(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113342
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】ラジアルタービンインペラ
(51)【国際特許分類】
F01D 5/04 20060101AFI20240815BHJP
F01D 1/06 20060101ALI20240815BHJP
F01D 5/14 20060101ALI20240815BHJP
F02C 3/05 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
F01D5/04
F01D1/06
F01D5/14
F02C3/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018248
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 雄太
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202AA01
3G202BA01
3G202BB01
(57)【要約】
【課題】タービンの断熱効率の向上を妨げる要因を含むことなくタービンの効率の向上を図ること。
【解決手段】フルブレード80とスプリッタブレード90とが回転方向に交互に配置され、スプリッタブレード90は、隣り合うフルブレード80間の回転方向の間隔の中間点からタービンインペラ58の回転方向とは反対側に偏倚している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円錐形状のハブと、前記ハブの外周面に回転方向に間隔をおいて設けられた複数のタービン翼とを有するラジアルタービンインペラであって、
前記タービン翼は、前記ラジアルタービンインペラの回転方向に交互に配置されたフルブレードと前記フルブレードよりも前記ラジアルタービンインペラにおける流体の流れ方向の翼長が短いスプリッタブレードとを含み、
前記スプリッタブレードは、隣り合う前記フルブレード間の回転方向の間隔の中間点から前記回転方向とは反対側に偏倚した部分を含むラジアルタービンインペラ。
【請求項2】
前記フルブレード及び前記スプリッタブレードの、流体圧が前記回転方向に作用する側の面を正圧面、前記フルブレード及び前記スプリッタブレードの、前記正圧面とは反対側の面を負圧面とするとき、前記スプリッタブレードは、前記フルブレードの負圧面側に偏倚した部分を含む請求項1に記載のラジアルタービンインペラ。
【請求項3】
前記フルブレードの前記負圧面と前記スプリッタブレードの前記正圧面とにより画定される第1流路と、前記フルブレードの前記正圧面と前記スプリッタブレードの前記負圧面とにより画定される第2流路とを有し、
前記第1流路の前記回転方向の幅は前記第2流路の前記回転方向の幅より小さい請求項2に記載のラジアルタービンインペラ。
【請求項4】
前記第2流路の前記幅に対する前記第1流路の前記回転方向の幅の比率は、0.7以上且つ1.0未満である請求項3に記載のラジアルタービンインペラ。
【請求項5】
前記スプリッタブレードは、その全体において前記フルブレード間の回転方向の間隔の前記中間点から前記回転方向とは反対側に偏倚している請求項1~4の何れか一項に記載のラジアルタービンインペラ。
【請求項6】
前記スプリッタブレードは、前記ハブの前記外周面から離反する先端縁側において前記ハブの前記外周面に接合する基端縁側に比して前記フルブレードの前記負圧面に向けて偏倚している請求項2~4の何れか一項に記載のラジアルタービンインペラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジアルタービンインペラに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンに代表されるタービン機械に用いられるラジアルタービンにおいては、高温ガス等の圧縮された流体(以下、圧縮流体と言う)が、静翼(ベーン)により画定されたタービンノズルからタービンインペラに供給される。圧縮流体は、タービンノズルを通過するときに体積膨張することにより流速を増加し、タービンインペラを高速に回転させる。
【0003】
タービンインペラを、より高速で回転させるためには、タービンの膨張比を高めるだけでなく、タービンインペラのタービン翼間に、より多くの圧縮流体を流す必要がある。
【0004】
しかし、タービン翼間を流れる圧縮流体の流量が多くなるほどタービン翼の正圧面(圧力面)と負圧面とに作用する圧力の差が増大し、タービンの断熱効率が低下する原因になる。また、タービンでは、タービンの断熱効率を、圧縮流体の広い流量域(膨張比)において高くしたい要望がある。
