(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113349
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】放射線量評価装置、放射線量評価方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G21C 17/00 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
G21C17/00 500
G21C17/00 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018268
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】河野 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】安藤 篤
(72)【発明者】
【氏名】那須 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】山本 和秀
(72)【発明者】
【氏名】亀井 瞬
(72)【発明者】
【氏名】長澤 浩司
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075AA01
2G075BA03
2G075BA16
2G075CA02
2G075DA08
2G075EA03
2G075FA05
2G075FA18
2G075FB07
(57)【要約】
【課題】原子炉の運転状態の変化によって線量率が変化する場合に対応することができる放射線量評価装置、放射線量評価方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】放射線量評価装置は、原子力発電所の放射線量の良否を判定する装置であって、原子炉の運転状態を表す第1情報と、原子炉冷却材水位を表す第2情報と、計測場所を表す第3情報と、放射線量の計測値を表す第4情報との組である第1組を取得する取得部と、過去に取得した、第1情報と、第2情報と、第3情報と、第4情報との組である第2組に基づいて定めた第4情報の許容範囲内に、第1組が含む第4情報があるか否かを判定する判定部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電所の放射線量を評価する装置であって、
原子炉の運転状態を表す第1情報と、原子炉冷却材水位を表す第2情報と、計測場所を表す第3情報と、放射線量の計測値を表す第4情報との組である第1組を取得する取得部と、
過去に取得した、前記第1情報と、前記第2情報と、前記第3情報と、前記第4情報との組である第2組に基づいて定めた前記第4情報の許容範囲内に、前記第1組が含む前記第4情報があるか否かを判定する判定部と、
を備える放射線量評価装置。
【請求項2】
前記第1組が含む前記第1情報および前記第2情報は、前記原子力発電所の定期点検の計画に定められた情報である
請求項1に記載の放射線量評価装置。
【請求項3】
前記許容範囲は、前記第1組に対して、前記第1情報が表す前記原子炉の運転状態が同一であり、前記第2情報が表す前記冷却材水位の差異が所定の第1範囲内であり、前記第3情報が表す前記計測場所が同一である前記第2組に基づいて定められる
請求項1または2に記載の放射線量評価装置。
【請求項4】
前記第1組が含む前記第4情報が前記許容範囲外である場合に所定の警報を発出する警報発出部を、
さらに備える請求項3に記載の放射線量評価装置。
【請求項5】
原子力発電所の放射線量を評価する方法であって、
原子炉の運転状態を表す第1情報と、原子炉冷却材水位を表す第2情報と、計測場所を表す第3情報と、放射線量の計測値を表す第4情報との組である第1組を取得するステップと、
過去に取得した、前記第1情報と、前記第2情報と、前記第3情報と、前記第4情報との組である第2組に基づいて定めた前記第4情報の許容範囲内に、前記第1組が含む前記第4情報があるか否かを判定するステップと、
を含む放射線量判定方法。
【請求項6】
原子力発電所の放射線量を評価するプログラムであって、
原子炉の運転状態を表す第1情報と、原子炉冷却材水位を表す第2情報と、計測場所を表す第3情報と、放射線量の計測値を表す第4情報との組である第1組を取得するステップと、
