(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113345
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置用の電極板とその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018257
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】林 雄二郎
(72)【発明者】
【氏名】岡野 晋
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA16
5F004BA04
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB23
5F004BC08
5F004BD04
(57)【要約】
【課題】異常放電の発生を低減することができるプラズマ処理装置用の電極板を提供する。
【解決手段】複数のガス流路11が貫通したガス導入部31と、このガス導入部31のまわりに形成された周縁部32と、を備え、ガス導入部31と周縁部32とで面一状の第一面301が形成され、さらにガス導入部31が周縁部32よりも厚さ方向に薄く形成されていて、ガス導入部31の第一面301側とは反対に位置する第二面302のまわりで、周縁部32が厚さ方向に突き出た突出部32Aを備えており、ガス流路11は、入口111が第一面301に形成され、出口112が第二面302に形成され、第二面302で、ガス流路11の出口112に隣接する周辺領域は付着物が占める面積の割合を10%以下とし、ガス流路11の全数のうち、付着物を内周面113に付着したガス流路11の数が占める割合を20%以下とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガス流路が貫通したガス導入部と、このガス導入部のまわりに形成された周縁部と、を備え、
前記ガス導入部と前記周縁部とで面一の第一面が形成され、さらに前記ガス導入部が前記周縁部よりも厚さ方向に薄く形成されていて、前記ガス導入部の前記第一面側とは反対に位置する第二面のまわりで、前記周縁部が厚さ方向に突き出た突出部を備えており、
前記ガス流路は、入口が前記第一面に形成され、出口が前記第二面に形成され、
前記第二面で、前記ガス流路の前記出口に隣接する周辺領域は付着物が占める面積の割合を10%以下とし、
前記ガス流路の全数のうち、付着物を内周面に付着した前記ガス流路の数が占める割合を20%以下とすることを特徴とする、プラズマ処理装置用の電極板。
【請求項2】
複数のガス流路が貫通したガス導入部とこのガス導入部のまわりに設けられた前記周縁部とで面一状に形成された第一面を有すると共に、前記ガス導入部が前記周縁部よりも厚さ方向に薄く形成されていて前記ガス導入部の前記第一面側とは反対に位置する第二面のまわりで前記周縁部が厚さ方向に突き出た突出部を備えている、電極用板状部材を研磨する研磨工程を備え、
前記研磨工程は、前記ガス導入部と前記突出部とからなる液溜め部の容積の少なくとも20%の液体を前記液溜め部に張った状態で、前記第一面を研磨用定盤に当て、さらに前記第一面と前記研磨用定盤との間に研磨液を供給しながら前記第一面の研磨を行うことを特徴とする、プラズマ処理装置用の電極板の製造方法。
【請求項3】
前記研磨工程の後に、研磨した前記電極用板状部材の前記第一面と、前記液溜め部と前記ガス流路とを洗浄する洗浄工程をさらに備えたことを特徴とする、請求項2に記載のプラズマ処理装置用の電極板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置用の電極板とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造プロセスに使用されるプラズマエッチング装置や、プラズマCVD装置等のプラズマ処理装置では、チャンバー内に、高周波電源に接続される上部電極と下部電極とを上下に対向配置し、下部電極の上に被処理基板を配置した状態として、上部電極に形成した貫通孔からプラズマ生成用のプロセスガスを被処理基板に向かって流通させながら、両電極間に高周波電圧を印加することによりプラズマを発生させ、被処理基板にエッチング等の処理を行う構成とされている。
【0003】
図9(a)に示す従来の円板状の上部電極400は、プロセスガスが通るガス流路411を複数設けたガス導入部410と、このガス導入部410の周りに設けられた周縁部420と、を備え、プロセスガス放出側では周縁部420がガス導入部410よりも張り出して、凹部430が構成されている。プロセスガスを放出するガス導入部410の出口411Aが凹部430の平坦底431に形成されていて、上部電極400は、凹部430を下部電極と対向させてプラズマ処理装置のチャンバー内に設置されて、使用される。
このように凹部430をプロセスガス放出側に設けた上部電極が特許文献1,2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-217240号公報