【0005】
尚、1つのタービン翼で見て、正圧面はタービンインペラの回転方向とは反対側(回転方向遅れ側)に位置するブレード面であり、負圧面はタービンインペラの回転方向(回転方向進み側)に位置するブレード面である。
【0006】
上記問題を解消し、上記要望を満たすタービンインペラとして、翼長が長いフルブレードと翼長が短いスプリッタブレードとからなる2種類のブレードがタービンインペラの回転方向に交互に配置されたが提案されている(例えば、特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-117344号公報
【特許文献2】特開2017-193984号公報
【特許文献3】特開2017-193985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のラジアルタービンインペラでは、
図4(B)に示されているように、スプリッタブレード110は、ラジアルタービンインペラに圧縮流体が流入する側(流体入口側)の、回転方向に隣接するフルブレード100同士の回転方向の中間点Nから流体出口側に向けて延在すべく配置される。スプリッタブレード110の正圧面112とフルブレード100の負圧面104との間に画定される流路を流路A、スプリッタブレード110の負圧面114とフルブレード100の正圧面102との間に画定される流路を流路Bとすると、流路Aの入口Ainからフルブレード100のスロートSまでの流路長Faと、流路Bの入口Bin(流体流れ方向で見て入口Ainと同位置)からフルブレード100のスロートSまでの流路長Fbとが互いに異なる。
【0009】
このため、2つの流路A、Bにおいて、タービンの断熱効率に差異が生じる。流路長Faが流路長Fbよりも短いため、スプリッタブレード110の負圧面114側の流路Bに比してスプリッタブレード110の正圧面112側の流路Aを流れる圧縮流体によるタービンの断熱効率が低い。このことがタービン全体の効率の向上を妨げる原因になる。
【0010】
本発明は、以上の背景に鑑み、フルブレードとスプリッタブレードとがタービンインペラの回転方向に交互に配置されたラジアルタービンインペラにおいて、タービンの断熱効率の向上を妨げる要因を軽減してタービンの断熱効率の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、略円錐形状のハブ(70)と、前記ハブの外周面(70A)に回転方向に間隔をおいて設けられた複数のタービン翼とを有するラジアルタービンインペラ(58)であって、前記タービン翼は、前記ラジアルタービンインペラの回転方向に交互に配置されたフルブレード(80)と前記フルブレードよりも前記ラジアルタービンインペラにおける流体の流れ方向(F)の翼長が短いスプリッタブレード(90)とを含み、前記スプリッタブレードは、隣り合う前記フルブレード間の回転方向の間隔の中間点(N)から前記回転方向とは反対側に偏倚した部分を含む。
【0012】
この態様によれば、タービンの断熱効率の向上を妨げる要因が軽減され、ラジアルタービンの効率が向上する。
【0013】
上記の態様において、前記フルブレード及び前記スプリッタブレードの、流体圧が前記回転方向に作用する側の面を正圧面(82、92)、前記フルブレード及び前記スプリッタブレードの、前記正圧面とは反対側の面を負圧面(84、94)とするとき、前記スプリッタブレードは、前記フルブレードの負圧面側に偏倚した部分を含んでいてもよい。
【0014】
この態様によれば、フルブレードの正圧面側の負荷と負圧面側の負荷との均一化が図られ、タービンの断熱効率が向上する。
【0015】
上記の態様において、前記ラジアルタービンインペラが、前記フルブレードの前記負圧面と前記スプリッタブレードの前記正圧面とにより画定される第1流路(C1)と、前記フルブレードの前記正圧面と前記スプリッタブレードの前記負圧面とにより画定される第2流路(C2)とを有し、前記第1流路の前記回転方向の幅は前記第2流路の前記回転方向の幅より小さくてもよい。
【0016】
この態様によれば、フルブレードの正圧面側の負荷と負圧面側の負荷との均一化が図られ、タービンの断熱効率が向上する。
【0017】
上記の態様において、好ましくは、前記第2流路の前記幅に対する前記第1流路の前記幅の比率は、0.7以上且つ1.0未満であってよい。
【0018】
この態様によれば、タービンの断熱効率が効果的に向上する。
【0019】
上記の態様において、前記スプリッタブレードは、その全体において前記フルブレード間の回転方向の間隔の前記中間点から前記回転方向とは反対側に偏倚していてもよい。
【0020】
この態様によれば、フルブレードの正圧面側の負荷と負圧面側の負荷との均一化が図られ、タービンの断熱効率が向上する。
【0021】
