(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113361
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】電子装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/467 20060101AFI20240815BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240815BHJP
H05K 1/14 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
H01L23/46 C
H02M7/48 Z
H05K1/14 E
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018292
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】511187214
【氏名又は名称】株式会社FLOSFIA
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】朝 大亮
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 将人
(72)【発明者】
【氏名】大久保 翔太
(72)【発明者】
【氏名】三竹 雅也
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健吾
(72)【発明者】
【氏名】中澤 達洋
(72)【発明者】
【氏名】近藤 浩史
(72)【発明者】
【氏名】小宮 宏文
(72)【発明者】
【氏名】人羅 俊実
【テーマコード(参考)】
5E344
5F136
5H770
【Fターム(参考)】
5E344AA02
5E344AA08
5E344BB02
5E344BB03
5E344CD14
5E344CD18
5E344DD08
5E344EE02
5E344EE12
5F136BA04
5F136BB18
5F136DA27
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA12
5F136FA22
5H770AA21
5H770BA02
5H770CA01
5H770CA02
5H770CA05
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA41
5H770PA22
5H770PA42
5H770QA02
5H770QA08
5H770QA28
5H770QA33
(57)【要約】
【課題】 小型化された電子装置の提供を目的とする。
【解決手段】 配線基板と、該配線基板上に実装されているパワー素子内蔵基板とを備えるモジュールユニットと、実装基板とを備え、前記モジュールユニットは、前記配線基板が前記実装基板と平行または略平行となるように前記実装基板上に実装されており、前記配線基板の前記パワー素子内蔵基板側に、前記パワー素子内蔵基板からの熱を放熱するための放熱部材が配置されている、電子装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板と、該配線基板上に実装されているパワー素子内蔵基板とを備えるモジュールユニットと、実装基板とを備え、
前記モジュールユニットは、前記配線基板が前記実装基板と平行または略平行となるように前記実装基板上に実装されており、前記配線基板の前記パワー素子内蔵基板側に、前記パワー素子内蔵基板からの熱を放熱するための放熱部材が配置されている、電子装置。
【請求項2】
第1の配線基板と、該第1の配線基板上に実装されている第1のパワー素子内蔵基板とを備える第1のモジュールユニットと、
第2の配線基板と、該第2の配線基板上に実装されている第2のパワー素子内蔵基板とを備える第2のモジュールユニットと、実装基板とを備え、
前記第1のモジュールユニットは、前記第1の配線基板が前記実装基板と平行または略平行となるように実装されており、前記第1のモジュールユニット上に、前記第2のモジュールユニットが積層されている、電子装置。
【請求項3】
配線基板と、該配線基板上に実装されているパワー素子内蔵基板およびゲートドライバとを備えるモジュールユニットと、実装基板とを備え、
前記モジュールユニットは、前記実装基板上に立設されており、前記パワー素子内蔵基板および前記ゲートドライバが、前記配線基板の第1面側に配置されており、前記配線基板の前記第1面側に、前記パワー素子内蔵基板からの熱を放熱するための放熱部材が配置されている、電子装置。
【請求項4】
配線基板と、該配線基板上に実装されているパワー素子内蔵基板およびゲートドライバとを有するモジュールユニットと、実装基板とを備え、
前記モジュールユニットは前記実装基板上に立設されており、前記パワー素子内蔵基板が前記配線基板の第1面側に配置されており、前記ゲートドライバが前記配線基板の第1面側と反対側の第2面側に配置されている、電子装置。
【請求項5】
前記パワー素子内蔵基板は、第1の配線層と、保持層と、前記第1の配線層と前記保持層との間に位置する絶縁層と、パワー素子とを備え、前記パワー素子が前記絶縁層に埋め込まれている請求項1~4のいずれかに記載の電子装置。
【請求項6】
前記パワー素子は、電力変換回路の一部を構成するものである請求項5記載の電子装置。
【請求項7】
さらにゲートドライバが前記配線基板上に実装されている請求項1記載の電子装置。
【請求項8】
さらに、他の配線基板と該他の配線基板上に実装されているゲートドライバとを備えるドライバユニットを備え、該ドライバユニットが前記モジュールユニット上に積層されている請求項1記載の電子装置。
【請求項9】
さらに第1の配線基板上に第1のゲートドライバを備え、第2の配線基板上に第2のゲートドライバを備える請求項2記載の電子装置。
【請求項10】
さらに、第3の配線基板と該第3の配線基板上に実装されているゲートドライバとを備えるドライバユニットを備え、前記ドライバユニットが、前記第1の配線基板上または前記第2の配線基板上に積層されている請求項2記載の電子装置。
【請求項11】
前記放熱部材が、冷却器に接続されている請求項1または3に記載の電子装置。
【請求項12】
前記配線基板のパワー素子内蔵基板上に、前記パワー素子内蔵基板の熱を放熱するための放熱部材が配置されている請求項2または4に記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線基板とパワー素子内蔵基板とを備える複合モジュールユニットが実装基板に実装された電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1基板と、第1基板に立設された第2基板と、第2基板の板厚方向の一方側の面に配置された電子部品と、該一方側に第2基板に沿って配置されたヒートシンクとを備える電力変換装置が開示されている。
【0003】
