フロー式粒子像解析法により測定することができる。より具体的には、試料を液中に流し粒子を撮影し、粒子投影面積より粒子径を求め、粒子投影像の周囲長と粒子径相当円の円周の比により求めることができる。
円形度は1に近い程、真球に近いことを示す。コアの円形度が1に近いほどカプセル膜であるシェルが均等に形成されるので、保存安定性や耐溶剤性の観点から好ましく、コアの円形度は0.90以上が好ましく、より好ましくは0.93以上であり、さらに好ましくは0.95以上である。
円形度0.90以上のコアである(b)硬化剤成分は、例えば、不定形の粒子を熱風処理して得ることができる。そのような円形度のコアを得る方法としては、熱風噴射ノズルから噴射される熱風中に不定形粒子を噴射し、熱風との接触により粒子の表面を溶融して球形化処理する方法等が挙げられる。
熱風処理する際の熱風の温度は、好ましくは100℃以上400℃以下である。熱風の温度が100℃以上であると、コア表面の加熱を十分に行うことができ所望の円形度に制御でき、400℃以下であると、コアの熱分解を抑制できる。上記観点から、熱風温度は、より好ましくは150℃以上300℃以下、さらに好ましくは180℃以上250℃以下である。
【0039】
(エポキシ樹脂組成物の反応率)
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、隙間浸透性の観点から、80℃で30分間加熱した際の反応率が20%未満である。好ましくは8%未満であり、より好ましくは6%未満であり、さらに好ましくは4%未満である。
また、80℃で45分間加熱した際の反応率が20%未満であることが好ましく、80℃で60分間加熱した際の反応率が20%未満であることがより好ましい。
また、隙間浸透性の観点から、90℃で30分間加熱した際の反応率が20%未満であることが好ましく、より好ましくは15%未満であり、さらに好ましくは10%未満である。
本実施形態のエポキシ樹脂組成物を80℃30分間加熱した際の反応率が20%未満であることは、加熱時にエポキシ樹脂と硬化剤成分とが、反応による粘度上昇よりも、加熱による樹脂成分の粘度低下の影響が大きいことを示しており、これにより良好な隙間浸透性が得られる。
エポキシ樹脂組成物を加熱した際の反応率は、使用するマイクロカプセル型潜在性硬化剤のカプセル膜厚を厚くすること等により、上記数値範囲に制御できる。
【0040】
(エポキシ樹脂組成物の発熱頂点温度)
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、硬化物外観の観点から、示差走査熱量測定(DSC)装置を用いて20℃/minで昇温した際の発熱頂点温度が80℃以上160℃以下である。
発熱頂点温度が80℃以上160℃以下であることにより、(A)エポキシ樹脂と(B)潜在性硬化剤の(b)硬化剤成分との反応による粘度上昇よりも、温度上昇に伴うエポキシ樹脂組成物の粘度低下による(b)硬化剤成分の拡散性改善の影響が大きくなり、均一な外観の硬化物が得られる傾向にある。エポキシ樹脂組成物の発熱頂点温度の下限は90℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。発熱頂点温度の上限は155℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、145℃以下がさらに好ましい。
本実施形態のエポキシ樹脂組成物が、80℃で30分間加熱した際の反応率が20%未満であり、かつDSCの発熱頂点温度を80℃以上160℃以下に制御する方法としては、例えば三級アミン濃度が高く、溶融粘度の低いエポキシ樹脂用の硬化剤成分をマイクロカプセル化した(B)潜在性硬化剤を、(C)反応性希釈剤と併用する方法が挙げられる。
【0041】
(他の硬化剤成分)
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、上述した(B)潜在性硬化剤以外の他の硬化剤成分を含有してもよい。
前記他の硬化剤成分としては、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、活性エステル硬化剤、アミン系硬化剤、チオール系硬化剤からなる1種若しくは2種以上の硬化剤が挙げられる。
他の硬化剤成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0042】
酸無水物系硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0043】
フェノール樹脂系硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化できるものであれば、特に限定されないが、例えば、フェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、クレゾールノボラック、ナフトールノボラック、トリアジン環含有フェノールノボラック等が挙げられる。
誘電正接の観点からトリアジン環含有フェノールノボラックが好ましく、具体的にはLA3018、LA3018-50P、EXB9808、EXB9829(DIC(株)製)等が挙げられる。
【0044】
