(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113368
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】粒子及びその用途
(51)【国際特許分類】
C08L 33/02 20060101AFI20240815BHJP
C08F 220/04 20060101ALI20240815BHJP
C09K 21/02 20060101ALI20240815BHJP
C09K 21/08 20060101ALI20240815BHJP
C09K 21/12 20060101ALI20240815BHJP
B01J 13/16 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
C08L33/02
C08F220/04
C09K21/02
C09K21/08
C09K21/12
B01J13/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018300
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】備前 亮介
【テーマコード(参考)】
4G005
4H028
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4G005AA01
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(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、高温条件における難燃剤の保持性に優れ、触感に優れる成形体を製造可能な粒子を提供することである。
【解決手段】 (第一の形態の粒子)重合体を含む外殻と、それに内包される難燃剤とを含む粒子であって、前記重合体が重合性成分の重合体であり、前記重合性成分が下記単量体(A)と、下記単量体(B)及び下記単量体(F)のうちの少なくとも1つを含む、粒子。
単量体(A):重合性炭素-炭素二重結合を1つ有するカルボキシル基含有単量体
単量体(B):重合性炭素-炭素二重結合を1つと、前記カルボキシル基と反応する基を有する単量体
単量体(F):重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体を含む外殻と、それに内包される難燃剤とを含む粒子であって、
前記重合体が重合性成分の重合体であり、
前記重合性成分が下記単量体(A)と、下記単量体(B)及び下記単量体(F)のうちの少なくとも1つを含む、粒子。
単量体(A):重合性炭素-炭素二重結合を1つ有するカルボキシル基含有単量体
単量体(B):重合性炭素-炭素二重結合を1つと、前記カルボキシル基と反応する基を有する単量体
単量体(F):重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体
【請求項2】
前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が5~90重量%であり、前記単量体(B)及び前記単量体(F)の重量割合の合計が0.01~50重量%である、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記重合性成分がさらに下記単量体(C)~(E)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の粒子。
単量体(C):重合性炭素-炭素二重結合を1つ有するニトリル系単量体
単量体(D):重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体
単量体(E):重合性炭素-炭素二重結合を1つ有するスチレン系単量体
【請求項4】
重合体を含む外殻と、それに内包される難燃剤とを含む粒子であって、
温度200℃で10分間静置した際の難燃剤保持率が75重量%以上である、粒子。
【請求項5】
重合体を含む外殻と、それに内包される難燃剤とを含む粒子であって、
メチルエチルケトンによるゲル分率が50%以上である、粒子。
【請求項6】
前記難燃剤が、有機リン化合物、有機ハロゲン化合物、及び無機化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1、2、4又は5に記載の粒子。
【請求項7】
請求項1、2、4又は5に記載の粒子と基材成分を含む、組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の組成物を成形してなる、成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、樹脂組成物に難熱性を付与するために、有機ハロゲン化合物や有機リン化合物等の難燃性化合物を部材に配合する手法が広く採用されている。
しかしながら、上記のような難燃剤は、加熱によって生じる分解ガスによって、周囲の金属材料が腐食したり、あるいは強い刺激臭が発生してしまう。また、難燃剤により樹脂材料が可塑化され、部材の機械的性質や熱的性質等の低下も問題となる。更に、難燃剤の経時的な部材表面へのブリードアウトによる難燃性の低下を防ぐために、難燃剤を多量に添加する必要がある。
このような樹脂組成物の難燃化における問題を解決するために、樹脂組成物を製造する際に、ハロゲン化合物やリン化合物からなる単量体を共重合体成分として導入し、樹脂組成物に内包することも検討されているが、得られる樹脂組成物に十分な難燃性を付与するためには、樹脂組成物に上記の難燃性共重合体成分を多量に添加する必要があり、結果として、部材が本来有する望ましい性質が失われることもある。
そこで、このような問題を解決するために、難燃剤を内包させた粒子を配合して、部材の難燃化を図る方法が提案されている。
【0003】
たとえば特許文献1および2ではアクリロニトリル、メタクリル酸メチル等の単量体に難燃剤を溶解しこれを懸濁重合させて、難燃剤を内包したマイクロカプセルが例示されている。
さらに、特許文献3ではゼラチンもしくはゼラチン/アラビアゴム水溶液に難燃剤を均一に混合し、ついでpHを酸性にして冷却することで、難燃剤を内包したマイクロカプセルが例示されている。