なお、背景技術のセクションは、当業者が本発明の範囲および有用性を理解することを支援するために、本発明の実施態様を技術的または動作的な文脈で提供されるものである。明示的に特定されたものでない限り、単に背景技術のセクションに含まれていることによって本明細書の記述が先行技術であると認められるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
以下は、当業者に基本的理解を提供するために本開示の簡略化された概要を提示する。この概要は、本開示の実施形態の重要な要素を特定することまたは本発明の範囲を定めることを意図していない。この発明の概要の目的は、後に提示されるより詳細な説明の前置きとして、簡略化された形態で、本明細書で開示されるいくつかの概念を提示することである。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、小型化された電子装置を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様における電子装置は、配線基板と、該配線基板上に実装されているパワー素子内蔵基板とを備えるモジュールユニットと、実装基板とを備え、前記モジュールユニットは、前記配線基板が前記実装基板と平行または略平行となるように前記実装基板上に実装されており、前記配線基板の前記パワー素子内蔵基板側に、前記パワー素子内蔵基板からの熱を放熱するための放熱部材が配置されている。
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の一態様における電子装置は、第1の配線基板と、該第1の配線基板上に実装されている第1のパワー素子内蔵基板とを備える第1のモジュールユニットと、第2の配線基板と、該第2の配線基板上に実装されている第2のパワー素子内蔵基板とを備える第2のモジュールユニットと、実装基板とを備え、前記第1のモジュールユニットは、前記第1の配線基板が前記実装基板と平行または略平行となるように実装されており、前記第1のモジュールユニット上に、前記第2のモジュールユニットが積層されている。
【0009】
上記課題を解決するために、本開示の一態様における電子装置は、配線基板と、該配線基板上に実装されているパワー素子内蔵基板およびゲートドライバとを備えるモジュールユニットと、実装基板とを備え、前記モジュールユニットは、前記実装基板上に立設されており、前記パワー素子内蔵基板および前記ゲートドライバが、前記配線基板の第1面側に配置されており、前記配線基板の前記第1面側に、前記パワー素子内蔵基板からの熱を放熱するための放熱部材が配置されている。
【0010】
上記課題を解決するために、本開示の一態様における電子装置は、配線基板と、該配線基板上に実装されているパワー素子内蔵基板およびゲートドライバとを有するモジュールユニットと、実装基板とを備え、前記モジュールユニットは前記実装基板上に立設されており、前記パワー素子内蔵基板が前記配線基板の第1面側に配置されており、前記ゲートドライバが前記配線基板の第1面側と反対側の第2面側に配置されている。
【発明の効果】
【0011】
本開示の実施形態にかかる電子装置は、小型化が達成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態にかかる電子装置を模式的に例示する分解斜視図である。
【
図2】第1実施形態にかかる電子装置を模式的に例示する断面図である。
【
図3】第1実施形態にかかるパワー素子を含む半導体回路の等価回路図である。
【
図4】第1実施形態にかかるパワー素子内蔵基板の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】第2実施形態にかかる電子装置を模式的に例示する分解斜視図である。
【
図6】第2実施形態にかかる電子装置を模式的に例示する断面図である。
【
図7】第3実施形態にかかる電子装置を模式的に例示する分解斜視図である。
【
図8】第3実施形態にかかる電子装置を模式的に例示する断面図である。
【
図9】第4実施形態にかかる電子装置を模式的に例示する分解斜視図である。
【
図10】第4実施形態にかかる電子装置を模式的に例示する断面図である。
【
図11】本開示の実施形態に係る電子装置を採用した制御システムの一例を示すブロック構成図である。
【
図12】本開示の実施形態に係る電子装置を採用した制御システムの一例を示す回路図である。
【
図13】本開示の実施形態に係る電子装置を採用した制御システムの他の例を示すブロック構成図である。
【
図14】本開示の実施形態に係る電子装置を採用した制御システムの他の例を示す回路図である。
【
図15】第5実施形態にかかる電子装置を模式的に例示する上面図である。
【
図16】第5実施形態にかかる電子装置を模式的に例示する断面図である。
【
図17】第5実施形態にかかる電子装置を模式的に例示する分解斜視図である。
【
図18】変形例1にかかる電子装置を模式的に例示する断面図である。
【
図19】変形例1にかかる電子装置を模式的に例示する分解斜視図である。
【
図20】変形例2にかかる電子装置を模式的に例示する断面図である。
【
図21】変形例2にかかる電子装置を模式的に例示する分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の態様と、その様々な特徴および優位な詳細は、図面を用いて説明および/または示され、また、以下の本明細書において述べられる非限定的な態様および例を参照してより具体的に説明される。当業者にとって明らかなように、本明細書において述べられていなくとも、図面中において示される特徴は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。また、1つの態様における1つの特徴は別の態様においても単独または他の特徴と組み合わせて用いられ得ることに留意されたい。周知の要素および加工技術についての記載は、本開示の態様を必要に不明確にすることのないように省略され得る。本明細書において用いられる例は、単に本開示の理解を助けること、またさらに当業者が本開示の態様を実施できるようにすることを目的としている。したがって、本明細書における態様および例は本開示の範囲に限定されて解釈されるものではなく、特許請求の範囲および適用可能な法律によってのみ定められる。さらに、本開示の図面において、同様の参照番号は同様の部分を表す。
【0014】
「第1の」、「第2の」等の用語は、本明細において用いられる様々な要素を記述するために用いられるが、要素は、これらの用語によって限定されるものではない。第1の、第2の等の用語は、1つの要素を別の要素から区別するためにのみ用いられる。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の要素は第2の要素と称することができ、また、第2の要素は第1の要素と称することができる。本明細書において用いられるように、用語「および/または」は、挙げられた項目のうち1つまたは複数のいくつかまたは全ての組み合わせを包含する。
【0015】