活性エステル硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤として機能し活性エステルを有するものであれば特に制限はないが、1分子中に2個以上の活性エステル基を有する化合物が好ましい。耐熱性等の観点から、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物とを反応させたものから得られる活性エステル化合物がより好ましく、カルボン酸化合物と、フェノール化合物、ナフトール化合物、チオール化合物とから選択される1種又は2種以上とを反応させたものから得られる活性エステル化合物がさらに好ましい。そして、カルボン酸化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させたものから得られる1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物がさらに一層好ましい。そして、少なくとも2個以上のカルボン酸を1分子中に有する化合物と、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させたものから得られる芳香族化合物であり、かつ該芳香族化合物の1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物がより好ましい。また、直鎖状又は多分岐状であってもよい。また、少なくとも2個以上のカルボン酸を1分子中に有する化合物が脂肪族鎖を含む化合物であればエポキシ樹脂との相溶性を高くすることができ、芳香族環を有する化合物であれば耐熱性を高くすることができる。
【0045】
前記カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。特に、耐熱性の観点から、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、イソフタル酸、テレフタル酸がより好ましい。
前記チオカルボン酸化合物としては、例えば、チオ酢酸、チオ安息香酸等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
前記フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらのなかでも、耐熱性、溶解性の観点から、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが好ましく、カテコール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックがより好ましく、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックがさらに好ましく、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックがさらにより好ましく、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックがよりさらに好ましく、ジシクロペンタジエニルジフェノールが特に好ましい。
前記チオール化合物としては、例えば、ベンゼンジチオール、トリアジンジチオール等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0046】
活性エステル硬化剤としては、特開2004-277460号公報に開示されている活性エステル化合物を用いてもよく、また市販のものを用いることもできる。市販されている活性エステル硬化剤としては、特に限定されないが、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むもの、フェノールノボラックのアセチル化物、フェノールノボラックのベンゾイル化物が好ましく、特に、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むものがより好ましい。ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むものとしては、例えば、EXB9451、EXB9460、EXB9460S(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物としてDC808(三菱ケミカル(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物としてYLH1026(三菱ケミカル(株)製)等が挙げられる。
【0047】
アミン系硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、ジシアンジアミド、ジシアンジアミド-アニリン付加物、ジシアンジアミド-メチルアニリン付加物、ジシアンジアミド-ジアミノジフェニルメタン付加物、ジシアンジアミド-ジアミノジフェニルエーテル付加物等のジシアンジアミド誘導体、硝酸グアニジン、炭酸グアニジン、リン酸グアニジン、スルファミン酸グアニジン、重炭酸アミノグアニジン等のグアニジン塩、アセチルグアニジン、ジアセチルグアニジン、プロピオニルグアニジン、ジプロピオニルグアニジン、シアノアセチルグアニジン、コハク酸グアニジン、ジエチルシアノアセチルグアニジン、ジシアンジアミジン、N-オキシメチル-N’-シアノグアニジン、N,N’-ジカルボエトキシグアニジン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4、4’-ジアミノジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0048】
