(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113371
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】水素アンモニア混焼システム、混焼制御装置および混焼制御方法
(51)【国際特許分類】
F02M 25/00 20060101AFI20240815BHJP
F02D 19/08 20060101ALI20240815BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20240815BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20240815BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20240815BHJP
F02C 6/00 20060101ALI20240815BHJP
F02C 9/40 20060101ALI20240815BHJP
F02C 7/22 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
F02M25/00 L
F02D19/08 Z
F02D45/00 369
F01N3/08 Z
F02M21/02 N
F02M21/02 301A
F02M25/00 F
F02M25/00 H
F02C6/00 E
F02C9/40 A
F02C7/22 A
F02M21/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018304
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】園田 隆
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓俊
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 輝幸
(72)【発明者】
【氏名】井上 由起彦
【テーマコード(参考)】
3G091
3G092
3G384
【Fターム(参考)】
3G091AA04
3G091AA06
3G091AB00
3G091BA13
3G091BA14
3G092AB04
3G092AB09
3G092AB19
3G384AA13
3G384AA16
3G384AA26
3G384BA31
3G384BA33
3G384DA14
3G384FA21Z
(57)【要約】
【課題】混焼率を適切に制御することができる混焼システム、混焼制御装置および混焼制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】混焼システムは、水素またはアンモニアと化石燃料とを混焼する燃焼装置と、燃焼装置の排気ガスを処理する排気ガス後処理装置と、1または複数の所定の変数を最適化するように燃焼装置が燃焼する水素またはアンモニアと化石燃料との混焼率を決定して燃焼装置による燃焼を制御する混焼制御装置と、を備え、1または複数の変数が、エネルギ効率、エネルギコスト、または、二酸化炭素回収効率の少なくとも1つを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素またはアンモニアと化石燃料とを混焼する燃焼装置と、
前記燃焼装置の排気ガスを処理する排気ガス後処理装置と、
1または複数の所定の変数を最適化するように前記燃焼装置が燃焼する前記水素またはアンモニアと前記化石燃料との混焼率を決定して前記燃焼装置による燃焼を制御する混焼制御装置と、
を備え、
前記1または複数の変数が、エネルギ効率、エネルギコスト、または、二酸化炭素回収効率の少なくとも1つを含む
混焼システム。
【請求項2】
前記排気ガス後処理装置が、二酸化炭素回収装置を含む
請求項1に記載の混焼システム。
【請求項3】
前記混焼制御装置は、
入力を前記混焼システムで取得された複数の運転データ、出力を前記混焼率として、前記エネルギ効率を最適化する前記混焼率を出力するように機械学習されたエネルギ効率最適制御用学習済み機械学習モデル、
入力を前記混焼システムで取得された複数の運転データ、出力を前記混焼率として、前記エネルギコストを最適化する前記混焼率を出力するように機械学習されたエネルギコスト最適制御用学習済み機械学習モデル、または、
入力を前記混焼システムで取得された複数の運転データ、出力を前記混焼率として、前記二酸化炭素回収装置の二酸化炭素回収効率を最適化する前記混焼率を出力するように機械学習された二酸化炭素回収効率最適制御用学習済み機械学習モデル、
の少なくとも1つを用いて前記混焼率を決定する
請求項2に記載の混焼システム。
【請求項4】