層、領域、または基板等の要素が別の要素の「上に」存在するまたは「上へ」延びるという表現が用いられる場合には、別の要素の上に直接存在するか、または上へ直接延びることができ、または介在する要素が存在してもよいことを理解されたい。一方、要素が「上に直接」存在する、または「上に直接」延びるという表現が用いられる場合には、介在する要素は存在しない。同様に、層、領域、または基板等の要素が「わたって」いる、または「わたって」延びるという表現が用いられる場合には、別の要素に直接わたっているか、または直接わたって延びることができ、介在する要素が存在してもよいことを理解されたい。一方、「直接わたって」いるか、または「直接わたって」延びるという表現が用いられる場合には、介在する要素は存在しない。要素が別の要素に「接続される」または「結合される」という表現が用いられる場合には、別の要素に直接接続または結合されることができ、または介在する要素が存在してもよいことを理解されたい。一方で、要素が別の要素に「直接接続される」または「直接結合される」との表現が用いられる場合には、介在する要素は存在しない。さらに、要素が別の要素に「積層される」という表現が用いられる場合には、別の要素に直接積層されることができ、または介在する要素が存在してもよいことを理解されたい。一方で、要素が別の要素に「直接積層される」との表現が用いられる場合には、介在する要素は存在しない。
【0016】
本明細書において用いられる用語は、特定の態様のみを記述することを目的としており、本開示を限定することを意図していない。本明細書において用いられる「備える」「含む」は、記載された要素の存在を表すものであり、1つまたは複数の他の要素の存在を排除するものではない。
【0017】
別途定義されない限り、本明細書において用いられる全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を持つ。本明細書において用いられる用語は本明細書の文脈および関連技術におけるいみと矛盾しない意味を有するように解釈される。また、本明細書において定義されない限り、本明細書において用いられる用語は、理想化された、または過度に形式的な意味で解釈されるべきでないことを理解されたい。
【0018】
本開示においては、特に別途定義されない限り、配線基板の積層方向(配線基板表面と垂直な方向)をY方向、実装基板の積層方向(実装基板表面と垂直な方向)をZ方向として説明する。また、配線基板の第1面側にパワー素子内蔵基板が実装されているモジュールユニットにおいては、配線基板からみてパワー素子内蔵基板側を上方、パワー素子内蔵基板からみて配線基板側を下方として「上」と「下」が定義される。配線基板の両側にパワー素子内蔵基板が実装されている構造の場合には、別途定義される。また、電子装置においては、実装基板からみてモジュールユニット側を上方、モジュールユニット側からみて実装基板側を下方として「上」と「下」が定義される。なお、本明細書にて、上面視は、平面視と言い換えられてもよい。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態にかかる電子装置101aを例示する模式的分解斜視図である。
図2は、電子装置101aを例示する模式的断面図であり、
図1において、X方向に垂直で且つパワー素子内蔵基板2aを積層方向(Z方向)平行な面で切断した断面を示す。
図1および
図2の電子装置は、実装基板11、配線基板1a、パワー素子内蔵基板2a、放熱部材3aがこの順に積層されている。また、放熱部材3a上には、冷却器として放熱フィン3cが接続されている。放熱フィン3cは、公知の導電性接着層等を用いて放熱部材3aに接合されていてよい。本開示においては、前記放熱部材3aに接続される冷却器は放熱フィン3cに限定されない。例えば、前記放熱部材3aが筐体に接続されていてもよい。なお、
図1には図示を省略しているが、パワー素子内蔵基板2aおよび放熱部材3aとの間には絶縁部材4aが配置されていてもよい。本開示の電子装置においては、絶縁部材4aは必須ではなく、前記放熱部材3aと前記パワー素子内蔵基板2aの少なくとも一部が直接接触していてもよい。
【0020】
図示しないが、実装基板には、例えば、ゲートドライバ、入力端子、出力端子、制御IC,その他受動部品等が実装されていてよい。また、本実施形態においては、前記配線基板1a上に1つのパワー素子内蔵基板が実装されているが、本開示においては、実装されるパワー素子内蔵基板の数はこれに限定されない。本開示においては、さらに1または2以上のパワー素子内蔵基板が前記配線基板1a上に実装されていてよい。なお、
図1および/または
図2において、配線基板、パワー素子内蔵基板、実装基板それぞれの電気的接続については図示を省略するが、それぞれ公知の方法を用いて達成され得る。
【0021】
(配線基板)
前記第1の配線基板1aおよび/または前記第2の配線基板1b(以下、まとめて単に「配線基板」ともいう。)は、誘電体基板であってもよいし、多層誘電体基板であってもよい。また、前記配線基板は、上面および/または内層に信号導体パターン(図示しない)が配線されたものである。また、図示しないが、配線基板1aは、実装基板との電気的接続をとるための実装基板側のコネクタに接続するための電極パターンや、電極ピンを有していてもよい。さらに、配線基板1aには、パワー素子以外の回路部品(例えば、コンデンサなどの受動部品)が実装されていてもよい。また、前記配線基板1aには、ゲートドライバがさらに配置されていてもよい。
【0022】
(パワー素子内蔵基板)
前記パワー素子内蔵基板2aは、例えば、電力変換回路の一部を構成するパワー素子(ダイオード、トランジスタ等)が多層配線基板内に埋め込まれているものをいう。より具体的には、例えば、
図3に示されるように、パワー素子内蔵基板2aは、配線層(第1の配線層)1と保持層(第2の配線層)112との間に絶縁層115を有し、該絶縁層115中にパワー素子としてのトランジスタ101aおよびダイオード102aが埋設されている構造を有する。
図5のパワー素子内蔵基板2aにおいては、第1の配線層111が上部配線層を構成しており、保持層112が第2の配線層(下部層)の一部を構成している。前記第2の配線層112は基材118の両面にわたって形成された銅箔から構成されており、前記基材118の第1面側の銅箔と第2面側の銅箔とはスルーホールを介して電気的に接続されている。また、ダイオード102aおよびトランジスタ101aは、それぞれ接着層(図示せず)を介して、前記保持層(第1面側の銅箔)112上に載置されている。なお、前記保持層は第2の配線層を構成していてもよいし、その他の部材(例えば、金属基板やセラミック基板などの絶縁基板等)によって構成されていてもよい。
【0023】