チオール系硬化剤としては、1分子中に2個以上のチオール基を含有するものであればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、3,3’-ジチオジプロピオン酸、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、エチレングリコールジチオグリコレート、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル、4-ブタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,10-デカンジチオール等が挙げられる。耐衝撃性の観点から、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)が好ましく、低温硬化性の観点から、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)がより好ましい。
【0049】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物における、上述した他の硬化剤成分の含有量は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、反応性の観点から、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは1.0質量%以上である。また、安定性の観点から、50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0050】
((C)反応性希釈剤)
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、(C)反応性希釈剤を、さらに含んでもよい。
(C)反応性希釈剤としては、硬化剤やエポキシ樹脂との相性がよく、反応後は硬化構造に取り込まれる観点から、エポキシ化合物であることが好ましい。ここで、(C)反応性希釈剤として用いられるエポキシ化合物とは、25℃における粘度が1mPa・s以上3Pa・s未満である化合物であって、前記(A)エポキシ樹脂に例示した化合物を除くエポキシ化合物である。
(C)反応性希釈剤として用いられるエポキシ化合物としては、以下に限定されないが、例えば、芳香環を有さない1官能性エポキシ化合物としては、n-ブチルグリシジルエーテル、t-ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル等の化合物;芳香環を1以上有し、1官能性エポキシ化合物としては、スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p-sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、阪本薬品工業社製商品名:SY-OPG等の化合物;芳香環を有さない、2官能性エポキシ化合物としては、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、1,3-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキシド、三菱ケミカル社製商品名:YX-8000、阪本薬品工業社製商品名:SR-8EGS等の化合物;芳香環を1以上有する2官能性エポキシ化合物としては、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、tert-ブチルハイドロキノンジグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレンビスフェノールAのジグリシジルエーテル、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジル-o-トルイジン等の化合物;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリン等の3官能性エポキシ化合物等が挙げられる。
【0051】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物が、前記(C)反応性希釈剤を含有することにより、本実施形態のエポキシ樹脂組成物は粘度が低下し、隙間浸透性が改善する傾向にある。また、前記(B)潜在性硬化剤の溶解性が高くなり、硬化剤成分を均一に拡散しやすくなるため、高温で硬化した場合にも硬化物外観が改善する傾向にある。(B)成分としてマイクロカプセル化したエポキシ樹脂潜在性硬化剤を用い、かつ(C)反応性希釈剤を併用することでカプセル膜表面に(C)反応性希釈剤が配位し、カプセル膜の耐熱性が向上する傾向にある。
上述した(C)反応性希釈剤の中でも、粘度低減効果と硬化剤成分の溶解性、カプセル膜の耐熱性向上の観点から、構造中に芳香環を有するエポキシ化合物が好ましく、芳香環を有し、1官能性であるエポキシ化合物がより好ましく、芳香環を1つだけ有し、単官能であるエポキシ化合物がさらに好ましい。