過去に取得した、前記第1情報と、前記第2情報と、前記第3情報と、前記第4情報との組である第2組に基づいて定めた前記第4情報の許容範囲内に、前記第1組が含む前記第4情報があるか否かを判定するステップと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射線量評価装置、放射線量評価方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業によって生じた構造物の配置の変化に対応した放射線線量率の3次元分布を可視化する放射線線量率分布の可視化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の放射線線量率分布の可視化装置では、例えば原子炉の運転状態の変化によって線量率が変化する場合に対応することができないことがあるという課題があった。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、原子炉の運転状態の変化によって線量率が変化する場合に対応することができる放射線量評価装置、放射線量評価方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る放射線量評価装置は、原子力発電所の放射線量を評価する装置であって、原子炉の運転状態を表す第1情報と、原子炉冷却材水位を表す第2情報と、計測場所を表す第3情報と、放射線量の計測値を表す第4情報との組である第1組を取得する取得部と、過去に取得した、前記第1情報と、前記第2情報と、前記第3情報と、前記第4情報との組である第2組に基づいて定めた前記第4情報の許容範囲内に、前記第1組が含む前記第4情報があるか否かを判定する判定部と、を備える。
【0007】
本開示に係る放射線量判定方法は、原子力発電所の放射線量を評価する方法であって、原子炉の運転状態を表す第1情報と、原子炉冷却材水位を表す第2情報と、計測場所を表す第3情報と、放射線量の計測値を表す第4情報との組である第1組を取得するステップと、過去に取得した、前記第1情報と、前記第2情報と、前記第3情報と、前記第4情報との組である第2組に基づいて定めた前記第4情報の許容範囲内に、前記第1組が含む前記第4情報があるか否かを判定するステップと、を含む。
【0008】
本開示に係るプログラムは、原子力発電所の放射線量を評価するプログラムであって、原子炉の運転状態を表す第1情報と、原子炉冷却材水位を表す第2情報と、計測場所を表す第3情報と、放射線量の計測値を表す第4情報との組である第1組を取得するステップと、過去に取得した、前記第1情報と、前記第2情報と、前記第3情報と、前記第4情報との組である第2組に基づいて定めた前記第4情報の許容範囲内に、前記第1組が含む前記第4情報があるか否かを判定するステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の放射線量評価装置、放射線量評価方法およびプログラムによれば、原子炉の運転状態の変化によって線量率が変化する場合に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る放射線量評価装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】原子力発電所の構成例を模式的に示す側断面図である。
【
図3】原子力発電所の構成例を模式的に示す部分断面平面図である。
【
図4】加圧水型原子炉の運転モードの例を示す模式図である。
【
図5】沸騰水型原子炉の運転モードの例を示す模式図である。
【
図6】原子力発電所の定期点検計画の例を示す模式図である。
【
図7】本開示の第1実施形態に係るデータの組の構成例を示す模式図である。
【
図8】本開示の第1実施形態に係る放射線量率の計測データの例を示す模式図である。
【
図9】本開示の第1実施形態に係る放射線量評価装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図10】本開示の第2実施形態に係る放射線量評価システムの構成例を示すブロック図である。
【
図11】本開示の第2実施形態に係る放射線量評価システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図12】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態に係る放射線量評価装置、放射線量評価方法およびプログラムについて、各図を参照して説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0012】
