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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113351
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】CO2回収システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20240815BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20240815BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20240815BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20240815BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20240815BHJP
【FI】
B01D53/14 200
F27D17/00 104G
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018272
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 久高
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 利幸
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G146
4K056
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA02
4D002CA06
4D002DA02
4D002DA12
4D002EA13
4D002FA04
4D002GA01
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB01
4D002GB11
4D020AA03
4D020BA01
4D020BA08
4D020BB03
4D020BC06
4D020CB02
4D020CC07
4D020DA01
4D020DA02
4D020DA03
4D020DB01
4D020DB06
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC22
4G146JC29
4G146JC33
4K056DB04
(57)【要約】
【課題】目的生成物の高純度化を図ることができるとともに、検出精度、装置サイズ、設備コスト及びメンテナンス性において優れたCO回収システムを提供する。
【解決手段】CO回収システム1は、反応槽10に貯留されたNaOHを含有する反応液LにCO含有ガスを接触させて反応液LにCOを反応させて反応生成物を生成することによりCOを回収するCO回収システムである。そして、反応液Lの温度を取得する温度取得部43と、温度取得部43により取得された温度に基づいて、反応生成物の生成反応の進行度を判定する反応進行度判定部23とを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽に貯留されたNaOHを含有する反応液にCO含有ガスを接触させて上記反応液にCOを反応させて反応生成物を生成することによりCOを回収するCO回収システムであって、
上記反応液の温度を取得する温度取得部と、
上記温度取得部により取得された温度に基づいて、上記反応生成物の生成反応の進行度を判定する反応進行度判定部と、を有する、CO回収システム。
【請求項2】
上記反応液の温度と上記反応生成物の生成反応の進行度との対応関係が予め記憶された対応関係記憶部を有し、
上記反応進行度判定部は、上記温度取得部により取得された温度と、上記対応関係記憶部に記憶された上記対応関係とに基づいて、上記反応生成物の生成反応の進行度を判定する、請求項1に記載のCO回収システム。
【請求項3】
上記温度取得部により取得された温度から単位時間当たりの温度変化量を算出する温度変化算出部を有し、
上記反応進行度判定部は、上記温度変化算出部により算出された上記単位時間当たりの温度変化量に基づいて上記反応生成物の生成反応の進行度を判定する、請求項1に記載のCO回収システム。
【請求項4】
上記温度変化算出部により取得された温度に基づいて、上記反応生成物の生成反応の開始から終了までの間に上記反応液の温度が最大となる時間であるピーク時間を予測するピーク時間予測部を備え、
上記反応進行度判定部は、上記ピーク時間予測部により予測された上記ピーク時間に基づいて、上記反応生成物の生成反応の進行度を判定する、請求項3に記載のCO回収システム。