上記の態様において、前記スプリッタブレードは、前記ハブの前記外周面から離反する先端側において前記ハブの前記外周面に接合する基端側に比して前記フルブレードの前記負圧面に向けて偏倚してもよい。
【0022】
この態様によれば、タービンの断熱効率が向上した上で、タービン翼の枚数が多くても、インペラの製造性が低下することが抑制される。
【発明の効果】
【0023】
以上の態様によれば、タービンの断熱効率の向上を妨げる要因が軽減され、ラジアルタービンの断熱効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】ラジアルタービンインペラを備えた発電用ガスタービンシステムの断面図
【
図2】第1実施形態に係るラジアルタービンインペラの斜視図
【
図3】第1実施形態に係るラジアルタービンインペラの子午断面図
【
図4】(A)は第1実施形態に係るラジアルタービンインペラのタービン翼を翼高さの同じ割合の位置を繋いだ面で切断して見た断面図、(B)従来のラジアルタービンインペラのタービン翼の同断面図
【
図5】ラジアルタービンの断熱効率―膨張比特性を示すグラフ
【
図6】第2実施形態に係るラジアルタービンインペラのタービン翼列図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明に係るラジアルタービンインペラを含む実施形態について説明する。
【0026】
≪第1実施形態≫
図1~
図4を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、第1実施形態に係るラジアルタービンインペラ58を備えた発電用ガスタービンシステム10の断面図である。
図1に示されているように、発電用ガスタービンシステム10は、回転軸12によって互いに同軸上に連結されたラジアルコンプレッサ14及びラジアルタービン16と、燃焼器18と、回転軸12に連結された発電機20とを有する。
【0027】
発電用ガスタービンシステム10は、軸線方向に順に互いに連結された前部端板22と前部ハウジング24と中間ハウジング26と後部ハウジング28とを有する。
【0028】
ラジアルコンプレッサ14は、前部ハウジング24に取り付けられてコンプレッサ室30を画定するコンプレッサハウジング32及びディフューザ34を固定するディフューザ固定部材36と、前部端板22に取り付けられた空気取入案内部材38とを有する。空気取入案内部材38はコンプレッサハウジング32と協働して空気取入口40を画定している。コンプレッサ室30には回転軸12に取り付けられたコンプレッサインペラ42が回転可能に配置されている。コンプレッサインペラ42はラジアルタービン16の出力軸である回転軸12により回転駆動される。ディフューザ固定部材36にはディフューザ34が取り付けられている。
【0029】
ラジアルコンプレッサ14は、空気取入口40から空気(外気)を取り入れ、コンプレッサインペラ42の回転により空気を圧縮加圧し、圧縮加圧された空気(圧縮空気)をディフューザ34に噴出する。
【0030】
後部ハウジング28内には回転軸12の中心軸線周りに燃焼器18が設けられている。後部ハウジング28はディフューザ34から各燃焼器18に圧縮空気を導く圧縮空気通路44を画定する部分を含んでいる。各燃焼器18は燃焼室46を画定している。各燃焼器18には燃料噴射ノズル48が取り付けられている。燃料噴射ノズル48は燃焼室46に燃料を噴射する。
【0031】
各燃焼室46では、燃料噴射ノズル48により燃焼室46に噴射された燃料とラジアルコンプレッサ14からの圧縮空気との混合気が燃焼し、高圧の燃焼ガス(圧縮流体)が発生する。燃焼器18のガス出口部にはタービンノズル50が設けられている。
【0032】
ラジアルタービン16は、後部ハウジング28の内側部分によって画定され、燃焼器18のガス出口部に連通するタービン室52を有する。タービン室52は隔壁部材54によってコンプレッサ室30と隔てられている。タービン室52の隔壁部材54と離反する側はシュラウド56によって画定されている。タービン室52には回転軸12を一体的に有するラジアルタービンインペラ58が回転可能に配置されている。
【0033】
タービンノズル50は、ラジアルタービンインペラ58を外囲するように円環状をなし、燃焼ガスをラジアルタービンインペラ58に向けて径方向内側且つ周方向に噴射する。ラジアルタービンインペラ58は、タービンノズル50から噴射された燃焼ガスによって回転駆動される。ラジアルタービンインペラ58を回転駆動した燃焼ガスは排気ガスとして排気ガス通路60から大気中に排出される。
【0034】
回転軸12には発電機20のロータ軸62が連結されている。これにより、発電機20は、ラジアルタービン16の回転軸12によって回転駆動され、発電を行う。
【0035】
次に、ラジアルタービンインペラ58の詳細を、