【0052】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物における(C)反応性希釈剤の含有量は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、1質量部以上70質量部以下が好ましい。
(C)反応性希釈剤の含有量が、前記(A)エポキシ樹脂100質量部に対し、1質量部以上であることにより、固形硬化剤成分の拡散性が向上し、ムラなく均一な硬化物が得られる傾向にある。一方、(C)反応性希釈剤の含有量が、前記(A)エポキシ樹脂100質量部に対して70質量部以下であることにより、固形硬化剤成分の溶解による安定性悪化を防ぐことができ、隙間浸透性を高められる傾向にある。
(C)反応性希釈剤の含有量は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、1.2質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また30質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
本実施形態のエポキシ樹脂組成物において、(A)エポキシ樹脂、(B)潜在性硬化剤、(C)反応性希釈剤の総質量に対する(C)反応性希釈剤の含有量は、硬化物外観観点から、0.5質量%以上が好ましく、より好ましくは1.0質量%以上であり、さらに好ましくは1.2質量%以上である。また、保存安定性の観点から、30質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0053】
((D)充填剤)
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、(D)充填剤を、さらに含有することが好ましい。
(D)充填剤としては、特に限定されないが、熱膨張係数や熱伝導性の観点から、無機充填剤(無機フィラー)、無機充填剤をシランカップリング剤で処理した無機充填剤、並びに、接着強度向上及び耐クラック性向上の観点から、有機充填剤よりなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
(D)充填剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
また、(D)充填剤の形状は、特に限定されず、例えば、不定形状、球状、鱗片状のいずれの形態であってもよい。
【0054】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物が(D)充填剤として無機充填剤を含有することにより、熱膨張係数を調整でき、耐熱性及び耐湿性の向上に寄与する傾向にある。
【0055】
無機充填剤(無機フィラー)としては、以下に限定されないが、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩;酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、溶融シリカ(溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ)、合成シリカ、結晶シリカ等の酸化シリカ等の酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩;亜硫酸カルシウム等亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の窒化物が挙げられる。これらの中でも、耐熱性、耐湿性、及び強度を向上できる観点から、溶融シリカ、結晶シリカ、及び合成シリカ粉末が好ましく、また、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、及び窒化ホウ素のいずれかが好ましい。これらを用いることにより、熱膨張係数を抑制できるため、冷熱サイクル試験の改善等が見込まれる。
【0056】
(D)充填剤として無機充填剤を用いる場合、本実施形態のエポキシ樹脂組成物中の無機充填剤の含有量は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物の総量に対して、好ましくは10質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上85質量%以下である。
無機充填剤の含有量を10質量%以上とすることにより、優れた低熱膨張係数が実現できる傾向にある。無機充填剤の含有量を90質量%以下とすることにより、弾性率の上昇をより抑えることができる傾向にある。
【0057】
前記無機充填剤は、シランカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。シランカップリング剤は、本実施形態のエポキシ樹脂組成物中に含有させることでも、その性能は発揮されるが、シランカップリング剤で無機充填剤の表面処理を行うことにより、本実施形態のエポキシ樹脂組成物において、一層の低粘度化を実現できる傾向にある。
【0058】