<第1実施形態>
(放射線量評価装置の構成)
図1は、本開示の第1実施形態に係る放射線量評価装置の構成例を示すブロック図である。
図1に示す放射線量評価装置1は、例えば、サーバ、パーソナルコンピュータ、マイクロコンピュータ等のコンピュータ、そのコンピュータの周辺装置等を用いて構成することができ、そのコンピュータ等のハードウェアと、そのコンピュータが実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせ等から構成される機能的構成として、取得部11と、判定部12と、警報発出部13とを備える。
【0013】
本実施形態において、放射線量評価装置1は、原子力発電所の放射線量を評価する装置である。なお、本実施形態において、放射線量は、線量率(単位時間当たりの線量)で表してもよいし、所定時間の合計線量で表してもよい。また、放射線量を評価するという意味は、放射線量の良否を判定すること、放射線量が何らかの対応を必要とする値であるか否かを判定すること等である。ここで、何らかの対応とは、例えば、被ばく低減策の実施、計測の再実施等を意味する。また、本実施形態において、放射線量評価装置1が評価の対象とする放射線量は、例として、原子力発電所の定期検査の際に計測されたものとする。原子力発電所の定期検査は、原子力発電所の運転を停止して定期的に実施される検査である。定期検査では、例えば、機器の点検、燃料や消耗品等の点検、交換、保修等が行われる。なお、他の実施形態においては、放射線量評価装置1が評価対象とする放射線量は、例えば、定期検査外停止や通常運転中の緊急停止後などの、通常運転期間以外に計測されたものであってよい。
【0014】
なお、本実施形態において、放射線量の計測は、作業員等が人手で線量計等を用いて計測してもよいし、線量計を搭載したドローン、地上走行ロボット等の自律移動可能な移動体を用いて自動で計測してもよい。また、線量計を搭載した移動体を用いて放射線量を計測する場合には、放射線量評価装置1の構成の全部または一部を、その移動体や移動体が立ち寄る中継基地等に搭載してもよい。
【0015】
まず、
図2および
図3を参照して、放射線量評価装置1が放射線量の評価対象とする原子力発電所の構成例について説明する。
図2は、原子力発電所の構成例を模式的に示す側断面図である。
図3は、原子力発電所の構成例を模式的に示す部分断面平面図である。
図2に示す原子力発電所100は、加圧水型原子力発電所であって、原子炉建屋101と、タービン建屋102と、補助建屋103とを備える。原子炉建屋101は、原子炉容器111と、蒸気発生器112と、加圧器113とを備える。タービン建屋102は、蒸気タービン121を備える。なお、
図3には、本実施形態における放射線量の計測場所Pが例示されている。計測場所Pは、予め定められた放射線量の計測場所であり、例えば、XY座標とエレベーション(E.L.;標高;Z方向の高さ)とで定めることができ、一定の空間的あるいは平面的な範囲を含む領域に対応する。
【0016】
図1に戻り、取得部11は、原子炉の運転状態を表す第1情報と、原子炉冷却材水位(以下、原子炉水位ともいう)を表す第2情報と、計測場所を表す第3情報と、放射線量の計測値を表す第4情報との組である第1組を取得する。第1~第4情報の組である第1組は、第1~第4情報を含むデータである。取得部11は、第1組を、例えば、操作者の入力操作に従って取得(入力)したり、所定の計測装置、記録装置、記録媒体等から情報を読み出すことで取得したりする。また、取得部11は、例えば、原子炉の運転状態を表す第1情報と、原子炉冷却材水位を表す第2情報を、定期点検(以下、定検ともいう)の計画に定められた情報から取得してもよい。この場合、取得部11は、例えば、定期点検の計画を参照し、放射線量の計測時刻における原子炉の運転状態の計画値を第1情報として取得し、原子炉冷却材水位の計画値を第2情報として取得することができる。
【0017】
なお、本実施形態において、原子炉は、制御下で核燃料(以下、燃料ともいう)に核分裂反応を起こさせて発生させた熱エネルギを取り出す装置を意味し、例えば、原子炉容器111、核燃料、減速材、冷却材、制御棒、反射体、生体遮蔽等から構成される。
【0018】
