(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113354
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】膨張弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/68 20060101AFI20240815BHJP
F25B 41/335 20210101ALI20240815BHJP
F25B 41/40 20210101ALI20240815BHJP
【FI】
F16K31/68 S
F25B41/335 B
F25B41/335 D
F25B41/335 Z
F25B41/40 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018277
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 智也
(72)【発明者】
【氏名】松田 亮
(72)【発明者】
【氏名】久保田 耕平
【テーマコード(参考)】
3H057
【Fターム(参考)】
3H057AA02
3H057BB43
3H057BB45
3H057CC06
3H057DD05
3H057EE03
3H057FA24
3H057HH01
3H057HH18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コイルばねの適切な支持を確保し、防振機能の低下を防止できる膨張弁を提供する。
【解決手段】膨張弁は、弁室VCと弁座20を備えた弁本体と、前記弁座に対して接近または離間する弁体3と、前記弁体を前記弁座に向かって付勢する付勢装置と、前記付勢装置による付勢力に抗して、前記弁体を前記弁座から離間する方向に押圧する作動棒5と、を有し、前記付勢装置は、前記付勢力を発生するコイルばね41と、円形部42bを備えるとともに前記弁体を支持する弁体サポート42と、前記弁体サポートとともに変位する防振ばね44と、を有し、前記防振ばねは、前記円形部に当接する環状基部44aと、前記環状基部から前記円形部側に延在する複数の脚部44bとを有し、前記脚部は、前記円形部の縁を支点として弾性変形しつつ、前記弁室の内壁に当接する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室と弁座を備えた弁本体と、
前記弁座に対して接近または離間する弁体と、
前記弁体を前記弁座に向かって付勢する付勢装置と、
前記付勢装置による付勢力に抗して、前記弁体を前記弁座から離間する方向に押圧する作動棒と、を有し、
前記付勢装置は、前記付勢力を発生するコイルばねと、円形部を備えるとともに前記弁体を支持する弁体サポートと、前記弁体サポートとともに変位する防振ばねと、を有し、
前記防振ばねは、前記円形部に当接する環状基部と、前記環状基部から前記円形部側に延在する複数の脚部とを有し、
前記脚部は、前記円形部の縁を支点として弾性変形しつつ、前記弁室の内壁に当接する、
ことを特徴とする膨張弁。
【請求項2】
前記防振ばねは、前記弁体と前記弁体サポートとの間に配置され、前記弁体サポートと前記コイルばねとが当接する
ことを特徴とする請求項1に記載の膨張弁。
【請求項3】
前記弁体は、前記防振ばねに形成された中央孔に嵌合しつつ、前記弁体サポートに保持される、
ことを特徴とする請求項2に記載の膨張弁。
【請求項4】
前記防振ばねは、中央孔と、前記中央孔の内周から前記弁体側に向かって延在する複数の爪部とを有し、前記爪部により前記弁体が保持される、
ことを特徴とする請求項2に記載の膨張弁。
【請求項5】
前記弁体サポートは凹部を有し、
前記防振ばねは、中央孔と、前記中央孔の内周から前記凹部側に向かって延在する複数の爪部とを有し、前記爪部により前記弁体が保持される、
ことを特徴とする請求項2に記載の膨張弁。
【請求項6】
前記弁体サポートは凹部を有し、
前記防振ばねは、前記凹部に係合するようにへこんだ係合部を有し、前記係合部により前記弁体が保持される、
ことを特徴とする請求項2に記載の膨張弁。
【請求項7】
前記係合部の中央に開口が形成されている、
ことを特徴とする請求項6に記載の膨張弁。
【請求項8】
隣接する前記脚部の根元に切欠部が形成されており、前記防振ばねの中心に最も近い前記切欠部の縁は、前記円形部の外縁より径方向内方に位置する、
ことを特徴とする請求項2に記載の膨張弁。
【請求項9】
前記防振ばねは、前記弁体サポートと前記コイルばねとの間に配置され、前記弁体と前記弁体サポートとが当接する
ことを特徴とする請求項1に記載の膨張弁。
【請求項10】
前記防振ばねの前記脚部は、前記防振ばねの中心に向かって傾いた屈曲部を先端に有する、
ことを特徴とする請求項9に記載の膨張弁。
【請求項11】
前記円形部の外径は、前記コイルばねの外径よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の膨張弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車に搭載される空調装置に用いる冷凍サイクルにおいては、冷媒の通過量を温度に応じて調整する感温式の温度膨張弁が使用されている。このような温度膨張弁において、封入した作動ガスの圧力で作動棒を介して弁体を駆動するパワーエレメントが採用されている。
【0003】