図2~
図4を参照して説明する。
【0036】
ラジアルタービンインペラ58(以下の説明では、タービンインペラ58と略称することがある)は、略円錐形状のハブ70と、ハブ70の外周面70Aにタービンインペラ58の回転方向に間隔をおいて設けられた複数のフルブレード80及びスプリッタブレード90とを有する。以下の説明では、フルブレード80及びスプリッタブレード90を総称してタービン翼と呼ぶことがある。
【0037】
各フルブレード80と各スプリッタブレード90とはタービンインペラ58の回転方向に交互に配置されている。
【0038】
タービンインペラ58の回転方向は
図2で見て反時計廻り方向の一方向である。以下の説明は、このタービンインペラ58の回転方向を単に回転方向と言うことがある。
【0039】
各フルブレード80は、ハブ70の外周面70Aの母線方向の略全長に亘って延在、つまり、タービンインペラ58の流体入口端58Aから流体出口端58Bに至るように延在している。
【0040】
タービンインペラ58の流体入口端58Aはタービンノズル50に対応する位置にある(
図1参照)。タービンインペラ58の流体出口端58Bは排気ガス通路60に対応する位置にある(
図1参照)。
【0041】
各フルブレード80は、流体入口端58Aに位置する前縁80Aと、流体出口端58Bに位置する後縁80Bと、ハブ70の外周面70Aに接合し、外周面70Aに沿って前縁80Aと後縁80Bとの間に延在する基端縁(ルート縁)80Cと、ハブ70の外周面70Aから離反し、シュラウド56(
図1参照)の内周面に沿って前縁80Aと後縁80Bとの間に延在する先端縁(チップ縁)80Dとを有する。
【0042】
各スプリッタブレード90は、ブレード翼の流体入口端58Aに位置する前縁90Aと、ブレード翼の流体出口端58Bに位置する後縁90Bと、ハブ70の外周面70Aに接合し、外周面70Aに沿って前縁90Aと後縁90Bとの間に延在する基端縁(ルート縁)90Cと、ハブ70の外周面70Aから離反し、シュラウド56(
図1参照)の内周面に沿って前縁90Aと後縁90Bとの間に延在する先端縁(チップ縁)90Dとを有する。
【0043】
ここで、各フルブレード80及び各スプリッタブレード90に対して流体圧が回転方向に作用する側の面を正圧面82、92、正圧面82、92とは反対側の面を負圧面84、94と呼ぶ。
【0044】
各フルブレード80及び各スプリッタブレード90は、
図4(A)に示されているように、フルブレード80の負圧面84とスプリッタブレード90の正圧面92とにより第1流路C1を画定し、フルブレード80の正圧面82とスプリッタブレード90の負圧面94とにより第2流路C2を画定している。
【0045】
各フルブレード80の前縁80A及び各スプリッタブレード90の前縁90Aは、タービンインペラ58における流体の流れ方向F(
図3参照。以下、流体流れ方向Fと呼ぶ)について流体入口端58Aに位置している。各スプリッタブレード90の後縁90Bは、流体流れ方向Fについてフルブレード80の後縁80Bより上流側に位置している。これにより、各スプリッタブレード90の翼長は流体流れ方向Fで見てフルブレード80の翼長よりも短い。
【0046】
図4(A)に示されているように、第1流路C1の流体入口端58Aからフルブレード80のスロートSまでの流路長F1は、第2流路C2の流体入口端58Aからフルブレード80のスロートSまでの流路長F2よりも短い。
【0047】
各スプリッタブレード90は、基端縁90Cから先端縁90Dに至る全体が、隣り合うフルブレード80の回転方向の間隔の中間点Nから回転方向とは反対側、つまり、タービンインペラ58の回転方向遅れ側に偏倚している。換言すると、各スプリッタブレード90は、その全体が中間点Nよりもフルブレード80の負圧面84側に偏倚している。
【0048】
この偏倚により、
図4(A)に示されているように、第1流路C1の回転方向の幅S1は第2流路C2の回転方向の幅S2よりも小さい。幅S2>幅S1であることにより、第2流路C2を流れる燃焼ガスの流量が、スプリッタブレード90が中間点Nにある時よりも増大する共に、第1流路C1を流れる燃焼ガスの流量が、スプリッタブレード90が中間点Nにある時よりも減少する。尚、
図4(A)では、幅S1、S2は、第1流路C1、第2流路C2の流体入口端58Aの幅を代表して示しているが、幅S2>幅S1の関係は第1流路C1及び第2流路C2の全長に亘って成立している。
【0049】
幅S2>幅S1であることにより、流路長F2が流路長F1よりも長い第2流路C2を流れる燃焼ガスの流量が、流路長F1が流路長F2よりも短い第1流路C1を流れる燃焼ガスの流量よりも増大する。
【0050】
これにより、各フルブレード80の正圧面82側の負荷(圧力)と負圧面84側の負荷(圧力)との均一化が図られ、ラジアルタービン16の断熱効率が向上する。