【特許文献2】特許第4180913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の上部電極400は、プラズマ処理装置の冷却板との密着性が良好となるように、凹部430とは反対側にある冷却面401が研磨して形成されている。従来の上部電極400の製造方法では、
図9(b)に示す凹部430とガス流路411とを設けた板状部材400Aを予め形成しておいて、この板状部材400Aの凹部430とは反対側にある面401Aを研磨する研磨工程を行って、冷却面401を形成する。
【0006】
研磨工程は、
図9(b)に示すように、板状部材400Aの凹部430とは反対側にある面401Aを研磨用定盤500に当てて板状部材400Aを研磨用定盤500に載せ、さらに破線で示すプレッシャープレート600によって板状部材400Aの凹部430とは反対側にある面401Aを研磨用定盤500に設けられた図示省略の研磨クロスに押し付ける。また、研磨工程中は、板状部材400Aの凹部430は上を向いており、コロイダルシリカやダイヤモンド砥粒等の研磨材を含有したスラリーからなる研磨液700が研磨用定盤500と板状部材400Aとの間に供給されている。この研磨液700がガス流路411を通って凹部430の平坦底431までせり上がり、研磨工程を経て、冷却面401が形成された上部電極400において、
図9(c)に示すように研磨液700が凹部430の平坦底431に残り、この研磨液700が乾燥するとシミの原因となる。
【0007】
このように研磨工程の際に用いた研磨液700の残渣としてシミが凹部430の平坦底431に形成されると、上部電極400をプラズマ処理装置で使用した際に、異常放電が発生して、プラズマ処理装置を正常に使用することができない。また、研磨液700の残渣が付着物として、ガス流路411の内周面に付着して残ることでも、異常放電が発生する原因と成り得る。
【0008】
そこで、本発明は、上記の課題を解決するために創作されたものであり、異常放電の発生を低減することができるプラズマ処理装置用の電極板とその製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のプラズマ処理装置用の電極板は、複数のガス流路が貫通したガス導入部と、このガス導入部のまわりに形成された周縁部と、を備え、前記ガス導入部と前記周縁部とで面一の第一面が形成され、さらに前記ガス導入部が前記周縁部よりも厚さ方向に薄く形成されていて、前記ガス導入部の前記第一面側とは反対に位置する第二面のまわりで、前記周縁部が厚さ方向に突き出た突出部を構成しており、前記ガス流路は、入口が前記第一面に形成され、出口が前記第二面に形成され、前記第二面で、前記ガス流路の前記出口に隣接する周辺領域は付着物が占める面積の割合を10%以下とし、前記ガス流路の全数のうち、付着物を内周面に付着した前記ガス流路の数が占める割合を20%以下とする。
【0010】
周辺領域は、第二面に存在し、出口の中心からの最大半径が20.0mm以内の箇所である。ここで、「最大半径が20.0mm以内の箇所」とは、最大を成す半径が20.0mm以下であり、さらにその最大半径からなる仮想円上と、この仮想円の内側の箇所(出口を除く。)を意味する。最大半径の特定方法は、周辺ガス流路出口の縁のうち対象の出口の中心から最も近い縁に外接する仮想円を求め、その仮想円の半径を最大半径とする。この特定方法で求められた最大半径が20mm以下であれば取得した数値を利用し、20mmを越える場合は最大半径を20mmとする。「周辺ガス流路出口」は、例えば所定のピッチで位置をずらして配置される周辺のガス流路の出口である。なお、一つの出口の周辺領域と、周辺ガス流路出口の中心から定まる周辺領域とは、離れて設定され、又は一部が重なるように配置されてもよい。周辺領域において、付着物が占める面積の割合を10%以下として、有機物由来のシミを抑えて構成することができる。また、電極板は、付着物を内周面に付着させたガス流路の数の割合を20%以下にして構成されている。この電極板を用いたプラズマ処理装置ではプラズマ処理を正常に行うことができる。
一方、付着物が占める面積の割合が10%を超える場合や付着物を内周面に付着させたガス流路の数の割合が20%を超える場合、プラズマ処理装置で電極板を使用すると、異常放電の数が多くなり、プラズマ処理を正常に行うことができなくなる。
【0011】
本発明のプラズマ処理装置用の電極板の製造方法は、複数のガス流路が貫通したガス導入部とこのガス導入部のまわりに設けられた前記周縁部とで面一状に形成された第一面を有すると共に、前記ガス導入部が前記周縁部よりも厚さ方向に薄く形成されていて前記ガス導入部の前記第一面側とは反対に位置する第二面のまわりで前記周縁部が厚さ方向に突き出た突出部を構成している、電極用板状部材を研磨する研磨工程を備え、前記研磨工程は、前記ガス導入部と前記突出部とからなる液溜め部の容積の少なくとも20%の液体を前記液溜め部に張った状態で、前記第一面を研磨用定盤に当て、さらに前記第一面と前記研磨用定盤との間に研磨液を供給しながら前記第一面の研磨を行う。
【0012】