ここで、膨張弁の弁体上流側の圧力と弁体下流側の圧力との間の差圧により、弁体および弁体を押圧する作動棒が振動して、異音が発生することがある。これに対し特許文献1には、膨張弁の弁本体内に配置することにより、当該振動を抑制することができる防振ばねが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の膨張弁において、弁体は弁体サポートを介してコイルばねに支持され、コイルばねの付勢力によりパワーエレメント側に付勢されている。防振ばねは、軸線方向において弁体サポートとコイルばねとの間に挟持されて支持される。
【0006】
図18は、コイルばね41に重ねた防振ばね44’を透視して軸線方向に沿ってコイルばね41を見た図である。防振ばね44’は、薄い板材をプレス成形することにより形成され、中央の環状基部44a’から同一長さを持つ複数の脚部44b’が放射状に延在したのちに折れ曲がり、その先端側が不図示の弁本体の内壁に接している。弁本体に接することにより、脚部44b’は径方向内側に向かって弾性変形する。
【0007】
ここで、コイルばね41は、鋼線を螺旋状に巻いたものであるため、防振ばね44’の環状基部44a’を安定して支持するためには、その上端を軸線方向に直交する方向に切断して、防振ばねの受け面となる平面を形成する必要がある。
図18において、ハッチングで示す領域が、防振ばねの周方向に沿って半周ほどにわたって三日月状に形成される受け面41aであるが、受け面41aが三日月状であるため、以下の問題が生じる。
【0008】
すなわち、防振ばね44’を弁本体に組付けたとき、受け面41aの縁に接する脚部44b’(同図の上方に位置する脚部44b’)と受け面41aの縁に接しない脚部44b’(同図の下方に位置する脚部44b’)とが存在することとなる。受け面41aの縁に接する脚部44b’が受け面41aの縁に接する点Aを支点として曲がるのに対し、受け面41aの縁に接しない脚部44bは、例えば、コイルばね41の鋼線の外曲面に接する点Bを支点として曲がることとなる。中心Oから点Aまでの距離をLAとし、中心Oから点Bまでの距離をLBとすると、LA>LBとなる。このように、点A、Bは脚部44b’が弾性変形する際の支点となるため、点Aでコイルばね41に接する脚部44b’と、点Bでコイルばね41に接する脚部44b’とでは弾性変形時の内部応力に差が生じることとなる。しかも、点Bにおける鋼線の表面は螺旋形状に従って傾斜しているため、脚部44b’が当接したときにねじれが生じる恐れがある。これらの作用により、防振ばね44’の支持が不安定となり、それにより防振機能を損なう恐れがある。
【0009】
そこで本発明は、コイルばねの適切な支持を確保し、防振機能の低下を防止できる膨張弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明による膨張弁は、
弁室と弁座を備えた弁本体と、
前記弁座に対して接近または離間する弁体と、
前記弁体を前記弁座に向かって付勢する付勢装置と、
前記付勢装置による付勢力に抗して、前記弁体を前記弁座から離間する方向に押圧する作動棒と、を有し、
前記付勢装置は、前記付勢力を発生するコイルばねと、円形部を備えるとともに前記弁体を支持する弁体サポートと、前記弁体サポートとともに変位する防振ばねと、を有し、
前記防振ばねは、前記円形部に当接する環状基部と、前記環状基部から前記円形部側に延在する複数の脚部とを有し、
前記脚部は、前記円形部の縁を支点として弾性変形しつつ、前記弁室の内壁に当接する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、コイルばねの適切な支持を確保し、防振機能の低下を防止できる膨張弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1の実施形態における膨張弁を、冷媒循環システムに適用した例を模式的に示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の膨張弁の防振ばね付近を拡大して示す図である。
【
図3】
図3は、弁体と、弁体サポートと、防振ばねと、コイルばねを弁本体から分解した状態で示す斜視図である。
【
図4】
図4は、第2の実施形態における膨張弁を示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、弁体と、弁体サポートと、防振ばねと、コイルばねを弁本体から分解した状態で示す斜視図である。
【
図6】
図6は、第3の実施形態における膨張弁を示す概略断面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の膨張弁の防振ばね付近を拡大して示す図である。
【
図8】
図8(a)は、本実施形態の防振ばねの斜視図であり、
図8(b)は、防振ばねの断面図である。
【
図9】
図9は、第4の実施形態における膨張弁を示す概略断面図である。
【
図10】
図10は、本実施形態の膨張弁の防振ばね付近を拡大して示す図である。
【
図11】
図11(a)は、本実施形態の防振ばねの斜視図であり、
図11(b)は、防振ばねの断面図である。
【
図12】
図12(a)は、変形例にかかる防振ばねの斜視図であり、
図12(b)は、変形例にかかる防振ばねの断面図である。
【
図13】
図13は、第5の実施形態における膨張弁を示す概略断面図である。
【
図14】
図14は、弁体と、弁体サポートと、防振ばねと、コイルばねと、ばね受け部材を弁本体から分解した状態で示す斜視図である。
【
図15】
図15は、第6の実施形態における膨張弁を示す概略断面図である。
【
図16】
図16は、弁体と、弁体サポートと、防振ばねと、コイルばねと、ばね受け部材を弁本体から分解した状態で示す斜視図である。
【