前記ダイオード102aは、例えば、ショットキーバリアダイオード(SBD)、FRD(ファストリカバリーダイオード)またはPiNダイオードである。また、前記トランジスタ101aは、例えば、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)または絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)である。なお、パワー素子としてのダイオード102aおよびトランジスタ101aを構成する半導体材料は、特に限定されない。前記半導体材料としては、例えば、シリコン、窒化ガリウム、炭化珪素、酸化ガリウム、ダイヤモンド等が挙げられる。前記パワー素子内蔵基板は、公知の部品内蔵基板の製造方法を用いて作製される。前記パワー素子内蔵基板の積層方向(Y方向)の厚みは、例えば、3mm以下であり、好ましくは、1mm以下である。前記パワー素子内蔵基板の上面視の面積は、例えば、2000mm2以下であり、好ましくは、1000mm2以下である。
【0024】
図4は、前記パワー素子内蔵基板10aに内蔵されるパワー素子の回路中における位置づけを説明するための等価回路図である。
図4の回路構成においては、トランジスタ101aとダイオード1021との逆並列回路と、トランジスタ101bとダイオード102bとの逆並列回路とが、直列に接続されており、さらにコンデンサ103がトランジスタ101aおよび101bに並列に接続されている。前記半導体回路は、例えば、インバータ回路またはコンバータ回路等を含む電力変換回路に適用される。本実施形態において、前記第1のパワー素子内蔵基板2aは、
図4の等価回路におけるトランジスタ101aおよびダイオード102aを内蔵している。また、前記第2のパワー素子内蔵基板2bは、
図4の等価回路におけるトランジスタ101bおよびダイオード102bを内蔵している。本開示においては、前記パワー素子内蔵基板2aが複数のトランジスタ(例えば、トランジスタ101aおよび101b)および/または複数のダイオード(例えば、ダイオード102aおよび102b)を内蔵するものであってもよい。前記パワー素子内蔵基板が複数のトランジスタを内蔵する場合、当該複数のトランジスタは、互いに電気的に直列に接続されたものであってもよいし、並列に接続されたものであってもよい。また、本開示においては、後述するように、前記モジュールユニットが、複数のパワー素子内蔵基板を備えていてもよい。なお、上記で説明した回路構成は、あくまで一例であり、上記以外の回路構成であってもよい。本開示においては、複数の前記パワー素子内蔵基板を組合わせることにより、その他受動部品と合わせて電力変換回路を構成することができる。
【0025】
(放熱部材)
前記放熱部材3aは、パワー素子内蔵基板で発生した熱を放熱するために配置されるものである。前記放熱部材の構成材料も本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されない。前記放熱部材の構成材料としては、例えば、金属材料、セラミック材料、カーボン系材料またはこれらの複合材料等が挙げられる。本開示においては、前記放熱部材が金属ブロックであるのが好ましい。本開示においては、パワー素子内蔵基板と対向する面側に凹部を有するものであってもよい。前記金属ブロックは、例えば平面視において矩形状または円形状の形状を有している。また、金属ブロックは、平面視において前記パワー素子内蔵基板よりも大きい形状を有している。前記金属ブロックの一例を
図3に示す。前記凹部は、公知の金属加工方法(打ち抜き加工、レーザ加工、削り出し加工、金属メッキ、3Dプリンタなど)を用いて形成される。また、前記金属ブロックの構成材料は、本開示の目的を阻害しない限り、特に限定されない。前記金属ブロックの構成材料としては、例えば、Cu、Au、Al、Ag、Fe、Ti、Ni、Pt、Pdまたはこれらの合金(他の金属または炭素等を含んでいてもよい)が挙げられる。本開示においては、前記金属ブロックの構成材料が、銅(Cu)またはアルミニウム(Al)を含むのが好ましく、アルミニウム(Al)を含むのがより好ましい。本開示においては、前記金属ブロックが、の凹部によって、前記パワー素子内蔵基板の周囲が覆われているのが好ましい。また、前記凹部の深さは、特に限定されない。前記凹部の深さは、例えば、5mm以下であり、好ましくは3mm以下であり、さらに好ましくは、1mm以下である。
【0026】
本開示においては、例えば、
図2に示されるように、前記放熱部材3aと前記パワー素子内蔵基板2aとの間に、絶縁部材4aが配置されていてもよい。前記絶縁部材4aは、高熱伝導性を有するものであるのが好ましく、より具体的には、例えばエポキシ樹脂等の樹脂に、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al
2O
3)等のフィラーを含有させた層等の、公知のTIM(Thermal Interface Material)材が用いられる。
【0027】
(製造方法の例)
以下、上記構造の電子装置の製造方法について説明する。
【0028】
モジュールユニットの組立工程では、パワー素子内蔵基板2aを、配線基板1aに公知の方法を用いて接続(実装)する。その後、前記パワー素子内蔵基板2a上に、所望により熱伝導性に優れた絶縁部材4aを介して、放熱部材3aを接合する。接合は、例えば(図示しない)導電性接着層を用いて行ってもよいし、各構成要素に貫通孔を形成し、該貫通孔を通してねじ止めすることにより、構成要素同士を固定することにより行ってもよい。貫通孔は、上記した積層工程よりも前に形成してもよいし、積層工程後に形成してもよい。本実施形態において、前記配線基板1a、前記パワー素子内蔵基板2aおよび放熱部材3aの固定方法は、これに限定されない。例えば、バスバーを用いて固定する方法、クリップを用いて固定する方法が用いられる。また、配線基板1a、パワー素子内蔵基板2a、放熱部材3aおよび冷却フィン3cから構成されるモジュールユニットは、公知の方法を用いて、実装基板11に実装される。本実施形態においては、配線基板1aに公知の方法を用いてコネクタ8aを取付け、実装基板側にコネクタ挿入部8bを設ける。そして、当該コネクタ8aをコネクタ挿入部8bに挿入することにより、配線基板が実装基板に平行または略平行となるように、実装基板上にモジュールユニットを実装することができる。なお、上記で説明した電子装置の製造方法の内容は、あくまで一例であり、上記以外の内容であってもよい。例えば、前記モジュールユニットの組立工程は、上記で説明した手順に限定されるものではなく、趣旨および技術的思想を逸脱しない範囲で手順の追加・削除または順番の変更等をしてもよい。
【0029】
(第1実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態の電子装置101aは、配線基板上1a上にパワー素子内蔵基板が配置されており、該パワー素子内蔵基板2a側に放熱部材3aが接続されたモジュールユニットが、実装基板に平行または略平行となるように実装されている。そのため、実装基板側の設計をより容易にしつつ、パワー素子内蔵基板からの放熱性に優れた構成とすることができる。また、本実施形態において、配線基板、部品内蔵パワーモジュールおよび金属ブロックが一体となっているため、ハンドリング性に優れており、さらに、複数モジュールユニットを組合わせることで放熱性・ノイズ特性の厳密な設計を行うことなく、例えば電力変換回路全体の実装設計の自由度を向上させることも可能である。