シランカップリング剤としては、以下に限定されないが、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N-(2-(ビニルベンジルアミノ)エチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられる。これらの中でも、接着強度の観点から、重合性官能基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0059】
有機充填剤とは、応力緩和性を有する耐衝撃緩和剤としての機能を有するものである。本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、有機充填剤を含有することにより、各種接続部材との接着性をより一層向上することができ、また、フィレットクラックの発生及び進展を抑制できる傾向にある。
【0060】
有機充填剤としては、以下に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ブタジエンゴム、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリメチルメタクリレート、アクリルゴム、ポリスチレン、NBR、SBR、シリコーン変性樹脂、及びこれらを成分として含む共重合体の有機微粒子等が挙げられる。接着性向上の観点から、前記有機微粒子としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル-ブタジエン-スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸アルキル-シリコーン共重合体、シリコーン-(メタ)アクリル共重合体、シリコーンと(メタ)アクリル酸との複合体、(メタ)アクリル酸アルキル-ブタジエン-スチレンとシリコーンとの複合体、及び(メタ)アクリル酸アルキルとシリコーンとの複合体が好ましい。
【0061】
前記有機充填剤としては、コアシェル型の構造を有し、コア層とシェル層とで組成が異なる有機微粒子を用いることもできる。
コアシェル型の有機微粒子としては、以下に限定されないが、例えば、シリコーン-アクリルゴムをコアとてアクリル樹脂をグラフトした粒子、及びアクリル共重合体にアクリル樹脂をグラフトとした粒子等が挙げられる。
コアシェル型の有機微粒子の含有による低弾性率化によって、フィレット部に生じる応力が低減され、フィレットクラックの発生を抑制することができる傾向にある。また、フィレットクラックが発生した場合には、含有させたコアシェル型の有機微粒子が応力緩和剤として作用し、フィレットクラックの進展を抑制する傾向にある。
前記コア層の構成材料としては、柔軟性に優れた材料が用いられることが好ましい。コア層の構成材料としては、以下に限定されないが、例えば、シリコーン系エラストマー、ブタジエン系エラストマー、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、及びシリコーン/アクリル系複合系エラストマー等が挙げられる。
一方、前記シェル層の構成材料としては、半導体樹脂封止材の他の成分に対する親和性、特にエポキシ樹脂に対する親和性に優れた材料が好ましい。シェル層の構成材料としては、以下に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、及びエポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、アクリル樹脂が、封止材の他の成分に対する親和性、特にエポキシ樹脂に対する親和性の観点から特に好ましい。
【0062】
(D)充填剤として有機充填剤を用いる場合、本実施形態のエポキシ樹脂組成物中の有機充填剤の含有量は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物の総量に対して、好ましくは1~20質量%であり、より好ましくは2~18質量%であり、さらに好ましくは3~16質量%である。有機充填剤の含有量が1質量%以上であることにより、応力緩和が働き、接着力の向上の効果が得られる。有機充填剤の含有量が20質量%以下であることにより、耐熱リフロー性の効果が得られる。
【0063】
〔エポキシ樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)潜在性硬化剤と、必要に応じて他の硬化剤成分や充填剤や添加剤等と、を混合することにより製造できる。混合方法としては、公知の手法を適用できる。例えば、硬化しない程度の温度で混合する方法が挙げられる。
【0064】
〔エポキシ樹脂組成物の物性〕
(反応率の測定方法)
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、80℃で30分間加熱した際の反応率が20%未満である。
また、本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、90℃で30分間加熱した際の反応率が20%未満であることが好ましい。
反応率の測定方法を以下に示す。
EXSTER7020(株式会社 日立ハイテクサイエンス製)を用いて、未硬化状態のエポキシ樹脂組成物を約10mg計量し、25℃から250℃まで10℃/minの昇温速度で昇温し、DSC曲線を取得し、総発熱量を発熱開始から終了までのヒートフローを時間積分することにより求める。