図18】従来技術の防振ばねとコイルばねの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明にかかる実施形態について説明する。
【0014】
(方向の定義)
本明細書において、弁体3から作動棒5に向かう方向を「上方向」と定義し、作動棒5から弁体3に向かう方向を「下方向」と定義する。よって、本明細書では、膨張弁1の姿勢に関わらず、弁体3から作動棒5に向かう方向を「上方向」と呼ぶ。
【0015】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態における膨張弁1について説明する。
図1は、本実施形態における膨張弁1を、冷媒循環システム100に適用した例を模式的に示す概略断面図である。
図2は、膨張弁1の防振ばね付近を拡大して示す図であるが、閉弁状態で示す。
図3は、弁体と、弁体サポートと、防振ばねと、コイルばねを弁本体から分解した状態で示す斜視図である。膨張弁1の作動棒5の中心線を軸線Lとする。
【0016】
本実施形態では、膨張弁1は、コンプレッサ101と、コンデンサ102と、エバポレータ103とに流体接続されている。
【0017】
図1及び
図2において、膨張弁1は、弁室VCを備える弁本体2と、球体状の弁体3と、付勢装置4と、作動棒5と、パワーエレメント8を具備する。
【0018】
弁本体2は、弁室VCに加え、第1流路21と、第2流路22と、中間室221と、戻り流路23とを備える。第1流路21は供給側流路であり、弁室VCには、供給側流路を介して冷媒が供給される。第2流路22は排出側流路であり、弁室VC内の流体は、通流孔27、中間室221及び排出側流路を介して膨張弁外に排出される。
【0019】
第1流路21と弁室VCとは、第1流路21より小径の接続路(導入路ともいう)21aにより連通している。弁室VCと中間室221とは、弁座20及び通流孔27を介して連通している。
【0020】
中間室221の上方に形成された作動棒挿通孔28は、作動棒5をガイドする機能を有し、作動棒挿通孔28の上方に形成された環状凹部29は、リングばね6を収容する機能を有する。リングばね6は、作動棒5の外周に複数のばね片を当接させて、所定の付勢力を付与するものである。リングばね6については、例えば特開2019-74236号に構成が記載されている。
【0021】
弁体3は弁室VC内に配置される。
図2に示すように弁体3が弁本体2の弁座20に着座しているとき、通流孔27の冷媒の流れが制限される。この状態を非連通状態という。ただし、弁体3が弁座20に着座した場合でも、制限された量の冷媒を流すこともある。一方、
図1に示すように弁体3が弁座20から離間しているとき、通流孔27を通過する冷媒の流れが増大する。この状態を連通状態という。
【0022】
作動棒5は、通流孔27に所定の隙間を持って挿通されている。作動棒5の下端は、弁体3の上面に接触している。作動棒5の上端は、後述するストッパ部材84の嵌合孔84cに嵌合している。
【0023】
作動棒5は、付勢装置4による付勢力に抗して弁体3を開弁方向に押圧することができる。作動棒5が下方向に移動するとき、弁体3は、弁座20から離間し、膨張弁1が開状態となる。
【0024】
付勢装置4は、線材を螺旋状に巻いたコイルばね41と、弁体サポート42と、有底円筒状のばね受け部材43と、防振ばね44とを有する。コイルばね41を形成する線材は、例えば断面円形である。
【0025】
螺旋状の巻線を中心軸の軸線直交方向に切断することにより、
図3に示すようなコイルばね41が形成され、このとき切断端により平面である受け面41a、41bが、コイルばね41の両端に形成される。下端側の受け面41bは、ばね受け部材43の底面に当接し、上端側の受け面41aは、弁体サポート42の下面に当接する。
【0026】
コイルばね41の下端を支持するばね受け部材43は、弁本体2に対して螺合可能となっていて、弁室VCを密封する機能と、コイルばね41の付勢力を調整する機能とを有する。
【0027】
図2において、弁体サポート42は、例えば金属素材に対して鍛造加工や切削加工等を施すことにより形成され、円柱部42aと、円柱部42aより大径の円板部(円形部ともいう)42bとを連設してなる。
【0028】
円板部42bの上面中央には、円錐凹部(単に凹部ともいう)42cが形成されている。ここでは凹部が円錐形状である例を示しているが、その内周面が下端に向かって傾斜する形状を有しており、弁体3が当接することで、弁体3の中心を弁体サポート42の中心軸線上に合わせる機能を凹部が有すれば足りる。したがって、凹部は円錐に限定されず、凹部が円錐であることは一例に過ぎないため、上記機能を発揮する限り角錐や球面であってもよい。なお、円柱部42aの外周面と、円板部42bの下面との交差部は、円板部42bに食い込むように鋭角で交差して逃げ部42dを形成しているが、逃げ部を形成しないこともできる。逃げ部42dを除く円板部42bの下面は平面である。円板部42bは、比較的板厚が厚く剛性が高いため、その下面がコイルばね41の受け面41aのみに当接した状態でも、受け面41aとの密着性を確保でき、したがってコイルばね41により安定した状態で支持される。
【0029】
ここで、円板部42bの外径をCとし、コイルばね41の外径をDとしたときに、C<Dが成立する。
【0030】
防振ばね44は、
図2、3に示すように、環状基部44aと、複数(ここでは8本)の脚部44bとを連設してなる。防振ばね44は、ステンレス鋼、その合金等、弾性のある金属板材からプレス成形することによって一体的に形成できる。脚部44bは、周方向に等間隔に3本以上あれば足りる。
【0031】