また、特許文献4では常温で液状の難燃剤に多価イソシアネートを溶解し、このようにして得られた油相を水相中に油滴として分散させ、次いで、このエマルジョンの水相に多価アミンを加え、溶解させることによって、水相と油相との界面において多価イソシアネートと多価アミンの間で重付加反応させるか、又は上記エマルジョンを加温することによって、水相と油層との界面において多価イソシアネートと水との間で重付加反応させることで、難燃剤を内包したマイクロカプセル化難燃剤が例示されている。
また、特許文献5では微細な粉末とした難燃剤を水中に分散し、pHを3~7に保ちながらメラミン-ホルムアルデヒド樹脂もしくはその変成樹脂を滴下することで、難燃剤を内包したマイクロカプセルが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭55-118988号公報
【特許文献2】特開昭55-122075号公報
【特許文献3】特開昭61-179241号公報
【特許文献4】特開平7-26153号公報
【特許文献5】特開昭52-119653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1~5で例示されるマイクロカプセルは耐熱性が十分ではなく、高温条件において内包する難燃剤がブリードアウトすることが確認された。さらに、そのマイクロカプセルを使用して成形体を製造する際に、マイクロカプセルから難燃剤の漏えいし、成形体のべたつきが発生するなど触感が損なわれることが確認された。
本発明の目的は、高温条件における難燃剤の保持性に優れ、触感に優れる成形体を製造可能な粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、特定の粒子であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の第一の態様の粒子は、重合体を含む外殻と、それに内包される難燃剤とを含む粒子であって、前記重合体が重合性成分の重合体であり、前記重合性成分が下記単量体(B)及び下記単量体(F)のうちの少なくとも1つを含むものである。
単量体(A):重合性炭素-炭素二重結合を1つ有するカルボキシル基含有単量体
単量体(B):重合性炭素-炭素二重結合を1つと、前記カルボキシル基と反応する基を有する単量体
単量体(F):重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体
【0007】
本発明の第1の態様の粒子は、下記1)~2)のうちの少なくとも1つを満たすと好ましい。
1)前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が5~90重量%であり、前記単量体(B)及び前記単量体(F)の重量割合の合計が0.01~50重量%である。
2)前記重合性成分がさらに下記単量体(C)~(E)のうちの少なくとも1つを含む。
単量体(C):重合性炭素-炭素二重結合を1つ有するニトリル系単量体
単量体(D):重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体
単量体(E):重合性炭素-炭素二重結合を1つ有するスチレン系単量体
【0008】
さらに、本発明の第2の態様の粒子は、重合体を含む外殻と、それに内包される難燃剤とを含む粒子であって、温度200℃で10分間静置した際の難燃剤保持率が75重量%以上であるものである。
【0009】
また、本発明の第3の態様の粒子は、重合体を含む外殻と、それに内包される難燃剤とを含む粒子であって、メチルエチルケトンによるゲル分率が50%以上であるものである。
【0010】
本発明の粒子は、前記難燃剤が、有機リン化合物、有機ハロゲン化合物、及び無機化合物から選ばれる少なくとも1種を含むと好ましい。
【0011】
本発明の組成物は、上記粒子と、基材成分を含む。
本発明の成形体は、上記組成物を成形してなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の粒子は、高温条件における難燃剤の保持性に優れ、べたつきが抑えられた触感に優れる成形体を製造できる。
本発明の組成物は、上記粒子含むため、べたつきが抑えられ、触感や難燃性に優れた成形体を製造できる。
本発明の成形体は、べたつきが抑えられ、優れた触感や難燃性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の粒子は、重合体を含む外殻と、その外殻に内包される難燃剤とを含むものであり、難燃性を付与することができるものである。また、本発明の粒子自体も難燃性を有するものである。以下、本発明の粒子について詳細に説明する。
なお、「本発明の粒子」とは、後述する本発明の第一、第二及び第三の態様の粒子を意味する。
【0015】
〔粒子〕
本発明の粒子において、難燃剤のブリードアウト抑制の効果をより高めるには、内部に1つ以上の独立した孔を有する構造であると好ましく、内部の孔に難燃剤を含む粒子であると好ましい。特に、
図1に示すように、重合体を含む外殻(シェル)1とそれに内包される難燃剤(コア)2とを含むコア-シェル構造を有する(カプセル状の)粒子であると、高いブリードアウト抑制効果が得られ、好ましい。また、外殻がそれを形成する重合体により連続した構造であると好ましい。
また、本発明の粒子は難燃剤のブリードアウトを抑制でき、得られる成形体において難燃剤より生じる臭気の発生も抑制することができる。
【0016】
本発明の第一の態様の粒子(以下、単に第一粒子ということがある)において、外殻を形成する重合体は重合性成分の重合体であり、重合性成分は下記単量体(A)を含み、且つ、下記単量体(B)及び下記単量体(F)のうちの少なくとも1つを含む。
単量体(A):重合性炭素-炭素二重結合を1つ有するカルボキシル基含有単量体
単量体(B):重合性炭素-炭素二重結合を1つと、前記カルボキシル基と反応する基を有する単量体
単量体(F):重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体
なお、重合性炭素-炭素二重結合は、ラジカル反応性を有する重合性炭素-炭素二重結合を意味する。
【0017】
本発明の第一粒子は、その外殻を形成する重合体が、前述の重合性成分の重合体であることで、外殻の極性が調整され、さらに緻密性や機械的強度が向上すると考えられ、高温条件において多量の難燃剤の染み出しや、粒子の潰れや凹みによる難燃剤の漏れを抑制することができ、難燃剤の保持性に優れ、べたつきが抑えられた触感に優れる成形体を製造可能となる。