研磨工程では、前記液溜め部に前記液体を張った状態で、前記液溜め部とは反対側にある前記第一面を研磨することで、前記液溜め部で前記ガス流路の前記出口に隣接した周辺領域を付着物が占める面積の割合を10%以下に形成し、付着物を内周面に付着させたガス流路の数の割合を20%以下にすることができる。
一方、前記液溜め部に前記液体を張らずに第一面の研磨を行うと、研磨液がガス流路をせり上がり、研磨後に電極用板状部材の第二面に残った研磨液の残渣が残り、これが乾燥してシミとなり、異常放電が発生する原因となる。
【0013】
本発明のプラズマ処理装置用の電極板の製造方法は、好ましくは、記研磨工程の後に、研磨した前記電極用板状部材の前記第一面と、前記液溜め部と前記ガス流路とを洗浄する洗浄工程をさらに備えている。
【0014】
洗浄工程を行うことで、電極用板状部材の第二面の研磨液の残渣、ガス流路内の研磨液の残渣をより一層低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第二面のシミの発生やガス流路内の付着物の付着を抑えて電極板を構成することで、プラズマ処理装置で使用した際に異常放電の発生が低減して正常にプラズマ処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るプラズマエッチング装置を示す図である。
【
図2】(a)は
図1のプラズマエッチング装置の上部電極を示す平面図であり、(b)は(a)の上部電極のA1-A1線に沿った断面図であり、(c)は(a)の破線箇所を拡大した図である。
【
図3】(a)は
図2(a)の上部電極の製造工程を示す図であり、(b)は(a)のポリッシュ工程を示す図である。
【
図4】(a)から(c)は
図3(b)のポリッシュ工程を説明するための図である。
【
図5】研磨液の残渣の観察を行うガス流路の出口周辺の観察場所を説明するための図である。
【
図6】(a)及び(b)はガス流路の撮影画像である。
【
図7】(a)は実施例3のガス流路の出口周辺の観察場所のSEM(Scanning Electron Microscope)画像であり、(b)は(a)のSEM画像を二値化処理したモノクローム画像であり、(c)は比較例1のガス流路の出口周辺の観察場所のSEM画像であり、(d)は(c)のSEM画像を二値化処理したモノクローム画像である。
【
図8】比較例1のガス流路の出口とその周辺を撮像した画像である。
【
図9】(a)は従来の電極板を示す断面図であり、(b)及び(c)は(a)の従来の電極板の冷却面を形成するための研磨工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態に係るプラズマエッチング装置1は、真空チャンバー2内の上部に、上部電極となる電極板3が設けられると共に、下部に、下部電極となる上下動可能な架台4が電極板3と相互間隔をおいて平行に設けられている。
【0018】
上部の電極板3は、絶縁体5により真空チャンバー2の壁に対して絶縁状態に支持されているとともに、架台4の上には、静電チャック6と、その周りを囲むシリコン製の支持リング7とが設けられており、静電チャック6の上に、支持リング7により周縁部を支持した状態でウエハ(被処理基板)8を載置するようになっている。また、真空チャンバー2の上部にはエッチングガス供給管9が設けられ、このエッチングガス供給管9から送られたエッチングガスは拡散部材10で拡散された後に、熱伝導性に優れるアルミニウム等からなる冷却板14に設けられた上流ガス流路15と電極板3に設けられたガス流路11とを流れて、ウエハ8に向い、真空チャンバー2の側部の排出口12から外部に排出される。
【0019】
このプラズマエッチング装置1では、電極板3と架台4との間に高周波電圧を印加する高周波電源13を設けている。エッチングガスが電極板3と架台4との間の空間Sに放出され、高周波電源13から高周波電圧が印加されると、この空間S内でプラズマとなってウエハ8に当たる。このプラズマによるスパッタリングすなわち物理反応と、エッチングガスの化学反応とにより、ウエハ8の表面がエッチングされる。
また、ウエハ8の均一なエッチングを行う目的で、発生したプラズマをウエハ8の中央部に集中させ、外周部へ拡散するのを阻止して電極板3とウエハ8との間に均一なプラズマを発生させるために、通常、プラズマ発生領域16がシリコン製のシールドリンク17で囲われた状態とされている。
【0020】
(電極板3)
電極板3は、単結晶シリコン、柱状晶シリコン、又は多結晶シリコンにより、
図2(a)に示すように、複数のガス流路11が形成されたガス導入部31と、ガス導入部31のまわりに形成された周縁部32とを備えて、円板状に形成されている。
さらに電極板3は、
図2(b)に示すように、冷却板14が固定される冷却面としての第一面301を有し、第一面301はガス導入部31と周縁部32とで面一形成されている。この第一面301を基準として第一面301に直交する厚さ方向に沿った厚さにおいて、ガス導入部31の第一面301からその反対側に位置する第二面302までの厚さt1を、周縁部32の第一面301からその反対側に位置する第三面303までの厚さt2と比べると、ガス導入部31の厚さt1は周縁部32の厚さt2よりも薄く形成されて(t1<t2)いて、周縁部32がガス導入部31の第二面302のまわりでガス導入部31よりも厚さ方向に突き出て突出部32Aを備えている。突出部32Aが環状に設けられており、電極板3は、第二面302の周縁と第三面303の内周縁とをつなぐ内周面304と、第一面301の周縁と第二面302の外周縁とをつなぐ外周面305と、をさらに備えている。