脚部44bは、環状基部44aの外周から放射状に延びた後、下方に向かって延在する。ここでは同じ長さの8本の脚部44bが、等角度間隔で備えられている。脚部44bは、上部44d、側部44e、及び突起部44fを備える。また、脚部44bにおいて、上部44dと側部44eとの境界部は折れ曲がった折り曲がり部を構成する。折れ曲がり部を除き、上部44dと側部44eは平板状に延在する。このため、折れ曲がり部を除く上部44dと、環状基部44aの上下面は、それぞれつながった平面である。
【0032】
弾性変形を生じない自由状態において、上部44dと側部44eとの交差角度は鈍角である。
【0033】
上部44dは、環状基部44aとつながっている。各脚部44bの根元の部分の間においては、それぞれ略三角形状又は円弧状の切欠部44gを形成している。
【0034】
突起部44fは、側部44e下端近傍に径方向外側に向けて形成されている。例えば、突起部44fは半球状などの球表面、その他の曲面の一部等により形成できる。この突起部44fは、弁本体2内に装着されたとき、接続路21aの上部壁(弁室VCの内壁)に弾発的に接触するが、弁体3が最下限位置となった場合でも突起部44fが接続路21aに入り込まないように、脚部44bの各部寸法が設定されている。
【0035】
脚部44bの上下方向の長さは、弁体3とともに移動する防振ばね44の上下移動の範囲内における最下端において、脚部44bの下端部が接続路21a内に進入しない限り適宜の長さで設定されることができる。特に、接続路21aから弁室VCに導入される冷媒の流れを阻害しないように、そしてそれによる流量低下や乱流発生等が生じないように脚部44bの下端部が、接続路21aに達しないようにすることが望ましい。
【0036】
防振ばね44の装着に際しては、円柱部42aをコイルばね41の内側に挿入するようにして、弁体サポート42をコイルばね41の上端に設置し、その上方から防振ばね44及び弁体3をこの順序で載置する。すなわち、防振ばね44は、弁体3と弁体サポート42により挟持される。コイルばね41の内周と、円柱部42aの外周との間にほとんど隙間がないため、弁体サポート42とコイルばね41とは軸線直交方向に相対変位することが抑制される。
【0037】
また、
図2に示すように、弁体3の下端近傍が弁体サポート42の円錐凹部42cに当接して保持された状態で、弁体3の外周が中央孔44cの内周に全周で接する(嵌合する)寸法関係であるため、弁体3と、弁体サポート42と、防振ばね44の同軸性が維持される。本実施形態では、弁体3と、弁体サポート42と、防振ばね44とは互いに接合されていないため、それにより組立工数を低減できる。ただし、弁体3と、弁体サポート42と、防振ばね44を同心に組付けた状態で互いに溶接などにより接合してもよく、その場合には、中央孔44cの内周と弁体3の外周との間に隙間があってもよい。
【0038】
組付けられた状態で、防振ばね44の環状基部44aと上部44dの一部の下面が、弁体サポート42の円板部42bの下面に密着当接する。このとき、
図3に示すように、切欠部44gの奥端(防振ばね44の中心に最も近い縁)は、円板部42bの外縁より径方向内方に位置する。このため、すべての脚部44bは、円板部42bの外縁を支点として弾性変形可能となる。
【0039】
このようにして組付けた、弁体3と、弁体サポート42と、防振ばね44と、コイルばね41を、ばね受け部材43に装着した後に、弁本体2の弁室VC内に挿入することで、付勢装置4を弁本体2に設置できる。
【0040】
付勢装置4を弁本体2に設置した状態で、弁体3には作動棒5から下向きの付勢力が作用し、また弁体サポート42にはコイルばね41から上向きの付勢力が作用するため、弁体3と、弁体サポート42と、防振ばね44とが互いに接合されていない場合でも、分解することなく同軸性を維持できる。また、防振ばね44の脚部44bの突起部44fが、弁室VCの内壁に当接することにより、脚部44bは弁体サポート42の円板部42bの外縁を支点として径方向側に弾性変形する。
【0041】
次に、パワーエレメント8について説明する。
図1において、パワーエレメント8は、栓81と、上蓋部材82と、ダイアフラム83と、受け部材86と、ストッパ部材84とを有する。ここでも、上蓋部材82側が上側であり、受け部材86側が下側であるものとする。
【0042】
上蓋部材82は、例えば金属製の板材にプレス加工を施すことによって成形される。上蓋部材82は、環状の外側フランジ部82aと、外側フランジ部82aの内周に連設されドーム状に盛り上がった中央部82bとを有し、中央部82bの中央には開口82cが形成され、栓81により封止可能となっている。
【0043】
上蓋部材82に対向する受け部材86は、例えば金属製の板材にプレス加工を施すことによって成形される。受け部材86は、外側フランジ部82aの外径とほぼ同じ外径を持ち、フランジ部86aと円筒部86bとを連設して構成される。円筒部86bの外周には、雄ねじ86cが形成されている。
【0044】
弁本体2の上端には、円筒形状の凹部2aが形成され、凹部2aの内周には、雄ねじ86cに螺合可能な雌ねじ2cが形成されている。
【0045】
上蓋部材82と受け部材86との間に配置されるダイアフラム83は、薄く可撓性を有する金属(たとえばSUS)製の板材からなり、上蓋部材82及び受け部材86の外径とほぼ同じ外径を有する。
【0046】
ストッパ部材84は、中実円筒状の本体と、本体から径方向外方に延在する円盤部とからなり、本体の下面中央に形成された袋穴状の嵌合孔84cとを有する。
【0047】