【0030】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態にかかる電子装置101bを例示する模式的分解斜視図であり、
図6に模式断面図を示す。
図5の電子装置101bは、第1の配線基板1a上にパワー素子内蔵基板2aが実装されて第1のモジュールユニットが構成されており、さらに、第1のモジュールユニット上に第2の配線基板1bおよび第2の配線基板1b上の第2のパワー素子内蔵基板を有する第2のモジュールユニットが積層されている。また、第1のモジュールユニットおよび第2のモジュールユニットには、貫通孔が形成されており、ねじ9によって各構成要素が固定されている。
【0031】
(第2実施形態の効果)
図5および
図6の電子装置によれば、第1のモジュールユニット上にさらに第2のモジュールユニットが形成されている。そのため、1つのパワー素子内蔵基板が破損し場合に部分的に回路から切り離し、他のモジュールユニットで性能を維持する並列化の機能を実現することができる。また、各配線基板を積層することによってパワー素子内蔵基板の数を増やしているため、インダクタンスおよび熱膨張係数による反りの影響を低減しつつ、多機能化を実現することができる。
【0032】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態にかかる電子装置101cを例示する模式的分解斜視図であり、
図8に模式的断面図を示す。
図7の電子装置101cは、第1の配線基板1aの第1面上にパワー素子内蔵基板2a、放熱部材3aおよび放熱フィン(冷却器)3cがこの順に積層されている。各構成要素の接続は上記した方法を用いて行われる。また、本実施形態においては、前記パワー素子内蔵基板に内蔵されるパワー素子のゲートドライバ7aが、配線基板1aの第1面と反対側の第2面側に配置されている。ゲートドライバ7aは、パワー素子内蔵基板中に配置されているパワー素子のゲート電極のスイッチング動作を制御するための駆動回路を内蔵したICで構成される。本実施形態において、前記配線基板1aが第1面側にコネクタ8aを備えており、実装基板上に設けられたコネクタ挿入部(図示しない)にコネクタ8aを挿入することにより、モジュールユニット(配線基板)が実装基板111上に立設されている。
【0033】
(第3実施形態の効果)
第3の実施形態によれば、パワー素子内蔵基板と反対側の面(第2面)にゲートドライバが配置されているため、よりノイズが抑制された構成とすることができる。またさらに、パワー素子内蔵基板側に放熱部3aおよび放熱フィン(冷却器)が配置されているため、パワー素子内蔵基板で発生した熱をより良好に放熱することができる。さらに、実装基板11上に配線基板1aが立設されているため、実装基板11上の省スペース化も実現することができる。
【0034】
(第4実施形態)
図9は、第4実施形態にかかる電子装置101dを例示する模式的分解斜視図であり、
図10は模式的断面図を示す。
図9および
図10に示す電子装置101dは、ゲートドライバ7aが配線基板1aの第1面側に配置されている点で、
図7および
図8に示す電子装置101dと異なる。
【0035】
(第4実施形態の効果)
図9および
図10に示す電子装置101dによれば、配線基板の第1面側にパワー素子内蔵基板2aおよびゲートドライバ7aが配置され、放熱部材3aおよび放熱フィン(冷却器)3cがパワー素子内蔵基板上に配置されているため、ノイズを低減しつつ、パワー素子内蔵基板で発生した熱のゲートドライバへの影響を低減することができる。また、本実施形態においては、
図9および
図10に示すように、ゲートドライバ7aが、パワー素子内蔵基板2aよりも実装基板11に近い位置に配置されているのが好ましい。このような構成とすることにより、パワー素子内蔵基板で発生した熱が実装基板11の他の電子部品に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0036】
図18および
図19に、変形例1として、本開示の電子装置の他の態様を示す。
図18は配線基板1aが実装基板11に立設された状態を模式的に示す断面図、
図19が分解斜視図を示す。
図18および
図19に示すように、配線基板1aが、樹脂部14aとピン部14bおよび14cとを備える接続部材を用いて実装基板11に接続されている。
図18に示されるように、樹脂部14aには、Z方向に伸びて、配線基板1aと接続するピン部14bと、Y方向に伸びて実装基板11と接続するピン部14bとがそれぞれ挿入される形で接続されている。
【0037】
(実施形態5)
実施形態5として、
図15~17を用いて、電子装置内の構成要素同士の固定方法および電気的接続の一態様を説明する。
図15および
図16は、本実施形態にかかる電子装置101eを模式的に示す上面図および断面図である。
図16(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ
図15におけるA-A断面、B-B断面、C-C断面、D-D断面を示す。
図20および
図16に示すように、モジュールユニットのパワー素子内蔵基板と電源、他の部品、配線基板および/または実装基板とを接続するための入力ピン32a、出力ピン32b、およびGNDピン32cと、配線基板上の他の部品や配線基板とその他部品等とを接続するための電源ピン31aおよび信号ピン31bとが、配線基板1aを貫通する形で配置されている。本開示においては、入力ピン32a、出力ピン32bおよびGNDピン32cは、図示しない配線パターン等を用いて、パワー素子内蔵基板2a上の対応する電極パッド(信号パッド、電源パッド等)と電気的に接続されている。本開示においては、入力ピン32a、出力ピン32bおよびGNDピン32cが、平面視(上面視)でパワー素子内蔵基板の外周よりも外側で且つ外周近傍に位置しているのが好ましい。
【0038】
図17は、
図15および
図16の電子装置101eを模式的に示す分解斜視図である。
図17に示されるように、電子装置101eは、各電極ピン(入力ピン32a、出力ピン32b、GNDピン32c、信号ピン32a、電源ピン32b)が実装基板に挿入される形で実装されてよい。この場合、実装基板11上には、(図示しないが)各ピンに対応した孔が形成されている。電子装置101eにおけるモジュールユニットの実装基板への実装方法は、上述した構成に限定されない。
【0039】
図20および
図21は、変形例2にかかる電子装置101gを模式的に例示する断面図および分解斜視図である。
図20および
図21の電子装置101gでは、配線基板のパワー素子内蔵基板2aと反対側の面に、放熱部材3bおよびパワー素子内蔵基板2a内のパワー素子を制御するためのゲートドライバ7aが配置されている。
図20および
図21の電子装置101gによれば、モジュールユニットの両面側に放熱部材(金属ブロック)が配置されているため、より放熱性に優れた構成とすることができる。また、裏面側にも放熱部材が配置されているため、それぞれの放熱部材(金属ブロック)をより小型化することができる。さらに、
図20および