また、電極板3では、ガス導入部31が周縁部32よりも厚さ方向に薄いことから、凹部33がガス導入部31と突出部32Aとで構成されている。
電極板3の寸法は、限定されるものではないが、例えば第一面301の直径が200mm以上600mm以下であり、厚さt2が8mm以上25mm以下である。第二面302の直径が195mm以上595mm以下であり、また突出部32Aの高さHは電極板3の周縁部32の厚さt2の5%以上60%以下であり、電極板3の周縁部32の厚さt2が20mmであれば突出部32Aの高さHを10mmに設定することができる。なお、
図1では突出部32Aを省略して電極板3を表している。
【0021】
電極板3の第一面301は、ガス導入部31の一方の面と周縁部32の一方の面とが面一に連なって形成されており、さらに第一面301は、冷却板14との密着性及び接合性を高めるために鏡面処理が施されている。鏡面の程度としては、例えば中心線平均粗さRaで0.01μm程度とされ、好ましくはRaが0.02μm以下であるが、実質上Raが0.3μm以下であればよい。なお、第二面302は例えば中心線平均粗さRaを0.1μm以上にすることができるが、第一面301と同様に鏡面処理されてもよい。
【0022】
さらに、電極板3では、複数のガス流路11が第一面301から第二面302まで貫通しており、各ガス流路11の入口111が第一面301に設けられ、各ガス流路11の出口112が第二面302に設けられている。なお、
図2(a)では、複数のガス流路11の一部を省略して、電極板3を表している。
ガス流路11の円形の出口112や内周面113の径φ(直径)が例えば0.3mm以上1.0mm以下であり、各ガス流路11の出口112の間隔は、例えば4mm以上50mm以下である。ガス流路11の入口111は出口112と同形状であり、各ガス流路11は電極板3に厚さ方向に延びる中心軸を揃えて形成されている。
【0023】
さらに、第二面302のうち、各ガス流路11の出口112に隣接する周辺領域AR1では、面方向に広がった付着物が存在する。この面状の付着物は、周辺領域AR1を撮像したモノクローム画像から、輝度の閾値で選別して、特定することができる。例えば256階調(0~255)のグレイスケール画像において、輝度の閾値を基に、二値化処理を行ってモノクローム画像を作成する。閾値よりも高い階調の画素を白で表し、変色した暗い箇所は閾値よりも低い階調の画素として取り扱われて黒で表される。なお、付着物は、後述の電極板3を製造する際に行うポリッシュ工程の際に研磨液と電極板の表面との反応や、或いは洗浄工程での乾燥の際に研磨液の残渣と電極板の表面との反応によって、有機物由来のシミが第二面302に形成されたものであると考えられる。
図2(c)は
図2(a)の破線の円で囲った部分の拡大図であり、
図2(c)ではハッチングを付して三つの出口112の周辺領域AR1を表している。また
図2(c)では、三つの出口112やそれに関した構成には符号に(A),(B),(C)を付加して、以下、これらの出口112(A),112(B),112(C)を区別して、中間に位置する出口112(B)の周辺領域AR1を説明する。
出口112(B)の周辺領域AR1は、第二面302に存在し、出口112(B)の中心C(B)からの最大半径rmaxが20.0mm以内の箇所である。
ここで、「最大半径rmaxが20.0mm以内の箇所」とは、最大を成す半径rmaxが20.0mm以下であり、さらにその最大半径rmaxからなる仮想円上と、この仮想円の内側の箇所(出口を除く。)を意味する。
最大半径の特定方法は、周辺ガス流路出口の縁のうち対象の出口112(B)の中心C(B)から最も近い周辺ガス流路出口の円形の縁に外接する仮想円を求め、その仮想円の半径を最大半径とする。また最大半径を特定する条件として、この特定方法で求められた最大半径が20mm以下であれば取得した数値を利用し、20mmを越える場合は最大半径を20mmとする。「周辺ガス流路出口」は、例えば所定のピッチで位置をずらして配置される周辺のガス流路の出口112(A),112(C)である。
図示例においては、出口112(A),112(B),112(C)の間隔が等しいため、出口112(B)の中心C(B)に対して出口112(A),112(C)が最も近い位置に配置され、これらの円形の縁に対して、符号αと一点鎖線で示す仮想円が外接することになる。このように複数の出口112(A),112(C)の縁(円)に一つの仮想円が外接する場合も、その半径が最大半径rmaxとなるが、この一点鎖線の仮想円の半径が20.0mmよりも長いため、上記条件によって、出口112(B)の最大半径rmaxが20.0mmとなり、周辺領域AR1はハッチングを付した領域に特定される。