また、原子炉の運転状態を表す第1情報において、原子炉の運転状態は、運転モードとも呼ばれ、例えば、発電用原子炉施設保安規定において定義されている運転状態である。例えば、加圧水型原子炉では、原子炉出力、1次冷却材平均温度、原子炉容器への燃料装荷状態、および、原子炉容器の閉止状態等に対応して定義され、具体的には、「モード1」~「モード6」の6種類の運転モードが定義されている。また、沸騰水型原子炉では、原子炉モードスイッチの位置、原子炉圧力容器締付ボルトの状態、原子炉冷却材温度等に対応して定義され、具体的には、「運転」~「燃料交換」の複数の運転モードが定義されている。
図4は、加圧水型原子炉の運転モードの例を示す模式図である。
図5は、沸騰水型原子炉の運転モードの例を示す模式図である。本実施形態において、加圧水型原子炉では、第1情報は、例えば、モード1、2、3、4、5、6またはモード外のいずれかを表す情報である。また、沸騰水型原子炉では、第1情報は、例えば、運転、起動、高温停止、冷温停止、または、燃料交換のいずれかを表す情報である。
【0019】
また、原子炉冷却材水位を表す第2情報において、原子炉冷却材水位は、RCS(Reactor Coolant System;一次冷却系、原子炉冷却系)水位を意味する。第2情報は、RCS満水、RCS全ブロー、キャビティ満水といった冷却材の状態を表す情報としたり、水位のエレベーションを表す情報としたりすることができる。なお、キャビティは、原子炉の上部を含めた燃料の移送経路をプール状にして水を張った空間を意味する。
【0020】
図6は、原子力発電所の定期点検計画の例を示す模式図である。ただし、
図6は、定期点検計画における運転モードの計画値と、RCS水位の計画値のみを示している。また、横軸の時間軸については、運転モード1~6の時間を等しく表しており、実際の通常の時間間隔とは一致していない。
【0021】
また、計測場所を表す第3情報において、計測場所は、
図3を参照して説明した、予め定められた放射線量の計測場所である。第3情報は、例えば、上述したように、XY座標とエレベーションとを表す情報とすることができる。
【0022】
また、放射線量の計測値を表す第4情報において、放射線量の計測値は、原子炉の運転状態が第1情報であり、原子炉冷却材水位が第2情報である場合に、第3情報が表す計測場所で計測された放射線量(例えば線量率)の値である。
【0023】
図7は、取得部11が取得する第1組の例をデータDS1として示す。
図7は、本開示の第1実施形態に係るデータの組の構成例を示す模式図である。この場合、データDS1は、運転モードを示すデータD1と、原子炉冷却材水位を示すデータD2と、計測場所を示すデータD3と、計測値を示すデータD4と、計測日時を示すデータD5とを含んでいる。
【0024】
また、判定部12は、過去に取得した、第1情報と、第2情報と、第3情報と、第4情報との組である第2組に基づいて定めた第4情報の許容範囲内に、取得部11が取得した第1組が含む第4情報があるか否かを判定する。第2組が含む第1~第4情報は、例えば過去の定期点検で取得された第1~第4情報であって、第1組の第1~第3情報に対して、第2組の第1情報が表す原子炉の運転状態が同一であり、第2組の第2情報が表す冷却材水位の差異が所定の第1範囲内であり、第3情報が表す計測場所が同一である。なお、第1範囲は、放射線量への影響に関して、水位が同一と考えられる範囲であり、例えば経験則に基づいて設定することができる。
図8は、第1組の第4情報が表す放射線量と、第2組の第4情報が表す放射線量と第2組の第4情報に基づく許容範囲との関係の例を示す。
【0025】
図8は、本開示の第1実施形態に係る放射線量率の計測データの例を示す模式図である。横軸は時間を表し、時刻0が線量率計の計測開始時刻である。また、時刻t1が計測整定開始時間に対応し、時刻t2が計測整定時間に対応する。縦軸は線量率を表し、今回の計測値(第1組の第4情報)と、過去の計測値(第2組の第4情報)の時間変化と、時刻t1からt2までの今回と過去の平均線量率とを示す。判定部12が判定基準とする許容範囲は、例えば、過去の平均線量率を中心に、過去の平均線量率の所定の割合の値を増加または減少させた範囲とすることができる。あるいは、許容範囲は、計測整定時間の過去の線量率を中心に、過去の線量率の所定の割合の値を増加または減少させた範囲とすることができる。判定部12は、計測整定時間まで計測した今回の線量率または平均線量率が、それぞれの許容範囲内にあるか否かを判定する。
図8に示す例では、今回の計測値は、いずれの許容範囲も逸脱している。
【0026】