前記複数の運転データは、前記燃焼装置が混焼によって発生させる出力エネルギを表すデータを少なくとも含む
請求項3に記載の混焼システム。
【請求項5】
前記複数の運転データは、さらに前記二酸化炭素回収装置の受け入れ状態を表すデータを少なくとも含む
請求項4に記載の混焼システム。
【請求項6】
水素またはアンモニアと化石燃料とを混焼する燃焼装置と、
前記燃焼装置の排気ガスを処理する排気ガス後処理装置と、
を備える混焼システムにおいて、
エネルギ効率、エネルギコスト、または、二酸化炭素回収効率の少なくとも1つを最適化するように前記燃焼装置が燃焼する前記水素またはアンモニアと前記化石燃料との混焼率を決定して前記燃焼装置による燃焼を制御する
混焼制御装置。
【請求項7】
水素またはアンモニアと化石燃料とを混焼する燃焼装置と、
前記燃焼装置の排気ガスを処理する排気ガス後処理装置と、
を備える混焼システムにおいて、
エネルギ効率、エネルギコスト、または、二酸化炭素回収効率の少なくとも1つを最適化するように前記燃焼装置が燃焼する前記水素またはアンモニアと前記化石燃料との混焼率を決定して前記燃焼装置による燃焼を制御する
混焼制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、混焼システム、混焼制御装置および混焼制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、次のようなシステムが記載されている。すなわち、特許文献1に記載されているシステムは、ガスタービンシステムを備える。また、このガスタービンシステムは、ガスタービンと、ガスタービンシステムから排気ガスを受けるように構成された後処理システムと、制御装置とを含む。また、この制御装置は、入力を受け、入力に基づいてガスタービンおよび後処理システムを有する産業プラントの作動挙動をモデル化し、産業プラント用の1つ以上の動作パラメータ設定値を決定し、コスト関数の出力を減らす1つ以上の動作パラメータ設定値を選択し、産業プラントを制御するために1つ以上の動作パラメータ設定値を適用するように構成されている。特許文献1に記載されているシステムでは、ガスタービンおよび後処理システムのための設定値をリアルタイムで生成することによって、例えば、効率を高めたり、排出量を減らしたりすることで、燃料費および生涯運転費を削減しながら、長期間にわたってコンプライアンスを維持し、触媒の健全性監視を提供することができるとされる。
【0003】
ところで、CO2(二酸化炭素)の排出削減技術の一つに、化石燃料を使用する既存の設備において化石燃料と水素またはアンモニアとを混焼させることでCO2の排出量を削減させるという技術がある。化石燃料と水素またはアンモニアとを混焼させる場合、化石燃料と水素またはアンモニアとの燃焼特性の差異に基づき、混焼率を含めた適切な制御を行うことが求められる。ここでいう燃焼特性とは、例えば、発熱量・燃焼速度・排ガス組成であり、燃焼装置や排ガス処理装置の性能に影響を及ぼすものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであって、混焼率を適切に制御することができる混焼システム、混焼制御装置および混焼制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示に係る混焼システムは、水素またはアンモニアと化石燃料とを混焼する燃焼装置と、前記燃焼装置の排気ガスを処理する排気ガス後処理装置と、1または複数の所定の変数を最適化するように前記燃焼装置が燃焼する前記水素またはアンモニアと前記化石燃料との混焼率を決定して前記燃焼装置による燃焼を制御する混焼制御装置と、を備え、前記1または複数の変数が、エネルギ効率、エネルギコスト、または、二酸化炭素回収効率の少なくとも1つを含む。
【0007】
本開示に係る混焼制御装置は、水素またはアンモニアと化石燃料とを混焼する燃焼装置と、前記燃焼装置の排気ガスを処理する排気ガス後処理装置と、を備える混焼システムにおいて、エネルギ効率、エネルギコスト、または、二酸化炭素回収効率の少なくとも1つを最適化するように前記燃焼装置が燃焼する前記水素またはアンモニアと前記化石燃料との混焼率を決定して前記燃焼装置による燃焼を制御する。
【0008】