また、図示することを省略するが、出口112(B)の中心C(B)から周辺ガス流路出口の縁に外接する仮想円の半径が20mm未満であれば、例えば最も近い周辺ガス流路出口の縁に外接する仮想円の半径が10.1mmであれば、上記条件により、対象の出口112(B)の仮想円の最大半径rmaxは10.1mmになり、その出口112(B)の周縁領域AR1は出口112(B)の中心C(B)から10.1mmの仮想円上とその内側(出口112(B)や周辺ガス流路出口を除く。)として特定される。
出口112(B)の周辺領域AR1と同様に、出口112(A)や出口112(C)の各周辺領域AR1(A),AR1(C)も、離れて配置される周辺のガス流路11との位置関係で最大半径rmaxが定まり、またその最大半径rmaxによって周辺領域AR1(A),AR1(C)が特定される(出口112(A)、出口112(B)、出口112(C)の箇所を除く。)。
なお、図示例では、出口112(A),112(B),112(C)の各周辺領域AR1(A),AR1(B),AR1(C)が離れて設定されているが、出口112(A),112(B),112(C)の各周辺領域AR1(A),AR1(B),AR1(C)は一部が重なるように配置されてもよい。
このように特定される周辺領域AR1では有機物が占める面積の割合(以下、面積率と称す場合がある。)は10%以下である。この面積率は、第二面302に形成されている複数のガス流路11それぞれの面積率(以下、個別面積率と称す。)を算出し、さらに複数の個別面積率の平均値を算出し、この個別面積率の平均値を面積率(本発明の一実施形態の面積率)とする。なお、
図2(c)ではガス流路11の中心C(A),C(B),C(C)を黒丸で表している。
また、電極板3では、内周面113に盛り上がるように付着した付着物が存在する。ガス流路11の総数Nのうち、付着物を内周面113に有するガス流路11の数nが占める割合(n/N)×100[%]が、例えば20%以下、好ましくは14%以下、より好ましくは6%以下とする。この付着物は有機物からなり、大きさは例えば10μm以上である。
【0024】
(電極板の製造方法)
図3(a)に示すように、電極板3の製造方法は、単結晶シリコンなどのインゴットをスライスして第一板状部材を形成するスライス工程と、加熱工程と、第一板状部材に加工を施して第一貫通穴と第一凹部とを有する第二板状部材を形成する加工工程と、第二板状部材にエッチング処理を施して表面の中心線平均粗さRaを0.5μm以下の第三板状部材に形成するエッチング工程と、第三板状部材のエッチング処理後の面をポリッシュして表面の中心線平均粗さRaを0.3μm以下にするポリッシュ工程(鏡面処理)と、ポリッシュ工程後に液体(水)で第一面301,凹部33などの表面やガス流路11を洗浄する洗浄工程と、を備えている。
【0025】
(スライス工程)
例えば、柱状晶のSiインゴット(脆性材料のインゴット)からダイヤモンド砥粒のバンドソーもしくはワイヤーソーで直径200mm以上600mm以下、厚さ8mm以上25mm以下の第一板状部材を切断する。
【0026】
(加熱工程)
第一板状部材を所定の温度まで加熱した後に、常温まで冷却するアニール処理を行う。これにより、電子の放出を効果的に抑制し、比抵抗値のばらつきを抑えることができる。
【0027】
(加工工程)
第一板状部材の一方の面を研削して第一凹部を形成し、さらにドリルで第一凹部の平坦状に形成された底からこの底とは反対にある面まで延びる第一貫通穴を形成する。加工工程により、第二板状部材が形成される。
【0028】
(エッチング工程)
エッチング工程は、加工工程後の第二板状部材に対して、酸性のエッチング液を用いて実行される。このエッチング液としては、フッ酸(HF)、硝酸(HNO3)、酢酸(CH3COOH)を混合したフッ硝酢酸が用いられる。好ましくは、フッ酸5%以上40%以下、硝酸25%、酢酸12.5%を含む、残部が純水からなるとよい。
エッチング工程では、表面のクラックやくぼみの除去に加えて、第一貫通穴の内周面に形成されたバリなども除去され、第一凹部の内周面や底、底の反対側にある面は、エッチング後の中心線平均粗さRaが例えば0.5μm以下である。このエッチング工程により、凹部33とガス流路11とを設けた第三板状部材が形成される。
【0029】
エッチング工程を行って形成される第三板状部材は、その全体的な外観はほぼ電極板3と同じであるが、凹部33とは反対にある面(冷却板と接する第一面に相当)の粗さが、この段階では鏡面として形成されておらず、第一面301と異なっている。以下の説明や
図4では、電極板3の第一面301に対応する第三板状部材の構成に同じ名称と同じ符号を用いてそれらの説明を省略し、且つ第三板状部材の構成にはさらに符号としてWを付け、さらに第三板状部材の符号を3Wとする。
【0030】
(ポリッシュ工程)
ポリッシュ工程では、凹部33Wとは反対側にある第一面301W、第三面303W、凹部33Wの順番で研磨を行う。なお、凹部33Wを鏡面に形成しない場合には、第二面302Wと内周面304Wの研磨を省いてもよい。
【0031】
ポリッシュ工程のうち、第三板状部材3W(本発明の電極用板状部材)を研磨して第一面301を形成する冷却面形成工程(本発明の板状部材を研磨する方法)は、