【0018】
単量体(A)としては、遊離カルボキシル基を1分子当たり1個以上有するものであれば特に限定はないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸;不飽和ジカルボン酸の無水物;マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル等の不飽和ジカルボン酸モノエステル等を挙げることができる。単量体(A)は、その一部または全部のカルボキシル基が重合時や重合後に中和されていてもよい。これらの単量体(A)は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0019】
重合性成分に占める単量体(A)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5~90%である。該重量割合が5重量%以上であると外殻の極性を効率的に調整でき、90重量%以下であると外殻の強度が向上する傾向がある。該重量割合の下限は、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは15重量%、特に好ましくは20重量%、最も好ましくは25重量%である。一方、該重量割合の上限は、より好ましくは80重量%、さらに好ましくは75重量%、特に好ましくは70重量%である。
【0020】
単量体(B)が有するカルボキシル基と反応する基としては、例えば、水酸基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、アルデヒド基、アゾ基、ニトロ基、ニトロソ基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。
単量体(B)としては、例えば、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、アセトンアクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2-アセトアミドアクリル酸、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-ニトロフェニル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;アクロレイン等のアルデヒド系単量体;ビニルスルホン酸、N-t-ブチルアクリルアミドスルホン酸等のスルホン酸系単量体;ビニルホスホン酸等のリン酸系単量体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート;ビニルグリシジルエーテル;プロペニルグリシジルエーテル;グリシジル(メタ)アクリレート;グリセリンモノ(メタ)アクリレート;4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート;p-ヒドロキシスチレン等が挙げられる。なお、(メタ)アクリルの表記は、アクリル又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタクリレートを意味する。これらの単量体(B)は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0021】
単量体(F)は、得られる重合体に橋掛け構造(架橋構造)を導入することができるものである。
単量体(F)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、PEG#1000ジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#700ジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール#650ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコール#700ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;メタクリル酸アリル;トリアクリルホルマール;トリアリルイソシアネート;ブタジエン等を挙げることができる。これら単量体(B)は1種または2種以上を併用してもよい。なお本発明では、「PEG#○○○ジ(メタ)アクリレート」と表記されている一連の化合物は、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートで、そのポリエチレングリコール部分の平均分子量が○○○であることを意味する。
【0022】
重合性成分に占める単量体(B)及び前記単量体(F)の重量割合の合計は、特に限定はないが、好ましくは0.01~50重量%である。該重量割合が0.01重量%以上であると、外殻の緻密性が向上する傾向があり、該重量割合が50重量%以下であると、外殻の強度が向上する傾向がある。該重量割合の下限は、より好ましくは0.1重量%、さらに好ましくは0.3重量%、特に好ましくは0.5重量%、最も好ましくは1重量%である。一方、該重量割合の上限は、(1)40重量%、(2)30重量%、(3)20重量%、(4)15重量%、(5)10重量%、(6)7重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。なお、重合性成分が単量体(B)又は単量体(F)を含む場合、重合性成分に占める単量体(B)又は単量体(F)の重量割合は上記数値範囲となる。
【0023】
重合性成分が単量体(B)及び単量体(F)を含む場合、その重量比(B/F)は、特に限定はないが、好ましくは1/99~99/1、より好ましくは5/95~80/20、さらに好ましくは10/90~70/30、特に好ましくは15/95~60/40である。
【0024】
重合性成分は特に限定はないが、下記単量体(C)~(E)のうちの少なくとも1つをさらに含むと、外殻に柔軟性が付与され、機械的強度が向上する点で好ましい。
単量体(C):重合性炭素-炭素二重結合を1つ有するニトリル系単量体
単量体(D):重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体
単量体(E):重合性炭素-炭素二重結合を1つ有するスチレン系単量体