【請求項5】
上記温度変化算出部は、上記温度取得部により取得された温度と経過時間との関係を多次元曲線に近似して得た近似曲線を算出し、
上記ピーク時間予測部は、上記近似曲線に基づいて上記ピーク時間を予測する、請求項4に記載のCO回収システム。
【請求項6】
上記反応進行度判定部は、上記ピーク時間予測部により予測された上記ピーク時間から所定時間経過したときに目的の上記反応生成物の生成が完了したと判定する、請求項4又は5に記載のCO回収システム。
【請求項7】
上記ピーク時間予測部によって予測された上記ピーク時間を補正する補正部と、
上記ピーク時間予測部によって予測された上記ピーク時間に到達したときに上記温度取得部により取得された上記反応液の温度に基づいて、上記ピーク時間予測部による予測結果を評価する予測結果評価部と、
上記予測結果評価部の評価結果に基づいて、上記補正部における補正度を調整する調整部と、有する請求項4又は5に記載のCO回収システム。
【請求項8】
上記反応生成物の生成反応の開始時における上記反応液の温度である初期温度が、10~30℃の範囲内である、請求項1~5のいずれか一項に記載のCO回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温室効果ガスとしてのCOガスの排出を抑制することが求められており、COガスを回収する方法が種々検討されている。COを回収する方法として、例えば、COをアミン溶液に化学的に吸収させて回収する方法があるが、COを吸収させたアミン溶液は資源として利用することができないため、COの分離を要する。そして、COの分離には昇温する必要があり、エネルギー損失を招く。また、COをゼオライトに物理的に吸着させて回収する方法があるが、吸着時に加圧・加熱する必要があるためエネルギー損失を招くとともに、COを吸着させたゼオライトも資源として利用することができず、COの分離を要する。
【0003】
さらに、COを回収する方法として、COをNaOHなどのアルカリ溶液に化学的に吸収させて回収する方法がある。例えば、特許文献1に開示の構成では、L-グルタミン酸発酵において発生したCOをNaOH水溶液中に曝気させて、NaHCO又はNaCOを生成することでCOを固定化して回収している。また、特許文献2に開示の構成でも、発電所、化学プラント等の排ガスをNaOH水溶液に接触させてNaHCO又はNaCOを生成して排ガスからCOを回収している。これらの生成物はいずれも資源として有用であり、COを分離することなく回収したCOを有効に再利用することができる。また、COを分離する場合でも、生成物水溶液にクエン酸を添加すればよく、昇温をすることを要しないため、エネルギー損失が少なくて済む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-243985号公報
【特許文献2】特表2009-535198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生成物としてのNaHCOやNaCOを資源としてより有効に活用するには、生成物の生成開始や生成完了を正確に検出して、生成物の純度を向上することが求められる。生成物の生成開始や生成完了の検出は、反応液におけるpH変化、CO濃度変化、反応時間、反応液電気伝導率変化、反応液重量変化などを取得することにより行われている。しかしながら、pH変化の取得の場合は装置のメンテナンス性が悪い。また、CO濃度変化を取得する場合は装置サイズが大型化しやすいとともに設備コストの面で不利である。また、反応時間を取得する場合は検出精度が低く十分な信頼性が得られにくい。また、反応液電気伝導率変化を取得する場合は装置サイズが大型化しやすく、設備コストの面で不利であり、装置のメンテナンス性も悪い。また、反応液重量変化を取得する場合は検出精度が低く、装置が大型化しやすく、設備コストの面で不利である。したがって、いずれの手法でも検出精度、装置サイズ、設備コスト、メンテナンス性のすべてにおいて有利とするには改善の余地がある。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、目的生成物の高純度化を図ることができるとともに、検出精度、装置サイズ、設備コスト及びメンテナンス性において優れたCO回収システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、反応槽に貯留されたNaOHを含有する反応液にCO含有ガスを接触させて上記反応液にCOを反応させて反応生成物を生成することによりCOを回収するCO回収システムであって、
上記反応液の温度を取得する温度取得部と、
上記温度取得部により取得された温度に基づいて、上記反応生成物の生成反応の進行度を判定する反応進行度判定部と、を有する、CO回収システムにある。