同様にして、未硬化状態のエポキシ樹脂組成物を約10mg計量し80℃または90℃のホットプレート上で30分分または60分間加熱し、室温で1時間程度保管した後、25℃から250℃まで10℃/minの昇温速度で昇温し、DSC曲線を取得する。
残発熱量は発熱開始から終了までのヒートフローを時間積分することにより求め、以下の式を用いて反応率を測定する。
反応率[%] = (1―残発熱/総発熱)×100
【0065】
(DSC発熱頂点温度の測定方法)
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、示差走査熱量測定(DSC)において20℃/minで昇温した際の発熱頂点温度が80℃以上160℃以下である。
前記発熱頂点温度は、EXSTER7020(株式会社 日立ハイテクサイエンス製)を用いて、未硬化状態のエポキシ樹脂組成物を約10mg計量し、25℃から250℃まで20℃/minの速度で昇温し、DSC曲線を取得し、ヒートフローが最大となる点の温度をDSC発熱頂点温度とすることにより得られる。
【0066】
(溶融粘度の測定方法)
本実施形態のエポキシ樹脂組成物に用いる(B)潜在性硬化剤は、常温で固体であり、120℃における溶融粘度が1Pa・s以上100Pa・s以下であることが好ましい。
前記溶融粘度は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 HAAKE MARSを用いて、回転数1rpm、ギャップ0.5mm、180℃から5℃/minの速度で降温し、温度が120℃になった際の粘度を120℃における溶融粘度、とすることにより得られる。
【0067】
(三級アミン濃度の測定方法)
本実施形態のエポキシ樹脂組成物に用いる(B)潜在性硬化剤は、三級アミン濃度が4質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
(B)潜在性硬化剤中の三級アミン濃度は、JIS K7245:2000に準拠した手法により測定できる。
(B)潜在性硬化剤を、トルエン:1-ブタノール=1:1混合溶液で溶解したサンプル溶液を調製する。サンプルに応じて必要量を予め計算した適切な量を、100mLビーカーに0.0001gの桁まで精密に秤量する。この溶液に、酢酸10mLを加える。さらに無水酢酸10mLを加えて、室温で15~30分間、静置して1級アミノ基、及び2級アミノ基をアミド化させる。さらに酢酸40mLを加えて、電位差滴定装置にセットし、0.1mol/Lの過塩素酸/酢酸溶液で電位差滴定を行い、滴定終点の滴定量を求める。
三級アミン濃度は、以下の計算式により求めることができる。
三級アミン濃度(質量%)={0.014×0.1×(v-v0)×f×100}/W
W;アミンアダクトサンプルの質量(g)
v;滴定量(mL)
v0;ブランク滴定量(mL)
f;過塩素酸/酢酸溶液のファクター
【実施例0068】
以下、本実施形態について、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明は、以下の実施例及び比較例に限定されるものではない。すなわち、当業者は以下に示す実施例に様々な変更を加えて本発明を実施することができる。
なお、以下において特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
また、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
実施例及び比較例で用いた物性及び特性の測定方法を以下に示す。
【0069】
〔特性評価〕
(隙間浸透性)
TEGチップ(30mm×30mm、ピッチ幅50μm、バンプ高さ30μm)のバンプ面を下向きにしてガラス基板上に置き、チップの一辺に約0.2gのエポキシ樹脂組成物を滴下した。TEGチップが動かないよう、もう一枚のガラス基板をチップの上にかぶせ、ガラス基板同士を固定した。TEGチップをガラス基板ごと、80℃又は90℃のオーブンに入れ、60分加熱した。バンプ面のエポキシ樹脂組成物の充填率を、下記の基準により評価した。
<評価基準>
◎:充填率90%以上
〇:充填率75%以上90%未満
△:充填率50%以上75%未満
×:充填率50%未満
【0070】
(180℃硬化物外観)
調製したエポキシ樹脂組成物をテフロン(登録商標)製の型に流し入れ、加熱炉にて180℃、30分間で硬化させた。
硬化後にテフロン(登録商標)型を外し、2mm厚の硬化板を得た。得られた硬化板の表面を、光学顕微鏡を用いて観察を行った。海島状態となっている硬化物表面において、一視野内(230μm×320μm)にある長径2μm以上50μm以下の島の数を評価した。
なお、ここでいう長径とは、その島を内包する最小の円の直径のことである。
また、硬化物表面が海島状態になっていない場合は島の数は0個であるものとした。
<評価基準>
◎:50個未満
〇:50個以上100個未満
△:100個以上300個未満
×:300個以上
【0071】
(硬化物Tg、及び硬化物の平均線熱膨張係数)
調製したエポキシ樹脂組成物をテフロン(登録商標)製の型に流し入れ、加熱炉にて180℃、30分間で硬化させた。
硬化後にテフロン(登録商標)型を外し、2mm厚の硬化物を得た。
前記硬化物を5mm×5mmの試験片に切断し、熱機械分析装置TMA Q400(TAインスツルメント社製)を使用して、熱膨張測定モードで測定を行った。