また、警報発出部13は、第1組が含む第4情報が許容範囲外である場合に所定の警報を発出する。警報発出部13は、例えば所定の表示装置に許容範囲を逸脱した計測場所Pを示す情報を許容範囲外であることを示す情報とともに表示したり、許容範囲を逸脱した計測場所Pを示す情報を所定のリストに登録したりすることで警報を発出する。
【0027】
(放射線量評価装置の動作例)
次に、
図9を参照して、
図1に示す放射線量評価装置1の動作例について説明する。
図9は、本開示の第1実施形態に係る放射線量評価装置の動作例を示すフローチャートである。
図9に示す処理は、1箇所の計測場所の計測値についての処理であり、複数箇所の計測場所に対しては、
図9に示す処理を複数箇所分繰り返し実行することで対応することができる。
図9に示す処理は、例えば、操作者の所定の操作に従って開始されたり、放射線量の自動計測が終了した場合に自動で開始されたりする。
【0028】
図9に示す処理が開始されると、まず、取得部11が、原子炉の運転状態を表す第1情報と、原子炉冷却材水位を表す第2情報と、計測場所を表す第3情報と、放射線量の計測値を表す第4情報との組である第1組を取得する(ステップS1)。次に、判定部12が、過去に取得した、第1情報と、第2情報と、第3情報と、第4情報との組である第2組に基づいて定めた第4情報の許容範囲内に、第1組が含む第4情報があるか否かを判定する(ステップS2)。次に、警報発出部13が、第1組が含む第4情報が許容範囲外である場合に所定の警報を発出して(ステップS3)、
図9に示す処理を終了する。
【0029】
(作用効果)
上記構成の放射線量評価装置、放射線量評価方法およびプログラムでは、原子力発電所の放射線量を評価する際に、原子炉の運転状態を表す第1情報と、原子炉冷却材水位を表す第2情報と、計測場所を表す第3情報と、放射線量の計測値を表す第4情報との組である第1組を取得し、過去に取得した、第1情報と、第2情報と、第3情報と、第4情報との組である第2組に基づいて定めた第4情報の許容範囲内に、第1組が含む前記第4情報があるか否かを判定する。この構成によれば、例えば、原子炉の運転状態と原子炉冷却材水位と計測場所とが同一の過去の放射線量の計測値を基づく許容範囲内に、評価対象の放射線量の計測値があるか否かを判定することができおる。したがって、本実施形態の放射線量評価装置、放射線量評価方法およびプログラムによれば、原子炉の運転状態の変化や原子炉冷却材水位の変化によって線量率が変化する場合に、判定基準を適切に設定して、対応することができる。
【0030】
また、本実施形態では、第1組が含む第1情報および第2情報は、定期点検の計画に定められた情報とすることができる。例えば、判定の際、放射線の計測場所を表す第3情報と計測値を表す第4情報は取得することができるが、原子炉の運転状態を表す第1情報と原子炉冷却材水位を表す第2情報は取得できないという場合がある。この場合に、定期点検の計画に定められた第1情報と第2情報を用いることで、適切に許容範囲を設定して、計測値が許容範囲内であるか否かを判定することがでる。例えば、移動体に線量計を搭載して放射線量を計測するとともに、移動体上で計測した放射線量が許容範囲内であるか否かを判定する場合、運転モードや原子炉冷却材水位の値が変化するとき、例えば、有線あるいは無線の通信回線を介して運転モードや原子炉冷却材水位の値を取得する必要がある。このような場合に、移動体との有線や無線の通信が困難である場合、あるいは、移動体が、無線通信が許可されない場所を移動するような場合、有線や無線の通信によって運転モードや原子炉冷却材水位の値をリアルタイムで取得することは困難である。このような場合であっても、定期点検が計画通り進められている場合には、運転モードや原子炉冷却材水位の値を定期点検計画の値とすることで、通信による取得無しで、適切な判定を行うことができる。
【0031】
また、本実施形態では、許容範囲は、第1組に対して、第1情報が表す原子炉の運転状態が同一であり、第2情報が表す冷却材水位の差異が所定の第1範囲内であり、第3情報が表す計測場所が同一である第2組に基づいて定められる。この構成によれば、許容範囲を、過去の実績値に基づいて適切に設定することができる。
【0032】
<第2実施形態>
(放射線量評価システムの構成)
次に、
図10および
図11を参照して、本開示の第2実施形態に係る放射線量評価システムについて説明する。
図10は、本開示の第2実施形態に係る放射線量評価システムの構成例を示すブロック図である。