次に、パワーエレメント8の組み立て手順を説明する。ダイアフラム83と受け部材86との間にストッパ部材84を配置しつつ、上蓋部材82と、ダイアフラム83と、受け部材86をこの順序で重ね合わせ軸線方向に押圧しつつ、その外周を例えばTIG溶接やレーザ溶接、プラズマ溶接等により溶接して全周にわたって溶接し、これらを一体化する。
【0048】
続いて、上蓋部材82に形成された開口82cから、上蓋部材82とダイアフラム83とで囲われる空間(圧力作動室POという)内に作動ガスを封入した後、開口82cを栓81で封止し、更に例えばプロジェクション溶接を用いて、栓81を上蓋部材82に固定する。
【0049】
このとき、圧力作動室POに封入された作動ガスにより、ダイアフラム83の中央部は、受け部材86側に張り出す形で圧力を受けるため、ダイアフラム83と受け部材86とで囲われる下部空間LSに配置されたストッパ部材84の上面に、ダイアフラム83の中央部が当接して支持される。
【0050】
その後、パワーエレメント8の円筒部86bの下端外周に形成した雄ねじ86cを、弁本体2の凹部2aの内周に形成した雌ねじ2cに螺合させ、雄ねじ86cを雌ねじ2cに対して螺進させてゆくと、受け部材86の下面が弁本体2の上端面に当接する。これによりパワーエレメント8を弁本体2に固定できる。
【0051】
組付けたパワーエレメント8と弁本体2との間には、パッキンPKが介装され、下部空間LSにつながる凹部2a内の空間が封止されて、凹部2aからの冷媒のリークを防止する。かかる状態で、パワーエレメント8の下部空間LSは、凹部2aと戻り流路23との間に形成された連通孔2bを介して、戻り流路23と連通している。その後、弁本体2の下方から作動棒5を挿入し、連通孔2bを通過させて、その上端をストッパ部材84の嵌合孔84cに嵌合させる。さらに、上述したようにして、弁体3や付勢装置4を組み込むことで、膨張弁1が完成する。
【0052】
(膨張弁の動作)
図1を参照して、膨張弁1の動作例について説明する。コンプレッサ101で加圧された冷媒は、コンデンサ102で液化され、膨張弁1に送られる。また、膨張弁1で断熱膨張された冷媒はエバポレータ103に送り出され、エバポレータ103で、エバポレータの周囲を流れる空気と熱交換される。エバポレータ103から戻る冷媒は、膨張弁1(より具体的には、戻り流路23)を通ってコンプレッサ101側へ戻される。このとき、エバポレータ103を通過することで、第2流路22内の流体圧は、戻り流路23の流体圧より大きくなる。
【0053】
膨張弁1には、コンデンサ102から高圧冷媒が供給される。より具体的には、コンデンサ102からの高圧冷媒は、第1流路21を介して弁室VCに供給される。
【0054】
図2に示すように弁体3が弁座20に着座しているとき(非連通状態のとき)には、弁室VCから通流孔27、中間室221及び第2流路22を通ってエバポレータ103へ送り出される冷媒の流量が制限される。他方、
図1に示すように弁体3が弁座20から離間しているとき(連通状態のとき)には、弁室VCから通流孔27、中間室221及び第2流路22を通って、エバポレータ103へ送り出される冷媒の流量が増大する。膨張弁1の閉状態と開状態との間の切り換えは、ストッパ部材84を介してパワーエレメント8に接続された作動棒5によって行われる。
【0055】
図1において、パワーエレメント8の内部には、ダイアフラム83により仕切られた圧力作動室POと下部空間LSとが設けられている。このため、圧力作動室PO内の作動ガスが液化されると、ダイアフラム83が上昇するため、コイルばね41の付勢力に応じてストッパ部材84及び作動棒5が上方向に移動する。
【0056】
一方、液化された作動ガスが気化すると、ダイアフラム83とストッパ部材84が下方に押圧されるため、作動棒5は下方向に移動する。更に、気化した冷媒は、ストッパ部材84と受け部材86との間の隙間を通って、パワーエレメント8の下部空間LSまで通過可能である。このため、戻り流路23を流れる冷媒の温度・圧力に応じて、圧力作動室PO内の作動ガスの体積が変化し、作動棒5が駆動される。換言すれば、
図1に記載の膨張弁1では、エバポレータ103から膨張弁1に戻る冷媒の温度・圧力に応じて、膨張弁1からエバポレータ103に向けて供給される冷媒の量が自動的に調整される。
【0057】
本実施形態によれば、防振ばね44の脚部44bの突起部44fが、弁室VCの内壁に当接して脚部44bが弾性変形することにより、脚部44bの弾性力により突起部44fが弁室VCの内壁へ向かって所定の力で押されるため、弁体3の動きに応じて摺動抵抗を発生させることが可能となる。これにより、弁体3及び作動棒5の振動を抑制することができる。
【0058】
また、防振ばね44は弁体サポート42に対して同軸に配置され、防振ばね44における全ての脚部44bは、弁体サポート42の円板部42bの外縁を支点として弾性変形するため、各脚部44bの弾性変形が一様となる。したがって、防振ばね44から弁体3及び弁体サポート42に付与される付勢力が周方向にわたってほぼ均一となるため、防振ばね44が適切に支持されることに加え、弁体3及び弁体サポート42が安定して支持されるとともに、防振ばね44の防振機能も安定する。すなわち、防振ばね44による防振機能の低下を防止できる。
【0059】
さらに円板部42bの外径Cは、コイルばね41の外径Dよりも小さいため、脚部44bはコイルばね41の外径よりも径方向内方を支点として折れ曲がることとなる。これにより脚部44bのスパンを長く確保でき、また径方向外側に向かう脚部44bの最大張り出し量を抑えることができるため、小型化を実現しながらも、適切な防振ばね44のばね定数を確保できる。
【0060】