試験片を前記装置に装着後、荷重1g、昇温速度5℃/分、温度範囲25~200℃の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定において、急激に膨張率が変化する点を硬化物Tgとし、以下の基準に従って判定した。
<評価基準>
◎:160℃以上
〇:140℃以上160℃未満
△:140℃未満120℃以上
×:120℃未満
【0072】
また、25℃から80℃までの平均線熱膨張係数(ppm/℃)を以下の基準に従って判定した。
<評価基準>
◎:25ppm/℃未満
〇:25ppm/℃以上40ppm/℃未満
△:40ppm/℃以上60ppm/℃未満
×:60ppm/℃以上
【0073】
〔エポキシ樹脂組成物の成分〕
以下、実施例及び比較例のエポキシ樹脂組成物を構成する成分を示す。
(成分A:エポキシ樹脂)
EXA850CRP(DIC社製BisA型エポキシ樹脂、エポキシ当量172g/eq)
EXA830CRP(DIC社製BisF型エポキシ樹脂、エポキシ当量160g/eq)
jER630(三菱ケミカル社製アミノフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ当量100g/eq)
HP-4032D(DIC社製ナフタレン型エポキシ樹脂、エポキシ横領141g/eq)
【0074】
(成分B:潜在性硬化剤)
下記表1に潜在性硬化剤(B-1)~(B-9)の120℃における溶融粘度、三級アミン濃度、円形度、マスターバッチ化した樹脂組成物の反応性希釈剤の種類・マスターバッチ中の希釈剤割合、マスターバッチ中の硬化剤成分の割合を示す。
<潜在性硬化剤(B-1)>
三級アミン濃度が4.4質量%のイミダゾール系アミンアダクト(b-1)をマイクロカプセル化した潜在性硬化剤。
<潜在性硬化剤(B-2)>
三級アミン濃度が4.4質量%のイミダゾール系アミンアダクト(b-1)をマイクロカプセル化し、液状BisA型エポキシ樹脂と下記の反応性希釈剤(成分C:ED-509S)でマスターバッチ化した潜在性硬化剤。
<潜在性硬化剤(B-3)>
三級アミン濃度が4.9質量%のイミダゾール系アミンアダクト(b-2)をマイクロカプセル化した潜在性硬化剤。
<潜在性硬化剤(B-4)>
上記アミンアダクト(b-2)の形状を調整したアミンアダクト(b-2’)をマイクロカプセル化した潜在性硬化剤。
<潜在性硬化剤(B-5)>
アミンアダクト(b-2')をマイクロカプセル化し、液状BisA型エポキシ樹脂と下記の反応性希釈剤(成分C:PGE)でマスターバッチ化した潜在性硬化剤。
<潜在性硬化剤(B-6)>
アミンアダクト(b-2')をマイクロカプセル化し、液状BisA型エポキシ樹脂と反応性希釈剤(成分C:CGE)でマスターバッチ化した潜在性硬化剤。
<潜在性硬化剤(B-7)>
特開2020-31227号公報の実施例6の方法で製造したマスターバッチ化されたマイクロカプセル型潜在性硬化剤。
<潜在性硬化剤(B-8)>
ADEKA社製エポキシ樹脂潜在性硬化剤EH-4357S
<潜在性硬化剤(B-9)>
味の素ファインテクノ社製エポキシ樹脂潜在性硬化剤PN-23J
【0075】
【表1】
【0076】
(成分C:反応性希釈剤)
PGE:
ナガセケムテックス社製の芳香環を有する単官能反応性希釈剤。フェニルグリシジルエーテル、エポキシ当量150g/eq、25℃における粘度8mPa・s
CDMDG:
昭和電工社製芳香環を有さない2官能反応性希釈剤。1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、エポキシ当量135g/eq、25℃における粘度32mPa・s/25℃
EP-3950L:
ADEKA社製の芳香環を有する2官能反応性希釈剤。グリシジルアミン型エポキシ樹脂、エポキシ当量97g/eq、25℃における粘度650mPa・s/25℃
CGE:
四日市合成社製の芳香環を有する単官能反応性希釈剤。о-クレジルグリシジルエーテル、エポキシ当量180g/eq、25℃における粘度7mPa・s/25℃
ED-509S:
ADEKA社製の芳香環を有する単官能反応性希釈剤。4-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、エポキシ当206g/eq、25℃における粘度20mPa・s/25℃
【0077】
(その他の成分)
SO-E2(アドマテックス社製の球状シリカD50=0.8μm)
【0078】
〔実施例1~12〕、〔比較例1~6〕
下記の表2、表3に示す配合割合に従い秤量しノンバブリングニーダーで2分間攪拌および3分間の脱泡を行い、エポキシ樹脂組成物を製造した。
未硬化状態のエポキシ樹脂組成物を約10mg計量し80℃または90℃のホットプレート上で30分または60分間加熱し、室温で1時間程度保管した後、25℃から250℃まで10℃/minの昇温速度で昇温し、DSC曲線を取得する。
残発熱量は発熱開始から終了までのヒートフローを時間積分することにより求め、以下の式を用いて反応率を算出した。
反応率[%] = (1-残発熱量/総発熱量)×100
また、示差走査熱量測定において20℃/minで昇温させた際の発熱頂点温度を測定した。
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、各種電子部品の接着剤、封止材の材料として、産業上の利用可能性を有している。