【発明の効果】
【0008】
上記一態様のCO回収システムでは、反応液の温度に基づいて反応生成物の生成反応の進行度を判定する。そのため、装置を簡素な構成とすることができるため、装置サイズが大型化することを防止でき、設備コストを低減できるとともにメンテナンス性にも優れる。また、上記反応液におけるNaOHとCOとの反応は発熱エネルギーの異なる2段階の発熱反応に基づいて行われるため、当該反応の発熱エネルギーと密接に関係する反応液温度と反応生成物の生成反応の進行度とは高い相関関係を有する。それゆえ、上記一態様のCO回収システムにおける反応生成物の生成反応の進行度は高い判定精度を呈するものとなる。そして、高い判定精度に基づいて、反応生成物を取得することができるため、目的生成物の純度の向上を図ることができる。
【0009】
以上のごとく、上記態様によれば、目的生成物の高純度化を図ることができるとともに、検出精度、装置サイズ、設備コスト及びメンテナンス性において優れたCO回収システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1における、CO回収システムの構成を示す概念図。
図2】実施形態1における、CO回収システムの構成を示す他の概念図。
図3】実施形態1における、演算部の構成を示すブロック図。
図4】実施形態1における、目的生成物の生成完了を判定する処理のフロー図。
図5】実施形態1における、検証試験1での反応液の温度(液温)、pH、二次近似曲線の関係を示す図。
図6】実施形態1における、検証試験2でのピーク時間の取得結果を示す図。
図7】実施形態1における、検証試験2でのpH変化を示す図。
図8】実施形態2における、演算部の構成を示すブロック図。
図9】実施形態2における、反応液の温度と反応進行度との対応関係を示す図。
図10】実施形態3における、演算部の構成を示すブロック図。
図11】実施形態4における、演算部の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
1.CO回収システム1
上記CO回収システム1の本実施形態1について、図1図3を用いて説明する。図1に示すように、本実施形態のCO回収システム1は、主として、反応槽10、CO含有ガス流通部41、吹き出し部30、CO除去ガス排出部42、演算部2、制御部3を備える。
【0012】
2.反応槽10
反応槽10は、中空の円柱形状を有している。反応槽10には、反応液LとしてNaOH水溶液が投入される。反応槽10の材質は耐アルカリ性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン樹脂製、ポリ塩化ビニル樹脂製などの樹脂製とすることができる。また、反応槽10はステンレス製とすることもでき、樹脂ライニングなどの表面処理を施した金属製とすることもできる。本実施形態では、容量20Lのポリエチレン樹脂製の反応槽10を採用している。図1図2に示すように、反応槽10の上面に設けられた開口部11には蓋13が着脱可能に取り付けられている。蓋13には、後述のCO含有ガス流通部41とCO除去ガス排出部42が挿通されており、両者の先端部411、421は反応槽10内に位置している。また、蓋13には、後述する温度検出部を構成する熱電対43と反応槽10内に反応液Lを供給する反応液供給部44も挿通されている。
【0013】
3.CO含有ガス流通部41
CO含有ガス流通部41はCO含有ガスを流通させる。なお、本明細書では、「CO含有ガス」とは、構成成分としてCOを含有するガスを指すものとする。当該CO含有ガスは、構成成分としてCOのみを含むガスであってもよいし、さらに不可避的不純物を含むガスであってもよい。また、CO含有ガスは、構成成分としてCOとその他の物質とが混在する混合ガスであってよい。混合ガスにおいてCOが占める割合は限定されず、混合ガスにおいて占める割合が最も多い主成分はCOであってもよいし、CO以外の物質であってもよい。
【0014】
CO含有ガスは、CO含有ガス流通部41に接続された図示しないCO含有ガス供給源からポンプ45を介して供給され、CO含有ガス流通部41の先端部411に接続された吹き出し部30から反応液L内に吹き出される。CO含有ガス供給源は限定されないが、例えば、CO含有ガスを排ガスとして排出するCO含有ガス排出設備とすることができる。CO含有ガス排出設備としては、ボイラを有する設備、燃料電池、焼却炉、熱処理設備などを例示することができる。
【0015】
4.吹き出し部30
本実施形態1では、吹き出し部30は、図1に示すように、軸受け装置412を介してCO含有ガス流通部41の先端部411に接続されて反応槽10内の底部12の近傍に位置しており、軸受け装置412により吹き出し部30の中心軸Cを中心に回転可能となっている。吹き出し部30は、鉛直方向に延びる第1延在部31と、第1延在部31から分岐して延在する複数の第2延在部32とを有する。第2延在部32は、先端に向かうほど互いに離間するように先広がり状に配置されている。複数の第2延在部32の先端にはそれぞれ吹き出し口33が配置されている。