図11は、本開示の第2実施形態に係る放射線量評価システムの動作例を示すフローチャートである。
【0033】
図10に示す放射線量評価システム10は、親モジュール2と、線量率自律計測デバイス3と、子モジュール4とを備える。親モジュール2は、例えば
図2に示すタービン建屋102内に設置され、線量率自律計測デバイス3との間で所定の情報を送受信したり、線量率自律計測デバイス3を充電したり、線量率自律計測デバイス3が計測した線量率の値を評価したりする。線量率自律計測デバイス3は、線量計を搭載したドローン、地上走行ロボット等の自律移動可能な移動体であり、タービン建屋102と原子炉建屋101内を自律移動し、計測場所Pで線量率を計測する。子モジュール4は、例えば
図2に示す原子炉建屋101内に設置され、線量率自律計測デバイス3との間で所定の情報を送受信したり、線量率自律計測デバイス3を充電したり、線量率自律計測デバイス3が計測した線量率の値を評価したりする。
【0034】
親モジュール2は、制御装置21と、記憶装置22と、放射線量評価装置23と、充電装置24と、通信装置25とを備える。制御装置21は、親モジュール2内の各装置22~25を制御する。記憶装置22は、定期点検の計画内容を表す情報、計測場所Pを表す情報、定期点検において計測された放射線率等を表す情報等を記憶する。放射線量評価装置23は、
図1等を参照して説明した第1実施形態の放射線量評価装置1に対応する構成である。充電装置24は、線量率自律計測デバイス3のバッテリを充電する装置である。通信装置25は、線量率自律計測デバイス3と有線通信または所定形式の無線通信で所定の情報を送受信する装置である。
【0035】
線量率自律計測デバイス3は、制御装置31と、自律移動装置32と、線量率計33と、記憶装置34と、バッテリ35と、通信装置36とを備える。制御装置31は、線量率自律計測デバイス3内の各装置32~26を制御する。自律移動装置32は、親モジュール2、各計測場所P、および子モジュール4間を自律移動する。線量率計33は、線量率を自動で計測する。記憶装置34は、親モジュール1から受信した、定期点検の計画内容を表す情報、計測場所Pを表す情報、定期点検において計測された放射線率を表す情報、線量率計33が計測した放射線率を表す情報等を記憶する。バッテリ35は、各装置31~34および36に電力を供給する。通信装置36は、親モジュール1および子モジュール4との間で有線通信または所定形式の無線通信で所定の情報を送受信する装置である。
【0036】
子モジュール4は、制御装置41と、記憶装置42と、放射線量評価装置43と、充電装置44と、通信装置45とを備える。制御装置41は、子モジュール4内の各装置42~45を制御する。記憶装置42は、線量率自律計測デバイス3から受信した、定期点検の計画内容を表す情報、計測場所Pを表す情報、定期点検において計測された放射線率を表す情報、線量率計33が計測した放射線率を表す情報等を記憶する。放射線量評価装置43は、
図1等を参照して説明した第1実施形態の放射線量評価装置1に対応する構成である。充電装置44は、線量率自律計測デバイス3のバッテリを充電する装置である。通信装置45は、線量率自律計測デバイス3と有線通信または所定形式の無線通信で所定の情報を送受信する装置である。
【0037】
(放射線量評価システムの動作例)
次に、
図11を参照して、
図10に示す放射線量評価システム10の動作例について説明する。
図11に示す動作例では、まず、親モジュール1に対して、定期検査計画(運転モード、暦日の原子炉水位)を入力し、入力した情報が記憶装置22に記憶されるとともに、入力した情報が線量率自律計測デバイス3へ転送される(ステップS11)。次に、親モジュール1において、計測場所(フロア、E.L.)の指定し、指定した情報が記憶装置22に記憶されるとともに、指定した情報が線量率自律計測デバイス3へ転送される(ステップS12)。次に、親モジュール1において、各計測場所の前回定検時における同一の運転モード、同一原子炉水位における線量率計測データの取り込みを行い、取り込んだ情報が記憶装置22に記憶されるとともに、取り込んだ情報が線量率自律計測デバイス3へ転送される(ステップS13)。
【0038】