【0025】
単量体(C)はカルボキシル基と反応する基を有さない化合物である。
単量体(C)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロルアクリロニトリル、α-エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等が挙げられる。これらの単量体(C)は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0026】
単量体(D)はカルボキシル基と反応する基を有さない化合物である。
単量体(D)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-クロルエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単量体(C)は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0027】
単量体(E)はカルボキシル基と反応する基を有さない化合物である。
単量体(E)としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、p-ニトロスチレン、クロロメチルスチレン等が挙げられる。これらの単量体(E)は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0028】
重合性成分が単量体(C)~(E)のうちの少なくとも1つをさらに含む場合、重合性成分に占める単量体(C)~(E)の重量割合の合計は、特に限定はないが、好ましくは5~90重量%である。該重量割合が5重量%以上であると、十分な柔軟性が得られ、成形体を得る際に外殻の破断が抑制される傾向があり、該重量割合が90重量%以下であると、耐熱性、耐溶剤性が向上する傾向がある。該重量割合の下限は、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは15重量%、特に好ましくは20重量%である。一方、該単量体(B)の重量割合の上限は、より好ましくは80重量%、さらに好ましくは70重量%である。
【0029】
重合性成分が単量体(C)を含むと、耐熱性や耐溶剤性の点で好ましい。重合性成分が単量体(C)を含む場合、重合性成分に占める単量体(C)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5~90重量%である。該重量割合の下限は、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは15重量%である。一方、該重量割合の上限は、より好ましくは80重量%、さらに好ましくは70重量%である。
【0030】
重合性成分が単量体(D)を含むと、外殻の柔軟性が向上する点で好ましい。重合性成分が単量体(D)を含む場合、重合性成分に占める単量体(D)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5~90重量%である。該重量割合の下限は、より好ましくは10重量%である。一方、該重量割合の上限は、より好ましくは80重量%である。
【0031】
重合性成分が単量体(E)を含むと、外殻の緻密性が向上する点で好ましい。重合性成分が単量体(E)を含む場合、重合性成分に占める単量体(E)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5~90重量%である。該重量割合の下限は、より好ましくは10重量%である。一方、該重量割合の上限は、より好ましくは80重量%である。
【0032】
重合性成分は前述の単量体(A)~(F)以外の単量体(以下、単にその他の単量体ということがある)を含んでもよい。
その他の単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;塩化ビニリデン、塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等の不飽和モノオレフイン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニル-2-エチルヘキシルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、ビニル-4-ヒドロキシブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン系単量体;N-ビニルピロール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリドン等のN-ビニル系単量体、ビニルナフタリン塩等が挙げられる。
【0033】
本発明の粒子において、内包される難燃剤は粒子から放出されることで、難燃性を付与することができる成分である。
難燃剤としては、例えば、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等のリン酸エステル化合物や、アリールオキシシクロホスファゼン等のホスファゼン化合物等の有機リン化合物;テトラブロモビスフェノールA(TBBA)、デカブロモジフェニルエーテル(deca-BDE)、トリブロモフェノール、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、臭素化ポリエチレン、塩素化パラフィン等の有機ハロゲン化合物;メラミンシアヌレート;シリコーン;三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、赤燐、ポリリン酸アンモニウム等の無機化合物等が挙げられる。これら難燃剤は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0034】
難燃剤は、特に限定はないが、有機リン化合物、有機ハロゲン化合物、及び無機化合物から選ばれる少なくとも1種を含むと、効率的に難燃性を付与できる点で好ましい。
また、難燃剤は液状であってもよく、固体状であってもよい。難燃剤が液状であると、効率よく内包され、さらに効率的に粒子外に放出できる点で好ましい。
【0035】