さらに防振ばね44が、弁室VCにおける接続路21aより上方の内壁で接しているため、脚部44bが接続路21aと干渉することがなく、接続路21aから弁室VCに導入される冷媒において乱流の発生を抑制し、冷媒の通過音を低く抑えることができる。
【0061】
加えて、防振ばね44は、環状基部44aを有する面において切欠部44gを有していることから、折れ曲がり部が脚部44bのみとなり、バネ定数の設定を含め、防振ばね44の設計が容易になる。
【0062】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態における膨張弁1Aを示す概略断面図である。
図5は、弁体と、弁体サポートと、防振ばねと、コイルばねを弁本体から分解した状態で示す斜視図である。本実施形態においては、第1の実施形態に対して付勢装置4Aにおける防振ばね44Aの構成のみが異なり、それ以外の構成については、第1の実施形態と同様であるため重複説明を省略する。
【0063】
金属板材をプレス成形することにより形成できる防振ばね44Aは、第1の実施形態に対して、環状基部44Aaの中央孔44Acの内周に、複数(ここでは4つ)の爪部44Ahを等間隔で形成した点が異なる。上部44d、側部44e、及び突起部44fを含む脚部44bについては、第1の実施形態と同様であるため重複説明を省略する。
【0064】
中央孔44Acは、第1の実施形態の中央孔44cよりも大径である。爪部44Ahは、例えば矩形板状である。爪部44Ahは、上方に向かって折り曲げられ、また上方に向かうにしたがって中心軸から離間する(上方に向かうにつれて外方に広がる)ように傾いている。爪部44Ahは、
図5に示すように、球体である弁体3の下部(中心より下方)の外周面に当接し、爪部44Ahの径方向内側を向いた面により弁体3の外周面が支持される。
【0065】
爪部44Ahがこのような構成であることで、膨張弁1として組付けられた状態では、防振ばね44Aが、弁体3及び弁体サポート42の円板部42bの間に挟持される。弁体3には作動棒5から下向きの付勢力が作用し、また弁体サポート42にはコイルばね41から上向きの付勢力が作用するため、弁体3は弁体サポート42に向かって押圧される。防振ばね44Aの爪部44Ahは、弁体3によって押圧されることで変形して弁体3を円錐凹部42cに着座させることを許容する。このように、爪部44Ahが弾性変形することで、複数の爪部44Ah内に弁体3を保持することができ、弁体3の円錐凹部42cに対する着座状態が維持される。すなわち、弁体3が円錐凹部42cから離れることは生じない。
【0066】
弁体3は、弁体サポート42の円板部42bの円錐凹部42cに当接することで、弁体3の中心が弁体サポート42の中心に合わせられる。このような状態で、爪部44Ahが弁体3の下部に当接する。このとき爪部44Ahは、上述の通り、上方に向かうにつれて開く形状を有するので、爪部44Ahが弁体3から下方に向かう押圧力を受けたとき、その押圧力は、弁体サポート42の軸線に直交する力(1)と、弁体サポート42の軸線に沿う力(2)とに分解される。
【0067】
力(1)は、弁体3との相対関係で各防振ばね44Aに均等に作用するような調心効果を持つ(例えば1つの爪部44Ahに相対的に強い力(1)が作用すると、防振ばね44Aは弁体3に対しその力(1)の方向に相対変位することで、該方向の力(1)が減少しその他の力(1)と等しくなる)ため、防振ばね44Aの中心を、弁体3及び弁体サポート42の中心に合わせようとする力として作用する。その結果、膨張弁1の動作中においても、防振ばね44Aは、その中心を弁体3及び弁体サポート42の中心に合わせようとする力を受けるので、防振ばね44Aがずれることが防止される。
【0068】
力(2)は、防振ばね44Aを弁体サポート42に押し付ける力として作用する。その結果、防振ばね44Aの環状基部44Aaが、弁体サポート42の円板部42bに面接触する状態が保持される。すなわち、防振ばね44Aが弁体サポート42に対して上下方向にずれることが防止される。
【0069】
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態における膨張弁1Bを示す概略断面図である。
図7は、膨張弁1Bの防振ばね付近を拡大して示す図であるが、開弁状態で示す。
図8(a)は、防振ばね44Bの斜視図であり、
図8(b)は、防振ばね44Bの断面図である。本実施形態においては、第1の実施形態に対して付勢装置4Bにおける防振ばね44Bの構成のみが異なり、それ以外の構成については、第1の実施形態と同様であるため重複説明を省略する。
【0070】
金属板材をプレス成形することにより形成できる防振ばね44Bは、第1の実施形態に対して、環状基部44Baの中央孔44Bcの内周に、複数(ここでは4つ)の爪部44Bhを等間隔で形成した点が異なる。上部44d、側部44e、及び突起部44fを含む脚部44bについては、第1の実施形態と同様であるため重複説明を省略する。
【0071】
台形板状の爪部44Bhは、下方に向かって折り曲げられ、また下方に向かうにしたがって中心軸に近接するように一定の斜度で傾いている。爪部44Bhの先端は、互いに離間している。爪部44Bhにより弁体3の外周面が支持される。
【0072】
図6、7に示すように、付勢装置4Bを弁本体2に組み付ける際に、弁体3には作動棒5から下向きの付勢力が作用し、また弁体サポート42にはコイルばね41から上向きの付勢力が作用するため、弁体3は弁体サポート42に向かって押圧される。このとき弁体3が爪部44Bhを押圧して円錐凹部42cに当接させる。これにより弁体3は弁体サポート42により安定して支持される。膨張弁1の動作時においても、複数の爪部44Bhが円錐凹部42cに係合することで、防振ばね44Bと弁体サポート42との同軸性が確保され、したがって、弁体3と、弁体サポート42と、防振ばね44Bとが互いに接合されていない場合でも、これらが分解することなく同軸性を維持できる。