本開示に係る混焼制御方法は、水素またはアンモニアと化石燃料とを混焼する燃焼装置と、前記燃焼装置の排気ガスを処理する排気ガス後処理装置と、を備える混焼システムにおいて、エネルギ効率、エネルギコスト、または、二酸化炭素回収効率の少なくとも1つを最適化するように前記燃焼装置が燃焼する前記水素またはアンモニアと前記化石燃料との混焼率を決定して前記燃焼装置による燃焼を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の混焼システム、混焼制御装置および混焼制御方法によれば、混焼率を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係る混焼システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る学習済み機械学習モデルの構成例を示すブロック図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る学習済み機械学習モデルの他の構成例を示すブロック図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る学習済み機械学習モデルのさらに他の構成例を示すブロック図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る混焼制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図6】本開示の実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態に係る混焼システム、混焼制御装置および混焼制御方法について、
図1~
図6を参照して説明する。
図1は、本開示の実施形態に係る混焼システムの構成例を示すブロック図である。
図2~
図4は、本開示の実施形態に係る学習済み機械学習モデルの構成例を示すブロック図である。
図5は、本開示の実施形態に係る混焼制御装置の動作例を示すフローチャートである。
図6は、本開示の実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0012】
(混焼システム)
図1に示すように、本開示の実施形態に係る混焼システム1は、例えば、混焼制御装置101と、水素/アンモニア供給装置102と、化石燃料供給装置103と、バルブ104および105と、燃焼装置106と、排気ガス後処理装置107と、モニタリング装置110とを備える。なお、
図1では、黒塗りの矢印が燃料の流れを、白塗りの矢印が排気ガスの流れを、破線の矢印が制御信号等の流れを、鎖線の矢印がセンサ信号等の流れを示している。混焼システム1は、例えば、プラント等の施設、船舶等の移動体等に設置される。なお、以下では、必要に応じて、混焼システム1が発電プラントであり、燃焼装置106がガスタービン(GT)発電装置である場合を例として説明する。
【0013】
水素/アンモニア供給装置102は、バルブ104を介して燃焼装置106に対して水素またはアンモニア(燃料アンモニア)121を供給する。水素/アンモニア供給装置102は、例えば、水素製造装置、水素貯蔵タンク、アンモニア製造装置、アンモニア貯蔵タンク(貯蔵装置)等を含む。なお、水素/アンモニア供給装置102は、水素のみを供給する装置、アンモニアのみを供給する装置、または、水素とアンモニアを供給する装置とすることができる。
【0014】
化石燃料供給装置103は、バルブ105を介して燃焼装置106に対してLNG(液化天然ガス)、石炭等の化石燃料122を供給する。化石燃料供給装置103は、化石燃料の貯蔵装置等を含む。
【0015】
燃焼装置106は、例えば、ガスタービン(GT)、ボイラ、発電用エンジンまたは舶用エンジンの1以上を含み、水素/アンモニア供給装置102から供給された水素またはアンモニア121と、化石燃料供給装置103から供給された化石燃料122とを混焼する。ただし、本実施形態では、具体例を説明する場合、上述したように必要に応じて、燃焼装置106がガスタービンとガスタービンが駆動する発電機とを含むガスタービン発電装置である場合を例に挙げる。
【0016】
燃焼装置106が排出した排気ガスと、水素/アンモニア供給装置102が排出した排気ガスとを含む排気ガス123は、排気ガス後処理装置107へ入力される。ただし、水素/アンモニア供給装置102が、排気ガスを排出しない場合(例えば排気ガスを排出しない水素またはアンモニア製造装置で水素またはアンモニアを製造する場合)、あるいは、水素またはアンモニア製造装置を備えていない場合、水素/アンモニア供給装置102は排気ガスを排出しない。
【0017】
排気ガス後処理装置107は、CO2回収装置1071、脱硝装置、脱硫装置等とを備え、入力された排気ガス123から例えばCO2回収装置1071によってCO2を回収したり、窒素酸化物を除去したり、硫黄分を除去したりする。以下、一例として、排気ガス後処理装置107がCO2回収装置1071を備える場合について説明するが、排気ガス後処理装置107はCO2回収装置1071を備えていなくてもよい。排気ガス後処理装置107によって回収されたCO2(108)は、有効利用されたり、貯留されたりし、大気中には放出されない。一方、排気ガス後処理装置107によって処理された処理済み排気ガス(109)は、例えば煙突等を介して大気中に放出される。処理済み排気ガス(109)には低濃度のCO2(109a)が含まれている。