本発明の粒子における難燃剤の含有量は、粒子全体に占める難燃剤の重量割合である。難燃剤の含有量は、特に限定はないが、好ましくは5~80重量%であると好ましい。該含有量が5重量%以上であると、十分な難燃性を付与できる傾向があり、該含有量が80重量%以下であると、難燃剤の漏出を抑制できる傾向がある。該含有量の下限は、(1)10重量%、(2)13重量%、(3)15重量%、(4)18重量%、(5)20重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。一方、該含有率の上限は、(1)75重量%、(2)70重量%、(3)65重量%、(4)60重量%、(5)55重量%、(6)50重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。なお、難燃剤の含有量は実施例に記載の方法で測定されたものを意味する。
【0036】
本発明の第二の態様の粒子(以下、単に第二粒子ということがある)は、前述のとおり重合体を含む外殻と、その外殻に内包される難燃剤とを含むものであり、200℃で10分間静置した際の難燃剤保持率が75重量%以上であるものである。
本発明の第二粒子の外殻を形成する重合体は、熱可塑性を有するものであってもよく、前述の単量体(A)~(F)及びその他の単量体から選ばれる少なくとも1種のような重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも1つ有する単量体を含む、特に前述の単量体(A)を必須に含むモノマー成分の重合体であってもよく、前述の重合性成分の重合体であってもよい。本願効果をより奏する点で、本発明の第二粒子の外殻を形成する重合体は前述の重合性成分の重合体であると好ましい。
【0037】
本発明の第二粒子は、温度200℃で10分間静置した際の難燃剤保持率が75重量%以上である。該保持率が75重量%未満であると、高温条件における難燃剤の保持性に劣り、得られる成形体の触感が損なわれる。該重量減少量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは85重量%以上である。
また、本発明の第一粒子及び後述する第三の態様の粒子のうちの少なくとも一つが、温度200℃で10分間静置した際の難燃剤保持率が上記範囲内であると好ましい。
なお、200℃で10分間静置した際の難燃剤保持率は実施例に記載の方法で測定されたものを意味する。
【0038】
本発明の第三の態様の粒子(以下、単に第三粒子ということがある)は、前述のとおり重合体を含む外殻と、その外殻に内包される難燃剤とを含むものであり、メチルエチルケトンによるゲル分率が50%以上であるものである。
本発明の第三粒子の外殻を形成する重合体は、熱可塑性を有するものであってもよく、前述の単量体(A)~(F)及びその他の単量体から選ばれる少なくとも1種のような重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも1つ有する単量体を含む、特に前述の単量体(A)を必須に含むモノマー成分の重合体であってもよく、前述の重合性成分の重合体であってもよい。本願効果をより奏する点で、本発明の第三粒子の外殻を形成する重合体は前述の重合性成分の重合体であると好ましい。
【0039】
本発明の第三粒子は、メチルエチルケトンによるゲル分率が50%以上である。該ゲル分率が50%未満であると、外殻の緻密性が低く、耐熱性や強度が低下し、高温条件における難燃剤の保持性に劣り、得られる成形体の触感が損なわれる。該ゲル分率は好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、特に好ましくは70%以上である。
また、本発明の第一粒子及び後述する第三の態様の粒子のうちの少なくとも一つにおいて、メチルエチルケトンによるゲル分率が上記範囲内であると好ましい。
なお、メチルエチルケトンによるゲル分率は実施例に記載の方法で測定されたものを意味する。
【0040】
本発明の粒子の平均粒子径は、特に限定はないが、好ましくは0.1~300μmである。該平均粒子径が0.1μm以上であると、外殻が十分な厚みを有し、難燃剤の内包保持性が向上する傾向がある。一方、該平均粒子径が300μm以下であると、粒子の潰れや凹みによる難燃剤の漏出を抑制できる傾向がある。該平均粒子径の下限は、(1)0.5μm、(2)1μm、(3)3μm、(4)5μm、(5)10μmの順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。一方、該平均粒子径の上限は、(1)200μm、(2)150μm、(3)120μm、(4)100μm、(5)75μm、(6)60μm、(7)50μm、(8)45μmの順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。なお、平均粒子径は実施例に記載の方法で測定されたものを意味する。
【0041】
本発明の粒子の内径(d1)と外径(d2)の比(d1/d2)は、特に限定はないが、好ましくは0.20~0.95である。該比が0.2以上であると、十分な難燃性を付与できる傾向があり、該比が0.95以下であると粒子の強度が向上する傾向がある。該比の下限は、より好ましくは0.25、さらに好ましくは0.30、特に好ましくは0.35、最も好ましくは0.40である。一方、該比の上限は、より好ましくは0.93、さらに好ましくは0.90、特に好ましくは0.87、最も好ましくは0.85である。なお、内径(d1)と外径(d2)の比(d1/d2)は、実施例に記載の方法で測定されたものを意味する。
【0042】
本発明の粒子の真比重は、特に限定はないが、好ましくは0.70~2.5である。該真比重が上記範囲内であると、難燃剤のブリードアウトをより効果的に抑制できる傾向がある。該真比重の上限は、より好ましくは2.0、さらに好ましくは1.8、特に好ましくは1.5である。一方、該真比重の下限は、より好ましくは0.80、さらに好ましくは0.90、特に好ましくは1.0である。なお、真比重は実施例に記載の方法で測定されたものを意味する。
【0043】
〔粒子の製造方法〕
本発明の粒子について、その製造方法は特に限定はないが、前述のモノマー成分又は重合性成分と、難燃剤とを分散させて、単量体成分又は重合性成分を重合させる工程(重合工程)を含む方法が挙げられる。重合工程は水性分散媒中にモノマー成分又は重合性成分と難燃剤を含む油性混合物を分散させ、重合性成分を重合させる工程である。
【0044】
(重合工程)