図3(b)に示すように、第三板状部材3Wを研磨用定盤50の上に載せる載置工程と、第三板状部材3Wを研磨用定盤50に載置した状態で凹部33Wに液体60を張って第二面302Wとガス流路11Wとを液体で覆う液張工程と、第三板状部材3Wをプレッシャープレートによって上方から研磨用定盤50に押し付けた状態で研磨用定盤50を回転させて第三板状部材3Wの凹部33Wとは反対側にある第一面301Wを研磨する冷却面研磨工程と、を備えている。
【0032】
(載置工程)
図4(a)に示すように、載置工程では、第三板状部材3Wの凹部33Wが上方を臨むように、凹部33Wとは反対に側にある第一面301W(本実施形態の電極用板状部材の第一面)を研磨用定盤50に当てて、第三板状部材3Wを研磨用定盤50に載置する。研磨用定盤50は、図示省略の研磨クロスを設けており、この研磨クロスが研磨対象の第一面301Wに当たっている。
【0033】
(液張工程)
液張工程では、第三板状部材3Wの凹部33Wを、複数のガス流路11Wが貫通したガス導入部31Wと第二面302Wのまわりで第三板状部材3Wの周縁部32Wが厚さ方向に突き出た突出部32AWとからなる液溜め部として用いる。
図4(b)に示すように、第三板状部材3Wの凹部33Wが上方を臨んだ状態で、凹部33Wに液体60を張って、第二面302Wの全体を液体60で覆う。ガス流路11Wの中は液体60で満たされる。凹部33Wに溜める液体60の量は、例えば凹部33Wの容積の少なくとも20%以上である。液体60は、電極板の表面に影響を与えない物質からなり、例えば水や水酸化テトラメチルアンモニウム(Tetramethylammonium hydroxide:TMAH)の水溶液を用いることができる。水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)は例えば1mass%以上5mass%以下であり、水を用いる場合と比べて、第二面302W、内周面304Wやガス流路11Wの内周面113Wに対して研磨液の濃度が薄くならない等の利点がある。
【0034】
(冷却面研磨工程)
図4(c)に示すように、冷却面研磨工程では、研磨用定盤50に載置した第三板状部材3Wの上方から、プレッシャープレート70を第三板状部材3Wの第三面303Wに当てて凹部33Wの開口を塞ぎ、さらに第三板状部材3Wに荷重を加えて第三板状部材3Wを研磨用定盤50に押し付ける。このように第三板状部材3Wを研磨用定盤50に押し付けた状態で研磨用定盤50を回転させ、また図示省略の供給装置から、研磨液80を研磨用定盤50と第三板状部材3Wとの間に供給して、第一面301Wを研磨クロスと研磨液80とによって研磨する。研磨液80は、コロイダルシリカやダイヤモンド砥粒等の研磨材を含有したスラリーからなる。この冷却面研磨工程では、第一面301Wの研磨を、凹部33Wに液体60を張った状態で行う。この冷却面研磨工程によって例えば表面の中心線平均粗さRaが0.02μm以下の第一面301を形成する。
またポリッシュ工程では、周縁部32Wの研磨と、必要に応じて凹部33Wの研磨とを行って、第三面303W、第二面302W、内周面304Wを鏡面に形成する。
【0035】
(洗浄工程)
例えば、洗浄工程は、第一面301や凹部33Wを流水洗浄、又は超音波洗浄が実施される。この洗浄工程は、ポリッシュ工程で用いられた研磨クロスの砥粒や研磨されたSi屑、研磨液80を構成する有機物など付着したものを洗い流し、さらに乾燥を行う。
上記のように、冷却面研磨工程を経て、電極板3が完成する。電極板3は、第一面301をプラズマエッチング装置1の冷却板14に密着させ、エッチングガスの出口112が形成された第二面302がプラズマ面としてプラズマが生成される空間Sを臨んで、使用に供される。
【0036】
実施形態の電極板3の製造方法の冷却面研磨工程(ポリッシュ工程)では、研磨クロスや研磨液80を用いた第一面301Wの研磨が、液体60を凹部33Wに溜めた状態で行われるため、研磨液80がガス流路11Wを通って凹部33W内に入ったとしても、予め入れられている液体60と混じり、冷却面研磨工程の後に、凹部33W内の混合液は排出され、第二面302Wに研磨液80が多く残ることを防止することができる。
【0037】
実施形態の電極板3によれば、プラズマ面を構成する第二面302のうち、ガス流路11の出口112に隣接した周辺領域AR1では、研磨液80の残渣が少なく、面状付着物が占める割合が10%以下であり、有機物由来のシミが出口112のまわりで大きく形成されることを抑えることができる。さらにガス流路11の全数Nのうち、内周面113に付着物として有機物がついた数nの割合(n/N)×100[%]を、少なくとも例えば20%以下にすることができる。これによりプラズマエッチング装置に電極板3を搭載して使用した状態では、異常放電やパーティクルの発生を、
図9に示す凹部430の平坦底431にシミが大きくできた従来の上部極板400に比べて、低減することができる。
一方、出口112に隣接した周辺領域AR1において有機物が占める割合が10%を超えている場合やガス流路11の内周面に付着物がついた数nの割合(n/N)×100[%]が20%を超えている場合には、
図9に示すシミが大きくできた従来の上部極板400と同様に、異常放電やパーティクルの発生が多くなり、プラズマ処理を正常に行えなくなる。