【0018】
モニタリング装置110は、水素/アンモニア供給装置102、燃焼装置106、排気ガス後処理装置107等において各種センサ等を用いて計測された所定の物理量を示すセンサ信号や、燃焼特性、目標出力等の制御状態や制御指令等を示す制御信号、センサ信号等に基づいて算出された出力や効率、CO2回収効率等の算出値等(以下、センサ信号と制御信号と算出値をまとめて運転データという)を取得し、運転データを混焼制御装置101へ出力する。なお、混焼制御装置101が取得するセンサ信号としては、例えば、燃料、空気、排気ガス等の流量、各部の温度、圧力、出力、回転速度、CO2濃度等である。また、CO2回収効率は、CO2(109a)とCO2(108)の合計に対するCO2(108)の割合である。なお、CO2回収効率は、例えば、CO2回収率と読み替えてもよい。
【0019】
(混焼制御装置の構成)
混焼制御装置101は、1または複数の所定の変数を最適化するように燃焼装置106が燃焼する水素またはアンモニアと化石燃料との混焼率を決定して燃焼装置106の燃焼を制御する。1または複数の所定の変数は、例えば、発電効率(エネルギ効率)、発電コスト(エネルギコスト)およびCO2回収効率の少なくとも1つを含む。本実施形態において、混焼制御装置101は、例えば、学習済み機械学習モデルM1を用いて、混焼率を決定する。この場合、混焼制御装置101は、例えば、モニタリング装置110が出力した運転データを学習済み機械学習モデルM1に入力し、学習済み機械学習モデルM1の出力として混焼率を算出して混焼率を決定し、バルブ104および105等を制御して混焼率を制御する。
【0020】
また、混焼制御装置101は、水素/アンモニア供給装置102、燃焼装置106、排気ガス後処理装置107等に対して決定した混焼率等を通知する。なお、混焼率は、化石燃料と水素またはアンモニアの混合比率を表す値であり、例えば、燃焼装置106に対する投入燃料の全熱量に占める水素またはアンモニアの熱量の比率とすることができる。本実施形態において、混焼制御装置101は、例えば水素/アンモニア供給装置102、燃焼装置106、排気ガス後処理装置107等の運転状態に応じて、混焼率を決定して制御する。
燃焼装置106は、混焼制御装置101から通知された混焼率に対して、発電出力、安定燃焼、機器寿命等を考慮した制御を行う。例えば、混焼率が変われば必要な空気流量も変化する。また、燃料と空気流量で所望する燃焼特性が得られる。燃焼装置106では、例えば、混焼率と燃料と所望する燃焼特性等に基づき、空気流量が、製品毎に別途操作端を持って制御される。また、水素/アンモニア供給装置102において水素/アンモニア製造装置を含む場合には、混焼率に応じた製造量の制御を行う。排気ガス後処理装置107は、混焼率で変化する排気ガス量に応じた処理の制御を行う。なお、燃焼装置106、水素/アンモニア供給装置102および排気ガス後処理装置107において混焼率に応じて制御されるパラメータの1または複数は、混焼制御装置101において、例えばモニタリング装置110が出力したパラメータ等に応じて決定してもよい。この場合、例えば、燃焼装置106、水素/アンモニア供給装置102および排気ガス後処理装置107全体を連携させた制御等を効率的に行うことができる。
【0021】
(学習済み機械学習モデル)
図2~
図4は、学習済み機械学習モデルM1の3つの構成例を示す。
図2~
図4は、発電効率最適制御用学習済み機械学習モデルM1-1、発電コスト最適制御用学習済み機械学習モデルM2-1、および、CO
2回収効率最適制御用学習済み機械学習モデルM3-1をそれぞれ示す。学習済み機械学習モデルM1は、発電効率最適制御用学習済み機械学習モデルM1-1、発電コスト最適制御用学習済み機械学習モデルM2-1、および、CO
2回収効率最適制御用学習済み機械学習モデルM3-1の少なくとも1つを含む。
【0022】
図2に示す発電効率最適制御用学習済み機械学習モデルM1-1は、入力を混焼システム1で取得された複数の運転データ1-1、運転データ1-2、…、出力を混焼率として、発電効率を最適化する混焼率を出力するように機械学習された学習済み機械学習モデルである。発電効率最適制御用学習済み機械学習モデルM1-1は、例えばニューラルネットワークを要素とする学習済みモデルであり、入力される多数のデータに対して求める解が出力されるよう、機械学習によりニューラルネットワークの各層のニューロン間の重み付け係数が最適化されている。発電効率最適制御用学習済み機械学習モデルM1-1は、例えば、入力から出力までの演算を行うプログラムと当該演算に用いられる重み付け係数(パラメータ)の組合せで構成される。発電効率最適制御用学習済み機械学習モデルM1-1は、例えば、過去の運用実績、あるいは、シミュレータを用いた仮想運転等から得られた発電効率が比較的高い(例えば発電効率が所定の閾値より大きい)場合の複数の運転データ1-1、運転データ1-2、…(入力)と、混焼率(出力)とをセットとする学習用データを教師データとして機械学習されている。なお、この場合、発電効率は、入力エネルギ(燃料が持つ化学エネルギ)に対する出力エネルギ(発電電力)の割合である。