【0051】
この効果を確実且つ顕著に得るためには、第2流路C2の幅S2に対する第1流路C1の幅S1の比である、S1/S2は、0.7以上且つ1.0未満であることが好ましい。
【0052】
図5は、S1/S2が0.8である実施形態及びS1/S2=1.0である従来例のラジアルタービン16の断熱効率―膨張比特性を示している。
図5の特性線EはS1/S2が0.8である場合の断熱効率特性を、特性線PはS1/S2=1.0である場合の断熱効率特性を各々示している。
【0053】
特性線Eと特性線Pとの比較により、S1/S2が0.8である場合には、S1/S2=1.0である場合に比して広い膨張比域に亘って断熱効率が向上していることが分かる。
【0054】
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態のラジアルタービンインペラ58の詳細を、
図6を参照して説明する。尚、
図6において、
図1~
図4に対応する部分は、
図1~
図4に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0055】
各スプリッタブレード90は、ハブ70の外周面70A(
図3参照)から離反する先端縁90D(
図2及び
図3参照)側がハブ70の外周面70Aに接合する基端縁90C側に比してフルブレード80の負圧面84に向けて、つまり回転方向遅れ側に偏倚している。換言すると、各スプリッタブレード90は、隣り合うフルブレード80間の回転方向の間隔の中間点Nに位置した基端縁90Cを含み、基端縁90Cから先端縁90Dに向かうほど回転方向遅れ側に偏倚している。
【0056】
流体入口端58A(
図3参照)において、第1流路C1及び第2流路C2の回転方向の幅は、基端縁90Cにおいては幅S3をもって互いに等しい。第1流路C1の回転方向の幅は基端縁90Cから先端縁90Dに向かうほど減少し、第2流路C2の回転方向の幅は基端縁90Cから90Dに向かうほど増大する。流体入口端58Aにおいて、第1流路C1の幅S4は幅S3より小さい幅S4になり、第2流路C2の幅は幅S3より大きい幅S5になる。
【0057】
これにより、フルブレード80及びスプリッタブレード90の先端縁80D、90D側において、フルブレード80の負圧面84とスプリッタブレード90の正圧面92との間に、幅S4よりも大きい回転方向の幅Sが確保され、第1流路C1の流量が第2流路C2より少なくなることによって、先端縁80D、90D側の断熱効率が改善される。そのうえで、基端縁80C、90C側もラジアルタービン16の断熱効率が維持されているため、ラジアルタービン16全体の断熱効率が向上する。
【0058】
第2流路C2の回転方向の幅S5が確保されることによって第1流路C1の幅S4が小さい場合であっても、基端縁80C、90C側において、第1流路C1及び第2流路C2の回転方向の幅は幅S3をもって互いに等しいものとすることができる。これによりフルブレード80及びスプリッタブレード90の翼間隔が十分に確保される。
【0059】
翼数が多く翼間隔が小さくならざるを得ない時や、第1流路C1及び第2流路C2の流量調整のために翼間隔を調整する時に、翼間隔が十分に確保されているため、フルブレード80及びスプリッタブレード90のフィレットをハブ70に十分な厚みで形成することが加工工具とブレード翼との干渉を招くことなく行われ得るようになる。
【0060】
これにより、翼数が多く、翼間隔が小さくなり易いタービンインペラ58でも、タービンインペラ58の製造が困難になることがない。また、翼数が多く、翼間隔が小さくなり易いタービンインペラ58でも、タービンインペラ58の製造性が低下することがないと共に、タービンインペラ58の製造性のために、フルブレード80及びスプリッタブレード90の厚みを薄くする必要がなく、優れた耐久性及び高い信頼性が得られる。
【0061】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。例えば、ハブ70の形状、フルブレード80及びスプリッタブレード90の個数は、適宜変更可能である。本実施形態のラジアルタービンインペラ58は、発電用ガスタービンシステム10のラジアルタービン16のインペラに限られることはなく、各種のラジアルタービンのインペラに適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 :発電用ガスタービンシステム
18 :ラジアルタービン
56 :シュラウド
58 :ラジアルタービンインペラ(タービンインペラ)
70 :ハブ
70A :外周面
80 :フルブレード
82 :正圧面
84 :負圧面
90 :スプリッタブレード
92 :正圧面
94 :負圧面
C1 :第1流路
C2 :第2流路
F :流れ方向
N :中間点