図21の電子装置101gによれば、モジュールユニットの裏面側にゲートドライバ7aが配置されているため、基板の面積を最小化しつつインダクタンスをより低減することができる。また、本開示においては、
図27のモジュールユニット10jのように、パワー素子内蔵基板2aとゲートドライバ7aとが平面視で(Y方向からみて)重ならない位置に配置されていてもよい。このように配置することにより、パワー素子内蔵基板2aから発生する熱によるゲートドライバ7aへの影響をより良好に低減することができる。なお、本開示においては、パワー素子内蔵基板2aおよびゲートドライバ7aが、平面視で(Z方向からみて)一部重なっていてもよい。平面視で重なる割合が少なければ(例えば、平面視でパワー素子内蔵基板の面積の50%以下、好ましくは30%以下)、熱の影響を低減することができる。
【0040】
上述した本発明の実施形態に係るモジュールユニット(または電子装置)は、上記した機能を発揮させるべく、インバータやコンバータなどの電力変換装置に適用することができる。
図11は、本発明の実施形態に係るモジュールユニット(または電子装置)を用いた制御システムの一例を示すブロック構成図、
図12は同制御システムの回路図であり、特に電気自動車(Electric Vehicle)への搭載に適した制御システムである。
【0041】
図11に示すように、制御システム500はバッテリー(電源)501、昇圧コンバータ502、降圧コンバータ503、インバータ504、モータ(駆動対象)505、駆動制御部506を有し、これらは電気自動車に搭載されてなる。バッテリー501は例えばニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの蓄電池からなり、給電ステーションでの充電あるいは減速時の回生エネルギーなどにより電力を貯蔵するとともに、電気自動車の走行系や電装系の動作に必要となる直流電圧を出力することができる。昇圧コンバータ502は例えばチョッパ回路を搭載した電圧変換装置であり、バッテリー501から供給される例えば200Vの直流電圧を、チョッパ回路のスイッチング動作により例えば650Vに昇圧して、モータなどの走行系に出力することができる。降圧コンバータ503も同様にチョッパ回路を搭載した電圧変換装置であるが、バッテリー501から供給される例えば200Vの直流電圧を、例えば12V程度に降圧することで、パワーウインドーやパワーステアリング、あるいは車載の電気機器などを含む電装系に出力することができる。
【0042】
インバータ504は、昇圧コンバータ502から供給される直流電圧をスイッチング動作により三相の交流電圧に変換してモータ505に出力する。モータ505は電気自動車の走行系を構成する三相交流モータであり、インバータ504から出力される三相の交流電圧によって回転駆動され、その回転駆動力を図示しないトランスミッション等を介して電気自動車の車輪に伝達する。
【0043】
一方、図示しない各種センサを用いて、走行中の電気自動車から車輪の回転数やトルク、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル量)などの実測値が計測され、これらの計測信号が駆動制御部506に入力される。また同時に、インバータ504の出力電圧値も駆動制御部506に入力される。駆動制御部506はCPU(Central Processing Unit)などの演算部やメモリなどのデータ保存部を備えたコントローラの機能を有するもので、入力された計測信号を用いて制御信号を生成してインバータ504にフィードバック信号として出力することで、スイッチング素子によるスイッチング動作を制御する。これによって、インバータ504がモータ505に与える交流電圧が瞬時に補正されることで、電気自動車の運転制御を正確に実行させることができ、電気自動車の安全・快適な動作が実現する。なお、駆動制御部506からのフィードバック信号を昇圧コンバータ502に与えることで、インバータ504への出力電圧を制御することも可能である。
【0044】
図12は、
図11における降圧コンバータ503を除いた回路構成、すなわちモータ505を駆動するための構成のみを示した回路構成である。同図に示されるように、本発明の実施形態に係るモジュールユニット(または電子装置)は、例えばショットキーバリアダイオードとして昇圧コンバータ502およびインバータ504に採用されることでスイッチング制御に供される。昇圧コンバータ502においてはチョッパ回路に組み込まれてチョッパ制御を行い、またインバータ504においてはIGBTを含むスイッチング回路に組み込まれてスイッチング制御を行う。なお、バッテリー501の出力にインダクタ(コイルなど)を介在させることで電流の安定化を図り、またバッテリー501、昇圧コンバータ502、インバータ504のそれぞれの間にキャパシタ(電解コンデンサなど)を介在させることで電圧の安定化を図っている。
【0045】
また、
図12中に点線で示すように、駆動制御部506内にはCPU(Central Processing Unit)からなる演算部507と不揮発性メモリからなる記憶部508が設けられている。駆動制御部506に入力された信号は演算部507に与えられ、プログラムされた演算を必要に応じて行うことで各半導体素子に対するフィードバック信号を生成する。また記憶部508は、演算部507による演算結果を一時的に保持したり、駆動制御に必要な物理定数や関数などをテーブルの形で蓄積して演算部507に適宜出力する。演算部507や記憶部508は公知の構成を採用することができ、その処理能力等も任意に選定できる。
【0046】
図11や
図12に示されるように、制御システム500においては、昇圧コンバータ502、降圧コンバータ503、インバータ504のスイッチング動作にはダイオードやスイッチング素子であるサイリスタ、パワートランジスタ、IGBT、MOSFET等が用いられる。これらの半導体素子に酸化ガリウム(Ga
2O
3)、特にコランダム型酸化ガリウム(α-Ga
2O
3)をその材料として用いることでスイッチング特性が大幅に向上する。さらに、本発明の実施形態に係る半導体装置を適用することで、極めて良好なスイッチング特性が期待できるとともに、制御システム500の一層の小型化やコスト低減が実現可能となる。すなわち、昇圧コンバータ502、降圧コンバータ503、インバータ504のそれぞれが本発明による効果を期待できるものとなり、これらのいずれか一つ、もしくは任意の二つ以上の組合せ、あるいは駆動制御部506も含めた形態のいずれにおいても本発明の効果を期待することができる。
【0047】
なお、上述の制御システム500は本発明の実施形態に係るモジュールユニット(または電子装置)を電気自動車の制御システムに適用できるだけではなく、直流電源からの電力を昇圧・降圧したり、直流から交流へ電力変換するといったあらゆる用途の制御システムに適用することが可能である。また、バッテリーとして太陽電池などの電源を用いることも可能である。
【0048】
図13は、本発明の実施形態に係るモジュールユニット(または電子装置)を採用した制御システムの他の例を示すブロック構成図、