【0023】
なお、発電コスト最適制御用学習済み機械学習モデルM2-1、および、CO2回収効率最適制御用学習済み機械学習モデルM3-1も、発電効率最適制御用学習済み機械学習モデルM1-1と同様のモデルとして構成することができる。また、発電効率最適制御用学習済み機械学習モデルM1-1の入力データである運転データ1-1、運転データ1-2、…は、例えば、発電機出力、効率計算に用いる燃料消費量、燃料低位発熱量等のデータを含む。
【0024】
図3に示す発電コスト最適制御用学習済み機械学習モデルM2-1は、入力を混焼システム1で取得された複数の運転データ2-1、運転データ2-2、…、出力を混焼率として、発電コスト(=発電単価)を最適化する混焼率を出力するように機械学習された学習済み機械学習モデルである。発電コストは、水素/アンモニアの製造・輸送・貯留等の調達費用も考慮される。さらに装置保守費用もコストに考慮されるため、混焼率変化による部品寿命への影響を考慮することも有効である。発電コスト最適制御用学習済み機械学習モデルM2-1は例えば、過去の運用実績、あるいは、シミュレータを用いた仮装運転等から得られた発電コストが比較的低い(例えば発電コストが所定の閾値より小さい)場合の複数の運転データ2-1、運転データ2-2、…(入力)と、混焼率(出力)とをセットとする学習用データを教師データとして機械学習されている。また、発電コスト最適制御用学習済み機械学習モデルM2-1の入力データである運転データ2-1、運転データ2-2、…は、例えば、発電機出力、発電コスト計算に用いる燃料費等のデータを含む。
【0025】
図4に示すCO
2回収効率最適制御用学習済み機械学習モデルM3-1は、入力を混焼システム1で取得された複数の運転データ3-1、運転データ3-2、…、出力を混焼率として、CO
2回収効率を最適化する混焼率を出力するように機械学習された学習済み機械学習モデルである。CO
2回収効率最適制御用学習済み機械学習モデルM3-1は例えば、過去の運用実績、あるいは、シミュレータを用いた仮装運転等から得られたCO
2回収効率が比較的高い(例えばCO
2回収効率が所定の閾値より高い)場合の複数の運転データ3-1、運転データ3-2、…(入力)と、混焼率(出力)とをセットとする学習用データを教師データとして機械学習されている。また、CO
2回収効率最適制御用学習済み機械学習モデルM3-1の入力データである運転データ3-1、運転データ3-2、…は、例えば、発電機出力、CO
2回収効率の計算に用いるCO
2排出量、CO
2回収量等のデータを含む。なお、発電機出力を表すデータは、本開示に係る、燃焼装置が混焼によって発生させる出力エネルギを表すデータの一例である。また、CO
2回収量(あるいはCO
2排出量およびCO
2回収量)を表すデータは、本開示に係る、二酸化炭素回収装置の受け入れ状態を表すデータの一例である。
【0026】
なお、発電効率最適制御用学習済み機械学習モデルM1-1は、本開示に係る、入力を混焼システムで取得された複数の運転データ、出力を混焼率として、エネルギ効率を最適化する混焼率を出力するように機械学習されたエネルギ効率最適制御用学習済み機械学習モデルの一構成例である。ここで、エネルギ効率は、入力エネルギに対する出力エネルギ(変換エネルギ等)の割合である。また、発電コスト最適制御用学習済み機械学習モデルM2-1は、本開示に係る、入力を混焼システムで取得された複数の運転データ、出力を混焼率として、エネルギコスト(単位出力エネルギ当たりのコスト)を最適化する混焼率を出力するように機械学習されたエネルギコスト最適制御用学習済み機械学習モデルの一構成例である。また、CO2回収効率最適制御用学習済み機械学習モデルM3-1は、本開示に係る、入力を混焼システムで取得された複数の運転データ、出力を混焼率として、二酸化炭素回収装置の二酸化炭素回収効率を最適化する混焼率を出力するように機械学習された二酸化炭素回収効率最適制御用学習済み機械学習モデルの一構成例である。
【0027】
(混焼制御装置の動作例)
図5は、混焼制御装置101の動作例を示す。なお、混焼制御装置101は、学習済み機械学習モデルM1として、発電効率最適制御用学習済み機械学習モデルM1-1、発電コスト最適制御用学習済み機械学習モデルM2-1、および、CO