【0016】
第2延在部32は可撓性を有するチューブからなり、第2延在部32の先端には吹き出し口33が設けられている。通常状態では、吹き出し口33の位置の最大径は、反応槽10の開口部11の開口径よりも大きいが、図2に示すように、第2延在部32の可撓性を利用して第2延在部32を撓ませて変形することにより、吹き出し口33を変位させて吹き出し口33の位置の最大径D1を開口部11の開口径D2以下にすることができる。これにより、開口部11を介して吹き出し部30及びCO含有ガス流通部41の先端部411を反応槽10に対して挿入及び取出しを容易に行うことができる。
【0017】
なお、第2延在部32における可撓性の程度は限定されないが、後述するように吹き出し部30の回転により変形可能であって、回転していない通常状態においては、各吹き出し口33の姿勢が維持できるとともに、反応槽10への挿入及び取出しの際には上述のごとく変形可能な程度とすることができる。
【0018】
そして、本実施形態1では、4個の第2延在部32が設けられており、それぞれの第2延在部32の先端に位置する吹き出し口33は、吹き出し部30の中心軸Cの方向から見て、中心軸Cを中心とする図示しない仮想円の接線方向に対して若干内側に傾斜した方向となっている。そして、それぞれの吹き出し口33からCO含有ガスF1が吹き出されることで吹き出し部30に吹き出し圧がかかることにより、矢印Rで示すように、吹き出し部30が軸受け装置412を介して中心軸Cを中心とする周方向に回転することとなる。そして、吹き出し部30が回転することにより発生する遠心力により、それぞれの第2延在部32は撓んで先端が互いに離れるように変形して、吹き出し口33の回転径D1は拡大することとなる。なお、本実施形態1では、軸受け装置412はCO含有ガス流通部41を通じて供給されたCO含有ガスF1を支持流体として用いた流体軸受けからなる。
【0019】
5.CO固定化反応と液温
次に、反応槽10におけるCO固定化反応について説明する。上述のように、CO含有ガスF1が反応槽10内の反応液Lに吹き出されることにより、CO固定化反応が進行する。本実施形態1では、反応液LとしてNaOH水溶液を用いる場合について説明する。
【0020】
反応槽10内でのCO固定化反応として、下記の式1の反応が行われた後、式2の反応が行われる。
2NaOH+CO → NaCO+HO (式1)
NaCO+CO+HO→ 2NaHCO (式2)
【0021】
上記反応の開始前は、反応槽10内にはNaHCO及びNaCOは存在していない状態であるが、上記反応の進行状態に応じて、NaCOが生成されてNaHCOが存在しない状態と、一部のNaCOがさらにCOと反応してNaHCOが生成されて両者がともに存在する状態と、すべてのNaCOがNaHCOに変換されてNaCOがなくなりNaHCOが存在する状態とのいずれかとなる。上記反応により生じるNaHCO及びNaCOはいずれも、反応槽10内の水に溶解して水溶液の状態となっている。本明細書ではNaHCO、NaCO及び両者の混合物を総称して「生成物」とい、これらの水溶液を総称して「生成物水溶液」というものとする。そして、反応槽10から回収した生成物水溶液の脱水・乾燥を行うことで、固体の状態で回収することができる。回収された当該生成物は資源として利用することができる。
【0022】
上記式1及び式2はいずれも発熱反応であるが、式1に示すNaCO生成反応の発熱エネルギーは、式2に示すNaHCO生成反応の発熱エネルギーの約8倍であり、両者の発熱エネルギーは大きく異なっている。そして、上述の通り、CO固定化反応は式1の反応が行われた後、式2の反応が行われることから、反応槽10内の反応液Lの温度(液温)は、上記式1及び式2の発熱エネルギーの影響を受け、反応の進行度に応じて変化することとなる。したがって、後述するように、反応槽10内の反応液Lの温度に基づいてCO固定化反応の進行度を正確に把握することができる。
【0023】
6.CO除去ガス排出部42
上記反応によってCOが除去されたCO除去ガスは、図1図2に示すCO除去ガス排出部42から反応槽10外に排出される。なお、CO除去ガスに有害成分が含まれうる場合は、CO除去ガス排出部42に当該有害成分を捕集するためのフィルタを設けてもよい。
【0024】
7.温度取得部43
図1に示すように、反応槽10の蓋13には温度取得部43が挿通されている。温度取得部43は、反応槽10内の反応液の温度(液温)を取得する。本実施形態1では、温度取得部43は熱電対により構成されている。
【0025】
8.演算部2