図14は同制御システムの回路図であり、交流電源からの電力で動作するインフラ機器や家電機器等への搭載に適した制御システムである。
【0049】
図13に示すように、制御システム600は、外部の例えば三相交流電源(電源)601から供給される電力を入力するもので、AC/DCコンバータ602、インバータ604、モータ(駆動対)605、駆動制御部606を有し、これらは様々な機器(後述する)に搭載することができる。三相交流電源601は、例えば電力会社の発電施設(火力発電所、水力発電所、地熱発電所、原子力発電所など)であり、その出力は変電所を介して降圧されながら交流電圧として供給される。また、例えば自家発電機等の形態でビル内や近隣施設内に設置されて電力ケーブルで供給される。AC/DCコンバータ602は交流電圧を直流電圧に変換する電圧変換装置であり、三相交流電源601から供給される100Vや200Vの交流電圧を所定の直流電圧に変換する。具体的には、電圧変換により3.3Vや5V、あるいは12Vといった、一般的に用いられる所望の直流電圧に変換される。駆動対象がモータである場合には12Vへの変換が行われる。なお、三相交流電源に代えて単相交流電源を採用することも可能であり、その場合にはAC/DCコンバータを単相入力のものとすれば同様のシステム構成とすることができる。
【0050】
インバータ604は、AC/DCコンバータ602から供給される直流電圧をスイッチング動作により三相の交流電圧に変換してモータ605に出力する。モータ604は、制御対象によりその形態が異なるが、制御対象が電車の場合には車輪を、工場設備の場合にはポンプや各種動力源を、家電機器の場合にはコンプレッサなどを駆動するための三相交流モータであり、インバータ604から出力される三相の交流電圧によって回転駆動され、その回転駆動力を図示しない駆動対象に伝達する。
【0051】
なお、例えば家電機器においてはAC/DCコンバータ602から出力される直流電圧をそのまま供給することが可能な駆動対象も多く(例えばパソコン、LED照明機器、映像機器、音響機器など)、その場合には制御システム600にインバータ604は不要となり、
図20中に示すように、AC/DCコンバータ602から駆動対象に直流電圧を供給する。この場合、例えばパソコンなどには3.3Vの直流電圧が、LED照明機器などには5Vの直流電圧が供給される。
【0052】
一方、図示しない各種センサを用いて、駆動対象の回転数やトルク、あるいは駆動対象の周辺環境の温度や流量などといった実測値が計測され、これらの計測信号が駆動制御部606に入力される。また同時に、インバータ604の出力電圧値も駆動制御部606に入力される。これらの計測信号をもとに、駆動制御部606はインバータ604にフィードバック信号を与え、スイッチング素子によるスイッチング動作を制御する。これによって、インバータ604がモータ605に与える交流電圧が瞬時に補正されることで、駆動対象の運転制御を正確に実行させることができ、駆動対象の安定した動作が実現する。また、上述のように、駆動対象が直流電圧で駆動可能な場合には、インバータへのフィードバックに代えてAC/DCコンバータ602をフィードバック制御することも可能である。
【0053】
図14は、
図13の回路構成を示したものである。同図に示されるように、本発明の実施形態に係る半導体装置は、例えばショットキーバリアダイオードとしてAC/DCコンバータ602およびインバータ604に採用されることでスイッチング制御に供される。AC/DCコンバータ602は、例えばショットキーバリアダイオードをブリッジ状に回路構成したものが用いられ、入力電圧の負電圧分を正電圧に変換整流することで直流変換を行う。またインバータ604においてはIGBTにおけるスイッチング回路に組み込まれてスイッチング制御を行う。なお、AC/DCコンバータ602とインバータ604の間にキャパシタ(電解コンデンサなど)を介在させることで電圧の安定化を図っている。
【0054】
また、
図14中に点線で示すように、駆動制御部606内にはCPUからなる演算部607と不揮発性メモリからなる記憶部608が設けられている。駆動制御部606に入力された信号は演算部607に与えられ、プログラムされた演算を必要に応じて行うことで各半導体素子に対するフィードバック信号を生成する。また記憶部608は、演算部607による演算結果を一時的に保持したり、駆動制御に必要な物理定数や関数などをテーブルの形で蓄積して演算部607に適宜出力する。演算部607や記憶部608は公知の構成を採用することができ、その処理能力等も任意に選定できる。
【0055】
このような制御システム600においても、
図11や
図12に示した制御システム500と同様に、AC/DCコンバータ602やインバータ604の整流動作やスイッチング動作にはダイオードやスイッチング素子であるサイリスタ、パワートランジスタ、IGBT、MOSFET等が用いられる。これら半導体素子に酸化ガリウム(Ga
2O
3)、特にコランダム型酸化ガリウム(α-Ga
2O
3)をその材料として用いることでスイッチング特性が向上する。さらに、本発明の実施形態に係る半導体装置を適用することで、極めて良好なスイッチング特性が期待できるとともに、制御システム600の一層の小型化やコスト低減が実現可能となる。すなわち、AC/DCコンバータ602、インバータ604のそれぞれが本発明による効果を期待できるものとなり、これらのいずれか一つ、もしくは組合せ、あるいは駆動制御部606も含めた形態のいずれにおいても本発明の効果を期待することができる。
【0056】
なお、
図13および
図14では駆動対象としてモータ605を例示したが、駆動対象は必ずしも機械的に動作するものに限られず、交流電圧を必要とする多くの機器を対象とすることができる。制御システム600においては、交流電源から電力を入力して駆動対象を駆動する限りにおいては適用が可能であり、インフラ機器(例えばビルや工場等の電力設備、通信設備、交通管制機器、上下水処理設備、システム機器、省力機器、電車など)や家電機器(例えば、冷蔵庫、洗濯機、パソコン、LED照明機器、映像機器、音響機器など)といった機器を対象とした駆動制御のために搭載することができる。
【0057】
[付記]
以上のように、本実施形態は以下のような開示を含む。
(付記1)
配線基板と、該配線基板上に実装されているパワー素子内蔵基板とを備えるモジュールユニットと、実装基板とを備え、前記モジュールユニットは、前記配線基板が前記実装基板と平行または略平行となるように前記実装基板上に実装されており、前記配線基板の前記パワー素子内蔵基板側に、前記パワー素子内蔵基板からの熱を放熱するための放熱部材が配置されている、電子装置。
(付記2)
第1の配線基板と、該第1の配線基板上に実装されている第1のパワー素子内蔵基板とを備える第1のモジュールユニットと、第2の配線基板と、該第2の配線基板上に実装されている第2のパワー素子内蔵基板とを備える第2のモジュールユニットと、実装基板とを備え、前記第1のモジュールユニットは、前記第1の配線基板が前記実装基板と平行または略平行となるように実装されており、前記第1のモジュールユニット上に、前記第2のモジュールユニットが積層されている、電子装置。