2回収効率最適制御用学習済み機械学習モデルM3-1を選択的に使用可能であるとする。また、この例では発電コスト最適制御用学習済み機械学習モデルM2-1が初期設定の選択モデルであるとする。また、混焼システム1には、CO
2回収効率について所定の下限値が設定されているものとする。この動作例において、混焼制御装置101は、例えば安定運転時には、発電効率最適制御用学習済み機械学習モデルM1-1または発電コスト最適制御用学習済み機械学習モデルM2-1を用いてコストや効率を最適化するように混焼率を決定する。また、混焼制御装置101は、例えば給電要請への迅速対応のため、ガスタービン発電装置を急速起動する場合、CO
2回収効率最適制御用学習済み機械学習モデルM3-1を用いてCO
2回収効率を最適化するように混焼率を決定する。ガスタービン発電装置の立ち上がりに対してCO
2回収装置1071の立ち上がりが遅い場合、一定時間、CO
2回収効率が低下することが想定される。このようなCO
2回収装置の立ち上がりも、受け入れ状態を表すデータの一例である。そのため、例えばガスタービン発電装置を急速起動する場合、混焼制御装置101は、CO
2回収効率最適制御用学習済み機械学習モデルM3-1を用いることでCO
2回収効率を維持する。
【0028】
図5に示す処理は、例えばオペレータの指示に応じて開始される。混焼制御装置101は、まず、発電コスト最適制御用学習済み機械学習モデルM2-1を選択する(ステップS11)。以降、混焼制御装置101は、ステップS1で選択した学習済み機械学習モデルM1を用いて混焼率を制御する(ステップS2)。また、混焼制御装置101は、定期的に、学習済みモデルの変更が必要であるか否かを判断する(ステップS3)。学習済みモデルの変更が必要な場合とは、この例では、例えば、CO
2回収効率最適制御用学習済み機械学習モデルM3-1以外のモデルを使用している場合に、CO
2回収効率が下限値を下回る場合である。あるいは、学習済みモデルの変更が必要な場合とは、例えば、CO
2回収効率最適制御用学習済み機械学習モデルM3-1を使用している場合に、CO
2回収効率が下限値を十分上回る場合である。
【0029】
一方、学習済みモデルの変更が必要な場合(ステップS3:YES)、混焼制御装置101は、CO2回収効率最適制御用学習済み機械学習モデルM3-1を使用していない場合にはCO2回収効率最適制御用学習済み機械学習モデルM3-1を選択し(ステップS1)、CO2回収効率最適制御用学習済み機械学習モデルM3-1を使用している場合にはCO2回収効率最適制御用学習済み機械学習モデルM3-1以外のモデルを選択する(ステップS1)。以降、混焼制御装置101は、ステップS1で選択した学習済み機械学習モデルM1を用いて混焼率を制御する(ステップS2)。また、混焼制御装置101は、定期的に、学習済みモデルの変更が必要であるか否かを判断する(ステップS3)。
【0030】
他方、学習済みモデルの変更が必要でない場合(ステップS3:NO)、混焼制御装置101は、混焼率の制御を終了するか否かを判断する(ステップS4)。混焼率の制御を終了する場合とは、例えば燃焼装置106の動作を停止する場合等である。混焼率の制御を終了する場合(ステップS4:YES)、混焼制御装置101は、
図5に示す処理を終了する。混焼率の制御を終了しない場合(ステップS4:NO)、混焼制御装置101は、定期的に、学習済みモデルの変更が必要であるか否かを判断する(ステップS3)。
【0031】
なお、
図5に示す動作例は混焼制御装置101の一動作例であって、混焼制御装置101の動作は
図5に示す動作例に限定されない。例えば、3つの発電効率最適制御用学習済み機械学習モデルM1-1、発電コスト最適制御用学習済み機械学習モデルM2-1、および、CO
2回収効率最適制御用学習済み機械学習モデルM3-1を用いて、並列的に3つの混焼率を求め、最大の混焼率、2つまたは3つの混焼率に基づく平均値等の算出値等を、混焼率として決定するようにしてもよい。なお、2つまたは3つの混焼率に基づく算出値を用いる場合には、複数の変数を最適化するように混焼率が決定されることになる。
【0032】
(作用・効果等)
上記構成の混焼システム、混焼制御装置および混焼制御方法は、エネルギ効率(発電効率)、エネルギコスト(発電コスト)、または、二酸化炭素回収効率の少なくとも1つを最適化するように燃焼装置106が燃焼する水素またはアンモニアと化石燃料との混焼率を決定して燃焼装置106の燃焼を制御する。したがって、実施形態の混焼システム、混焼制御装置および混焼制御方法によれば、混焼率を適切に制御することができる。
【0033】
以上のように、本実施形態によれば、運転状態に応じて脱炭素燃料(水素・アンモニア)と従来燃料の混焼率を変化させることができる。また、本実施形態によれば、例えば、水素供給・発電・ガス処理の各プロセスを統合制御し、脱炭素目標に応じた運転を行うことができる。また、運転最適化の制約条件として、燃料製造などバリューチェーン全体のCO2排出を考慮するようにしてもよい。