演算部2は、所定のプログラムを実施可能なプロセッサと記憶装置により構成され、図3に示すように、初期温度取得部20、温度変化算出部21、ピーク時間予測部22、反応進行度判定部23及び進行度表示部24を有する。
【0026】
初期温度取得部20は、反応槽10へのCO含有ガスの供給開始時の反応液Lの温度を初期温度として取得する。初期温度は、通常は外気温と同等であって、10~30℃程度となっている。
【0027】
温度変化算出部21は、温度取得部43により取得された反応液Lの温度Tを所定のタイミングで読み込んで、単位時間当たりの温度変化量ΔTを算出する。本実施形態1では、温度変化算出部21は、温度取得部43により取得された温度と経過時間との関係を多次元曲線に近似した近似曲線を算出する。本実施形態1では、近似曲線として二次曲線を採用する。
【0028】
ピーク時間予測部22は、温度変化算出部21により算出された単位時間当たりの温度変化量ΔTに基づいて、反応液Lの温度が最大値となるピーク時間を予測する。なお、反応液Lの温度の最大値とはCO固定化反応の開始から終了までの間に変化する反応液Lの温度の最大値を指す。
【0029】
本実施形態1では、ピーク時間予測部22は、温度変化算出部21により算出された近似曲線に基づいてピーク時間Δtaを予測する。そして、本実施形態1では、近似曲線として二次曲線を採用しており、当該二次近似曲線が最大値を示す時間を液温のピーク時間Δtaとして予測する。ピーク時間Δtaの算出は、当該二次近似曲線の微分値が0となる時間を算出することにより行うことができる
【0030】
反応進行度判定部23は、ピーク時間予測部22の予測結果に基づいて、CO固定化反応の進行度を判定する。例えば、ピーク時間予測部22の予測結果としてのピーク時間Δtaから所定の時間Δtbが経過した時点でCO固定化反応における上記式1が終了して反応生成物としてのNaCOの生成が完了したと判定することができる。なお、時間Δtbは実験値に基づいて設定することができる。進行度表示部24は、反応進行度判定部23による判定結果を表示する表示装置からなる。当該CO回収システム1のユーザは、進行度表示部24の表示結果に基づいて、CO固定化反応の進行度を認知することができる。
【0031】
9.制御部3
図1に示す制御部3はCO回収システム1の動作を制御する。例えば、反応進行度判定部23による判定結果に基づいて、ポンプ45の動作を制御して反応槽10へのCO含有ガスの供給量を制御することができる。
【0032】
10.目的生成物の生成完了を判定する処理フロー
次に、本実施形態1のCO回収システム1における目的生成物の生成完了を判定する処理フローについて、図4のフロー図を用いで説明する。なお、当該フローでは、NaCOを目的生成物とする。まず、ステップS1において、反応液Lが貯蔵された図示しないタンクから反応液供給部44を介して反応槽10内に反応液Lを所定量投入する。次に、ステップS2において、温度取得部43により取得した反応液Lの温度を、初期温度取得部20により反応液Lの初期温度として取得する。以降、温度取得部43は継続的に反応液Lの温度を取得するものとする。
【0033】
その後、ステップS3において、ポンプ45を駆動してCO含有ガス流通部41を介して反応槽10内の反応液LへのCO含有ガスの供給を開始する。そして、ステップS4において、温度変化算出部21により、温度取得部43により取得された液温に基づいて、反応液Lの温度変化量ΔTを取得する。
【0034】
次いで、ステップS5において温度変化算出部21により温度変化量ΔTに基づいて二次近似曲線を算出する。そして、ステップS6において、ピーク時間予測部22により二次近似曲線における微分値が0となる時間をピーク時間Δtaとして予測する。
【0035】
そして、ステップS7において、反応進行度判定部23によりピーク時間Δtaに到達したか否か判定する。ステップS7においてピーク時間Δtaに到達していないと判定された場合は、ステップS7のNoに進み、ステップS8において反応進行度判定部23は反応進行度として目的生成物の生成中と判定する。そして、ステップS9において、進行度表示部24において、上記反応進行度を表示して、ステップS4に戻って以降のステップS4~ステップS7を再度実施する。
【0036】
一方、ステップS7において、反応進行度判定部23によりピーク時間Δtaに到達したと判定された場合は、ステップS7のYesに進み、ステップS10において、反応進行度判定部23によりピーク時間Δtaに到達した後、時間Δtbが経過したか否かを判定する。ステップS10において、時間Δtbが経過していないと判定された場合は、ステップS10のNoに進み、再度ステップS10を実行する。一方、ステップS10において時間Δtbが経過したと判定された場合は、ステップS10のYesに進み、ステップS11において、反応進行度判定部23により目的生成物であるNaCOの生成が完了したと判定する。その後、ステップS12において、進行度表示部24により、上記反応進行度表示して当該フローを終了する。