(付記3)
配線基板と、該配線基板上に実装されているパワー素子内蔵基板およびゲートドライバとを備えるモジュールユニットと、実装基板とを備え、前記モジュールユニットは、前記実装基板上に立設されており、前記パワー素子内蔵基板および前記ゲートドライバが、前記配線基板の第1面側に配置されており、前記配線基板の前記第1面側に、前記パワー素子内蔵基板からの熱を放熱するための放熱部材が配置されている、電子装置。
(付記4)
配線基板と、該配線基板上に実装されているパワー素子内蔵基板およびゲートドライバとを有するモジュールユニットと、実装基板とを備え、前記モジュールユニットは前記実装基板上に立設されており、前記パワー素子内蔵基板が前記配線基板の第1面側に配置されており、前記ゲートドライバが前記配線基板の第1面側と反対側の第2面側に配置されている、電子装置。
(付記5)
前記パワー素子内蔵基板は、第1の配線層と、保持層と、前記第1の配線層と前記保持層との間に位置する絶縁層と、パワー素子とを備え、前記パワー素子が前記絶縁層に埋め込まれている付記1~4のいずれかに記載の電子装置。
(付記6)
前記パワー素子は、電力変換回路の一部を構成するものである付記5記載の電子装置。
(付記7)
さらにゲートドライバが前記配線基板上に実装されている付記1または2に記載の電子装置。
(付記8)
さらに、他の配線基板と該他の配線基板上に実装されているゲートドライバとを備えるドライバユニットを備え、該ドライバユニットが前記モジュールユニット上に積層されている付記1または2に記載の電子装置。
(付記9)
さらに第1の配線基板上に第1のゲートドライバを備え、第2の配線基板上に第2のゲートドライバを備える付記2記載の電子装置。
(付記10)
さらに、第3の配線基板と該第3の配線基板上に実装されているゲートドライバとを備えるドライバユニットを備え、前記ドライバユニットが、前記第1の配線基板上または前記第2の配線基板上に積層されている付記2記載の電子装置。
(付記11)
前記放熱部材が、冷却器に接続されている付記1~10のいずれかに記載の電子装置。
(付記12)
前記配線基板のパワー素子内蔵基板上に、前記パワー素子内蔵基板の熱を放熱するための放熱部材が配置されている付記2または4に記載の電子装置。
【符号の説明】
【0058】
1a、1b 配線基板
2a、2b 部品内蔵パワーモジュール
3a、3b 金属ブロック(放熱部材)
3c 放熱フィン(冷却器)
3d 放熱部材
4a、4b 絶縁部材
5a、5b 凹部
6 グランド電極
7a、7b ゲートドライバ
8a コネクタ
8b コネクタ挿入部
11 実装基板
12 受動部品
14a 樹脂部
14b ピン部
14c ピン部
31a 電源ピン
31b 信号ピン
32a 入力ピン
32b 出力ピン
32c GNDピン
101a、101b トランジスタ
102a、102b ダイオード
111 第1の配線層(上部配線層)
112 保持層(第2の配線層/下部配線層)
115 絶縁体
117 導電ビア
118 基材
119a 絶縁保護層
119b 絶縁保護層
120 スルーホール
111a 接着層(導電性接着層)
111b 接着層(導電性接着層)
【手続補正書】
【提出日】2023-12-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板と、該配線基板上に実装されているパワー素子内蔵基板とを備えるモジュールユニットと、実装基板とを備え、
前記モジュールユニットは、前記配線基板が前記実装基板と平行または略平行となるように前記実装基板上に実装されており、前記配線基板の前記パワー素子内蔵基板側に、前記パワー素子内蔵基板からの熱を放熱するための放熱部材が配置され、前記放熱部材が金属材料またはその複合材料で構成されている、電子装置。
【請求項2】
前記配線基板と、前記実装基板がコネクタにより接続されている請求項1の電子装置。
【請求項3】
配線基板と、該配線基板上に実装されているパワー素子内蔵基板およびゲートドライバとを備えるモジュールユニットと、実装基板とを備え、
前記モジュールユニットは、前記実装基板上に立設されており、前記パワー素子内蔵基板および前記ゲートドライバが、前記配線基板の第1面側に配置されており、前記配線基板の前記第1面側に、前記パワー素子内蔵基板からの熱を放熱するための放熱部材が配置されている、電子装置。
【請求項4】
前記パワー素子内蔵基板は、第1の配線層と、保持層と、前記第1の配線層と前記保持層との間に位置する絶縁層と、パワー素子とを備え、前記パワー素子が前記絶縁層に埋め込まれている請求項1~3のいずれかに記載の電子装置。
【請求項5】
前記パワー素子は、電力変換回路の一部を構成するものである請求項4記載の電子装置。
【請求項6】
さらにゲートドライバが前記配線基板上に実装されている請求項1または2記載の電子装置。
【請求項7】
さらに、他の配線基板と該他の配線基板上に実装されているゲートドライバとを備えるドライバユニットを備え、該ドライバユニットが前記モジュールユニット上に積層されている請求項1または2記載の電子装置。
【請求項8】
前記放熱部材が、冷却器に接続されている請求項1~3のいずれかに記載の電子装置。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板と、該配線基板上に実装されているパワー素子内蔵基板とを備えるモジュールユニットと、実装基板と、前記配線基板上に実装されているゲートドライバと、を備え、
前記モジュールユニットは、前記配線基板が前記実装基板と平行または略平行となるように前記実装基板上に実装されており、前記配線基板の前記パワー素子内蔵基板側に、前記パワー素子内蔵基板からの熱を放熱するための放熱部材が配置され、前記放熱部材が金属材料またはその複合材料で構成されている、電子装置。
【請求項2】
前記配線基板と、前記実装基板がコネクタにより接続されている請求項1の電子装置。
【請求項3】
配線基板と、該配線基板上に実装されているパワー素子内蔵基板およびゲートドライバとを備えるモジュールユニットと、実装基板とを備え、
前記モジュールユニットは、前記実装基板上に立設されており、前記パワー素子内蔵基板および前記ゲートドライバが、前記配線基板の第1面側に配置されており、前記配線基板の前記第1面側に、前記パワー素子内蔵基板からの熱を放熱するための放熱部材が配置されている、電子装置。
【請求項4】
前記パワー素子内蔵基板は、第1の配線層と、保持層と、前記第1の配線層と前記保持層との間に位置する絶縁層と、パワー素子とを備え、前記パワー素子が前記絶縁層に埋め込まれている請求項1~3のいずれかに記載の電子装置。
【請求項5】
前記パワー素子は、電力変換回路の一部を構成するものである請求項4記載の電子装置。
【請求項6】
さらに、他の配線基板と該他の配線基板上に実装されているゲートドライバとを備えるドライバユニットを備え、該ドライバユニットが前記モジュールユニット上に積層されている請求項1または2記載の電子装置。
【請求項7】
前記放熱部材が、冷却器に接続されている請求項1~3のいずれかに記載の電子装置。