【0073】
(第4の実施形態)
図9は、第4の実施形態における膨張弁1Cを示す概略断面図である。
図10は、膨張弁1Cの防振ばね付近を拡大して示す図であるが、開弁状態で示す。
図11(a)は、防振ばね44Cの斜視図であり、
図11(b)は、防振ばね44Cの断面図である。本実施形態においては、第1の実施形態に対して付勢装置4Cにおける防振ばね44Cの構成のみが異なり、それ以外の構成については、第1の実施形態と同様であるため重複説明を省略する。
【0074】
金属板材をプレス成形することにより形成できる防振ばね44Cは、第1の実施形態に対して、上述の環状基部に相当する円形基部44Caの構成のみが異なる。上部44d、側部44e、及び突起部44fを含む脚部44bについては、第1の実施形態と同様であるため重複説明を省略する。
【0075】
円形基部44Caは、弁体サポート42の円錐凹部42cに対応して下方に突出した円錐部(へこんだ係合部ともいう)44Chを有する。円錐部44Chの内周面により弁体3の外周面が支持される。
【0076】
図9、10に示すように、付勢装置4Cを弁本体2に設置した状態で、弁体3には作動棒5から下向きの付勢力が作用し、また弁体サポート42にはコイルばね41から上向きの付勢力が作用するため、弁体3は弁体サポート42に向かって押圧される。このとき弁体3が円錐部44Chを押圧して円錐凹部42cに密着当接させる。これにより弁体3は弁体サポート42により安定して支持される。円錐部44Chが円錐凹部42cに係合することで、防振ばね44Cと弁体サポート42との同軸性が確保され、したがって、弁体3と、弁体サポート42と、防振ばね44Cとが互いに接合されていない場合でも、これらが分解することなく同軸性を維持できる。
【0077】
(変形例)
図12(a)は、変形例にかかる防振ばね44Dの斜視図であり、
図12(b)は、変形例にかかる防振ばね44Dの断面図である。
【0078】
防振ばね44Dは、円形基部44Daに形成した円錐部(係合部ともいう)44Dhの中央に、円形の開口44Diを形成している。それ以外の構成は、第4の実施形態と同様であるため重複説明を省略する。防振ばね44Dをプレス成形で形成する際に、成形型で円錐部44Dhを押圧して塑性変形させるとき、開口44Diがないとすると、中央の板厚が薄くなって亀裂が生じるなどの恐れがある。円錐部44Dhの中央に開口44Diを形成することで、かかる不具合を解消できる。
【0079】
(第5の実施形態)
図13は、第5の実施形態における膨張弁1Eを示す概略断面図である。
図14は、弁体と、弁体サポートと、防振ばねと、コイルばねと、ばね受け部材を弁本体から分解した状態で示す斜視図である。本実施形態においては、第1の実施形態に対して付勢装置4Eにおける弁体サポート42Eと防振ばね44Eの構成のみが異なり、それ以外の構成については、第1の実施形態と同様であるため重複説明を省略する。
【0080】
弁体サポート42Eは、例えば金属素材に対して鍛造加工や切削加工等を施すことにより形成され、円柱部42Eaと、円柱部42Eaより大径の円板部(円形部ともいう)42Ebとを連設してなる。円板部42Ebの上端中央には、円錐凹部42Ecが形成されている。
【0081】
金属板材をプレス成形することにより形成できる防振ばね44Eは、環状基部44Eaと、複数(ここでは8本)の脚部44Ebとを連設してなる。環状基部44Eaの中央には、中央孔44Ecが形成されている。脚部44Ebは、環状基部44Eaの外周から放射状に延びたのち、上方に向かって延在する。
【0082】
脚部44Ebは、下部44Ed、側部44Ee、及び突起部44Efを備える。また、脚部44Ebにおいて、下部44Edと側部44Eeとの境界部は折れ曲がった折り曲がり部を構成する。折れ曲がり部を除き、下部44Edと側部44Eeは平板状に延在する。このため、折れ曲がり部を除く下部44Edと、環状基部44Eaの上下面は、それぞれつながった平面である。各脚部44Ebの根元の部分においては、環状基部44Eaの外縁を含み、それぞれ略三角形状又は円弧状の切欠部44Egを備える(後述する
図17参照)。なお、防振ばね44Eは、第1の実施形態における防振ばね44を上下逆とした形状に類似する。
【0083】
組付時には、防振ばね44Eをコイルばね41上に載置し、上方から接近させた弁体サポート42Eの円柱部42Eaを、防振ばね44Eの中央孔44Ecを貫通させつつ、コイルばね41の内側に挿入する。その後、弁体3を弁体サポート42の円錐凹部42Ecに載置する。本実施形態では、防振ばね44Eは、弁体サポート42Eとコイルばね41により挟持される。
【0084】
防振ばね44Eの環状基部44Eaと、折れ曲がり部を除く下部44Edは、コイルばね41の受け面41a(
図18参照)に当接する。しかし、各脚部44Ebが上方に折れ曲がることで、各脚部44Ebは、弁体サポート42Eの円板部42Ebの外縁に当接する。したがって、すべての脚部44Ebは、円板部42Ebの外縁を支点として弾性変形可能となるため、安定した防振機能を発揮できる。
【0085】
(第6の実施形態)
図15は、第6の実施形態における膨張弁1Fを示す概略断面図である。
図16は、弁体と、弁体サポートと、防振ばねと、コイルばねと、ばね受け部材を弁本体から分解した状態で示す斜視図である。