【0038】
本発明は、上記の実施形態に限らず実施をすることができる。
電極板に形成されるガス流路11の数やそれらの配置は図示例に限られるものではない。凹部の形状も図示例に限らず、例えば内周面304は、第二面302に対して垂直に立ち上がっている形状に代えて、
図9(a)に示す従来の上部電極400の内周面421と同様に、テーパー状に形成してもよい。
【実施例0039】
第三板状部材3Wの冷却面となる第一面301Wを研磨する際に第三板状部材3Wの凹部33Wの状態を変えたポリッシュ工程と洗浄工程(乾燥を含む。)を経て作製した各電極板において、シミの発生と、ガス流路の付着物の有無、プラズマエッチング処理装置で電極板を使用した際の異常放電の回数を確認した。
【0040】
各ポリッシュ工程での凹部33Wの状態としては、液体を張る場合と液体を張らない場合とがあり、液体を張る場合には凹部33Wの容積に対する割合を10%、20%、50%、90%のいずれとし、さらに液体は水又は水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)からなる。
【0041】
本発明の実施例1~4では、凹部33Wにその容積の20%以上の液体を張り、また実施例4では水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を用いる。液体を凹部33Wに張らない場合と凹部の容積に対する割合が10%,19%である場合とを比較例1~3とする。
【0042】
実施例1~4と比較例1~3とのいずれのポリッシュ工程においても、研磨用定盤50や研磨液80は同じものを用い、研磨時間や研磨クロスの回転数などはいずれでも同じとした。またいずれのポリッシュ工程でも、同形状の第三板状部材3Wを研磨の対象とした。なお、第三板状部材3Wは、第一面301Wの直径が340mm、第二面302Wの直径が300mm、ガス流路11Wの径(φ:直径)が0.5mm、ガス流路11Wの数が20個であり、ガス導入部31Wの厚さt1が10mm、周縁部32Wの厚さt2が20mm、突出部32AWの高さhが10mmである。
【0043】
(シミの発生:有機物が占める面積の割合)
SEMによって、ポリッシュ工程と洗浄工程(乾燥を含む。)を経た第二面302Wのガス流路の出口の周辺領域AR1で、100倍の倍率で矩形の視野範囲(縦L1が960μm、横W1が1280μm)に収まる一部の領域を観察場所として、SEM画像を作成する。観察する一部の小領域は、
図5に示すようにガス流路11の出口112Wの中心C″のまわりにある四か所AR11,AR12,AR13,AR14である。なお、各試料いずれも、ガス流路の配置は同じであり、さらに各ガス流路のピッチが大きいことから、前記の特定方法とその条件により周辺領域AR1を特定するための最大半径rmaxを2mmとした。
ここで、ガス流路11の出口112Wの中心C″を通る直交する二つの軸X、Yを想定すると、二つの小領域AR11,AR13は中心C11,C12をX軸上に配置し、また周縁としての仮想の境界のうち、長辺がX軸と平行に設けられ、短辺がY軸と平行に設けられており、さらにガス流路11側の短辺はガス流路11の出口112Wの中心C″から寸法x1分離れていて、ガス流路11の出口112Wが小領域AR11,AR13の間に配置されている。残りの二つの二つの小領域AR12,AR14は中心C12,C14をY軸上に配置し、また周縁としての仮想の境界のうち、長辺がX軸と平行に設けられ、短辺がY軸と平行に設けられており、さらにガス流路11側の長辺はガス流路11の出口112Wの中心C″から寸法y1分離れていて、ガス流路11の出口112Wが小領域AR12,AR14の間に配置されている。これらの小領域AR11,AR12,AR13,AR14は隣接してガス流路11の出口112Wを囲っており、またガス流路11の出口112Wからオフセットされていることから、小領域AR11,AR12,AR13,AR14とガス流路11の出口112Wとの間の箇所AR15は観察に利用されない。なお、オフセット量x1,y1はガス流路11Wの出口112Wの半径r1よりも大きく設定されており(x1>r1,y1>r1)、オフセット量x1とオフセット量y1とを等しく設定することもでき、実施例ではオフセット量x1,y1をそれぞれ0.5mmに設定した。
SEMで取得した四つの小領域AR11,AR12,AR13,AR14の各SEM画像を画像処理によって、有機物が検出されて色が濃く表れる画素と、有機物が検出されずに色が薄く表れる画素とを識別してモノクローム画像に変換し(二値化処理)、さらに各SEM画像からそれぞれの小領域AR11,AR12,AR13,AR14において有機物が占める面積の割合(以下、小領域面積率と称す。)を算出する。これら4つの小領域AR11,AR12,AR13,AR14の小領域面積率から小領域面積率の平均値M1(以下、第一平均値と称す。)を求める。この第一平均値M1は、観察対象のガス流路11Wの出口112Wまわりのシミの発生の度合いを示している。