【0034】
また、本実施形態によれば、CO2回収装置が例えば発電設備からの廃熱を必要とする場合、立上げからCO2を回収できるようになるまでに時間を要する。発電設備は電力需要に応じて急速起動させる運用が求められるが、その場合、脱炭素燃料の使用割合を高めることが脱炭素目標を達成する手段となる。また、定常運転になった場合は、脱炭素燃料と化石燃料のコスト比やCO2回収コストなどのバランスによって決定された混焼率で運用することができる。また、脱炭素技術として、水素・アンモニア燃焼とCO2回収といった複数手段の組合せにおける効果の予測・実績を把握することで、効果の最大化が図れる。
【0035】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0036】
(コンピュータ構成)
図6は、本開示の実施形態に係るコンピュータの構成を示す。
コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、および、インタフェース94を備える。
上述の混焼制御装置101は、コンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。
【0037】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータは、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0038】
ストレージ93の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0039】
<付記>
上記実施形態に記載の混焼システム1は、例えば以下のように把握される。
【0040】
(1)第1の態様に係る混焼システム1は、水素またはアンモニアと化石燃料とを混焼する燃焼装置106と、前記燃焼装置106の排気ガスを処理する排気ガス後処理装置107と、1または複数の所定の変数を最適化するように前記燃焼装置106が燃焼する前記水素またはアンモニアと前記化石燃料との混焼率を決定して前記燃焼装置による燃焼を制御する混焼制御装置101と、を備え、前記1または複数の変数が、エネルギ効率(発電効率等)、エネルギコスト(発電コスト等)、または、二酸化炭素回収効率の少なくとも1つを含む。本態様および以下の各態様によれば、混焼率を適切に制御することができる。
【0041】
(2)第2の態様に係る混焼システム1は、(1)の混焼システム1であって、前記排気ガス後処理装置が、二酸化炭素回収装置(CO2回収装置1071)を含む。
【0042】
(3)第3の態様に係る混焼システム1は、(2)の混焼システム1であって、前記混焼制御装置101は、力を前記混焼システムで取得された複数の運転データ、出力を前記混焼率として、前記エネルギ効率を最適化する前記混焼率を出力するように機械学習されたエネルギ効率最適制御用学習済み機械学習モデル(発電効率最適制御用学習済み機械学習モデルM1-1)、入力を前記混焼システムで取得された複数の運転データ、出力を前記混焼率として、前記エネルギコストを最適化する前記混焼率を出力するように機械学習されたエネルギコスト最適制御用学習済み機械学習モデル(発電コスト最適制御用学習済み機械学習モデルM2-1)、または、入力を前記混焼システムで取得された複数の運転データ、出力を前記混焼率として、前記二酸化炭素回収装置の二酸化炭素回収効率を最適化する前記混焼率を出力するように機械学習された二酸化炭素回収効率最適制御用学習済み機械学習モデル(CO2回収効率最適制御用学習済み機械学習モデルM3-1)の少なくとも1つを用いて前記混焼率を決定する。
【0043】
(4)第4の態様に係る混焼システム1は、(1)~(3)の混焼システム1であって、前記複数の運転データは、前記燃焼装置が混焼によって発生させる出力エネルギ(発電機出力等)を表すデータを少なくとも含む。
【0044】
(5)第5の態様に係る混焼システム1は、(4)の混焼システム1であって、前記複数の運転データは、さらに前記二酸化炭素回収装置の受け入れ状態を表すデータ(CO2回収量、CO2排出量およびCO2回収量等)を少なくとも含む。
【符号の説明】
【0045】
1…混焼システム
101…混焼制御装置
102…水素/アンモニア供給装置
103…化石燃料供給装置
104、105…バルブ
106…燃焼装置
107…排気ガス後処理装置
110…モニタリング装置
1071…CO2回収装置
M1…学習済み機械学習モデル
M1-1…発電効率最適制御用学習済み機械学習モデル
M1-2…発電コスト最適制御用学習済み機械学習モデル
M1-3…CO2回収効率最適制御用学習済み機械学習モデル