図17は、防振ばね44Fの斜視図である。本実施形態においては、第1の実施形態に対して付勢装置4Fにおける防振ばね44Fの構成のみが異なり、それ以外の構成については、第5の実施形態と同様であるため重複説明を省略する。
【0086】
金属板材をプレス成形することにより形成できる防振ばね44Fは、第5の実施形態に対して、脚部44Fbの構成のみが異なる。それ以外については、第5の実施形態と同様であるため重複説明を省略する。
【0087】
図17に示すように、脚部44Fbは、下部44Fd、側部44Fe、及び突起部44Ffを備えるという点で、上述した実施形態と同様であるが、その先端において径方向内方に折れ曲がった(防振ばね44Fの中心に向かって傾斜した)屈曲部44Fjを有する。
【0088】
弾性変形がない自由状態で脚部44Fbは外方に向かって張り出しているため、脚部44Fbの先端を径方向内側にすぼめるように弾性変形させて、弁本体2に挿入する必要がある。さらに防振ばね44Fを組付位置に向かって変位させるとき、接続路21aを脚部Fbの先端が通過する際に、接続路21aに係合することで引っかかり、それにより組立が抑制される恐れがある。
【0089】
本実施形態によれば、脚部44Fbの先端に屈曲部44Fjを設けることで、防振ばね44Fの組付時に、脚部44Fbの先端が接続路21aに引っ掛かって変位が阻害されることが抑制されるため、組立性が向上する。
【0090】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されない。本発明の範囲内において、上述の実施形態の任意の構成要素の変形が可能である。また、上述の実施形態において任意の構成要素の追加または省略が可能である。
【0091】
上述した実施形態の変形例として、弁体と弁体サポートが溶接や接着等によって固定されてもよい。この変形例では、防振ばねは、弁体及び弁体サポートの少なくとも一方に溶接や接着によって固定されてもよいし、あるいは弁体及び弁体サポート双方に固定されていなくてもよい。
【0092】
本明細書は、以下の発明の開示を含む。
(第1の態様)
弁室と弁座を備えた弁本体と、
前記弁座に対して接近または離間する弁体と、
前記弁体を前記弁座に向かって付勢する付勢装置と、
前記付勢装置による付勢力に抗して、前記弁体を前記弁座から離間する方向に押圧する作動棒と、を有し、
前記付勢装置は、前記付勢力を発生するコイルばねと、円形部を備えるとともに前記弁体を支持する弁体サポートと、前記弁体サポートとともに変位する防振ばねと、を有し、
前記防振ばねは、前記円形部に当接する環状基部と、前記環状基部から前記円形部側に延在する複数の脚部とを有し、
前記脚部は、前記円形部の縁を支点として弾性変形しつつ、前記弁室の内壁に当接する、
ことを特徴とする膨張弁。
【0093】
(第2の形態)
前記防振ばねは、前記弁体と前記弁体サポートとの間に配置され、前記弁体サポートと前記コイルばねとが当接する
ことを特徴とする第1の形態の膨張弁。
【0094】
(第3の形態)
前記弁体は、前記防振ばねに形成された中央孔に嵌合しつつ、前記弁体サポートに保持される、
ことを特徴とする第2の形態の膨張弁。
【0095】
(第4の形態)
前記防振ばねは、中央孔と、前記中央孔の内周から前記弁体側に向かって延在する複数の爪部とを有し、前記爪部により前記弁体が保持される、
ことを特徴とする第2の形態の膨張弁。
【0096】
(第5の形態)
前記弁体サポートは凹部を有し、
前記防振ばねは、中央孔と、前記中央孔の内周から前記凹部側に向かって延在する複数の爪部とを有し、前記爪部により前記弁体が保持される、
ことを特徴とする第2の形態の膨張弁。
【0097】
(第6の形態)
前記弁体サポートは凹部を有し、
前記防振ばねは、前記凹部に係合するようにへこんだ係合部を有し、前記係合部により前記弁体が保持される、
ことを特徴とする第2の形態の膨張弁。
【0098】
(第7の形態)
前記係合部の中央に開口が形成されている、
ことを特徴とする第6の形態の膨張弁。
【0099】
(第8の形態)
隣接する前記脚部の根元に切欠部が形成されており、前記防振ばねの中心に最も近い前記切欠部の縁は、前記円形部の外縁より径方向内方に位置する、
ことを特徴とする第2の形態の膨張弁。
【0100】
(第9の形態)
前記防振ばねは、前記弁体サポートと前記コイルばねとの間に配置され、前記弁体と前記弁体サポートとが当接する
ことを特徴とする第1の形態の膨張弁。
【0101】
(第10の形態)
前記弁室の内壁に、冷媒を導入する導入孔が形成されており、
前記防振ばねの前記脚部は、径方向内方を向いた屈曲部を先端に有する、
ことを特徴とする第9の形態の膨張弁。
【0102】
(第11の形態)
前記円形部の外径は、前記コイルばねの外径よりも小さい、
ことを特徴とする第1の形態~第10の形態の膨張弁。
【符号の説明】
【0103】
1、1A、1B、1C、1E、1F :膨張弁
2 :弁本体
3 :弁体
4、4A、4B、4C、4D、4E、4F :付勢装置
5 :作動棒
6 :リングばね
8 :パワーエレメント
20 :弁座
21 :第1流路
22 :第2流路
221 :中間室
23 :戻り流路
27 :通流孔
28 :作動棒挿通孔
29 :環状凹部
41 :コイルばね
42、42E :弁体サポート
43 :ばね受け部材
44、44A、44B、44C、44D、44E、44F 防振ばね
81 :栓
82 :上蓋部材
83 :ダイアフラム
84 :ストッパ部材
86 :受け部材
100 :冷媒循環システム
101 :コンプレッサ
102 :コンデンサ
103 :エバポレータ
VC :弁室