重合工程では、単量体成分又は重合性成分を重合開始剤の存在下で重合させることが好ましい。重合開始剤は、油性混合物に含まれるとよい。
重合開始剤としては、例えば、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド等の過酸化物;アゾニトリル、アゾエステル、アゾアミド、アゾアルキル、高分子アゾ開始剤等のアゾ化合物;レドックス開始剤等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、1種または2種以上を併用してもよい。なお重合開始剤としては、単量体成分又は重合性成分に対して可溶な油溶性の重合開始剤が好ましい。
使用する重合開始剤の量は、特に限定はないが、単量体成分又は重合性成分100重量部に対して、好ましく0.05~10重量部、より好ましくは0.1~8重量部、さらに好ましくは0.2~5重量部である。
【0045】
水性分散媒は、例えば、水(イオン交換水)に、必要に応じて、分散安定剤、分散安定補助剤、重合助剤、電解質等を配合して調製される。
本発明の粒子について、その製造方法としては、液滴を安定させ、粒子径を制御するために、分散安定剤を添加することが好ましい。分散安定剤としては、特に限定はないが、有機系分散安定剤及び/又は無機系分散安定剤であると好ましい。
有機系分散安定剤としては、例えば、微粒子安定剤や水溶性高分子、ナノセルロース等が挙げられる。微粒子安定剤としては、例えば、ピッカリングエマルションに用いられているものが挙げられる。水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸等が挙げられる。
無機系分散安定剤としては、例えば、粘土鉱物、第三リン酸カルシウム、複分解生成法により得られるピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウムや、コロイダルシリカ、アルミナゾル、水酸化マグネシウム等の無機化合物が挙げられる。
これらの分散安定剤は、1種または2種以上を併用してもよい。使用する分散安定剤の量は、油性混合物100重量部に対して、好ましくは0.05~100重量部、さらに好ましくは0.2~70重量部である。
【0046】
液滴の安定性および粒子径の制御のために、さらに分散安定補助剤を併用してもよい。分散安定補助剤としては、高分子タイプの分散安定補助剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤を挙げることができる。これらの分散安定補助剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0047】
水性分散媒は、電解質を含有してもよい。電解質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。これらの電解質は、1種または2種以上を併用してもよい。
電解質の含有量は、特に限定はないが、水性分散媒100重量部に対して、好ましくは0.1~50重量部である。
【0048】
水性分散媒は、重合助剤を含有してもよい。重合助剤を含有することで、粒子の凝集や重合反応器内のスケール発生(具体的には、重合性成分の重合において、重合物が粒子の外殻表面に強固に付着することによる凝集体や、重合反応器内壁への重合物の付着)を抑制することができる。
重合助剤としては、例えば、亜硝酸塩、亜硫酸ナトリウム、塩化銅、塩化鉄、重クロム酸塩、塩化第二スズ、ヒドロキノン、エチレンジアミン四酢酸塩、水溶性アスコルビン酸類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ビタミンB類等が挙げられる。これらの重合助剤は1種または2種以上を併用してもよい。
【0049】
重合工程では、所定粒子径の球状油滴が調製されるように油性混合物を水性分散媒中に分散させる。油性混合物を分散させる方法としては、例えば、ホモミキサー(例えば、プライミクス社製)等により攪拌する方法や、スタティックミキサー(例えば、株式会社ノリタケエンジニアリング社製)等の静止型分散装置を用いる方法、膜懸濁法、超音波分散法等の一般的な分散方法を挙げることができる。
次いで、油性混合物が球状油滴として水性分散媒に分散された分散液を加熱することにより、重合を行う。重合反応中は、分散液を攪拌するのが好ましく、その攪拌は、例えば、油性混合物や重合後の粒子の浮上や沈降を防止できる程度に緩く行えばよい。
【0050】
重合温度は、重合開始剤の種類によって自由に設定されるが、好ましくは30~100℃、より好ましくは40~90℃の範囲で制御されるとよい。反応温度を保持する時間は、1~20時間程度が好ましい。重合初期圧力については、特に限定はないが、ゲージ圧で好ましくは0~5MPa、より好ましくは0.02~3MPaの範囲であるとよい。
【0051】
本発明の粒子は、スラリーの状態でもよく、湿粉の状態でもよく、乾燥した粉末の状態でもよい。本発明の粒子が湿粉の状態のものである場合、例えば、前述の製造方法によって得られた粒子を含有するスラリーを遠心分離機、加圧プレス機、真空脱水機等を用いて脱水し、得ることができる。このような湿粉の含水率は、特に限定はないが、通常10~50重量%、好ましくは15~45重量%、より好ましくは20~40重量%である。
また、上記で得られた湿粉を、棚型乾燥機、間接加熱乾燥機、流動乾燥機、真空乾燥機、振動乾燥機、気流乾燥機等により乾燥し、乾燥粉末とすることができる。また、スラリーを噴霧乾燥機、流動乾燥機等により乾燥し、乾燥した粉末を得てもよい。
【0052】
本発明の粒子について、その製造方法は上記で説明した方法以外にも、例えば、界面重合法、逆相乳化法、乳化重合法等が挙げられる。また水性分散媒中で液滴を作製しない方法として、例えば、液中乾燥法、コアセルベーション法、噴霧乾燥法、乾式混合法等が挙げられる。
【0053】
〔組成物及び成形物〕
本発明の組成物は、上記で説明した粒子と、基材成分を含むものであり、優れた難燃性を有する成形体を得ることができる。