【0037】
11.検証試験1
本実施形態1のCO回収システム1における反応進行度の判定についての検証試験1を行った。検証試験は、実施形態1のCO回収システム1において、反応液Lの初期温度を16℃とし、反応液Lの温度変化と、その二次近似曲線を取得し、さらに反応液LのpH変化をpHメータで取得した。そして、図5にこれらの関係を示した。
【0038】
図5に示すように、実施形態1のCO回収システム1では、ピーク時間予測部22により算出された二次近似曲線のピーク時間Δtaから時間Δtb経過した時間Aにおいて、目的生成物(NaCO)の生成が完了すると予想された。一方、pH変化に基づき、NaCO水溶液のpHは11.0~11.8であり、時間AにおいてNaCOの生成が完了したことが検証できた。
【0039】
12.検証試験2
次に、本実施形態1のCO回収システム1におけるピーク時間Δtaについての検証試験2を行った。検証試験2では、初期温度が14℃~24℃の範囲Tpで異なる7パターンa~gの反応液Lについて、本実施形態1のCO回収システム1においてピーク時間Δtaを取得し、取得結果を図6に示した。図6に示すように、初期温度が14℃~24℃の範囲Tpで異なっていても、ピーク時間Δtaは概ね変化しないことが検証できた。なお、図7に示すように、各パターンa~gの反応液LについてのpH変化についても、互いに同様の傾向を示している。
【0040】
13.作用効果
次に、本実施形態のCO回収システム1における作用効果について詳述する。本実施形態1のCO回収システムでは、反応液Lの温度に基づいて反応生成物の生成反応の進行度を判定する。そのため、装置を簡素な構成とすることができるため、装置サイズが大型化することを防止でき、設備コストを低減できるとともにメンテナンス性にも優れる。また、反応液LにおけるNaOHとCOとの反応は発熱エネルギーの異なる2段階の発熱反応に基づいて行われるため、当該反応の発熱エネルギーと密接に関係する反応液温度と反応生成物の生成反応の進行度とは高い相関関係を有する。それゆえ、本実施形態1のCO回収システムにおける反応生成物の生成反応の進行度は高い判定精度を呈するものとなる。そして、高い判定精度に基づいて、反応生成物を取得することができるため、目的生成物の純度の向上を図ることができる。
【0041】
また、本実施形態1では、温度取得部43により取得された温度から単位時間当たりの温度変化量Δtaを算出する温度変化算出部21を有し、反応進行度判定部23は、温度変化算出部21により算出された単位時間当たりの温度変化量Δtaに基づいて上記反応生成物の生成反応の進行度を判定する。これにより、反応液Lの温度変化を高精度に取得でき、反応生成物の生成反応の進行度の判定精度を向上することができる。
【0042】
また、本実施形態1では、温度変化算出部21により取得された温度に基づいて、反応生成物の生成反応の開始から終了までの間に反応液Lの温度が最大となる時間であるピーク時間Δtaを予測するピーク時間予測部22を備える。そして、反応進行度判定部23は、ピーク時間予測部22により予測されたピーク時間Δtaに基づいて、反応生成物の生成反応の進行度を判定する。これにより、CO固定化反応は反応液Lの温度が最大となるピーク時間Δtaにおいて上記式1の反応が終了するため、ピーク時間Δtaに基づいて反応生成物の生成反応の進行度を判定することにより判定精度を向上することができる。
【0043】
また、本実施形態1では、温度変化算出部21は、温度取得部43により取得された温度と経過時間との関係を多次元曲線に近似して得た近似曲線を算出し、ピーク時間予測部22は、近似曲線に基づいてピーク時間Δtaを予測する。これにより、外乱要因の影響を低減することができ、反応進行度の判定精度を向上することができる。
【0044】
また、本実施形態1では、反応進行度判定部23は、ピーク時間予測部により予測されたピーク時間Δtaから所定時間Δtbを経過したときに目的の反応生成物の生成が完了したと判定する。これにより、CO固定化反応の進行が安定する時間が考慮されるため、反応進行度の判定精度を一層向上することができる。
【0045】
また、本実施形態1では、反応生成物の生成反応の開始時における反応液Lの温度である初期温度が10~30℃の範囲内である。これにより、反応液Lの初期温度が当該範囲であることで、反応液Lの初期温度が異なってもピーク時間Δtaはほぼ変化しないため、反応液Lの初期温度が当該範囲とすることで反応進行度の判定精度を一層向上することができる。
【0046】