次に、線量率自律計測デバイス3による予設定済ポイントでの線量率計測が実施される(ステップS14)。なお、ブロックB1内の各ステップは、原子炉建屋101内で実行される。次に、線量率自律計測デバイス3が子モジュール4に駐機し、子モジュール4において、定期検査計画、各計測場所の前回定検時における同一の運転モード、同一原子炉水位における線量率計測データの取り込み、および、計測データのデータ蓄積、子モジュール4へのドラフト保管ならびにバッテリ35への給電が実施される(ステップS15)。次に、親モジュール2からの前回定検時の同一運転モード、同一原子炉水位における線量率計測データとの比較から所定の許容範囲を逸脱する今回計測データの有無を子モジュール4で判定する(ステップS16)。次に、子モジュール4の指示の下、線量率自律計測デバイス3で逸脱した今回計測データについて再計測を実施するとともに、子モジュール4で再判定を実施し、再判定の結果を記憶装置34に記録する(ステップS17)。
【0039】
次に、計測場所全域の計測完了後、親モジュール2へ線量率自律計測デバイス3が帰還し、全計測データを親モジュール2へ転送する(ステップS18)。次に、親モジュール2において、逸脱した計測データについてアラートを発出する(ステップS19)。
【0040】
(作用効果)
第2実施形態によれば、定期点検計画で定められた原子炉の運転状態を表す第1情報と原子炉冷却材水位を表す第2情報とを利用して、オフラインで放射線量の許容範囲を適切に設定することができ、また、設定した許容範囲を逸脱する放射線量について、親モジュール2へ帰還することなく、再計測を行うことができる。
【0041】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0042】
<コンピュータ構成>
図12は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、および、インタフェース94を備える。
上述の放射線量評価装置1、23および43は、コンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。
【0043】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータは、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0044】
ストレージ93の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0045】
<付記>
各実施形態に記載の放射線量評価装置1、23および43は、例えば以下のように把握される。
【0046】
(1)第1の態様に係る放射線量評価装置1、23および43は、原子力発電所の放射線量を評価する装置であって、原子炉の運転状態を表す第1情報と、原子炉冷却材水位を表す第2情報と、計測場所を表す第3情報と、放射線量の計測値を表す第4情報との組である第1組を取得する取得部11と、過去に取得した、前記第1情報と、前記第2情報と、前記第3情報と、前記第4情報との組である第2組に基づいて定めた前記第4情報の許容範囲内に、前記第1組が含む前記第4情報があるか否かを判定する判定部12と、を備える。本態様および以下の各態様によれば、原子炉の運転状態の変化によって線量率が変化する場合に対応することができる。
【0047】
(2)第2の態様に係る放射線量評価装置1、23および43は、(1)の放射線量評価装置1、23および43であって、前記第1組が含む前記第1情報および前記第2情報は、前記原子力発電所の定期点検の計画に定められた情報である。本態様によれば、第1情報および第2情報を定期点検の計画に基づいて設定することができる。
【0048】
(3)第3の態様に係る放射線量評価装置1、23および43は、(1)または(2)の放射線量評価装置1、23および43であって、前記許容範囲は、前記第1組に対して、前記第1情報が表す前記原子炉の運転状態が同一であり、前記第2情報が表す前記冷却材水位の差異が所定の第1範囲内であり、前記第3情報が表す前記計測場所が同一である前記第2組に基づいて定められる。
【0049】
(4)第4の態様に係る放射線量評価装置1、23および43は、(1)~(3)の放射線量評価装置1、23および43であって、前記第1組が含む前記第4情報が前記許容範囲外である場合に所定の警報を発出する警報発出部13を、さらに備える。本態様によれば、計測した放射線量が、許容範囲外である場合に所定の警報を発出することができる。
【符号の説明】
【0050】
1、23、43…放射線量評価装置
2…親モジュール
3…線量率自律計測デバイス
4…子モジュール
10…放射線量評価システム
11…取得部
12…判定部
13…警報発出部