さらに第二面302Wには複数のガス流路1Wが形成されていることから、20個のガス流路11Wのうち、任意の五つを選択して、選択した五つのガス流路11Wそれぞれの第一平均値M1を求め、さらに複数の第一平均値M1から第一平均値の平均値M2(以下、第二平均値:本発明の面積率)を求めた。選択する数を六つ以上にしても、得られる面積率に大きな差異はないため、五つとした。この第二平均値M1は、第二面302Wにおけるシミの発生の度合いを示している。
なお、二値化処理や面積率の算出には、画像処理ソフトウェア(ImageJ)を用いた。
実施例1~4と比較例1~3における有機物の残渣の面積率(第二平均値M2)を表1に示す。
【0044】
(ガス流路の付着物の有無)
非接触式画像測定機(株式会社ミツトヨ製のQV606-PRO_BT2G(SP))にて、ポリッシュ工程と洗浄工程(乾燥を含む。)を経たガス流路11Wを第二面302W側(プラズマ面側)から、全てのガス流路11Wを撮像し、非接触式画像測定機の画像処理によって、ガス流路11Wの全数(N=20)に対する、内周面113Wに付着物90が付いたガス流路11Wの数が占める割合(n/N)×100[%]を算出した。
画像処理では、各ガス流路11Wの内周面113Wの付着物の有無の判断と、付着物90が付着したガス流路11Wの割合の算出とが行われる。
画像処理における、付着物の有無の判断は、エッジ検出によって撮像画像からガス流路11Wの内周面の輪郭形状(付着物が付着しているものは付着物の輪郭を含む。)を取得し、この円形の輪郭の真円度から付着物の有無を判断する。非接触式画像測定機の画像処理で真円度を求め、さらに真円度0.010mm以上であれば内周面に付着物、つまり有機物の残渣があるとした。
このような付着物の有無の判断を全てのガス流路11Wに対して行い、付着物90が付着したガス流路11Wの割合の算出を算出した。
図6(a)は付着物が内周面113Wに付着しているガス流路の撮影画像であり、
図6(b)は付着物が内周面113Wに付着していないガス流路11Wの撮影画像である。
実施例1~4と比較例1~3の付着物90が付着したガス流路11Wの割合を表1に示す。
【0045】
(異常放電の回数)
作製した電極板をプラズマエッチング装置のチャンバー内に設けて、プラズマエッチング装置を以下のエッチング条件の下、5時間放電を行い、放電中のマッチングボックスの電圧異常が発生した回数を計測した。
(エッチング条件)
ウエハサイズ : φ150mm
チャンバー内の圧力 : 3Pa
エッチングガスの組成 : Ar 200sccm/CF4 100sccm/O2 5sccm
高周波電力 : HF 1200W, LF 150W
なお、sccmとは、standard cc/minの略であり、1atm(大気圧1013Pa)で、0℃あるいは25℃などの一定温度で規格化された1分間あたりの流量(cc)をいう。
実施例1~4と比較例1~3における異常放電の回数を表1に示す。
【0046】
【0047】
実施例1~4では、凹部33Wの容積の少なくとも20.0%で液体を張ることで、研磨液の残渣の面積率(第二平均値)が0以上5%以下のシミが無い状態に第二面302Wを形成し、さらに付着物90が内周面113Wに付いたガス流路11Wの割合を14.0%以下としてガス流路11Wの内部においても付着物90を低減することで、プラズマエッチング装置に搭載して使用した際に放電の発生を抑えることができることを確認した。なお、ガス流路の内周面の10μm未満の付着物(有機物)は、微小であることから異常放電に大きな影響を及ぼしていないと考える。
図7(a)は実施例3でガス流路11Wの出口112Wの中心C″のまわりにある観察場所のSEM画像であり、SEM画像では、シミは電極板の本来の表面に比べて暗い箇所として表れる。また、
図7(b)は
図7(a)の256階調(0~255)のグレイスケール画像(SEM画像)を二値化したモノクローム画像である。グレイスケール画像に対する画像処理(二値化)では、付着物が付着して変色したシミを表す画素の階調と電極板の本来の表面の箇所を表す画素の階調との間の閾値を設定して、電極板の本来の表面の箇所を閾値よりも高い階調(明るい)の画素として取り扱って白で表し、一方、付着物、つまり変色した有機物由来のシミは閾値よりも低い階調(暗い)の画素として取り扱って黒で表しており、このモノクローム画像においてもシミの割合が5.5%であり、シミの発生が抑えられている。
比較例1,2では、第二面302W上の研磨液の残渣の面積率(第二平均値)が約40%を占め、さらに付着物90が内周面113Wに付いたガス流路11Wの割合も約半数となって、異常放電が多く発生することを確認した。比較例3では、第二面302W上の研磨液の残渣の面積率(第二平均値)と、付着物90が内周面113Wに付いたガス流路11Wの割合とが比較例1,2に比べて小さいが、異常放電が多く発生することを確認した。
図8は比較例1のガス流路11Wとその周辺を倍率1倍で撮像した像であり、研磨液の残渣によってシミが形成されている。また、
図7(c)は比較例1でガス流路11Wの出口112Wの中心C″のまわりにある観察場所のSEM画像であり、
図7(d)は
図7(c)のSEM画像を二値化したモノクローム画像であり、このモノクローム画像におけるシミの割合は43.1%であり、シミが広い範囲に亘って多く発生している。