以上のごとく、上記態様によれば、目的生成物の高純度化を図ることができるとともに、検出精度、装置サイズ、設備コスト及びメンテナンス性において優れたCO回収システムを提供することができる。
【0047】
(実施形態2)
なお、本実施形態1では、温度変化算出部21とピーク時間予測部22とを備える構成としたが、これに替えて本実施形態2では、図8に示すように、温度変化算出部21とピーク時間予測部22を備えておらず、近似曲線算出部25と対応関係記憶部26を備えている。近似曲線算出部25は、温度取得部43が取得した反応液Lの温度から多次元の近似曲線を算出する。本実施形態2では二次近似曲線を算出する。
【0048】
対応関係記憶部26は、図9に示すように近似曲線の温度変化と反応進行度との対応関係が予め記憶されている。すなわち、ピーク時間Δtaと所定時間Δtbとが経過する前の状態では反応進行度IはNaCO生成中であり、ピーク時間Δtaと所定時間Δtbとが経過したタイミングでは反応進行度IIはNaCOの生成完了し、ピーク時間Δtaと所定時間Δtbとが経過した後の状態ではは反応進行度IIIはNaCOとNaHCOとが共存した状態であることを示す関係が記憶されている。
【0049】
そして、現在の反応液Lの温度を取得して近似曲線算出部25により取得された近似曲線と、対応関係記憶部26に記憶された対応関係とに基づいて、現在の反応液Lの反応進行度を判定することができる。実施形態2によれば、簡易な構成で反応液Lの反応進行度を判定することができる。
【0050】
(実施形態3)
本実施形態3では、図10に示すように、実施形態1の構成に加えて、外気温度取得部50と補正部27を有する。外気温度取得部50は、公知の温度センサからなり、外気の温度を取得するように構成されている。補正部27は外気温度取得部50により取得された外気温度に基づいて、ピーク時間予測部22により予測されたピーク時間を補正する。例えば、外気温度が予め設定された基準値よりも高い場合は、ピーク時間予測部22により予測されたピーク時間Δtaに所定の補正値を加算又は減算することができる。なお、本実施形態3におけるその他の構成は、実施形態1の場合と同様であって、実施形態1の場合と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0051】
本実施形態3によれば、外乱要因となりうる外気温度の影響を抑制することができ、反応進行度の判定精度を一層向上することができる。そして、本実施形態3においても実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0052】
(実施形態4)
本実施形態4では、図11に示すように、実施形態3の構成に加えて、予測結果評価部28と調整部29を有する。予測結果評価部28は、ピーク時間予測部22によって予測されたピーク時間Δtaに到達したときに温度取得部43により取得された反応液Lの温度に基づいて、ピーク時間予測部22による予測結果を評価する。例えば、ピーク時間予測部22によって予測されたピーク時間Δtaが実際に反応液Lの温度が最大値となるピーク時間であるか否かを判定したり、予測されたピーク時間Δtaと温度取得部43により取得されたリアルデータとしてのピーク時間とを比較したりすることでピーク時間予測部22による予測結果を評価する。調整部29は、予測結果評価部の評価結果に基づいて、補正部27における補正度を調整する。当該補正度の調整は、予測されたピーク時間Δtaとリアルデータとして取得されたピーク時間との差異が小さくなるように行う。
【0053】
本実施形態4によれば、シミュレーションの結果として予測されたピーク時間Δtaを、リアルデータとして取得されたピーク時間に基づいて補正することで、いわゆるデジタルツインを構成することができ、ピーク時間Δtaの予測精度を向上して、反応進行度を精度よく判定することができる。なお、本実施形態4においても、実施形態1の場合と同様の作用効果を奏する。
【0054】
本発明は上記実施形態及び変形形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…CO回収システム、10…反応槽、2…演算部、3…制御部、10…反応槽、20…初期温度取得部、21…温度変化算出部、22…ピーク時間予測部、23…反応進行度判定部、24…進行度表示部、25…近似曲線算出部、26…対応関係記憶部、27…補正部、28…予測結果評価部、29…調整部、30…吹き出し部、41…CO含有ガス流通部、42…CO除去ガス排出部、43…温度取得部(熱電対)、44…反応液供給部、45…ポンプ、50…外気温度取得部
図1
図2
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図8
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図10
図11