基材成分としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ポリエーテルゴム、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等のゴム類;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミドイミド等の熱硬化性樹脂;ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等のワックス類;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン(PE)、変性ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、変性ポリプロピレン、変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);アクリル樹脂;熱可塑性ポリウレタン;アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂);ポリスチレン(PS);(メタ)アクリレート・スチレン共重合体;ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66等);変性ポリアミド;ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルホン、ポリフタルアミド等のエンジニアリングプラスチック;フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂;エチレン系アイオノマー、ウレタン系アイオノマー、スチレン系アイオノマー、フッ素系アイオノマー等のアイオノマー樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;ポリ乳酸(PLA)、酢酸セルロース、PBS、PHA、澱粉樹脂等のバイオプラスチック;液晶ポリマー等が挙げられる。これらの基材成分は、1または2種以上を併用してもよい。
また、本発明の組成物は、上記で説明した粒子と基材成分以外に、用途に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、充填剤、可塑剤、顔料、帯電防止剤等の添加剤、溶剤、潤滑剤、本発明の粒子以外の有機粉末、無機粉末等を含んでいてもよい。
【0054】
本発明の組成物に含まれる粒子の量は、特に限定はないが、基材成分100重量部に対して、好ましくは0.1~600重量部である。該含有量が上記範囲内であると、十分な難燃性を有する成形体を得ることができる傾向がある。該含有量の下限は、より好ましくは0.3重量部、さらに好ましくは0.5重量部、特に好ましくは1重量部、最も好ましくは3重量部である。一方、該含有量の上限は、より好ましくは400重量部、さらに好ましくは200重量部、特に好ましくは100重量部である。
【0055】
本発明の組成物は、上記で説明した粒子、基材成分および必要に応じて各種添加剤を混合することで得られる。また、上記で説明した粒子と基材成分を含む組成物を作成した後、さらに基材成分と混合して組成物とすることもできる。また、粒子と比較的融点の低い基材成分を含む組成物を作成した後、さらに基材成分とを混合した組成物とすることで、良好な粒子の分散性を有するものとできるため、好ましい。比較的低い融点としては、特に限定はないが、好ましくは50~200℃、より好ましくは50~170℃、さらに好ましくは50~140℃、特に好ましくは50~110℃、最も好ましくは50~80℃である。
【0056】
本発明の組成物は液状又はペースト状であってもよい。本発明の組成物が液状又はペースト状であると、塗料用組成物、接着剤用組成物、粘着剤用組成物、電気絶縁ワニス用組成物等として使用することができる。
【0057】
混合方法は、例えば、混合攪拌機、ミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンミキサー、リボンブレンダー、ニーダー、ロール、ミキシングロール、単軸混練機、二軸混練機、多軸混練機等により混合することができる。
【0058】
本発明の成形体は、上記で説明した組成物を成形してなるものである。
成形方法としては、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の違いにより、押出成形法、射出成形法、真空成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、トランスファー成形法、RIM成形、注型成形法等の一般的に用いられている成形方法を適宜、採用することができる。
本発明の成形体に含まれる上記で説明した粒子の量は、特に限定はないが、基材成分100重量部に対して、好ましくは0.1~100重量部である。該含有量の上限は、より好ましくは80重量部、さらに好ましくは50重量部、特に好ましくは40重量部である。一方、該含有量の下限は、より好ましくは0.3重量部、さらに好ましくは0.5重量部、特に好ましくは1重量部、最も好ましくは3重量部である。
【0059】
本発明の成形体は、優れた難燃性を有するため、織布、編物、カーペット地、不織布等の各種繊維製品や、自動車分野;建材分野;OA機器分野;家電分野;電子機器分野等の様々な部材として、工業的に広く利用することができる。
【実施例0060】
以下に、本発明の粒子の実施例について、具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における物性の測定方法、評価項目と評価方法は以下に示すとおりである。また、以下の実施例及び比較例において、断りのない限り、「%」とは「重量%」を意味するものであり、「部」とは「重量部」を意味するものである。
【0061】
[粒子の平均粒子径]
マイクロトラック粒度分布計(型式9320-HRA、日機装株式会社製)を使用し、体積基準測定によるD50値を粒子の平均粒子径とした。
【0062】
[粒子の真比重(D1)の測定]
イソプロピルアルコールを用いて、浸液式ピクノメータ法により25℃における粒子の真比重(D1)を測定した。
【0063】
[難燃剤の内包率の測定]
粒子1.0gを直径80mm、深さ15mmのステンレス製蒸発皿に入れ、その重量を測定した(W1(g))。N,N-ジメチルホルムアミド30mLを加え均一に分散させ、24時間室温で放置した後に、130℃で2時間減圧乾燥した。減圧乾燥後の試料をイソプロピルアルコール30mLで3回洗浄後、100℃で10分乾燥し、その重量を測定した(W2(g))。
また、カールフィッシャー水分計(MKA-510N型、京都電子工業株式会社製)を用いて粒子の含水率を測定し、Cw1(重量%)とした。
上記W1、W2、Cw1より、粒子における内包物の内包率(C(重量%))を下記の計算式より算出した。
C=100×[(W1―W2)-CW1/100]/(1.0-CW1/100)
【0064】
[粒子の外殻を形成する重合体の真比重の測定]
粒子10gをN,N-ジメチルホルムアミド200mLに分散させた後に超音波分散機で30分間処理し、室温で24時間浸漬した後、ろ過、120℃で5時間真空加熱乾燥し、粒子の外殻を形成する重合体(以下、単に外殻重合体ということがある)を単離した。得られた外殻重合体の真比重(D2)を、上記粒子の真比重の測定方法と同様にして測定した。
【0065】
[粒子の外殻の厚みの算出]
粒子の外殻の厚み<t>を下記の計算式より算出した。
<t>=<x>/2〔1-{1-D1×(1-C/100)/D2}1/3〕
<x>:粒子の平均粒子径(μm)
D1:粒子の真比重
D2:外殻を形成する重合体の真比重
C:難燃剤の内包率(重量%)
【0066】
[粒子の内径(d1)と外径(d2)との比(d1/d2)の算出]
粒子の内径(d1)と外径(d2)との比(d1/d2)を下記の計算式より算出した。
d1=<x>-2<t>
d2=<x>
d1/d2=(<x>-2<t>)/<x>=1-2<t>/<x>
【0067】
[粒子の経時安定性(R1)]
粒子を40℃で60日間静置した。静置後の粒子10gをイソプロピルアルコール30mLで3回洗浄後、100℃で1時間乾燥し、その重量を測定した(W3(g))。
また、カールフィッシャー水分計(MKA-510N型、京都電子工業株式会社製)を用いて、静置後の粒子の含水率を測定し、Cw2(重量%)とした。
上記W3、Cw2より、静置後の粒子の難燃剤保持率R1(重量%)を下記の計算式より算出した。なお、R1が90%以上であると、難燃剤のブリードアウトが抑制され、経時安定性に優れた粒子であると評価した。一方、R1が90%未満であると、難燃剤がブリードアウトし、経時安定性に劣る粒子であると評価した。
R1=10×(W3+Cw2/100)
【0068】
[粒子の温度200℃で10分間静置した際の難燃剤保持率(R2)]
粒子10gを直径80mm、深さ15mmのステンレス製蒸発皿に入れ、オーブンにて温度200℃で10分静置し、その重量を測定した(W4(g))。加熱後の粒子をイソプロピルアルコール30mLで3回洗浄後し、100℃で10分乾燥した後の、その重量を測定した(W5(g))。
上記W4、W5より、粒子の温度200℃で10分間静置した際の難燃剤保持率R2(重量%)を下記の計算式より算出した。また、R2が大きいほど熱安定性が良好である。
R2=100×(W5/W4)
【0069】
[粒子のゲル分率]
粒子10gをメチルエチルケトン200mLに分散させた後に超音波分散機で30分間処理し、室温で24時間浸漬した後、ろ過、120℃で5時間真空加熱乾燥し、メチルエチルケトン不溶分を単離しその重量を測定した(W6(g))。
上記W6(g)より、メチルエチルケトンによるゲル分率G(%)を下記の計算式より算出した。
G=100×(W6/10)
【0070】
<成形体の作製>
粒子30部とポリプロピレン(MFR2.4g/10min、密度0.90g/cm3)100部を混合し、組成物を得た。
次に、ラボプラストミル(2軸押出成形機ME-25、東洋精機工業株式会社製)およびTダイ(リップ幅150mm、厚み0.7mm)を用いて、押出成形機およびTダイの設定温度(成形温度)を200℃に設定し、スクリュー回転数を50rpmに設定した。
得られた組成物をラボプラストミルの原料ホッパーから投入し、成形体であるシートを作製した。作製したシート表面のべとつき及び臭気を評価した。
【0071】
<成形体の難燃性>
上記で作製したシートを裁断し、25mm×150mm×0.7mmの試験片を作製した。この試験片についてUL-94規格に基づき、燃焼試験を行った。垂直に保持した試験片の下端に炎を10秒接触したときの、炎を離してからの燃焼時間を評価した。
【0072】
<成形体の経時安定性>
上記で作製したシートを40℃で60日間静置した。静置後のシート表面のべとつき及び臭気を評価した。また上記の方法で燃焼時間を評価した。
【0073】
(実施例1)
イオン交換水500gに、塩化ナトリウム120g、有効成分20重量%であるコロイダルシリカ30g、ポリビニルピロリドン1g及びエチレンジアミン四酢酸・4Na塩0.1gを加えた後、得られた混合物のpHを2.5~3.5に調整し、水性分散媒を調整した。
これとは別に、メタクリル酸85g、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート5g、アクリロニトリル10g、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)3g、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート100gを混合して油性混合物を調整した。
水性分散媒と油性混合物を混合し、得られた混合液をホモミキサー(TKホモミキサー、プライミクス株式会社製)により、回転数10000rpmで1分間分散してから反応初期圧0.3MPaにし、150rpmで攪拌しつつ反応温度60℃で20時間重合反応した。重合後、重合生成物を濾過、乾燥して粒子1を得た。得られた粒子1の平均粒子径は18μmであった。さらに、粒子の他の物性を評価した。結果を表1に示す。
【0074】
(実施例2~16及び比較例1~4)
油性混合物を表1~2に示すものに変更すること以外は、実施例1と同様にして粒子(粒子2~20)を得た。得られた各粒子の物性を評価した。結果を表1~2に示す。
【0075】
【0076】
【0077】
実施例1~16の粒子は、本願の第一の態様の発明の粒子、第二の態様の発明の粒子、第三の態様の発明の粒子であり、内包する難燃剤のブリードアウトが抑制され、経時安定性に優れる。さらに、加熱されても、内包する難燃剤のブリードアウトが抑制され、熱安定性が良好である。また、それらの粒子を使用して得られる成形体は経時安定性に優れ、臭気も抑制される。
一方、上記第一の態様の発明の粒子、第二の態様の発明の粒子、第三の態様の発明の粒子に該当しない粒子(粒子17~20)は、難燃剤のブリードアウトを抑制できておらず、経時安定性に劣る。さらに、得られる成形体も経時安定性に劣る。